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[政治・選挙・NHK233] 鳩山元首相、スーツ姿で辺野古初座り込み 「米国の意のまま目の当たりに」 (沖縄タイムス)
鳩山元首相、スーツ姿で辺野古初座り込み 「米国の意のまま目の当たりに」
(沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/149499

 29日午前8時45分、米軍キャンプ・シュワブゲート前で新基地建設に反対する市民ら約10人が機動隊に強制排除された。午前8時54分から40分間、ゲート内に工事車両約75台が入り、約55台が出た。正午から約20分間は約40人が機動隊に強制排除され、ゲート内に資材が搬入された。
 
 座り込みには、たびせん・つなぐ(東京都・大西健一代表)が企画した旅行でゲート前を訪れたメンバーと、ツアーに同行した元首相の鳩山友紀夫さんも参加。初めて座り込んだという鳩山さんは「米国の意のままに動かされている政治を目の当たりにした」と話した。

 シュワブ沿岸の「N5」護岸予定地では午前、石材の入った網袋をクレーンで積み上げる作業やダンプカーが運んできた砂利を重機で地ならしする作業が確認された。
http://www.asyura2.com/17/senkyo233/msg/220.html

[政治・選挙・NHK233] 2017/10/05 安倍政権NO!☆銀座大行進 弱体化した安倍政権にさらなる圧力を!
2017/10/05 安倍政権NO!☆銀座大行進 弱体化した安倍政権にさらなる圧力を!山口二郎 野党議員 反原連ら(霞ヶ関駅)
http://www.labornetjp.org/EventItem/1505541666870matuzawa

▼呼びかけ
 2017年7月の東京都議選で自民党は歴史的大敗を喫し、安倍政権の支持率は急降下しました。
 それを受け安倍首相は、8月に内閣改造をしましたが、首相の首をすげ替えない限り、森友・加計学園疑惑、稲田元防衛相の日報問題、複数の自民党議員の不祥事など、人々の政府への不信感を払拭することはできません。

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」も失敗に終わりました。
 さらに、安倍首相は、内閣発足以来安倍一強体制で世論を無視し、特定秘密保護法、安保関連法、共謀罪の強行採決、原発推進などを強行してきました。
 どの政策をとっても、国民ひとりひとりの尊厳に重きを置いた平和国家の道筋から逸脱した、戦後最悪の首相と言えます。

 また、忘れてはならないのは、2015年のIS(イスラム国)による2人の日本人の殺害事件です。
 首相は中東各国を訪問し、テロ対策として数千億円の資金を提供すると表明、IS側はこれに強く反発し、このような行動に出たとされています。
 このことは、安倍首相の浅はかさを顕著に物語っているのではないでしょうか。

 これまでに安倍政権が行なった政策は、戦争に突き進む姿勢をあらわにするばかりで、平和国家、被ばく国である日本のあるべき姿とはかけ離れています。
 今年の広島と長崎の平和式典でも、被ばく者や、核廃絶を望む人々の思いを踏みにじることになりました。
 政権の弱体化で、憲法改正を強行する態度は軟化しているとはいえ、まだまだ油断はできません。

 来る10月5日、弱体化した安倍政権をさらに追い込むべく、立憲主義、民主主義を守るための大規模デモを呼びかけます。
 国民主権の健全な政治、戦争のない、格差のない社会を求めて集まりましょう!
 
*なお、当日までに安倍首相が退任した場合は、趣旨を「安倍退陣・祝賀デモ」に変更し開催します。

安倍政権NO!☆1005銀座大行進 弱体化した安倍政権にさらなる圧力を!
▼日時:2017年10月5日(木)18:30〜19:10
▼集会 日比谷野音(大音楽堂)
 18:00-開場(予定)
  入場は先着順となります(席数:3000)
 18:30〜19:10-集会
  登壇者 ○山口二郎(市民連合/法政大学教授)
      ○野党政治家
<デモ>
 19:20 大規模デモ 新橋〜銀座大行進
     ?サウンドカーブロック MC : ATS&AKURYO/DJ : Lark Chillout
    ?→ドラムブロック
    ?→個人参加・一般参加
    ?→団体・組合(PRカー先導)
▼デモコース
<出発:19:15>日比谷公園西幸門(日比谷野音裏)− 内幸町 − 新橋駅 − 数寄屋橋
        −<ゴール/流れ解散>丸の内鍛冶橋駐車場前(約2.2km)
▼日比谷野音(大音楽堂)へのアクセス
 最寄り駅:東京メトロ日比谷線「日比谷駅」
 東京メトロ丸ノ内線・千代田線・日比谷線「霞ヶ関駅」
 都営三田線「内幸町駅」
 JR「新橋駅」、「有楽町駅」
▼主催
 安倍政権NO! ☆ 実行委員会
  Eメール:info●abe-no.net(●を@に差し替え送信ください)
<事務局>
 首都圏反原発連合/原発をなくす全国連絡会/PARC NPO法人アジア太平洋資料センター
 【Web】:http://abe-no.net
 【Twitter】:https://twitter.com/abenocommittee
 【facebook】:準備中
<連絡先>
 首都圏反原発連合
  http://coalitionagainstnukes.jp/?p=10095
  https://twitter.com/MCANjp
  https://pic.twitter.com/WCRaEzzm45
  Eメール:info●coalitionagainstnukes.jp(●を@に差し替え送信ください)
  Tel:080-9195-2668
 原発をなくす全国連絡会
  東京都文京区湯島2-4-4 平和と労働センター 全労連会館内
  tel:03-5842-6451

<実行委員会参加団体>
 東京デモクラシークルー/秘密保護法を考える市民の会/若者憲法集会実行委員会/
 高江ヘリパッド建設反対現地行動連絡会/C.R.A.C./差別反対東京アクション/
 官邸前見守り弁護団/自由法曹団/TPPに反対する弁護士ネットワーク/
 新宿BEER&CAFEベルク/国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)/
 日本婦人団体連合会/農民運動全国連合会/全日本民主医療機関連合会/
 全国商工団体連合会/全国労働組合総連合/東京地方労働組合評議会/
 新日本婦人の会/全国農業協同組合労働組合連合会/
 安倍政権の教育政策に反対する会/T-nsSOWL/TQC(東京給水クルー)
 (2017年8月現在)
*参加団体であった『自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs)』は2016年8月15日に解散しました。
http://www.asyura2.com/17/senkyo233/msg/436.html

