もっと失業者を増やせ。
この7月、とうとう完全失業率が3、0%台になった。そして7月の消費支出は0、5%減だそうだ。
9月の消費支出も0、5%減、完全失業率も3%のままだ。。
これがデフレ下の完全雇用の実体なのだ。失業率が低下し生産量が増大しても、所得が上がらず、消費が増えないのである。
ここで完全雇用という言葉を使ったが、デフレ下では理論的に均衡しないため、完全雇用に達せず、生産量を増大させても、所得が増えず、永遠に就業率が上がり続けるのである。
働けど働けど我が暮らし楽ならず。デフレの神髄を表す言葉だ。
10月の消費支出はさらに下がり、完全失業率が3%の横ばいであるが、有効求人倍率が1、40倍に上昇し、25年2カ月振の高水準に達したということだ。
実際のところ、日本でこれ以上失業率を下げるのは難しいことであろう。しかし実質的には移民労働者がバブルの頃より増えているので、3%を切っているのである。
日本は、この失業率が3%になり、有効求人倍率が、1、40倍になったことで、もはやこれ以上、労働者を増やし生産量の増大を謀る成長政策を取っても、労働力を十分確保できず、十分な成長効果を上げることはできないだろう。
予算で、公共投資などの生産量増大策を通過させても、実際の現場では、物質的な生産資源が手に入っても、労働資源が不足して、思うように製造、生産ができなくなる。
政府は一体どこまで仕事を増やすつもりだろうか。
バブルの崩壊後25年の間、政府は、成長戦略、低金利、公共投資などで、生産量の増大を目指してきた。
不必要な公共投資や、前送りのインフラ設備も多くなっている。
そして生産量の増大とともに、労働投入量が増え、現在の完全雇用状態に至ったのである。
しかしこのような生産者側に片寄った政策では、所得が全く増えないことはここ3期のGDPの成長率がよく物語っている。
それどころかこの25年間我々は、生産量を増やしながら所得を減らしてきたのである。我々の生活は格段に貧乏になった。
成長戦略、低金利、公共投資という言葉を何度聞いたことだろう。この三つが日本を潰したのである。
デフレ下では、消費が不足しているため、生産量を増やすほど、付加価値が低下していく。収穫逓減の法則が支配している。
政府は、仕事を増やし、失業率を減らせば自動的に所得が増えると思っている。しかし実際は、所得が減っているのだ。善かれと思ってやているのだろうが、実際は窮乏策を取っていることを知る必要がある。
このことは,メディヤの記者や、一般の人達も早く知る必要がある。雇用増はいつもよいことではなく、悪であることも知るべしである。
実際、バブルの崩壊後、非正規雇用がどれだけ増えたことであろうか、女性の就業者が増え、専業主婦が減り、ワーキングママが増えそれもパートタイマーが圧倒的に多くなっている。いずれにせよ低賃金労働者が増えたのだ。
そして、その集大成として、アベノミクスが行われた。今までの政権とは違う莫大な公共投資、異常なマイナス金利、国債の買い取りなどの政策で、さらなる生産増と、借金の増大を成し遂げたのである。
マイナス金利、国債買い取りという経済政策のモラルを崩壊させてまで、生産量の増大に走り、借金を増やし、失業率を3%になるまで生産量を増大させ、これ以上の、労働力の余力を失わせ、経済成長の余力を失わさせたのである。
このような状態で新規の事業は成り立つだろうか。
人を集めることができないため、民間の大規模な新規事業はできないであろう。
求人倍率がバブル時に匹敵するほどの高水準に達しても、賃金が上昇しない事態になっている。まさしくデフレ下が、収穫逓減の法則が支配していることの証明である。
例えばカジノを中心としたリゾートなどの大規模事業は、多くの就労者が必要である。郊外型のアウトレットモールや、大型スーパーの開業など多くの人員がいるもの程開業は難しい。
カジノリゾートで1万人の雇用が増える。しかしそれ以外の地域から1万人の人剥(は)がしが行われたということになる。1万人もある一地方から消失して、その地域がやっていけるのだろうか。
さらに東京オリンピックという大イベントを控え、これ以上の人員増は難しい。東京に労働者が集まっても、それ以外の地域が、人員欠乏による、倒産、廃業が増えていく。そして低賃金で長時間労働せざる負えない状況が続き、疲弊していくのである。
地方活性化など全く絵空事であることがわかる。やっていることが全く理解できていないのである。
バブル崩壊後、完全失業率3%で、日本の成長力増強政策は完全に失敗に終わったのである。
来年度の経済政策の目玉が、成長路線であるならば、
人員欠乏がネックになって、十分な生産量やインフラが確保できなくなり、借金だけが増えていく徒労な、1年となろう。
もうこれ以上生産量増大策を取るべきではない。
余計な生産量を減らし、失業者を増やし、付加価値を上げるべきなのだ。
今年5月の伊勢志摩サミットで、ヨーロッパが、財政出動による成長政策に難を示したのは、彼らは、経済を成長させることだけが、経済政策ではないことを知っているからだ。
失業者を増やし、失業保険を手厚くすることも、景気を持ち直させる一つの手段であることを経験的に知っているのだろう。理論的に知っているかどうかは定かではないが。
デフレ下では、生産力を上げ、労働者の雇用を増やすより、失業者を増やし、雇用保険を十分に支払った方がデフレの解消に役立つのである。
単純に言うと、生産量を減らし、所得が上がればそれはインフレ政策であるからである。(逆に、生産量を増やし、所得が下がれば、それはデフレ政策である。)
デフレは生産量に比べ消費額が著しく不足している状態から起こる現象である。縦軸に資金量を取り、横軸に生産量を取って、所得線を描くと、45度以下の角度の所得線になる。
このような所得線を持つ時の労働曲線は、右下がりになる。生産量の増大に従って、所得が下がって行く線が描かれる。決して右上がりではない。
右下がりで描かれる労働曲線では、生産量が少なくなるにつれ所得が増加することがわかる。また所得が増えると生産量が少なくなる事も分かる。
そのためデフレ下では、生産量を減らし、労働量を減少させ、失業保険を手厚くすることがデフレ解消の大きな武器になることがわかるだろう。
デフレから脱却するには、雇用保険を手厚くし、その期間を長くする方がよい。そして失業者を増やすのである。
例えば、失業した場合、前の会社で働いていた賃金を満額払い、その期間も長く延長するのがよい。
そうすれば、企業は、労働者を切り易いし、労働者も、生活が悪くなるわけではなく、消費額も減らない。
また高齢雇用や、ワーキングママ雇用の場合の、20万、30万のリベートのような、雇用促進するものを止め、子供手当の拡充や、年金の増額、雇用保険の満額、などで補ない、雇用を増やすべきではない。
高齢者には、悠々たる余生を、ワーキングママには、育児に専念してもらった方がデフレ解消になるのだ。
その方が、失業者が増え、生産量が落ち、本来の付加価値を得ることができるようになる。日本は余計な仕事を作り過ぎているのだ。そのために余計な労働をしているのだ。
日本の1億総活躍社会は、デフレを促進するものである。
一言主
http://blog.sonet.ne.jp/siawaseninarou/
http://www.eonet.ne.jp/~hitokotonusi/
追記
来年以降、東京オリンピックの工事が本格化し、カジノリゾートもオリンピックに向け開業するなら、日本の各地で人剥がしが横行することになろう。
地方活性化などは絵空事、それが完全失業率3%の意味だ。建設業に外国人労働者が増えれば、デフレがさらに深まっていくだろう。