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[経世済民116] 「トランプ・リフレ」が直撃の新興国−最弱はマレーシア、トルコ  #外貨準備不足と資本流出、通貨安で産業も生活も悪化  
「トランプ・リフレ」が直撃の新興国−最弱はマレーシア、トルコ
Yumi Teso、Masaki Kondo
2016年11月28日 06:33 JST

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国際通貨基金(IMF)は以前、アジアの新興国に外貨準備を積み上げ過ぎないように呼び掛けていた。それから10年を経ずして、世界金融危機で状況が一変した。
  トランプ次期米大統領のリフレ的公約を受けて持続的な米金利上昇が見込まれる今、資本流出に対して新興市場のどの国が最も強固なバッファーを持っているかがじっくりと精査されている。
  IMFが開発した指標に基づくと、最強はフィリピンとタイ。最も弱いのはマレーシア。アジア以外を見ると、トルコ、南アフリカ共和国、メキシコと続く。

新興国で資本の強力なバッファー持つタイ

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iF3tBQFz5TzI/v1/-1x-1.png


  IMFの見積もりによると、マレーシアは年末の外貨準備見通し1000億ドル(約11兆3000億円)に対して短期の対外債務が1282億ドルと赤字だ。実際、マレーシア・リンギットは対ドルでの今月のパフォーマンスがアジアの新興市場通貨の中で最悪。
  一方、タイは外貨準備見通し1633億ドルに対して、債務返済に必要なのは649億ドル。フィリピンも外貨準備840億ドルに対し、債務310億ドルと黒字だ。
  ただ、IMFの年末外貨準備高予想はトランプ氏の大統領選挙当選前の見積もりなので、自国通貨の無秩序な下落を防ぐために既に介入を迫られている各国の外貨準備はIMF見通しに届かないかもしれない。フィリピン・ペソは24日、1ドル=50.00ペソの水準を8年ぶりに割り込んだ。

原題:In Asian Currency-Reserves Checkup, Two Come Out on Top (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-27/OH6VH06KLVSN01
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/231.html

[経世済民116] 1ドル=120円への円安予想、もう非現実的ではない−来年128円の声も GPIFに現れた予期せぬ助っ人、収益増へ力強いレ

1ドル=120円への円安予想、もう非現実的ではない−来年128円の声も
Netty Ismail
2016年11月28日 09:45 JST 

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AMPキャピタルやBNPは13年ぶり安値125円86銭を下回ると予想
日米の利回り格差拡大がドルを対円で押し上げる−BofA 

ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)のストラテジスト、マンスール・モヒウディン氏(シンガポール在勤)が半年前に円安を予想した際、賛同者はほとんどいなかった。だが今では、1ドル=120円までの円安進行を見込む仲間がたくさんいる。
  バンク・オブ・アメリカ(BofA)は円が同水準に来年末に下落すると予測。AMPキャピタル・インベスターズやBNPパリバはもっと弱気で、円が昨年6月に付けた13年ぶり安値の125円86銭よりも安くなるとみている。オプション市場では、3カ月物の円コール(買う権利)のプレミアムが2015年11月以来の低水準に下がった後、ほぼ消滅している。

  円は11月8日の米大統領選以降、対ドルで7%余り値下がりし、パフォーマンスが先進国通貨の中で最悪。当選したドナルド・トランプ氏が財政刺激を公約して米国債が売られ、日米の債券利回り格差が11年以来の大きさに開いたことが背景だ。
1000円札を持つ買い物客
1000円札を持つ買い物客 Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  BofAのアジア通貨・金利戦略共同責任者クラウディオ・パイロン氏(シンガポール在勤)は「利回り格差がドルを対円で本当に押し上げるだろう」とし、「G7通貨の中で金利に最も敏感な通貨は円になる」と付け加えた。
  日本時間28日午前7時45分現在の円相場は、1ドル=112円85銭。オプション市場では円上昇に賭けるコストが低下。ブルームバーグの集計データによると、3カ月物円コールのプット(売る権利)に対するプレミアムは先週末時点で約0.4ポイント。これに対し、今月8日は1.8ポイントだった。
  AMPキャピタルで投資ファンドを率いるネーダー・ナエイミ氏(シドニー在勤)は円が1ドル=108円に強含む局面があれば、円下落に賭けるポジションを増やすと話す。米大統領選前から円安に賭け始めた同氏は「短期的に調整が起きる可能性は強い」として、円安は「1本調子にはならない」と予想した。
  ブルームバーグが調査対象とした金融機関で円に最も弱気だったのはBNPパリバで、10%余り値下がりして来年1ドル=128円に達するとみている。 
原題:Yen at 120 No Longer a Lonely Call for Analyst Who Got It Right(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-28/OHBSLA6KLVR401


 


GPIFに現れた予期せぬ助っ人、収益増へ力強いレバレッジ効果
野沢茂樹、北中杏奈
2016年11月28日 00:00 JST 更新日時 2016年11月28日 11:50 JST
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トランプ氏の勝利後、世界的な株高と円安・ドル高が加速
モルガン・スタンレーは内外株式に約9兆円の積み増し余地と推計
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世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は予想だにしなかった強力な支援者に巡り会ったようだ。米国の次期大統領となるドナルド・トランプ氏だ。
 
トランプ次期米大統領
トランプ次期米大統領 Spencer Platt/Getty Images
  GPIFは年金積立金132.1兆円の43%近くを国内外の株式に投じ、うち8割超は運用指標の銘柄構成に従うパッシブ運用手法を取っている。大型減税やインフラ投資を唱えるトランプ次期政権に対する思惑から広がる世界的な株高・金利上昇とドル高は、GPIFにとって、株高の恩恵を受けやすくし、資産全体の3分の1超を占める外貨建て資産を円換算で上振れさせてくれる追い風だ。
高橋則広GPIF理事長
高橋則広GPIF理事長 Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは、「トランプ相場はアベノミクスにとって、少なくとも目先は追い風だ。GPIFにもかなりの恩恵をもたらす」と指摘。資産規模で勝るゆうちょ銀行よりもリスク資産の構成比が高いので「GPIFが受けるメリットは国内最大だ。株高と円安の余地はまだあるため、力強いレバレッジのかかった収益増が期待できる」とみている。

  TOPIXは9月末までの3カ月間で6.18%、MSCIコクサイ指数は円換算で2.29%の上昇にとどまった。しかし、トランプ氏当選が確定した日の翌10日から先週末にかけてTOPIXは11連騰で12.6%上昇。ブルームバーグのデータによると、主要94株価指数の中で5番目の好成績だ。米S&P500種株価指数は史上最高値を更新し、世界の株式時価総額は6416億ドルも増加。MSCIコクサイは8.4%上げた。
  円相場は9月末に1ドル=101円35銭と四半期末では2014年6月末以来の高値を付けたが、先週末には一時113円90銭とトランプ氏当選当日の高値から12.5%下落。今月の下げは09年2月以来の大きさだ。円はユーロに対しても同期間に5.7%下落した。
  GPIFは第2次安倍晋三内閣が主導した14年10月の資産構成見直しで国内債の目標値を60%から35%に下げ、内外株式は12%ずつから25%ずつに、外債は11%から15%へ引き上げた。昨年6月末までの3四半期で12兆円余り稼いだ後の1年間は、株価の伸び悩みや円高基調で13兆円を超える運用損を計上した。25日に公表した運用状況によると、7−9月期の運用益は2.4兆円で、資産構成変更後の通算収益がようやくプラス圏に戻っている。
  リスク資産の割合を高めたため、GPIFの収益の浮き沈みは激しくなっている。基本ポートフォリオの検証結果によると、価格変動を示す標準偏差は国内債の4.2%に対し、国内株は25.2%、外株は26.8%と6倍超に上る。外債は11.8%だ。資産全体では12.4%と全額を国内債で運用する場合の3倍近く振れやすい。
  公的年金制度の一部であるGPIFは年金財政検証が推計した名目賃金上昇率を1.7ポイント上回る運用利回りを長期的に確保する責務を負う。賃金が2.7%上がる経済シナリオの名目期待収益率は国内債が2.3%にとどまる一方、国内株は5.9%、外株は6.7%、外債は4.1%だ。GPIFは5月、年金財政が必要とする積立金の水準を下回るリスクが策定時より下がったため、基本ポートフォリオ変更の必要はないと結論づけた。
  GPIFの運用資産に年金特別会計が管理する約8.4兆円も含めた積立金全体に占める国内債の割合は9月末に36.15%と過去最低を更新し、国内株は21.59%に上昇した。ただ、外株は21%、外債は12.51%に低下。短期資産は8.75%と資産構成の見直し以降で最も高まる中、リスク資産を買い増す余地が膨らんだと言える。
  ブルームバーグの試算によれば、国内債の保有額は9月末に約50.8兆円、国内株は約30.3兆円、外株は約29.5兆円、外債は約17.6兆円。積立金全体の規模が変わらないと仮定した場合、国内債は償還分も含めて目標値まで約1.6兆円減らす余地がある。国内株は値上がり分も込みで約4.8兆円、外株は為替損益も含めて約5.6兆円、外債は約3.5兆円の積み増しが必要だ。
  モルガン・スタンレーMUFG証券の株式統括本部でエグゼクティブ・ディレクターを務める岩尾洋平氏らはGPIFの公表内容と直近の相場動向に基づき、国内債の構成比が24日時点で35%と目標値まで下がる一方、国内株は23.3%に上昇したと推計。ただ、外株は20.5%に低下し、外債は12.6%と微増にとどまったとみる。
  原因は8.6%と高水準のキャッシュを抱えているためで、目標値に到達するには国内債を含む全ての資産クラスを増やす必要があると、岩尾氏らは指摘。国内債は足元から約510億円、国内株は約2.4兆円、外債は3.4兆円、外株は約6.5兆円を積み増す余地があると試算した。
日経平均、2万円も
  高橋則広理事長は25日公表した説明資料で、7−9月期に運用収益が回復したのは原油価格が落ち着きを取り戻したことなどで世界的にリスクオンの動きが広がるとともに、国内では経済対策への期待が高まったからだと説明した。広報責任者の森新一郎氏は記者説明会で、現行の10−12月期は国内外の株高や円安といった運用にプラスの要因が多いとし、積立金は長期的にみれば順調に積み上がっていると述べた。
  ミラボー・アジアの香港在勤トレーディング担当ディレクター、アンドルー・クラーク氏は、GPIFは自らの運用方針の正しさが立証されたと感じているのではないかと指摘。トランプ相場に対しては、慎重ながらも楽観的に捉えているに違いないと語った。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iZofUIgSWqFk/v2/-1x-1.png

  GPIFは資産構成の変更が終盤に差し掛かった昨年央から、世界的な市場の混乱に次々と見舞われた。今年前半は円高・株安がさらに進行し、リスク資産の積み増しが裏目に出ていたが、トランプ氏が当選してからの株高・円安で運用環境が改善している。9月末の運用資産は過去最高だった昨年6月末の141.1兆円より9兆円余り少ないが、安倍内閣の発足直後に当たる12年末からは約20兆円増えている。
  運用資産が203.8兆円とGPIFの1.6倍近いゆうちょ銀のリスク資産の残高は9月末に64.4兆円と、当初の計画より1年半余り前倒しで目標を達成した。ただ、地方債や社債、貸付金など為替リスクがない円建て資産が14.6兆円を占め、相対的にリスク性の高い外債と株式などは50兆円弱と全体の4分の1未満にとどまる。GPIFはリスク資産の構成比がゆうちょ銀の2倍超と高く、トランプ相場の恩恵を受けやすい。
  クレディ・アグリコル証の尾形氏は、トランプ相場が「仮に来月の米利上げを経ても一服しない場合、来年1月20日の次期大統領就任まで続くことになる」と読む。「米30年債利回りなどには上昇余地があり、円相場も115円を超えて120円に近づいていく可能性も完全には排除できない」と分析。日経平均株価は円相場が「115円で1万9000円、120円で2万円を期待できる」とみている。
  トランプ相場はGPIFに世界的な株高と円安・ドル高という恩恵をもたらしているが、債券運用には逆風だ。日本の長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは25日に0.045%と、2月中旬以来の高水準を付けた。米バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの指数によれば、米国債の収益率はトランプ氏の当選以降マイナス2.629%と09年以来の低水準だが、円換算するとプラス5%に様変わりする。
  民進党幹事長代理の玉木雄一郎衆院議員は9月のインタビューで、GPIFの株式保有増に伴う巨額の運用損で「国民全体がギャンブルに付き合わないといけない状況」になっていると指摘。日本銀行も含めた公的マネーの日本株保有増によって「生産性の向上とか新しいイノベーティブなチャレンジがむしろ阻害されている」と批判した。
  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、GPIFは運用成績が「良い時は何も言われないが悪いとたたかれる。5年から10年の期間で評価すべきだ」と指摘。GPIFはトランプ相場を「過度に楽観視することなく警戒感を保っているだろうが、しばらくはこの方針を自信もって続けられるだろう」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-27/OH7M3B6KLVRG01
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/232.html

[政治・選挙・NHK216] 「引きこもり」から「総活躍」へ、54万人の道どう開く−人口縮む日本   安倍晋三政権「就労・自立を目指す」に違和感   
「引きこもり」から「総活躍」へ、54万人の道どう開く−人口縮む日本
高橋舞子
2016年11月28日 06:00 JST

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就労にたどり着くまでにはいくつもの段階−違和感あるとの指摘も
若者の1.6%がひきこもり、5%が親和群−進む長期化と高齢化

平井渚さん(30)は東京・世田谷に生まれ、厳格に育てられた。男子とサッカーをして遊ぶような活発な子だったが、小学校入学後すぐに不登校が始まり引きこもりがちになった。今は書籍編集のアルバイトなどをしながら1人で暮らしているが、時にどうしようもない自己否定感にさいなまれ、布団から出られなくなる日もあるという。
  「忘れ物をしただけでも1日中不安になる」ような真面目な性格。不登校になって間もない頃は、机にしがみついて抵抗する平井さんを両親が無理やり学校に連れて行くこともあった。しかしある時、母親は「不登校でも大丈夫」と言うようになり、まったく怒らなくなった。平井さんは「母だけが外の世界から守ってくれる人という意識があった」と話す。
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  安倍晋三政権は6月に「1億総活躍プラン」を閣議決定し、引きこもりなど「社会生活を円滑に営む上での困難を有する子供・若者」に対し相談支援などを充実させ、「就労・自立を目指す」とうたった。しかし現場を知る専門家は「活躍」という言葉への違和感を隠さない。
  NPO「シューレ大学」で引きこもりや不登校の支援に携わる朝倉景樹氏は、「『1億総活躍』という言葉は引きこもりにとってはプレッシャー」と話す。「活躍」の裏には「成果」が期待されるとし、「活躍ではなくて幸せではいけないのか」と問う。
  内閣府が9月に公表した調査によると、全国の15−39歳の男女で半年以上にわたり家族以外とほとんど交流せずに自宅にいる「ひきこもり」は推計54万1000人。同年齢層のうち1.6%に相当するが、5年前の前回調査に比べると約16万人減っている。
  一方で、内閣府は前回調査で155万人に上った引きこもりに共感する「ひきこもり親和群」について今回、公表を控えた。前回調査に基づいてブルームバーグが試算した推計値は166万人と約11万人増加。全体の約約5%を占める。
  引きこもりの長期化・高齢化の傾向も顕著だ。今回調査では、引きこもり期間が「7年以上」に及ぶケースが34.7%で、うち30−39歳が40.8%と半数近くを占める。島根県と山形県が40歳以上の県民も対象に含めて実施した調査では、いずれの結果も「10年以上」が3割超。40歳以上の割合は島根で53%、山形で44%に上った。しかし、内閣府の調査では把握できていない。
  「Hikikomori」という単語はオックスフォード英語辞典にも載っている。「(日本で)社会との接点を異常に避けること。通常は思春期の男性によるもの」が定義だが、実際には年齢層や性別を超えて広がる。
プレッシャー
  平井さんは、定時制高校に入学して間もなく拒食症になり、体重が30キロ台まで落ちた。「拒食症と引き替えに外出ができるようになった。食を抑えることで自分の気持ちを抑えられた」と、心のバランスを取ろうと必死に模索していた当時を振り返る。起床、外出、就寝の時間を自ら定めて、10分でもずれるとパニックに陥り、物を壊すこともあった。
  結局、高校には通えず、同級生の卒業に合わせて自主退学を決断。両親は「籍だけでも置いていてほしい」と願ったが、平井さんは「年齢的なプレッシャーがあった」と話した。
  シューレ大学の朝倉氏は、学習指導要領による教育の均一化などを背景に、日本は同調圧力が強い社会になったと指摘。引きこもりを「弱い」と批判し、「なぜこの人は働けないのかと責める」傾向があり、当事者の自己否定感を強めるという。
  内閣府が2014年に公表した日本、韓国、米国、英国、ドイツ、フランス、スウェーデンの7カ国の若者(13−29歳)を対象にした調査によると、「自分自身に満足している」との問いに「そう思う」と答えた割合は、日本が最下位の7.5%。最上位の米国は46.2%、韓国は29.7%だった。「自分には長所がある」、「今が楽しければよい」、「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」の各項目も日本は最下位だった。
  野村総研の伊藤利江子主任コンサルタントは、日本では家族を家庭で囲ってしまう文化があるため、引きこもりになりがちだが、欧米では若年ホームレスになるケースが多いと指摘する。12年の厚生労働省の調査によると、日本ではホームレスのうち39歳以下は3.7%という。
就労
  インタビュー中ずっと笑みを絶やさず、ハキハキした口調で話す平井さんだが、将来の目標を聞くと、少し驚いた表情を見せた。「仕事も学校の延長と捉えてしまう。ずっと引きこもっていた昔みたいになるのが怖いから、何をしたいというよりも、どういう人のなかで過ごすかが大事」という。「親も年を取ってきたし、学歴は中卒。将来どう生きていこうという不安は常にある」と硬い笑顔で話した。
  安倍首相は13年5月7日の参院予算委員会で、引きこもりやニートの若者へのメッセージを求められ、「『頑張って自分の足で立っていこう』と思ってほしい」と応じた上で、「求人と雇用を増やすことこそ政治の仕事だ」と答弁した。
  足元の失業率は3%程度で推移。安倍政権は雇用改善をアベノミクスの成果と胸を張るが、引きこもりなど求職していない人は失業率に反映されない。一方、生産年齢人口(15−64歳)の減少ペースは急激だ。国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、1995年の8700万人から14年には7800万人に減少。50年には5000万人まで落ち込むと予想されている。
  就労が進めば社会保障財政の改善にもつながる。厚生労働省の研究会が10年にまとめた報告書によれば、20−64歳まで就労した独身男性の場合、正規労働者で4592万円、非正規労働者で2599万円の税・社会保険料を納付すると推計。一方、生活保護を受給した場合は5239万円の負担が発生すると試算した。生活保護受給者が就労者になれば、1人当たり合計7838万円から9831万円分の財政的なプラス効果が生じる。
  野村総研の伊藤氏は、現在の引きこもり支援はNPOなど「個人の志に依存してしまっている」と指摘。労働力の人手不足が叫ばれる現在、適切な政策によって支援対象から労働人口への移行が可能になるとして、支援は「コストではなく、投資と捉えることが大切だ」と訴える。
人との関わりから
  厚労省は09年度に「ひきこもり対策推進事業」を創設。各自治体の相談窓口を整備したほか、相談員も養成してきた。ただ、内閣府の調査では、引きこもりの65.3%が「関係機関に相談したいと思わない」と回答。理由として「うまく話せない」や「自分のことを知られたくない」などが並んだ。
  東京都の事業で引きこもり支援を行う臨床心理士の谷田征子氏は、支援は人との関わりに慣れてもらうところから始まると話す。「就労にたどり着くまでにはいくつもの段階がある。本人には働かなければいけないという意識はあるが、実際に就労につながる人はそれほど多くない」という。1億総活躍に引きこもりが含まれたことについても「違和感があった」と漏らした。
 
   谷田氏は、「親が相談に来て初めて引きこもりの存在が明らかになるし、親の協力があってこそ支援が進む」と説明。しかし日本には「恥の文化」があり、家族が世間の目を気にして周囲に知られるのを恐れる傾向があるとして、それが一層支援を難しくしていると話す。
  引きこもりに関する著書もあるトキワ精神保健事務所の押川剛氏は、社会が豊かになるにつれてプライバシーの権利も厳格になったため、「本人の意思がなければ外部から介入できなくなった」と指摘。親を介在させた間接的な解決を図る支援が一般的となったが、結果として「引きこもりは家族の責任となり、追い詰められた家族は行き場を失う」と語る。家族だけでなく地域や行政がもっと積極的に関与するべきだと訴えている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-27/OG40O56TTDS001
http://www.asyura2.com/16/senkyo216/msg/657.html

[国際16] 特別リポート:「17号病棟」への道、PTSDと闘う記者の手記
News | 2016年 11月 28日 10:51 JST

特別リポート:「17号病棟」への道、PTSDと闘う記者の手記

 11月15日、数々の大事件を取材し、バグダッド支局長を務めたロイターのディーン・イェーツ記者(写真)が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と闘う日々をつづった。イラクのティクリート近郊で2003年11月撮影。ディーン・イェーツ記者提供(2016年 ロイター/Dean Yates/Handout via REUTERS)
 
Dean Yates

[エバンデール(豪州) 15日 ロイター] - 今年3月初め、精神科医が最初のセッションの終わりに、心的外傷後ストレス障害(PTSD)との診断を下したとき、ついに私は自分が不調であることを受け入れざるを得なかった。

妻のメアリーは長い間、私に起きるフラッシュバックや不安感、感情のまひや不眠を心配していた。私はこうした症状を軽く見て、問題を抱えていることを否定した。だがそれから5カ月後、私は精神科病棟にいた。

ロイターの記者として、私はいくつかの大事件を取材していた。2002年のバリ島爆弾攻撃事件や、2004年のスマトラ島沖地震、2003年から2004年にかけて3度にわたるイラクへの取材、それから2007年から2008年は支局長としてイラク首都バグダッドに赴任した。

その後2010年から2012年の間は、シンガポールから毎日、アジア全体のトップニュースを仕切っていた。

アジアと中東で20年間働いた後、このあたりで落ち着こうと、2013年初めに人口約1000人の豪州タスマニア島エバンデールに家族と共に移り住んだ。自宅から、ロイターの記事を編集した。

しかし、妻メアリーの生まれ故郷である美しいタスマニアの島でリラックスするはずが、私の身体は変調をきたしていった。

以前記者だったメアリーは、精神科医との最初のセッションを前に、気がかりなことを手紙で医師に説明した。彼女にとって、このような手紙を書くことは苦痛であったに違いない。

「3年前にタスマニアに戻ってきたとき、ディーンにとってはまさに『田舎暮らし』だった。彼は多くの時間を家族と過ごすようになった。間もなく私は彼の変化に気づき始めた。大きな音に敏感になり、短気で怒りやすく、いら立っており、家庭を覆い尽くすような陰うつな空気を漂わせるようになった」

「私は彼がPTSDではないかと疑い始めた。彼は生涯忘れられないある特定のイメージがいくつかあると語っていた」

数多くの光景、音、においが実際、私の記憶に焼きついている。

バリ島のナイトクラブのがれきのなかで踏みそうになった、ちぎれた手。津波が引いた後にバンダアチェのモスクで確認した150人以上の膨れ上がった遺体。そして、2007年7月12日の朝、米軍ヘリの攻撃により、カメラマンのナミール・ヌル・エルディーン(22)とドライバーのサイード・シュマフ(40)が殺害されたとの知らせが届いたとき、バグダッド支局を貫いたイラク人スタッフの悲痛な叫び、などがそうだ。

爆弾攻撃を受けたバリ島での被害状況を調べる警官。2002年10月撮影(2016年 ロイター/Jonathan Drake)
爆弾攻撃を受けたバリ島での被害状況を調べる警官。2002年10月撮影(2016年 ロイター/Jonathan Drake)
<穏やかで理性的、決断力がある>

PTSDは1つの、あるいは複数のトラウマ的体験が原因で発症する。

PTSDになるのは兵士ばかりではない。警官や救助隊員もPTSDになるリスクがある。戦闘や自然災害に巻き込まれた市民や、性的被害者、自動車事故の被害者もPTSDになる恐れがある。

米コロンビア大学ジャーナリズム大学院のプロジェクト研究によると、仕事でトラウマになりそうな事件に繰り返し遭遇するにもかかわらず、ほとんどの記者には抵抗力があるという。ただしごく少数ではあるが、PTSDやうつ病、薬物乱用といった長期に及ぶ精神的問題を抱えるリスクがあるとも指摘している。

私は自分がPTSDになるとは露ほども思っていなかった。自分は穏やかで、理性的で、決断力があると思っていた。大規模な編集チームを束ねる責任者の役割を楽しんでいた。必要とあらば、過酷な状況を考えないようにできると思っていた。

イラクのバグダッド支局長として、支局の屋上でカメラリハーサルを行う筆者。2008年4月撮影(2016年 ロイター/Mahmoud Raouf Mahmoud)
イラクのバグダッド支局長として、支局の屋上でカメラリハーサルを行う筆者。2008年4月撮影(2016年 ロイター/Mahmoud Raouf Mahmoud)
しかし昨年、私は時々ベッドから起き上がることができなくなった。書斎で机に向かって仕事をしようとするものの、頭を起こすことがほとんどできなかった。ストレスを感じると、バグダッド支局に引き戻された。まるでずっとそこにいたかのように。私はこぶしを机にたたきつけ、壁に向かって叫んだ。

音に非常に敏感だったため、私の10代の子どもたちは何か物を落とすと動けなくなってしまった。私が部屋にいるときは、メアリーは掃除機をかけなかった。PTSDについての本を読み、私の症状について専門家と話した後、メアリーは私には助けが必要だと昨年何度か言ってきた。

だが2015年半ばに私が観念して精神分析医に会うと、彼はPTSDを除外した。知名度のある仕事を離れ、誰も自分のことを知らない田舎に移り住んだことで、アイデンティティーの危機に陥っているのだと言われた。PTSDではないと、私はメアリーに言い張った。

それから数カ月後、私の神経過敏や感情のまひ、抑えきれない怒りのせいで結婚生活が限界に達した今年3月、私はようやくPTSDとの診断を下した精神科医に会うことに同意したのだった。

<トレッキングと抗うつ剤>

エディターたちは躊躇(ちゅうちょ)なく、私に3カ月の休みをくれた。私は抗うつ剤を飲み始めた。PTSDとの診断を受けてから数週間はひどい疲れに見舞われることがしばしばあった。5月初め、私は仕事復帰を7月まで遅らせた。ストレスと不安にうまく対処するのにめい想が役立つことを期待して、5月から6月にかけて8週間の精神集中コースを受講した。

最高のセラピー、そう私が思ったのは森林を歩き回ることだった。

タスマニアの熱帯雨林で、私は探し求めていた心の安らぎを見いだすことができた。古木に触れたり、川の近くに腰かけたり、霧の立ち込めた山々を眺めたりできるトレッキングに夢中になった。問題を抱えた心を忘れ、ただ森林の空気を吸った。そのうち、タスマニアの自然やウエストコーストの歴史に関する本を熱心に読みふけるようになった。

トレッキングをしていないとき、私の心は動揺し、不安になり、独りでいたがることが多かった。6月初め、メアリーが自分と子どもたちは私の精神状態のせいでとても気を使って生活していると言ったとき、私はおりに入れられた動物のように部屋中を歩き回りながら、彼女に激しい怒りをぶちまけた。メアリーは、もし食ってかかったら殴られると思い、部屋を出たという。

6月27日、私は日記に「脳みそが『レダカン』でおかしくなった」と書いた。レダカンとはインドネシアの言葉で「爆発」という意味だ。メアリーがもし私の日記を目にしたら、怖がるかもしれないと配慮してのことだった。

翌日、私はエディターたちにメールを送り、あまりにストレスを感じるため、仕事を再開できないと伝えた。精神科医も同意見だった。

7月、私の症状は悪化した。ひどいうつ状態に陥ったのだ。まるで霧のなかで生活しているように頭がぼーっとしていた。悪夢も一段とひどくなっていた。最も恐ろしい夢は、武装勢力に追われ、バグダッドの街を走り回っているというものだった。メアリーによれば、就寝中に私の足は、まるで走っているかのようによく動いていたという。眠れるように、私は鎮痛剤のパラセタモールとコデインを服用していた。飲酒もひどくなっていった。ただベッドのなかで終日過ごす、という日もあった。

ナミールとサイードの9年目の命日が近づいたころ、私は2人について、そして当時バグダッド支局長としての自分の行動について深く考えるようになっていた。メールを読み返し、彼らの死を十分に調査したか自問していた。特に、事件から3年後の2010年にウィキリークスが公開した米軍の機密ビデオについて考えていた。そのビデオには、ヘリから銃で彼らが殺害される様子が映し出されていた。

米軍ヘリの攻撃で亡くなったロイターカメラマン、ナミール・ヌル・エルディーン(当時22)の棺。2007年7月バクダッドで撮影(2016年 ロイター/Mohammed Ameen)
米軍ヘリの攻撃で亡くなったロイターカメラマン、ナミール・ヌル・エルディーン(当時22)の棺。2007年7月バクダッドで撮影(2016年 ロイター/Mohammed Ameen)
事件は2007年7月12日の朝に起きた。私は支局にいて、いわゆる「デスク」の仕事をしていた。突然、エントランス付近から悲痛な叫び声が2階建てのオフィスに響きわたった。すぐに何か恐ろしいことが起きたのだと私は悟った。伝えにきた同僚の苦しげな表情を今でも忘れない。別の同僚は、2人が殺害されたことを私に通訳してくれた。

外見的には冷静さを保ち、同僚を慰め、米軍に対応して事件の原因を突き止めることに集中しようとしていた。2人が亡くなる前日には、ロイターのために通訳してくれていたイラク人がバグダッドで銃弾に倒れていた。彼が仕事に現れなかったことで、数日たってようやく彼の死を知ったのだった。(通訳者の両親は名前を明かさないことを望んでいる)

私の内面は、今にも崩れんばかりだった。

ナミールとサイードが亡くなってから数日後、私はノイローゼになったようだった。嘆き悲しむにつれ、支局長を辞任するのが最善の策だと思った。あまりにもストレスがかかり過ぎていた。自分より強い誰かが引き継ぐべきだったが、私はそのまま仕事を続けた。

2010年4月5日にウィキリークスがビデオを公開したとき、私はタスマニアで休暇中だった。誰よりも状況をよく知っていると分かっていながら、この世界的な大ニュースに取り組むのを社内の他の誰かに委ねることになり、私は自分を臆病に感じていた。同ビデオは何百万回も視聴された。

写真はウィキリークスが公開した映像から。
写真はウィキリークスが公開した映像から。
6年以上も悩まされ、私はバグダッド時代の同僚にどう思っているか聞いてみた。全員が、私はできる限りのことをやったと言った。だが、罪と恥の意識が消えることはなかった。

7月後半、私はメアリーにどうしても安らぎが欲しいと伝えた。彼女は私に、精神科の病院ですぐにでも治療を受ける必要があると言った。彼女は「どん底にたどり着いた」と語った。

<17号棟>

それから2週間後、私はメルボルンにあるハイデルベルク・レパトリエーション・ホスピタルのPTSD患者が集められた17号棟のガラス張りのドアの前に立っていた。

私は不安で、自分を無力に感じていた。越えてはならない一線を越えようとしており、精神科病棟に入院するのだと。

「もっと健康になれるだろうか」。メルボルン行きの飛行機に乗る朝、私はこう記した。「もっと賢く、もっと自制がきくようになれるだろうか。家族のために『絶対に』そうならなくては」

入院受付は食堂の隣にあった。入れ墨に覆われた白髪交じりの男性たちが昼食を食べ終えようとしていた。皆、目の下にくまができている。

看護師が私の部屋に案内してくれた。アルコールを所持していないか、荷物をチェックしていいかと聞かれた。私が持ってきた薬を取り上げ、スタッフが時折、抜き打ちで呼気検査をすると言った。もうラムコークが飲めないのか、と私は思った。

17号棟は20部屋あり、オーストラリアの兵士を治療してきた長い歴史をもつ。

私がここに5週間入院した間、ベトナム、イラク、アフガニスタンでの戦争経験者や東ティモール紛争に参加した人たち、警察官や刑務官、そして運悪く犯罪に巻き込まれた一般市民とも一緒だった。施設は施錠されないが、患者は短時間でも病棟を離れる場合は名前を記入しなければならなかった。週末の外泊は許可されていた。

入院した翌日、担当医と2時間のセッションを行った。自分にとって最大の問題は、ナミールとサイードの死に対する罪の意識だと伝えた。支局長として、彼らの安全に責任があったと。そして、ウィキリークスが公開したビデオをめぐる取材を自分が主導しなかった恥ずかしさがあると。

セッションが終わりに近づくと、精神科医は私がトラウマを合理的に分析しようとし過ぎており、感情を十分に吐き出していないと言った。まるで他の誰かについて語っているかのように、私が自分の経験を話していた、と。インドネシアでの爆弾攻撃や津波の取材といったイラク以前のトラウマについては、少し和らいでいる、とも彼女は指摘。PTSDとの診断を下して、私が蓄積されたトラウマを抱えており、うつ病にかかっていると語った。

私は部屋に戻ると、どうやって感情的に対処すればいいのだろう、ただ泣こうとすればいいのか、などと思った。

入院中、ソーシャルワーカーと定期的に面談し、私の感情のまひや、それが結婚生活や子どもたちとの関係をどのように傷つけたかについて話し合った。入院する際に私が書いた目標の1つは「かつての夫と父親だった自分を取り戻す」ことだった。

<リフレクソロジーと「ジェイソン・ボーン」>

グループセッションは、うつや不安、怒りをコントロールし、感覚に負荷がかかり過ぎることにうまく対処する方法など、PTSD治療の基本を網羅している。精神性や心の集中、リフレクソロジーやアートセラピー、クッキングのクラスまである。

私は多くのことを他の患者から学んだ。一部の人は17号棟に入院するのは初めてではなかった。私は記者だが、垣根はすぐに取り払われた。重要なのは、自分が同じPTSDを患う者だということだった。騒音や人混みが嫌いで、人との関係に問題があるというように、他の患者が私と同じような症状があると言っているのを聞くことは効果があった。また、気分が明るくなるひとときもあった。

入院して最初の週末、私は近くの映画館で人気シリーズの最新作「ジェイソン・ボーン」を見ようと思った。だが向かう途中、私は病院に引き返した。映画館が混み過ぎているかもしれないことをなぜか忘れていたのだ。そのことを後で若い看護師に話すと、彼は私を見てこう言った。「もうちょっと高尚なものを見るのかと思った」と。記者もハリウッドのアクション映画を見るよ、と私は答えた。

17号棟に入院した1日目から、私はPTSDや、戦争が兵士や記者や市民に及ぼす影響に関する本を読みあさった。日記も毎日つけていた。

時が経過するにつれ、私は自分が改善していると感じるようになった。

8月28日、私は自分の治療チームにこのようなメモを書いた。「ウィキリークスがあのビデオを公開したとき、私には勇気がなかった。あぜんとし、ショックを受けたが、他の誰かにそれに対応してほしいと思った。他の誰かの問題だが、自分の問題とすべきだった。この気持ちとうまくやっていかなくてはならない」

退院まであと1週間となった9月初め、担当医から17号棟で達成したことを書き出すよう言われた。自分が作成していたリストには、メアリーと正直に向き合うこと、ナミールとサイードの死に関連する自分の行動を受け入れられるようになること、不安とストレスをコントロールするテクニックを身につけること、とあった。

退院にあたっての目標は、帰宅してから当初の期間について現実的な期待をもつこと、ストレスのレベルを管理すること、仕事には徐々に戻ること、アルコールは飲まないことだった。また毎週、心理療法のセッションを受けることになった。

いよいよ9月16日に退院した。家に戻れた気分は何とも素晴らしかった。家族との絆を再び取り戻すと心に決めていた。タスマニアはメルボルンと比べると、とても静かだった。

写真左は8月、17号病棟の外で。右は6月、タスマニアでのトレッキングを楽しむ筆者。提供写真(2016年 ロイター)
写真左は8月、17号病棟の外で。右は6月、タスマニアでのトレッキングを楽しむ筆者。提供写真(2016年 ロイター)
<1歩後退>

17号棟を出る前、私の治療チームは、回復のペースについて2歩進んで1歩下がると教えてくれた。

9月23日は、まさに「1歩下がった」日となった。

私は近くの町ローンセストンで、メアリーが迎えにくるのを待っていた。そのとき、公立図書館近くで警報が鳴り響いた。「緊急事態。避難下さい」と、その録音された音声は告げていた。冗談だろ、と私は思った。ヘッドホンは持っていなかった。放送は10分も続いた。落ち着け。深呼吸しろ。

午前半ばごろに帰宅すると、私はベッドに舞い戻った。そしてマイケル・ハー氏の「ディスパッチズ─ヴェトナム特電」を読み終わった。登場する記者たちの行動は、私にイラク時代を思い起こさせた。私は彼らに比べると弱虫だった。

遠足に出かけた娘を2時ごろに迎えに行くため、ベッドから這い出た。帰宅すると、飼っている犬が下痢をして、どっさりとフンが床にあるのを発見した。ひどい悪臭を放っていた。私は自分のバランスが崩れ始めるのを感じた。

これもまた、ベッドに戻る良い口実となった。

すると今度は庭師が芝刈りにやって来た。6カ月ぶりなので、芝は伸び放題だった。庭師は芝刈り機ではなく、大きな草刈り機を取り出した。その音は、バグダッド上空を飛んでいた偵察ヘリを思い出させた。私は頭痛がし始めた。

17号棟から退院して1週間が経過していた。蜜月期は終わったのか。私は自分に問いかけた。再び孤立し始めていると感じた。メアリーに今日は「1歩下がる」日だったが、それよりも悪い感じがすると伝えた。彼女が案じているのが伝わってきた。

翌日もひどい気分が続いていたが、めい想するため仏教寺院を訪れた。45分ほど座禅を組んで起き上がると、エネルギーが戻っているのを感じて驚いた。

そして私はこの記事を書き始めた。書くことには精神を浄化させる作用がある。17号棟での最初の日々では、セラピーを受けている間、貧乏ゆすりが止まらなかった。不安の表れであったのだろう。だが書いていると、それは止まったのだ。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
 
http://s3.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20161115&t=2&i=1161769349&w=&fh=&fw=&ll=780&pl=468&sq=&r=LYNXMPECAE0UJ


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http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/515.html

[経世済民116] 残業ゼロがすべてを解決する (第1回) 武蔵野からついに出た 「犯罪者の正体」とは?
残業ゼロがすべてを解決する
【第1回】 2016年11月29日 小山 昇
武蔵野からついに出た
「犯罪者の正体」とは?
小池百合子都知事が「夜8時には完全退庁を目指す」、日本電産の永守重信社長が「2020年までに社員の残業をゼロにする」など、行政も企業も「残業ゼロ」への動きが急加速している。
電通過労死事件で強制捜査が入ったいま、中小企業も大企業もお役所も「残業ゼロ」に無関心ではいられない「シビアな時代」となった。
株式会社武蔵野は、数十年前、「超ブラック企業」だった。それがいま、日本で初めて日本経営品質賞を2度受賞後、2014年からの残業改革で「超ホワイト企業」に変身した。
たった2年強で平均残業時間「56.9%減」、1億5000万円もの人件費を削減しながら「過去最高益」を更新。しかも、2015年度新卒採用の25人は、いまだ誰も辞めていないという。
人を大切にしながら、社員の生産性を劇的に上げ、残業を一気に減らし、過去最高益を更新。なぜ、そんなことができるのか?
12月2日に発売される注目の書籍『残業ゼロがすべてを解決する――ダラダラ社員がキビキビ動く9のコツ』の小山昇社長に、その秘密を語ってもらった。

アロハシャツにバミューダパンツ、
営業車に乗ってサーフィン!?


小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/
 私が株式会社武蔵野の社長に就任したのは、バブル絶頂期の1989年です。

 当時の武蔵野は、とにかく猛者揃い。学歴も高く、中卒が2人で、残りは限りなく中卒に近い高卒でした(笑)。

 幹部の16人中5人は、元暴走族でした。
「多摩地区全域をシメていたスケバン」も、「世代を超えた伝説の特攻隊長」として名を馳せた強者もいた。

 アロハシャツにバミューダパンツで出社し、営業車に乗ってサーフィンに出かける社員もいました。

 また、あろうことか、営業社員の20%は、社内でなんらかの不正に関わっていました。
 当時の社員は不良ばかりで、仕事熱心とは言いがたかった。
 けれど、そんな彼らが、唯一「戦力」として活躍するときがありました。
 どんなときだと思いますか?

 ライバル会社との「縄張り争い(シェア争い)」のときです。
 今だから書けますが、当時はこんな毎日でした。

 ライバル会社の営業車を見つければ、いたずらをする。
 前後左右をわが社の車で取り囲んで動けなくする。
 ライバル会社の営業マンを見つければ、尾行する。
 武蔵野の縄張りに近づいてきたら、

「こちら側に一歩でも入ってきたら、どうなっても知らない。けれど、今すぐ引き返せば、何もしない」

 と脅しをかける。
 ライバル会社のオフィスに、「野球」をやりにいった社員もいます。

 敵陣に押しかけて、「みなさんと一緒に、野球をやりにきただけですから」と言いながら、バットを振り回す。
 そして、「これからは、1000円のマットを500円で扱わないでね。よろしく!」と宣戦布告する。

 25年前の話でもう時効ですが、わが社の社員は、武闘派ばかりでした。
 普通の会社の社長なら、「警察沙汰にでもなったらどうしよう」「犯罪者が出たらどうしよう」と怖じ気づいたでしょう。

 けれど、私はまったくうろたえなかった。

 なぜなら、私こそ、社内一の武闘派だったからです。

「ライバル対策は、武蔵野のお客様を守るための活動だ」

 と屁理屈をこね、

「捕まっても助けてやるから、思う存分ライバルを潰せ」

 と言って社員をたきつけたのは、社長の私です。
 シェアを奪うためには無茶もたくさんしましたが(私たちも、ライバル会社から同じような仕打ちを受けました)、社員が警察に捕まったことも、ライバル会社から訴えられたこともなかった。犯罪者も出ていない。

 元暴走族と言ってもバカではありませんから、やっていいことと、やってはいけないことのギリギリの線引きはわきまえていました。

たったひとりの犯罪者とは?

 ところが、驚いたことに、たったひとりだけ、犯罪に手を染めた人物がいた。

 武蔵野は「日本経営品質賞」(公益財団法人日本生産性本部が創設した企業表彰制度、武蔵野は日本で初めて2度受賞)へのチャレンジを機に(1997年)、社員教育にさらに力を入れ、大きく変わりました。

 今では、卑怯な手を使うことも、腕力に頼ることもありません。

 でも、その人物だけは、数年前まで、罪を犯し続けていました。

「その人物」とは、いったい誰だと思いますか?

 何を隠そう、武蔵野の社長、小山昇です。
 犯罪を犯していたのは、「私」でした。

 犯罪と言っても、刑法や民法で裁かれるような犯罪を犯していたわけではありません。
 私の罪状は、言うなれば、

「社員の残業を容認した罪」。

 けれど、当時の私には、「犯罪を犯している」という意識はありませんでした。
 なぜなら、

「残業は、減るはずがない」
「社員が遅くまで仕事をするのは当然だ」
「残業を減らせば、会社の利益も減ってしまう」

 と思い込んでいたからです。

 でも、私の考えは間違っていました。

 残業が増えれば、人件費や固定費が増えて、会社の経営を揺るがします。
 残業が増えれば、訴訟リスクが増えます(→本書に飲食店の実例あり)。
 残業が増えれば、社員の健康を損ないます。
 残業が増えれば、新卒社員がどんどん辞めていきます。

 私は、会社にも社員にも、大きなリスクを負わせていたのに、残業を防ぐ努力をまったく怠っていた。

 実際に、「社員の残業を容認した罪」という罪状はありませんが、これは、犯罪と同じです。

 私は常々、経営サポート会員(武蔵野がコンサルティングをしている会社)を集めては、「社長の無知は犯罪である」と説いていたのに、そんな私が罪を犯していたのだからお恥ずかしい限りです。

 次回からの連載では、「残業ゼロ」への取り組みを紹介していきましょう。

小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/
http://diamond.jp/articles/-/109420
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/249.html

[経世済民116] 「すぐ辞めるバイト」は何を考えているのか? データで見るアルバイトの「早期離職」
人手不足の時代に本気で考える アルバイト人材育成
【第19回】 2016年11月29日 中原淳 [東京大学 大学総合教育研究センター 准教授]
「すぐ辞めるバイト」は何を考えているのか?
データで見るアルバイトの「早期離職」
(スタッフ)「あれ?店長、なんか暗いですけどどうかしましたか?」
(店長)「じつは、先月入った学生バイト君から『辞めたい』って電話があってね…」
(スタッフ)「え?『彼は見どころがある。一人前に育ててみせる!』って意気込んでたのに…」
(店長)「僕って人を見る目がないのかなあ」

アルバイト採用後、わずか1ヵ月も経たないうちに辞めてしまう早期離職。これこそがまず店長として「出口対策」を考えるべきポイントだ。早期離職率が高い職場には、どのような特徴が見られるのだろうか?また、辞める人たちにはどんな心理が働いているのだろうか?最新刊『アルバイト・パート[採用・育成]入門』から一部を紹介する。


早期離職によるロスは甚大


中原淳(なかはら・じゅん)
東京大学 大学総合教育研究センター 准教授/東京大学大学院 学際情報学府(兼任)/大阪大学博士(人間科学)
1975年北海道旭川生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、米国マサチューセッツ工科大学客員研究員などを経て、2006年より現職。
「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、リーダーシップ開発について研究している。専門は経営学習論・人的資源開発論。
著書・編著に『アルバイト・パート[採用・育成]入門』『企業内人材育成入門』『研修開発入門』(以上ダイヤモンド社)など多数。

パーソルグループ
日本最大級の総合人材サービスグループ。本書においては、同社のシンクタンク・コンサルティング機能を担う株式会社パーソル総合研究所が、中原淳氏とともに大企業7社8ブランド・約2万5000人に対する大規模調査と各種分析・示唆の抽出を実施している
アルバイトの内定辞退も困りますが、新人研修をしたり、現場での仕事をOJTで教えたりしたあとに、辞められてしまうケースのほうが店長としてはガックリくるのではないでしょうか。

以下では、採用後1ヵ月未満でアルバイトを辞めることを早期離職と定義しています。人手不足に悩まずに済むようになるためには、まずこの早期離職を減らす必要があります。

採用したばかりの新人は、仕事のパフォーマンスの点でも周りのスタッフに及びませんし、仕事を覚えるまでは店長や教育係が教える必要がありますから、職場全体の作業効率を一時的に低下させます。つまり、新人アルバイトは開始1ヵ月未満の期間だけを切り取ってみれば、1人分の働きをすることはまず期待できないのです。

それでも新人を雇うのは、その人が次第に成長することで、職場を助けてくれる心強い仲間になってくれるからです。新人のときにみんなの足を引っ張った分、将来それを取り返してくれることを期待しているわけです。

そう考えてみると、アルバイトの早期離職はきわめて非効率だと言えます。せっかく周囲のスタッフが新人教育の時間を割いても、その「投資」はまったくリターンを生みません。採用にかかった金銭的コスト、教育にかかった時間的コスト、そして再び起こる人手不足によるスタッフのモチベーション低下、新たな求人を出すためのコストなど、そのマイナスには計り知れないものがあります。

離職者の22%は「1ヵ月未満」で辞めている!?

しかし、人手不足に悩んでいる店長ほど、早期離職の食い止めに意識が向かっていません。まずはこの“出血”を止めることから、すべての出口対策ははじまります。

まずは、この早期離職の実像をつかんでおくことにしましょう。「かつてアルバイトをしていたけれど辞めてしまった」という人に、「どれくらいの期間で離職したのか?」を尋ねてみました。その結果が下の図です。

■1ヵ月未満で離職した人の割合(性別・属性別)


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じつに離職者全体の約22%が1ヵ月未満で辞めています。属性別に見ると、早期離職率がいちばん高かったのは高校生(29.3%)、いちばん低かったのは主婦(17.5%)でした。つまり、高校生バイトの3割は1ヵ月未満で仕事を辞めてしまうということです。

しかし、これだけで「学生はすぐ辞める」などと言い切ることはできません。というのも、もともと高校生は春休みや夏休みの期間限定でアルバイトをするケースが多いからです。大学生ほか(短大・大学・専門学校生など)についても同様の理由で、数字が高く出ている可能性を考慮するべきでしょう。

そもそも、最初から「すぐ辞めることになっても仕方ない」と考えているアルバイトは多くありません。つまり、早期離職は職場にとってだけでなく、スタッフ当人にとってもハッピーとは言えない出来事なのです。

実際、多くの人がアルバイト仕事を探すうえでは「安定して長く働き続けられそうかどうか」を重視していることがわかっています。下のデータを見てください。これは「仕事についての考え方」を調査した結果です。

■「長く続ける」重視か、「いろいろ経験」重視か


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このとおり、全体としては6割以上が「1つの仕事を長く続けたい」と考えています。10代に限って言えば、経験が少ない分、「いろいろな仕事をしてみたい」という気持ちのほうが強く出ていますが、やはり最初からすぐ辞めるつもりでアルバイトをはじめる人は決して多くないのです。店長としても、この気持ちに「育成」で応えていかなければなりません。

ある外食チェーンの店長のYさんは、求人の方針について「横綱以外は誰でも採用します!」という言葉を語っていました。これは「応募してくれた人は全員採用する」という意味ですが、なぜここまで大胆なことを言い切れるのでしょうか?これに対し、Yさんはこう答えていました。

「ウチに入ったアルバイトは、全員、必ず一人前に育てる覚悟と自信があるからです」

実際、Yさんのお店のアルバイトの定着率の高さは群を抜いていました。どんな人が応募してくるかは、店長にとってコントロールしづらい事柄ですが、入社に至ったアルバイトが長続きするかどうかは、店長の工夫次第でかなり下支えできるということでしょう。

「ほかの選択肢」があると、躊躇なく辞める

早期離職の引き金となる要素はほかにもありそうです。辞める理由をあれこれと尋ねてみたら「じつは、近くの○○でバイトをすることになりまして…」などと言われたことはないでしょうか?

実際、アルバイトの早期離職率は「次の職を見つけやすいかどうか」によっても左右されます。調査によると、周辺の競合するアルバイト先の数が多ければ多いほど、1ヵ月未満で「辞めたい」と考える人の割合も多くなっていました(下図)。

■競合職場数と早期離職への意識


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ここからわかるとおり、求人時点だけでなく、採用後にも、ほかの職場との競合関係は続いています。せっかく競争に打ち勝って、優秀なアルバイト人材を獲得できたとしても、新人受け入れに失敗すれば、その新人はほかの職場に流れてしまう可能性があるのです。

データを見てわかるとおり、周囲に競合店が5軒以上ある場合は、競合店がまったくない場合(0軒)に比べて、早期に「辞めたい」と考えた人の割合が2倍以上になっています。アルバイト先が密集していたり、交通の便がよかったりする都心部のほうが、注意が必要だと言えるでしょう。

「すぐ辞めない=不満がない」とは限らない!!

このように、アルバイトが1ヵ月未満で早々に辞めてしまうときには、単に仕事への不満といった理由だけでなく、「次の職場を簡単に探せそうか」というような外部要因も大きく関係しています。裏を返せば、早期離職しなかったからといって、そのスタッフが不満を持っていないかというと、そんなこともないのです。この点をもう少し深掘りしてみましょう。

先ほどの図で見たように、1ヵ月未満での離職率が最も低い属性は「主婦」でした。一方、「入社1ヵ月未満で辞めたいと思いましたか?」という質問をすると、下図のような結果が出ました。

■早期離職を検討した人の割合(性別・属性別)


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なんと、主婦は1ヵ月未満で辞めたいと感じている割合がいちばん高かったのです(32.3%)。ここから言えるのは、主婦はかなり早い段階で職場に不満を持ちながらも、辞めずに“我慢”する傾向があるということでしょう。

なぜ主婦は「辞めたい」と感じながらも、実際の早期離職に至らないケースが多いのでしょうか?そのヒントになりそうなのが、下図のデータです。

■アルバイト選びにかけたい期間


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主婦は学生やフリーターよりも比較的長い時間をかけて仕事選びをしています。すでに見たとおり、家族を最優先する主婦は、自分の生活時間に合わせて働けることを重視しますから、通勤のしやすさや勤務時間帯など、いろいろな条件をじっくりと吟味して職探しをしています。そこでしっかりと時間をかけて選び抜いた分、多少の不満があっても、衝動的にアルバイトを辞めたりはしないのではないかと考えられます。

では、「次のアルバイト先の探しやすさ」といったこと以外に、どんな要因が早期離職を誘発しているのでしょうか?

先ほども見たとおり、アルバイトをしている人の30.5%は、入社1ヵ月未満で「辞めたい」と感じています。では、実際に辞めてしまう人と辞めずに続ける人の差というのはどこにあるのか?次回はこのあたりを次に探っていきましょう。

まとめ
□1ヵ月未満の早期離職者は離職者全体の約22%
□全体としては「1つの仕事を長く続けたい」という傾向が強い
□周辺の競合数が多いほど、早期離職を考える人の割合も多くなる
http://diamond.jp/articles/print/106558
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/251.html

[経世済民116] OECD、日本の16年成長率0.8%に 日銀緩和の継続求める   銀行決算で当局が問題視するマイナス金利の損失穴埋め策 
2016年11月28日 
OECD、日本の16年成長率0.8%に 日銀緩和の継続求める

[東京 28日 ロイター] - 経済協力開発機構(OECD)は28日、世界経済見通しを公表し、日本の2016年の実質成長率を9月時点の前年比0.6%から同0.8%に引き上げた。

今夏の経済対策などが円高の影響を抑えていると指摘したうえで、個人消費が成長をけん引するとの見通しを示した。日銀には2%の物価目標達成に向けて金融緩和の継続を求めた。

17年の実質成長率は1.0%(9月時点は0.7%)と緩やかな成長を見込んだ。

OECDは、政府の経済対策がもたらす効果を評価する一方、財政健全化の取り組みは「一時休止した」と指摘。

少子高齢化を背景とした将来的な社会保障費の増加を踏まえ、財政の持続性を確保するためには、消費税率の段階的な引き上げに加え、所得税や法人税の課税ベース拡大などによって税収増を図る必要があるとの見方を示した。

今回新たに発表した18年の成長率は、経済対策の効果がはく落することを想定し、0.8%とした。

一方、日銀が導入したイールドカーブ・コントロール(YCC)は「国債購入量の柔軟性を高めるもの」と報告書に明記した。オーバーシュート型コミットメントと合わせ、「物価が2%の目標を安定的に超えるまで金融緩和を維持すべき」とした。

世界経済の見通しは、16年の成長率を2.9%(9月時点は2.9%)、17年を3.3%(同3.2%)、18年は3.6%と予測した。
http://diamond.jp/articles/-/109590


OECD:17年成長率予想を上方修正、トランプ政権への期待織り込む
Mark Deen
2016年11月28日 19:28 JST
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18年は11年以来の高成長の見込み
全ての主要国・地域の17年成長見通しを引き上げ
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経済協力開発機構(OECD)は2017年の世界成長率予想を上方修正し、また18年は7年ぶりの高成長に達すると予想した。トランプ次期米大統領が表明している減税と支出拡大の政策が米国および世界の成長を押し上げるとみている。
  28日発表の半期経済見通しによると、17年成長率予想は3.3%と9月時点から0.1ポイント引き上げられた。18年は3.6%と11年以来の高成長が見込まれている。
  OECDは、11月8日の米大統領選挙でのトランプ氏勝利を受けて「マクロ経済政策の方向性が大きく変化するとの期待が広がった」とし、「米国の最終需要増大が輸入の伸びを加速させる」結果、「世界の成長率は17年に約0.1ポイント、18年に0.3ポイント程度押し上げられるだろう」と分析した。
  OECDは全ての主要国・地域の17年成長見通しを引き上げた。
  米国については17年に2.3%、18年に3%の成長を予想。ユーロ圏はそれぞれ1.6%と1.7%を見込んでいる。中国は6.4%と6.1%、日本は1%と0.8%を予想した。
  OECDのチーフエコノミスト、キャサリン・マン氏は報告で「世界経済は過去5年間、低成長のわなに陥っていた」とし、これを脱することができるかどうかは「金融当局以外の政策選択にかかっている」と記述。財政出動と構造改革の必要性を指摘した。
原題:OECD Lifts Global Growth Forecasts on Expected Trump Stimulus(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-28/OHCJV46JIJUW01


 


2016年11月29日 週刊ダイヤモンド編集部
銀行決算で当局が問題視するマイナス金利の損失穴埋め策
銀行業界がマイナス金利政策にどっぷり漬かってから初めての中間決算が出そろった。今年2月に導入され、銀行の業績に大打撃を与えるといわれたこの政策の影響度に注目が集まったが、金融庁は銀行がどのようにそれを穴埋めし、決算数字をつくったかに注目。その視線には、かつての銀行業界の常識を覆す問題意識もうかがえる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

http://diamond.jp/mwimgs/7/e/-/img_7ef7414944ce28921b4ce18da6f6f787327524.jpg

11月18日、銀行の融資姿勢改革などを議論する「金融仲介の改善に向けた検討会議」が開催された、金融庁の庁舎 Photo by Takahisa Suzuki
 11月18日、金融庁と外部の有識者たちによる非公開の会議が開催された。銀行の融資姿勢改革などを議論するその会議での議題の一つとして挙がったのが、11月下旬に出そろった銀行業界の中間決算だ。

 今年2月に日本銀行が導入し、銀行の業績に大打撃を与えるといわれてきたマイナス金利政策。その影響をもろに受けた初の中間決算の結果は厳しいもので、当期純利益を見ると、3メガバンクグループはいずれも減益。地方銀行も多くが減益に陥った。ただ、会議での論点は決算結果そのものよりも、マイナス金利政策の悪影響をいかに銀行が穴埋めしたかという点に比重が置かれた。

 現在、監督官庁の金融庁が銀行に求めていることは大きく二つ。顧客目線での経営の徹底と、今後も生き残ることができる持続可能なビジネスモデルの構築だ。すぐには結果が出ない難問だが、今回の中間決算において答えの萌芽が見えるかどうかを、会議の参加者たちは見極めようとしたのだ。

 しかし、結論から言えば、ほとんどの銀行は会議参加者のお眼鏡にかなわなかったようだ。

 今回の中間決算でも、近年の銀行の好決算を演出してきた手法が多用されていた。国債や株式などの有価証券を売って、抱える含み益を利益として計上する手法だ。

 その最たる例が、筑邦銀行(福岡県)と豊和銀行(大分県)の2行だ。筑邦銀行は当期純利益5.05億円の116%に当たる5.86億円を国債等債券損益で稼ぎ出した。そして、豊和銀行は当期純利益1.44億円の2倍超となる3.05億円を株式等関係損益で、含み益を吐き出している。

 また、これら小規模地銀だけでなく、各地域のトップ地銀も同様の手法を用いている。静岡銀行は当期純利益127億円の97%に当たる123億円を国債売買損益で、鹿児島銀行は当期純利益56億円の77%に当たる43億円を株式等関係損益で計上しているのだ。

 有価証券の含み益で決算の数字をつくることには何の問題もない。ただし、「打ち出の小づちは何回も振れない」(会議の参加者)。“お宝”有価証券が手元になくなれば、同じ手は使えないからだ。

 また、リターンとリスクは裏腹なのが投資運用の世界。「高度なリスク管理能力を持つ体制を構築できれば、有価証券運用も持続可能なビジネスモデルになり得るが、その水準に達している銀行はほぼない」(金融庁幹部)。

「日本型金融排除」を行う
銀行を探すフィルター候補浮上

 冒頭の会議では、もう一つの決算穴埋め役、与信コストの戻り入れ益にも話が及んだ。銀行は貸し倒れに備えて貸倒引当金を積むが、融資先の倒産や業績悪化が想定よりも少なければ、利益として戻る。それが戻り入れ益だ。

 バブル崩壊後、大量の不良債権を抱えた銀行業界はその“膿”を吐き出し、不良債権比率や与信コストが低いほど健全性が高く、いい銀行とされる時代が続いた。

 しかし、今度は反動で過度にリスクを取らない銀行の姿勢が問題化。金融庁は銀行が担保に依存し、将来性のある企業に融資しないことを「日本型金融排除」と呼び、その撲滅を掲げている。そして、ある金融庁関係者は与信コストの戻り入れ益の水準が「日本型金融排除を行っている銀行を探すフィルターになる」とみているのだ。

 戻り入れ益の発生原因は主に3パターン。ベストは、銀行が経営難の融資先を支援して再建を果たし、貸し倒れリスクが低くなることによる発生だ。企業の自助努力による業績回復での発生もある。

 問題は、銀行による貸し渋りと貸し剥がしが原因の場合だ。銀行が目利きを放棄し、リスクの高い企業に貸さず、既存の融資を引き揚げれば、戻り入れ益で収益は潤う。だが、銀行のあるべき姿とは正反対だ。フィルターでこの問題ケースを拾いやすくなるという。

 この問題意識は不良債権をめぐるパラダイムシフトを意味する。金融庁が不良債権や与信コストを「量」ではなく、「質」で見極める時代に突入しているのだ。


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 表は、今期中間決算での当期純利益に対する与信コストの戻り入れ益の割合による上位20行ランキングだ。名前が並ぶ銀行は玉石混交で、融資先支援に励む理想的な銀行か、日本型金融排除の片棒を担ぐダメ銀行か、数字だけでは区別できない。ただ、金融庁幹部らは「経営者の顔を思い浮かべれば、どちらの銀行かすぐ分かる」といった会話を交わしている。

 くしくもドナルド・トランプ次期米大統領も経営者としての経験から、過度な金融規制が銀行の貸し渋りを招いているという問題意識を持つと取り沙汰されている。

 銀行に対する規制や監督の方針は、日本だけでなく世界でも揺れ動く大きな転換点にある。
http://diamond.jp/articles/-/109485


 


http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/253.html

[国際16] 大統領選を決した米国の「格差と対立」をデータで見る 貧しく寿命短い地域ほど 国民皆保険に反対 二極化する進化観 地域格差
本川裕の社会実情データ・エッセイ
2016年11月29日 本川 裕 [統計データ分析家]
大統領選を決した米国の「格差と対立」をデータで見る
 トランプ候補が勝った米国大統領選挙の出口調査で、地域別には、都市部でのクリントン有利に対して地方でのトランプ有利が目立っていた点については、前回述べた。

 この度の大統領選の特色として、学歴や所得水準や地域による米国国民の間で広がる分断がしばしば指摘される。今回は、大統領選であらわになった米国の深刻な地域格差についてふれてみよう。

http://diamond.jp/mwimgs/8/1/650/img_8111f4c6963a5f70ce6c5dbc6984b352499921.jpg
◆図1 米国大統領選の州別結果と州別の平均寿命


©本川裕 ダイヤモンド社 禁無断転載
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 従来から、北東諸州や西海岸カリフォルニア州などの東西沿岸都市部が民主党の地盤であり、また、内陸の中西部や南部が共和党の地盤となっており、党のイメージカラーから、前者は、ブルー・ステート、後者は、レッド・ステートと呼ばれている(図1参照)。

 もともと、レッド・ステートは、相対的に人口が少ない州が多く、人口1人当たりの票の重みで有利な点が知られており、今回の大統領選でも、全国的な得票数ではかなり上回ったクリントン候補が、獲得した選挙人数で敗退したのもそのせいである。

 今回は、さらに、図に見られる通り、製造業の不振で地域が落ち込んでいるオハイオ州やペンシルバニア州などラストベルト(ラストは金属のさびのことで使われなくなった工場や機械を表現)の州をはじめとする5つの州で、民主党から共和党への転換が生じ、これがトランプ候補勝利を決定づけたといってよい。

 ブルー・ステートとレッド・ステートの地域分布は、健康格差の代表指標である平均寿命の長短に関する地域分布とかなり重なっている。今回、民主党から共和党に転換した5州は、従来からのレッド・ステートと比べると、平均寿命が比較的高い地域が多くなっており、地域の性格としては両方の境界にあるような州が、新たに共和党へと転換したのだということが分かる。

健康格差と所得格差
日本との比較

 一般に、人間の寿命は、所得水準が向上すると伸びていく傾向にある。時系列的には、どの国でも、経済が成長すると貧しい時代と比較して長寿になってきたし、また、現在時点の国際比較でも、豊かな国ほど平均寿命は長いことが明らかとなっている。

 しかし、平均寿命に関する国内の地域格差は、国全体の所得水準が向上しても、残存する場合があり、米国がその典型である。

 米国の平均寿命は、経済が発展した先進国の中で、もっとも短い点がよく知られているが、これは、国内の地域的な健康格差の大きさによってもたらされている。その理由は、国内の所得格差そのものがなお大きいためであり、また、所得格差があっても健康格差を生じさせないような制度的な仕組み、すなわち国民皆保険を米国が例外的に普及させてこなかったせいでもある。

 この点を、分かりやすく理解するために、上で示したマップによる州ごとの状況を日本の地域状況と対照させながら散布図であらわしてみよう(図2参照)。X軸には、1人あたりの地域GDPであらわした所得水準をとり、Y軸には、平均寿命の男女計の値をとっている。地域別の所得格差と健康格差の状況を一挙に見て取ることができよう。また、米国については、今回の大統領選の州別結果もマークの色であらわした。

http://diamond.jp/mwimgs/e/f/650/img_ef84788d30d7336aa888f4b8002c5081160931.jpg
◆図2 米国に置ける大きな地域格差と2016年米国大統領選
(日本の地域格差との比較)


©本川裕 ダイヤモンド社 禁無断転載
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 特徴点は以下の5点にまとめられよう。

(1)所得格差(所得水準のばらつき)は東京をふくめると日米でそう変わりがないが、東京を除くと、日本の方が格差が小さいといえる。

(2)平均寿命の水準は日本の各地域が米国の各州を明らかに上回っている。日本で最も平均寿命の短い青森県でも米国で最も平均寿命の長いハワイ州を上回っている。

(3)健康格差は日本の方が明らかに小さい。日本の都道府県の寿命の差はほぼ2歳の範囲に収まっているが、米国の場合は、州により7歳ぐらいの差がある。

(4)日本の場合は分布の状態に右上がりなどの傾向は認められず、地域別の所得水準の差は健康格差にむすびついていない。まさに国民皆保険のもたらす効果といえよう。これに対して、米国の州の場合は、右上がりの傾向、すなわち、所得水準が高いほど平均寿命が長くなるという傾向が認められる。これは貧困層ほど無保険者が多く、適切な医療が受けられていないのが主因と考えられる。

(5)所得が低く、寿命も短い州ほど、共和党を支持するレッド・ステートが多く、逆に、高所得で寿命の長い州ほど民主党を支持するブルー・ステートが多い傾向が認められる。

貧しく寿命の短い地域ほど
国民皆保険に反対という皮肉

 公約としてオバマ大統領が推進してきた健康保険制度改革(いわゆるオバマケア)は、貧しかったり既往症があると健康保険に加入できないという状況をなくすため、原則として国民全員に何らかの医療保険の加入を義務付けることにより、無保険者の人数を減らして、高額に跳ね上がっている医療費を抑制するとともに、地域的な健康格差を欧州や日本にならって縮め、国全体の平均寿命も先進国として恥ずかしくない水準にまで高めようとする政策だった。

 ところが、公的な国民皆保険への一本化が保険業界の反対などで頓挫し、民間保険活用型の強制加入制度となったため、保険料について政府の補助を受けられる低所得層はよいとしても、中間所得層などでは保険料負担がかえって重くなった。このため、大方から改革失敗とみなされるに至っていた。

 オバマケアの失敗に対して、クリントン候補に民主党の予備選で敗退した左派のサンダース候補などは、欧州や日本のような公的な国民皆保険への転換という抜本改革を掲げたが、保守党の従来からの主張を受け継いで、選挙戦中にトランプ候補はオバマケアじたいの廃止を公約として掲げた。トランプ次期大統領は、大統領就任後にまず取り組むと宣言している政策のひとつとして医療保険改革の廃止を掲げているので、今回の政権交代で、健康格差解消へ向けた取り組みが頓挫することは、まず、間違いなかろう。

 本来の意図にそった医療保険改革であれば、もっとも恩恵を受けるはずの寿命の短いレッド・ステートで、かえって改革に反対する投票行動をとったという状況があまりにも皮肉である。

 これは、もはや、利害の問題ではなく、文化の違いの問題なのではないかと思わせる状況である。米国における平均寿命の地域格差は、必ずしも、所得水準や無保険者の割合だけで生じているわけではない。例えば、他殺率なども、レッド・ステートでは文明国としては異例なほど高くなっている。そこには、太く短く生きようとする文化と細く長く生きようとする文化の対立があるのかもしれない。

 そうだとすると、オバマケアの審判という側面の強かった今回の大統領選では、老い先短い我々が、長生きするあいつらの健康保持のために、高い保険料を払わされたのではたまらないという気持ちがレッド・ステートの人びとに生じて、政権交代を促進したのかもしれない。

米国内の文化上の地域対立
その歴史的由来

 レッド・ステートでは、銃の所持や死刑制度、小さな政府、キリスト教福音主義、「家族の価値」、性的厳格さなどを支持し、ブルー・ステートにおける犯罪者や敵対国家に対する寛容、政府への信頼、頭でっかちな世俗主義、男女同権、あるいは同性愛など「性的放縦さ」の許容を理解しがたいと感じる者が多い。ブルー・ステートでは、全く、逆であり、レッド・ステートの考え方は、歴史を逆戻りさせるものだと感じている者が多い。

 進化論に対する見方は、こうした文化対立の象徴的な例であろう。図3に掲げたとおり、米国の共和党支持層は、進化の存在を信じていない者の方が多く、進化があったことを信じているものが3分の2を占める民主党支持層と対照的である。この結果、米国人は全体として、先進国の中で、進化があったことを信じない者がもっとも多い国なのである。

 また、これは単に、米国人が時代遅れなためではない。2009年から2013年への変化を見ると、民主党支持層では進化を認める者が増えているのに対して、共和党支持層では、むしろ、減っているのである。国内の文化対立の亀裂が深まっているため、米国人が全体として事実の正しい認識から遠ざかってしまっていると考えざるを得ない。

◆図3 米国人の二極化する進化観
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©本川裕 ダイヤモンド社 禁無断転載
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 何故、このような地域的な文化対立が生じてしまったのであろうか。

 スティーブン・ピンカーは「暴力の人類史」の中で、「文明化のプロセス」をたどって、暴力に満ちあふれた時代から人類社会が脱却していく道筋を叙述しているが、米国では地域により2つの異なる方式が採用されたことが現代の政治的な国内分裂を生んだと分析している。私は、これが、米国国内の大きな地域差の由来を説明する大きなカギだと思っている。ピンカーはこういっている。

〈私は、この「文化戦争」が、アメリカという国が二つの異なる文明化プロセスをたどった歴史の産物ではないかと考える。アメリカ北部はヨーロッパの延長であり、中世から始まった宮廷と商取引を原動力とする文明化プロセスを引き継いだ。これに対して南部と西部は、開拓時代に無政府状態にあった地域で生れた名誉の文化を維持し、行き過ぎた部分は教会や家族、禁酒といった独自の文明化の推進力でバランスを保ってきたのだ〉(上巻p.205)。

 ここで、文明化プロセスの原動力とされている「宮廷」とは中世の王宮の廷臣の間で礼儀をわきまえる習慣が形成されたことを指し、「商取引」とは、近代への歩みの中で、つぶしあいの土地経済から相互利益の商取引へと富の源泉が変化したことを指す。米国北部は欧州における成果を引き継いだのに対して、中世を残した欧州へき地からの移民が多かった南部と西部では、暴力からの脱却を一から始めなければならなかったという訳である。

 文化的に二分された米国をみずから認めている米国人でもその根拠については無自覚らしい。〈アメリカのレッド・ステートで宗教や「家族の価値」が神聖視されているのも、もとはといえばカウボーイの町や鉱山労働者の飯場でいさかいを起こす荒くれ者どもをなだめるための戦術だったからであることは、もはやすっかり忘れられている〉(下巻p.16)。

日本とはまったく違う
文化背景による政治状況

 私は、米国の共和党支持層では、進化論を否定する考え方が多数を占めるという前掲のデータを知って、どうしてもその事実が信じられなかったが、米国の西部劇映画などにもうかがわれるレッド・ステートにおける恐るべき暴力社会からの脱却が、宗教に丸ごと帰依する以外の方法では難しかったことの反映だというピンカーの説ではじめて何となく納得できるようになった。

 米国大統領選におけるトランプ勝利についての我が国のインテリや社会運動家に見られる典型的な論調は、トランプ候補の勝因となった現状の政治や経済のシステムに対する米国民のうんざり感は、閉塞感がまん延する日本でも無縁ではなく、米国と同様に、既成政治家を排除する下からの圧力が高まり、いわゆるポピュリズムを特色とする政治指導者に道を開く可能性が否定できないという考え方であるが、これまで見てきた日米の地域格差についての大きな状況の違いや日本では信じられないような米国における文化対立の存在を踏まえると、日米が同じような政治状況にあるとはどうしても見られない。
http://diamond.jp/articles/print/109509
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/531.html

[経世済民116] トランプバブル崩壊でドル98円へ、市場は「はき違えている」とUBS ユーロ5年内に崩壊 米金利は行過ぎ 来年は日本株の年
トランプバブル崩壊でドル98円へ、市場は「はき違えている」とUBS
野沢茂樹、Kevin Buckland
2016年11月29日 06:00 JST

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トランプ氏の勝利後、円相場予想を上方修正−3カ月後に102円
良いところ取りで絵を描いているが誤解に近い、と居林氏
 
市場はドナルド・トランプ氏の唱える「アメリカ・ファースト(米国最優先)」の影響をはき違えている−。預かり資産が約2兆ドルに上るUBSウェルス・マネジメントは米大統領選挙後の相場展開を踏まえ、為替見通しを円高・ドル安方向に修正した。
  UBS証券ウェルス・マネジメント本部でジャパン・エクイティ・リサーチの責任者を務める居林通氏は28日のインタビューで、トランプ次期米政権の経済政策について「皆が良いところ取りで絵を描いており、過度な幸福感に包まれているが、その解釈は誤解に近いのではないか」と指摘。「期待先行で買われ過ぎた相場は、思わぬところで急にはげ落ちる。対外政策と国内政策の時間差をよく考えるべきだ」と語った。
  同社はトランプ氏勝利後の世界的な株高・米金利上昇・ドル高の中で、3カ月後の円相場見通しを1ドル=104円から102円に上方修正。6カ月後は102円、12カ月後は98円に据え置いた。市場で焦点に浮上している昨年6月の13年ぶり安値125円86銭の更新はないとの見方だ。

  主要10通貨に対するブルームバーグのドル指数は24日、データでさかのぼれる2004年末以降で最高を記録。円相場は25日に113円90銭と約8カ月半ぶりの円安・ドル高水準を付け、9日の高値から12.5%下落。月初からの下げは09年以来の大きさとなった。
次期米大統領のトランプ氏と次期副大統領のペンス氏
次期米大統領のトランプ氏と次期副大統領のペンス氏 Drew Angerer/Getty Images
  トランプ氏が公約した大型減税や1兆円規模のインフラ投資への期待を背景とした円安・ドル高進行で、為替アナリストは円相場の見通しを相次ぎ下方修正。来年9月末の予測中央値は米大統領選直前の105円から約半月で109円50銭に下がった。仏銀BNPパリバは125円と予測。100円突破を見込む円高予想は90社のうち10社に満たない。
  居林氏は、市場はトランプ氏の「国内政策の効果が先に出て、対外政策は後から妥当なところで折り合うと期待している」と言う。しかし、トランプ氏の経済政策は「国内向けは財政出動で成長促進的だが、米議会の承認プロセスが必要だ。影響の顕在化までには時間がかかる」と指摘。一方、「対外政策は貿易に逆風で成長を抑制する方向だ。議会を通さずに執行する権限を大統領が持っているので、早く実施される可能性がある」とみる。
  トランプ氏は選挙戦で、オバマ政権が日本などと進めてきた環太平洋経済連携協定(TPP)を米国内の雇用を守る立場から批判。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議は20日、貿易を歪曲(わいきょく)する措置と保護主義の撃退を訴えた。しかし、トランプ氏はその翌日、就任初日にTPPから撤退する意思を公表する方針を表明した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-28/-98


 
ユーロは5年以内に崩壊へ−英EU離脱を支持した投資家が予想
Stefania Spezzati
2016年11月29日 06:48 JST

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バーンブラエ・グループ会長のジム・メロン氏は英国の欧州連合(EU)離脱を支持した数少ない投資家の1人だったが、今はユーロ圏の崩壊を予想している。
  英国民投票で離脱派のマイケル・ゴーブ議員の支援者として知られていたメロン氏は、次は単一通貨ユーロが反体制主義台頭の犠牲となり、通貨同盟が5年以内に崩壊すると見込む。
  「英EU離脱は、ますます鮮明になりつつある欧州の問題の脇役になるだろう。現在の形のユーロは極めて不適切なメカニズムだ。1−5年しかもたないと思う」と同氏は語った。
  英国のEU離脱選択と米大統領選挙でのドナルド・トランプ氏勝利は世界的なポピュリズム(大衆迎合主義)の高まりを示した。12月にはイタリアの憲法改正を問う国民投票、来年にはフランスの総選挙があり、欧州での政治的波乱の芽は尽きない。これに伴い投資家の間からユーロの存続を疑問視する声も出る中で、メロン氏は「向こう1年のある時点で」ユーロがドルとの等価(パリティ)を割り込むと予想している。
  ただ、短期的な反発の可能性もあるため同氏は積極的にユーロを売らず、12月4日のイタリア国民投票に向けてイタリア国債を売っている。「今年はあらゆる国債を大規模に売ってきたが、中でもお気に入りの売り対象はイタリア国債だ」と同氏は述べた。

原題:Investor Who Backed Brexit Sees Euro Breaking Up Within 5 Years(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-28/OHCM5S6TTDS901

 

プルデンシャルで76兆円運用のティップ氏:米金利は行き過ぎた可能性
Charles Stein
2016年11月29日 08:52 JST

米国の成長や生産性の大幅改善を見込むのは無理難題−ティップ氏
米10年債利回り、レンジの中心は2%にシフトした公算
 
米プルデンシャル・ファイナンシャルのロバート・ティップ氏は、米大統領選でのドナルド・トランプ氏勝利を受けた金利急上昇は行き過ぎだった可能性があると指摘した。
  プルデンシャルの債券担当チーフ投資ストラテジストとして約6800億ドル(約76兆円)の運用に携わるティップ氏は、新政権が米経済成長を加速させると投資家が過大評価している可能性に言及。高齢化や世界経済の不振、ドル高などの要因が経済成長と金利を抑制する公算はあると付け加えた。
  ティップ氏は電話インタビューで、「米国の経済成長や生産性が実際に大きく改善するという長期的シナリオを想定するのは無理難題のようだ」と述べた。
  米国債利回りが大統領選投票日以降に急上昇したのは、共和党が大統領職と新議会を制することで成長を促進する政策が実施され、財政赤字が増え、インフレを高進させるとの観測が広がったためだ。トランプ氏は法人や個人の減税に加え、米国のインフラ再建で5000億−1兆ドルの支出を公約している。
  米10年債利回りは大統領選投票日の11月8日の1.9%から、今月28日には約2.32%に上昇。ティップ氏は選挙前は米10年債利回りが1.5ー1.75%の中心付近で推移するレンジ取引を予想していたが、財政刺激策が織り込まれた今の市場では2%前後に中心がシフトした公算が大きいと述べた。
原題:Prudential’s $680 Billion Manager Says Rates May Have Overshot(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-28/OHDJSU6JTSE801


 

2017年は日本株の一年に、強気成熟の米国株からの乗り換え増加
Adam Haigh
2016年11月29日 07:03 JST

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モルガン・スタンレーが日本株の判断引き上げ、米株は下げ
今年のパフォーマンス最悪市場の一つ、来年の有望市場に変身
 
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iR55PMGYje_8/v2/-1x-1.png

2017年は日本株の年になる−。こう考えるストラテジストが増えている。モルガン・スタンレーも強気相場が成熟しきった米国株から、日本株に視点を移した。
  野村ホールディングスに続き、モルガン・スタンレーは日本株の上昇相場が2017年も持続すると予想、米国株を売って日本株を買うことを勧めた。アベノミクスがトレーダーらの信頼を失い、今年前半のTOPIXは19%下げ、日本株はパフォーマンス下位市場に転落していた。日本株はそこから劇的な反転を遂げ、TOPIXは28日までの12営業日で続伸し、1月以来の水準に戻した。
  アンドルー・シーツ氏が率いるモルガン・スタンレーのクロスアセット戦略チームは、27日付のリポートで日本株について「財政拡大や利益増大、アニマルスピリットの復活見込みを背景に、想定される上昇相場での上げはこれまでになく大きいようにみられる」と分析した。
  日本企業の1株当たり利益は世界の他の地域よりも速いペースで拡大し、TOPIXが2017年に最大24%上昇すると、シーツ氏は予想している。野村も18日のリポートで、日経平均の上昇を予想していた。
  モルガン・スタンレーの日本株推奨は、クレジットへのエクスポージャーを減らし米国株と新興市場株を売る幅広い新戦略の一部を成す。この中では欧州株の買いも勧めている。シーツ氏はまた、現金比率を高めにしているとして、今後3カ月はボラティリティへの対応で通常より迅速に動く必要があるかもしれないと説明した。
  モルガン・スタンレーはリポートで、「日本はわれわれのトップマーケットになった。長期的バリュエーションは魅力的で、循環的な強さもある」とし、増益見通しも良好だと指摘した。
  モルガン・スタンレーの日本株強気は、一段の円安とエコノミスト予想を上回る日本の経済成長、世界景気の堅調な拡大の予想が前提となっている。同社は日本株の投資判断を「アンダーウエート」から「オーバーウエート」に引き上げ、米国株は「オーバーウエート」から「ニュートラル」に引き下げた。新興市場株は「アンダーウエート」(従来「ニュートラル」)とした。

原題:Strategists Shun Aging U.S. Bull Market for a New One in Japan(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-28/OHCRXE6K50ZA01
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/256.html

[政治・選挙・NHK216] 正社員、1年で74万人増 非正規上回る 総務省調査 正社員の有効求人倍率0.92倍と過去最高 全体1.40倍
正社員、1年で74万人増 非正規上回る
総務省調査
2016/11/29 19:40

 企業が正社員を増やしている。総務省が29日発表した10月の労働力調査によると、正社員は前年同月に比べ74万人増え3405万人となった。非正規は31万人増の2028万人だった。正社員の増加が非正規を上回るのは2カ月連続だ。

 企業は賃金水準の低いパートやアルバイトを増やす傾向にあった。年末の繁忙期を前に待遇のよい正社員でないと人手が集めにくくなっている。

 厚生労働省が同日発表した正社員の有効求人倍率(原数値)は0.92倍と過去最高になった。全体の有効求人倍率(季節調整値)も1991年8月以来となる1.40倍の高水準に達している。

 慢性的な人手不足に悩む宿泊・飲食サービス業の正社員の求人は前年同月比で3.5%増加した。学習支援業は25.5%増、金融・保険業は4.7%増と非製造業での増加が目立つ。

 10月の完全失業率は前月と同じ3.0%だった。完全失業者数は197万人と95年2月以来の200万人割れとなった。総務省の10月の家計調査によると、実質消費支出は前年同月比0.4%減だった。正社員化による待遇改善が続けば、消費の活性化につながる可能性がある。

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政府統計、正社員、厚生労働省、総務省

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http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H6J_Z21C16A1EE8000/


#アベノミクス(日銀緩和+財政拡張)に加え、トランプ効果が今後出てくるなら、
さらに雇用の逼迫とインフレ圧力が上昇し、日銀物価目標の前倒し達成もあり得る

そうなると、また別の問題が出てくることになる。



http://www.asyura2.com/16/senkyo216/msg/711.html

[経世済民116] 円はこの2年で最も売られ過ぎか、回復に向かう公算 新興市場債明るい兆し世界的な国債価格下落 中国人民元下落、金属価格上昇
円はこの2年で最も売られ過ぎか、回復に向かう公算

Emma O'Brien
2016年11月28日 14:21 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/irNbWaiJTi5U/v2/-1x-1.png

  円は米大統領選でのドナルド・トランプ氏勝利後にドル需要の高まりを受けて7%余り下落し、10−12月(第4四半期)に入って最もパフォーマンスの悪い主要通貨となっている。ただ円にとってこうした厳しい状況は終わりを迎えつつあるかもしれない。過去のトレンドを参考に相場の動きを説明するテクニカル指標であるドル・円の相対力指数(RSI)は円安が行き過ぎていることを示唆している。RSI(14日間ベース)は先週85と、2014年9月以来の高水準に急上昇した。RSIは70を超えると上昇の行き過ぎと今後の下落の可能性を示すものとされ、今回のケースではドル安を示唆している。
原題:Yen Most Oversold in 2 Years Flags Potential for Rebound: Chart(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-28/OHC2JN6KLVR401


 

新興市場債に明るい兆し、世界的な国債価格下落の中で
Srinivasan Sivabalan
2016年11月28日 14:18 JST
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i.JlIrW7WZZo/v2/-1x-1.png

  新興市場の自国通貨建て国債は、先進国の国債に対する上乗せ利回り(プレミアム)が3年ぶりの低水準となっている。トランプ次期米大統領による政府支出の拡大がインフレを高進させるとの観測から米国と日本で国債価格が下落する中で、先進国のソブリン債の指標は11月のパフォーマンスが、このままいけば少なくとも2010年1月以降で最悪となる可能性がある。その影響もあって、新興市場のソブリン債のリスクプレミアムは353ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と、13年7月以降で最低となった。
原題:Emerging Markets Find Silver Lining in Global Bond Rout: Chart(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-28/OHC0C86K50YX01


 


中国人民元が下落し金属価格上昇、アナリストは答え探す−チャート
Bloomberg News
2016年11月28日 12:15 JST
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ieaNZsBCM2Jw/v2/-1x-1.png

  トランプ次期米大統が大規模投資計画を発表するかなり前から、金属市場は活況を呈していた。中国の投資家が人民元下落に対するヘッジ手段として金属に投資しているのがその一因との観測がある。上海明投資管理のトレーダー、チア・チョン氏は、ロンドン金属取引所(LME)の銅などドル建て商品を購入することにより、トレーダーらは元下落から自らを防御していると指摘。オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の商品担当シニアストラテジスト、ダニエル・ハインズ氏は、人民元取引について誇張されるべきではなく、市場は恐らく需給見通しにけん引されているとの見方を示した。
原題:Yuan Weakens, Metals Surge, Analysts Look for Answers: Chart(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-28/OHBYH96TTDS401
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/273.html

[経世済民116] 実は、派遣薬剤師は時給3000円以上&保険完備でメリットだらけ!?正社員より自由と高時給を両立 高収入求人は東京より地方
派遣薬剤師は時給3000円以上&保険完備でメリットだらけ


「有給がなさそう」「派遣はフルタイムじゃないと働けない」「短期で切られてしまいそう」。。これらの派遣薬剤師のイメージは大きな誤解です。派遣薬剤師は、実は正社員よりも「自由な働き方」「高時給」を両立できるってご存知でしたか?

派遣薬剤師
この記事に書かれている事まとめ
派遣会社の福利厚生は、薬剤師賠償責任保険料を会社が負担
今すぐ転職しなくてもOK!「希望通りの求人が出た時だけ教えてください」なんていうワガママも派遣なら可能。
時給3,000円以上ならエムスリー(薬キャリ)、時短勤務で時給4,000円以上ならファルマスタッフがおすすめ。


 
目次 [非表示]
薬剤師の派遣は高給、福利厚生などメリットだらけ!?
薬剤師の「派遣」求人情報を、様々な境遇になりきって検索してみた。
薬剤師の給与はそろそろ頭打ちとのウワサも
薬剤師の派遣は高給、福利厚生などメリットだらけ!?

派遣の薬剤師には、派遣会社の福利厚生が適用されます。上場企業グループの派遣会社なら健康保険や厚生年金は当たり前のこと、薬剤師賠償責任保険の保険料を会社が代わりに負担してくれるなど、相当優遇されているもの。

一方、調剤薬局は国内90パーセント以上が中小のパパママ薬局。大手は条件面の基準がガチガチで融通が効かないし、福利厚生面は派遣の方がずっと有利なことも多いのです。

派遣薬剤師は他にもメリットがこんなにたくさん!

時給3000円以上でパート、正社員よりもずっと高時給
パパママ薬局や大手よりも、実は保険が充実
書類提出のみで面接不要!カンタン転職
面倒な条件交渉はすべて派遣会社持ち
正社員と違ってサービス残業一切なし
もちろん短期で職場を変えてもOK
参照:単発・スポット派遣で稼ぎたい薬剤師必見!短期の求人

薬剤師専門派遣会社を4つの項目で比較

   
薬剤師向け
派遣会社2選 時給3,500円
越えの時給 各種保険が
薬局より充実 面接不要&
書類選考のみ 給与,勤務時間
など条件交渉
エムスリー(薬キャリ)
○ ◎ ◎ ◎
派遣の求人掲載数、登録者数NO.1の薬キャリ。特に【派遣】の求人情報を多数取り揃えており、時給3500円以上の転職先もみつかります。派遣への転職を考えている方はまず初めに薬キャリを登録しましょう。ママ薬剤師向けの調剤薬局多数。
ファルマスタッフ ◎ ○ ○ ◎
調剤薬局の求人情報が約4万件あり、数・質ともにトップクラス。派遣事業も行っている数少ない紹介会社で「派遣薬剤師」は都心以外の薬局なら時給4,000円以上も多数。派遣を考えているなら、エムスリー「薬キャリ」と同時登録をしておくこと。
アルバイト、正社員、派遣で給与を比較してみました。

薬剤師になりきって求人情報をリサーチした結果、薬剤師の派遣は通常のパートよりずっと高時給。都心でも時給3,000円以上、地方ならなんと時給4,000円以上の求人もあります。

さらに、大手の派遣会社であればパートや正社員として働くよりも、「土日休み」「時短勤務」福利厚生がむしろよいケースが多いです。

 

時給 月給 年収
アルバイト 2,500円 400,000円 4,800,000円
正社員 ※ 460,000円 5,500,000円
派遣 3,500円 560,000円 6,720,000円
この時給相場、なんなら正社員とかアルバイト・パートより、派遣の方が儲かるんじゃないの!?ってぐらいです。派遣薬剤師としての働き方を知らない方はかなりソンですよ。

11月は冬の繁忙期に向けて薬剤師募集を始める薬局多数

11月は冬の本格的な混雑を見越して人員を募集する薬局が増え始めるタイミングです。
その理由は2つあります。

@11月から気温が下がり始めることに伴い、薬局に風邪の患者さんが増え始めるから。

A扶養を外れることを避けたいパート薬剤師が11月からシフトを減らし始めることに伴い、人手不足に陥るから。

転職を考えている薬剤師はこの機会に求人を探してみてはいかがですか?

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薬キャリ薬剤師派遣
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以下、実際にm3(エムスリー)の薬剤師求人サイト「薬キャリ」にてママさん薬剤師になりきって【派遣】薬剤師についてリサーチしてみました!

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土日休みは前提で、短期でも長期でもどちらでも相談可能なのは人気ポイントです。

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三重県津市の薬剤師求人情報。こちらもやはり短期と長期のどちらでも可。短期でやってみてから延長の相談というのも十分対応してくれるのではないでしょうか。

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派遣薬剤師さんを募集している薬局の中には、とにかくスポットで埋めて欲しい!というニーズもあるのは確か。2か月限定でがっつり稼ぎたいという薬剤師さんは・・・

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家賃補助や住宅手当が出ると、時給以上の魅力が出てきます。

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薬剤師さんの派遣では、「逆出稼ぎニーズ」に対応しているものも多いようです。「引越代支給」もそういうことですよね。

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なんなら「借り上げ社宅付き」「住宅手当付き(全額負担)」の求人情報も・・・。アウトドアの趣味を持っている・里帰りしたいなどといったニーズにも対応できそうです。ブランクのある薬剤師さんにもおすすめ。

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住宅付きではありませんが、家賃「全額」補助。。時給メリットで言えば4,000円以上の価値がありそうです。

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薬剤師の給与はそろそろ頭打ちとのウワサも

と、ここまでかなり景気の良さそうな薬剤師(特に派遣薬剤師)の求人情報を見てきましたが・・・実はそろそろ雰囲気が変わってきそうだという話もあります。

大学の薬学部が4年制から6年制に変わったことは、新しい薬剤師さんが就職マーケットに出てこなかった期間が2年間あったことを意味します。新卒を採用できないわけですから、とにかく中途で薬剤師さんを獲得し、囲い込むために年収合戦を繰り広げる・・・薬剤師人材マーケットは「空前の売り手市場」と言われています。

実際、ドラッグストアが薬剤師資格を取ったばかりの大学院生のアルバイトに2,500円の時給を払うぐらい、薬剤師は不足していました。と同時に、やっぱり薬局って儲かるんでしょうね・・・薬って原価ものすごく安いそうなのです。いくら薬剤師不足って言っても、儲かってないと時給そんなに払えないでしょうから。

ところが、ここへ来て大手調剤薬局チェーンが時給をがっつり1,000円台に下げたことを皮切りに、「薬剤師の給与もそろそろ危ないんじゃないか」と言う人もチラホラ出てきています・・・。その大手調剤薬局チェーンでは、時給の大幅削減にも関わらず特に大きな不満も出ず、相変わらず採用は順調なようなのです。

「子育ても落ち着いたし、そろそろ復職しようかしら」
「半年ぐらい思い切り働いて、まとまったお金を貯めようかな」
「薬剤師としてブランクがあるけど、調剤経験は3年ある」
「借り上げ社宅や住宅手当のある薬剤師派遣求人情報でいいものがあれば」
「仕事に変化がなくてつまらないし、転職を考えようかな」
「年収を落とさずに働く時間を短くできる転職先はないかな」

このあたりを考えている人に取っては、そろそろ最後のチャンスになるのかもしれません。

今回調査した、高時給薬剤派遣求人サイト

http://www.hop-job.com/post-6744/?cbprm=__&bp=6744&adst=


 

高収入な薬剤師求人は東京よりも地方に多い!?地域別平均年収まとめ
転職で高収入を狙う薬剤師におすすめの3つの職場とその職場に強い転職・求人サイトを紹介します。なぜそれら3つの職場がおすすめなのか、その中でもどの職場がおすすめなのか、それぞれの職場に強みを持つ求人サイトを説明します。

薬剤師の年収
この記事に書かれている事まとめ
高収入&大手ほど業務負担はない、中小のドラッグストアが一押し!
年収1000万円超えも可能な、企業でのMR、研究職もオススメ。
高収入求人の質は、転職サイトの良い求人を探り当てる「調査力」と、調査を許される「企業との関係性」で決まる。
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高収入が獲得できる職場を比較してみた
【ドラッグストア】年収は高めだが転職難易度は低め!
【企業】年収高けりゃ転職も難しい!?
【地方薬剤師】「ワケあり」高年収!?
高収入が獲得できる職場を比較してみた

HOP!が独自に調査した職場別の収入は以下の通りです(地方薬剤師は「職場」というくくりではありませんが、ぜひ視野に入れていただきたいので紹介します)。収入額でいうと「企業」が一位となりますが、右側の「転職難易度」に注目してください。

企業は、より専門的な開発やMRなどの職に就くことになるため、難易度の高さもダントツです。そこでHOP!が最もおすすめする職場は「ドラッグストア」です。

職場 オススメ度 年収 転職難易度
ドラッグストア ★★★★★ ★★★★☆ ★★★☆☆
企業 ★★★☆☆ ★★★★★ ★★★★★
地方薬剤師 ★★☆☆☆ ★★★☆☆ ★★☆☆☆
【ドラッグストア】年収は高めだが転職難易度は低め!

ドラッグストアは店舗数が多いこともあり、製薬企業などと比較すると転職難易度は低い傾向にあります。

しかし、調剤薬局とくらべれば平均年収が100万円以上高いのも事実です。

大手ドラッグストアの具体的な平均年収例を挙げると、スギ薬局では約710万円、サンドラッグでは約500万円となっています。各ドラッグストアごとで年収額に差があるようです。相場を把握するために、事前の下調べは必須でしょう。

また、ドラッグストアで収入を上げるためには、ドラッグストア店長やエリアマネージャーなどへと出世していく必要があります。そのためには、薬剤に関する知識だけではなく、マネジメント能力、コミュニケーション能力をしっかりと伸ばす必要があります。

■ドラッグストアへ転職する際のコツは?

ドラッグストアは、高年収目当てで転職する薬剤師が多く、競争率も高くなりがちです。
また、気を付けておきたいのが、「大手になると業務負担が大きい」点です。つまり仕事がキツイということですが、高給であることを考えればバランスが取れていると言えるのかもしれません。
一方で、中小のドラッグストアであれば、比較的業務負担は軽くなります。収入が多少落ちたとしてもゆったり働きたい、というスタンスであればこちらをおすすめします。

いずれにしても、ドラッグストアの内情を知っている転職エージェントへの相談をおすすめします。中でもおすすめの転職エージェントは、薬学生の就職サポートを積極的に行っていて、ドラッグストアとのパイプが強いエムスリー(薬キャリ)です。

求人掲載数3万件以上!エムスリー(薬キャリ)


求人掲載数33,000件以上&全国対応。特に病院や調剤薬局の求人が豊富。
地域ごとのキャリアコンサルタントが、大手はもちろん地域密着型の薬局まで、足を使って幅広く求人情報を取り揃えている。
希望に合った求人情報を最大10件&即日でコンサルタントが紹介してくれます。

好条件求人を紹介してもらう
【企業】年収高けりゃ転職も難しい!?

前述のとおり、最も高年収が期待できる職場は「企業」です。
特に製薬会社のMR(営業職)が高収入なことは有名ですね。売上げや営業成績に応じて賞与がもらえることもありますし、チームを束ねる立場になれば収入も比例して上昇します。

一方で、薬剤師ならではの開発職も、希望者にとっては魅力的な仕事でしょう。年収額としては、MR、開発職ともに1000万円を超えることが珍しくないようです。
しかし、ネックになるのは転職難易度の高さです。競争率も高く、転職するには狭き門であることは間違いありません。

■企業へ転職する際のコツは?

やはり転職の難易度が気になるところです。
また、MRも開発職も、求人情報自体が一般公開されていないケースが多く、普通に調べていては求人情報を目にすることさえできません。
閲覧したいなら、これらの一般には非公開の企業求人情報をたくさん抱えている転職エージェントに登録する必要があります。企業求人に関しても、その規模の大きさから強みをもつエムスリー(薬キャリ)がおすすめです。

【地方薬剤師】「ワケあり」高年収!?

最後に紹介するのは、思い切って地方に移住して働く「地方薬剤師」です。
地方で働くとなると、都市部で働く薬剤師から見ると抵抗があるかも知れません。しかし、同じ薬剤師でも都市部よりも地方の方が高収入だということはご存知ですか?

その理由は、薬剤師の数が多すぎる都市部とは逆で、地方は薬剤師の数が足りていないのです。

具体的な例を挙げると、地方の薬剤師の場合、調剤薬局勤務でも平均600〜800万円と高額です。
これは都市部ではなかなか手が届かないほどの高収入と言えるでしょう。待遇も手厚く、引越し代金や住宅手当まで勤務先が負担してくれるケースもあります。その場合、薬剤師としての実質的な年収額はさらに高くなります。

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#ただし将来的にはネット通販により高賃金雇用は縮小していくだろう

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/274.html

[経世済民116] ウォール街再び勝利、トランプ氏がバンカーと資産家を経済閣僚に起用 日本株続伸へ減産合意や米景気楽観  ADP21.6万増
ウォール街再び勝利、トランプ氏がバンカーと資産家を経済閣僚に起用
Max Abelson
2016年12月1日 07:21 JST
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OPEC、8年ぶりに減産合意−サウジがイランに増産認め突破口
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NY原油(30日):9カ月ぶり大幅高、OPECが8年ぶりの減産合意
NY外為:ドルが対円で8カ月ぶり高値−持ち高調整観測が外れる
ムニューチン氏は90年代以降で3人目のゴールドマン出身財務長官に
金融界から閣僚起用にヘッジファンド運用者は安堵
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トランプ次期米大統領は11月30日、元ゴールドマン・サックス・グループ幹部のスティーブン・ムニューチン氏を財務長官に、資産家ウィルバー・ロス氏を商務長官に起用すると発表した。
  29日にはトランプ氏がゴールドマンのゲーリー・コーン社長とトランプタワーで会談。選挙期間中にトランプ氏から批判の矛先を向けられたウォール街の人材が閣僚に選ばれたことにヘッジファンド運用者のホイットニー・ティルソン氏は胸をなでおろしている。ウォール街を押さえ込むという公約を理由にトランプ氏を支持した有権者が今頃、バンカーや資産家が同氏の取り巻きとなっていることに激怒しているとしても、自分にとっては好都合だと話す。
  ケース・キャピタル・マネジメントのティルソン氏は「トランプ氏が彼らをだましたも同然だと思う」と述べ、「私はトランプ氏が常識外れなことをして金融システムを台無しにすると心配していたが、実際には金融システムの内部者を起用したので良かった」と語った。
  ムニューチン氏の指名が承認されれば、過去30年で3人目のゴールドマン出身の財務長官となる。主要な米金融機関の株価は30日に軒並み上昇。ゴールドマン株は3.6%高と、ダウ平均構成銘柄でパフォーマンス首位となった。
  投資銀行グリーンヒルを率いるスコット・ボク氏は「トランプ氏を当選させた人々は何らかの形で失望させられるだろうとの声もある。しかし、これらの人々が望むのは経済がより強くなることであり、減税やインフラ投資がそれをもたらせば、彼らは満足すると思う」と語った。
原題:Wall Street Wins Again as Trump Picks Bankers, Billionaires (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-30/OHH3KL6JIJUY01


 

トランプ氏、高所得者の「完全な減税」は望まず−ムニューチン氏
Sahil Kapur
2016年12月1日 08:09 JST
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高所得者に対する税引き下げは控除の縮小で相殺
トランプ氏が公表の税制改革案では「一括減税」を提起
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トランプ次期米大統領が財務長官への起用を決めたスティーブン・ムニューチン氏は30日、トランプ氏の税制改革案では結局のところ「高所得者」に減税にならないとの見解を示した。トランプ氏が選挙戦中に提案した改革案からは大きな転換となる。
  選挙戦でトランプ陣営の全米財務責任者を務めたムニューチン氏はCNBCのインタビューで、「高所得者に対する税の引き下げは控除の縮小で相殺されるため、高所得者にとって完全に減税になるわけではない」と述べた。
  トランプ氏のウェブサイトに示された税制改革案は11月30日時点では、「一括減税」とするが、特に「労働者や中間所得層」に重点を置く方針となっている。
  ムニューチン氏はCNBCに対し、控除を縮小する分野として住宅ローン利子などを挙げたが、具体案には踏み込まなかった。なお慈善事業への寄付に対する控除は継続する考えを示唆した。トランプ氏の政権移行チームに高所得者減税の相殺方法の詳細について取材を試みたが、現時点で返答は得られていない。
原題:Trump Wants ‘No Absolute Tax Cut’ for Upper Class: Mnuchin (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-30/OHH6V86K50XZ01


 

日本株は続伸へ、OPEC減産合意や米景気楽観−資源や輸出関連買い
赤間信行
2016年12月1日 08:00 JST
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OPEC、8年ぶりに減産合意−サウジがイランに増産認め突破口
米国株:総じて下落、OPEC減産合意でエネルギー株は上昇
NY原油(30日):9カ月ぶり大幅高、OPECが8年ぶりの減産合意
NY外為:ドルが対円で8カ月ぶり高値−持ち高調整観測が外れる
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1日の東京株式相場は続伸する見通し。石油輸出国機構(OPEC)が8年ぶりの減産で最終合意に達したことや、米国景気への楽観見通しを背景に投資家心理が改善する。鉱業など資源関連のほか、為替のドル高・円安を手掛かりに自動車や電機など輸出関連、金融など幅広く買いが入りそう。
  アイザワ証券の飯田裕康投資リサーチセンター長は、「OPEC総会での減産合意により原油価格が急騰したことでリスク資産に資金が流入しやすく、日本株市場で結果を見極めてから動こうとしていた投資家はまず買いから入ってくる」と指摘。また、「日経平均株価が終値での年初来高値1万8450円を上回って始まると、売りポジションの買い戻しも余儀なくされる」とも話した。
  米シカゴ先物市場(CME)の日経平均先物(円建て)の11月30日清算値は1万8615円と、大阪取引所の通常取引終値(1万8380円)に比べて235円高だった。きょう上昇すれば日経平均、TOPIXとも続伸となる。
東証内
東証内 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  OPECは30日に開催した総会で全体で日量3250万バレルへの削減で合意。非加盟国にも日量60万バレルの減産を求めた。2014年に採用した自由裁量の方針を撤回し、価格調整役としての役割を取り戻した格好となり、2年にわたる価格下落をもたらしてきた供給過剰の解消を図る。減産合意を受け30日のニューヨーク原油先物相場は急騰、1月限は前日比9.3%高の1バレル=49.44ドルと終値ベースで10月27日以来の高値を付けた。
  為替市場でドル高・円安が進んだこともきょうの日本株には追い風となる。海外為替市場では円が対ドルで大幅に下落、一時は1ドル=114円54銭と3月上旬以来の円安水準を付けた。東京株式市場の30日終値時点では112円77銭だった。ADPリサーチ・インスティテュートによる11月の米民間部門の雇用者数が21万6000人増と、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値である17万人増から上振れたことを受け、米10年債利回りが前日比9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い2.38%となったことがドル高・円安を促した。
  米国経済の楽観見通しも広がりそう。トランプ政権で財務長官への起用が決まったムニューチン氏は30日の米CNBCのインタビューで、法人と中間所得層を対象にした減税、規制緩和、インフラ投資、2国間の貿易協定を通じて米国は3−4%の経済成長を達成できると述べた。アイザワ証の飯田氏は、「米経済が実際にどの程度の回復軌道に乗るか予想しづらくとも、マーケットは期待先行で動くため、ムニューチン氏の発言はきょうの市場にポジティブ」とみている。米連邦準備制度理事会(FRB)が30日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)でも、米国経済の堅調ぶりが確認された。
  30日の米国株相場はまちまち。S&P500種株価指数は0.3%安の2198.81、ダウ工業株30種平均は0.01%高の19123.58ドルで終了した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-30/OHH86Z6S972K01

 
米国債:下落、民間雇用者数の伸びが予想上回る−10年債2.38%
Lu Wang、Lukanyo Mnyanda、Edward Bolingbroke
2016年12月1日 05:38 JST 更新日時 2016年12月1日 07:31 JST
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OPEC、8年ぶりに減産合意−サウジがイランに増産認め突破口
米国株:総じて下落、OPEC減産合意でエネルギー株は上昇
NY原油(30日):9カ月ぶり大幅高、OPECが8年ぶりの減産合意
NY外為:ドルが対円で8カ月ぶり高値−持ち高調整観測が外れる
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30日の米国債相場は下落。11月の米民間雇用者数の伸びが市場予想を上回ったことに反応した。
  給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが30日発表した給与名簿に基づく集計調査によると、11月の米民間部門の雇用者数は21万6000人増加。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は17万人増だった。
  ボストン・アドバイザーズ(運用資産45億ドル)のポートフォリオマネジャー、ジェームズ・ガウル氏は「インフレ期待の高まりというこれまでの現象がきょうも続いている」と分析。12月2日発表の「雇用統計は米金融当局の視点で見ることになる」とし、「極めて大きな下向きのサプライズがない限り、12月の米利上げ期待は依然有効だ」と続けた。
  ニューヨーク時間午後5時現在、10年債利回りは前日比9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.38%。
  この日は月末特有の買いが見られなかったことも国債の売りにつながった。デュレーション(平均残存期間)延長を目的とした月末特有の買いやポートフォリオのリバランスを見込んだロングポジションが解消を迫られ、下げを増幅させた可能性がある。
  トランプ次期米大統領から財務長官に指名されるスティーブン・ムニューチン氏の発言を受けて超長期債が発行されるとの見方が広がったことも売りにつながった。
  ムニューチン氏は経済専門局CNBCのインタビューで、「発行する国債の年限を長期化する可能性を検討する」と語った。50年債や100年債の発行も念頭にあるのかとの問いには、「あらゆる可能性を検討する」と述べた。
  この発言を受けて、約115bpだった5年債と30年債の利回り格差(イールドカーブ)は、1時間余りで約122bpに拡大。30年債利回りは一時14bp上昇して年初来高水準まであと1bp未満に迫った。
原題:Treasuries Slump on Jobs Report; Oil Surges as OPEC Reaches Deal(抜粋)
原題:USTs Fall Led by 30Y as Month-End Demand Fails to Emerge(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-30/OHH1WQSYF01Y01


 

米ADP民間雇用者数:11月は21.6万人増加、製造業は1万人減少
Shobhana Chandra
2016年12月1日 00:28 JST
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11月の米民間雇用者数は前月比で増加した。増加幅は6月以降で最大だった。
  給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが30日発表した給与名簿に基づく集計調査によると、11月の米民間部門の雇用者数は21万6000人増加。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は17万人増だった。前月は11万9000人増と、速報値の14万7000人増から下方修正された。
  ADPと共同で集計調査を行うムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は発表資料で、「大統領選挙をめぐる不透明感が雇用に悪影響をもたらしたことを示唆するものはほぼ見当たらない」と述べた。
  製造業や建設業を含む財生産部門の雇用は1万1000人減少した。前月は2万人の減少。このうち建設業は2000人増と、前月の1万6000人減からプラスに転じた。製造業は1万人減少。過去5カ月間のうち4回目のマイナスとなった。サービス業は22万8000人増加した。前月は13万8000人の増加だった。
  従業員が500人以上の大企業の雇用者数は9万人増。50−499人の中堅企業では8万9000人増えた。49人以下の小企業では3万7000人増加した。
原題:ADP Says Companies in U.S. Added 216,000 Employees in November(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-30/OHGL7PSYF01S01


 

米個人消費支出:10月は0.3%増に鈍化−所得は4月以来の大幅な伸び
Michelle Jamrisko
2016年12月1日 00:04 JST
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OPEC、8年ぶりに減産合意−サウジがイランに増産認め突破口
米国株:総じて下落、OPEC減産合意でエネルギー株は上昇
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NY外為:ドルが対円で8カ月ぶり高値−持ち高調整観測が外れる
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10月の米個人消費支出(PCE)は増加ペースが減速した。前月は5カ月ぶりの大幅な伸びを示していた。
  米商務省の30日発表によると、10月のPCEは前月比0.3%増加。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は0.5%増だった。前月は0.7%増(速報値0.5%増)に上方修正された。
  10月の個人所得は前月比0.6%増と、4月以来の大幅な伸びとなった。

  アマースト・ピアポント・セキュリティーズのチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は統計発表前に、「労働市場がとても強く、所得の伸びは本当にしっかりしているという事実がニュースだ」と指摘。「個人消費以外の経済は今のところさほど良好ではなさそうだが、個人消費が当面はけん引役を十分担うことができるだろう」と述べた。
  10月は賃金・給与が2カ月連続で0.5%増と、伸びが市場予想の0.4%増を上回った。
  金融当局がインフレ目標の基準とするPCE価格指数は前月比で0.2%上昇と、3カ月連続で同率の伸び。前年比では1.4%上昇。

  インフレ調整後のPCEは0.1%増。前月は0.5%増だった。
  変動の大きい食品とエネルギーを除くPCEコア価格指数は前月比0.1%上昇、前年比では1.7%の上昇だった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:U.S. Consumer Spending Rises at More Moderate Pace, Incomes Jump(抜粋)

 


11月30日の海外株式・債券・為替・商品市場
西前 明子、楽山 麻理子
2016年12月1日 06:41 JST 更新日時 2016年12月1日 07:36 JST
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OPEC、8年ぶりに減産合意−サウジがイランに増産認め突破口
米国株:総じて下落、OPEC減産合意でエネルギー株は上昇
NY原油(30日):9カ月ぶり大幅高、OPECが8年ぶりの減産合意
NY外為:ドルが対円で8カ月ぶり高値−持ち高調整観測が外れる
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欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は 次の通り。
◎NY外為:ドルが対円で8カ月ぶり高値−持ち高調整観測が外れる
  30日のニューヨーク外国為替市場ではドルが上昇。対円では8カ月ぶりの高値を付けた。資産運用会社によるポートフォリオ調整で幅広いドル売りが出るとの予測に反し、ロンドン市場の値決めにかけてドル買いが膨らんだ。
  米10年債利回りが2.40%を上回ったこともドルの支援材料となった。給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが発表した給与名簿に基づく集計調査によると、11月の米民間部門の雇用者数は21万6000人増加と、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値17万人増を上回った。
  ニューヨーク時間午後5時現在、ドルは対円で前日比1.9%上げて1ドル=114円46銭。一時は114円54銭と、3月上旬以来の高値を付けた。対ユーロでは0.6%高い1ユーロ=1.0589ドル。
  月間ではドルは対円で約9.1%上昇し、1995年以来の大幅高となった。米国債利回りの上昇がドルの魅力を高めている。
  12月の利上げ観測と、トランプ次期大統領の財政支出拡大がインフレを煽(あお)るとの観測からドルは上昇した。この日は民間雇用者数だけでなく、個人所得が予想を上回ったことも利上げ観測を強めた。
  SEB(ストックホルム)のストラテジスト、リチャード・フォルケンホール氏は「大統領選以降の米国債利回り上昇が続くならば、円は下落を続ける可能性がある」と述べた。ドルはただ、115円に近づけば、伸び悩む可能性があるとの見方を示した。
  トランプ次期米大統領がゴールドマン・サックス・グループ出身のスティーブン・ムニューチン氏を財務長官に起用すると発表したことも、ドル上昇に寄与した。
  米10年債利回りは年初来の高水準近くにある。ドイツ債との利回り差は終値ベースで記録の残る1990年以降で最大に広がっている。
  ドルは広範にわたって上昇している。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は今月3.9%上昇。先週には記録がある2004年以降での最高を記録した。
原題:Dollar Surges Against Yen for Biggest Monthly Gain Since 1995(抜粋)
INSIDE G-10: JPY Drops Nearly 2%; Rebalancing Traps USD Shorts(抜粋)

◎米国株:総じて下落、OPEC減産合意でエネルギー株は上昇
  30日の米国株は総じて下落。石油輸出国機構(OPEC)は原油生産を日量120万バレル減らすことで合意。8年ぶりの減産合意を受けた原油上昇に伴い、この日のエネルギー株は上昇した。
  S&P500種株価指数は前日比0.3%下げて2198.81。ダウ工業株30種平均はほぼ変わらずの19123.58ドル。ナスダック総合指数は1.1%下げて5323.68。
  ジョーンズトレーディング・インスティテューショナル・サービシズのグローバル市場ストラテジスト、ユーセフ・アッバシ氏は「この日は原油が大幅に上昇した。市場をけん引したのはエネルギー銘柄だ」と述べ、「減産合意に伴う前向きな追い風が吹くだろう」と続けた。
  エネルギー銘柄ではデボン・エナジーが15%、マラソン・オイルは21%値上がりした。
  ドイツ・ポストバンクの株式ストラテジスト、ハインツゲルト・ゾンネンシャイン氏(ボン在勤)は「減産合意は短期的には石油株の支援材料だ。ただし原油価格の上げは限定的だろう」と述べ、「トランプ次期米政権の政策は、選挙前に人々が心配していたよりは良好な方向へと向かいつつあるようだ。米国株にはまだ上昇余地がある」と続けた。
  米国は月間ベースで上昇。主要な株価指数はいずれも最高値を更新した。トランプ次期米大統領が財政支出を拡大し、景気を刺激するとの見方が背景にある。S&P500種の月初来の上げは3.4%と7月以来で最大だった。
  金利先物市場が示唆する12月利上げの確率は100%。11月初め時点では68%だった。
原題:U.S. Stocks Drop Despite Energy Rally on OPEC Production Pact(抜粋)
Oil Jumps Most Since February on OPEC Deal as Treasuries Retreat(抜粋)

◎米国債:下落、民間雇用者数の伸びが予想上回る−10年債2.38%
  30日の米国債相場は下落。11月の米民間雇用者数の伸びが市場予想を上回ったことに反応した。
  給与明細書作成代行会社のADPリサーチ・インスティテュートが30日発表した給与名簿に基づく集計調査によると、11月の米民間部門の雇用者数は21万6000人増加。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は17万人増だった。
  ボストン・アドバイザーズ(運用資産45億ドル)のポートフォリオマネジャー、ジェームズ・ガウル氏は「インフレ期待の高まりというこれまでの現象がきょうも続いている」と分析。12月2日発表の「雇用統計は米金融当局の視点で見ることになる」とし、「極めて大きな下向きのサプライズがない限り、12月の米利上げ期待は依然有効だ」と続けた。
  ニューヨーク時間午後5時現在、10年債利回りは前日比9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.38%。
  この日は月末特有の買いが見られなかったことも国債の売りにつながった。デュレーション(平均残存期間)延長を目的とした月末特有の買いやポートフォリオのリバランスを見込んだロングポジションが解消を迫られ、下げを増幅させた可能性がある。
  トランプ次期米大統領から財務長官に指名されるスティーブン・ムニューチン氏の発言を受けて超長期債が発行されるとの見方が広がったことも売りにつながった。
  ムニューチン氏は経済専門局CNBCのインタビューで、「発行する国債の年限を長期化する可能性を検討する」と語った。50年債や100年債の発行も念頭にあるのかとの問いには、「あらゆる可能性を検討する」と述べた。
  この発言を受けて、約115bpだった5年債と30年債の利回り格差(イールドカーブ)は、1時間余りで約122bpに拡大。30年債利回りは一時14bp上昇して年初来高水準まであと1bp未満に迫った。
原題:Treasuries Slump on Jobs Report; Oil Surges as OPEC Reaches Deal(抜粋)
原題:USTs Fall Led by 30Y as Month-End Demand Fails to Emerge(抜粋)

◎NY金:続落、月間では2013年以来の大幅安−利上げ見通しが重し
  30日のニューヨーク金先物相場は続落。月間ベースでは2013年以来の大幅安となった。来月に米利上げが実施されるとの観測を背景に、金連動型ファンドからの資金引き揚げが続いた。一方、パラジウムは月間で約8年ぶりの大幅高。
  RJOフューチャーズ(シカゴ)のシニアマーケットストラテジスト、フィル・ストライブル氏は、「利上げとドル高というのが大きな要因だ。それが金市場を弱くしている」と指摘。「12月2日の雇用統計は非常に素晴らしい内容になる可能性がある。来年の利上げ回数は2回を超えるかもしれない」と述べた。
  ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前日比1.4%安の1オンス=1173.90ドル。月間では8%余り値下がりした。
  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のパラジウム3月限は続伸し、1%高の772.65ドル。月間では25%上げて、2008年以来の大幅上昇。
  プラチナと銀は値下がりした。
原題:Gold Posts Worst Month Since 2013 on ‘Poisonous’ U.S. Outlook(抜粋)
◎NY原油:9カ月ぶり大幅高、OPECが8年ぶりの減産合意
  30日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が急騰。2月以降で最大の9.3%高で引けた。石油輸出国機構(OPEC)が8年ぶりの減産で最終合意し、記録的な供給超過の解消と市場安定への期待が広がった。OPEC全体で日量3250万バレルへの削減で合意。非加盟国にも日量60万バレルの減産を求めた。
  BNPパリバの商品調査責任者、ハリー・チリンギリアン氏 (ロンドン在勤)は電話インタビューで、「OPECはアルジェで基本合意した減産を具体的にまとめることに成功した。しかし悪魔は細部に宿るのが物事の常だ」と話した。「減産が何をベースにしているか、また頻発する実行リスクという問題も大きい。さらに非加盟国の参加が期待されているが、これまでの経緯からみてあまり有望とは言いがたい」と述べた。
  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は前日比4.21ドル(9.31%)高い1バレル=49.44ドルで終了。終値ベースで10月27日以来の高値。ロンドンICEの北海ブレント1月限は4.09ドル(8.8%)上げて50.47ドル。同限月はこの日が最終取引。2月限は4.52ドル高の51.84ドル。
原題:Oil Jumps Most in Nine Months After OPEC Agrees to Output Cuts(抜粋)
◎欧州株:続伸、石油・ガス株に買い−OPECが8年ぶり減産で合意
  30日の欧州株式相場は上昇。石油輸出国機構(OPEC)が8年ぶりの減産合意に至ったことを背景に石油・ガス株が買われ、指標のストックス欧州600指数は続伸した。
  原油高を好感し石油・ガス株指数は2カ月ぶりの大幅上昇となった。英タローオイルは13%上昇し、1年4カ月ぶりの高値を付けたほか、イタリアのサイペムは9.6%高と、4月以来の大きな上げを記録した。ストックス600指数は前日比0.3%高の341.99で終了。一時は0.7%値上がりした。
  12月4日にイタリアで行われる改憲の是非を問う国民投票も注目されている。同国株の指標であるFTSE・MIB指数は続伸し、この日は2.2%上昇。否決されたら政治不安が高まるとの懸念から28日には2カ月ぶり安値を付けていた。
  オッペンハイマー・ヨーロッパのセールス・トレーダー、スチュアート・サミュエルズ氏(ロンドン在勤)は「原油価格がこの日の相場上昇の追い風となっている」と述べた上で、「幾らか利益を確定した方がいいかもしれない。今週末のイタリアでの国民投票はより大きな問題だ」と語った。
  ストックス600指数は月間ベースでは0.9%上昇と、3カ月ぶりのプラスとなった。トランプ米次期大統領が財政支出を拡大するとの観測が支援材料。景気拡大から恩恵を受ける鉱業株や銀行株、保険株の上げが目立った。一方、公益事業株や電気通信銘柄などディフェンシブ銘柄は後れを取っている。
原題:Energy Producers Boost European Stocks After OPEC Output Deal(抜粋)
◎欧州債:ポルトガルとドイツ国債のスプレッド拡大−債務懸念が根強い
  30日の欧州債市場ではポルトガル国債が軟調で、ドイツ国債に対する利回り上乗せ幅(スプレッド)が拡大を続けた。
  ポルトガルではコスタ首相にとって2度目となる予算案が議会で成立。経済は上向き基調にあり、英国の欧州連合(EU)離脱選択やイタリア国民投票の混乱の中でも安定ぶりが際立っている。それでも投資家らのポルトガル国債に対する関心は低く、ドナルド・トランプ氏の次期米大統領当選に伴う世界的な債券売りに巻き込まれている。
  オプティマイズ・インベストメント・パートナーズ(リスボン)のディオゴ・テイシェイラ最高経営責任者(CEO)は、「実際のところ国内では好材料が続いているが、トランプ氏当選や米国債の利回り上昇といったより大きな要因があった」と指摘。「さらに深く検証すると、債務漬けの構造に変わりはない」と続けた。
  欧州中央銀行(ECB)の資産購入にもかかわらず、ポルトガル国債の29日までの年初来パフォーマンスはユーロ参加国の中で最も悪い。ブルームバーグ世界債券指数によれば、ポルトガル国債のリターンはマイナス3%と、イタリア国債よりも悪い。その他のユーロ圏諸国はプラスを記録している。
  ポルトガル10年債利回りはECBのドラギ総裁が量的緩和策を打ち出した2015年初め時点で2.4%だったが、この日は一時3.7%に上昇、ドイツ国債とのスプレッドは350ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に拡大した。
原題:No Love for Portugal Bonds as Debt-Burden Woes Eclipse Stability(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-11-30/OHGNSXSYF01W01
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/309.html

[国際16] トランプ氏の顧問ハム氏の資産、3時間で3400億円増加 イラン核合意破棄は「愚の骨頂」CIA長官がトランプ氏に懸念 金利
トランプ氏の顧問ハム氏の資産、3時間で3400億円増加 
Brendan Coffey、Jack Witzig
2016年12月1日 10:35 JST 
Source: Bloomberg Billionaires Index
  米エネルギー業界で首位の富豪、ハロルド・ハム氏の資産評価額がニューヨーク時間の11月30日午前に30億ドル(約3400億円)増加した。同氏が率いるコンチネンタル・リソーシズのニューヨーク市場の株価が午前の取引で一時10.58ドル(22%)上昇したためだ。石油輸出国機構(OPEC)が原油減産で最終合意したことを受け、原油先物は値上がりし、エネルギー会社の株価も軒並み上昇。ブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、トランプ次期米大統領のエネルギー顧問の1人であるハム氏の資産評価額は29日の取引終了時点で138億ドルで、世界66位だった。
原題:Trump Ally Hamm Adds $3 Billion in 3 Hours on OPEC Deal: Chart(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-01/OHHETQ6TTDSH01

イラン核合意破棄は「愚の骨頂」、CIA長官がトランプ氏に懸念
 11月30日、米中央情報局(CIA)のブレナン長官は、同日に放映された英BBCのインタビューで、ドナルド・トランプ次期米大統領が選挙戦で訴えたイランとの核合意廃棄は「愚の骨頂」だとし、破棄すればイランや他国の核兵器獲得につながりかねないと懸念を示した。写真はアリゾナ州で8月撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)
 11月30日、米中央情報局(CIA)のブレナン長官は、同日に放映された英BBCのインタビューで、ドナルド・トランプ次期米大統領が選挙戦で訴えたイランとの核合意廃棄は「愚の骨頂」だとし、破棄すればイランや他国の核兵器獲得につながりかねないと懸念を示した。写真はアリゾナ州で8月撮影(2016年 ロイター/Carlo Allegri)
[ロンドン 30日 ロイター] - 米中央情報局(CIA)のブレナン長官は、30日に放映された英BBCのインタビューで、ドナルド・トランプ次期米大統領が選挙戦で訴えたイランとの核合意廃棄は「愚の骨頂」だとし、破棄すればイランや他国の核兵器獲得につながりかねないと懸念を示した。

またシリア危機をめぐり、トランプ氏がロシアと協力しようとするなら用心すべきだと警告。「米ロ関係が改善されることを望む」としながらも、「ロシアが約束通りのことをしたためしはない」と語った。

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トランプ氏は「危険な」大統領になる=米共和党の安全保障専門家
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-cia-idJPKBN13P0PX