[政治・選挙・NHK234] <有権者発>小選挙区 問題点は 得票率48%で3/4占有(東京新聞)
<有権者発>小選挙区 問題点は 得票率48%で3/4占有
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017102402000127.html
(東京新聞)

 今回の「有権者発」のテーマは、衆院の選挙制度です。衆院選の結果を受けて「多くの有権者は安倍政権を支持していないのに、自民党が今回の衆院選で勝った。小選挙区制度に問題がある」との指摘を受けました。

 本紙の集計で、自民党の小選挙区での得票率(有効投票総数に占める自民党候補全員の得票総数)は約48%でした。それなのに、小選挙区の議席占有率は約74%です。自民党には、小選挙区に投票した人の二人に一人しか入れていないのに、四分の三の議席を獲得した計算になります。

 今回の投票率は戦後二番目に低い53・68%。有権者のうち半分近くの人は投票に行きませんでした。このため、全ての有権者のうち、何割の人が自民党に投票したのかをみる絶対得票率を計算すると約25%。自民党には有権者四人のうち一人しか投票しなかったことになります。

 二〇一四年の衆院選でも、自民党は大勝しましたが、小選挙区で得票率は約48%、議席占有率は約75%でした。

 〇九年に当時の民主党が政権交代を実現した時の衆院選では、小選挙区の得票率は約47%、議席占有率は約74%と同じ傾向でした。

 現行の小選挙区比例代表並立制が導入されたのは、一九九六年です。少ない得票で高い議席占有率を得られ、投票が議席に反映されない「死に票」が多いといった弊害が指摘されてきました。

 国会には小政党を中心に選挙制度を見直すべきだとの意見もありますが、実現しそうにありません。有権者は選挙制度の特徴を踏まえ、投票で意思表示する必要があります。 (城島建治)
http://www.asyura2.com/17/senkyo234/msg/583.html

[政治・選挙・NHK234] <有権者発>小選挙区 問題点は 得票率48%で3/4占有(東京新聞) カノヨウニ
1. カノヨウニ[1] g0qDbYOIg0WDag 2017年10月24日 11:25:46 : AyUdUEHpPU : ylqYPR@BLCc[2]
「投票が議席に反映されない」ということは、被治者の意思が治者たる国会に反映されないということで、民主主義に反するだろう。そんな国会が決定したことは、民主主義の名によって否定されても仕方あるまい。

「有権者は選挙制度の特徴を踏まえ、投票で意思表示する必要があります。」というが、反民主的な選挙制度に服従してばかりいるのでは、民主主義は実現できないだろう。

国会が被治者の意思を反映していないんであれば、国会以外のチャンネルで被治者の意思を反映した統治を実現するしかあるまい。
http://www.asyura2.com/17/senkyo234/msg/583.html#c1

[原発・フッ素51] 福島県:飲酒後に「路上横臥」、車にひかれ死亡…事故相次ぐ (讀賣新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190816-OYT1T50290/

 夜、路上で横たわった人が車にひかれて死亡する交通事故が相次いでいる。「路上横臥」と呼ばれ、去年はゼロだったが、今年に入ってすでに5件発生。福島県警交通企画課によると、いずれも飲酒後に路上で眠り込んでいたとみられる。同課は「お盆の時期は酒を飲む機会が増える。飲酒の会合で泥酔している人がいたら自宅まで送るなど、周囲も気をつけて」と呼びかけている。

 5件目の事故は今月10日の午後10時前に起きた。南相馬市原町区の市道に横たわっていた近くの男性(56)が、市内のパート従業員の女性(69)の軽乗用車にはねられ死亡。現場周辺に街路灯はなく、暗かったという。

 路上横臥は夏に増える傾向がある。7月に2件の死亡事故が起きた郡山署管内では、今月13日までの3週間だけで51件の路上横臥があったという。県警は7月、各署を通じて、夜間の走行が多いタクシー会社や運転代行業者に対し、横たわっている人を見かけたら保護し、通報するよう依頼した。

 同課は「一般の運転者も、ヘッドライトを上向き(ハイビーム)にすれば早めに気づくことができる。路上横臥の可能性を念頭に、夜は速度を抑えて走ってほしい」としている。
<引用終了>

 この異常な状況は、やはり放射線被曝障害なんでしょうか?

http://www.asyura2.com/19/genpatu51/msg/804.html

[原発・フッ素52] 被ばく回避と換気は両立困難 専門家「コロナ収束まで原発停止を」 (東京新聞)
被ばく回避と換気は両立困難 専門家「コロナ収束まで原発停止を」 (東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/36274?rct=main

 原発事故の際の避難計画や防護措置に新型コロナウイルスの「三密」対策が十分盛り込まれていないことが明らかになった。原子力防災担当の内閣府は「放射能防護と感染防止の両立を」と通知したが具体策は示さず、原発立地自治体の対策も実質的に空白の状態。放射能対策と感染防止を両立する手段は見いだせていない。ノーベル物理学賞受賞者の益川敏英氏(名古屋大学特別教授)が共同代表幹事を務める日本科学者会議は「コロナ収束まで運転停止を」との声明を出している。 (石川智規)

 原発が重大事故を起こし放射性物質が放出された場合、原子力災害対策特別措置法にもとづき、原発から半径約五キロ圏内の住民は即時避難が求められ、三十キロ圏内の近隣住民は屋内退避や避難が指示される。自家用車で避難できない住民は県や市町村が手配するバスで集団避難する。

 関係者が特に頭を悩ますのは屋内退避のルールだ。内閣府は六月上旬に自治体に通知した「感染症流行下での防護措置の基本的な考え方」で、屋内退避の場合は「被ばく回避を優先する」と明記。「原則換気を行わない」とした。

 だが、換気しなければ三密状態になる。学校の授業中などに事故が起きた場合、大勢の人が密閉空間での屋内退避となり、コロナ感染拡大の懸念が高まる。

 現在国内では九州電力と関西電力の三原発五基が稼働する。九電の玄海原発を抱える佐賀県玄海町役場の担当者は「放射能対策と換気の兼ね合いは困難」と苦渋を隠さない。
 バスによる避難でも、内閣府指針は「人との距離の確保やマスク着用、手指衛生」などを求めながら、座席間隔や消毒手法などは自治体任せだ。稼働中の関電の高浜、大飯(おおい)原発がある福井県の担当者は「手探りの部分が多い」と悩み、具体策は示せていない。佐賀県もバス事業者などを含めた検討会を開く予定は「まだない」(担当者)という。

