この2週間、ポスト・ウエスト(欧米の世界支配以後)は集団で暴走を続けている。権力者たちは、今のような展開になるとは思ってもみなかったとうそぶき(今のような事態を引き起こすために最善を尽くしたてきたにもかかわらず)、侵略者に制裁を加え、侵略者が遅かれ早かれ屈服することを民衆に保証するように見せかけている。
この現象にはさらに第三の側面がある。それは20年前に自分たちがユーゴスラビアやセルビアを攻撃し、劣化ウラン弾を使用し、都市を爆撃し、民間人を銃撃したことを民衆に忘れさせようとすることである。もちろん先の事件は人道的行為であり、今回の事件は残虐な侵略行為なのだというが、これは余談である。
いまロシアに関して、ポスト・ウエストの側には大きな誤解がある。もし欧米メディアが、ロシア国民は戦争に反対しているとか、ロシア国民が反乱を起こしてプーチン大統領を打倒しようとしているとか言うのなら、彼らは妄想しているか、真っ赤な嘘をついているかのどちらかだ。現実はこちらの期待とは異なる。ロシア国民は大統領と当局の周りに結集している。ロシア国民はポスト・ウエスト諸国の国民とは違って愛国心が強く、祖国を守るために自らを犠牲にする用意がある。西側の制裁?ポスト・ウエスト諸国はビジネスを撤退させ、オリガルヒに制裁を加えるかもしれないが、これはロシア国民にとっては朗報だ。ロシア国民は欧米の支配を嫌っているが、オリガルヒが社会から一掃されるのを見るのは何よりも嬉しいだろう。ロシア人はこの敵対行為を1941年から1945年にかけての大祖国戦争の再来と見ている。西洋の集団心理とは逆に、プーチン率いるロシア当局はロシア国民に愛国心を持たせるために多大な努力を払ってきた。ロシア人が勝つのは、欧米のようにお金にそれほどこだわらないからだ。それが、欧米人が東方の相手に対して抱いている大きな誤解の一つなのである。
お金と、その結果として贅沢品のない生活を想像できないのが欧米諸国だ。制裁があろうとなかろうと、欧米企業は遅かれ早かれ(きっと)ロシアとのビジネスを再開するだろう。なぜなら欧米諸国では誰もが知っているように「金が世界を動かす」からだ。レーニン同志の有名な言葉に「資本家は我々にロープを売り、我々はそれを使って彼らを吊るす縄を作るだろう」というのがある。そして、彼らはそうするだろう……それについては、正直に認める。
そう、欧米諸国は、ウクライナ、ポーランド、ルーマニア、リトアニア、ラトビア、エストニアの兵士が自由に使える限りロシアと戦争する準備ができている。欧米諸国がそれらの兵士を使い果たした瞬間、その指導者たちはクレムリンとの交渉のテーブルに戻るだろう。
証拠が欲しい?
これだ。
数日前、米国はポーランドをロシアに対抗させようと、ソ連製のミグをウクライナに送るようワルシャワに提案した。ポーランド当局はいつもなら欧米の希望に従うが、今回はその提案について考え直し、米国がキエフに渡すことができるように、ラムシュタイン(ドイツ)の米国空軍基地に当該航空機を送る用意があると答えた。するとどうだろう。ワシントンは苛立ったのだ。わかるだろうか?犬の飼い主はそばで傍観しながら、犬が熊に噛みつくと期待していたのである。
思い浮かべてみてほしい。ワルシャワがウクライナにミグ機を送れば、モスクワはそれを敵対行為とみなし(当然だ!)、ポーランド領内の選択した標的に数発のミサイルを発射する。欧米諸国はどうすると思う?そう、その通り。欧米諸国は大きな憤りを表明して新たな制裁を課すだろう…しばらくの間は。
プーチン大統領についていえば、–西側諸国のアナリストによれば、プーチンは身近な人々か国家によって倒されようとしているが–、洗礼名はウラジミールで、それはスラブ諸民族を統合し洗礼を施したルス大王の名である。彼はウラジーミル大帝として歴史に名を残している。プーチンは、好むと好まざるとにかかわらず、もう一人のウラジミール大帝になる可能性があるのだ。
今回の戦争は、これまで慣れ親しんできた世界の終わりを意味する。新しい冷戦時代に入り、一方は米国、英国、欧州連合、他方はロシアと中国という、新しい地球分割が始まるのだ。この新しい世界は、クラウス・シュワブ的なグローバリストの計画に大きな狂いをもたらす。あるいは、グローバリズムは欧米世界に縮小されることになるだろう。これまで各国が守ろうとしてきた国際ルールがロシアには通用しなくなり、その結果、ドミノ効果で遅かれ早かれ他の国にも通用するようになる。欧米に苦しめられたモスクワは、この欧米で作られたルールに従うつもりはないだろう。なぜ従う必要があるのだろう。
制裁は双方向に作用する。ロシアには原油、天然ガス、レアメタルなど、提供できるものがたくさんある。過去に目を向けよ!1917年以降に政権を握ったボルシェビキは欧米諸国から嫌われていた。しかし驚くなかれ、資本家がその憎き共産主義者とのビジネスを再開するのに何年もかからなかったのだ。同様に第二次世界大戦後、ソ連は敵対する帝国とみなされていたのにもかかわらず、欧米とソビエトの間のビジネスは通常通り行われた。中国はどうだろう。欧米が最初に支援したのは台湾だった。ところが徐々に、しかし確実に、ワシントンは方針を転換し、台湾を自国に任せ、北京との接触を再開した。先に述べたように、金が世界を動かすのだから強欲な資本家たちはほとんどすべての生産を中国に委託して中国の発展を助けたのである。ロシアについては、そうはならないとあなたは思うだろうか。
ウクライナがやがてロシアに征服されたとき、リトアニア、ラトビア、エストニアといったロシアと国境を接する小国のエリートたちは自分たちの安全保障や欧米の集団による支援を、どう考えるのだろうか?