 

トランプ氏の政策、レーガン流なら金利上昇=中尾ADB総裁
 12月1日、アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁(写真右)は、都内で講演し、トランプ米次期大統領の経済政策について「評価するのは時期尚早」とした。写真はハノイで6月撮影(2016年 ロイター/Nguyen Huy Kham)
 12月1日、アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁(写真右)は、都内で講演し、トランプ米次期大統領の経済政策について「評価するのは時期尚早」とした。写真はハノイで6月撮影(2016年 ロイター/Nguyen Huy Kham)
[東京 1日 ロイター] - アジア開発銀行(ADB)の中尾武彦総裁は1日、都内で講演し、トランプ米次期大統領の経済政策について「評価するのは時期尚早」とした。仮にレーガン元大統領のような「歳出拡大と減税を進めるならば政府借り入れが増え金利上昇につながる」と指摘した。

米連邦準備理事会(FRB)が進める利上げについては金融市場は織り込んでおり、アジアと米国間の資本の流れに大きな変化はないとの見通しを示した。日銀の進める低金利政策は、その結果、日本経済が強くなればアジア諸国に良好な影響を与えるが、問題は日本経済が強くなれるかだと指摘した。

(竹本能文)
http://jp.reuters.com/article/adb-nakao-idJPKBN13Q32M
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/551.html

[経世済民116] 自ら緩やかな死を望む「中高年引きこもり当事者」の絶望 墓・坊主なしの弔い なぜ残業は犯罪か  人類は絶滅を逃れられるのか
「引きこもり」するオトナたち
【第269回】 2016年12月1日 池上正樹 [ジャーナリスト]
自ら緩やかな死を望む「中高年引きこもり当事者」の絶望
家族の遺体が発見されるケースも
「緩慢な自殺」を選ぶ人々の心境


誰ともつながりを持たない人たちが、人知れず孤独死していくケースが後を絶たない。なかには、中高年の引きもこり当事者もいる。この現実をどれだけの人が知っているだろうか(写真はイメージです)
誰ともつながりを持たない人たちが地域の中に埋もれたまま、人知れず孤独死していくケースが後を絶たない。

11月17日には、岐阜市で70歳代の両親と40歳代の長男の家族3人が、自宅で遺体となって見つかった。3人とも痩せ細った状態で目立った外傷はなく、死後しばらく経過していたとして、警察では餓死か病死の可能性があると見て捜査しているという。

身近なところでも、つい最近、ある老家族の40歳代後半の長男が一切の診察や治療を拒み、水だけで痩せ細って喘ぎ苦しみながら病死していくという、衝撃的な出来事があった。

「緩慢な自殺」

家族会唯一の全国組織である「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」のスタッフは、こうして死に向かっていく人たちについて、そう感じているという。

「ゆるやかに死に向かっていくことを、自分自身が望んでいる。餓死する人と同じような感じ。そうとしか思えない」

これまで、絶望の中で死んでいく人を見てきた。そんな人たちの感覚は、今は生きていても誰にも助けを求めようとしない、というものに見える。

筆者が地方に講演やイベントなどで出かければ、仕事を引退した70〜80歳を超える親たちが、「仕事をしないで家にこもっている」という40〜50歳代の子どもを抱え、これから先、どう生きていけばいいのかと途方に暮れ、泣きついてくる。そのまま親子が高齢化して、「40ー70問題」や「50ー80問題」と呼ばれるのも珍しいことではない。

実際、各地の自治体からは、「ひきこもり」層に占める40代以上の割合は、すでに半数を超えるという実態調査のデータが、相次いで公表されている。

これまで社会が目の前の課題を先送りにしてきたツケが、噴き出し始めたのではないか。様々な要因によって社会から撤退を余儀なくされ、関係性を遮断されてきた人たちの嘆きや叫び、存在そのものさえ、地域の中では潜在化していて、表に出てこない。

引きこもり対象年齢の上限は39歳
実態とかけ離れた国の実態調査

それにもかかわらず、内閣府が9月に公表した「ひきこもり実態調査」では、引きこもりの対象年齢の上限を39歳に区切って、約54万人という数値を推計している。これがどれだけ現実とズレているかは、連載第267回で紹介した通りだ。

この「机上の統計」を基に、いったい何の対策をするのか。そもそも人の人生を年齢で区切ることに、どんな意味があるのか。

「引きこもる」という行為は、今がどんなに絶望しかなくても、いつか何かが変わるかもしれない、誰かが待っているかもしれないと、どこかでまだ希望を見出しているから、生き続ける道を選択した人たちがすることだと思う。しかし、40歳を超えたとたん、実態調査や「ひきこもり」支援の対象から外される。そのことが、頑張って生き続ける道を選択してきた40代以上の人たちに与える影響は計り知れないものがあることを、どこまで認識できているのか。

そこで、こうした「人としての人生」を考えてケアしていくプランを立てていこうと、長期化、高年齢化が進む引きこもる人たちの事例について、KHJ家族会は厚労省からの委託を受け、初めての本格的な実態調査に乗り出した。

調査の対象者は、本人が40代以上で、かつ10年以上の引きこもり状態の経験がある人。KHJ家族会が、全国を6ブロックに分け、それぞれのブロックから10〜15事例、計60〜90事例を抽出し、長期化・高齢化する背景や効果的な社会参加支援策をヒアリングする。

また、全国の自治体の生活困窮者自立支援相談窓口の中から6ヵ所を選んで、スタッフが訪問し、長期高齢化する本人への支援の実情を聞きとると共に、200ヵ所の自治体窓口に対して質問紙による調査を実施。背景分析を行うと共に、複合的な困難への効果的支援策や地域ネットワークのあり方を導き出す。

KHJ家族会では、この調査研究の結果を報告書にまとめると共に、来年1月22日、名古屋市のオフィスパーク名駅プレミアムホールで、「長期高年齢化したひきこもり支援の現状と課題」と題したシンポジウムを開催。全国調査の実行委員長である川北稔准教授と、境泉洋・徳島大学大学院総合科学研究部准教授が事業報告を行う。

地域に埋もれた弱者の悲鳴を
見過ごさないための努力を

これとは別に、KHJ家族会では今後、企画している「新しい交流のかたち」の全国展開に向け、「ファシリテーター」(人が集まる場で目的に合わせてコミュニケーションを支える人たち)の養成講座(研修費無料、交通費補助)を12月23日、東京都北区の「北とぴあ」で開催する。対象者は、来年、山梨(1月15日)、神奈川(2月12日)、茨城(2月18日)、東京(3月11日)で予定している「対話交流会」の運営に参加可能な、引きもこり当事者、家族、支援者、関心のある人で、いずれも関東在住者となっている。

こうして生まれたファシリテーターらには、地域で「引きこもり」について考えている人同士がつながる場として、1月15日に山梨県福祉プラザで開かれる「ひきこもりつながる・考える対話交流会in山梨」を皮切りに、今後全国で活躍の場が用意されているという。

なぜ“緩慢な死”に向かわざるを得ないのか。それは、今の社会で引きこもる人たちが置かれた現状でもある。そんな“緩慢な死”に向かう人たちの課題をずっと解決できずにきた行政が、結局、全国組織の当事者家族会に頼らざるを得なかったということだろう。

これまで地域に埋もれて可視化されて来なかった「長期・高年齢化」の事例から、周囲が学ぶ意義は大きい。

子の将来を心配した親がどんなに財産を残そうとも、生きようとする力のない子どもが、生きられなかった事例をいくつも見てきた。逆に、どんなにお金がなくても、自らが生きようとする力さえあれば、生きていくとはできる。

従来の「引きこもり支援」が批判されてきたような「上から目線」で自分の意思とは違う人生を押し付けられる関係ではなく、地域での「対話」というフラットな関係性の中から、当事者たちが自らの意思で生きようとする力をどのように身につけていけるのか、今後の関係者の取り組みに注目していきたい。

※この記事や引きこもり問題に関する情報や感想をお持ちの方、また、引きこもり問題を考えるにあたって「こういうきっかけが欲しい」「こういう情報を知りたい」「こんなことを取材してほしい」といったリクエストがあれば、下記までお寄せください。

otonahiki@gmail.com(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください)
http://diamond.jp/articles/-/109751


 


山崎元のマルチスコープ
2016年11月30日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
「墓なし・坊主なし」の弔いをやってわかったこと
積極的な宗教心がないなら
宗教なしの弔いは可能な選択肢

?私事で恐縮だが、先週の金曜日(11月25日)札幌にいた筆者の父が、90歳の誕生日を目前に亡くなった。


?近年、お墓やお葬式の方法、さらにはお寺との付き合いになどに悩む人が多く、相談を受けることもあるので、読者の参考になればと思い、以下、札幌の我が家の弔いの様子を書く。

?あらかじめ申し上げておくが、筆者の意図は、読者に無宗教を積極的に勧めようとするものではない。信仰が人生の助けになる人もいるし、宗教は文化や芸術にも多大な貢献をして来た。また、先祖のお墓に手を合わせることが、心に良い影響をもたらすという意見もあり、これも否定しない。

?ただ、いずれの宗教にも入信しない場合や、何らかの宗教への信仰心はあるものの、現実の宗教ビジネスがあまりに商業的であって、端的に言ってお金が掛かりすぎることに納得できない場合に、筆者の家族のようなやり方があることをお伝えしておきたいだけだ。世間には、積極的な宗教心からではなく、惰性で、あるいは手続きのためだけに、お寺や墓地に拘束されて、面倒な思いと、少なからぬ支出に悩んでいる方が少なくないようにお見受けする。

?さて、大正15年生まれの父は、約2年前に転倒して頭部を強打し、生死をさまよう大怪我をしたが、リハビリテーションが上手くいき、1年半ほど前から札幌市内の介護付き施設に入所していた。老人特有のもの忘れや動作の遅さなどがあったが、認識は十分保たれていて、電話で話もできたし、碁を打ったり、俳句を作ったりもできた。妻(81歳)がほぼ毎日施設を訪ねて、また施設での人間関係にも恵まれて、順調に暮らしていた。

?数日前から背中の痛みを訴えて、病院に行くなど、やや不調であったが、亡くなる当日は、訪ねてきた妻とリンゴを食べ「美味しい、美味しい」と言って食欲もあり、施設の玄関まで見送りに出るなど前日よりも元気だった。母は「これから調子が上向くのだろう」と思って、午後遅くに札幌市内に所用で出掛けたという。

理想のピンピンコロリ
父の死亡から帰宅まで

?ところが、その日の夕刻、施設の担当者が夕食を知らせに来てみると、ベッドに座っている父の様子がおかしい。直ちに医者を呼んだが、18時14分付けで死亡が確認された。苦しんだ様子もなく、血を吐くなどの跡も一切なく、静かに事切れていたのだという。急変の知らせを受けた母は施設に駆けつけたが、最期には間に合わなかったし、息子(筆者)、娘(筆者の妹)も東京で働いており、同様だった。

?しかし、世間では理想の死に方と言う向きもある、いわゆる「ピンピンコロリ」の死に方の場合、こうなるのは仕方がない。本人・家族ともに最後の別れを言うことができないが、家族の時間を余計に使うこともなく、心配を掛ける時間もないし、終末の医療費も掛からないのは大変いい。

?なお、本人は、施設に対し、一時的な延命措置を望まないことについて、意思確認の書類を提出していた。意識がないのに、各種の管がつながって生きているような状態を、本人も家族も嫌ったのだ。

?知らせを受けて、筆者と妹は取り急ぎ羽田空港に向かい、最終便で札幌の実家に着いた。到着は零時を過ぎていたが、母が葬儀社に連絡を取り、父の遺体をすぐに自宅に戻しており、父は和室の一室に仰向けに寝ていた。顔に布は掛けられておらず、声を掛けると目を覚ましそうな様子だ。

?遺体はドライアイスによって冷却されており、葬儀社によると丸2日間、自宅に置くことができる。「その間、ゆっくりお別れしてください」と言う。ドライアイスは半日単位で葬儀社によって取り替えられた。

?遺体の様子はまるで普通で、恐ろしさや、おどろおどろしさは一切なかった。線香の臭いなどがないのが、良いのだろう。筆者は、二晩、遺体の近くに寝ていて、思い出したことなどを語り掛けた。生前の父との違いは、いびきも返事もないことくらいだ。

?今回のやり方だと、家族は故人との別れをゆっくり惜しむことができる。葬儀社が手際よく用意した枕元の小机に花を飾り、故人が好きだった珈琲や紅茶などを入れる度に声を掛ける。2日目の夜は、「そういえば、彼は、家族とすき焼きをするのが好きだった」と思い出したので、残った家族3人ですき焼きをしながら、故人の思い出話をした。

?家族だけで別れを惜しむのがいい、という母の意向で、父の死亡は、父の弟夫妻と札幌在住の甥、及び父が作った会社(現在は母が社長)の筆頭部下にしか知らせなかったので、彼ら以外の弔問客もない。

丸2日間、自宅の和室で
ゆっくりと家族だけでの別れ

?通夜・告別式などに伴う、受付、挨拶、香典のやりとり、お経やお坊さんの説教などもないし、何よりも家族はゆっくり眠ることができる。通夜、告別式は、冬場では会場のどこかが寒いし(かつて祖母の葬儀の際に、叔父が「坊主って、寒さに強いな」と言っていたのが印象的だ)、遺族が心身共にひどく疲れることが多い。ただでさえ悲しい時なのだから、これらがないのは大きなメリットだ。

?火葬は早々に日曜日と決まり、前日の夕方に、納棺師さん(若い女性で、希望してなったという。映画「おくりびと」でも観たのだろうか)が体を清めて、着替えを行ってくれた。遺体の肌を見せないように布を掛けたまま行うのだが、見事な手際で作業が進み、シャツにベストとジャケット、下はズボンという、妻が満足するお出かけスタイルの着替えが、短時間できちんとでき上がった。

?火葬までに家族がすべきことは、棺に一緒に入れる小物(なるべく燃え残らない物)を選ぶだけだ。今回は、息子、娘からの手紙、俳句やメモを書いていた鉛筆の入った筆入れ、娘宛ての住所が印刷された葉書数枚、それに本人愛用の帽子を入れた。

?火葬の当日は、葬儀社の車が来て遺体を運び出した。マンション暮らしのため、部屋に十分なスペースがないことと、棺の運び出しが困難なことから、遺体は葬儀社で棺に納めた。家族は葬儀社の車に同乗し、まず葬儀社へ、次に火葬場に向かう。

?火葬場では、焼香や読経その他が一切なく、立ち会った家族3人と、弟夫婦、甥の6人は、故人との別れを惜しむだけでいい。

?遺体は約90分で焼き上がった。6人で骨を拾い、骨壺に収めた。家族は、葬儀社の車で遺骨と共に自宅に戻った。

?母によると、総費用は、棺代なども含めて、約37万円だったという。やり方にもよるだろうが、お葬式を行うよりは安い。お葬式の場合、香典で費用が賄えるかもしれないが、他人が払うとはいえ、一連のサービスに多額の支払いを行うことだから、その納得性が問題だ。収支だけで考えるべき問題でもないだろう。

?お坊さんなしの弔い(「坊主フリー」と呼ぶか「坊主レス」と呼ぶか迷っている)、をやってみて、「何よりも、家族でゆっくり、心のこもった別れができたのが良かった」というのが故人と長年連れ添った筆者の母の言であり、息子、娘も、100%同意するところだ。

母の英断と行動力
お墓は3年前に撤去した

?かつて、父方の山崎家は、小樽市内のあるお寺の檀家だった。特に、一時期の父は熱心であり、そこそこに寄付なども行っていたので、寺の境内の良い場所に山崎家の墓があった。

?しかし、住職が代替わりするのと共にお寺の有り難みが薄れた。加えて、寄付を求める、墓があるのに納骨スペースを買わせる(父は130万円出して付き合ったが、一度も使われることがなかった)、お盆には頼みもしないのに住職がやって来ては心のこもらない(と我々には聞こえた)お経を上げてお金を持って行く、といった調子で、お寺の商業性が露骨に見えるようになって、しだいに不快感が募った。

?とはいえ、お寺に墓があり、先祖の骨を持たれている以上、お寺と縁を切ることができず、いわば、骨と墓を質に取られているような状態だった。

?その状態は長く続いたが、3年と少々前のある日、母がお墓を撤去して散骨を行うNPO法人があるとの記事を見つけて、興味を持った。お墓及びお寺が、子孫の負担になるとの考えの下、彼女は、息子・娘に相談して、お墓を撤去し散骨を行い、件のお寺と縁を切る意向を固め、これに父も同意した。

?その後の母の行動は早かった。記事で見つけた「一般社団法人・終活支援センター」と連絡を取り、さらに寺と交渉して、お墓からお骨を取り出し、お墓を撤去する作業を進めた。お骨の取り出しと洗浄、及びお墓を更地に戻す費用が数十万円掛かり、「きっと家族に悪いことが起こりますよ」という、お寺の脅しとも呪いともつかぬ嫌味を我慢したが、3年前に墓の撤去を終えて、お骨を父の一家にゆかりの深い小樽の海に散骨してもらった。

?散骨の費用は一体あたり3万数千円だったとのことで(現在の同センターのホームページには3万9000円とある)、11体分の費用が掛かったが、これで完全にお寺との縁が切れた。息子としては、母がしてくれた数々の事の中でも、特に感謝したい快挙であった。

?母は、実家の仏壇も撤去し、縁の近い先祖数人の写真を箪笥の上の目立つ場所に飾って、毎日、写真に向かって語り掛けている。彼女は、「狭い仏壇の中に閉じ込めておくよりも、はるかにご先祖様に対して親しみが湧くし、彼らのことを思い出す」と言っている。気が向いたら、飲み物や食べ物をお供えすることも勝手にできる。

?彼女も彼女の子どもたちも無宗教だが、先祖に対する親しみや感謝の念は大いに持っている。また、冒頭にも述べたように、筆者は他人の信仰心を否定しようとは思っていない。生きている者の気持ちが整い、気が済めばいいのだ。

?ただ、宗教及び「宗教ビジネス」を介在させなくとも、心のこもった弔いはできるし、先祖を思い出して感謝する生活をすることができる、ということをお伝えしたいだけだ。

?父の遺骨は、しばらく自宅に置かれる予定だ。どこかに散骨するのがいいか、自分も一緒に埋葬してもらえるようにどこかの施設に埋葬するか、遺骨の処置を、母はゆっくり考えるという。

?息子としては、もちろん散骨で構わないし、あるいは、母親も彼女の子どもも都会の賑わいと人間が好きなので、彼女の娘と息子が暮らす東京都下の共同埋葬施設に納めてもらうのがいいかもしれない、とも思っている。

?明日あたりは、父の写真が実家のどこかに飾られるはずだ。父の写真にあれこれ語り掛けながらの、母の新しい生活が始まる。
http://diamond.jp/articles/-/109622

 

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残業ゼロがすべてを解決する
【第2回】 2016年12月1日 小山 昇
なぜ、残業は犯罪なのか?
小池百合子都知事が「夜8時には完全退庁を目指す」、日本電産の永守重信社長が「2020年までに社員の残業をゼロにする」など、行政も企業も「残業ゼロ」への動きが急加速している。
電通過労自殺事件で強制捜査が入ったいま、中小企業も大企業もお役所も「残業ゼロ」に無関心ではいられない「シビアな時代」となった。
株式会社武蔵野は、数十年前、「超ブラック企業」だった。それがいま、日本で初めて日本経営品質賞を2度受賞後、2014年からの残業改革で「超ホワイト企業」に変身した。
たった2年強で平均残業時間「56.9%減」、1.5億円もの人件費を削減しながら「過去最高益」を更新。しかも、2015年度新卒採用の25人は、いまだ誰も辞めていないという。
人を大切にしながら、社員の生産性を劇的に上げ、残業を一気に減らし、過去最高益を更新。なぜ、そんなことが可能なのか?
12月2日に発売される『残業ゼロがすべてを解決する――ダラダラ社員がキビキビ動く9のコツ』の著者・小山昇社長にその秘密を語ってもらった。

「ダスキン事業部」=「ブラック事業部」!?


小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/
?今だから明かせますが、1990年代の武蔵野は、漆黒暗黒の超・超・超ブラック企業でした。

?社員の久木野厚則(ITソリューション事業部長)と小林哲也(ダスキンクリーンサービス事業部長)は、入社早々、わが社の企業体質に「目を疑った」と言います。

「武蔵野へ面接にきた日のことは、今でも鮮明に覚えています。ダスキンの会社なのに驚くほど会社が汚くて(笑)、玄関の脇で5、6人の社員がたむろしていて、みんな頭に剃り込みが入っていたんです」(久木野)

「入社初日にやらされた仕事が、ライバル会社を『尾行すること』でした(笑)。ライバルの営業マンが武蔵野のエリアに入ってきそうになったら、『向こうに行け』と言う(脅す)のが仕事です」(小林)

?久木野と小林が入社時に配属された「ダスキン事業部」の別名は、「ブラック事業部」でした。

「週休2日、9〜17時」の求人広告を出していたものの、実際には、コンビニエンスストア「セブンイレブン」開店当初の営業時間(7〜23時)を超えた勤務体系で、「週休1日、午前7〜翌1時勤務」状態だったからです。

?アルバイトで入社した久木野は、すぐに「ブラック事業部」の洗礼を浴びました。

「1日に訪問するお客様の数が、尋常ではなかった。多いときで、『1日に170軒』も回らされましたから……。
?同業他社の中には、1日に10〜20軒しか回らない営業マンもいたので、それを考えると、武蔵野は正気の沙汰ではありません(笑)。『週休2日、9〜17時』だと思って入社したのに、朝7時に出社して、夜中の1時頃家に帰る日もしょっちゅうでした。
?その後、ルートセールスから新規部門(インターネットのプロバイダ部門)に異動になったときは、『これでやっと深夜残業がなくなる』と思っていたのに、まったく逆でした。会社に泊まり込む日が続いた。布団なんてありませんから、ダンボールを床に敷いて寝ていました」(久木野)

?バンドを組み、ロックスターを夢見ていた小林は、音楽事務所の解散を機に、武蔵野で働くことになりました。

?ギターをホウキに持ち替えた小林は、わが社で「気合と根性の本当の意味を知った」と言います。

「武蔵野に、夢はなかったですね(笑)。上司の指導はそれはもう丁寧で、私が質問をすると、返ってくる答えはいつも、『うるせぇ、やれよ!』でした(笑)。
?辞めていくスタッフもたくさんいましたが、『辞める』ことが先輩に知れると何をされるかわからないから(笑)、みんな『逃亡』していました。
?要するに、夜逃げです。
?ただ不思議と、私は辞めようとは思わなかったですね。当時の武蔵野には、部活の延長みたいなノリがあったし、辞めずに残っている社員の一体感も強かったので、勤務時間が長くても、面白かったです。社長が率先してライバルを潰しにいく会社なんて、なかなかないですから」(小林)

どうして残業は「犯罪」なのか?

?あえてはっきり言います。残業は「犯罪」です。

?では、どうして残業は「犯罪」なのでしょうか。
?どうして残業をなくさなければいけないのでしょうか。
?端的に言うと、

「今の時代においてはマイナスでしかないから」

?です。

?厚生労働省が発表した2016年6月分の有効求人倍率(季節調整値)は、「1.37倍」の高水準(東京都に限っては2.05倍)。雇用環境は「超売り手市場」に移行し、大きく変化しています。

?これまでは、「人が辞めても、新しい人を採用すればいい」と考えることができたが、超売り手市場では、中小企業が新規採用をするのは難しくなる。

?ということは、優秀な社員の定着率を上げるためにも、これから新しい人材を確保するためにも、今一度、人事の仕組みを見直さなければなりません。

?また、新卒社員のトレンドも大きく変化しています。

?いわゆる「ゆとり世代」以前は、「給料が高い会社がいい」と考える学生が多かった。
?でも、「ゆとり世代」以降は、「給料はほどほどでいいから、プライベートの時間が多い会社がいい」と考える学生が増えています。

?事実、『2016年マイナビ新入社員意識調査』では、「プライベート優先」が2011年の調査以降最高の56.5%。過去6年間で13%以上も増加しています。

?残業や休日出勤が多い会社は、学生にとって人気がなく、残業や休日出勤が多ければ、新卒の離職率を高める原因になります。

?世の中とお客様は、常に変化します。
?そして、その変化のスピードは年々速くなっています。

?私が2014年から残業問題に猛烈に力を注いだのは、過去の感覚を引きずったままでは、中小企業は生き残ることができないと気づいたからです。

?変化への対応が企業の活路です。

?時代に合わせて会社を変えなければ、学生からも従業員からもお客様からも、見放されてしまうのです。

小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/
DIAMOND,Inc. All Rights Reserved.
http://diamond.jp/articles/-/109548


 

人類は絶滅を逃れられるのか
【第3回】 2016年12月1日 スティーブン・ピンカー,マルコム・グラッドウェル,マット・リデレー,藤原朝子 [学習院女子大学]
マルコム・グラッドウェルが語る、21世紀に人類を待っているリスク
核戦争、人口爆発、異常気象、AIの爆発的進化、テロリズムの跋扈……人類の未来を待っているのは繁栄か、滅亡か。スティーブン・ピンカー(『暴力の人類史』)、マルコム・グラッドウェル(『ティッピング・ポイント』)、マット・リドレー(『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』)ら知の巨人たちが21世紀の未来の姿を描き出します。11/25刊行の新刊『人類は絶滅を逃れられるのか――知の最前線が解き明かす「明日の世界」』からそのエッセンスを紹介します。第3回はマルコム・グラッドウェルが21世紀における世界的リスクについて語ります。


人類は協働によって進歩し続ける?

――あなたは、新しいテクノロジーやグローバルなトレンドをもてはやす現代の文化的風潮に異議を唱えていたと思います。

マルコム・グラッドウェル?ええ。テクノロジーなど個々の領域における進歩と、人類全体の進歩は、分けて考える必要があると思います。そうでしょう?おそらく肯定派は、これまでの進歩の具体例と、それが今後も続くと思われる領域を示すでしょう。私はそれをすべて認めるつもりです。その指摘はまったく正しい。私だって今後よくなると思うことをリストアップできます。でもそれは5年後、10年後、あるいは25年後の人類が今より進歩しているかという問いには、まったく答えていません。

個人的には、「ある問題を解決する進歩は、新たな問題を生み出すのか。それはどんな問題か。その新しい問題は、解決された問題よりも大きいのか、同じくらいなのか、小さいのか」といった問いのほうが興味がありますね。

――核兵器がいい例ですね。原子力は重要なエネルギー源ではあるけれど、究極的には街を吹き飛ばすことだってできる。

グラッドウェル?そのとおり。

――人類はナノテクノロジーを発明しましたが、それを武器に応用すれば人類を破滅させることもできる。あなたが懸念しているのは、多くのテクノロジーには、こうした2通りの使い方があることですか。

グラッドウェル?テクノロジーをはじめさまざまな領域が進歩すると、そのマイナスの側面と破壊的な性質も飛躍的に進歩する。だからある領域で大きな飛躍があるたびに、たとえばですが、人類が自らを破滅させる能力も飛躍的に高まるのです。

――モラル面での人類の進歩についてはどうお考えですか。人類は周囲の世界を改善するだけでなく、人間性という内面も改善させてきたという主張があります。スティーブン・ピンカーはその代表格です。

グラッドウェル?ピンカーが著書『暴力の人類史』(邦訳・青土社)で言っていることは、ありきたりで、しかもまったく的外れです。私たちは「処女を火山に投げ込み、キャベツを盗んだ人の手を切り落としていた」時代よりも、人間として進歩したか。当然でしょう。それを否定する人なんていません。

私にとっては、あまりにも当たり前で、ほとんど陳腐な主張に思えました。それに彼の主張は、ごくひと握りのとてつもない極悪人が、私たちの暮らしに重大な変化をもたらす可能性を考慮していません。つまり人類の99.9%の暮らしは昔よりよくなったかもしれませんが、残りの0.1%によって、恐ろしく惨めな状況に突き落とされる可能性があるのです。

ソ連では、スターリンのせいで2000万人が命を落としました。スターリン以外の全員が天使だったとしても、たった一人の独裁者によって、無数の人がぞっとするような運命をたどった事実は変わりません。究極的にはピンカーの主張では、こうした世界をうまく説明できないと思います。

――私たちはキリスト教の起源から現代まで、進歩にとりつかれてきたようです。今は人工知能に夢中です。人間は進歩によって、自分の能力に対する不満を補っているのでしょうか。

グラッドウェル?そのような説明は非常に有用で、事実ならとても有益です。例を挙げましょう。私は走るのが趣味ですが、ランナーは自分たちが進歩していると思いたがるものです。毎年のように世界新記録が出るでしょう?そうするとランナーのコミュニティは、毎年少しずつ進歩している、自分たちは先人たちよりもよくやっているという錯覚に陥るのです。

たしかに100メートル走で9.51秒ではなく9.50秒という記録が出れば、観客は興奮し、ランナーは満足かもしれません。しかしそれは人類にとって重要な、意味ある事実を何ら変えるものではありません。誰かがシューズのスパイクを微調整したとか、トラックの表面が少し違うだけかもしれません。人間の本性に何ら有意義な違いをもたらすわけではないのに、私たちは「進歩」と聞くと、やみくもに崇拝するところがあると思います。
http://diamond.jp/articles/-/109789
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/317.html

[経世済民116] 日銀当座預金に債務性はあるはずがない。田中秀明教授に再反論 中央銀行の仮想通貨発行 量と金利で金融緩和継続、金利操作順調
【第158回】 2016年12月1日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
日銀当座預金に債務性はあるはずがない。田中秀明教授に再反論
会計上負担になる
債務性がないのは明らか
 筆者は4週間前に本コラムで「日銀当座預金を民間銀行の「預金」と勘違いする人々へ」を書いた。田中秀明・明治大教授がそれに反論した「埋蔵金と日銀の国債購入で日本の借金は消えるのか?高橋洋一教授に反論!」というので、今回はその再反論と思っていた。

 ところが、ネットで探してみると、「民間銀行の日銀当座預金残高の本質〜日銀の保有国債は政府の負債と相殺して見ることができるか?〜」で、竹中正治氏が、田中氏と筆者の論考を比較し、筆者の主張が妥当であるとしている。
 論争の本質部分は、これでおしまいである。
 当然だろう、日銀当座預金に統合政府の会計上、債務性があるはずがない。これは、単純な思考実験でもわかる。今の日銀による金融緩和ではなく、政府紙幣の発行による金融緩和を考えてみればいい。日銀当座預金は、政府紙幣(これは日銀券と同じ)に置き換わるわけであるので、会計上負担になるような債務性がないのは、明らかだろう。
 経済学者はすこぶる会計に弱い。連結BSとかいうと、さっぱりお手上げの学者が多いが、この程度は簿記レベルの話である。
 統合政府のバランスシートで考えるというのは、日銀が購入した有償還・有利子の国債が、無償還・無利子のマネタリーベースと置き換えられることを意味する。このため、統合政府のバランスシートの負債は、負債側は国債等950兆円、日銀券100兆円、日銀当座預金300兆円となるが、マネタリーベースの400兆円は実質的に負債から除いて考えてもいい。
 これは、中央銀行という発券銀行たるゆえんである。実務的に見ても、日銀が購入した国債の利払費は政府が払っても日銀納付金で返ってくるし、償還費も日銀乗り換え(日銀引き受け)で不要である。
 実は、筆者のほうが妥当と結論付けてくれた竹中氏の論考なのだが、最後のところで残念なところがある。「日銀には金利の引き上げ幅次第で莫大なマイナス利鞘による損失が生じる」とされている点である。この点は、ほとんど識者が、金融政策の出口戦略のときのリスクとして指摘しているが、ちょっとミスリーディングである。
 田中氏の論考でも、国債購入でどれだけ損をしているかとして、似たような言及がある。そこでは、深尾光洋氏や岩田一政氏の研究を引用して、日銀のコストを強調している。
日銀のコスト強調に呆れていた
バーナンキ氏やサマーズ氏
 これは、コストを日銀だけで見るか、統合政府見みるかによって、異なってくる。これまでも、日銀官僚は、日銀のコストを強調してきた。
 これに対して、海外の著名学者であるバーナンキ氏やサマーズ氏は呆れていたのを、筆者は実際に見ている。バーナンキ氏は誠実な人柄から、「そんなに日銀の損失が心配なら、一定の長期損失補填契約を日銀と政府で結べばいい」とまで公式に答えている。
 サマーズ氏の場合、ぶっきらぼうに、日銀財務問題をくだくだと説明する日銀官僚に対して、「So what」(それで何が問題?)と答えた。
 どうして、海外の碩学らが日銀の財務問題を取るに足りないと考えているかといえば、以下の通りである。
 まず、中央銀行の決算の基本をおさらいしておこう。実際の決算は複雑になっているが、その基本的なところはかなりシンプルだ。
 日本銀行のバランスシートを見ると、基本は、資産側に国債、負債側に日銀券と日銀当座預金だ。つまり、負債側はマネタリーベースとなる。つまり、資産側には有利子債権、負債側は無利子債務である。現状では、日銀当座預金250兆円のうち210兆円程度には0.1%、20兆円は無利子、20兆円には▲0.1%付利されているが、日銀券との代替が基本であるので、すべて無利子が本来の姿だ。民間銀行の当座預金が無利子であることを考えればわかるだろう。
 このように、資産が有利子債権、負債が無利子債務が中央銀行の基本構造である。無利子債務は、常識的な意味では「借金」でない。
 この場合、収益は総資産に金利をかけた利子収入になる。この意味で、金利が低下すれば、毎年の日銀の収益は少なくなっていく。これが将来にわたって続くわけだが、それらの現在価値の和は、高校レベルの「等比級数の和」の公式を適用すれば日銀が購入していた国債の額面金額になることがわかる。これが通貨発行益である。
 もちろん、この通貨発行益は、日銀納付金として国庫に入るが、政府と日銀を合算した統合政府で見れば、統合政府のものだ。
日銀は法的に政府の子会社
統合政府で考えるべき
 仮に、日銀保有国債で損失が出る場合、必ずその損失額は国債の額面金額より小さい。ということは、通貨発行益の範囲内であるので、統合政府で見れば取るに足りないことだ。
 なお、「保有国債の損失が国債の額面金額より小さい」という話は、2015年4月6日付け本コラム「財政再建には順序がある 増税は最後の手段」の最後にも書かれている。
 日銀が法的に政府の子会社である以上、統合政府で考えるべきであるが、日銀官僚はそう考えずに、日銀だけで決算をいう。そうした情報がマスコミに流れて、マスコミ報道は頓珍漢になる。
 民間企業であれば、グループ決算が重要で、個別会社の決算は意味がないだろう。しかし子会社であるにもかかわらず、日銀官僚は、日銀保有国債の評価損が出る、引当金が必要だといい、騒ぐ。統合政府で見れば、取るに足らないことなので、政府も日銀が好きなようにしろという態度だ。
 はっきりいえば、子会社の日銀の財務は気にする必要ない。むしろ親会社の日本を根っこで支える日本経済がよくなることが重要だ。
 また、田中氏の論考では、筆者はいくらでも高いインフレでも許容するかのように書かれている。国家債務と株式を交換したジョン・ローの失敗も引用しているが、筆者が日本でほとんど最初にインフレ目標を提唱したことを無視している。
 上に述べたように、統合政府のバランスシートで考えているというのは、日銀が購入した有償還・有利子の国債が、無償還・無利子のマネタリーベースと置き換えられることだ。それをやれば、インフレになるのはわかっている。ただし、筆者は過度なインフレにならないようにインフレ目標も主張している。こうした手が打てるのはデフレだからであり、インフレ目標2%を超えてまで行うことはない。
 ちなみに、2015年12月17日付け『「お札を刷って国の借金帳消し」ははたして可能か」は一例であるが、「それはシニョレッジを大きくすればするほど、インフレになるということだ。だから、デフレの時にはシニョレッジを増やせるが、インフレの時には限界がある。その限界を決めるのがインフレ目標である。インフレ目標の範囲になるように、お札を刷ってシニョレッジを稼げというわけだ」と書いている。
財務省に洗脳されているのか?
「財政事情ガー」という政治家
 最後に、筆者は、「『財政事情が厳しいから」○○をせよ』、という言い方が嫌いである。前提条件が正しくないからだ。政治家にはこうした物言いが多いが、財務省に洗脳されたからだろう。別の理由を付けて、正々堂々と改革を主張すべきで、「財政事情ガー」というのは、一流でないと考えている。
 ちなみに、筆者は財務省が嫌う各種の改革を主張している。最近でいえば、「日本がノーベル賞常連国であり続けるには、この秘策を使うしかない!」、「年金の世代間格差、そろそろ「本当の話」をしよう【現役世代必読】」。こうした主張は、「財政事情ガー」という必要はなく、それぞれ主張の合理性を持っている。

http://diamond.jp/articles/-/109754

 

Business | 2016年 12月 1日 12:03 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
設備投資の慎重姿勢続く、法人企業統計7─9月期3年半ぶり前年比減
 
[東京 1日 ロイター] - 財務省が1日発表した2016年7─9月期の法人企業統計(金融業・保険業を除く)によると、設備投資額(ソフトウエアを含む)は全産業で前年比1.3%減で、2013年1─3月期以来の減少となった。季節調整済み前期比(ソフトウエアを除く)は0.4%増となったが、直近3四半期が減少していた割には伸びは小さかった。設備投資は慎重姿勢が続いており、米次期政権の政策の行方が不透明なことからしばらくは様子見が続く可能性がある。

「設備投資は鈍い動き」(農中総研・主席研究員・南武志氏)ー─エコノミストからはこうした見方が目立つ。伸び率は縮小し続けていたが、今回3年半ぶりに減少に落ち込んだ。経常利益が7─9月期として過去最高にもかかわらず、設備投資はさえない動きとなっている。

内訳をみると、製造業は前年比1.4%減、非製造業は1.3%減だった。製造業は、円高による利幅減少などで前年比減益が続いていることも影響したもよう。非製造業は前年の建設業や情報通信業での反動減が大きく、インバウンド需要向けのホテル建設や鉄道整備の増加で補いきれなかった。

キャッフローは引き続き増加し、手元流動性は売上高の15.5%、前年同期より積み上がっている。「企業内部に使うあてのない資金が潤沢に蓄積された状況が長期間続いている」(南氏)という状況だ。

前期比は0.4%増加したことから、7─9月期国内総生産(GDP)統計の設備投資も1次速報の前期比0.0%から0.2%程度へ上方修正される可能性を見込む声もある。ただ2次速報では国際基準への移行で研究開発投資が含まれることや、基準年改訂も同時に実施され、過去にさかのぼって数値が改訂されるため、予測は難しい。

さらに今後の動向について「米国のトランプ次期大統領はTPPの否定と法人税率の引き下げを企図しており、既に二の足を踏んでいる日本企業が設備投資の拡大により後ろ向きとなるリスクがある」(SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミスト・丸山義正氏)といった要因も働きそうだ。

*内容を追加し、写真キャプションを変更しました。

(中川泉 編集:田中志保)
http://jp.reuters.com/article/3q-capex-idJPKBN13Q2ZV

 


 

【第12回】 2016年12月1日 野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
中央銀行の仮想通貨発行が現実へ、その時何が起こるか
 各国の中央銀行が、仮想通貨の検討に熱心に取り組んでいる。その主要な目的は金融政策の有効性確保だが、他方において、銀行預金の消滅、プライバシー喪失など、大きな問題がある。

中央銀行の仮想通貨への関心が
1年間で大きく変化

 日本銀行が、11月の『日銀レビュー』で、仮想通貨に関するレポート「中央銀行発行デジタル通貨について―海外における議論と実証実験―」を発表した。
 昨年12月にも仮想通貨に関するレポートを発表しているが、それと比べると、かなりの変化が見られる。昨年は、仮想通貨のメカニズムと、国際決済銀行(BIS)の仮想通貨レポートを紹介した程度だった。
 それに対して、今年のレポートは、方向性は示していないものの、利害得失の検討などにも踏み込んだ内容になっている。
 これは、この1年の間に、世界でかなり大きな変化があったことの反映だ。1年前にBISが「中央銀行が仮想通貨を発行する可能性がある」としたときには、「なぜ中央銀行が?」という受け止め方が大勢だった。
 しかし、現在では、多くの国の中央銀行が、仮想通貨に強い関心を寄せている。今年6月にアメリカ連邦準備制度、世界銀行、IMFが主催した「ブロックチェーンとフィンテックに関するフォーラム」には、90を超える国の中央銀行が参加した(CoinDesk参照)。
 雑誌Forbesは、このフォーラムを報道する記事で、「どこかの中央銀行が5年以内に仮想通貨を実現するだろう」という関係者の言葉を引用している。
 以下では、仮想通貨の発行に関する各国中央銀行の取り組みを紹介し、その目的と、実現される姿、それがもたらしうる問題などについて述べる。

最も熱心に取り組んでいる
イングランド銀行
 仮想通貨について最も熱心に取り組んでいるのは、イングランド銀行だ。
 今年6月には、マーク・カーニー総裁が、つぎのように述べている。
 まず、「イングランド銀行が即時グロス決済へのブロックチェーン技術適用に向けた研究を進めている」ことを明らかにしている。そして、「このような銀行決済システムにおいては、ブロックチェーン技術の有用性は計り知れない」と評価している。ただし、「実際に中央銀行が仮想通貨を発行するのは、しばらく先のことになる」としているイングランド銀行総裁スピーチ参照)。
 なお、同行スタッフによる研究ペーパーなどが多数発表されている。

オランダ、スウェーデンなど
他国の中央銀行も続く
 オランダの中央銀行がブロックチェーンを用いた暗号通貨のプロトタイプであるDNBCoinの開発に取り組んでいると報道されている(CoinDesk参照)。
 それによると、3月16日にオランダ中央銀行から発表された最新の年間レポートに、この実験の詳細に関する記述があり、ブロックチェーン技術が同行のビジネスにとって有益であるとの見解が示されている。
 スウェーデンのリスクバンク(スウェーデン国立銀行)は、1660年代に世界で最初の紙幣を発行した中央銀行だ。同行は、デジタル通貨について検討するプロジェクトを立ち上げたと、フィナンシャルタイムズが報じている。
 それによると、スウェーデンで流通している紙幣と貨幣は2009年から40%も減少しており、国立銀行もこの変化に応じてデジタル通貨を検討しなければならなくなった。スウェーデン中銀の総裁代理は、「これは300年前に紙幣が発行されたのと同じくらい革命的なことだ」と述べている。
 カナダは、前述した6月のフォーラムで、CAD-Coinという名のコインを発行するとした(Forbes参照)。
 アジアでも、中国、韓国、シンガポールの中央銀行が取り組んでいる。中でも熱心なのがシンガポールの中央銀行で、仮想通貨技術を使った資金取引システムの実証実験を始める。これには、三菱UFJフィナンシャル・グループのほか、米バンクオブアメリカ・メリルリンチや、クレディ・スイス、英HSBCなど9社が組む連合体と、米ベンチャー企業のR3、シンガポール取引所が加わる。実証実験では、まず仮想通貨技術を活用した24時間対応の送金サービスを取り上げ、その後、国境を越えた取引に検討対象を広げる(日本経済新聞参照)。
 中国の中央銀行である中国人民銀行は、今年1月に北京で行なわれたデジタル通貨検討会で、同行が独自の仮想通貨を作成する構想について前向きであるという姿勢を明らかにした。範一飛副総裁は、同行発行誌「中国金融」の特集の中で、中央銀行が検討している独自の仮想通貨作成について発言し、その方向性などについて言及している(Coin Portal参照)。
 日本銀行が東京大学と開催したシンポジウムで、中曽副総裁が「日本銀行が現時点で、銀行券に代わりうるデジタル通貨を発行するといった具体的な計画を持っているわけではない」と述べている。しかし、同時に、「ブロックチェーンや分散型元帳など新しい技術の理解に努めるとともに、そうした技術を中央銀行の業務の中で活用し、自らのインフラを向上させていく余地がないかも含め、調査研究を続けていく必要がある」としている(「フィンテックと金融・経済・中央銀行」参照)。

なぜ中央銀行が
仮想通貨を発行するのか?
 中央銀行が仮想通貨を発行しようとする第1の理由は、防衛的なもの、つまり仮想通貨が広く使われるようになれば、中央銀行の必要はなくなってしまうということだ。中央銀行が自らデジタル通貨を発行すれば、紙のコストゆえに銀行券が仮想通貨に凌駕される事態を避けることができる。今年11月の日銀のレポートでも、この点に言及している。
 より積極的な理由としては、つぎのようなことが挙げられる。
 第1は、ユーザー利便性の向上だ。
 シンガポールでは、紙ベースの決済手段(現金や小切手)の利用に伴うコストがGDPの0.52%に達すること、北欧を中心にキャッシュレス化が進んでおり、銀行券の発行・管理に伴うコストを削減しようとする動きが活発化していること、などを紹介している。
 第2は、金融政策の有効性確保である。とくに、「名目金利のゼロ制約」を乗り越えやすくなる可能性だ。これによって、通貨に対して直接にマイナス金利を適用することが可能になる。この点は、イングランド銀行の論文でも強調されているが、同行のスピーチでもその論文に言及している。

中央銀行が仮想通貨を発行すると
どのような姿になるか?
 中央銀行が仮想通貨を発行すると、何が起こるだろうか。
 イングランド銀行の紙幣部門責任者が、ロンドンで開催された世界P2P金融システムワークショップにおいて、かなり詳細な姿を描いている(「Fintech: Opportunities for all?」参照)。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2016/speech919.pdf

 それを参考にすると、つぎのような形になることが予想される。
 現在は、中央銀行に口座を作成できるのは銀行だけだが、そのような制約は完全に取り払われ、個人や企業が、中央銀行に口座を作成できるようになる。
 中央銀行のほうが便利だろうから、強制しなくても人々はそちらに預金を移す。すると、商業銀行から預金が失われる。これによって、貸付が減少することになる。この結果、銀行は信用創造ができなくなる。
 1930年代に、経済学者が、預金準備率を100%にする「完全準備制」を提案したことがある。これは、「シカゴプラン」と呼ばれた。それが実現する状態と似たものが実現されることとなる。
 こうした動きに、当然のことながら、銀行は強く反対するだろう。それを考えると、実現は難しいかもしれない。また、中央銀行が、自らが発行する仮想通貨にマイナスの金利をつけるようなことになれば、人々はそれから離れていくだろう。

詳細な個人情報を
中央銀行が握る?
 前記日銀のレポートには、興味深い記述がある。それは、「より根本的な問題として、中央銀行が全ての取引にかかる情報を把握し得るような形でデジタル通貨を発行する場合、中央銀行はこれらの情報をどのように取り扱うべきかといった問題もある」というものだ。
 この問題は、仮想通貨を用いるための秘密鍵をどのように作成し、どのように管理するかに関連している。ビットコインの場合、秘密鍵は自分で作成することも不可能ではない。そのようなシステムであれば、匿名性を維持しつつ利用できるだろう。
 しかし、メガバンクなどが発行する仮想通貨の場合には、本人確認の上で銀行が秘密鍵を各自に与える形になるのではないかと思われる。その場合には、システムの管理者である銀行は、取引者を知ることができるわけだ
 中央銀行が仮想通貨を発行する場合、どちらのシステムをとるかが問題となる。
 スウェーデン国立銀行が仮想通貨を計画中と上で述べたが、「電子的にやり取りされた記録は後から追跡が可能なものなのか」という問題について、関係者は、「個人的には現金に近い形で実現したいと考えている。しかし、違法な行為には使われないようにしたい」と語っている。これから考えると、現金とは違って、個人の使用経歴を中央銀行が追跡できる可能性も残っていると思われる。
 仮に詳細な個人情報が得られたとしても、中央銀行がそのような情報を直接に利用することはないだろう。前記日銀の記述には、戸惑いの様子が感じられる。
 しかし、他の政府機関から情報提供の要請はあるだろう。それに応じれば、捜査機関は、捜査令状なしに情報を得ることができる。
 これは、「バックドア問題」として議論されてきたことだ(バックドアとは、「裏口」のこと。「正規の手続きを踏まずに内部に入ることが可能な侵入口)。
 2015年12月にカリフォルニア州で起きた銃乱射事件に関して、これが大きな問題となった。FBIからの解除要請をAppleは拒否したのだが、公的機関である中央銀行が、民間企業と同じように拒否できるかどうかは、疑問だ。
 これは、中央銀行の仮想通貨に関して最も基本的な問題として今後議論されることになるだろう。

http://diamond.jp/articles/-/109753

Business | 2016年 12月 1日 12:11 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
量と金利で金融緩和継続、長期金利操作は順調=桜井日銀審議委員
 
[大津市 1日 ロイター] - 日銀の桜井真審議委員は1日、滋賀県・大津市内で講演し、9月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)政策を導入して金融政策の軸足を「量」から「金利」に移したが、引き続き量・金利の両面で金融緩和を続けていくスタンスに変化はない、と語った。また、長期金利操作は、これまでのところ順調に機能しているとの認識を示した。

<大規模な国債買い入れ続ける>

桜井委員は、新たな金融政策の枠組みの下で長期金利を操作対象に加えたことによって「金融仲介機能への影響等にも配慮した、より柔軟な政策運営が可能となり、政策の持続性も高まった」とし、長期金利操作は「これまでのところ順調に機能している」との認識を示した。

金融政策の軸足をそれまでの「量」から「金利」に移行したものの、「金利と量は表裏一体。金利をコントロールするために、大規模な国債買い入れを続けていくことになる」と主張。「引き続き量・金利の両面で金融緩和を続けていくスタンスに何ら変わりがない」と強調した。

日銀が大規模な金融緩和を続ける中で「持続的な物価の下落という意味でのデフレではなくなった」としたが、「物価安定の目標は達成できていない。持続的な経済成長という点でも、まだ十分な成果は得られていない」と指摘。

依然として、企業や家計は先行きの物価や成長率が高まらないとの前提で経済活動を行っている「均衡状態」にあるとし、そこから抜け出すには「幅広い主体の粘り強い努力が必要」との認識を示した。

賃金の引き上げに向けた政府と民間部門の取り組みは「物価の安定を強く支持する」と述べるとともに、今後の物価動向を占ううえで「来春の賃金改定交渉に大変注目している」と強調した。

これらの取り組みによって物価や経済成長の見通しが高まれば、「実質金利の低下や自然利子率の上昇を通じて、金融緩和の効果も一段と高まる」と述べた。

<世界経済の不確実性、短期的な払しょく困難>

また、世界経済について「減速傾向に歯止めがかかりつつある」としながらも、「現在抱えている不確実性を短期的に払しょくすることは困難」と指摘。市場では米新政権による財政拡張などへの期待が高まっているが、「具体的な政策の内容は明らかでなく、当面はその影響を慎重に見極めていく」と語った。

(伊藤純夫)

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日銀、岩田副総裁と桜井審議委員の経歴修正 不適切との指摘で
経歴表記でいろいろ誤り、深く反省=桜井日銀委員
http://jp.reuters.com/article/boj-sakurai-idJPKBN13Q36W

 


http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/318.html

[国際16] シリア・アレッポ住民 「想像を絶する状況」 トラの赤ちゃんフェレットと仲良しロシア 米大統領選の虚報拡散の背後におそロシ
シリア・アレッポ住民 「想像を絶する状況」 
• 2016年11月30日パトリック・エバンズ、BBCニュース
Image copyrightREUTERSImage caption政府軍と反政府勢力の戦闘を逃れ避難しようとする住民たち(28日、シリア・アレッポ)
シリアの反政府勢力が支配するアレッポ東部に対する政府軍の進攻が激化するなか、これまでに1万6000人に上る住民が、避難を余儀なくされている。
国連は、この事態を深く懸念していると表明。残る反政府勢力地区は、激しい空爆にさらされており、すでに数十人の死者や負傷者が出ているという。
東部ではいまだに、子供10万人を含む25万人が包囲化で生活しているとされる。機能している病院はもはやなく、正式に把握されていた食料の備蓄は枯渇している。
バシャール・アル・アサド大統領の政権に反旗を翻した内戦が始まり、アレッポが分断されてから4年以上がたつ。その中で、反政府勢力地区に暮らしてきた住民たちに、BBCが今の状況について尋ねた。
________________________________________
アブドルカフィさん、教師
「あまりに大変な状況です。政権は地上部隊を進軍させている」
「想像してみてください。もう4カ月近く、包囲されているんです。食べ物はないし、病院で手当てを受けることもできない」
Image copyrightABDULKAFIImage captionアブドルカフィさんと娘のラマールちゃん。ラマールちゃんのミルクが手に入らないという。
「大学で教えていたんですが、続けられなくなりました。妻は病気で、娘のミルクがない。でも2人とも生きています」
「政権が奪還した地域から、僕たちの家は少し離れている。何千という家族が、僕たちの住む地区に移ってきました」
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ファリダさん、医師
「現場の状況は想像を絶する。どの病院もことごとく攻撃されたので、今では病院ではなく医療センターで働いています」
Image caption28日現在のアレッポ勢力地図。緑が政府軍、紫が反政府勢力、ベージュがクルド人勢力、紺が21日以降に政府軍とクルド人部隊が奪還した地域。
「これまで自分の家は大丈夫でしたが、今では周りですさまじい爆撃が続いている」
「みんな気落ちしています」
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アフマド・アジズさん
「とても想像もつかない状況です。最悪の毎日が目の前で展開している。狂ったような爆撃のせいで、移動もできないし、お互いの様子も見えない」
「家族のための新しい家を探していた親友が、病院の近くで死んだと、朝一番に知らされた」
「まさにそれがアレッポの状況です」
________________________________________
アラア・ゼダンさん、写真家
「民間人を安全に(反政府勢力が支配する)イドリブ県に避難させてほしい」
「みんな死にかけています。死にかけているので、アレッポの南に行かないとならない」
Image copyrightALAA ZEDANImage captionA photograph by Alaa shows children posing next to an unexploded bomb
「アサド政権は犯罪者だ。私たちを殺そうとしている。ここで27万人が死ぬかもしれない」
「アレッポについて解決策が今すぐ必要です。お願いだから、急いで、急いで、急いで」
________________________________________
モハメドさん、教師
「今の状況は超悪い。壊滅的な状況だ。何もかもあまりにひどい。みんな死ぬ直前だけど、例によって世界は僕たちが血を流そうが気にかけていない」
「あまりに大勢の家族が逃げだした。徹底的な殺戮、バシャル・アル・アサドと仲間たちが民間人に対して激しく繰り広げている、徹底的な爆撃から、次々と逃げ出しているんだ」
Image copyrightMOHAMMEDImage captionモハメドさんは、アレッポ市民がどうなっても世界は気にかけないと考えている。
「ほとんどの人は、僕たちの地域に逃げてきた。僕たちが探して提供した場所に住んでいる」
「政権に拘束されて、政権が支配する地域に連れていかれた人たちもいるみたいだ」
「これが終わるには、全世界が一丸となって、ロシアとイランとアサド政権のやることを阻止しなくてはならない。この事態を終わらせるにはそれしかない」
(取材:パトリック・エバンズ、ソーシャルニュース・チーム)
(英語記事 Aleppo resident: 'Situation is worse than imaginable')
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読み物・解説 記事
(英語記事 Aleppo resident: 'Situation is worse than imaginable')
提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-38153986


 
トラの赤ちゃん、フェレットと仲良しに ロシアの動物園
2016年11月30日
共有する
ロシア東部の沿海地方にあるサファリパークで生まれたトラの赤ちゃんがフェレットと仲良しになり、話題を集めている。
お母さんトラの育児放棄で、獣医の家で暮らすようになったシェルハンちゃん。血は争えないと言うべきか、お父さんトラは昨年、ヤギと仲良くなって有名になった。
http://www.bbc.com/japanese/video-38127142


 


米大統領選の虚報拡散の背後におそロシア
2016.11.30 12:17
Webニュースハッキング
米大統領選の虚報拡散の背後におそロシア

screenshot: BuzzFeed
これは何度見ても衝撃ですわ…。

米大統領選のラスト3カ月で虚報が実報より拡散されてたっていう、例のBuzzFeedのチャート(トップ画像)。一体だれがこんな嘘八百ばら撒いたんだ!?と思ったら、ロシアのボット、トロールファーム、サイト、SNS、マスコミが五味一体となって、日夜バズーカ砲のように米大陸に虚報を拡散していたようです。

The Washington Postが2つの専門家グループの調査結果として伝えたもの。

まず外交政策研究所Clint Watts上級研究員ら3人のチームですが、ここはネット解析ツールで、ツイートを大元のソースまで遡り、拡散マシンのSNSアカウント同士の相関関係をマッピングしてみました。すると…

・別々に見えるサイトも、所有者はおんなじだった。

・別々に見えるサイトやSNSアカウントも、一字一句違わない言い回しや文章をものすごい勢いで拡散していた(同一の組織の管理と思われる)。

…という妙な現象が確認されたのです。

昔は大手報道機関を正式に買収するとかしない限り、情報は広められなかったので、世論操作はひと苦労でした。しかしSNSの誕生を境に嘘ニュースは面白いようにわっと広まるようになり、冷戦当時そのまんまのことが何倍もの規模で行なわれているんだそうですよ?

チームでは2年前からこの動きに注目してきました。そのきっかけをWar on the Rocksでこんな風に書いています。

われわれは2014年からロシアのネット情報操作を追跡している。きっかけはジハード戦士とシリア内戦のオンラインの動きを調べる中で奇妙な動きに気づいたことだ。親ロシアのアサド政権を専門家が批判すると、ツイッターとフェイスブックに嫌がらせのコメントがわっとつく。調べてみたら若い美女の顔写真のアカウントが何十件かあり、アメリカ人(国家安全保障のセクターで働く人を含め)と政治の話を熱心にしているではないか。この「ハニーポット」のSNSアカウントを辿っていくと、シリア軍電子部隊のハッカーのアカウントにつながっていた。つまり情報操作は以下の3つの要素で同時に行なわれていたのだ。
1)ディスコメ: 疑いの目を向けさせる

2)ハニーポット(美女):信頼を勝ち取る

3)ハッカー(と思しい人間):1と2のリンクを広める

シリアで終わりではない。イラン、ロシアにもつながっていた。標的は米国内の不満分子、軍・白人国粋主義者・アナーキストなどの過激派だ。

この情報操作のネットワークは今も絶好調で、米国政府への不信感を国民に焚き付け続けている。われわれは過去30カ月に渡ってSNSアカウント7,000件をフォローしてきたが、今回のトランプ現象は米国へのSNS&ハッキングキャンペーンの終着点ではなく、始まりに過ぎない。

クワバラクワバラ〜。

一方、無党派研究グループ「PropOrNot」はこちらの調査報告書の中で「ロシアの論点を米国民に拡散するサイト200件を特定した」と発表しています。その読者は計1500万人、閲覧回数は2億1300万回にもおよんだとのことです。

中でも影響が大きかったのが、クリントンが重病というニュースで、これを真っ先に広めたのもロシアでした。あとでThe Daily Beastが嘘報道だと伝えましたが、もうその頃には「焼け石に水」でした。以下のデータを見てください。差は歴然です!

・嘘を暴く記事: Facebookアカウント1,700件、閲覧3万回

・ロシアの嘘記事: Facebookアカウント90,000件、閲覧800万回超

この数カ月で大反響を呼んだ嘘記事の多くはロシア発でした。

で、このロシアのニュース拡散で一番重要な役割を果たすのが、騙されているとも知らずに広める一般国民です。いわゆる「使えるマヌケ(useful idiots)」。米政府の言ってることが本当なら、Wikileaksのジュリアン・アサンジもロシアにとっては「使えるマヌケ」ということになります。プーチン礼賛を隠しもせず、ネオナチのツイッターアカウントから出回った捏造データを拡散するドナルド・トランプも立派な「使えるマヌケ」と言えそうです。

選挙後、「Facebookがデマ拡散を放置したからこんなことになった」と非難の声があがると、マーク・ザッカーバーグCEOは「論理の飛躍も甚だしい」と即座に否定しましたけど、それも「使えるマヌケ」なのかもしれません。上の図が出回って、Forbesにも「もしやFacebookの収入源の半分以上は嘘ニュース?」とか書かれちゃって、さすがにまずいと思ったのか、今頃になってデマ対策プランを発表していますけど、外からはデータがぜんぜん見えないので、目を離すといつまた「使えるマヌケ」に戻るものやらという不安が…。FacebookもGoogleも嘘ニュースからの広告収入は受け取らないと言ってますので、それは一歩前進ですが。

ジョージワシントン大学のRobert Orttung教授(ロシア研究が専門)は「(ロシアは)アメリカのテクノロジーと価値観を駆使して、アメリカ国民に不信感を植え付けている」とThe Washington Postに語っています。一方、Michael A. McFaul元駐ロシア大使は、ロシアの目標は勝つことではない、「絶対的なものなど何もない、と思えるように仕向けられればそれでいい。要はシニシズムに訴えることなのだ」と言っています。

ま、なんせ、あれですよ、金太郎飴みたいな言い回しで飛んでくるネガコメ、美女アイコンには要注意ってことで。

関連記事:
・米大統領選挙中、Facebookでのデマは大手メディア以上に拡散してた
・メキシコ外相「壁の金は払わん」、プーチンは祝電。トランプショックの夜

image: BuzzFeed
source: The Washington Post, War on the Rocks, PropOrNot
参考: BuzzFeed, FactCheck.org, Forbes

Rhett Jones - Gizmodo US[原文]
(satomi)
http://www.gizmodo.jp/2016/11/russia-fake-news.html
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/553.html

[経世済民116] ロボットが資産運用をアドバイスする時代。10万円から始められる「THEO」に聞いてみたSponsored by THEO
ロボットが資産運用をアドバイスする時代。10万円から始められる「THEO」に聞いてみた
2016.11.29 17:00
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なんでこの人、いつも同じ服なんだろう?
そんな疑問を抱いた相手は、ひょっとしたら成功者かも。なんで?と思うかもしれませんが、実例があるのですよ。それは皆さんよくご存じのFacebook CEO「マーク・ザッカーバーグ」。
ザッカーバーグはかつて、とあるQ&Aセッションで「いつも同じTシャツを着ているのは重要な物事に集中するため」という持論を語りました(「The Telegraph」の記事)。
この考え方は極論に思えるかもしれません。しかし、近ごろは「ウィルパワー(意志力)は決断によって消耗する」といった話題も耳にします。決断の回数を減らして重要なことに意志力を使うという考え方は、注目されるべきスタンスなのかもしれません。
とはいえ、ザッカーバーグのように毎日同じ服を着続けるのは結構、難易度高いですよね…。
そこで、僕ら的に頼りにしたいのがテクノロジーの力。テクノロジーに任せられるものは任せてしまって、好きなこと、得意なことに意志力を集中させることはできるのではないでしょうか。
難題・資産運用にロボットのアシストを

例えばお金のこと。人生において欠かせない要素なので、できれば上手に増やしたいけど、本気で取り組むと「いくら資産があるのか」から始まって「運用の方針をどうするか」「世界の経済情勢はどうなっているのか」などチェックしなければならないことがたくさん。自分の力だけでやりこなそうとしたら、かなりの意志力と時間を消費してしまいます。
ハードル高い。
でも、例えばですよ? この資産運用がロボットのアシストによって自動的に行えるとしたらどうでしょう? さすがにちょっと未来すぎると思いますか?
いいえ。金融サービスの世界には、もうそんな未来が訪れているのです。

「THEO(テオ)」は10万円からスタートできる、「おまかせ資産運用」。入力したプロフィールが最先端のアルゴリズムによって分析され、最適な資産運用プランを作成してくれるのです。
この一連のシステム、「ロボアドバイザー」と呼ばれているそうです。
簡単な質問に答えるだけで運用プランが見られるので、ちょっとやってみますね。

僕は今「36歳」です。資産運用の経験? 正直に答えると「ほとんどありません」。でも経験がないからこそ、こういったテクノロジーのサポートが必要なんだと思うんです。

続いて「資産運用では、元本の安全性を」重視するかどうか。うーん、経済って流動的ですよね。浮き沈みもありつつ最終的にプラスになっていく可能性もあるのでここは中間。「ある程度、重視します。」をチョイスしました。
さらに「投資した資産が値下がりしたら」どうするか。下がったときってチャンスのときだとも思うんですよね。大きな投資はできませんが、それでもプラスに転換したいので、「少しだけ買い増します。」を選んでみます。
次に「インフレが起きた場合の資産価値への影響」を聞かれます。現預金はインフレに弱い資産なので、現預金が多いと影響を強く受けるらしいのですが、特に現預金が多いわけじゃないので、くやしいけど正直に「それほどありません」と答えておきました。くっ…!
こんなふうに簡単な質問に答えていくだけでいいんです。ちょっと、どうしようかな?と考えるところはありましたが、これなら資産運用の経験や知識がなくても答えられる内容ですよね。
そして「診断結果を見る」をクリック。

答えた内容が分析され、運用プランが出てきました。安定した配当や利息が欲しいので、配当・利息重視の「インカム」が最も高く45%、インフレ対策に関してはやや少なめの20%という結果です。
確かにこれは僕の性格が表れている気がしますね…。

さまざまな国や資産に本当に分散投資されていることが分かります。「卵を1つのカゴに盛るな」が分散投資の基本。これなら安心かも。
ポートフォリオに関しては先進国株や先進国国債への投資が多め。このあたりはきっと、その時々の世界経済情勢がアナライズされているのでしょうね。普段この手の情報を追っていない僕自身では絶対に判断できないところです。

これらを踏まえた上でのシミュレーション結果はこのようになりました。予想される最高値、最低値、そして期待値などが自動で算出されます。
実際に運用するかどうかは別にして、自分の資産の未来が想像できるのは興味深く、とても参考になりました。自分の力だけで、これを導き出そうとするならば、どれだけの知識と時間と意志力を消費しなければならないのか…。ましてや、運用段階に入ったら何年にもわたってそれを考えていかなくてはならないのですから、その大変さは容易に想像できます。
もちろん、未来は「こうなる」という確証はありませんけどね。
でも、どうなるか分からない未来だからこそ、テクノロジーの力を借りてでも垣間見たくなります。
「THEO」の診断は使う人によって変わってきます。これまで資産運用に興味がなかった人も、自分の資産の未来を考えるきっかけに、ぜひ試してみてください。
image by Shutterstock(1 / 2)
source: THEO
(小暮ひさのり)


<手数料等諸費用及びリスクについて>
投資一任契約に関する投資一任運用報酬は預かり資産の円貨換算時価残高に対して最大1.08%(税込・年率)を乗じた金額となります。なお、キャンペーン期間を設け、投資一任運用報酬を減ずる場合があります。組入ETFの海外における売買手数料及び為替手数料ならびに取引所手数料等の諸費用につきましては当社が負担いたします。なお、組入ETFが直接間接に負担する運用報酬、売買手数料等の費用につきましては間接的にご負担いただきます。これらの費用の合計額は銘柄、組入高等によって異なりますので、事前に料率または上限額を表示することができません。
投資一任契約では主に外国籍の上場投資信託(ETF)を組み入れますので、組入ETFの価格変動リスク、信用リスク等のほかに為替リスク、取扱金融機関に係るリスク等があります。組み入れたETFの基準価額の下落、為替変動等により損失を被り、投資元本を割り込むことがあります。したがって、投資元本が保証されているものではありません。
ご契約にあたっては、契約締結前交付書面、投資一任契約書および投資一任契約細則等をよくお読みください。
会社名:株式会社お金のデザイン MONEY DESIGN Co., Ltd.
金融商品取引業者:関東財務局長(金商)第2796号
加入協会:一般社団法人日本投資顧問業協会、日本証券業協会
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http://www.gizmodo.jp/2016/11/theo.html 

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/319.html

[経世済民116] 1カ月で194兆円吹き飛ぶ−債券強気相場の終わり方は劇的 ユーロ圏製造業3年ぶりハイペース 米失業保険申請6月以来の高水
1カ月で194兆円吹き飛ぶ−債券強気相場の終わり方は劇的
Garfield Reynolds、Wes Goodman
2016年12月1日 16:41 JST
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米週間新規失業保険申請:6月以来の高水準、4週平均はほぼ横ばい
ポンド急伸、離脱後もEU単一市場にアクセス可能の観測-当局者発言で
ユーロ圏製造業:11月は3年ぶりハイペースで拡大-通貨安と環境改善で
米アップル:マップ作成調査でドローン活用、機能も改善へ−関係者
米10年国債利回りは来年1月に2.7%に達する可能性−ブリッジズ氏
11月に米10年国債利回りが56bp上昇した

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ieC3S61GTETk/v2/-1x-1.png

30年間続いた債券の強気相場は、劇的な終わり方をしそうだ。
  ブルームバーグ・バークレイズ・アグリゲート・トータルリターン指数は11月に4%低下。指数算出開始の1990年以後で最大の下げとなった。金額ベースでは1兆7000億ドル(約194兆円)が消えたことになり、これも過去最大だ。

  次期米大統領となることになったドナルド・トランプ氏が表明している減税やインフラ投資の政策が債券から株へのシフトを引き起こした。世界の株式市場の時価総額は11月に6350億ドル増えた。
  米当局が利上げを加速させる見通しやインフレ期待の上昇、米国以外の中央銀行が国債購入を減らす観測と、債券の上昇相場が終わる理由には事欠かない。
  日興アセットマネジメント(オーストラリア)の金利・為替担当チーフ・グローバル・ストラテジスト、ロジャー・ブリッジズ氏は「債券強気相場が終わりを迎えたと大勢の人が考え始めている」と述べた。同氏は米10年国債利回りが来年1月に2.7%に達する可能性があるとみている。
  米10年債利回りは11月に56ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。ロンドン時間12月1日午前7時3分(日本時間午後4時3分)現在は2.38%。
原題:Global Bonds Suffer Worst Monthly Meltdown as $1.7 Trillion Lost(抜粋)https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-01/OHICS26TTDS201

 

ユーロ圏製造業:11月は3年ぶりハイペースで拡大-通貨安と環境改善で
Carolynn Look
2016年12月1日 18:56 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i_bxQpD0cIbQ/v2/-1x-1.png

ユーロ圏では11月に製造業の活動が約3年ぶりのペースで拡大した。ユーロ下落と事業環境の改善が地政学的な不透明感を打ち消した。
  IHSマークイットが1日発表した11月のユーロ圏製造業購買担当者指数(PMI)改定値は速報と同じ53.7。10月の53.5から上昇し2014年1月以来の高水準となった。オランダとオーストリア、スペイン、ドイツでの拡大がけん引した。
  マークイットのチーフエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「11月調査はユーロ安が製造業への意味のある刺激剤となり、輸入品から域内製品への乗り換えと輸出の増加を促したこと明確に示した」とし、「通貨安と需要増大が、企業が政治をめぐる不安を払いのけるのに役立った」と説明した。

原題:Euro-Area Manufacturing Picks Up as Weaker Euro Bolsters Exports(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-01/OHI20N6JIJUW01

 

米週間新規失業保険申請:6月以来の高水準、4週平均はほぼ横ばい
Patricia Laya
2016年12月1日 23:13 JST


先週の米週間新規失業保険申請件数は6月以 来の高水準となった。
1日の労働省発表によると、11月26日終了週の申請件数は前週比1 万7000件増の26万8000件。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想 の中央値は25万3000件だった。前週の申請件数は25万1000件から改定さ れなかった。より変動の少ない4週移動平均は25万1500件と、前週とほ ぼ同水準。
失業保険の継続受給者数は19日までの1週間に3万8000人増え て208万人だった。
統計の詳細は表をご覧下さい。
原題:Jobless Claims in U.S. Increase to Highest Level Since June(抜粋)
--取材協力:Alex Tanzi.


ポンド急伸、離脱後もEU単一市場にアクセス可能の観測-当局者発言で
Lukanyo Mnyanda
2016年12月1日 21:54 JST
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i0ZORX8FDFyg/v2/-1x-1.png
1日の外国為替市場で英ポンドが急伸。欧州連合(EU)離脱後も単一市場へのアクセスで優遇が受けられるという観測が、当局者らの発言で高まった。ポンドは対ドルで約2週間ぶりの大幅上昇となり、11月11日以来の高値に達した。
  英国のデービスEU離脱担当相は、可能な限り有利な単一市場へのアクセスを確保するために英国はEUへの拠出を検討すると述べた。ユーロ圏財務相会合議長のデイセルブルム・オランダ財務相はタイムズ・オブ・マルタ紙に、コストはかかるが英国がEU域内市場に参加することは可能かもしれないと語った。
  ロンドン時間午後0時5分現在、ポンドは1%高の1ポンド=1.2631ドル。離脱を決めた国民投票後の下落率は15%に縮小した。

原題:Pound Jumps Amid Speculation U.K. Can Reach Single-Market Deal(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-01/OHIB296TTDSQ01


http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/327.html

[政治・選挙・NHK216] 16年度一般会計税収、57兆円前後に下振れ 7年ぶり減額修正=政府筋 金利変動は想定内、円安は物価上昇にプラス=桜井日銀
16年度一般会計税収、57兆円前後に下振れ 7年ぶり減額修正=政府筋
 

[東京 1日 ロイター] - 政府は、2016年度一般会計予算で57.6兆円と見込んだ税収を減額する方向で調整に入った。複数の政府筋が1日、明らかにした。年度途中で税収を減額するのはリーマンショック後の09年度以来7年ぶり。12年12月の第2次安倍晋三内閣の発足後は初めて。

年初からの円高で法人税収が想定を下回る現状を踏まえ、12月中に策定する16年度第3次補正予算案の編成と併せ、当初見積もりを数千億円から1兆円規模で見直す。

政府は、税収増をアベノミクスの「果実」と誇ってきただけに、今後の政策対応にどのような変化を及ぼすのか注目される。

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16年度2次補正予算案を閣議決定 建設国債増発、2.75兆円=政府
16年度2次補正予算案、一般会計総額3兆2869億円=政府筋
一般会計税収、15年度は56兆2854億円 純剰余金2544億円
http://jp.reuters.com/article/japan-general-account-idJPKBN13Q3GL

 
金利変動は想定内、円安は物価上昇にプラス=桜井日銀審議委員

[大津市 1日 ロイター] - 日銀の桜井真審議委員は1日、滋賀県・大津市内で会見し、イールドカーブ・コントロール(YCC)は順調と評価し、金利変動も想定の範囲内に収まっている、との認識を示した。また、円安が進行していることについて、物価上昇にはプラスとしながら、為替は安定が望ましい、と語った。

桜井委員は9月に導入したYCCについて「かなり順調に進んでいる」と評価した。金融政策の軸足をそれまでの「量」から「金利」に転換したため、「当然、ある程度、量は変動する」としたが、「多少、金利が上下することはあるが、想定の範囲に入っており、その中で量についてもメドの範囲に入っている」との認識を示した。

また、米国の新政権の経済政策や金融政策に対する思惑などから為替市場で円安が進んでいることについて「円安に振れれば物価上昇にプラスの影響が出ることは間違いない」としながら、「為替は安定が望ましい。大きな変動がない方がベターだ」と強調。先行きは「このまま円安がどんどん進むかわからない」とし、「米国の経済政策がどうなるかが基本であり、そこを見守るしかない」と語った。

石油輸出国機構(OPEC)が原油減産で合意したことで、原油価格は「それほど大きく下がる局面にはないかも知れない」との見方を示し、「原油価格の上昇は他の条件を一定とすれば物価を押し上げる」と述べた。

(伊藤純夫)
http://jp.reuters.com/article/saku-idJPKBN13Q3HV
http://www.asyura2.com/16/senkyo216/msg/799.html

[経世済民116] グロース氏、トランプ相場を信用せず−成長の裏付けは偽りと主張 ムニュチン試練−国債入札プエルトリコ SWF ISM 米中
グロース氏、トランプ相場を信用せず−成長の裏付けは偽りと主張
John Gittelsohn
2016年12月2日 10:02 JST

投資家は現金と現金同等物に資金を動かすべきだとグロース氏
米10年国債利回りが今月末までに約2.5%に上昇する可能性を見込む

債券王として知られるファンドマネジャーのビル・グロース氏は、トランプ相場とその背景にある成長見通しを信じていない。
  スティーブン・ムニューチン氏の次期財務長官への起用が決まり、トランプ次期米大統領の経済チームの具体的陣容が固まりつつある状況で、グロース氏は、公約に掲げられた減税やインフラ支出、規制緩和が成長加速を促すとの思惑から見当違いの投資が行われていると1日の電子メールで指摘した。そのような財政出動の恩恵は、一時的なもので終わる可能性が高いと同氏は考えている。
  グロース氏は、将来の成長は主に生産性向上と相関関係にあるが、生産性は過去数年にわたり伸びが止まった状態が続き、加速する見込みもほとんどないと主張。「ドル高や人口高齢化を含む構造的な逆風、反グローバル的な通商政策、最近の金利上昇の下で債務の国内総生産(GDP)比率が各国で加速する状況から、生産性の年間上昇率は恐らく1%にとどまり、その結果として実質GDP成長率は2%程度に抑制されると見込まれる」と分析した。
  米ジャナス・キャピタル・グループで債券ファンド「ジャナス・グローバル・アンコンストレインド・ボンド・ファンド」の運用に携わるグロース氏は、米10年国債利回りが今月末までに2.5%近くに上昇する可能性があるとし、「投資家は現金と現金同等物に資金を動かすべきだ。債券のデュレーション(残存期間)はベンチマークよりもずっと短くする必要がある」と勧めた。
原題:Gross Warns That Trump Rally Built on False Promise of Growth(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-02/OHJ7B96KLVRM01


 

ムニューチン氏、就任直後から試練に−国債入札やプエルトリコ問題
Saleha Mohsin、Liz Capo McCormick
2016年12月2日 06:57 JST

米財務省は1月30日に政府借入額見通しを発表する
財務長官にふさわしい判断が下せるかどうか試される
 
トランプ次期米政権で財務長官に就任するスティーブン・ムニューチン氏は、プライベートファイナンス分野で長く成功を収めたことによって自分は財務長官に起用されたと語る。しかし、公職に就く同氏を待っているのは容赦ないグローバル市場や党派間の争いであり、政治的新参者のムニューチン氏は早々にその手腕を問われることになる。
スティーブン・ムニューチン氏
スティーブン・ムニューチン氏 Photographer: Albin Lohr-Jones/Pool via Bloomberg
  1月20日のトランプ氏の大統領就任式後に予定されている財務省関連の主要イベントは以下の通り。
  1月30日:政府借入額見通しを発表
  2月1日:四半期定例入札(クオータリーリファンディング)の詳細を発表
  2月15日:プエルトリコへの債権者訴訟を制限する猶予期間が終了
  3月16日:連邦債務上限の適用停止が失効
原題:Mnuchin to See Early If Treasury’s Spotlight Flatters or Blinds(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-01/OHIYVN6S972C01


 


 
世界最大のSWF、運用難見通し不変−トランプ政権の影響軽微と予想
Sveinung Sleire、Mikael Holter
2016年12月2日 15:23 JST

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向こう30年のリターンは年3.5%にとどまる見通し
 
8600億ドル(約98兆円)を運用するノルウェー政府系ファンド(SWF)の数十年にわたる長期的視点では、米国のトランプ次期大統領が果たす役割は取るに足りないという。
  リアリティー番組の元スターであるトランプ氏の経済顧問らが米経済成長を倍にすると表明し、世界の需要を後押しする可能性はあるものの、SWFとして世界最大の規模を持つノルウェーSWFは1日、今後のリターンについて暗い見通しを示した。
  同SWFの監督を担当する中央銀行のマトセン副総裁はオスロで講演後にインタビューに応じ、「われわれの見通しの基礎にあるのは極めて長期の視点だ」と説明。「もちろん米大統領選挙の結果は見たが、われわれの見通しに大きく影響してはいない」と語った。
エギル・マトセン副総裁
エギル・マトセン副総裁 Photographer: Krister Soerboe/Bloomberg
  同SWFは同日、株式組み入れ比率の75%への引き上げと、向こう10年のリターンがほぼゼロと予想される債券の放出について政府に許可を求めた。株式組み入れ比率の大幅引き上げが実現した場合でも、向こう30年のリターンは年3.5%にとどまると予想している。
  現在の組み入れ比率は株式が60%、債券が35%、不動産が5%。過去10年のリターンはインフレや運用コストを考慮した後のベースで年3.44%、過去5年では年8.25%だった。
  
原題:World’s Biggest Wealth Fund Looks Past Trump Amid Bleak Outlook(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-02/OHJN3F6JTSEB01


 


きょうの国内市況(12月2日):株式、債券、為替市場
Bloomberg News
2016年12月2日 16:29 JST 

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国内市況の指標はここをクリックしてご覧下さい。過去の国内市況の記事はこちらです。

●日本株反落、円安一服とイタリア投票警戒−アップル関連、半導体安い
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  東京株式相場は反落。為替の円安一服、イタリアの国民投票や米国の雇用統計など重要イベントを前に持ち高調整の売りに押され、電機や機械、精密機器など輸出株、食料品や陸運、小売など内需株が安い。米アップルの発注減少観測から電子部品、半導体関連株の下げも目立った。
  TOPIXの終値は前日比5.29ポイント(0.4%)安の1477.98、日経平均株価は87円4銭(0.5%)安の1万8426円8銭。
  三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストは、「米国では12月利上げが確実視されているため、米雇用統計は予想より弱かった時の影響が大きくなる。米長期金利の低下やドル安・円高に振れるリスクを踏まえ、日本株に戻り売りが出た」と言う。また、イタリアの国民投票も「結果次第で首相辞任という政治の不透明感につながり、警戒感が高まりやすいタイミング」ともみていた。
  東証1部の売買高は28億3340万株、売買代金は3兆178億円。代金は3日連続で3兆円を超えた。値上がり銘柄数は700、値下がりは1172。
  東証1部33業種は食料品、その他製品、ゴム製品、機械、金属製品、陸運、小売、精密機器、電機など19業種が下落。銀行や証券・商品先物取引、海運、パルプ・紙、保険、鉄鋼、非鉄金属、石油・石炭製品など14業種は上昇。
  売買代金上位では、村田製作所やアルプス電気などアップル関連銘柄、東京エレクトロン、SCREENホールディングスなど半導体関連銘柄の下げが大きい。米アップルが「iPhone(アイフォーン)7」向けの発注を減らし始めた、とデジタイムズが台湾のサプライチェーンからの情報を基に報道。この影響で、前日の米フィラデルフィア半導体指数が急落したことも響いた。運営する9つのまとめサイトを閉鎖するディー・エヌ・エーも急落、SMCやエムスリー、セブン&アイ・ホールディングスも安い。
  半面、MUFG、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、野村ホールディングス、りそなホールディングス、第一生命ホールディングスは上げ、ゲームソフトの販売好調を受けたスクウェア・エニックス・ホールディングスも高い。

●債券下落、欧米債安受け売り優勢−金利へのアゲインスト続くとの声も
 
三浦和美、山中英典
2016年12月2日 08:03 JST 更新日時 2016年12月2日 15:35 JST
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新発10年債利回り一時0.045%、新発20年債利回り0.485%まで上昇
流動性供給や30年入札に向け、まだ押し目買い入る段階でない−野村
 
債券相場は下落。前日の欧米国債市場で長期ゾーンの金利が大幅に上昇した流れを引き継ぎ、売りが優勢だった。半面、日本銀行が実施した長期国債買い入れオペが相場を下支えした。
  2日の長期国債先物市場で中心限月12月物は、前日比18銭安の150円32銭で取引を開始。その後は下げ幅を縮め、午後に入るとプラスに転じ、一時150円53銭まで上昇。その後は伸び悩み、結局は2銭安の150円48銭で引けた。

  三井住友アセットマネジメントの深代潤グローバル戦略運用グループヘッドは、「米雇用統計やイタリア国民投票の結果を受けた市場の反応が不透明なので、ここで決め打ちしてどちらかに張るのは難しい」と話した。「トランプ相場のリスクオンは一服し、ポジションを落として様子見する動きが広がっている。ただ、リスクオフではない。ファンダメンタルズは世界的にそこそこ強く、金利低下には限りがある。金利へのアゲインストはまだ強そうな感じだ」と述べた。
  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より1.5ベーシスポイント(bp)高い0.045%で開始。新発として11月25日に付けた2月以来の高水準に並んだ。午後は日銀オペ結果を受けて0.035%に戻した。
  新発20年物の158回債利回りは1.5bp高い0.485%を付けた後に0.48%、新発30年物の52回債利回りは1.5bp高い0.605%まで売られた後、0.595%に戻している。
  みずほ証券の辻宏樹マーケットアナリストは、先週末からいったん低下していた海外金利はこの2日間で再び上昇基調となっており、世界的な債券安の流れが意識されやすい中、円債市場も弱 めの展開を余儀なくされていると指摘。ただ、「長期や超長期ゾーンの利回りは、11月に付けた一番高い水準に近づいており、いったん上昇が止まっている」と述べた。
日銀国債買い入れオペ
日本銀行本店
日本銀行本店 Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
  日銀はこの日、今月1回目の長期国債買い入れオペを実施した。残存期間「1年超3年以下」が4000億円、「3年超5年以下」が4200億円、「5年超10年以下」が4100億円と、いずれも前回と同額だった。
  オペ結果によると、3本とも応札倍率が前回から低下した。国債市場で売り圧力が弱まっていることが示された。
日銀長期国債買い入れオペ結果はこちらをご覧下さい。
  三井住友アセットの深代氏は、「日本は量的緩和で需給が引き締まっている上、日銀が上昇を止めるツールを持っているので、海外ほどは上がりにくい」と指摘。ただ、「超長期債の利回りにはまだ上昇余地があり、もう少しスティープ化してもおかしくない」と話した。
  1日の米国債相場は下落。米10年国債利回りは前日比7bp上昇の2.45%程度で終了。一時2.49%と昨年6月以来の高水準を付けた。トランプ次期米大統領の政策がインフレと米経済を押し上げるとの見方が広がる中、原油価格上昇や米経済指標の改善に加えて、11月の米雇用統計を控えた売りが出た。同日の欧州債市場ではドイツ国債と英国債がいずれも下落した。
  野村証券の松沢中チーフストラテジストは、「外債金利上昇と比較すればかなり小さな動き」としながらも、「来週の流動性供給入札や30年債入札に向けて、まだ押し目買いが入る段階でもなさそうだ」とみる。「良くも悪くも10年債が日銀ターゲット効果によって売られない分、周りのゾーンが調整弁になりやすい」と指摘した。


  
●ドルは114円前後、米雇用統計や伊国民投票を前に売り−下値は限定的
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
  東京外国為替市場では、ドル・円相場が1ドル=114円前後で推移している。11月の米雇用統計やイタリア国民投票など重要イベントを控えて、持ち高調整のドル売り・円買いがやや優勢となった。
  午後4時2分現在のドル・円相場は前日比ほぼ横ばいの114円07銭。朝方に付けた114円19銭から一時は113円58銭まで下げた。その後は114円ちょうど近辺に戻している。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は同時刻現在、0.1%低下の1250.24。
  マネースクウェア・ジャパンの工藤隆営業本部法人部長は、「ドル・円は昨日の安値を割り込んだことで、今晩の米雇用統計を前にした調整が進んでいる格好」と指摘。ただ、「この間の上昇でリバースノックアウトがトリガーされてしまった輸入企業の買いなどが予想されるほか、ドル・円にはまだショートの買い戻しがあるとみられる。このため、米雇用統計でよほどの弱い結果が出なければ、下値は限定的。113円前半がいいところかもしれない」と述べた。
  米労働統計局は2日、11月の米雇用統計を発表する。ブルームバーグ調査によると、非農業部門雇用者数は前月比18万人増加が見込まれている。10月は16万1000人増だった。平均時給は前年比2.8%上昇と前回から横ばいが見込まれている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-02/OHJRCC6S972I01

 


米ISM製造業総合景況指数:11月は53.2に上昇、5カ月ぶり高水準
Michelle Jamrisko
2016年12月2日 01:14 JST
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ゴールドマンのコーン社長、トランプ氏のチームと週末会談へ−関係者
11月は市場予想を上回る伸び
18業種中、11業種が伸び示す−7月以降で最多

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ieeZ0k7BT9Kc/v2/-1x-1.png

11月の米製造業活動は5カ月ぶりの速いペースで拡大した。
  米供給管理協会(ISM)が1日発表した11月の製造業総合景況指数は53.2と、前月の51.9から上昇。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は52.5だった。
  11月はISMが調査した18業種中、石油や紙、プラスチック、コンピューター、電子機器など11業種が伸びを示した。これは7月以降で最多となる。一方、印刷や木材製品、衣料品、電気機器など6セクターは活動が縮小した。

  項目別では生産指数が56と、前月の54.6から上昇し、2015年1月以来の高水準。新規受注は53と、前月の52.1を上回った。一方、輸出は52で、前月の52.5から低下した。
  入荷遅延は55.7と、前月の52.2から上昇し、2014年12月以来の高水準。力強い需要を背景に、出荷が遅れていることを示した。
  雇用は52.3と、前月の52.9を下回った。仕入れ価格指数は54.5で、前月と同水準だった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Manufacturing in U.S. Expands at Best Pace in Five Months(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-01/OHIK6M6JTSEI01


93歳のキッシンジャー氏、再び米中間の橋渡し−北京で中国要人と会談
Bloomberg News
2016年12月2日 16:18 JST
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トランプ氏と会談した2週間後、キッシンジャー氏は北京に飛んだ
キッシンジャー氏は健全な米中関係発展に貢献したいと発言−新華社
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ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官が緊張緩和に向け、再び米中間の橋渡し役を務めている。1972年のニクソン米大統領訪中で大きな役割を果たしたキッシンジャー氏は現在93歳だ。
  米大統領選挙期間中に中国に対し厳しい姿勢を示してきたドナルド・トランプ氏が当選を果たし、政権準備を進める中で、中国の習近平国家主席はトランプ氏が大統領就任後にどのような対中政策を実際に推し進めるのかを見極めようとしている。
  キッシンジャー氏はニューヨークでトランプ氏と会談した2週間後、中国の指導者と会うために北京に飛んだ。キッシンジャー氏と中国側との話し合いは非公開だが、次期米政権が貿易や領有権をめぐる問題で対中強硬姿勢を強めるかどうか、中国側は探りを入れている。
キッシンジャー氏と王岐山氏(12月1日)
キッシンジャー氏と王岐山氏(12月1日) Photographer: Yao Dawei/Xinhua via Getty Images
  中国国営の新華社通信によれば、キッシンジャー氏は1日、習主席肝いりの汚職撲滅運動を主導する王岐山氏と会談した。王氏は中国共産党の序列6位。キッシンジャー氏は米中関係の健全な発展に貢献したいと述べたと新華社は伝えている。
原題:China, Grappling With Trump, Turns to ‘Old Friend’ Kissinger(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-02/OHJQ856TTDS301
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/347.html

[経世済民116] 物価2%未達、原油下落・インフレ予想失速が主因 債券市場流動性など改善=日銀 ECB量的緩和延長、いずれ終了と示唆も
物価2%未達、原油下落・インフレ予想失速が主因=日銀論文

[東京 2日 ロイター] - 日銀は2日、2013年4月の「量的・質的金融緩和」(QQE)導入時に打ち出した「2年程度」で、2%の物価安定目標が達成できなかった理由について、原油価格の下落と予想インフレ率が当初の想定よりも高まらなかったことが主因とする分析結果を論文として公表した。

論文は、日銀の調査統計局スタッフが「ワーキングペーパー」としてまとめた。

QQE導入当初に政策委員が想定していた消費者物価の見通しと実績値について、それぞれ需給ギャップや為替レート、原油価格、インフレ予想の変化などインフレ固有の要因に分解し、その結果を比較することによって消費者物価が見通しから下振れた背景を分析した。

13年4月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」における政策委員の消費者物価の前年比上昇率見通し(中央値)は13年度がプラス0.7%、14年度がプラス1.4%、15年度がプラス1.9%だった。これに対して実績は13年度こそプラス0.8%とほぼ見通し通りになったものの、14年度はプラス0.8%、15年度が0.0%と大きく下振れた。

分析の結果、15年度の1.9%下振れのうち、最も大きく押し下げに寄与したのが原油価格でマイナス1.0%ポイントと5割超を占める。次いでインフレ予想の変化などインフレ固有の要因がマイナス0.7%ポイント、需給ギャップがマイナス0.3%ポイントで、為替レートはプラス0.1%ポイントの押し上げ寄与となった。

インフレ予想は14年夏まで上昇傾向をたどっていたが、その後に失速。期待が高まらなかった理由について論文では「ベースアップ賃金の上昇ペースが想定以上に鈍かった影響が大きい」と指摘。

デフレが長期化したことによって「物価は上がらないという社会通念は根強く、金融政策のレジーム変化が労使間の賃金交渉に及ぼした影響も想定より小幅にとどまったと考えられる」とし、QQE導入以降も「インフレ目標によって規定されるフォワードルッキングな期待が賃金・物価形成に与えた影響は限定的なものにとどまった可能性が高い」と分析している。

(伊藤純夫)

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ECBは量的緩和延長へ、いずれ終了との示唆も検討

[ベルリン/フランクフルト 1日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は、来週8日の理事会終了後、債券買い入れ(量的緩和)の期限延長とともに、いずれ買い入れが終了するとのシグナルを正式に示すことを検討している。関係筋が明らかにした。

ECB内や各国中銀の複数の関係筋によると、一段の景気刺激策に疑問を示している理事も、弱いインフレ基調や政治的リスクの高まりを考慮した上で、現在の買い入れ期限である3月からの延長を受け入れた。

現在は延長をどのように構成するかを策定中。今のところ6カ月延長する案が有力だ。

ただ2人の関係筋によると、現在の月間800億ユーロからの減額、例えば9カ月間を600億ユーロの買い入れにするなどが好ましいとする指摘もあるという。単純な延長では無期限とみられる恐れもあるためだ。

このため買い入れはいずれ終了すると、おそらくはフォワードガイダンスとして、無期限に延長することはないとのシグナルを示すとの妥協案が討議されているという。

別の選択肢としては、月間の買い入れ額を特定せず景気動向次第とする案も検討されている。月間で最大800億ユーロとし、必ずしも限度額いっぱいを買い入れる必要はないことを示す。

ある関係筋は「延長とともに、タカ派にとっても量的緩和が永遠に続かないとのシグナルを送る必要があるとの考えがある。緩和縮小ではなく、シグナルを送ることを議論している」と述べた。

別のタカ派ともハト派ともみられていないユーロ圏中銀の関係筋は、このようなシグナルを送ることが好ましいとの考えは、理事会内の過半数になるだろうとの予測を示した。

債券買い入れをめぐっては内部で意見の対立が深まっており、今後についてシグナルを送るという妥協案によってドイツなど慎重派に譲歩する格好となる。

ただ、買い入れ延長支持派の一部は、今後の買い入れ縮小についてシグナルを送るタイミングが悪ければ市場のボラティリティーが高まり、買い入れの効果が薄れる可能性があると警戒している。

関係筋によると、これまで決定された事項はなく、理事会の8日会合に向けた提案はまだユーロ圏の19の中銀に送られてはいない。このため、最終的な決定は検討されている内容から変更される可能性があるとした。

ECBは取材に対してコメントを避けた。

ECBはフォワードガイダンスの微修正を含む変更を加えたうえで一連の施策を公表する見通し。また、長期にわたり金利を低水準に維持するとの認識を再度示す。

インフレ率はここ数カ月で大幅に上昇し、来年初めまでには1%を超えるとみられる。ただ、上昇は原油価格下落の影響が剥落したのが主な要因。

1人の関係筋は「コアインフレ率はまったく動きがない」と指摘、

「ただ、金融政策の余地はほとんどない」と語った。

債券買い入れの延長にはECBが自ら課した制限を一部緩和することが必要になり、検討されている選択肢のほとんどは法律上あるいは政治的な懸念が伴う。

ただ、ECBのドラギ総裁は今週、買い入れプログラムは十分に柔軟なため調整可能との見解を示し、債券買い入れ延長を決定した場合でも問題はないとの認識を示した。

*見出しを修正します。
http://jp.reuters.com/article/ecb-policy-idJPKBN13Q5Z7?sp=true


 


訂正:債券市場の機能度指数8ポイント上昇の‐38、流動性など改善=日銀

[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日公表した「債券市場サーベイ」の11月調査によると、市場参加者の判断する債券市場の使いやすさを示す機能度判断DIがマイナス38となり、過去最低だった前回8月のマイナス46から改善した。

9月から日銀が金利操作を主眼とした緩和手法を導入したことで、市場の流動性を示すビッド・アスク・スプレッドや板の厚みが改善したとの回答が増えたのが理由。一方、ボラティリティーの縮小により(訂正)取引頻度や取引相手の数が減少したとの回答も増えた。

調査対象は40先で、回答期間は11月9日─16日。米大統領選後の米国金利上昇を受けて金利が大きく変動した時期と重なる。

10年債利回り見通しの中央値は、2016年度末がマイナス0.05%で、前回調査のマイナス0.10%より上昇した。一方、17年度末は0.00%で変わらなかった。18年度末はプラス0.04%と前回のプラス0.10%から低下した。日銀は各年限について「足元の見通しは上方修正されたが、先行きの上昇ペースの見通しが緩やかになった」としている。

*第2段落の「金利変動の拡大により」を「ボラティリティーの縮小により」に訂正します。
http://jp.reuters.com/article/boj-survey-idJPKBN13Q3PE
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/348.html

[経世済民116] 「総括的検証」補足ペーパーシリーズ(4):なぜ2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成できなかったのか? ―時系列分析

「総括的検証」補足ペーパーシリーズ(4):なぜ2%の「物価安定の目標」を2年程度で達成できなかったのか?
―時系列分析による検証―
2016年12月2日
川本卓司*
中浜萌**

全文 [PDF 479KB]
推計に使用したデータ [ZIP 10KB]
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j13.zip

要旨

本稿では、「量的・質的金融緩和」導入から3年余りが経過した後も、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が「物価安定の目標」である2%程度に到達しなかった背景について、定量的に検証する。具体的には、時系列モデルの要因分解(VARのヒストリカル分解)の手法を用いて、消費者物価がどのような要因によって「量的・質的金融緩和」導入当初の日本銀行政策委員の見通し(中央値)から下振れたのかを実証的に明らかにする。分析の結果、2015年度の消費者物価前年比の下振れ幅(−1.9%ポイント<見通し:+1.9%、実績:0.0%>)のうち、約5割(−1.0%ポイント)は原油価格の下振れによるものであり、1割強(−0.3%ポイント)が需給ギャップの下振れ、3割強(−0.7%ポイント)がインフレ固有の要因に起因することがわかった。インフレ固有の要因は、需給ギャップや原油価格、為替レートでは説明できない消費者物価の下振れを意味しており、これは、予想物価上昇率の高まりが当初の想定に比べると小幅なものにとどまったことを表していると解釈される。

JEL分類番号
C32、E31、E52

本稿の作成にあたっては、関根敏隆、中村康治、法眼吉彦の各氏および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂いた。また、調査統計局の河田皓史氏には、データ作成面で多大な協力を頂いた。ここに記して感謝したい。

* 日本銀行調査統計局 E-mail : takuji.kawamoto@boj.or.jp
** 日本銀行調査統計局 E-mail : moe.nakahama@boj.or.jp
日本銀行から

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。
なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関するお問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。
商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局(post.prd8@boj.or.jp)までご相談下さい。転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/wp16j13.htm/

 


本稿は、2016 年 9 月に日本銀行より公表された「『量的・質的金融緩和』導入以降の経済・
物価動向と政策効果についての総括的な検証」の内容を補足するものである。
本稿の作成にあたっては、関根敏隆、中村康治、法眼吉彦の各氏および日本銀行スタッフ
から有益なコメントを頂いた。また、調査統計局の河田皓史氏には、データ作成面で多大
な協力を頂いた。ここに記して感謝したい。無論、本稿のあり得べき誤りは全て筆者らに
属する。
* 日本銀行調査統計局(E-mail: takuji.kawamoto@boj.or.jp)
**日本銀行調査統計局(E-mail: moe.nakahama@boj.or.jp)


1.はじめに
2013 年 4 月 4 日、日本銀行は、「2%の『物価安定の目標』を、2 年程度の期
間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」という強く明確なコミットメ
ントを掲げ、「量的・質的金融緩和(Quantitative and Qualitative Easing、以下 QQE)」
を導入した。その後、わが国の経済・物価は好転し、「物価が持続的に下落する」
という意味でのデフレではなくなった。しかし、QQE 導入から 3 年余りが経過
した 2016 年 9 月の「総括的な検証」時点でも、2%の「物価安定の目標」は実
現できていない。2013 年 4 月末に日本銀行が公表した展望レポートをみると、
消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比の見通し(政策委員見通しの
中央値、以下同じ)は、2013 年度+0.7%→2014 年度+1.4%→2015 年度+1.9%
となっており、日本銀行は、QQE 導入当初、2015 年度には 2%のインフレ目標
を概ね達成することを展望していた(図表 1)1
。その後の実際の消費者物価の
動きをみると、2013 年度こそ前年比+0.8%とほぼ見通しどおりとなったものの、
原油価格の急落と消費増税のあった 2014 年度以降、展望レポートの物価見通し
は下方修正が続き、結局、2014 年度は前年比+0.8%、2015 年度は同 0.0%と、
QQE 導入当初の見通しから大幅に下振れての着地となった。
なぜ、世界に類例のない大胆な金融緩和にもかかわらず、2015 年度に 2%の
「物価安定の目標」を実現できなかったのか――。本稿の目的は、ともすると
実証的な裏付けなく、narrative に語られることの多かった 2%未達の背景につい
て、出来るだけ客観的かつ定量的な実証分析結果を提示することにある。具体
的には、消費者物価と、これに影響を与え得る主要なマクロ経済変数(需給ギ
ャップ・為替レート・原油価格)からなるシンプルな 4 変数 VAR を推計したう
えで、ヒストリカル分解(historical decomposition)の手法を用いて、消費者物価
が QQE 導入当初の見通しから下振れた背景について、要因分解を行う。
本稿が、分析手法として VAR という時系列モデルを採用した理由は、以下の
とおりである。第 1 に、VAR は、特定の理論モデルに依拠しないため、マクロ
経済変数間の複雑な相互依存関係にほとんど制約を課すことなく2
、出来る限り
「データに語らせる」かたちで、実証分析を行うことが可能である。よく知ら
れているとおり、インフレのダイナミックスについては、需給ギャップとの関
係や、インフレ予想の形成メカニズム、為替レート・原油価格のパススルーな

1 2013 年 4 月の展望レポートの基本的見解では、「見通し期間の後半にかけて、『物価安定の目
標』である 2%程度に達する可能性が高い」と述べられている。
2
実際の VAR の推計では、最小限ながら「コレスキー分解」という短期制約を課している。
2
ど多くの論点を巡って、エコノミスト・経済学者の間で意見は一致していない。
したがって、幅広く政策論議に資するような、出来るだけ客観的な実証分析を
提示するという本稿の目的に照らせば、特定の理論モデルに立脚するよりも、
VAR のような制約の少ない時系列モデルを用いる方が望ましい。第 2 に、VAR
のヒストリカル分解により、消費者物価の下振れをもたらした要因を、「2 次的
な波及効果(second-round effect)」まで考慮した本源的なショックに帰すること
が可能となる。例えば、為替円安は、輸入品価格の直接的な押し上げといった
「1 次的な波及効果」だけでなく、需給ギャップの改善やインフレ予想の高まり
といった「2 次的な波及効果」を通じても、インフレ率にプラスの影響を及ぼす。
このため、例えば、QQE 導入以降に進行した為替円安が消費者物価に及ぼした
影響を評価するためには、1 次的な波及効果に加え、2 次的な波及効果も含めた
「出尽くしベース」で推計する必要がある。こうした分析は、全ての変数を内
生変数として扱う VAR を用いれば、容易に可能となる。
本稿の構成は以下のとおりである。2 節では、実証分析の手法と、データの作
成方法について説明する。続く 3 節では、実証分析結果を提示するとともに、
若干の解釈を加える。最後の 4 節は、結論に充てられる。
2.分析手法とデータ
本稿では、以下の手順で、日本銀行政策委員の消費者物価見通しがどのよう
な要因で下振れたのかを定量的に考察する。@まず、QQE 導入当初に想定して
いた政策委員見通しをデータとして用いて――見通しをあたかも実績値のよう
にデータとして扱って――VAR を推計したうえで、消費者物価に関するヒスト
リカル分解を行い、政策委員見通しが 2%達成に向けて具体的にどのような道筋
を描いていたのかを試算する。A次に、実績値のデータを用いて同じスペック
の VAR を推計し、実績値ベースの消費者物価に関するヒストリカル分解を行う。
B最後に、両者のヒストリカル分解結果を比較することにより、消費者物価下
振れの要因を定量的に特定する。
VAR モデルは、原油価格、為替レート、需給ギャップ、消費者物価の 4 変数
を用いて推計する。この順番でコレスキー分解を行うことにより、ショックの
識別を行う3
。すなわち、原油価格は、日本の金融市場や経済・物価動向にはさ
ほど影響されず、国際商品市場におけるグローバルな需給の動向で決定される

3 VAR Ordering に依存しない一般化インパルス応答(Generalized Impulse Responses)の計測も
行ったが、コレスキー分解に基づくインパルス応答の結果とほぼ同じ結果が得られた。
3
と考えられるため、最も外生的な変数として最初に置く4
。原油価格の次に、需
給ギャップやインフレ率に影響を及ぼす先決変数として、為替レートを置く。
その次に、わが国の景気動向を表す需給ギャップ、最後に、以上 3 変数の影響
を受けて最も内生的に決定されると考えられる消費者物価を置く。推計の頻度
は四半期であり、推計期間は、第 2 次石油ショックの影響が概ね収束したとみ
られる 1984 年第 1 四半期から 2015 年度末に当たる 2016 年第 1 四半期までとす
る5
。VAR のラグは、AIC により 3 期を選択する。
推計に使用したデータは、以下のとおりである。原油価格は、先行研究(例
えば Baumeister and Kilian 2016)と同様、WTI(ウェスト・テキサス・インター
ミディエイト)価格を米国の消費者物価(総合)でデフレートしたものを使用
する6
。為替レートは、日本銀行が公表している円の名目実効為替レートを用い
る。需給ギャップは、日本銀行が定期的に「分析データ」として公表している
推計値を使用する(推計方法は伊藤他 2006 を参照)。消費者物価(除く生鮮食
品)については、消費税率引き上げの直接的な影響を除いた季節調整値を作成
した。実際の推計に当たっては、原油価格、為替レート、消費者物価について
は、対数前期差をとる一方、需給ギャップは、そのまま使用することにした。
日本銀行の政策委員見通しは、各年度の実質 GDP 成長率と消費者物価前年比
の予測値しか公表されていないため、以下のような方法で、VAR の推計に使用
する 4 変数について四半期ベースの予測値を作成した。まず、原油価格(WTI)
と為替レート(名目実効為替レート)については、簡単化のため、2013 年 4 月
時点の水準で、見通し期間(2013 年第 2 四半期から 2016 年第 1 四半期まで)を
通じて横ばいで推移すると仮定した7
。需給ギャップについては、政策委員は直

4
原油価格については、@為替相場の影響を受ける(ドル高が進行すると、ドル建てで表示さ
れる原油価格には下落圧力がかかる)、Aわが国の需要動向にも何がしかの影響を受ける(サン
プル期間の平均でみると、日本は世界の原油需要の 6〜7%を占める)ことなどを考慮し、本稿
の VAR では原油価格を完全な外生変数として扱っていない。なお、原油価格を外生変数と仮定
して、他の変数からのフィードバックがないとの制約を課した VAR の推計も行ったが、本稿の
結論に大きな変化はなかった。
5
これは、日本銀行が展望レポートにおいて、定例的に図示しているフィリップス曲線のサン
プル期間と同じである。
6
原油価格について、実質化を行わず名目価格をそのまま用いて同様の分析を行ったが、結果
はほとんど変わらなかった。
7 2013 年 4 月の展望レポートの基本的見解では、「輸入物価については、国際商品市況が世界
経済の成長に沿って緩やかな上昇基調をたどるとの想定のもと、見通し期間中、上昇を続ける」
と記述されている。もっとも、当時の政策委員が想定していた原油価格の具体的な上昇ペースに
ついて、これ以上詳細な情報が明らかでないため、ここでは簡便的に見通し作成時点の水準で先
行き一定と仮定している。この結果、以下で示す分析では、物価見通しの下振れを説明する要因
4
接、見通しを公表していないため、2013 年第 1 四半期の需給ギャップの実績値
を出発点として、四半期換算した政策委員の GDP 成長率の見通しと、潜在成長
率の見通しの差分を累積していくことによって作成した(詳細は補論参照)。四
半期でみた消費者物価の見通しは、各年度内で一定のペースで加速しつつも、
年度平均の伸びでみれば、政策委員見通しの中央値と一致するよう作成した。
VAR の推計に用いる 4 変数の四半期ベースの見通しと実績値は、図表 2 で示
したとおりである。原油価格は、QQE 開始当初は見通し対比やや上振れて推移
していたが、2014 年夏以降急落し、見通しを大幅に下回ったことが確認できる。
他方、為替レートをみると、QQE 導入直後から 2015 年央にかけて、見通し対比
円安化が進行していたが、その後は、円高方向への巻き戻しが起こっている。
需給ギャップは、2014 年初までは概ね見通しに沿って改善していたものの、2014
年春の消費増税後は横ばい圏内の動きに転じ、見通し対比でみた下振れ幅を
徐々に拡大させている。消費者物価の前年比も、2014 年夏頃までは、概ね見通
しに沿ってプラス幅を拡大させていたものの、その後は見通しから下方に乖離
し、プラス幅が縮小している。
図表 3 では、四半期ベースでみた需給ギャップと消費者物価について、見通
しと実績値をフィリップス曲線で確認している。(1)の政策委員見通しでは、消
費者物価は、需給ギャップの改善を伴いつつも、過去のデータで単回帰したフ
ィリップス曲線が示唆する以上のペースで――つまり、予想物価上昇率の高ま
りを背景としてフィリップス曲線が上方にシフトアップしながら――、上昇率
を高めていく姿となっている8
。一方、(2)の実績をみると、2014 年前半までは、
過去のフィリップス曲線が示唆する以上のインフレ率の上昇が観察されるもの
の、その後は、原油価格急落の影響もあって、右上がりのフィリップス曲線の
関係を崩しながら、物価上昇率が低下していった姿が確認できる。
3.実証分析結果
(1)インパルス応答
推計した VAR に基づくインパルス応答の結果は、図表 4〜7 に示されている。

として、原油価格下振れの寄与をやや過小に評価している可能性がある。
8
実際、この点について、2013 年 4 月展望レポート(背景説明)は、「消費者物価の前年比は
需給バランスの改善に伴い過去の正の相関に沿って上昇していくとともに、予想物価上昇率の高
まりからフィリップス曲線自体も徐々にシフトアップしていく姿を想定している」と記述してい
る。
5
図表 4 は原油価格ショックが各変数に及ぼす動学的影響、図表 5 は為替レート
ショックが各変数に及ぼす動学的影響、図表 6 は需給ギャップショックが各変
数に及ぼす動学的影響、図表 7 はインフレ固有ショック(inflation-specific shock)
が各変数に及ぼす動学的影響を示している。その際、各ショックの大きさは全
て 1 標準偏差であり、原油価格、為替レート、需給ギャップの反応はレベルで、
消費者物価の反応は前年比に換算して図示している。実線が推計されたインパ
ルス応答、シャドーは 90%の標準誤差バンドである。
まず、原油価格の影響をみると(図表 4)、原油価格の上昇ショックは、需給
ギャップの改善をもたらすとともに、消費者物価の上昇率を 2 年程度に亘って
統計的に有意に押し上げている。ここでは、原油価格変動の背後にあるメカニ
ズムに関し、需要要因か供給要因かの区別を行っていない点に注意する必要が
ある。原油価格の上昇が、主として新興国経済の拡大など需要要因によって生
じているのであれば、直接的にエネルギー価格を上昇させるだけでなく、新興
国向け輸出の増加を通じて需給ギャップを改善させるため、間接的にもインフ
レ率の押し上げ要因となり得る。一方、原油価格の上昇が、主として OPEC の
協調減産といった供給要因によって生じているのであれば、交易条件悪化を通
じて需給ギャップの悪化に繋がり、これは、やや長い目でみて、間接的にイン
フレ率にマイナスの影響を及ぼし得る。ここで推計した VAR のインパルス応答
によれば、サンプル期間の平均でみると、前者の需要要因が後者の供給要因を
上回り、原油価格の上昇ショックは需給ギャップの改善をもたらしている。以
下で示すヒストリカル分解結果も、このインパルス応答に基づいて行っている9

次に為替レートの影響をみると(図表 5)、円安ショックは、需給ギャップの
改善をもたらすとともに、消費者物価にも有意で持続的なプラスの影響を及ぼ
す。需給ギャップの影響をみると(図表 6)、フィリップス曲線が示唆するとお
り、需給ギャップの改善は、消費者物価に対し有意なプラスの影響を及ぼして
いる。仔細にみると、正の需給ギャップショックの発生後、需給ギャップ自身
は 2〜3 四半期後、消費者物価の前年比は 5〜6 四半期後にピークを迎えるコブ
型(hump shape)の反応を示しており、インフレ率は需給ギャップにラグを伴っ
て反応している。
最後に、インフレ固有ショックの影響についてみると(図表 7)、プラスのシ
ョック発生後、消費者物価の前年比は 1 年程度、統計的に有意に押し上げられ

9 2014 年夏以降の原油価格の急落について、需要と供給のどちらの要因が大きかったかは実証
的に非常に重要な論点ではあるが、本稿の分析の射程を超えているため、ここでは立ち入らない。
この点に関する分析は、例えば Baumeister and Kilian (2016)を参照。
6
たあと、比較的速やかにゼロ%程度に収束していく10。このインフレ固有ショッ
クは、原油価格や為替レート、需給ギャップでは説明できないインフレ率のシ
ョックを表している。これには、例えば、制度要因を背景とする公共料金の価
格変更などに加えて、外生的なインフレ予想の変化(例えば、インフレ目標引
き上げによるフォワードルッキングなインフレ予想の上昇)も含まれると考え
られる。
(2)識別されたショックとヒストリカル分解
図表 8 では、見通しを用いて推計した VAR で識別されたショックと、実績値
を用いて推計した VAR で識別されたショックを比較している。まず、原油価格
ショックをみると、見通しでは、ショックの発生をほとんど見込んでいなかっ
た一方、実績では、2014 年夏以降の原油価格の急落局面において、負のショッ
クが連続的に発生したことが確認できる。この間に発生した負の原油価格ショ
ックの規模は、過去のショックと比べてもかなり大きめであり、かつこれほど
多くの頻度で負のショックが発生し続けた局面は過去には観察されない。次に、
為替レートショックをみると、原油価格と同様、見通しでは大きなショックの
発生を見込んでいない。実績をみても、QQE 開始から 2014 年央まではさほど大
きな為替レートのショックは発生していないが、2014 年 10 月の QQE の拡大後
には、比較的大きな円安ショックが発生している。もっとも、2015 年夏以降は、
新興国経済の減速が明確となり、それに伴い国際金融資本市場も不安定な動き
となるもとで、相応の規模の円高ショックが連続的に発生したことがわかる。
需給ギャップショックをみると、見通しでは大きめのアップダウンが観察され
るが、これは、主として、見通し作成時点で予定されていた 2014 年 4 月と 2015
年 10 月の 2 回の消費増税前後の駆け込み需要と反動に対応している。実績をみ
ると、2014 年初までは概ね見通しに沿った動きとなっているが、消費増税直後
に当たる 2014 年後半の戻りが、見通し対比やや弱めとなっているうえ、2015 年
には、消費増税が実際には延期されたにも拘わらず、やや大きな負のショック
が発生している。最後に、インフレ固有ショックをみると、見通しでは、2015
年度末にかけて、正のショックが連続的に発生することが見込まれている。こ
れは、政策委員見通しが、QQE 導入に伴う「金融政策のレジーム変化」を受け
て、見通し期間中、フォワードルッキングなインフレ予想が段階的に切り上が

10 なお、インフレ固有要因にプラスのショックが発生すると、為替レートが円高化するととも
に、需給ギャップが(統計的に有意でないにせよ)若干悪化しているのは、サンプル期間の平均
でみれば、金融政策がインフレ率の外生的な上昇に対し引締め方向に反応していた可能性を示唆
している。
7
っていくと想定していたと解釈される11。実績をみると、2013 年中は、ほぼ見通
しどおり正のショックが発生しているものの、2014 年入り後は、見通しと異な
り、大きめの負のショックが発生したことが確認できる。2015 年前半には再び
正のショックが発生したものの、後半には再び大きめの負のショックが発生し
ている。
以下では、見通しの値を用いて推計した VAR に基づき、消費者物価のヒスト
リカル分解を行う。これは、QQE 導入当初、日本銀行の政策委員見通しがどの
ようなメカニズムで消費者物価が 2%に向けて上昇率を高めていくと考えてい
たかを、定量的に表したものに相当する。結果をみると(図表 9(1)@)、政策委
員見通しは、@需給ギャップの改善は緩やかにインフレ率を押し上げていくと
みていたこと、A原油価格は、既往の下落ショックの影響が見通し期間前半に
若干残るものの、その後はそれが剥落するとみていたこと、B2012 年末から 2013
年初にかけて進行した大幅な為替円安が、かなり持続的にインフレ率を押し上
げるとみていたこと、C為替円安と並んで、インフレ固有の要因も、持続的な
物価押し上げ要因になると見込んでいたこと12、がわかる。前述のとおり、イン
フレ固有要因のプラスは、原油価格や為替レート、需給ギャップでは説明でき
ないインフレ率の上昇を意味しており、これは、基本的に政策委員見通しがイ
ンフレ予想について相応の上昇を見込んでいたことを意味している。
次に、実績値を用いて VAR を推計し、同様の消費者物価に関するヒストリカ
ル分解を行う。結果をみると(図表 9(1)A)、@為替レートは、概ね見通しに沿
って、押し上げ寄与を拡大していったこと、A原油価格は、見通しと大きく異
なり、2014 年度後半以降、大幅な下押し要因として作用したこと、B需給ギャ
ップの押し上げ寄与も、見通しと比べると小幅にとどまったこと、Cインフレ
固有の要因は、2014 年末以降、見通しに反し、押し上げ寄与を大幅に縮小して
しまったこと、が確認できる。

11 仮に、「金融政策のレジーム変化」によって、予想インフレ率の恒常的なシフトアップが起
こり、その後、十分に時間が経過しているのであれば、VAR は、サンプル期間のある特定の時
点以降、インフレ率の定数項に構造的な上方シフトが生じていると定式化して推計すべきであろ
う。もっとも、QQE 導入以降、さほど時間が経過しておらず、それによる構造変化の有無を検
出するのに十分な時系列データが揃っている訳ではないため、本稿では、QQE 導入によってイ
ンフレ予想のシフトアップが起きたのであれば、それはインフレ固有要因における連続的な正の
ショックとして現れてくると考えている。
12 なお、2011 年頃にも、インフレ固有要因は、比較的大きめのプラス寄与を示している。これ
には、当時、@傷害保険料や自動車保険料の値上げが実施されたことや、Aテレビが銘柄変更を
受けてマイナス寄与を大きめに縮小したことが影響している。
8
図表 9(2)は、見通しと実績のヒストリカル分解の「差」を示したものである。
2015 年度の消費者物価の前年比は、見通し対比−1.9%下振れている。このうち、
約 5 割に相当する−1.0%ポイント程度は、原油価格の下振れによって説明可能
である。それ以外については、1 割強(−0.3%ポイント)が需給ギャップの下
振れ、3 割強(−0.7%ポイント)がインフレ固有の要因となっている。需給ギ
ャップ要因の下振れは、主に 2014 年後半以降に生じている点を踏まえると、こ
れは、主として、消費増税以降の消費の弱さを表している可能性が高い。他方、
インフレ固有要因の下振れは、主として予想物価上昇率の下振れを表している
と解釈される。QQE 導入当初、日本銀行政策委員は、中長期的な予想物価上昇
率の先行きについて、「『量的・質的金融緩和』のもとで 2%程度に向けて次第に
収斂していく」と想定していた(2013 年 4 月展望レポート)。実際の予想物価上
昇率の動きをみると、「総括的な検証」に纏められているとおり、多くの指標は、
2014 年夏まで順調に上昇傾向をたどっていたものの、その後横ばいに転じ、2015
年夏以降は弱含みとなっている(日本銀行、2016)。こうした予想物価上昇率の
下振れがなぜ生じたかについては、「総括的な検証」(日本銀行、2016)や、そ
の内容を補足説明した西野他(2016)において、別途、詳細な分析が行われて
いるため、ここでは立ち入らないが、筆者らは、この間のベースアップ賃金の
上昇ペースが想定以上に鈍かったことの影響が大きいと考えている。すなわち、
わが国では、20 年弱に及ぶ長期デフレの中で定着してしまった、「物価は上がら
ない」という社会通念(ゼロインフレ・ノルム)は根強く、金融政策のレジー
ム変化が、実際の労使間の賃金交渉に及ぼしたプラスの影響も想定よりも小幅
なものにとどまったと考えられる。換言すれば、中央銀行の掲げるインフレ目
標が「信認」され、2%の物価上昇が既にノルムとして経済社会に定着している
欧米諸国と異なり、わが国では、QQE 導入以降も、インフレ目標によって規定
されるフォワードルッキングな期待が実際の賃金・物価形成に与えた影響は、
限定的なものにとどまった可能性が高い。
標準的なニューケインジアン型の粘着価格モデルでは、インフレ目標が 2%に
引き上げられ、それが人々に完全に「信認」されれば、予想インフレ率は瞬時
に 2%にジャンプし、実際のインフレ率も素早く 2%に収束する。実際にそのよ
うなことが起きない理由として、インフレ目標が人々に完全に信認されるまで
には相応の時間を要することを指摘した先行研究は幾つか存在する。例えば、
De Michelis and Iacoviello (2016)は、QQE 導入以降のわが国の経済状況は、ディ
スインフレ政策が完全に信認されインフレが終息するまでにかなりの時間を要
した米国のボルカー・ディスインフレーションのエピソードと類似していると
指摘している。そのうえで、彼らは、こうしたわが国の状況を説明するモデル
9
として、Erceg and Levin (2003)に倣い、人々がインフレ目標引き上げによる「恒
常的な」インフレ率の上昇と、「一時的な」インフレ率の上昇を完全に峻別出来
ないこと(imperfect observability)を取り入れた、動学的一般均衡(DSGE)モデ
ルを提示している。また、Hausman and Wieland (2015)は、アベノミクスは、黒
田(2013)や Romer(2013)が例に挙げた大恐慌時のルーズベルト政策のように、
レジームチェンジ効果を持つと期待されたが、実際には、その効果は期待した
ほど大きくなかったとの見解を示している。そのうえで、彼らも、わが国で大
規模な金融緩和にも拘わらず、予想物価上昇率が 2%まで上昇しない理由として、
インフレ目標に対する人々の信認の問題を挙げている。
4.結論
本稿では、QQE 導入から 3 年余りが経過した後も、消費者物価(除く生鮮食
品)の前年比上昇率が「物価安定の目標」である 2%程度に到達しなかった背景
について、定量的に検証した。具体的には、VAR のヒストリカル分解の手法を
用いて、消費者物価がどのような要因によって QQE 導入当初の日本銀行の見通
しから下振れたのかを実証的に明らかにした。2013 年4月時点の政策委員見通
しについて幾つかの強い前提をおいたうえではあるが、分析の結果、2015 年度
の消費者物価前年比の下振れ幅(−1.9%ポイント<見通し:+1.9%、実績:0.0%
>)のうち、約 5 割(−1.0%ポイント)は原油価格の下振れによるものであり、
それ以外については、1 割強(−0.3%ポイント)が需給ギャップの下振れ、3 割
強(−0.7%ポイント)がインフレ固有の要因に起因することがわかった。イン
フレ固有の要因は、需給ギャップや原油価格、為替レートでは説明できない消
費者物価の下振れを意味しており、これは、予想物価上昇率の高まりが当初の
想定に比べると小幅なものにとどまったことを表しているとの解釈を提示した。
本稿では、時系列分析に耐えうる長期の四半期データが存在しないとの理由
から、インフレ予想そのものを分析対象に含めていない。QQE 導入という「金
融政策のレジーム変化」が、人々のインフレ予想、なかんずくフォワードルッ
キングな予想形成にどのような影響を及ぼし、これが実際の賃金・物価形成に
どのような変化をもたらしたのかについて実証的に分析することは、今後に残
された重要な課題である。
以 上
10
(補論).需給ギャップの政策委員見通しの試算方法
展望レポートで明示的に見通しが公表されていない需給ギャップの四半期パ
スについては、具体的に以下の手順で作成した。
(1)潜在成長率の見通し
潜在成長率については、2013 年 4 月の展望レポートの記述を参考に13、年度ベ
ースで 2013 年度+0.5%、2014 年度+0.6%、2015 年度+0.7%としたうえで、四
半期でみた前期比は各年度内で等速と想定した。
(2)GDP 成長率の見通し
まず、ベースラインの GDP 成長率として、「消費税率引き上げの影響を除く
ベース」でみた年度の成長率見通しを、2013 年 4 月の展望レポートの記述に則
して計算したうえで14、これを「各年度内で等速成長」との仮定のもと、四半期
の成長率に換算した。
次に、2014 年 4 月の消費税率引き上げが実質 GDP 成長率の四半期パスに及
ぼす影響について、以下のとおり計算した。
@ 駆け込み需要は、消費税率引き上げ直前の 2 四半期で集中的に発生し、合計
で 2013 年度の実質 GDP 成長率を+0.3%ポイント押し上げると想定した。
さらに、消費税率引き上げ直前の方が駆け込みの規模は大きくなるとの仮定
のもと15、駆け込み需要全体を、2013 年 10〜12 月と 2014 年 1〜3 月で、1:
4 の割合で割り振った16。