 一方、事故の際は緊急事態対策の拠点となる「オフサイトセンター」に国の原子力防災専門官や自衛隊、警察らが詰め、緊急対応に当たる決まり。放射性物質を防ぐため、ドアなどの密閉性を特に高めた「三密」状態の施設だ。

 内閣府は「手洗いや離れて座るなどの対策は取るが、まず原子力事故の収束に全力を尽くすのが大事」として、施設の運用指針をコロナ向けに改正する考えは「ない」という。だが、東京電力福島第一原発事故のように事態収拾が難航し対応が長引けば、施設内で感染が拡大、事故対応自体が難航する可能性もある。

 米ゼネラル・エレクトリック社出身の原子力コンサルタントの佐藤暁(さとし)氏は「本来両立が難しい三密対策と放射能防護策を自治体任せにし、具体策を講じない国の姿勢は問題」と批判。「新型コロナで原発の運転リスクは高まっている」と警鐘を鳴らす。

◆日本科学者会議が声明
 新型コロナ感染拡大下の原発のリスクに関しては日本科学者会議が四月下旬、「新型コロナ感染拡大中の今、原発の即時運転停止を求める」と題した声明を発表した。

 声明は「原子力施設がひとたび事故を起こせば放射性物質防護のために屋内退避が不可欠で『密室』をつくらねばならない。新型コロナ対応とは相反する条件となる」と指摘。「避難場所自体で感染爆発、修羅場となりかねない」と警告した。事故対応や日常の運行管理でも閉鎖空間で働く要員に感染者が発生すれば「勤務体制がたちどころに崩壊し緊急時対応体制や安全運転体制の崩壊につながりかねない」としてリスク管理策は不可欠と主張。「稼働中の原発の運転停止を求める」とした。

 同会議は自然科学などの研究者らで構成する総合学術団体。共同代表幹事は、名古屋大素粒子宇宙起源研究所の益川敏英名誉所長(同大特別教授)と、昭和女子大の伊藤セツ名誉教授の二人。
http://www.asyura2.com/19/genpatu52/msg/752.html

[政治・選挙・NHK285] 「今しかなかった」プーチンが2月24日にウクライナ侵攻へ踏み切った本当の理由 一刻も早くウクライナ全面戦争をやめさせるために必要な知恵 PRESIDENT Online

「今しかなかった」プーチンが2月24日にウクライナ侵攻へ踏み切った本当の理由 一刻も早くウクライナ全面戦争をやめさせるために必要な知恵
東郷 和彦  静岡県対外関係補佐官
https://president.jp/articles/-/55379


長いロシア外交の中で最も大きな衝撃だった

2022年2月24日は世界を変えた。私の周りの世界も変わった。思えば筆者は、55年間ロシアとのお付き合いをしてきた。しかし、今回ほど大きな衝撃を感じたことはない。様相が変わった世界の中に、戦争が堂々と席をしめてしまったことは、許しがたいと思う。世界の多くの国が批判の声を上げているのは、当然のことだと思うし、この戦争は一刻も早くやめなければいけないと真底考える。

戦争をやめさせるために、いま米欧NATO等西側諸国は、@ウクライナに対する武器供与はじめ物心両面での支援の拡大、A「これまでロシアが経験したことのない大規模な制裁の実施」Bリベラルデモクラシー諸国を中核としてできるだけ多くの国による国際的なプーチン批判、を三本柱として、プーチン政権への圧力を極大化してきた。


なぜ侵攻は「2月24日」だったのか

日本政府もその先頭を走っているし、このやり方は一定の成果を上げているようである。しかし、一刻もはやくウクライナ全面戦争をやめさせるためには、なぜプーチンが2月24日に全面戦争にふみこんだのか、その戦争目的を知らなくてはいけないと思う。目的を分かってのみ、一刻も早い停戦実現の可能性が生まれてくるのではないか。

昨年の12月ごろからウクライナ周辺でロシア軍が大規模演習を始めたころから、ロシアの目的には、直近の目的と中長期的な目的があると分析された。直近の目的は、ドネツク・ルハンスク(略称ドンバス)の2つの州に住むロシア人の安全確保の問題だった。中長期的目的は、いわゆるNATOの東方拡大の問題、具体的には、ウクライナおよびジョージアをNATOには加盟させないという問題だった。

実はこの両者には密接な関係があり、今回世界を震撼させたウクライナ全土への侵攻は、この2つの密接な関連の中から生まれたことが、最近筆者にも分かってきた。


問題は「クリミア半島奪取」から始まっていた

どうしてドンバスのロシア人居住区の問題がかくも重要な問題となったのか。話は、2014年2月のユーロ・マイダン(キエフにおける抗議運動)によって、ヤヌコーヴィチ大統領がキエフから放逐され、プーチンがこれをクリミア回復へのきっかけとした時点にさかのぼる。クリミアはロシア人にとって民族の記憶とアイデンティティが残る場所であり、国民投票と軍事力によりプーチンは、クリミアをとりもどしたのである。

しかし、キエフで暫定政権を担ったヤツェニュク首相は、東部においてウクライナ語の使用を進める政策を採用した。この政策は、ロシア語を公用語とするドンバス両州で猛烈な反発をひきおこし、ロシア軍のさらなる動員が伝えられた。新たに大統領に選出されたポロシェンコは、2015年2月に独仏の賛同をえて「ミンスク合意」を結び、ドンバス問題の解決を企図したが、事態の鎮静化にはいたらなかった(拙著『危機の外交 首相談話、歴史認識、領土問題』(角川新書、2015年、202〜210ページ)。

ミンスク合意については一言説明しておかねばならない。ドンバスとNATO拡大の問題が連結していることは、ミンスク合意の中身を見ることによって、よく解るからである。


プーチンにとっては値千金だった

2015年2月に確定したミンスク合意の署名者は、ロシア・ウクライナ・ドイツ・フランス・OSCE(欧州安全保障機構)の代表であり、問題となっているドネツクとルハンスクのロシア人居住区の代表も参加した。最大の合意点は、ウクライナ国家の中に、ロシア人の人権が保障される2つのロシア人特別区をつくることにあった。ウクライナ大統領には、国際合意となったミンスク合意を実施するために必要な施策を行う義務が課せられたわけである。