エストニアやラトビアのためにNATOがロシアと戦争すると本気で思っている男女がいたら、見てみたいものだ。
ウクライナは30年もの間、欧米企業に搾取され続けてきた。民主主義や資本主義との接触はウクライナにはまったく利益をもたらさなかった。恩恵を受けたのは、敵対行為の前にウクライナから逃亡した一握りの人々だけであり、一般市民は置き去りにされたままだ。噂によるとゼレンスキー大統領はワルシャワの米国大使館にいるそうだが、我々は彼がキエフに残っていると信じ込まされている。ゼレンスキー大統領が、もうすぐ包囲されそうな都市であるキエフにいることに、いくらあなたは賭けるだろうか?
欧米はウクライナをもっと利用してロシアをからかうこともできたはずだった。しかし単に手を出しすぎてしまった。イソップ寓話にあるように、金の卵を産むガチョウは強欲な飼い主に殺されてしまうのである。その教訓?多くを望みすぎると、すべてを失うということだ。モスクワが欧米の思想や欧米のライフスタイルを宣伝するメディアを閉鎖するなどの報復措置を取っている今、欧米は30年間保持してきたロシア国内のイデオロギー的橋頭堡を失ってしまった。欧米諸国は大儲けする準備ができたと本気で思っていた。大儲けだ。欧米のエリートは、ロシアがますますその立場から撤退していくと本気で思っていた。ナヴァルニーのようなロシアの反対派が、ロシア国民はみなロシア当局に反対していると、本気で信じていたのだ。さらに悪いことに、欧米諸国はロシア人が大統領を降伏させるだろうとまだ考えている。そうしないと、モスクワやペテルブルグのマクドナルド・レストランでハンバーガーやチーズバーガーを食べる機会が庶民から奪われてしまうからだ!確かに、ハンバーガーやチーズバーガーと国を交換するような、そんな人たちもいる。しかし、それは大きな全体から見れば少数に過ぎない。ロシアの偉大さに慣れ親しんだ多くの人は、この偉大さを売り飛ばすことはしない。それに同性愛者同士の結婚や、月単位に発明されるさまざまな種類のジェンダーといった欧米の価値観に魅力を感じていない。それもポスト・ウエストが意識していないことだ。また何百万人ものロシア人が、西洋式の資本主義が幸福を約束し、その代わりに貧困、不安、屈辱をもたらしたエリツィン時代の苦い思い出を持っていることも忘れてはならない。それがプーチン大統領が国民の大多数から評価される大きな理由の一つだ。プーチン大統領は、混乱に終止符を打ち、安定をもたらしたのだ。もしロシア人が同性愛のパレードや軍隊に妊娠中の兵士がいることや、たくさんのジェンダーの代名詞をもつことがいいと思っているなら、それ以上の妄想はない。
このような事態が起こっていることの、もう一つ説明がある。
欧米はロシアとウクライナを衝突させることで、両国を弱体化させるという目的だけでわざわざやってきたのだ。
これは世界の優位性を維持する一つの確実な方法ではないだろうか?国家があまりにも早く発展しすぎたと見た瞬間、戦争に導く。米国は第二次世界大戦でドイツ、イギリス、フランス、ロシア、イタリア、日本という世界の強国の経済が壊滅的な打撃を受けたからこそ、世界制覇を達成した。第二次世界大戦の終結後、これらの国々は米国の援助とドルを必要とし、ワシントンのほとんどすべての命令を受け入れざるを得なくなった。
現在の世界の政治地図を見てほしい。イラク、シリア、リビア、アフガニスタン、ウクライナ、旧ユーゴスラビアの国々、さまざまなカラー革命を経験した国々は、あらゆる戦争、内戦、社会的混乱、それに伴う経済的崩壊の打撃を受けて動揺している。どの国が勝者となるのか。そう、直接紛争に巻き込まれなかった国である。2匹の犬が骨を奪い合い、3匹目がそれをくわえて逃げ出す典型的な例である。
ロシアとウクライナは多くの人(死者、負傷者、避難者)を失うことになるだろう。ウクライナは経済が破綻する。ポーランドはすでに100万人(さらに増加中!)のウクライナ人を受け入れているが、彼らは自分の国を守り、その権利を証明することを望んでいないらしい(もしあなたが女性や子供は敵対行為に参加しない、参加すべきではないと言うのであれば、よく考えてみてほしい)。ワルシャワは彼らとの間で多くの問題を抱えることになるだろう。勝利するのは誰か?誰だかわかるだろう。カマラ・ハリス副大統領はポーランドを訪れ、ポーランドのウクライナ人に対する歓待を表彰し、元気づけるようにポーランド国民の肩を叩いた。彼女はこのようなジェスチャーがポーランド人に効くことを知っている。民族的に一枚岩の国を嫌う超国家的なエリートたちは、しめしめ、と喜んでいる。ようやく、民族的で宗教的に一枚岩の国家であるポーランドが、ポーランド人とウクライナ人、カトリックと正教会の混合に変わりつつある。もしワルシャワが欧米の方針に逆らうようなことがあれば、後に、クロアチア人とセルビア人のように巧みに互いに対立させればよいのである。
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