13 2013 年 4 月の展望レポートの基本的見解では、「わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計す
ると、見通し期間平均では『0%台半ば』と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上
昇していくと見込まれる」と記述されている。
14 2013 年 4 月の展望レポートをみると、実質 GDP 成長率の見通しは、2013 年度+2.9%、2014
年度+1.4%、2015 年度+1.6%となっている。また、同レポートは、消費税率引き上げの影響に
ついて、2013 年度+0.3%ポイント程度、2014 年度−0.7%ポイント程度、2015 年度+0.2%ポイ
ント程度と見込んでいる。以上から、消費税率引き上げの影響を除いた成長率の見通しは、2013
年度+2.6%、2014 年度+2.1%、2015 年度+1.4%と計算される。
15 この点については、2012 年 10 月の展望レポートの BOX.3 の分析を参考。
16 消費税率引き上げの影響に関し、2013 年 4 月の展望レポートの背景説明では、「消費税率の引
き上げは、主として税率の引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動(異時点間の代替効果)
を通じて、経済に影響を及ぼすと考えられる。すなわち、2013 年度下期に、1回目の消費税率
引き上げ前の駆け込み需要が発生したあと、2014 年度上期にはその反動から成長率が大きく鈍
化すると予想される。2015 年度にも、上期に2回目の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の発
生と、下期にその反動が予想されるが、2回目については、@税率の引き上げ幅が小さいこと、
11
A 反動減は、駆け込み需要と同規模であり、かつ消費税率引き上げ直後の 2 四
半期で、駆け込み需要と対称的に発生すると仮定した。
B 駆け込み需要の反動減だけでは説明できない 2014 年度の実質 GDP 成長率
の低下(前年比−0.2%ポイント程度)は、実質所得の減少効果によると考
え、その分 2014 年 4〜6 月の実質 GDP 前期比を低下させた。
QQE 導入当時に予定されていた 2015 年 10 月の 2 回目の消費税率引き上げが
実質 GDP 成長率の四半期パスに及ぼす影響については、駆け込み需要と反動減
の規模が 1 回目の半分になると仮定した以外、1 回目と同様の方法で計算した。
最後に、ベースラインの消費増税の影響を除いた成長率に、上記で計算した
消費税率引き上げの影響を加味して、四半期ベースの成長率見通しを作成した。
以上のステップで作成した実質 GDP 成長率見通しのパスは、補論図表のとおり。
(3)需給ギャップの見通し
最後に、2013 年第 1 四半期の需給ギャップの実績を出発点に、以上で求めた
四半期ベースの潜在成長率の見通しと GDP 成長率の見通しの差分を順に累積
していくことにより17、四半期ベースの需給ギャップの見通しを計算した。

A1回目の引き上げ前にある程度前倒しで駆け込み需要が発生している可能性なども踏まえる
と、駆け込みの規模はさほど大きくならないと考えられる」と記述されている。
17 正確に言えば、2013 年 4 月の展望レポート作成時点で、2013 年 1〜3 月の需給ギャップの実
績値は入手できていない。ここでは、政策委員見通しは、2013 年 1〜3 月の需給ギャップの実績
値を「完全予見」していることを implicit に仮定している。
12
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Erceg, Christopher and Andrew Levin (2003), “Imperfect Credibility and Inflation
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Hausman, Joshua and Johannes Wieland (2015), “Overcoming the Lost Decades?
Abenomics after Three Years.” Brookings Papers on Economic Activity:
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Romer, Christina (2013), “It Takes a Regime Shift: Recent Developments in Japanese
Monetary Policy through the Lens of the Great Depression.” Address given at
the NBER Macroeconomics Annual Conference, April 12, 2013. In NBER
Macroeconomics Annual 28, 383-400.
 (注)消費者物価見通しの中央値は、消費税引き上げの影響を除くベース。


http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/data/wp16j13.pdf

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/349.html

[国際16] アングル:トランプ氏、ビジネス「完全撤退」は実現可能か オーストリア大統領選、最後のTV討論会で非難の応酬
アングル:トランプ氏、ビジネス「完全撤退」は実現可能か 

Tom Hals

[ウィルミントン(米デラウェア州) 30日 ロイター] - トランプ次期米大統領は30日、大統領職に専念するため「ビジネスから完全に退く」とツイッターに投稿し、12月15日に具体的な説明を行う会見を開くと表明した。

ビジネスから撤退する方法はいくつか考えられる。ただ、法律専門家によると、利益相反にまったく抵触しないようにするには、トランプ氏自身が率いる企業「トランプ・オーガナイゼーション」が世界中に保有する資産をすべて売却するしかなさそうだ。

ベン・カーディン上院議員(民主党、メリーランド州)は、トランプ氏が保有資産を信託会社に登録して管理を白紙委任する「ブラインド・トラスト」を実施するよう強く求めている。

ところが法律専門家の話では、ブラインド・トラストが機能するのは信託会社がどのような運用をしているかが委任した人にわからない場合のみという点が問題になる。トランプ氏の資産は高級ホテルや自分の名を冠した建物といった一目瞭然で流動性の低いものがほとんど。つまりトランプ氏がだれかに運用を任せたとしても、資産の動きは把握できてしまう。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領の下で倫理問題の責任者を務めたリチャード・ペインター氏は、ブラインド・トラストはトランプ・オーガナイゼーションの保有資産から生じる最も危険な利益相反への対策にはならないと指摘。大統領選挙人団に対して、トランプ氏が事業面の利益を手放さない限り、同氏に投票しないよう求めている。

米紙ニューヨーク・タイムズの論説委員アンドルー・ロス・ソーキン氏は監視人制度を提唱し、2001年9月11日の米中枢同時攻撃の犠牲者に対する補償基金の監督に携わったケネス・ファインバーグ氏を推薦する。

監視人はしばしば訴訟の和解において裁判所が任命。合意に違反した当事者は監視人から提訴され、判事が制裁を科す可能性がある。

もっともトランプ氏のビジネスに監視人が導入されても、裁判所の支持を得られそうにはないので、トランプ氏が協力を拒否したからといって世論の批判を浴びるという以上の制裁は受けない。

このため、先のペインター氏や、ニューヨーク大学法科大学院のスティーブン・ギラーズ教授は、今後発生する利益相反を減らす最善の方法は、トランプ・オーガナイゼーションを完全に売り払うことになると強調する。

ペインター氏は、トランプ氏の子女が同社に関与しないようにする必要もあるとの見方を示した。

ただし、ボストン大学法科大学院のブライアン・クイン教授によると、不動産物件の所有構造の特性から考えて、いざ売却するとしても長い時間がかかる公算が大きいという。
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-business-idJPKBN13Q3OH?sp=true


 
 オーストリア大統領選、最後のTV討論会で非難の応酬

[ウィーン 1日 ロイター] - 4日に投票を控えたオーストリア大統領選で、最後のテレビ討論会が1日行われ、「緑の党」前党首のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏と極右政党「自由党」のノルベルト・ホーファー氏が激しい非難合戦を繰り広げた。

世論調査では接戦が予想されている。ホーファー氏が勝利すれば、欧州連合(EU)加盟国で初めて極右系の首脳(訂正)が誕生することになる。

5月の決選投票ではファン・デア・ベレン氏が僅差で勝利したが、開票方法に問題があったとして当選は無効とされ、選挙のやり直しが決まった。

両候補は討論会で、政策をめぐる議論からたびたび脱線し、互いの攻撃に時間を費やした。

ホーファー氏が無所属で出馬しているファン・デア・ベレン氏に対し、「あなたには価値がない」と批判すると、ファン・デア・ベレン氏は「またうそをついている」と返した。

ホーファー氏はさらに、ファン・デア・ベレン氏が諜報員だったと指摘し、徴兵制やオーストリアの中立をめぐる同氏の見解は「虚偽だ」と発言。ファン・デア・ベレン氏は「これほど不愉快な時間を過ごしたことはない。ばかげている」と反論した。

*本文第2段落の「首相」を「首脳」に訂正します。

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インドの7−9月期成長率は+7.3%に加速、予想下回る
http://jp.reuters.com/article/austria-election-idJPKBN13Q605
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/566.html

[政治・選挙・NHK216] 痛みを伴う「年金抜本改革」を誰が言い出すのか 「年金カット法案」を巡る与野党攻防は茶番劇 インチキメディアの時代到来
痛みを伴う「年金抜本改革」を誰が言い出すのか

「年金カット法案」を巡る与野党攻防は茶番劇

磯山友幸の「政策ウラ読み」

2016年12月2日(金)
磯山 友幸

11月25日、民進党などが反対する中、与党は衆院厚生労働委員会で年金制度改革関連法案の採決に踏み切った。その後、29日に衆院本会議で可決され、参議院に送られた。(写真:つのだよしお/アフロ)
「反対しました」という形が欲しい

 野党が「年金カット法案」とレッテルを貼る年金制度改革関連法案が11月29日、衆議院本会議で可決され、参議院に送られた。国会会期は12月14日まで延長されており、政府・与党は何とか今の国会で成立させたい意向だ。年金支給額の新たな改定ルールを盛り込んだ今回の法案には、民進党、自由党、社民党、共産党の野党4党が反対。自民党と公明党、日本維新の会などが賛成した。野党は衆議院での法案通過を阻止するために、衆議院厚生労働委員会の丹羽秀樹委員長の解任決議案と、塩崎恭久厚生労働大臣に対する不信任決議案を提出。否決されると、民進党、自由党、社民党は本会議場から退出、法案の議決には加わらなかった。

 会期末が迫るとしばしばみられる「茶番劇」である。民進党は、「年金カット法案をいい加減な審議で通すことに断固反対だ」としているが、民進党が求めるように審議時間を増やせば今国会での成立は絶望的になる。また、審議時間を増やしたからといって民進党が賛成に回る可能性はまずない。「年金の減額につながる法案に私たちは反対しました」という形が欲しいのだ。

抜本改革を議論するというのは結局、問題の先送り

 民進党はさらに「今の高齢者から将来の世代まで、まともな額の年金をもらえるように抜本改革に今すぐ取り組むべきだ」とも主張している。これは正論だ。年金制度の抜本改革の議論は今すぐにでも着手すべきだが、だからといって、抜本改革の議論を始めて今国会で成立することなどあり得ない。今回の法案を止めて、抜本改革を議論するというのは、結局は問題の先送りになるだけだ。

 それは民進党の議員の多くも十分に分かっている。年金の支給額を抑制しなければ、今の制度がもたないことも十二分に理解している。

自民党など与党の主張にもウソ

 一方で、自民党など与党の主張にもウソがある。衆議院での討論で、自民党は「法案は、公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の年金水準を確保することによって、将来的にも安心な年金制度を構築するためのものだ」と述べたが、この法案で将来にわたって安心な年金制度になるわけではない。これもマヤカシなのだ。長年政府は、「百年安心プラン」といった言葉を使って、年金制度にマクロ経済スライドという仕組みを導入すれば、制度は持続可能だと言い続けてきた。

 2004年の法改正で、毎年年金掛け金を引き上げる一方で、経済情勢で年金支給額を増減できるようにしたのだ。年金給付を減らして将来世代に回すなど制度全体で「完結」するようにはなっているが、あくまで机上の論理。実際には年金制度は維持できたとしても、高齢者がその年金の金額で生活できなくなったり、逆に、若年層が年金掛け金の負担に耐えられなくなる可能性は十分にある。制度を司る厚生労働省は安心かもしれないが、生活者の不安は解消されない。

日本の公的年金制度は「修正賦課方式」

 何せ日本は猛烈な少子化である。年金という制度は現役世代が払った原資を、高齢者世代が受け取るという仕組みだ。自分で払ったものを自分で受け取る仕組みを「積立方式」と言うが、日本の実情はすでに積立方式ではなくなっている。今の若手世代が払った保険料を高齢者への給付に充てる「賦課方式」に近い。一部は積み立てられた年金資産を運用に回しているため、「修正賦課方式」などと呼ばれる。

 現在65歳以上が人口に占める割合は27%だ。高齢者がどんどん増える中で、支払う年金も増えている。それを制度的に賄うには大きく分けて2つの方法がある。年金支給額を引き下げるか、保険料を引き上げるか、だ。

若い世代の社会保険料と税の負担感は相当なもの

 2004年の法改正で、それまでは景気や年金資産の運用状況によって改訂していた保険料率を、毎年0.354%ずつ自動的に引き上げることを決めた。2003年に13.58%(個人と会社で半分ずつ負担)だった保険料率を、14年にわたって引きあげ、2017年9月以降は18.30%で固定するというものだ。毎年一定の保険料収入の増加を可能にしたわけで、この保険料の引き上げは今も続いている。18.30%というのは年金の保険料だけで、これに健康保険料も加わり、さらに所得税もかかる。若い世代の社会保険料と税の負担感は相当なものだ。これ以上、保険料負担を上げるというのは現実的には難しい。

 そうなると、高齢者が受け取る年金を減らすしかない。現在、年金支給開始年齢を65歳にまで引き上げる作業が続いている。抜本的な改革はこれを70歳にまで引き上げる方法だが、それでは退職後の無年金時代が生じてしまう。すぐには実行できないのだ。そうなると、今の年金受給者がもらっている年金を減らすほかない。

「物価が上がり、年金額が下がったら生活できない」は正論だが…

 今回、民進党が問題視したのは、「物価が上昇した場合でも、現役世代の平均給与が下がった場合には、年金額が下がる」という仕組みだ。物価が上がって年金が下がったら生活できないというわけだ。もちろん正しい主張だ。

 東京巣鴨の地蔵通りでお年寄りを相手に「年金減額法案に賛成か反対か」と聞いていたが、当然、「反対」が圧倒的になるに決まっている。だが、年金額を維持しようと思えば、どうなるか。「現役世代の給与が下がっても、高齢者の年金額を維持するために、さらに現役世代に負担を求める」ことになるわけだ。「あなたの子供や孫の負担を増やしても年金を維持してほしいですか」と聞けば、違った反応だったかもしれない。

 税金で賄うべきだ、という声もあるだろう。だが、所得税を増やせば、結局は勤労世代の負担を増やす。保険料か税金かの違いだ。消費税ならば高齢者も負担することになるが、2019年までは上がらない。

マクロ経済スライドは、どれだけ「机上の空論」か

 経済が上向き、働く世代の給料が増えれば、結果的に社会保険料や税収も増えることになる。だが、それで少子高齢化による負担増を吸収できるわけではない。日本の年金制度はかなりの危機に瀕している。抜本改革は待ったなしなのだ。

 抜本改革を主張する民進党はどうやって問題を解決しようと考えているのだろうか。民進党のホームページで、井坂信彦・衆議院議員が解説している。長妻昭氏に次ぐ「新ミスター年金」として民進党が売り出したい若手の有望議員だ。

 現在の「年金カット法案」について、「将来世代の受給額が7%増える事実はまったくない。なぜ政府案でそうなっているかというと、政府の試算は2005年からずっと長い間、高齢者の年金を3%カットして巨額の財源をつくり、しかも年4.2%というありえない運用利回りで50年くらい増やして、それが将来世代にばらまかれると7%増えるという計算をしている」と指摘している。いかに政府のマクロ経済スライドが「机上の空論」かを追及しているのだ。

 そのうえで、「年金カット法案は不要」だと断定している。「場当たり的に削れるだけ削っておこうという発想で、将来世代が少しの額しかもらえない制度が延命されるだけだ」というのだ。さらに、年金の制度設計で大事なこととして、@老後の暮らしを最低限年金で支える最低生活保障が大原則、A今の制度のように「若い人は払い損」という世代間の不公平があってはいけない──つまり、「最低生活保障と世代間公平の二つを何とか両立できるような制度設計をしなければいけない」としている。

年金の試算を第三者機関で行い、都合のよい解釈をさせない

 だが、どうすれば、それが可能になるのか。井坂氏が挙げている1つ目は、年金の試算を中立的な第三者機関で行う、というもの。政治家や役所に都合のよい解釈をさせないということだろう。大賛成だ。さらに同世代間で区切る疑似的な積立方式に近い形も目指すという。世代ごとに景気変動の影響の受け方が違い、世代間の不公平間が高まるかもしれないが、積立方式に近い形ということでこれも良しとしよう。

 財源については「高所得者に負担いただくことと、歳入庁の設置やマイナンバーの活用で、きちんと皆さんに保険料を払っていただく」こと。さらに「それだけでは足りないから広く薄い相続税のような形で、亡くなったあとに回収する形も考えなければいけない」としている。

 民主党政権時代には相続税の増税が検討されたが、これを「広く薄く」取るというのは言うは易く行うは難い。マイナンバーが導入されたといっても、国民の資産を国が把握しているわけではない。大金持ちの遺産を調べてガバッと課税するならともかく、広く薄く相続税を取る仕組みを構築するのは容易ではない。

 結局、ホームページをみても、抜本的な改革提案はなされていない。

悲惨な社会保障の現状を理解してもらうしかない

 『シルバー民主主義』(中公新書)の著書もある八代尚宏・昭和女子大学特命教授は、「高齢者に日本の悲惨な社会保障の現状を理解してもらうしかない」と話す。(当コラム 2016年6月17日配信「『40歳定年制』は非常に合理的な意見」ご参照)

 そのうえで、2つの方法があるとして以下のように言う。

 「ひとつは理詰めで説得すること。政府は年金制度が持続可能だと言っているが、実際にはそれは粉飾で、年金はすでに不良債権ということをきちんと説明する。そのうえで、年金の一部切り下げを受け入れてもらうわけです。

 もうひとつは高齢者の『利他主義』に訴えること。あなたのお孫さんを犠牲にしてまで多くの年金を受け取りたいですかと問えば、日本の多くの高齢者はとんでもないと言います。政治家はそうした点をもっときちんと高齢有権者に訴えるべきです」

「痛み」受け入れのお願いを、自民党も野党も口にしない

 支給年齢を引き上げるか、大幅に年金支給額をカットするしかない、それを高齢者に理解してもらうべきだ、というのだ。年金制度の抜本的な見直しは、まさしく「痛み」の負担を受け入れてもらうことなのである。それを自民党も野党も真正面から堂々と主張していないところに問題がある。

 もともと、年金は「保険」だ。元気に働いて十分な収入を得ている人には全額辞退してもらえばよい。その一方で、働きたくても働けない人や、病気の高齢者には生活に必要な年金は保証する。今の人口構造の中で、全員が満足できる金額を受け取れる年金制度の設計は無理だろう。


このコラムについて

磯山友幸の「政策ウラ読み」
重要な政策を担う政治家や政策人に登場いただき、政策の焦点やポイントに切り込みます。政局にばかり目が行きがちな政治ニュース、日々の動きに振り回されがちな経済ニュースの真ん中で抜け落ちている「政治経済」の本質に迫ります。(隔週掲載)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/238117/120100036/

 

インチキメディアの時代到来

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

2016年12月2日(金)
小田嶋 隆

 医療情報サイト「WELQ」の記事が11月29日以来、非公開になっている。

 WELQを運営しているディー・エヌ・エー(本社:東京都渋谷区、代表取締役兼CEO:守安功)の説明によれば、掲載記事の信憑性について医療関係者から疑義が寄せられていることを受けての措置だという(日経電子版のニュースはこちら)。さらに本日(12月1日)、社長名で「9つのキュレーションメディアの非公開化と社長の減俸処分」を発表した(こちら)。

 まあ、当然ではある。
 というよりも、数日前からの経緯を踏まえて考えるなら、配信停止の判断は遅すぎたと言って良い。

 私がこのたびのWELQについてのニュースを知ったのは、例によってツイッターのタイムラインでの騒ぎを通してだったわけなのだが、考えてみればこのこと(私がツイッター経由でこのニュースに触れたこと)自体、WELQが引き起こしている状況と無縁ではないのかもしれない。どういうことなのかというと、世間で起こっている出来事の概要を、主にツイッター上の噂話から知り得ている昨今の私の暮らしぶりの危うさは、WELQに代表されるお手軽なキュレーションメディアをうっかり信じ込んでいる人々のおめでたさと同質だということだ。

 私たちは、ネットから流れて来る情報に対してあまりにも無防備だ。
 自分で選び取った気になっている情報は、実は「つかまされた」情報だったりするのかもしれない。でなくても、われわれは、つまるところ、誰かに誘導されている可能性が高い。

 ということで、今回は、さんざん言われ尽くしていながらほとんどまったく身についていない、わたくしどもの「メディアリテラシー」について考えてみることにしたい。

 まず、WELQの記事が炎上したいきさつを振り返っておく。
 当初、ツイッターに流れてきたのは、WELQのサイト内で紹介されていた記事への論評と、それに対する反応だった。

 現在、当該の記事は非公開の扱いになっている。ちょっと前まではアーカイブサイトで読めたのだがそちらも削除された模様だ。

 読んでみると、記事の書き手は、驚くべきことに、肩こりの原因のひとつとして「幽霊」を召喚している。

《ちなみに「肩が重い」と訴える方を霊視すると、幽霊が後ろから覆いかぶさって腕を前に垂らしている、つまり幽霊をおんぶしているように見えるそうですよ。肩の痛みや肩こりなどは、例えば動物霊などがエネルギーを搾取するために憑いた場合など、霊的なトラブルを抱えた方に起こりやすいようです。

 また右肩に憑くのは守護霊、という話もよく知られているかと思います。守護霊は人などに憑き、その対象を保護する霊のことで、多くの方の守護霊はご先祖様だと言われています。》

 なんと、右肩に憑くのは守護霊なのだそうだ。なるほど。
 解説はさらに続く。

《なお守護霊は実は1人ではなく、縁のある複数のご先祖様が憑くそうで、そうすると右肩にたくさんの守護霊が乗っている、ということになるので、肩の痛みやこりを感じるのは無理のないことなのかもしれません。》

 で、このお話は

《もちろんこれは科学的に実証された話ではないので、信じるか信じないかは人それぞれです。》

 という、なんとも人を食った物言いで一段落するわけなのだが、いったいこれは何を意図した記事なのであろうか。

 まあ、意図も何も、あまりにもバカげていて分析を寄せ付けない水準のテキストだという、それだけの話なのかもしれない。
 とはいえ、バカな記事だということで一笑に付すわけにもいかない。

 なぜなら、この文章は素人のブログに書き散らされた個人の日記でもなければ、趣味の情報交換を目的にやりとりされている好事家の私信でもないからだ。

 いまご覧いただいたリンク先の記事は、歴とした「医療情報サイト」に掲載されているテキストで、その「ココロとカラダの教科書」を謳うキュレーションプラットフォームを運営しているのは、プロ野球の球団を所有するなど、確固たる社会的信用を看板に商売をしている東証一部上場企業だ。

 ということは、記事には当然文責が生じ、配信元には掲載責任が発生すると考えなければならない。
 どこからどう考えても、到底笑って済ませられる話ではない。

 まして、相手は医療だ。人の命がかかっている。ただでさえ肉体の不調に苛まれて不安に陥っている読者を相手に「守護霊」だの「ご先祖」だのといったたわけた世迷い言を吹き込まれたのではかなわない。

 これでは、霊感商法と少しも違わないことになる。
 きっちりと責任を取ってもらわねばならない。

 深刻なのは、WELQがそこいらへんによくある泡沫サイトではないことだ。
 WELQは、一日に100以上の新記事を更新すると言われるネット界でも指折りの巨大情報サイトだ。

 配信元のディー・エヌ・エーがIT世界の大企業であるだけに、SEO対策(検索エンジンの挙動に最適化することで検索にかかりやすいページを制作する技術)にもぬかりはない。それゆえ、影響力はことのほか大きい。

 たとえばGoogleの検索窓に「肩こり」や「血糖値」といった医療・健康にかかわるキーワードを入力して検索ボタンを押してみると、検索上位には、必ずWELQのサイトの記事が表示される。

 さらに具体的に「膝 骨折」「頭痛 めまい」という感じの複合的なキーワードを入力して、より実践的な検索を試してみると、あらまあびっくり検索上位はWELQに独占されてしまう。

 つまり、一般のネットユーザーが、スマホなりPCなりの検索から健康情報なり医療知識なりを入手するべく、通り一遍の手順を経て検索を実行すると、かなり高い確率でWELQの記事に誘導されることになるわけだ。とすると、そのWELQが、何らかの意味で不正確な(商業的な思惑に歪められた、あるいは医学的に間違った、でなければ政治的ないしは社会的に偏向した)情報を提供しているのだとしたら、被害は、目に見えるものから目に見えないものまで、非常に多岐にわたることになるはずなのだ。

 現在は、検索候補に表示されたWELQの記事の見出しをクリックすると、

《【お知らせ】WELQの全記事の非公開化について(こちら)》

 という、ディー・エヌ・エーの告知ページが表示されてそれっきりだ。
 が、つい3日ほど前の11月28日までは、WELQのサイトが文字通りに検索候補を席巻していたわけで、これはやはり、なかなか深刻な事態と考えなければならない。

 そもそもの話をすれば、WELQの胡散臭さは「キュレーション」という言葉の胡散臭さからやって来ているものだ。

 「キュレーション」の意味は「知恵蔵2015」の解説によれば、

《IT用語としては、インターネット上の情報を収集しまとめること。または収集した情報を分類し、つなぎ合わせて新しい価値を持たせて共有することを言う。キュレーションを行う人はキュレーターと呼ばれる。》

 てなことになっている(出典はこちら)。

 なるほど。
 この記述から考えるに、もしかして「キュレーション・プラットフォーム」を名乗るWELQは、情報を集めて整理しているだけなのだからして、はじめから編集責任は負わないつもりだったのだろうか。

 まさか。
 だが、その通りなのだ。彼らは、どうやら、責任を取るつもりを持っていなかったのである。

 WELQの記事の末尾には

《当社は、この記事の情報及びこの情報を用いて行う利用者の判断について、正確性、完全性、有益性、特定目的への適合性、その他一切について責任を負うものではありません。この記事の情報を用いて行う行動に関する判断・決定は、利用者ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。》

 という文言が付加されている。
 さきほど紹介したアーカイブの記事の最後にも、信じがたいことに、この通りの言葉がそのまま書かれていた。
 本当に、ここに引用した通りのトンデモな言い草が表記されているのである。
 びっくりぽんだ。
 何度読み返しても、読んだ回数分だけ、必ずや何度でも驚愕させられるとてつもない但し書きだと思う。

 「自己責任」という概念が、ここまであからさまに情報提供側の無責任の弁解に使われた例を、私はほかに知らない。
 というよりも、文字を扱う人間としてこれほどまでに恥知らずな文言を掲げていながら、どうやって編集部に人材を集めることができたのか、そこのところが不思議でならない。

 いったい、どこの編集者が、こんな呪われた汚れ仕事にかかわりたいと考えるだろうか。
 あるいは、そもそもキュレーション・プラットフォームというのは、無批判にかき集めた低コストのテキストを無責任に垂れ流すだけの下水管ライクな仕組みなのだからして、はじめから「編集部」にあたる組織を置いていなかったのかもしれない。それ以前に「編集」という作業そのものを想定していなかった可能性もある。

 いずれにせよ、「守護霊」や「幽霊」の話を書いた記者が自ら

《もちろんこれは科学的に実証された話ではないので、信じるか信じないかは人それぞれです。》

 と、いけ図々しくもほざいていたのとほとんどまったく同じセリフを、その記事の配信元であるディー・エヌ・エーが、会社の名前を代表して記事の末尾に堂々と書いているわけで、してみると、これははじめから「記事」なんてものではなかったわけだ。

 正直なところを申し上げるに、私は、「キュレーション」という言葉の背後に隠れて無責任な商売をしている人々には、ずっと以前から、良い感情を持っていなかった。個人的には、ずっと昔、「愛人バンク」という名前で売春を斡旋していた組織が、世間からの非難に対して

「われわれは、電話番号を仲介しているだけで、売春を斡旋しているわけではない」

 という主旨の弁解を並べ立てていたことを思い出さずにおれない。
 バイラルメディアも、まとめサイトも、似たようなものだと思っている。

 要するに、インターネットを中心とした新参のメディアを舞台に収益事業を展開している人間の中には、記事を扱う人間が当然持っていて然るべき常識を欠いた人々が多数含まれているということだ。

 インターネットの登場以来、情報が双方向化して、これまで情報の受け手であった人々が、情報を発信する手段を獲得し、それまでの一方的なメディア状況に変化が生じると、「メディア・リテラシー」という言葉が、しきりに繰り返されるようになった。その意味するところは、

「IT化した世界の住人は、これまでのように、一方的に情報を享受するだけでなく、時には自分の側から情報を発信しつつ、様々なメディアの特徴とその配信内容を批判的に検証しながら、主体的にメディアを選択しなければならない」

 といった感じだろうか。まあ、そんなところだろう。
 いずれにせよ、「鵜呑み」が、最悪な態度で、メディアに対して批判的な態度を堅持することが、メディア・リテラシーの基本だってな話が、21世紀のメディアや情報に関して説教を垂れる人間の定番だったわけだ。

 大筋はその通りなのだろう。
 ただ、最近になって、私は、われわれ一般の人間が、既存のマスメディアに対して批判的な目を向けはじめたことが、果たして21世紀のメディア環境を改善せしめているのかについて、確信を持てなくなってきている。

 というのも、マスメディア発の「画一的」で「独善的」で「一方的」な情報に疑いの目を持つまでのところは良かったのだとして、その結果、人々が、ミドルメディアだったりマイクロメディアだったりする有象無象の情報源からの情報を重視することになっている現状が、必ずしもマトモな結果をもたらしていない気がするからだ。

 もう少し具体的な言い方をすると、マスメディアの情報を鵜呑みにしていた20世紀の日本人の方が、それを疑っている21世紀の日本人より、結果的には賢明だったのではないかと思い始めているということだ。

 というのも、マスメディア発の情報を「鵜呑み」にせず、疑い、検証し、さらに様々な個人や小さな組織や有識者や言論人やネット論客から発信される非常に幅広い情報を総合的に評価して、「自分のアタマ」で判断して情報を取り入れている21世紀のわれわれは、結局のところ、「正確な情報」ではなくて、「自分の信じたい情報」だけを集めるサルみたいなヤツになってしまっているからだ。

 2008年の2月、私は当時運営していた自分のブログに

《情報の双方向化は、メディアの側にもメディアリテラシーが求められる時代をもたらしたわけで、懐かしくも麗しい、古き良き二十世紀のおとなしくて無力なやられっぱなしの聴衆は、もう帰ってこないのだよ。残念だが。》(こちら)

 という言葉を書いた。

 この言葉は、どこでどう引用されて拡散されたものなのか、いまでもネット上をさまよっている。で、時々私のツイッターのタイムライン上にも顔を出したりする。

 これを引用している人たちは、おそらく、20世紀のマスメディアが持っていた特権が失われつつある現状を歓迎する意味で、私の言葉を広めてくれているのだと思う。

 が、私自身は、マスメディアの力が弱まったことはその通りだとして、だからといって、メディアの受け手である一般の人々の情報感度が高まったとは思えなくなっている。

 自分のアタマで考え、自分の判断でメディアの善し悪しを判定し、自己の責任において情報の真贋を見極めるためには、その前提として、メディアの受け手である側の人間の側に、相当に高い知性と判断力が備わっていなければ、話が成立しない。

 それができない人間は、結局のところ、良い気持ちにさせてくれる記事を信用し、自分にとって居心地の良い結論に飛びつき、感情をゆり動かす文章にひきつけられることになる。

 で、その結果が、ページビューを稼ぐことにばかり血道をあげるバイラルメディアの猖獗であり、あることないことを確認もせずに騒ぎ立てるまとめサイトの隆盛であるのだとしたら、マトモなメディアも、どうせその後を追うことになる。

 新聞社が運営するサイトでも、見出しの付け方は、5年前に比べてあきらかに扇情的になっている。

 紙の見出しとウェブ上の記事の見出しの乖離(←紙の新聞の見出しは「記事の要約」を基本に書かれるが、ウェブの記事の見出しには、同じ記事でも、よりクリックを誘発しやすい扇情的でひっかかりのある言葉が選ばれる)も、ますます広がっている。

 肩こりに苦しむ読者が霊能詐欺師の門前に導かれる近未来が、もうすぐやって来ると思っていた私の見込みは、毎度のことではあるが、甘かった。

 その近未来は、すでに来ている。
 私たちは、自ら選んだ結末として、大雑把でノロマで胡散臭くて出鱈目なマスメディアを葬り、よりきめの細かい悪辣さを備えたインチキメディアに魂を抜かれはじめている。

 不快な結末になった。
 いやな気持になった人は、生活習慣をあらためると良いでしょう。
 私の文章が不快なのは、あなたの心の中に住む悪霊のせいかもしれないので。

何を言っても自分に返ってくるような
悪辣なコラムだ。怨霊退散、怨霊退散!

 全国のオダジマファンの皆様、お待たせいたしました。『超・反知性主義入門』以来約1年ぶりに、小田嶋さんの新刊『ザ、コラム』が晶文社より発売になりました。以下、晶文社の担当編集の方からのご説明です。(Y)

 安倍政権の暴走ぶりについて大新聞の論壇面で取材を受けたりと、まっとうでリベラルな識者として引っ張り出されることが目立つ近年の小田嶋さんですが、良識派の人々が眉をひそめる不埒で危ないコラムにこそ小田嶋さん本来の持ち味がある、ということは長年のオダジマファンのみなさんならご存知のはず。

 そんなヤバいコラムをもっと読みたい!という声にお応えして、小田嶋さんがこの約十年で書かれたコラムの中から「これは!」と思うものを発掘してもらい、1冊にまとめたのが本書です。リミッターをはずした小田嶋さんのダークサイドの魅力がたっぷり詰まったコラムの金字塔。なんの役にも立ちませんが、おもしろいことだけは請け合い。よろしくお願いいたします。(晶文社編集部 A藤)

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小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明
「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/120100072/?
http://www.asyura2.com/16/senkyo216/msg/826.html

[経世済民116] スティグリッツ氏が書く日本経済再生への処方箋 インド富裕層「ドローン婚」中国「ベジ婚」 映画「この世界の片隅に」勝算は?
スティグリッツ氏が書く日本経済再生への処方箋

トレンド・ボックス

2016年12月2日(金)
米経済学者スティグリッツ氏は日本経済の再生には現状の政策より炭素税の導入が解決策になると提言する。低炭素社会にかじを切ることが大規模投資を促し、経済を活性化する。税収増は債務圧縮、教育に充てればよい。公的債務は永久債や財政ファイナンスも選択肢だが、それ以上にサービス業の生産性向上も課題だと指摘する。
ジョセフ・スティグリッツ氏

1943年米国生まれ。米アマースト大学卒、67年米マサチューセッツ工科大学で経済博士号取得。95〜97年クリントン政権で大統領経済諮問委員会委員長、97〜2000年世界銀行のチーフエコノミスト。2001年にノーベル経済学賞受賞。現在は米コロンビア大学経済学部教授。2011年に米誌「タイム」の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれる。『世界の99%を貧困にする経済』など著書多数。
 日本のバブルが崩壊し始めたのは25年前。それから四半世紀、「失われた10年」が繰り返される間、日本経済は低迷し続けてきた。

 そして日本の経済政策は批判にさらされてきたが、批判の一部は正当なものではない。経済成長は、それ自体が目的ではないからだ。我々が何より重視すべきは、国民の生活水準である。

 日本の人口は世界に先駆けて増加から減少に転じたが、生産性は上昇してきた。生産年齢人口1人当たりのGDP(国内総生産)伸び率は、特に2008年以降、米国を上回り、欧州よりもはるかに高い。

炭素税導入が投資拡大を呼ぶ

 それでもなお日本人は、成長率をもっと高められると信じている。私も同じ考えだ。

 日本は、供給サイド、需要サイドの両面に問題を抱える。また実体経済においても、財政面でも問題がある。これらの問題に取り組むには、日本の政策立案者たちがこの数年採用してきた政策よりも、もっと実効性の高い経済活性化策が必要だ。

 これまで推進してきた政策では、インフレ目標も達成できなかったし、経済が成長に向かうという信頼感を回復することも、経済成長を望ましい水準にまで押し上げることもできなかった。

 まず、大規模な炭素税を導入すればいい。加えて、同時に「グリーンファイナンス(二酸化炭素の排出が少ない社会を実現するための取り組みに資金を提供すること)」を整備すれば、経済の改善に向けた大規模な投資を促進できるだろう。

 こうした投資によって経済の資金が吸い取られる、あるいは炭素税導入により「炭素資産」の価値が下がる逆資産効果を招くというマイナスの効果は生じるが、炭素税導入に伴う大規模投資が生む効果の方が必ず上回る。

 逆資産効果の影響はごく限られたものにとどまる一方で、資本ストックが炭素税導入によってもたらされる新たな価格体系とうまく調和しないため、そのギャップを埋めるべく莫大な資金が投入されることになるだろう。どこかにボトルネックが生じない限り、その投資額は巨大になるはずだ。

 炭素税導入で増加した税収は、公的債務の圧縮に使うこともできるし、技術や教育への投資資金に充てることも可能だ。例えば供給サイドへの投資として、日本のサービス分野の生産性を向上させるための対策に投じるのも一案だ。

 このような支出は同時に経済を刺激する効果も発揮するので、日本はついにデフレからの脱却を果たせるかもしれない。

永久債で公的債務を置き換え

 海外では、日本の公的債務の大きさを不安視する論調が強い。今日の世界的な低金利の環境では債務の持続は容易だが、ひとたび金利が正常な水準へと近づけば日本が財政を維持していくことは難しくなる、というわけだ。

 私自身は、金利が近く上昇に転じることはないと考えている。だが、日本がそうした懸念を払拭したければ、取れる政策が2つある。

 第1は、国債の一部を永久債に転換することだ。永久債とは、償還の必要がなく、毎年(少額の)金利だけを支払う債券のことだ。これで日本政府は莫大な公的債務を抱えるリスクを政府の貸借対照表上から完全に消し去ることができる。

 この手法はインフレを招く、との懸念もあるだろう。だが、日本経済では、逆にインフレこそがまさに必要とされていることだ。

 日本が債務を永久債に置き換えるようなことをすれば、急激な金利上昇を招くとの懸念もあるが、あまりに大げさに吹聴されすぎている。念のため十分に慎重を期して、インフレ圧力が高まりすぎない限りは毎年、例えば債務の5%ずつを永久債に転換していくという手法も考えられる。

財政ファイナンスも選択肢だ

 あるいは、今抱えている債務を金利ゼロの国債に置き換えるという手法もある。つまり、禁じ手とされてきた「国家債務のマネタイゼーション」だ。

 こうした財政ファイナンスは、金利が付く永久債化よりもインフレを招きやすい要因となる可能性が高い。だからといって、マネタイゼーションを否定する論拠にはならない。よりゆっくりとしたペースで進める必要がある、というだけのことだ。

 日本が金利の急上昇を避けるために取れる第2の方法は、日本政府の債務の大部分は自身からの借り入れであるという認識を出発点とする。

 米ウォール街では、問題は純債務──政府が外部の社会に対して負っている債務──であることを理解していない者が多いようだ。

 仮に政府が自身が抱える資産と負債を計算上、相殺して正味の債務だけを抱えるようにしたとしても、誰も変化に気付かないだろう。そして統計上の公的債務のGDP比だけに目を向けているウォール街は、突然、日本を好感し始めることだろう。

 これらの対策を全て講じたとして、それでも明らかに需要不足という状況に直面した場合でも、日本政府にできることはまだいくつかある。

 消費税率の引き下げ、企業の投資に対する税控除額の引き上げ、低・中所得世帯への支援策の拡大、技術と教育への投資の拡大などだ。

 これらの原資は全て貨幣の発行によって賄う。従来の経済学的思考からすれば、これもインフレを招くとの懸念を呼びそうだが、日本では、まさにその「懸念」が現実になることが求められているのだ。

 実は、日本は需要サイドよりも大きな問題を抱えている。労働時間当たりのGDPを見ると、供給サイドに問題がある。明らかに問題なのは、サービス分野における生産性の低さだ。

 日本は製造業分野では様々な創意工夫を成し遂げ感銘を受けるが、サービス分野ではそうした工夫が見えてこない。技術に強かった日本がその強さを生かして活躍するなら、次はサービス分野ではないか。例えば、医療における診断装置の開発などだ。

 しかし、安倍晋三首相はこうした解決策とは全く異なるアプローチを取り、日本と米国のほか太平洋を囲む10カ国との貿易協定であるTPP(環太平洋経済連携協定)を支持している。


安倍首相はTPP推進が改革をもたらすと考えているようだが…
(写真=Imaginechina/アフロ)
 安倍首相は、TPPは国内で必要とされる農業改革を推進する力になると考えている(興味深いことに、米国ではTPPが米国のひどくゆがんだ農業政策の是正に役立つと考える者はいない)。

 だが、実際には農業改革が日本のGDPに及ぼす影響は軽微だ。理由は単純で、農業のGDPに占める割合が非常に小さいからだ。それでも、改革はやはり望ましく、日本の若者が創意を発揮できる舞台を増やすことにつながる(もっともTPPがそうした創意工夫をもたらすための最善の策と言うつもりはない)。

日本は世界を先導できる

 一方、女性の全面的かつ平等な労働参加を推進しようという安倍首相の政策は正しい。こうした政策は、うまくいけば、生産性と経済成長の両方を一気に押し上げるはずだ。

 日本は、四半世紀に及ぶ停滞を経てもなお、世界第3の経済大国だ。日本が国民の生活水準を高める力となり得る政策を取るなら、他国の需要と成長も喚起することになる。

 これに劣らず重要なのが、以下の点だ。日本はこれまで革新的な商品や技術を開発し、それを世界と共有してきた。同様に、日本が何らかの政策で成功を収め、最終的にそれを輸出すれば、ほかの先進国も同じ、または似たやり方で国民の生活水準を向上させることができるだろう。

国内独占掲載:Joseph E. Stiglitz © Project Syndicate

(日経ビジネス2016年9月26日号より転載)


このコラムについて

トレンド・ボックス
急速に変化を遂げる経済や社会、そして世界。目に見えるところ、また見えないところでどんな変化が起きているのでしょうか。そうした変化を敏感につかみ、日経ビジネス編集部のメンバーや専門家がスピーディーに情報を発信していきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/226265/120100078/


 

インドの富裕層で人気の「ドローン婚」って何だ

シゴトタビ〜知られざるアジアの姿〜

韓国では「独身脱出大作戦」に若者が殺到
2016年12月2日(金)
小祝 誉士夫、高橋 学
 日本では結婚式や披露宴を開かなかったり、少人数での式が増えたりして、結婚ビジネス市場の縮小傾向に歯止めがかかりません。けれどもインドでは、結婚ビジネスは年25%以上の急拡大を続けています。インドの結婚ビジネス市場は1兆9000億ルピー(約3兆円)で、日本(約2兆5000億円)を上回っています。

 そんな伸び盛りの結婚ビジネス市場で、今、富裕層の間で人気を集めている結婚式があります。式当日、屋外パーティーの様子をドローンで撮影し、記念のショートムービーを作る「ドローン婚」です。


 インドは「ボリウッド」(映画制作拠点となっているムンバイの俗称)を中心に、映画制作が盛んな国ですが、近年はその映画技術を使って10〜20分の結婚式のショートムービーを制作するカップルが増えています。ドローンを使えば、空からのダイナミックなアングルで撮影できるため、富裕層を中心に好評を得ているのです。

 とはいえ、ドローンを使えばそれだけ費用は高額になります。「インドのシリコンバレー」と呼ばれるほどIT産業が発展しているプネー市にあるブライダルプロデュース会社のInnobella(イノベッラ)によると、利用料金は小型ドローンが12時間で2万5000ルピー(約4万円)。さらに、20分のショートムービーを制作するとなると、加えて20万ルピー(約31万円)が必要になります。

 フルサービスを利用しようとすれば、通常の結婚式費用に、約35万円も上乗せされる計算です。様々なアングルで撮るためにドローンを複数台用いれば、費用はさらにかさみます。

 しかし、富裕層はその程度の上乗せは全く意に介しません。式の最中に上空をドローンが飛び交うこと自体も、招待客を楽しませる演出であり、結婚式に派手さを求める若い富裕層カップルの間で、ドローンは今やマストアイテムになっているのです。

ロハスを背景に中国で人気の「ベジ婚」

 派手婚のインドに比べて、洗練された質素さを追求する結婚披露宴が、中国では流行しています。それが、精進料理だけを提供する「全素宴」です(中国では精進料理を「素菜」と言います)。

 中国では、クリントン元米大統領の長女のチェルシー氏や、中華圏で有名なシンガー・梁詠h(ジジ・リョン)など、憧れのセレブがここ数年、披露宴にベジタリアンメニューを提供したことが話題になりました。

 その流れを受け、ブライダル企業や披露宴を行うレストランが「全素宴」 のサービス、いわば「ベジタブル結婚式」(ベジ婚)を展開し始めたのです。

 価格は10人掛け1テーブルで約3000元(約4万6000円、中国では人数ではなく、テーブル数に応じて料金が発生)。これは一般的な披露宴と同じ料金です。素菜とは言え、鶏肉の風味と食感の干し豆腐、蟹味噌風味のニンジンペーストなど料理の技術を駆使したメニューが次々と運ばれてきます。ベジタリアンや敬虔な仏教徒以外でも満足感のある、豪華な料理が楽しめるというわけです。


中国の若いカップルに人気の「全素宴」では、肉を使わない見栄えの良い料理が次々と出てくる
 中国では古来、素菜が親しまれ、精進料理は日本以上に発展しています。また本来、仏教徒はその教えによって、「動物性の食品を食べない」のが原則のため、現在でも仏教徒向けに上海市内をはじめ各地に多数のベジタリアンレストランや素菜を提供する飲食店があります。

 そのため、素菜が広く浸透しており、最近では若者の間で健康志向から素菜への支持が広がっています。

 以前から素菜を提供する店で、一般的な宴会や忘年会を催すことはできましたが、披露宴プランを提供し始めたのは最近になってから。近年、中国ではロハスや癒しの要素を日常的に取り入れる女性が急増する中、そうした女性たちに「全素宴」は注目を集め、結婚式に独自性を出したい意向と相まって、一気にトレンドとなったのです。

韓国では出会い系映画イベントに男女が殺到

 一方、日本同様に近年未婚率が高まっている韓国では、結婚以前の問題である、恋人ができない若者たちを支援するイベントが爆発的な人気を呼んでいます。首都ソウルにある複合映画館(シネコン)が独身男女を対象に出会いの場を提供する、その名も「ソロ脱出大作戦」というイベントです。

 このイベントでは、特設のFacebookページで、独身男女をそれぞれ100人募集。集まった男女は、映画館の席に隣同士で座り、上映される恋愛映画『About Time』(邦題『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』)を鑑賞します。

 上映終了後は隣席の異性に対し、過去の映画の名台詞を舞台上で叫ぶといったプログラムを用意するなど、アピールタイムが設けられています。そして、見事成立したカップルには無料の映画チケットがプレゼントされます。

 実はこのイベントが大当たりし、男女計200人の募集枠に、倍率150倍の約3万人もの応募が殺到。応募時には自己紹介だけでなく、イベント参加への熱意を訴える情熱的なコメントが要求されます。難関を突破した当選者は、韓国軍兵士、女子校出身者、草食系男子など特徴のある人。あるいは、以前の恋愛から間隔が空いている人も優先的に当選しているようです。大きく話題になったことから、主催者側は今後も定期的に同様のイベントを開催していく予定です。


メガボックスがFacebookページで募集した「ソロ脱出大作戦」には若者の応募が殺到
 本コラムでは、アジア各国の最新トレンドを発信している「TNCアジアトレンドラボ」の情報をベースに、トレンドを深掘りした記事を連載します。次回からは、アジアの食のトレンドについて、複数回に分けて紹介していきます。最初のテーマは「SNS映えする“フォトジェニック”なフード」です。アジア各国で広がる、拡散間違いなしの最新スイーツをまとめて紹介します。


このコラムについて

シゴトタビ〜知られざるアジアの姿〜
 日経ビジネスが2014年12月、新たな書籍シリーズを刊行した。アジア各国を仕事で訪れるビジネスパーソンを対象にした出張完全ガイド本「シゴトタビ 日経ビジネス」だ。
 アジア各国について、出張の機会は増えても、それぞれの国や都市の「生」の情報はあまり知られていない。空港からホテルまでいかに移動すると渋滞に捕まらず、スムーズに動けるのか。現地で会食をセッティングする場合、レストランはどこを予約すべきなのか。現地の最新トレンドを出張の限られた時間で知るにはどこを訪れればいいのか。ビジネスパーソンが海外出張時に直面するあらゆる疑問に応えたのが「シゴトタビ」シリーズだ。
 本コラムではこの「シゴトタビ」本の中から役に立つ情報を厳選してピックアップする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/274978/113000017/


 
日経ビジネスオンライン
映画「この世界の片隅に」に勝算はあった?

(Yが)キーパーソンに聞く

プロデューサー、真木太郎GENCO社長に聞く
2016年12月2日(金)
山中 浩之
松浦です。本日朝、「この世界の片隅に」を観てきました。
やられました。個人的評価ですが、「七人の侍」に匹敵する傑作です。
「シン・ゴジラ」の時は「みんな語りたがっているし、自分が語る必要はないだろう」と思って断ってしまいましたが、今回なにか企画はありますか。機会があるなら万難を排して書きます。

************

 11月16日の夕方、「宇宙開発の新潮流」の筆者、松浦晋也さんから私にこんなメールが届きました。取材に執筆にご親族の介護と八面六臂の松浦さんが「機会があるなら万難を排して」というなら、相当面白いに違いない(彼のブログでの映画紹介はこちらで読めます)。

 11月12日に公開されたアニメーション映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)。戦前に広島・呉市に嫁いできた女性の、終戦をまたいだ日常を描く、という内容は、いかにもお説教されそうな反戦映画っぽいし、「のん(本名:能年玲奈)」さんの声優起用も話題作りのような気がして気が向かなかったのですが、これはもしかしたらと早速映画館を検索したら、当日夜は「え、満席売り切れ?」。

 驚いて翌日朝一番の席を予約し、見に行って、己が先入観を蹴飛ばしたくなりました。すぐに『この世界の片隅に』(こうの史代)の単行本も全巻購入し、原作のすばらしさと、それをどれほど大事にしながら映像化したのかも知りました。

 上映館数が63館という小規模な公開でスタートしたのに、観客動員数が2週連続10位を記録とスタートダッシュに成功、3週目に6位にランクアップしたことも話題になっています。上映館も続々と増加中。

 しかし、原作にたくさんのファンがいるとはいえ、一般的な知名度は決して高くなく、内容も「これは当たる」とは考えにくい。それをこんなに丁寧に(=お金と時間を掛けて)制作し、回収できると踏んだのはなぜなのか。この映画のプロデューサーであるアニメ企画・プロデュース会社GENCO(ジェンコ)の真木太郎社長にお話を伺ってきました。

映画「この世界の片隅に」プロデューサー、GENCO真木太郎社長
Y:よろしくお願い致します。

真木太郎社長(以下真木):どうぞよろしく。しかし、映画の話なら、片渕監督じゃなくてよかったんですか。

Y:そちらは、既に良質なインタビューが出そろっていますし、よろしければ別途お願いしたいと思います。今回は商売、そろばん勘定のお話を聞かせていただければと。

真木:あ、やっぱり日経さんだから、まずお金の話なんですね(笑)。

Y:そういうことです(笑)。まず真木さんはどの時点でこの映画にかかわられたんでしょうか。

真木:僕は途中から呼ばれたんです。経緯を簡単に説明しますと、2010年、片渕監督が前作「マイマイ新子と千年の魔法」(2009年11月公開)を終えて、次に「これをアニメ化したい」と取り上げたのが、こうの史代さんのマンガ『この世界の片隅に』でした。

「この世界の片隅に」映画公開まで
・2010年8月 片渕監督、MAPPA丸山社長(当時)に「この世界の片隅に」の映画化を相談
・2011年6月 MAPPAに制作準備室設置、シナリオ作業開始
・2012年8月17日 ツイッターで制作発表
・2012年9月 キネカ大森(テアトル東京系列)に「『この世界の片隅に』製作準備進行中」のポスター貼られる
・2013年1月 GENCO(ジェンコ)真木社長、企画に参加
・2015年3〜5月 クラウドファンディングでパイロット版資金調達に成功
・2015年6月3日 製作委員会結成、映画製作が本決まりに
・2015年7月4日 約5分のパイロットフィルム完成、試写
・2016年6月 アフレコ開始
・2016年7月 「のん(本名:能年玲奈)」が「すず」の声優に決定
・2016年9月 本編の試写開始
・2016年11月12日 映画公開
 片渕監督は自腹で夜行バスで広島に何十回も行って、映像にするための取材を重ね、街を歩き、当時を知る人へのインタビューを行いました。こうのさんの絵があるとはいえ、映画とは画角も違いますし、膨大な資料と取材がないと、片渕監督が望むような映像化はできない。広島行きを重ねながら、コンテ作業…実際のアニメの絵を描く前段階ですね、もちろん、シナリオも作っていました。

資金調達が捗らなかった理由

Y:集めた資料の膨大さと緻密さが、ネットで話題になっていましたね(片渕監督自身の制作日記はこちら。参考記事リンクは記事末尾に掲載します)。

真木:ええ。で、なんとか映画制作を離陸させるべく、片渕監督と組んで一緒にやっていた制作スタジオ、MAPPAの丸山正雄さんが、いろいろな方に「一緒にやらないか」と声を掛けていたのですが、なかなか組むところがない。その後私が参加したのが2013年の1月でした。でも、そこから順調だったわけでもなくて、やっぱりお金が集まらないんです。

Y:それはなぜでしょうか。

真木:日本の映像物は、テレビ、映画、アニメ、実写を問わず、たいていは製作委員会という、民法上の任意組合によって資金が調達されているのはご存じですよね。参加する企業各社は、出資者、投資家であると同時に、メディアビジネスのプレーヤーでもある。例えば、ビデオメーカーが投資して、完成した映画のビデオの窓口(販売やレンタルの権利)を取る。テレビ局が投資するなら、自局で広告宣伝をして、放映もできる。

Y:言い換えると、映画単体でのリクープ(投資の回収)ではなく、関連した商品を自社で扱う権利による利益も含めて、ビジネスとしての採算を考えるわけですね。

真木:その通りです。そして、製作委員会方式には功罪どちらもありますが、「窓口のビジネスが優先される」のが特徴というところは現在では、誰もが認めざるを得ないと思います。

真木:窓口を取ったら、どれくらい売れるか、売れるものが作れるかが最優先になる。コミックが売れるか、パッケージ(DVD、ブルーレイなど)が売れるか。これは関係者全員が分かっている話なので、悪口ではないと思います。しかし、投資である以上「どう回収するか」が説明できないといけません。「この映画の金融商品としての魅力は何か」が問われるわけです。

Y:なるほど。どうやって判断するんですか。

真木:アニメでも実写でもそうですけれど、例えば「原作、脚本を読んだら分かる」「監督を見れば分かる」、実写なら「キャスティングで分かる」と言われます。しかし、結局これは「当たった作品は、誰々の原作、そして監督、こういうキャスティングだった」という、トラックレコードが必要なんです。過去の実績が常識というか、投資するかしないかの「物差し」になっていて、そのガイドラインから外れたものはジャッジできないわけですよ。

Y:その点「この世界の…」は。

真木:原作にも監督にも確固たるトラックレコードがない。つまり物差しから外れています。

いい作品になるのは間違いない。当たるかどうかは分からない

 例えば、片渕監督の映画を知っている人、こうのさんの原作を読んで好きな人。これはいるわけです。この人達に聞けば「ああ、それはいい、すばらしい映画になりますよ」と言うでしょう。「じゃ、当たりますか」と聞かれたら、「分からない」が答えです。

 金融商品としては「やってみないとわからない」。運用益が出るかどうかの、つまり、ジャッジする素材、材料が乏しかったわけです。「この世界の…」は。


©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
 アニメが得意なジャンルは、ファンタジー、奇跡、異世界とのコミュニケーション、メカニック、友情・努力・勝利で最後は何かをつかみ取る。そういうのがこれまでの物差しであり、常識だった。そうでないものは苦戦する。極めて厳しい戦いになる。この業界の人間なら、最初から分かっていることです。丸山さんも片渕監督も、もちろん僕も分かっていた。

Y:なるほど。題材は戦時下の日常のドキュメンタリーで、しかも、何かをつかみ取るという映画ではないですね。じゃ、真木さんは「この世界の…」の製作委員会の主幹事を、ジェンコが引き受けよう、という決定をした段階で、どう考えていたんでしょう。

真木:資金をいくら出すのか、最低どのくらいの資金が集まったら実際に委員会を立ち上げるのか、うまく行かなかった場合は主幹事としてどう責任を取るのか。「ここくらいまでは我慢する。これ以上は出せない」という数字を想定して、「足りない資金を集めていきましょう」と、そんな感じですね。つまり幹事会社の役割って、そういうものだと思います。

 意外に製作委員会ではこういうのは少ないんですよ。投資予定額が全額集まったら、初めて(実際にアニメを作る)制作会社にお金を出すやり方が多いんです。この映画の場合は「いつ必要なお金が全部集まるのかはまるで分からない」状態でした。だって、投資するのは企業ですから、各社とも稟議がありますからね。稟議をあげるには、映画の目論見書が必要です。ジェンコは主幹事として、プロデューサーとして、出資者を探し、説得する、という立ち位置です。でも、すぐに出資が集まる目論見書なんて、そんな簡単にはできない。

Y:ジェンコとして、そこにどんな勝ち目があると見ていたんですか。

真木:難しい企画なのは間違いない。じゃ、やめるか。アニメだろうが映画だろうが、自動車だろうがエレクトロニクスだろうが何だろうが、そこでやめる人もやめない人も、どの業界にも産業にもいるでしょう。

Y:でも、それはある程度でも成算があってこそでしょう。

「目論見書」としてのパイロットフィルム

真木:言い換えると、既存の業界のガイドライン、物差しを打ち破るにはどうすればいいかということですよね。金融商品なら、「あなたのお金をどう運用するか」を語る目論見書は、フルカラーで、上質紙で、その気にさせる体裁がなくてはいけませんよね。きちっとしていないと、いかに論理的に正しくても、パチものに見える。僕らも同じです。「この世界の…」の“目論見書”は、体裁、中身がものすごくきちっとできていないと、集まる人も集まらない。お金も集まらない。そこで「パイロットフィルムを作ることが必要だ」と判断したんです。

Y:パイロットフィルム。

真木:それを見れば「これはすごい、人が入る映画になるだろう」と分かるものが必要だ、それは現物に勝るものはない、と。ただし、それを作るにもお金がかかるわけです。資金調達に必要なパイロットフィルムも、資金調達がないと作れない。

Y:おやおや。

真木:もうひとつの大きな要素が、クラウドファンディングです。クラウドファンディングについては、1年半くらい前に、身近でやっていた人に話を聞いたり研究会に出たりして勉強していたんです。で、これは「資金調達と資金を出す応援団との両面があるんだな」と理解しました。

真木:では、アニメーション映画を製作するに当たっては、どっちが大事なんだろうか。「応援団の方が大事だな。彼らが作ってくれるクチコミが大事だな」が結論でした。アニメ映画は数億円の費用がかかり、制作が始まってから映画ができるまでざっと2年以上かかりますから、集められる資金としてもかかる時間としても、大きすぎ、長すぎます。理想的には、公開するタイミングが見えたくらいで応援してもらうのがいいのですが、まず我々には目の前にお金がないといけない。でもプロデュースすることは決めた。「じゃあ、思い切ってここで応援開始してみよう」と。

 それと、これは片渕監督が別のインタビュー(こちら)で説明していましたが、シネコンは事実上、公開初日と翌日の動員でその映画をどれくらい上映するかを決めます。スタートダッシュがどうしても必要なので、まずパイロット版を作り、「この続きが見たい」という人を予め増やしておくことが、「この世界の…」をヒットさせるために必要だ、という考えがありました。

Y:なるほど、スタートダッシュが見事に決まった背景に応援団結成があったわけですね。

自腹で100万円用意していました

Y:「makuake」でのクラウドファンディングは2015年の3月〜5月、3カ月弱でしたが、目標額の2000万円は最初の8日間であっさり集まった。

■このクラウドファンディングの主旨
劇場用アニメ映画『この世界の片隅に』の公開実現に向けて応援してくださる「制作支援メンバー」を募集しています。この映画は、準備作業に4年を費やし、シナリオ・絵コンテが完成したところまで辿り着きました。集まった資金は、作品をこの先のステップに進めていくためのスタッフの確保や、パイロットフィルムの制作に使わせてください。片渕須直監督が、こうの史代の愛した主人公すずさんに命を吹き込みます。
すずさんの生きた世界を一緒にスクリーンで体験しましょう。

(makuakeのプロジェクトページより引用)
真木:そうです。こちらは、一般の方が投資するための「目論見書」ですから、ものすごく丁寧にやったつもりです。自分たちがこの映画の中身を信じていること、すばらしいものができると信じていることをなんとか伝えようと。目標は2160万円(税込)でしたが、結果は3912万1920円(同)。サポーターの方は当時の国内のクラウドファンディング市場の最高記録である3374人、金額は、国内のクラウドファンディング市場の映画ジャンルとしては現在に至るまでの最高額が集まりました。イベントで話しましたけれど、僕、集まりが悪かったら個人的に100万円突っ込もうと用意していたんですが、開始早々に数百万円を越えまして「あ、これなら大丈夫」と(こちら)。

 もちろん、この金額でも映画本編には足りません。でも、パイロット映像は作れます。それが資金調達につながれば、クラウドファンディングに出資してくれた皆さんに応えることができる。正確に言えば、投資ではないので「価値を買う」ことになり、金銭面でのリターンはありません。価値は何かといえば、この映画に支援するという満足感しかないんです。


©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
 ですので、頂いた側が言うと大変いやらしいのですけど「俺はあの映画を応援した」と言える証明として、クレジットにお名前を入れますよ(注:税込み1万800円以上の支援者)、支援者に対しては60回以上のメールマガジンを出して「いま映画制作はこんな状況です」と報告し、共有している。これも言葉は悪いけれど“共犯”意識を持ってもらいたくて。

パイロットフィルムを待たずに資金調達できた

Y:そして、2015年の7月に5分間のパイロットフィルムが完成するわけですが、製作委員会はその前、6月に結成されていますよね。これは?

真木:クラウドファンディングの反響を見て、朝日新聞社が、出資に手を上げてくれました。その段階で出資に関してはあんまり心配しなくていいかなと思いました。ですので、製作正式決定という記者会見を広島で行いました。

Y:では、パイロットフィルムを製作するための手段のクラウドファンディングで、ある意味、資金調達ができてしまったんですね。しかし、3374人は大変な数ですが、映画のヒットを予感させるには少ないような印象もあります。出資側は、人数よりも金額を評価したのでしょうか。あるいは、この人数でも出資を促すには十分だったのでしょうか。

真木:人数が多いか少ないかは難しい判断です。しかし、ひとりひとりの熱量は凄かった。大応援団をバックにつけたという印象はありました。

Y:クラウドファンディングの成功はどこに理由があると思われますか。

真木:プロデューサーとしての感覚なんだけど、3374人が約4000万円ものお金を出してくださったというのは、本当に不思議なんです。もちろん、支援者は作家や作品に恋をして、一生懸命応援してくださるわけですが、失礼な物言いを許して頂きたいんですけど、だけど、こうのさんファンだけでも、片渕監督のファンだけでも、これだけの人数、金額には届かないと思うんです。当時は、原作も各巻それぞれ数万部で、片渕監督も一般には無名ですから。どう考えても何でこんなに跳ねたのかわからない。

真木:だけど、最近思うのは、感覚的な答えなんですけれど、常識や物差しだとか、トラックレコードだとか、何らかの方程式や枠によって、ほとんどのエンタメ作品が製造されているじゃないですか。日本に限らず、世界中、安全パイであることが最優先で。金融商品ですからね。より確実なリターンを期待されればそうなる。そうでないものは、「冒険」だと捉えられてしまう。

 全てが安全パイだとは言いません。でも、投資家の目を意識すれば、冒険がだんだん少なくなっていく。つまり、作品から作家性が乏しくなっていく。それを観客は心の底で感じていたんじゃないかな。送り手が観客無視になっている。これはメーカーも、出版もそうですよね。

Y:はい…。

真木:ということなんじゃないのかと、映画が支持されたと思えた今そう感じます。映画のプロの目利きより、3374人のほうが正しかった。

 片渕監督が何年も掛けてほとんど独力、いや、監督補と二人三脚で作ってきた映画が、クラウドファンディングで公開への資金の足がかりを得て、映画ができて、だけど宣伝費も公開規模も小さい。それでも、公開されるや劇場が満員で立ち見になる。見てくれた観客がSNSで「ねえねえ、いい映画があるよ」と広げてくれて、公開2週目でさらにお客さんが増えている。1週目より2週目の興行収入が伸びるって、あまりない例です。数えるほどですよ。それを支えたのは、デジタル、アナログ含めてのクチコミですよ。テレビでは、NHKで大きく取りあげていただきました。


©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
 作家性の強い映画を作りたいクリエイターはいっぱいいる。でも、場がない。お金もかかるし、アニメ映画はひとりではできません。億単位の資金と数年の時間を、ビジネスサイドが支えないといけない産業です。その割にはクリエイティブ、作家性が大きいという実態があります。そこを削って「回収」を優先してきた。こういう、アニメの映画のヒットの常識がひとつも入っていない作品なのに支持されていることが、「こういう映画を作ってもいいんだね」という、業界内外へのメッセージになると、とてもいいと思います。

前作「マイマイ新子」から学んだこと

Y:クラウドファンディングの出資者の方に、なにか傾向は見えますか。

真木:当然ですが、原作のファン、片渕監督のファンが多いです。やっぱり男性が多かったし、これもトークショーで話したのですが、47都道府県全部に出資者がいました。東京が一番多く、次が神奈川県、その次が広島県です。映画館がない地域からも出資してくれた方がいました。

Y:ああ…。ところで、製作委員会ができてから完成までが1年3カ月ですね。ずいぶん短くないですか。

真木:それは、そこまでの3年をかけて、片渕監督が丹念な調査を経て、絵コンテなどを完成させていたからです。

Y:なるほど。

真木:丸山さんとの長い付き合いもあるんだけど、とにかく、制作できるかどうかわからない映画にそこまでやる監督に惚れた。もちろん、前の作品がすばらしかったこともあります。でも、すばらしいけれど赤字だった。(そうなると)みんなが(次の作品に対して)引くじゃないですか。「いい映画だけど当たらないよね」と。

Y:えっ、前の作品というと「マイマイ新子と千年の魔法」のことですよね。興行収入、そんなに振るわなかったのですか。

真木:もしかして「マイマイ」、見ていますか。

Y:公開されてすぐ、阿佐ヶ谷のミニシアター「ラピュタ阿佐ヶ谷」で。そういえばこれも、アニメ好きのライターさんに「絶対見ろ」と言われて行ったんでした。ぎゅうぎゅうの満員でしたが。

真木 興行収入は4000万〜5000万円じゃないでしょうか。ラピュタ阿佐ヶ谷はすてきな劇場ですが、小さいですからね…。

Y:それでは、前作はビジネスとしては非常に厳しかったんですね。

真木 先ほどのクチコミは、どんな映画でも機能します。ただし爆発力は、メディアがバックアップしないと得にくいです。大手メディアがガンガン騒いで、スポット広告を打って、という事ですね。でもそれには莫大なコストがかかります。従来の「常識」を満たす映画しかやってもらえない。今回のヒットで分かるとおり、こういった(常識外れの)映画にもニーズはあるんですね。だけど、やってみないと最終的には分からない。

結局、勝算はあったのか?

Y:事前に判断はできない、と。うーん、これだけお聞きしても、実のところ真木さんに、この映画についてのビジネス上の成算、勝算があったのかどうか、まだ分からないんですが、実際のところどうだったんでしょう。

真木:勝算は…なかった!

Y:うわっ(笑)。

真木:というとヘンだけど、分からない。「やるだけのことをやれば、なにか道はあるだろう」という程度。

 オリンピックの選手でも、相撲でもよく言う台詞ですけど、自分を信じるだけ。「これだけ練習したんだから」と、あれと一緒じゃないですかね。ショービジネス、映像ビジネスには鉄板はないから。どうしたって「当たると分かっていた」といったらウソになりますよ。当たってから「俺は当たると思っていた」と言うのと同じ。

Y:揚げ足取りになりますけれど、これまでの片渕監督の作品のプロデュースに何か、「やっていないこと」があったんでしょうか。

真木:うーん、参加するときに、あんまりそういうことは意識はしていなかったけれど、これまで、どういうことをやっていたのかは分かりますよね。普通のことを一生懸命やってこられた。でも、それだけではお客さんに届かない、ということは分かった。

 お客さんが見て、僕らが見て、「これはダメだ」だったら仕方ない。でも、「こんないいものを作ったのに人が入らないのは、プロモーションにやっていないことがあるんだろう」と、むしろそう思った。「まだまだやりようはある。なにをやらなければいけないのかは分からないけれど」というのが、参加を決めたときの正直な気持ちだと思います。その「なにか」の一つとして、今回は、クラウドファンディングがあったということじゃないでしょうか。

 もちろん、前作から世の中が変化していることもあるし、片渕監督がものすごく進化していることもある。でも、今回うまくいっている理由はそれだけじゃない。そして、彼の魅力を論理的に言葉で伝えるのは、僕じゃなくてファンの方、あるいは評論家の仕事だと思います。

Y:それは分かります。言葉にするのが本当に難しい。

言葉にしにくいから、必死で伝えたくなるのかもしれない

真木:でしょう? 僕も、意図的にどこかを切り出して言葉にして打ち出すことが結局できませんでした。片渕の映画は「見てナンボ」の部分が大きい。そして、人によって泣くところが違う。パターンで泣かせるんじゃないんですよね。言葉にできない「匂い」があるというか。そして、見終わったときの気持ちが後々まで残って、何かの拍子に思い出してぐっとくる、ある意味重たい映画。人生に影響を受けてしまいそうな映画だと思います。

Y:見ないと分からないから言葉にしたくなるのかもしれません。

真木:そう、見た人はそのなにかを、一行でもいいからと、誰かに必死に伝えようとするんでしょうね。プロデューサーだから複雑な気持ちも一杯あるので、一観客として見たらこの映画はどうだったんだろう。それが分からないのがちょっと残念ですね。

 この映画で最初に完成したのは中島本町のシーンなんです。主人公のすずさんがお使いに行ってキャラメル買って、という。なぜここか、というと、この場所は原爆で失われた街で、現在は平和記念公園になっているところなんです。片渕監督はこの場所を知っているお爺さんお婆さんにさんざんインタビューして話を聞いたんですね。で、再現した街を映画で見てほしいから、いの一番にここを、と監督は考えたんですよ。実際には、完成を待たずにお亡くなりになった方もいましたが…そして、そこがパイロット版にもなったわけです。

Y:なるほど…。ところで、もし、片渕監督以外だったら、「この世界の…」をプロデュースしましたか。

真木:えっ、うーん…他の監督だったら、別の「売れそうな」原作にしたら、と言ったでしょうね。ジェンコは、この作品だけやっているわけじゃないから、常識に従った判断を下すことももちろんある。でも、全部そうするのかというと、これはそうしなかった一本。

Y:結局、主幹事を引き受けたのは、ビジネス、勝算云々というより、真木さんのロマン、ということでしょうか。

真木:まずは片渕さんのロマンでしょう。そういうところはある。ありますね。片渕を男にしたい。興行収入も二桁行きたい。そうすれば次の作品につなげることができる。プロデューサーにもロマンがあるけれど、監督のロマンを実現することが仕事です。

Y:そういえばお聞きするのを忘れるところでした。興収の目標はいかがですか。

真木:現状(公開10日目)だと5とか6(億円)とかですが、3週目がまた前週を上回るようになれば(編注:取材後、上回りました)二桁も見えてきます。上映館も63館から82館に増えてきたし、東京以外にも拡大します。ただ、クチコミは数字につながるまでにやはり時間がかかるんです。

Y:あっ、もうひとつ最後に。のん(本名:能年玲奈)さんの起用は真木さんの仕掛けた「勝算」のひとつだったんでしょうか?

真木:いえ、キャスティングは片渕監督のアイデアです。話題作りかどうかは、映画を見れば一目瞭然でしょう? 片渕監督の力を持ってしても、彼女の声がなければ、この映画はこうはいかなかった。それだけが事実です。


©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
参考にさせていただいた記事(順不同)
●WEBアニメスタイル 「1300日の記録」

●おたぽる なぜ“クラウドファンディング”を選んだのか? 『この世界の片隅に』片渕須直監督ロングインタビュー【前編】

●おたぽる 「アニメだから観ない」という枠をどう突破するか――『この世界の片隅に』片渕須直監督ロングインタビュー【後編】

●シネマズ 「この世界の片隅に」は、こうして作られた。「みんなで作る映画」を目指した、片渕須直監督の情熱

●忘れられた庭の静かな片隅 【レポート】『この世界の片隅に』公開記念!ネタバレ爆発とことんトーク!@新宿ロフトプラスワン(2016/11/20)

●マンバ通信 「この世界の片隅に」監督・片渕須直インタビュー 調べるだけではだめだ、体験しないと!

●gigazine 「『世界』を描かないと『片隅』が見えてこない」、映画「この世界の片隅に」片渕須直監督インタビュー

●Makuake

●シネマトゥデイ アニメ『この世界の片隅に』小規模公開ながら10位初登場!拍手喝さいの劇場も

●シネマトゥデイ のん『この世界の片隅に』キャラメル味の結婚に思うこと

●ウィキペディア この世界の片隅に

このコラムについて

(Yが)キーパーソンに聞く
日経ビジネスの変わり種デスクYが、本人的に話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎月1人、興味深いキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/284031/120100018
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/352.html

[政治・選挙・NHK217] ファーストレディーは家庭内野党−安倍長期政権に連れ添う昭恵夫人 延広絵美、Isabel Reynolds 2016年12
ファーストレディーは家庭内野党−安倍長期政権に連れ添う昭恵夫人
延広絵美、Isabel Reynolds
2016年12月5日 06:00 JST

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神田で居酒屋経営、フェイスブックは10万人以上がフォロー
「いろんな意見の人たちがいること伝えたい」−昭恵夫人

戦後4番目の長期政権となった安倍晋三首相の妻、昭恵さんは自ら居酒屋も経営し、フェイスブックのアカウントを通じて10万人以上のフォロワーに情報を発信する行動派のファーストレディーだ。安倍政権の方針にときには異論を挟む首相の家庭内野党的な存在でもある。
  東京・神田の細い路地に構える居酒屋「UZU(うず)」で11月29日、ブルームバーグのインタビューに応じた昭恵さん。黒のスーツ姿で現れ、夫には「いろんな意見の人たちがいるということを伝えたい」と穏やかな口調で話す。
安倍昭恵さん
安倍昭恵さん Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  第2次安倍政権の発足から間もなく4年。第1次安倍政権と合わせた在任日数は4日で1806日と中曽根康弘政権に並び、5日に戦後歴代4位となった。首相には一般の人は簡単に近づけないことから、昭恵夫人は自分が活動を通じて、「主人の周りには届かないような声を拾って、届けたい」といい、「そこが野党的なのかもしれない」と語った。
政治家の妻
  昭恵さんは、東京生まれの54歳。1987年に晋三氏と結婚した。政治家の妻として夫の選挙区を回り、「地元の人たちの意見を聞いてきたと思っていた」が、最近になって「それは安倍晋三を応援する後援者の意見だった」と気が付いたという。「自民党を応援する人だけのための総理大臣ではない」というのが今の思いだ。
  8月には、住民らの反対運動が続いている沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設予定地周辺を訪れた。「反対されるかな」と思って首相には告げずに向かったものの、首相夫人の突然の来訪に現地は混乱、「10分くらいの滞在」でその場を後にした。「もう少し段取りをきちんと考えた方が良かった」と振り返るが、沖縄では「安倍政権には反対という人たち」と夜中まで話し込んだという。
  言動は国会で取り上げられたことも。2013年10月の参院予算委員会では社民党の吉田忠智氏が昭恵さんと小泉純一郎元首相が原発に反対していることを指摘。原発ゼロを決断するよう求めたが、首相は「2人とも私にとって極めて重要な人物」としながらも、「エネルギーの安定供給、これは経済活動にとって極めて重要」と答弁した。
          
  「毎日野党から批判されている中で、私が家に帰ってまた言うと、もうちょっと止めてくれよということもある」と夫婦のやりとりを明かす。そんな時は「民主的に選ばれているのは主人」であり、考え方を「無理やり私が変えるというのもそこは違うかな」と感じるという。
経営する居酒屋「UZU(うず)」にて
経営する居酒屋「UZU(うず)」にて Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
SNSでの発信
  首相夫人として、SNSを使った人々とのつながりにも力を入れている。日々更新しているフェイスブックを通じたつながりから「仲良くなった人たちもたくさんいる」が、批判する書き込みも少なくない。11月13日の投稿では「批判コメントやメッセージを読んでいるとめげることもある」と心情を吐露した。
  顔の見えないネット上の書き込みの中では、昭恵さんに期待する人から「何でもっとちゃんと言わないんだとすごく責められる」こともあるという。「何でそんなに意見が違うのに一緒にいられるんだ、離婚しろ」との声が寄せられることもあるが、こうした中傷は「余計なお世話です」と気に留めない。
日本の文化への思い
  居酒屋「UZU」の看板メニューは、山口県下関市で自ら生産に関わる無農薬の「昭恵米」だ。田植えにも稲刈りにも機械を使わず、土鍋で炊くこの米を「東京でも食べてほしい」と思ったことが店をオープンした理由のひとつ。
  開店したのは2012年。その年の12月に晋三氏が2度目の首相に就任したため、昭恵さんも店の経営に専念することは難しくなったが、スタッフと共に「完全に国産」の食材によるこだわりの料理を提供している。首相官邸でもニホンミツバチを飼育し、自分の手で採蜜するなど都会での自然環境保護にも取り組む。
  「戦後欧米文化が入ってくる中で、日本が本来持っていたものが少し損なわれている」−。そんな思いが根底にあるという。例えば、大麻についても日本では「100年もたたない前にはそこら中で栽培していた」もので、神社での「祓(はら)いの神事」にも必ず使われていたと指摘。医療用の解禁を訴えるが、自らは「一度も吸ったことはない」という。
首相夫人としての今後
  2006年に発足した第1次安倍政権の時は、前任が夫人のいない小泉純一郎氏だったため、「引き継ぎのようなもの」もないままファーストレディーとしての日々が始まった。転機となったのは当時のブッシュ米大統領夫人、ローラさんとの出会いだ。ランチを共にした際に、無理をせず今までやってきたことや関心があることを続けていけば良い、と助言を受けたという。
  それから10年。昭恵さんは首相夫人としての役割を果たす一方で「自分がやりたいこともこれからはやっていきたい」と意気込む。海外の首脳夫人の姿を参考に、「いつも夫婦が一緒ということでもこれからはなくなっていくのかもしれない」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-04/OHHLHU6S973801
http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/117.html

[経世済民116] ムニューチン氏、ドル政策語らず−ルービン氏のマントラ踏襲を示唆か ECB総裁、次が最後のQE政策か 三井物産CFO:原油
ムニューチン氏、ドル政策語らず−ルービン氏のマントラ踏襲を示唆か
Liz Capo McCormick、Saleha Mohsin
2016年12月5日 07:19 JST

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• 米当局者は1995年以降、強いドルの恩恵を主張
• ドル高で製造業者の輸出競争力低下、次期政権のスタンスに影響も

ドナルド・トランプ次期米大統領は、長年の政策や伝統を刷新する考えを明確にしている。だが外国為替市場では、強いドルに恩恵があると過去20年にわたって宣伝してきた米財務省がこのマントラ(呪文)を捨てることを示す兆候は見当たらない。
  トランプ氏が次期財務長官に指名したスティーブン・ムニューチン氏は、前任者らのドルに関するスタンスを踏襲するかどうか明言を避けている。このため投資家やストラテジストは現状維持を見込んでおり、トランプ氏が公約した財政刺激策で再び活気づくドル相場への逆風が幾分弱まる可能性がある。
  強いドルは米国の利益に合致するという教義は、1995年に当時のルービン財務長官が提唱し始めた。強い通貨は健全な経済を反映するとともに為替損失の可能性を減らし、海外からの米国債需要を支えるとの見方がこの政策を根底から支えている。ドル高は輸入物価を下げるため米国の消費者を助ける半面、製造業者には輸出競争力の低下を招く。
  メルク・インベストメンツ(サンフランシスコ)のアクセル・メルク社長は「今提案されている政策の一部はドルにプラスだ」と述べ、ムニューチン氏が「強いドル政策に関して何も言わないなら、とりわけ次期政権の政策が判明するまでは、それほど悪くはないかもしれない」と語った。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iz6BNRik9TPI/v2/-1x-1.png
  ムニューチン氏は11月30日のCNBCとのインタビューで強いドル政策について問われた際、支持も否定もせず、海外投資家が米国の資産に価値を見いだしていると指摘した上で「経済成長と雇用創出に集中することこそ優先課題になる」と述べていた。トランプ氏の政権移行チームにムニューチン氏のコメントを求めたが、返答はない。
原題:Mnuchin’s Silence on Dollar Policy Signals Rubin Mantra Lives On(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-04/OHOIGE6KLVR401


 


ドラギECB総裁、次が最後のQE政策か−8日に政策委
Alessandro Speciale、Piotr Skolimowski、Andre Tartar
2016年12月5日 11:01 JST

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• 資産購入プログラム、現行ペースで半年延長される見込み−調査
• テーパリングが2017年遅くに始まるとの想定が4分の3
ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が打ち出すユーロ圏経済を刺激するための量的緩和(QE)策は、次が最後になるかもしれない。
  8日のECB政策委員会でドラギ総裁は資産購入プログラムを月800億ユーロ(約9兆6000億円)の現行ペースで延長することを発表する見込みだ。ブルームバーグが調査した大半のエコノミストはこう予想している。回答者のうちの4分の3は、QEのテーパリング(段階的縮小)が2017年遅くに始まると想定している。
  政策当局者の間では超緩和的スタンスのリスクと限界を強調する声が強まっており、資産購入プログラムの縮小をめぐる議論が近づいていることが示唆されている。
  オックスフォード・エコノミクスのロンドン在勤エコノミスト、ベン・メイ氏は「ECBは月800億ユーロの資産購入プログラムを現行の終了予定日から6カ月延長するだろう。とは言うものの、ユーロ圏の基準からすれば経済は引き続き健全なペースで成長しており、全体および中核的なインフレ率は2017年に着実に上昇する可能性が高い。ECBの主要な非伝統的な政策パッケージは12月が最後になるとわれわれはみている」と述べた。
  11月28日ー12月2日に調査したエコノミスト53人のうち89%が、8日の政策委終了後にECBが新たな刺激策もしくはQEの変更を発表すると見込んでいる。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/izhEgP0BdcPs/v2/-1x-1.png
原題:Draghi Seen Ready for One More QE Sprint in ECB Stimulus Finale(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHOSL36JIJUO01

 


三井物産CFO:原油価格の上値抑える恐れ、トランプ氏の政策引き金
鈴木偉知郎、Stephen Stapczynski
2016年12月5日 06:00 JST

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原油価格50ドル超えると米シェールオイル増産、上値は非常に重たい
来期からの新中計で資源以外の分野で純利益2000億円稼ぐ体質目指す

三井物産の松原圭吾最高財務責任者(CFO)は、米国の次期大統領にドナルド・トランプ氏が決まったことについて、「エネルギー政策が原油価格に与える悪影響には懸念している」との見方を示した。シェールオイルの増産に意欲を示す同氏の政策が原油価格の上値を抑える可能性が高いとみている。
  1日、ブルームバーグのインタビューで述べた。三井物産の油ガス田権益の持ち分生産量は国内商社最大で、原油価格の変動が業績に与える影響は大きい。石油輸出国機構(OPEC)が8年ぶりの減産実施で合意したが、「原油価格が1バレル当たり50ドルを超えてくるとコスト競争力を強めたシェールオイルの増産が見込まれる」と指摘。「トランプ氏の政策が後押しすると上値は非常に重く、一本調子で60−70ドルへと上昇していくとはみていない」と慎重な見方を示した。

  トランプ氏はシェールオイル・ガスの掘削に使われるフラッキング(水圧破砕法)規制の廃止を掲げる。環境重視のオバマ政権下では、大量の水や化学物資を使用するシェール事業で汚染された水の処理方法など掘削基準を厳格化した。規制が緩和されればコスト競争力は高まる。
  原油価格が1ドル下落すると三井物産の純利益は年間で29億円減少する。強みの鉄鉱石は1ドルの価格変動が32億円の影響につながる。原油価格の本格的な回復は需給バランスが改善する2020年以降と想定。足元で上昇している鉄鉱石価格については「期初から前提価格を見直しておらず、今期業績には一定の効果が見込まれる」と指摘。ただ、価格上昇は「中国や米国でのインフラ投資拡大への期待が先行している」として、新規鉱山の稼働などから2019年までは供給過剰が続くとみている。
非資源で2000億円の利益
  前期は銅や石炭などの資源価格の大幅な下落によって創業来初の赤字に陥った。「資源価格は今年すでに底を打った」とみているが、市況変動に左右されずに安定的な利益を生み出す体質構築が急務となっている。来期(18年3月期)からの新中期経営計画では「資源エネルギー以外の分野で2000億円の純利益を稼げることを目標に考えている」と述べた。
  今期(17年3月期)の純利益予想は2200億円。期初に資源エネルギー以外で1400億円の利益を計画していたが、「現時点でおおむねそのレベルの利益が出せる状況にある」という。海外での持ち分発電容量が商社最大となった発電・売電事業を抱える機械・インフラ分野で550億円、米国で飼料添加物などの生産を手掛ける化学品分野で350億円の利益をそれぞれ見込む。「ある程度の利益が出せるようになった分野での収益力を今後も高めるとともに、メディカルヘルスケアなどでも一定の収益が出るよう取り組む」との考えだ。
  メディカルヘルスケア分野では11月、糖尿病患者向けの血糖値測定器を中心とした医療機器の製造販売を手掛けるパナソニックヘルスケアホールディングスの株式22%を約541億円で取得すると発表。11年に資本参加したシンガポールやマレーシアで高所得者向けの病院事業を展開するIHHヘルスケアへの出資などヘルスケア・サービス事業での投資残高を前期(16年3月期)末の2000億円から20年3月期には4000億円規模へと積み増す方針だ。
  来期からの株主還元については「キャッシュフローに着目した配当方針の考え方をより鮮明にしていきたい」と語った。財務体質の悪化を防ぐためフリーキャッシュフローの黒字化を引き続き重要課題とし、配当水準を決める判断基準に純利益よりも基礎営業キャッシュフローの動向を重視する。今期の配当は減配となる計画だが、配当の下限設定の導入に関しても議論していくという。
  英国の欧州連合(EU)からの離脱や米国第一主義を掲げるトランプ氏の大統領選挙での勝利など保護主義的な動きが世界的に高まっている。「総合商社にとって自由なモノ、人、カネの移動は欠かすことの出来ない事業環境。保護主義は経済活動にも障害となり、商社のビジネスにとっても決して望ましいことではない」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-04/OHJ6FO6K50YE01

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/402.html

[国際16] レンツィ伊首相が辞意表明、国民投票で改憲案否決−欧州政治混迷 ユーロが全面安、対ドルで1年8カ月ぶり安値
レンツィ伊首相が辞意表明、国民投票で改憲案否決−欧州政治混迷
John Follain、Chiara Albanese
2016年12月5日 07:17 JST 更新日時 2016年12月5日 13:01 JST


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レンツィ首相:敗北の全責任負う、大統領に5日辞表提出へ
ユーロは1年8カ月ぶり安値、政治リスクに懸念広がる

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ir0TpC2jQImM/v2/-1x-1.png

イタリアのレンツィ首相は5日未明、進退をかけた国民投票(4日投開票)で憲法改正案が否決されたのを認め、辞任すると表明した。欧州の政治・金融が再び混迷する恐れが出てきた。
  議会上院の権限を抑制するレンツィ首相案に対する反対票は開票作業がほぼ終了した段階で約60%と、賛成票40%を上回った。同首相はマッタレッラ大統領に5日中に辞表を提出すると述べ、暫定政権発足の支援で留任しない考えを示した。ユーロは1年8カ月ぶりの安値に下落した。
  首相は記者会見で「敗北した」と述べ、敗北の全責任を負うと語った。また、支持者の前では声を震わせ涙を流しながら、「イタリア政治は勝者不在のままだ」と発言した。

  ポピュリスト(大衆迎合主義者)の台頭で今年失脚した欧州の指導者はこれで、英国のキャメロン前首相に次ぎレンツィ首相が2人目。今回の結果を受けてマッタレッラ伊大統領はポピュリストに対する防火壁を構築できる次期首相を選定することになるが、世論調査では解散総選挙となった場合、「五つ星運動」が大躍進する見通しが示されている。
  4日公表のEMG調査によると、総選挙で決戦投票となった場合に五つ星がレンツィ首相の民主党に対し53−47%で勝利する。国民投票でレンツィ首相が敗北なら解散総選挙を要求するとしていた五つ星は今後、イタリアのユーロ圏離脱の是非を問う新たな国民投票を迫る見通し。ただ、先月の世論調査結果では、ユーロ圏離脱を支持したのは15.2%にとどまり、67.4%はユーロの信奉者と答えていた。
国民投票後に辞意を表明したレンツィ首相
国民投票後に辞意を表明したレンツィ首相 Photographer: Chris Ratcliffe/Bloomberg
  イタリアの主流派政党はレンツィ首相が退陣を迫られても政府が確実に機能し続けるよう備えていた。暫定政権の首相を打診される可能性があるのはパドアン経済財務相やグラッソ上院議長、フランチェスキーニ文化相ら。
  調査会社テネオ・インテリジェンスのウォルファンゴ・ピッコーリ共同社長は今回の結果について、「イタリアの政治の安定と経済の両方にマイナスの結果だ」と指摘。「しかし、解散総選挙といった最悪のシナリオが直ちに展開することはないだろう」と予想した。
  5日の金融市場取引の開始時にはイタリアの銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの動きが注目されそうだ。モンテ・パスキは50億ユーロ(約6000億円)の資本増強計画を推進中で、株価は年初以降に83%下落し、融資の約3分の1は不良債権化している。
  イタリア債券市場にも衝撃が走りそうだ。イタリア国債相場は投票日前数日に上昇し、10年物の同年限のドイツ国債に対する上乗せ利回り(スプレッド)が24ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)縮小し162bpとなっている。
  欧州では伊国民投票を皮切りに選挙の1年が始まった。主流派政党は移民問題や景気低迷に対する有権者の不満を吸い上げる新興勢力に脅かされる状況にあり、フランスのオランド大統領は先週、再選を目指さないと表明。共和党のフィヨン元首相が極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首と対決することになる。ドイツではメルケル首相が来秋に4選を目指すが、反移民を掲げる政党「ドイツのための選択肢(AfD)」と対立している。
原題:Renzi Quits as Italy Referendum Defeat Deepens Europe’s Turmoil(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-04/OHOLXK6JTSFL01


ユーロが全面安、対ドルで1年8カ月ぶり安値−伊首相辞任で欧州不安
小宮弘子
2016年12月5日 10:09 JST 更新日時 2016年12月5日 15:45 JST
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ユーロ・ドルは一時1.0506ドルと昨年3月以来の水準まで下落
ここからのポイントは与党が政権を維持できるか−野村証

5日の東京外国為替市場ではユーロが主要通貨に対して全面安となり、対ドルで1年8カ月ぶりの水準まで下落した。イタリアの国民投票で敗北したレンツィ首相の辞意表明を受け、同国の政治や金融システムが不安定化し、欧州で反欧州連合(EU)の流れが強まるとの懸念が広がった。
  レンツィ伊首相は5日未明、進退をかけた国民投票(4日投開票)で憲法改正案が否決されたのを認め、辞任すると表明した。EUに懐疑的立場を取るイタリアの野党「五つ星運動」を率いるベッペ・グリッロ氏は、できるだけ早期に上下両院の選挙を実施する必要があるとブログへの投稿で発言した。
  改憲案否決優勢との出口調査を受け、ユーロは早朝の取引で急落。対ドルでは1ユーロ=1.06ドル台後半から、一時1.0506ドルと昨年3月以来の水準まで値を下げた。午後3時40分現在は前週末比0.9%安の1.0565ドル。ユーロ・円相場も1ユーロ=121円台から、一時118円73銭と約1週間ぶりの水準までユーロ売り・円買いが進行。その後いったん120円台半ばまで反発したが、上値は重く、午後にかけて119円台後半へ値を切り下げた。
  野村証券の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストは、「もともと改憲案否決と首相辞任はほぼ織り込み済み」だとし、「ここからのポイントは与党が政権を維持できるか」だと指摘。今週の欧州中央銀行(ECB)の政策委員会で、「ドラギ総裁が非常にハト派的なことを言ったり、資産買い入れの延長が予想以上に長いと、ユーロが1.05ドルを抜けることはある」と語った。

  ポピュリストのうねりを読み間違えた結果、今年辞職の憂き目を見た欧州の指導者は、英国のキャメロン前首相に次いで2人目。今回の結果を受けてマッタレッラ伊大統領はポピュリストに対する防火壁を構築できる次期首相を選定することになるが、世論調査では解散総選挙となった場合、「五つ星運動」が大躍進する見通しが示されている。
  
  一方、イタリアの銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナと同行に助言を行う同国の銀行メディオバンカ、米銀JPモルガンは、モンテ・パスキの50億ユーロ(約6000億円)相当の資本増強計画を続行するかどうか判断するため、5日午前にも協議する。事情に詳しい匿名の複数の関係者からの情報を引用し、英紙FT(オンライン版)が報じた。シニアバンカーらは引き受け責任を引き続き負うか、市場環境の異変を理由に契約を打ち切る権利を行使するか判断する。
  みずほ証券の鈴木健吾チーフFXストラテジストは、「イタリアが解散総選挙となり、『五つ星運動』が票を得て、より反EU的になってくると非常に嫌な感じになる」と指摘。銀行問題への積極的な対応ができなくなるとの懸念もあるとした上で、来年にオランダ、仏独の選挙を控えて、反EU的な流れが続いていくかが問題だと語った。
  8日にECBの定例政策委員会が開かれる。ブルームバーグが調査した大半のエコノミストは、ドラギ総裁が資産購入プログラムを月800億ユーロの現行ペースで延長することを発表すると予想した。一方で、回答者のうちの4分の3が、量的緩和のテーパリング(段階的縮小)が2017年遅くに始まると想定した。
  IG証券の石川順一シニアFXストラテジストは、「量的緩和の期間を延長しても、テーパリングを示唆すれば、ユーロの買い戻しを誘発するだろう」とし、「緩和が限界に近づいているので別の政策にシフトすることを示唆するかを見極めたい」と話した。
  ドルは主要16通貨に対してほぼ全面高。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は前週末比0.4%高となっている。米10年債利回りはアジア時間5日の時間外取引で低下。先週末発表された11月の米雇用統計は失業率が9年ぶり低水準となった一方、賃金が予想外に低下するなど強弱まちまちの内容だった。
  ドル・円相場はリスク回避の円買いが先行し、一時1ドル=112円88銭と3営業日ぶり安値を付けた。米国の利上げ観測やトランプ次期大統領のリフレ政策への期待が根強い中、その後113円86銭まで反発したが、午後に入り伸び悩んだ。同時刻現在はほぼ横ばいの113円46銭。
  クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は、イタリア国民投票の結果は事前予想通りで、ドル・円は「ユーロ・円のストップとアルゴ主導で動いたものの、ストップを付けただけ」と朝方の動きを説明。「もともとトランプラリーのシナリオを転換するほどの材料ではない。下がれば買いが出てくるだろう」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHOSRU6JTSM001

イタリア国債相場とユーロが下落−伊国民投票で改憲否決後
Emma O'Brien、Chikako Mogi
2016年12月5日 16:57 JST
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イタリアの国民投票で憲法改正が否決された後の5日の市場で、イタリア国債相場とユーロは下落。イタリア政治の不安定化や国家主義的勢力の台頭懸念が背景。
  ユーロは一時1年8カ月ぶり安値となった。スペイン債とポルトガル債も値下がり。国民投票で改憲が約60%対40%という大差で否決され、レンツィ首相は辞意を表明した。
  ロンドン時間午前7時37分(日本時間午後4時37分)現在、ユーロは対ドルで0.5%安の1ユーロ=1.0611ドル。一時は1.5%安となっていた。イタリア10年債利回りは10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し2.00%。スペイン10年債利回りは4bp上昇の1.58%。
原題:Euro Slips With Stock Futures While Bunds Rise as Italy Votes No(抜粋)
Euro Slips With Stock Futures, Italian Bonds After Renzi Resigns

イタリア政治、次はこうなる−改憲否決、レンツィ首相辞任後を読む
John Follain、Chiara Albanese、Edward Robinson
2016年12月5日 16:50 JST

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大統領は解散総選挙回避のため暫定政権の成立模索へ
後継首相候補はパドアン経済財務相など

イタリアのレンツィ首相は4日の国民投票での憲法改正否決を受けて辞意を表明し、同国の政治は次の段階に入った。今後に予想される展開と焦点は以下の通り。
  レンツィ首相は5日午後にマッタレッラ大統領に辞表を提出。大統領は新たな連立政権が成立しそうか、総選挙が必要かを見極めるため、上下両院議長や政党党首らと会談するだろう。国民投票の結果は大差だったため、レンツィ氏は民主党党首も辞任する公算が大きい。
  首相の後任として名前が挙がっているのはパドアン経済財務相やグラッソ上院議長、フランチェスキーニ文化相。
  大統領は何よりも安定を重視し、新政権が次期総選挙が予定されている2018年早期まで続くことを望むだろうが、暫定政権の命運は各党の思惑に左右される。
  反体制政党の五つ星運動は解散総選挙を望んでいる。世論調査で五つ星の支持はレンツィ氏の民主党と拮抗(きっこう)。4日公表のEMGの調査によれば、総選挙で決選投票となれば53%対47%で勝利の見込みだ。五つ星は政権を取ればユーロ離脱の是非を問う国民投票を実施したい考え。
  中道右派フォルツァ・イタリアを率いるベルルスコーニ元首相も、連立に加わるなどの形での政権復帰を狙う。
  新政権づくりに加え、主要政党にとっての次なる優先課題は選挙法改正だ。現行の下院選挙法では第一党が自動的に過半数議席を得るが、この恩恵を受けるのが五つ星になることを既成政党は心配している。
  国民投票後の政治の不安定でイタリア3位の銀行、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナの増資への道はややこしくなりそうだ。同行は新株発行を週内に予定している。277億ユーロ(約3兆3460億円)相当の不良債権の処理も進める必要がある。
原題:What Next for Italy After Renzi’s Resignation? QuickTake Q&A(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHPAWQ6KLVRG01

http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/595.html

[経世済民116] 「トランプ時代」の勝ち組と負け組、日本はどちらか 警告から20年グリーンスパン債券市場を懸念 円安 ドル高ピーク18年 
コラム:「トランプ時代」の勝ち組と負け組、日本はどちらか

 11月28日、ドナルド・トランプ次期米大統領(写真)が外交政策の詳細を詰めるのを、世界はまだ待っている状態だが、「トランプ時代」の勝ち組と負け組はどこになるのか。米コロラド州で10月撮影(2016年 ロイター/Jonathan Ernst)

Josh Cohen

[28日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領が外交政策の詳細を詰めるのを、世界はまだ待っている状態だ。これまでに彼が発した言葉を考慮してみれば、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、トランプ時代における「負け組」となる可能性が高い。

ロシアについては、トランプ次期大統領がプーチン大統領を称賛しているからである。NATO諸国については、トランプ氏が、加盟国の「ただ乗り」によって、米国が応分以上に同盟維持コストを負担せざるを得なくなっている、と考えているためだ。

今回は1月20日に予定される大統領就任に先立ち、上記以外の意外な3つの「勝ち組」と「負け組」をご紹介しよう。

<負け組>

●メキシコ

メキシコの元外相は、トランプ氏の当選を自国にとって「純然たる災厄」であると嘆いた。彼は正しいかもしれない。トランプ氏は選挙期間中、メキシコを悪者扱いし、国境を隔てる新たな壁の建設費用を負担させ、メキシコ系移民による本国への電信送金を禁じ、数百万人を強制送還し、北米自由貿易協定(NAFTA)を再交渉もしくは終了させると約束した。

トランプ氏が当選した翌日、メキシコ・ペソの対ドル相場は史上最低の水準まで下落した。理由は簡単だ。トランプ氏が選挙期間中に約束した通り、メキシコから輸出される多くの商品に35%の関税をかければ、メキシコ経済はあっというまにリセッションに陥ってしまうだろう。メキシコ系移民の本国送金を禁止すれば貧困が拡大し、数百万規模の強制送還があればメキシコ国内での犯罪発生率、失業率の急上昇を招きかねない。

●日本

トランプ政権誕生により、日本は2つの側面で負け組となる可能性がある。まず、選挙期間中、トランプ氏が日米同盟にどれだけ肩入れするかという疑問が生じている。トランプ氏は、在日米軍の駐留コストを日本政府にもっと負担させるべきだと述べ、日本がそれに応じなければ米軍を撤退させる可能性があると示唆した。

また彼は日米同盟を不公平だと非難し、「日本が攻撃されれば米国はただちに支援に駆けつけなければならないが、米国が攻撃されても日本は助ける必要がない」と指摘した。

またトランプ氏は、就任初日に米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から脱退すると約束している。安倍晋三首相が重点政策として掲げるTPPは、2月に米国を含む12カ国によって調印された。

安倍首相は輸出の追い風になることを期待して、TPPの国会承認を得ようとしているところだが、トランプ氏はTPPを「災厄」と呼んでいる。いくつかの問題についてはトランプ氏も意見を変える可能性が窺えるが、彼の選挙運動においては自由貿易に対する反対が重要な柱になっていただけに、TPPは「死んでしまう」可能性が高く、日本にとってはかなり大きな長期的損失をもたらしかねない。

●モルジブ諸島

インド洋に浮かぶ小さな列島であるモルジブ諸島では、最高地点が海抜2.4メートルしかなく、トランプ氏の勝利によって最大の打撃を受ける可能性がある。この諸島の一部はすでにインド洋に没しており、今世紀末までにモルジブという国全体が消滅してしまうものと予想されている。

モルジブ諸島がトランプ政権の期間中に消滅するわけではないが、トランプ氏は「地球温暖化は中国による捏造」と主張しており、政権移行チームの環境保護庁長官にも気候変動懐疑派を指名している。さらにトランプ氏は、昨年の画期的なパリ気候変動対策協定からの脱退をめぐっても矛盾する発言を重ねており、モルジブの長期的な命運にとっても幸先はよくない。

<勝ち組>

●イスラエル

トランプ氏が選挙期間中に主張した立場は、イスラエルのネタニヤフ首相率いる連立与党と完全に一致している。トランプ氏は在イスラエル米国大使館をエルサレムに移転することを約束しており、ある上級顧問は、イスラエルによるヨルダン川西岸地区への入植は「和平のための障害ではない」と発言している。

またトランプ氏は、イスラエルが執拗に反対するイラン核開発合意を非難している。

これに加えて、選挙期間中のトランプ陣営の文書には、380億ドル(約4.3兆円)というイスラエル向けとして過去最大となる米国の軍事支援パッケージは、支援の「最低額であり、最高額ではない」と記されている。

●エジプトとトルコ

トランプ氏は明らかに独裁者を好み、国家建設を嫌う傾向を見せていることから、彼がエジプトの独裁的指導者であるシシ大統領に魅了されているとしても不思議はない。9月にシシ大統領と会談した後、トランプ陣営は声明のなかで、「エジプトの対テロ戦争への力強い支援」に感謝し、トランプ氏が勝利した場合にはワシントンを訪問するよう呼び掛け、トランプ政権がシシ大統領の忠実な同盟国となることを約束した。

民主主義に対するシシ氏の姿勢が決して誉められたものではないことにはまったく触れなかった。(ムスリム移民の米入国を制限するとの同陣営の声明にも触れなかったようだ)。大統領選での大勝利後、トランプ氏と最初に言葉を交わした海外首脳がシシ氏であったという事実からも、エジプトが、トランプ勝利による「勝ち組」なろうとしているように見受けられる。

トルコのエルドアン大統領も、やはりトランプ勝利から利益を得ようとしているように見える。7月にトルコで発生したクーデター未遂事件の後、エルドアン氏が政敵を弾圧したことをトランプ氏は称賛。市民の自由侵害を理由にエルドアン氏を批判する可能性を一蹴している。

トルコ側から見てさらにありがたいのは、トランプ氏の顧問を務める陸軍出身のマイケル・フリン氏が投票日に寄稿した論説において、クーデター計画を背後で操ったとしてトルコ政府が批判しているイスラム教指導者ギュレン師を、米国を安全な隠れ家として不当に利用しているイスラム教過激主義者として批判したことである。

●欧州の極右ポピュリスト

欧州は全般的にトランプ氏の当選に対して衝撃と落胆の反応を示しているが、例外もある。欧州の右派ポピュリストたちだ。

ハンガリーで独裁色を強めつつあるオルバン首相はトランプ氏の勝利を「素晴らしいニュース」と表現し、フランス国民戦線のルペン党首は「自由な米国民」を祝福し、英国独立党の党首で欧州連合(EU)脱退キャンペーンの先頭に立ったナイジェル・ファラージ氏(選挙期間中も積極的にトランプ氏を支持していた)は、トランプ氏の当選後、満面に笑みをたたえてトランプ・タワーを訪れて同氏と面会した。

欧州のポピュリストたちが興奮する理由は想像に難くない。1つには、オランダ、フランス、ドイツのポピュリスト政党はどこも、今年の自国での選挙において、トランプ氏の勝利が有権者にとって1つのモデルになることを期待している。さらに、トランプ政権で影響力の強い首席戦略官兼上級顧問となるスティーブ・バノン氏(トランプ氏の前選対本部長であり、いわゆる「オルタナ右翼」系メディアサイト「ブライトバート・ニュース」主宰者)、は、欧州の右派・反移民ナショナリストを尊敬していると伝えられている。

<結論は時期尚早か>

改めて確認しておくが、トランプ氏の外交政策が何をもたらすかという点について確固たる結論を出すには時期尚早であり、選挙運動と違い、実際の政権運営では制約を課せられることをトランプ氏が学ぶ可能性は高い。実際、トランプ氏の政権移行チームはすでに、イスラエルや国境の「壁」に関する外交政策上の公約をいくつか後退させつつある。その一方で、トランプ氏が計画しているロシアとの関係改善や、イスラム国との戦いにおけるシリアのアサド政権との協力については、議会幹部からの抵抗に直面している。

だが、トランプ次期大統領が必然的に妥協を余儀なくされる部分もあるとはいえ、1つだけ明白なことがある。トランプ氏は、よかれ悪しかれ、既存の地政学的な秩序を、予想もできない形で確実に揺さぶるだろう。

*筆者は米国際開発庁(USAID)の元プロジェクトオフィサーで、旧ソ連の経済改革プロジェクトに従事した経歴を持つ。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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トランプ相場、世界で高まる米国株の存在感
世界の株式市場に占める米国株の割合は40%強に
ニューヨーク証券取引所(11月30日)

By BEN EISEN
2016 年 12 月 5 日 11:51 JST

 世界の株式市場に占める米国株の割合は、株価上昇と米ドル上昇という2重の後押しを受けて拡大している。

 調査会社ファクトセットの最新データに基づく計算によると、12月2日時点の米国株の時価総額は約25兆2000億ドルで、世界の株式市場の40.01%を占めている。この割合は先月23日には40.29%と、2006年以降で最高水準に達した。他の国々はいずれも10%に満たないなか、米国株の存在感は突出している。

 米国株は、11月8日にトランプ氏が米大統領選挙で勝利してからの数週間で主要株価指数が過去最高値を更新するなど、他国の株式に比べて相対的な価値が高まっている。

 投資家やトレーダーたちは次期大統領の政策優先課題、特に法人税を引き下げ、財政刺激策を拡大するという計画に関して、米国企業に恩恵をもたらす可能性が高いと解釈してきた。また、相対的に高い経済成長と金利上昇の見通しがドルを押し上げてきた。

 大統領選以降、S&P500種指数は2.4%上昇し、小型株の指標であるラッセル2000種指数は10%急騰した。そうした動きに比べると、欧州やアジアの株式市場は若干まだら模様だ。11月8日以来、ストックス欧州600指数は1.3%上昇、上海総合指数は約3%の上昇となった。

 ドルの16通貨に対する価値の変動を示すWSJドル指数は3.7%上昇。ドル高が進んだことで、ドル建ての株式の価値も他国の株式より上昇してきた

 世界の株式市場に占める米国株の割合は過去10年間の大半で拡大してきたが、成長しつつある中国の株式市場との競争もあった。ファクトセットによると、12月2日時点で世界の株式市場に占める中国株の時価総額の割合は9.1%。昨年6月には、この数値が一時的に12%を上回った。

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「根拠なき熱狂」警告から20年―グリーンスパン氏、今は債券市場を懸念
グリーンスパン氏はちょうど20年前、株式市場の「根拠なき熱狂」について警告を発した ENLARGE
グリーンスパン氏はちょうど20年前、株式市場の「根拠なき熱狂」について警告を発した PHOTO: AGENCE FRANCE-PRESSE/GETTY IMAGES
By STEVEN RUSSOLILLO
2016 年 12 月 5 日 17:29 JST

 20年前、当時の米連邦準備制度理事会(FRB)議長アラン・グリーンスパン氏は株価について懸念していた。現在は債券市場についてはるかに大きな懸念を抱いている。

 5日はグリーンスパン氏がかの有名な「根拠なき熱狂」の警告を発してから20年目に当たる。この言葉はそれ以降、ウォール街だけでなく実体経済にも広がり、さらにはベストセラーにもなった。まさしく金融市場の象徴的な表現となったのである。

 この警鐘は、当初はものの見事に外れた。

 グリーンスパン氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「根拠なき熱狂という予測に成績をもらうとすれば「C」だ。だが、それはわれわれが極めて懸念すべきと考えていたプロセスを表現したものだった」と語った。

 グリーンスパン氏は「根拠なき熱狂」という表現について、言葉が市場に衝撃を与えることを意識して使ったことを認めている。「こうした特定の表現を講演に使えば市場を動揺させるということは分かっていた」

 だが、そのもくろみはうまくいかなかった。株価は一時的に下落したものの、すぐに反発した。ニューヨークに本拠を置くシンクタンク、米外交問題評議会(CFR)のシニアフェロー、セバスチャン・マラビー氏によると、グリーンスパン氏の警告から1997年8月までにS&P500種株価指数は27%上昇し、1日に平均2回はニュースにこのフレーズが登場した。

 マラビー氏は最近発表したグリーンスパン氏の伝記で「あのフレーズが繰り返されるたびに株式相場は上昇するように見えた」と記し、「株価上昇ペースを抑えようとするグリーンスパン氏の試みがうまくいかなければ、株価上昇に歯止めをかけることができるものは何もなかった」と書いた。

 株価の上昇は、2000年にドットコムバブルが崩壊するまで3年以上にわたって続いた。その後、住宅市場がさらに大きく崩壊し、08年の金融危機につながった。

 「根拠なき熱狂」という言葉は、グリーンスパン氏がある日の朝、入浴中に講演原稿を練っていた時に思いついた。この言葉をグーグル検索すると39万件の検索結果が出てくる。イェール大学教授でノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー氏は2000年に「根拠なき熱狂」というタイトルの著書を出した。グリーンスパン氏がFRB議長を退いた時には、政治風刺テレビ番組「ザ・デイリー・ショー」がすべての時間を使い「アラン・グリーンスパン氏への根拠なき熱狂の賛辞」と題する番組を放送した。

 今、90歳になるグリーンスパン氏は、自ら設立したグリーンスパン・アソシエーツを率いて積極的に活動しているが、FRBや政策についての具体的なコメントは避けた。

 同氏は株価について1990年代半ばほどには心配していないが、債券市場とこのところの大幅な金利上昇については大いに懸念している。「重要なのはS&P500種株価指数ではない。10年物と30年物の米国債だ」と述べ、「行き過ぎているのは債券市場におけるPER、つまり利益に対する債券価格の比率だ。これは取るに足らない要素ではない」と指摘した。

 また米経済が、物価上昇と景気停滞が同時に起きるスタグフレーションに向かう恐れがあると懸念している。「この確率は50%を超えている」とし、「今のところ私が心配しているのはこのことだ」と述べた。

 ただグリーンスパン氏は、住宅市場崩壊後に示した傍観主義的な姿勢を維持している。「いったんバブルが生まれると、経済に大きな悪影響が及ばないようにバブルを食い止めるのは難しい。成り行きを見守り、結果を見てから対処するのが最善だ」との考えを示した。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwig59vC5tzQAhUCkZQKHUUNCwYQFggbMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582478120772948042&usg=AFQjCNFvrAPMb-ydElinAq2DA_gTFnhHvQ&bvm=bv.139782543,d.dGo


コラム:トランプ円安は期待先行か現実回帰か

池田雄之輔野村証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 2日] - 2016年ほど「まさか」の3文字を金融関係者が口走った年はなかったのではないか。言うまでもなく、英国民投票での欧州連合(EU)離脱選択、米大統領選でのドナルド・トランプ氏勝利という結果は政治イベントの予想の難しさを知らしめた。

しかし、相場予想を生業とする我々ストラテジストにとって、最大の「まさか」は、米大統領選後の株高、金利急騰、大幅の円安という強気相場、「トランプラリー」である。

筆者を含め、ほとんどの市場参加者が「トランプ勝利=円高」と予想していた。真逆の展開を目の当たりにし、ストラテジストは「市場は楽観的過ぎる」と判断してしまう。筆者も当初はそのように考えた。しかし、市場の動き、ファンダメンタルズの変化を見ると、「ドル高=過大なトランプ期待」ではないことが分かってくる。

以下では、1)「弱気ポジション」の調整、2)政治リスクに覆い隠されていた中国発のデフレ脱却シナリオの発現、3)円需給や金利と整合する水準への相場の回帰、という3つの観点から検証してみる。

そこで浮かび上がるのは、「過大なトランプ期待」ではなく、悲観的過ぎた市場が「現実回帰」するプロセスである。

<「弱気ポジション」の巻き戻し>

「トランプラリーは過熱気味」との仮説に反する事象は比較的容易に見つかる。例えば、米国市場が感謝祭で休場となる11月24日に向けて、「手じまい」的な動きはほとんど見られず、むしろドル高が継続した。その後週明けに若干の調整があったものの、ドルラリーはまだ比較的若い局面にあるように見受けられる。

シカゴ国際金融市場(IMM)の先物データを見ると、11月15日から22日にかけて投機的ポジションは「円ロング」から、ようやく「円ショート」に転じた。円ショートは今年1月2日以来である。相場水準としては1ドル=110円あたりが、ロング/ショートの転換点だろう。すなわち、101円から110円までが円ロングの巻き戻し、それ以上が円ショートの積み上げと見られる。

米大統領選後のラリーが、弱気ポジションの取り崩しに由来していることは、通貨横断的なデータでも確認できる。この間のドル全面高の中で、特に弱い通貨は円である。もちろん、金利に着目した説明も有力だ。米国を筆頭に、世界的に金利が急騰する中で、日銀の長期金利を抑え込む姿勢が、「金利差の面で最も売りやすい通貨は円」との認識を投機勢に植え付けている可能性がある。

しかし、米大統領選後にポンドがドル以上に強いことをどう説明すべきか。「トランプ政権誕生で英米の連携が強まる」との説明があるが、後付けの印象が拭えない。やはりポジション調整の影響と考えるべきだろう。

実際、シカゴIMMにおける米大統領選直前のポジションの傾き(過去の平均値で標準化)と、その後の対ドルリターンには、「ロングだった通貨が売られ、ショートだった通貨が買われる」という「巻き戻し」特有の相関関係がはっきりと表れている。「ポンドはショート、円はロング」という弱気ポジションが、一部は「トランプ勝利」の瞬間に利益確定で巻き戻され、残りはじわじわと損切りを迫られた、と推察される。

<中国発「脱デフレ」シナリオ>

「弱気ポジションの解消」を、グローバルマクロ情勢の文脈からはどう解釈できるか。ここでは、いったん「トランプ」を忘れて相場を見直してみたい。

そもそも、米大統領選前からグローバル経済、とりわけ米国・中国景気は安定感を強めていた。6月末の英国民投票での「EU離脱ショック」も早期に克服した。本来であれば米連邦公開市場委員会(FOMC)は6月ないし9月に利上げが可能だったはずだが、一時的な雇用統計の下ぶれ、および米大統領選挙への配慮から行動を見送った。鉄鉱石、石炭を筆頭に、コモディティー価格は秋口にかけて軒並み強含んでくる。中国経済の回復を起点とし、グローバルなデフレ脱却の筋書きが見え始めていた。

しかし、英米政治リスクへの意識により、債券市場は弱気(金利上昇)シナリオの織り込みが遅れてしまった。結果的に、債券バブルが放置される。それが、「トランプショック」によって過激な水準調整を迫られた、というのが実態ではないか。

言い換えれば、6月、11月の政治イベントがなければ、米10年金利は春先の1.9%前後という水準から、ゆっくり時間をかけて現在の2.4%台まで上がっていてもおかしくなかったように思われる。この仮説にのっとれば、現在の米金利上昇、ドル高は「トランプ次期政権への期待先行」ではなく、「政治リスクへの意識によって、現実から引き離されてしまった相場のキャッチアップ、現実回帰」との評価になる。

この仮説をサポートする中国の景気指標として「李克強指数」の動きは注目に値する。この指数は李克強首相が注目しているとされる銀行融資残高、電力使用量、鉄道貨物輸送量の3指標(いずれも伸び率)から計算される月次データで、景気循環をよく捉えている。同指数は過去、米10年金利とほぼ一致して転換点を迎えるという驚くべき性質を持っており、いかに中国景気が世界の成長率、インフレ率に影響しているかを物語っている。

李克強指数は年初から上昇し始め、中国発のグローバルなデフレ脱却シナリオをすでに描き始めていた。しかし、英米政治リスクへの意識の高まりによって、世界の債券市場はそれを無視し続けていた。その矛盾が、いま一気に解消されている可能性がある。

<来年末1ドル=120円との試算も可能>

最後に、円需給と金利差を用いたシミュレーション結果を確認しておく。このシミュレーションは、経常収支および資本収支のうち為替インパクトのあるフロー(需給の偏り)および内外金利差という2つの為替ファンダメンタルズによって、ドル円相場の「適正値」を計算する試みである。現実のドル円相場がシミュレーションから乖(かい)離する部分はおおむね「投機的」と判断することができる。

2013年から15年にかけては、日本の貿易赤字、公的年金のシフト、空前の海外M&Aブームがバトンタッチしながら巨額の「円売り超過」を担い、米金利がほぼ横ばい圏で推移する中での円安ファンダメンタルズを築いた。もちろん、投機勢は日銀の強力緩和策を「円安政策」と見なし、投機的な円ショートを積み上げ、キープし続けた。

しかし、2016年に入ると、リスクオフの地合いの中、日銀限界論の台頭とともに投機ポジションは円ショートから円ロングに転じ、円急騰劇を招く。

現在、シミュレーションが示している「適正値」は113円台である。出来過ぎの感もあるが、現在のドル円相場とほぼ一致した水準にある。言い換えれば、1ドル=110円を大幅に下回っていたドル円相場は、英国民投票および米大統領選という政治リスクへの警戒によって歪められていた状態だったとの見方も可能かもしれない。2017年の利上げを2回と想定すると、来年末は1ドル=120円との計算になる。

もちろん、今後はトランプ次期政権で実行される政策への評価、欧州政治動向への目配りが欠かせない。しかし、少なくとも米大統領選という政治リスクを通過、「トランプショック」によって為替市場は悲観ムードを脱した。そして、ようやくグローバルマクロ経済の現状を正当に反映できるように、「現実回帰」したのである。「トランプ次期政権への期待は過大」とは見ない方が良いだろう。

*池田雄之輔氏は、野村証券チーフ為替ストラテジスト。1995年東京大学卒、同年野村総合研究所入社。一貫して日本経済・通貨分析を担当し、2011年より現職。「野村円需給インデックス」を用いた、円相場の新しい予測手法を切り拓いている。5年間のロンドン駐在で築いた海外ヘッジファンドとの豊富なネットワークも武器。著書に「円安シナリオの落とし穴」(日本経済新聞出版社)。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yunosuke-ikeda-idJPKBN13R0MR


コラム:トランプ政策期待のドル高、ピークは18年か

高島修シティグループ証券 チーフFXストラテジスト
[東京 2日] - 先月8日の米大統領選挙前、筆者は次のような相場観を抱いていた。共和党のドナルド・トランプ候補が勝利した場合、「ドル円は瞬間的に100円方向へ反落。ただ、共和党が米議会を上下院とも押さえる場合は年内にも108円前後へ切り返す可能性がある」。

本音ベースでは112円前後への上ぶれもあると考えていたので、この間のドル高円安はあまり違和感なく受け入れている。

現在は今月13―14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の前後で115円程度まで続伸した後、今回の期待先行のドル高はいったん終了し、その後、来春にかけて10円程度反落した後、2018年に向けては改めて、より実体を伴った、中長期的なドル高円安が進行し始めるのではないかと考えている。

<異端視された「トランプ・ドル高」説>

そもそも筆者は大統領選挙前にコンセンサスだった「民主党ヒラリー・クリントン候補勝利=ドル高」説に懐疑的だった。注目していたのは議会選挙である。

今回、議会選挙ではポール・ライアン議長率いる共和党が下院を制することはほぼ確実だった。したがって、選挙戦中、民主党のクリントン候補も、共和党のトランプ候補も社会保障制度や減税などによる財政刺激策を訴えていたが、クリントン氏が勝利しても、これまでオバマ大統領(民主党)が苦しんだ政治的な「ねじれ」が解消しないことは明白だった。つまり、クリントン氏が主張する財政政策が実現する可能性は低かった。

結果的に米財政事情が健全な状態を保つことは長期的にはドル高要因となるが、短期的には財政刺激を欠く米経済は停滞を続ける。米連邦準備理事会(FRB)の緩和的な金融政策スタンスが継続するため、米金利上昇もドル高もおのずと限界が生じる。「クリントン勝利」が政治的には基本シナリオだったが、その際、年内のドル円は103―106円レンジで上値の重い商状となるというのが筆者の考えだった。

他方、まさかの「トランプ勝利」の場合はまずは100円前後へ急落。その後、民主党が上院を押さえるのであれば、議会との「ねじれ」が続き、トランプ氏が主張する減税政策は実現しない。FRBの金融緩和策への依存度が高まり、来年1―3月期にはそのまま100円を割り込むリスクがあっただろう。

だが、共和党が上下院をともに押さえた場合には「ねじれ」が解消。財政刺激策が実現する可能性が一躍高まり、米金利上昇にけん引されたドル高が発生する可能性が高いと思われた。しかも、トランプ氏の政策メニューの中には、米企業が海外に留保する利益を米国に還流させる措置(本国投資法)が含まれていたのでなおさらだ。

今となってみれば、読者にとってこの「トランプ・ドル高」説は特段驚きには値しないだろう。だが、「クリントン・ドル高、トランプ・ドル安」説が支配的だった選挙前はこのような見方は異端視された。ちょっと考えれば、意味不明な論拠の上に成り立っていることが分かるはずなのだが、いったん市場でコンセンサスとなってしまえば、それが独り歩きして、もっともらしく聞こえる典型例が「クリントン・ドル高、トランプ・ドル安」説だった。

<「米金利上昇でドル高」説の脆弱性>

一方、選挙後に進んだ株高・ドル高で、今は一転して市場では「トランプ・ドル高」説が支配的になってきた。だが、この説もさまざまな脆弱性を内包している。

今回、ドル高円安を発生させたのは上記の通り、米国が拡張財政に転じることを期待した米金利上昇である。9月に日銀が新しい金融政策の枠組みの中でイールドカーブ・コントロールを導入し、円金利上昇に歯止めがかかる構造となっているため、米金利上昇が日米金利差拡大に直結し、ドル高が対円でユーロなど他の通貨に対するよりも顕著に表れた。

実のところ、過去半年ほどの日米10年金利差とドル円の相関を確認すると、1%の金利差の変化でドル円が25円ほど動くという関係が成り立っており、現在の金利差を前提としたドル円の単純推計値は115円前後である。

だが、ここでは詳しくは述べないものの、筆者が定期的に更新している重回帰分析によるファンダメンタルズモデルに基づくと、長期的な観点では1%の金利差変化がドル円に与える影響は5円以下である。この関係が必ず正しいと主張するつもりはないが、1%で25円もドル円が変化するという関係が論理的にはとても正当化できるものではないことは明らかだ。極めて投機的な思惑によってその関係が短期的に成り立っているに過ぎない。

つまり、今は過去半年ほどの相関を用いて1ドル115円が正当化されても、突然その関係が変化し、現在の金利差が大きく変わらなくとも、ドル円が大きく値崩れする可能性は否定できない。今回の米金利上昇が財政やインフレのリスクプレミアム(本来は通貨安要因)を織り込むものであることを考えるとなおさらだ。現在、我々のファンダメンタルズモデルに基づく推計値は105円前後であり、その程度までのドル円反落は常に発生し得るというのが筆者の基本認識である。

<ドル高要因が逆行し始める2019年>

さて、来年1月のトランプ政権発足が近づくにつれ、選挙前に吹聴されたさまざまなメニューの中から実現可能なもの、実現困難なものが峻別され、選挙後に一気に高まった過度の期待が修正される局面を迎えよう。

FRBは今月のFOMCで1年ぶりの利上げに踏み切る公算が大きいものの、最近の急激な米金利上昇やドル高を警戒し、声明文は極めてハト派的なものになると思われる。その結果、ドル高をけん引してきた米金利上昇が止まってくれば、選挙前に市場が悪材料として注目していた保護主義など、トランプノミクスのダークサイドに改めてスポットライトが当たり、調整反落的なドル安が発生してもおかしくなかろう。

肝心の財政政策にしても、その景気刺激効果が表面化してくるのは2017年後半にずれ込む可能性が高く、その成長押し上げ効果が極大化するのは2018年になりそうだ。しかも、前述した本国投資法は実現する可能性が高いものの、恐らく実施は2018年になるとみられる。財政による景気刺激に加え、米企業による直接的なドル買い需要が膨らむのもその頃からだ。

逆に2018年の減税が確定的となってきた今、米企業はその実施を控えた2017年は例年よりも米国への利益送還を減らす可能性が高く、むしろドル安的に作用する。これも筆者が2017年の少なくとも前半のドル相場に強気になれない理由の1つだ。

一方、2018年には財政刺激効果と本国投資法による米企業の利益送還がピークを迎えることに加え、その海外収益の利益送還に絡んだ税収増が予想される。財政刺激効果が極大化するにもかかわらず、米国の財政事情はむしろ改善する。つまり、1)財政刺激、2)米企業のドル買い、3)財政健全化の三拍子がそろい、力強いドル高局面を迎える公算が大きい。そのときには120円を超えるドル高円安が発生しても特段驚くには値しないだろう。