しかし、ミンスク合意が無事に実現した場合、ウクライナは、自国の中に「ロシア人特別区」を持つことになる。ウクライナのNATO加盟問題が出たときに当然この特別区の人たちは反対することになる。しかるにNATOには内規があり、「民族紛争または領土紛争を有する国はこれをOSCEの原則に従って平和的に解決しなくてはならない。これらの紛争を平和的に解決しているかどうかが、加盟を許すか否かの判断要因になる」(「NATO拡大に関する研究=2008年11月5日改訂」)とされている。

この内規に照らせば、ウクライナとジョージアは、事実上NATO加盟が不可能になる。プーチンにとって「ミンスク合意」こそ、一石二鳥の大政策だったと言ってもよい。


ゼレンスキー大統領「彼らはテロリストだ」

しかし、ポロシェンコに代わって大統領に選ばれたゼレンスキーは、ミンスク合意の全否定から政策を開始した。筆者は、2019年5月に選出されたゼレンスキー大統領が、2018年11月8日の選挙で選ばれていたドンバス2州のロシア人地区の代表者について「彼らはテロリストだから会わない」と言い出したのを知り、驚愕した。

しかし、バイデン政権は、「ウクライナ現政権の主権と領土的一体性を守る」という立場のみからゼレンスキー政権を全面支持した。プーチンがミンスク合意実現の可能性なしと思ったことには、それなりの理由があったといわねばならない。

その結果、2月21日プーチン大統領は、安全保障会議を開き、ドンバスの2つの「共和国」(「ドネツク人民共和国」「ルハンスク人民共和国」)の独立を承認。両共和国との間に「友好相互援助条約」を締結した。さて、このニュースを聞いた時に筆者は、おそらくかなりの人たちと一緒に「なるほど。これでドンバス問題はかたがついた。これからしばらくの間、NATOの東方拡大の問題について交渉が始まり、そこから何らかの合意が生まれることを期待しよう」と思ったのである。


「今しかなかった」と語ったプーチンの真意

しかしプーチンの判断はまったく逆であり、ロシア軍の全面侵攻が2月24日に始まった。この間わずかに3日、ドンバス両共和国承認と同時にウクライナ侵攻を決めたのではないかと考えてもおかしくはない。一体なぜだろうか。既述のように、ようやく最近になって、筆者もその原因を理解できるようになったと思う。

ドネツク・ルハンスク人民共和国を独立国家として承認することは、ウクライナのNATO加盟への道を開きかねないことを、プーチンは最初から自覚していたのではないか。

分かりやすく言えば、もしもゼレンスキーに天才的な知恵があり、2月21日の翌日にでも、新たに成立したドンバス両人民共和国を国家承認したら何が起きるか。ロシアとウクライナの双方から承認された両人民共和国は国際法上安定した基礎をもつのみならず、残ったウクライナという国の民族的矛盾がほとんどなくなってしまうではないか。

NATOの内規に基づく「民族紛争」がなくなれば、ウクライナのNATO加盟を妨げる要因はなくなる。ウクライナ攻撃を命じたプーチンが「今しかなかった」と述べていたことが筆者にはとても印象的だった。しばらく分からなかったその意味が、今はなにがしか分かる気がするのである。


停戦にはプーチンの内的論理を知る必要がある

2月24日以降、世界は戦争のパラダイムに入ってしまった。一度始まった戦争を止めるのは本当に大変なことである。ゼレンスキーの下でまとまりを強めているウクライナ国民は、徹底抗戦の構えをとっている。アメリカを含むNATO諸国は自ら戦いには参加しないが、ウクライナに武器供与を行い、打倒プーチンに向かって結束行動をとり始めた。まずは「かつてない強烈な制裁をかける」ために共同行動をとり、ウクライナ戦争後には、ロシアを敵国とした新欧州安保制度創設の模索が始まったようである。

国際世論においても、ロシア非難が大きな役割を占め、3月1日に開催された国連総会では、即時撤退決議が、賛成141、反対5、棄権35で採択となった。岸田内閣は、日本はやらないと決めている「対ウクライナ武器供与」は別として、国際世論の先頭に立って、ロシア非難と制裁の強化に必死である。

そうはいっても、アメリカの場合、ホワイトハウス主導の「打倒プーチン」論が世論を風靡する中にあっても、@NATOの東方拡大こそ最大の間違いだったとするシカゴ大学のミアシャイマー教授(『ウクライナ危機は西側の誤り』(Foreign Affairs, 2014 September/October)『2015年シカゴ大学公開講義』『2022年New Yorker Interview』)、Aニクソン大統領のソ連問題指南役だったドミートリー・サイムス、Bロシア関連情報を英語で丹念に紹介配布しているジョンソン・リストの『私の意見』など、プーチンの内的論理を追求しながら政策を考えようとする意見が発信されている。

日本の場合、今回ここまでの武力行使は許せないと明確に指摘しつつも、ロシアの内的論理を丁寧に紹介している代表が佐藤優氏だと思う。


米国よりも付き合いの長い日本ができること

ロシアの内的論理を追求する人たちに学びながら、いま日本の国益にたって日本外交を考えるときに、述べておきたいことがある。

日本としてウクライナ和平のためにどのような行動をとったのか、もしくは今でもなしうることをやっているのかという問題である。日本にはアメリカよりもはるかに長いロシア人との接触があり、日ロ戦争の大勝利と太平洋戦争最後の火事場泥棒的攻撃の屈辱とその後の永い領土交渉の歴史をもっている。そこで蓄積してきたロシアの内的ロジックについての知見が、日本にはあるはずである。

昨年12月以降緊張が蓄積していく中で明確になってきた、「ドンバスに平和と安定を」と「ウクライナの中立化」の2つの課題がプーチンにとって必須である――そのことをアメリカとウクライナにきちっと日本の然るべき責任者は言ったのだろうか。マスコミ報道からは、残念ながらそれはうかがえない(<「NATOに行くのは許さない」プーチン政権が異常なまでにウクライナに執着する悲しい理由(2021年12月16日)>および拙文『Responsible Statecraft(2022年1月24日)』参照)。

これまでのことはともあれ、今拡大しているウクライナ戦争は、あまりに悲惨で危険である。「スラブ三兄弟」の「弟殺し」を続けているプーチンにも早期停戦のインセンティブは必ずあると筆者は思う。戦争を終わらせる外交交渉ほど難しいものはない。戦争を終わらせるには、双方の最低限の要件を満たさねばならない。


プーチンを説得できる「ある人物」とは

筆者は「ウクライナの中立化」と「両国軍の即時停戦」が今ロシアとウクライナが合意できる最低限の要件だと思う。日本外交がそこで底力を発揮できないか。今のプーチンには一見の客は通用しない。日本外交には安倍晋三元首相という切り札がある。岸田総理が腹をきめれば、今なら、日本外交は世界の平和のために必死の努力をすることができる。それは同盟の分裂ではなく、逆に同盟強化のための最大の努力ではないかと、筆者には思えるのだが。

最後にもう一つ、ウクライナ戦争後の日ロ関係について付言しておきたい。このまま事態が進行すれば、何も期待しうるものは残らないと思う。

今マスコミが伝えているように、日本外交がアメリカの政策のみを復唱し、最も厳しい制裁を実施してきたのであれば、56年日ソ共同宣言を基礎とする平和条約交渉はなくなり、ゴルバチョフとの交渉以来30年にわたって拡大強化してきたいわゆる「環境整備の輪」(昆布・墓参・ビザなし・四島周辺漁業協定・自由訪問等)もすべてなくなる。そのあとには、外務省条約局の鉄壁の法律論の下で、日本人だけが行くことのできない「北方四島」が再出現することになる。これについての議論は本稿では差し控えることとしたい。(2022年3月8日筆)


東郷 和彦(とうごう・かずひこ)
静岡県対外関係補佐官
1945年生まれ。1968年東京大学教養学部卒業後、外務省に入省。条約局長、欧亜局長、駐オランダ大使を経て2002年に退官。2010年から2020年3月まで京都産業大学教授、世界問題研究所長。著書に『歴史と 外交 靖国・アジア・東京裁判』(講談社現代新書)などがある。


http://www.asyura2.com/22/senkyo285/msg/741.html

[政治・選挙・NHK285] これはアメリカが引き起こした危機 「プーチンは犠牲者だ」(クーリエ・ジャポン)
これはアメリカが引き起こした危機
「プーチンは犠牲者だ」世界には親ロシア目線でウクライナ侵攻を報じる国がこれほどある
https://courrier.jp/news/archives/281813/


これは「必要な戦争」

ロシアによるウクライナ侵攻に世界中が震撼した。国際報道からも見て取れる通り、多くの国のリーダーがプーチン大統領を批判している。だが英紙「ガーディアン」によると、今回の出来事に別の見方をする国も少なくないようだ。

たとえばベネズエラの評論家、アルベルト・アランギベルは、プーチンによる侵攻を「必要な戦争だった」と語っている。また中国人学者の王朔(ワン・シュオ)は、今回の出来事は「アメリカが作り出した危機」だと指摘。「アメリカの戦略的利己主義が世界にさらなる災いをもたらした」と同氏は中国政府系の新聞「環球時報」に語り、ウクライナを戦争に巻き込んだワシントンの「利己的で短絡的な行動」を非難した。

さらに、メキシコ紙「ラ・ホルナダ」の論説委員は次のように語っている。「ウクライナ侵攻の唯一の原因がプーチンの『野心と邪悪さ』であるという幻想を捨て、NATOによる東側諸国に対する威圧がいかに災いへの道を開いたか、この『厳しい真実』に直面する時が来た」

南アフリカの主要な新聞である「デイリー・マーベリック」は「ウクライナ侵攻に対する西側の対応は偽善的だったか? 紛れもなくイエスだ」と論じた上で、プーチンの「主権国家に対する不当かつ違法な猛攻」も非難した。

そしてジョー・バイデンが制裁としてロシアの石油を禁輸すると発表したとき、ベネズエラメディア「テレスール」のマドレーヌ・ガルシア記者は次のようにコメントしている。「いつになったら、アメリカの罪と侵略行為に制裁が下るのだろう?」

また、チャビスタ(マドゥロ政権を支持するチャベス派)のコメンテーターであるアランギベルによれば、プーチン大統領は侵略者ではない。「かつてないほど残忍で強烈な、人を悪魔化へ向かわせる(西側諸国による)キャンペーン」の犠牲者だと主張する。同氏は政府系タブロイド紙「ウルチマス・ノーティシアス」に、次のように書いた。「このキャンペーンは、少なくとも10年間、ニコラス・マドゥロ大統領に対して行われてきたものに匹敵するだろう」

北朝鮮の国営通信社である「KCNA」は、西側による制裁を「権力の乱用」だと報じた。「ウクライナ危機の根本的な原因は、他国に対して高圧的な態度を取り、権力を乱用しているアメリカと西側の覇権主義政策にある」と、同メディアは外務省関係者の発言を引用している。

キューバ共産党の機関紙「グランマ」は、ロシアに対するアメリカの対応を「ヤンキー帝国による無慈悲なキャンペーン」だと非難しつつ、紛争そのものはモスクワとキエフの「不和」にすぎないと報じた。

シリアの国営メディアもロシア寄りだ。というのも、同国のメディアが全面的に支持しているバッシャール・アル・アサド大統領は、プーチン大統領が引き起こした戦争を支持する立場にいるからだ。アサド大統領は過去7年間にわたり、シリアで自らの地位を固めるうえでロシアに助けられてきた背景がある。


アメリカの「皮肉で偽善的な涙」

西側諸国も戦争を引き起こしてきたじゃないか。それなのに戦場がヨーロッパになった途端、まるでかつてない大事(おおごと)が起きたように騒ぐなんて、どこかおかしいのではないか──そんな違和感を覚えている国もあるようだ。「西側諸国のダブルスタンダードに対する批判は、ロシア同盟国の国営メディアだけにとどまらない」と英紙「ガーディアン」は報じる。

南アフリカの日刊紙「メール&ガーディアン」のオピニオン記事は、この紛争を「矛盾に満ちている」とした。ウクライナで起きている戦争を「ヨーロッパ以外で起きている紛争よりも酷いもの」として扱っているように感じられる西側メディアの報道、そして政府の反応を批判しているのだ。

「ロシアの介入によるウクライナに対する暴力と人命の損失を嘆きながらも……一歩下がって、世界の他の国々がこの紛争をどう受け止めているかを見ることには価値があるだろう」

ナイジェリアの「ガーディアン」紙の見出しには「支配への恐れ、潜在的な敵がロシアによる侵攻に拍車をかけた」とあった。ヨーロッパにおけるNATOの拡張政策が、今回の侵略が起きた原因の一つであるとの見方が、広く浸透していることが反映されている。