このように整理すると、トランプ大統領の誕生によって2017年前半の停滞を経て、ドル相場が2018年にピークをつけにいくシナリオが非常にクリアになってきたと思う。

ただし、このことは同時に2019年には2018年のドル高をけん引したその3つの要素が全て逆行し始めることを意味する。特に注意すべきは、同じ減税策を実施しても、2年目以降はベース効果の剥落で、景気刺激効果が減退。その結果、景気減速局面に入ると、減税によって脆弱化しているがゆえに、財政事情は雪だるま式に悪化し、ドル安を加速させるようになることだ。

*高島修氏は、シティグループ証券のチーフFXストラテジスト。1992年に三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行し、2004年以降はチーフアナリスト。2010年シティバンク銀行入行、チーフFXストラテジストに。2013年5月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-osamu-takashima-idJPKBN13R0BL



トランプ氏が雇用創出諮問委、委員に米主要企業のトップ

[ワシントン 2日 ロイター] - トランプ次期米大統領は2日、雇用創出に向けた政策を助言する諮問委員会を設立すると明らかにした。ブラックストーン・グループ(BX.N)のスティーブ・シュワルツマン最高経営責任者(CEO)が委員長を務め、米主要企業のトップが委員として参加する。

トランプ氏は声明で「次期政権は民間部門のノウハウを活用し、米企業の雇用や改革などを抑制してきた官僚主義を打ち破ることにコミットしている」と指摘。同委員会は企業経営を阻害する規制の撤廃のほか、法人税率引き下げなどを主眼に置くとした。

同委員会に委員として参加するのは、ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)のバーラ最高経営責任者(CEO)、JPモルガン・チェース(JPM.N)のダイモンCEO、資産運用大手ブラックロック(BLK.N)のフィンクCEO、ディズニー(DIS.N)のアイガーCEO、IBM(IBM.N)のロメッティCEO、ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)元CEOのジャック・ウェルチ氏、航空機大手ボーイング(BA.N)のCEOを務めたジム・マクナーニ氏ら。

このうちアイガー氏、マクナーニ氏、ロメッティ氏らはオバマ政権の諮問役も務めた。

アルファベット(GOOGL.O)傘下のインターネット検索大手グーグル、アップル(AAPL.O)、フェイスブック(FB.O)などのトップは含まれていないが、関係筋はハイテク業界のトップも今後加わる可能性があるとしている。
http://jp.reuters.com/article/trump-job-creation-group-idJPKBN13R2PB

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/411.html

[経世済民116] ドルが準備通貨でなくなる日は到来するか FRB年2回利上=ブラックロック 米雇用者17.8万人増 失業率9年ぶり低水準 
ドルが準備通貨でなくなる日は到来するか

By JAMES MACKINTOSH
2016 年 12 月 5 日 13:39 JST 更新

 作家のライオネル・シュライバーは今年6月出版した小説で、無能な米大統領が貿易戦争を起こし、世界がドルの使用をやめた後で米国が深刻な不況に陥るという反ユートピア的未来を描いた。

 その小説「ザ・マンディブルズ:ア・ファミリー 2029-2047」は今から13年後に始まる話だが、現実の次期大統領はドルが準備通貨としての地位を失う日の到来を早めるのだろうか。

 市場は心配していない。トランプ氏が大統領選挙で勝利してからドルは急騰し、米インターコンチネンタル取引所(ICE)算出のドル指数は先進国通貨バスケットに対し4%、新興国通貨に対してはそれ以上に上昇している。

 ただ、トランプ氏の政策や過去の発言が現実化すれば、資産逃避先としての米国の魅力は損なわれる。海外投資家が満額償還に疑いを持ち始めたら、各国外貨準備の米国債への依存度は低下する恐れがあり、そうなれば米政府の借り入れコスト上昇やドル下落を招くだろう。指導者のスタイルがより大衆迎合的になることで、海外投資家が熱望する法の支配も脅かされる可能性がある。

 国際通貨基金(IMF)は米政府債務残高が昨年の国内総生産(GDP)比105%に達したとしたが、トランプ政権では税率引き下げとインフラ支出増で同比率はさらに拡大しそうだ。

 トランプ氏は選挙中、債務コスト引き下げのため「取引をする」ことができ、中国から莫大な借金をしている米国には中国に行使できる大きな力があると述べ、極端な選択肢の存在をほのめかした。どちらの場合もトランプ氏はデフォルト(債務不履行)の選択肢を否定したが、デフォルトがないのであれば債権者は全額償還以外の選択肢を受け入れる理由などない。

 英金融大手HSBCのシニア経済アドバイザー、スティーブン・キング氏は、ニクソン元大統領が金1オンスと35ドルとの交換を停止した際にもドルの準備通貨としての地位が揺らいだと指摘する。

 「ドルに金と同様の価値があると考えドルを購入していた多くの海外勢は、そうではないことに気付いてしまった」とキング氏は言う。

 ところがその数年後、ドルは最有力準備通貨の地位を回復、強化した。今日、ドルは外貨準備高に占める比率や貿易決済としての地位でユーロ、円、ポンド、まだ準備通貨の歴史が浅い人民元などを圧倒している。

 その結果、ドルには世界が買う紙幣を印刷する権利(フランスの元財務相でのちに大統領になったバレリー・ジスカールデスタン氏はそれを「法外な特権」と呼んだ)を保有していることになる。コンサルタント会社マッキンゼーのシンクタンク部門、マッキンゼー・グローバル・インスティテュートは2009年、外貨準備金として、またはドル建て貿易のため海外保有されているドルが米国に年間100億ドルの収入をもたらしたと見積もった。海外の追加需要を受けた米国債利回り低下は、さらに年間900億ドルの価値を生んでいる。反面、危機が発生して準備通貨の価値が高まれば輸出にとって打撃となる。

 ドルへの脅威は明らかだ。格付け会社フィッチ・レーティングスで欧州、中東、アフリカのソブリン格付け責任者を務めるエド・パーカー氏は、ドルの準備通貨としての地位が少しでも損なわれれば、膨大な政府債務があるにもかかわらず維持されている米国の最上位格付けが脅かされるだろうとしたうえで、「米国の債務許容度が例外的に高いのは世界の金融システムでドルが果たしている役割とその市場の厚みのおかげだと考えている」と説明する。また、「ドルがその役割を失うというのは想像し難いが、長期的に役割が低下している可能性はある」という。

 ただ、市場がこの脅威を無視できるには理由がある。少なくとも現在、これに勝る通貨が存在しないことだ。IMF金融研究部門責任者を歴任し、コーネル大学で貿易政策を教えるエスワル・プラサド教授は必要な規模で外貨準備高を吸収できる市場は米国しかないと指摘する。

 「他に頼れる国がないのが厳しい現実だ」と同教授はし、「数十億ドルならユーロ、円、金での保有も可能だが、数千億ドル規模だと他に行き場はない」と語る。

 ドルに代わる準備通貨として人民元はよく取り上げられるが、市場の混沌、不完全な法の支配、一党独裁不安定化の危険性など踏まえると少なくとも今は莫大な準備高にふさわしい選択肢ではない。

 ドルへの最大で長期的な危険は、米国が世界の警察官の役割から退くことかもしれない。ポンドが世界通貨としての価値を失い始めたのは第1次世界大戦で英国が壊滅的損害を受けてからで、第2次大戦後に超大国から陥落するとそれは決定的なものとなった。

 HSBCのキング氏は「トランプ氏がより広い意味で米国凋落の兆候なら、最終的にはドルが準備通貨としての地位を徐々に失うという形で反映されるはずだ」としつつ、「ただ、それは10年単位の現象であり、次期大統領の任期中ではない」と述べた。

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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiHxum15tzQAhUQNpQKHdp4DboQFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582477760161493938&usg=AFQjCNFXc1mZ_DNpm6G8Sx9ounNe1pppQg


米FRB、来年は2回の利上げ実施の見通し=ブラックロック

12月2日、米ブラックロックはFRBは今月のFOMCで予想通りに利上げを決定した後、来年は少なくとも2回の利上げを実施する公算が大きいとの見方を示した。写真は2015年9月、ワシントンのFRBビル前で撮影(2016年 ロイター/Kevin Lamarque)

[ニューヨーク 2日 ロイター] - 米資産運用大手ブラックロックは2日、米連邦準備理事会(FRB)は今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通りに利上げを決定した後、2017年は少なくとも2回の利上げを実施する公算が大きいとの見方を示した。

ブラックロックのグローバル債券部門最高投資責任者(CIO)、リック・リーダー氏は声明で、朝方発表された11月の米雇用統計は一部アナリストの予想ほど堅調ではなかったものの、「FRBが今月の会合で利上げに踏み切るのはほぼ間違いない」と指摘。

そのうえで、FRBは12月に利上げを決定した後、「来年は2回利上げを実施する公算が大きい」とした。
http://jp.reuters.com/article/blackrock-fed-idJPKBN13R2D6


News | 2016年 12月 3日 00:45 JST 関連トピックス: トップニュース
米雇用統計:識者はこうみる
12月2日、11月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が17万8000人増となった。失業率は約9年ぶりの水準に改善し、FRBが12月に利上げに踏み切る下地がほぼ整った可能性がある。写真は2012年4月、ワシントンのFRBビル前で撮影(2016年 ロイター/Joshua Roberts/File Photo)

[2日 ロイター] - 米労働省が発表した11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が17万8000人増となった。失業率は4.6%と、約9年ぶりの水準に改善し、米連邦準備理事会(FRB)が12月に利上げに踏み切る下地がほぼ整った可能性がある。

識者のコメントは以下の通り。

●失業率の大幅低下はサプライズ、12月利上げ予想

<サビルズ・スタッドリー(ニューヨーク)の首席エコノミスト、ヘイディ・リーナー氏>

失業率が4.6%に大幅低下したのには驚いた。米連邦準備理事会(FRB)は12月に利上げするとおもう。失業率が4.6%に低下したことで今後は賃金上昇が焦点になるだろう。

●12月利上げ後押し

<アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏>

11月の米雇用統計は底堅く、米連邦準備理事会(FRB)の12利上げをさらに後押しすることになると考える。賃金も強い伸びを示していれば、FRBは将来の金利の道筋についてより積極的な姿勢に傾いただろう。

●FRBは来年2回の利上げに快適か

<バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)メリルリンチ(ニューヨーク)の短期金利戦略部長、マーク・カバナ氏>

失業率の低下と労働市場の引き締まり具合を考えると、今後賃金圧力が上昇していかないとおかしい。2017年の利上げペースについては、トランプ新政権の政策にもよるとおもうが、連邦準備理事会(FRB)はドット・チャート(=今後の政策金利の推移を点で示したグラフ)に記されているように、2回の利上げを快適と感じているのではないか。

賃金が予想を下回ったことは今後注視していく必要があるものの、全般的には雇用は底堅い伸びが続いており、FRBが今月と来年にかけて引き締め政策を進めていく上での後押しとなるだろう。
http://jp.reuters.com/article/instantview-us-payroll-idJPKBN13R1WH?sp=true


Business | 2016年 12月 3日 00:31 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
米雇用者数、11月は17.8万人増 失業率は約9年ぶり低水準

[ワシントン 2日 ロイター] - 米労働省が発表した11月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が17万8000人増と、市場予想の17万5000人増を上回る伸びとなった。失業率も4.6%と、2007年8月以来約9年ぶりの水準に改善し、米連邦準備理事会(FRB)が12月に利上げに踏み切る下地がほぼ整った可能性がある。

ただ、9、10月分の雇用者数は当初発表から2000人下方修正された。

失業率は前月比0.3%ポイント低下。アナリストは、前月から変わらずの4.9%を見込んでいた。失業率の低下は雇用者の増加に加え、労働参加人口の減少を反映している。

時間当たり平均賃金は前月比0.1%(0.03ドル)減と、前月の0.4%増からマイナスに転じた。前年比では2.5%増と、約7年半ぶりの大幅増となった前月の2.8%増から伸びは鈍化した。ただ、暦上の歪みによる影響が大きいことから、FRBが12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で過度に注目することは予想されていない。

アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エラリアン氏は、統計は「底堅く」、FRBの12利上げをさらに後押しすると指摘。「賃金も強い伸びを示していれば、FRBは将来の金利の道筋についてより積極的な姿勢に傾いただろう」との認識を示した。

労働参加率は0.1%ポイント低下の62.7%。

縁辺労働者や、正社員になりたいがパートタイムで就業している人を加えたより広義のU6失業率は0.2%ポイント低下の9.3%と、2008年4月以来の低水準となった。

業態別では、建設が1万9000人増。製造は4000人減と、4カ月連続で減少した。小売も8300人減と、2カ月連続減となった。

専門職は6万3000人、ヘルスケア関連は3万4700人、人材派遣は1万4300人それぞれ増加した。政府も2万2000人増となった。

雇用統計発表後、米株価は小動き。主要6通貨に対するドル指数は低下し、米債価格は上げ幅を拡大した。

*内容を追加して再送します。
http://jp.reuters.com/article/us-nov-payroll-idJPKBN13R1MF
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/412.html

[国際16] 日本官僚の旧弊、トランプ氏の米国に復活か ECB:11月の資産購入、過去最大の854億ユーロ−年末控え前倒し
【コラム】
日本官僚の旧弊、トランプ氏の米国に復活か
−シューマン
ジャーナリスト:Michael Schuman
2016年12月5日 08:00 JST
 
工場労働者は大喜びに違いない。トランプ次期米大統領は選挙戦の公約を実際に守り、米企業に対し製造業の雇用を国内にとどめるよう強要している。トランプ氏は1日、米空調機器メーカーのキヤリアがメキシコへの工場移転を取りやめ、約1000人の雇用をインディアナ州に維持すると発表した。
  同氏はアップルに対しても、中国から部品調達するのではなく、米国内に工場を建設するよう促すとともに、その根拠は疑わしいが、自動車メーカー、フォード・モーターのケンタッキー州にある工場を救ったのは自分だと主張している。
  多くの人々は恐らく、われわれはなぜ初めからトランプ氏のように行動してこなかったのかと話しているだろう。強欲な資本家が米国の雇用機会を海外に移転するのを阻止できるタフガイがようやくホワイトハウスの主人になると。
  だが問題は、トランプ氏の無理強いが法の支配を弱め、米経済に将来的に打撃となることだ。それが分かるのは、官による民へのこのような介入を試みたのはトランプ氏が初めてではないからだ。日本では、官僚がかつてこうした慣行に従事していたのがよく知られている。そしてその結末はわれわれへの警告となるだろう。
  日本の高度成長期、官僚は大小さまざまな形で経済に介入した。よく好まれた方法の一つは「行政指導」の名目で行動を求めることだった。こうした指導に法的強制力はなく、適切な規制ではない。官僚は正式な権限を欠く分野で企業の決定を左右しようとした。
  しかし、企業は極めて多くの場合、こうした指導に従った。そうしなければ、必要な原材料が手に入らないようにしたり、重要な許認可を出さないようにしたりして、官僚が何らかの方法で企業をひどい目に遭わすかもしれないことを知っていたためだ。
官による介入
  現在のトランプ氏の場合もこの論理が多分に当てはまると考えられるが、日本の官僚は、個々の企業の利己的な動機を抑制することで、自分たちの行為が国家として一層大きな利益を守ったと信じていた。好景気が続いていた時には、日本の成功の鍵は官僚による経済運営と考えたアナリストから称賛を浴びていた。アナリストの中には、米国が競争力を高めるには国家による経済の管理という日本の手法を見習うよう提唱する者さえいた。
  だが、行政指導は間もなく、日本の不振を最終的に裏付けることになった官による介入という、より広範なシステムの一部となった。日本の官僚は市場の力を回避するために指導を使う場合もあった。それは生産カルテルにつながったり、外国企業への妨害となったりし、競争を制限して弱小企業を保護した。官僚によって紡がれた複雑な仕組みが、生計費を法外な水準に押し上げていると消費者からも非難の声が上がった。
  このシステムは結局、日本を窒息させ、経済がうまくいくために必要な起業家精神を阻害することになった。日本専門家で米コルビー大学准教授のウォルター・ハッチ氏は行政指導について、「逆効果となって、日本企業の革新能力を制約した」と話す。かつてソニーやホンダなど画期的な企業を生んだ日本は今日に至るまで、主要国で最も起業家精神の面で後れを取っている国の一つに数えられる。
トランプ氏への助言
  トランプ氏の戦術はこれまでのところ日本のケースほどには至っていない。それでも懸念すべき前例となる。トランプ氏は広範にわたる規制緩和を公約しながら、企業側が正式に争うことができない方法で、ある種の「行政指導」を使って非公式な形で再規制しようとするかもしれない。その地位を使い、法的な義務付けのない決定を企業に強いて、経営幹部が応じなければ報復すると暗黙の脅しをかけるというわけだ。
  さらに悪いことには、トランプ氏は企業に対し、その利益に反する行動を取るよう圧力をかけている。キヤリアはメキシコへの工場移転でコストを節減する狙いだった。そうして節減された資金は投資拡大や消費者に対する値下げ、株主還元に使われたかもしれなかった。トランプ氏の「指導」はこのようなメリットを一掃しただけでなく、経済に新たな負担を強いることになった。同社は合意の一環としてインディアナ州から700万ドル(約8億円)相当の優遇措置を受ける。言い換えれば、同州の勤勉な納税者がコストを負担することになる。
  今回はまだ始まりにすぎない。日本の経験が示すように、トランプ氏が同じやり方を追求し続ければ、非効率や不確実性、多くの意図せぬ結果が待ち構えている。それは消費者にとっては割高となり、経済成長率は低めに推移し、米企業はより多くの労働者を機械に切り替えようとするだろう。
  かつての日本の官僚のようになるな、というのが私のトランプ氏への助言だ。もし可能なら、米国内での現地生産を促すよう、議会に明確な政策を求めるべきだ。ただ、公の場で面目をつぶしたり、密室で交渉したり、暗黙の脅しをかけたりするのは御法度だ。米経済は長年、高い透明性と法の支配、自由企業体制をベースとしてきた。それを崩してはならない。
(マイケル・シューマン氏は北京在住のジャーナリストで、ブルームバーグ・ビューのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-04/OHJNYK6S972901

 

 
トランプ氏、世界経済への最大リスク−オックスフォード・エコノミクス
Bloomberg News
2016年12月6日 01:56 JST
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調査企業の半数以上が急激な景気減速の可能性は高まったと回答
トランプ氏は米成長押し上げ要因ともみられている
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トランプ次期米大統領の将来の政策スタンスは「世界経済を脅かす単一要素としては最大のもの」とみられていることが、オックスフォード・エコノミクスの顧客調査で明らかになった。
  回答者の半数以上は急激な景気減速の可能性が過去3カ月間で高まったと判断。オックスフォードは顧客企業を含む約180社を対象に、世界経済におけるリスク認識について11月14−21日に調査を実施した。
  このうち27%は、トランプ氏が引き起こし得る貿易戦争が今後2年間の世界経済を脅かす最大のリスクだと回答。中国経済のより深刻な景気減速が最大リスクだと答えた23%を上回った。一方で、トランプ氏は世界経済の成長加速をもたらす可能性が高いともみられており、回答者の38%は同氏が掲げている新たな財政刺激策で米経済は大きく浮揚する可能性があると述べた。
  オックスフォードのマクロシナリオ責任者、ジェイミー・トンプソン氏(ロンドン在勤)は今回の調査結果に合わせて発表したコメントで、「世界経済見通しの著しい変化」を示していると指摘。「政策や政治の不透明感の度合いが異常に高まった現在、世界経済に対する最大のリスク要因は今や、上向きと下向きの両方において米政策スタンスであることは間違いない」と説明した。
原題:Trump Seen as Biggest Global Economy Risk, Oxford Economics Says(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHQ0K06JIJVV01

 
米ISM非製造業総合景況指数:15年10月以来の高水準、雇用も堅調
Patricia Laya
2016年12月6日 02:34 JST

米供給管理協会(ISM)が5日発表した11月の非製造業総合景況指数は前月比で上昇し、昨年10月以来の最高となった。経済の最大部分をしめる非製造業部門が堅調な成長軌道にあることが示された。
  11月のISM非製造業総合景況指数は57.2と、前月の54.8から上昇した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は55.5だった。同指数では50が活動の拡大と縮小の境目を示す。
  ISMの非製造業景況調査委員会のアンソニー・ニーブス委員長は、統計発表後の記者団との電話会見で「第4四半期によって今年は非常に強い締めくくりとなる」と述べ、「12月が大きく変化するとは考えていない」と続けた。

  項目別では景況指数が61.7と、昨年10月以来の高水準。前月は57.7だった。雇用指数は13カ月ぶり高水準の58.2(前月53.1)だった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Service Industries in U.S. Grow at Fastest Pace in 13 Months (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHPZYK6VDKHT01

 


 
ユーロ、対ドルでパリティへの下落予想増加−イタリア国民投票結果で
Kevin Buckland、Chikako Mogi
2016年12月6日 02:35 JST

9カ月以内にパリティ付ける可能性、オプション市場で50%超
イタリア首相辞任でユーロは一時1年8カ月ぶり安値

イタリア首相の辞意表明で欧州金融市場が再び混乱するとの懸念が高まる中、5日の為替市場ではユーロがドルに対して一時1年8カ月ぶりの安値に沈んだ。トレーダーはこのユーロ下落を、パリティ(等価)に向かうほんの幕開けにすぎない可能性があるとみている。
  オプション価格が織り込む今後9カ月以内に1ユーロ=1ドルまで下落する確率は、5日の市場で50%を超え、2日の45%から上昇した。1カ月前はわずか16%でしかなかった。
  ブルームバーグが実施したエコノミスト調査でも、2017年末までにユーロがパリティ以下に落ち込むとの予想が53人中9人と、11月調査の2人から増加した。ドイツ銀行が1ドル=0.95ユーロまでユーロ安が進むと見込んだほか、ソシエテ・ジェネラルとナショナル・オーストラリア銀行(NAB)はいずれも4月までにパリティが実現する可能性があると予測。ゴールドマン・サックスはユーロのパリティ到達を2017年に最も有望なトレードの1つに挙げた。

  NABの通貨戦略グローバル共同責任者、レイ・アトリル氏は「現時点から来年のフランス大統領選までにユーロがパリティを付ける可能性は否定のしようがなく、ドルが強含むという文脈でも捉えられる必要がある」と語った。イタリアについては「暫定政権が速やかに発足できるかどうかが今週の鍵になる。これが不可能な場合、銀行不安が一気に表面化し、ユーロの下げ圧力が強まる恐れがある」との見方を示した。
  みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは「レンツィ首相辞任のファーストリアクションはユーロ売り・円買いだが、重要なポイントはいつ解散・総選挙があるかだ」と指摘。3月からオランダ、さらにフランス、ドイツでも選挙が続く中、継続的にユーロを買いたいという話にはならないと述べた。
  唐鎌氏はユーロが来年1−3月に1.02ドルまで下落する可能性があるとしつつ、ユーロ圏債務危機の最中ですら実現しなかったことを考慮すればパリティに至る公算は小さいと予想。「フランスの大統領選挙、さらにドイツの総選挙で右翼が台頭し彼らが欧州連合(EU)から出ていくとなれば崩壊に至るかもしれないが、そこまでまだ言わなくていいだろう」と付け加えた。
原題:Euro Parity in Play for Traders as Italy Succumbs to Populism(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHPQMU6KLVRS01

 

 


ECB:11月の資産購入、過去最大の854億ユーロ−年末控え前倒し
Piotr Skolimowski
2016年12月6日 02:31 JST 
欧州中央銀行( ECB)の量的緩和(QE)プログラムに基づく11月の資産購入額はこれまでの最大を記録した。年末の流動性低下を見込んで前倒しで購入している。
  ECBが5日発表したデータによると、11月の総購入額は854億ユーロ(約10兆4620億円)となった。国債の購入額は701億ユーロと、10月の730億ユーロを下回ったものの、カバード債と資産担保証券(ABS)、社債の購入額が増えた。
  ECBは先月、11月29日から12月21日まで前倒し購入する方針を示した。12月22日から30日まで購入を休止する。
  ブルームバーグの調査によると、多くのエコノミストはECBが8日の政策委員会で現行月額800億ユーロの資産購入プログラムを6カ月間延長すると予想している。
原題:ECB Buys Record Amount of Debt as QE Frontloaded Before Holidays(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHQ0RE6JTSEH01


 

ユーロ圏:11月の経済活動、拡大ペース加速で年初来最高に−雇用増加
Carolynn Look
2016年12月5日 18:40 JST

ユーロ圏の製造業とサービス業を合わせた経 済活動の拡大ペースは11月に加速し、年初来最高の水準に達した。政治 をめぐる懸念があるものの、企業は雇用を進めた。
IHSマークイットが5日発表した11月のユーロ圏総合購買担当者 指数(PMI)改定値は53.9と、10月の53.3を上回った。速報値の54.1 から小幅に下方修正されたものの、11カ月ぶりの高水準となった。 PMIは50を上回れば活動拡大を、下回れば縮小を示す。
イタリアは4日の国民投票が政治の不安定を招くとの懸念が広がる 中ながら、経済活動は9カ月ぶりの高水準だった。
マークイットのチーフエコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は 「政治リスクを懸念するよりも、企業は事業拡大の準備を進めているよ うだ。雇用は過去5年間でも有数のペースで増えている」とし、「ユー ロ安が輸出に依存する製造業の伸びを後押ししている様子だ。サービス 業も堅調さを増しており、内需改善を示唆している」と語った。
11月のユーロ圏サービス業PMIは53.8と、10月の52.8から上昇し たが、速報値の54.1からは引き下げられた。
原題:Euro Area Gears for Growth as Companies Look Past Political Woes(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHPGFQ6S972Y01


 

 
イタリアの命運、ドラギ総裁にも影落とす−QEの軌道を左右も
Jeff Black
2016年12月5日 21:45 JST 更新日時 2016年12月6日 02:23 JST
 
イタリアの国民投票結果は市場やユーロ圏成長見通しに影響の可能性
ECBは今週、債券購入プログラムの行方を決定
 
イタリア国民の憲法改正拒否で計画が狂うのはレンツィ首相ばかりではない。
   欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁も、量的緩和(QE)プログラムの軌道を定める上で改憲否決とレンツィ首相の辞任という展開を考慮に入れなければならなくなった。
  国民投票結果は債券スプレッド拡大や成長見通し悪化などの影響をもたらす可能性があり、微妙に調整された金融政策のメカニズムを狂わせる恐れがある。
   ECB政策委員会はQEプログラムの調整や延長について8日に決定する。イタリアが改憲を可決し改革が加速する見通しとなれば、ユーロ圏の成長を持続させたいECBへの援護射撃となるところだったが、否決でECBが再び金融市場安定に乗り出さなければならない可能性も出てきた。
  ベレンベルグ銀行のチーフエコノミスト、ホルガー・シュミーディング氏は「政治システムを一新し政治の運営を合理化する絶好の機会をイタリアは逃した」とし、「不透明感の高まりでECBが8日に、月800億ユーロの資産購入プログラムをそのまま2017年3月より先まで延長する根拠が強まる」と話した。
   ECB報道官はコメントを控えた。ノボトニー・オーストリア中銀総裁は結論を急ぐことを戒め、「ECBはユーロ圏の1国ではなく全体のための金融政策を立案するのが仕事だ」とウィーンで述べた。イタリア国債利回りは投票結果を受けて上昇したが「懸念を誘う」水準ではないと語った。
  イタリア国民投票前のブルームバーグのエコノミスト調査では、8日にドラギ総裁が現行ペースでのQE延長を発表するとの予想が示された。大半のエコノミストは17年終盤にテーパリングを開始する余地が生じると見込んでいる。
原題:Renzi’s Italian Fate Also Overshadows Draghi’s Route for QE (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHPJU26S975O01

http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/598.html

[経世済民116] 正社員化でも報われない氷河期世代の無間地獄 50代で市場価値を倍増する心得  若者・バカ者・よそ者」が社会や企業を活性化
正社員化でも報われない氷河期世代の無間地獄

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学

見捨てたツケは、全世代で払うことになりかねない
2016年12月6日(火)
河合 薫

「差はどうやっても縮まらない。結局、正社員と非正規って、"身分格差"だったってことがよくわかりました」

 こう嘆くのは昨年、非正規から正社員になった40歳の女性社員だ。

 彼女は就職氷河期世代のいわゆる「やむなく非正規」。契約が途切れる度に転職を繰り返し、今の会社でやっと「正社員」への切符を得た。

 ところが、“正社員並み”になったのは労働時間だけで、期待したような仕事を任されることもなければ、賃金格差が解消されることもなかったという。

 先月、厚生労働省は、就職氷河期世代の人たちを正社員として雇った企業に対する助成制度を2017年度からスタートさせると発表した。

 氷河期世代は、1990年代後半から2000年代前半に就職活動を行った現在35歳〜44歳の人が該当する。35歳〜44歳の非正規雇用者は393万人で、25歳〜34歳(290万人)、45歳〜54歳(387万人)よりも多い(労働力調査 2015年)。また、中年フリーターと呼ばれる35歳〜54歳の非正規雇用者(女性は既婚者を除く)の増加も問題となっている。

 35〜44歳の正社員比率は4〜6月期が70.5%で、第2次安倍内閣が発足した直後の13年1〜3月期に比べ0.7ポイント低い。一方、15〜24歳の正社員比率は56.0%だが、同じ期間に6ポイント改善しており、厚労省はデフレ脱却には氷河期世代のテコ入れが欠かせないと判断した(日本経済新聞「氷河期世代を正社員に 厚労省、非正規転換に助成金」)。

 助成制度は「過去10年間で5回以上の失業や転職を経験した35歳以上」で、現在無職の人や非正規社員を正社員として採用した企業に対し、中小企業で1人当たり年間60万円、大企業で同50万円支給するというもの。また、求職者が高い意識で就職活動に臨めるように、ハローワークなどにおける就職促進セミナーにも力を入れるそうだ。

 そういえば先日、「ハロートレ—ニング〜急がば学べ〜」と書いたボードを作詞家の秋元康さんがビミョーな笑顔で持っている姿が公開されたけど、これも支援策の一環なのだろうか。

 「ハロートレ—ニング=公的職業訓練」は失業している求職者らを対象に実施しているもので、建設、製造、IT、介護など幅広い分野を網羅している。全国の職業能力開発校などで年約30万人が受講。しかしながら、厚労省の調査では名称や内容を知らない人が7割に上り愛称を募集。秋元さんはその選定委員長だった(1393件の応募あり)。

 「飽きられず、分かりやすい言葉で『ハロトレ』と呼ばれるだろう」(by 秋元康氏)。

 ハロプロのパクリ? ……。ふむ。何なんでしょうね、コレ。

 散々置き去りにされてきた“氷河期世代”に手を差し伸べるのも、せっかくの公的な支援を「是非、使ってね!」と認知度向上に取り組むのもいいけど……、現場との乖離というか、感動ポルノならぬ“非正規ポルノ”というか…。上滑り感アリアリで。現場の声に耳を傾ければ傾けるほど、「そこかい!」とツッコミたくなる。

「実際に正社員になったら、いろいろわかってしまったんです」

 氷河期世代の救済策も、当事者たちにヒアリングすると批判の方が多かった。

•数年後には“お荷物確定”である40代の正社員化を進める企業なんてない
•企業に助成金出して、それって賃金にちゃんと反映されるのか?
•その前に非正規の賃金を上げてくれ
•同一労働同一賃金のほうが先だろ etc、etc…。

 「やっと氷河期にスポットがあたった」と、評価する識者たちとは対照的だ。

 労働の二極化が進んでいる。そう。あらゆる面で確実に二極化が進んでいるのだ。

 おそらく「正社員」の人たちには、壁の向こうは“別世界”。興味もなければ、本気でどうにかしようという気もさらさらないのかもしれない。

 でもね、これって大きな問題なのですよ。単なる雇用問題ではなく、社会問題。なので今回は、「越えられない壁」について、アレコレ考えます。

「私たちのときは、とにかく就職先がなかった。特に大卒の女性を正社員で採用する企業は、ほとんどなくて。それでも当時は、とりあえず非正規でも入ってしまえば、いずれ正社員になれると言われていたんです。

でも、リーマンショックですべて飛びました。正社員化は遠のくばかりだった。

今の会社は3つ目です。契約で採用した後、正社員に転換できる道があるというので、入社当初から少しでも自分のスキルを上げようと努力してきました。

ところが、上司が正社員の候補として推薦するのは30歳前後の若い社員ばかり。私は事務職ですが、少し上の40代の営業職の方も同じでした。営業成績が良くても若い人に先を越されてました。

そもそも正社員になれる絶対数自体も少ないし、入社前に聞いていた話とはずいぶん違うなぁ、って感じでした。大企業だから期待していたんですけど、ね。

それでも40を過ぎると絶対に正社員にはなれないと聞いていたので、諦めずに正社員試験を受け続けました。昨年の人事異動で上司が変わり。新しい上司は性別や年齢で差別する人じゃなかったので、私は滑り込みセーフでどうにか正社員になれました。

正社員になって、賃金は多少上がりました。期待したほどではなかったけど。ただ、今までのように契約が切れた後の心配をしなくていいので、精神的にはかなり落ち着きました。

でも、実際に正社員になったら、いろいろなことがわかってきてしまったんです」

「正社員と非正規は、一生ついて回る“身分格差”」

 彼女はこう続けた。

「なんと、同じ年代でも、最初から正社員の人の方が賃金がずっといい。私の賃金は10歳も年下の人たちと一緒でした。

しかも、最初から正社員じゃないと管理職になれない。賃金もこの先、上がる見込みがないこともわかりました。

今までは同じ仕事をしていても、契約だからって言われて。今は、「最初から正社員じゃないから」って言われる。

確かに、非正規の頃に比べればマシです。正社員になれただけいいじゃないか、っていう人もいます。でも、やっぱり納得できない。

今までは雇用形態の違いだから仕方ないって、諦めることができた。

たまたま自分が大学を出たときの時代が悪かっただけだって、今までは自分を納得させていました。でも、この歳になるとそういう風に思うのも難しくて。

結局、正社員と非正規の差はどうやっても縮まらないんです。

要するに、正社員と非正規って、一生ついて回る“身分格差”なんですよ。悔しいです。なんかしんどいです」

 以上が、冒頭で触れた彼女が語ってくれた詳細である。

 女性の指摘するように、正社員に転換後の待遇が必ずしも転換前に比べて改善されていないケースが存在することは、これまでにもいくつかの調査で報告されている。

・3〜4割の人は正社員転換後も賃金が変わらず、収入が減ったケースも2割ほどある(「正社員になった非正社員」玄田有史 /日本労働研究雑誌)

・最初から正社員の人に比べ、賃金や昇進などで格差が生じる(「正社員転換のその後」李青雅 /労働政策研究報告書)

 また、同じ企業内で正社員に内部転換した人より、転職で「正社員」になる人のほうが賃金が高くなる場合が多いのだが、そこにはトリックがあることがわかっている。

 内部転換の道が用意されていない企業の非正規の賃金は、相対的に低く設定されているケースが多いのだ。

「経験がないから仕方がない」と見放す企業

 なぜ、元非正規は正社員になっても、正社員並みにならないのか?件の女性は上司にそれを聞いた。すると、

「経験がないから仕方がない」

と言われたそうだ。

 私も個人的に知っている人事部の方やトップに、“正社員間格差”について聞いたところ、答えは一緒だった。

「たとえ社会人経験が同年であっても、新卒で正社員として入った人には、企業はポイントポイントで教育を行っている。その分、どうしたって差が生じる」と。

 若い人たちを優先して正社員にするのも、それが理由だと指摘するトップもいた。

 そもそも下のグラフを見ればわかるとおり、正社員の賃金カーブが山型であるのに対し、非正規は平型なため、40代の正社員化は企業にとっても負担となる。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/120200081/graph1.png

(出所:厚生労働省資料)
 一方、現在、政府の基本的なスタンスは、あくまで「正社員化を進める」ことにある。今年1月に発表された「正社員転換・待遇改善実現プラン(5カ年計画)」の中では、「正社員転換・待遇改善実現プラン」として、2016年度から20年度までに達成すべき数値目標を、以下のように設定している。


・不本意非正規労働者の割合(全体平均)を10%以下(2014年平均18.1%)
・若年層(25−34歳)の不本意非正規の割合を現状(2014年平均28.4%)から半減 ・派遣社員・契約社員の不本意非正規の割合を現状(2014年平均派遣社員41.8%、契約社員34.4%)から半減

 数値目標はすべて「正社員化」に関するもので、賃金への言及はない。

 ただ、これはこれで評価すべきこと。

 何度もこのコラムでも指摘しているとおり、「今日と同じ明日がある」という感覚は人の生きる力の土台だ。「会社のルールに違反しない限り、解雇されない」という職務保証があるからこそ、安心して頑張ることができるし、落ち着いて踏ん張ることができる。

 なので、政府が進めようとしている方向性自体はまちがってはいない。うん、間違っていない。

 問題はそこに見え隠れする、“抜け穴”や“からくり”である。

 2018年4月からこの5カ年計画に深く関連する「雇用期間が通算で5年を超えた有期契約労働者を無期契約に転換する制度(2013年4月1日以降に開始された労働契約に適用)」の適用が始まるわけだが、無期雇用に転換しても処遇など労働条件は有期と同じでもいいとされているのだ。

 もし、「正社員じゃない期間」が賃金差の理由になるなら、無期転換だって5年より3年のほうが働く人たちの希望にそったものだし、極論をいえば1年でもいい。でも、そんなルールは適用されない。

 正社員化とセットで処遇改善を政府主導で強引に進めようものなら、経団連から大反発を受けるに決まっている。そりゃあ、そうですよね。企業には非正規雇用する“ワケ”があり、「逃げ道を塞ぐのはやめてよ!」と企業トップが悲鳴をあげるのだ。

氷河期世代軽視のツケが、全世代に及ぶ

 11月29日に行われた「働き方改革実現会議」でも、安倍首相が非正規労働者について「賃金はもちろん、福利厚生、教育、研修の機会にも恵まれていない」とし、採用形態にとどまらず処遇全般の格差是正を取り扱う方針を示したのに対し、経団連の榊原定征会長は慎重な姿勢で応じた。

「賃金、賞与、手当は各企業の労使間で相当時間をかけて決めている。こうした賃金体系は企業の競争力の源泉になっている。日本型の雇用慣行を尊重してほしい」

 企業にとって、40代以上はお荷物予備軍。国にとってもこれからの日本を背負う若年層(25−34歳)の方が大切な存在となる。

 つまり、国も、企業も、氷河期世代を見捨てたのだ。

 非正規雇用者の場合、正社員と比較して社会保険の加入率が著しく低い。つまり、無年金者になる可能性が高い。

 また、健康診断を受ける割合が低く、懐事情から病院受診を控える傾向もあるため、将来、その医療費が財政的な問題になる恐れもある。労働政策研究・研修機構が行った調査では、「過去にお金がなくて病院にいくのを我慢したことがあった」人が、15.9%もいることがわかっている(「壮年非正規労働者の仕事と生活に関する研究」より)。

 結局のところ、氷河期世代をないがしろにするツケが、この先回ってくる可能性が高いってこと。単なる雇用形態の違いが、社会保障を脅かす問題になる。“壁”の向こうの話ではない。実は我が事として考えるべき問題なのだ。

 世の中には、ひとりひとりの努力ではどうにもならないことがある。氷河期世代の非正規問題は、その格好の事例として、今回改めて取り上げました。

 長時間労働を強いる企業だけが、ブラックじゃない。正社員と非正規の格差、元非正規正社員とプロパー正社員との格差……。それらを縮めていくのも企業の責任。そして、当然ながら非正規社員を「正社員になれなった人」だの、「非正規のくせに」などと"身分格差"を助長するようなまなざしを持っているとしたら……。それも、見えない大きな壁になっていることを忘れないでください。

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このコラムについて

河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/120200081/?50代で市場価値を倍増する「5つの心得」

元外資系オヤジ直伝!「グローバル人財のつくり方」

なぜあなたは自分を過小評価するのか?
2016年12月6日(火)
岡村 進
「自分には市場価値なんてないよ」

 次世代人財育成会社を経営する私は、50代のビジネスパースンを対象に研修を行う機会が少なからずある。今の50代はまさに1980年代の日本のバブル経済を垣間見た経験のある、残り少ない現役世代だ。研修で私が「みなさんはご自身の市場価値をどう考えますか?」と聞くと、「自分には市場価値なんてないよ」と自虐的に回答する人が多い。


50代のビジネスパーソンに「みなさんはご自身の市場価値をどう考えますか?」と聞いてみると、「自分には市場価値なんてないよ」と自虐的に回答する人が多い。しかし、市場価値がないわけないじゃないですか。
 一昔前なら私も、「そうだよねー。我々世代はそんな風に育てられてないもんね。若い頃から『歌って踊れるビジネスパースンになれ』と言われてきただけだから。私も同じ!」と心の中で答えただろう。

 しかし、外資系企業の社長を経て、今や零細を通り越して微小(だが誇りでもある!)企業を経営する立場から、これまで経験したことを振り返って言わせてもらえば、「いやいや、そんなことはないでしょう。市場価値がないわけないじゃないですか」と即座に否定する。

 だって、一年間の勤務日数を仮に240日として、一日8時間(実際にはもっと多いでしょうが…)、大学卒業から50歳まで28年間働いてきたと仮定しましょう。いったいどれだけ仕事と向き合ってきたことか。

 合計勤務時間は、8時間×240日×28年間=5万3760時間と、天文学的な数字になる。これだけの時間、仕事をして、逆に手に職がつかないようにする方が、むしろ難しいのではないか。何かしら自分の得意分野は、できてしまうものだ。

“濃縮果汁”のように経験の密度が濃い世代

 しかも、今、50代くらいになっているこの世代は、現代の若手とは違って“濃縮果汁”のように経験の密度が濃いのだ。

 先日、自分の運営している学校に講師としてきてくださった60代の方が、「バブル時代の経験を伝えるのが、自分の責務だ」とおっしゃっていたことに、まったく賛同する。我々は、失敗事例とその原因を並べ立てて単に教訓を伝えたいだけじゃない。同時に、日本人がみな、明るく楽しく勢いよく仕事をしていたことを若い人たちに伝えたいし、年配世代には思い出させたいのだ。そこから若手も年配者も、どうやって自身の市場価値を高めていけばよいかヒントが出てくるから。

入社わずか3カ月で数千万円の貸し付けを審査

 少しだけ生き生きしていた当時のことを披露したい。

 高度経済成長期は、とにかく仕事がたくさんあった。私など入社わずか3カ月で数千万円の貸し付けの審査に一人で出向かされたものだ。申し訳ないが、つい数カ月前まではジーパンをはいて気楽にキャンパスを闊歩していた、あほ学生だ。それが4カ月後には経営者と向き合って丁々発止…などできるわけはもちろんない!

 こちらは、見てはいけないと言われた「質問リスト」をちらちら見ながら、必死に事前に用意した質問をする。先方は、お金を借りたいから真摯に質問に答えてくれる。しかしある時、年配の経営者が「おれはこんなに若い人間に審査されるのか…」とつぶやいたときに、申し訳なさのあまり土下座したくなったのが正直なところだ。

 それからは、格好つけずに相手の懐に飛び込む質問スタイルに変えるよう努力した。所詮、若造は若造…若造らしいやり方があるはずだと気づいたのだ。

 上司に、「テレビを漠然と見るなよ!」と叱られたのもヒントになった。アナウンサーをよく見てみろ。聞かれている側がとても話しやすそうにしている人と、そうでない人とに分かれるだろう。どう聞いたら相手が本音を語ってくれるのか、ヒントを探れというメッセージだった。


入社わずか3カ月で数千万円の貸し付けの審査に一人で出向かされたこともある。冷や汗ものだったが、任せてもらったからこそできるようになったことは多い。
任せてもらったから、できるようになった

 昔は現場研修を総合職全員に課す会社が多かった。私は素晴らしいと思う。私が保険会社に勤めていたときを例に挙げれば、内勤の総合職2名がひと組になって行う保険の販売実習を経験した。そのとき実習の成績がビリになって、正直かなり気持ちがへこんだことがあったが、そのあと、新人の営業職員に同行して販売指導する研修ではかなり実績をあげた。年配ではあったが保険業界では新人だった営業職員の頑張りを応援したい!という気持ちが強かったためだ。

 現場研修を通じて若手が、悔しい、へこむ、なにくそ、と思う、人と共に喜ぶ、しつこくチャレンジする…という失敗と成功の経験を重ねる仕組みが当時にはあった。それ以上に、その成長を暖かく見守る余裕や懐の深さが、当時の会社や上司にはあった。

 数え上げればきりがない、今から思えば本当にありがたい実戦経験の数々。国にも企業にも余裕があった。勢いもあった。成長していた。だから、極端な人手不足の下、若手、さらに若手へと責任を委譲していった。我々はこうして育ててもらったのだ。頭が良いからできたのではなく、任せてもらったからできるようになったのだ。

腹をくくらないと乗り切れない壁もあった

 上司は上司で、先日発売され話題となっている『住友銀行秘史』(私はサラリーマンとしては、こうした内実をつぶさに書籍に書くことを受け容れられずにいるが…)にも描かれているような、結構ぎりぎりの決断を迫られていた時代でもあった。モーレツサラリーマンとして腹のくくりがないと乗り切れない壁も多かったはずだ。

 さて、言っても詮ないこのような昔話をなぜ今さら書くのか? それは、当時と比べれば、“逆回転”したような今の環境では、人がとても育ちにくいことを明確にしたいからだ。この記事を読むような方々には目新しい話ではないだろう。でも研修で同じ話を若手にすれば、みな興味津々で聞いているから面白い。

 「皆さんは普通に生きていたら育ちませんよ! アジア人の若手との競争に負けますよ」…そのことだけでも良いから、本音の現状認識を若い人たちに伝えてあげる意味は大きい。さもないと、鍛える場をもらえずにいる若手は「我々は大丈夫かも?!」と誤解してしまうからだ。せめて、先を考え、深く悩むきっかけぐらいは与えたいと思う。それが、現在の長期デフレ&コンプライアンス呪縛に縛られたビジネスパースンの解放への一歩となるのではないか。

50代へ本音の応援歌を送りたい

 若手へのメッセージはこの辺で端折らせてもらうとして、本日は表題にある通り、50代のシニアへ本音の応援歌を送りたい。

 私は今まで日本および世界の大企業に勤めてきて、52歳で起業した。お金に余裕があって道楽で始めた…わけではない。お金もまだしばらく稼ぐ必要がある。ただし、金融業界でお金にまみれて生きてきたから、死ぬときに「少しは次世代の役に立ったと思いたい!」という自己実現欲求の方が上回る年齢になってきた、それだけのことだ。

 さて、「次世代に生き生きと活躍する人財を作りたい!」と高い理念を掲げたところで、起業にあたって最初に考えなければいけないのは、どろどろの現実だ。まずはオフィスを借りて机をそろえること。それまでは、図書館や公園に通うしかない…。

 いろいろ頑張って、少しビジネスが育ってくると、次に「せめて備品の購入や会計は人に任せたい!」などという欲が出てくる。余談だが、こうした会社の立ち上げ期から働いてくれた社員が、見るに見かねてか、自ら仕事のカバー範囲を広げて会社を支えてくれるようになるのは本当にありがたい。最大の喜びだ。いつかはその気持ちにこたえたいと、自身の励みにもなる。

 さらにもう少し会社が成長すると、「運営をともに行うパートナーを採りたい」などというニーズも生じてくる。そこで突き当たる壁が、誰が微小(笑)企業に勤めに来てくれるか?という難題だ。


50代のシニアへ本音の応援歌を送りたい。
お世辞で言っているわけではない

 そんなプロセスを経て、昔、出会ったビジネスパースンを思い出したり、伝統的大企業で今、50代を迎えた人に研修で向き合ったりしていると、私には誰も彼もが有能人財に映るのだ。

 なんせ、かつて修羅場をくぐってきているから腹が座っているし、組織の力学も見えているから無駄な戦いは避けるし、そこそこの知り合いがいるので調査力も高いし…いちいち良いことづくめなのだ。

 別にお世辞で「市場価値がある!」と言っているわけではなく、本当に必要なのだ。その手を借りたいのだ。うまくっていているスタートアップ企業は雰囲気も明るいし、経験を持った年配者に、本音では頼りたいと思っているためやりがいもある。運よく株でも少し持たせてもらえば、それなりの資産を手に入れる夢もある。

 さてここまで来て、やっと本日の本題となるが、そんな人財ニーズがありながらなぜ流動化が進まないのか? もちろんいろいろな要因があるが、ここでは50代の隠れたポテンシャル発揮を妨げている理由──逆の立場から言えば、ここだけちょっと意識と行動を変えれば、もう今から第二の人生引っ張りだこですよ!というポイントを記してみたい。小さな習慣を少し変えるだけで、ご自身が、定年まで待てずにチャレンジしたくなるかもしれない。


【市場価値倍増の心得 五箇条】

 私が今、大企業にいたとしたら、先々に備えて自分に課していたであろう「市場価値倍増の心得 五箇条」を紹介したい。

【その1】 世代や考えの異なる友人を、毎年3名ずつ増やす

 例えばだが、@20歳以上年下の社外の仲間、A起業家、B(在日)外国人の友人──を毎年1名ずつ増やすと決める。

 自分がまさにそうだが、年配者は放っておけば、自分が正しいと思って視野が狭くなりがちだ。全く異なる世界の人と友人になるためには、年老いてなおかつ自己否定できる頭の柔軟性と心の鮮度の維持が不可欠になる。そういう努力を続けるオヤジが過去を語れば、若手も耳を傾ける。さもないと煙たがられる。

 ■「柔軟性維持装置の重要性」
 ──自分の本能と戦うことで、人はいつまでも成長できる


【その2】 「大会社」ゆえに許される贅沢に慣れない

 例えば、会社の特権の利用は70%までに控えるようにする。具体的には、極力、車(タクシー)に乗らず電車で移動する、ホテル宿泊内規で認められる基準より一つ下のクラスに泊まる、飛行機ならエコノミークラスに乗る、顧客の接待は基準上限の価格の高い場所を選ばず、そのぶん知恵を絞る。たまには個人の金で人とつきあう。

 他人の金なら上限まで使うという姿勢は急には直らない。そもそも下品である。金はとても重要、でも金でできることには限界もある。代わりに脳みそに汗をかかせる! それが日本の美徳ではないか。

 ■「儲けあってこそ使える金」
 ──まずは節約、そのうち、金使いが上手になる。


【その3】 会計を学ぶ

 飲んだくれながらでも、バブル時代の経験を語れば、若手には教訓となる。そこに、多少の数字を交えると、知的に見えてさらに説得力が増す。

 私は目的なき資格に意味はなしと考える。ただ、簿記3級だけは年老いても是非取ることをおすすめしたい。決算帳簿が読めるようになると、金の出し入れへの感受性が高まる。年配者はビジネス勘はあるので、その経験に数字で後講釈をつける力を得られる。

 レストランでも、パチンコ屋でも、製造の現場でも、金融でも…すべての商売は、単価と回転率や稼働率などに分解して考えるとわかりやすい。経験に会計を通じて養われる数字勘が備われば、鬼に金棒だ。

 ■「とにかく会計を学ぶ」
 ──会計知識は、経験知を大きく見せる。言葉の説得力を増す。


【その4】 自分の手を動かす

 若手の仕事を奪うな!という視点はさておき、いつまでも自らの手を動かす意識は大事だ。

 起業した後、たかだかプリンターの設定に数時間かかった時に、愕然とした。昔はプログラミングもどきの作業もしていたのに! 今の時代、せめて人並みに技術の発展に追いついておかないと、思考能力にも影響が出るから要注意だ。

 大げさな話ではなく、まずは「ワード」「エクセル」「パワーポイント」などの資料を自分で作る。しかも文字だけがパンパンに詰まっているようなものではなく、少しイラストやグラフなどを入れて分かりやすいものを自分で作っていれば、なお良し。自身の手を動かして分析し、それを分かりやすく表現し続ければ、思考能力は後退しない。経験をうまく伝える努力は、自分の思考力をも高める。

 ■「自分の内面の劣化を見逃さない」
 ──手を動かし続ければ、頭も回転する。


【その5】 自身の経歴書を毎年書く

 自身の市場価値。ないと思えば、なくなる。ある!と思えば、瞬時に高まる。

 繰り返しになるが、大企業という大きなフィールドで戦ってきた経験は、普通では手に入れられない貴重なものなのだ。そこに方向を定めたスキルや知識の向上の思いが加われば、さらに価値を増す。

 まずは、自身の経歴書(実績、能力・スキルを含む)をA4サイズで最低3ページ以上書いてみる。その時に、過去に働いてきた歴史を一貫して語れるよう、一つの自己アピール・ストーリーを作ることが大事。そして、毎年更新、適宜変更する。それが、定期的に自分の価値を高めるストーリーを見直し、さらに価値を向上させてくれるテーマを探し出すきっかけとなる。

 蛇足だが、日本のビジネスパースンは経験している分野の幅が広いので、例えば第2の人生のキャリアを、X、Y、Zと3つ想定して、それぞれに応じた経歴書を3つ書いてみると、さらにいろいろな発見があるはずだ。実は人生の選択の幅は広いのだ。

 ■「自分には市場価値がある」
 ──生煮えの謙虚さで自身を高い挑戦から逃がさない(私の自戒)。


スタートアップ企業で周りに頼られるという生き方

 外国の友人がいつも言う。「なぜ日本人は自分を過小評価するのか?」と。

 「市場価値を倍増する」と、この原稿のタイトルにつけたが、これは今から倍増するという意味ではない。「すでに絶対に持っているご自身の価値を、埋もれさせずに、そのまま世の中に解き放ってあげてくださいね!」という、私の心からのお願いを込めたものです。

 大企業で部下に煙たがれるより、スタートアップ企業で周りに頼られる生き方を選びたい! 日本でそんな変化が生じるのは、もはや時間の問題だろう。人生の年輪を必要とする企業が世の中にはたくさんあることを、私は人財育成の仕事を通じ て、日頃目の当たりにしている。人生100年時代、50歳ならまだ道半ば。まだまだ成長の喜びを楽しみたい。

 “使えない50代”というのは、ついつい威張って、下をあごで使おうとする人たちのことだ。人生の努力の刈り取りに入るのが早すぎる人たち…。誰しもが自分はそういう人間ではないと思い込みがちだ。だからこそ、陥りやすいワナに気づく仕組みを作って、自らに課せばよい。それだけで、もともと価値のあるスキルや能力は放っておいても自然な輝きを増す。そして人を魅きつけるのだ。


このコラムについて

元外資系オヤジ直伝!「グローバル人財のつくり方」
 日本経済を取り巻く環境がますます厳しくなる中で、今後のグローバル競争の時代を生きていくビジネスパーソンはどのようにキャリアを重ねて行ったらよいのだろう──。
 この連載では、日本の生命保険会社に20年勤務した後、外資系金融会社の日本法人トップも務め、日本企業と外資系企業の双方の良さを知る筆者、岡村進氏が「グローバル“人財”に必要な資質とは何か」「グローバル時代の働き方」「外資系企業の強さはどこにあるのか」といったテーマについて毎回、熱く語っていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071900056/120300004/


 
これまでの常識が覆された2016年

上野泰也のエコノミック・ソナー

「若者・バカ者・よそ者」が社会や企業を活性化する
2016年12月6日(火)
上野 泰也

米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利をおさめた後、勝利を喜ぶトランプ氏支持の若い女性。掲げたカードや帽子には「MAKE AMERICA GREAT AGAIN!(偉大なアメリカを取り戻す)」の文字。(写真:ロイター/アフロ)
「クォリティー・ペーパー」はもう信用しない

 今年も残りあと1カ月を切るところまで来たわけだが、2016年という年はこれまでの常識が覆される年になったと痛感している。マーケットに身を置くエコノミストとして26年以上も働き続けてきた筆者にとり、英国民投票でのEU離脱派勝利や米大統領選挙でのトランプ候補当選は、実に衝撃的だった。

 事前の予想が外れてしまったことよりもはるかにショックだったのは、世論調査の結果があてにならなかったこと、そして、今の米国では国民のかなり多くが、「ワシントンポスト」や「ニューヨークタイムズ」といった質が高いとされてきた新聞(クォリティー・ペーパー)を含め、既存の大手メディアによる報道を信用していないという事実が露呈したことである。

本当の考えを把握するのが難しくなった

 世論調査による実態に即した人々の意見の吸い上げが、スマートフォン・携帯電話の普及により、技術的に困難になっている面がある。さらに、「隠れトランプ支持派」は「人前でトランプ支持だと言うのが恥ずかしい」といった理由から、世論調査では本当の自分の意見を言わなかったのだという。

 既存メディアを信用していない人々の中には、そうしたメディアが実施する世論調査への回答を拒否したケースもあっただろう。そうなると当然、世論調査の結果にはバイアスが生じる(なお、例外的に「ロサンゼルスタイムズ」と南カリフォルニア大学の合同調査だけは、それらの難点を克服してトランプ候補の優位を予測し続けたという)。

 トランプ氏は上記のような状況変化を適切に読み取って、自らに批判的な既存メディアの報道内容・報道姿勢を攻撃し続けた。そして、そうしたメディアが実施した世論調査で自分に不利な数字が出続けても、いっこうに意に介さなかった。

 これに対し、敗れたクリントン氏は、州ごとの選挙人獲得予想数を含む情勢調査で自らが有利であることをそのまま信用して行動した。選挙戦終盤で民主党上院議員の応援にも力を注ぐなど、陣営の戦略にも緩みが出てしまった。

SNSで共有されたデマ情報

 若年層を中心に情報源として依存するのはSNS経由のニュース配信だが、それらの中には排外主義・保護主義的なムードを煽るものが混じっていたほか、「ローマ法王がトランプ候補支持を表明した」といった類の偽情報もあったことが明らかになっている。

 経済・マーケットに大きく影響する重要な政治イベントの結果を予想する際に手掛かりにしてきた世論調査の数字が以前のようには信用できなくなってしまったという現実に直面して、筆者は大いに困惑している。来年はヨーロッパでフランスの大統領選挙やドイツの連邦議会選挙など、重要イベントが数多い。結果がどう転ぶかわからないという不安心理を従来よりも大きな度合いで抱えつつ、それらのイベントと向き合わざるを得ない。

トランプ氏勝利「良かった」、10〜20代日本人男性で約4割

 最近の流行り言葉で言えば「不確実性が高くなった」ということである。来年5月7日に決選投票が実施されるフランスの大統領選挙では、極右・国民戦線(FN)のルペン氏が勝利する可能性も排除できないと、筆者は警戒的にみている。

 日本では今のところ、全国紙やテレビネットワークといった既存メディアの信用度は、ほとんど落ちていないようである。だが、将来はどうなるかわからない。少なくとも、筆者は自信を持てなくなりつつある。

 産経新聞・FNNが11月12〜13日に実施した世論調査によると、米大統領選でのトランプ氏勝利が良かったと思うという回答が、10・20代男性で38.9%、30代男性で29.3%に達した。

日本でも若者のマスコミ不信が強まるか

 日本の有権者の年齢構成が中高年層に傾斜していく中で、政治の「シルバーポリティクス」化を嫌う人々(自分たちは損をすると考えている若い世代など)から、一種の破局シナリオを望む声が聞かれることもある。すなわち、このまま漫然と赤字財政を続け、社会保障の延命措置を講じても、人口減・少子高齢化が着実に進む中では、遅かれ早かれ行き詰まるのは目に見えている。それなら、日本の財政は破綻に至るのが避けられないと率直に認めた上で、公的部門の大幅カットなどを一気に進めるべきだとする主張である。戦後日本が「焼け野原」から急速な復興を遂げたことも、そこではイメージされているのかもしれない。

 米国の場合、グローバル化で不利な立場に置かれた人々の不満の蓄積が、状況変化の原動力になった。日本の場合、世代間対立を起点に、既存マスコミへの不信感が若年層を中心に強まる可能性がある。そうしたことも、今のうちからしっかり考えておくべきだろう。

「若者・バカ者・よそ者」というキーワード

 話は変わるが、「これまでの常識を覆す」というコンセプトはむろん、日本経済の将来像を明るくする方向の前向きな文脈でも当てはめて考えることができる。

 筆者が最近読んだある本から知り、いつも頭の中で意識するようになったのは、「若者・バカ者・よそ者」というコンセプトである。

 厳寒・積雪のため冬に練習しにくいハンディキャップがある上、夏の猛暑にも選手が慣れておらず、夏の甲子園で優勝経験がなかった、北海道の高校野球。ところが、香田誉士史監督(当時)に率いられた駒大苫小牧高校は、2004年・2005年に夏の大会連覇を達成し、次の年も早稲田実業との延長15回引き分け再試合という激闘の末に敗れたものの、準優勝。夏3連覇にあと一歩まで迫った。このエピソードをテーマにした中村計氏のノンフィクション「勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇」を筆者が読んだ際、次の文章に目が止まった。

「新しい血」が必要だ

 「町おこしに必要なのは、若者と、バカ者と、よそ者の三者だとよく言われる。体力に自信があり、動ける若者。ともすれば非常識にも映るが、誰も思いつかないような発想をするバカ者。そして、まだその土地の価値観に染まっていない、客観的な目を持ったよそ者。香田は、その三役を一人でこなしていたのだと言える」

 町おこしには「若者・バカ者・よそ者」の3つが必要というのは、実に説得力のあるコンセプトであり、個別企業の活性化や、日本経済全体の先行きを明るくする方法にも直結するのではないかと、すぐに筆者は考えた。

 企業トップが活性化を志向する際に、「若者・バカ者・よそ者」の3要素はポジティブだろう。若い新入社員が入ってこなければ、会社組織内の雰囲気はどうしても沈滞しがちである。「新しい血」が入らないまま何年も経過していくと、社員の年齢構成のバランスが崩れて、将来的には業務運営上のさまざまな差し障りも出てきかねない。

「バカ者」の存在を許容できるかどうか

 「バカ者」の存在を許容するかどうかは、企業風土とも関係してくるため常にイエスではないだろうが、常識的でおとなしい人材だけを集めているようだと、斬新な発想は出てきにくい。そして、「よそ者」を取り込む(外部の人材を登用する)ことは、すでに述べた組織活性化の面でも、斬新な発想に基づく新たな展開を模索する上でも、有益な場合が少なくないだろう。

 また、人口減・少子高齢化による長期縮小の道筋をたどっている日本経済全体にとっても、この3要素に注目して必要な政策を展開することが、非常に重要だと考えられる。

 おカネとインフラ整備の両面において少子化対策を格段に強化して「若者」を増やすことは、将来の潜在成長力の引き上げに寄与するとともに、社会保障制度を含む財政バランスの改善に着実につながってくる。

 既存の枠組みにあまりとらわれずに新たな発想をすることのできる「バカ者」を増やすには、知識詰め込み優先の画一的な教育制度や「お受験」社会を見直し、個人の考える力や特性をできるだけ伸ばそうとする教育を行うことにより、行政がその前提となる条件を整備する必要があるだろう。

日本経済の「地盤沈下」を食い止めるために

 「人口が減っても日本経済は大丈夫」という立論をする人の多くは「生産性の向上」という、具体性に欠けた、漠然としたコンセプトに期待を寄せているようである。政策サイドがそうした考え方をすることの適否はともかく、「バカ者」の発想を必要に応じて取り入れた方が生産性は伸びやすいという点には、異論はおそらく出てこないだろう。

 そして、「よそ者」、すなわち観光客や技能労働実習のような一時的な滞在者だけでなく、長期滞在者(要するに移民)を含む海外からの人材の積極的な受け入れが、日本経済の「地盤沈下」を食い止めるためにどうしても必要不可欠だというのが、筆者の持論である。

「反グローバル化のうねり」の行方

 2017年は、米国のトランプ次期大統領の政策運営が実際にはどのようなものになるか、そしてトランプ氏当選が象徴する「反グローバル化のうねり」が欧州の一連の政治イベントにどこまで影響を及ぼすのかが、大きな注目点になる。

 そして日本では、人口減・少子高齢化というクライマックスのない慢性的な危機の進行に対し、政府あるいは個々の企業が、「若者・バカ者・よそ者」の活用も試みながらどのような対策あるいは生き残り策を展開していくのかが、隠れてはいるが重要な焦点になる。


このコラムについて

上野泰也のエコノミック・ソナー
景気の流れが今後、どう変わっていくのか?先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか?著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/120200071/

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/422.html

[国際16] イタリア国民投票は「No」、かすむEUの未来 格差広げるトランプ流ポピュリズム政策 岡部直明「主役なき世界」を読む
イタリア国民投票は「No」、かすむEUの未来

ニュースを斬る

2016年12月6日(火)
蛯谷 敏

イタリアで実施された憲法改正を巡る国民投票の結果は「NO」。敗北を認めた会見で、マッテオ・レンツィ首相は辞任する意向を表明した。(ロイター/アフロ)
 憲法改正は「NO」――。12月4日、世界が注目したイタリアの国民投票は、拍子抜けするほど早く勝負がついた。

 イタリアのマッテオ・レンツィ首相が進退をかけて問うた憲法改正の是非は、投票締め切り直後の世論調査で、「賛成」が42〜46%、「反対」が54〜58%となり、否決が優勢であることが明らかになった。それからまもなくの5日午前0時過ぎ(現地時間)、記者会見を開いたレンツィ首相は「反対派の勝利は明白。責任はすべて私にある」と敗北を宣言した。

 同首相は5日の午後にセルジオ・マッタレラ大統領に会い、辞任の意向を伝える方針だ。最終的な投票結果は賛成40.89%、反対59.11%、投票率は65.47%だった。

 結果は、レンツィ首相の苦戦が伝えられていた事前の世論調査通りとなった。予想通りとは言え、世界の金融市場に与えるショックは大きい。締め切り直後の「否決優勢」の世論調査を受け、通貨ユーロは1ユーロ=1.067ドル台から1.056台に急落。5日、アジアや欧米の株式市場にも余波が広がった。

政治停滞の“元凶”を解消するはずだったが

 そもそも、イタリアのこの国民投票は、国内の政治改革の一環として、実施されたもの。本来なら、世界の株式市場を揺さぶるほどの影響を与えるはずではなかった。

 レンツィ首相が求めたのは、端的に言えば、議会が法案を審議するスピードを上げることだった。イタリアでは、第2次世界大戦後の1948年に施行した憲法によって、上院と下院が完全に対等な力を持っている。

 ファシスト政権を生んだ戦時の反省から、政党の暴走を抑止するために設計された仕組みだ。一方で、法案の審議に時間がかかり過ぎることが欠点とされてきた。これが、政策運営を進めにくくしている構造的な要因だと、レンツィ首相は考えてきた。

 そこで、レンツィ首相は、現在よりも上院の権限を大幅に縮小する一方で下院の力を高める仕組みを構築しようと取り組んできた。

 2015年にまず、下院の新選挙法を施行。これは、下院の選挙で最も多い票を得た政党に大きな権限を与える制度だ。第1党は、全630議席のうち54%にあたる340議席を自動的に獲得できる。第1党となれば、議席の過半数を握れるため政策を進めやすくなる。

 そして、上院の権限を縮小すべく憲法改正を問うたのが、今回の国民投票だった。具体的には、(1)上院の議席を現在の315から100に削減する、(2)上院の議員は選挙で選ぶのではなく、地方自治体の代表などで構成する、(3)内閣不信任案を決議できるのは下院だけとする――など。議会は事実上の一院制となり、上院は、諮問機関的な役割を担うものに変更する。

 下院における第1党の力を強め、上院の権限を弱めることで、停滞する政策を一気に進める。これが、レンツィ首相の大きな構想だった。首相は憲法改正が実現した場合、法案成立のスピードは大幅にアップし、さらに年間5億ユーロ(約650億円)ほどのコスト削減が可能になると訴えていた。

国内問題から国際的な政治イシューに

 繰り返しになるが、国民投票はあくまでもイタリア政治が抱える積年の課題の解消を目指すものだった。ところが、ある発言によって、国内問題は、EU(欧州連合)の結束を占う国際的な政治イシューへと変貌してしまった。

 それは、レンツィ首相による「国民投票に自らの進退をかける」との発言だ。本来、政治改革の是非を問うはずだった投票は、「レンツィ政権発足後の2年間の成果に対する信任投票の意味合いを帯びてしまった」(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのロレンゾ・コドグノ客員教授)。

 しかし、レンツィ首相が就任から約2年の間に実施した政策に対する国民の評価は冷ややかだ。「あえて言えば、労働改革を進めたこと。しかし、これは前政権が取り組んでいた改革を引き継いだに過ぎない」と、JETROミラノ事務所の山内正史氏は言う。しかも、労働改革は解雇規制を緩和したもので、むしろ企業側に立った政策との批判もある。

 イタリア国民の多くは、レンツィ首相の政策によって景気が回復したという実感に乏しい。むしろ、中東やアフリカ地域からの移民が増え続けるなど、イタリアの課題を何も解決していないと考える人が多い。レンツィ首相がかつて市長を務めていたフィレンツェに住む30代の女性は、「彼は我々の生活を何も良くしていない。だから、国民投票にはノーを入れた」と述べていた。

 自ら踏み込んだ発言をしてしまった結果、自身の首を締める。レンツィ首相の行動は、英国のEU離脱決定を巡る責任を取って辞任した英デイビット・キャメロン前首相の姿にも重なる。

EUの結束力を占うイベントに

 このレンツィ首相の進退発言が、世界を大きな不安に陥れた。否決されて同首相が辞任した場合、イタリアで政治混乱を引き起こすのではないか、という懸念が広がったのである。

 タイミングも最悪だった。英国が6月に国民投票を実施し、EUからの離脱を決め、欧州ではEUの結束に対する不安がかつてないほど高まっている。仮に、レンツィ退陣後のイタリア総選挙で、EUに懐疑的な政党が躍進した場合、EUの混乱はさらに広がるのではないか、との連想が広がる。

 実際、イタリア国内ではEUに懐疑的な勢力が台頭している。その代表が、コメディアンのジュゼッペ・グリロ氏が立ち上げた「五つ星運動」。既に、同党出身者が、トリノとローマの市長を務めている。その他、マテオ・サルヴィ二氏が率いる北部同盟も勢いを増している。いずれも、今回の国民投票では「NO」を呼びかけた。既存の政党に対して不満を抱く国民の支持を集め、「反エスタブリッシュメント」政党としてのポジションを確立した。

 現状に不満を抱く国民の支持を背に、既存政党に挑む構図は、英国のEU離脱や米国の大統領選とよく似ている。そして、英米ともに既存勢力が敗れたことから、イタリアでも今後同じ状況が繰り返されるのではないか、との不安が駆け巡っている。

金融機関も火種としてくすぶる

 さらにイタリアには、国民投票とは別に燻り続けている火種がある。金融機関の不良債権問題だ。イタリアの銀行の多くは、2008年のリーマンショック時に大きな打撃を避けることができたがゆえに、銀行改革が遅れていると言われてきた。

 イタリアの金融機関ではユーロ危機以降積み上がった不良債権の処理が進んでおらず、借り入れた資金の利子しか支払うことができない無数の“ゾンビ企業”に苦しめられている。レンツィ首相は今年4月に銀行救済基金などを設立、対応にあたってきた。

 ところが今年6月、英国のEU離脱決定によって欧州景気が減速する懸念が増した結果、イタリアの金融機関の脆弱性が改めて浮かび上がった。これを回避するため、欧州委員会やECB(欧州中央銀行)は、イタリア政府に対して不良債権処理を急ぐように圧力をかけている。

 難しいのは、これが国内世論の反発を招き、政治が混乱に陥る可能性があることだ。金融機関に公的資金を注入すれば国民の税金が使われることになる。

 不良債権に苦しむ金融機関の象徴が、イタリア銀行3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行(モンテ・パスキ)だ。同行は50億ユーロ(約5970億円)の増資や、不良債権を証券化した上での売却などの経営再建策を7月に発表した。イタリアの金融関係者は、「国民投票の結果に関係なく、増資計画は粛々と進められる」と言う。しかし、今後イタリアで政情不安が広がり、投資家が増資計画に対して慎重になれば、救済計画が狂う可能性も否定できない。

 モンテ・パスキだけではない。イタリアでは、銀行の支店数が3万を超えている。これの半減と15万人に上る従業員の削減が急務だと言われている。しかし、銀行改革を積極的に推進していたレンツィ首相の辞任によって、改革が頓挫する可能性も出てきた。「そうなれば、イタリア銀行が抱える本質的な問題が先送りされ、銀行危機の火種が燻り続けることになる」と、金融関係者は指摘する。

分からなくなったフランス大統領選

 では、今後イタリアはどうなるのか。

 焦点の一つは、レンツィ首相が本当に辞任するかどうかだ。5日の敗北宣言で、辞任の意志を表明したものの、マッタレラ大統領は慰留すると見られる。仮に慰留を受け入れれば、レンツィ政権は続行することになる。しかし、非常に不安定なものにならざるを得ない。

 一方、当初の宣言どおり辞任すれば、大統領が新たな首相を指名し、暫定政権が発足する。今のところ、候補として挙がっているのは、グラッソ元大統領、パドアン財務相、フランチェスキーニ民主党元党首など。ただ、この場合も暫定政権であることから、政権運営は不安定にならざるを得ないだろう。

 その結果、2018年2月に実施が予定されている総選挙が、大幅に前倒しになる可能性も否定できない。

 選挙になった場合に注目を集めるのは、先に触れた新興政党の動きだ。今回の結果を受けて、五つ星運動をはじめとする、既存政党に対抗する勢力が議席を増やすことは間違いない。実際、レンツィ首相が敗北を認めた後、五つ星運動のグリロ氏は早期の解散総選挙をブログで呼びかけた。もっとも、いくら急伸しているとはいえ、政権を担うまでの議席数は得られないというのが、多くの識者の見方だ。

 だが、こうした動きは、むしろイタリア以外の国で反EU勢力に勢いを与える可能性が高い。

 真っ先に挙がるのが、フランスだ。この結果を受けて、はやくも来年の大統領選を意識した動きが出始めている。フランスの極右政党、国民戦線の党首で、大統領選への立候補を表明しているマリーヌ・ルペン氏は早速、ツイッターでイタリアの国民投票の結果を称賛した。

 一方、反EUの勢いを削ぐ動きもある。同じ4日にオーストリアで実施されたやり直し大統領選では、反移民を掲げる極右、自由党のノルベルト・ホーファー氏が敗れ、緑の党のアレクサンダー・ファン・デア・ベレン氏が勝利した。ホーファー氏が勝てば、EU初の「極右出身の国家元首」が誕生するところだった。

 それでも、欧州各地で噴き上がる、既存のエスタブリッシュメントに対する反発は広がっている。今回のイタリア国民投票の結果は、この動きをさらに強めることにつながる。グローバリズムよりもナショナリズムを優先する世界の流れは、2017年以降、さらに増幅する可能性が高い。


このコラムについて

ニュースを斬る
日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120500505


 

格差広げるトランプ流ポピュリズム政策

岡部直明「主役なき世界」を読む

排外主義に物申すのは同盟国・日本の役割
2016年12月6日(火)
岡部 直明
 所得格差の拡大を背景に登場したドナルド・トランプ米次期大統領だが、そのポピュリズム(大衆迎合主義)政策は格差をさらに拡大する危険をはらんでいる。北米自由貿易協定(NAFTA)見直しや環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱など、排外主義は結局、米国経済を悪化させ、中間層の雇用を奪うことになる。その一方で、ウォール街重視の閣僚配置や金融規制の緩和は金融資本主義をさらに刺激することになるだろう。こうして、格差はさらに拡大する。この矛盾に目をつぶり、目先のポピュリズムに走れば、トランプ政策は世界経済を危機に陥れることになりかねない。


12月1日、ドナルド・トランプ次期米大統領は、米インディアナ州にある空調大手「キャリア(Carrier)」の工場を視察。キャリアが予定していたメキシコへの生産移転計画と、国内での人員削減を中止させたことを明らかにした。同時に、国外へ生産を移転する米企業は代償を払うことになると警告した。(写真:Tasos Katopodis/Getty Images)
NAFTA見直しは英離脱並みの衝撃

 大統領選中にNAFTA見直しを公言してきたトランプ氏は、1日の演説で「NAFTAはひどい失敗作だ。見直すことになるだろう」と述べた。当選後はNAFTAについての言及を封印してきただけに、排外主義の本質が変わらないことを改めて示すことになった。

 欧州連合(EU)に次ぐ巨大経済圏であるNAFTAの見直しは、英国のEU離脱、それも自由な市場アクセスのない「ハードBREXIT」に似ている。その衝撃はグローバル経済全体に及ぶ。メキシコは日本を含め世界各国と自由貿易協定を締結している。日本の自動車メーカーなど、その多くは米市場に照準を合わせている。そうした生産ネットワーク、サプライチェーンが分断されることになる。

 トランプ氏のNAFTA見直しの動きを受けて、メキシコ・ペソは急落し、メキシコの成長減速は避けられなくなっているが、メキシコ経済に大打撃を与えるだけではすまない。それは米国経済にも当然、跳ね返ってくる。

資本主義の土台揺るがす介入主義

 トランプ氏はメキシコへの進出計画を打ち出している米空調大手のキャリアのインディアナ州工場での人員削減を中止させたと誇らしく語ったが、大統領の強権で企業の計画をくつがえさせることになれば、資本主義の土台が揺らぐ。本物のビジネスマンなら、この基本原理がわからないはずはない。このトランプ氏の行動に、米メディアの一部には「選挙公約を実現した」などという評があるのには驚く。米メディアや経済界から、この暴挙に対して真正面からの批判が起きないとすれば、権力者の強権を黙認する米国社会の衰退を嘆かざるをえない。

 トランプ氏は「海外移転した米企業には重税を課す」とも述べている。こんな措置が実行可能かどうかは別として、米国企業がグローバル企業としてビジネスを展開することに制裁を科す事態になれば、グローバル経済の相互依存関係は大きく崩れることになる。

 貿易や投資をプラスサムではなく勝ち負けでしかととらえない誤った経済感覚を改めないかぎり、トランプ氏は反グローバル主義の落とし穴から抜け出せないだろう。

ウォール街偏重に変身

 大統領選挙中からの大きな変化は、トランプ氏がウォール街偏重ともいえる姿勢に転じていることだ。民主党のヒラリー・クリントン候補をウォール街寄りだと批判していたのとは様変わりの大きな変身である。財務長官にはゴールドマン・サックスのパートナーをつとめたスティーブン・ムニューチン氏を、商務長官には投資家で「再建王」の異名もあるウィルバー・ロス氏を起用することにしたのをみても、それは明らかだ。

 さらに、リーマンショックを受けて導入された金融規制を緩和する方針を鮮明にしている。ウォール街にはこの金融規制には反発が強かっただけに、方針転換を歓迎し、金融株の上昇につながっている。しかに、期待先行の「トランプ・ラリー」は金融バブルとその後に待ち受ける金融危機の危険をはらんでいる。

 とくに、大規模なインフラ投資や大型減税で、財政赤字の拡大が予想されるだけに、財政危機との連鎖は大きな懸念材料だ。

FRBの独立性脅かす恐れ

 こうしたなかで、重要なのはFRB(米連邦準備理事会)のかじ取りだが、トランプ氏はイエレンFRB議長について「再任しない」と明言している。イエレン議長がトランプ氏の大統領当選後も金融規制の緩和に反対すると鮮明にしているだけに、両者の溝はかなり深い。

 FRBは今月、再利上げするとみられているが、さらに来年も慎重に出口戦略を続ける構えである。しかし、トランプ氏は不動産王の経験から、金融緩和に傾斜している。あつれきが生じる危険がある。

 問題は、米国に根付いてきたFRBの独立性が脅かされかねないことだ。それは米国経済そのものの信認、そして基軸通貨ドルの信認にも響くだろう。

保護主義と金融肥大化で格差拡大

 やや皮肉だが、トランプ流のポピュリズム政策は格差の是正どころか格差の拡大を招くだろう。世界経済の潮流にそぐわぬNAFTA見直しなど反グローバル化の動きは、米国の成長力を削ぐことになる。TPPから離脱すれば、アジア太平洋地域からの成長の果実を取り込めなくなる。それはトランプ氏の集票基盤である白人中間層の雇用に響くことになる。

 一方で、金融資本主義の肥大化に手を貸すことになれば、格差をさらに拡大する。所得格差が拡大したのは、グローバリズムのせいではなく、実体経済と金融経済の落差が広がったためである。いわば、ウォール・ストリートとメイン・ストリートの落差である。金融資本主義を刺激して、ウォール街をさらに活性化し、保護主義でメイン・ストリートを封鎖することになれば、格差はさらに拡大することになる。

トランプ流、負の連鎖の危険

 問題は、トランプ流のポピュリズム政策が世界中に負の連鎖を起こす危険があることだ。とりわけ英国の離脱決定で混迷するEUへの連鎖が懸念される。オーストリアの大統領選挙では、極右の候補が敗退したが、イタリアでは憲法改正をめぐる国民投票で、ユーロ懐疑派のポピュリズム政党である五つ星運動の進出を許した。レンツィ首相は辞任に追い込まれ、イタリア政治の混迷は避けられなくなっている。

 来年春のフランス大統領選挙では共和党フィヨン候補が最有力だが、トランプ当選で勢いづく極右、ルペン候補が決戦に残る可能性は濃厚だ。メルケル首相が4選をめざす来年秋の独総選挙でも右派勢力が台頭する危険がある。

 米欧間でのポピュリズムの負の連鎖は、世界経済の大きな不安定要因になる。そうでなくてもロシア、中国、トルコ、フィリピンなどに広がる強権政治は、大恐慌後の1930年代を連想させる。

安倍首相はトランプ氏に警告を

 ここで重要なのは、日本の役割である。トランプ流排外主義に物申すのは、同盟国である日本の責任だろう。真っ先にトランプ氏と会談した安倍晋三首相の責任は重い。

 TPPへの参加を繰り返すだけではすまない。米国が不参加なら、他のTPP11カ国ととともに、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)との結合をめざすことだ。そうして米国の翻意を待つしかない。同時にEUとの経済連携協定の締結を急ぐことだ。EUにとっても、保護主義の防波堤になるだけに、早期合意を導ける可能性がある。

 それだけではすまない。NAFTAの見直しに反対することだ。域外国だからといって遠慮する理由はない。日本企業の利害に直結しているからこそ、見直しに反対して当然だ。それによって、グローバル経済の相互依存がいかに深いか、排外主義の危険がいかに大きいかを説くべきだ。

 トランプ氏は排外主義の本質を簡単に変えるとは思えないが、だからこそ国際社会と連携して粘り強く説得するしかない。それが同盟国としての責任であり、国益である。


このコラムについて

岡部直明「主役なき世界」を読む
 世界は、米国一極集中から主役なき多極化の時代へと動き出している。複雑化する世界を読み解き、さらには日本の針路について考察する。
 筆者は日本経済新聞社で、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、取締役論説主幹、専務執行役員主幹などを歴任した。
 現在はジャーナリスト/明治大学 研究・知財戦略機構 国際総合研究所 フェロー。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/071400054/120500013/

http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/599.html

[政治・選挙・NHK217] 配偶者控除は年収「150万円以下」に、世帯主年収に上限−自民税調 見直し恩恵300万世帯 育休中だけ「配偶者控除」で節税

配偶者控除は年収「150万円以下」に、世帯主年収に上限−自民税調
高橋舞子
2016年12月6日 11:18 JST

ビール系飲料は54.25円に一本化−清酒、果実酒とチューハイも統一
エコカー減税はなお調整、税制改正大綱8日取りまとめへ

自民党税制調査会は5日までに2017年度税制改正の大枠をまとめた。ブルームバーグが入手した資料によると、焦点の配偶者控除の見直しは、現行制度で「103万円以下」となっている年収要件を引き上げ、「150万円以下」の世帯に満額となる38万円の控除を適用する。
  控除額は年収が増えるにつれて9段階で縮小し、「201万円」超えたら適用外とする。控除対象の拡大に伴う税収減を補うため、新たに世帯主の年収に上限を設け、控除枠は1120万円から徐々に縮小し、1220万円で消失する。新制度は18年分以降の所得税に導入する。
  酒税の改正では、ビールや発泡酒などビール系飲料の税率差を段階的に縮め、26年10月に350ミリリットル当たり54.25円に一本化。清酒、果実酒、チューハイについては、26年10月から350ミリリットル当たり35円、1キロリットル当たり10万円へと課税を見直す。
  法人税の見直しに関しては、研究開発税制を試験研究費の増減に応じて6−14%(中小法人12−17%)に設定し直すほか、ビッグデータなどを活用したサービス開発を試験研究費の範囲に追加する。
  自民税調は、エコカー減税の扱いも含めた2017年度与党税制改正大綱を8日にまとめる予定。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHQKC96KLVRK01


 


 
最少額1万円に 見直しの全容判明

毎日新聞2016年12月6日 09時00分(最終更新 12月6日 09時00分)

経済
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配偶者控除の年収の上限・制限を超えた場合の控除額
 2017年度税制改正で最大の焦点となっている配偶者控除の見直しの全容が5日、分かった。配偶者の年収が201万円で主な稼ぎ手の年収が1220万円の場合、主な稼ぎ手が受けられる所得税の控除額は1万円となる。

http://cdn.mainichi.jp/vol1/2016/12/06/20161206k0000m020163000p/9.jpg

【図でわかりやすく】配偶者控除見直しとは?
<配偶者控除維持 「働き方改革」に値しない>
<年金開始を70歳まで待つと受給額はいくら増えるか>
<1億円と1億円で買った土地、どちらの相続税が安いか>
 配偶者控除の見直しでは、配偶者の年収上限を現行の103万円から150万円へと引き上げる。ただ、150万円を超えても201万円までは、主な稼ぎ手が段階的に控除を受けられるようにする。

 一方、控除が受けられる主な稼ぎ手の年収は1120万円に制限するが、税負担が急増しないよう1170万円と1220万円までは控除が残る仕組みも導入する。配偶者の年収が150万円以下で主な稼ぎ手の年収が1120万円以下なら38万円の満額が控除される。しかし、どちらかが制限を超えると控除額は段階的に減少する。【横山三加子、高橋克哉】
 


年金を受け取れないと思う若者が多いがたぶん大丈夫

「老後は1億円必要」におびえなくてもいい理由
http://mainichi.jp/articles/20161206/k00/00m/020/161000c


 


 
配偶者控除見直しの恩恵300万世帯!? 高所得世帯は増税、就労へなお「壁」
12.5

 「働き方改革」を掲げる政府・与党は配偶者控除を見直し、妻の年収要件を現在の103万円以下から150万円以下に引き上げることで、税負担を嫌って働く時間を増やすのに消極的だったパート主婦らの就労後押しを狙う。ただ、「103万円の壁」以外に社会保険料の負担や企業の配偶者手当の支給基準などの「壁」は残る。控除の対象から外れる高所得世帯は増税となり、景気にマイナスに作用する懸念も根強い。

 配偶者控除は妻の年収が103万円以下であれば、夫の所得から38万円を差し引いて税負担が軽減される。これまで年収が103万円以下になるよう就労時間を調整するパート主婦らが多いと指摘されてきた。

 現在、年収100万円以下のパート主婦の割合は56.2%、150万円以下が85.6%。年収要件の引き上げで300万世帯強は減税になる見通しだ。政府は最低賃金を「1時間当たり1000円」に引き上げる目標を掲げるが、仮に時給1000円で1日6時間・週5日勤務した場合も年収は約144万円のため、カバーできるとみている。

 ただ、就労の妨げになる他の「壁」もある。年収130万円になると厚生年金や健康保険の支払いで、手取りが減ってしまう。10月からはこの基準が大企業で106万円に下げられた。

 現在も年収が141万円までなら段階的に一定額が控除される配偶者特別控除があるが、それでもパートらが働く時間を減らしているのは、企業の多くが配偶者手当の支給基準を配偶者控除と同じ103万円に設定しているからだ。政府も見直しを呼びかけており、一部企業は配偶者手当の廃止や子育て手当への転換などを検討するが、労使交渉などには時間がかかる。育児や介護で仕事を辞めたり、労働時間を減らしたりするケースも多く、政府が働きやすい環境整備を行うことも不可欠だ。

 一方で、減税による税収減を防ぐために所得制限が設けられる。100万世帯が増税になる見通しで、牽引(けんいん)役である高所得層の消費が落ち込めば、景気を下押しする恐れがある。(万福博之)

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/print/20161205/ecn1612051530008-c.htm

 


共働き夫婦は忘れずに! 育休中だけ「配偶者控除」で節税する方法
加藤葉子
[2016/12/06]
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共働き世帯が、育休中に配偶者控除で節税する方法
現在、「配偶者控除」をめぐって議論が繰り広げられ、「103万円」の収入限度額を「150万円」へ引き上げることが検討されています。共働き夫婦では、「配偶者控除」は縁遠いもの、と思い込んでいる方が多いかもしれませんが、実は育休中に適用することで、節税ができます。

どのような方法で、どのくらい、節税することができるのでしょうか。詳しく紹介していきましょう。

育休中の配偶者控除、どれだけ節税できる?

配偶者控除とは、配偶者(多くは妻)の所得が少ない場合、夫の給与所得から所得控除を引き、納税額を少なくするという仕組みです。しかし、妻が正社員などの共働きの場合でも、妻が育児休業中は給与が支給されないことも多いため、配偶者控除の対象になる可能性もあります。

まずは、夫の年収が500万円と300万円の双方のケースで、妻の育児休業中(年収103万円以下)に配偶者控除を適用すると、どれだけ節税できるのか考えてみましょう。


夫の年収500万円と300万円、妻が育児休業中(年収103万円以下)のモデルケース

夫が会社勤めの場合、税金は年末調整などで会社が計算をしてくれますが、仕組みは上の図のようになります。配偶者控除をはじめとする「所得控除」が多いほど、所得税の課税対象となる「課税所得」は少なくなります。結果として、納める税金も少なくなるという仕組みです。

表で示した通り、モデルケースで考えると、節税できる金額は以下となります。

ケース(1)
夫: 年収500万円
妻: 育休中(年収103万円以下)
→7万1,000円/年節税

ケース(2)
夫: 年収300万円
妻: 育休中(年収103万円以下)
→5万2,000円/年節税

※モデルケース1: 所得税税率区分を10%とした場合
※モデルケース2: 所得税税率区分を5%とした場合
※復興特別所得税は除く

配偶者控除が適用できる4条件

次に、節税したいと思った際、必要な条件についてお伝えしましょう。「配偶者控除」が適用されるには、その年の12月31日時点で、次の4つの条件すべてに当てはまる必要があります。

(1)民法の規定による配偶者であること
(2)納税者と生計を一にしていること
(3)配偶者の年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、または白色申告者の事業専従者でないこと

育休中の場合は、会社より給与が支給されない場合がほとんどです。ですから例えば、今年育休に入り、1月1日から12月31日まで支払われる給与所得が38万円以下であれば、配偶者控除を受けることができます。

例えば、月収30万円のママが、今年3月まで働き、4月1日から産休・育休に入った場合は、1年間の年収が3カ月分の90万円(給与所得25万円)となり、配偶者控除を受けることができます。また、今年育休を取得していて、12月1日に復帰した場合についても、1年間の年収が1カ月分の給与となるため、控除を受けることが可能です。

一方で、今年10月まで働き、11月1日から産休・育休に入った場合は、1年間の年収が10カ月分の300万円(給与所得192万円)となり、配偶者控除を受けることができません。

少し細かい話になりますが、妻の所得が38万円超76万円未満(給与のみの場合は給与収入が103万円超141万円未満)である場合、「配偶者特別控除」が適用され、同じく節税効果があります(夫の合計所得金額1,000万円以下に限る)。

妻の1年間の給与所得金額は、源泉徴収票で確認できますが、分からない場合は職場の給与計算担当に確認してみましょう。

5年以内なら、さかのぼって請求できる可能性も

育休中はさまざまな手当があるため、「給与をもらっているのでは……?」と勘違いしがちです。しかし「出産手当金」「出産育児一時金」は健康保険組合から、「育児休業給付金」は雇用保険から支給されるものなので「所得」とはみなされません。結果として、これら全ては課税の対象外となり、配偶者控除が適用できるというわけです。

共働き夫婦の場合、普段は配偶者控除の対象になることがないため、つい忘れがちになってしまいますが、前述したとおり、「配偶者控除」が適用された場合の節税効果は大きなものです。ぜひ忘れずに申請をしましょう。申請方法は、夫の会社の年末調整時に申請するか、確定申告をすることになります。

もし申請を忘れてしまった場合、申告期限から5年以内であれば、「更正の請求」という手続きができる場合があります。最寄りの税務署に相談してみてください。

保育料も安くなるかも

「配偶者控除」により節税するメリットは、払い過ぎた税金を取り戻せるということだけではありません。仕事復帰後の保育料にも影響を与える可能性があります。

自治体によって詳細は異なりますが、認可保育園の保育料は、市町村民税の所得割額を基準として算出されます。そして、そのもととなる市町村民税は、課税所得金額によって金額が決定されます。つまり、「配偶者控除」で課税所得金額が抑えられることで、結果、保育料が安くなることも考えられるのです。

今回は、夫がサラリーマンで妻が育休を取得した場合で、節税効果をご紹介しました。しかし、夫・妻の働き方はさまざま。わが家の場合「配偶者控除を申請できる? できない? 」をこの機会にしっかり理解し、賢く節税していきたいですね。

※写真はイメージで本文とは関係ありません

著者プロフィール


マイライフエフピー代表 加藤葉子
子育て真っ最中のファイナンシャルプランナー。子どもを授かったことをきっかけに、教育費や学資保険の仕組みなどに興味を持ち、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、3年で子どもの教育資金を貯める。現在は、全国の女性からの教育費・老後資金・起業・離婚・投資なのお金の相談を中心に執筆・マネー講師として活動しながら、ファイナンシャルプランナーの育成にも力を入れている。自身のホームページ「女性とシングルマザーのお金の専門家」でもお金にまつわるお役立ち情報を提供している。
※本記事は掲載時点の情報であり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。



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http://news.mynavi.jp/articles/2016/12/06/tax/


 



http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/160.html

[経世済民116] 人手不足でも賃金停滞の謎−悲鳴上げるサービス業は生産性に弱点 森家米投資千億超も 原油先物逆ざや 株反発ISMや円高限定
人手不足でも賃金停滞の謎−悲鳴上げるサービス業は生産性に弱点
野原良明
2016年12月6日 06:00 JST更新日時 2016年12月6日 09:43 JST

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• 技術革新による生産性の向上が生き残りの鍵に−白川氏
安倍晋三首相の再三の呼び掛けにもかかわらず、賃上げのペースはなかなか加速しない。消費を刺激し日本経済再生を狙うアベノミクスにとって悩みの種だ。

百貨店の開店風景(三越)

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  高齢化で人手不足が進んでいるのだから賃金は本来上昇するはずだ。しかし多くの場合、現実はそうなっていないと第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは指摘する。問題は、人手不足が生産性の低いサービス業で顕著なことだという。つまり、賃上げに回せる利益が乏しい業種に求人が集中しているということだ。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iIhq_.ro.MNA/v3/-1x-1.png

  実質賃金は労働生産性によって左右される。労働生産性が低いということは、労働者が付加価値を効率よく生み出してないことを意味し、企業も賃金を上げるのが難しいということになる。

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iEjZmG3vB2h8/v3/-1x-1.png

  自動車メーカーなど製造業ではロボットなどを活用して労働生産性を向上させてきた。こうした動きは人を相手にするサービス業では、まだそれほど進んでいない。
  厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は2012年から15年まで4年連続で下落。16年10月時点では前年を上回っているもののその幅は1%に満たない。日本銀行の目指す2%のインフレ目標に比べると勢いは弱い。
  飲食や宿泊業は収益環境が厳しく賃上げに回せる余裕があまりないため、人手不足も解消できないというジレンマにある。熊野氏によると、高齢化に伴って年金生活者が増える中で、サービスの対価を上げて賃上げにつなげるのも難しいという。介護サービスなどでは多額の借金を抱える政府が賃金を抑制しており、「非常にいびつな形になっている」と話す。
  サービス業は非正規雇用の率も高く、賃上げも比較的小幅になる傾向があるとクレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは言う。労働生産性の改善なしに賃上げを続けることは難しく、サービス業も「機械化とか技術革新ができるところが当然生き残る」と話している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHP1696KLVR501

 


日本株3日ぶり反発、米ISM統計改善や円高限定−素材、金融高い
鷺池秀樹、長谷川敏郎
2016年12月6日 07:59 JST更新日時 2016年12月6日 12:06 JST

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• 中国景気の回復が米国の非製造業にまで好影響及ぼす
• 後半伸び悩み、トランプラリーの勢いは鈍化

6日午前の東京株式相場は3営業日ぶりに反発。米国の供給管理協会(ISM)による非製造業景況指標の改善に加え、為替の円高方向への動きが限定的で、企業業績の先行きが楽観視された。鉄鋼や非鉄金属など素材株、自動車など輸出株が上げ、海外金融株高の流れを受け金融株も高い。

  TOPIXの午前終値は前日比10.27ポイント(0.7%)高の1477.23、日経平均株価は95円84銭(0.5%)高の1万8370円83銭。
  水戸証券投資顧問部の酒井一ファンドマネジャーは、イタリア国民投票という「リスクイベントをまた1つこなし、少し買い安心感がある」と指摘。日本株の上昇ピッチは緩やかになる可能性はあるが、「基本的には上昇トレンドを維持する」との見方を示した。

東証ロゴプレート

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  ISMが5日に発表した11月の非製造業総合景況指数は、57.2と昨年10月以来の高水準となった。エコノミスト予想の中央値は55.5。SMBCフレンド証券投資情報部の松野利彦チーフストラテジストは、「中国景気が回復に向かっていることが米国の製造業の景況感に影響を与え、非製造業にまで回復の裾野が広がってきた。良好な同指数が市場を再び元気づける」とみる。
  5日のニューヨーク為替市場では、ユーロが反発。イタリアの国民投票で憲法改正が否決されたものの、影響は短期で限定的だった。ユーロの持ち直しとともに円は軟調となり、きょう午前のドル・円は1ドル=113円50ー90銭台で推移、前日の日本株終値時点は113円45銭だった。イタリア国民投票の結果を受けた前日早朝には113円を割れる場面もあった。
  5日の欧米株式市場では金融株が上昇、米ダウ工業株30種平均は0.2%高の19216.24ドルと過去最高値を更新した。国際商品市場でもリスク回避の動きは後退し、5日のロンドン金属取引所(LME)の銅やニッケル価格が上昇。ニューヨーク原油先物も0.2%高と堅調。こうした動きは、午前の日本株市場で銀行や保険など金融セクター、鉄鋼や非鉄金属など素材セクターの支援材料になった。
  イベント通過後の海外市場の落ち着きを好感し、きょうの日本株はTOPIX、日経平均ともに1%高で開始。日経平均の上げ幅は一時200円を超えた。ただし、朝方の買い一巡後は次第に伸び悩み。為替市場でのドルの上値が重かったことも指数の上値抑制要因の1つだった。
  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鮎貝正弘シニア投資ストラテジストは、「米国でトランプラリーの勢いが弱まったことや、為替も1ドル=113円台と押し戻されていることを考えると、日本株は既に高値波乱の状態に入りつつある」と受け止める。東証1部の売買高は11億2175万株、売買代金は1兆1678億円。値上がり銘柄数は1266、値下がりは582。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iwysItKoIxD0/v2/-1x-1.png
  東証1部33業種は鉄鋼、海運、証券・商品先物取引、非鉄、保険、ガラス・土石製品、金属製品、銀行、電気・ガスなど28業種が上昇。パルプ・紙や食料品、空運、鉱業、陸運の5業種は下落。紙パでは、大和証券が投資判断を下げた王子ホールディングスが軟調だった。
  売買代金上位では三井住友フィナンシャルグループ、野村ホールディングス、三井物産、東芝、三井不動産、パナソニック、新日鉄住金、スズキ、オリックス、帝人が高く、ジェフリーズ証券が投資判断を上げたSUMCOは大幅高。半面、株式を売り出すキーエンスやJPモルガン証券が投資判断を下げた江崎グリコは安い。JTや小野薬品工業、日本アジア投資、安永も下げた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHQHK86JTSE801

 

攻める森家、米国オフィス投資「1000億円超えても可能」−末娘社長
桑子かつ代、Finbarr Flynn
2016年12月6日 06:00 JST

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• 米賃料には依然上昇余地、日本は利回り低く買いにくい
• 不動産投資額8000億円超えもある−27年まで

オフィスビルやホテルなどの開発を手掛ける森トラストは、米国での大型ビル投資に取り組む。創業以来初めて事業を海外にも広げ、成長に弾みをつける狙い。良い投資案件があれば1000億円を超える多額の投資にも積極的に取り組むとしている。
  森トラストの伊達美和子社長は、取材に対し「海外に向けて投資の機会を拡大していく」と述べた。米国大都市のオフィスビルへの投資を検討しており、「良い物があれば、結果的に1000億円を超えても投資することは可能だ」と語った。ニューヨークについては「非常に今高く、難しい」と述べ、米国内の大都市で幅広く投資案件を探していることを明らかにした。同社は保有・運営する不動産の90%が港区など都心で、実現すれば初の海外進出となる。
  80年代の日本のバブル経済期には、ジャパンマネーによる海外の大型投資や買収が相次いだ。ニューヨーク市のロックフェラーセンターやカリフォルニア州の高級ゴルフコースを高額で購入し、その後損失を計上、海外事業の縮小を余儀なくされた。しかし、日本企業による海外不動産投資は11年以降、再び拡大傾向にある。不動産サービス会社CBREの調査では、国内の人口減少や投資リスク分散などを理由として、14年は約18億ドル(約2100億円)に達し、10年当時の約11倍に膨らんだ。

伊達美和子氏

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  米国の不動産市況について、伊達社長は「オフィス賃料はリーマンショック後に下がった後、まだ上がり切れていない」と指摘し、「今後米国の景気が良くなり、金利や物価が上昇してくれば賃料はまだ上昇する」との見方を示した。また「海外への投資は3年くらい前から検討し始めた」とも述べ、トランプ次期大統領の選出との因果関係は特にないとした。
  トランプ政権誕生については、財政状態が歳出拡大に耐えられるかどうかや、日本経済への影響など懸念材料があるものの、過去の慣習や発想にとらわれない改革に踏み切れるのが米国の強みだとして、「期待はある」と前向きにとらえている。
  森トラストグループは丸の内や京橋など都心部で保有する高層ビルを賃貸するほか、都心部や地方の観光地でも「マリオット」や「コンラッド」など高級ホテル事業を展開している。
日本は買いにくい
  一方で、日本の不動産投資市場については「新規では非常に買いにくい。低い利回りで他社や海外からのニーズが入ってくる」と慎重な見方を示した。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iI9VwezH.uwE/v2/-1x-1.png

  日本銀行のマイナス金利政策などを背景に都心のオフィスビルを中心に不動産価格は高止まりしている。CBREの調査では、第3四半期の日本の不動産取引額は前年比約2割減の7860億円と5期連続で前年割れだった。東京のオフィスビルや商業施設などすべての不動産セクターで、物件価格の上昇を受けて期待利回りは過去最低を更新した。
  日本不動産研究所が世界14都市を対象にまとめた世界のオフィス価格の上昇率は過去2年間、東京の1位が続いている。10月現在、半年間の前期比上昇率は東京3.4%に対し、ニューヨークは0.7%、欧州連合(EU)から離脱する英国のロンドンは5.8%下落だった。
総資産1兆円
  伊達社長は父の森章前社長(現会長)の後を引き継ぎ、総資産約1兆円の森トラストの社長に就任した。港区など都市開発を得意とする実業家の故・森泰吉郎氏を祖父、森ビルの前社長の故・森稔氏が叔父で、創業家の出身。上場の可能性については「ホテルリートを年度内めどに上場したいが、森トラストの上場は考えていない」と否定した。
  森トラストはオフィス賃貸やホテル事業の好調を背景に、16年度の連結純利益は過去最高の570億円を見込み、さらに16ー27年度には6000億ー8000億円規模の設備投資を計画している。伊達社長は「8000億円というのはミニマムにやるという額なので、これ以上の投資余力は持っている」と意欲的だ。
  森トラストが港区虎ノ門で総事業費3000億円を投じて地上36階の複合施設の開発計画を進める中、森ビルも同地区に総事業費約4000億円で超高層ビル3棟の開発を予定している。森ビルとの今後の協力の可能性について、伊達社長は「あらゆる同業他社と必要に応じて協業していくことは可能性としてある」と述べるにとどめた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OGRWK96JIJUO01

 

債券下落、米債安や流動性供給に向けた売りで−長期金利0.04%に上昇
三浦和美
2016年12月6日 08:02 JST 更新日時 2016年12月6日 10:52 JST
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新発20年債利回りは0.48%に上昇
外部要因と需給面で債券の売り圧力強い−バークレイズ証
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債券相場は下落。前日の米国市場で株高・債券安となった流れを引き継ぎ、売りが先行した。超長期ゾーンの供給が続く中、この日実施の流動性供給入札に向けた売りも重しとなっている。
  6日の長期国債先物市場で中心限月12月物は前日比10銭安の150円50銭で取引開始。一時150円54銭まで下げ幅を縮めた後、再び売りが優勢になり、14銭安の150円46銭まで下げた。

  現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値と比べて1.5ベーシスポイント(bp)高い0.04%で寄り付き、その後も同水準で推移している。新発20年物の158回債利回りは1.5bp高い0.48%、新発30年物52回債利回りは横ばいの0.585%となっている。
  バークレイズ証券の押久保直也債券ストラテジストは、「懸念されていたイタリアの国民投票を通過し、リスクオフというよりはセンチメントが良好になっている」とし、前日は米独の金利が上昇したと説明。「外部要因に加え、需給面でも流動性供給や30年債入札を控えて、長いところを中心に債券の売り圧力は強い」と言う。
  5日の米株式相場はダウ工業株30種平均が0.2%高の19216.24ドルと、終値ベースで過去最高値を更新した。一方、米国債相場は下落し、10年債の利回りは1bp上昇の2.39%程度となった。
流動性供給入札
財務省
財務省 Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  財務省はこの日、投資家需要の強い既発国債を追加発行する流動性供給入札を実施。対象は残存期間15.5年超39年未満の銘柄で、発行予定額は4000億円程度となる。
  みずほ証券の山内聡史マーケットアナリストは「昨日の日銀国債買い入れオペでは、10年超25年以下のゾーンで売り圧力が確認されている。8日に30年債入札を控えており、需給の緩みが意識されやすいとみられ、入札に対する警戒感は相応にあると考えている」と指摘した。
  今後の国債需給について、「バークレイズ証の押久保氏は、30年債入札を過ぎると国債償還や日銀国債買い入れオペを背景に、年内は徐々に需給が締まりやすくなる」との見方を示した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHQI626JIJV401

 
原油先物市場は逆ざやに−OPEC総会後に米シェール企業のヘッジ増
Javier Blas、Alex Longley、Alex Nussbaum
2016年12月6日 11:05 JST
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ヘッジ取引の増加は米国の原油生産が来年増加することを示唆か
生産会社による17−19年のリスクヘッジで原油先物カーブが平たんに
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バンカーや実需業者、ブローカーによれば、米国シェールオイル企業は石油輸出国機構(OPEC)総会後の原油価格上昇を利用し、来年と2018年の価格に関連するリスクをヘッジしており、原油の先物カーブには逆転が起きている。
  将来のキャッシュフローと売却価格を固定するヘッジ取引の増加は、米国の原油生産が来年拡大することを意味し、8年ぶりとなるOPECによる減産の効果が弱められる可能性がある。そうなれば、OPECはかつて打ち負かそうとしていたセクターを最終的に救うことになるかもしれない。
  ニューヨークとヒューストンにオフィスを持つ石油関連投資顧問ハドソンフィールドの創業者、ベン・フリーマン氏は「OPEC総会後、米国の石油生産会社は非常に活発にヘッジ取引をしている。生産会社によるこの価格水準でのヘッジがかなりの量に達するだろう」と予想する。
  こうしたヘッジ取引による圧力は先物カーブ全体で激しい変動のきっかけとなっている。シェール企業が来年と18年の早い時期に引き渡しとなる原油を売却する中、先物カーブの形状は平たんになった。ARオイル・コンサルティングの創業者で、カルテックス・オーストラリアとロイヤル・ダッチ・シェルでトレーディング担当幹部を務めた経験のあるアダム・リッチー氏は「先物カーブは生産会社がヘッジしていることを如実に示している」と述べた。
  ウェスト・テキサス ・インターミディエート(WTI)原油先物17年12月限の価格は現在、18年6月限を上回り、期近物価格の方が期先物より高い逆ざやの状態となっている。1週間前は、期近物価格の方が期先物より安い順ざやだった。
原題:Oil Market Turns Upside Down as U.S. Shale Hedges Post-OPEC (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHQN666JTSNM01


 

12月5日の海外株式・債券・為替・商品市場
西前 明子、楽山 麻理子
2016年12月6日 06:42 JST 更新日時 2016年12月6日 07:53 JST
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欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は 次の通り。
◎NY外為:ユーロが1年8カ月ぶり安値から反発−伊の影響限定的
  5日のニューヨーク外国為替市場では、ユーロが2015年3月以来の安値から反発。イタリア国民投票で憲法改正案が否決されたものの、影響は短期的なものにとどまった。
  イタリア国民投票の結果を受けてレンツィ首相が辞意を表明したとの報道に反応し、ユーロは一時下げたものの、その後戻し、主要16通貨の大半に対して上昇。国民投票の最終結果によると、レンツィ首相が推進した憲法改正案は59.1%対40.9%で否決された。
  ダンスケ銀行のチーフアナリスト、イェンス・ペーター・セーレンセン氏は「今回の国民投票では広く否決が予想されていたことから、動きは抑えられた」と分析。その上で、「私はこの状況について楽観していない。ユーロにとって非常に明るいサインとは見ていない。ユーロ圏の大国の一つが政治的混乱に陥っているためだ」と続けた。
  ニューヨーク時間午後5時現在、ユーロはドルに対し前週末比0.9%高の1ユーロ=1.0764ドル。イタリア国民投票の結果が明らかになった後には1.0506ドルと、2015年3月以来の安値に下げる場面もあった。
  ドルは円に対し0.3%高の1ドル=113円85銭。一時は114円78銭まで上げた。
  クレディ・アグリコルのストラテジスト、マニュエル・オリベリ氏とバレンティン・マリノフ氏はリポートで、国民投票後のユーロの下げは短期的なものにとどまったと指摘。国民投票の結果からは解散・総選挙は示唆されず、イタリアをめぐる不確実性が一段と強まる可能性は低いと分析した。
原題:Euro Climbs From 20-Month Low as Italy ‘No’ Vote Reaction Fades(抜粋)
原題:INSIDE G-10: Euro Rebounds Off 20-Mo. Low; Referendum Hit Fades(抜粋)
原題:Buy EUR/USD as Italy Vote Skews to EUR Upside, CA Says(抜粋)

◎米国株:ダウ平均、過去最高値を更新−イタリア波乱短時間で克服
  5日の米国株式市場は上昇。ダウ工業株30種平均は過去最高値を更新した。イタリア国民投票で憲法改正が否決されたことを受け、金融株とテクノロジー株は一時下げていたが、上昇に転じた。
  S&P500種株価指数は前営業日比12.76ポイント(0.6%)上昇の2204.71。ダウ平均は45.82ドル(0.2%)高い19216.24ドル。
  MPPM・EKのトレーディング責任者、ギレルモ・ヘルナデス・サンペレ氏は「ブレグジットの後、市場が立ち直るのに3日かかった。トランプ氏勝利の後は3時間だった、イタリアの衝撃からは3分で回復した」と話した。
  S&P500種のセクター別11指数のうち、この日は8指数が上昇。米大統領選挙後の金融株の上昇は14%に拡大した。
  米供給管理協会(ISM)が5日発表した11月の非製造業総合景況指数は57.2と、前月の54.8から上昇した。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は55.5だった。同指数では50が活動の拡大と縮小の境目を示す。
  米連邦公開市場委員会(FOMC)は次回会合の結果を14日に発表する。金利先物市場では12月利上げの確率は100%として織り込まれている。11月初めの段階では68%だった。
  今週は8日に欧州中央銀行(ECB)が政策委員会を開く。イタリア国民投票の結果がドラギ総裁の量的緩和プログラムにどう影響するのか、注目されている。
  S&P500種は年初来で7.9%の値上がり。このまま年末を迎えれば、2014年以来で初の年間プラスで16年を終えることになる。
原題:Dow Sets Record as Bank Stocks Rally, Investors Shrug Off Italy(抜粋)
Stocks Climb With Euro as Italy Vote Absorbed in ‘Three Minutes’(抜粋)
Service Industries in U.S. Grow at Fastest Pace in 13 Months (1)
◎米国債:短期債中心に下落、利上げ観測−非製造業景況が良好
  5日の米国債は下落。朝方発表された11月の米非製造業総合景況指数は13カ月ぶりの高水準となった。米金融政策当局からは、来週の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を引き上げる公算が高いことを示唆する発言が相次いだ。
  米供給管理協会(ISM)が発表した11月のISM非製造業総合景況指数は57.2。前月は54.8だった。セントルイス連銀のブラード総裁は「12月に利上げを実施することは極めて妥当な選択肢になる」と述べた。米金融政策の見通しに敏感に反応する5年債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%) 上昇して1.85%だった。5年債と30年債の利回り差(イールドカーブ)は122bpにフラット化した。
  ニューヨーク時間午後4時29分現在、10年債利回りは約2bp上昇して2.4%。一時は6bp上昇する場面もあった。米国債相場は一時、イタリアを中心とした欧州債の下落に追随して下落し、利回りが上昇していた。
  ニューヨーク連銀のダドリー総裁は「短期金利の水準を緩やかに引き上げることで、金融政策
の緩和の度合いを時間とともに多少弱めることが望ましいと考える」と述べた。次回FOMCは12月13−14日に開かれる。
原題:Treasuries Decline Led by Shorter Maturities as Fed Set to Hike(抜粋)
  
◎NY金:10カ月ぶり安値付近で終了、イタリア国民投票を通過
  5日のニューヨーク金先物相場は小幅反落し、10カ月ぶりの安値付近で終了した。イタリアの政治的混乱による影響は直ちに静まり、株式などリスクの高い資産の買いが強まった。
  ハイ・リッジ・フューチャーズ(シカゴ)の金属取引担当ディレクタ ー、デービッド・メーガー氏は電話インタビューで、「債券や貴金属など安全資産の必要性は低下している」と指摘。貴金属は「こうした短期的な下落トレンドが続くだろう」と述べた。
  ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前週末比0.1%安の1オンス=1176.50ドルで終了。過去5営業日では4日目の下落となった。
原題:Gold Closes Near 10-Month Low as Investors Look Past Italy Vote(抜粋)
◎NY原油:続伸、OPECが非加盟国を会合に招待
  5日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が続伸し、1年4カ月ぶり高値に達した。石油輸出国機構(OPEC)は10日にウィーンで開催する会合に、非加盟14カ国を招待した。
  ストラテジック・エナジー・アンド・エコノミック・リサーチ(マサチューセッツ州ウィンチェスター)のマイケル・リンチ社長は、「OPECの発言は言葉通りに受け止められている」と指摘。「まだ非加盟国から協力を取り付けようとしている段階なのに、さらに減産できると信じている人もいる」と述べた。
  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は前営業日比11セント(0.21%)高い1バレル=51.79ドルで終了。終値ベースで2015年7月以来の高値。ロンドンICEのブレント2月限は48セント(0.9%)上げて54.94ドル。
原題:Oil Advances to 16-Month High as Focus Shifts to Non-OPEC Cuts(抜粋)
◎欧州株:2週ぶり大幅高−イタリア国民投票結果は織り込み済みか
  5日の欧州株式相場は上昇。イタリアで改憲の是非を問う国民投票が否決されたものの、指標のストックス欧州600指数はほぼ2週間ぶりの大きな上げを記録した。
  ストックス600指数は前週末比0.6%高の341.27で終了。自動車株や鉱業株の上げが目立った。イタリアの指標であるFTSE・MIB指数は上下に揺れる展開の後、0.2%安で引けた。国民投票の結果を受けて、レンツィ首相は辞意を表明した。
  FXCM(パリ)の市場アナリスト、シルバン・ロガナダン氏は、「『否決』は既に織り込まれていたほか、これは欧州連合(EU)加盟の是非を問うような市場にとって大きなリスクイベントではなかった」とし、「出遅れ感のある欧州市場が上昇するとの見方から、押し目買いが入っている」と語った。
  自動車関連株指数は4カ月ぶりの大幅高。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とルノーが買われた。
原題:European Stocks Rise as Traders Unfazed by Italian Vote Outcome(抜粋)
◎欧州債:イタリア国債、下げ幅縮める−ECB措置への期待で
  5日の欧州債市場では、イタリア国債が下げ幅を縮める展開となった。改憲の是非を問う国民投票が否決されたことを受けて売りが優勢となったものの、欧州中央銀行(ECB)が8日の定例政策委員会で緩和策を維持するとの見方が広がったことが背景にある。
 イタリア10年債利回りは一時、前週末から約13ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。他のユーロ参加国の10年物国債利回りは5−9bp上昇。
原題:Treasuries Extend Drop as Service-Industry Growth Tops Estimates(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHPYKS6VDKHT01


 

ウォール街の調査リポートは大胆かつ個性的に−予想的中を大前提に
Lananh Nguyen
2016年12月6日 07:03 JST 
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ウォール街の調査リポートが変わりつつある。
  あまり読まれない日々のマーケットリポートに代わって、バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチの世界調査責任者、キャンデス・ブラウニング氏は大きな文字でテーマを掲げ、読者の目を引く見出しを売り物にしようとしている。700人近い部下のアナリスト軍団に同氏が特に求めるのは大胆な予想をすることだ。
  しかし、これには条件がある。大胆なだけではなく正しい予想でなければならない。予想が何回も外れればアナリストは職を失う。「意味のあるリポートは独創的でリターンを生み出す着想が含まれていなければならない」とブラウニング氏はインタビューで語った。「顧客が既に知っている以外のことを伝えなければ駄目だ」という。
ウォール街を歩く人々
ウォール街を歩く人々 Photographer: John Taggart/Bloomberg
  個性も重要だ。例えばBofAのデービッド・ウー氏は、ドルと人民元の為替相場をうまくいかない結婚にたとえた。ソシエテ・ジェネラルのキット・ジャックス氏はリポートの中にボブ・ディラン氏の歌詞やラテン語のことわざをちりばめることで有名だ。クレディ・スイス・グループのシャハブ・ジャリヌース氏は日本銀行の政策分析にラップ歌手、ノトーリアスB.I.G.の歌詞を入れた。
  2008年以降、大手銀行の職が50万人以上失われる中で、調査アナリストらは先見性があると同時に印象に残るリポートで自らの価値を示さなければならない。
  BofAでは大勢と違う予想を打ち出そうという努力が、外為・金利・新興市場ストラテジストのウー氏のリポートに表れている。同氏は2015年11月の「偉大なる離婚」というリポートで、人民元が16年にドルに対して最大10%下落すると予想した。オンショア人民元は以来、7%以上下落した。
原題:Boring Wall Street Analyst Notes Are Out. Bold, Funny Are In (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-05/OHPXUJSYF01U01
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/430.html

[経世済民116] トランプ政権が開く「脱イデオロギー時代」 会見嫌い市場に影響 株押上短期的 女少ないファンド アマゾン、レジなしコンビニ
トランプ政権が開く「脱イデオロギー時代」

人事面でも政策面でも次期大統領のイデオロギーを特定するのは不可能
ドナルド・トランプ次期大統領(写真)の当選後の動きからは明白なイデオロギー的性向を特定するのはほとんど不可能

By GERALD F. SEIB
2016 年 12 月 6 日 11:59 JST

――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJワシントン支局長

***

 バラク・オバマ大統領が米国をポスト・レイシャル(脱人種問題)の時代に導くことを目指していたのだとすれば、ドナルド・トランプ次期大統領はポスト・イデオロギー時代の扉を開けつつあるようだ。それが次第に明確になってきた。

 そもそもトランプ氏の当選後の動きから明白なイデオロギー的性向を特定するのはほとんど不可能だ。それを試みるのもおそらく間違いだろう。左派と右派、リベラルと保守の定義が公然とごちゃ混ぜにされているからだ。

 トランプ氏のこれまでの動きは、アウトサイダーのポピュリスト(大衆迎合主義者)という選挙運動中のイメージと軌を一にしているものもあれば、従来の保守派がとるような動きもある。トランプ氏による政権要職の人選は標準的な共和党員が満足できるものもあれば、民主党の次期大統領であれば容易に思いつくような人選もある。

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トランプ氏は国務長官に誰を指名するのか。可能性のある6人についてWSJワシントン支局のジェラルド・F・サイブ支局長が解説(英語音声、英語字幕あり) Photo: AP
 ここに表れつつある全体像からトランプ政権について確実に予想できることは2つしかない。1つは、ポピュリストのトランプ氏と、従来型の共和党員としてのトランプ氏とのせめぎ合いが今後も続くということだ。前者は、自由市場を愛する財界に真っ先に戦いを挑むトランプ氏。後者は、同じ財界のリーダーたちや自由市場を愛する世界に居心地の良さを覚えるトランプ氏だ。

 確実に予想できる2つ目のことは、確実に予想できることは何もないということだ。ハーバード大学で先週行われた会議で、トランプ陣営の世論調査担当者だったトニー・ファブリツィオ氏は伝統的な「イデオロギーのレンズ」を通してトランプ氏を見ることはできないと指摘。「ドナルド・トランプは脱イデオロギー的だ」とし、「彼のムーブメント(運動)は多くの面でイデオロギーを超越している」と話した。

ワシントン支局長コラム

トランプ相場、政治的現実に直面するか
トランプ氏の柔軟な世界観、良いのか悪いのか
トランプ政治中枢はトロイカ、中西部出身3人
 これは今年の大統領選がなぜ、ある意味トランプ氏の重大な勝利をはるかに超えて破壊的だったのかを物語ってもいる。これは、いわば「再編成選挙」という極めて珍しい出来事だった。つまり、民主・共和両党の中にある連合や支配的なイデオロギーが揺さぶられ、新たなパターンに組み直されつつあるのだ。

 トランプ氏が勝利したのは、かつては確実な民主党支持者だった白人ブルーカラー労働者の票のおかげであり、かつては確実な共和党支持者だった財界関係者からの票が少なくても勝てた。対立候補だった民主党のヒラリー・クリントン氏の得票数はトランプ氏より250万票余り上回っている。だが、民主党内で台頭してきたバーニー・サンダース氏のリベラル派と、夫のビル・クリントン元大統領がいまだにまとめ役となっている中道派との間に橋をかけようとしたヒラリー氏の試みは、全ての人に少しずつ不満を残すものになった。両党とも、イデオロギー面および地理上の連合体制を見直さねばならない。

 この混乱した地勢図はトランプ氏の政権移行の動きに見える。まず人事面からみてみよう。トランプ氏のポピュリストの側面が最も分かりやすく出ているのは、反エスタブリッシュメント(主流派)の急先鋒(せんぽう)で選挙陣営の責任者を務めたスティーブン・バノン氏を首席戦略官・上級顧問に起用したことだ。

 他にも伝統を引き継ぐというより、伝統に挑戦していることで知られる人材をいつくかの要職に起用している。保守派の草の根運動「ティーパーティー(茶会)」の支援を受けた経歴を持つマイク・ポンペオ下院議員が、意外にも中央情報局(CIA)長官に指名された。司法長官に指名されたジェフ・セッションズ上院議員は共和党の「インサイダー」だが、移民問題などではむしろ「アウトサイダー」的な発言を繰り返してきた。国家安全保障問題担当の大統領補佐官に起用された退役軍人のマイケル・フリン氏は、イスラム教徒に対する歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで情報機関の主流派と決別した。

 一方で完全な主流派や超党派の人物も起用されている。民主・共和両党とも伝統的に財務長官にはウォール街経験者を起用する傾向があるが、トランプ氏が同長官に起用したスティーブン・ムニューチン氏はまさにそうした人物で、共和党より民主党に力を貸した年月のほうが長い。サウスカロライナ州のニッキー・ヘイリー知事が国連大使に指名され、大統領首席補佐官には共和党全国委員会のラインス・プリーバス委員長が起用された。ヘイリー氏とプリーバス氏は、トランプ氏が予備選で下したどの主流派候補の次期政権でも居心地よく収まったことだろう。

 マイク・ペンス次期副大統領と、厚生長官に指名されたトム・プライス氏はともに伝統的なイデオロギー保守派で、政府の権限に警戒心を抱いている。だが商務長官に起用されたウィルバー・ロス氏は自身が投資してきた産業界を守るために政府の力をどう活用するのか、その方法を熟知している様子だ。

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インディアナ州の空調大手キヤリアによるメキシコへの事業移転を阻止したトランプ氏。今後も同じようなケースが続くのか、WSJのジェイソン・ベリーニ記者が解説(英語音声、英語字幕あり) Photo: Getty
 政策面から見ても、明確なイデオロギーを見つけることは同じように難しい。トランプ氏はオバマ政権の医療保険制度改革法をひっくり返すと先に主張していたが、これは保守派が言うところの「政府の行き過ぎ」阻止を優先するという方針に完全に一致する。だがその一方で、インディアナ州の雇用を守るため、空調大手キヤリアがメキシコへ事業を移転するのを説得して思いとどまらせるという手法は、市場での決断に影響を与えるために政府の力を使うという古いやり方だ。ツイッターへの投稿で明らかとなったように、財務面での優遇策を提示し、一方で報復措置をちらつかせるという手法である。

 外交政策面では、国家安全保障に関して保守的な見解を持つ人の中には、トランプ氏が台湾の蔡英文総統と電話で話したことを歓迎する向きもある。電話会談の結果、数十年間に及ぶ米国の外交儀礼は揺さぶられ、中国を怒らせるリスクにさらされている。一方でその同じ保守派は、ロシアのプーチン大統領とトランプ氏が居心地の良い関係を築きそうな雲行きであることにがくぜんとしている。

 従来通りのものは何ひとつない。だがトランプ氏にしてみれば、それが狙いなのかもしれない。トランプ氏にはっきりと認識できるイデオロギーがあるとすれば、企業経営者であれ中国政府であれ、相手をにらみ倒すような強さを単純に誇示することかもしれない。だとしても、トランプ氏の世界がかなり予測可能なものになるわけではない。それもまた次期大統領が望む状態なのではないか。

トランプ新大統領特集

トランプ次期米政権の主要ポスト顔ぶれ
トランプ氏の会見嫌い、市場に影響する恐れも
【社説】トランプ氏が切り始めた台湾政策のカード
【社説】米新政権のための北朝鮮制裁ガイド
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiT75in3t7QAhWDi7wKHafNAdEQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582479502192365624&usg=AFQjCNGT2yNTMacw9oX5NEL3AX4SsZh6YA


 

トランプ政権の政策、株押し上げは短期的か
VUCCI/ASSOCIATED PRESS
By AKANE OTANI AND BEN EISEN
2016 年 12 月 6 日 12:39 JST

 米金融大手ゴールドマン・サックス・グループによると、投資家はドナルド・トランプ次期米大統領の政策提案に自信を持ちすぎているかもしれない。

 トランプ氏はこれまでに、一連の減税や財政支出を通じて景気てこ入れを図る考えを示している。アナリストらはすでに、減税によって企業利益が幅広く増加すると予想。特に銀行や小売りなどの業界に大きな影響を及ぼす可能性があるとみている。その通りになれば、多くの銘柄で一段の上昇が見込めそうだ。

 だが、ゴールドマンの調査担当者らは、トランプ氏の減税案が実行されれば、財政赤字が2016年度の約5900億ドルから17年度は1兆ドル近くに拡大すると考えている。これは、米議会にとって受け入れがたいことかもしれない。

 ゴールドマンのチーフ米国株ストラテジスト、デービッド・コスティン氏は5日の電話会議で、「実際には、減税規模は市場が望んでいるほど大きくならないだろう」と述べた。

 米株式市場ではS&P500種指数が大統領選の投票日以降、約3%上昇している。その前提の一つは、現在、共和党が支配している議会の上下両院でこれらの政策が可決されることだ。多くのアナリストは、減税案については議会は同意できると考えている。

 しかし、ゴールドマンのアナリストらは11月30日付のリポートで、もしトランプ氏の減税案がそのまま実行された場合、財政赤字の対国内総生産(GDP)比率は16年度の3.2%から17年度には5%、18年度には6.1%に上昇すると試算している。

 コスティン氏は電話会議で「極めて重大な問題は、議会で共和党員だけでなく民主党員もこれほどの財政赤字の拡大を承認するかどうか、また減税規模をやや縮小して、ポートフォリオマネジャーが疑問視している企業利益へのメリットをそがざるを得なくなるかどうかだ」と指摘した。

 ゴールドマンのエコノミクスチームは、赤字財政支出の拡大幅はトランプ氏の案よりも小さくなり、財政赤字の対GDP比率は17年度は3.4%、18年度は4%になると予想している。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiOmLia3t7QAhUBe7wKHRLDDU0QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12576561340667814139804582479723971938752&usg=AFQjCNHxD1jMfeDd3S7o5Zz8VR6syIvSDw


 

女性が少ないファンド業界の問題
ミューチュアルファンドで女性が運用する資産の割合は2%
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ピムコのポートフォリオマネジャー、べス・マクリーン氏は、女性がより良い投資成果を得る場合がある理由を説明する(英語音声、英語字幕あり)
By
BEVERLY GOODMAN
2016 年 12 月 6 日 08:26 JST
•進まないファンド業界の女性進出
 調査会社モーニングスターが先週発表したリポートによると、ミューチュアルファンドの大半は男性によって運用されている。これは今さら驚くことではないが、リポートには残念な数字も含まれていた。世界的に女性マネジャーが運用するミューチュアルファンドは5本に1本で、この割合は2008年以来変わっていない。さらに、米国のファンドマネジャー全体で女性が占める割合は10%にすぎない。
 モーニングスターは当初、マネーマネジャーの投資手法における男女差の有無を調べようとしていた。しかしリポートの共同執筆者を務めたローラ・ラットン氏は、米国を対象とした昨年の調査では、比較するための十分な大きさを持つサンプルを抽出できなかったと述べる。今年の世界調査で得られたのより大きいサンプルを基に、現在モーニングスターは月次リターンに基づくパフォーマンスデータの評価を進めている。
•女性が男性をアウトパフォーム
 モーニングスターによると、米国ではファンド業界の資産のうち女性のみによって運用されているのはわずか2%である。一方、業界の資産の74%、ファンドの78%が男性のみによって運用されている。
 これは投資家にとって良いニュースではない。米カリフォルニア大学のテランス・オディーン氏とブラッド・バーバー氏は、2001年に3万5000人の投資家を対象とするデータを調査し、男性の方が女性よりもトレーディングの回数が45%多いことを示した。それによってリターンが目減りし、女性が年間平均で1ポイント、男性に対してアウトパフォームすることにつながった。
 「女性の取るリスクの方が少ない。男性の決断が明らかに劣っていたのではなく、劣った決断をする回数がより多かったということだ」とオディーン氏は説明する。同氏は、女性と男性といった大きな集団を比較する際には常に大きなばらつきが伴うとして、「男性は概して女性よりも背が高いといえるが、多くの男性よりも背の高い女性がたくさんいるのと同じことだ」と付け加える。
 そうであれば、一方の性がもう一方よりもある分野で秀でているという主張は疑う必要がある。しかしこれこそが、ファンドマネジャーの9割を男性が占めていることを投資家や金融業界が懸念すべき理由である。この数字は単に能力の差に基づくものではあり得ないのだ。
 モーニングスターによると、ファンド運営会社のうち女性の比率が最も高いのは全ファンドでチーム運用を行う方針を取るドッジ・アンド・コックスで、マネジャーの4分の1が女性である。次にフランクリン・テンプルトンの15%、JPモルガン・チェース(JPM)の14%が続き、バンガード、T.ロウ・プライス(TROW)、フィデリティは平均以下だった。
•女性がもたらす投資方針の多様性
 女性がもたらす多様性は、ファンド業界の活性化につながり得る。ピムコでバンクローン戦略を統括するポートフォリオマネジャーのべス・マクリーン氏は、「この研究は、女性が即時の見返りよりも長期的で思慮深い視点を持つことを示している」と指摘する。
 シュローダーのジェニー・ジョーンズ氏は、「女性は単一のポジションや機会にとらわれず、全体像を見る傾向がある」と述べる。TCWで3本の株式ファンドを運用するダイアン・ジャフィー氏は、「全ての投資家が同じ視点を持つべきではないという認識が大事だ。他者と異なる規律を持つ人材が求められている」と言う。
 女性はファンド業界の中でも成長の大きいパッシブ運用のファンド、ファンド・オブ・ファンズ、環境・社会・ガバナンス指標に従うファンドなどに進出している。しかし、ラットン氏は「業界で最も影響力と権力を持っているのは依然としてアクティブ運用のファンドだ」と指摘する。
 では、なぜ女性の銘柄選択によるマネジャーはこれほど少ないのか。筆者が話した女性のファンドマネジャー(大半は匿名希望で、上に挙げた各氏と同一人物とは限らない)は日常的な「傾向」の影響を挙げた。男性マネジャーが昼食や飲みに男性の部下を連れて行く傾向、男性トレーダー同士で盛り上がっている話題から女性が外される傾向、顧客やテレビ番組への露出で男性ファンドマネジャーが前面に出る傾向などである。女性マネジャーの一人は「自分が女性でなければ、より多くの資金を運用していただろうかと考えることはある」とつぶやいた。
 これはファンド業界で働くことを検討している女性と投資家の双方にとって不運なことだ。「多様性を促進すべき極めて合理的な根拠が存在する。アクティブ運用のマネジャーがパフォーマンスに苦戦している環境では特にそうだ」とラットン氏は述べる。

(左列)株式ファンド、マネー・マーケット・ファンドの資金フローの推移、株式の月間キャッシュフローの推移、(右列)地方債ファンド、課税債ファンドの資金フローの推移、株式ポートフォリオの資産に対するキャッシュの比率
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RB604_ONBX65_NS_20161205014043.png

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjInKTu3d7QAhWKa7wKHQJXBdMQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12576561340667814139804582478023197567632&usg=AFQjCNGpfmhFBQyeZJJm6udz5cPK--gPeA


 
NY連銀総裁、段階的な利上げを支持 
ニューヨーク連銀のダドリー総裁(写真)は、経済が期待通りに進めば、金融政策の緩和度を少しずつ低下するのが好ましいと述べた

By MICHAEL S. DERBY
2016 年 12 月 6 日 00:36 JST

 米ニューヨーク連銀のダドリー総裁は5日、連邦準備制度理事会(FRB)が複数回の追加利上げを実施する可能性が高いとの見方を示した。最近の金融市場でより積極的な金融政策の動きが織り込まれていることは問題視していないと述べた。

 ダドリー総裁はベター・ニューヨーク協会(ABNY)での講演向け原稿で、雇用市場が拡大を続け、 経済が長期的に持続できるペースを若干上回って成長し、インフレ率が徐々に2%へ戻ることを想定すると「短期金利の水準を段階的に引き上げ、時間をかけて金融政策の緩和度を少しずつ低くするのが好ましい」と述べた。

 ダドリー総裁は連邦公開市場委員会(FOMC)の副議長を務め、今回の講演原稿では適切だと考える利上げの時期に言及しなかった。13・14日のFOMCを控え、参加者は6日以降、公の場で経済や金融政策に関連した発言を禁じられる。

 ダドリー総裁は、トランプ次期大統領の政策が成長を促進するという期待に沿う場合「最近の緩やかな金融情勢の引き締めがおおむね適切のようだ」とし、FRBの利上げが予想を上回る可能性があることを示唆した。それでも、今後何が起こるかについて結論を下すのは時期尚早だとみている。来年の経済見通しがより明確になるのに従って評価をあらため、ふさわしい金融政策に関する見解を適宜示していく意向だという。

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwi8sP-m3N7QAhVFJJQKHeFlBDoQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582478720610387702&usg=AFQjCNF4fveRImXpYPW2hmV7Ch5_QgUilw

 

ECBの金融政策、考慮すべきはインフレだけ=バイトマン理事


By TOM FAIRLESS
2016 年 12 月 6 日 01:49 JST

 ドイツ連邦銀行(中央銀行)総裁を務める欧州中央銀行(ECB)のバイトマン理事は5日、債務危機やポピュリズム(大衆迎合主義)との闘いに金融緩和策を利用すべきではないとの見方を明らかにした。イタリアの国民投票で憲法改正が否決されたことによる政策の変更には反対する考えを示唆した。

 バイトマン理事はミュンヘンで、国民投票結果を受けてイタリアの経済改革が遅れる可能性があると指摘したが、「この世の終わりでないことは確かだ」と述べた。

 ECBは8日の理事会で金融政策を協議する。来年3月末までとされている総額1兆7000億ユーロ(約210兆円)の債券買い入れ策について、今後の運用方法を話し合う見通しだ。

 バイトマン理事は、利下げを求める政権からの圧力などの政治的な要素を排除し、インフレ見通しだけに基づいて金融政策判断を下すべきだとした。

 「中銀が政治家に救いの手を差し伸べたり、民主的な手続きに影響を及ぼそうとしたりすれば、独立を脅かす政治問題化につながる」と述べた。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjA3Lzb3N7QAhWCkpQKHe5mAdgQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582478812739329688&usg=AFQjCNGfATZvQdIYuQ45JfZlchYzkFRGiw


 

アマゾン、レジなしコンビニ開店へ ドライブスルーも検討 
少なくとも3形態検討、2000店の展開視野
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コンビニ型店舗「アマゾン・ゴー」は、人工知能技術を活用して精算の必要をなくし、レジも設置しない(英語字幕あり) Photo: Amazon.com Inc.
By LAURA STEVENS
2016 年 12 月 6 日 08:09 JST 更新

 米アマゾン・ドット・コムが5日発表した同社初の小規模食料品店「アマゾン・ゴー」は、食料品販売の実店舗展開で検討中の少なくとも3形態の一つとなる。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

 コンビニエンスストアに似た「ゴー」店舗に比べ、他に計画中の店舗のうち2形態はより大型となる。関係者の1人によると、アマゾンの技術チームは11月、車で商品を受け取れる機能も備えた多機能大型店の出店計画を承認し、採用と計画を進める道が開けた。店内販売はしないドライブスルー型店舗も、数週間以内にシアトルで開店する見通しだ。

 アマゾンは新たな実験拠点の成功次第で、2000店余りの食料品実店舗の展開を視野に入れているという。

 アマゾン・ゴーは、2017年初めに本拠地のワシントン州シアトルで開店する。

 アマゾンが公開した動画によると、店舗の大きさは約1800平方フィート(約167平方メートル)で、コンビニエンスストアの形態に似た店構え。人工知能技術を活用して精算の必要をなくし、レジも設置しない。顧客が入店時に自分の携帯電話をキオスクにかざすことで、顧客が棚から手に取った品目を自動的に識別する。顧客が店舗を出ると顧客口座で精算し、領収書を送信する仕組みだ。

 アマゾンは「当社のレジ不要のショッピングは、画像認識技術、センサーフュージョン、深層学習など自動運転に用いられるのと同じタイプの技術を活用することで実現した」と述べた。

 食品販売は依然として実店舗での売り上げが大半を占める数少ない分野。アマゾンはそこでシェアを伸ばすため「プロジェクト・コモ」と名付けた実店舗設置の取り組みを推進しており、アマゾン・ゴーはその計画の一環だ。商品受け取り拠点や小規模店舗の設置を通じ、シェアを拡大して小売り大手ウォルマート・ストアーズなどに対する競争力を高めることを目指している。

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米小売り大手、ネット購入の店舗受け取りを強化―年末商戦を前に
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiZmIny3N7QAhXMFJQKHWauC9cQFgghMAE&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582479221296885172&usg=AFQjCNHxp7P_cQqPKCFMozrPOt3d7hrklQ
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/436.html

[経世済民116] 液体ミルク解禁へ、そもそも今までどうして導入されなかった? サルの「石器」が投げかける疑問 データ共有と再利用促進のため
WEDGE REPORT
液体ミルク解禁へ、そもそも今までどうして導入されなかった?
2016/12/06
小川たまか (ライター・プレスラボ取締役)
 今年になってついに検討が始まった乳児用「液体ミルク」の導入。海外では一般に普及しており、日本でも震災時や外出時などの必要性から、導入を求める声が広がっていた。そもそも、これまでなぜ日本では液体ミルクが使われてこなかったのだろうか。2014年に導入を求めるインターネット署名を立ち上げ、活動を続けてきた「乳児用液体ミルクプロジェクト」代表・末永恵理さんに液体ミルクのこれまでとこれからを聞いた。

※ちなみに筆者は子育て経験がない。同席した編集担当のKさんは、1児の母。

――10月に、液体ミルクの国内販売を認める方向で検討に入るという会見があり、これが「液体ミルクの解禁へ」と報じられています。とはいえ、実際に導入されるまでにはまだ時間がかかりそうですね。

末永:そうですね。今は専門調査会が立ち上がることが決まったという段階です。これから製造のための規格基準を決めていくことになります。メーカーや厚生労働省が規格基準を作り、それを法整備に落とし込んで、法律が決まったらその法律にのっとってメーカーが液体ミルクを製造してみて、それを消費期限の最後まで保管して安全を確認して。それでようやく販売となるので、早くても3〜4年はかかるのではないでしょうか。

――結構かかりますね。海外で使われている液体ミルクの輸入を先に始めることは難しいのでしょうか?