そしてキエフで現地を取材しているブラジル人ジャーナリストのヤン・ボエチャットは、アメリカのブリンケン国務長官がウクライナ紛争の犠牲者のために流す「皮肉で偽善的な涙」に失笑を禁じえないようだ。米軍がイラクで引き起こした殺戮について言及しながら、次のようにツイッターで語っている。

「オバマ政権下のアメリカは、プーチンと同じように残酷なことをモスルで行った。死者を悼む人は誰もいなかった。米軍の戦闘機がひとり残さず殺したからだ」

イラク戦争から6ヵ月後、荒廃したモスルを取材した際、被害者の遺体でつまずいたことを思い出すと彼は言う。そしてこう締めくくった。

「残酷さ、野蛮さ、不正な行為は残念ながら、プーチンとロシア人だけによるものではない」

「戦争の犠牲者たちが弔われるかは、加害者が何者であるかによって決まる。だが彼らはみんな、犠牲者なのだ。ウクライナ人、イラク人、シリア人、アフガニスタン人。一般市民たちはみんな、犠牲者だ」
http://www.asyura2.com/22/senkyo285/msg/777.html

[政治・選挙・NHK285] プーチンだけが悪玉か―米国の「幅寄せ、煽り運転」がもたらしたもの(現代ビジネス)
プーチンだけが悪玉か―米国の「幅寄せ、煽り運転」がもたらしたもの
プロパガンダに惑わされていないか

大原 浩
国際投資アナリスト
人間経済科学研究所・執行パートナー
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/93315?imp=0


本当はだれの責任か?

3月7日公開、「プーチンは米国を見透かしていた? ウクライナの悲劇はだれの責任か」記事において、ロシアやプーチン氏だけが一方的に悪者にされる報道ばかりが流布することに疑問を呈した。そして、その状況が続いているようである。
もちろん「手を出した」国が悪いに決まっているが、「手を出さざるを得ない」状況に追い込まれていたのも事実である。
公平かつ冷静な「背景分析」なくして、「正しい対応」はできない。ウクライナ危機をめぐっては、人類滅亡につながりかねない「核戦争」の危険があるのはもちろん、「ウクライナ侵攻経済制裁―ロシア危機から世界通貨危機へと向かうのか」で述べたように「世界金融・経済の大混乱」につながりかねない要素も多分にある。
したがって、一時の感情に流されずに、冷静かつ公平な対応を行うことが日本の将来にとって重要だと考える。
例えば、「忠臣蔵」という日本人なら誰もが知っている物語がある。この物語は史実をかなり脚色している部分があるが、「(神聖な)殿中で手を出した」浅野内匠頭を一方的に非難する人々は少ないであろう。
むしろ、(史実と違うという意見もあるが)浅野内匠頭を苛め抜いた吉良上野介が悪いと考える人が多いのではないだろうか。
そして、喧嘩両成敗のはずなのに、吉良上野介はお構いなしにもかかわらず、浅野内匠頭の言い分は全く聞かずに即日切腹を命じた五代将軍綱吉の采配に対しては、多くの人々が疑問を感じるだろう。
今回のウクライナ危機が誤解されやすいのは、「(強大な)ロシア対(ぜい弱な)ウクライナ」という構図でとらえられるからである。
だが、実際の対決は、「(強大な)NATO対(経済的には小国の)ロシア」である。「ウクライナをNATOに加盟させるぞ」と苛め抜かれたロシアが、吉良上野介の小姓(ゼレンスキー氏率いるウクライナ)に手を出してしまったというのが本当の構図であろう。
もちろん、本来の仇は吉良上野介だが、ロシアがNATOに手を出したら「人類滅亡へとつながる核戦争」が起こる。したがって、だれもそれを望んでいない。


「煽り運転」「幅寄せ」は合法か?

もちろん、吉良上野介は違法なことは行っていない。ただ「親切に田舎の殿様を指導」しただけである。
だが、浅野内匠頭にすれば、頭ごなしに「お前が悪い」と叱責を受けることに我慢がならなかった。
ロシアという国家やプーチン氏が「正しい道」を歩んでいるかどうかはともかく、浅野内匠頭と同じことを感じたであろうことは容易に想像がつく。
しかも、ウクライナのNATO加盟は単なるメンツの問題ではなく「ロシアという国の安全保障=命」に関わる問題である。ロシアにすれば、NATOに煽り運転や幅寄せをされている感覚であったはずだ。
煽り運転や幅寄せをされた経験がある読者ならわかると思うが、そのような行為には「とてつもない恐怖」を感じる。しかし、「手を出された」わけではない。
しかも、国際法には軍隊の「煽り運転、幅寄せ」を罰する法律はない。「ウクライナがNATOに加盟したらロシアは終わりだ」とプーチン氏が考え、そのようなメッセージも明確に送っていたのに「危険運転」を行った米国やNATOにも大きな非があると思う。
「手を出していない」から正義というわけではないということだ。


「反露無罪」「鬼畜ロシア」だけでいいのか?

例えば韓国の「反日無罪」という風潮に眉を顰める日本人は多いだろう。しかし、現在日本に蔓延しているように思える「反露無罪」はどうであろうか?
あるいは、戦時中「鬼畜米英」と叫ばれたが、「鬼畜ロシア」と叫ぶだけでよいのだろうか?
確かに、米国のルーズベルト大統領は「日本を苛め抜いて(真珠湾に)手を出させた」敵役である。だが、「鬼畜米英」と叫んだことがどれほど日本の役に立ったであろうか。むしろ、野球のストライクを「よし」とするような極端な英語排斥などは、敵を知るための研究の邪魔になったといえる。
孫子の「敵を知り、己を知れば、百戦してあやうからず」という言葉はあまりにも有名だが、「敵を知らないで攻撃」することはとても危険だ。
実際、日本で語られる「世界史」は明治以来、「西洋史観」一辺倒でかなり偏っているから、ロシアやウクライナさらにはスラブ民族の歴史に詳しい人々は限られている。
第1次冷戦に「資本主義vs共産主義」の構図があったのは事実だが、歴史的な「東方vs西方」という側面を見逃してはならない。
また、1812年にフランスのナポレオンが大軍でロシアを侵略した。結果は「冬将軍」にやられたナポレオン軍の完敗であったがロシアの被害も甚大であった。
さらに、1941年にアドルフ・ヒトラーによってはじめられた独ソ戦は、犠牲者がロシア側だけでも3000万人ともいわれる「史上最悪の戦争」である。
これらの歴史を振り返れば、「西洋史観」では「西側を侵略する悪の帝国」とされるロシア(ソ連)が必ずしもそうではないことが良くわかる。むしろ東側への侵略を続けてきたのは西側と言える。