末永:私もその案を押していきたいなと思っています。ただ、消費者庁が管轄している乳児用食品の表示基準の項目には現状で粉ミルクしかないんです。つまり、液体ミルクを輸入しても「乳飲料」という括りになってしまって、赤ちゃんに飲ませていいという表示ができない。だから、その表示の改定が必要なのですが、消費者庁も厚生労働省で規格基準が決められてから表示の改定を行いたい……という意図もあると思うので、消費者庁が先か、厚生労働省が先か、どちらかなというところですね。


(写真:Alamy/アフロ)
「災害時のために液体ミルクを備蓄しておきたい」声も

――育児経験がないとミルクのことってなかなか知る機会がありません。ウェッジの読者にも、よく知らない人は多いかもしれませんので、基本的なことから伺っても良いでしょうか。

末永:まず飲む時期についてですが、赤ちゃんが母乳かミルクだけで育つのは生後半年頃まで。6カ月を過ぎた頃から、合わせて離乳食も食べ始めます。そこからは個人差があって、1歳頃にミルクも母乳もやめる子もいるし、2歳頃まで続ける子もいます。1歳頃からは、フォローアップミルクという、栄養成分の違うミルクを離乳食の足しにすることも多いです。このフォローアップミルクについても、海外では液体ミルクが販売されています。

――粉ミルクを作るのがなかなか手間なんですよね。話を聞くと驚きます。

末永:私も子どもが生まれるのが遅かったので、友達が遊びに来て「ミルク作るからお湯貸して」って言われたりすると「お湯?」って思ってましたね(笑)。

 手順としては、粉をお湯で溶いて、それを赤ちゃんが飲んでもやけどしない人肌の温度まで冷まして飲ませます。3〜10分ほどかかる。作り置きはできないので、生まれたばかりの頃は2時間置きで作ったり。赤ちゃんがお腹を空かせて泣き始めると、粉ミルクを作るためにそばを離れなければいけないですが、離れるとさらに激しく泣いて、ミルクができた頃にはもう泣き止み方がわからなくて、ミルクが飲めない、みたいな悪循環になることも。泣かせっぱなしなので「ごめん、ごめん」って焦るんですよね。

編集担当K:焦りますよね。焦りすぎて哺乳瓶の口の部分を落としちゃって、「あ、もう1回消毒しなきゃ」みたいな。充分に冷ましたつもりでも、「ダメだ、もう1回」みたいなこともありますし。

――大変ですね。

末永:大変なんです。お出かけする場合は、魔法瓶にいっぱいお湯を入れます。量が少ないと冷めてしまうので。でもお湯だけで作ると冷めるのに時間がかかるので、水も一緒に持って行くことも。

――その分、母乳なら楽とも言われたりしますが、母乳をあげているお母さんでも、急に出なくなる、ということもあるんですよね。

末永:疲れると出が悪くなるんですよね。水分や栄養が足りないと、途端に出が悪くなります。

――熊本地震の際は、フィンランドから液体ミルクが被災地へ送られました。震災のような緊急時の場合にも、本当に役立つと思います。

末永:液体ミルクに関するアンケートを取ってみたら、「今は母乳育児しているけれど、災害時のために液体ミルクを備蓄しておきたい」という方も多かったです。母乳にしろミルクにしろ、赤ちゃんはそれがなければ生きていけないので、保護者は切実な気持ちで考えていると思います。

――液体ミルクの導入がこれまであまり話題にならなかったのは、少し待機児童の問題に似ているなと思いました。不便さや悩みを抱えているのが一時期で、その時期が過ぎると保護者はまた別の育児に関する問題に行き当たるので、訴えている暇がない。

末永:そうですね。次のミッションが始まっちゃう。ミルク終わったら保育園に入れなきゃ、保育園に入れたら仕事復帰。過ぎ去ると次のものが迫ってきちゃうんですよね。

「ニーズが伝わってないなら伝えよう」と署名

――末永さんは2014年にお子さんを出産されて、その後でChange.orgで署名活動をスタートされたんですよね。これまでに4万人以上が署名しています。

末永:そうですね。4月に出産して、半年ほどミルクと母乳の混合で育児をして、10月頃から調べ始めて11月に署名を開始しました。始めて1カ月くらいで、1万件ぐらいパッと署名が集まったんですね。いったん広まった後はあまり動きがなかったのですが、今年4月に熊本地震があって、そのときにもう一度署名が広がりました。危機感が強くなったからだと思います。そうこうしているうちに、液体ミルクを知っている人の母数が増えた気がします。

――署名を始めたきっかけを教えてください。

末永:私の場合、生後半年を過ぎたらミルクを飲んでくれなくなって母乳ばかりになったんですね。ミルクを作る手間はそこでかからないようになったんですけど、それをきっかけに「そういえば液体ミルクってあったな」って思い出して調べてみました。調べてみたら、厚生労働省が認可していないからという情報を見つけたので、本当かな? って思って厚労省に電話してみたんですよ。「なぜ認可しないんですか?」って。

 そうしたら、申請が来ていないからやっていない、止めてるわけではないよという回答で。そうなんだと思って、今度はミルクメーカーさんに電話したんです。メーカーさんは「そんなに要望がたくさんあるわけではないので、作る話になっていません」と。

――それなら、要望があることを署名で示そう、と。

末永:(厚労省もメーカーも)皆さん、とりあえず悪気があるわけではなさそうだぞって思いました。ニーズがあることが伝わっていないから、どれだけニーズがあるかを集めてみます、という気持ちでしたね。文句ばかり言うとメーカーさんとかも困っちゃうのかなと思って、それは言わないように気を付けました。

――なるほど。

末永:私も厚労省に電話した時点では、「なんで許可してくれないんだろう? 大変なのに」と思っていました。厚労省がまず法律を作って、作るメーカーを募集するというわけにはいかないのかと聞いたら、「厚労省はミルクの専門家ではないから、(専門家である)メーカーさんからやりたいものが出た段階で、そこをたたき台として一緒に考えていく」と言われて、確かにそうだなと思いました。みんな悪意がないんですよね、思ったほど(笑)。

――国内のミルクメーカーが、今後は一緒に検討を始めるのですね。

末永:今は日本の粉ミルクメーカーは6社だけです。メーカーさんも大変で、赤ちゃんが減っていく中で、粉ミルクメーカーは生き残らなければいけないし、安全なものを作らなければいけない責任感がすごくあるから、簡単に「液体ミルク作る」と言えない状況はあると思います。

 だからそこをたとえば、他業種の飲料水メーカーや海外メーカーを提携してリスクを分散できるといいですね。リスクが高すぎるからできませんという議論にならないように、いろいろな業界を巻き込んでいけたらいいと思っています。今も、他業種メーカーの担当者さんを呼んで勉強会をしていますが、今後はもう少し積極的にやっていこうかなと思っています。

編集担当K:たぶん売れますよね。

末永:ただ、継続的に買う人がいないと運営が成り立たない、ラインが回らない。粉ミルクメーカーさんは、そのあたりを心配されているのかなと思います。

――ジュースとかお茶は毎年新発売が出るのに、ミルクとなると難しいんですね。

末永:そうなんです。飲料水メーカーって、1000品番作って翌年に残るのが3品番と聞きました。どんどん開発する。でもミルクの場合は赤ちゃんの主食なので、1億個に1個でも何か問題があったら命に関わること。粉ミルクメーカーの方に聞くと、飲料は基本的に水の部分が多いから、菌の発生の仕方も違うと。

――少子化で赤ちゃんも少ないし。

末永:そうなんです。赤ちゃん増えている国が世界中でたくさんある中で、海外のミルクメーカーさんもあえて日本で商売しようとはなかなか思わないかもしれない。

10代の男の子から署名も

――検索欄に「液体ミルク」と打つと、関連検索に「デメリット」と出るんですね。まだ国内にないものなので、不安を感じたり、「今まで導入されていないのはデメリットがあるからでは?」と考えている人もいるのだと思います。液体ミルクのデメリットはあるでしょうか?

末永:デメリットの一つは、価格が粉よりも高いことですね。アメリカの場合、7割ぐらいの人が粉ミルクを使っていて、残りが液体ミルクや薄めて使う液体ミルク。ヨーロッパの場合、もう少し液体ミルクを使っている割合が高くて、それはアメリカの場合、ヨーロッパよりも(液体ミルクと粉ミルクの)価格差が大きいからだと思います。200ミリの液体ミルクが、イギリスだと1本150円ぐらい、アメリカだと200円以上するんですよ。

――確かに1本200円以上だとちょっと高い気が。

末永:そうですね。1日に何回も飲むものなので。あとデメリットは、温度の問題があるかもしれません。粉ミルクを湯で溶いて人肌に冷ましたものに慣れていると、基本的に常温で使う液体ミルクをあげようとしても、飲みなれなくて飲んでくれないかもしれない。

編集担当K:そうすると結局温めないといけない。

末永:そうですね。

――あと、衛生上の問題があるのでは? と気にしている人もいるかもしれません。

末永:それはないんですよ。むしろ、WHOが感染リスクの高い赤ちゃんには粉ミルクよりも液体ミルクの方が感染リスクが低いと提唱しているほど。封を開ける前は無菌状態なので、粉ミルクよりもさらに衛生状態は良いんです。

 液体で保管しておくことに不安を感じる人もいるかもしれませんが、技術的にはクリアしています。ただ、ロングライフミルクってわかりますか? 紙パックで常温でも3カ月以上保存できる牛乳のことです。日本でこれを発売したしたときに、「牛乳=生鮮食品」のイメージが強くて全然売れなかったらしいんです。

――食品のイメージを変えるのはなかなか難しいんですね……。

末永:そうですね。消費者のマインドが保守的というか。だから、粉ミルクメーカーさんが「液体ミルクを作っても売れないのでは?」と心配するのはわかりますよね。

――とはいえ、必要としている親子はたくさんいるので、なんとか早く販売が始まってほしいですね。活動に対して、男性から意見が来ることはありますか?

末永:はい。たとえば双子のパパから、切実にミルクが必要という声があります。母乳が出ていたとしても、双子の場合は一人にあげているときに、もう一人いるので。

編集担当K:署名を見ていたら10代の男の子から「僕はまだ何も子育てのことがわからないけれど、たぶん重要だと思うので署名に賛同します」というようなコメントがあって、こんな子もいるんだって涙が出そうになりました。

末永:ボランティアしたいって連絡をくれた女子高生の子もいます。彼女は英語も得意なので、調べものの手伝いとかしたいと言ってくれて。受けている教育が私たちの頃とは違うのかな(笑)。希望を感じますよね。先日、一緒に小池百合子都知事に会いに行きました。

――どんどん大きな動きになっていきますね。

末永:そうですね。ここで立ち止まるとなかなか難しいと思うので、ぜひ、早めに解禁してほしいです。今後の取り組みもFacebookページで報告していくつもりですので、ぜひ応援していただけるとうれしいです。「乳児用液体ミルクプロジェクト」の署名も引き続きよろしくお願いします。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8390

 


Nature Japan Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 12 News サルの「石器」が投げかける疑問
NEWS


サルの「石器」が投げかける疑問

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161204
原文:Nature (2016-10-19) | doi: 10.1038/nature.2016.20816 | Monkey ‘tools’ raise questions over human archaeological record
Ewen Callaway

ブラジルに生息するオマキザルの一種には石を打ち割る習性があり、その結果生じる石の破片は、旧石器時代の人類が作った剥片石器によく似ていることが報告された。これは、考古学における石器の解釈にまさに一石を投じる発見かもしれない。


石を打ち割って得られた剥片を、さらに別の石に打ちつけて石英の粉末を得るヒゲオマキザル。 | 拡大する
M.Haslam
2016年1月、オックスフォード大学(英国)の考古学者Tomos Proffittは、同僚のMichael Haslamが持ち帰った珪岩(主に石英からなる岩石)の加工片を調べていた。そのいくつかは、アフリカ東部で発見された、300万〜200万年前に人類が作製したとされる縁の鋭い石器「剥片石器」によく似ていた。

ところがHaslamによると、それらの加工片はこの2年ほどの間にブラジルのヒゲオマキザル(別名クロスジオマキザル;Sapajus libidinosus)によって作られたものだという。「あまりの衝撃に言葉を失いました」とProffitt。「私はヒト族の石器の研究で博士号を取得しました。石器の作り方もよく知っています。そんな私が見ても、この石片はヒトが作った石器にしか見えなかったのです」。


サルも「石器」を作る?
カピバラ山地国立公園(ブラジル)のヒゲオマキザルが石を打ち割っている様子。
ProffittとHaslamが率いる研究チームは、この大発見とそれに続く詳細な調査結果をNature 2016年11月3日号85ページに報告した1。

研究チームによれば、ヒゲオマキザルはこの「石器」を、道具として使おうとして作っているわけではないという。故意に石を打ち割ってはいるが、その結果生じた石片は意図したものではないらしいのだ。今回の発見で、これまで人類が作ったとされてきた石器の中にサルが作ったものが含まれている可能性が出てきたと、一部の科学者は指摘する。そうなれば、最近ケニアで出土した、現時点で最古となる330万年前の剥片石器も、疑惑の対象となるだろう。

オックスフォード大学の霊長類考古学者Susana Carvalhoは、今回の論文を画期的なものと評価する。「このオマキザルは、意図せずして、石器と呼ばれるべきものを作り出しているのです」。

サルと道具の関係

霊長類の中には、ごく簡単な道具を使うものもいる。霊長類学者のJane Goodallが、チンパンジーが棒を使って「シロアリ釣り」をすることを報告したときに、著名な古人類学者Louis Leakeyが「これはもう『道具』を定義し直すか、『ヒト』を定義し直すか、あるいはチンパンジーはヒトだと認めるしかないだろう」と返信したことは有名だ2。

オマキザルは最も日常的に道具を用いる動物の一群で、中でもブラジルのカピバラ山地国立公園に生息する野生のヒゲオマキザルは、石を複数の目的で利用する、今のところ唯一の非ヒト霊長類である。このサルは石を使って木の実を割るだけでなく、木の幹や岩に穴を開けたり地面に穴を掘るなどして餌を得たり、小石を砕いたり、また性的ディスプレイの一環として雌が雄に石を投げつけることが確認されている。

カピバラ山地国立公園のヒゲオマキザルが変わった石の使い方をしているのが初めて観察されたのは、2005年のことだった。サルたちが、侵食によって崩れかけている珪岩の崖の横で石を拾い、別の石に何度も叩きつけて、こぼれ落ちた粉を舐めている様子が確認されたのである。Proffittは、石の粉を舐めるという行動の理由について、ミネラルを補うためや、腸の状態を改善するため、あるいは単に舌ざわりを楽しんでいるだけかもしれないと推測する。「でも本当の理由は分かりません」。

ヒゲオマキザルのこの特異な行動についての以前の研究でも、使われた石のサイズや形は調べられていた3。だが、それは割れたかけらの大きい方のみが対象で、Proffittによると、小さい方のかけらには誰も目を留めておらず、最初にこれらに注目して集めだしたのはHaslamだったという。

Proffittの目には、Haslamが集めてきた破片の多くが、打製石器の1つである剥片石器に似ているように見えた。剥片石器は、Leakeyとその妻Maryによって、1930年代にオルドバイ峡谷(タンザニア)で初めて発見された。これらの石器は年代が約250万〜170万年前で、手に持った叩き石(ハンマー)を台石に角度を付けて打ちつけ、薄く尖った石片を剥ぎ取ることにより作られた、と考えられてきた。付近からは、刃物の痕跡が残った動物の骨も発見されたことから、この時代のヒト族が動物を解体するのに剥片石器を使っていたことが示唆される。

誰が作ったのか?

Proffittによると、ヒゲオマキザルが作った剥片の約半数に、オルドバイ遺跡で発見された「チョッパー(礫の片面の一部を打ち欠いて刃とした石器)」と同じ特徴が見られたという。中には、同じ叩き石から連続して打ち剥がされたように見える、一連の剥片群もあった。「このような特徴は、これまでヒトとしか関連付けられたことがありません」とProffittは言う。それでも彼は、サルたちによる剥片の作製は意図的なものではない、と強調する。「サルが得られた剥片を使うことはありませんでした。彼らはあくまでも石を割りたいだけなのです」。

Proffittはまた、オルドワン石器(オルドバイ型石器)が人類によって作られたとするのは間違いではないと考えている。なぜならこれらは、ヒト族の遺骸や、ヒトとの関連を裏付けるその他の証拠と一緒に発見されているからだ。けれども彼は、アフリカでより古い石器を探している際に剥片だけが見つかって、他の証拠が存在しない場合には、安易にそれを人工物だと結論付けてはならないと警鐘を鳴らす。ヒゲオマキザルと似た行動をする古代の類人猿やサルが作った可能性があるからだ。

ケニアのロメクウィ遺跡で最近発見された330万年前の剥片を含む石器群4は、世界最古の石器作製の証拠と考えられている。Proffittは、これも人類によるものだろうと考えているが、Carvalhoはやや懐疑的だ。「これらの石器群がヒト以外の動物によって作られた可能性はないでしょうか? 今回のヒゲオマキザルの例があるのですから、可能性はあるはずです」と彼女は言う。

ロメクウィ遺跡で石器を発見した研究チームのメンバーである、パリ西ナンテール・ラ・デファンス大学(フランス)の考古学者Hélène Rocheは、ロメクウィの石器の中には重さ15kgに達するものもあり、ヒゲオマキザルが作った小さな剥片と間違える余地はないと言う。彼女はProffittらの研究について「非常に素晴らしく、重要なものだと思いますが、それはあくまでもヒゲオマキザルを理解する上でであって、初期人類の理解にはあまり関係がないと思います」と言う。

ジョージ・ワシントン大学(米国ワシントンD.C.)の古人類学者Bernard Woodは、今回のヒゲオマキザルの道具がヒト族の石器によく似ていることは認めているものの、今回の知見が古人類学に関係してくるとまでは確信が持てないという。「これは一体何を意味するんだ? というのが今の率直な感想です」。

(翻訳:三枝小枝子)

参考文献
Proffitt, T. et al. Nature (2016).
Goodall, J. Science 282, 2184–2185 (1998).
Falótico, T. & Ottoni, E. B. Behaviour 153, 421–442 (2016).
Harmand, S. et al. Nature 521, 310–315 (2015).
http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v13/n12/

 

データ共有と再利用促進のための新方針

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161239
原文:Nature (2016-09-08) | doi: 10.1038/537138a | Where are the data?
Natureおよび関連12誌では、論文作成に利用されたデータセットの利用可能性と利用方法の明記を義務化しました。


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wowomnom/ iStock / Getty Images Plus /Getty
データ共有の考え方が研究コミュニティーにおいて採用されるようになりました。そこでNatureとNature関連誌12誌では2016年9月から、掲載受理された論文の基礎データについて、著者以外の者による利用可能性と(可能な場合の)利用方法を明示した「データ利用可能性ステートメント」(data availability statement)を論文中に記載することを義務化しました(go.nature.com/2bf4vqn参照)。論文著者は、報告する知見の解釈、再現と発展に必要な「最低限のデータセット」の利用可能性(availability)を申告する必要があります。なお、研究に使用したデータセットが公共的なアーカイブに保存されている場合も記載の対象です。利用が制限されている場合(例えば、プライバシーによる制限がある場合やデータが第三者によって管理されている場合)には、その点を明確にすることも論文著者に求められます。

我々は長年にわたって、データの利用可能性を論文の掲載条件とすることを支持してきました。今回の新方針ではそれを発展させ、さらにデータの引用を支持する姿勢を明確に示しています。論文著者は、デジタルオブジェクト識別子(DOI)が付与されたデータセットを引用することが推奨されます。

新方針導入に先駆け、2016年3月からNature関連5誌(Nature Cell Biology、Nature Communications、Nature Geoscience、Nature Neuroscience、Nature Physics)で試験的な実施を始めました。その結果、研究分野によってデータの共有とアクセスの文化に違いがあり、広く認知された公共的なリポジトリがないことが、公共的なリポジトリーへのデータ寄託にとって重大な障害となり得ることが確認されました。一方、データの寄託により既発表論文の認知度が高まるとともに再利用が促進され、データが引用されることでデータを生成して共有できるようにした者の認知度が高まる、という認識は、データの公開と共有が採用されていない研究分野でも深まってきています。

この新方針は、2017年初めまでに多種多様なNature関連誌で実施されます。新方針実施により、データ共有に研究分野間格差が存在する原因の解明および課題の洗い出しが進み、データ共有の実施拡大が促進されることを期待しています。

こうした動きは論文誌だけではありません。例えば、研究助成機関でもデータ利用可能性ステートメントが導入されています。英国の7つの研究審議会は、助成金受領者にこのステートメントを義務付けており、米国立衛生研究所は、研究者に対し自らの研究データの管理計画を提出することを求めています。

我々は、NatureおよびNature関連誌に掲載される論文にデータの利用可能性に関する情報を一貫して記載することで、将来的に研究者のデータ再利用が促進されることを期待しています。そして、論文誌が公共的なリポジトリーでのデータのアーカイブ化を義務付けている場合において、既発表論文にデータの利用可能性に関するステートメントとデータへの永続的なリンクを記載することが、公共的なリポジトリーでのデータの利用可能性と方針の遵守を確実なものとするための有効な方法であることが示されています(T. H. Vines et al. FASEB J. 27, 1304-1308; 2013)。

この新方針は、Natureの出版元であるSpringer Natureが、発行する全論文誌に研究データに関する共通の方針を導入し、標準化するという野心的なプロジェクトを2016年7月に始動したことに引き続いて実施されました(go.nature.com/2by6l6x参照)。このプロジェクトでは、明確な共通の枠組みを定めることで、各論文誌が各専門家のコミュニティーの状況を反映したやり方でデータ共有を奨励できるようにします。Natureのデータに関する方針もこの共通の枠組みに合わせて策定されます。

(翻訳:菊川要)
http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v13/n12/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E5%85%B1%E6%9C%89%E3%81%A8%E5%86%8D%E5%88%A9%E7%94%A8%E4%BF%83%E9%80%B2%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E6%96%B0%E6%96%B9%E9%87%9D/80896
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/438.html

[国際16] 移民を追い出しても米国経済は大丈夫なのか  トランプ支持者の貧しい生活 黒人より絶望深い白人労働者 外国人労働者問題の解
前向きに読み解く経済の裏側
移民を追い出しても米国経済は大丈夫なのか 
トランプ政策を検証する(1)
2016/12/05
塚崎公義 (久留米大学商学部教授)
 ドナルド・トランプ氏(トランプ次期米国大統領。以下同様)は、移民に対して強硬な発言を繰り返しています。選挙が終わってから、若干のトーンダウンは見せていますが、移民に厳しい政権運営が行われる事は確実です。そうした中で、「移民が可哀想だ」という感情論はさておき、「米国経済を支えている移民を追い返してしまって米国経済は大丈夫か?」という疑問を持つ人も多いようです。筆者は大丈夫だと思っていますが、今回は米国経済と移民の関係について考えてみましょう。


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最下層の仕事は移民が担当

 米国は、移民の国です。最初に到着した移民が先住民族を駆逐して土地の支配者となり、アフリカから黒人を連れて来て奴隷にしました。自分たちがやりたくない3K労働(キツイ、キタナイ、キケン)を押し付けるためです。奴隷が禁止されると、今度は新しく移民として入国した人々に3K労働を押し付けたのでしょう。それでも貧しい祖国にいるよりは、豊かな米国で3K労働に従事する方がマシだったので、多くの人々が次々と移民として入国して来たのでしょう。

 こうして、「先に入国した移民が、後から入国した移民を自分より下に置くことで、少しずつ国内の地位が上昇していく」というシステムが成り立っているのでしょう。

 余談ですが、そうして豊かに暮らしていた白人の中流階級が、グローバリゼーションによって生活の安定を脅かされている事に危機感を感じ、グローバリゼーションに反対しているトランプ候補に投票したのだと言われています。

 グローバリゼーションは、移民として入国してもいない中国人やメキシコ人が安い給料で作った製品が、自分たちの仕事を奪うようになったということで、白人の不満の源となったはずです。だからこそ中国製品に高関税をかけるといった主張に白人たちが共感したのでしょう。

 いま一つは、移民が多すぎて、3K労働だけでなく、自分たちの仕事にまで参入して来て自分たちの仕事を奪っている、と考えているのでしょう。だから、移民を追い返すというトランプ候補の主張が支持されたのでしょう。

本音と建前の落差に疲れている白人たち

 もちろん、「白人は有色人種より先に移民してきたのだから偉いのだ」などと表立って言う人は少ないでしょうが、世の中には、本音と建前があります。建前はともかく、本音ではそう思っている人々が、自分たちの生活レベルが下がって来た時に、後から来た移民に仕事を奪われている事に怒りを感じることは自然なことなのでしょう。

 余談ですが、建前を追求し過ぎて「ポリコレ」を追求し過ぎたために、米国人が息苦しさを感じ、これがトランプ候補勝利の一因となった、という指摘があるほど、最近の米国では建前が重視されているようです。ちなみに、ポリコレとは、ポリティカル・コレクトネスの略で、たとえばメリークリスマスと言うと非キリスト教徒が傷つくので、「シーズンズ・グリーティング(季節の御挨拶)」と言うべき、といったことです。

 しかし、米国では、ほんの数十年前までは、公然と人種差別が行なわれていたわけです。だからこそポリコレが必要だとされているのでしょう。ポリコレを強調しすぎるくらいでないと、様々な差別が公然と行われかねないから、という事なのでしょう。これを裏から見れば、建前とは別に本音が厳然と存在している、という事になります。人種差別についても、人々の意識としても実態としても、存在していると想像されます。

 そこで以下では、ポリコレを忘れて、「米国政府や米国人の本音」を筆者なりに想像してみます。筆者自身が「移民には3K労働が相応しい」と考えているわけではありませんので、誤解のないように御願い致します。

違法移民と適法移民の区別が重要

 移民は、米国経済にとって必要です。白人たちも、それは充分理解しているはずです。新しく流入する移民が全くいなければ、3K労働の担い手が不足してしまうからです。したがって、一定数の新規移民が合法的に流入して来ることは、コンセンサスとなっているはずです。

 問題は、違法に入国してくる移民です。これは、米国政府が必要と考えている3K労働者の数に上乗せして流入して来る人々だからです。この人々は、招かれざる人々なのですから、メキシコとの間に壁を作って流入を阻止する事は「望ましい」ことです。すでに入国している不法移民も、追い返す事が「正しい」ことです。なぜならば、彼等は違法入国者であり、米国が必要としていない人々だからです。

 米国で3K労働に従事する労働者が足りないのであれば、違法移民の一部を合法化すれば良いのですが、そうでない限りは追い返せば良いのです。

 本稿の冒頭で、「米国経済を支えている移民を追い返してしまって米国経済は大丈夫か?」という疑問を持つ人も多いようです、と記しました。そうした人々には、合法的な移民と違法な移民を明確に区別して考えていただければ幸いです。

日本は3K労働者不足を移民で補うべからず

 日本の入国管理政策は、「高度な人材は積極的に受け入れるが、単純労働者は受け入れない」ということを基本としています。そこには3K労働は移民に任せよう、という発想はありません。むしろ、移民が流入して単純労働者として安い賃金で3K労働に従事すると、日本人の雇用が失われてしまう、という事が懸念されているわけです。

 そうした中で、介護労働者が不足しているため、外国人を介護労働者として受け入れようという人が増えてきました。労働者として受け入れて、仕事をやめたら帰国してもらうのか、移民として日本に移り住んでもらうのか、という点は論者によって区々ですが、本稿ではそこは置いておきましょう。

 日本では最近まで、介護労働者だけが不足していました。それならば、介護労働者の待遇を改善して、一般の失業者が介護に従事するようにするべきでしょう。「財政赤字を減らすために介護報酬を低く抑え、それによって介護労働者の賃金が低く抑えられている」ことが原因ならば、選択肢は二つしかありません。「もっと税金等を投入して、介護労働者の待遇を改善する」「介護労働者不足なので、介護サービスを半減する。しっかり介護して欲しいなら、自費で介護師を雇うべし」の二つです。

 最近になり、少子高齢化と景気回復の影響で、全般的に労働力が不足して来ました。「それならば、幅広く外国人労働力を活用しよう」という論者も多いようですが、これも感心しません。労働力が不足してきたからこそ、ようやく失業者が減り、非正規労働者の待遇が改善してワーキング・プアがマトモに暮らせるようになったのです。これからは、省力化投資が増えて、日本経済の効率性が高まっていくと期待されます。

 ここで外国人労働力を導入して労働力不足が解消してしまったら、せっかく減った失業者が増え、ワーキング・プアの生活が再び悪化し、せっかく期待された日本経済の効率化も進まないでしょう。

 ちなみに、「技能実習生」といった名目で実態としての単純労働者が流入している、実際には不法滞在している外国人が単純労働に従事しているケースも多い、といった話も耳にしますが、筆者は詳しくないので、その点についての言及は控えておきます。

 企業にとっては、失業者が増えて非正規労働力が安価に雇えることは都合が良いかも知れませんが、それは決して日本経済全体にとって望ましいことではない、ということなのです。充分気をつけたいものです。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/8365


 

ベストセラーで読むアメリカ
トランプ支持者たちの貧しい生活が浮き彫りに
黒人より絶望深い白人労働者たち
2016/12/02
森川聡一
■今回の一冊■
HILLBILLY ELEGY
筆者 J.D. Vance
出版社 HarperCollins

 無名の31歳の弁護士が書いた回想録が今、アメリカで売れている。本人も本書の冒頭で、本を書いて出版するに値する偉業を成し遂げた人間ではないと告白する。そんな人物が書いた回想録がなぜ、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに17週連続でランクインしているのか。最新の12月4日付ノンフィクション単行本部門でも4位につけている。

 ベストセラーとなった理由は、アメリカを二分した今年の大統領選挙と密接な関係がある。筆者はいわゆる「錆びついた工業地帯」(Rust Belt)と呼ばれるアメリカ中西部のオハイオ州の出身だ。トランプ次期大統領を支持する貧しい白人労働者の家に生まれ育った。自然と回想録の内容も、かつては鉄鋼業などで栄えた地域の荒廃、自分の家族も含めた白人労働者階級の悲惨な日常を描くものになっている。まさに、今年の大統領選でトランプ氏を支持した人々の日常を映し出す。

「中南米からの移民や黒人よりも悲観的」

『HILLBILLY ELEGY』
(J.D. Vance,HarperCollins)
 筆者は本書のなかで、母親が結婚・離婚を繰り返し、薬物中毒になって働かず、こどものころは近所の祖母の家に身を寄せて育った体験を語る。そうした恵まれない環境のなかでも、筆者は地元の高校を卒業して海兵隊に入隊したあと、オハイオ州立大学を経て、名門エール大学法科大学院を卒業し弁護士となった。自分で努力して貧困から抜け出した筆者は、白人労働者階級の苦境を政府や政策のせいにはしない。教育制度を見直す必要性や、自助努力の不足なども指摘する。

 しかし結果的に、日本人の読者にとっては、「トランプ支持者は、こんな人たちなんだな」と、納得できる内容になっている。例えば、白人労働者たちの悲惨さについて次のように指摘する。

 What is more suprising is that, as surveys have found, working-class whites are the most pessimistic group in America. More pessimistic than Latino immigrants, many of whom suffer unthinkable poverty. More pessimistic than black Amricans, whose material prospects continue to lag behind those of whites.

 「さらに驚くべきことに、白人の労働者階級はアメリカの中で最も希望を持てないでいる集団だという調査結果がある。中南米から移民してきた人々よりも悲観的だ。ラテン系の多くが考えれらないような貧困に苦しんでいるのにだ。さらに、黒人の米国民よりも悲観的だ。黒人のほうが金銭的な成功の面で白人に比べ立ち遅れ続けているのにだ」

白人労働者たちの日常生活での素顔

 本書では、筆者が幼少期に見聞きしたことを回想しており、こうした貧しい白人労働者階級がどんな人たちなのか、生身の姿を浮かび上がらせる。特に、自身の祖父母に関する記述が興味深い。

 Mamaw told Papaw after a particularly violent night of drinking that if he ever came home drunk again, she'd kill him. A week later, he came home drunk again and fell asleep on the couch. Mamaw, never one to tell a lie, calmly retrieved a gasoline canister from the garage, poured it all over her husband, lit a match, and dropped it on his chest. When Papaw burst into flames, their eleven-year-old daughter jumped into action to put out the fire and save his life.

 「祖父が酔っ払って夜に大荒れしたあと、祖母は祖父に今度酔って家に帰ってきたら殺すと言った。一週間後、祖父はまた酔って家に帰りソファで眠りこけた。有言実行の人である祖母は、そっとガレージからガソリンが入った容器を持ってくると、祖父にガソリンをぶちまけ、マッチをすって火をつけ、祖父の胸の上に落とした。祖父が突然、火だるまになると、11歳の娘が飛んで駆けつけて火を消し命を救った」

 家庭に恵まれなかった筆者は祖父母に育てられたようなもので、祖父母に関するエピソードは豊富だ。筆者がまだ幼いころ、親族の葬儀に参列していて礼拝堂のイスのうえで寝てしまったことが大騒動になった昔話も傑作だ。葬儀が終わって参列者がみな建物の外に出たところで、祖父母は筆者がいないことに気づいた。誘拐されたと勘違いした祖父は自分の車から44口径のマグナムを持ち出し、祖母にも拳銃を渡して、教会の敷地から出る2つの出口を封鎖して、出ていく車を一台ずつ止めて捜索をしたという。実際は、幼い筆者は葬儀場の中で寝ていたのだが。

 高速道路のサービスエリアのトイレに娘が入り、なかなか出てこないので何者かに襲われたとのではと不安に思った祖父が、拳銃を手にして扉を蹴り破って女子トイレに突入した話なども出てくる。あるいは、祖母が歳をとってからケガをして、一時的に介護施設に入ったとき、もし寝たきりになるようなら、祖母の44口径マグナムで頭を打ちぬき殺してくれと頼まれたという思い出も出てくる。筆者も子供のころから祖父に射撃を習ったおかげで、海兵隊の新兵訓練所では、ライフル銃の射撃では最上位の評価を得たという。

 白人労働者たちの日常生活での素顔がわかり、本書はとても興味深い。こうした人々にとって、アメリカ東海岸のエリートたち、あるいはその象徴であるヒラリー・クリントン氏の言葉が胸に響くものであるか疑問だ。まだトランプ氏の不適切な発言の方が共感を呼ぶのではないかと、勝手に納得してしまった。

アームコと川崎製鉄の合併がもたらしたもの

 さて、筆者が育ったオハイオ州のミドルタウンという町は、アメリカのアームコという名門企業の製鉄所を中心にかつては栄えた企業城下町だった。アームコが1989年に川崎製鉄と合併した以降も、地元の人々は日本への反感もあり、川崎の名前を使わずにアームコと呼び続けたという。アメリカ中西部に押し寄せる国際化の波と、それに対する白人労働者たちの複雑な心境が次の一節では鮮明だ。

 The other reason most still call it Armco is that Kawsaki was a Japanese company, and in a town full of World War U vets and their families, you'd have thought that General Tojo himself had decided to set up shop in southwest Ohio when the merger was announced. The opposition was mostly a bunch of noise. Even Papaw−who once promised he'd disown his children if they bought a Japanese car−stopped complaining a few days after they announced the merger. "The truth is,"he told me,"that the Japanese are our friends now. If we end up fighting any of those countries, it'll be the goddammned Chinese."

 The Kawasaki merger represented an inconvenient truth: Manufacturing in America was a tough business in the post globalization world. If companies like Armco were going to survive, they would have to retool. Kawasaki gave Armco a chance, and Middletown's flagship company probably would not have survived without it.

 「ほとんどの人がアームコと呼ぶ理由はもうつひとつある。川崎が日本の会社だからだ。町には第二次世界大戦に従軍した退役軍人とその家族がたくさんいる。合併が発表されたときは、東条英機がオハイオ南西部にまできて店を開く、という受け止め方だった。反感は根強くかなりの不協和音を生んだ。しかし、祖父でさえ合併発表から数日後には文句を言うのをやめた。かつて、自分の子供たちに日本車を買ったら勘当だと言っていたのに。祖父はわたしにこう言った。『本当を言えば、日本人は今や俺たちの友人だ。もし俺たちがどこかの国と戦うとしたら、それはくそったれの中国人たちだ』と」

 「川崎との合併は不都合な真実を示した。アメリカの製造業はグローバル化が進んだ後の世界では競争力を失っていたのだ。アームコのような会社が生き残るには事業を再構築しなければならなかった。川崎はそのチャンスをアームコに与えてくれた。ミドルタウンの基幹産業だったアームコはそれがなかったらおそらく生き残れなかった」

 白人労働者たちはまさに、自分たちの問題として、国際化の波に直面してきたわけだ。筆者が育った町では貧困が広がる一方、貧しい人々を助けるための福祉政策が悪用されている現実もあった。地元のスーパーでアルバイトをしてレジ係を担当した筆者は次のような実態を知る。

 I also learned how people gamed the welfare system. They'd buy two dozen-packs of soda with food stamps and then sell them at a discount for cash. They'd ring up their orders separately, buying food with food stamps, and beer,wine,and cigarettes with cash. They'd regularly go through the checkout line speaking on their cell phones. I could never understand why our lives felt like a struggle while those living off of government largesse enjoyed trinkets that I only dreamed about.

 「人々が福祉政策をいかに悪用しているかも私は知った。政府支給の食券で1ダース入りの炭酸飲料を2つ買って、それを割引価格で転売して現金を手に入れるのだ。実際に買い物するときは食券で食べ物を買い、(食券では買えない嗜好品である)ビールやワイン、タバコは現金でといった具合に、分けて支払うのだ。そういった人たちはいつも、携帯電話で話をしながらレジを通っていく。わたしには理解できなかった。わたしたちが暮らしに困っている一方で、政府から援助を受けて生きている人たちが、わたしでさえ持っていない携帯電話をなぜ使えるのか」

 そもそも、自分たちでさえ苦しい生活なのに、政府から支援を受けている人たちがなぜ、いい暮らしをしているのか。白人労働者階級が政府に抱く不信感は想像に難くない。結局、既存の政治家やエリートたちは自分たちのために、何もしてくれないのではないかとの不満につながる。先のみえない暮らしのなかにいる人々に、オバマ大統領は次のように映っていたという。

 President Obama came on the scene right as so many people in my community began to beleive that the modern American meritocracy was not built for them. We know we're not doing well. We see it every day: in the obituaries for teenage kids that conspicuously omit the cause of death(reading between the lines:overdose),in the deadbeats we watch our daughters waste their time with. Barack Obama strikes at the heart of our deepest insecurities. He is a good father while many of us aren't. He wears suits to his job while we wear overalls, if we're lucky enough to have a job at all. His wife tells us that we shouldn't be feeding our children certain foods, and we hate her for it−not because we think she's wrong but because we know she's right.

 「オバマ大統領はまさに、わたしの町の多くの人々が現代アメリカの実力主義社会は自分たちのために出来上がったわけではないと思い始めたときに登場した。わたしたちは自分たちの暮らしがうまくいっていないことをわかっている。毎日、そうした現実を目にしている。あえて死因に触れていない10代の若者の死亡記事(行間を読むと薬物の過剰摂取が死因だ)、借金まみれで時間を無駄にする若い娘たち。バラク・オバマをみると、われわれは大きな不安感を抱いてしまう。オバマはいい父親だが、自分たちはそうではない。オバマは仕事にあったスーツを着ているが、自分たちは上下つなぎの作業服だ。しかも、幸運にも職があればの話だ。大統領の妻は子供には、ある種の食べ物を与えるべきではないと言う。そういうことを言う彼女のことをわたしたちは嫌いだ。間違ったことを言っているからではなく、言っていることが正しいとわかっているからだ」

 無名の若い弁護士が書いた回想録だが、白人労働者たちの苦境と絶望、既成の政治システムに対する不信が伝わってくる。大統領選でトランプ旋風を生んだアメリカ社会の現実がみえてくる。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8332

 


定年バックパッカー海外放浪記
マルタにある、外国人労働者問題の解決のヒント 続・地中海遥かなり(第2回)
2016/12/04
高野凌 (定年バックパッカー)
[秋のマルタ、シシリーを巡るキャンプ旅]
(2015.9.29-10.26 28日間 総費用22万円〈航空券含む〉)
キャンプ旅の問題点は“シャワー”と“酔っ払い”
 10月1日 午前中はバレッタ市内を見物。荷物を引いて石畳の旧坂を上り下りしながらエルム要塞まで歩く。高級リゾートのスリーマ(Sliema)の海辺に午後2時頃到着。海辺のプロムナードの街路灯の真下にテントを設営。

スリーマ湾からバレッタ市街を望む
 10月2日 日本出発以来シャワーを浴びていないので、近くの大きなホテルのフロントで事情を説明したらフィットネスクラブに温水シャワーがあるという。有り難く久しぶりに洗髪して髭をそり体中の垢を落としてさっぱりとした。午後は完全休養とし海を眺めながらビールを飲む。
 10月3日 約2時間歩いてセント・ジュリアンのビーチに移動。海辺の高級ホテルが立ち並ぶ大通り沿いに設けられたウッド・デッキのプロムナードの端にテントを設営。深夜でも車の交通が絶えない大通りに面しているので治安面はOKと判断。午前2時頃数人の騒がしい声がして「ポリスだ。起きろ!」と大声で叫んでいるのでテントから顔を出すと酔っ払いがふざけているようだ。「何の用だ。警察を呼ぶぞ」とライトを向けると酔っ払いの三人組は慌てて逃げ出した。
マルタは地中海マグロ漁の拠点

マルサシュロック漁港
 10月9日 マルタ本島西部のメリッハ・ビーチからローカルバスを乗り継いで東端の漁港マルサシュロックまで半日かけて移動。
 地元の漁師に聞くと天気予報では夜半から今年初めて季節風のシロッコが吹いて嵐になるので今日は休漁日なのだという。それでほとんどの漁船が繋留されているとのこと。漁師はマルサシュロックは歴史的に地中海マグロ漁の拠点であり漁船の大半はマグロ漁船(tuna boat)であると自慢。

ビクトリアの大城塞のなかの大聖堂
 ただし近年は地元の若者は漁師にならず慢性的に人手不足でありエジプト・リビア・チュニジアからのアラブ人の出稼ぎや元難民を雇っているという。さらに最近ではアジア人の出稼ぎも増えているという。
 尚、マルタ全体で目につくのはフィリピン女性のベビーシッター、メード、ナースである。マルタは気候が良く英語圏であるため欧米人向け高級療養施設が多いがナースの多くはフィリピン女性である。
マグロ漁を担うインドネシア青年達
 港をぶらぶら散歩しているとマグロ漁船では漁網の繕いをしたり、甲板を洗ったり、機関や電気系統の修繕をしたりと多数の漁船員が作業している。アラブ系やアジア系が多い。そのうち「コンニチワ」「ゲンキデスカ」「ニホンジンデスカ」など盛んに日本語で呼びかけられる。
 一隻の漁船からアジア系の数人が手招きして岸壁とマグロ漁船の間に差し渡したハシゴを渡って来いとジェスチャーで示している。面白そうなので慎重にハシゴを渡り漁船に乗り移る。3人の漁船員と握手して挨拶を交わす。やけに日本語が上手なので尋ねると3人はインドネシア人であり日本でマグロ漁に三年間従事したという。めちゃくちゃに陽気であり親日ムードが溢れている。「コウチ」「ムロト」「シミズ」「ヤイズ」「ミサキ」など日本の地名がどんどん飛び出すがどうもマグロ関係の漁港のようだ。

嵐を避けて港に繋留されているツナ・ボート(マグロ漁船)
 日本の技能実習制度で来日して3年間の期限内いっぱいマグロ漁船で働いていたという。3年の研修期間終了後インドネシアの故郷に戻ったが高賃金の仕事が見つからない。知人が「マルタに行けば日本で習得したマグロ漁の技能を活かせて高収入が得られる」と教えてくれたのでマルタに来たという。口コミでマルタのマグロ漁の話が広がり現在マルサシュロックだけで100人のインドネシア人がツナボートで働いているという。
千葉県外房の漁村のママチャリ部隊

野営した公園横の駐車場から見たバレッタ市街をバックに昇る朝陽
 陽気なインドネシア青年達と交流したら千葉県の漁村の光景を思い出した。“続地中海の旅”の一か月前の8月に自転車で千葉・茨城・福島・栃木をキャンプ旅した。外房の漁村を自転車で走っているときに中古のママチャリに乗っている中国人の若者のグループを何度も見かけた。コンビニやスーパーやランドリーショップでも多数の中国人青年と出会った。彼らも漁業関係の技能実習生(研修生)であった。
 ある日の夕暮れ時に外房の御宿の近くの小さな海浜公園でテントを設営し公園のテーブルでビールを飲みながらコンビニ弁当を食べていた。近くにバーベキュー設備、水場、トイレもあり野営には最適である。そのうちに中国人男女6人がママチャリに乗ってやってきた。発砲スチロールの箱から魚介類や肉を取り出し早速バーベキューを始めた。青年4人は漁船に乗り、少女2人は水産加工をしているという。6人は同郷人で大連出身。6人は夜遅くまでおしゃべりしていたが、朝起きると6人の姿はなくバーベキューして飲み食いしていた場所はきれいに片付けられていた。
少子高齢化と若年労働力不足
 外房に限らず日本ではいわゆる外国人労働者が急増している。愛知県や群馬県の自動車関連産業に従事しているブラジル人は地域でコミュニティーを形成しているのを目の当たりにした。既に日本の産業にとって技能実習生を含めて外国人労働者は重要かつ不可欠な存在になっている。その一方で日本では外国人労働力に対して長期的戦略的な取り組みが見えてこないし、少子高齢化問題に対しては保育園・託児所の整備などの対症療法のみである。
 人口の少ないマルタでは多数のアラブ系の元難民・移民がサービス業、農業、漁業に従事している。中世からの要塞都市であるビクトリア(ラバト)でバスを待っていた時に雑談した地元の紳士は難民問題に話が及ぶと熱弁をふるい出した。

マルタ本島の南西部の海岸線は切り立った断崖が続く

マルタ本島の南西の入り江にあるポパイ村

第一次世界大戦時にセメントで補強されたエルム要塞
 「リビアやサブサハラから政情不安や生活苦からマルタに流れてくるアラブ系の難民・移民・出稼ぎは数十年前から問題化していた。さらに2010年からの数年間のアラブの春の混乱期には短期間に大量の難民が流入した。政府は何か所も難民収容施設を建設したし、難民が合法的に仕事に従事できるように法制度を整備した。現在は難民の流入が落ち着いていくつかの難民収容所は閉鎖するか規模を縮小した。現在元難民は合法的に就業して税金も納めているが市民権や永住権は認められていない。従って公教育を受けられず選挙権もない中途半端な存在だ。難民・移民を労働者不足対策として受入れたが長期的にマルタ国民として受入れてゆくという戦略の下に法整備を急がないと社会不安要因になると危惧している」
 外国人労働者受入れ先進国のマルタの事例から日本の針路について学ぶべきではないか。近い将来の深刻な労働力不足に対応するためには今から優秀な若年外国人労働者を積極的に受入れ合法的な外国人就業者を増やしてゆくべきである。同時に彼らに市民権・永住権を賦与してさらには日本への帰化を促進するプロセスを明確化して広く門戸開放すべきではないか。せっかく日本で技能習得した若者を一律3年で追い返してしまうのでは“もったいない”。
 純粋に日本人だけで日本国を維持しようとすれば人口の大幅減少と国力低下は防げない。積極的移民誘致政策により優秀な若年外国人労働者を大量に増やすことで日本の真の国際化は促進されるし、多様な“新日本国民”の出現により技術革新や持続的な経済成長も可能となると考える。
 移民政策に関する議論を避けてもっぱら保育所待機児童問題などを論っても少子高齢化問題の抜本的解決には至らないとマルサシュロックのマグロ漁船団を眺めながら思った。
⇒第3回に続く

コゾ島の中心都市ビクトリアの19世紀に建てられたオペラハウス

http://wedge.ismedia.jp/articles/print/8254


 

定年バックパッカー海外放浪記
地中海遥かなり(第1回)
不退転の覚悟で海外放浪するという心構えができた瞬間
2015/08/12
高野凌 (定年バックパッカー)

ギリシアの島々と南イタリア周遊(2014.3.31-6.26)
・総支出50万2000円 往復航空券9万8000円含む
・エーゲ海→イオニア海→マテラ洞窟住居→アマルフィ―海岸→イスキア島
ロードス島 永い航海の果てに
 4月8日午前9時、アテネから一昼夜の航海を経てフェリーボートはロードス島オールドタウンの新港に投錨した。
 デッキからロードス島の騎士団の要塞、白く輝く旧市街を望見。永年憧憬してきた世界がそこにあった。早春の陽光のもと、青い蒼い空と海と白い街並みが100%眼前にある。まさに夢に描いてきた完璧な地中海世界がそこにあった。そして無限の自由な時間。
 サラリーマン生活という長いトンネルを抜けていきなり明るい世界に飛び出したような歓喜と開放感。記憶は一気に一年前にフラッシュバックした。

北京の歌姫「ルシア」
 2013年5月1日。私は北京にいた。サラリーマン生活最後の任地の北京で黄金週間(ゴールデンウイーク)の休日。私は60歳の定年を間近に控え、5月末には帰国の予定であった。
ルシア。三里屯のカフェテラスで
 その日の午後、北京の六本木と称される三里屯(サンリートン)のカフェテラスで25歳のジャズ・シンガーであるルシア(中国名:沙沙)とお茶をしていた。午前中、彼女が出演する北京市主催の野外ステージでの音楽祭があり、彼女は地元のバンドをバックにオリジナルのロックを数曲歌った。そのあと慰労を兼ねてイタリア料理のレストランで食事をして、ぶらぶら三里屯を散歩していた。
 当時私は記念すべき退職後の最初の旅の目的地をギリシア・南イタリアの地中海とするか、またはモロッコを中心とする北アフリカとするか迷っていた。そのことをカフェテラスでルシアに話すと彼女は間髪をおかず中国語(北京官話)で断定するように言った。
 『あなたが地中海に行くなら、わたしも行くわ』
 その一言で決まった。不退転の覚悟で海外放浪するという心構えができた瞬間でもあった。
 ルシアとの出会いは更に数か月遡る。同年1月のハイヤットパーク・ホテルの最上階のバー・ラウンジだ。
 そのころ私は60歳で定年退職し、残りの人生を『自由気ままに海外放浪する』という、平凡なサラリーマン生活を送ってきた自分にとってはかなり大胆で破天荒な決断をしていた。北京に単身赴任していた私は電話で家内にその旨を説明したが、どうも真意は伝わらず、親しい人達にも打ち明けて相談してみたが、自分の決断に今一つ自信または確信が持てなかった。
『定年退職おじさんの海外放浪一人旅』
 周囲では65歳以前に自ら進んで仕事を辞める人間は皆無であり、『定年退職おじさんの海外放浪一人旅』というコンセプトを仔細にかつ客観的に眺めると『そもそも老後の資金は大丈夫?』『余り面白味がなさそう?』『みじめっぽい?』『長続きせず飽きるんじゃない?』などなど悲観的になるばかり。
中国駐在時代、チェン・イン(胡笛奏者)とライブ演奏後に写る筆者
 大きなプロジェクトを成功させるために事前に小規模の実証実験をすることがある。それにより机上の空論が実現可能か否か事前に検証する訳だ。そこで私は北京でオフの時間は一人で何か面白いことを実践することにより、海外放浪一人旅の疑似体験をして一人旅コンセプトが実現可能で、かつ面白いことを実証しようと思い立った。
 その第一弾としてそのホテルの最上階ラウンジに赴いた次第。当夜9時頃にラウンジに到着すると北京の夜景が一望できるバー・ラウンジは満員御礼状態。かなり派手な美人ジャズ・シンガーがピアノ、ベースをバックに“Misty”を歌っている。それがルシアであった。
 私が片手を挙げて会釈すると、彼女は妖艶な微笑みを浮かべ歌いながらステージ脇の一つだけ空いているテーブルを指してそこに座れとサインを送ってきた。数曲歌ってステージが休憩になると彼女は私のテーブルに来て中国語と英語のチャンポンでおしゃべりしていたが、ひょんなことから『おじさん海外放浪一人旅』構想について吐露することになった。
 途端にルシアの表情が変わり真剣モードに。人生一期一会であり自分の夢にチャレンジすべきとのご託宣。ルシア自身、共産党地方幹部の娘という恵まれた環境に育ち大学で経営学を学び北京で大手企業に就職したが、それを捨てて「ボーカリスト」の道を選んだとのこと。最初は后海(北京の新しいナイトスポットで湖の周りに多数のクラブやライブハウスがある)の小さな店で無給の見習いとして歌っていたが才能を認められ、紆余曲折を経て一流のステージで歌うことができるようになったと。
 自信たっぷりのステージマナーからは信じられないがなんとまだ25歳とのこと。彼女の夢は自分のバンドを持ち、さらに自分が社長として音楽プロダクションを経営することであると相当に野心的。いずれにせよ25歳のジャズ・シンガー(クラブ歌手)と定年間近のオジサンが意気投合したのである。
 それから彼女のステージを週に1、2回聴きに行き、休日には郊外で遊山したり、街で食事したりして人生を語り合う同志(共産党用語で理想を共有する仲間)となった。ルシアを通じて多くの音楽関係者と知り合いになり北京のナイトライフが広がってゆき、おじさん一人旅でも十分に面白いことを実証できたサラリーマン生活最後の5カ月間となった。
万里の長城でポーズを決めるルシア
おひとり様はつらいよ 
 4月8日午前11時、新港から歩いて一時間半。ロドスタウンの旧市街のエーゲ海を見下ろす洒落たバルコニー付の50室くらいの小さなホテルに投宿。ベッドからでもエーゲ海が一望。清潔なツウィン・ベッド・ルームで一泊19ユーロとお得。期待感が上限まで高揚。
 さっそくビーチに散歩にゆき写メを畏友のKM氏に送信。ほどなく返信あり。曰く「景色も貴兄も青いね! ひとりでフラフラしてるの。昔、会社を辞めて次の仕事を始めるまで、しばしの休息と東北一人旅。50歳だった。黒石温泉におひとり様で泊まったら、飯盛り女が『お客さん、何があったがわがんねえけど、気を落とさずにねー』と……。夜中に襖がスーッとあいてお婆が小生の息があるのを確めに来たよ」。
 夕刻7時過ぎにホテルに戻るとまだ明るいのに玄関は締まりフロントも無人であった。そういえばレセプションのおねえさんが「夜間玄関は施錠しているので出入りのためにキーを渡しておきます」と言ってたっけ。よく見るとオフシーズンのため他にゲストはいないらしく全館真っ暗で静まり返っている。
 部屋に戻りバルコニーで海に沈む夕陽を見ながら、雑貨屋で買って来たサラミソーセージ、チーズをパンに挟んで食べながらビールを飲んだ。部屋にはTVもなく街には人気がなく、8時前に夕陽が沈みきってしまうと、かなり私のテンションも下がってきた。あとは冷たく風が吹く暗闇だけの世界。寝るには早すぎるし、さりとて何もやることもない。豪華なベッドにひっくり返り天井を見ながら瞑想するだけの長い夜。結局、黒石温泉とおんなじだ!
 なぜオフシーズンはホテル代が安いのかやっと理由が分かった。このホテルに6泊したが、毎晩同様の「長い夜」であった。最終日にやっと5〜6人のロシア人一行がチェックインしてきた。この経験から下記2点がオジサン放浪旅の基本原則となった。
 @ 宿泊は一人部屋を避けて共同部屋(ユースホステルのようなドミトリー形式)とするべし。 注)欧米・アジアなど海外では共同部屋はほとんど男女共用であり、ルームメイ トとは自然とお友達になり一緒に炊事したり遊びに行ったりすることになる。
 A 面白そうなホモ・サピエンス(人類)に遭遇したら必ず自分から話しかけること。 注)シーズンオフの時期や余り観光客が行かないような地域を旅行していると、人に会うことが稀で何日も人間(=現代文化人)としての会話ができないことが多々ある。地元の人間が英語や日本語で話しかけてくるときは99%当方のお金目当てである。
 現地語しか解せぬ地元の人たちとは言葉が通じなくても3分間は適当に楽しく交流できるが、それ以上は無理であるし無意味のように思える。従い小生が解する言語(英語、中国語、スペイン語、韓国語など)で交流できて対等の立場で、多少なりとも知的な会話を楽しめるホモ・サピエンスとの遭遇は貴重である。
⇒第2回に続く。


http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/606.html

[国際16] 米国はプーチンとよりを戻すべき? From LA サンフランシスコの明と暗、ホームレスが増加する理由 
米国はプーチンとよりを戻すべき?
2016/12/05
岡崎研究所
 10月27日付英フィナンシャル・タイムズ紙で、スティーブンス同紙コラムニストは、プーチンとの関係を再構築するには、決意・一貫性・関与・尊敬の4つを持ってあたるべきだと述べています。その要旨は以下の通りです。


iStock
 プーチンが最も傷ついたのは、2年前にオバマ大統領が言ったことである。オバマは、ロシアはもはや「地域大国」に過ぎず、ウクライナへの介入は強さではなく弱さを示すもので、ロシアの行動は最大の脅威ではないと述べた。

 こうしたオバマの評価は、正しいが、同時に間違っている。経済、人口動態、社会、技術といったほぼ全ての面で、ロシアは衰退に直面している。しかしオバマは、ロシアは軍事力行使に躊躇しないということを見誤った。オバマの「リセット」はクリミア併合、東部ウクライナ占領、アレッポ空爆でダメになった。

 ウクライナとシリアへの介入が、ロシアの広範な戦略であることは誰の目にも明らかだ。体制の生き残りと西側への敵意は表裏一体である。プーチンの攻撃目標はリベラルな国際秩序である。近隣国への保護権を持ち、世界の問題に意味を持つ大国であることを欲している。

 西側には簡単にとりうる対策がない。だが、冷戦から有益な教訓を学ぶことはできる。尤もロシアはソ連ではない。米国と同盟国に有益なのは、現実に基づくリセットのための枠組み原則を決めることである。決意、一貫性、関与、尊敬から始めるべきである。

 最も重要なのは決意である。プーチンは機会主義者であり、相手の弱点を見つけだし、試すことをしてきた指導者である。これまでの西側の間違いは、ロシアを抑止する行動が挑発と受け取られるのではないかと心配したことである。決意を見せることに失敗したために、緊張を取り除くどころか高めてしまった。東欧へのNATOの前方展開は、一定程度民衆に安心を供与することに繋がっている。しかし、米国はシリアと欧州で、一線を越えれば重大な結果を招くとの明確なメッセージを発するべきである。

 2つ目の要素は一貫性である。プーチンは、分裂と躊躇いにつけ込むことに長けている。欧州諸国はロシアに対し、お互いの違いを脇に置くことができることを示すべきである。EUの対露経済制裁を数ヶ月毎に更新するのは、ロシアに工作の機会を与えるだけであるから、無期限制裁を宣言すべきである。制裁解除は、ロシアが行動を変えたときだけとすべきである。一貫性を維持するには、敵対行動に対して段階的対応をとる必要がある。ロシアはサイバー攻撃が旅行制限や制裁の強化などの反応を呼び起こすことを知るべきである。

 関与については、相手との関係を強い意志をもってマネージすることである。対テロや核不拡散など双方にとって有益で協力できる分野では、共同行動のためのイニシアチブを西側は発揮すべきである。

 最後の単語は尊敬である。ロシアは、ほとんどの側面で弱いのは明らかであるが、米国大統領が不都合な真実を口にして、傷つきやすいプーチンと対峙するのは賢いとは言えない。尊敬するふりをすることは外交では必要である。悲しいことに、プーチンがロシアは大国であると装い続けていると、ロシアは最終的には大国ではなくなっていくだろう。
出 典:Philip Stephens‘Four rules for a realistic reset with Vladimir Putin’(Financial Times, October 27, 2016)
https://www.ft.com/content/e7db344c-9aca-11e6-b8c6-568a43813464

 上記論説は、西側は、決意、一貫性、関与、尊敬の4つのキーワードに基づいて、今後の対ロ関係を進めるべきであるという政策提言です。そのそれぞれについて筆者が何を考えているのかは論説で説明されています。

 決意、一貫性、関与で述べられていることには賛成です。

プーチンを傷つけたオバマ

 ただ、尊敬については、オバマ大統領のようにあからさまにプーチンを傷つけるような発言をすることはありませんが、プーチンの国際法違反行為をとがめることと、プーチンに敬意を示すことを両立させることは難しいのではないかと思われます。外交では尊敬しているふりをすることも必要ですが、大きな原則問題があるときには、それを優先して論じるべきでしょう。

 上記の提言には大筋で賛成ですが、国際法規範の尊重のような重要な論点が抜けています。プーチンの性格や西側とロシアの作用、反作用に注意を向けた論説ですが、どちらかというと、戦術的観点に重点をおいた論説です。もっとロシアの行動を戦略的視点からとらえた議論が必要であるように思われます。

 ロシアの衰退については、これを大げさに言うことはありませんが、今のままではロシアの将来は極めて暗いと考えられます。人口は減っています。自然減のほかに、有能な若者が政治的な抑圧、劣悪な教育、劣悪な医療、所得格差、社会的不公正に愛想をつかし国外に出ています。石油・ガス頼りの経済成長は石油価格がシェール革命で構造的に抑えられているので、もう望めず、資源依存経済脱却はうまくいっていません。サウジのほうが大胆に取り組んでいます。

 再度ペレストロイカをしないとどうしようもありませんが、プーチンの政権はその基盤がそれを行うようにはなっていません。民主化し、自由化し、才能あるロシア国民の活力を引き出すのがロシア再興の道ですが、ロシアの指導層は自分に利益を与える現在のシステムを維持することに熱心で、ロシアの問題は外部が作り出しているなど、恨み言ばかり言っており、これでは衰退は止められないでしょう。もうすでにロシアのGDPは中国の10分の1くらいです。
http://wedge.ismedia.jp/articles/print/8374

 
From LA
サンフランシスコの明と暗、ホームレスが増加する理由
2016/12/02
土方細秩子 (ジャーナリスト)
 今年も米ハウジング・都市開発省による年間のホームレスレポートが議会に提出された。それによると2016年のどこかの時点でホームレスだった人口は54万9928人。うちシェルターに入っていない、いわゆる路上生活者は32%を占める。

 ホームレス人口そのものは緩やかな減少傾向にある。2007年の不況時には年間のホームレスは64万7258人だったから、9年間で15%減少したことになる。しかし問題は大都市圏ではむしろ増加している、という点だ。米国のホームレスは1位がカリフォルニア州の11万8142人、2位がニューヨーク州の8万6352人、3位がフロリダ州の3万3559人。この3つの州ではホームレスが全人口の6%以上となっている。


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 最大の問題はやはりカリフォルニア州だ。ここではシェルターに入っていないホームレスが66.4%と圧倒的多数となる。同じくホームレス人口の多いニューヨークではシェルターが充実しているため4.2%にとどまっているだけに、この差は大きい。しかもカリフォルニア州のホームレスは前年比で2404人の増加となっている。

 都市別ではニューヨーク市が7万3523人と最も多く、次がロサンゼルス市の4万3854人。トップ10にはこのほかサンディエゴ、サンフランシスコ、サンノゼとカリフォルニア州の都市が4つも入る。

 カリフォルニア州のホームレス増加が最も実感できるのはサンフランシスコ市だ。同市のユニオン・スクエアは一流ホテル、ショッピングセンター、ビジネス街などが融合した同市でも指折りの繁華街だが、ホームレスの数が半端ではない。ほとんど1ブロックごとにホームレスに遭遇、この辺りを歩いていると1日に最低5回は金銭やタバコをねだられたり、ファストフード店の前では「何か食べ物を買ってほしい」と頼まれる。ロサンゼルスも確かにホームレスは多いが、スキッド・ロウと呼ばれる地域に集中しており、ビジネス街でこれほどのホームレスに遭遇することはない。

 筆者はユニオンスクエア近辺のホテルに11月初旬滞在したが、ほとんどのホテルでドアマンを置く、もしくは客の出入りのたびに入口をロックする、などしてホームレスの侵入を防いでいた。「一度中に入られると追い出すのはとても難しい」とホテルフロントは語っていた。

 もちろん市当局でも手をこまねいているわけではない。同市広報によると、サンフランシスコ市は年間に2億4100万ドルのホームレス予算を持ち、市の8つの部局、76の非営利市民団体などがこの問題に対処している。それでもサンフランシスコのホームレスが目立つのは、市の面積対ホームレスの比率にある。1平方スクエア(1.6X1.6キロ)あたりのホームレス人口は149人と、ロサンゼルスの114人を上回る。

 この実情に、今年2月シリコンバレーの企業家らが声をあげた。「きちんと働き高収入を得ている人々は、市に居住する権利がある。彼らは教育を受け、熱心に働きその地位を得た。そうした人々が仕事の行き帰りごとにホームレスの苦しむ姿を目にしなくてはならないのは公正ではない」(Commando.io社CEOジャスティン・ケラー氏)。

 この声明の裏にあるのは、「高収入のIT企業が家賃を釣り上げた結果、もともと市内で賃貸をしていた人々が家賃を払えなくなりホームレス化している」という批判だ。初任給でも年収10万ドル平均、というシリコンバレーの労働者たちは、こと住宅問題では批判の的となる。彼らの多くがサンフランシスコに居住、その通勤には有名なグーグル・バスなど、企業が「エアコン、WiFi完備で無料」の交通手段を用意している。怒れる市民がグーグルバスの前にバリケードを張って抗議活動を行ったのも記憶に新しい。  

世帯収入を上回る一人当たりのホームレス支援資金

 実際、市では地価高騰のためホームレスシェルターを閉鎖せざるを得ない事態も起きている。同市によると1人のホームレスをシェルター、食事、職業訓練などで支えるために市が支出する額は年間8万ドルにも及ぶという。これはサンフランシスコ市の平均世帯収入を上回る数字だ。

 今回の大統領選挙とともに行われた住民投票でサンフランシスコ市は「路上テントの撤廃」を賛成多数で可決した。しかしホームレス保護団体からは「十分なシェルターがない状況でホームレスのテントを除去するのは人道に悖る行為」と批判の声が上がっている。

 ホームレス対策は全米の大都市にとって頭の痛い問題だ。しかし予算と現実との兼ね合いがあり、解決策はない。さらに高騰するサンフランシスコの地価(同市の平均的な賃貸価格は1ベッドルームで2600ドルを超える)が問題をさらに複雑にしている。

 筆者はユニオンスクエア近くのドラッグストアで商品価格をチェックしたが、ここではタバコ1箱が12ドルで売られていた。同じ銘柄でロサンゼルスでは6ドル前後だ。なぜこんなに高いのか、と聞くと「家賃が高いからそれくらい取らないと商売できない」という返答だった。他の商品も推して知るべし、だ。シリコンバレーの高所得者には問題ないのかもしれないが、サンフランシスコは庶民の住める場所ではなくなりつつあるのかもしれない。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8336
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/607.html

[政治・選挙・NHK217] カジノ法案が衆院通過、公明内に反対論 会期末までの成立不透明  首相の真珠湾訪問、強固な日米同盟を世界に発信=菅官房長官

カジノ法案が衆院通過、公明内に反対論 会期末までの成立不透明
[東京 6日 ロイター] - カジノを含む統合型リゾート(IR)を解禁する法案(IR推進法案)は6日、衆院本会議で自民党、日本維新の会などの賛成多数で可決された。民進、自由、社民の3党は退席し、共産党は反対。自主投票の公明党は賛否が分かれた。

IR推進を主張する超党派のIR議員連盟は、14日の会期末までに参院で可決し、成立を目指しているが、民進党など野党だけでなく、与党の公明党内にも反対論があり、先行きは依然不透明だ。

自民党を中心とする超党派のIR議員連盟は、IR推進法案を成立させることで観光振興や雇用創出を促すことになると訴えてきた。

カジノのほか、国際会議場やショッピングセンター、宿泊施設などが一体的に運営されるIRには、経済効果も期待されている。

米カジノ運営大手、MGMリゾーツ・インターナショナル(MGM.N)のジェームス・ムーレン会長・最高経営責任者(CEO)はロイターとのインタビューで、投資規模は「5000億円から1兆円になるだろう」と述べていた。

一方、反対派はカジノがマネーロンダリング(資金洗浄)の温床になる恐れがあると指摘。ギャンブル依存症への対策が、はっきり決まっていない段階での解禁は、社会的に弊害が多いと主張している。

カジノ解禁は、2段階での法的対応が予定されている。IR推進法案が成立した場合、1年以内に政府が「IR実施法案」を作成し、具体的な規制やIR運営に関するルールを明記。実施法案の成立後にカジノ運営が認められる手順となっている。

この日の会見で、自民党の細田博之・総務会長(同議連会長)は、パチンコなどを含むギャンブル依存症の問題についても、今回の推進法案の審議を踏まえて「社会的に取り組むべき時が来た」と語った。

IRの誘致には、大阪市、北海道釧路市、苫小牧市、長崎県佐世保市、横浜市などが前向きな姿勢を示している。

*写真を差し替えました。

(江本恵美 編集:田巻一彦)

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http://jp.reuters.com/article/ir-law-idJPKBN13V0I0?sp=true


 


カジノ法案が衆院通過、7日に参院審議入り−終盤国会の焦点に
延広絵美
2016年12月6日 13:23 JST 更新日時 2016年12月6日 17:21 JST

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自民は今国会での成立目指すも、民進など反発で先行き不透明
成立なら政府が1年以内に実施法を整備
 
カジノを含めた統合型リゾートの整備を政府に促す法案 (IR推進法案)は6日午後の衆院本会議で、自民党などの賛成多数で可決、参院に送付された。参院は7日の本会議で趣旨説明と質疑を行う。
  法案を推進している自民党や日本維新の会などは今国会中の成立を目指すが、民進党などは衆院での審議が不十分として反発してきたことから、14日の会期末に向けた参院審議の見通しは不透明だ。
米ラスベガスのカジノ
米ラスベガスのカジノ Photographer: Tim Rue/Bloomberg
  菅義偉官房長官は6日午後の記者会見で、カジノ法案について「引き続きこれから参議院でも審議が続く。政府としては国会の審議の行方をしっかり見守っていきたい」と述べた上で、カジノを含むIRの整備は「観光立国を目指すわが国にとって、まさに観光振興、地域振興、さらには産業振興、こうしたものが期待される」と語った。
  超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連、通称・ カジノ議連)の幹部も6日午後、国会内で記者会見。議連事務局長で同党の西村康稔総裁特別補佐は「ぜひこの国会で成立してほしい」と語った。
  法案は議連会長で自民党の細田博之総務会長らが13年12月にいったん提出したが、1回審議が行われただけで14年11月の衆院解散によって廃案。15年4月に再び提出したものの、他の法案審議が優先され、たなざらしになっていた。
  衆院内閣委員会は11月30日に審議入り。12月2日に2回目の質疑を行った後、秋元司委員長が採決に踏み切った。内閣委はギャンブル依存症対策の強化やIRを設置できる区域の認定数に上限を設けることなどを求めた付帯決議も可決した。
  
  法案は政府に統合型リゾート(IR)の整備を推進する「責務を有する」 と規定し、推進法の施行後1年以内をめどに必要な法制上の措置を「講じなければならない」としている。日本人の利用を制限するためカジノへの入場を管理する措置を政府が「講ずるものとする」との条文もある。
  付帯決議は15項目におよび、地方自治体がIRを設置できる「特定複合観光施設区域」の認定申請を行うには、議会の同意を要件とすることや、カジノへの厳格な入場規制を導入することなども求めている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHPDCV6KLVRA01


 

Business | 2016年 12月 6日 10:33 JST 関連トピックス: ビジネス, トップニュース
首相の真珠湾訪問、強固な日米同盟を世界に発信=菅官房長官

[東京 6日 ロイター] - 菅義偉官房長官は6日閣議後の会見で、安倍晋三首相が12月26、27日に米ハワイを訪問し、オバマ大統領と首脳会談を行うとともに真珠湾を訪れ、慰霊を行う予定だと述べた。

今回の訪問の意義について菅官房長官は「未来に向け強固な日米同盟を再認識するとともに、日米同盟が希望の同盟としてアジア太平洋地域、国際社会の平和と繁栄に貢献するものであることを世界に力強く発信する機会になる」と説明した。

また「今回の訪問は謝罪のためではない」とし、「2度と戦争の惨禍を繰り返してはならない、この決意を未来に示し、日米の和解の価値を発信する機会になる」と語った。

(石田仁志)

スライドショー:真珠湾攻撃から75年

http://jp.reuters.com/news/picture?articleId=JPRTSUA5R&slideId=1163887267

An aerial photograph taken the year before the Japanese raid shows the East Loch and the the Fleet Air Base on Ford Island in Pearl Harbor, Hawaii. Visible are the carrier Yorktown, ten battleships, seventeen cruisers, two light cruisers, and over thirty destroyers. U.S. Navy/National Archives
HANDOUT .

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http://jp.reuters.com/article/suga-abe-obama-idJPKBN13V04M
http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/171.html

[経世済民116] イタリア国民投票で露呈した真のリスク トランプ相場は「根拠なき熱狂」 日銀短観に海外売上・設備投資、ユーロ想定レート追加

FX Forum | 2016年 12月 6日 16:54 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:

イタリア国民投票で露呈した真のリスク

山口曜一郎三井住友銀行 ヘッド・オブ・リサーチ
[東京 6日] - イタリアでは4日に憲法改正案をめぐる国民投票が実施され、賛成40.9%、反対59.1%で否決された。この国民投票を自身の信任投票と位置付けていたレンツィ首相は辞任を表明し、金融市場では政治混乱を懸念する見方が台頭している。

状況は複雑で、この先は様々なシナリオが考えられるが、ここでは、重要なリスクをあえて3つに絞り、論じていきたい。筆者は、実は短期的なリスクは人々が考えているほど差し迫ったものではない一方、中期的なリスクに警戒する必要があると見ている。

ここで取り上げる3つのリスクとは、1)イタリアの信用力低下による国債利回りの上昇、2)銀行セクターへの懸念の高まりと銀行システム不安、3)アンチ・エスタブリッシュメント(反既存支配層)の流れの強まりである。

もちろん、これらのリスクはそれぞれが絡み合っている。例えば、イタリア国債利回りの上昇リスクの背景には、政治混乱によるイタリア経済の弱体化に加えて、アンチ・エスタブリッシュメントの流れがユーロ離脱の声につながり、イタリア国債の価値を下落させるという連想もあるだろう。

ただし今回は、問題の所在と警戒すべき事項をイメージするのが目的であるため、複雑な絡み合いもできる限りシンプルに考えていくことにする。

<イタリア国債利回りの上昇リスク>

イタリアの政府債務規模はユーロ圏諸国の中で突出しており、欧州委員会の経済見通しでは2017年は対国内総生産(GDP)比で133.1%に達する。金融市場では、国民投票否決による政治混乱から国債利回りに上昇圧力がかかることが懸念されており、特に先行きの不透明性が強まれば、イタリア国債の3割以上を保有する非居住者を中心とした売りが強まる恐れがある。

ただし、当時とは状況が異なることも確かだ。現在、欧州中銀(ECB)は金融緩和政策の一環として資産購入プログラムを実施中であり、国債を中心に月800億ユーロの債券を購入している。緊急時には、この枠組みの中で、イタリア国債の買い入れを増やすことが可能だろう。

また、ECBは債券購入プログラム(OMT)を有している。こちらは残存期間が1―3年の債券が対象であり、発動に際して厳格な条件が付与されることもあって、2012年9月の発表以来、利用実績はゼロだが、万が一、ユーロ危機を連想させるような展開となれば、政策手段として活用可能だ。

なお、最終手段としては欧州安定メカニズム(ESM)が存在する。現在は4270億ユーロの利用可能枠が残っており、国債売りへの抑止力としての効果が期待できる。イタリアのポピュリズム政党「五つ星運動」の勢力拡大から財政規律が失われ、OMTやESMが実施できない事態を危惧する向きもあるが、今の段階でそのシナリオに賭けるのは時期尚早だろう。一定程度の利回り上昇があっても、上昇が止まらなくなる展開は予想しにくい。

<イタリア銀行システム不安は杞憂か>

銀行セクターへの懸念の高まりと銀行システム不安は大きな問題だ。イタリアの銀行は大手を含めて多額の不良債権を抱えているところが少なくない。特に報道されているように、大手銀の1つであるモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)は現在、50億ユーロの増資と280億ユーロの不良債権処理を進めている最中であり、政治的な混乱が増資に悪影響を及ぼすのではないかと見られている。

他の大手銀の中にも民間資本による増資を計画しているところがあり、政治混乱から増資や不良債権処理が進まなければ、個別行の問題にとどまらず銀行システム全体に影響が広がるとの懸念の声が聞こえてくる。

この問題をさらに厄介なものにしているのは、万が一、増資が不調となり、公的資金の注入が必要となった場合、株主や債権者に負担を求める「ベイルイン」が行われる点だ。イタリアの家計は現金に近い感覚で銀行債を購入しており、約2000億ユーロの銀行債を保有している。ベイルインが行われれば、彼らも損失を負担することになり、イタリアの現政権や欧州連合(EU)に対する不満が高まる恐れがある。

つまり、この問題は端的に言えば、国民投票の結果が直接的に影響するというよりも、銀行の増資がうまくいくかどうかがポイントだ。国民投票が否決されても、各行の増資が円滑に進めば、短期的なリスクはそれほど高まらず、銀行株への下押し圧力は後退するだろう。

報道によれば、モンテ・パスキの債券保有者は10億ユーロの劣後債を株式に転換することに応じた模様であり、資本増強は一歩進んだ。一方、同行関係者やアドバイザーらは資本増強計画を続行するかどうかを数日中に決定する予定であり、これが非常に重要だ。増資がうまくいかないようだと、公的資金注入の可能性が高まり、ベイルインに至るようであれば、国民の政治に対する不満を高めることになる。

<アンチ・エスタブリッシュメントのうねり>

前述した通り、国民投票否決の影響は中長期的に大きいものとなる可能性がある。もちろん、短期的にも政治的混乱を招くリスクがあるため予断は禁物だが、各種報道を追うと、以下のような安心材料が見えてくる。

●レンツィ首相が辞任しても、次期首相の下で現在の連立政権の枠組みが維持されるのであれば、早期の解散総選挙は回避される。

●新しく樹立された暫定政権によって、五つ星運動の影響力を抑えるために、下院選挙で第一勢力に与えられるボーナス議席の仕組みが見直される可能性がある。

●連立協議が難航し、大統領が指名した首相による新内閣が信任されなければ、解散総選挙となる。ただし、総選挙で五つ星運動が躍進したとしても、上院で単独過半数を取れるとは限らず、皮肉なことに、今回の国民投票否決によって上院の権限が縮小しないため、反EUの流れが一気には加速しにくい。

これらを考慮すると、すぐにイタリアの政治が反EUに大きく舵を切る公算は必ずしも大きくない。むしろ、警戒すべきは、イタリアの国民投票が、英国民投票や米大統領選挙同様、世界各地で起こり始めているアンチ・エスタブリッシュメントやポピュリズムといった大きなうねりを表している可能性だ。

その意味で、同じ4日に行われたオーストリアの大統領選挙で、リベラル色の強いアレクサンダー・ファン・デア・ベレン候補が、極右・自由党のノルベルト・ホーファー候補を破ったことは、エスタブリッシュメント陣営にとって一息つけるものだった。

しかし、アンチ・エスタブリッシュメントの流れが食い止められたとは、とても言い難い。来年の、オランダ総選挙、フランス大統領選挙、ドイツ総選挙につながっていくと考えると、欧州の政治イベントは世界中に広がるアンチ・エスタブリッシュメントのうねりを顕在化させる可能性がある。

これらを踏まえてユーロの為替相場を見た場合、短期的には売りよりも買い戻しの動きが出やすく、売り圧力が強まるかどうかは、イタリアの銀行の増資動向を見ておけば良さそうだ。

ただし、中期的には政治イベントに絡んでユーロ売りが強まる局面が出てくると見る。政治問題が顕在化する展開となれば、来年前半のユーロドルは1.02ドル程度までユーロ安が進むだろう。万が一、フランス大統領選挙でマリーヌ・ルペン候補が勝利した場合は、1.00ドル割れの可能性さえある。

*山口曜一郎氏は、三井住友銀行市場営業統括部副部長で、ヘッド・オブ・リサーチ。1992年慶應義塾大学経済学部卒業後、同行入行。法人営業、資本市場業務、為替セールスディーラーを経て、エコノミストとして2001―04年にニューヨーク、04―13年ロンドンに駐在。ロンドン大学修士課程(金融学)修了。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yoichro-yamaguchi-idJPKBN13V0JG?sp=true


 

 

日銀、短観調査に海外売上・設備投資を追加 ユーロの想定レートも

[東京 6日 ロイター] - 日銀は6日、全国企業短期経済観測調査(短観)見直しの最終案を公表した。日本企業における海外事業の拡大を踏まえ、短観に海外での売上高や設備投資額、ユーロ/円の想定為替レートなどの調査項目を追加する。来年3月調査での研究開発投資額を皮切りに、2020年頃にかけて導入する予定。

新設する日本企業の海外での事業活動については、連結企業グループの親会社であり、資本金10億円以上の大企業を調査対象とする。具体的には、連結ベースの売上高、海外売上高、経常利益、設備投資額、海外での設備投資額を調査。海外での売上高比率や設備投資比率も公表する。

為替レートの調査も拡充する。これまでは、輸出企業を対象に米ドル/円についてのみ想定為替レートを調査していたが、新たにユーロ/円を加えるとともに、調査対象を金融機関を除く全企業に拡大。輸入や対外直接投資などを含む事業計画の前提となる想定為替レートを調査する。

こうした海外での事業活動の新設と為替レートの拡充は、2020年頃の公表開始を予定している。

また、国際基準の変更に伴って国内総生産(GDP)に新たに研究開発費が参入されることに足並みを揃え、来年3月調査から研究開発投資額を追加する。これによって投資関連の年度計画には、従来の設備、土地、ソフトウエアに研究開発の項目が新たに加わることになる。

日銀では、調査項目の新設、拡充を行う一方、回答企業の負担を軽減するため、一部の項目の廃止などを進める。

(伊藤純夫)
http://jp.reuters.com/article/boj-tankan-idJPKBN13V0RV

 


コラム:トランプ相場は「根拠なき熱狂」か

http://s4.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20161206&t=2&i=1164338643&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXMPECB50CU

 12月5日、トランプ相場は、20年前にグリーンスパン元米FRB議長が初めて用いた「根拠なき熱狂」なのか。写真は、トランプ次期米大統領を映すTV画面。フランクフルト証券取引所で11月撮影(2016年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

Tom Buerkle

[ニューヨーク 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ちょうど20年前、アラン・グリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長は、株式市場について「根拠なき熱狂」という言葉を初めて用いた。実際ハイテクバブルが崩壊するまでには、それから3年を要した。しかし、今の市場の活発な性質を考えると、反応スピードはもっと速いだろう。

グリーンスパン氏が講演した1996年12月時点で、S&P総合500種の年間上昇率は21%近く、株価収益率(PER)は平均して予想利益の19倍強だった。同氏の発言は一時的な揺り戻しをもたらしたとはいえ、S&P総合500種は2000年3月のピーク前には2倍以上の水準になっていたとみられる。

足元ではドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利によって、減税とインフラ支出拡大、規制緩和が実施されるとの期待から新たな熱狂が生まれた。S&P総合500種は、大統領選当日から数週間で3%強上昇し、より小型の株で構成されるラッセル2000指数は最高値を更新した。

現在のバリュエーションは、グリーンスパン発言当時よりも高い。S&P総合500種のPERは25倍強で、長期平均の15.6倍を上回っている。もっとも未踏の領域とは言い難い。アナリストの予想では、初期段階にある企業利益の回復は今後加速し、ファクトセットがまとめた来年の増益率見通しのコンセンサスは11%を超える。金利水準も最近上昇したもののまだ歴史的には低く、投資家は増益に対して喜んで対価を支払う。

この先はトランプ氏が壮大に打ち上げた多くの公約を実行できるかどうかが重要になる。選挙期間中、トランプ氏は財政赤字に反対しながらも、赤字を劇的に増やすのは必至である減税をすると表明した。自由貿易や海外への雇用移転に対する厳しい姿勢は、売上高を外国市場に依存する米多国籍企業にとって脅威になりかねない面もある。

議会共和党は、歳出拡大の取り組みにはこれまで熱意を示してこなかった。さらにドルと金利はここ数年、米経済のブレーキ役になっており、次期政権でも状況は変わらないだろう。FRBは利上げを再開し、回数は昨年の1回よりも増やす構えだ。こうした中で資産価格が再び根拠なき熱狂の範囲に入っているのかどうか投資家が判断を下すまでに、それほど長い時間がかかるはずはない。

●背景となるニュース

*グリーンスパン氏はFRB議長だった1996年12月5日に、「根拠なき熱狂」という新しい表現を世に広めた。

*グリーンスパン氏は当時の講演で「持続的な低インフレは先行き不透明感を後退させ、リスクプレミアムが低下して株式その他の資産価格が上昇することを意味するのは明らかだ。しかし根拠なき熱狂が過度に資産価格を押し上げ、その後日本で過去10年間起きたような予想外の長期にわたる縮小にさらされてしまう局面を、われわれはどうやって知るのだろうか。またそうした事態を金融政策にどう織り込むのだろうか」と語った。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/441.html

[経世済民116] 中国の米企業へ、トランプ氏のメッセージは「くたばれ」 「台湾カード」の危険性 中国の資本規制、外資企業の長期投資意欲そぐ
Column | 2016年 12月 6日 16:12 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
中国の米企業へ、トランプ氏のメッセージは「くたばれ」

 12月5日、トランプ次期米大統領(写真)は、前例を破って台湾の蔡英文総統と電話会談し、さらにはツイッターで中国の政策や米国企業による海外生産について不吉な発言をした。ニューヨークで3日撮影(2016年 ロイター/Mark Kauzlarich)


Pete Sweeney

[香港 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ次期米大統領の中国に対する姿勢に、政策ウオッチャーらは頭を掻きむしっている。トランプ氏は、前例を破って台湾の蔡英文総統と電話会談し、さらにはツイッターで中国の政策や米国企業による海外生産について不吉な発言をした。

しかし1つだけ明らかなメッセージがある。トランプ氏は中国における米国投資に対する反発を意に介していないばかりか、歓迎してさえいるということだ。

トランプ氏がなぜ約40年間の外交儀礼を破って蔡総統と電話会談したしたのかは定かでない。台湾を中国の一部と見なす中国政府は外交的に抗議するにとどめ、この問題が自然消滅してくれるのを願っている様子だ。国営メディアは電話会談について、政権移行チームが外交政策に不慣れなために起こった馬鹿げた出来事だと片付けた。

中国の米商工会議所は「アジアで事業展開する米企業には確実性と安定性が必要だ」と控え目な表現で応じたが、無鉄砲なトランプ氏を前にせいぜい頑張ってくれ、としか言いようがない。トランプ氏は蔡総統との電話会談を正当化すると、今度は中国の企業政策や南シナ海問題を攻撃。中国はいよいよ一過性の事故と片づけるのが難しい立場に追いやられた。

米企業にとって頭の痛いことに、トランプ氏はツイッターで、海外移転した米企業の製品に35%の輸入関税を掛ける計画も示している。実行すればアップルなど、数十年越しで中国にサプライチェーンや工場を建設してきた企業が打ちのめされるだろう。最近の調査では、米国の対中国直接投資のストックは1990年から2015年にかけて2280億ドルまで積み上がっている。

中国に進出した海外企業にとっての悪夢は、怒った暴徒が工場や旗艦店を取り巻くことだ。台湾問題で地雷を踏むことは、暴徒に火をつける最高の方法であり、彼らは中国政府の後ろ盾を要求するだろう。

トランプ氏のツイートを読む限り、彼がそうした事態を心配している様子はない。中国を締め上げれば締め上げるほど、米企業は本国に戻ってくると信じているのかもしれない。しかし、既に資本移動への規制を強めている中国が、退去する海外企業を身ぐるみはがそうとするのはほぼ確実だ。送金を封じたり、資産の叩き売りを強要するなどの方法が考えられる。中国に進出している米企業にとって、トランプ氏の態度はジェラルド・フォード元副大統領が1970年にニューヨークに送ったと伝えられる(真偽のほどは定かでない)メッセージに近いかもしれない。つまり「くたばれ(Drop dead)」だ。

●背景となるニュース

*トランプ次期米大統領が台湾の蔡英文総統と電話会談したことについて、中国は3日に外交的な抗議を行った。米大統領あるいは次期大統領と台湾総統とのこうした会談は1979年以降で初めて。

*中国の王毅外相は、トランプ氏に電話をかけるという「つまらない」行動をとった台湾側を批判。中国国営メディアは、トランプ氏の政権移行チームが外交政策に不慣れなために起こった出来事だと片づけた。

*電話会談に対する批判が広がり始めると、トランプ氏はツイッターで反論。「中国は自国通貨を切り下げること(わが国の企業の競争を厳しくすること)や、われわれの製品に高い輸入関税をかけること(米国はかけていないのに)、南シナ海の真ん中に巨大な軍事施設を建設することについて、われわれの了承を求めたのか?そうじゃないだろう!」と投稿した。

*トランプ氏はまたツイッターで、海外移転した米企業の製品に35%の輸入関税をかける計画も示した。

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焦点:トランプ氏が仕掛ける中国試し、「台湾カード」の危険性

[ワシントン 5日 ロイター] - ドナルド・トランプ次期米大統領は先週、台湾の蔡英文総統と電話会談し、中国に対する強硬姿勢を示唆したが、貿易や北朝鮮といった問題をめぐり、中国から譲歩を引き出すための危険な賭けをどこまで推し進めるのかは定かではない。

米国と台湾の首脳は1979年の米中国交正常化以来、直接コンタクトを取っていなかった。

トランプ氏と蔡氏の電話会談を受け、中国政府は外交ルートを通じて米国政府に抗議。来年1月に退陣するオバマ政権は、長年かけて共和、民主両党による政権が慎重に築き上げてきた対中関係の進展を損ないかねないと警告した。

もしトランプ氏が過度に自分の考えを通そうとするなら、中国との軍事対立を招く可能性があると、専門家らは指摘する。

同氏の側近とマイク・ペンス次期米副大統領は、蔡氏との10分間に及ぶ電話会談は「表敬」であり、対中政策の変更を示すものではないとして、火消しに追われている。

しかしトランプ氏は4日、中国の経済・軍事政策をツイッターで批判し、火に油を注いだ。一方、同氏の経済顧問であるスティーブン・ムーア氏は、中国が気に入らなくても「お好きなように」と述べた。

元米高官を含む専門家らは、台湾首脳との電話会談は中国に対する警告の第一弾にすぎないとみている。

トランプ政権の国務長官候補の1人とみられているジョン・ハンツマン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、対中政策において台湾は「有益なレバレッジポイント」であることが証明されるかもしれないと語った。

同じく国務長官候補に挙がっているトランプ氏のアドバイザーで対中タカ派のピーター・ナバロ氏とジョン・ボルトン元国連大使は共に、アジアの領有権問題で主張を強める中国に圧力をかけるために「台湾カード」の利用を提案している。

だがこうした戦略は非常にリスクを伴うと、オバマ政権の米国家安全保障会議(NSC)で東アジア政策を統括するアジア上級部長を務めたエバン・メデイロス氏は指摘。「中国は1990年代半ばに、台湾問題は戦争と平和に関わる問題だと非常に明確に伝えてきた。これは米国が試すべき問題だろうか」

「台湾問題は政治的にとても慎重さを要する問題であり、中国にとっては、他の何かと取引をすることはないであろう非常に優先度の高い利益だ。もし米国が台湾と正式に外交関係を結ぶことを決めたなら、北東アジアで軍事危機が起きてもおかしくはない」と同氏は語る。

米共和党政権時代のホワイトハウス高官で、2002─2006年に米国の在台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)台北事務所元所長のダグラス・パール氏は、トランプ氏の側近らのアプローチは、中国が現在よりも弱く、米国が強硬姿勢を取れる立場にあった1990年代に基づいているようだと話した。

「問題は、中国政府が1996年に(軍備の)10カ年増強計画を決めた。そのようなことを再び受け入れなくてはならない必要性は全くないだろう」と同氏は述べた。

<中国試し>

パール氏によれば、中国の習近平国家主席には、来年の党大会で地位固めをしたいという思惑があり、「台北事務所を正式な外交機関にするというような柔軟な態度を習氏が見せれば、ライバルたちの餌食(えじき)となる。そのような事態は起こさないだろう」との見方を示した。

また、米上院外交委員会のクリス・マーフィー民主党議員は、北朝鮮の核問題や通商問題で中国に圧力をかける方法として台湾を利用することは逆効果だと指摘している。

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官や、トランプ氏と同氏の政権移行チームに助言する人たちも、40年来の「1つの中国」政策をあからさまに破ることには警鐘を鳴らしているという。

その結果、トランプ氏はまず、日本や他のアジア同盟国を動揺させないよう、米政策転換の兆しというような形ではなく、個人的な問題として電話会談を要請した。

だがその後トランプ氏が、為替操作や関税や南シナ海問題をめぐり、中国を非難するツイートを行うと、一部のアジアの国からは中国を故意に挑発して、危険なまでに緊張を高めることになるのではないかとの憶測を呼んでいる。

ニクソン大統領の歴史的訪中(1972年)の際に通訳を務めた元米外交官のチャス・フリーマン氏によれば、中国当局者は現在、トランプ氏の大統領としての意図がどのようなものとなるのか静観しているのだという。

「彼ら(中国)はトランプ氏を侮辱したくもなければ、同氏と感情的に対立したくもないと考えている」と同氏は指摘。「トランプ氏に対し、『疑わしきは罰せず』というのが当初の反応だろう。同氏が自分のしていることの重大さを理解しておらず、周囲の人たちに操られている可能性もあると」と語った。

(David Brunnstrom記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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コラム:中国の資本規制、外資企業の長期投資意欲そぐ

Rachel Morarjee

[北京 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 外資企業は中国に好きなだけ投資できるが、一方で、稼いだ利益を容易に国外に送金できるかは不透明だ。中国経済が減速するなか、このことは中国でビジネスを行う外資企業にとり大きな問題だ。

HSBCの推計によると、2015年末時点で、中国国内の海外直接投資による企業利益は1兆ドルだった。ただ、この数字は、外資や多くの中国企業が、人民元の一段安と資本規制強化を見込んで海外へ資金を移したことから、ここ1年で縮小した可能性がある。

積極的に海外に資金を移していた企業は、今、安堵で胸をなでおろしているかもしれない。国家外為管理局(SAFE)は資本流出を防ぐための対策を強化しているもようで、関係筋によると、SAFEは国内商業銀行に通達した非公式のガイダンスで、海外送金で承認が必要な水準をこれまでの5000万ドル以上相当から500万ドルに引き下げた。

中国銀行(601988.SS)では、商取引目的の企業による100万ドル以上の外貨購入が既にできなくなっており、個人間の送金も控えられているとの報告もある。

企業の現金管理には今までよりも時間や形式的な手続きが必要になる。社内間融資の返済も複雑になり、人民元で稼いだ利益をすぐに海外に送金することはできなくなる。

これは2006年の政策環境に大きく後退したようだ。当時は、利益配当の支払いにも手続きに数カ月かかっていた。ただ、企業にとり今のほうが状況はもっと深刻かもしれない。製造業を中心に、多くの企業にとり中国事業への投資はこれまでほど必要ではなくなっているからだ。

中国経済が12%以上の成長を維持していた10年前には、海外に利益を送金する必要はさほどなかった。中国事業をさらに拡大するため中国国内に再投資することほうが理にかなっていたからだ。

一方、現在、自動車やヘルスケアなど一部の消費主導セクターは別だが、大半のセクターはほぼ成熟化し、成長がほぼ頭打ちになっている。企業はこうしたセクターで稼いだ利益を回収しようとしている。これまでの長期投資で稼いだ利益を享受しにくくすることは、中国でビジネスを行う外資企業の意欲を大きくそぐことになる。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
http://jp.reuters.com/article/china-cash-trap-idJPKBN13V05L?sp=true

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/442.html

[経世済民116] ミニバブル崩壊示唆するトランプパズル 原油先物下落11月OPEC産油量は過去最高更新 ICAP元8.8%急落 対ドル続伸



FX Forum | 2016年 12月 6日 12:24 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:

ミニバブル崩壊示唆するトランプパズル

上野泰也みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 6日] - マーケットが荒波に揺さぶられた2016年の出来事で歴史に残る経済的イベントと言えそうなのは、国内では日銀によるマイナス金利の導入、海外では米大統領選挙におけるドナルド・トランプ共和党候補の勝利だろう。

先日発表された「2016ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンには、「マイナス金利」と「トランプ現象」がしっかり入っていた。

筆者も予想を外してしまった今回の米大統領選挙の結果から痛感するのは、「反グローバル化のうねり」がいかに強まっているかという点である。グローバル化による「マクロのメリット」が先進各国で政策的に優先される中で事実上置き去りにされた(あるいは見捨てられた)という「ミクロの不満」が、大きなうねりになっている。英国民投票における欧州連合(EU)離脱決定も、そうした文脈でとらえることができる。

「グローバル化」を大きな原動力にして成長率を高めてきた世界経済は、それがもたらした「負の部分」に対する不満の蓄積が各国の政治を動かす中で、停滞・混迷する道筋へと足を踏み入れつつある。来年はフランス大統領選挙、ドイツやオランダの総選挙など、そうした「うねり」と密接な関わりがある政治マターが欧州でいくつも控えている。

今年の延長線上の展開を警戒して市場が「リスクオフ」に傾き、逃避通貨である円に買いが入る場面が、何度も見られるだろう。これが為替を含む来年のマーケットを考える際に、大きなポイントになる。

<トランプ政策の大きな「謎」は2つ>

もう1つの大きなポイントは「トランプノミクス」の行方である。経済政策で選挙中に大風呂敷を広げてしまったトランプ氏は、最終的にはどのような政策を選んで実行に移そうとするのだろうか。

トランプ氏勝利が濃厚になると、米国の政策の先行き不透明感が強まったと判断した市場は初期反応としてリスク回避志向を強め、株安・ドル安円高・債券高に大きく動いた。いわゆる「トランプショック」である。

しかしその後は、トランプ氏の経済成長志向の強い公約がウォール街の期待感を刺激し、思惑的な株買い・債券売り・ドル買いがおそらくはアルゴリズム取引により増幅されて、「トランプラリー」と呼ばれる動きになった。米国の主要株価指数は史上最高値を更新し、米長期金利は大幅に上昇。ドル実効レートは十数年ぶりの高水準になった。

こうした「トランプラリー」は、期待先行の「ミニバブル」の色彩が濃いと筆者は見ており、持続性には疑問符が付く。むしろ、この先は「トランプパズル」とでも呼べそうな時間帯に入っていくのではないか。トランプ次期政権が実際に打ち出し、実行段階に移すことのできる経済政策がどのような内容になるのかを、あたかもパズルを解くかのごとく市場が考え、悩む時間帯である。問題となる点のうち重要なものを、2つ取り上げたい。

●ホワイトハウスの政策を最終的に左右するキーマンは誰か

大統領首席補佐官にはラインス・プリーバス共和党全国委員長が指名される一方、これと対等のポストとされる首席戦略官・上級顧問には、インターネット上で主張を展開している新しいタイプの排外主義的・保護主義的な右派(オルト・ライト)の代表人物であるスティーブン・バノン選挙対策本部長が指名された。

議会共和党との円滑な意思疎通や妥協を重視するのであればプリーバス氏の意向が、選挙で公約した過激な内容を尊重し2年後の中間選挙に向けてトランプ政権への選挙民の支持をしっかりつなぎとめようとする場合はバノン氏の意向が、トランプ次期大統領の最終判断を決定付けるだろう。

●為替政策はドル高志向かドル安志向か

米長期金利上昇とドル高が、政権発足前の段階から急速に進んでしまっている。だが、米国の企業さらには経済全体がグローバル化した中に置かれているという事実は、選挙でのトランプ氏勝利によって一朝一夕に変わるわけではない。

景気・企業収益・物価には、連邦準備理事会(FRB)が利上げを何回か実施したのと同様の金融引き締め効果が及んでおり、企業収益の減少、住宅投資への悪影響、貿易収支の悪化、製造業関連のマインド指標の悪化などが、遅かれ早かれ観察される可能性が高い。

そうした兆候が出てきたことに慌てふためいて、財務長官などトランプ次期政権の要人がドル高をけん制するトークを発し、ひいてはドル安志向を鮮明にする場合、市場は敏感に反応するだろう。

しかしその場合、20カ国・地域(G20)による通貨安競争回避の合意は捨て去られ、米国も切り下げ競争に参入したという受け止めが市場で広がりやすくなる。欧州・日本・新興国などがこれに対抗してどう出るかを含め、市場は全体として極めて神経質な状態に陥ると見込まれる。

一方、為替相場の形成は自由な市場に委ねるという基本原則をトランプ次期政権で為替政策の責任者になるとみられるスティーブン・ムニューチン次期財務長官が遵守する場合、ドル高が容認されていると市場は受け止めて、ドル買いを進めやすくなる。もっとも、経済指標や企業業績にドル高のデメリットがはっきり反映されてくれば、そうした動きは止まる。

「米国第一」を掲げるトランプ次期大統領は、「強いアメリカ」の復活を掲げて登場した1980年代前半のレーガン大統領と重なり合う面が少なくない。だが、「レーガノミクス」は、ドル高を放置しつつ大型減税を実行したことで貿易収支と財政収支の「双子の赤字」に直面して行き詰まり、1985年9月の「プラザ合意」で協調的なドル相場の押し下げが行われることになった。市場がそうした歴史的な経緯をイメージする場合、トランプ次期政権がドル安容認を鮮明にすれば、ドルが急落することもあろう。

米国次期政権の為替政策には、上記のほかに、中国の為替操作国認定問題、FRB理事空席2つの穴埋め問題、イエレンFRB議長再任問題も関わりあってくる。

期待・思惑先行で足場がしっかりしていない「トランプラリー」というミニバブルは、遅かれ早かれ崩壊するだろう。とはいえ、「お化けの正体見たり」となるまでにどのくらい時間が必要なのかは、現時点では誰にも分からない。

最後に、米国の目先の金融政策にもコメントしたい。トランプ次期政権の政策の具体像がまだ固まっておらず、来年以降の米国の経済見通しは霧がかかったような状態である。

合理的に考えれば、市場のほぼ完全な織り込みという「お膳立て」に乗る形の安易な利上げを連邦公開市場委員会(FOMC)は行うべきではないが、ハト派のイエレン議長でさえ、2枚目の「のりしろ」(将来の利下げ余地)を容易に入手する誘惑には勝てそうにない。1年ぶりの利上げが決まる可能性が非常に高いことは、筆者も認めざるを得ない。

とはいえ、利上げがその先順調に積み重なっていくという市場の織り込みは行き過ぎである。金利上昇・ドル高による米国経済へのダメージに鑑みると、そうした金利水準は遅かれ早かれ修正されるだろう。イエレン議長はFOMC終了後の記者会見で、中立金利の低さに触れながら、今後の利上げ回数は限られるというメッセージを従来よりも強めに発信してくるのではないか。

*上野泰也氏は、みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト。会計検査院を経て、1988年富士銀行に入行。為替ディーラーとして勤務した後、為替、資金、債券各セクションにてマーケットエコノミストを歴任。2000年から現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yasunari-ueno-idJPKBN13V08F?sp=true


原油先物が下落、11月OPEC産油量は過去最高更新

[シンガポール 6日 ロイター] - 6日のアジア市場で、原油先物価格が下落している。石油輸出国機構(OPEC)の11月産油量が過去最高を更新したことから、供給過剰が続くとの見方が強まっている。

北海ブレント先物LCOc1は、0.7%安の1バレル=54.55ドル。米原油先物は0.9%安の1バレル=51.32ドル。
http://jp.reuters.com/article/global-oil-idJPKBN13V06H


 

「人民元が8.8%急落」−ICAPデータ、神経質な市場を振り回す
Justina Lee
2016年12月6日 15:42 JST

トランプ次期米大統領が中国の通貨政策をけん制していることで既に神経質になっている人民元の投資家は6日、衝撃を受けた。ICAPのデータで、元相場が1ドル=7.5元に急落したことが示されたためだ。
  ICAPのデータはグーグルとXEドット・コムに表示され、ツイッター上で話題になった。ブルームバーグのデータはそうした動きを示さなかった。トレーダーはエラーが起きたとみている。
  ICAPデータは、この日の上海市場のスポット取引が始まる前に1ドル=7.5元前後を付けていた。ICAP(香港)の北アジア地域の最高責任者ベニー・ルク氏は電話取材に対し、この相場水準は確認できないとし、会社として調査していると述べた。
  CFETS(中国外国為替取引システム)による人民元の公式レートは上海時間午前11時20分(日本時間午後0時20分)現在、前日比0.24%高の1ドル=6.8669元となっている。
原題:ICAP Showing Yuan Tumbling 8.8% Against Dollar Fuels Jitters (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHR1EM6TTDS201


 

中国人民元、続伸−中心レート引き上げで中銀の元相場支援観測強まる
Bloomberg News
2016年12月6日 16:44 JST

中国人民元は6日、対ドルで続伸。中国人民銀行(中央銀行)が元の中心レートを市場予想より元高水準に設定したことで、元相場支援に動いているとの観測が強まった。
  人民元は現地時間午後3時2分(日本時間同4時2分)現在、前日比0.08%高の1ドル=6.8778元。元は一時0.3%高と終値ベースで8月以来の大幅高となった後、午後に入りドル高を背景に上げ幅を縮小した。オフショア人民元は0.25%安。
  人民銀は中心レートを6.8575ドルと、みずほ銀行とスコシアバンク、三菱東京UFJ銀行の予想平均を上回る水準に引き上げた。
原題:Yuan Rises for a Second Day as Fixing Signals Government Support(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHR6KB6S973201
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/443.html

[政治・選挙・NHK217] 米政府、日本の薬価引き下げ計画の見直し要求 スタバの高級路線強化、背景に中流層の縮小 シアトル「スターバックス・リザーブ
米政府、日本の薬価引き下げ計画の見直し要求

By ELEANOR WARNOCK AND MEGUMI FUJIKAWA
2016 年 12 月 6 日 16:44 JST 更新

 【東京】米国政府は、日本政府が薬価引き下げの頻度を増やすよう計画していることについて、見直しを求める書簡を菅義偉官房長官に送った。

 米国のプリツカー商務長官は12月2日付の書簡で、日本の薬価引き下げ計画にいかに「失望している」かを説明。「医療関連製品のインセンティブ構造だけでなく、市場の予測可能性と透明性に対する深刻な懸念を引き起こす」と伝えた。

 東京の米国大使館と首相官邸はこの書簡に関するコメントを避けた。米商務省からもコメントは得られなかった。書簡が菅官房長官に公式に送付されたものかどうかは不明だ。

 全米商工会議所は、同様の内容の書簡を安倍晋三首相にも送ったことを明らかにした。

 米国研究製薬工業協会の広報担当者、マーク・グレイソン氏は「プリツカー商務長官とトム・ドナヒュー全米商工会議所会頭の書簡は、日本の患者にとって良好なイノベーション環境がいかに重要かを強調するものだ」と述べた。

 日本の医薬品市場は米国に次ぐ世界2位の座を中国と争っている。日本の医薬品支出額は今年3月31日までの1年間に7兆9000億円に達した。

 日本では政府が薬価を設定しているため、メルクやファイザーなどの米製薬会社にとって日本の政策は重要な関心事となっている。

 安倍政権は先ごろ、増大する薬剤費を抑制する措置を講じた。まず、来年2月1日からがん免疫療法薬「オプジーボ」の価格を50%引き下げることを決めた。これにより、オプジーボを使用している平均的な患者の年間費用は30万ドルから約15万ドルに減少する。

 また、安倍首相は11月25日の経済財政諮問会議で、薬価改定の頻度を2年に1回から年に1回に増やすことを検討するよう指示した。実現すれば、政府はこれまでより速いペースで高額医薬品の価格を引き下げることが可能になる。

 薬価制度の改革を求める人々は、日本がオプジーボに支払っている費用は世界で最も高いとし、医療費を抑制するため柔軟な対応が必要だと訴えている。

 プリツカー商務長官は書簡でオプジーボの名前を挙げなかったが、「医薬品の保険償還価格を引き下げるためのその場しのぎの制度変更」に落胆していると伝えた。

 日本政府の対応は、オプジーボの高額な価格に関する国内メディアの報道を受けたもので、米国でも高額な薬価に対する反発が起きている。

 米国ではブリストル・マイヤーズ・スクイブがオプジーボを販売。日本では、初期段階から同製品の開発に携わった小野薬品工業が販売している。小野薬品によると、今年4〜9月のオプジーボの売上高は533億円だった。

 小野薬品の広報担当者は、政府によるオプジーボの値下げ決定を受け入れたとしたうえで、「国民皆保険を維持することの重要性も認識している」と語った。

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スタバの高級路線強化、背景に中流層の縮小
シアトルの「スターバックス・リザーブ・ロースタリー・アンド・テイスティング・ルーム」でコーヒーを淹れるバリスタ

By JULIE JARGON
2016 年 12 月 6 日 17:06 JST

 米国中で顧客はコーヒー1杯に1ドル以上を支払うようになる──。約25年前、スターバックスは大胆な予測に基づいて株式公開を決めた。同社は今、1オンス(約30ミリリットル)当たり1ドルするコーヒーが売れると確信している。

 スターバックスを店舗数2万5000超の世界的ブランドに育て上げたハワード・シュルツ最高経営責任者(CEO)は先週、退任の準備を進めていると発表した。シュルツ氏は退任後、12オンス(約360ミリリットル)で12ドルという価格帯の高級コーヒーショップの開発に携わる。

 同社は「スターバックス・リザーブ・ロースタリー・アンド・テイスティング・ルーム」の名前で20から30の巨大店舗をオープンする予定だ。ここでは、希少なコーヒー豆を店内で焙煎し、抽出の仕方もさまざまな方法を提供する。さらに「スターバックス・リザーブ」のブランド名で小規模な店舗を最大1000店を開店するという。

 シュルツ氏は先週のインタビューで、「当社より格段に高い価格でコーヒーを販売する『独立系』を観察してきた」と語った。

モールの客足減少が与える影響

 裕福な顧客を狙った高級コーヒーショップというサブブランド創設について、一部の専門家は戦略として優れた動きと評価。消費者の間で、より質の高いコーヒーへの関心が高まっているからだ。専門家はまた、裁量支出に限りがある中流層が縮小したため、従来の同社コーヒーへの需要が脅かされているとも指摘する。

 新たな店舗ではコーヒーだけでなく、クラフトカクテルも提供する。クラフトカクテルとは、新世代のバーなどによって広まった新しいカクテルだ。シュルツ氏とスターバックスの幹部は水面下でこうしたバーを研究していた。

 同社は最大の市場である米国で4四半期連続で売上目標を下回った。経済の先行きが不透明であることが理由だとして、既存店売上高でかつて記録した5%の伸び率を目指すとしている。

 シュルツ氏によると、高級市場への進出は3年前から計画していた。当時、シュルツ氏は消費者がオンラインショッピングに移行し、ショッピングモールを訪れる回数が大幅に減ったことに気付いた。モールの客足に大きく依存するスターバックスは、外出するだけの価値がある豊かな経験を提供する方法を見つける必要があったという。

 ブランド戦略コンサルティング会社ビバルディのエリック・ヨアキムスセイラーCEOはコーヒー業界の現状について、過去にビール業界でも同じようなことが起きたと指摘。クラフトビール醸造所の台頭でビール業界は打撃を受けた。ヨアキムスセイラー氏はビール会社が「高級市場で自衛策をとらなかった」といたうえで、「スターバックスはミドルマーケットが減速しているとみているのだろう」と語った。

ミレニアル世代が引っ張る高級化

 コーヒーに高い料金を支払ってもいいと思うのは経済力のある顧客だけではない。

 物語性のある質の高い製品を求めるミレニアル世代は、コーヒー高級化の大きな推進力になっている。全米コーヒー協会によると、18歳から24歳の年齢層で前日に高級コーヒーを買ったと回答した人の割合は2008年には13%だったが、2016年には36%に伸びた。25歳から39歳の年齢層では19%から41%と、さらに顕著な伸びが見られた。

 消費者も高級コーヒーに高い料金を支払うことに前向きだ。調査グループのトランスパレント・トレード・コーヒーによると、特定の焙煎所が販売する栽培者の名前が分かるコーヒーの平均小売価格は、そうでない商品と比較して、1ポンド(約454グラム)当たり9.95ドル高かった。

 コーヒーに関する政策や国際貿易に詳しいコンサルタントのアンドリュー・ヘッツェル氏は、質の高いコーヒーの需要は世界的に伸びていると指摘する。さまざまなコーヒー取引団体のデータによると、高品質のコーヒーの世界消費量は年間7%から8%のペースで増加している。これに対し、コーヒー全般の世界消費量の伸び率は年に1%から2%だという。

ブルーボトルやマクドナルドとの競争

 スターバックスは高級コーヒーというカテゴリーを生み出したが、ここ数年で業界は大きく変化した。スターバックスは今や、市場の中ほどに位置する。ブルーボトルコーヒーなど独立系のショップはより目が肥えた顧客にサービスを提供。一方で、マクドナルドやダンキン・ドーナツ、それにコンビニエンスストアなどはコーヒーやエスプレッソ系の飲み物を安く販売している。

 クレディ・スイスのアナリスト、ジェイソン・ウエスト氏は「コーヒー業界にいる企業は方向性を選ばなければならない」と話す。

 スターバックスの新たなコンセプトに基づく店舗は現時点で、2年前にシアトルに開業した「ロースタリー」だけだ。 売上高は前年比24%増で、顧客の平均支払額は従来のスターバックス店舗の4倍だという。

 シアトルの投資会社ゼベンバーゲン・キャピタルのマネージングディレクター兼ポートフォリオマネージャー、ブルック・ドゥ・ブトレイ氏は、スターバックスが今問われていること、つまり「ロースタリー」を横展開できるか、また消費者がコーヒーに大金を支払うかどうかは、同社が1992年に株式を公開したときと同じだと語る。「当社の年金基金の顧客は当時、『正気であれば誰がコーヒー1杯に2ドルも払うだろうか』と言っていた」という。

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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwignrjPn9_QAhVMW7wKHUVpALIQFggdMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12576561340667814139804582480091812369130&usg=AFQjCNFWKnQ2OxvR1SMy9fB7k0vvmWNX-g
http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/175.html

[経世済民116] イタリア投資に「ローマの休日」はない 決断迫られるイタリア、規則曲げるか銀行潰すか トランプ相場最大級の受益者バフェット
イタリア投資に「ローマの休日」はない
ENLARGE
イタリアの銀行最大手ウニクレディト PHOTO: MANTERO/FOTOGRAMMA/ROPI/ZUMA PRESS
By
JAMES MACKINTOSH
2016 年 12 月 6 日 13:29 JST
 イタリアのマッテオ・レンツィ首相が改革に向けた国民投票で敗北し辞意を表明。つかの間の混乱があったが、国際投資家は気にしていないようだ。
 確かにイタリア株は打撃を受け、銀行はそれ以上に苦しんだ。5日には、欧州優良株の中で値動きが最悪だった10銘柄のうち8銘柄がイタリア株だったうえ、同国国債の利回りが上昇した。だがユーロはドルに対して小幅に上昇し、資金逃避先のドイツ連邦債や金(きん)に対する需要は減退。欧州の主要株式相場はイタリアを除くと軒並み上昇した。
 市場は肩をすくめて次に移ったようだ。
 残念ながら、ころころ変わるイタリアの首相よりも大きなことが危機にひんしている。同国は銀行と経済の2つの深刻な問題に直面している。両者は互いに関連しているが、当座の問題は銀行だ。
 ここでは、投資家が影響について冷静なのも当然だ。問題は深刻だが封じ込められている。世界最古の銀行バンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)は、慢性的な不良債権問題に対処するため、年内に50億ユーロ(約6100億円)を調達しようとしている。さらに、規模のはるかに大きいウニクレディトが、来年早くに130億ユーロもの資金を調達する計画だ。
 誰であれレンツィ首相の後任者は、まずモンテ・パスキの問題を目にするだろう。銀行筋は、国民投票の結果がどうであれ同行に必要な資金の調達見通しについて盛んに話していたが、イタリア投資の魅力は明らかに低下した。
 別のシナリオはどうか。資金が調達されなかった場合、モンテ・パスキは救済を受けなければならない。でなければ、銀行破綻に関する欧州の規則を試す最初の試金石になる。欧州連合(EU)の欧州委員会は救済に反対しているため、規則を避けるのは外交的に難しいだろう。だが同委は、モンテ・パスキの株主や劣後債保有者の権利が消滅する場合、劣後債を購入させられた(多くの)一般預金者に政府補償がなされうることを明確に示してきた。政治は醜いが、システミックな危機をイタリア国外に拡散させることなく同行や規模の劣る一部のライバル行が破綻できると考えるのは理にかなっている。
 ウニクレディトは別の問題だ。同行の時価総額(5日には株価が3.4%下落した)は130億ユーロ、債券発行残高は1890億ユーロに達している。同行に対する脅威は欧州銀行システムに対する脅威になる。しかし、ウニクレディトに対する驚異は実際には存在しない。同行が来年に予定している資本調達は政治的混乱のために一段と高くつき、そのため既存株主が被る打撃も一段と大きくなるだろう。だが混乱はそこまでだ。「五つ星運動」が即座に政権を握るとみられれば話は別だが。

上:欧州銀行株指数(青)とイタリア銀行株(緑)の動き 下:1997年以降の1人当たりGDP増減
https://si.wsj.net/public/resources/images/BF-AM424_STREET_16U_20161205130309.jpg

 長期的な問題は、銀行の資本積み増しよりもはるかに根深い。イタリア経済は10年前よりも規模が小さく、国際通貨基金(IMF)によると1人当たり国内総生産(GDP)が1997年を下回っているのは先進国では同国だけだ。レンツィ氏は労働法改革でスタートを切ったが、経済成長を加速させるには、法律制度などに対して、ずっと多くのことが必要とされる。
 改革の計画は既に停滞しており、有権者が今回それをずたずたにした。2018年に予定されている総選挙前にはほとんど何も進まないとみられる。成長が加速しなければ、対GDP比133 %に上るイタリアの公的債務はさらに制御が難しくなり、銀行で再び不良債権が膨らみ始めかねない。
 しかし、ある意味ではイタリアのリスクは低下し始めたばかりだ。憲法が改定されれば政府の力は増大しただろうが、それとセットになっている選挙制度改革により、五つ星運動が政権を取る可能性が上昇していた。国民投票の結果は新たな選挙法を意味する。これにより、五つ星運動が政府で権力を握ることはより難しくなりそうだ。過去70年と同様、そうした権力を動かすことは今後も大半の国より難しいだろう。
 欧州中央銀行の債券買い入れはイタリアを守り、慢性的な問題が危機的になる瞬間を先送りしている。その日は、差し迫っているようには見えないが、イタリアが経済成長を取り戻せなければいずれ到来する。
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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwi1nP3Yn9_QAhUFTrwKHU3ZC6AQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12576561340667814139804582479520950428942&usg=AFQjCNGOyMEiWrQHCjIk8b8O7n6ELvunlA

 


トランプ相場最大級の受益者
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大統領選中、トランプ批判を強めていたバフェット氏だが、トランプ相場の最大の受益者の1人(英語音声のみ)
By
NICOLE FRIEDMAN
2016 年 12 月 6 日 16:57 JST
 著名投資家のウォーレン・バフェット氏は米大統領選挙戦の終盤、トランプ候補の最大の批判者の1人だった。そのバフェット氏は今、銀行株、鉄道株などを押し上げたトランプ相場の最大の受益者の1人となっている。
 バフェット氏が率いる投資持ち株会社バークシャー・ハザウェイは11月にこの6年間で最高の業績を上げ、同社株は過去最高値の24万ドル(2700万円)近くで取引されている。バフェット氏が1965年にその元繊維会社を買収したとき、バークシャーの時価総額は約2000万ドルだったが、今では4000億ドルをわずかに下回る水準で推移している。
 保険会社、鉄道会社、公益事業会社、製造会社といった従来型の事業会社を保有しているバークシャー。その時価総額は、ハイテク大手と肩を並べている。調査会社ファクトセットによると、時価総額ではアップル、アルファベット、マイクロソフトに次ぐ米国企業第4位だ。フォーブス誌によると、バークシャーの会長で筆頭株主であるバフェット氏は世界で第3位の大富豪だという。
 トランプ政権と共和党が支配する議会は減税や規制緩和を実現するだろうという見通しから、米国株は大統領選挙以降、上昇してきた。11月8日から12月2日までにS&P500種指数は堅調に推移。
 バークシャーのクラスA株とクラスB株は同期間中にそれぞれ7.9%、7.8%の上昇を示した。12月2日には両クラスとも少し値を下げ、A株は0.3%安の23万9070ドル、B株は0.5%安の159.39ドルとなった。
 民主党員であるバフェット氏は大統領選挙中、クリントン候補を応援し、トランプ候補を批判した。あるテレビ討論会でトランプ氏がバフェット氏も「巨額の」税控除を受けていると主張すると、バフェット氏は自分の納税記録を公表し、トランプ氏にも同じことをするように促した。
 11月11日に放送されたCNNとのインタビューでバフェット氏は「10年後、20年後、30年後の米株式場は現在よりも上昇しているだろう」と指摘。「クリントン氏が勝っていたとしても、そうなっていただろうし、トランプ氏が大統領でもそうなるだろう」
 バークシャーの株価上昇を後押ししたのは、その保険会社や銀行の保有を通じた金融業界への広範なエクスポージャーである。米金融大手JPモルガンとゴールドマン・サックスは、ダウ工業株30種平均構成銘柄の中でも特にパフォーマンスが好調だった。
 バークシャーの投資ポートフォリオには、ウェルズ・ファーゴ、アメリカン・エキスプレスなどの金融企業の株式が大量にあり、最近購入した米4大航空会社の株式もある。米銀大手ウェルズ・ファーゴの株価はこの秋、販売慣行をめぐるスキャンダルを受けて急落したが、大統領選挙以降は他の銀行株と一緒に値を上げてきた。
 アナリストたちによると、トランプ政権は金利上昇のペース加速を促し、その業界の規制緩和を推進するだろうという考え方が金融株全般に恩恵をもたらしたという。

バークシャーの時価総額は4000億ドル近くで米企業では4位
https://si.wsj.net/public/resources/images/BF-AM398_BERKSH_16U_20161204150905.jpg

 バークシャーが広範な業種に分散投資していることを踏まえると、同社株の購入は米国経済の成長を見込んでの投資でもある。バークシャーは子会社を通じて電力、家具、自動車、新聞、その他の製品を販売している。同社の傘下には米国で最大級のバーリントン・ノーザン・サンフェ鉄道もある。
 米投資銀行キーフ・ブリュイエット・アンド・ウッズのマネジング・ディレクター、メイヤー・シールズ氏は「今回の衝撃的な選挙の後、トランプ次期大統領下の成長はクリントン氏が勝っていた場合よりも急激なものになるという共通認識がある」と話す。「バークシャーは米国経済のすべての要素を代表しているのだ」
 バフェット氏は元々東部ニューイングランド地方の繊維会社だったバークシャーを50年かけて大手企業に育て上げた。長期的な株式投資や幾つもの企業買収が実を結んできたのである。同社の揺るぎない強みの1つに、数年後まで払い戻さなくてもいい保険料収入を元手に儲かる投資をするという能力がある。バークシャーは第3四半期末時点での保険料フロートを910億ドルと報告している。
 バフェット氏がバークシャーを買収した1965年から2015年までの同社株の複利での平均年率リターンは21%である。同社のクラスA株は年初来で21%の急騰を示している。
 バークシャー株を保有しているラウンツィス・アセット・マネジメントのポール・ラウンツィス社長は、大統領選挙後にディフェンシブ銘柄としてバークシャー株を購入している投資家もいるかもしれないと述べた。バフェット氏のバリュー志向の投資戦略は株価暴落時にアウトパフォームし得るからだ。
「バークシャーには多種多様な収入源があるので、資金の逃避先としても安全だ」とウランツィス社長は言う。「株式にとって非常に厳しい局面に向かうとしても、バークシャーなら極めて安全だということが何度も証明されている」
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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjEqpLSn9_QAhUKXbwKHcAgAUYQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12576561340667814139804582480070703008682&usg=AFQjCNG89vVADQ4bnF8ep6pVWTIHq9KGiQ


 

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/446.html

[政治・選挙・NHK217] 基準改定でGDP約20兆円かさ上げ、7−9月期2次速報あす発表  ソフバンク、米国に5.7兆円投資 −トランプ明らかに 

基準改定でGDP約20兆円かさ上げ、7−9月期2次速報あす発表
日高正裕
2016年12月7日 06:00 JST

研究・開発費などを新たに加算−11年推計値は新基準で約490兆円に
名目GDP600兆円目標の安倍晋三政権に追い風


内閣府が8日発表する7−9月期の国内総生産(GDP)2次速報は、推計方法が新基準に改定されることに伴い、名目GDPの規模が約20兆円押し上げられる。これまで含まれなかった研究・開発(R&D)費が加算されるためで、名目GDP600兆円を目標に掲げる安倍晋三政権にとって追い風となる。
  今回の2次速報値から基準年をこれまでの2005年から11年に変更するとともに、国連で採択された国民経済計算の最新の国際基準に対応し、1994年にさかのぼって再推計する。既に米国、英国、カナダなど各国が先行して実施している。
  内閣府が9月15日に公表したリポートによると、新基準で試算した11年のGDP推計値は、旧基準の476.1兆円から491.4兆円と19.8兆円上方修正される。このうちR&D費が設備投資や公的固定資本形成として新たに加算される影響が16.6兆円と大部分を占めている。
  JPモルガン証券の鵜飼博史シニアエコノミストは5日付のリポートで、今回のGDP改定は成長率をかさ上げする方向に働くものの、同時に潜在成長率も上方修正される計算となるため、「マクロの需給ギャップには基本的に影響を及ぼさない」と指摘。「マクロ経済政策運営にはほとんど影響がない」という。
 
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ir74sXuuT7Gk/v2/-1x-1.png

  安倍政権が目指している名目GDP600 兆円については、7−9月期時点で「目標に95兆円足りないが、今回のGDP改定だけで名目GDPの水準が20兆円程度切り上がる」ことから、その実現に対しては「プラスの影響が及ぶ」としている。
統計の見直しが本格化
  ブルームバーグの事前予想によると、7−9月期のGDP2次速報値は前期比0.5%増、同年率2.3%と、1次速報(それぞれ0.5%増、2.2%増)から小幅上昇修正される見込み。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは2日付のリポートで、過去データが修正されることや推計方法が変更されることから、「例年の7−9月期2次速報の事前予測以上に不確実性が高い」としている。
  一方、安倍首相が10月21日の経済財政諮問会議で、GDPをはじめとする経済統計の見直しに向けて、日銀とも連携し年内をめどに基本方針を取りまとめるよう関係閣僚に指示するなど、議論が本格化している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHQPIW6K50XS01


 


 
ソフバンク、米国に5.7兆円投資へ−トランプ次期米大統領が明らかに
Paul Barbagallo、Jennifer Jacobs
2016年12月7日 06:41 JST
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トランプ氏:ソフトバンクの投資が5万人の雇用を創出へ
トランプ氏は孫氏と6日にニューヨークで面会後にツイートを投稿

トランプ次期米大統領はツイッターで、ソフトバンク創業者の孫正義社長が米国に500億ドル(約5兆7000億円)投資し、5万人の雇用を創出する見通しを明らかにした。
  孫氏は記者団に資金が「米国の新しい企業や新興企業に」向かうと述べた。同氏はサウジアラビア政府と共に1000億ドル規模のテクノロジーファンドを立ち上げているが、それが米国投資の一翼を担うかどうかは不明。
  トランプ氏のツイートは、孫氏と6日にニューヨークで面会した後に投稿された。ソフトバンクは米携帯電話事業者4位スプリントの親会社。スプリントの株価はニューヨーク時間午後2時50分(日本時間7日午前4時50分)現在、4%高の8.37ドル。スプリントとの合併の可能性が以前浮上していた業界3位のTモバイルUSの株価は一時3%高の56.66ドルを付けた。
  孫社長は面会後、記者団に対し、規制緩和を支持するトランプ氏の大統領就任を祝いたいと同氏に伝えたことを明らかにした。
原題: Japan’s SoftBank to Invest $50 Billion in U.S., Trump Says (2)(抜粋)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHS6N16S972L01


http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/196.html

[経世済民116] 「日本の総務部は30〜40年遅れている」 間接部門が仕事を“邪魔”する理由 トランプ旋風に隠れた日本の根深い炭素リスク
「日本の総務部は30〜40年遅れている」

おのれ! 間接部門 彼らが仕事を“邪魔”する理由

プロが説く「戦略的総務」の重要性
2016年12月7日(水)
間接部門問題取材班
 日経ビジネス12月5日号では、特集「おのれ!間接部門」を掲載した。「間接部門が仕事の“邪魔”をする」。そんな不満を持つ直接部門の社員が増えているからだ。実情に合わないルールを導入する一方で、形骸化した古い仕組みは固守しようとする。特集内では間接部門と直接部門の対立を取り上げ、解決策を模索した。間接部門の中でも、特に業務の内容が“見えづらい”のが総務部だ。あるプロは、「日本の総務部は欧米企業と比べて40年遅れている」と指摘する。だが同時に「総務が生まれ変われば、日本の企業は蘇る」とも語った。日本国内でプロの総務を育成しようとしている、一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムのクレイグ・カックス副代表理事に話を聞いた。

世界の総務部のあり方に詳しい一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムのクレイグ・カックス副代表理事
世界の総務部を見て、日本の総務部や間接部門全体をどのように評価していますか。

カックス氏(以下、カックス):今の日本のような総務部は、決して珍しいものではありません。というのも、30〜40年前は世界中の総務部が同じような存在だったからです。

 私が富士通の米国支社で働き始めた1980年代、自分から望んで総務部に配属される社員はほとんどいませんでした。当時の総務は、「会社から期待されていない裏方部門」だったんです。私自身、たまたま英語と日本語が話せたので総務部に配属されました。

 ただ、私が総務に配属された頃から、アメリカではプロの総務を育てようとする動きが出てきました。総務部門の業界団体なども登場し始めた。

 世界の総務と日本の総務で何が違うか。最も大きい点は、欧米企業では総務部というのは、バックオフィスの専門職であるということです。間接部門とひと括りにするけれど、その中には経理や人事、システム、法務など多様な仕事があります。そして、その多くが特殊な知識が必要になる専門職です。一方で、こうした専門職の定義に収まりきらない仕事をすべて引き受けるのが総務の仕事です。言い換えれば、私たち総務のプロというのは、会社の業務の中でも「残りものの仕事のプロ」と表現できるでしょう。

 社員食堂から造園、社有車、清掃、受付…、ありとあらゆる雑多な仕事を引き受けて成果を出すのが「総務のプロ」です。

つまり総務にも専門的な知識が必要である、と。

カックス:もちろんアメリカでも30〜40年前はそんな意識はありませんでした。しかし、現代は全く異なります。

 実際、総務部門が1年の間に使うコストは、人件費を扱う人事部に続いて、2番目に多い。日本企業で気づいている人はあまりいませんが、普通の企業でも、総務部は年間、何億円というコストを使っています。オフィス賃料や固定資産税、保全費やメンテナンスコスト、光熱費といったハード面に関する費用の管理。ソフト面でも、社内の職場環境や清掃、受付、警備、休憩室の維持費など、実はすごくお金を使っている部門なのです。

 それにも関わらず、日本の総務担当者に、「あなたの部門は年間、どれだけのお金を使っていますか」と聞いても、答えられないケースが多い。社有車など実際のコストは事業部が負担するケースもある。けれど社用車の手配などをするのは総務部でしょう。それなのに、ほとんどの会社が数字さえ管理できていない状況です。私は、総務が扱うお金を「総務財布」と呼んでいますが、「おたくの総務財布はいくらですか」と聞いても、皆さん「知らない」と言います。

 ポイントは、社有車1つとっても、それを管理するには実はノウハウが求められるということです。アメリカでは、社有車を効率的に管理するプロがいるくらいですから。社有車全体にかかるコストをどのようにマネジメントするのか。日本企業にはプロがいませんから、ほとんどのケースでは、総務部や担当する事業部などが、外部に丸投げしているだけです。だから社有車だけを見ても、会社全体で年間にいくらのコストが発生しているのか分からない。ムダ遣いをしているのかどうかさえ把握できない。

バブル崩壊前には、たくさんいた総務のプロ

なぜ日本の企業に総務のプロがいないのでしょう。

カックス:かつて総務部は、経験を重ねて人材を育てていくしかありませんでした。そして実は、かつての日本企業には経験を積んだ総務のプロが存在していたんです。

 というのも、日本企業はバブル経済が崩壊する1990年代半ばまで、高度経済成長の波に乗っていろいろな設備投資をしたり、不動産を取得したりしていました。当然、こうした仕事は総務部が担いますから、1980年代や1990年代半ばまで、総務部は本当に忙しくしていた。そして忙しい中でもこうした経験が、総務のプロを育てていたのです。実際、その頃の総務部門の方々とお話をすると、本当によく分かっている。日本にもプロがいたのだと実感できます。

 けれどバブル経済が崩壊してから、多くの企業が守りに転じて、そんな状況が20年も続きました。そして、その間に経験を積んだ総務のプロは次々と定年退職を迎えてしまった。半面、バブル崩壊以降の総務部は、それ以前と比べると経験が乏しい。こうして、総務のプロがいなくなってしまったのです。

総務のプロなら経費は2割削れる

総務部門が「プロ」になると、会社はどのように変わるのでしょうか。

カックス:私は現在、多様な企業の総務部社員を育てようと、一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムを展開していますが、参加する人には「あなたたちはとても恵まれている」と伝えています。

 多くの企業において、総務以外の部門では、長年先輩が経験を積んで、仕事の進め方やアプローチなどもおよそ決まっています。けれども総務に関して言えば、日本企業はほとんど何もしてこなかった。見方を変えれば、企業の中で総務部は、未開拓のフロンティア部門なのです。自分たちが経験を積んだり、学んだりして、プロの仕事をすれば、会社から信頼を得て、より多様な仕事を任せてもらえるようになる。「戦略的総務」という存在に生まれ変われば、成果を出して、経営に大きく貢献することも可能です。

「総務のプロ」ならどんな成果が期待できるのでしょう。

カックス:およそ私の経験では、例えば毎年10億円の「総務財布」を使っていた企業の場合、2割はコストを下げられます。通常ならば支払わなくてはならないコストが2割削減できるのですから、これは純然たる利益になる。ノウハウが必要ですし、会社の構造も変えなくてはなりませんが、確実に結果を出すことができます。

ただ日本では現在、コスト削減の名の下で総務部から時に「労働生産性を悪くするのでは」と思えるような通達が下ります。例えば清掃費を抑えるためにデスク周りのゴミ箱がある日突然、消えてしまったり……。確かにコスト削減効果はあるのだと思いますが、それを追求しすぎた結果、直接部門の労働生産性が低下すれば元も子もないのではとも感じます。

カックス:それは総務の担当者がプロではなくて素人だからではないでしょうか。直接部門の労働生産性向上という発想を持たない総務は単に目の前のコストを削減しようとしますから。

 けれども、プロは全く異なる次元で物を考えます。プロにとって重要なのは職場全体の生産性を高めることです。それはデスクの置き方や会議室の運用方法など、あらゆる要素を勘案して、直接部門の生産性を高めなくてはならない。それこそが、まさに総務の仕事であり、私自身は、総務の仕事こそ会社文化の担い手であるべきだと、信じています。

2025年、会議室は消える?

具体的に、総務のプロがいれば職場はどのように変わるのでしょう。

カックス:例えば、2025年や2030年になると、「(1980年代から1990年代に生まれた)Yジェネレーション」以下の人たちが社員の半分を占めるようになります。彼らは現代のIT技術などに子供の頃から親しんだ世代で、きっと今の職場環境に溶け込むことはできないでしょう。

 現在ではどの企業でも、会議室は予約が取れないくらい一杯です。けれどYジェネレーション以下の世代が増えると、きっと会議室は不要になるはずです。というのも、彼らは常に「コネクト」している世代です。腕時計にまでスマホ機能が備わるようになって、彼らは常にSNSなどでコミュニケーションを重ねている。業務中でも色々な人と繋がっている。

 こうした世代は、仕事でも同じ部屋に集まって話す必要などありません。3日後に予定されている会議を待つよりも前に、SNSやLINEなどでコミュニケーションして、議論を重ねる。会議室など必要ないんです。

 私の子供世代ですら電話の文化はほとんどありません。けれど、だからといってコミュニケーションが希薄かというと逆で、常に誰かと繋がっている。私の世代には理解できませんけれど、それでもプロの総務は、こうした世代の到来を前提にこの先の職場環境を考える必要がある。経営層も若い世代を理解できないでしょうから、彼らに変わって総務のプロが、「会議室を増やすよりもiPhoneを全員に支給すべきではないか」などと経営層に交渉する必要がある。総務のプロとは、そこまで考えるものなのです。

コストを削減することばかりが「プロ」ではない。

カックス:先ほど、総務財布の2割は削減できると言いましたが、コストカットよりも重要なのは、使わなければならない8割の費用をどのように活用するかということです。会社にとってどうしても必要な費用を、会社の成功や成長のためにどのように使っていくのか。

 言い替えれば、プロの総務は、会社のためにお金を使うプロなんです。それにも関わらず、日本の総務部は、「今までずっとこうだったから」とか「長い付き合いがあるから」と、請求書が届くと惰性でお金を支払っている。あまりもお金の使い方に無頓着ではありませんか。これでは企業の成長に貢献しません。

 繰り返しますが、総務部は会社の文化の担い手です。郵便物の配り方からゴミ箱の置き方、受付にはきれいな女性が必要なのか、それとも電話が1台あればいいのか。細かい要素ですが、総務部は最も会社に精通し、文化を理解し、何を守って何を捨てるべきなのかを考えなくてはなりません。

 総務部は本来ならば、直接部門の職場を最も知っている人材でもあるわけです。電球が切れたり、何かが故障したりすれば、呼ばれるのは総務部です。開発や製造、マーケティングといった直接部門の現場から、役員室や社長室まで、会社のあらゆる場所を歩き回って隅々まで把握している。現場を歩いていれば、それぞれの職場でどんな労働環境が理想的なのかも分かるようになるはずです。

「便所から役員室まで」

つまり総務部門の社員には、経営層に近い意識も必要になる。

カックス:私が提唱する「戦略総務」とは、会社の経営方針に沿った戦略を実践する部門です。そういう意味では経営層の一端を担っているとも言えるでしょう。

 総務の仕事について、私はよく「便所から役員室まで」と言っています。トイレの掃除や管理も総務の仕事で、便器が詰まれば総務が呼ばれる。詰まりを解消するのも私たちの仕事ですから、当然のことでしょう。けれど同時に役員会議で、ある工場を売却するか移転するかといった経営戦略を、経営陣と一緒に考えるのもプロの総務の仕事です。「便所から役員室まで」と私は若い頃に学びましたし、それこそがプロの総務のあるべき姿だと思っています。

ただ実際には、総務部が下した決断に直接部門が反発するケースも多々見られます。たとえ総務側は経営判断としてある決断を下したのに、「また総務が勝手にこんなルールを作った」などと言われたりする。

カックス:ルールの変化についても、プロの総務はマネジメントできるんです。例えば何かのルールを変える時、どんな反応が起こるのかということにはおよそ一定のメカニズムがあります。それを理解して実践することです。

 会社のルールを大きく変える時、その変化を社員らにどう受け止めてもらい、協力してもらうのか。変化の過程で、プロの総務にはコミュニケーション能力や(直接部門に対する)社内営業能力、分析能力などが求められます。これらの能力を駆使した上で、直接部門などの社員に「ルール変更がいかに合理的な決断か」「ルール変更によってどんなメリットが享受できるのか」を理解し、実践してもらう。変化について社員にうまく適応してもらえるかどうかも、プロ総務の手腕が試されます。

 単なる総務からいかにプロの総務に生まれ変わるか。総務部が戦略的な考え方を実践できるようになれば、日本企業は再び成長するはずです。


このコラムについて

おのれ! 間接部門 彼らが仕事を“邪魔”する理由
市場成熟が進む中、どんな企業も必死で仕事に向き合わねば生き残れない時代。
新規顧客の開拓から既存事業の見直し、新分野への進出まで、やるべきことは山ほどある。
なのに、間接部門があの手この手で仕事の邪魔をする──。
営業や開発などの直接部門で、そんな不満を訴える社員が増えている。
実情に合わないルールの導入、仕事に無関係な業務の強制、経営速度を下げる形式主義…。
直接部門からは「存在意義を示すため、無理に仕事を作っている」との声も出始めた。
古くて新しい課題、直接部門と間接部門の不協和音。その真の原因と解決策を取材した。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/120100088/120600005/

 

トランプ旋風に隠れた日本の根深い炭素リスク

記者の眼

見えぬ発電部門の脱炭素化
2016年12月7日(水)
飯山 辰之介
 11月8日、国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)がモロッコで開かれているさなかに、米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利が決まった。会議の参加者によれば、表だってトランプ氏当選について話す参加者は少なかったものの、会場の隅では「米国の環境対策が後退するのではないか」との不安が飛び交っていたという。トランプ氏は温暖化対策に否定的で、パリ協定からの脱退も示唆してきたからだ。


COP22のさなかに米大統領選が実施されトランプ氏の当選が決まった。
(写真:Abaca/アフロ)
 トランプ氏は実際にパリ協定からの脱退に動くのか、オバマ政権が発表したクリーン・パワー・プラン(既存の火力発電所からのCO2排出を規制する計画)を破棄するのか。エネルギー政策の全体像はまだ見通せず、パリ協定の批准各国がやきもきしながらその動向を見守る。 

 だが、多国間で協調して進む環境対応で課題を抱えているのは米国だけではない。「トランプ氏の動向に耳目が集まるが、むしろ本質的なリスクを抱えているのは日本だ」とブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンスのアリ・イザディ駐日代表は指摘する。「2030年度までに、2013年度比で温室効果ガスの排出を26%削減する」という目標が、現状では絵に描いた餅に過ぎず、現状ではCO2の排出量が多い石炭への依存を深めているからだ。「この状況が改善しなければ、各国からの削減圧力が急速に強まる恐れがある」とイザディ氏は見る。

どうする発電部門のCO2排出

 最大の課題は、日本の発電部門におけるCO2の削減だ。

 国際エネルギー機関(IEA)の資料によれば、日本のCO2排出で発電部門の占める割合は49%と全体の約半分を占め、その量は1990年から2014年にかけて4割以上も増加したという。


http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/120600368/p2.png

CO2排出量の部門別推移。黄色が発電部門。
出所:国際エネルギー機関(IEA)

 2011年の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故をきっかっけに、各地の原発が稼働を停止し、石炭火力発電で電力需要を賄う事態が生じた。石炭は資源価格が比較的安定しているため、安価かつ安定的に大量の電力を供給できるからだ。ただCO2の排出量が天然ガスなどに比べ相対的に多いというデメリットも抱える。この影響で、2014年のCO2排出量は2010年に比べ1割ほど増えた。それでも安定した電源という位置づけは変わらず、100万キロワット級の石炭火力発電所の新増設計画も相次ぐ見通しだ。

 経済産業省は2030年の電源構成について、石炭火力発電が全体の26%程度、原子力発電が20〜22%になるという見通しを示しているが、この展望は現実的とはいえない。地球環境戦略研究所(IGES)の栗山昭久研究員は「既設と新増設の石炭火力発電所の容量を足すと(経産省の)見通しを超過してしまう」と指摘する。

 この課題をどう乗り越えればいいのか。事故のリスクを承知した上で、CO2を排出しない原発の稼動を進めるのか、太陽光や風力など再生可能エネルギーに一層の投資をするのか、今後も石炭火力を使っていくために二酸化炭素を分離して地中に埋める技術(CCS)の実用化時期を早めるのか。いずれの選択肢を選んでも相応のコストは発生する。難しい課題ではあるが政治と事業者、消費者とがなるべく早く議論し、方針を決める必要があるだろう。

石炭を強みに変えられるか

 「トランプ氏の登場で、一時的に日本は(石炭の利用に)余裕が出るかもしれない」とブルームバーグのイザディ氏は指摘する。これまで日本は米国と欧州の双方から石炭の増加を抑えるようプレッシャーをかけられてきた。環境規制に懐疑的なトランプ氏の米大統領就任により、少なくとも一時期は米国の圧力はが減る可能性はある。だが、これに安穏としていては将来的なリスクは拡大するばかりだ。

 エネルギーの専門家の多くは「一時的に環境枠組みが後退したとしても、温暖化ガスの増加を抑えていくという世界的な流れは、長期的に見れば変わらない」と分析している。日本の石炭依存が続けば、「トランプ後」に一気にその削減を求められる恐れがある。実利を重んじるというトランプ氏が、再生エネルギー市場の拡大を見込んで突然、環境規制派に回らないとも限らない。さらに欧州や米国の大手年金基金や投資運用会社は、石炭に依存する企業への投資から手を引き始めている。これに対応するためにも発電部門での脱炭素化は急務だ。

 日本はパリ協定批准に出遅れ、約定国会議でも存在感を示せなかったという。石炭を使った発電の増加は課題であるが、同時に日本にとって切り札にもなり得る。石炭火力発電の効率を高める技術で日本は世界トップクラスを誇り、硫黄酸化物や窒素酸化物といった大気汚染物質の抑制技術でも群を抜いているからだ。

 今も、そしてこれからも石炭火力に依存せざるを得ない国は途上国を中心に多い。こうした国々に日本の石炭技術を普及させることが出来れば、温暖化ガスの抑制は大きく前進するはず。国内外でもう一歩踏み込んだ対策を講じ、トランプ氏の登場で揺れる枠組みの中で存在感を強めることはできないだろうか。


このコラムについて

記者の眼
日経ビジネスに在籍する30人以上の記者が、日々の取材で得た情報を基に、独自の視点で執筆するコラムです。原則平日毎日の公開になります。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/120600368/?
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/458.html

[政治・選挙・NHK217] 新聞社は今後も残っていくべきなのか?  著者に聞く  作家、本城雅人氏が最新作『紙の城』で描いた新聞社のリアル     
新聞社は今後も残っていくべきなのか?

著者に聞く

作家、本城雅人氏が最新作『紙の城』で描いた新聞社のリアル
2016年12月7日(水)
上木 貴博
 2005年に起きたライブドアによるニッポン放送買収騒動。作家、本城雅人氏は当時、渦中のフジサンケイグループで「サンケイスポーツ」の記者だった。その体験を生かし、最新作『紙の城』(講談社)を書き上げた。舞台はまさにIT企業に買収宣告を受ける新聞社だ。紙の新聞とウェブサイトはいかに共存していくのか。ワークライフバランスが叫ばれる時代において、新聞記者という仕事はどうなっていくのか。元記者として、新聞業界のタブーにまで切り込んだ真意を尋ねた。

聞き手は上木 貴博
最新作『紙の城』では新聞社の買収攻防戦を現場記者の視線で描いています。執筆の動機は。

本城:本作で書きたかったのは、会社組織としての新聞社です。前作『ミッドナイト・ジャーナル』(講談社)では記者一人ひとりにフォーカスしましたが、今回は新聞社という会社の独特の雰囲気や一体感を取り上げたかった。新興のIT企業に買収されそうになるという設定は、反目し合っている部署や記者たちが共通の目的の下に、一丸となっていく瞬間を書くためのものです。


本城雅人(ほんじょう・まさと)氏
1965年神奈川県生まれ。明治学院大学卒業後、産業経済新聞社に入社。産経新聞浦和総局を経て、サンケイスポーツ記者。退職後の2009年に『ノーバディノウズ』が松本清張賞候補となる。代表作に『球界消滅』『サイレントステップ』『誉れ高き勇敢なブルーよ』などがある(写真:稲垣 純也)
本城:考えてみれば、新聞記者は変わった仕事です。事件現場や記者クラブでは、毎日のように競合他紙の同業者と顔を合わせます。商店街の店主同士ならともかく、金融業や製造業ではライバル社員の顔なんて普通は知りません。顔見知りのライバルを相手にスクープを抜いたり、抜かれたりする部分はスポーツに似ているなと思います。

 新聞記者は会社に対する帰属意識が高いわけでもないのに、辛い仕事をついつい頑張ってしまう人たちです。それはジャーナリズムという使命感もあるのでしょうが、仕事に酔ってしまう瞬間が理由だと思います。

 執筆にあたり、新聞社の取り上げ方には注意しました。私自身、記者に憧れて新聞社に入って20年間も働きました。今も毎日、紙の新聞を読んでいます。とは言え、近年では新聞というメディアのあり方に世間は批判的です。だから、新聞社の社会的な役割や重要性を持ち上げ過ぎないようにしました。そこを前面に出すと、世の中全体の感覚から外れてしまうだろうなと感じたからです。

 作中に「押し紙(一部の新聞社による販売店に実際の販売部数を上回る予備紙を買い取らせる商習慣)」や「降版協定(過度なスクープ競争を避けるため、一定の時間が過ぎたら新しいニュースを記事にしない協定)」「新聞の軽減税率適用」など新聞業界の人が眉をひそめるような話も盛り込み、(新聞社の株式買収を制限する)「日刊新聞法」にある程度守られてきたという側面も書きました。その上で、新聞社は今後も残っていくべきなのかどうかを問いかけたかったんです。

新聞社は負けていないが、勝てるチャンスは逃した

本作は2005年のライブドアによるニッポン放送買収騒動を下敷きにしています。本城さんは当時舞台となったフジサンケイグループで「サンケイスポーツ」の記者をしていました。まさに自分たちの会社にITベンチャーの手が迫ってくるという経験をお持ちです。どのような心境でしたか?

本城:もう会社がなくなるんじゃないかと焦りました。当時は堀江貴文さんのイメージがずいぶん悪かったんです。ライブドアはポータルサイトを運営していたから、産経新聞やサンケイスポーツをグループから切り捨てるのじゃないか。そうなったら我々はどうなるのだろうとか、いろいろ考えましたね。

 その頃はプロ野球担当でしたから、ライブドアが新球団「ライブドアフェニックス」で球界に入ろうとした際には取材もしました。よく言われますが、プロ野球の球団経営はそれぞれの時代を象徴する企業による「たすきリレー」です。業種で言うと、新聞社、映画会社、鉄道会社などに小売業であるダイエーが登場する流れです。

 楽天やライブドアが参入を表明した時点では、収益性を重視するIT企業はそれほど球団運営にお金を出さないと見ていました。同じ理由で堀江さん率いるライブドアが新聞社を傘下に収めても、紙媒体を守らないのではないかと思っていました。実際には三木谷さん(浩史・楽天会長兼社長)も孫さん(正義・ソフトバンク会長)もチームを強化して優勝させているのですが…。

作中では「記者の顔が見える主観重視の記事」「横書きの誌面」など誌面改革案が登場しています。これは本城さんが考える新聞の生き残り策なのでしょうか。


講談社から今年10月26日に発行された本城雅人氏の最新刊「紙の城」
本城:これらは実際に私がいた職場でも議論になりました。かつて団塊世代が大量に退職する2007年に備えていた2002〜2003年頃です。実際には定年を迎えても再雇用などで働き続ける人が多く、団塊世代が急に新聞を読まなくなるという事態は起きませんでした。ただ、社内の危機感は強かった。「うちの新聞は変わりました」と表明するために横書きに変更するぐらいの覚悟を見せても良いのではと私は思っていましたが…。

 そんな中で(紙媒体より先にウェブで記事を発表する)「ウェブファースト」という考え方はよく話題になりました。私は2001年の米同時多発テロ事件の際に米国にいましたが、現地の新聞は特ダネをどんどんウェブに載せていました。もしその段階で日本の大手新聞社がウェブファーストに舵を切っていたらどうなっていたか。新聞社が敗北したとは思いませんが、あの頃に勝てるチャンスを取りこぼしたのは確かでしょう。

 先月の米大統領選でもたくさんの人がインターネットにアクセスしていました。様々な人が情報を発信していても、一次情報までたどると新聞社の記者による記事ということが多かった。今は新聞社が「Yahoo!」などに転載されることを期待して、記事を出しています。でもまだ挽回のチャンスはあると思います。オリジナルの記事を出しているのは新聞記者なんですから。

新聞社はブラック職場?

本作に登場する新聞記者は毎日のように深夜まで働き、休日も取材に飛び回っています。主人公も働き方が原因で離婚しています。ワークライフバランスが重視されたり、電通社員の過労自殺が世間の批判を浴びたりという時代において新聞記者はどうあるべきなのでしょうか。

本城:これは「永遠の矛盾」だと思います。新聞社は長時間のサービス残業を社会問題として紙面で追及する立場にあります。でも現実的には記者自身も、過酷な立場で働いている。例えば、かつて読売巨人軍にいた松井秀喜氏は朝10時から練習します。松井番の記者が試合後に原稿を書き上げるのが夜中の1時ぐらい。つまり1日15時間働くことになります。取材相手に「私は8時間働いたからこれで失礼します」と試合前に帰る記者がいたら、信用してもらえませんよね。

 ただし、15時間ずっと緊張を強いられるわけではないから、工場の生産ラインで働く人と同じように論じることはできない。重要になるのは上司の存在でしょう。各記者の適性を踏まえつつ、業務負荷が大きい部署では頻繁に異動を行うとか、上司の配慮が一般の職場より求められます。それがないと簡単にブラック職場になります。

 僕自身は記者という仕事が好きで、退職した今でも記者たちが登場する小説を書き続けています。記者には現場で最初に真実を知るチャンスを与えられています。小説で新聞記者を描くときには、若い読者に「この仕事は面白そうだな」と感じてもらえるように意識しています。

ネット時代に紙の新聞はどう生き残っていくのかを問いかける作品になっています。本城さん自身は、情報収集において紙とウェブをどのように使い分けていますか。

本城:読む時間だけならウェブの方が多くなりつつあります。ただ、ウェブは自分の関心に沿って読むので、それ以外は目に入りにくい。一方で、新聞には自分の関心事もそうでないこともまとめて並んでいます。だから広告も含めて様々な情報が頭に飛び込んできます。そこが紙の新聞の良さだと思っています。

 紙の媒体はこれからも残るし、残すべきです。かつてある球団オーナーが球団数削減を求めた時、当時の古田敦也選手会長が「プロ野球の人気が落ちたと言っても、年間70試合近くの主催試合に最低でも1万人を集めるような娯楽はない」といった趣旨の発言をしました。武豊騎手も「有馬記念だけで10万人が集まるのですよ」と話していました。

 新聞の発行部数は落ちてきたものの、まだ4000万部以上あります。そこは各社が誇りに思っていい。誇りに思いつつも、今が最後の改革のチャンスと捉えなければなりません。新聞社は金儲けが下手でしたが、動画配信などこれまでにない挑戦も増えています。ここで踏み止まって変わらないと今まで読んでくれた人たちへの裏切りになります。

 私自身、これからも新聞記者が活躍する小説を書き続けますよ。


このコラムについて

著者に聞く
「著者に聞く」の全記事
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/book/15/101989/120600016/?
http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/197.html

[経世済民116] 下村自民幹事長代行「これ以上は円安にならないこと願う」 トランプ長期マイナス反グローバル 世界を変えた2人 南ア格下確実

下村自民幹事長代行「これ以上は円安にならないこと願う」

高橋舞子、Connor Cislo
2016年12月7日 06:00 JST 
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あまり円安が進むと輸入価格も高くなる−下村氏
トランプ次期米大統領就任後も「市場の期待通り」の経済運営を期待
 
自民党の下村博文幹事長代行は、米大統領選でのトランプ氏勝利を受けた為替相場の動向について「これ以上は円安にならないことを願っている」と懸念を示した。5日、ブルームバーグのインタビューで話した。
  米大統領選前日の11月7日に1ドル=104円台をつけていたドル・円相場はトランプ氏が勝利した後、急速に円安が進行。インタビューを行った12月5日午後は113円台後半、同6日午後4時現在は114円台前半で推移している。
  下村氏は、日本が原子力発電所の運転停止に伴い大量のエネルギーを石炭、石油などの化石燃料の輸入に頼っている現状を指摘。「あまり円安が進むと輸入価格も高くなる」と述べ、海外から資材を調達している中小企業に影響が出るとの認識も示した。
  トランプ氏勝利後に株価が急伸したことについては「誰も予想していなかった」と発言。トランプ氏はビジネスにおいて成功を収めてきたと述べた上で、1月20日の大統領就任後も「市場の期待通りに経済を運営してくれることを願っている」と話した。TOPIXは11月9日の終値で1301.16まで下落したものの、その後は上昇に転じ、12月6日の終値は1477.20。
トランプ大統領
  下村氏は第1次安倍晋三政権で官房副長官、第2次安倍政権以降も文部科学相、自民党総裁特別補佐などを歴任した安倍首相側近の1人。
  11月の大統領選でトランプ氏が勝利した背景には、移民に仕事を奪われたという意識を持つ白人貧困層の既存政治への反発があったと下村氏は分析する。「日本も学ぶべきことがある。日本国内で進行する格差を何とかしないと、自民党もうかうかしていられない」と述べた。厚生労働省によると、1989年時点で19.1%だった非正規雇用者は、15年には37.5%まで増加した。
  トランプ氏は2日、自身のツイッターで、台湾の蔡英文総統から大統領選勝利の祝意を電話で受けたことを明らかにし、中国側から抗議を受けた。下村氏はこれについて、「驚いている。中国側からするとけんかを売られたようなものだ」と発言し、トランプ氏を「一筋縄ではいかない戦略性を持った人だ」と論評。ただ、米国が台湾を国と認める段階までいくと台中間の緊張を高め、「台湾にもプラスにはならない」と話した。
  下村氏は、トランプ氏が環太平洋連携協定(TPP)の代わりに求めている2国間の貿易協定に関して、「それはTPPが発効してからの話だ」と消極的な姿勢を示した。TPPは共通の価値観を持つ国同士で新たな枠組みを作るための協定だとして、「決して米国にとってもマイナスにはならない」と述べた。
  アベノミクスについては、金融、財政政策はこれまで一定の効果を上げてきたが、地方にまで景気回復の実感が及んでいないとの見方を示した。「金融政策も財政政策も限界がある」として、これからは科学技術分野の強化を中心とした成長戦略の推進が必要だと訴えた。


 
ドラギECB総裁、12月会合の「歴史は繰り返す」避けたいが−8日決定
Carolynn Look、Jana Randow
2016年12月7日 07:03 JST 
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、昨年12月の政策決定後の記者会見が引き起こした市場の波乱の再現を避けたい。そのためには微妙なかじ取りが必要になりそうだ。
  ブルームバーグの調査に答えたエコノミストのほぼ全員が、ECBが債券購入プログラムを来年3月より先まで延長すると予想している。大半は月額800億ユーロ(約9兆8000億円)の現行ペースのままでの約6カ月延長を見込んでいる。
  ECBが8日発表する決定がこの期待を少しでも下回れば、現実が高まり過ぎた市場の期待に追いつかずにユーロと債券利回りが急上昇した昨年12月3日の二の舞になる。
  インフレ回復見通しは金融緩和措置の継続に大きく依存している一方、購入対象になる債券の不足という問題がある。妥協策として、量的緩和(QE)の期間は延長するが月購入額は減らすという選択肢を、ドラギ総裁がスペイン紙パイスとのインタビューで示唆した。しかし期待の高さを考えると、総裁のこのメッセージが市場に届いたかどうかは怪しい。
  「ECBが言おうとしたことと違うことを市場が受け取るというリスクは常にある」と、ブルーベイ・アセット・マネジメントのパートナーで運用者のマーク・ダウディング氏は指摘する。
  コメルツ銀行のチーフエコノミスト、イエルク・クレーマー氏は「購入額を減らすことは終わりの始まりという印象を与える。市場の不安定やイタリア国民投票の後遺症の中でそういうシグナルをECBが送りたがるとは考えにくい」と話した。
原題:ECB Haunted by Ghost of Christmas Past as Stimulus Choice Nears(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHRKZB6TTDSA01


 

グロース氏:トランプ政権、長期経済にはマイナス−反グローバル化で
John Gittelsohn
2016年12月6日 23:48 JST 
トランプ次期米大統領の政策は短期的に株式相場を押し上げるかもしれないが、貿易と企業利益を抑えることで長期的な経済成長を制限することになるだろうと、債券運用者のビル・グロース氏が指摘した。
  通商協定の再交渉や法人税などの引き下げ、インフラ支出拡大などトランプ氏が約束した政策はインフレをあおり、財政赤字を膨らませる一方、持続的な生産性の伸びにはつながらない可能性があるとグロース氏はみている。
  17億ドル(1940億円)のジャナス・グローバル・アンコンストレインド・ボンド・ファンドを運用するグロース氏は、12月の投資見通しで「トランプ氏が打ち出す政策の多くの側面が、短期的に株式相場にプラスで債券にマイナスであることは間違いない」とし、減税や規制緩和、財政投入による景気刺激を挙げた。その上で、「しかし長期的には、トランプ氏の反グローバル化の姿勢が貿易を抑制し企業利益に悪影響を与えるというマイナスの側面を、投資家は考慮しなければならない」と記述した。
原題:Gross Sees Trump’s Anti-Globalization Agenda Hurting Profits(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHRM2Z6TTDS101

 


オーストラリア:7−9月GDPは前期比0.5%減−豪ドル下落
Michael Heath
2016年12月7日 10:02 JST 
政府支出の減少と輸入の増加が影響
前年同期比では1.8%の増加−市場予想下回る

オーストラリア経済は7−9月(第3四半期)に市場予想より大きいマイナス成長となった。政府支出の減少と輸入増加が影響した。発表を受け、豪ドルは下落。
  第3四半期の国内総生産(GDP)は前期比0.5%減少。予想は0.1%の減少だった。4−6月(第2四半期)GDPは0.6%増に上方修正された。
  前年同期比でも1.8%増加にとどまり、第2四半期の3.1%増から大きく鈍化。市場予想は2.2%増だった。
原題:Australia’s Economy Shrank 0.5% Last Quarter; Currency Slumps(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-07/OHSIKX6K50YG01


 
Mルイス氏の新著、世界を変えた2人を描く−リットホルツ
Barry Ritholtz
2016年12月7日 07:18 JST 
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金融の世界を描くマイケル・ルイス氏の著書は、発表されるたびに話題を呼んできた。しかし最新作の"The Undoing Project: A Friendship That Changed Our Minds"は毛色が違う。エイモス・トベルスキー氏とダニエル・カーネマン氏という2人の学者の経歴と出会い、かけ離れた2つの個性がいかにして1つの頭脳となり、人間の心理についてのわれわれの誤解を解くに至ったかの物語だ。
  同著は2人の主唱者の伝記という形を取った行動経済学の入門書だ。頭脳明晰な2人の心理学者が互いの中に自らを高められる運命的な存在を見いだしていく知的ロマンスと言える。この2つの頭脳が刺激し合いながら生まれた理論こそ、人間の意思決定に関するわれわれの認識を変えた。
  ルイス氏は数十年にわたる心理学の発展についてさりげなく説明した後、最後にトベルスキー氏とカーネマン氏に行き着く。人間は合理的で、完璧な判断力をもって自身の利益に最適な決定を下すという経済学の大前提を、2人はゆっくりと覆していく。人が意思決定する時のあらゆる認識上の偏りや弱点が白日の下にさらされ、人間の判断の誤りは予見可能なばかりが秩序立っていることが明らかになっていく。
  そこにあるのは喜びと光ばかりではない。カーネマン氏とトベルスキー氏の関係にはねたみやあつれきも入り込む。共同作業の避けられない代価だ。トベルスキー氏は1996年に転移性黒色腫のため59歳で没した。
  究極のところで、これは2人の人間の特別な関係がいかにして、人間の意思決定について新しく、より深い理解をもたらしたかを描いた本だ。この本を読む決定をした読者が後悔することはないだろう。
  (バリー・リットホルツ氏は、ブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Lewis’ Portrait of Two Men Who Changed the World: Barry Ritholtz(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHRG9X6JIJUO01


 

南ア:7−9月GDP、前期比年率0.2%増に鈍化−格下げ回避困難に
Arabile Gumede、Thembisile Dzonzi
2016年12月6日 18:00 JST

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中銀の16年成長率見通しは0.4%
ジャンク級への格下げを先週回避したばかり

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iHU0gO7AtEVI/v2/-1x-1.png

南アフリカ共和国の経済は7−9月(第3四半期)に拡大ペースが鈍化した。製造業生産と貿易がいずれも落ち込み、ジャンク級への格下げ回避を目指す政府の取り込みを困難にしそうだ。
  南ア統計局が6日発表した7−9月期の国内総生産(GDP)は前期比年率0.2%増。ブルームバーグがまとめたエコノミスト19人の調査では中央値で0.6%増が見込まれていた。前年同期比では0.7%増加した。4−6月(第2四半期)は前期比年率3.5%増に上方修正された。
  格付け会社S&Pグローバル・レーティングは先週、南アフリカの格付けを投資適格級で最も低い「BBB−」に据え置いたものの、政治混乱が成長促進に向けた改革を阻んでいると警告した。ゴーダン財務相はGDP比の財政赤字を今年の3.4%から2020年までに2.5%まで圧縮する公約を掲げている。だが、今年のGDP伸び率はリセッション(景気後退)に苦しんだ2009年以来の低水準になりそうで、財務相の公約実現はいっそう困難になる。
  統計によると、GDPの約13%を占める製造業生産は7−9月期に前期比年率3.2%減少したほか、貿易が2.1%落ち込んだ。一方、鉱業生産は5.1%、金融業は1.2%それぞれ拡大した。
  南アフリカ準備銀行(中央銀行)は今年の成長率を0.4%、17年を1.2%と予想する。商品相場の低迷と1世紀余りで最悪の干ばつ、弱い輸出需要が同国経済の重しとなっている。

原題:South Africa’s Economic Growth Slows to 0.2% in Third Quarter(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-06/OHR96M6S972J01
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/464.html

[経世済民116] レーガン相場再来は錯覚、根拠なき熱狂に 米リパトリ減税でドル高か 量から金利? 中国外準11年来低水準 ドル〜2カ月天井

FX Forum | 2016年 12月 7日 18:18 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
レーガン相場再来は錯覚、根拠なき熱狂に

重見吉徳JPモルガン・アセット・マネジメント グローバル・マーケット・ストラテジスト
[東京 7日] - 米大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の勝利というショックについて、筆者は、(何もかも買われる)金融相場から、(買われるものもあれば売られるものもある)業績相場への移行を促したという点で、一定の前向きな評価をしている。

しかし、買われている資産の代表格である現在の米国株式市場はおそらく「根拠なき熱狂」だろう。むろん、市場は期待で動くため、「根拠なき熱狂」は相場につきものではある。まして、前回のコラムで述べたように、データをさかのぼることができる1982年4月以来の「上向きのブラックスワン」であるから、熱狂も無理はない。

先日、「レーガン相場」を示したチャートを目にする機会があった。S&P500指数で見れば、株価は8年間で約2倍になっている。確かに、ロナルド・レーガン元大統領が実施した経済政策と、ドナルド・トランプ次期大統領が掲げる経済政策には類似性がある。それゆえ、当時の上昇相場の再現を期待する向きもあるのかもしれない。

ただ、当時と現在では、株価と景気のサイクルが全く異なる。過度な期待は禁物だろう。以下では、両者のサイクルの違いについて見ていこう。

<レーガン相場は「株式の死」からの回復>

まず、「レーガン相場」の前には、「株式の死」と呼ばれた1970年代の長い低迷があった。米国株式は1970年代を通じて横ばい推移が続き、1973年につけた高値を1980年まで超えることはできなかった。

さらに重要なこととして、1970年代の株価は名目ベースでは横ばいでも、物価で調整した実質ベースでは半分未満に下落している(ピークからボトムまで約54%の下落)。つまり、1980年代の「レーガン相場」は、1970年代の「超弱気相場」からの回復局面だった。

株式市場には、強気相場と弱気相場のサイクルがある。来るべき「トランプ相場」がどのようなものになるかを占う方法の1つは、1970年代を振り返ったのと同様に、最近の10年がどのような相場だったかを振り返ることだろう。それは強気相場(回復局面)だった。実質ベースの株価は、2009年3月のボトムから、(トランプラリーを除く)2016年10月までに約2.5倍上昇している。

トランプ次期大統領の就任を目前に控える直近2016年10月を、レーガン大統領就任直前の1980年10月と重ね、実質ベースの株価を並べたものが、下図である。今回はもうすでに、リカバリーもラリーも十分に進んでいる感が否めない。

http://static.reuters.com/resources/media/editorial/20161206/fxforum.gif

加えて、当然のこととして、CAPE(景気循環と物価を調整した株価収益率)も同様の状況を示唆する。1980年10月は9.4倍であり、対する(トランプラリーを含まない)2016年10月は26.6倍である。1880年からの136年間で見て、1980年10月は最低水準に近く、2016年10月はかなりの高水準である。

最後に、景気循環については、もはや筆者が多くを述べるまでもない。1982年の失業率の高さや需給ギャップのマイナス幅はいずれもリーマンショック後の最悪期を上回っており、当時は深刻な景気後退だった。現在の完全雇用状態とはサイクルが異なり、財政出動のインプリケーションも異なる。

株価や景気におけるサイクルの存在を肯定すれば、ここからの株価の上昇幅は限られるか、上がってもその水準を維持できる期間はそう長くならない可能性を見ておくべきだろう。

*重見吉徳氏は、J.P.モルガン・アセット・マネジメントの日本におけるグローバル・マーケット・ストラテジストで、エグゼクティブ・ディレクター。大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了後、農林中央金庫にて、外国証券・外国為替・デリバティブ等の会計・決済事務および外国債券・デリバティブ等の投資業務に従事。その後、野村アセットマネジメントの東京・シンガポール両拠点において、グローバル債券の運用およびプロダクトマネジメントに従事。アール・ビー・エス証券にて外国債券ストラテジストを務めた後、2013年3月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yoshinori-shigemi-idJPKBN13V10C


 

 

 
FX Forum | 2016年 12月 7日 18:18 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:米リパトリ減税でドル高は本当か

植野大作三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト
[東京 7日] - 来年1月のドナルド・トランプ米新政権の発足を見据え、外為市場では米多国籍企業による海外利益の本国還流(リパトリエーション、以下リパトリ)を促す法人税制の変更、いわゆる「トランプ版本国投資法(HIA)」が成立した場合の影響に関する議論が活性化している。

前回2005年に類似のリパトリ優遇税制条項を含んだ雇用創出法が米国で施行された時には、約3600億ドル程度の海外利益が国内に回帰し、その影響も一因となって同年末までドル指数が大幅に上昇した経緯がある。類似のドル高圧力が今回も喚起される可能性が指摘されている。

だが、現時点で「トランプ版HIA」が成立した場合のドル高インパクトを過度に織り込むのは時期尚早だ。税制変更の具体像が見えない状態で、精度の高い議論は難しいが、以下、このテーマを考察する際の留意点を5つ挙げておきたい。

<最初に発生するのはドル安圧力>

第1に、米国で多国籍企業に対するリパトリ優遇税制の成立期待が強まった場合、先に発生するのは「リパトリによるドル高圧力」ではなく、「リパトリの先送りによるドル安圧力」である可能性が高い。

実際、前回2005年に施行されたリパトリ優遇条項の審議が始まった03年から04年末にかけてドル指数は大幅に下落している。04年10月中旬に同法が米上院を通過したことを受けて同年第4四半期の海外直接投資収益の本国送金比率は異例の低水準となり、同年末までドル指数は下落基調で推移した。

米国は経常収支の赤字国であるため、リパトリ優遇税制の成立期待が強まれば強まるほど、新しい優遇税率適用前の本国還流は得策でなくなって送金が手控えられ、一時的にはドル安圧力が逆に強まる可能性がある。

第2に、前回05年に米国で施行されたリパトリ優遇税制は、有効期間が1年の時限立法だったため、短期間に約3600億ドルもの資金還流が集中したが、今回はリパトリに対する法人税の優遇税率が恒久措置になる可能性もある。その場合、米国企業は限られた期間内に海外利益を国内に呼び戻す必要がなくなり、自分に都合の良い時期を選ぶことができるため、ドル高圧力は分散しそうだ。

前回のリパトリ優遇税制適用後は、1年間で急激なドル高が進んだ前例がある。トランプ政権が急激なドル高を好まない場合は、為替市場への影響が薄まる方式を採用する可能性もあるだろう。

第3に、世界全体の為替市場規模を時系列で比較すると、ここ十数年間で為替売買金額は急速に膨張している。国際決済銀行(BIS)が3年に一度実施している世界為替出来高調査の最新公表分(今年4月)によれば、1日平均の為替取引金額は5兆880億ドルと、04年4月調査結果から為替変動の影響を除いた1兆8840億ドルの2.7倍に膨らんでいる。

「トランプ版HIA」が仮に前回と同じ1年間の時限立法になれば、短期間に集中した本国への資金回帰を促す可能性はあるが、世界全体の為替出来高との比較では、前回の約3倍近い海外利益が戻ってこないと前回並みのドル高圧力は生じない可能性がある。

<日本の税制改革にも円高インパクト>

第4に、米多国籍企業の利益が海外に蓄積しているのが事実だとしても、1)諸外国と比較して法人税率が高く、2)人口減少による国内市場の縮小が見込まれ、3)異常な低金利が長期化している日本国内に「円キャッシュ」の形で滞留している金額はそれほど多くない可能性がある。米多国籍企業は日本国内でも事業活動を営んでいるが、日本で稼いだ利益を国内に円のまま滞留させておくインセンティブが高いとは思えない。

実際、米国の商務省が公表している国際収支統計で確認すると、米国からの海外直接投資収益の直近6年間における現地再投資分の分布では、全体の42.7%と約4割にあたるトップシェアはユーロ圏が占めており、2位カナダの7.7%、3位英国の5.5%がこれに続いている。日本のシェアは一応4位に位置しているが、全体のわずか1.9%に過ぎず、前回05年にリパトリ優遇税制が米国で適用される前の5.5%に比べても激減している。

仮に「トランプ版HIA」によってドル高圧力が発生するにしても、直接的なインパクトが大きいのは法人税率の低い国や金利の高い国、あるいは期待成長率の高い国々の通貨である可能性が高く、対象を円に限ればドル相場のすう勢に大きな影響を及ぼすほどのフローが発生するかどうか微妙だろう。

第5に、日本の政府・与党も、来年度の税制改正で多国籍企業や富裕層の国際的な過度の節税や課税回避を防ぐ対策を強化しようとしている。現在は、法人税率が20%未満である海外の租税回避地に設けた事業実績の無いペーパーカンパニーがある場合、日本の親会社や個人の所得に合算して日本で課税しているが、この制度から「20%未満」という税率の基準を撤廃する方針が検討されているようだ。その場合、海外約40の国と地域が新たな対象に加わるらしい。

また、現在は企業や個人が海外の法人の50%以上の株式を保有していないと課税できないが、出資比率が5割未満の場合でも実質的な所有者だと判断した場合は課税できるよう見直す案も検討されているようだ。「トランプ版HIA」が相応のドル高圧力を発生させる可能性を意識するなら、来年度の日本の税制改正にも類似の円高インパクトがある可能性にも注意を払うべきだろう。

以上の5点を勘案すると、前回05年に米国でリパトリ優遇税制が適用された当時に比べると、今回はドル円という通貨ペアに対して直接的に波及するドル高圧力は期間が分散して薄められたり、相対的に小さくなったりする可能性がある。「トランプ版HIA」が成立すれば、相応のドル高圧力が発生するのは間違いないが、それがリアルにドル相場を動かす時期や規模、あるいは対象通貨などについて、慎重に見極める必要性がありそうだ。

「トランプ版HIA」の施行後に他通貨市場でドル高が進んだ場合、心理的にはドル円市場にもドル高圧力が伝染してくる可能性はあるものの、手前で発生するリパトリ手控えの可能性も考慮すると、その影響を今から織り込み始めるのは時期尚早の感が否めない。

いずれにせよ、来年春以降に本格化する米財政協議の内容を見ないことには、「トランプ版HIA」の影響に関して地に足の着いた議論はできない。現在進められている日本の17年度税制改正も併せて、日米両国の税制論議の行方を見守る必要があるだろう。

*植野大作氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジスト。1988年、野村総合研究所入社。2000年に国際金融研究室長を経て、04年に野村証券に転籍、国際金融調査課長として為替調査を統括、09年に投資調査部長。同年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画、12月より主席研究員兼代表取締役社長。12年4月に三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社、13年4月より現職。05年以降、日本経済新聞社主催のアナリスト・ランキングで5年連続為替部門1位を獲得。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisaku-ueno-idJPKBN13W07D
 

量から金利にシフトとの理解、適切でない=岩田日銀副総裁

[長崎市 7日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は7日午前、長崎市内で講演し、日銀は9月に金融緩和の枠組みを変更したが、「量」から「金利」に転換したとの理解は適切でなく、従来通り「量」と「金利」と双方が重要と強調した。

マイナス金利導入の経験から長期・超長期金利が過度に低下すると、結果的に、企業や家計の物価観である予想物価上昇率が上がらなくなるとも指摘した。

岩田副総裁は、中央銀行が「尋常ならざる決意」を示してお金の量であるマネタリーベースを増やせば、それだけで円安・株高などを通じて予想物価上昇率が上昇し、現実の物価も上がると提唱するリフレ派の代表的な論客。日銀が9月に年間80兆円の国債買い入れを減額可能とした「イールドカーブ・コントロール(YCC)」を導入する際には賛成票を投じていたため、その見解が注目されていた。

副総裁は、新たな枠組みでは物価が2%を超えるまでマネタリーベースの拡大を約束しているため「政策の軸足を『量』から『金利』にシフトするものとの理解は適切でない」と説明した。

9月に導入した枠組みで導入した金利操作も「日銀が多額の国債買い入れを行うことで初めて実現できるもの」と指摘した。

また日銀は、2013年4月の黒田緩和導入以降「一貫して『量』と『金利』の両面から強力な金融緩和を推進してきており、この点に全く変化はない」と強調した。

今年1月に導入を決めたマイナス金利の余波で、長期・超長期の金利が大幅に低下している点について「過度な低下は、年金や保険などの運用利回りの低下をもたらす」と指摘。「広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらし、マインド面などを通じて、経済活動や、ひいては予想物価上昇率に悪影響を及ぼす可能性がある」と述べた。

<米トランプ政権の経済政策「方向性や影響を注視」>

岩田副総裁は、米国のトランプ新政権による経済政策について、「市場では積極的な財政運営によって景気が押し上げられるとの見方が多い」と述べた上で、「米経済政策は、世界経済や国際金融市場に大きな影響を及ぼすため、方向性や影響について、よくみていきたい」とした。

輸出の先行きについては「海外経済の減速や円高の影響が徐々に和らぐなかで、緩やかに増加していく」とし、物価上昇が続く上で「賃金の上昇がきわめて重要」と強調した。

今後の政策運営について、「経済・物価・金融情勢を踏まえ、2%に向けたモメンタム(勢い)を維持するために、必要と判断すれば、ちゅうちょなく、追加的な金融緩和をすべき」と公式見解を繰り返した。「金融情勢を踏まえ」との文言は9月に新たに挿入された。金融機関への副作用の大きいマイナス金利の深掘りには、よほど急激な円高などがなければ慎重、とのメッセージだ。

*内容を追加しました。

(竹本能文)
http://jp.reuters.com/article/boj-iwata-idJPKBN13W072


 

Business | 2016年 12月 7日 18:47 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
中国外準、11月末は3.052兆ドルで11年以来の低水準 5カ月連続減
[北京 7日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した11月末時点の中国外貨準備高は市場予想を下回る3

兆0520億ドルと、5カ月連続で減少した。2011年3月以来の低水準。

減少幅は690億6000万ドルと、1月以来の大きさだった。ドルが上昇する中、当局が人民元の下支えに苦慮しているこ

とが示唆された。

ロイターがまとめたエコノミスト予想は、300億ドル減の3兆0910億ドルだった。

国家外為管理局(SAFE)は、外貨準備減少について、人民銀が外貨準備の需給バランスを維持するため資金を供給する必

要があったほか、資産や債券価格の変動、米大統領選を受けたドル高も要因と指摘した。

一部の市場関係者は、人民銀にとって3兆ドルは心理的な重要水準と指摘する。

人民銀は元を支えるため米ドルを売却したとみられている。
http://jp.reuters.com/article/china-foreign-reserve-idJPKBN13W0U8


12/6異常な元安6.88=>7.47=>6.88
http://jp.investing.com/currencies/usd-cny-chart


 

Business | 2016年 12月 6日 18:36 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
インタビュー:ドルは今後1─2カ月で天井打つ=サクソバンク幹部

[東京 6日 ロイター] - デンマークの投資銀行サクソバンクのスティーン・ヤコブセン最高投資責任者(CIO)は、ロイターとのインタビューで、米ドルは向こう1─2カ月で天井を打つとの見通しを示した。来年、5割以上の確率で米国がリセッションに陥るとみており、米利上げは1回もしくはゼロの可能性もあるという。

一方、ユーロはパリティ(等価)を視野に、英ポンドについては2017年の最強通貨になると述べた。

サクソバンクはコペンハーゲンに本拠を置くデリバティブ取引の世界的大手で、6月末時点の運用資産残高は920億デンマーククローネ(約1兆5100億円)。チーフ・エコノミストも兼任するヤコブセン氏は、同行が毎年末に発表し、ブレグジットを的中させたことでも知られる「来年の大胆予測」の責任者も務めている。

インタビューは同氏が来日した5日に東京で行った。概要は以下の通り。

──イタリアの国民投票について。

「今回の投票結果に驚きはない。全く改革の構えがないことが改めて露呈した格好だ。イタリアは欧州で唯一景気後退の危機に瀕していたが、これによりリセッション入りの公算が大きくなった」

「銀行セクターが危機的状況にあるが、同国の規模や重要性を考えれば、放置するわけにはいかない。銀行システムに対する何らかのサポート、ベイルアウトを目指して話し合いが行われるだろう。皮肉なことだが、政治システムに対する緊迫感を高めるという意味では、ブレグジット同様、長い目で見て欧州にとって良いことかもしれない」

「一方、オーストリア大統領選で極右候補が敗れたことは欧州の政治家に安心感をもたらした」

「来年については、フランスとイタリアの選挙はさほど懸念していない。フランスに関しては(極右の)ルペン大統領が誕生する可能性は小さく、ドイツはメルケル首相にとって有力な対抗馬はいない。むしろ、その前に実施されるオランダの総選挙を注視している。もしここで反移民派が勢いづくようなことがあれば、それはフランスにも影響するとみられ、人々や市場に与えるリスクとしてはオランダの選挙の方が大きい」

──イタリアの情勢およびレンツィ首相の会見が伝わり、5日の為替市場はひとまずユーロ売りで反応した。

「ユーロ/ドルについては、目先はパリティ(1ユーロ=1ドル)、あるいは1.02─03ドルといった水準があり得るとみている。それはあくまで目先1─2カ月間の話だ」

「というのも、私の考えでは、米ドル高はすでに最終局面にある。他の条件が一定とすれば、1月(20日の)トランプ氏の米大統領就任がドルのピークになるとみている。私は、ドルの下落こそが2017年のテーマだと考えている」

「折しも12月にFRB(米連邦準備理事会)が利上げを実施する公算であることも、その一因だ。過去の経験を踏まえれば、FRBが利上げに転じると為替はドル安に振れる傾向がある」

──今月の利上げについては、市場にほぼ織り込まれている状態だ。

「12月は市場予想通り、利上げが行われるだろう。問題は17年だ。現時点のコンセンサスは2─3回の利上げだが、私は、利上げはあって1回、無しに終わる可能性もあるとみている」

「ドル高は成長を妨げ、物価上昇を妨げ、エマージングおよびコモディティー市場に痛手となる。重要なことは、世界の債務の大半はドル建てであり、ドル高は重しということだ」

「現在、トランプ政策に期待する市場関係者が見落としているのは、新大統領による本格的な財政出動は(米国の新会計年度が始まる)10月1日以降になるということだ。つまり就任から9カ月ほどのギャップがある」

「企業が減税などの政策を見込んで先行的に投資を行うことも可能だが、実業界は今のところ様子見姿勢を続けており、経営者としては実際に出てくるものを確認するつもりだと推測する」

「私は、米国が来年リセッションに陥るリスクは50パーセント以上とみている」

──ブレグジットは今後どのような展開をみせるか。

「われわれが2年前に発表した15年の大胆予測が的中し、今年ブレグジットが決まった。だが、ここに来てイタリアが問題を抱え、米国でトランプ氏が次期大統領に選出され、また年明け以降オランダ、フランスで選挙が控えるなか、欧州にとって英国の重要性、つまり英国が欧州から譲歩を引き出せる可能性が急速に高まっている」

「(ブレグジットが決まった6月の高値から10月のフラッシュクラッシュ時の安値まで)25%も下落したポンドだが、17年の最強通貨になるとみている。再び1ポンド=1.40ドルの回復もあるとみている」

「円については17年は大きなストーリーがあると見ておらず、ドル円は100─120円のレンジを予想している」

(インタビュアー:植竹知子 編集:伊賀大記)

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量から金利にシフトとの理解、適切でない=岩田日銀副総裁
東京マーケット・サマリー(7日)
http://jp.reuters.com/article/saxobank-cio-forex-idJPKBN13V0WK
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/477.html

[経世済民116] 中国国家主席、来月のダボス会議に初めて参加へ 岩田副総裁ちゅうちょなく追加緩和 トランポノミクス世界経済に有害ノーベル経
中国国家主席、来月のダボス会議に初めて参加へ

Bloomberg News
2016年12月7日 19:41 JST
来年1月17−20日のWEF年次総会への参加準備中と関係者
NZZ日曜版は習主席がスイス公式訪問を来月行うと報じていた

中国の習近平国家主席はスイスで来月開催される世界経済フォーラム(WEF)年次総会に出席する。いわゆるダボス会議への中国国家主席による参加は初めて。事情に詳しい関係者が明らかにした。中国は世界の金融セクターにおける役割拡大を目指している。
  習主席の外遊日程は未公表だとして関係者が匿名を条件に述べたところによれば、アルプスのリゾート地であるダボスで来年1月17−20日開催予定のWEF年次総会に参加するため、習主席は準備を進めている。
  先月のスイス紙ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング(NZZ)日曜版は習主席が首都ベルンを来月15、16両日訪れ、スイス公式訪問を実施し、その後ダボス入りすると報じていた。
  中国外務省は7日、決まり次第発表すると説明。WEFの広報担当者はコメントを控えた。
原題:Xi Said to Become First Chinese President at Davos Summit (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-07/OHT8H06K510X01



 

トランポノミクス「世界経済に有害」−今年のノーベル賞受賞者が警告
Amanda Billner
2016年12月8日 00:12 JST
 
トランプ次期米大統領の経済政策について、今年のノーベル経済学賞受賞者が懸念を表明した。
  ハーバード大学のオリバー・ハート教授は、トランプ氏が提唱する保護貿易主義的な政策について、最終的に「世界経済にとって有害」だろうと予想。米国経済をも傷つけると警告した。ハート教授はマサチューセッツ工科大学(MIT)のベント・ホルムストローム教授と共に契約理論の基礎を築いたとしてノーベル経済学賞を受賞した。
オリバー・ハート教授
オリバー・ハート教授 Photographer: Scott Eisen/Getty Images
  ハート教授は7日、ストックホルムでのインタビューで「貿易協定の破棄や関税を課す考えは、将来にとってよい方法ではない。従って個人的に懸念する」と発言。「口先だけかもしれない。世界経済にとっては有害だろうし、その方向に進めば米国経済にも有害だろう」と続けた。
  また「失われた雇用を取り戻そうという試みは、極めて非効率で費用がかかる」とし、「このため将来に向けて別の方法を検討するべきだ。個人的な見解だが、富裕層に減税を施すべきだとは思わない。増税するべきだ」と語った。
  ハート教授と並んでインタビューに応じた共同受賞者のホルムストローム教授は、先進国の各地で吹き荒れるポピュリスト旋風は過去に例のない新たな現象だと指摘した。
原題:Trumponomics ‘Bad for World Economy,’ 2016 Nobel Laureate Warns(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-07/OHTIJC6KLVR401


 


岩田日銀副総裁:必要ならちゅうちょなく追加緩和すべきだ
日高正裕
2016年12月7日 11:56 JST 更新日時 2016年12月7日 16:36 JST

政策の軸足を量から金利にシフトしたとの理解は「適切でない」
量・金利両面で一貫して強力な緩和、マネタリーベースは拡大続ける


日本銀行の岩田規久男副総裁は7日午前、長崎市内で講演し、今後とも「必要と判断すれば、躊躇(ちゅうちょ)なく、追加的な金融緩和をすべきと考える」と述べた。
  岩田副総裁は「新しい政策枠組みの下でも、マネタリーベースは将来にわたって拡大を続けることをあらためて強調しておきたい」と指摘。「イールドカーブ・コントロールの下での長期金利の操作は、日銀が多額の国債買い入れを行うことで初めて実現できるものだ」と述べた。
  その上で、新たな枠組みは「一部にみられるように『政策の軸足を量から金利にシフトするものである』との理解は適切でない」と指摘。「日銀は量的・質的金融緩和導入以降、一貫して量と金利の両面から強力な金融緩和を推進してきており、この点に全く変化はない」と語った。
  日銀は9月の金融政策決定会合で、マネーの量を操作目標としてきた従来の枠組みから、金利を操作目標とする長短金利操作付き量的・質的金融緩和に転換。同時に、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を導入した。

就任時の岩田副総裁(左、2013年3月)
Haruhiko Kuroda; Kikuo Iwata; Hiroshi Nakaso
  量的緩和の導入を早くから主張し、日銀が2001年3月に同政策を導入する端緒を開いた元審議委員の中原伸之氏は9月のインタビューで、「レジームを量から金利に変えたということ自体、日銀内でリフレ派が敗れたということだ」と指摘。リフレ派の岩田副総裁、原田泰、桜井真両審議委員が反対しなかったことに疑問を呈していた。
トランプ新政権誕生で「必要なら対応」
  岩田副総裁は講演後に行った会見で、トランプ次期米大統領の政策について、「具体的にどういう政策をするのか、かなり不確実性があり予断を許さない」と指摘。「どうなるか見守りつつ、金融政策で対応することが必要になれば対応する」と述べた。
  現在、80兆円をめどとしている長期国債の年間買い入れ増加ペースについては、「イールドカーブ・コントロールを行い金利を下げるためには相当の量を買わないと維持できない」と指摘。「当面の間は、減ったとしても微減に過ぎない」とし、大きく減ることはないとの見方を示した。  
  米長期金利の上昇を受けて国内の長期金利にも上昇圧力がかかっていることについて、「現在の長期金利はほぼ0%の範囲に納まっていて、2%の物価上昇に向けたモメンタムに悪影響を及ぼしているとは思わない」とし、「差し当たって何かする必要はない」との見方を示した。  
長期金利が一段と上がった場合は
  長期金利が一段と上昇した場合の対応については、「しばらくして経済が良くなり0%程度を維持しなくても少し上がっても大丈夫という時には、イールドカーブコントロールの値を変えていく。それによって量が若干変化することもあるかもしれない」と述べた。
  一方で、「逆に悪い金利上昇ということもあるので、それが物価目標2%へのモメンタムを崩すということであれば0%程度に引き下げるためには量を増やすこともある」と語った。
  岩田副総裁はその上で、「長期金利が上がることによって2%の物価目標に向けたモメンタムがどう変わるか、それが量をどういうふうに調整するか、あるいは金利の上昇を抑えるか、あるいはそのまま市場に任せて、その値を新しい金利目標にするか決めていく」と指摘。「あくまで2%の物価目標へのモメンタムの維持がされているかどうかを考察することに尽きる」と語った。
マイナス金利の導入「一番迷った」  
  2013年4月に量的・質的金融緩和を導入した際、2年で2%の物価目標を達成すると表明したにもかかわらず、いまだ達成できないことについては、消費増税による景気の落ち込みや原油安など、「逆風が吹かなければ、2年以内に達成したと思っている」と述べた。
  また、これまでの政策を振り返って、「私が一番迷ったのはマイナス金利の導入だ。これは少し迷った。金融機関や生命保険なども含めて、どういうふうになるかは少し心配した」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-07/OHSLTP6S972H01

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/481.html

[国際16] 「君の名は。」大ヒットを喜べない中国の光と闇 中国生活「モノ」がたり〜速写中国制造 創作は中国マネーに屈するのか  
「君の名は。」大ヒットを喜べない中国の光と闇

中国生活「モノ」がたり〜速写中国制造

創作は中国マネーに屈するのか
2016年12月8日(木)
山田 泰司
 「君の名は。」の快進撃が中国でも続いている。

 12月5日には日本国内での興行収入がついに200億円を超え、歴代では邦画で2位、アニメで3位、映画全体でも5位に浮上した(興行通信社調べ)。

公開5日で興収56億円


「急な公開決定で上映館でもポスターが間に合わなかったところがあった」(関係者)とのことで、「結末に安心した」と話す中国人夫婦が観た上映館にはポスターがなく、仕方なく「ハリー・ポッター」のポスター前で記念撮影
 12月2日の金曜日から公開された中国でも絶好のスタートを切った。中国紙『新聞晨報』(12月5日付)によると、公開前日の時点で、初日分の前売りは3000万元(4億9500万円)を突破し、「STAND BY ME ドラえもん」の初日の興収2711万元(4億4731万円)を抜いてしまった。初日の興収は最終的に7591万元(12億5251万円)となり、中国で上映された邦画アニメの初日の記録を更新。公開後最初の週末(金土日)では2億8774万元(47億4771万円)に達した。公開5日目まで、興収はいずれも当日の首位を維持しており、計3億4365万元(56億円)に上っている。

 中国の過去の興行収入と比べると、歴代首位は2016年2月公開で香港スターのチャウ・シンチーがメガホンをとった中国映画「美人魚」の33億9000万元(559億円)で、10位でも14億3900万元(194億円。中国映画「夏洛特煩悩」)となお距離がある。ただ、2016年に限れば2位が15億3000万元(252億円。米映画「ズートピア」)、10位は9億8000万元(161億円。米映画「ジャングル・ブック」、以上、糯米電影、電影票房調べ)。12月上映の映画としては大健闘で、今後どこまでランクを上げていくのかが楽しみである。

 私自身はと言えば、日本で1回、中国で1回の計2回観た。主人公の2人が高校生、しかも普段ほとんど観ないアニメということもあり、観るつもりは無かったのだが、先月の日本滞在中に、中国でも上映が決まったということを知り、その時点で既に日本映画の興収記録を塗り替える可能性が取りざたされていたこの大ヒット映画に中国人がどのような反応を示すのかに興味がわき、それならば日本でも観ておかなければと離日前日に慌てて横浜みなとみらいの映画館へ駆け込んだのだ。

 中国では公開2日目の土曜日に、20代前半の中国人夫婦を誘って上海の映画館に観に行った。夫(25歳)も妻(20歳)も日本のアニメには子供のころから親しんできたが、新海監督のことは2人とも知らず、妻は日本でヒットしていることは知っていたが、夫は「君の名は。」の存在も知らないなど、両者ともアニメファンではない。2人からあらすじを尋ねられたが、主人公の男女の魂が頻繁に入れ替わったり、両者の時間がズレたりとなかなかに複雑な内容を中国語で説明するのが面倒だったので、「中国でも公開初日の昨日、興収トップの映画だから、観ておいて損はない。映画代はオレが持つからさ」と丸め込んだ。

 そこで彼のスマートフォン(スマホ)でチケットを予約しようとしたのだが、土曜午後4時の時点で、行ける範囲として選んだ10あまりの映画館は、どの時間も予約済みを示す赤でほぼ染まっている。席の予約状況を見たこの時点で友人夫婦は、「おお、ほんとにヒットしてるんだな」とがぜん観る気になったようだ。中国の映画館も昨今、シネマコンプレックスが主流でキャパの小さなスクリーンが複数ある形体が多いのだが、その中でも564席と比較的席数の多い映画館で午後7時半の回にようやくのことで3つ並んだ席を確保した。ちなみに料金はネット割で1人47元(775円)だった。

 観客は8分ほどの入り。年齢層は20代が中心のようだったが、10代が少ないように見えたのは、夜の回という時間も影響していただろう。女性同士の連れも目立つが、男女の比率は4対6というところで、若い男性の姿も少なくなかった。ただ、シニア世代はほとんど見かけず、ひょっとすると51歳の私が最年長だったかもしれない。一方、日本では平日の夕方の回だったので、観客は学校を終えた女子中高生と高校生、大学生と思しき男女のカップルが中心だったが、シニア世代もちらほら見かけた。男女比は3対7で、一目瞭然で女性の方が多いのが分かった。

中国観衆の素直な反応に感激


観衆は20代の男女が中心(上海市内の映画館)
 「君の名は。」を観た中国の観衆の反応を簡潔に言い表すならば、「反応が素直」、これに尽きると思う。

 笑う所では声を立てて笑い、涙を誘う場面ではよく泣く。女の主人公と体が入れ替わってしまった男の主人公が、自分の体に乳房のあることに驚いて両手でムギュっとつかむ場面。女の主人公が体は男の主人公のまま、破れたスカートに少女チックなかわいらしい刺繍を施す場面。何かのインタビューで新海監督が、前半では笑いの要素を多く入れた、というようなことを語ってるのを読んだが、恐らく監督が「笑って欲しい」と意図して入れたシーンで、横浜の観客たちはほとんど笑っていなかったが、上海の観客たちはどの場面でも漏れなく、そして楽しそうに笑っていた。

 これは、映画館における中国と日本のマナー、マナーと言うと非難するような響きのみが強調されてしまうので、習慣と言い換えるが、映画館における習慣の違いによるところも大きいのだろう。

 初めて中国の映画館で映画を見た時のことを、私は今でも強烈な印象として鮮明に覚えている。あれはいまから28年前の1988年のこと。語学留学した中国内陸部の大学で開かれた留学生と中国人学生との交流会で知り合って友達になった日本語学科の男子学生、リュウくんが、中国での生活が2カ月目に入ったころ、映画を観に行かないかと誘ってくれたのだ。訪れたのは、大学から徒歩15分ぐらいの所にある体育館のような映画館。映画館だから暗いのは当たり前だが、中国有数の炭鉱を抱える省にあったその映画館は、煤煙や石炭の粉に長年燻されたためだろうか、外観も煤けて薄汚れていた。

 始まったのはルーマニアのギャング映画で、中国語の吹き換えだった。とある民放が午後2時ぐらいから毎日放映していた吹き替えのB級映画の中にありそうな、有り体に言えば退屈な映画だった。それでも、日本にいるとなかなかルーマニアの映画など見る機会がない。ベルリンの壁が崩壊する前年のことで、ルーマニアでも、その翌年に公開処刑という衝撃的な最期を遂げるチャウシェスク大統領の独裁政権が続いていた。私は、社会主義の国では思いがけないものが観られるものだと珍しがっていたのだが、珍しいのは映画そのものだけではなかったのだ。

 映画が終盤に近づいたころ。ヒーローがマシンガンをぶっ放し、悪党どもを皆殺しにした。すると、隣りに座っていたリュウくんが「イヨーッ!!」という奇声と共に、バネに弾かれたように椅子から飛び上がり拍手した。他の観客も同時多発的にリュウくんと同じような反応をして奇声を上げ飛び上がっていた。子供映画ならいざ知らず、平日の昼下がり、その映画館にいたのはほぼ成人男性だけだった。

 それまでの23年間、「映画館では静かにするものだ」と教えられてきた、あるいは思い込んできた私は驚きつつ、「なんだ中国人っていうのは、マナーが悪いんだな」と思った。ただ同時に、「映画館で大人たちが感情を爆発させてもいい国もある」ということを知り、「うーむ、世界には知らないことがたくさんあるんだな」、とも思った。

 そして映画が終わり、エンドロールが始まると同時に照明がつき、そこでフィルムが止まった。「映画館では、エンドロールが終わるまで着席し余韻に浸るもの」とやはりその時まで思い込み、実際、映画の善し悪しにかかわらず映画館でのその時間が何よりも好きだった私は、宙ぶらりんになった気持ちのやり場に戸惑いながらも、とうの昔に立ち上がっていたリュウくんに気圧されて席を立った。

 通路に向かいながら明るくなった足下を見ると、床が見えないほどびっしりと種のようなものが敷き詰められていた。これは何だとリュウくんに尋ねると、「あれはヒマワリの種です。中国語では瓜子(グアツ)と言います」と日本語の教科書の例文のような日本語で教えてくれた。リュウくんが食べていなかったので気付かなかったが、映画を観るときはポップコーンでなく、中国ではヒマワリの種を食べ、しかも床に吐き散らかしても構わないのだという。「映画館で出したゴミはゴミ箱に、あるいは持ち帰ること」というほど当時の日本のゴミマナーは良くもなかったが、それでも座席の足下の目立たぬように置くぐらいのことはしていたので、このゴミの扱いにも驚いたのである。

「安堵」と「感動」、反応分かれた結末

 そして今日。少なくとも上海の映画館では、床が食べ散らかしたヒマワリの種だらけということはなくなったし、感情が高ぶり奇声を上げたり飛び上がったりする人も見かけない。ただ、観劇中の物音については、日本に比べれば許容量は大きい。「君の名は。」でも、ストーリーの中で昔と今が前後したりと内容がいささか複雑だったせいもあるのだろうが、ひそひそ声、よりはもう少し大きなボリュームで今観ているシーンについて、連れとリアルタイムで質問し合い、おしゃべりする光景がどこにでも見られた。

 ただ先にも書いたが、それが中国の映画を観るスタイルなのである。そして、男の主人公が、女の主人公の名前を思い出すことができず絶望するシーンでは、すすり泣きや嗚咽が四方八方から聞こえてきた。いささか賑やかではあるが、作品に揺すぶられた感情を笑い声、泣き声、おしゃべりで素直に表している中国人の観衆の様子は、とても気持ちのいいものだった。

 「君の名は。」に対する反応で、日本と中国で最も違うなと思ったのは、観終わった後の様子だろうか。ネタバレになるので詳しくは書かないが、大まかに言えばハッピーエンドに終わる結末に、横浜の観客は「感動した」という面持ちだったのに対し、上海の観客らは「安堵した」「ホッとした」という顔をしていた。一緒に行った夫婦の感想も「ああいう結末で心底安心した」(夫)、「ハッピーエンドじゃなかったら面白くない映画になっていた。ハッピーエンドでホッとさせてくれたから、すべてOK」(妻)というものだった。一途な思いや苦労は報われるべきだということを、中国ではまだ思える社会であり時代にあるということなのかもしれない。

浮上した「写真加工アプリ」問題

 さて、中国のメディアには早くも、「君の名は。」が中国でもヒットした理由を探る論評が出始めている。それらの意見をまとめると、大まかに3つに分けることができるようだ。そのうちの2つは、(1)新海誠監督の作品は「秒速5センチメートル」「星を追う子ども」「言の葉の庭」等、アニメ好きを中心に中国の若者たちの間では有名。その監督の作品が中国で初めて劇場公開されるということで期待が高まった。(2)日本で空前のヒットを記録中だという話題性、である。

 そして3つ目なのだが、これが今、いささか問題になりつつあるのだ。それは、(3)写真加工アプリとソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を利用した宣伝が奏功した、というもの。

 今回、「君の名は。」の中国での反応を調べていくうちに、中国メディアや個人のブログの中に、「新海誠風」という言葉を時々見かけることに気付いた。最初は「君の名は。」がいかにも新海監督のテースト溢れる作品だということを言っているのかなと思ったのだが、どうやらそうではない。

 そこでなお調べると、「自分の手持ちの写真を『新海誠のアニメ風』に加工できるアプリ」があるということが分かった。そして、「君の名は。」中国公開初日の10日前、すなわち11月22日ごろから、このアプリで加工した写真をSNSで「朋友圏」、日本ならLINEで言うところのグループで発表し合うのが流行り始め、この遊びをやらないと友人らの話題について行けぬため新海誠風に写真を加工する人の輪がどんどん増殖したのだが、この新手とも言える宣伝手法が、映画ヒットにつながった、という指摘をする人が複数いることが分かったのである。オンラインメディア『中関村在線』(11月24日付)や中国紙『法制晩報』(12月6日付)によると、これら記者や評論家らは、この宣伝手法を「濾鏡営銷」すなわち「フィルター営業」と名付けている。

 このアプリの名前は中国語で「時光相冊」、英語名は「Everfilter」という。試してみようと探してみたところ、iPhoneのiOS用と、Android用のほか、インストール不要でブラウザ上で加工できるものもある。むやみにアプリをインストールしたくないので、ブラウザ版で加工してみたのが掲載した写真。オリジナルの写真は上海がPM2.5で深刻な大気汚染に見舞われていた2013年12月、私が上海都心部で撮影したもので、歩道橋の奥に見える超高層ビルがスモッグで霞んで見えるし、手前の通行人は手で口元を覆っているのが分かる。ところが、このアプリを使って「新海誠風」に加工すると、ドブネズミ色に染まっていた空が、まるで「君の名は。」に出てきたような青空と白い雲に一変するのである。


「新海誠風」にできるアプリのブラウザ版を使って加工した写真。オリジナルは上海が過去最悪の大気汚染に見舞われた2013年12月の都心部
宣伝か著作権侵害か

 ところが、「君の名は。」の中国公開後にこのアプリの日本語版が出ると、新海監督の作品を無断で使用したものなのではないかとの指摘が日本で出始めた。すると、12月4日になって、Everfilterがフェイスブックで「運営一同」名で、「中国国内の使用については著作権者よりライセンスを受けていたものの、誤って海外版にも使用してしまったことが発覚した」「著作権元である新海誠氏へも連絡した」「誠心誠意、本問題に対応する所存だ」等と投稿。さらに、12月7日付では、「12月3日のリリース後、コンテンツの著作権について指摘を受け、12月4日、アプリ内及びSNS上で使用されていた『君の名は。』のコンテンツ及び新海誠氏の作品の使用を停止、謝罪と経緯説明のため新海氏に連絡した上、著作権に対する認識の甘さが引き起こした今回の件に関し深く反省し、謝罪の意を込めて、本日、日本、韓国を含むリリースした全ての地域でApp Store、Google Playでの配信の一時停止を決めた」と表明した。

 この件について12月7日、配給の東宝に聞いたところ「当社としてはライセンスを供与した事実はない。詳細は現在調査中」(宣伝部)との回答だった。

 Everfilterや東宝の反応を見る限り、中国側の勇み足だった可能性が高いように思えるが、全貌についてはまだ分からない。いずれにせよ、先にも触れたように、複数の中国のメディアは11月22日前後から、このアプリによる写真加工とSNSでの拡散があることを伝えており、これが「君の名は。」の宣伝手法の1つだとの認識が定着してしまっている。

 さらに、Everfilterがフェイスブックで一時停止を宣言した12月7日の午後の時点で、ページのトップに「君の…名前は…?」と大書されたブラウザ版ではなお、新海誠風の加工ができるようになっている。ただし、このサイトがフェイスブックで一時停止の声明を出したEverfilterと果たして本当に同一の組織なのかは不明だ。

 このように、中国国内における新海監督のコンテンツ使用について、どこかでこれを認める経緯があったのかどうかは、これを書いている現時点でなお分からない。ただ、この問題は、コンテンツ産業が中国市場に進出するあたっての難問が表出したものでもある。

難しい中国の二面性

 先に、「君の名は。」の上海の上映館における中国人の観客らの反応には気持ちのいいものがあった、と書いた。ただ、非難されてしかるべき行為が相変わらず無くなっていないことにも言及せねばならない。それは、上映中のスクリーンをスマホで写真や動画に撮り、その場でSNSに上げている人が1人や2人ではなかった、ということである。


市内に早くも出回っている「君の名は。」の海賊版DVD
 繰り返すが、写真加工とその拡散が許可を受けての宣伝だったのか否かは現時点ではなお不明だ。ただ、上映中のスクリーンを撮影しSNSで拡散するという行為を、ネット時代の宣伝の1つとして割り切って中国市場をとるのか、あるいは創作を生業とする者の生存と根幹に関わることだとして、そのような行為が横行する国には背を向けるのか。二者択一はいささか乱暴だが、いずれにせよ、理解を深める努力をする必要はあるし、自らの立場と考えは、ハッキリ示すべきだと思う。

 スクリーン撮影、海賊版DVD、無断利用による写真加工など中国における著作権に関する問題には、この問題に対する認識の甘さの他、最近は国マネーを背景に「いずれにしても中国市場は捨てられまい」という傲慢さが支えている部分が出てきているように思う。ただ一方で、「君の名は。」に笑い、泣き、ホッと安堵のため息を漏らす中国の観衆の素直な反応には感動した。光と闇のようなこの2面性が、著作権にかかわらず、様々な問題や局面につきまとうのが中国を理解する上での難しさ。私はそのことを再認識させてくれた映画として、「君の名は。」を記憶することだろう。


このコラムについて

中国生活「モノ」がたり〜速写中国制造
「世界の工場」と言われてきた製造大国・中国。しかし近年は、人件費を始めとする様々なコストの高騰などを背景に、「チャイナ・プラス・ワン」を求めて中国以外の国・地域に製造拠点を移す企業の動きも目立ち始めているほか、成長優先の弊害として環境問題も表面化してきた。20年にわたって経験を蓄積し技術力を向上させた中国が今後も引き続き、製造業にとって不可欠の拠点であることは間違いないが、一方で、この国が世界の「つくる」の主役から、「つかう」の主役にもなりつつあるのも事実だ。こうした中、1988年の留学から足かけ25年あまり上海、北京、香港で生活し、ここ数年は、アップル社のスマートフォン「iPhone」を受託製造することで知られるEMS(電子機器受託製造サービス)業界を取材する筆者が、中国の街角や、中国人の普段の生活から、彼らが日常で使用している電化製品や機械製品、衣類などをピックアップ。製造業が手がけたこれら「モノ」を切り口に、中国人の思想、思考、環境の相違が生み出す嗜好を描く。さらに、これらモノ作りの最前線で働く労働者達の横顔も紹介していきたい。本連載のサブタイトルに入れた「速写」とは、中国語でスケッチのこと。「読み解く」「分析する」と大上段に構えることなく、ミクロの視点で活写していきたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258513/120700043/
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/619.html

[政治・選挙・NHK217] 国際カジノ資本は日本の中間層の財布を狙っている  残業を放置する社長は 「犯罪者」 近代化が人類にもたらした10の進歩 
山田厚史の「世界かわら版」
【第123回】 2016年12月8日 山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

国際カジノ資本は日本の中間層の財布を狙っている

ラスベガスのような歓楽街が、横浜や大阪に出現するかもしれない――
 異様な国会になった。会期延長はTPP法案を成立させるためとされたが、そればかりではなかった。カジノ法案を無理矢理通そうというのである。

 問題山積、突っ込みどころ満載の法案である。それが衆議院の審議はわずか6時間。自民党は質問時間を持て余し、般若心境を唱えて時間を消化する仰天議員まで現れた。審議なんてクソくらえ、数の力で強引に通す、という国会運営である。たかがカジノ。なぜ与党は、品性が疑われる愚挙に走るのか。

「今回が最後のチャンス。通せなかったら、国際カジノ資本に見限られます」

 ロビー活動の一端を担ったコンサルタントは言う。カジノ資本の力はそれほど大きいものなのか。うかがい知ることはできないが、法案が成立して喜ぶのは日本進出が可能になる国際カジノ資本である。

読売、産経でさえ難色
不自然な与党の強引さ

 日本は「最後の処女地」だという。

「候補地も運営する外資も、概ねすでに決まっている」という情報通もいるほどだ。

 観光客が増える。地域が賑わう。関連産業が儲かる。税収も増える。つまりカネ・カネ・カネだ。安倍首相は成長戦略の目玉の一つに据えた。儲かることはいいことだ、という発想である。なんという貧困な精神か。

 政府・与党に同調する論説が目立つ読売新聞でさえ社説で「人の不幸を踏み台にするのか」と書いた。

「そもそもカジノは、賭博客の負け分が収益の柱になる。ギャンブルにはまった人や外国人観光客らの散財に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全である」と指摘している。

 親会社のフジサンケイグループがカジノビジネスに名乗りを挙げている産経新聞は、「カジノ解禁にまつわる懸念に向き合わないまま、スタートラインに立つ法律を押し通すなら国民の不信は拡大するだろう」と書いた。

 首相も与党も財界も、こんな当たり前のことに気づかないのか。

 いや、気づいているから、国民が「これはおかしい」と言い出す前に、バタバタと決めてしまおうとしているのではないか。

 カジノと言わずに「IR(統合型リゾート施設)」などと呼ぶこと自体、後ろ暗さを感じている現れだろう。

 古今東西、賭博場には闇が付きまとう。電飾で飾った煌びやかな表の顔の裏で、脱税・収賄・イカサマに絡むカネのやり取りが為されてきた。

 儲かるのは賭博を開帳する胴元で、ゼニを失うのは賭場に引き寄せれたカモたち。これも古今東西の教訓だ。

国際資本が狙うのは
日本の中間層の貯蓄

「カジノは儲かる」。これも確かだ。大阪商業大学の谷岡一郎学長は、こう語った。

「マカオではカジノの稼ぎが去年(2013年)3兆8000億円ありました。これは売上ではありません。収益です。つまり人々が失ったカネの合計が3兆8000億円ということです」

 谷岡学長は、海外のカジノ事情に詳しく、1990年台から日本のカジノを解禁すべきだと主張してきた。ギャンブリング・ゲーミング学会を日本で創設し、同大学にアミューズメント産業研究所を作るなど、日本で数少ない「ギャンブル有識者」の一人だ。「教え子を橋下徹大阪市長の下に顧問として送った」とも言っておられ、カジノ推進の旗を振る大阪の理論的支柱でもある。

 話を伺ったのは2年も前のことだが、印象に残った言葉がある。「なぜカジノ資本は日本を魅力的と考えているのか」という問いにこう答えてくれた。

「ハイローラーと呼ばれるギャンブル愛好家はカジノのお得意様ですが、この種のギャンブラーだけを相手にしていては、経営が安定しない。一般の方々が参加できる広い裾野が必要です。一定の所得と貯蓄を持つ分厚い中間層がいる日本の大都市圏は大変魅力ある市場です」

 ギャンブラーが好むのはバカラだそうだ。大王製紙の御曹司がはまったのもこの賭博で、気の遠くなるような大金が動く。場合によってはカジノ側が大負けするリスクさえある。ギャンブラーだけを相手にして商売すると勝ち負けのブレが激しく、経営にリスクが伴う。安定収益となるのが、小銭を携えてやって来る素人たちだ。ルーレットやゲーム機は必ず胴元が儲かる仕組みになっている。地域の小金持ちや観光客が集まる場所にカジノを開くのがベストというのである。

 つまり太ったカモが沢山いる場所にカジノを開きたい。それには日本の大都市は格好の狩場、ということである。狙われているのは日本人の貯蓄である。

20世紀の米国で育ち
中国マネーでバブル化

 ギャンブルは財産の私有化と共に始まったと言われるが、産業として肥大化したのは20世紀のアメリカだ。州によって制度は様々だが、多くは過疎地の振興や貧困の対策と抱き合わせで始まった。ラスベガスは砂漠の街の振興事業として賭博が始まり、貧困が問題になったインディアン自治区では救貧対策としてカジノが認可された。

 そして20世紀末に到来した「カネ余り経済」がカジノバブルの華を咲かす。カジノを運営する会社がアブク銭を吸って巨大化した。MGMリゾートインターナショナル、ラスベガスサンズ、シーザース・エンターテインメントなどだ。米国大統領になるドナルド・トランプ氏もニュージャージー州アトランティックシティーでゲーム機2100台を配備するカジノを経営している。

 カジノ資本が更に大化けしたのが通貨危機後のアジアだった。外貨に窮し、手っ取り早い経済対策が欲しい各国は外国人観光客を呼び込むためにカジノ資本に頼った。賭博を禁止するイスラム教のマレーシアまで観光地にカジノを誘致した。

 マカオは1999年にポルトガルから返還され、中国政府は外資に頼る観光開発に乗り出す。中核になったのがカジノである。今やマカオは巨大なカジノが林立し、ラスベガスを凌駕するカジノシティになった。

 ホテルと一体化し、会議場や劇場・レストランが併設され、浮世離れした空間で観光客が気前よくカネを使う。ラスベガスサンズが経営するシティ・オブ・ドリームス・リゾートは、客室は1400室だが、カジノ面積が3万900平米あり(東京ドームは4万9000平米)、ゲーム機1350機、ポーカーやバカラをするテーブル520台、レストラン・バー14軒が組み込まれている。

 狙いは中国マネーである。本土では賭博が禁止されている。カネ回りがよくなった中国人が「賭博解放区マカオ」に流れ込む。カジノで賭博中毒になり公金を使いこむ役人や地方政治家の不正が頻繁に新聞に載るようになったのもこの頃だ。年間収益3兆8000億円は、その屍から稼ぎ出された。数字で見せられるとヨダレを垂らす人もいるだろうが、その裏で何が起きているのか。利益を手にする者は誰か、失うのは誰か。国会審議は、冷静な現状認識の上で、周到にリスクが検討されるべきである。

カジノを「非日常」に
とどめてきた先進国の知恵

 観光客が増える、関連産業が潤う、税収が増える、というが本当にそうだろうか。

 カジノは集客力がある。けたたましく豪華で刺激的な施設があるからだ。ここの集客力は周辺の商業施設や観光地を訪れる人たちを吸い上げてしまう力もある。

 観光客が増えた例として、しばしばシンガポールが挙げられる。私もバンコク駐在のころ、時折シンガポールを訪れた。ビジネス都市ではあるが観光資源はほとんどない。名所といえばマーライオンの像だが、訪れる人をガッカリさせる「期待外しの観光ポイント」として有名だ。3日いれば飽きるシンガポールだからド派手なカジノが活きてくる。3棟の高層ビルに船型のプールを載せた複合観光施設マリーナ・ベイ・サンズは、ブランド品と豪華施設を売り物にするシンガポールの煌びやかな象徴である。

 金融関係者なら知っていることだが、カジノはマネーロンダリング(資金洗浄)と密接に絡んでいる。出所を明らかにできないカネをカジノに持ち込み、カジノ収益に変えて表に出す。

 華人の商都・シンガポールはタックスヘイブン(租税回避地)としても知られている。金融立国を目指すシンガポールは華人マネーを呼び込むため、金融規制が緩い。金持ちの資産を管理運用するプライベートバンキングが盛んで、「秘密のカネ」を扱うことに慣れている。欧州で言えばスイスである。訳あり資金・秘密運用・タックスヘイブンにマネロンが絡み、カジノという道具立てを必要とする。国柄を反映してカジノが生まれたのだ。

 歴史的建造物が残り、細やかな生活文化が今も息づく日本は、いまさらシンガポールの道を進もうというのか。

 カジノ資本の故郷・アメリカでも首都ワシントンやニューヨーク、サンフランシスコなど国を代表する都市に、カジノはない。インディアン居住区など「底上げが必要」とされる地域に特例として建設が許される。

 中国でさえ賭博はマカオに閉じ込めている。欧州にもカジノはある。ロンドンに駐在した頃、誘われて何度か行った。

 看板はない、地図にも表示されていない。目立たないドアを開けるとそこがカジノ、という仕立てだった。ドレスコードがあり、メンバーの紹介が必要で、紳士の静かな社交場という雰囲気だ。ラスベガスのようなTシャツ姿の家族ずれや、唾を飛ばすほど大声の客がルーレットに群がるマカオとは趣が違うカジノが英国流だった。

 先進国はカジノは生活都市から切り離すか、都市の中なら目立たぬ場所で、というのが世間の知恵だった。

日本は玄関先で賭博?
与党の愚挙の裏に何があるか

 ところが日本で候補地として上がっているのは、羽田空港に近い東京湾岸、横浜港を見下ろす山下公園付近、大阪の天王洲の3ヵ所だ。家に例えれば、玄関やリビングルームに賭博機を置くようなものである。

「地方自治体に手を挙げてもらい国が審査する。まず2、3箇所で認め、運営状況を見ながら次を判断していきたい」

 IR議連の幹事長である自民党の岩屋毅議員はそう語り、当面の候補は首都圏と大阪に限定されていることを示唆した。

 カジノ資本の経営者は頻繁に日本を訪れ、自治体関係者や国会議員に会っている。メディアに対しても前向きのメッセージが発せられている。

 ラスベガスを拠点とするMGMリゾートインターナショナルのジョージ・ミューレンCEOは「少なくとも50億ドル(5500億円)を投資する準備がある」と朝日新聞の取材に答えた。候補地については大阪・夢洲を挙げた。

 マリーナベイ・サンズ社長兼CEOのジョージ・タナシェヴィッチ氏は「投資は100億ドル程度、かなりの額を考えている」として、候補地は「横浜と大阪だ。特に横浜市には、大きな関心を持っていただいている」と東洋経済のインタビューに答えた。

 どうやらカジノの利権は大阪がMGM、横浜はサンズで、裏の話は付いているのではないか。オリンピックや大阪万博もこのシナリオに沿っているのではないだろうか。

 裏で話がついているなら、ビジネス側は急ぎたい。「早くしろ!」「何しているのか」という矢の催促が、与党の愚挙の背後にあると想像してしまう。

 我々の知らないところで話がつき、最後の仕上げが形だけの国会審議、というおぞましい政治を、カジノは見せつけてくれた。
http://diamond.jp/articles/-/110402


 

残業ゼロがすべてを解決する
【第5回】 2016年12月8日 小山 昇
残業を放置する社長は
「犯罪者」です!
小池都知事が「夜8時には完全退庁を目指す」、日本電産の永守社長が「2020年までに社員の残業をゼロにする」など、行政も企業も「残業ゼロ」への動きが急加速している。
電通過労自殺事件で強制捜査が入ったいま、中小企業も大企業もお役所も「残業ゼロ」に無関心ではいられない。
株式会社武蔵野は、数十年前、「超ブラック企業」だった。それが日本で初めて日本経営品質賞を2度受賞後、残業改革で「超ホワイト企業」に変身した。
たった2年強で平均残業時間「56.9%減」、1.5億円もの人件費を削減しながら「過去最高益」を更新。しかも、2015年度新卒採用の25人は、いまだ誰も辞めていない。
人を大切にしながら、社員の生産性を劇的に上げ、残業を一気に減らし、過去最高益を更新。なぜ、そんなことが可能なのか?
「日経新聞」に掲載後、2日連続Amazon総合1位となった『残業ゼロがすべてを解決する』の小山昇社長にその秘密を語ってもらった。

残業削減は「社長の決意」がすべて


小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/
 会社は、「社長の決意」で決まります。

 残業を減らすためには、「残業を放置する社長は、犯罪者と同じである」ことを肝に銘じて、「残業を減らす」と決定することです。

 どうすれば残業が減るのか、その具体策は後で考えればいいので、まず減らすと決定する。

 社長が「どういう会社にするか」を明確にしなければ、会社を変えることはできません。

 地域に密着して葬儀をサポートする株式会社マキノ祭典(東京都/葬儀)の牧野昌克社長も、「残業問題には、社長の決意が絶対に必要」と力説しています。

「残業問題に限らず、会社を変えたいと思うなら、社長自身が『何が何でもやる!』と思わないと、絶対にうまくいきませんよ」(牧野社長)

 葬儀社は基本的に、365日24時間対応で、宿直があります。
 夜中に依頼があってもなくても、宿直の社員に手当を払うため、人件費がかかる。
 また、社員の健康面にも負担を強いる。
 どの葬儀社にとっても、宿直は大きな課題です。

「私も、月に1回は宿直をしています。なぜなら、宿直をしないと、現場の感覚がわからなくなるからです。実際に自分も宿直をすれば、『ラクじゃない』ことがわかる。夜中に何度も電話を受けると、社員の苦労がわかる。苦労がわかるから『絶対に改善しなければいけない』『ゆくゆくは宿直をやめにしたい』という決意を持てます」(牧野社長)

 現在、マキノ祭典では、残業や宿直を減らすための取り組みを始めています。

「まだ完璧にできていませんが、『フレックスタイムを導入してお通夜の当日はお昼出勤にする』『バックヤードをIT化して事務作業の手間を省く』『社員とパートの仕事の役割を見直す』といった工夫をして、就業時間が長くならないように気を配っています。
 また、将来的には、「夜間専門グループの立ち上げ」や「夜間運搬のアウトソーシング化」なども検討しています」(牧野社長)

「スーパーウルトラブラック」から
「ロマンスグレー」企業へ

 株式会社プリマベーラ(群馬県/リサイクル)は、群馬県を中心にリサイクルショップを多店舗展開しています。

 吉川充秀社長は、「残業をなくすには、社長の決意を『数字』で示すことが必要」だと考え、経営計画書に数字を明記しています。

「かつては月に100時間以上残業する社員もいて、スーパーウルトラブラック企業でした。
 そこで2年前に、私の決意として、経営計画書に『月に100時間以上働いてはいけない』と明文化しました」(吉川社長)

 そこで、吉川社長は、残業時間の見える化に取り組みます。

「言葉は悪いのですが、月に100時間以上働いている社員を『吊るし上げる』ことにしたんです。
 店長会議のときに、『今月の100時間オーバーは、この人とこの人!」と名前をデカデカと書き出して、公開処刑にしました(笑)。
 さらに、100時間以上働いた社員には、改善計画書を提出させた。
 すると、さらし者にはなりたくないし、改善計画書を書くのも面倒なので、100時間をオーバーしないように仕事のやり方を工夫するようになりました。2ヵ月連続で公開処刑された社員は、ほとんどいません」(吉川社長)

 社長の決意を数字で示し、そして、それが実行されているかをチェックした結果、プリマベーラの労働環境は改善されています。

「まだホワイト企業になったとは言い切れませんが、白と黒の間の『ロマンスグレー企業』にはなれたのかもしれませんね」(吉川社長)

 その後、大幅に残業改革が進み、2016年10月、月間平均残業時間がなんと45時間になりました。

小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/
http://diamond.jp/articles/-/109554

 
人類は絶滅を逃れられるのか
【第4回】 2016年12月8日 スティーブン・ピンカー,マルコム・グラッドウェル,マット・リデレー
近代化が人類にもたらした10の進歩とは
核戦争、人口爆発、異常気象、AIの爆発的進化、テロリズムの跋扈……人類の未来を待っているのは繁栄か、滅亡か。スティーブン・ピンカー(『暴力の人類史』)、マルコム・グラッドウェル(『ティッピング・ポイント』)、マット・リドレー(『繁栄――明日を切り拓くための人類10万年史』)ら知の巨人たちが21世紀の未来の姿を描き出します。11/25刊行の新刊『人類は絶滅を逃れられるのか――知の最前線が解き明かす「明日の世界」』からそのエッセンスを紹介します。第4回はスティーブン・ピンカーが近代における人類が爆発的進歩を遂げた10の領域について語ります。


人類の爆発的進歩リスト10

スティーブン・ピンカー 今後世界がどうなるか見極める唯一の方法は、事実とデータに基づき、いいことと悪いことの発生率を経時的にグラフに示し、その軌道がどこに向かっているか見定め、何がその軌道に影響を与えているか探ることです。それもカナダのような幸運な場所だけでなく、世界全体を見ることです。私はこの手法に基づき、人類に起きた10のいいことをリストアップしてみました。

第一に、寿命。150年前、人間の寿命は30年でしたが、今は70年で、まだ伸びそうです。

第二に、健康。ウィキペディアで天然痘と牛疫を調べてみてください。「牛疫は感染症だった」と、過去形で書かれているはずです。つまり人類に最大級の苦痛をもたらしてきた二つの原因は、永久に撲滅されたのです。近いうちに同じことが、ポリオとギニア虫症(メジナ虫症)にもいえるようになるでしょう。鉤虫症、マラリア、フィラリア症、はしか、風疹、フランベジア(イチゴ腫)も大幅に減っています。

第三に、豊かさです。200年前、世界の人口の85%は極貧生活を送っていました。それが今は10%に低下しています。さらに国連によると、この割合は2030年までにゼロになりそうです。どの大陸でも、労働時間は短くなり、より多くの食料、衣服、電気、娯楽、旅行、電話、データ……それにビールを買えるようになりました。

第四に、平和。人間の最も破壊的な活動、すなわち大国間の戦争は廃れつつあります。
先進国間の戦争は70年、超大国間の戦争は60年間起きていません。内戦は相変わらずありますが、数は減っていますし、国家間の戦争ほどの破壊性はありません。私の襟についているこのピンは、今週初めに訪れたコロンビアで買った物です。コロンビアは西半球で最後の内戦に終止符を打とうとしています。

世界の戦争による死亡率は、ギザギザの下降線を示しています。第二次世界大戦中は10万人中300人でしたが、1950年代には22人、1970年代には9人、1980年代には5人、1990年代は1.5人、2000年代には0.2人と減っています。シリア内戦の勃発後も、2000年代のレベルに戻ったにすぎません。

第五は安全です。世界の暴力犯罪の発生率は低下しています。それも多くの場所で大幅に主な犯罪学者の間では、向こう30年間で世界の殺人発生率は現在の半分に減ると見られています。

人類は漸進し続ける

第六に、自由。逆行している国はありますが、世界の民主主義指数は史上最高です。世界の人口の60%以上がオープンな社会に住んでいます。こちらも史上最高です。

第七に、知識。1820年、基礎教育を受けている人は17%にすぎませんでしたが、現在は82%に上昇し、急速に100%に近づいています。

第八に、人権。世界的なキャンペーンが展開されてきたこともあり、児童労働、死刑、人身売買、女性に対する暴力、女性の性器切除、そして同性愛を犯罪と見なす国は大幅に減ってきました。歴史が手掛かりになるならば、こうした野蛮な慣習は、人身供犠、人肉食、赤ん坊の間引き、奴隷、異端者の火あぶり、拷問処刑、公開絞首刑、借金の形としての強制労働、決闘、ハーレム、宦官、奇形を見世物にすること、てん足、精神障害者を笑い者にすること、……それにホッケーのエンフォーサー(乱闘専門の大型プレーヤー)と同じ運命をたどるでしょう。

第九に、男女平等。世界的なデータを見ると、女性の教育水準が高まり、婚期が遅くなり、所得が増え、権力や影響力のある地位に就くことが増えていることがわかります。

最後に、知性。すべての国で、知能指数は10年で3ポイントのペースで上昇しています。

人類の未来に悲観的な人たちは「ちょっと待った。破滅的な出来事はいつ起きてもおかしくない。そうなれば、こうした進歩もストップするか、後退するんだぞ」と言うでしょう。しかし、おそらく戦争を別にすれば、これらの指標のいずれも、株式市場のようなバブル崩壊や数値の急落には見舞われないでしょう。その進歩は少しずつ積み重なってきたもので、各分野の進歩が別の分野の進歩を刺激してきました。

豊かな国ほど、環境を改善し、犯罪組織を監視し、市民を教育し、医療を提供する資金的余裕がある。教育水準が高く、女性のエンパワーメントが進んだ世界は、独裁者に支配されたり、愚かな戦争に関わりにくい。これらの進歩を後押しする技術革新は加速する一方です。現在もムーアの法則は有効であり、ゲノミクス、神経科学、人工知能、材料科学、データに基づく政策立案が急速に増えています。

では、SF小説に出てくるディストピア(ユートピアとは反対の暗黒の世界)は到来しないのか。サイボーグの暴走やナノボットの氾濫は、おおむね空想にすぎません。おそらく2000年問題のように、大騒ぎしたわりには大した問題にはならなかった「テクノパニック」と同じ運命をたどるでしょう。

それでも懸念するべき深刻な問題は二つありますが、どちらも解決可能です。まず核の第三次世界大戦や、ハリウッド映画的な核テロリズムの問題。これらが起きる「予言」はされてきましたが、世界では長崎への原爆投下以来、核兵器が使用されたことはありません。冷戦は終結し、イランを含め16ヵ国が核開発を断念し、世界の核弾頭数は80%以上減りました。

2010年には流出核と核分裂性物質の供給を禁止する国際的な合意もありました。こうした過去70年間のトレンドを、さらに数十年持続すればいいのです。すでに核兵器の段階的削減に向けたロードマップは、ロシアとアメリカを含む主要国首脳が原則的に受け入れています。
http://diamond.jp/articles/-/110586

http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/244.html

[経世済民116] 中国もインフレ輸出国に変身へ−世界的な物価上昇に拍車の恐れ 輸入2年ぶり大幅な伸び、輸出8カ月ぶり増 人民元、対ドル下落
中国もインフレ輸出国に変身へ−世界的な物価上昇に拍車の恐れ
Bloomberg News
2016年12月8日 12:18 JST

中国PPI上昇率は来年6%に達すると予想−コモンウェルス銀
製品価格への転嫁が始まれば来年すぐにも物価押し上げ−メドレー

世界の工場である中国の新たな輸出品、それはインフレだ。しかもその輸出拡大ペースは、多くの人がわずか数カ月前に想定していたより速い。
  人民元安に加え、重要な共産党大会を来年に控えて堅調な経済成長確保を狙う景気刺激策や商品相場の回復で、中国の生産者物価指数(PPI)が押し上げられている。PPIは9月、4年半ぶりに上昇に転じ、10月は前年同月比1.2%上昇となった。9日発表される11月のPPIは市場予想では同2.3%上昇と、前月のほぼ倍の伸びになる見通しだ。
  上昇ペースは来年さらに加速するとみられている。JPモルガン・チェースは2017年1−3月(第1四半期)に上昇率が4%に達すると予想。コモンウェルス銀行は7−9月(第3四半期)にはピークの6%を付けるとの見方を示している。
  PPI上昇はアジア全域に築かれた中国の大規模なサプライチェーンに波及し、ニューヨークからニュージーランドに至る世界の消費者向け市場に影響を及ぼすことになる。またこの上昇は、最近の原油高やトランプ次期米大統領が財政・インフラ支出拡大を準備している中での世界的なリフレ観測の高まりにも重なる。
  ヘッジファンドや機関投資家への助言を行うメドレー・グローバル・アドバイザーズの中国調査責任者アンドルー・ポーク氏(北京在勤)は「中国メーカーがいったんコスト上昇分を製品価格に転嫁し始めれば、世界的な物価上昇の動きにすぐに拍車が掛かる可能性がある。それは17年のごく早い時期に起きるはずだ」と述べた。

原題:China’s Swing to Exporter of Global Inflation Is Gathering Pace(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHUGWL6JTSEM01


 

中国:11月の輸出、8カ月ぶりに増加−輸入は2年ぶり大幅な伸び
Bloomberg News
2016年12月8日 13:11 JST 更新日時 2016年12月8日 14:08 JST

ドル建て輸出は前年同月比0.1%増、輸入は6.7%増
対米・EU輸出は共に増加に転じる

中国の輸出は11月に8カ月ぶりに増加した。人民元安が寄与した。輸入は2年ぶりの大幅な伸びとなった。
  税関総署が8日発表したドル建て貿易統計によれば、11月の輸出は前年同月比0.1%増。輸入は6.7%増。この結果、貿易黒字は446億ドル(5兆600億円)となった。ブルームバーグの調査では輸出は5%減、輸入は1.9%減が見込まれていた。
  キャピタル・エコノミクスのシンガポール在勤エコノミスト、ジュリアン・エバンスプリチャード氏は「今回の中国貿易統計が予想を上回る結果となったことは、世界的な需要増のほか、国内経済の勢いが引き続き強いことを反映している」と指摘。その上で「今回はポジティブサプライズとなったものの、中国の貿易の中期的見通しは依然として厳しい」と述べた。
  中国の最大の貿易相手国である米国への輸出は6.9%増、対欧州連合(EU)輸出は5.1%増と、共にプラスに転じた。
原題:China Exports Edge Up as Imports Increase Most in Two Years (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHULP66JIJVI01


 

〔上海外為〕人民元、対ドルで下落=ドル需要増で(8日中盤)【12/8 14:11】
【上海ロイターES=時事】8日中盤の上海外国為替市場では、人民元が対ドルで下落した。企業のドル需要に圧迫された。

中国人民銀行(中央銀行)は取引開始前、人民元の対ドル基準値を1ドル=6.8731元に設定。前日6.8808元より元高・ドル安水準だった。

人民元のスポット(直物)相場は6.8796元で寄り付いた後、正午ごろ時点で、前日終値比70ピップ元安・ドル高、基準値比0.09%元安・ドル高の6.8790元で推移している。

トレーダーは、企業のドル需要の旺盛さを指摘。中国当局は前日、11月の外貨準備高の減少幅が予想を上回り、約6年ぶりの低水準に落ち込んだと発表した。

8日のドル需要の高まりを受けて、大手国有銀行はオンショア市場でドルの流動性供給継続を余儀なくされた。

上海の中国系銀行のトレーダーは「国有銀行は手玉を温存するために戦略変更した。今は日中の引け(午後4時半)が近づくにつれてドルの売却を増やしている」と説明した。

トレーダーはまた、人民銀が元のスポット相場安定化の取り組みを緩める見込みや、年内に元安観測が後退する見込みがほとんどないとも指摘した。


 

〔シドニー外為・債券〕豪ドル・NZドルとも上昇=リスク志向強まる(8日午後)【12/8 12:59】
【シドニー・ロイターES=時事】8日午後のオセアニア外国為替市場では、株高を受けてリスク志向が強まる中、オーストラリア・ドルとニュージーランド・ドルがともに対米ドルで上昇。NZドルは対円で11カ月ぶり高値を付けた。