米国は決して正直者ではない

プーチン氏が独裁者であるのは間違いがないが、米国も正義の味方ではない。少なくとも、はなさかじいさんのような正直者ではないことは認識すべきだ。
例えば、ベトナム戦争が本格化するきっかけとなったトンキン湾事件は、1964年8月、北ベトナム沖のトンキン湾で北ベトナム軍の哨戒艇がアメリカ海軍の駆逐艦に2発の魚雷を発射したとされる事件である。
これをきっかけに、アメリカ合衆国連邦政府は本格的にベトナム戦争に介入、北爆を開始した。
この際に、米国議会は、上院で88対2、下院で416対0で大統領支持を決議(トンキン湾決議)をした。もちろん、北ベトナムやその背後に存在する、ソ連や中国などの「共産圏許すまじ!」というムードに満ち溢れていたことは想像に難くない。
しかし、1971年6月に「ニューヨーク・タイムズ」が、いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」を入手した。そして、事件の一部は米国が仕組んだものであったことが暴露された。なお、この事件を題材にしたメリル・ストリープ、トム・ハンクスなどが出演する「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」が映画化されているほど米国内ではよく知られた事件だ。
また、2003年にブッシュ(子)氏が、イラク侵攻の大義名分として主張した「大量破壊兵器」は結局存在しなかった。
したがって、米国政府もこれまで数えきれないほどの「嘘」をついてきたと判断せざるを得ない。それにもかかわらず、無条件に政府発表を信じて記事を書くのは、まるで戦時中に「大本営発表」をそのまま記事にしていた日本の新聞社のような行為である。
ベトナム戦争当時と現在とを比べると、「米国のジャーナリズムは死んだ」と思える。もしかしたら、これから「勇気あるジャーナリスト」が登場するのかもしれないが、政府発表を無批判に垂れ流すメディアに「ジャーナリスト魂」があるのかどうか疑問である。
結局、一方的にバイデン民主党政権サイドに立つ報道機関は、民主党の御用メディアに成り下がっているのではないだろうか。


米国は反共のために人々を苦しめてきた

毛沢東、スターリン、ポルポトを見れば共産主義国家がどれほど人々を苦しめてきたかは明らかだから、米国の反共政策は基本的には容認できる。現在のロシアは共産主義ではないが、同じように扱われているようだ。
だが、そのために米国が世界中の独裁政権を支援し(その国の)国民を苦しめてきたことは否定できない。中南米には山ほど事例があるし、ベトナム戦争の際の(米国が支援した)南ベトナム政権の腐敗ぶりは有名だ。
ウクライナにおける2014年2月の親欧米政権樹立にも、米国(CIA)の影が見え隠れする。
また、ウクライナ大統領のゼレンスキー氏を英雄視する向きがあるが果たしてどうであろうか?
米国やNATOにうまく乗せられた可能性もあるが、同氏が「NATOに加盟する」という発言をしなければロシアの侵攻が無かったのはほぼ確実だと思われる。したがって、「自らの発言でウクライナ国民をリスクにさらした」という事実は否定できない。
また、「18〜60歳の男性の出国禁止」は、国民のことを考えた行動だろうか?武器をとって最後まで戦えということに思えるが、米軍やNATOの支援が無い状況で、戦闘訓練も受けていない一般市民にそのようなことを強制するのは正しいことだろうか。「お国のために死になさい」と言っているのと同じに感じる。


地球温暖化論との類似性

(人類が排出する二酸化炭素による)「地球温暖化論」の欺瞞については、昨年12月6日公開「脱炭素原理主義が今の『自業自得エネルギー危機』を招いている」など多数の記事で述べてきた。
その特徴は、「明確な証拠や事実が無いのにムードで多くの人々を巻き込む」ことである。そして「ムードで巻き込まれた結果」がどのようなものになるのかを我々は気づき始めている。
さらに、「地球温暖化論」は、(人類が排出する二酸化炭素の)短期的、極所的な影響ばかりに着目して、歴史的な気候変動や、太陽光や火山活動など重要な気候変動要因をまるで無いかのように扱ってきた。
今回のウクライナ侵攻でも、「ロシアが手を出した」局地的現象ばかりに議論が集中し、「歴史的な東西対立」などが全く無視されているように感じる。
現在「プーチン悪玉論」が「ムードで多くの人々を巻き込んでいる」が、その結果はどうなるであろうか?
我々はムードに流されるべきではないと思う。
結局、「戦乱」によって苦しむのはいつも一般市民である。ゼレンスキー大統領が「最初から(NATO加盟を口にせず)ロシアと話し合う姿勢」を見せていれば、ウクライナへの侵攻は無かったであろうし、市民の被害も無かった可能性が高かったことを忘れてはいけない。
http://www.asyura2.com/22/senkyo285/msg/828.html

[政治・選挙・NHK285] プーチンはなぜウクライナに侵攻したか 大前研一氏が“ロシア脳”で読み解く(マネーポストWEB   週間ポスト)
プーチンはなぜウクライナに侵攻したか 大前研一氏が“ロシア脳”で読み解く
2022年3月20日 7:00 週刊ポスト
https://www.moneypost.jp/891007


 なぜロシアのプーチン大統領は、国際社会から非難を浴びることが明らかなウクライナ侵攻に踏み切ったのか──。経営コンサルタントの大前研一氏は「ロシアとプーチン大統領の側に立って“ロシア脳”で見てみるとウクライナ問題には別の一面があることがわかる」と指摘する。どういうことか、大前氏が解説する。