豪ドルは1豪ドル=0.7490米ドルに上昇し、前日に付けた安値0.7417米ドルから戻している。

前日発表された第3四半期の豪実質GDP(国内総生産)は5年ぶりの前期比マイナス、この日発表された10月の豪貿易収支は15億豪ドル以上の赤字と、ともに予想を下回る弱い内容だったにもかかわらず、豪ドルは底堅く推移している。

一方で、オーストラリアの主要輸出品である鉄鉱石や石炭の価格は中国からの旺盛な需要で上昇基調にあり、このことが弱いGDP統計がさほど材料視されない理由だとの専門家の指摘もある。

コモンウェルス銀行(CBA)のストラテジストは「豪ドルはGDPの伸び率よりもコモディティ価格のトレンドの影響を受けやすい」と述べた。

豪ドルはこの日、一時0.75米ドルの抵抗線を突破し、3週間ぶり高値を付けた。

対円では1豪ドル=85円付近と7カ月ぶり高値圏で推移している。

NZドルは1NZドル=0.7200米ドル前後に上昇。1カ月ぶり高値を付ける場面もあった。

リスク志向の改善に加え、ニュージーランド準備銀行(RBNZ、中央銀行)のウィーラー総裁が経済について楽観的な見通しを示したとも支援材料となった。

豪国債先物は上げ幅を拡大。3年物が1ティック高の98.100、10年物は5.5ティック高の97.2900。

情報提供:株式会社時事通信社



http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/495.html

[経世済民116] TOPIX11カ月ぶりに1500回復、グローバルにリスク  欧州が最大リスク、来年も眠れないトランプ時代のブラックスワン
TOPIX11カ月ぶりに1500回復、グローバルにリスク資産評価の動き
長谷川敏郎
2016年12月8日 07:57 JST 更新日時 2016年12月8日 12:01 JST
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電力、通信株が上昇率上位、内需出遅れ業種も水準訂正
債券から株式へのグレートローテーションの可能性も

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i0.0PxbMZ90c/v2/1200x-1.png

8日午前の東京株式相場は3日続伸し、TOPIXが11カ月ぶりに1500ポイントを回復した。米国景気の回復期待などから、グローバルにリスク資産への資金流入が強まっている。自動車など輸出株、保険や証券など金融株、情報・通信株が高い。原子力発電所の再稼働期待などで電力株の上げも目立った。
  TOPIXの午前終値は前日比11.69ポイント(0.8%)高の1502.31で、1500乗せは1月6日以来。日経平均株価は152円34銭(0.8%)高の1万8649円3銭。
  いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、「グローバル投資家はデフレを前提としたポートフォリオを組んでいたが、減税とインフラ整備による米景況感の改善でリフレ前提へややポジションを調整し、リスク資産に資金を振り向けている」とみる。米国と同様、まだ上昇相場が続くと想定する投資家がリスク資産に資金を振り向けるなら、日本でも「情報・通信など内需の出遅れ物色スタンスとなるのはリーズナブル」とも話した。
東証内
東証内 Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  トランプ米次期政権の経済政策が一段と景気を加速させるとの見方が根強く、リスク資産への資金流入が鮮明だ。7日の米国株は、大統領選挙後の上昇相場に通信株と不動産株の上げも加わり、S&P500種株価指数とダウ工業株30種平均が最高値を更新した。通信株の代表であるAT&Tは1年ぶりの上昇率を記録。欧州でもドイツDAX指数やフランスCAC40指数が長期もみ合いから上放れた。
  米景気の回復傾向や為替の円高トレンドが終了したとの見方から、国内でも業績改善期待が勢いづいている。野村証券によると、14日公表の日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)で大企業・製造業の業況判断DIは9月調査の6から12、大企業・非製造業は18から19へ改善する見込みだ。輸送機械や鉄鋼・非鉄金属、金属・機械で改善が大きくなると予想している。
  みずほ証券の倉持靖彦投資情報部長は、「トランプノミクスの米国に加え、カナダや欧州、日本など世界的に構造改革に資する財政政策や規制緩和によるプロビジネスを評価する流れがある」と指摘。足元の欧州株の動きがそれを象徴しており、「債券から株式へのグレートローテーションが構造的に起こり得る状況」と言う。2017年から18年へ向けてのマクロ環境の改善が後押しする格好で、18年までをターゲットとした場合、TOPIXの1500回復は「まだ3分の1から道半ば」との認識を示した。

  東証1部33業種では、電気・ガスや情報・通信、保険、証券・商品先物取引、輸送用機器など28業種が上昇。九州電力の川内原発1号機の発電再開予定は11日となった。電力、通信の公益セクターが上昇率1、2位を占めた点について、みずほ証の倉持氏は「米金利が低下し、出遅れの公益株が買われた米国と同様の流れ」とみていた。一方、トランプ米次期大統領が価格引き下げ姿勢を示した流れが響いた医薬品のほか、サービス、不動産など5業種は下落。
  売買代金上位ではソフトバンクグループ、政府が融資枠拡大方針を固めたと共同通信などが報じた東京電力ホールディングスが大幅続伸。野村証券が投資判断を下げた明治ホールディングス、月次売上高が減少した電通は安い。東証1部の売買高は13億8523万株、売買代金は1兆5676億円。値上がり銘柄数は1086、値下がりは758。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-07/OHU6YZ6K50XV01


 


 


7−9月GDPは年率1.3%増に下振れ、新基準で算出−内閣府
日高正裕
2016年12月8日 09:12 JST 更新日時 2016年12月8日 12:17 JST

設備投資は0.4%減と速報値から下方修正
15年度の名目GDPは旧基準に比べ31.6兆円膨らむ

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/i5LWWYO6Vrh8/v2/-1x-1.png

7−9月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前期比年率1.3%増と速報値(2.2%増)から改定された。設備投資が下方修正されて全体を押し下げた。
  内閣府は今回の改定値からGDP算出に新基準を適用して発表した。7−9月期のGDP改定値は、前期比では0.3%増となった。速報値は0.5%増だった。ブルームバーグの予想中央値は前期比0.5%増、年率2.3%増だった。
  需要項目別では、設備投資が前期比0.4%減と速報値(横ばい)から下方修正された。全体の約6割を占める個人消費は同0.3%増と速報値(0.1%増)から上方修正された。財務省が1日発表した7−9月期の法人企業統計によるとGDP改定値に反映されるソフトウエアを除く設備投資は季節調整済み前期比で0.4%増。前期比では1.3%減だった。
アニマルスピリッツが減退
  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは「企業部門、特に設備投資が弱い。企業のアニマルスピリッツみたいなものが減退しており、設備投資に対して慎重になっている」と指摘。「企業は多少円安になっても、期待成長率が低いためなかなか設備投資を増やせない」と述べ、トランプ氏の米次期大統領就任が決まっても「日本の潜在成長率の上昇要因にはなっていない」としている。
  改定値では、在庫のGDP全体に対する寄与度がマイナス0.3ポイントと速報値(マイナス0.1ポイント)から引き下げられた。輸出から輸入を差し引いた純輸出(外需)の寄与度もプラス0.3ポイントと速報値(プラス0.5ポイント)から下方修正された。公共投資は0.1%増と速報値(0.7%減)から引き上げられた。4−6月期のGDPは年率0.7%増から1.8%増に上方修正された。

新基準で名目値がかさ上げ
  内閣府は、7−9月期のGDP2次速報から基準年を2005年から11年に変更、国民経済計算の最新の国際基準「2008SNA」に対応して1994年にさかのぼって再推計した。これまでGDPに含まれなかった研究・開発(R&D)費を設備投資や公共投資として加算したことなどにより、15年度の名目GDPは計532.2兆円と、旧基準から31.6兆円押し上げられた。増加分の内訳は基準改定によるものが24.1兆円、それ以外が7.5兆円。
 
  R&Dの加算によるかさ上げが19.2兆円だったほか、四半期ごとのデータからより確度の高い年次推計への変更に伴い個人消費が上方修正されたことなどが寄与した。15年度の名目GDPは旧基準ではリーマンショック前の07年度を下回っていたが、新基準ではこれを上回った。年度では引き続き1997年度がピークだが、四半期ベースでは今年7−9月期が97年10−12月期を上回り過去最高を更新した。
  明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは新基準の適用後も、「日本経済の基本的な絵姿は変わらない。日本経済の姿を一変させるようなものはない」と指摘。「基本的には、アベノミクス以降、日本経済は緩やかな回復基調にある」としている。
  先行きについて小玉氏は、輸出や生産が回復し緩やかな回復が続くとみており、経済対策の効果も出てくるという。もっとも、「賃金が伸びていないので消費の回復は力強さに欠ける。企業も設備投資に慎重姿勢だ」と指摘。回復は「力強さに欠けるだろう」としている。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHSNA86JTSEG01

 

 

欧州が最大リスクか、来年も眠れない−トランプ時代のブラックスワン
Andre Tartar、Flavia Krause-Jackson
2016年12月8日 07:03 JST 
政府の安定性をめぐりギリシャが欧州大陸最大の懸念材料か
トランプ外交で生じる「空白」の結果が17年の最大リスクとの見方も
 
何十年も世界の政治的な安定の「とりで」と考えられてきた米国と欧州が、今や政治リスクを他の地域に輸出しようとしている。
  ブルームバーグの年次調査でアナリストやエコノミスト、ストラテジスト146 人が示した意見を集約すると、このような分析が導き出される。来るべき年に夜も眠れないほど彼らを心配させる心配の種とは何か。ブルームバーグがまとめる毎年恒例の「ペシミストガイド(悲観論者の手引書)」にその所見が反映されている。
  英国民投票での欧州連合(EU)離脱の選択と、ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利が、地政学的な天空を今年激しく動揺させたが、不確実性が周辺国や新興市場から先進諸国にシフトする状況で、これら2つは投資家を待ち受けているわなのほんの一例にすぎないだろう。
  来るべき年もペシミストは世界中で不安の種に事欠かない。われわれの調査結果を地域別に見ていくことにしよう。
欧州
  英国のEU離脱の選択に続き、欧州はさらなる衝撃の震源となる可能性がある。危機管理を専門とするコンサルティング会社ベリスク・メープルクロフトは、今後3年の政府の安定性に関する分析で、ギリシャが欧州大陸最大の懸念材料になると予測。他の警戒を要する国として、ポピュリスト的な理念が最近勝利を収めた英国とポーランドを挙げた。
  ブルームバーグの調査では、フランスの大統領選やドイツの総選挙など欧州で予定される国政選挙が、トランプ次期米大統領の外交政策に匹敵する不安材料と認識されていることが分かった。アナリストらの回答をさらに詳細に分析すると、英国の総選挙が前倒しで実施される可能性に備えている回答者が多いことも明らかになった。
移民反対のFNルペン党首
移民反対のFNルペン党首 Photographer: Christophe Morin/Bloomberg
  レール・カピタル・セキュリティーズのエコノミスト、エンベル・エルカン氏によると、欧州の政治不安の可能性が最大のリスクであり続けることは間違いない。具体的にはフランス大統領選で移民に反対する極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首が当選し、反EU・反グローバリゼーションのアジェンダを推進するリスクや、イタリアの政治危機を指摘した。
米州
  トランプ次期米大統領の将来の政策をめぐる不透明感が、世界の安全保障にとって単独の最大のリスクだと考える回答者は、全体の38%を占めた。メキシコ国境の壁は最も実現しそうにない選挙公約の一つと受け止められているが、中国製品への関税や北米自由貿易協定(NAFTA)の解消、不法移民の強制送還はいずれも可能性が幾分高いと考えられており、専門家は圧倒的にトランプ氏が減税を実行すると確信している。
  ボルタン・キャピタル・マネジメントのアリソン・グラハム最高投資責任者(CIO)は、外交紛争の仲介役の役割をトランプ次期大統領が放棄することで生じる「空白」の結果こそが、2017年の最大のリスクになるとの見方を示す。グラハム氏は「トランプ氏の米大統領選出が地域の権益をより積極的に追求できる好機になるとロシアと中国は解釈している。欧州および中東諸国は、軍事的安全保障に自ら対処せざるを得なくなり、いずれも不安定さが増すだろう。個人攻撃を行い、対立をエスカレートさせるトランプ氏の傾向は、グローバル危機が進行しているという不安感をあおるだろう」と分析した。
ブラックスワン
  ニューヨークの独立系グローバルマクロ調査会社ナイトバーグの専門家に「ペシミストガイド」の議論に加わり、可能性の度合いを評価するよう依頼したところ、仏大統領選でルペン氏が当選する可能性を相当深刻に捉えるべきだとしながらも、「まず起こりそうにないと考えられる」2つのシナリオも同時に示した。それは「ハードBrexit(強硬なEU離脱)」の結果、メイ首相が退陣を余儀なくされ、イングランド銀行(英中央銀行)の独立性に終止符が打たれる事態と、米中の通商戦争勃発(ぼっぱつ)だった。
原題:Finding Risk in All the Wrong Places as Trump Era Begins
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-07/OHSWHU6K50XU01


 


ドラギECB総裁会見を市場は精査へ、QE最終プランのシグナル探る
Carolynn Look、Alessandro Speciale
2016年12月8日 12:35 JST
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ECBはフランクフルト時間8日午後1時45分に政策発表
市場はQEの期間延長を見込むも終了時期のヒントを期待

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ijSZXHXxNDhA/v2/1200x-1.png

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁による年内最後の政策発表は、ECBウォッチャーたちに最大の洞察力を求めることになるかもしれない。
  広く予想されているのは月額800億ユーロ(約9兆8000億円)の資産購入プログラムを半年間延長することだが、もっと重要なのは、ドラギ総裁が量的緩和(QE)のその後の道筋に関して出すかもしれない何らかのシグナルだろう。ブルームバーグが調査したエコノミストらは、何らかの新たな動きを最後にその後は債券購入の縮小が始まると指摘している。
  ドラギ総裁を含めECB当局者は、金融政策のスタンスがいずれはもっと伝統的な状態に戻るものの、そのペースはユーロ圏の景気回復を促進する各国政府の貢献に左右されると幾度も強調。しかし、域内の一部主要国で今後選挙が予定されるため構造改革の余地は限られているほか、ポピュリズム(大衆迎合主義)の高まりで欧州統合への支持も弱まりつつある状況だけに、ECBは異例の措置をもう少し長く続ける可能性もある。
  ドラギ総裁の記者会見ライブ中継をメッセージ通知するための設定はここをクリックしてください。

  ソシエテ・ジェネラルのグローバル・ストラテジスト、キット・ジャックス氏は「私がドラギ総裁の立場だったら、詳細について曖昧にして言質を与えないように努めるだろう」と述べ、「先行き不透明感を高めない形で欧州の為替・債券市場に将来の債券購入縮小への準備を整えさせるため、現時点と向こう数カ月はバランスを取る技を見せることになる」と語った。
  ECBはフランクフルト時間8日午後1時45分(日本時間同9時45分)に政策決定を発表する。ドラギ総裁はその45分後に記者会見する。ECBはまた、経済成長とインフレに関する最新の見通しを公表する予定で、2019年の見通しが初めて盛り込まれる。
  ECBの政策発表と総裁記者会見に関するトップライブブログ(英語)をフォローするにはここをクリックしてください。
  ドラギ総裁は先週公表されたインタビューで、QEの期間は延長するが購入は減らす可能性を示唆した。ただ総裁がどんな選択をするにせよ、エコノミストと投資家はその後の展開に注目する可能性が高い。

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https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/it_50J7gLd0s/v1/-1x-1.png

  
原題:Draghi’s Stimulus Message Set to Be Scanned for Ultimate QE Plan(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHUIH46S972H01


 

メリルが富裕層顧客の紹介ノルマ強化−達成できないと1%報酬カット
Laura J. Keller
2016年12月8日 11:51 JST 
米銀バンク・オブ・アメリカ(BofA)傘下のメリルリンチ・ウェルスマネジメント部門では、報酬カットを免れるためにアドバイザーらは年間最低1人の顧客を他の部門の銀行サービスに紹介する必要があったが、このノルマが来年から2人に増える。
  BofAの広報担当スーザン・マッケーブ氏は、ウェルスマネジメント部門のブローカーらに課されるノルマの人数が増えることを明らかにした。同氏によれば、新たなビジネスにつながったかどうかにかかわらず、アドバイザーらは紹介の対価としてクレジットを受け取るという。
  低金利と規制強化が利益を損なう状況で、銀行は富裕層顧客からの収入拡大に動いている。BofAのブライアン・モイニハン最高経営責任者(CEO)は同行のウェルスマネジメント部門について、内部で顧客を紹介する潜在力をごく表面的にしか活用していないと昨年の段階で述べていた。
  業界メディアのアドバイザーハブが6日伝えたところでは、顧客紹介の新たなノルマを達成できない場合、手数料収入が35万ドル(約3970万円)を下回るメリルリンチのブローカーは手取り額の1%、より上位のブローカーは繰り延べ報酬の同様の割合がそれぞれカットされる見通し。
原題:BofA Increases Referral Quota for Merrill Lynch Wealth Advisers(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHUGNI6KLVRC01


http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/496.html

[経世済民116] 米大統領が経済の重力に逆らうとき ソフトバンクとトランプ取引の裏 孫資産830億円増 金融政策が為替を決める 17年市場
米大統領が経済の重力に逆らうとき
トランプ氏は先人の教訓を学ぶか、強引に雇用を維持することは困難
ENLARGE
キヤリア社の工場を訪れたドナルド・トランプ次期大統領(右)とマイク・ペンス次期副大統領(1日、インディアナポリス) PHOTO: EVAN VUCCI/ASSOCIATED PRESS
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GREG IP
2016 年 12 月 8 日 12:18 JST
――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
***
 1960年代半ばに米国のインフレ率が急上昇し始めた際、当時のリンドン・ジョンソン大統領はインフレ率を抑えるために全力を注いだ。靴の価格が上昇すれば皮革に輸出規制を設け、テレビの価格を上げないよう家電メーカーRCAの説得を試み、木材の値上がりを防ぐために連邦政府による木製家具の購入を中止した。さらに、卵の値段が上がった際には公衆衛生局長官にコレステロールに対する警告を出させたりもした。
 これらの指示の実行責任者だった側近のジョセフ・カリファノ・ジュニア氏は何年もたった後に当時を振り返り、「ジョンソンはあらゆる手を打った。インフレの洪水を防ぐため、経済の堤防にあいた大量の穴に親指を入れて止めようとするオランダの男のようだった」と話した。
 インフレはそれでも止まらなかった。ジョンソン大統領はその根源となっている問題に取り組まなかったからだ。その問題とは、膨れあがる連邦債務と緩い金融政策である。
 製造業の雇用維持を図ろうとしているドナルド・トランプ次期大統領はいずれどこかの時点で、ジョンソン氏と同じことを学ぶだろう。重力が経済をある方向に引っ張っているときには、大統領がどれだけ電話をかけたり、脅したり、ツイートに投稿したりしようが、別の方向に押すことはできない。

主要9カ国の雇用に占める製造業の割合の推移
https://si.wsj.net/public/resources/images/NA-CM627A_CAPAC_16U_20161207111207.jpg

 トランプ氏は先週、米複合企業ユナイテッド・テクノロジーズ傘下の空調大手キヤリアがインディアナ州にある工場の800人分の雇用をメキシコに移す計画だったのを、公然と辱めて思いとどまらせた。だが、外国で生産すれば安上がりになる製品をすべての企業に米国で製造させることはできない。バラク・オバマ大統領が損失になるだけの医療保険を売り続けるよう保険業者を説得できないことや、高価すぎる電気自動車(EV)を購入するよう消費者を説得できないのと同じだ。
 トランプ氏による圧力戦術はメキシコの労働集約的な製造業の比較優位性を打ち消すことはできない。それどころか米大統領選後にペソが下落したおかげで、メキシコでの製造が10%安上がりになっている。だがトランプ氏の戦術は、特別な優遇策の要求を企業に促すことになるだろう――たとえそれが消費者や納税者の負担になるとしても。
 過去の保護主義は国内企業ではなく外国企業に狙いを定めるのが通例だった。とはいえ、トランプ氏を待ち受けるものを知る手引きとして役立つ。1977年に当時のジミー・カーター大統領は米国のテレビメーカーを守るため、日本製テレビの輸入を規制した。その結果、日本製テレビの売り上げは落ちたものの、韓国製や台湾製の販売は伸びた。韓国製や台湾製の輸入が規制されると、今後はメキシコやシンガポールからの輸入が増えた。日本や台湾の企業は輸入規制を受けないサブアセンブリー(部分組み立て品)を米国に持ち込み、米国内でテレビの完成品を製造し始めた。
 カーター大統領が台湾や韓国からの靴に輸入制限を設けた際、両国は製品の品質を向上させ、そのため靴の販売高は伸びた。どの産業も期待された雇用の回復は実現しなかった。一部の業種では雇用が減った。
 「保護措置に対する市場の反応は、時にその意図された目的を著しく損なうことがある」。全米経済研究所(NBER)が1988年に発表した研究の中で、ロバート・ボールドウィン氏とリチャード・グリーン氏はそう結論づけている。
 似たようなことは2009年にオバマ大統領が中国製のタイヤに関税を課した際にも起こった。中国製のタイヤは減ったものの、他の国からの輸入品が急増したのだ。ピーターソン国際経済研究所によると、この件で最大1200人分の雇用が守られた一方、タイヤの値上がりにより雇用1人分あたりの消費者の負担は90万ドル(約1億円)に達した。
 トランプ氏の戦術はこれとは異なるものの、同じ結果になる可能性が高い。どんな企業であれ、高いコストがかかる工場を稼働させ続けるよう圧力を受ければ、安い輸入品と対抗するために基準を下回る利益に甘んじるか、もしくは市場シェアを失うかの二者択一を迫られることになる。不要な資産を何らかの方法で捨てる企業も出てくるだろう。例えば事業の閉鎖や、雇用や賃金の削減に罪悪感をさほど持たない、LBO(レバレッジド・バイアウト)による買収を専門とする企業への売却などだ。
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米インディアナ州はユナイテッド・テクノロジーズ傘下の冷暖房機器メーカー、キヤリアが約1000人の雇用をインディアナ内に維持するのを奨励するため、10年間にわたり700万ドル(約8億円)相当の減税措置を講じることで合意した。WSJのジェイソン・ベリーニ記者が解説(英語音声、英語字幕あり) Photo: Getty
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ドナルド・トランプ次期大統領はキヤリアやボーイングをはじめとする企業の決断に影響を与えようと強引な言動をしている。WSJワシントン支局のジェラルド・F・サイブ支局長が解説(英語音声、英語字幕あり)Photo: AP
 キヤリアがインディアナポリスの工場で製造しているガス炉はローテク製品であり、米国で製造する比較優位性はない。これと対照的なのが、同社と同じくユナイテッド・テクノロジーズ傘下のエンジン大手プラット・アンド・ホイットニー(P&W)がコネティカット州で製造している航空機用の高度なエンジンだ。P&Wは向こう数年内に従業員を8000人増員する計画だ。
 インディアナ州はキヤリアの工場を維持するために700万ドルの減税措置を約束したが、一般国民への本当の負担は別のところに表れるだろう。企業が大統領の意向をくむ際には、見返りを期待するものだ。トランプ氏側がユナイテッド・テクノロジーズの利益率の高い防衛関連事業の話を出したとは報じられていないが、暗黙の了解があったのかもしれない。
 同社のグレッグ・ヘイズ最高経営責任者(CEO)はCNBCテレビで5日、「私は夜に生まれたが、昨夜生まれたわけではない(それほど世間知らずではない)」と話した。同社が国防総省から次の契約をとろうとする際に、先週の合意を加味してほしいと思わないだろうか。仮に競合相手が雇用をアウトソースしていた場合に、同社はそれも考慮にいれてほしいと思わないだろうか。
 企業と政府による不透明かつ、その場しのぎの取り決めは縁故資本主義を生み出す。ブラジルの国営石油ペトロブラスは長年、地元から調達するよう義務づけられてきた。そのため財務面の体力が損なわれ、生産能力が伸びなかった。この「えこひいき」文化が、同社と政治家を巻き込んだ贈収賄スキャンダルの一因だ。
 米自治領プエルトリコ政府の依頼を受けて、同地域の経済を研究したエコノミスト、アン・クルーガー氏によると、プエルトリコの企業はほとんど全て、個別に税の優遇策を受けている。その結果、法人税の実効税率はわずか5%にとどまることが分かった。だがそうした優遇策をもってしても、ブラジルやプエルトリコの経済を停滞させてきた高い税率や規則、不十分な教育やインフラといった向かい風を克服できない。
 トランプ氏が本当に製造業の雇用を支えたいのであれば、製造業で空いている33万4000人分の雇用を埋めるために労働者をいかに訓練するかを考え出すことが必要だ。そこまでの辛抱がなければ、ただ関税をあまねく引き上げることになろう。そうなれば消費者が打撃を受け、貿易戦争が始まりかねない。だが少なくとも透明性は高い。
トランプ次期政権特集
• ソフトバンクとトランプ氏、取引の裏にある本当の理由
• トランプ氏のラブコール、台湾市民は戦々恐々
• トランプ氏が大統領専用機に立腹:早わかりQ&A
• 「トランプ相場」の可能性と危険性

https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjy6dTd9OPQAhXIm5QKHXkyAEAQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582483571000054392&usg=AFQjCNFJlyCoi1r73QzfYSQq8qGjpuQlRA


 

ソフトバンクとトランプ氏、取引の裏にある本当の理由

By JACKY WONG
2016 年 12 月 7 日 22:51 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 ドナルド・トランプ次期政権下の米国の雇用創出とはこのようなものだ。ロボットの人間支配という展望に活気づけられた日本企業がサウジアラビア政府から多額の資金を調達し、米国への積極的な投資を決める。トランプ氏はそれを自分の手柄にする。だが次期大統領の関与がなくとも結果は同じだった可能性が高い。

 ソフトバンクグループの孫正義社長との会談後、トランプ氏は同社が500億ドル(約5兆7000億円)を米国へ投じ、5万人の雇用を生み出すとツイートした。

 「われわれが選挙で勝利しなければ決してこうすることはなかったと『マサ』が言った」とも付け加えた。

 しかし、実際は大統領選で誰が勝とうとも米国への投資が決まった公算が大きい。1000億ドル規模のソフトバンク・ビジョン・ファンド設立が発表されたのは大統領選の1カ月近く前で、その時点ではトランプ氏の敗北を予想する声が大きかった。これだけの金額になると、世界で最も有望なハイテク企業が依然集中する米国に大半を投じることになりそうなものだ。会計事務所KPMGと調査会社CBインサイツによると、7-9月期にベンチャーキャピタルが集めた資金の投資先のうち6割が北米だった。

 米国への投資額とされる500億ドルには、借り入れで調達する資金も含まれる可能性がある。

 最も重要な問題は、いかにしてソフトバンクが元手を集めるかだ。サウジの政府系ファンド「公共投資ファンド(PIF)」は5年間で450億ドルを拠出する意向を示した。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」を組み立てる台湾の鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)も参加するかもしれない。ソフトバンク自身は少なくとも250億ドルの投資を約束しているが、83%出資する米携帯電話サービス大手スプリントを含めて1110億ドルもの純負債を抱える企業にとっては厳しい金額だ。

 中国の電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)の持ち株など、これまで投資してきた資産の一部売却で現金を手にする選択肢は当然ある。より好ましいのは、債務の重いスプリントを手放すことかもしれない。

 スプリントは2年前に国内同業のTモバイルUS買収を目指したが、規制当局の強い反対で断念した。

 この状況はトランプ政権の誕生で変わるかもしれない。トランプ氏は選挙活動中、通信大手AT&Tによるメディア大手タイム・ワーナー買収計画に異議を唱えたが、孫氏は少なくともTモバイルUSとスプリントの合併を再び模索するかもしれない。

 TモバイルUSとスプリントは全米展開する携帯電話サービス会社の中で最も規模が小さいため、合併は戦略的な理にかなう。だがTモバイルUSの時価総額は、スプリントが最初に買収を目指した2014年6月時点ほど割安ではない。TモバイルUSの株価はその後63%上昇し、逆にスプリントの株価は13%下落した。現時点ではスプリントが身売り側に回る方が合理的といえる。

 一つ警告しなければならない。スプリントとTモバイルUSの従業員数は合わせて8万人だ。合併に伴う人員削減は、ソフトバンクが創出するはずの雇用の一部を相殺するだろう。ここに、ソフトバンクとトランプ氏との取引における本当の技が見て取れる。

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トランプ氏との会談後、ソフバンク孫氏の資産評価額膨らむ−チャート
Tom Metcalf
 
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iprRDEFcL0oQ/v2/-1x-1.png

  ソフトバンクグループの孫正義社長とトランプ次期米大統領との6日の会談はタイミングが良く、価値のあるものだった。両者の会談で、孫社長が米国で創業間もない企業や新興企業に500億ドル(約5兆7000億円)を投資する意向を伝えたと報じられたことを受け、ソフトバンクグループの株価は7日、1年3カ月ぶりの高値に上昇。ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、孫社長の資産評価額は7億5500万ドル増えた。同社長の資産評価額は約120億ドルで日本で2位。首位はファーストリテイリングの柳井正会長兼社長で、孫氏を62億ドル上回る。
原題:Trump Meeting Adds $755 Million to Masayoshi Son’s Wealth: Chart(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHUEAM6TTDSL01

 


ソフトバンクとトランプ氏、取引の裏にある本当の理由
トランプ米次期大統領とソフトバンクの孫社長は6日に会談した
By JACKY WONG
2016 年 12 月 7 日 22:51 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 ドナルド・トランプ次期政権下の米国の雇用創出とはこのようなものだ。ロボットの人間支配という展望に活気づけられた日本企業がサウジアラビア政府から多額の資金を調達し、米国への積極的な投資を決める。トランプ氏はそれを自分の手柄にする。だが次期大統領の関与がなくとも結果は同じだった可能性が高い。

 ソフトバンクグループの孫正義社長との会談後、トランプ氏は同社が500億ドル(約5兆7000億円)を米国へ投じ、5万人の雇用を生み出すとツイートした。

 「われわれが選挙で勝利しなければ決してこうすることはなかったと『マサ』が言った」とも付け加えた。

 しかし、実際は大統領選で誰が勝とうとも米国への投資が決まった公算が大きい。1000億ドル規模のソフトバンク・ビジョン・ファンド設立が発表されたのは大統領選の1カ月近く前で、その時点ではトランプ氏の敗北を予想する声が大きかった。これだけの金額になると、世界で最も有望なハイテク企業が依然集中する米国に大半を投じることになりそうなものだ。会計事務所KPMGと調査会社CBインサイツによると、7-9月期にベンチャーキャピタルが集めた資金の投資先のうち6割が北米だった。

 米国への投資額とされる500億ドルには、借り入れで調達する資金も含まれる可能性がある。

 最も重要な問題は、いかにしてソフトバンクが元手を集めるかだ。サウジの政府系ファンド「公共投資ファンド(PIF)」は5年間で450億ドルを拠出する意向を示した。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」を組み立てる台湾の鴻海科技集団(フォックスコン・テクノロジー・グループ)も参加するかもしれない。ソフトバンク自身は少なくとも250億ドルの投資を約束しているが、83%出資する米携帯電話サービス大手スプリントを含めて1110億ドルもの純負債を抱える企業にとっては厳しい金額だ。

 中国の電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)の持ち株など、これまで投資してきた資産の一部売却で現金を手にする選択肢は当然ある。より好ましいのは、債務の重いスプリントを手放すことかもしれない。

 スプリントは2年前に国内同業のTモバイルUS買収を目指したが、規制当局の強い反対で断念した。

 この状況はトランプ政権の誕生で変わるかもしれない。トランプ氏は選挙活動中、通信大手AT&Tによるメディア大手タイム・ワーナー買収計画に異議を唱えたが、孫氏は少なくともTモバイルUSとスプリントの合併を再び模索するかもしれない。

 TモバイルUSとスプリントは全米展開する携帯電話サービス会社の中で最も規模が小さいため、合併は戦略的な理にかなう。だがTモバイルUSの時価総額は、スプリントが最初に買収を目指した2014年6月時点ほど割安ではない。TモバイルUSの株価はその後63%上昇し、逆にスプリントの株価は13%下落した。現時点ではスプリントが身売り側に回る方が合理的といえる。

 一つ警告しなければならない。スプリントとTモバイルUSの従業員数は合わせて8万人だ。合併に伴う人員削減は、ソフトバンクが創出するはずの雇用の一部を相殺するだろう。ここに、ソフトバンクとトランプ氏との取引における本当の技が見て取れる。

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トランプ次期政権特集
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwiCtbv08-PQAhWIFJQKHfGTCe0QFgghMAE&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12576561340667814139804582482592194214240&usg=AFQjCNE6Q0WvqWuVRIsXrBmEenyiXJ6L6g


 


 


金融政策こそが為替への「ゲーム・イン・タウン」−通貨外交重鎮
野沢茂樹、Brian Fowler
2016年12月8日 09:10 JST 更新日時 2016年12月8日 14:11 JST

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iAJ.Vbq3BKBg/v3/-1x-1.png

「金融政策で為替ヘの配慮を欠くことはあり得ない」−内海元財務官
ドル相場は先月下旬に過去最高を付けた後、頭打ちに

トランプ財政に対する市場の期待は行き過ぎており、為替相場の鍵を握るのはなお金融政策だー。かつて通貨外交で手腕を発揮した内海孚元財務官は、金融緩和からの脱却で出遅れる円は最弱通貨となるが、米連邦準備制度理事会(FRB)がドルの独歩高を警戒して行動するため、大幅な円安・ドル高進行の可能性は低いとみている。  
内海元財務官 

  内海氏(82)の読みはこうだ。ドナルド・トランプ次期米大統領と与党・共和党は「FRBの人工的な金融緩和策に批判的なので、FRBは従来よりは躊躇(ちゅうちょ)せずに利上げしていく」ため、金利上昇で先行する米国のドルが強くなる流れが続く。欧州中央銀行(ECB)も少しずつ出口を模索していく可能性が高い一方、日本銀行だけは何もできないと見込まれ、来年も「ドル、ユーロ、円の順に金融政策を反映した相場の流れが続き、円は最弱通貨になっていかざるを得ない」。
  ただ、ドルの独歩高には「トランプ政権がどうこうより、FRB自身が用心深いだろう。金融政策で為替ヘの配慮を欠くことはあり得ない」。内海氏によれば、各国・地域とも市場介入ではなく金融政策こそが為替に対する「オンリー・ゲーム・イン・タウン」(唯一の選択肢)で、「この傾向は今年に入って和らいだが、財政出動が主役になるには至らない」と言う。
  トランプ氏が次期米大統領に決まって以降、外国為替市場では世界的な株高と米金利の上昇を背景にドル高が進んだ。主要10通貨に対するブルームバーグのドル指数は11月下旬にデータでさかのぼれる2004年末以降で最高を記録。円相場の下落率は11月に1995年以来の大きさとなった。その後の相場はもみ合い状態が続いている。

  ブルームバーグがフェデラルファンド(FF)金利先物を基に算出したFRBの利上げ予想確率は、来週の会合で100%。来年の追加利上げについても市場関係者の見方は強気だ。一方、一段のドル高や円安については、要人から懸念の声が出ている。シカゴ連銀のエバンス総裁は先週、ドル高が米製造業への向かい風になっていると指摘。安倍晋三首相の側近である自民党の下村博文幹事長代行は今週、輸入物価上昇の副作用に触れ、これ以上の円安を望まないと言明した。
  内海氏は6日のインタビューで、「日米欧3極の通貨はお互いの金融政策を見合って動く。ドル高が米国の貿易に与える悪影響も考えないといけない」と指摘。「このまま円安がどんどん進むかは慎重にみるべきだ」と述べ、一部の円弱気派が見込む130円程度までの円安・ドル高は実現しないとの見方を示した。   
「一番大きな懸念」
  内海氏は1983年から86年までワシントンの日本大使館で大蔵省(現財務省)出身の公使を務めた経験がある。日米円・ドル委員会やドル高是正で米英独仏と合意した85年9月のプラザ合意などをめぐっては、米財務省との実務交渉を担当。過度なドル安に歯止めをかける87年2月のルーブル合意時には国際金融局長、89年から91年まで財務官として手腕を発揮した。現在は東海東京フィナンシャル・ホールディングスのグローバル・アドバイザリー・ボードの議長などを務める。
  円高・ドル安要因とされるトランプ氏の反・自由貿易主義は「一番大きな懸念」と、内海氏は指摘。環太平洋経済連携協定(TPP)からの撤退表明や北米自由貿易協定(NAFTA)をめぐる米企業への干渉など「貿易面の自国第一主義、アメリカ・ファーストは選挙中と当選後で一貫して変わっていない。米大統領の権限でできることがある分野なので、皆覚悟しておいた方が良い」と言う。
  次期政権の減税・インフラ投資構想については「米国では大統領より議会の権限が強い。トランプ氏がやりたいことの何分の1が実現するかだ」と言い、「米共和党は減税は受け入れやすいだろうが、公共投資の拡大にはかなり明確な拒否反応がある」と話した。米経済成長とインフレ、金融引き締めの加速に関する市場の期待先行には行き過ぎの面があるとみている。
  米財務長官人事については「80年代のジェームズ・ベーカー氏のように非常に存在感を示す場合と、そうでない場合がある」と指摘。為替政策に関する方針は「日本にも世界にも影響が大きいが、米国はドル相場についてリーダーシップを取るというよりは受け身で対応する傾向がある。プラザ合意当時もそうだった」と話した。
  「ドル高に対する口先介入がどの程度出てくるかは注目点だ」。内海氏は、トランプ次期政権からドル高けん制発言があっても「それが響くのは自虐的な日本の市場だけだ。具体的な政策手段に表れるかはクエスチョンマークだ。したがって、相場への持続的な影響力もクエスチョンマークだ」と述べた。実弾介入が想定しにくい中では、金融政策のような持続的な影響力は及びにくいとの見方を示した。
  日銀が9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和策とトランプ相場が相まって日米金利差は拡大し、当局が目指す物価押し上げに寄与する円安につながっている。内海氏は、日銀にとって「外部環境は政策目標の達成をめぐって感じている重圧を和らげる方向に動いている」ものの、黒田東彦総裁が金融緩和の縮小に向けて早急に動く可能性は低いとの見方だ。
*T
日本経済の意外な強さ:
**日本経済は完全雇用状態にあり、生産性も上がっている。人口減少社会では経済状況をGDPの規模で評価するのは間違いだ。労働者や国民「1人当たり」を重視し、人口減を割り引いて考えないといけない
**労働力人口が01年から13年まで0.7%ずつ減ったにもかかわらず、実質GDPは年平均0.5%成長した。労働力人口1人当たりだと同期間の累積で20%も成長し、米国の11%を上回った
財政再建には消費増税:
**財政再建には消費増税しかない。社会保障給付は受益者数が増加の一途をたどる一方、負担者は減るばかりだ。経済力のある受益者にも負担してもらう必要がある
**安倍政権が掲げる名目3%・実質2%成長の持続可能性には懐疑的な見方が多い。家計消費が伸びないのも、皆が将来への不安を抱えているからだ
**このままでは成り立つわけがない。消費税率は早く10%にするのは当然だが、10%にしても全然足りない。日銀の金融緩和も財政がきちんと締まってこないと本当の出口はない
T*
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHT3LF6TTDSW01


〔東京株式〕米株価の高値更新で一時230円超高(8日前場、続き)☆差替【12/8 12:00】
前日の米国市場でダウ工業株30種平均が前日比297.84ドル高と大きく上昇し、3日連続で史上最高値を更新したことが好感された。日経平均株価は一時230円以上上昇し、1万8700円台で推移する場面もあった。

一方、朝方発表された7〜9月期の実質GDP(国内総生産)改定値で成長率が下方修正されたほか、円相場が1ドル=113円台後半で推移したため、上値は重く、上げ幅が縮まったが、終始プラス圏だった。

取引終了後に欧州中央銀行(ECB)定例理事会を控え、午後は様子見姿勢が強まりそうだ。ただ、市場からは「終日プラス圏で推移し、日経平均は終値で12月1日に付けた年初来高値(1万8513円12銭)を更新するだろう」(銀行系証券)との声が聞かれた。


 

〔東京外為〕ドル、113円台半ば=米金利低下や株価伸び悩みで下落(8日正午)【12/8 12:03】
8日午前の東京外国為替市場のドルの対円相場(気配値)は、米長期金利の低下や日経平均株価の伸び悩みを受けて、1ドル=113円台半ばに下落している。正午現在は113円51〜51銭と前日(午後5時、114円33〜33銭)比82銭のドル安・円高。

東京時間の早朝は、113円60〜70銭台で推移。仲値に向けては国内輸入企業のドル買いや米金利の持ち直しに支えられ、113円80銭台へ上昇。その後は株価が値を削ったほか米長期金利が再び下げたため、ドル円は113円50銭近辺に押し戻された。

ドル円は、米金利低下や株価の上げ幅縮小で戻りの鈍い展開となっている。また、年末のため米大統領選以降に進んだドル高に「調整が入りやすい」(外為仲介業者)との指摘も出ている。ただ、今夜のECB理事会を見極めたいとのムードも強いため、「前日海外時間の安値である113円40銭前後では下値がサポートされる」(同)との声が聞かれ、ドル円は下げ余地も限られそうだ。

ユーロ円は軟調、ユーロドルは強含み。正午現在は1ユーロ=122円25〜27銭(前日午後5時、122円49〜50銭)、対ドルで1.0771〜0771ドル(同1.0713〜0713ドル)。

情報提供:株式会社時事通信


 

アングル:2017年市場コンセンサスと注目すべき「9つの論点」

[ロンドン 2日 ロイター] - 2016年は政策、経済状態、ファイナンスのすべてで潮目が一変した。こうした中で投資家は既に期待と不安を交えながら17年に目を向けつつある。

幅広く形成されたコンセンサスは、35年続いた債券の強気相場は幕を閉じ、インフレが再燃、金融政策は限界に達しており、次に景気刺激策が打ち出されるとすれば、財政になる、というものだ。

これが市場に及ぼす影響を考えると、債券利回りと先進国株、ドルはさらに上昇する一方、新興国の通貨・株・債券は苦戦することになる。株式を詳しく見れば、先進国が新興国を、景気循環銘柄がディフェンシブ銘柄をそれぞれアウトパフォームし、銀行株はイールドカーブのスティープ化から、住宅・建設株はインフラ支出から恩恵を受けるだろう。

ではこういったコンセンサスに反するような材料や論理上の欠点は見当たらないと言えるか、逆に広範なコンセンサスにおいて特に注目すべき予想や推奨トレードはないのかを探ってみた。

(1)債券利回り低下の可能性

直近で米国債利回りが歴史的低水準に下がった事態を正確に予想したHSBCは、利回りが来年上昇する公算は十分にあり、米10年債は2.5%に達するとみている。

ただしその時期は第1・四半期だ。HSBCの債券ストラテジスト、スティーブン・メージャー氏によると、それ以降は利回りが低下し、再び今年つけた数十年ぶりの低水準の1.35%に戻る見込み。2.5%までの金利上昇は、金融環境の引き締まりによって景気の足を引っ張り、米連邦準備理事会(FRB)の利上げを抑える結果、持続不能になるからだという。

(2)2016年「ピーク説」

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、2016年が流動性、格差、グローバル化、デフレのいずれにおいてもピークに達し、過去最大の債券強気相場は終わりを迎え、来年はすべての流れが逆転すると予想。2006年以降で初めて、G7諸国では大幅な金融緩和は実施されず、金利とインフレは想定よりも上振れするとみている。

同社は債券の強気相場終了時期について、米30年債利回りが2.088%に下がった16年7月11日だった可能性が大きいとの見方も示した。

(3)ブラックスワン

ソシエテ・ジェネラルのエコノミストチームは、ほとんど誰も予想できずに大きな衝撃をもたらす「ブラックスワン」の要素として4つを挙げる。もし現実化すれば来年の見通しを覆す可能性が大きい要素は政治的な不確実性=発生確率30%、債券イールドカーブの急速なスティープ化=25%、中国のハードランディング=25%、貿易戦争=15%──だと説明した。

(4)ユーロ高

UBSは「ドルは他のG10通貨に対して過大評価されている」というあまり耳にしない見解を打ち出している。ユーロ/ドルはパリティ(等価)ないしそれ以下に下落するとの予想が強まっている流れに逆らい、UBSは来年末に1.20ドルまでユーロ高が進むと予想。欧州中央銀行(ECB)のテーパリング(緩和縮小)もユーロを支えると見込んだ。ポンドも過小評価されているため、対ドルで上昇するという。

(5)新興国資産にも推奨取引

来年はドル高と米債利回り上昇が新興国市場に打撃を与えるとの見方に異論を差し挟む向きはほとんどいない。ゴールドマン・サックスはずっとドル高と利回り上昇を唱えてきた。ただし同社の来年の推奨トレードには、新興国資産買いが絡むものが2種類ある。

1つはブラジルレアル、ロシアルーブル、インドネシアルピア、南アフリカランドの均等な通貨バスケットを買い持ち、韓国ウォンとシンガポールドルの均等な通貨バスケットベースを売り持ちにする取引。もう1つはブラジル、インド、ポーランドの株の買い持ち継続だ。

(6)ECBはテーパリング不可能

インフレが底を打ち、FRBが利上げに動きつつあることに伴い、ECBも毎月800億ユーロの資産買い入れ(量的緩和=QE)のテーパリングに乗り出す、という観測は正しいか。

恐らくは間違いだろう。RBCキャピタル・マーケッツは、ECBが12月にQEの期限を延長するだけでなく、来年終盤に物価上昇と経済成長が不十分になって再延長に追い込まれるとみている。「来年末になろうという時点でもなお、金融政策を巡る議論の焦点は今と非常に似通った内容になる。つまりECBがどうやれば景気刺激を続けていけるかということだ」という。

FRBとECBの金融政策の違いにより、欧米の国債利回りのスプレッドはさらに拡大する可能性がある。

(7)トランプ減税は株価に追い風

トランプ次期米大統領が公約通りに法人税率引き下げを実施した場合、米企業が海外にとどめている利益をどれぐらい還流させることができるだろうか。ドイツ銀行の試算では、それは約1兆ドルに達する。既に最高値圏にある米国株にとってさらに相場を押し上げる要因となってもおかしくない。

シティは、世界の株価は来年、先進国が主導する形で10%上昇するとみている。10%のドル高と米国の法人税率の20%への引き下げが、世界全体で企業の1株利益を6%増加させる可能性があるという。

(8)中国株が再び強気相場へ

中国株が回復して大きな強気相場になると、モルガン・スタンレーは予測している。上海総合指数は来年、2日の終値3243から36%の上昇となる4400で終えるとみている。

同社はまた、1株利益(EPS)の伸び率を前回の4%増から6%増に上方修正した。ただしこれは、米中間において「著しい」保護貿易摩擦が起きないことを前提としているが、そのような摩擦懸念と、中国の景気回復が比較的早期の段階にあることで、2017年前半における中国国内の金融政策は緩和的に維持されるだろう。

不動産業界への規制強化も、富裕層の資金を株式に向かわせることになると、モルガン・スタンレーは指摘。「全体として、前回よりも大きいが、落ち着いた強気相場になると予想する」としている。同社が正しければ、36%高は誰にとってもみじめ過ぎるということにはならないはずだ。

(9)人民元は下落

多くの為替アナリストが人民元は下落し続けると予想するが、1ドル8.00元を下回るとみる人はほとんどいない。下回るとみるドイツ銀行のアナリストらが正しければ、人民元はさらに15%以上下落する可能性がある。

公平を期すために言えば、彼らは「2018年までに」心理的節目の8.00元を下回ると予想している。しかしそれでも政府によって厳しくコントロールされている人民元にとっては、来年は確実に、そしてかなり下落することになるだろう。

ドル上昇も人民元下落要因の1つだ。もう1つの要因は、ドイツ銀行によると、中国政府が外貨準備3兆ドルを下回ることは避けたいと考えることにあるという。過去数年、外貨準備は自国通貨下落を和らげるクッションとして使われていたが、資本が流出すれば、さらにひどい直撃を被る可能性があるからだ。

(Jamie McGeever記者)

*11月28日配信の記事に内容を追加して再送します。
http://jp.reuters.com/article/markets-2017-outlook-idJPKBN13K17A?sp=true

 

中国の外貨準備、3兆ドルの節目に迫る
By NATHANIEL TAPLIN
2016 年 12 月 8 日 14:50 JST
――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 中国では11月に外貨準備高が5カ月連続で減少し、さらに減少幅が700億ドル近くに上ったことから、外為当局が再び窮地に立たされている。

 中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した11月末の外貨準備高は前月末から690億6000万ドル減少し、3兆0520億ドル(約348兆7000億円)となった。減少幅は、人民元安が世界市場を震撼(しんかん)させた1月以来の大きさだ。外貨準備高は3兆ドル目前まで減り、2011年以来の...

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http://jp.wsj.com/articles/SB10133893654180563918204582483931232483256

http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/497.html

[政治・選挙・NHK217] 与党、税制大綱を正式決定 配偶者控除見直し 積立型NISA導入 情報BOX:2017年度与党税制改正大綱全文
与党、税制大綱を正式決定 配偶者控除見直し
積立型NISA導入
2016/12/8 15:07日本経済新聞 電子版
 自民・公明両党は8日午後、与党政策責任者会議を開き、所得税の配偶者控除の見直しなどを盛り込んだ2017年度の与党税制改正大綱を決定した。所得税の控除全体を見直す抜本改革は17年度以降、数年かけて進める。少額投資非課税制度(NISA)はより長期の運用を可能にする新たに積立型を設ける。17年度以降に販売する新築の高層マンションは高層階の固定資産税を引き上げる。

与党税制協議会であいさつする自民党税調の宮沢会長(左から2人目)。左端は公明党税調の斉藤会長(8日午後、衆院第2議員会館)
 
 配偶者控除は18年1月から妻の年収要件を103万円から150万円に事実上、引き上げる。150万円超〜201万円以下では控除額を段階的に減らす。パート主婦が働きに出やすい環境を整える。世帯主(夫)の年収が1120万円を超える専業主婦世帯にとっては増税になる。

 積立型NISAの上限額は年40万円で非課税期間を20年にする。年120万円が上限で非課税期間が5年の現行制度では枠を使い切っている人は少なく、非課税期間が短いとの指摘が多い。新制度の導入で投資家層の拡大を図る。

 ビール系飲料の酒税額の一本化を盛り込んだ。ビール系飲料の酒税は20年10月から26年10月にかけて税額を3段階かけて統一する。ビールの税額を減らしていく。一方、第三のビールや発泡酒は段階的に上げていく。日本酒とワインの税額統一も進める。段階的に日本酒を減税する一方、ワインの税額を引き上げることで同じにする。

 高層マンションの固定資産税見直しは高さ60メートルを超え、おおむね20階建て以上の新築物件が対象。40階建てのマンションの最上階は1階より10%高くする。

 燃費が良い車の自動車重量税を安くするエコカー減税の対象となる燃費基準は段階的に引き上げる。来春から2年かけ現行の「新車の9割」から7割まで1割ずつで絞り込む。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFL08HG3_Y6A201C1000000/


与党税制大綱、午後に決定 配偶者控除の要件緩和など
奈良部健2016年12月8日13時25分
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 自民、公明両党は8日、2017年度の税制改正大綱をまとめる。所得税の配偶者控除は配偶者の年収要件を緩和し、パートの女性らが働きやすくする。法人税では、中小企業向けの政策減税を手厚くする。安倍政権の「働き方改革」や「アベノミクス」を税制面で後押しする。

 自民党は8日午前に税制調査会の総会を開き、大綱案を了承した。公明党も党内手続きを進め、夕方の与党税制協議会で正式決定する。政府は、税制改正法案を来年1月からの通常国会に提出する。

 配偶者控除は2018年1月から、世帯主が控除を受けられる配偶者の年収を「103万円以下」から「150万円以下」に緩和する。控除のために配偶者が勤務を短く調整するケースが減る。

 一方、控除対象が増えて税収が減るのを補うため、世帯主年収が1120万円超から控除額を段階的に減らし、1220万円超で対象から外す。

 大綱は、今回の見直しを所得税…

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http://www.asahi.com/articles/ASJD76WYBJD7ULFA04K.html


 


 

情報BOX:2017年度与党税制改正大綱全文


[東京 8日 ロイター] - 自民、公明両党は8日、2017年度税制改正大綱を正式決定した。今後数年で所得税の控除全般の改革に取り組むとし、第1弾として18年1月から配偶者の年収上限を現行の103万円から150万円に引き上げることを決めた。

2017年度税制改正大綱は以下の通り(一部抜粋)。

<基本的考え方>

安倍内閣はこの4年間、デフレ脱却と経済再生を最重要課題として取り組んできた。雇用・所得環境は大きく改善している。他方、世界経済においては需要の低迷、成長の減速リスクが懸念される。

個人消費や設備投資に力強さを欠いている背景には、人口減少、少子高齢化といった構造的な問題がある。このため、安倍内閣は、子育てや介護への不安をなくし、女性や若者の活躍を進めることにより、少子高齢化の流れに歯止めをかけ、誰もが生きがいを感じられる「一億総活躍社会」の実現にむけて取り組んでいる。

「一億総活躍社会」を実現し、日本全体の成長力を底上げしていくためには、「働き方改革」と「イノベーション」が両輪となる。税制においては、経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革の第一弾として、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行う。

また、生産性を抜本的に向上させるために、税制においては、企業による「攻めの投資」を後押しするとともに、コーポレートガバナンスの強化を促すための取り組みを進める。税制としても、賃金の引き上げを促すための取り組みを進める。

酒税については、類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えてきた。こうした状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、ビール系飲料等の税率格差の解消など、酒税改革に取り組む。

「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、経済再生と財政健全化を両立させることがわが国の最重要課題であり、2020年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を念頭に置く必要がある。消費税率10%への引き上げを2019年10月1日に確実に実施する。あわせて実施される低所得者への配慮のための軽減税率制度について、事業者の準備状況等を検証し、制度の円滑な導入・運用に万全を期す。

1)経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革

喫緊の課題への対応として、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行う。その上で、今後数年をかけて、基礎控除をはじめとする人的控除等の見直し等の諸課題に取り組んでいくこととする。

・配偶者控除・配偶者特別控除の見直し

所得税・個人住民税における現行の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しでは、所得税の場合、配偶者特別控除について、所得控除額38万円の対象となる配偶者の合計所得金額の上限を85万円(給与所得のみの場合、給与収入150万円)に引き上げるとともに、現行制度と同様に、世帯の手取り収入が逆転しないような仕組みを設ける。

同時に、配偶者控除・配偶者特別控除について、担税力の調整の必要性の観点から、これらの控除が適用される納税者本人の合計所得金額に所得制限を設けることとし、国・地方を通じた税収中立を確保する。

今回の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しによる個人住民税の減収額については、全額国費で補?する。

・今後の個人所得課税改革の方向性

上記の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しは、個人所得課税改革の第一弾であり、今後も改革を継続していく。

基礎控除をはじめとする人的控除等については、現在、「所得控除方式」を採用しているが、高所得者ほど税負担の軽減効果が大きいことから、主要諸外国における負担調整の仕組みも参考にしつつ、来年度の税制改正において控除方式のあり方について検討を進める。具体的には、収入にかかわらず税負担の軽減額が一定となる「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」の導入のほか、現行の「所得控除方式」を維持しつつ高所得者について税負担の軽減額が逓減・消失する仕組みの導入が考えられる。

2)デフレ脱却・経済再生に向けた税制措置

600兆円経済を実現するため、企業の「攻めの投資」や賃上げの促進など経済の好循環を促す取組みを進める。

・競争力強化のための研究開発税制の見直し

2020年までに官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上とする政府目標も踏まえ、研究開発税制の見直しを行う。具体的には、総額型の控除率を試験研究費の増減に応じたものとする。また、IoT、ビッグデータ、人工知能等を活用した「第4次産業革命」による新たなビジネス開発を後押しする観点から、研究開発税制の対象に、「第4次産業革命型」のサービス開発のための試験研究に係る一定の費用を新たに追加する。

・賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直し

所得拡大促進税制について、企業に更なる賃上げインセンティブを与える機能を強化する観点から、高い賃上げを行う企業への支援を強化する。

・コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備

企業と投資家の対話の充実を図るため、上場企業等が株主総会の開催日を柔軟に設定できるよう、法人税等の申告期限の延長可能月数を拡大する。また、経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とする。

・その他考慮すべき課題

現行のNISAが積立型の投資に利用しにくいことを踏まえ、家計の安定的な資産形成を支援する観点から、少額からの積立・分散投資を促進するための積立NISAを新たに創設する。金融所得に対する課税のあり方について、税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ、必要な検討を行う。

3)中堅・中小事業者の支援、地方創生の推進

・中堅・中小事業者の支援

地域経済を牽引する中核企業等が、地域経済に波及効果のある新たな事業に挑戦するために行う設備投資を対象に、特別償却又は税額控除ができる制度を創設する。所得拡大促進税制について、高い賃上げを行う中小企業に対して、大企業を上回る支援の強化を行う。取引相場のない株式について、相続税法の時価主義の下、より実態に即した評価の見直しを行う。

・地方創生の推進

東京一極集中の是正等を図るとともに、地方における質の高い雇用を促進するため、地方拠点強化税制について、無期かつフルタイムの新規雇用に対する税額控除額を上乗せする等の拡充を行う。

類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、ビール系飲料や「醸造酒類」の税率格差の解消、「ビール」の定義拡大など、酒税改革に取り組む。今回の酒税改革により、酒類製造者が消費者にとって真に魅力ある商品の開発に経営資源をシフトすることや、地域の特色を活かした魅力ある商品の開発が進み、地方創生の牽引役となることが期待される。

税率構造の見直しでは、ビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンル)の税率について、2026年10月1日に、1キロリットル当たり15万5000円(350ミリリットル換算54.25円)に一本化する。

4)経済活動の国際化・ICT化への対応と租税回避の効果的な抑制

・国際課税に関する制度の見直し

資金決済に関する法律の改正により仮想通貨が支払の手段として位置づけられることや、諸外国における課税関係等を踏まえ、仮想通貨の取引について、消費税を非課税とする。

5)車体課税の見直し

一部の自動車メーカーが燃費性能を偽った今回の不正は、エコカー減税制度の根幹を揺るがす問題である。燃費不正対策を強化するため、道路運送車両法を改正するとともに、税制においても、燃費不正が生じた場合の納税義務者の特例等の措置を講ずる。

自動車取得税及び自動車重量税に係るエコカー減税については、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から、対象範囲を2020年度燃費基準の下で見直し、政策インセンティブ機能を強化した上で2年間延長する。その実施に当たっては、段階的に基準を引き上げることとする。自動車重量税については、ガソリン車への配慮等の観点から、時限的・特例的な措置を講ずる。

6)森林吸収源対策

地球温暖化対策のための税について、その本格的な普及に向けたモデル事業や技術開発、調査への活用の充実を図るため、経済産業省、環境省、林野庁の3省庁は、引き続き連携して取り組む。

7)災害に関する税制上の措置

近年災害が頻発していることを踏まえ、被災者や被災事業者の不安を早期に解消するとともに、復旧や復興の動きに遅れることなく税制上の対応を手当てする観点から、災害への税制上の対応の規定を常設化する。

8)円滑・適正な納税のための環境整備

国税犯則調査手続について、経済活動のICT化の進展等を踏まえ、電磁的記録の証拠収集手続を整備するとともに、関税法に定める犯則調査手続等を踏まえて調査手続等を整備し、あわせて規定を現代語化した上で国税通則法へ編入する等、所要の見直しを行う。地方税犯則調査手続についても、国税犯則調査手続の見直しを踏まえた規定の整備を行う。

9)その他

2017年度税制改正において結論を得ることとしていた介護保険料等に係る社会保険料控除の見直しについては、世帯主が世帯員の分もまとめて納付することが一般的な国民年金保険料の納付等に影響が及ぶ可能性があることを踏まえ、介護保険制度の見直しにより対応が図られる見込みであることに鑑み、税制改正は行わない。

(中略)

<検討事項>

1)年金課税については、少子高齢化が進展し、年金受給者が増大する中で、世代間及び世代内の公平性の確保や、老後を保障する公的年金、公的年金を補完する企業年金を始めとした各種年金制度間のバランス、貯蓄商品に対する課税との関連、給与課税等とのバランス等に留意して、年金制度改革の方向性も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。

2)デリバティブを含む金融所得課税の更なる一体化については、投資家が多様な金融商品に投資しやすい環境を整備し、証券・金融、商品を一括して取り扱う総合取引所の実現にも資する観点から、多様なスキームによる意図的な租税回避行為を防止するための実効性ある方策の必要性を踏まえ、検討する。

3)小規模企業等に係る税制のあり方については、個人事業主、同族会社、給与所得者の課税のバランス等にも配慮しつつ、個人と法人成り企業に対する課税のバランスを図るための外国の制度も参考に、今後の個人所得課税改革において給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討する。

4)寡婦控除については、家族のあり方にも関わる事柄であることや他の控除との関係にも留意しつつ、制度の趣旨も踏まえながら、所得税の諸控除のあり方の議論の中で検討を行う。

5)個人事業者の事業承継に係る税制上の措置については、現行制度上、事業用の宅地について特例措置があり、既に相続税負担の大幅な軽減が図られていること、事業用資産以外の資産を持つ者との公平性の観点に留意する必要があること、法人は株式等が散逸して事業の円滑な継続が困難になるという特別の事情により特例が認められているのに対し、個人事業者の事業承継に当たっては事業継続に不可欠な事業用資産の範囲を明確にするとともに、その承継の円滑化を支援するための枠組みが必要であること等の問題があることに留意し、既存の特例措置のあり方を含め、引き続き総合的に検討する。

6)都市農業については、「都市農業振興基本計画」に基づき、都市農業のための利用が継続される土地に関し、市街化区域外の農地とのバランスに配慮しつつ土地利用規制等の措置が検討されることを踏まえ、生産緑地が貸借された場合の相続税の納税猶予制度の適用など必要な税制上の措置を検討し、早期に結論を得る。

7)日本郵便株式会社等に係る税制上の措置については、郵政事業のユニバーサルサービスの安定的確保の観点から、経営基盤の強化のために必要な措置の実現に向けた検討とともに、引き続き所要の検討を行う。

8)医療に係る消費税等の税制のあり方については、消費税率が10%に引き上げられるまでに、医療機関の仕入れ税額の負担及び患者等の負担に十分に配慮し、関係者の負担の公平性、透明性を確保しつつ抜本的な解決に向けて適切な措置を講ずることができるよう、実態の正確な把握を行いつつ、医療保険制度における手当のあり方の検討等とあわせて、医療関係者、保険者等の意見、特に高額な設備投資にかかる負担が大きいとの指摘等も踏まえ、総合的に検討し、結論を得る。

9)国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税のあり方については、2015年度税制改正の実施状況、国際機関等の議論、欧州諸国等における仕向地主義に向けた対応、各種取引の実態等を踏まえつつ、課税の対象とすべき取引の範囲及び適正な課税を確保するための方策について引き続き検討を行う。

10)将来、たばこ税の負担水準を見直す際には、財政物資としてのたばこの基本的性格、葉たばこ農家・たばこ小売店等への影響、市場・産業への中長期的な影響、国民の健康増進の観点などを総合的に勘案し、予見可能性の確保に配意しつつ、検討する。

11)原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化については、引き続き検討する。

12)事業税における社会保険診療報酬に係る実質的非課税措置及び医療法人に対する軽減税率については、税負担の公平性を図る観点や、地域医療の確保を図る観点から、そのあり方について検討する。

13)現在、電気供給業、ガス供給業及び保険業については、収入金額による外形標準課税が行われている。今後、これらの法人の地方税体系全体における位置付けや個々の地方公共団体の税収に与える影響等も考慮しつつ、これらの法人に対する課税の枠組みに、付加価値額及び資本金等の額による外形標準課税を組み入れていくことについて、引き続き検討する。また、これらの業に係る中小法人については、近年における事業環境や競争状況の変化を踏まえつつ、課税のあり方について検討を行う。

14)地方消費税の清算基準については、2018年度税制改正に向けて、地方消費税の税収を最終消費地の都道府県により適切に帰属させるため、地方公共団体の意見を踏まえつつ、統計データの利用方法等の見直しを進めるとともに、必要に応じ人口の比率を高めるなど、抜本的な方策を検討し、結論を得る。

15)ゴルフ場利用税については、今後長期的に検討する。

16)現在、政府において、民法における成年年齢を20歳から18歳に引き下げるとともに、他法令における行為能力や管理能力に着目した年齢要件を引き下げる方向で法改正に向けた作業を進めているところである。税制上の年齢要件については、対象者の行為能力や管理能力に着目して設けられているものであることから、民法に合わせて要件を18歳に引き下げることを基本として、法律案の内容を踏まえ実務的な観点等から検討を行い、結論を得る。

(以下、略)

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By JUSTIN LAHART
2016 年 12 月 8 日 12:15 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 米雇用市場が勢いづき始めたことを示す兆しの一つは、こんな仕事なんか誰がやるものかと上司に言い放つ人が増えていることだ。だが、そう言い切る覚悟があるかどうかは、就いている仕事の種類によって大きく変わってくる。離職者の動向は労働コストに影響し、経済のどの部門でインフレが起きそうかを知る手掛かりにもなる。

 米労働省が7日発表した10月の雇用動態調査(JOLTS)では、民間部門の離職率(労働者全体に占める自発的離職者の割合)が2.3%だった。これは低水準だった2009年9月の1.4%を大きく上回り、00年代半ばの平均に近い。離職率(引退した人を除く)の上昇は雇用市場が活気を増しつつある兆候の一つだ。新たな就職先が見つからないと考えれば仕事は辞めないのが一般的な傾向だ。

 とはいえ、どの業界でも多くの人たちが一昔前のように離職しているわけではない。サービス部門の離職率は大幅に回復している。一方、製造業、建設業、鉱業、木材産業といった財の生産部門では、離職率は1.5%とあまり持ち直しておらず、00年代半ばの高水準である2%をはるかに下回る。しかもこれらの業界では、雇用者数そのものが減少しているため、離職者数はそれ以上に減っている。

 財の生産部門の労働者は賃上げを要求できる状況にはない。賃上げは物価上昇につながるため、サービス部門のインフレが加速する一方で財の部門のインフレは減速しており、その差は広がるばかりだ。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjj34uZleTQAhVDk5QKHRPwCB4QFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB12576561340667814139804582483714289944908&usg=AFQjCNFNlG_R4oRc0v9nXlQGSXupMzA5jg


 


【寄稿】トランプ氏の公約:聞いておきたい7つの疑問

By JOHN FEEHERY
2016 年 12 月 8 日 17:02 JST

――筆者のジョン・フィーヘリー氏は超党派のPR会社QGAパブリック・アフェアーズの代表で、共和党デニス・ハスタート氏が下院議長を務めていた際の報道担当者

***

 ドナルド・トランプ氏の大統領としての成功は公約をどれだけ実現するか、もしくは実現していると見えるかにかかっている。そこで、トランプ氏の公約に関するいくつかの疑問を挙げてみる。

――どのくらい高くなるのか

 トランプ氏はメキシコとの国境に壁を築き、その費用をメキシコに負担させると約束した。これは物理的な壁なのか、それとも仮想バリアか。その壁はどのくらいの高さになるのか。壁の建設に根拠を与える法律が制定されたとして、そこには他に何が含まれることになるのか。国内の安全保障措置か、ネットを介した電子検証の強化か、すでに国内に滞在する不法移民の合法化への道筋か。一部費用あるいは総額でどのくらいになるのか。

――どのくらい低くなるのか

 トランプ氏は法人税を現行の35%から15%に引き下げると公約した。実現すれば、企業が国内に回帰し、外国に保有する利益を還流させるかもしれない。だが仮に税制の法案作成を担当する連邦議員が減税分の「埋め合わせ」は必至だと考えれば、数多くの聖域にメスが入ることになる。税率を下げれば下げるほど、埋め合わせも増える。トランプ氏はどこまで税率を本当に下げたいのかが問題だ。

――どのくらい早急に始めるのか

 トランプ氏はオバマケア(医療保険制度改革法)を撤回し、より安くて良いものと置き換えると公約した。連邦議会の共和党はバラク・オバマ大統領が法制面で成し遂げた主要な成果を台無しにする法案を打ち出すことが恐ろしいほど得意だ。だが彼らは、より安くて良いものを思いつくことにかけてはあまり得意ではない。法律を2〜3年以内に「衰退」させるメカニズムを連邦議会が作るという話も出ている。そうすれば共和党には、代替案を磨く時間が与えられる。トランプ氏が何を推し進めるつもりなのか。失効が運命づけられているプログラムにしがみつく動機があまり多く見当たらない場合、保険業者はどうするのだろうか。

――どのくらい長くかかるのか

 トランプ氏は米国のインフラを再建すると公約した。それにはどのくらいの時間がかかり、どのように進めるのか。連邦議会は昨年、ハイウェー整備5カ年計画に関する法案を通過させた。同じような法案がまた出てくるのだろうか。トランプ氏はインフラ銀行を創設するつもりなのか。空港の新設で、航空各社の貢献はどの程度になるのか。連邦政府が関係するプロジェクトの賃金はその地域の一般的な水準を下回ってはならないと定めているデービス・ベーコン法について、トランプ氏はどうするつもりなのか。この法律のために、建設費用は膨大な額に膨らみかねない。

――どのくらい増えるのか

 トランプ氏は米国の軍事力を再建すると公約した。現在任務についている兵士の数は1940年以降で最も低水準にあると、ワシントン・ポストは今週報じた。同紙は同じ記事の中で、国防総省が「業務運営上で1250億ドルの無駄遣いが生じていることを暴露した内部調査を葬った」と伝えた。トランプ氏と次期国防チームはどの程度の兵士増員を望んでいるのだろうか。あとどのくらいの防衛費を使いたいと思っているのだろうか。無駄を削減して防衛費の増額に充てようとするだろうか。トランプ氏は新型大統領専用機「エアフォース・ワン」について大いに騒ぎ立てた(そして個人的にボーイングと金額交渉すると話した)。国防総省の予算を使う他の高額アイテムについても同じことをするのだろうか。

――どのくらい減るのか

 トランプ氏は連邦職員の数を減らすと公約した。ではどのくらい減らすつもりなのか。それによって節約できる費用はどの程度か。職員が削減されても政府は十分に機能するのか。たとえ機能できたとしても、労働組合はあらゆる手を尽くして反撃する公算が大きい。

――どのくらいの負担になるのか

 トランプ氏は数多くの公約をしたが、それが納税者にどのくらいの負担を強いることになるのかは不透明だ。大統領が就任後すぐに着手しなければならないものは予算編成だ。トランプ氏の最初の予算案が均衡への道筋を示す可能性はかなり低い。ただし、トランプ氏がその前提として指数関数的に拡大する経済成長を約束するなら別だが。トランプ氏が約束しなかったものの一つは、壊れた給付金制度の立て直しに関する計画だ。だが連邦議会共和党はトランプ氏の経済計画の負担に関して異なる見解をもっているかもしれない。結局のところ、収支を合わせるためには予算を効果的に立てなければならない。これは選挙中の公約を果たすために重い負担に直面することを意味する。

トランプ次期政権特集

米大統領が経済の重力に逆らうとき
ソフトバンクとトランプ氏、取引の裏にある本当の理由
トランプ政権が開く「脱イデオロギー時代」
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwil-Lz0lOTQAhUHGpQKHXRdATYQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582483971670593782&usg=AFQjCNHg64ZnzbpqhcqiddYVGdCdRu5mHw


 

中国の外貨準備減少、3兆ドルの節目に迫る意味
By NATHANIEL TAPLIN
2016 年 12 月 8 日 14:50 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 中国では11月に外貨準備高が5カ月連続で減少し、さらに減少幅が700億ドル近くに上ったことから、外為当局が再び窮地に立たされている。

 中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した11月末の外貨準備高は前月末から690億6000万ドル減少し、3兆0520億ドル(約348兆7000億円)となった。減少幅は、人民元安が世界市場を震撼(しんかん)させた1月以来の大きさだ。外貨準備高は3兆ドル目前まで減り、2011年以来の低水準となった。

 11月の落ち込みは、ドル高の影響でそれ以外の通貨建て資産のドル換算額が目減りしたという面もある。中国は外貨準備の構成を公表していないが、約6割はドル建てで残りはユーロや円などの主要通貨建て、というのがアナリストの見方だ。11月のようにドルが主要通貨に対して上昇すると、ドル建ての外貨準備高は目減りする。

 もっとも、キャピタル・エコノミクスのジュリアン・エバンズプリチャード氏によると、11月はドル換算による減少分が200億ドル程度だったもようだ。つまり、外貨準備売却による正味の減少額は500億ドル程度と考えられる。11月は元がドルに対して1.6%安と、やや大幅な元安となったため、中国当局が元売り圧力の緩和に動いた。ただ人民銀はこの数週間、元安を抑えるために大規模な介入を行っている。中国は、ドナルド・トランプ次期米大統領の反感を買うような為替政策を実施する一方、元の一段安を防ぐことでトランプ氏や米経済に配慮していると言える。

 中国が資本流出対策を強化していることを考えると、資本流出の勢いに歯止めが掛かっていないのは間違いない。中国の公式メディアに6日掲載された記事によると、当局は「根拠のない」海外投資について厳重な監視に当たっている。

 外貨準備が3兆ドルを超えていること自体は何も重要ではないかもしれない。だが市場はこうした点を心配しがちだ。中国は外貨準備がさらに500億ドル減れば、外貨準備が2兆ドル台の国の日常とはどういうものかを再び味わうことになるだろう。

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https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwj86vmIleTQAhVQtJQKHTK4DewQqOcBCBwwAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB10133893654180563918204582483931232483256&usg=AFQjCNH_2dt1hozYJJON3fQFHlb8HqDwDg
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/498.html

[経世済民116] 世界経済は良い方向に、物価2%に向かう=黒田日銀総裁 新興国通貨安は日本企業にデメリットも、部品調達 相場格言どおり安倍
世界経済は良い方向に、物価2%に向かう=黒田日銀総裁

[東京 8日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は8日、年末恒例のエコノミスト懇親会であいさつし、「世界経済、日本経済は全体として良い方向に向かっている」とし、日銀としては9月に導入した「イールドカーブ・コントロール」という「新しい枠組みを利用して経済の成長を支えたい」と強調した。

トランプ相場を前提に「米新政権の政策はまだはっきりしない」と述べた。さらに「来年は仏独で大きな選挙もあり、国際情勢はまだまだ不確実性が高い」と警戒しつつ、国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)による世界経済見通しや7─9月の国内総生産(GDP)を引き合いに出し、日本経済が緩やかな回復を続け、物価が目標の2%に向かうとの見解を示した。
http://jp.reuters.com/article/kuroda-boj-idJPKBN13X0VJ


Business | 2016年 12月 8日 16:28 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

アングル:
新興国通貨安は日本企業にデメリットも、部品調達のコスト増に

[東京 8日 ロイター] - 「トランプ現象」によるドル高進行と並行し、新興国通貨が下落している。新興国で生産している日系自動車メーカーにとっては、輸出採算の好転要因だが、実態はより複雑。部品調達率の低い製品では、新興国通貨安がコスト増につながる面もあるからだ。2017年もドル高/新興国通貨安が続くとの見方もあり、対ドルでの円安メリット減衰リスクも警戒されている。

<謳歌しにくいメキシコペソ安>

日本の自動車メーカーは、今や6割以上を日本国外で生産している。現地で販売する車を作るだけでなく、そこを足場に別の国へ輸出するケースも増えてきた。円安が日本からの輸出採算を改善するように、現地通貨安は海外から海外への輸出にメリットとなりそうだが、そう簡単な図式ではないようだ。

米大統領選挙後、最も下落した通貨の1つがメキシコペソ。トランプ氏が「国境に壁を作る」と発言していたこともあり、11月8日から12月7日までに対ドルで約10%下落、史上最安値圏となっている。

ホンダ(7267.T)はメキシコで3車種を生産しているが、部品の現地調達率は「CR─V」が83%、「HR━V」が60%、「フィット」が35%とばらつきがある。海外から調達しなければならない部品も多く、ペソ安は仕入れコストの上昇につながる。

今年のメキシコの自動車販売は活況で、ホンダは1─11月の販売台数が前年同期比20.5%と市場の伸びを上回った。米国から「シビック」や「アコード」など完成車の輸入が増えており、「フィット」や「HR━V」などを米国に輸出しているとはいえ、トータルでは対ドルでのペソ安は減益影響につながる可能性がある。

日産自動車(7201.T)はメキシコで年間70─80万台生産。このうち半分以上を北米や中南米に輸出しているが、同社関係者からは「メキシコ国内にあるサプライヤーも原材料を米国から購入しているところが多いことを考えれば、完成車の輸出が多いからといって、ペソ安を全てエンジョイできるわけではない」との声も聞かれる。

<ブラジルレアルにも先安観>

一方、新興国通貨の上昇が業績にプラスのケースもある。ブラジルレアルは、史上最安値圏だった前年に比べてドル安/レアル高。部品の調達コストが改善。同通貨ペアの為替影響はホンダにとって16年7─9月期の業績押し上げ要因となった。

ただ、ブラジルレアルも米大統領選後をみれば安くなっている。11月8日から12月7日までに対ドルで6.3%下落しており、ブラジル中銀の利下げ観測などから一段安の予想も出ている。

トヨタ自動車(7203.T)のブラジル工場も、ドル建て部品を海外から調達し、現地で組み立てている。レアルが安くなれば仕入コストが上がる構図だ。

トヨタは16年4─9月期の対ドルの為替影響額が、メキシコペソとブラジルレアルでマイナス50億円と同規模だった。同期間中にメキシコペソが13.8%安、レアルが1.7%安となるなかで影響額が同じになったことを踏まえると、同じ新興国通貨安でもレアル安の方がより影響が大きいとみられる。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジスト、村田雅志氏は、今後、ブラジル中銀は景気の改善を目指して緩やかな利下げを続けると予想。そのうえで「ドル高相場が続くなか、これまでパフォーマンスが比較的安定していたブラジルレアルも下げが大きくなる」との見方を示している。

<拡散する為替リスク>

調査会社IHSオートモーティブがまとめたライトビークル(乗用車および車両総重量6トン未満の商用車)の販売予測によると、日系自動車メーカーの全世界販売に対する新興国比率は16年の45%から、25年に56%まで高まる見通しだ。メキシコやブラジルのように「外国─外国」という物流も拡大し、外国通貨同士の為替変動リスクが拡散している。

みずほ銀行のチーフマーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は「トランプ氏が大統領に就任するまで具体的な政策が出てこないであろうことを考えれば、年内はドル高基調が止まる理由はない。政治不安のある新興国の通貨は売られやすい」と指摘。「新興国が資金流出に耐え続けていかなかればならないことを忘れてはいけない」と話す。

米大統領選後、対ドルで円安が10円以上進行した。日本の自動車大手の決算ではドル高/円安の影響が大きく出てくることから、「トランプ相場」の新興国通貨安のデメリットは円安メリットでカバーできる可能性が高い。ただ、マーケットが今後も拡大することを踏まえれば、新興国リスクへの警戒は怠れない。

(杉山健太郎 編集:伊賀大記、田巻一彦)

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http://jp.reuters.com/article/toyota-honda-nissan-idJPKBN13X0JG?sp=true



2016年株式市場、相場格言どおりだった=安倍首相
[東京 8日 ロイター] - 安倍晋三首相は8日都内で開かれた年末恒例のエコノミスト懇親会で挨拶し、申(さる)年となった2016年の株式市場について「申酉(さるとり)騒ぐ、との相場の格言通りの年になった」と指摘した。

もっとも8日の東京株式市場は終値ベースで年初来高値となったことで「よいタイミングで懇親会が開かれた」と語り、出席するエコノミストらに「うきうきするような(株価)予想をお願いしたい」と述べた。

今夏の参院選大勝など衆参安定多数である現状については「3本の矢を前に進めろとの国民の意思表示」とした。
http://jp.reuters.com/article/abe-stock-idJPKBN13X0ZR
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/507.html

[経世済民116] 欧州金融市場:国債が続落、ユーロは上昇−ECBが購入規模縮小へ 米週間新規失業保険申請減少 日本株、最高値更新、景気回復
欧州金融市場:国債が続落、ユーロは上昇−ECBが購入規模縮小へ
Stephen Kirkland、Anooja Debnath
2016年12月8日 22:15 JST 
8日の金融市場では、ユーロ圏の国債が総じて下げた一方、ユーロが値上がりする展開となっている。欧州中央銀行(ECB)は債券購入の規模を来年4月から縮小すると明らかにした。
  イタリア国債利回りは急上昇した。ECBが現行水準で債券購入プログラムを延長するとみられていたためだ。ユーロは対ドルで上昇し、このまま行けば引値で1カ月ぶり高値となりそうな勢い。欧州株の指標とされるストックス欧州600指数は上げ幅を縮小した。
  ニューヨーク時間午前7時51分現在、イタリア10年債利回りは前日比15ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.03%。ユーロは対ドルで0.5%高、ストックス600指数は0.3%高でそれぞれ推移している。
原題:Bonds Extend Losses as Euro Gains After ECB Cuts Stimulus Plan(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHVBHB6TTDS9


 


米週間新規失業保険申請:25.8万件に減少−4週平均は増加
Shobhana Chandra
2016年12月8日 23:23 JST

先週の米週間新規失業保険申請件数は前週比で減少した。
  8日の労働省発表によると、3日終了週の申請件数は前週比1万件減の25万8000件。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は25万5000件だった。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ikMBHYyxpSMk/v2/-1x-1.png
  より変動の少ない4週移動平均(季節調整済み)は25万2500件と、前週の25万1500件から増加した。失業保険の継続受給者数は11月26日までの1週間に7万9000人減って201万人と、この3週間で最も少なかった。
  統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Applications for Jobless Benefits in U.S. Fell in Latest Week(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHVDU9SYF01W01

 


ECB:債券購入9カ月延長、月額は600億ユーロに減額−金利は維持
Alessandro Speciale
2016年12月8日 22:02 JST 更新日時 2016年12月8日 22:30 JST

オペの最低応札金利はゼロ、中銀預金金利はマイナス0.4%で維持
必要ならばQEの期間延長、規模拡大へ−声明
 

欧州中央銀行(ECB)は8日、量的緩和(QE)プログラムの下での債券購入を2017年12月末まで延長するとともに、月々の購入額は来年4月以降、600億ユーロ(約7兆8800億円)に減らすと発表した。
  リファイナンスオペの最低応札金利はゼロ、中銀預金金利はマイナス0.4%、限界貸出金利はプラス0.25%で維持した。
  ECBは声明で、「見通しが悪化、もしくは金融環境がインフレ軌道の持続的修正がさらに進展することへの整合性を失った場合、プログラムの期間延長か規模拡大、またはその両方を実施する方針」を示した。
  政治的リスクがユーロ圏の回復見通しを曇らせる中、ECBは債券購入の期間を延長する一方で月購入額は減らすことで、非伝統的な金融緩和措置を長く持続させようとしていると考えられる。
原題:ECB Extends Bond-Buying at Reduced Pace Until End of 2017 (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHV29R6JTSEV01

 

日本株ことし高値、内外景気の回復期待−世界でリスク資産評価流れも
長谷川敏郎
2016年12月8日 07:57 JST 更新日時 2016年12月8日 15:36 JST

情報・通信がTOPIX寄与度トップ、上昇率では電気・ガス
11月の景気ウオッチャー調査が改善示す、株価は終盤一段高

https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iXUZ5wDGkDX0/v2/1200x-1.png

8日の東京株式相場は3日続伸し、主要株価指数が年初来高値を更新した。日米景気の回復期待や欧州中央銀行(ECB)の量的緩和延長観測などから、自動車など輸出株、証券や保険など金融株、情報・通信株中心に幅広く高い。原子力発電所の再稼働期待などで電力株は上昇率トップ。
  TOPIXの終値は前日比22.07ポイント(1.5%)高の1512.69、日経平均株価は268円78銭(1.5%)高の1万8765円47銭。ともに昨年12月30日以来の高値水準。
  アライアンス・バーンスタインの村上尚己マーケット・ストラテジストは、「トランプ次期米政権でオバマ時代とレジームが大きく変われば、ことし2%弱が予想される米成長率は来年3%に拡大するだろう。世界経済全体が持ち直し、業績の上振れ余地が高まる」と指摘した。この2日間は、欧州中央銀行(ECB)理事会を控えた欧州株動向が米国にも影響を与えたが、「背景には米国の成長率だけではなく、金融規制を含め経済環境が幅広く変わるという期待がある」と言う。
東証内
東証内 Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  トランプ米次期政権の経済政策が一段と景気を加速させるとの見方が強く、グローバルでリスク資産への資金流入が鮮明だ。7日の米国株は、大統領選挙後の上昇相場に通信株と不動産株の上げも加わり、S&P500種株価指数とダウ工業株30種平均が最高値を更新。通信株の代表であるAT&Tは1年ぶりの上昇率を記録した。欧州でも、8日の定例政策委員会で量的緩和策を延長するとの期待から、ドイツDAX指数やフランスCAC40指数などが長期もみ合いから上放れた。
  米景気の回復傾向や為替の円高トレンドが終了したとの見方から、国内でも業績改善期待が勢いづいている。8日午後に発表された11月の景気ウオッチャー調査は、現状判断DIが前月比3.2ポイント上昇し52.5となった。ゴールドマン・サックス証券では、米大統領選後の株高・円安を反映し、2014年3月の消費税増税の直前水準まで急回復したと分析。また、野村証券によれば、14日公表の日本銀行の企業短期経済観測調査(短観)で大企業・製造業の業況判断DIは9月調査の6から12、大企業・非製造業は18から19へ改善する見込みだ。
  この日は、海外投資家とみられる買いが株価指数を大きく押し上げた。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員は、「グローバル投資家はデフレを前提としたポートフォリオを組んでいたが、減税とインフラ整備による米景況感の改善でリフレ前提へややポジションを調整し、リスク資産に資金を振り向けている」とみる。米国と同様、まだ上昇相場が続くと想定する投資家がリスク資産に資金を振り向けるなら、日本でも「情報・通信など内需の出遅れ物色スタンスとなるのはリーズナブル」とも話した。

  東証1部33業種は電気・ガスや証券・商品先物取引、保険、その他金融、鉄鋼、情報・通信など31業種が上昇。上昇率トップの電気・ガスでは、九州電力の川内原発1号機の発電再開予定は11日となった。電力、通信の公益セクターが上昇率上位に並んだ点について、みずほ証券の倉持靖彦投資情報部長は、「米金利が低下し、出遅れの公益株が買われた米国と同様の流れ」との見方を示した。一方、トランプ米次期大統領が価格引き下げ姿勢を示した医薬品のほか、サービスの2業種は下落。
  売買代金上位ではソフトバンクグループ、政府が融資枠拡大方針を固めたと共同通信などが報じた東京電力ホールディングスが大幅続伸。月次売上高が減少した電通は安い。東証1部の売買高は28億1860万株、売買代金は3兆3930億円。代金は11月11日以来、およそ1カ月ぶりの高水準。値上がり銘柄数は1414、値下がりは485。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-07/OHU6YZ6K50XV01
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/510.html

[政治・選挙・NHK217] 働く女性も「かわいい女の子」演じる−安倍首相夫人の昭恵さん  エドモン・ド・ロスチャイルド、香港拠点を閉鎖へ 
働く女性も「かわいい女の子」演じる−安倍首相夫人の昭恵さん
延広絵美、Isabel Reynolds
2016年12月8日 00:00 JST 更新日時 2016年12月8日 12:56 JST
 
特に大企業は「男社会なのかなという感じ」−昭恵さん
女性の視点が入れば良いものが生まれる−インタビューで語る
 
日本の企業はいまだ男社会で、有能な女性でも「かわいい女の子」を演じる傾向にある−−。
  首相夫人の安倍昭恵さん(54)は先週のインタビューでこんな見方を披露した。日本の男性は「すごく有能でバリバリ働いている女性よりは、何となくかわいらしい女性を好む傾向」にあり、女性も「男性が良いなと思う女性を演じる傾向にある」という。その結果、「すごくできる女性でもかわいい女の子を演じてしまうところがある」と話した。
安倍昭恵さん
安倍昭恵さん Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
  安倍晋三政権は働く女性を増やし、経済成長につなげようという「ウーマノミクス」を推進。女性管理職の割合を30%に引き上げることを目標に掲げているが、道のりは険しい。帝国データバンクが7月に全国2万社以上を対象に実施した調査によると、女性管理職の割合は平均6.6%と前年に比べ0.2ポイントの上昇にとどまった。
  昭恵さんは、自らが社会人になった1980年代前半と比べると、女性の選択肢が広がったと実感。最近は育児を積極的に関わる「イクメン」も登場しているが、企業で女性の立場や役割の変革はまだ十分とは言い難いと見ている。特に大企業では、「男性と女性が一緒に働いていくというよりも、男社会なのかなという感じがする」と話した。
  もっとも「男性と同じような働き方、偉くなるのが良いみたいなのは私の感覚とは違う」とも話す。政府の働き方改革にしても、夜遅くまで残業する従来のやり方ではなく、「短い時間の中でも効率よく女性の今までにない視点が入っていくような、そんな活躍をしてもらえたら」と期待を込める。
  資生堂などの社外取締役も務める石倉洋子・一橋大学名誉教授は、日本ではまだ男性支配が続いている業界が多く、柔軟な働き方が今後の変革の鍵になるとみる。諸外国では働くスタイルが大きく変化しているが、日本ではテクノロジーが大きな変革の原動力として認識されていないため、諸外国にやや遅れていると指摘。将来のニーズに合わせて働くスタイルを変えることができれば、それは取締役会の女性割合をただ語るより重要だと話した。
女性の視点
  結婚前に広告代理店の電通に勤務した昭恵さんは、「女性の視点が入っていた方が良いものが生まれてくるし、経済にも良い影響があると思う」と語る。
  東京で居酒屋を経営するほか、首相の地元・山口県下関市で無農薬米を栽培。農水省の「農業女子プロジェクト」にも関わっており、農業に従事する女性の視点で自動車、化粧品、肌着を扱う企業などと商品開発も行った。女性の発想がこれまでにない商品につながったと感じている。
  今の安倍内閣に女性閣僚は、稲田朋美防衛相ら3人。昭恵さんは、自身の政界進出については「全く関心がない」というが、政治の世界でも男性の視点だけで政策立案するのではなく、女性の意見を取り入れることが必要で女性議員を増やす必要があるとの考えも示す。ただ、「女性同士も意外と足を引っ張り合うこともある」ため、多少意見は違っても「女性だから手を取り合っていこうというふうになれば」と語った。
  総務省の労働力調査では、女性の労働力人口は2015年は2842万人となり、1985年からの30年間で約2割増えた。男女共同参画白書によると、共働き世帯は80年以降に増加。特に97年からは専業主婦世帯を上回り、その差は年々拡大している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-07/OHQL5G6JTSEF01

 


エドモン・ド・ロスチャイルド、香港拠点を閉鎖へ
Alfred Liu
2016年12月8日 19:03 JST
 
ウエルスマネジメントを手がけるエドモン・ド・ロスチャイルド(スイス)は、香港の拠点を閉鎖すると明らかにした。
  同社は発表文で「閉鎖の意向」を示した。閉鎖により影響を受ける従業員数や地域での運用資産額など詳細には触れていない。
  同社は今後、SMBC日興証券やサムスン・アセット・マネジメントなどとの「選択的な戦略パートナーシップ」を通じ、アジアでの事業機会を追求していく計画だという。
  発表文によると、グループ全体の運用資産額は6月末時点で1500億ユーロ(約18兆4000億円)だった。
原題:Edmond de Rothschild Says It’s Closing Hong Kong Business(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHV2446JIJUO01
http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/282.html

[経世済民116] ECB、債券購入を来年4月以降月額600億ユーロに縮小 17年末まで継続 トランプ政策、財政問題招く=ノーベル経済ハート
ECB、債券購入を来年4月以降月額600億ユーロに縮小 17年末まで継続

[フランクフルト 8日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は8日に開いた理事会で、現在月額800億ユーロとしている債券買い入れの規模を来年4月から月額600億ユーロに縮小することを決定した。来年3月末までは現行のペースを維持する。

買い入れは2017年末まで、もしくは必要に応じてそれ以降も継続するとした。

ただECBは声明で「見通しが悪化したり、金融情勢がインフレの道筋の持続的な調整に向けた一段の進展に整合しないものになった場合、理事会は買い入れプログラムの規模拡大、もしくは買い入れ期間の延長を決定する」とし、将来的に買い入れ規模を再び拡大する道も残した。ドイツなどに配慮したと見られる。

市場ではECBは月額800億ユーロのペースは維持しながら買い入れ期間を6カ月延長するのではないかとの見方が出ていたため、今回の決定は予想外だった。 ECBは主要政策金利を0.00%に、中銀預金金利をマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。据え置きは予想通りだった。

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http://jp.reuters.com/article/ecb-tapers-bond-purchase-idJPKBN13X1M0

 

 

欧州中銀、量的緩和を縮小 17年12月まで9カ月延長
2016/12/8 23:17
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 【フランクフルト=赤川省吾】欧州中央銀行(ECB)は8日の理事会で、国債を大量に買い取る量的金融緩和の規模を2017年4月から縮小すると決めた。毎月の購入額を600億ユーロ(約7兆3千億円)とし、これまでより200億ユーロ減らす。一方で、緩和の終了時期は9カ月延ばし「17年12月末」とする。景気の先行きには不透明感が残るが、底堅さが目立ってきたと判断したようだ。

 ECBはユーロ圏19カ国の国債や欧州系の国際機関が発行する債券のほか、社債などを買い取っている。銀行や企業にマネーを流し込んで経済を活性化させ、物価を上向かせるのが狙いだ。ECBは15年1月に量的緩和の導入を決定。その後、期間を延長し、規模も拡大した。

 今回の理事会では主要な政策金利の据え置きを決めた。さらに「17年3月まで」としていた量的緩和を17年末まで続けることで合意した。

 緩和期間を延長すると同時に、毎月の買い取り額は800億ユーロから600億ユーロに減らす。これは金融政策の軸足を「追加緩和」から「縮小」に移したことを意味する。もっとも、市場への影響にも目配りして毎月の購入額を一気に減らすことは避け、量的緩和縮小のスピードは非常に緩やかなペースになるというメッセージも込めた。

 とはいえ、ECBが政策の軸足を緩和縮小の方向に軌道修正したことは、金融市場にとって「サプライズ」となった。域内では、ドイツなど北部勢が金融緩和の縮小を求めていたが、不用意に緩和を打ち切れば金融市場が不安になりかねない。このため、多くの市場関係者は買い取り規模の現状維持を見込んでいた。

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Business | 2016年 12月 8日 23:34 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨

[フランクフルト 8日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は8日に開いた理事会で、現在月額800億ユーロとしている債券買い入れの規模を来年4月から月額600億ユーロに縮小することを決定した。来年3月末までは現行のペースを維持する。

買い入れは2017年末まで、もしくは必要に応じてそれ以降も継続するとした。

ECBは主要政策金利を0.00%に、中銀預金金利をマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。据え置きは予想通りだった。

ドラギECB総裁の会見での発言要旨は以下の通り。

<買い入れ規模を月額600億ユーロとした理由>

インフレ目標への持続的な回帰に関する見通しは、買い入れペースを月額600億ユーロとしたプログラム開始初期の状況とそれほど大きく変わらないと、現時点でわれわれは基本的に判断した。

より具体的に言えば、デフレリスクはおおむね解消した。ただ先行き不透明性はなお払しょくされていない。

<スタッフ予想で2019年のインフレ見通しを1.7%としたことは、2%をやや下回るとするECBの目標達成を意味するか>

意味しない。われわれは継続する必要がある。

<テーパリング>

テーパリング(資産買い入れ縮小)については協議していない。

<成長リスク>

ユーロ圏の成長見通しを取り巻くリスクは引き続き下方向に傾いている。

<世界経済の回復強まる>

世界経済の回復は多少ながら強まる兆候が見受けられる。一方、ユーロ圏の経済成長は構造改革の進ちょくの遅れや一部セクターで残っているバランスシート調整によって圧迫される見通し。

<インフレを注視>

理事会は物価安定の見通しがどのように展開するか注視し、目標達成に向け正当化されるなら、責務の範囲内で利用可能なあらゆる手段を用いて対応する。

<回復は強まりつつある>

(政策の)調整は、ユーロ圏経済の緩やかではあるが強まりつつある回復、およびいまだ抑制されている基調的なインフレ圧力を反映している。

<資産買い入れの新規定>

公的セクター買い入れプログラムの償還レンジについて、買い入れ対象の残存償還期間の下限を現行の2年から1年に引き下げることで拡大する。中銀預金金利を下回る利回りの国債買い入れも必要な範囲で認められる。

<資産買い入れ再び増額も>

見通しが悪化したり、金融情勢がインフレの道筋の持続的な調整に向けた一段の進展に整合しないものになった場合、理事会は買い入れプログラムの規模拡大、もしくは買い入れ期間の延長を決定する。
http://jp.reuters.com/article/ecb-draghi-speaks-after-council-meet-idJPKBN13X1NQ?sp=true

 

 

トランプ氏の政策、財政問題招く恐れ=ノーベル経済学賞ハート氏

[ストックホルム 7日 ロイター] - 今年のノーベル経済学賞の受賞が決まった米ハーバード大学のオリバー・ハート教授は7日、ストックホルムで行われた記者会見で、減税とインフラ投資拡大を盛り込んだトランプ次期米大統領の政策構想について、米政府の財政を危機にさらす可能性があると指摘した。

ハート氏はトランプ氏の計画の詳細は「それほど素晴らしくはない」としつつも、国内の多くのインフラが劣悪な状態にあるため、投資の拡大は良いことかもしれないと発言。その上で「減税も行うことは、将来的に予算面のあらゆる問題につながるだろう」と警告した。

ハート氏は、トランプ氏が唱えている貿易協定破棄や富裕層減税を批判し、「むしろ富裕層に対する増税を支持する」と述べた。

また、トランプ氏が大統領就任後に実際にどのような政策を進めるか予想することは難しいと語った。

ハート氏は、ノーベル経済学賞を共同受賞した米マサチューセッツ工科大のベント・ホルムストローム教授と会見に臨んだ。両氏は10日に現地で行われる授賞式に出席する。

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[原発・フッ素46] フランスの原子力発電最大手を襲う難問 The Economist EDFが保有する原子炉58基のうち18基が稼働停止
フランスの原子力発電最大手を襲う難問

The Economist

EDFが保有する原子炉58基のうち18基が稼働停止
2016年12月9日(金)

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/120700112/p1.jpg

フラマンビル原子力発電の建設風景(写真:ロイター/アフロ、2013年)

 フランス電力(EDF)にとって辛い時期が続いている。同社はフランス全世帯の88%に電力を供給し、市場をほぼ独占する企業だ。現在、同社が所有する原子炉58基(国内電力の4分の3を供給する)のうち少なくとも18基が稼働を停止しており、発電量が激減している。同社によると、昨年は417テラワット時(TWh)だった原発による年間発電量が今年は378TWhまで落ち込む可能性がある。

 現在は8基が未使用の状態にある。数基については数週間、数カ月にわたって再稼働できない場合があり得る。

 発電所は1980年代以来、最も高いペースで石炭を燃やしている。電力の輸入が急増し電気料金が急騰する中、寒波による停電を心配する国民に対し、政府はその可能性を否定しなければならない事態に陥っている。

鍛造品に強度不足の欠陥

 こうした危機的状況が生じた原因はEDFが保有する原子炉全般に使われている部品にある欠陥と見られ、容易には解決できないことが窺える。今年の夏、フランスの原子力規制機関、原子力安全局(ASN)は原子炉の部品、主に円筒型蒸気発生器の基礎部分について緊急検査を命じた。

 仏原子力大手アレバ傘下の仏メーカー、クルゾ・フォルジュと日本のサプライヤー、日本鋳鍛鋼が製造した鍛造品の炭素濃度が高いことが判明、検査官の懸念を集めている。一部には炭素堆積物が許容水準を50%以上超えているものもあり、鍛造品の温度が急激に変化した場合に亀裂が生じる危険性がある。

 こうした欠陥がどの範囲まで広がっているのか、またアレバの従業員がデータを改ざんしたのかについては今のところ不明である。ASNはアレバがこの問題の存在を見抜けなかったことに驚きを隠さない。ASNは現在、過去数十年分のファイル数千件について監査を進めており、今後も新たな欠陥が浮上すると見ている。

 EDFが負担するコストは増加している。原発の閉鎖によって利益が失われた。加えて、発電機1基を切り替えるのに最大6ヵ月の期間と1億5000万ユーロ(約180億円)の費用を要する(原子炉1基は発電機3基を持つこともある)。

 EDFは11月にアレバの原子炉プラント部門(アレバNP。アレバの大部分でクルゾ・フォルジュを含む)を25億ユーロ(約3000億円)で買収することを決めている。巨額の資金をつぎ込んで、わざわざ“放射能性物質入りのディナー”を一気に呑み込むこととなった。

欧州加圧水型原子炉が抱える不安

 アレバとEDFは欧州加圧水型原子炉(EPR)という重要な合弁事業を進めている。アレバが建設するもので、そのほとんどをEDFが運用する。そしてここでも鍛造品の欠陥が問題となっている。欠陥が初めて発見されたのは昨年、シェルブール近くで建設中のEPR、フラマンビル原発3号機に設置された原子炉容器においてであった。これに加えて、安全弁の設計も深刻な不安材料となっている。

 当局はフラマンビル原発の今後に関する方針を2017年半ばに決定する予定だ。さらなる検査や設計変更が必要となれば、操業開始は2018年をはるかに超えるかもしれない。そうなれば原発先進国としてのフランスの名声は新たな打撃を受けることになる。

 欧州にあるもう一つのEPRはフィンランドのオルキルオトに建設されている。完成が予定より数年遅れているうえ、コストも予算の3倍に膨れ上がっている。

 各方面の遅延はEDFが進める新たなEPR建設にも障害となり得る。同社は245億ポンド(約3兆5500億円)を投じて、英ヒンクリーポイントにおいてEPR2基を建設する計画だ。英国で借入保証を得るには一定の条件を満たす必要がある。2020年までにフラマンビル原発を稼働させることも条件の一つと伝えられている。

 ロンドンに拠点を置くエネルギー専門家のスティーブ・トーマス氏はEPRを「失敗作」と呼ぶ。多くの原発業界関係者が同様の見解を持つ。EDFはそれでもEPR計画を推し進めており、経済的な負担は増える一方だ。3月にはEDFのトーマス・ピケマルCFO(最高財務責任者)が辞任した。同氏はこの時、ヒンクリーポイント原発について「費用を負担しきれるものではない」と語っている。

 危機感はこれから増していくだろう。パリで活動する原子力エネルギー専門家のイーブズ・マリニャック氏によると、EDFは財務面で既に行き詰まっているという。EDFの信用格付けが急低下しないのは政府の支援を受けているからにすぎないとアナリストは指摘する。

 そしてEDFに目をつけているのはASNだけではない。11月22日にはフランスの規制当局がEDFの事務所に踏み込んだ。当局はEDFが支配的な地位を利用して競合他社を圧迫し、(ここ数年の電気料金の下落で収益を減らしながらも)本来あるべき水準を超えて料金を吊り上げていることを示す証拠を捜索した。EDFの株価はこの2年間で半額にまで値を下げている。

続々と寿命を迎える仏原子力発電所

 将来の見通しは暗い。今後10年間、毎年いくつかの原子力発電所が寿命を迎える。フランスの原発の約5分の4は1970年代終わりから10年ほどの間に建設された。原発の耐用年数は40年間だ。

 エネルギー政策担当者は50年もしくはそれ以上使い続けられるよう延命措置がとられるだろうと想定している。だが今回の欠陥部品の問題を受け、ASNは延長を躊躇するかもしれない。あるいはより高いコストを課すことも考えられる。

 原発反対の立場をとる活動団体グリーンピースに所属する原子力技師のシリル・コーミエール氏は、全てを修理すればEDFは600億〜2000億ユーロ(約7兆4000億〜24兆5000億円)の費用を負担することになりかねないと言う。

 廃炉にするにも巨額の経費が必要だ。フランスはこれまでに大型の原発を閉鎖したことがない。EDFは廃炉に必要なコストを拠出できないかもしれない。留保している360億ユーロ(約4兆4000億円)の資金は、フランスほどの規模の原発を持たない隣国ドイツが備える450億ユーロ(約5兆5000億円)よりも少ない。

 そのうえ核廃棄物の問題がある。前出のマリニャック氏は、アレバのラ・アーグ再処理工場に設置された、使用済み燃料を保管する5つのプールはほぼ満杯の状態だと指摘する。不幸は重なるものだ。

© 2016 The Economist Newspaper Limited.
Dec 3rd – 9th 2016 | PARIS
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。


このコラムについて

The Economist
Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/120700112/
http://www.asyura2.com/16/genpatu46/msg/899.html

[原発・フッ素46] 三菱重工、仏アレバに苦渋の出資 原子力から引くに引けず 
三菱重工、仏アレバに苦渋の出資 原子力から引くに引けず
2016/12/8 21:16
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 三菱重工業と日本原燃が仏原子力大手のアレバへの約10%の出資で最終調整に入った。400億〜500億円に上る出資額は先の見えない原子力事業への投資としては異例ともいえる規模だ。受注が確実視されていたベトナムの原子力発電所は計画が白紙撤回されるなど、海外への輸出は思うように進まない。引くに引けない三菱重は苦渋の決断を強いられた。

 国内で稼働している原発は九州電力の川内原発など、わずかしかない。再稼働や安全、耐震対策強化などで目先の仕事はあるものの、「ハードの受注は少ない。製造面はきつい」(三菱重の宮永俊一社長)。国内での新設需要が見込めない状況で両社とも設備や人員を維持するための仕事量の確保に迫られている。

 三菱重は2006年にアレバと提携し、「第3世代プラス」と呼ばれる最新鋭の中型原子炉を共同開発してきた。加圧水型軽水炉(PWR)の大型炉で競い合ってきた両社が組んだことで日立製作所と米ゼネラル・エレクトリック(GE)、東芝と米ウエスチングハウス(WH)と並ぶ3陣営体制は固まった。

 環境負荷の低さで「原子力ルネサンス」とはやされた00年代こそ順調だった原発事業も11年の東京電力の福島第1原発事故で市場環境は一変。世界各地で受注の延期やキャンセルが相次ぎ、経営不振に陥ったアレバは巨額の赤字を計上した。

 間接出資も含めればアレバに9割弱を出資している仏政府も自らの負担は減らしたいのが本音。不採算事業を除外した上で新会社を設立し、3割強の出資を日本、中国などの外資に求めていた。原発が急増する中国では仏企業が参画しやすくなり、新興国輸出で連携する日本ともさらに結びつきを強められる。

 社内の根強い懸念の声を振り切り、三菱重がこれにほぼ満額回答で応えたのは「20年、30年後にもう一度、原子力ルネサンスが来る」(関係者)可能性に賭けるから。国際エネルギー機関(IEA)によると、30年の原子力による発電電力量は13年の1.6倍に増える見通し。ドイツなど原発に背を向ける国がある一方、中国、インドが伸びをけん引する。

 ただ、中国とインドで東芝傘下のWHが受注に突き進む一方、三菱アレバ連合は旗色が悪い。ベトナムの計画は11月、財政難などを理由に白紙撤回された。トルコでも事業可能性調査(FS)が遅れている。「額が大きい。今回のアレバへの投資がすぐに回収できるとは思えない」。将来を見据えた巨額出資に関係者の見方は慎重だ。

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会社設立、業務提携、アレバ、三菱重工業、ウエスチングハウス、ゼネラル・エレクトリック、東芝、日立製作所、東京電力、日本原燃、原子力発電所、九州電力、川内原子力発電所

CREカンファレンス〜識者が企業価値向上の重要性を説く/三菱地所リアル
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三菱重工と原燃

仏原子力大手アレバに出資へ
毎日新聞2016年12月8日 19時58分(最終更新 12月8日 20時23分)
フランス
青森県
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 三菱重工業と日本原燃(青森県六ケ所村)が、経営再建中の仏原子力大手アレバに数百億円を出資する方向で調整していることが8日、分かった。出資によって原発の廃炉事業や使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル事業での連携を強化する。

 アレバは世界的な原発需要の低迷などで業績が悪化。仏政府が主導して原子炉製造子会社のアレバNPを仏電力公社に売るなど不採算事業を切り離した上で、主要事業を新会社に移して再建を目指す計画。仏政府は現在、アレバに間接分も含めて9割近くを出資しているが、再建計画では持ち分を7割弱まで下げ、残りを外国企業の出資に頼る。

 三菱重工と原燃は、この新会社に出資して株式を計1割程度保有する方向だ。2社ともアレバとは長く連携しており、「切っても切れない関係」(電力大手)にある。国内で原発廃炉が本格化したり、核燃料サイクル事業を維持したりするには、「3社の組み合わせは自然な流れ」(経済産業省幹部)との見方が広がっている。

 また、新会社には中国の原子力企業なども出資を検討しているとされ、2社の出資には中国へのけん制の意味もあるとみられる。

 一方、三菱重工は今回の出資とは別にアレバNPへの出資についても、売却先の仏電力公社と交渉を進めている。【宮島寛、宮川裕章】

 【ことば】アレバ

 ウラン採掘から原子炉開発、使用済み核燃料の再処理、原発解体まで原子力に関するあらゆる分野を手がけるフランスの原子力総合企業。仏政府が約9割を出資している。福島第1原発事故後の世界的な原発需要の低迷を受け、2015年12月期は最終赤字となり、経営危機に陥っている。三菱重工は1991年に核燃料サイクル分野でアレバと合弁会社を設立したのを皮切りに協力関係を深め、13年に共同開発した新型原子炉「アトメア」がトルコに採用されることが固まるなど「切っても切れないパートナー」(電力大手)になっている。日本原燃は青森県六ケ所村の再処理工場建設で、アレバから全面的な技術協力を受けており関係が深い。

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http://mainichi.jp/articles/20161209/k00/00m/020/048000c
http://www.asyura2.com/16/genpatu46/msg/900.html

[経世済民116] 人民元の流出阻止図る中国政府vs. 売り急ぐ国民 インド中銀、利下げ見送りの代償は なぜ中国のスーパーから淡水魚が突然消
人民元の流出阻止図る中国政府vs. 売り急ぐ国民
中国では資金流出をめぐる政府と国民の攻防が激しさを増している
資金流出が加速する中、中国政府は個人の外貨両替限度額を見直すべきかどうか判断を迫られている

By INGLING WEI
2016 年 12 月 8 日 18:00 JST

 【深セン】専業主婦のシェン・ジアさん(36)の新年の抱負は、2017年になったらすぐにできるだけ多くの人民元を米ドルと交換することだ。

 他の中国国民と同様に、シェンさんは年間5万ドル(約570万円)相当の人民元を外貨に両替できるが、元相場が下落したことで数カ月前に今年分の枠を使い切ってしまった。シェンさんの家族や親戚も同じだ。

 中国政府が資金流出と外貨準備の減少を必死で食い止めようとしている中、個人の年間外貨両替限度額が再び見直される可能性が出ている。

 元売り圧力は弱まっていない。中国人民銀行(中央銀行)が7日発表した11月末の外貨準備高は690億ドル減って3兆0520億ドルとなり、11年3月以来の低水準に落ち込んだ。減少は5カ月連続で、その幅は今年1月(約1000億ドル)以来の大きさを記録した。

 海外旅行でドルを使おうと考えているシェンさんは「みんな人民元はもっと下落すると予想している。だから急がなければ」と話した。

 資金流出の加速が見込まれていることで、中国政府は外貨両替限度額を見直すべきかどうか判断を迫られている。政府関係者らは、非公式にその可能性を否定しながらも、この問題を懸念していることを認めている。

 ある政府顧問は「人民元の一方的な下落が続くと人々が考えれば、当然、彼らはもっと外貨と交換したがるだろう」と語った。

 ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドの中国担当エコノミスト、ハリソン・フー氏は、今後、家計の外貨購入制限が強化される可能性が高いと予想。「『(金融当局の)窓口指導』を受けて、銀行は暗黙の数量規制を課すかもしれない」と述べた。

 個人の外貨両替限度額は、幅広い金融自由化の一環として、07年に2万ドル相当から5万ドル相当に引き上げられた。限度額の引き下げは、経済についての悲観的なメッセージを送ることになり、人民元のろうばい売りを招くリスクを高める。だが引き下げなければ、今ある資金が大量に流出して元相場に打撃を与え、人民銀行は外貨準備のさらなる取り崩しを余儀なくされかねない。

 今のところ中国の外為当局は、外貨両替限度額が引き下げられるとの臆測を退け、資金を国内にとどめるための別の方法を試みている。国務院(内閣)は先ごろ、中国企業による海外投資の抑制を目的とする新しい規則を制定。また、規制当局は銀行に対し、外国企業と国内企業両方の国外送金額を大幅に制限するよう指示した。

 さらに当局者らは、資金流出を防ぐために「良心に訴える」という手段に出た。先月末、中国共産党の機関紙「人民日報」には、人民元を外貨に交換する「大衆にやみくもに従わない」よう国民に呼び掛ける記事が掲載された。

 人民銀行が15年8月に突然、人民元を切り下げた後、同年末に資本逃避の不安が広がり始めた。同行はこれを食い止めようと、元相場を下支えするために大規模な市場介入を行った。今年初めに新しい為替制度が制定されたのも元相場の安定化が目的だった。

 国際通貨基金(IMF)が特別引き出し権(SDR)の構成通貨に人民元を正式に採用した直後の10月上旬以降、中国政府は元安を容認する姿勢を強めている。米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利してからドルが急上昇したことで、ドルに対する元の下落率は年初来で6%に達している。

 元安が続く中、米国に留学している学生の親など、所得は人民元で受け取っているが支払いはドルで行わなければならない中国人にとって、外貨両替枠を早急に使うことが急務となっている。アナリストと銀行関係者によると、中国では、例えば家族の誰かが海外で不動産を購入できるように、この枠を使わないで取っておくことが多い。

 企業も外貨を多めに保有しようとしている。北米市場で製品を販売している深センの玩具メーカーのオーナー、ドゥー・ヤーリアンさんは、ドル建ての利益を人民元と交換するのをできるだけ先延ばししている。他の多くの輸出業者と同様に、ドゥーさんも元相場がさらに下落すると利益が得られるデリバティブ取引を行っている。

 世界の大手金融機関が参加する国際的な組織である国際金融協会(IIF)は、今年1?10月の中国からの資金純流出額は5300億ドルと試算している。だが一部のアナリストは、中国では人民元をドルと交換せずに、直接海外に送ったり持ち運んだりする企業と個人が増えているため、純流出額はIIFの試算を上回っているとみている。

 先週末に北京で開かれたフォーラムにおける人民銀行の顧問、盛松成氏の発言内容を記録したものによると、同氏は人民銀行に対し、人民元に対する市場の信頼を維持するために外貨準備の一部を使用するよう提案した。

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インド中銀、利下げ見送りの代償は
By ANJANI TRIVEDI
2016 年 12 月 8 日 18:31 JST

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

***

 インド準備銀行(中央銀行)は現金によってまひ状態に陥っている。市中では現金が不足し、銀行では現金があふれている。

 中銀は7日、主要政策金利であるレポ金利を6.25%に据え置くという予想外の決定をした。11月9日にナレンドラ・モディ首相が突然、高額紙幣を廃止したことで経済が停滞したため、利下げは確実だというのが大方の見方だった。

 中銀は実際のところ、経済成長見通しを下方修正している。だが、景気停滞と物価上昇が同時に起きるスタグフレーションに苦しんだ時と同様、インフレも警戒している。

 高額紙幣廃止の計画が実行されて以降、1700億ドル(約19兆2500億円)もの現金が銀行に滞留していることから、中銀は利下げではなく、異常事態に陥った金融システムを修復しようとしている。

 中銀は11月26日に現金準備率を4%から100%に引き上げるという場当たり的な措置をとった。今月7日にはさらに現金を吸収するため、政府の承認を得て6000億ルピー相当の特別債券の入札を実施した。また、現金準備率の引き上げ措置を10日に撤回すると発表した。

 このことは、混乱しているインドの銀行にとっていくらか助けになるはずだ。一部の銀行は、手元資金が膨らんだため預金金利を引き下げた。だが預金は貸出金ほど圧縮することができない。銀行の預金残高に対する貸出金残高の割合を示す預貸率は、11月前半時点で大幅に低下していた。

 実体経済は、打撃を受けていることを如実に物語っている。同国メディアの各種報道によると、消費財の販売は落ち込み、農産物の流通は滞り、不動産取引は干上がっている。高額の旧紙幣から新紙幣への交換は今年末まで続くため、経済への打撃はさらに拡大しそうだ。

 すべての条件が同じであれば、利下げは避けられないはずだ。だが中銀は現金逼迫(ひっぱく)に対処しようとしている。利下げしないことの代償は痛みを伴うものになりそうだ。

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なぜ中国のスーパーから淡水魚が突然消えたのか

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」

「禁止薬物検査」告知で浮かび上がった活魚売場の闇
2016年12月9日(金)
北村 豊
 2016年11月19日、“北京物資学院”と“中国商業法研究会”が共同で主催する「第11回中国経済・法律フォーラムおよび市場流通法制フォーラム」が、北京市“通州区”にある北京物資学院で開催された。このフォーラムで中国の環境汚染に関する講演を行った“首都経済貿易大学”法学部教授の“高桂林”は、中国が直面する土壌汚染について次のように語った。

毒の環境と毒の米と

【1】中国は世界の9%にも満たない耕地面積で、世界人口の22%以上の人口を養っているというのに、環境問題が絶え間なく出現し、土地面積は絶えず減少している。大多数の農村地区や貧困地区では、その食物は主として地元政府からの配給に頼っている。但し、統計によれば、中国では2015年の食糧不足が3000万トンにも達したのに、土壌の重金属汚染を受けた食糧が毎年1200万トンに上り、その損失額は毎年200億元(約3300億円)に及んでいる。

【2】2014年に発生した湖南省の“鎘米(カドミウム汚染米)”事件<注1>の例を見れば分かるように、現在中国が直面している土壌汚染の問題は、従来から言われている環境汚染や生態破壊といった問題だけでなく、土壌汚染に起因する食品の安全に関わる事故が大衆の健康に危害をおよぼしていることに直接的かつ具体的に反映されている。土壌汚染とは、重金属、農薬、抗生物質や持久性の有毒有機物などの汚染物質が土壌に入り、土壌の自浄能力を上回って、土壌の物理的、化学的、生物的な性質を改変させ、農産物の生産量や品質を低下させて、人体の健康に危害をもたらす現象を指す。

<注1>湖南省のカドミウム汚染米事件は2013年に発生し、翌2014年に改めて問題が発生した。2013年の事件については、2013年5月30日付の本リポート「広東省の人々を不安に陥れたカドミウム汚染米」参照。

【3】土壌汚染は潜伏性と持久性という特徴を持ち、汚染物質が一旦土壌に入ると、土壌の中で数世紀にわたってその属性を持続し、主として皮膚接触、汚染された水、汚染された農作物の3ルートを経て人体に入り、人体細胞に病変を発生させる。土壌汚染の特徴は、これと同時に食品の安全に関わる問題の防止に困難をもたらしている。土壌と大気、水などの自然資源が相互に作用して、汚染速度や範囲を激化させ、汚染処理時にその難度とコストを増加させる。例えば、ごみ埋め立て場が作り出した土壌汚染は雨水を通じて地面に浸透して地下水を汚染し、汚染された地下水は河川へ流入したり、灌漑を通じて灌漑地区の土壌を汚染させる。

 香港紙「東方日報」が2015年4月1日に報じた中国の土壌汚染に関する記事には以下の記述があった。

(1)湖南省は、古くから中国の米の主産地として知られ、“九州糧倉(中国の食糧倉庫)”<注2>と呼ばれていたが、今なお米の生産量は全国生産量の約60%を占めている。しかし、湖南省は非鉄金属の生産量が国内最高レベルの省の一つであることから、近年行われている非鉄金属の大規模な無秩序開発により土壌の重金属汚染が深刻化し、一部の米サンプルのカドミウム含有量は国家基準を21倍も上回っている。重金属が土壌に蓄積されると、土壌から放出されるまでには最短でも10年、長ければ100年が必要になる。

<注2>“九州”とは「中国全土」を指す。古来、中国は九つの州に分けられていたことに由来する。

(2)あるネットユーザーは、中国政府は口では「人権の第一要素は生存権だ」と言うが、もし庶民の「食べる」、「飲む」、「呼吸する」という基本的な生存活動すらも脅かされるなら、「人権はどこにあるのか」とインターネットの掲示板に書き込んだ。これを受けて、ある環境保護に関わる人物は次のように述べた。すなわち、“毒大米(毒の米=カドミウム汚染米)”だけでなく、中国の庶民が吸っているのは毒の空気であり、飲んでいるのは毒の水で、庶民は毎日24時間常に毒の環境の中に身を置いており、空気から土壌、さらには水まで汚染され、食道がんや肺がんを引き起こし、中国は総合的な汚染を形成している。

 こうして見ると、中国の環境汚染は極めて深刻な状況にあり、土壌汚染によって米を含む食糧や野菜、果物などの食品類は安全性に問題があり、人体の健康に危害をもたらす危険性が高いということが言える。しかし、問題はそれだけにとどまらないのだ。

 中国政府“国家食品薬品監督管理総局”(以下「国家食薬総局」)は、11月3日付で『経営面に重点を置いた水産物の特別検査を展開する通知』を同総局のウェブサイトに掲載した。この通知は“食品安全監督管理二司(食品安全監督管理二局)”が、北京市、遼寧省、河北省、山東省、上海市など12の省・市政府の食品薬品監督管理局に宛てたもので、11月から12月にかけて、北京市、瀋陽市(遼寧省)、石家荘市(河北省)、済南市(山東省)、上海市など12の大中都市で、水産物の品質安全およびその経営面における禁止薬物の違法使用に対する重点検査の実施を通知したものだった。

通知を合図に水槽が空に

 国家食薬総局のウェブサイトにはこの種の通知が多数掲載されているし、同ウェブサイトは関係者以外で見ている人は少ないので、同通知は一般には知られていなかった。ところが、同通知の掲載から2週間が過ぎた11月17日頃から、北京市内で不思議な現象が出現し始めた。それは北京市内にある“物美(wu mart)”、“京客隆”、“超市発”など、多数の大型スーパーマーケット(以下「大型スーパー」)の“活魚(生きた魚)”売場から次々と淡水魚が消えたのである。活魚は一般に透明な水槽に入れられて販売されているが、その水槽の中に淡水魚は影も形もなかった。この現象は北京市のみならず、済南市でも見られた由で、済南市内の大型スーパー5軒で活魚売場の水槽から淡水魚が姿を消したと報じられた。

 中国の海鮮レストランなどでは、水槽の中で泳いでいる魚を客自身が選んだり、店側が選んだ魚を客に見せて了解を取り付けた後に、その魚を調理して客に提供するのが通例である。近年では中国人も海水魚を大量に食べるようになったが、魚が生きていて新鮮であることを確認できる活魚では、何と言っても河や湖に生息する淡水魚が主流であり、今ではその多くを養殖に頼っているとは言え、淡水魚の人気は高い。従い、魚料理が好きな人は活魚の淡水魚を店から買って帰り、自宅で調理して食べる。活魚は“清蒸(調味料を使わずに蒸籠で蒸すこと)”するのが一般的であり、魚が蒸し上がったら千切りにしたネギを乗せ、加熱した油と醤油をさっとかけて食べるのだが、これが非常においしい。

 淡水魚には、養殖が容易な“黒魚(ライギョ)”、“鯽魚(フナ)”、“鯰魚(ナマズ)”、“青魚(アオウオ)”、“鯉魚(コイ)”、“草魚(ソウギョ)などと、養殖が難しい“鱅魚(コクレン)”、“鰱魚(ハクレン)”、“鱸魚(スズキ)”<注3>などがあるが、代表的な料理魚として“四大家魚(四大料理魚)”と呼ばれているのは、アオウオ、ソウギョ、コクレン、ハクレンである。

<注3>“鱸魚(スズキ)”は海水魚だが、夏季には河川に入り、淡水魚になる。

 さて、活魚売場から淡水魚が消えたことは消費者を驚かせて話題となり、多数のメディアが大型スーパーを取材したが、活魚売場の水槽は空っぽで、淡水魚の姿はそこになかった。これが報じられると、北京市では地元の水域で水質汚染が発生したことに起因するのではないかとの流言飛語が飛び交い、消費者に動揺が広がった。これを知った“北京市食品薬品監督管理局”(以下「北京市食薬局」)は、「北京市の水域に汚染はなく、水産物の合格率は9割に達している」と発表してデマを打ち消そうとしたが、消費者は誰も信じようとしなかった。

 11月23日に雑誌「財経」のウェブサイト“財経網(ネット)”が、国家食薬総局から得た情報として、上述した12の大中都市において水産物関連の重点検査を実施する旨の通知が出されていること、国家食薬総局の“食品安全監督管理二司”が北京市内の市場で抜き取り検査の実施を予定しており、その抜き取り検査は家畜・家禽・水産物に対する抗生物質や禁止化合物の使用取り締まり活動の一環であることを報じた。この結果、活魚売場から淡水魚が消えたのは大型スーパーが取り締まりを警戒してのものであることが明らかになった。北京食薬局が言明している通り、北京市水域で産出された水産物の合格率が9割に達しているなら、北京市内の市場で抜き取り検査を行う必要があるのか、また、大型スーパーはどうして淡水魚を活魚売場から撤去したのか。それは北京市内の大型スーパーが販売する活魚の淡水魚には問題があるということなのか。北京の消費者の不信感は募るばかりであった。

原因はマラカイト・グリーン?

 ところが、北京市では11月25日になると大型スーパーの活魚売場に淡水魚が突然復活したのだった。一度は活魚売場から姿を消した淡水魚が数日から1週間後に再度姿を現したのはなぜだったのか。消費者には何の説明もなく、その理由は不明のままだったが、唯一明白なことは、国家食薬総局が北京市内の活魚市場で抜き取り検査を行おうとしたのに対して、北京市食薬局は水産物の合格率は9割に達していると防御線を張っており、両者の立場は相対立していることである。

 かつて商売をやっていたという北京市民は、メディアのインタビューに答えて、次のように述べた。すわなち、彼は過去に北京市内の多数の市場で商売を行ったが、どこの検査部門も“好処費(賄賂)”を取り、政府の検査があるようなら事前に商人へ連絡する。また、“北京市衛生監督所”は無作為に抜き取り検査するのではなく、全て商人が事前に準備した物を検査していたに過ぎなかった。今回、大型スーパーが活魚の淡水魚を水槽から撤収したのは、北京市食薬局の局員から事前連絡を受けたことによるものだと思われる。市場に需要があれば、カネを儲けたくない商人はいないはずであり、今の様に養殖技術が進み、交通・輸送条件が相当に良くなり、活魚が四季を通じて供給されるというのに、消費者が活魚を購入したくても買えないというのは異常としか言いようがない。

 今回、活魚売場から淡水魚が消えた理由は何だったのか。この疑問に対する政府側の説明は一切無かったが、多数のメディアは今回の騒動の原因となったのは“孔雀石緑(マラカイト・グリーン)”の濫用と関係あるのではないかという疑念を報じた。マラカイト・グリーンは青緑色の塩基性有機色素で、着色力が強くて安価な染料として使われると同時に、殺菌消毒作用を持つことから真菌、細菌、寄生虫の殺菌・殺虫剤としても使われる。

カナダ、アメリカなどが禁止した後も

 20年以上前には、マラカイト・グリーンは多くの国々で使用され、魚や魚卵の水カビ病に有効であるだけでなく、魚の鰓腐れ病(エラぐされびょう)や旋毛虫症(せんもうちゅうしょう)などにも効果があることから重宝された。だが、1990年代になるとマラカイト・グリーンに強い毒性や残留性があり、がんや奇形、突然変異などの副作用を引き起こすことが確認され、1992年にカナダがマラカイト・グリーンを魚の殺菌剤として使用することを禁止し、1993年には米国のFDA(食品医薬品局)が食用水産物からマラカイト・グリーンが検出されてはならないと規定した。

 ところが、中国ではその1993年にマラカイト・グリーンが国内へ導入され、効果が強く、手軽で便利で安価な水産物用殺菌剤として、瞬く間に水産養殖業者の必需品になった。その後、中国でもマラカイト・グリーン使用による弊害が多数確認されるようになり、2002年に中国政府はマラカイト・グリーンを食品使用禁止薬物に指定した。しかし、たとえ政府が禁止しようとも、利益優先の商人たちは相変わらず秘密裏にマラカイト・グリーンを使用し続けて今日に至っている。

 中国人は活魚を好むため、魚が活発に飛び跳ねれば跳ねるほど、魚が新鮮だと考える傾向にあるが、養殖で育てられた魚に活発に飛び跳ねることを期待するのは困難であり、一部の活魚は数日かけて省を跨いで運ばれて来るので、市場へ到着した頃には疲れ果てて、飛び跳ねることなど不可能な状態になっている。これでは売り物にならないので、そこで登場するのがマラカイト・グリーンなのである。疲労困憊の魚たちがいる水にマラカイト・グリーンを少量加えれば、あら不思議、息も絶え絶えだった魚たちがたちまち“生龍活虎(元気はつらつ)”に変化するのだ。

 しかも、マラカイト・グリーンは購入に何の手続きも必要なく、ネット通販の卸売りで500gの袋入りが20元(約330円)前後と非常に安い<注4>。さらに、マラカイト・グリーンを水に添加した活魚は添加しない活魚に比べて口当たりが良いのだという。但し、水槽にマラカイト・グリーンを投入するのは輸送業者なのか、あるいは運送業者から魚を受け取った後の商人なのかは分からない。

<注4>販売業者の注意書きには、工業用途に限定し、食品・飼料の加工に用いることは厳禁で、これに従わない場合は自己責任と明記されている。

 メディアの記者が天津市“溏沽(タングー)区”にある魚養殖場を訪ねたところ、そこの経営者は自分が養殖した魚は恐くて食べたことがないと言い放ち、「養殖池に薬を使わなきゃ、魚は全て死んでしまう」と述べたという。また、天津市にある魚養殖場の周辺には多数の薬瓶が散乱していたと報じている。

 中国では全国各地の魚市場で活魚からマラカイト・グリーンが検出されたという新聞報道が散見される。2002年に食品使用禁止止薬物に指定されているにもかかわらず、マラカイト・グリーンは依然として密かに使用されているのが現状である。2016年11月7日に北京食薬局が発表した『2016年国家食薬総局食品安全監督抜き取り検査状況に関する公告(第12期)』には、7〜8月に北京市内にある多数の大型スーパーで売られていた活魚に安全基準を超えるマラカイト・グリーン、カドミウム、動物用の抗菌剤である「エンロフロキサシン」が検出されたことが明記されていた。

魚汚染も人災

 11月25日以降、北京市内にある大型スーパーの活魚売場が淡水魚の販売を再開したのは、マラカイト・グリーンを含む禁止薬物の使用を停止して、国家食薬総局による突然の抜き取り検査への対処が終わったからと考えられる。それにしても魚養殖場の経営者が絶対に口にしないと断言する魚を食べさせられる消費者は良い面の皮だし、賄賂の見返りに禁止薬物を使う業者に対して抜き取り検査の情報を事前に流す役人の腐った根性には呆れて物が言えない。

 中国に行くと“水煮魚(魚を唐辛子と花椒を加えた油で煮る四川料理)”、上述した“清蒸魚”、“紅焼魚(魚を醤油で煮る料理)などの美味しい魚料理を食べるのが楽しみだが、マラカイト・グリーンに代表される禁止薬物に汚染された魚だけは遠慮したいものである。土壌汚染も人災ならば、魚汚染も人災である。中国の庶民は一体何を食べれば安全なのかと疑心暗鬼に陥っている。中国政府が早急に抜本的な改革に取り組まないと、国民の健康はさらに蝕まれ、取り返しのつかないことになりかねない。


このコラムについて

世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」
日中両国が本当の意味で交流するには、両国民が相互理解を深めることが先決である。ところが、日本のメディアの中国に関する報道は、「陰陽」の「陽」ばかりが強調され、「陰」がほとんど報道されない。真の中国を理解するために、「褒めるべきは褒め、批判すべきは批判す」という視点に立って、中国国内の実態をリポートする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/120700077/


http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/513.html

[政治・選挙・NHK217] 昼下がりのサウナで「女性の壁」を妄想する 12月の夜、働き始めた妻が顔を曇らせた理由 企業の良い行いが子どもを幸せにする

昼下がりのサウナで「女性の壁」を妄想する

遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」

103万円か、150万円か、問題はそこじゃない
2016年12月9日(金)
遙 洋子

ご相談

配偶者控除のこのたびの改正、これで女性は活躍できますか?(30代女性)

遙から

 配偶者控除が、103万円の壁から150万円の壁に引き上げられた。ただし夫の年収が1000万円以上の収入によって細かく条件つきで。控除額も数十万から数万円に極端に引き下げられる。

 はて。得なのか。損なのか。働く主婦には判定がつきにくい。まわりを見渡してみる。妻がパートで働いている夫が月給を100万円もらっているカップルがどれほどいるか。

その壁は本物か

 私の周りの現実は妻がパートで必死なところは、夫も低賃金で必死。互いに必死で生きている。また、夫の月収が100万円を超える経済力の妻は、私の見るところ、パートでレジ打ちしていない。

 控除額がもたらすお得感でバランスをとっていた夫婦は、今回の改正で働く意欲が増すだろうか。壁があるからそこで収入を抑えるのではない。どうせそう稼げないのなら最もお得なラインで働きましょう、が、その判断ではなかったのか。

 壁が150万円になったから、もっと働くぞ、となるとは私には思えない。150万円まで働いたところで、これまでのような得な控除額にはならない。なら、働く意欲そのものを失わないか。そっちのほうが心配だ。

 もともと、夫が高額収入なら妻はよほど自立心旺盛なタイプかキャリア組じゃないと働かない。もっと稼げるマーケットがそこにあるなら、女性は控除額や夫の収入など関係なしに我が儲けとばかりに働くだろう。

 女性の活躍を阻害しているのは、壁、なんかじゃない。その先に待つ、うま味のなさ、だ。

 一日5時間労働を8時間労働にしたところで、数万円増えて、結果、数万円の控除がなくなる。この、どこに、働くモチベーションアップの仕掛けがあるというのか。

 女性でも年収1000万円以上が普通に狙える経済構造なら、女性はパートにしがみつくだろうか。

 それが不可能と見た女性の中には、年収1000万円以上の夫確保へとそのエネルギーを費やす者もいる。いまだ結婚マーケットは女性の経済力の代替案として活気づいている。

 そうして幸せな生活を手に入れる人もいる。しかし、なんだかおかしなことになっている人もいるようだ。

 そんなことを思わせる“富裕層”の主婦たちと出会った。

フィットネスクラブにて

 それは、とあるホテルの中にある、高額会員制フィットネスクラブという場所だった。

 女性フロアで交わされている会話は、宿泊客として割安料金で利用している私を辟易とさせる。

 豪奢なドアを開ける前から、ドア越しに聞こえてくる大きな声。

 「このバッグ、1万円のを8千円で買えるの!買わない!?」
 「きゃー。いいじゃない」
 「領収書も出せるわよ」
 「いらない。いらない。領収書なんて!」

 ・・・高級感と上質な空気を台無しにする、たたき売りトークの裏に見える虚栄心。

 平日の日中、高級フィットネスクラブに来れるほどの経済力のある妻たちトーク。だが、2000円の安さを声高に売るほうも、買うほうも、とうてい“富裕層”とはほど遠い。そもそも、フィットネスクラブは売買の場ではないし。

 「領収書も出せる」とは、「経費で落とせる」発想で、「いらない!」は、「そういう会計はしていませんから、うちは」という見栄。

 「〇〇百貨店の外商は入っている?」
 「〇〇百貨店は、入ってないわ」

 そんな会話からは「我々はわざわざ百貨店に買い物に行く層ではなく、外商を呼ぶクラスよね」という互いの認証があり、「〇〇百貨店は入ってないわ」というエクスキューズは、ほかの百貨店の外商の出入りをにおわせる。

 が、もし本当に入っていれば、「〇〇は入ってないわ。私は△△百貨店専門なの」くらいは言いそうな流れだが、そこに言及しない主婦のところにはおそらくどこの外商も来ていないと推察されるが、そんな駆け引きもコミコミで会話は続く。

雑誌で新聞で

 私は雑誌で顔を隠しながら薄暗いリラクゼーションルームで、沈鬱な気分でその女性たちの声高なフロア中に広がる、いや、あえて広めている自慢、特権意識に、耐える。

 が、そういう女性たちの一人がリラクゼーションルームに入ってきた。そして薄暗い中でもわざわざ雑誌と私の顔の隙間の空間からのぞき込む。挨拶から始め、何かの会話をしようとし、私を品定めする。私は挨拶の段階から無視する。

 翌日のリラクゼーションルームでは、新聞紙で顔を隠した。だが、別の女性がのぞきにくる。

 それは私が遙洋子だからではない。自分たちのテリトリーに、会員ではない"誰か"が来た。仲間にするか否かの品定めが始まったのだ。新聞という広く大きな紙で顔をおおっても、その隙間から挨拶を装って品定めに来る。それを防御しようと、私はわざと新聞紙を両面に大きく開いて、その女性との間に紙の壁を作り遮蔽した。

 高級会員制フィットネスクラブは、ラグジュアリーな空間と充実した施設にふさわしい、リラックスできるスペースであってほしいと願うばかりだが、現実は何とも滑稽なことになっている。

 ある日、私が遙洋子だと気づいた女性がいた。取って返した女性がそのことをお仲間に告げると、まず「騒ぐ人」が現れ、続いて「挑む人」が現れた。

 騒ぐタイプは配慮なく騒ぎ、騒げば騒ぐほど、今まで自分が主だと自認していた女性は、陣地争いのライバルが現れたとでも言わんばかりにこちらにちょっかいを出してくる。

 こちらはただただゆったり過ごしたいだけなのだが、そういう気配は残念ながら感じ取っていただけない。

サウナの主

 このときは唐突に「サウナの入り方」についてまくし立てられた。

 公衆浴場で時たま出会う、サウナ牢名主のような女性が、高級フィットネスクラブにもいた。

 「ここのサウナはこう入れ」と一方的に命令することで、このサウナの主が誰であるかを示そうと意気込んでいる様子だが、ええと、私、このサウナを我が物にしようという野望など、つゆほどももっていないのですけれど。

 私がサウナを出て、身体を拭いている間も、そのご婦人は「2000円安い!」と、バッグを売りにフロアを歩き回っている。

 そんな騒々しいフロアの中で、一角だけかろうじて静けさを保っているスペースがあった。海外からの宿泊客が、公共の場らしく静かに語り合い、お行儀よく過ごしている。攻め込むはずの「バッグ売りの熟女」は、どうやら英語は得意ではないらしい。

 海外のホテルでもフィットネス施設やサウナを利用してきたが、新聞で顔を隠すわずかな空間にまで顔を突っ込み、相手の品定めをするような行為をされた経験はない。「サウナは私のように入れ」と命令されたことも、バッグを売りつけられそうになったこともない。

 大丈夫か、日本の高級フィットネス&サウナ。

 もちろん、この「サウナ体験」で日本の問題点を語り尽くそうなどとは思わないが、私の頭の中には勝手な「サウナ妄想」がわいてきた。

 …そのご婦人は、若かりし頃、外で頑張って働いてもたいした収入にならないという壁に直面した。そして経済力のある夫を掴まえるべく多大なエネルギーを費やし、見事にゲットした。昼下がりのサウナは彼女にとって“虚栄心の砦”だ。しかし、サウナの独占は難しい。同じく夫選びで成功を勝ち取った女性たちもやってくる。自分の居所がなくなるのは困るが、お仲間同士、一緒になって砦を占拠するのも悪くない。見栄の張り合いは少々面倒だが、そこは割り切ってやりすごす。問題は余所者の侵入だ。我々成功女性の砦を守るのに"いつもは見ない顔"のチェックは欠かせない…。

 …だから私は新聞を剥がされ、サウナの入り方を説教されることになったのか…。

立ちはだかったのは

 サウナ妄想は続く。では、どうすれば新聞を剥がされずに済むのか。

 サウナ妄想のそもそもに立ち返ってみる。彼女は「外で頑張って働いても大した収入にならないという壁」に直面した。

 改めて、間違ってはいけないのは、彼女の前に立ちはだかったのは「103万円の壁」でも「150万円の壁」でもない。「女性が活躍できる仕組みが整っていない」という壁であったということだ。


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遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」
 働く女性の台頭で悩む男性管理職は少なくない。どう対応すればいいか――。働く男女の読者の皆様を対象に、職場での悩みやトラブルに答えていきたいと思う。
 上司であれ客であれ、そこにいるのが人間である以上、なんらかの普遍性のある解決法があるはずだ。それを共に探ることで、新たな“仕事がスムーズにいくルール”を発展させていきたい。たくさんの皆さんの悩みをこちらでお待ちしています。
 前シリーズは「男の勘違い、女のすれ違い」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/213874/120700039

 
12月の夜、働き始めた妻が顔を曇らせた理由

ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」

2016年12月9日(金)
山本 直人

再就職でイキイキとした妻

 12月になると、何かに煽られるように慌ただしい気分になる人は多いだろう。そして、一年を振り返ってしみじみすることもあるかもしれない。

 いまのGさんにとっての12月は、圧倒的に「しみじみ」だ。50代前半だが、勤務する金融機関ではグループ会社に出向している。同期では、まだ本社で「最後の直線レース」に賭けている者もいるが、Gさんは今の環境に満足だ。

 そのきっかけになったのが、数年前の12月のできごとだ。

 その年の春、Gさんの妻S子さんは仕事を再開した。2人は職場結婚だったが、出産を機にS子さんは退職。転勤も多い会社だったし、当時はそれが「常識」という感じでGさんには抵抗はなかったし、S子さんにも不満はなさそうだった。

 それから20年以上が経ち、一人娘が大学に入ったのを機会にS子さんにもかつての同僚から声がかかった。最近はかつて働いていた社員を再雇用する動きがあり、職場に復帰している人も段々と増えていたのだ。

 契約社員だし、勤務先はグループ会社だがS子さんはすぐに決断した。何よりも復帰した友人たちが、みんな元気そうだったことが決め手だった。

 S子さんの復帰は、Gさんにとっても嬉しかった。そして、もっとも喜んだのは娘だった。「女性でもずっと働く」ことが当たり前の時代に、母親の働く姿はとても頼もしく見えたらしい。

 そして、S子さんはイキイキと働いて、ちょっと忙しくなった毎日を楽しんでいるようだった。

 ところが、その年の12月にちょっとした「事件」があった。

 その日は金曜日で、GさんもS子さんも、それぞれ職場の忘年会だった。先に帰ったのはGさんだったが、S子さんも程なくして帰ってきた。

 お互い、そんなに酔っていたわけではない。夜のニュースを見ながら、お茶を飲み、世間話をしていたらS子さんの様子が途中で変わった。なんか、不機嫌になったように感じられたのだ。

(何か変なこと言っちゃったかな……)

 気になったGさんだったが、その日はそれ以上気にすることもなかった。

何気なく口にした「楽しいラクな職場は、いいよなあ」

 ところが翌朝になってもS子さんの様子がおかしい。長年一緒にいれば、時にはそういうこともあったし、Gさんは取り立てて気にしなかった。ところが、日曜になって娘から話しかけられた。

「お父さん、ちょっといい?」

 S子さんが近所に出かけている間を狙ったようだった。そして、その話はS子さんの「不機嫌そうな様子」についてのことだった。

 娘は、「お母さんの気持ち」をGさんに伝えようと思ったのだ。

 どうやら、金曜日の夜にGさんが何の気なしに言った言葉が「原因」だという。それは、S子さんの仕事についてのことだった。

「楽しいラクな職場は、いいよなあ」

 忘年会帰りで楽しそうなS子さんを見て、何気なく口にした一言だった。ただ、S子さんの心には“引っかかった”。自分としては「第二のキャリア」として、それなりに懸命だったからだ。

 長いブランクの間に、社内のルールも雰囲気も変わり、専業主婦時代に遅れてしまったパソコンのスキルも身につけなくてはいけない。そうした苦労をしながら、ようやくたどり着いた年末だったのだ。

 それなのに、夫は「楽しくてラク」としか見てくれない。それが悔しかったのだ。

 娘は、Gさんに対してこんな風に言った。

「お母さんだって、いろいろ頑張って、ちょうどホッとしてたんだよ」

 別に父を責めることもなく、さりげなく母の気持ちを伝えるその姿にGさんは思わず胸を打たれたという。

「じゃあ、今年はどこかに2人で行けば?」

 ところが、娘の「おせっかい」はそれだけで終わらなかった。

 その日の夕食は、久しぶりに親子3人だったのだが、やたらと多弁だ。若い頃はクリスマスをどう過ごしたのか?などと訊ねてくる。

 じゃあ、お前はどうするんだ?と問い返したい気分を抑えながら、Gさんはいろいろと思い出していた。

 ふと気づくと、S子さんの機嫌も直っているようだ。いろいろと話していたら、娘が言った。

「じゃあ、今年はどこかに2人で行けば?」

 娘が高校に入った頃から、クリスマスというイベントからも疎遠になった。Gさんにとっては、「忘年会もないから帰宅する日」のようなものだったのだ。

 せっかくだから2人でどっか行きなよ、私がいい店探すよ、今からでもネットで予約できるし、と指をスマートフォンに走らせる。

 「ここでいい?」と彼女が示したのは、帰宅途中の駅の近くにあるこじんまりしたイタリアンだった。もうこうなると、断るわけにもいかない。

「じゃあ、席だけはとっておくから、後はよろしくね」

 こうして、久しぶりに2人きりのクリスマスイブを過ごすことになったのだ。


「仕事ができるって、本当にありがたいのよ」

 店に行ってみると、思ったよりもいろいろな客がいた。若いカップルはもちろんだが、年老いた夫婦とその娘夫婦と思われる人たちもいる。そして、Gさんたちのような年頃の夫婦もいるのだ。

「来てよかったわね」

 「あの子に感謝しなきゃ」と言いながらすっかりリラックスしたS子さんは、本当に嬉しそうだ。

 食事をしながら、話はS子さんの仕事のことになった。忘年会の夜のことには敢えて触れなかったが、そこはお互いにわかっている。

 Gさんにとって意外だったのは、S子さんの仕事に対する思い入れだ。いまの彼女の仕事は比較的定型的だし、「家にいるよりは……」くらいの気楽な気持ちで働きだしたと思っていたのだ。

 ところが、S子さんはここ何年か「働くこと」をずっと考えていたし、実は出産を機に退職した後も、「もし、辞めなければ……」というちょっとした後悔もあったという。

 ただ、会社に残ってキャリアを重ねた同僚がいたわけではないし、学生時代の友人もS子さんと同じような環境だった。

 ところが、娘から強い刺激を受けたのだという。

 高校に入った頃から大学受験を意識して、当然「将来のこと」についてもあれこれ思いをいたす。どんな仕事に就きたいか?と考える中で、S子さんの会社員時代についても聞くようになった。

「お母さんの働く姿、見てみたいな」

 その一言が、S子さんの気持ちを動かしたのだ。

(俺は何も知らなかったんだな……)

 そんなGさんの気持ちを見透かすように、S子さんは言った。

「きっとわからなかったでしょうね。でも……」

 一息つけた後、笑顔で続けた。

「別に、ものすごくやりがいがあるって程じゃなくても、仕事ができるって、本当にありがたいのよ」

 そして、この時の言葉がその後のGさんの決断につながった。

どんな仕事も大切な仕事

 その頃のGさんは、迷っていた。本社勤務だったものの、キャリアのゴールはもう見えている。同僚がグループ会社や取引先に出向するのを見ながら、「次は自分」という見当はついていた。

 早目に動いて、自分から行き先を見つけるような社員も多い。だが、Gさんは動けなかった。

 その理由は、何となくわかっていた。簡単に言ってしまえば、プライドだ。自分で上手に畳めないプライドなら、誰かに潰された方がいいだろう。そんな感覚だったのだ。

 あの忘年会の日も、決していい気分ではなかった。年末の慌ただしい中、段々と自分が仕事のラインから外れていることを感じ始めていたのだ。

 ところが、イブの日の妻の言葉でハッとした。「仕事ができる」ということは、それだけで感謝に値することではないか。Gさんは、大組織の競争の中で、仕事に優劣をつけて捉えていた。

「どこに行くにしろ、この先は“つまらない仕事”だろう」

 Gさんは、心の底でそう思っていた自分を恥じたし、改めて思い直した。どんな仕事も、大切な仕事なんだ。そう自分に言いきかせたら、プライド云々は二の次に思えるようになり、出向先の仕事への“違和感”も失せた。そこで、「どうせなら」と正月明け早々に自ら動いて、4月には出向が決まったのだ。

 そして2年後に、Gさん夫婦にとってはとても嬉しいことがあった。娘が就職し、しかも金融機関を選んだのだ。

 激変期を経験して、「もう子供たちにこの業界は薦めたくないよ」と言う同僚は多い。しかし、娘はこう言ってくれた。

「お母さんもお父さんも、楽しそうに働いてるし」

 「お父さんも、は付け足しだろ?」と言いそうになったが、その一言は最高のプレゼントだった。

 だから、Gさんにとって12月は「しみじみ」の季節なのだ。あの夜以来、毎年通っているイタリアンの店とはすっかり馴染みになった。

 今年も、クリスマスイブが楽しみだ。

今週の棚卸し

 キャリアを重ねるにつれ、責任ある仕事を任されるようになる。ただミドル以降に、多くの人は転機を迎える。仕事の大きさや働き甲斐自体が、ジワジワと「収まるべきところに収まる」ようになっていく。

 一方で、かつて退職を余儀なくされた女性が、子育てがひと段落した後などに仕事を再開して頑張っていることも多い。雇用形態や任されている業務はさまざまでも、自分の仕事を大切にして、充実している人も増えてきている。

 働き方は違っても、やはり仕事を持つ家族との会話が、自分にとっての仕事のあり方を見つめ直すいい機会になることもある。冬休みもあり、顔を合わせる時間が増える12月は、そうした振り返りにもいい季節ではないだろうか。

ちょっとしたお薦め

 いまでもクリスマスシーズンになると必ず耳にする曲の1つが山下達郎の「クリスマス・イブ」だ。そして、彼が1人で多重録音という方法でアカペラに挑戦した「ON THE STREET CORNER2」には、「きよしこの夜」「ホワイト・クリスマス」というクリスマスソングの定番も収められている。

 懐かしさにひたってもいいし、家族みんなで楽しむこともできる。豊かな声に耳を傾けてみてはいかがだろうか。

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ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」
50歳前後は「人生のY字路」である。このくらいの歳になれば、会社における自分の将来については、大方見当がついてくる。場合によっては、どこかで自分のキャリアに見切りをつけなければならない。でも、自分なりのプライドはそれなりにあったりする。ややこしい…。Y字路を迎えたミドルのキャリアとの付き合い方に、正解はない。読者の皆さんと、あれやこれやと考えたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/032500025/120500019/


 


企業の良い行いが子どもを幸せにする

インタビュー

対談・YKK 吉田忠裕会長CEO×キッザニア創業者 ハビエル・ロペス氏
2016年12月9日(金)
河野 紀子
仕事のロールプレイを通して、働くことの楽しさを子どもに伝えるエンターテインメント施設「キッザニア」。1999年にメキシコで生まれ、現在は世界19カ国で展開している。創業者であるハビエル・ロペスCEO(最高経営責任者)は、子どもだけでなく高齢者や障害者も集う仕組みを作り、企業として「良いこと」をし続ける重要性を強調する。

一方、YKKの吉田忠裕会長CEOは、ものづくりの楽しさを伝えるイベントやサッカー大会の協賛などを通して、子どもが社会で能力を発揮できる環境作りに取り組み続けている。

共に米ケロッグ経営大学院の同窓である2人が、子どもが夢や目標を持って育つためにはどうすればよいか、親や企業、社会のあり方について語る。

(まとめ:河野紀子)

YKKの吉田忠裕会長CEO(最高経営責任者、写真左)とキッザニア創業者のハビエル・ロペスCEO(写真:秋元忍)
吉田忠裕会長CEO(以下、吉田):キッザニアは1999年の創業。現在は世界19カ国、24カ所で運営しています。ハビエルさんはキッザニアをどのようなコンセプトで始めたのですか。

ハビエル・ロペスCEO(以下、ロペス):まさにインスピレーションでした。私がメキシコのGEでプライベートエクイティの仕事に携わっていたとき、友人から「子ども向けデイケアの分野で新しいビジネスをやりたいから、提案書を見てほしい」と頼まれたのです。内容を見て「これはうまくいかないんじゃないか」と言ったのですが、並んでいる項目の中で唯一良いと思った点がロールプレイでした。

 友人が示したこのアイデアが、キッザニアを創業するきっかけになったのです。ロールプレイは子どもが成長する良い機会になるのに、真剣に取り組んでいる企業がありませんでした。

吉田:私たちYKKは、子どもが持つ能力を実社会でどう発揮させるかを考えています。一例として、全日本少年サッカー大会を協賛しています。

 小学生の時期に、スポーツをはじめとする色々な経験をさせるのは素晴らしいことです。キッザニアは、仕事に関わるエンターテインメントを子どもたちに与えています。ビジネスとして実行したのはすごいことだと思って、関心を持っています。


YKKの吉田忠裕会長CEO(写真:秋元忍)
ロペス:私たちは「子どもたちが将来なりたい職業」を、4〜5年ごとに国際的に調査しています。あるとき、女子のなりたい職業に「獣医」が入りました。それまでキッザニアには獣医の仕事を学べるプログラムがなかったので、用意しなければと思いました。男子ではサッカー選手などのスポーツ選手に人気があります。スポーツから学べることは多いですよね。

吉田:子どもが学校で学ぶことは素晴らしい。ですが、それに加えて、個々人が持つ色々な興味を実際にぶつける場があるのが良いと思うのです。

ロペス:そうですね。キッザニアは設立以来、エンターテインメントとともに教育を提供する場となることをミッションに掲げてきました。子どもにとっては、楽しい場所であることが大事。一方、大人は子どもに価値ある経験を与えたいと思っていますから。

 キッザニアの教育は3つの柱から成り立っています。まず、実際に実行すること。その道のプロの経験、国際社会との関係や政府・環境のことまで、実際に子どもが関わるプログラムを通して、幅広く学べるようにしています。

 次に将来使えるスキルを教えることです。技術が発展し、パソコンは1人に1台の時代になりました。その一方で、社交性を高めたり、交渉のスキルを学ぶ機会が減少していると思います。これらのスキルを磨いていかなければなりません。

 さらに子どもには良い価値観を与えるということ。時代がどんなに変わっても、変わらない価値観を子どもと一緒に考えて、選んで、学びに取り入れています。


キッザニア創業者のハビエル・ロペスCEO(写真:秋元忍)
親が楽しんで働く姿が大事

吉田:日本には「親の背中を見て育つ」という言葉があります。仕事に対する親の姿勢は子どもに伝わるので、いかに楽しんで仕事しているかを子どもが幼いうちから見せておくことが、人格形成の上で非常に大事だと思います。

ロペス:私もそう思います。キッザニアは教育者になるつもりはありません。既に家庭と学校がありますから。我々はこれらと対立する気はなく、これらを補填する存在でありたいと考えています。

 キッザニアの特徴は、楽しみながら、そして実行しながら学ぶことです。楽しんでいるときこそ、学びは速いのです。

 もう1つ大事なことは、子どもの独立性です。キッザニアは、全ての判断は子ども自身にしてほしいと思っています。子ども自身が「これをやりたい」と決めて、親は「うちの子はこんなことに興味があるのだな」と気づく。親は、科学や芸術など、子どもが持つ好みや傾向を幼い時から把握することが大事です。

 親の役割を見た時、日本のキッザニアは、他の国と異なる特徴があります。それは親が子どもを率先してキッザニアに連れて来ている点です。キッザニアの価値を理解しているので、自分の時間を投資して、子どもを連れていくのでしょう。

吉田:私には4人の娘がいます。小さいころから楽しく育てようとしてきました。同じ環境で育てていても、それぞれが持つ興味・関心は違います。それが本当にその子の好きなことなのか、辛抱強く見ていないと分かりません。子どもが幸せになるために、アドバイスしたり、何かを見せたりする。そういった習慣は、コトラーの言うマーケティング理論につながると思います。

ロペス:多様な選択肢を与えると、子どもはさらにより良い機会に恵まれます。

 キッザニアが色々な国に進出していく度に、学びがありました。最も大きかったのは、自分たちだけでやろうとしてはいけないということです。キッザニアは各国の企業と組み、そこから地域の特性、ビジネスマナーを学んでいます。

 ロールプレイというコンセプトはユニバーサルなもので、子どもが本能的に楽しめるものだと考えています。しかし、国によって体験させるパビリオンは異なり、各国に特化した業界の企業を入れています。例えば、同じレストランでの就業でもメキシコにはタコスのレストラン、日本ではすし屋といった形です。その国や地域との融合を重視しています。

若者の自信のなさは企業にも責任あり

吉田:日本の若者は諸外国に比べて、自分自身への満足度が低かったり、自信が持てていなかったりするといった調査結果があるそうです。私は理由の1つに、子どもが生まれてから物心つくまで、親の存在や意識が希薄になっていることがあるのではないかと思います。大元を治そうとするなら、親が子どもに対する時のあり方、ふるまい、意識、価値観を変えないとダメだろうと思います。親が「働くのは収入を得るため」「ちっとも楽しそうでない」と思っていたら、それは親を見ている子どもに伝わるでしょう。

ロペス:これは日本独自の問題ではなく、世界共通の問題です。10年以上前に初めて日本に来た時、「ニート」について知りました。実はスペイン語にも同じような言葉があります。先日、ニートはメキシコが世界で一番多いというニュースがありました。問題はまず家庭にあります。家庭で自信や夢をかなえようとする意識をはぐくむことが大事です。

 働くことの意義を子どもがきちんと理解していない現状があると思います。親が子供に「仕事に行ってくるね」と言うけれど、子どもは親がどこへ行くのか、あまり考えていないのではないでしょうか。それを学ぶのに、キッザニアは最適な場所です。

 キッザニアには「経済圏」があります。今、世の中にはクレジットカードやデビットカードがあり、お金を得るためには銀行に口座を作り、そこに給料が振り込まれることが必要です。そのために仕事をして収入を得る。キッザニアはそれを教えています。子どもは、お金の価値について、高い・安いしかわかりません。そのお金を得るために、どのくらいの努力や労働が必要なのか。例えばもっと余裕がある暮らしをしたければさらなる収入が必要だと、知るわけです。

 将来のための準備も必要です。最近新設しているキッザニアは中に大学を設置していて、ここで必要なことを学び、卒業証書をもらえば、さらに収入を得ることができると教えています。

 キッザニアには、働いて収入を得る場所とそれを使える場所があります。メキシコやインドネシアでは、入場した5割の子供が働いて、残りの5割がお金を使っています。ところが日本の子どもは皆働いて稼ぐばかりなのです。ですから、もっと使う方に誘導するようプログラムを変えたことがありました。日本の子どものそういう姿勢は、世界中の子どもが学んでほしいものなのですが。

 若者に元気がないのは、企業にも責任があります。世界中のCEOに、「会社の一番の資産は何か」と聞けば、人材と答えるでしょう。しかし本当にそう思っているのでしょうか。時間や努力を投入して、企業と従業員がウィンウィンの関係になるようにしていくことが大事です。会社の成長は、経済的なメリットを分かち合うこと、そして、仕事の楽しみを分かち合うことであるべきです。世界中が取り組むべき問題だと思います。

 私はかつて通っていた、ケロッグ経営大学院の商談のクラスで、ビジネスではウィンウィンの関係が大事だと学びました。キッザニアではその考えが生きています。子どもはロールプレイで学び、親は安全で楽しい学びを子どもに与え、仕事の価値やスキルを教える。スポンサー企業にとっては、入場者であるお客様と新しい接点を持つことができます。キッザニアが入っているショッピングセンターは、他との差別化を図れます。キッザニアはフランチャイズチェーンビジネスなので、フランチャイジーによいツールを与えて、ビジネスを展開してもらうといった具合です。

吉田:ウィンウィンの話に関連していえば、YKKには労働組合がないのです。従業員が株主、経営者、労働者の3役をしているイメージで、ウィンウィンウィンとなるようにしており、日本の中ではちょっと変わった会社ですよ。

ロペス:全ての企業が、従業員にもっと投資すべきでしょう。キッザニアはサービス産業で、人材こそが大切です。従業員を巻き込んで長く歩んでいきたいと思います。この点でYKKはお手本になります。


吉田会長CEOとハビエルCEOは、時期は違うが、米国のケロッグ経営大学院で学んだ。吉田会長は、学生が経営者と労働者に分かれてディベートするクラスに影響を受けた。YKKには労働組合がないが、学んだことを生かしているという
企業が始めた良いことが社会を変える

吉田:YKKは製造業で、ものづくりで価値を生み出すことを基本にしています。時代とともに材料や技術は高度になっても、その基本は押さえておかないといけない。こうした価値を分かってもらえるように、子どもたちや社会に発信していきたいと思います。

 ファスナーは1891年に米国で誕生しました。靴の紐を結ぶのが嫌だった人が生み出した発想が起源になっています。スライダーとエレメントとテープで面白い動きをします。こうした構造は早くになくなるだろうと思っていましたが、いまだに変わっていないんですよ。

YKKは東京・秋葉原にあるイベント施設「ものづくり館 by YKK」で、ファスナーを使った手芸などを学べる機会を提供。大人だけでなく、子ども向けのイベントもある(写真上)。今年10月には、キッザニア東京でファスナーの構造を伝えて、実際にポーチを作る「ファスナーウイーク」に協賛した
ロペス:実はキッザニアで、一番ポピュラーなアクティビティーが製造業なのです。手を動かして、ポテトチップスや飲料を製造するなど、自分の努力が商品になる。しかも、それを持って帰れる。そういう喜びをなくしてほしくないですね。

 今の子どもが将来に就く仕事の多くは、今はまだ存在しない仕事と言われています。だからどんな仕事が出てくるか、我々もわかりません。技術の変化が目まぐるしい中で、コミュニケーションや論理的な思考が大事です。また、技術や数学、英語など特化した教育に力を入れる中でも、忘れてはならないのは芸術などその他の分野です。様々なオプションを子どもに与えて、本当に自分が必要としているのは何なのかを見いだしてもらう。大人は、押し付けるのではなく、それをサポートするのだが役割だと考えています。

 キッザニアは、新しい職業を取り入れています。コンピュータープログラミングやアニメーションスタジオでの仕事、3Dプリントに関わる仕事などです。最近は事業家になりたいという子どもが増えてきたので、事業家養成プログラムを導入したところもあります。自分が会社を設立して、社会に貢献できるということを教えようとしています。

 社会貢献は、もらったものを返すという視点です。機会は全ての人に平等にあるのではありません。キッザニアは、得た収入をパートナー企業を介して恵まれない子どもに寄付するなどしています。


東京・豊洲にあるキッザニア東京では、中学生向けの特別プログラムを不定期で提供している。写真は資生堂によるスキンケア講座
吉田:企業として、社会の問題にアプローチしている姿勢がいいですね。全員が同じことをするのではなく、分担して社会を作っていくことが大事です。

 私は富山県の黒部という人口4万人以上の地方都市にいます。ここでの生活・社会を夢のパークにしたいと思っているのです。高齢者もいれば若者もいる。ある年齢まで仕事ができて、遊びの機会もある。そのためには社会全体がバランスよく組み立てられていないと難しいので、もっと楽しい街を作りたいと考えています。

ロペス:高齢化については、日本がメキシコよりも進んでいます。メキシコは別の問題も抱えています。高齢者や障害がある人を、家族が家に閉じ込めて外出させないようにしているのです。

 そこでキッザニアは、微力ながら2つの課題に取り組んでいます。1つは高齢者の雇用。その数は従業員2000人のうち10%を占めます。ただ、メキシコには高齢者の就労をサポートする仕組みがないので、働いてくれる人を探すのには苦労しました。障害者には入場を無料としています。キッザニアの中で健常な子供と障害児が交流し、皆が同じような経験してほしいと思っています。

吉田:キッザニアが実社会でいろんな役割を担い始めているのですね。子どもだけでなく、人生の大半を過ごしてもよいような…。それではキッザニアではなくなりますね(笑)。

 誰かがサンプルとして、良いことを始めないといけない時代なのでしょう。集団や個人が始めた良いことが展開されることで、社会が変わっていくだろうと期待しています。

ロペス:その通りですね。私たちキッザニアには「良いことをする」という長期的目標があります。

 長期的な目標がなければ、利益面などで短期的な目標を達成することはできない。少し成長できても、すぐに止まってしまいます。従業員が良いことに取り組むための教育などに投資できている企業はまだ少ない。今すぐ出る結果を出すことばかりに集中しています。こうした状況を変えなければ、10年後には、ほとんどの会社が事業を継続できなくなると思います。

 キッザニアは若い会社ですが、より良い世界を構築することにコミットメントしている。それを達成することが、我々のミッションだと考えています。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/230078/120700066/?
http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/291.html

[不安と不健康18] お腹や二の腕の“部分やせ”、本当にできる? [中野ジェームス修一]遠回りしない体メンテ術 部分エクササイズ、サウナスーツ
お腹や二の腕の“部分やせ”、本当にできる?
[中野ジェームス修一]遠回りしない体メンテ術
部分エクササイズ、サウナスーツ、電気刺激の効果を一刀両断!
2016年12月8日(木)
松尾 直俊=フィットネスライター
 ビジネスで多忙を極める日本の30〜40代は体力の低下が著しく、5人中4人が将来寝たきりになる「ロコモティブシンドローム」の予備軍とされている。パワフルに働き、50代以上になっても健康的な生活を維持するには、正しい運動、食事、休養を行うことが大切だ。そこで、著名トレーナーの中野ジェームズ修一氏が誤った健康常識を一刀両断。効率的で結果の出る、遠回りしないための健康術を紹介する。今回は、“楽をしてやせたい”という気持ちから、つい気になってしまう「部分やせ」について。それは可能なのか、それとも果たせぬ夢なのか…。
 

お腹を引き締めたくて、つい行ってしまう腹筋運動。果たしてその効果は?(©dolgachov-123RF)
 「どうしても、この部分の脂肪を取りたい!」。女性であれば二の腕や太もも、男性でもポッコリと出た下腹など、“部分やせ”をしたいという人は多い。そんな人情を狙ってか、部分やせをうたった書籍や雑誌、それに運動補助器具や衣類などがたくさん発売されている。
 説明を読んだり聞いたりしていると、どれももっともらしい効果や理屈が語られているが、本当にその恩恵を受けることができるのだろうか。
運動のエネルギーには体全体の脂肪が使われる
 「結論を言えば、部分やせはできません」と、中野さんは一刀両断にする。
 「みなさんやせたい部分があると、そこを一生懸命に動かします。それで使っている部分の脂肪が落ちると思われている人が多いのです。また、体脂肪がついている部分をマッサージしたり揉みほぐしたりすることで、脂肪細胞が柔らかくなったり、溶け出したりするという説明を見ることがあります。しかし、これは間違った考え方です」(中野さん)
 お腹をへこませたいから腹筋運動、二の腕を細くしたいから肘を後ろに伸ばす運動…。つい、気になる部位を動かすエクササイズを行ってしまいがちだ。しかしこれが、最も陥りやすい勘違いなのだ。
 「気持ちは分かりますが、脂肪が分解されて筋肉の運動のエネルギーとして使われる仕組みを考えれば、間違っていることが理解できるはずです。どんな運動でも、開始直後は筋肉の中に蓄えられているグリコーゲンという物質がエネルギーとして使われます。それが底をつくと、今度は体全体に蓄えられている体脂肪が血液中に溶け出し、酸素と結びついて脂肪酸になり、血管を通ってエネルギーを必要としている筋肉に運ばれます。そこで脂肪が水と二酸化炭素に分解される時に、エネルギーが発生するのです。つまり、動かしている筋肉の上についている脂肪だけがエネルギーに使われるのではありません。もし、動かしている部分の皮下脂肪が主にエネルギーとして使われていれば、しゃべっていたら口の周りがどんどんやせていってしまいますよ(笑)」(中野さん)
 これは脚を動かしても、腕を動かしても同じこと。もちろん腹筋も同様だ。ただ、最近では筋肉がある一定以上の強度の収縮を繰り返すと、 “マイオカイン”というホルモンが分泌されることが分かってきた。『そこに含まれる“インターロイキン-6(IL-6)”という、主に炎症を抑える物質が同時に脂肪も分解するので、“もしかしたら”運動中の筋肉が周囲の脂肪をエネルギーとして“利用しているのではないか”と推測できる』という論文もある。ただ、まだこれは“推測”の域を出ていない説。それに、もし仮に筋肉が周辺の脂肪をエネルギーとして利用していたとしても、その量はわずかだと思われ、まだ明確な結論には至っていない。
 「ある特定の部分に脂肪がつきやすい、あるいは落ちやすいといった話はよく聞きます。これは遺伝的要因、体質が大きいのです。例えば、太る時でも顔からの人もいれば、お腹周りからの人もいます。やせる時も同じです。「なんで違うんですか?」と聞かれることがよくありますが、全ては個性、人の顔がみんな違うのと同じなんですよ」(中野さん)
サウナスーツに要注意、体温上げても脂肪は燃えない
 それでも、部分やせを望む人は多い。そして、その部分を積極的に動かすと、その結果として「筋肉は強くなりますね」と中野さん。しかし、その上についた脂肪はそのまま。見た目は、より太った印象になりやすいのだ。
 また、体脂肪は脂なのだから、体温を高くすれば手っ取り早く溶け出してエネルギーとして使われ、減っていくという考え方も、大きな間違えだ。
 「未だに、通気性のないウエアで走ったり、ウォーキングしたりしている人を見かけますが、あれは体を壊す原因を作っているだけです。逆に、体温を上げ過ぎてしまうと、脂肪燃焼の速度が遅くなることが研究で明らかになっています。脂肪を分解したり、利用したりする酵素の働きが悪くなるからです。体温が1〜2度上がるとリパーゼという脂肪を分解する酵素が一番よく働くのですが、3〜4度上がると機能が低下するのです。いかに体温を上げずに運動するかが重要なんです」(中野さん)
 つまり、いわゆるサウナスーツの脂肪燃焼効果は疑わしいということだ。これを着用してジョギングなどをすれば大量の汗が出て、いかにも“運動をしたぞ!”という実感が得られる。しかも、確かに体重は減る。しかしその減量分は、体内の水分が失われただけで、実際に脂肪が燃焼されたのではない。脱水状態を招きやすく、それだけでも危険なのに、さらに血液が濃くなって血栓ができやすくなり、脳梗塞や心臓の障害で命に危険を招くこともあるのだ。
 「ボクサーが減量のためにサウナスーツを使用するのは、計量をパスするために最後の数百、数十グラムの水分を筋肉から絞り出すため。特に軽いクラスの選手は究極まで体脂肪を減らしているので、あとは水分を出すしか方法がないからです」(中野さん)
電気刺激で筋肉を動かしても脂肪は減らない
 やはり筋肉を動かさなければ、脂肪は消費されない。「じゃあそこで!」と思いつくのが、電気刺激で筋肉を動かして鍛える器具だ。宣伝ではかなりの効果があるようだが…。
 「電気刺激で動かすことで筋肉ができる、強くなるということは、なくはないですね。ケガで運動ができない、あるいは特殊な例ですが、宇宙から帰還して筋力が弱くなっているなど、リハビリが必要な筋力レベルの人であれば、効果が証明されています。ただ、それだけで能動的な刺激による筋肉強化と同じレベルかというと、効果は小さいとしか言いようがありません。実際、私が所属している学会では、電気刺激と筋力強化の明らかな関係は見出せないということになっています。コマーシャルなどでは、お腹につけることで腹筋の6パックができるような表現をしていますが、器具だけで割れるわけではありません(笑)。他の厳しいトレーニングを積み、摂取カロリーをコントロールしている人だから、美しく腹筋が作れているのです。それにお腹周りの体脂肪を減らせば、誰でも6パックは現れます」(中野さん)
 できるだけ楽をして、引き締まった腹筋を手に入れたい心情は十分に理解できる。しかし、それを機械だけで実現するのは無理があるようだ。
 「お腹を引き締める目的で、腹筋運動をするのは悪いことだとは言いません。筋肉強化によって多少の影響はありますから。ただ、男性の場合は内臓脂肪によって張り出していることが多い。つまり、体の内容物によってお腹が出ているのです。内臓脂肪を腹筋運動で効率よく減らすことはできません。唯一の方法は食事を低カロリーにし、運動によって消費カロリーを上げることです。その運動の一環として、腹筋運動を取り入れるというのであれば、それは素晴らしいことです」(中野さん)
 お分かりいただけただろうか。筋肉の形がはっきりとした、均整のとれた体型を手に入れたければ、まずは、全身の皮下脂肪を減らすことが肝要。そこから、引き締めたい、あるいは整えたい部位の筋力トレーニングをしていくことが、体型を保つことにも、健康な生活を送るためにも大切なことなのだ。
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」(徳間書店)、「世界一やせる走り方」(サンマーク出版)など多数。


このコラムについて
[中野ジェームス修一]遠回りしない体メンテ術
ビジネスで多忙を極める日本の30〜40代は体力の低下が著しく、5人中4人が将来寝たきりになる「ロコモティブシンドローム」の予備軍とされている。パワフルに働き、50代以上になっても健康的な生活を維持するには、正しい運動、食事、休養を行うことが大切だが、誤った健康術にまどわされ、成果が出ずにいやになってしまうケースも少なくない。一流アスリートから一般人まで、フィジカルトレーニングをサポートしている著名トレーナーの中野ジェームス氏が誤った健康常識を一刀両断。効率的で結果の出る、遠回りしないための健康術を紹介する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/110700081/120700006/ 


http://www.asyura2.com/16/health18/msg/222.html

[経世済民116] 対日経済協力の窓口、ロシア閣僚解任の深い謎 北方領土問題進展を阻止する勢力による陰謀説 Jパワー海外で有名タイ電力の1割

解析ロシア

対日経済協力の窓口、ロシア閣僚解任の深い謎
北方領土問題進展を阻止する勢力による陰謀説の真偽

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/120700019/graph1.png

2016年12月9日(金)
池田 元博
 ロシアで先月、対日経済協力の窓口も務めていたウリュカエフ経済発展相(当時)が収賄容疑で突然拘束され、解任された。日ロの北方領土問題進展を阻止する勢力が仕組んだとの見方も一部にあるが、真相はどうなのか。

ロシア連邦捜査委員会は11月15日、ウリュカエフ経済発展相を収賄容疑で拘束したと発表した。(写真:ロイター/アフロ)
 ロシア連邦捜査委員会がウリュカエフ経済発展相(当時)を収賄容疑で拘束したと発表したのは、先月15日未明のことだ。中堅石油会社「バシネフチ」の民営化(政府保有株の売却)に当たり、国営石油最大手「ロスネフチ」が一括購入できるよう便宜を図り、見返りに賄賂として200万ドルを受け取ったというものだった。

 ウリュカエフ氏は刑事訴追され、裁判所は自身の健康状態や高齢の両親を抱えているといった家庭環境を考慮し、来年1月中旬まで2カ月間の自宅軟禁を命じた。

 プーチン大統領は「信頼を失った」として、ウリュカエフ氏を直ちに経済発展相のポストから解任した。大統領は先月末には、同相の後任としてマクロ経済政策に精通した若手の財務省次官を抜てきした。

あまりに不可解…くすぶる陰謀説

 こうした事実関係だけを拾えば、ロシアでありがちな閣僚や官僚の収賄スキャンダルにしか見えない。ただ、当時のウリュカエフ氏の政権内の立場や身柄拘束の経緯などを踏まえると、実際は不可解な点も少なくない。何者かによる陰謀説がくすぶるゆえんでもある。

 まずは身柄拘束に至った当日の経緯だ。ロシアメディアによれば、ウリュカエフ氏は先月14日夕刻、省内で開かれていた会合を中座し、公用車でロスネフチのオフィスに向かった。ロスネフチのオフィス内で、同氏は100万ドルの入ったカバンを渡され、残る100万ドルは車に運ぶと言われた。

 その現場に治安機関の連邦保安庁(FSB)職員らが押し入り拘束された。ウリュカエフ氏は現金には触れていないと反論したものの、カバンの把手に触れた痕跡が決め手になったとされる。同氏は裁判所でも容疑を否認した。一方のFSBは「おとり捜査」だったと認めるとともに、1年以上前から監視を続け、数カ月前からは電話の盗聴もしていたと明かしたという。

売却の白紙撤回への動きが見られない不思議

 次に連邦捜査委のロスネフチへの対応だ。ロスネフチによるバシネフチの買収そのものは合法で、全く捜査の対象にはならないとしているからだ。

 現地の報道によれば、実はウリュカエフ氏へのおとり捜査を陰で主導したのはロスネフチ自身だったという。FSBの元幹部で、現在はロスネフチの保安担当副社長がFSBと組んで仕掛けたというのだ。副社長はイーゴリ・セチン同社社長と親しく、ウリュカエフ氏の追い落としは社長の指示だったのではないかとの臆測も一部に浮上している。

 さらにバシネフチの民営化でそもそも、ウリュカエフ氏がどこまで決定権を握っていたかという疑問だ。

 政府内では、この民営化をめぐって激しい論争があった。国営企業のロスネフチによる買収は、果たして「民営化」といえるのかが焦点だった(関連記事「ロシア、奥の手「大民営化政策」に漂うきな臭さ」)。確かにウリュカエフ氏は民営化の当事者で、当初はロスネフチへの売却に否定的だったものの、9月以降に容認する立場に変わっている。

 しかも翌10月、メドベージェフ首相が最終的にロスネフチへの売却決定を発表した際、政府指令書は「経済発展省の提案を受け入れた」と明記していた。プーチン大統領も自らの本意ではないことをほのめかしつつも、この決定は財政赤字の穴埋めを優先する「政府内の財政・経済派の立場だ」と弁明していた。

 こうした経緯からみると、大統領も首相もウリュカエフ氏の提案に従った格好だが、ロスネフチへの売却の流れが一気に進んだのは9月初め、プーチン大統領が「英BPも出資するロスネフチは厳密にいえば国営企業ではない」と発言したのがきっかけだったとされている。

 また、仮にウリュカエフ氏がこの民営化プロセスの全権を握り、かつ裏で要求した多額の賄賂によって民営化が決着したとすれば、大統領はロスネフチへの売却自体の白紙撤回を命じるのが筋だろう。しかし、そういう動きは全く見られない。

謎を深めた大統領と新経済発展相の面談内容

 ウリュカエフ氏は60歳。ソ連崩壊直後にロシアの急進経済改革を進めたガイダル・チームの一員で、2013年から経済発展相を務めていた。改革派の閣僚のひとりだが、政府内でもどちらかというと地味なタイプとされていた。

 対するロスネフチのセチン社長は豪腕タイプ。プーチン大統領のかつての「最側近」であり、政界への影響力も依然大きいとされる。そのセチン社長率いるロスネフチを相手に賄賂を要求すること自体、考えにくいとみる政治専門家も少なくない。バシネフチ民営化の検討段階ならともかく、決着から1カ月以上もたって賄賂を授受するのは極めて不自然と指摘する声もある。

 様々な臆測が飛び交うなか、多くの専門家が事件の背景を探る手掛かりとして注目したのが後任人事だった。ところが、プーチン大統領が経済発展相に任命したのはマクシム・オレシキン財務省次官。34歳という若さを除けば極めて穏当な人事だった。

 しかも11月末、任命時の大統領とオレシキン氏の面談がさらに謎を深めた。

プーチン大統領「あなたは財務省次官になってどれくらいか」
オレシキン氏「ほぼ2年です」
大統領「2年か。それまでは?」
オレシキン氏「財務省の部長です。それ以前は銀行で、対外貿易銀行と国際的な銀行に勤めていました」
大統領「大学の専攻だと、あなたはエコノミストだね」
オレシキン氏「はい」
大統領「それほど長く勤務したわけではないが、もう短いとはいえないし、仕事はうまくやっている。あなたを経済発展相に任命したい」……。

 会話内容から、大統領自らが抜てきした人物ではないことがうかがえる。改革派の経済・財政担当閣僚らがこぞって歓迎していることから、こうした勢力の推薦によるものとみられる。ロスネフチやFSBの関与は感じられない。

 一方でプーチン大統領は、今月初めの年次教書演説で汚職問題にも触れている。抽象的な表現に終始してはいるが、「汚職との戦いはショーではない。専門性と真面目さ、そして責任が要求される」と強調し、大げさに騒ぎ立てる治安機関の行動にクギをさした場面があった。

 これらを総合してウリュカエフ事件を振り返ると、大統領はFSBが主導した同氏の追い落としを黙認したが、FSBの横暴ぶりには閉口し、後任人事で巻き返して政権のバランスをとった、というシナリオが考えられなくもない。

日ロ領土問題との関連性は?

 ではFSBがなぜウリュカエフ氏を標的にしたのか。石油利権との関連を指摘する専門家は少なくない。経済の長期低迷で全体に利権のパイが小さくなるなか、エネルギー分野は数少ない有望分野だからだ。

 例えばフォーブス誌ロシア版が集計した2015年のロシア企業経営者の年間報酬ランキング。トップは国営天然ガス最大手「ガスプロム」のアレクセイ・ミレル社長、2位はロスネフチのセチン社長だった。


 とくにロスネフチは、かつて脱税や横領の罪で投獄された元石油王ミハイル・ホドルコフスキー氏が率いた「ユーコス」の解体資産を吸収して急拡大した、いわく付きの企業でもある。FSBが利権の宝庫とみてもおかしくない。

 財政赤字の穴埋めに躍起となる政府は、ロスネフチの資金力や資産を最大限利用しようとしている。これに反発するFSBが政権内の財政・経済派に圧力をかけるため、ウリュカエフ氏をスケープゴートにした可能性も否定できない。

 ロシアでは2018年春に予定される次期大統領選を控え、各勢力による水面下の権力闘争やかけ引きが早くも始まっている。大統領自身、大統領府幹部に若手や有能な実務家を抜てきするなど、「次」を見据えた人事刷新に動き始めている。ウリュカエフ事件もそうした文脈の中で捉えるべきなのかもしれない。

 さて、事件と日本との関係だ。ウリュカエフ氏は11月初めにモスクワで世耕弘成経済産業相と会談し、プーチン大統領の来日時に調印する日ロ経済協力案件を詰めた。ペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議時に開いた日ロ首脳会談にも同席を予定していたが、その直前に拘束された。

 このため日ロ関係との関連が一部で指摘されたが、ロシアでは日ロの領土問題と結びつけるような分析は見当たらない。ウリュカエフ氏は日本との経済協力の窓口を務めたが、業務のごく一部に過ぎない。やはり内政問題とみるのが自然だろう。

 ただし、日ロが平和条約締結交渉を続けていくうえで、ロシアの政局が大きく流動化しつつある現状は頭の片隅に入れておく必要がある。


このコラムについて

解析ロシア
世界で今、もっとも影響力のある政治家は誰か。米フォーブス誌の評価もさることながら、真っ先に浮かぶのはやはりプーチン大統領だろう。2000年に大統領に就任して以降、「プーチンのロシア」は大きな存在感を内外に示している。だが、その権威主義的な体制ゆえに、ロシアの実態は逆に見えにくくなったとの指摘もある。日本経済新聞の編集委員がロシアにまつわる様々な出来事を大胆に深読みし、解析していく。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/040400028/120700019/


 

「Jパワー(電源開発)」が海外では有名な理由
すでにタイの消費電力の約1割を担う
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278209/120800087
企業研究
2016年12月9日(金)
飯山 辰之介
1960年代から続く技術協力をてこに、タイや米国などで大規模発電所を展開する。石炭火力の技術を長く磨いてきた。その強みを国内外で生かせるともくろむ。最大の課題は世界的に進む環境対策。石炭火力は脱炭素化に対応できるか。

発電所の運営について話し合うJパワーの久米宏典マネジャー(右)とタイのガス火力発電所KP2のプラントマネジャー、ウィチャイ・バンパー氏(写真=飯山 辰之介)
 首都バンコクから幹線道路を北に向かうこと約2時間。その土地の名産である背の低いトウモロコシ畑の間を車で走ると、無骨なプラントが見えてくる。ウタイ火力発電所。日本の電力大手、電源開発(Jパワー)が合弁会社を通じて運営するタイ最大級の発電所だ。
 燃料はバンコク近郊のタイランド湾で採掘された天然ガス。発電した電気は国営のタイ電力公社(EGAT)に販売している。「EGATからの信頼は厚い。我々なら彼らの発電要請に細かく応じることができるからだ」。プラントマネジャーのスラチット・サングニカエ氏は誇らしげに語る。
 発電所の制御室では最新式タービンの状況を現地スタッフが24時間体制で監視している。その中に日本人はいないが、「トラブルが起きればバンコクからJパワーのエンジニアが駆けつけてくれる」(サングニカエ氏)。
 Jパワーがタイで保有する発電所はウタイだけではない。バンコク近郊を中心に16カ所、出力の持ち分合計で約330万キロワットの発電所を稼働させており、タイ全土で消費する電力の約1割を担う。「この国の電力業界でJパワーの名を知らない人はいない」。タイでJパワーが運営するもう一つの発電所、カエンコイ火力発電所のプラントマネジャー、ピタック・サングチョット氏は言う。
国内外で異なる知名度
 Jパワーは日本国内では6番目の規模の電力会社だが、知名度は高くない。今年4月まで、東京電力ホールディングスなど地域の電力会社に電力を卸すことが義務付けられており、業界では黒子的な立場にあったからだ。ただ、海外に目を向ければ立場は一変する。他社に先行して海外展開を進めており、既に世界6カ国・地域で発電事業を展開している。
 例えば冒頭で紹介したタイ。著しい経済成長で不足する電力を補うため、1990年代から発電市場を一部開放してきた。ただインフラの根幹を担う電力事業を、外資が大規模に手掛けるのは容易ではない。実際、欧米系の電力会社が一時殺到したものの、後にそのほとんどが撤退していったという。発電所の用地選定や取得、住人の説得など、多数の利害関係者との複雑な交渉を外資が単独でやり切るのは難しい。
 「カギは信頼できる現地のパートナーと組めるかどうかだ」とJパワーの重堂慶介氏は指摘する。タイに赴任して10年になる重堂氏は現地法人の社長を務める。発電事業は投資回収に何十年もかかる息の長い事業だけに「腰を据え、その国に貢献する覚悟がなければ成功しない」(重堂氏)。
 Jパワーが現地で提携するパートナー企業は、国営企業EGATとの関係が深い。EGATが出資する半官半民の発電会社EGCOと2000年初めに提携し、さらに同社が出資する企業と合弁会社を作り、16カ所の発電所を保有、運営するに至った。EGCOやその出資会社にはEGAT出身者も多く集まる。人と資本、双方のつながりを生かして入札などの情報を効率的に集め、さらに立地場所の選定や住民交渉で協力を仰ぐことで事業を拡大していった。
 「Jパワーは長い間我々に協力してくれた。今も我が国の電力安定供給に貢献している」。EGATのラタナチャイ・ナームウォン副総裁はこう評する。Jパワーがタイ電力業界に深く入り込むことができた背景には、50年にわたって続けてきたコンサルティング事業があった。
63カ国・地域でコンサル事業、6カ国・地域で発電事業を展開
●Jパワーの海外展開

注:各国の発電出力は持ち分の合計
海外事業を拡大
●国内外の発電能力比率

 国策会社として1952年に発足したJパワーの使命は、民間の電力会社では賄いきれない国内電力需要を担い、戦後復興と高度経済成長を支えることだった。基本的にこれ以外の事業を手掛けることは許されなかったが、例外がコンサル事業という名の海外技術協力だった。60年以来、50年間でエンジニアを派遣した国は計63カ国に上り、プロジェクトは350件を超える。
 海外で活躍したメンバーの一人が、現在国際事業本部長を務める尾ノ井芳樹・取締役常務執行役員だ。60年代、アンデス山脈に囲まれた南米ペルーの湖で、ダム建設をサポートした経験を持つ。「空気が薄くて難儀はしたが、標高3800mのベースキャンプで見た朝日は今も忘れられない」。その後もコスタリカやラオスなど新興国の僻地を渡り歩き、各国で発電所建設を支えてきた。
民営化でもうけ頭に変身
 長らくの間、海外事業の売り上げは小さく、業績への貢献度は大きくなかった。状況が変わったのは2004年から。民営化により国の軛(くびき)が外れ、事業の制限が緩和された。国内の電力需要が伸び悩む中、民間企業として成長分野をどこに定めればいいのか。浮かび上がったのが海外発電事業だった。
 「世界中に情報網と人脈を張り巡らしていたから、どこの国で、どんな種類の発電所が求められているのかを、容易に把握できた」(尾ノ井本部長)。これを生かし、タイ、米国、中国、フィリピン、台湾で発電事業を展開。ボランティアに近かった海外事業は収益事業に変わった。タイで大型発電所が相次ぎ稼働したことも貢献し、2017年3月期は海外事業が経常利益の約半分を占めるまで伸びる見通しだ。
海外事業が利益貢献
●Jパワーの連結業績

注:2014年3月期の海外事業利益は5200万円。2017年3月期の海外事業利益は本誌予想
石炭と水力が大部分を占める
●Jパワーの電源構成(万キロワット)

 これまで海外では天然ガスを使った発電事業が中心だったが、2020年にはインドネシアで石炭を使った大規模火力発電所が稼働する。タイでも天然ガス資源に限りがあることから、石炭火力の採用が検討されるようになってきた。実は石炭を使った発電はJパワーが最も得意とするところ。「チャンスは広がっている。国内の実績を見てもらいたい」と尾ノ井本部長は意気込む。
 実績の一つが神奈川県横浜市にある。出力120万キロワットの磯子火力発電所だ。高温で石炭を燃やすUSC(超々臨界圧)という最新方式を採用。発電熱効率(少ない燃料で効率的に発電できるかを示す指標)は約45%と、100万キロワットを超える大規模石炭火力で世界最高水準の効率を誇る。

大都市圏に立つ磯子火力発電所(横浜市)。汚染物質の排出を抑え、世界最高水準の効率で運営する
 屋上に出て煙突を間近に仰いでも、煙を確認することはできない。硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)といった大気汚染物質の排出量も磯子火力は世界最低水準。「発電熱効率の高さと環境対策を目当てに、ここには海外からの視察が引きも切らない」と小谷十創(じゅうぞう)所長は話す。
コスト競争力強みに自由化を乗り切る
●国内の大手電力会社との火力発電コスト比較(2016年3月期)

出所:みずほ証券
 日本はもともと、石炭火力の効率や汚染物質対策で世界最高レベルにある。中でもトップクラスなのがJパワーだ。一部には2世代前の効率の悪い石炭火力も残っていたが、昨年にはこれらを全て最新方式のものに建て替えると発表。新設する2つの発電所を加えると、2020年代には同社が持つ石炭火力の約7割(出力ベース)が最新方式のUSCになる。
 「石炭火力の高効率化に取り組むことは、当社の存在意義そのものだ」と技術開発を統括する村山均副社長は言う。日本の戦後復興から高度経済成長にかけて、Jパワーは大規模ダムと国内炭を使った火力発電で民間の電力会社を支えた。オイルショックが起きた1970年代以降は燃料価格の安い海外炭を使い、原油高で操業が難しくなった石油火力を補った。今も、石炭火力は同社の主力であり続けている。
 最新のUSC方式をもってしても、石炭火力は発電効率でガス火力に劣る。一方、発電コストや燃料の安定調達といった面では石炭火力がガス火力に勝る。天然ガスは中東などに資源が偏っているが、石炭は世界に普遍的に存在するため安定調達が可能だ。資源価格もLNG(液化天然ガス)を常に下回って推移しており、価格変動幅も小さい。足元ではLNG価格が下落しているが、それでも「石炭の燃料としてのコストメリットは失われていない」(みずほ証券の新家法昌シニアアナリスト)。
電力自由化でチャンス到来
 石炭火力のコスト競争力は、完全自由化した電力業界を生き抜く武器になる。今年4月の完全自由化で電力会社の経営環境は激変した。これまでJパワーは地域の電力会社への卸が義務付けられていたが、販売先は自由になった。販売価格に対する規制も撤廃され、自由な値付けもできる。新電力や日本卸電力取引所を含め、様々なプレーヤーに対してコスト競争力の高い電力を交渉して売れるようになったのだ。
 Jパワーにとって既存の電力会社は依然として大きな取引先であり、長期契約も残っている。ただ、「契約内容の見直しに取り組んでいる」と菅野等・執行役員経営企画部長は明かす。
 Jパワーは昨年、2025年度までの中期経営計画を発表した。海外事業の利益を反映するため、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)に持ち分法投資利益を加味した同社独自の指標「J-POWER EBITDA」を策定。その指標で2014年度に1818億円だった利益を、2025年度には1.5倍の2727億円程度まで拡大する目標を掲げた。
 大間原子力発電所の建設や既存火力の建て替え、新設などで投資はかさむが、国内事業の利幅拡大や海外事業の収益を取り込んだキャッシュベースでは利益が伸びるとの読みが野心的な目標の根拠となっている。
 国内外で石炭火力を広げようともくろむJパワーにとって、最大の課題は環境対策だ。「石炭火力が脱炭素化の流れに逆らって生き残るのは難しいだろう」。地球環境戦略研究機関(IGES)の浜中裕徳理事長はこう指摘する。
 どんなに発電熱効率を高めても、石炭を燃やせば必ず二酸化炭素(CO2)が発生する。電気事業連合会によれば、一般的な石炭火力のCO2排出量は、ガス火力より6割近く多い。Jパワーの排出量は平均より少ないが、それでも3割程度多いのが実情だ。
 昨年パリで開かれた第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で、日本は2030年度までに温暖化ガス排出量を2013年度比で26%減らすと宣言した。これを既存石炭火力を稼働させたまま達成するのは難しい。
 Jパワーも手をこまぬいているわけではない。今年度末には中国電力と共同し、石炭ガス化複合発電(IGCC)と呼ばれる新方式の実証実験を広島県で始める。石炭を蒸し焼きにして作ったガスでガスタービンを回し、さらに排熱を利用して蒸気タービンを回す「1粒で2度おいしい」発電方式だ。ガス火力では主流になりつつあるが、石炭は固形物をガス化する手間がかかりハードルが高い。これが実現すれば、従来の方式よりもCO2を最大で15%程度、削減できる可能性がある。
 IGCCは東京電力などが既に福島県のプラントで実証しており、足元では商用発電所の建設計画も進んでいる。Jパワーは東電とは異なる方式の開発に取り組んだ。既存のIGCCが石炭をガス化する際に空気を吹き込んでいるのに対し、Jパワーは酸素を吹き込む方式の実用化を目指す。「どちらの方式も一長一短がある」(三菱日立パワーシステムズ)が、酸素吹きのメリットはCO2を分離回収しやすい点にある。
脱炭素の動きに抗う
●国の温暖ガスの削減目標とJパワーの対応策

新方式の石炭火力発電を試験する大崎クールジェン(広島県)。CO2を分離回収する実験も計画する
高効率石炭火力の新設、リプレースに大規模投資
▶鹿島パワー(運転開始予定2020年)、山口宇部パワー(同2020年代前半)を新設
▶竹原火力(同2020年)、高砂火力1号機(同2021年)、2号機(同2027年)を建て替え
新しい石炭火力の発電方式を開発
▶中国電力と共同で高効率が望める石炭ガス化複合発電(IGCC)の実証実験を開始
CO2を分離して地中に埋める技術(CCS)の実用化
▶IGCCで実験(2019年を予定)


脱炭素、乗り越えられるか
 CO2の分離回収は脱炭素化の最終手段だ。政府は2050年にCO2を現状より8割削減するという、より高い目標も打ち出した。これに対応しようとすれば、石炭であれ、天然ガスであれCO2を出す火力発電は成り立たなくなる。
 そこでJパワーが準備しているのがCO2を地中に埋めるCCS(CO2の回収・貯留)技術だ。北海道の苫小牧市で実証実験している日本CCS調査にJパワーも一部出資。広島県の実証プラントでは2019年にもCO2の分離回収実験を始める。最終的には酸素吹きIGCCで回収した高純度のCO2を、苫小牧まで運んで埋める計画だ。
 CCSの実現可能性や採算性については厳しい見方もある。それでも脱炭素化に対応できなければ、石炭火力への風当たりはますます厳しくなる。
 Jパワーがこうした難題に直面するのは初めてではない。磯子火力発電所の建設計画が持ち上がった1960年代のこと。当時は公害問題が深刻化しており、大都市近隣での火力発電所の建設には懸念の声が多かった。同社は大気汚染物質の排出量を大幅に抑える技術を導入し、日本で初めて公害防止協定を横浜市と締結。以前よりも高い環境規制を順守することを約束した。後に、この協定は全国で石炭火力発電所を建設する際の標準になったという。
 脱炭素化も持ち前の技術力で突破することができれば、石炭火力に頼らざるを得ない多くの国から、Jパワーへのラブコールは増えるはずだ。石炭を磨き続けてきた同社の底力が、改めて試されている。
(日経ビジネス2016年10月10日号より転載)


このコラムについて
企業研究
『日経ビジネス』に掲載された、企業にフォーカスした記事の中から読者の反響が高かったものを厳選し、『日経ビジネスオンライン』で公開します。

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http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/520.html

[国際16] もう1つのニックネームこそふさわしい米国新国防長官 歴戦の勇士「狂犬」マティスを登用するトランプ次期政権の狙いとは 
もう1つのニックネームこそふさわしい米国新国防長官
歴戦の勇士、マティス氏を登用するトランプ次期政権の狙いとは
2016.12.8(木) 北村 淳
トランプ氏、次期国防長官に「狂犬」マティス氏を指名
ワシントンの議会公聴会に出席するジェームズ・マティス中央軍司令官(当時、2011年3月1日撮影、資料写真)。(c)AFP/Chris KLEPONIS〔AFPBB News〕
 ドナルド・トランプ次期米大統領がジェームズ・マティス海兵隊退役大将をトランプ政権の国防長官に指名した。

 アメリカ海兵隊関係者からはもとより海軍関係者や陸軍関係者からも、この人選には大いなる支持が集まっている。アメリカの法律には「退役軍人が7年以内に長官職に就任するには7年の期間が必要である」という規定があるが、特例を連邦議会が許可する手続きは順調にクリアしそうである。

 ただし、オバマ政権寄りのメディアなどでは、マティス大将に名付けられた「狂犬」というニックネームを強調して抵抗を示す風潮も見受けられなくはない。

「狂犬」というニックネームの由来

 反トランプ陣営のメディアなどは、「『狂犬』マティス海兵隊退役大将」という表記をことさら濫用し、トランプ次期大統領が国防長官に指名しようとしている人物が「乱暴」「危険」であるというイメージを植え付けることに躍起になっている。

 たしかにマティス大将が現役時代に、アフガニスタン戦争やイラク戦争においてテロリストや叛乱分子に対して強硬な発言を繰り返していたことは事実である。

 そして、イラク戦争最大の激戦と言われているファルージャの戦いで第1海兵師団司令官として激戦を勝ち抜いたという戦歴が有名なため、その後の強硬発言と相まって、「極めてタフでしぶとく戦う軍人」という意味合いで「狂犬」というニックネームがつけられた。

 国家への忠誠を第1のモットーに据えているアメリカ海兵隊が、飼い主に忠実な生き物とされる犬にたとえられるのは、実は目新しいことではない。最も有名なのは第1次世界大戦期に誕生した「悪魔の犬たち」という海兵隊のニックネームである。

 第1次世界大戦後期、フランス軍を中心とした連合軍とドイツ軍が硬直状態に陥っていたフランス戦線に投入されたアメリカ海兵隊は、有名な「ベローの森の戦闘」をはじめドイツ軍と数々の死闘を繰り広げた。多大な犠牲を払いながらも次々とドイツ軍部隊を打ち破ったアメリカ海兵隊部隊の頑強さにドイツ軍は畏敬の念を抱き、アメリカ海兵隊を「悪魔の犬たち」と呼んだ。

 それ以来、海兵隊自身もこのニックネームを用いるようになり、忠実でしぶとい犬であるブルドックを海兵隊の公式マスコットとした。現在に至るまで、海兵隊は公式マスコット犬を代々正式に任命しており、独自のマスコット犬を任命している部隊も少なくない(写真)。

マスコット犬パジェット2等兵をアメリカ海兵隊に授与する英国王立海兵隊(1927年)
君塚陸幕長(2012年当時)にプレゼント(骨)をもらう海兵隊公式マスコット犬チェスティXIII伍長
(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の写真をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48582

一般社会とはかけ離れていたイラクの戦地の状況

 以上のような経緯でマティス大将には「狂犬」というニックネームがつけられたわけだが、敵、それもアフガニスタンやイラクにおけるテロリストや叛乱分子に対する強硬な発言をもって「乱暴」あるいは「危険」な人物とのイメージを抱くのは誤りである。

 第1海兵師団司令官であったマティス大将(イラク戦争当時は少将)直属の指揮官としてファルージャでの先鋒部隊であった第1連隊戦闘団を率いたトゥーラン中将(イラク戦争当時は大佐)が直接筆者に語ったところによると、ファルージャはじめイラクの戦地では毎日が“OK牧場の決闘”のような状態だったという。

 つまり、大きな戦闘が発生していない“平穏な日々”においても、司令部や兵舎から一歩街路に出ると、至近距離から叛乱分子による発砲を受けるため、こちら側も必死に撃ち返すという日々の連続であったというのだ。

 それだけではない。海兵隊と共同で戦っていたイラク国軍将兵などがテロリストや叛乱分子に拉致され、残虐な拷問を受けて殺害されてしまう事件も少なくなかった。トゥーラン司令官と共にテロリストや叛乱分子と戦っていたイラク国軍部隊の指揮官であったスレイマン大佐という有能で勇敢な人物は、テロリストに拉致され、残虐に拷問されたあげく首を切り落とされ道ばたにうち捨てられてしまった。その残虐行為の一部始終がビデオに撮られ、トゥーラン司令官のもとに送りつけられたというのだ。

 このような残虐行為を平気で行うテロリストや叛乱分子と戦わなければならない海兵隊将兵に向けて、海兵隊のリーダーが「敵に対する過激とも思える発言」をすることは、一般社会では異常に映るかもしれないが、日常とはかけ離れた戦場のスタンダードに照らせば、なんら異常ではない。むしろこれからそのような戦場に身を置かねばならない戦闘員たちにとっては心強い言葉となるのである。

イラク戦争の戦場で海兵隊員たちに訓示するマティス大将(当時は少将)
 もっとも過去半世紀以上にわたって、極めて幸いなことに“人が人を殺すことが異常ではない戦場”に自衛隊を送り込んだ経験がない日本社会では、このような論理は極めて奇異に受け取られるかもしれない。

 しかしながら、海兵隊に限らずアメリカ軍は、恒常的に世界各地で戦闘を継続している。そして、トランプ次期政権は大統領選挙期間中「IS撃滅」を公約としてきた。つまり、場合によっては海兵隊や陸軍の地上戦闘部隊もISとの戦闘に投入される可能性が生じてきたのである。

 実際に戦闘を経験したことがない軍事組織の長と違って、トランプ次期政権下のアメリカ軍を束ねる国防総省のトップは「狂犬」と呼ばれるくらいタフな人物でなければ務まらないのだ。

もう1つのニックネーム「戦う修道士」

 マティス海兵隊退役大将は「狂犬」というニックネームがある一方で、「海兵隊員の中の海兵隊員」「海兵隊と国家に全てを捧げてきた男」とも称されている。

 マティス大将の右腕として活躍した上記トゥーラン中将によると、マティス大将の人物像を一言で表現するならば「極めて冷静沈着で学者肌の人物」ということである。

 現に、米軍においてマティス大将のニックネームとして「狂犬」よりも浸透しているのが「戦う修道士」である。

 トランプ次期大統領に批判的なメディアが、「戦う修道士」よりも「狂犬」を多用しているため、日本のメディアでも「戦う修道士」というニックネームは用いられてはいないようだ。しかし、実際には「狂犬」以上に普及している「闘う修道士」というニックネームを併記しないようでは、メディアによるイメージ操作とみなされても致し方ない。

 マティス大将は歴戦の勇士としてだけではなく、読書家としても有名であり、とりわけ古今の戦史に精通していることは幅広く知られている。また、トゥーラン中将が言うように、剛毅なだけでなく沈着冷静な人柄でもあるうえ、人生の全てを海兵隊と戦史や戦争論の研究に掲げてきたストイックな生活態度(さらに彼は独身である)から、かつてのテンプル騎士団、ドイツ騎士団、聖ヨハネ騎士団などに属した騎士=修道士になぞらえて「戦う修道士」のニックネームで呼ばれているのである。

同盟国も防衛力強化が求められる

 トランプ次期大統領がマティス退役海兵大将を国防長官に据えるということは、トランプ次期政権にとっては選挙公約とも言える「IS殲滅」のための本格的戦闘が開始されることを意味している。そのため、トランプ政権発足後当面の間は、アメリカの軍事的関心は中東方面に集中することになるであろう。

 一方で、本コラムでもたびたび紹介しているように、ランディ・フォーブス議員がおそらく海軍長官に就任するため、中国海軍の拡張戦略に対抗するべくアメリカ海軍再建の努力もIS撃滅戦と平行して推し進められるものと思われる。

 海軍再建には莫大な予算と長い時間が必要である。しかし、予算は限られており、悠長に時間をかけているわけにもいかない。そのため、ますますアメリカにとっても同盟関係が重要になる。ただしその同盟関係は、相手の同盟国が、自国の経済規模に応じた防衛力を手にしていることが前提になることを日本は改めて心得ておくべきである。

[JBpressの今日の記事(トップページ)へ]
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48582
http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/632.html

[経世済民116] 欧州債ドイツ債の利回り曲線がスティープ化−ECB政策で市場混乱 ECBのQE不十分 欧州株上昇 米家計資産1.59兆$増
欧州債:ドイツ債の利回り曲線がスティープ化−ECB政策で市場混乱
Stefania Spezzati、Chiara Albanese
2016年12月9日 03:06 JST
 
8日の欧州債市場では、ドイツ国債の利回り曲線がスティープ化した。欧州中央銀行(ECB)が月々の債券購入を減額して延長すると明らかにしたものの、ドラギ総裁はその後の記者会見で、減額した規模で景気が上向かない場合は再び増額する用意があると示唆したことで、市場が混乱した。
  債券市場の弱気筋にとって、ECBが月購入ペースを600億ユーロに減速するのは量的緩和(QE)なき将来を初めて占う試金石となった。強気筋にとって、利回りが中銀預金金利を下回る資産を購入する方針は対象銘柄が増えることを意味する。為替トレーダーらは当初、月間購入額の削減に注目していたものの、延長期間が予想以上に長いことへと関心を移した。
  ドイツ10年債利回りは1月以来の高水準に達した一方、2年債は上昇した。通貨ユーロは政策発表直後に上昇したが、その後下げに転じた。
  ダンスケ銀行(コペンハーゲン)のチーフアナリスト、イェンス・ペーター・ソレンセン氏は「現在は混沌(こんとん)とした状態にある」とし、「誰もが当初は800億ユーロから600億ユーロに削減されることに失望させられ、『テーパリング』と指摘した。それから預金金利を下回る債券購入が明らかになり、ドイツ国債が手薄にならないことが突然判明した。そのため利回りの調整が進んだ」と語った。
  さらに「常に混乱させられる」と指摘し、「ECBは明瞭さと透明性をもたらすことができない。ドラギ総裁はこのプログラム全体に強く反対する中銀関係者を満足させようとする一方、刺激策がまだあるとの印象を与えて一般を安心させようと試みている。困難な任務のため、ECBをめぐっては常にやや複雑となる」と続けた。
  ロンドン時間午後2時56分現在、ドイツ10年債利回りは前日比9ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の0.44%。一時は0.46%に達した。30年債利回りは14bp上昇し1.16%となり、5年債とのスプレッドは8年ぶりの大きさとなった。2年債利回りは2bp下げてマイナス0.69%。

原題:Confusion Reigns in Markets as ECB QE Changes Spark Wild Swings(抜粋)
German Curve Steepens Most Since 2008 as ECB Tweaks QE: Chart(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHVLQI6TTDS001


 


ドラギ総裁:ECBのQE、総額は290兆円規模に-不十分な可能性も
Paul Gordon
2016年12月9日 02:26 JST 更新日時 2016年12月9日 05:08 JST
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月購入額600億ユーロに縮小もプログラム購入総額は増大
2019年のユーロ圏インフレ率は1.7%と予想−ECB
 
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、8日に発表した最新の景気刺激措置が最後になるとは限らないと強調した。ECBがインフレを目標水準に戻そうと取り組む中で、追加措置があり得ることを示唆した。
  ECBは同プログラムの期間を延長し、債券購入の総額を5400億ユーロ(約65兆6400億円)上積みする措置を決定した。従来は来年3月までとしていたが、4月から12月まで月600億ユーロのペースで続ける。さらに「見通しが悪化、もしくは金融環境がインフレ回復の進展と相いれないものになった場合、プログラムの期間延長や規模拡大を実施する方針だ」と表明した。
  ドラギ総裁は政策決定後の記者会見で、「ECBのプレゼンスは長く市場にとどまるだろう」と言明。ECBの量的緩和(QE)は「ある意味でオープンエンド、状況次第だ」と述べた。総裁は債券購入の総額を少なくとも2兆3000億ユーロにまで膨らませる理由として、基調的な物価圧力の弱さと政治的不透明、政府改革の不調を挙げた。ドラギ総裁ら当局者はかねて、域内の景気回復は金融緩和策の持続に大きく依存しており、各国政府は十分な役割を果たしていないと述べていた。
  この日公表された最新のECBスタッフ予測によれば、ユーロ圏のインフレ率は2019年に平均1.7%となる見込み。ドラギ総裁はこれについてECBが目指す2%弱の水準に「近いとは言えない」と語った。景気見通しには下振れリスクがあるとの認識もあらためて示した。
   ブルームバーグの調査に答えたエコノミストの大半は、ECBが債券購入を月800億ユーロのペースのままで6カ月前後延長すると見込んでいた。実際の決定については「極めて幅広いコンセンサス」があったと総裁が述べた。ECBはリファイナンスオペの最低応札金利をゼロ、中銀預金金利をマイナス0.4%で据え置いた。また、総裁によれば政策委員らは購入を最終的に終了させるテーパリングは議論しなかった。
  ECBは期間延長に加え、購入対象資産が枯渇することを避けるための調整も実施する。利回りが中銀預金金利を下回る債券も購入するほか、残存期間の下限も1年と、これまでの2年から引き下げる。
   ドラギ総裁は記者会見で域内各国政府に構造改革の実施を重ねて呼び掛け、ドイツ、フランス、オランダが17年に大型の選挙を控えているとはいえ、政治的な懸念が改革を怠る口実にはならないとくぎを刺した。「不透明性に対処する最善の道は、成長回復と雇用創出だ」と論じた。
   総裁はまた、デフレのリスクはほぼ消えたと述べたものの、景気が予想より強含む場合の議論はしなかったとして「ユーロ圏はそういう高レベルの問題から程遠いところにいるように思われる。基調的なインフレが力強い上昇トレンドにあるという兆しはまだ見られない」と指摘した。
原題:Draghi Says ECB Can Do More as QE Heads for $2.4 Trillion (1)(抜粋)
Draghi Says $2.4 Trillion Stimulus May Not Be Enough for ECB (2)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHVGWH6KLVRI01


欧州株:上昇、銀行株に買い−ECBが資産購入プログラムを微調整
Blaise Robinson
2016年12月9日 03:04 JST
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独DAX指数は今年初めて1万1000の大台に
イタリアとスペインの株価指数も大きく上げる
 
8日の欧州株式相場は上昇。指標のストックス欧州600指数は4日続伸し、1月以来の高値を付けた。欧州中央銀行(ECB)が資産購入プログラムの設定を変更し、銀行の収益性が高まるとの期待から買いが入った。
  指標のストックス欧州600指数は前日比1.2%高の351.96で終了。イタリアのFTSE・MIB指数とフランスのCAC40指数が上げたほか、ドイツのDAX指数は今年初めて1万1000の大台で引けた。スペインのIBEX35指数は2.1%上げ、先進国の主要株価指数の中で上昇率首位を記録した。

  ストックス600指数を構成する銀行株指数の過去4営業日の上げ幅は10%強に達し、11カ月ぶり高水準に接近した。ここ3年で最も買われ過ぎの状態となった。ドラギ総裁が政策発表後の記者会見で、ECBは利回りが中銀預金金利を下回る債券を購入すると述べた。これで国債の利回り曲線のスティープ化が進んだ。

原題:Europe Stocks Jump With Banks as ECB Changes Asset-Buying Rules(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHVNMG6TTDS601


 

米家計資産:7−9月は1.59兆ドル増、金融資産や不動産価値が上昇
Shobhana Chandra
2016年12月9日 02:45 JST
 
米家計資産は今年7−9月(第3四半期)に増加した。金融資産や不動産価値の上昇に支えられた。米連邦準備制度理事会(FRB)が8日発表した統計で明らかになった。
  米国の家計および非営利団体の純資産は7−9月に前四半期比1兆5900億ドル(1.8%)増加し、90兆2000億ドルとなった。
  株式や年金資産を含めた家計の金融資産は1兆1600億ドル増加。不動産資産は4990億ドル増えた。住宅の評価額から住宅ローン残高を除いた部分(エクイティ)の不動産資産全体に占める割合は57.3%と、前期の56.8%から上昇した。
  家計債務は7−9月に年率4%増加、前四半期は4.3%増だった。
  住宅ローンは同2.9%増。この他、自動車や学資ローンなどの消費者信用残高は同7.5%増と、2015年4−6月(第2四半期)以降で最大の伸びとなった。
原題:U.S. Household Wealth Rose by $1.59 Trillion in Third Quarter(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-08/OHVN946JTSE801
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/523.html

[政治・選挙・NHK217] 破綻している年金制度はやめちまえ!で本当に撤廃したらどうなる?   年金滞納者、9割が免除対象 低所得者の強制徴収に限界
破綻している年金制度はやめちまえ!で本当に撤廃したらどうなる?
ライフ2016.12.09 579 

年末ジャンボを大人買い。宝くじを全部買ったらいくら当たるのか
白バイ警官が明かす、速度違反でも検挙できない「オービスの死角」 

若い世代を中心に、「いっそのこと、なくしてしまえばいい」との声も聞かれる公的年金。確かに年金制度を撤廃すれば私たちの月々の負担額は減るわけですが、それで生活も楽になるのでしょうか。無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』の著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、年金制度を撤廃した際の「未来」をシミュレーションしてくださいました。

もう年金制度を無くしちゃえ!…って事で年金制度を無くしたら一体どんな問題が待ち受けているのか

最近、現役世代の賃金が下がれば年金もそれに合わせて下げる年金改革法案が可決しました。

● 聞いてないよ年金改革。結局、年金は今後どうなるのか?プロが解説

こういう年金法改正の話題があがる度に年金は破綻してる!とか、年金なんてやめたほうがいい!とか、もう積立にしたほうがいい!みたいな話題が出たりする。

まず積立ですが、そもそも年金は歴史的には積立方式から始まったものです。それが役割を果たせなくなったから積立方式ではなくなったんです。積立方式はあらかじめ決められた保険料を支払いながら、運用しつつ、老後になったら積立金と運用収入を年金として貰う。まあ、そのほうが公平っていえば公平だからそれが望ましいから積立方式から始まったんです。

でも、インフレでそれもパーになったから、今の年金給付は現役世代が支払う年金保険料をそのまま年金として支払う賦課方式という方法を取っています。だから今は年金保険料だけでなく時々年金積立金の運用収入も年金給付に充てながらだからほぼ賦課方式といった形。それに今みたいな超長寿国になって、いつまで長生きしてしまうかわかんない時代に積立は対応出来ない。

また、仮に今、積立方式に戻したとしたら、二重の保険料負担の問題も生じてくる。自分の老後資金の為の保険料を支払いつつ、年金受給者の年金の為の保険料支払いもしなきゃいけなくなる。全然現実的じゃない。

さて、自分の保険料が年金受給者に渡るなんて嫌だ! とか、年金制度はもう役に立たない!って事で仮に年金制度やめちゃったとします。もう国民年金保険料や厚生年金保険料払わなくてよくなりますよね。余計な負担から解放されました。老後の資金は自分で貯めるから何も問題ない! 果たしてそうでしょうか。

結論から言うと年金制度は絶対に守っていかなければいけません。よく言われる、年金制度が破綻したら国も破綻するからとかそんな抽象的な話ではなく。破綻は極端な話、日本人口がすべて高齢者になって、全く保険料支払う人が居なくなり、年金が払われなくなれば破綻と言えます。でもそういう事はあり得ない。

で、もし、年金制度を辞めたら負担は軽くなるかというと、そんな事はありません。今の年金受給者の人は現役世代の保険料により主に支えられています。でもそれが無くなったら、高齢者は自身の貯蓄と子供等からの仕送りに頼るしかありません。という事は年金制度を無くしたら、現役世代は高齢になった親世代を自ら扶養しなければならなくなります。

年金制度を撤廃したら大変なことになる理由 

例えば月6万じゃ生活できるわけないんだから年金は意味をなさないって言うんなら、その6万円は親族である子供が自分の収入から、親が高齢者になったら仕送りする事になります。つまり自分で扶養する負担が増えるだけなんです。

今の賃金から毎月6万支払うっていったら相当な負担になります(ご両親がご存命であれば倍の12万とか)。それこそ、今の時代って非正規労働者が約1,800万人(昭和60年ごろはまだ600万人くらいだった)になり、賃金もなかなか上がらず、生活はそこまで裕福ではないでしょう。一部の富裕層ならそんな事は大した事ないのかもしれませんが、大抵の人はそんな事不可能ですよね。例えば月に10万円稼ぐというのは本当に大変。

年金制度が無くなるって事は自分の家庭の事、ローンや子供への費用だけでアップアップな中に高齢の親世代を扶養する負担が上乗せされるわけです。年金保険料なんかよりも何倍も高いお金を仕送りする事になります。

今の高齢者は恵まれてるってよく言われますが、今の70代80代とかの人達って、高齢になった親世代を扶養しながら自分達の家庭を守りながらやってきた人達です。確かに、今の国民年金保険料払い始めた昭和36年4月の時は、国民年金保険料は月100円から始まりました。今の月額16,260円とはちょっと比較にならないですね(^^;;

※参考

国民年金保険料支払い困難な人はちゃんと国民年金保険料免除制度を利用しましょう。市役所に行って5分くらいで手続きは終わります。国民年金の基礎年金には給付の半分は税金なので、仮に20歳から60歳まで全額免除にしてても老齢基礎年金780,100円の半分の額は受け取れる事になります。

厚生年金保険料率も昭和の頃は10%いかないくらいだった。来年18.3%(会社と社員個人で折半して支払う)で上限固定される。今現在の保険料よりもすっごく低かった。でも、当時の人達はそうやって高齢になった親世代を扶養しながら生きてきた人達なので、一概に世代間の不公平がありすぎるとも言えない。例えば1980年以降くらいに生まれた人(だいたい親が今60〜70代前後になる人)が私的に親世代を扶養というのはほとんど無いですよね。

昭和50年あたりはまだ、65歳以上の夫婦のみ世帯、または、65歳以上の単身のみ世帯というのは90万世帯くらいで、100万世帯にも満たないほどでした。でも2010年くらいからは1,000万世帯を超えました。親は親自身で生活は任せて、子は社会に出たら親とは離れて自分達の生活をするというような時代に変わってしまった。そして、合計特殊出生率も昭和50年あたりから2.0を割り、平成元年に1.57ショックとか騒がれて、その後も出生率は下がり続け平成17年には1.26という最低を記録。最新の平成27年は1.45と、平成26年より0.03上がりました。

それでも2060年くらいには65歳以上の人口の高齢化率は40%くらいになってそれで推移していく見通し。

昔は子供も多かったし、同居して親世代を扶養するのはなんとか成り立っていたと思う。親を扶養する場合は子供の兄弟姉妹が多ければその分負担を分割する事も出来るんだろうけど、こんな少子化になったら子1人に対する負担はズッシリ重くなる。なのに、年金制度を無くしたりなんかしたら大変な事になりますよ。

逆にもし、自分自身が年金を貰うような年代になった時に未納が多くて年金を貰えなかったり、極端に少ない場合はもう貯蓄か、これから大人になっていく自分の子供達に個人的に仕送りしてもらわないといけなくなるわけです。

生活保護に頼ることは無理なのか?

じゃあ生活保護に頼るという考えに及ぶかもしれませんが、生活保護は原則としてまず自分の財産という財産を全部使い果たした上でしか支給されないし、親族が居るならそっちを頼る事を優先されます。それに生活保護は全額税金だから、国としてもとんでもない負担になる。年金は自分の子や孫等の後代に重い負担をさせる事を防ぐ役割もあります。

で、今は平均余命が延びて、高齢者の人も長生きして80歳、90歳超えなんて普通にある事。いつまで長生きするのかそんな事は誰にもわからない。仮に、年金無しで貯蓄だけで老後を過ごそうって事でやっちゃうとそういう長寿リスクに対応できない。いつ死ぬかわかるんならいいけどそれは誰にもわからないわけで…。

年金というのはそんな長寿リスクに最も強力な保険なんです。生きてる間はずっと支払われるから。そして、私的に親世代を扶養するリスクにも対応しているわけです。年金保険料払ってきたのに途中で死んだら払い損じゃないか! とか、保険料払った分の元が取れない! とかそういう話は結果的なものであり、問題はそこじゃない。

じゃあ、大抵の人がこぞって加入する民間の生命保険の定期保険で言ったら、途中で死ななかったから保険金下りずに損した! とか、火災保険だったら、家が燃えて無くならなかったから保険金下りずに損した! とか馬鹿な話をするんでしょうか。んなわけないですよね(^^;; 年金は貯蓄じゃなくて、保険なんです。

更に、老後の年金だけでなく、人生の途中で病気や怪我で働く事が困難になれば障害年金が傷病が治るまで保障。中には先天的な病気や、不慮の事故なんかで重い障害を負ってしまった方もいるでしょう。そういう方々が所得が得られない場合は障害年金やその他福祉的なもので支えていかなければいけません。20歳前はまだ年金保険料を支払う義務は無いですが、20歳前に負った障害も20歳以降に障害年金が保障します(障害年金の等級に該当する程度であれば)。

結局、年金制度は継続していくべきなのか?

また、自分が死んだら遺された家族(主に配偶者)の生活保障の為に遺族年金が支払われる(終身で支払われる年金は遺族厚生年金)。こういう所も公的年金の最大の強み。だから公的年金に加入して保険料を支払ってる。民間保険がそんな至れり尽くせりやってはくれない。

というわけで、「現役世代が老齢世代を社会的に扶養する」という年金の仕組みをこれからも維持していく事は本当に大切なんですね。

※追記

年金は少ない!とよく言われますが、もともと公的年金は生活費を全てカバーするものではなく、あくまで生活費の一部なんです。

とはいえ、今の65歳以上の高齢者世帯の総所得の67%は公的年金が占め、高齢者世帯の55%は所得の全てを公的年金で生活されていらっしゃる現状であり、年金は老後の生活には欠かせないものとなっています。

image by: Shutterstock

『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』
年金は国民全員にとってとても身近なものであるにもかかわらず、なかなかわかりづらくてなんだか難しそうなイメージではありますが、老齢年金・遺族年金・障害年金、その他年金に関する知っておくべき周辺知識をご紹介します!
http://www.mag2.com/p/news/230781/4

 

年金滞納者、9割が免除対象 低所得者の強制徴収に限界
井上充昌2016年12月7日08時39分
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 国民年金の保険料を滞納している人のうち9割以上が、所得が低いため申請すれば支払いの一部もしくは全額を免除される可能性が高いことが分かった。6日の参院厚生労働委員会で、日本維新の会の東徹氏の質問に塩崎恭久厚労相らが明らかにした。

 厚労省は低迷する納付率を上げるため滞納者への強制徴収を進めているが、低所得者に対する強制徴収は「現実的に困難」(塩崎氏)という。

 国民年金保険料を2年間以上滞納している人は2015年度末で約206万人に上る。厚労省は年間所得が350万円以上の滞納者を強制徴収の対象としているが、来年度以降は300万円以上に拡大する。

 しかし、厚労省の実態調査では年間所得300万円未満が94%を占め、300万〜350万円が2%、350万円以上は4%にとどまる。厚労省は「対象者のうち相当数が督促済み。強制徴収できる対象者はかなり限定的だ」としている。

 国民年金の保険料は例えば被扶養家族が3人いる4人世帯の場合、所得が年162万円以下だと全額、282万円以下で半額、335万円以下で4分の1が免除されるという目安が示されている。天災や失業による特例もあるほか、生活保護や障害年金1、2級の受給者なども全額免除される可能性がある。

 6日の参院厚労委では、現役世代の賃金が下がった時に公的年金の支給額も下げる新しいルールを盛り込んだ年金制度改革法案の実質審議に入った。(井上充昌)

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http://www.asahi.com/articles/ASJD65CYPJD6UTFK00V.html
http://www.asyura2.com/16/senkyo217/msg/296.html

[経世済民116] 『この世界の片隅に』監督が語る、映画に仕込んだ“パズル”  奇跡は続く 3週連続で前週超え、年明けには上映館が3倍に! 
情熱クロスロード〜プロフェッショナルの決断
2016年12月9日 ダイヤモンド・オンライン編集部
『この世界の片隅に』監督が語る、映画に仕込んだ“パズル”


片渕須直・『この世界の片隅に』監督インタビュー
2016年11月12日に全国公開されたアニメ映画『この世界の片隅に』が、口コミから動員数が増え続けるという異例のヒットを記録している。戦中戦後の広島を舞台に、広島市から呉市に嫁いだ主人公・北條すずと、夫・周作など普通の人々の暮らしを描いた作品だ。クラウドファンディングで製作費や海外進出のための資金調達を行なったことでも話題となった。監督の片渕須直氏に、製作の経緯や作品に懸けた思いを聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長?深澤 献)


Photo by Takeshi Kojima
──「この世界の片隅に」の原作は、広島出身の漫画家、こうの史代さんの同名のコミック(上中下・双葉社刊)です。まず、映画化の経緯を教えてください。原作を読んで、すぐに映画化したいと思ったのですか。

?あ、それはむしろ逆で、自分にとってこの漫画は、ものすごく大事なものだったんです。一生ずっとこの本を枕元に置いておきたいなと思ったんですね。ずーっと時間をかけて、この本の内容を読み取っていきたい。それを死ぬまでずーっとやり続けよう、と。

?変に映像化しようと思ったら、そこにあることを全部一度読み取ってしまわないといけなくなる。それがもったいなくって。

?ところが、他に映像化しようと思っていたものがうまくいかなくなった時があって、その時に企画プロデューサーの丸山正雄(MAPPA代表取締役会長)から「他に何かないか?」と言われて、「まあ、ないわけではないのですが、心の中にある大事な作品としてはこれがあります」と、とりあえず出してみたんですね。

?そしたら、「これは駄目だろう」と。「こんな大事な作品は、もういろんなところが映像化権を手に入れようと躍起になっていて、我々はもう出遅れているに違いないよ」って言うんですよ。そう言われてみると、自分にとって本当に大事なものだったので、それが他人の手で映像にされるのが悔しくてですね、だったら自分が手を挙げてやろうという意見に変わったんです。

──そもそも原作は、「漫画アクション」(双葉社)に連載されていたわけですが、片渕さんは連載時からの読者ですか。

?単行本になってからです。連載の時に読めていたら、もっと違う印象だったかもしれないなというのがありますね。

こうの作品の一番の読者として
ひとつの読解例を示したかった

──原作は平成18年冬から21年冬にかけて連載され、昭和18年冬から21年冬の世界をほぼ同じ時間の流れで描いていたというすごい作品です。確かに単行本でまとめて読むのと、リアルタイムで読むのとでは違ったでしょうね。


かたぶち・すなお/アニメーション映画監督。1960年生まれ。日大芸術学部映画学科在学中に宮崎駿監督作品『名探偵ホームズ』に脚本・演出助手を担当。『魔女の宅急便』では演出補を務めた。監督作に『名犬ラッシー』、『アリーテ姫』、『ACECOMBAT 04』、『ブラック・ラグーン』『マイマイ新子と千年の魔法』など? Photo by T.K.
?そうです、そうです。

──しかも、原作者のこうのさん自身、当時の資料をかなり読み込んで、史実に基づいて物語を描いている。原作がある作品をアニメ化する際には、どれだけそれを忠実に起こす一方で、自分なりに何かを足して新しい“色”を付けていく作業があると思うのですが、どのようなアプローチで臨もうと?

?こうの史代さんの元々の漫画自体が自分にとって大切なものだったので、自分が一番の読者になろうと思ったんですね。読者としての一つの読解例、読み解いた一つの例としてこの作品を映画にしてみようと考えました。

?こうのさんが描かれた意図が100%こちらのものになるとは思わないんですけど、でも、こうのさんが描かれたことで裏にまわっていることを、できるだけ自分のできる範囲で読み解いて、そこで得たものから映画を作りたいなと思ったんですね。

?原作者の方がいて、そこにすでに読者がいるような作品って、そもそも読者のほうが原作に思いを持っているわけですよね。それはないがしろにしたらいけないなと思うし、『この世界の片隅に』の場合は、自分がまず読者として存在しているわけだから、自分がこの本を読んで良いと感じたところをないがしろにしたくないなと思ったわけですよ。

──その意味では、あくまで原作に忠実に、ということですね。


?ただ、唯一、気になっていたのが、原作の巻末に小さく「間違っていたなら教えてください?今のうちに」と書かれていて、戦争中という自分たちには手が届かない時代を叙述する時には、すごく真摯な態度だと思ったんですよ。

?僕らもこの作品の前に作った『マイマイ新子と千年の魔法』でも、ひとつの時代と地域について資料をあたって映像化しようしていましたから、(こうのさんの意図が)すごくよくわかったんです。逆に言うならば、『マイマイ新子』の時には終わってからわかったことが結構あった。なので『この世界の片隅に』は、原作に述べられていることは多いんだけれども、さらにその先がわかったことはいくらかでも原作の上に付け加えていこうとは考えました。

原作の発表後にわかった史実を
映画の中に付け加えていく

──確かに映画で、原作の中になかった描写がいくつかありました。それらは原作で描ききれていなかった“裏の風景”を見ようという意図もあった?

?そうですね、原作の描かれ方としてまず、こうのさんがこの時代の年表みたいなものをご自分で作っていらっしゃるんですよ。毎月毎月どういうことが起こったのか、その上に登場人物たちの行動を重ねてストーリーを作っていらっしゃるのですね。

?ということは、我々の方でその年表にさらに補足できる事実がわかったならば、その同じ上に、すずさんたち登場人物たちもいるはずなんですよ。すずさんたちがいる時間というか空間というかは、本当にあった歴史の上だと僕は思うことにしているので、本当にあった歴史でさらにわかった部分があるのならば、そのうえにすずさんを付け加えるということもありなんじゃないかなと思っています。

?たとえば、昭和20年の3月19日の呉空襲のときは、爆弾が海に落ちたあとに魚がたくさん浮いて、漁師が出てきて魚を獲っていたという話を見つけたから、それも付け加えてみたいなと。原作にはないんですけど、そんな面白いことがあったのなら、すずさんの行動の上にそれを映してみたいと。

──空襲のシーンでは、対空放火の煙が色とりどりだったという描写も原作にはないですね。煙に色を付けて、どの砲台から撃ったのか判別できるようにしていた、とか。

?色とりどりの煙の話は、こうのさんもご存じでしたよ。ただ、漫画は白黒なので、描けないっていうだけのようです。

?当時、呉の空襲を体験した人の話が何冊か呉市から出ているんですけど(資料を取り出しながら)、その中にあの日の空襲の対空砲火の煙が色とりどりだったというのは日本側の下にいた人たちも書いているし、それから空の上にいたアメリカの航空隊の人も同じように書いているんです。こうのさんはこういうのもご存じで、読んでいらっしゃるので、そういう意味で言うと新しく付け加えたというよりは、よりそこで描くことができたっていうことです。


漫画に描いた大砲の実際の場所を、作者のこうのさんも後で知りたがったという?Photo by T.K
?こうのさんも例えば「この大砲がどこにあるのかもうちょっと自分でわかっていたらもうちょっと詳しく描けただろう」とおっしゃっているんですよ。漫画の、すずさんがアメリカの飛行機が飛んで来るのを見上げるシーンでは、この山はすずさんの畑の真正面にある山なんですね。するとこうのさんは、「あ、だとしたらすずさんの頭越しに撃つとかっていう描写もあることになるんじゃないかな」とか。そうしたことを、映画では付け加えていっているだけなんですね。

──それと、白黒の漫画に色がついたことで、表現力が増した面もありますね。例えば原作では色のなかったトンボが、映画では夏にはシオカラトンボ、初秋には赤トンボになっていたり……。

?そうそう、そうですね!(笑)

原作はまるで知的なパズル
映画も同じでありたかった

──映画と漫画を交互に見ると色んなことがわかる。冒頭のクリスマスのシーンも、原作ではあまり詳しく描かれていませんが、映画を見て、戦時中のクリスマスはあんな感じだったんだなとわかりました。

?クリスマスツリーの飾りに使う「モール」ってあるでしょ?あれ、今はビニールみたいなのでできててるじゃないですか。戦前は何でできてたかっていうと、経木なんですよ。あの、お弁当箱についているやつですね。そういうのとかも調べて、でも出しようがなくて映画では使ってなかったりするんですけどね(笑)。

──あ、映画のシーンに経木モールがさりげなく入っていたりは……。


本棚にぎっしりと詰まった戦時中の呉や当時の生活などに関する資料?Photo by T.K.
拡大画像表示
?入っていないんですよ。入っていたら、「あれ、実は経木なんだ」ってなるんだけど……。

?他にも、ほら(資料写真を見せてくれながら)、昭和12年のクリスマスの写真ですけど、普通ですよね。昭和40年代の僕らの子ども時代とそんなに変わらないような気がするんですよ。

──そういう細かい描写が映画の中にはふんだんにあるせいで、私自身も、見逃したのでもう一回見に行かなきゃと宝探しみたいに何度も見ているんですけど、これはあえてそうしているのですか。

?ひとつにはね、原作がそういう「パズル」のようなものなんですよ。こうのさんが描く作品はすごく知的なパズルみたいになっていて、ほんの隅っこに秘められた物とかが画面の中にあったりするんですね。僕がこうのさんの本を「一生かけて読み解き続けられれば」と言っていたのは、そういうのがふんだんに隠されているからなんですね。

?こうの史代さんの『この世界の片隅に』という漫画を映画にするならば、漫画と同じような映画でないといけないと思ったんですよ。

──最後のエンドロールでは、登場人物の一人であるリンさんの絵物語が入ります。あれを見ることで、本編で語られなかったストーリーが多少わかったりするんですが、あそこであの絵物語を入れようというのは当初からの予定ですか?

?一応当初からの予定です。というのも、クラウドファンディングで支援してくださった方々の名前を載せないといけなくて、そこで何をしようかなと思った時に思いついたわけですから、そういう意味で言うと去年の夏くらいには決まってましたね。

──エンドロールで流れる支援者の名前を見ていると下の絵物語を見落としてしまって……。

?ええ。で、また観に行って(笑)。

>>後編「『この世界の片隅に』監督が語る、映画に仕込んだ“パズル”(下)」に続きます
http://diamond.jp/articles/-/110768



2016年12月9日 ダイヤモンド・オンライン編集部
『この世界の片隅に』監督が語る、映画に仕込んだ“パズル”(下)
片渕須直・『この世界の片隅に』監督インタビュー
>>(上)から続く


cこうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
前例に基づく効率主義を廃し
大人の支持を集める方法

──今、お話が出たように、映画の制作費などの資金調達にクラウドファンディングを使いました。2015年3月18日から5月29日の82日間で3374人の支援者と3622万4000円を調達し、国内でクラウドファンディングの最大の成功例と言われています。この手法は当初から考えていたのですか?

?前作の『マイマイ新子と千年の魔法』がそもそもそういうスタイルになっていたんですよ。

?というのは、『マイマイ新子と千年の魔法』は主人公が小学生なんです。だけど、そうすると自動的に、ある人たちは「これは子ども向きの映画であり、お母さんが子どもを連れて冬休みとかに観に来るようなタイプの映画だろう」と勝手に考えちゃうんです。

?それはそれでいいんですけど、実際には子どもが自発的に今まで知らないタイトルの映画に注目して、「これに行きたい」と言って親を引っ張ってくるってことはないだろうと僕は思ってたんですよ。僕らが子どものころはそういうこともまだあったとは思うんです。児童向きの映画とか単発の子ども向きのテレビドラマってたくさんありましたから。でも、今はもう、昔と違っていて、いっぺん売れてしまったものに対しては「こういうものが売れる」とタイトルが固定されちゃっているんですね。

?たとえば「ドラえもん」なんて何十年やってるでしょう。それは、ドラえもんがいけないとかではなくて、新しいものがそこに入らなくなって、もうずいぶん経ってしまっているということなんですよ。ここ20年くらいはもう、テレビでやっているテレビアニメの子ども向きの時間帯ってタイトルが固定されちゃってるんですね。そこで生まれ育った子どもにとって、新しいタイトルのものが入ってくること自体が想像の埒外なんです。

?だとしたら僕が、『マイマイ新子』っていう小学生が主人公の物語であるにもかかわらず、これをまず大人が観る映画として作るべきだと思っていたんですよ。

──なるほど。

?ところが、興業側は、「これは子ども向きの映画だから夕方17時開始の回をラストにしましょう」っていう風にしちゃう。すると仕事帰りの方は来られないんです。そもそも「子ども向きのものはこの時間帯」という前例主義みたいなものがある。それは前例に基づいた効率主義でもあるんですけど、それによって、前例がないものを作った時に無効になってしまうんじゃないかな、と。逆に言うと、前例にないもののほうが無効にされてしまうんですよ。そう思ったんですね。

?そうすると、僕らができる努力として、普通のファーストランで子ども向きの時間帯と設定されていようが、その次に大人が観られるレイトショーを自分たちで場所を探して上映してもらうということをやったんですね。

?それと同時に、そういう形態で上映されることをさらに望みますという署名活動を始めてくださった方がいらっしゃったんですよ。そのときはお金を集めていないのですけど、今のクラウドファンディングの方法と同じで、皆さんが名前を連ねて、私はこういうものを支持したいですという方がたくさん出てきてくださったんですね。

『この世界の片隅に』も同様で、いま戦争中のものを題材として作るって、一見するとすごく古臭くも思われますよね。でも、こうの史代さんが描かれた漫画そのものは、古い革袋なんだけど、中身はものすごく新しいお酒が入っているというような作品です。だとしたらまた、前例に則らない作品として成立しなければいけないと思ったんですね。ならば、やはり同じように、これにどのくらいの支持していただける方がいらっしゃるかっていうのを目で見える形にするのが一番だろうな、と。それが今回のクラウドファンディングだったんです。

?だから本来でいうならば、クラウドファンディングや署名をやらないで成立できるようにもっと土壌そのものが変わっていかないといけないんですよ。だから、クラウドファンディングの成功例として捉えられるのはすごくありがたくはあるんですけど、それが100%良いことかというと、そうしなければ成り立たないということから変わっていってくれると、僕らはもっといろいろ生み出せるんじゃないかなと思います。

大好きな映画の1カット目は
意外に誰も覚えていない

──映画を見たみんなが内容について語りたがって、他の人に勧めまくるという一種の“社会運動”のようになっているのは、クラウドファンディングという観客の巻き込み方をしたのと無縁ではないと思います。それと、この作品が珍しいのは、批判する論評を見たことがないことです。批判するポイントがないというのも、この作品の広まり方のひとつの特徴だと思うのですが?

?それはね、こういう風に考えているんです。

?例えば、すごく大好きな映画の最初の1カット目って覚えていますか?あんなに大好きなのに、人はだいたい、どうやって始まったか覚えていないんですよ。

?それは、1カット目が始まった時にはまだ、観ている自分の心の中で何と結びつけたらいいかわからないからなんです。つまり、映画って大半は、どんなものを送ろうと、受け手の方がきちんと自分の心の中の何かと結び付けていただかないと映画たりえないんですね。そのカットがなかったことになっちゃうんですよ。

?だとしたら、僕が自分で作るものには「こういうメッセージを込めました、だから観ろ」っていうのはやめて、「こういう現実があって、こういう状況の中で、こういう人がいて……。それはひょっとしたらあなたの中の何かに近くないですか?」というかたちにする。でも、その何かっていうのにすごくたくさん要素を入れることにして、どこかに引っかかっていただけるだろうと思ったんですね。

?だから自分としては、映画の作り手が作れるものは映像と音だけであって、それが映画として完成するのは観た方の心の中である、と考えています。ということは、皆さんはご自分の映画として『この世界の片隅に』を心の中で完成されてるわけだから、否定しようがないっていうことになっちゃったんじゃないかなと思いますね(笑)。もちろん、うまく化学反応できなかった方もいらっしゃると思いますが。

──なるほど、確かに私も人に勧める時には「単純に泣くための映画じゃないよ」と言っています。泣く映画だと思い込んで観てしまうと、自分の心の中の何かと結び付かなくなる可能性があるからですね。


立ち見も出るほどの人気ぶり?Photo by Tomomi Matsuno
?そうですね。だから、「これは楽しい映画なんだよ」と、わざと勧めてくださる方もいらっしゃって、「騙された」ということもあるけど(笑)、でも入口はいろいろあっていいんです。とにかく観ていただくことが大事で。観ていただいたら、そこで絶対になにかご覧になった方との間ではうまい関係が結べるだろうなと思いつつやっていました。

?だから観ていただくきっかけが本当に必要ですね。宣伝というのはそういうことなんだろうなと思うんですけど、この映画の宣伝はめちゃめちゃ難しいです。何と出会っていただくかは伏せたままやらないといけないから。

──自分の身の周りの人に勧める時って、相手がどういう見方をするか多少想像しながら「たぶん君に合っていると思うよ」とか言いながら……。

?そうそうそうそう!(笑)

──その意味で、拡散にSNSが機能しているというのは、まさにこの映画らしいなと思いました。

?あ、そうそう。あともう一つの特徴は、ご年配の方が多い。「この映画は親子連れが増えてきました」って言われて、何歳くらいのお子さんですかって言ったら「40代の方です」って。40代の方が70代の親御さんを連れてくるみたいで、それはお母さんに昔のことが懐かしいでしょって。そういうのって想像しなかったですよ。

?というのはやっぱり僕らが描いているものである以上、どんなに資料を費やそうと、リアルに昔、住んで、生きていらっしゃった、その時代を知っている方の心をそばだてられるだろうかっていうのは、そこまで自信があるわけではないんですよ。でも、結果的にそういう風になって、80代の方が「子どもの頃に住んでいた、戦時中の呉そのものだ」とおっしゃっていただいたりとかということが出てきています。

当時の地図と今の呉の町が
もはや二重写しで見える

──実は私、広島出身なのですが、呉に住んでいた友人が、「一点だけリアリティを欠いているところがある」と言うんですね。それは、すずさんが呉の町で迷子になるシーンで、呉は「9つの嶺に守られているから九嶺(くれ)という」と作品の中でもすずさんの夫の周作さんが言いますが、実際、地元の人は山を見れば方向がわかるそうです。よほどの方向音痴でないと迷子にはならない、と。でも、それでも迷ってしまうというところで、すずさんがどれだけ抜けたキャラクターか実感できたと言っていました。

?呉の町はだいたい、碁盤の目になっているんですが、碁盤目でなくなる場所があって、そこで間違えているんですよ、あの人。

(PCで昔の地図を示してくれながら)ここら辺までは、碁盤目でしょ?で、ここに相生橋があるから、この辺かな。ここで間違えてますね。で、郵便局から、こっち(自宅の方)へ行かなきゃいけないのに、こっち(遊郭)に行っちゃったんです。ほら、この道…このややこしくなっている辺りで間違えた。

?目印になる山もね、ここが尾根なので、それが目に入っていればいいんですけど、尾根の反対側に出ちゃったんですね。尾根がいくつかあるんで、またちょっと紛らわしくはある。

──本当にすずさんが歩いたかのように、完璧なシミュレーションですね(笑)。実際、片渕さんも歩いたんですね?

?歩きましたけど、この辺の町は、今、残っていないんです。戦時中に建物疎開でなくなっちゃってるんで、今は完全に区画整備されて、まるで違う町になってるんですね。

?その違う風になった町が、今の呉の上にどのように重なっているのかっていうのを頭の中に徹底的に入れていくと、二重写しに見える感じがしますね。これは昭和14年の地図ですけど、僕はいまだにここに書かれている中通り何丁目とか、4丁目とかの地番で覚えているので、今の住所表示じゃ逆にわかんないんです。

──配役としては、すずさん役の「のん(能年玲奈)」さんと、音楽のコトリンゴさんが「はまり役」という言葉では足りないほど重要な役割を果たしています。それぞれ、起用を決めたのはいつ頃なんですか?

?まず、コトリンゴさんですけど、『マイマイ新子と千年の魔法』が2008年の12月に一回できたとき、翌年の夏まで寝かせてあるんです。その間なにをやっていたかというとエンディングの曲を歌う人を探していたんです。そこでひっかかってきたのがコトリンゴさんでした。コトリンゴさんに曲を書いてもらったら、ようやく映画が完成したんですね。

?その直後にコトリンゴさんが新しくいろんな楽曲のカバーアルバムを出すんだと言って、それのサンプルを送ってきてくださったんです。まだ完成版ではなくてサンプルの段階のやつだったんですけど。そこに(今回、劇中歌に使った)「悲しくてやりきれない」が入っていたんです。ちょうど、それが『この世界の片隅に』を自分たちが手掛け始めた直後だったんですね。

「悲しくてやりきれない」って歌詞を読むとわかるんですけど、地上にいる人が空を見上げて雲が流れているとか、空に対してすごく距離感を抱いて、そこの下にポツンといる自分の小ささとか孤独さというのを歌っているんです。それがすずさんそのものに思えた。

?すずさん自身は、こうのさんの漫画で読んでもすごく柔らかい人となりの女性ですから、コトリンゴさんの声がすごくマッチするような気がしてて、逆に言うとそういうコトリンゴさんの声が前提としてあるところで、すずさんってどんな声なのかなと自分たちから(探しに)出て行かなければいけなかったんですね。

「戦争ものは夏」に違和感
冬に始まって冬で終わる物語

──コトリンゴさんのほうが先なんですね。


主人公の浦野すず。まるで実在の人物かのように、片渕監督は「すずさん」と呼ぶ
cこうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
?もちろん最初の時点から、すずさんってどんな声で、どんな女優さんの声だったらはまるだろうと、いろいろ心の中で試してみているわけですよ。その一つに、すずさんはコミカルな人だということがあった。コミカルなんだけどナイーブなものがあるんですね。その両方をきちんと兼ね備えていて、なおかつすずさんはお嫁に来た時に18歳なんですよ。そういう年齢感も持っている人がいてほしいなと考えていました。

?で、そういう女優さんいないかなと思いながら、テレビを観ていたら、たまたまなんですけどうちの奥さんがダイビングスクールでダイビングを習っていて、そのダイビングスクールが朝の連続テレビ小説(「あまちゃん」)の女優さんたちが潜る練習をする場所になるっていう話になって、そのダイビングスクールのスタッフの人たちがそのままロケに行くのでしばらくプールが閉鎖になりますって言われて。逆に面白そうだからその番組を観てやろうと。そうしたら、出てきたのが彼女(のんさん)だったんですよ。

?線が必ずしも太くなくて、それでいてコミカルなことをやる。「あまちゃん」ってコメディーですから、はっきり自分はコメディエンヌだと自覚してお芝居をやっている、実際にそのロケに一緒に行った人に聞いてみても、人柄もすごくいい。例えば僕がすずさんって人にものすごく入れ込んでいるとして、この人だったらすずさんって人を預けてもよさそうだなと思っていたんですね。

?とはいえ、それが2013年ぐらいです。それから僕らは画面作りでものすごい時間がかかってしまって、実際にのんさんにオーディション参加をお願いするまで、ずっと時間が過ぎてしまうわけですね。でも本来の予定どおり、もっと早く完成していたら、たぶん出会えなかったかもしれない。

──今回、11月と秋の配給になったのは製作上の理由なのでしょうか?

?例えば、終戦70周年(2015年)の7月や8月に公開すべきだという話があった時に「でもこれは冬の映画なんだ」という話をしました。冬から始まって、冬で終わっているのだから、夏でなければいけないという紋切りのほうがよろしくないんじゃないかという。

?8月を過ぎたら戦争のことや原爆のことは考えなくてよくなるのだとしたら、おかしな話じゃないかと思っているんですね。だから71年目の秋に公開されて、秋から冬に向かっていくというのは、すごく良いことだと思うし、このあとクリスマスのシーズンが近づいていくと、映画の中の冒頭のシーンにより近づいてきますし。これは、12月に始まって1月に終わる映画なんですよ。

──こうのさんも連載をそうした時間の区切りで始め、終えたのも意図があったのかもしれないですね。

?もちろん、だからこうのさんの原作も8月が最終回じゃないわけですよね。そこから先があるからこそ、この物語が意味を持っているんじゃないでしょうか。
http://diamond.jp/articles/-/110798

 

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宇野維正の興行ランキング一刀両断!

『この世界の片隅に』の奇跡は続く 3週連続で前週超え、年明けには上映館が3倍に!
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この世界の片隅に
ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
君の名は。
宇野維正
2016.12.08
20161208-rank.jpg
 『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』の勢いが止まらない。先週末の土日2日間の動員44万5000人、興収6億7700万円という記録は、動員、興収ともに前週比約82%という高推移。新シリーズ「ファンタスティック・ビースト」が成功するかどうかは、観客の母体となる「ハリー・ポッター」シリーズのファンからどれだけ観客層を広げられるにかかっていたと言っていいだろう(似たような成り立ちのシリーズであった「ホビット」はそこがあまりうまくいかなかった)。公開2週目のこの数字は、公開直後に「ハリー・ポッター」シリーズへの忠誠心が高いファンが押し寄せただけでなく、今回の新シリーズで新たなファンを獲得しつつあることを表しているのかもしれない。

 大型連休も祝日も関係がない通常の「12月第1週の週末」であった先週、前週比を上回った作品が二つある。一つは、驚くべきことに公開から15週目にして、またもや前週比超えをはたした2位の『君の名は。』。もう一つは、こちらも驚くべきことに公開から3週連続で前週比を超える数字を記録し、遂にはトップ5内の4位にまで上昇してきた『この世界の片隅に』だ。

 特に『この世界の片隅に』を取り巻く熱は、まさに異常事態である。63館という小規模公開でスタートし、最初は都市部の劇場で、やがて日本全国の劇場でも、ウィークエンドも含めて連日満席興行を続けている『この世界の片隅に』。動員ランキングでの上昇の背景には、公開館数が82館(3週目)→87館(4週目)と徐々に拡大されていることがあるわけだが、現状、ほぼ満席状態が続いているため、全スクリーンのキャパシティにほぼ比例して動員が増えているというすさまじいことになっている。

 『この世界の片隅に』の上映館は今週末には90館まで拡大。先日、片渕監督自身が「年明けにほんとに上映が拡大します。びっくりするくらい。今お客さんが入ってくださってることを、たくさんの映画館の方々が信じてくださったからです。まだまだがんばらなくては」とツイートしていたように、ここから年末年始にかけても順次館数が増え、12月6日に作品の公式アカウントが告知したところによると、年明けには公開時の3倍を超える190館(累計)での上映が決定しているという。

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ちなみに2015年の映画興行は、外国映画の好調もあって秋まで記録的な数字を積み上げていたが、11月に入ってからどっと落ち込んでしまった。2016年の『君の名は。』と『この世界の片隅に』は、日本中から「ガラガラの秋のシネコン」を消滅させたことにもなる。この2作はあらゆる意味で前例のない広がり方をしている作品ではあるが、公開直後に動員が偏向せず、ロングラン興行に移行することが多いアニメ作品(これはディズニーやピクサーの海外アニメ作品にもしばしば見られる傾向だ)は、何よりも映画館を運営する興行サイドにとって、今後もますますその重要性を増していくことだろう。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

■公開情報
『この世界の片隅に』
テアトル新宿、ユーロスペースほか全国上映中
出演:のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、澁谷天外
監督・脚本:片渕須直
原作:こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル
(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
公式サイト:konosekai.jp
http://realsound.jp/movie/2016/12/post-3434_2.html


 


http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/527.html

   

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