 本稿執筆時点(2022年3月11日)では、ロシアのウクライナ侵攻が長期化・泥沼化の様相を呈し、犠牲者や避難民が増え続けている。
 アメリカやEU(欧州連合)はロシアへの経済制裁を強化しているが、それに対し、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナが抵抗をやめてロシア側の要求を満たした場合のみ、軍事作戦を停止する」と述べ、一歩も引かない構えである。
 言うまでもなく、ロシアが主権国家のウクライナを侵略することは許されない。私は、自分が主宰している経営者の勉強会「向研会」の視察などでウクライナを何度も訪問し、同国の人々に親愛の情を抱いている。ロシアの軍事侵攻は極めて遺憾であり、速やかな戦争終結・和平を祈るしかない。
 一方、日本のマスコミ報道を見ていると、なぜプーチン大統領が国際社会から非難を浴びることが明らかなウクライナ侵攻に踏み切ったのか、さっぱりわからない。単純にプーチン大統領を横暴で残忍非情な独裁者と批判し、米欧を正義と位置付けているだけである。
 だが、そういうレッテル貼りは、無意識のうちに“アメリカ脳”で世界を見ているからにほかならない。その逆に、ロシアとプーチン大統領の側に立って“ロシア脳”で見てみると、ウクライナ問題には別の一面があることがわかる。
 むろん、私は親露でも反米でもない。だが、あえて“ロシア脳”で考えれば、プーチン大統領がウクライナ侵攻に踏み切った理由が見えてくる。歴史的な視点からすると、“アメリカ脳”と“ロシア脳”の両方を併せ持っていなければ、国際問題に対して的確な判断はできないと思う。


勢力圏を削られる屈辱と危機感

 19世紀以降のロシア(ソ連)は、侵略するより侵略されたことのほうが多い国である。1812年にはナポレオンが攻め込み、1918年〜1922年には日本を含む第一次世界大戦の連合国がロシア革命に干渉してシベリアに共同出兵した。第二次世界大戦ではナチス・ドイツが侵攻した。
 今回、フランスのマクロン大統領はプーチン大統領との仲介役を買って出た。ドイツのショルツ首相もプーチン大統領と電話会談を行なった。しかし、“ロシア脳”から見れば「フランスよ、胸に手を当てて考えてみよ。ナポレオンは何をしたか?」「ドイツよ、ナチスの侵攻を忘れたのか?」となる。かつて侵略した国が説得しようとしても、聞く耳を持つはずがないだろう。
 そして1991年12月25日、ロシアはソ連崩壊という史上最大の屈辱を味わった。その後、ソ連を構成していた共和国が次々に独立し、バルト3国や東欧諸国は米欧の軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)に飲み込まれた。
 プーチン大統領は、冷戦終結後の1990年代初めに西側は「NATOは1インチたりとも東方に拡大しないと約束した」と主張している。“アメリカ脳”だと「それは正式な外交文書になっていない」と反論するが、“ロシア脳”からすれば約束は約束であり、その後のNATOの東方拡大は「騙された!」となる。
 さらに、友好関係にあるはずの中国もまた、近年はウクライナとの関係を深める一方で、巨大経済圏構想「一帯一路」によってカザフスタンなど中央アジア諸国や黒海沿岸の利権を侵食してきている。ロシアには、周囲の勢力圏をどんどん削り取られているという危機感があるはずだ。
 ただし、プーチン大統領が本心からNATOを恐れているかというと、全く恐れていないと思う。たとえば、今もしNATO軍が動いたら、瞬時にロシア軍が猛反撃して壊滅状態に追い込む自信はあるだろう。
 それよりもプーチン大統領が危惧しているのは、ウクライナ東部ドンバス地域(ドネツク州とルガンスク州)のロシア系住民に対する抑圧だ。同地域は人口の約30%がロシア系で、なかでも親露派分離勢力が実効支配する「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」では70%に及び、ロシアが2014年に併合したクリミア半島と同じような状況にある。プーチン大統領は両「共和国」の希望者にロシア国籍を与え、ロシアのパスポートも発給している。
 そして今回プーチン大統領はそれらを独立国家として承認し、しかも両「共和国」の領土がそれぞれの州全体であると認めるようウクライナに要求している。
 その背景にあるのは、バルト3国におけるロシア系住民への迫害だ。とりわけラトビアは人口の24.4%をロシア系が占めているが、その多くは公務員や正規雇用の仕事に就けず、パスポートも与えられていない。これはロシア国民の多くにとって許せないことであり、ドンバス地域のロシア系住民が同様の境遇になるのを防がねばならないのだ。
 しかし、ゼレンスキー大統領はドンバス地域への“挑発”を続け、この問題を深刻化させていた。どんな理由であれ軍事侵攻は絶対に容認できないが、ロシア側からすれば、ゼレンスキー大統領のやり方が無視できない“暴挙”と映っていたことは想像に難くない。
 今後プーチン大統領はどこへ向かうのか? ゼレンスキー大統領にどんな打ち手があるのか? 次号でも“ロシア脳”から考察する。


【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊『日本の論点2022〜23』(プレジデント社)。ほかに小学館新書『稼ぎ続ける力 「定年消滅」時代の新しい仕事論』等、著書多数。
※週刊ポスト2022年4月1日号
http://www.asyura2.com/22/senkyo285/msg/845.html

[戦争b23] ウクライナ戦争「アメリカが原因作った説」の真相 シカゴ大教授が非難(東洋経済ONLINE)
ウクライナ戦争「アメリカが原因作った説」の真相 シカゴ大教授が非難、YouTube再生100万回以上
https://toyokeizai.net/articles/-/578952

東洋経済ONLINE

高橋 浩祐 : 国際ジャーナリスト 2022/04/03 9:00

ロシアのウクライナ侵略で故郷を追われ、命懸けで国外に脱出する大勢の人々。街が破壊され、黒焦げになった病院や住宅。そして、日々犠牲となっている無辜(むこ)の子どもたち――。ウクライナの戦場を伝える悲惨な映像や写真を見て、「いったい何がこのような軍事侵攻を招いたのか」と疑問を募らせている読者もきっと多いことだろう。
筆者は、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した2月24日以来、国際法を無視して武力で他国の主権と領土を侵害し、罪なき人々の命を奪っているロシアを強く非難してきた。どんな理由があろうとも、他国への侵略は認められない。
しかし、いま、「今回のウクライナ戦争の原因を作ったのは西側諸国、とりわけアメリカだ」と主張するアメリカ・シカゴ大の国際政治学者、ジョン・ミアシャイマー教授の発言が世界的に注目されている。


ミアシャイマー教授のYouTube再生回数は100万回以上

ロシアのウクライナへの軍事侵攻前後に、ミアシャイマー教授が出演したYouTubeの再生回数はともに100万回以上に達し、いわゆるバズっている状態だ。ロシアに理解を示す識者の言動は、同調圧力が強い日本ではほとんど見受けられない。
筆者が3月中旬にインタビューしたドイツ・ミュンヘン在住の30代のロシア人女性も「このシカゴ大教授の分析は私には客観的に見える」と述べ、視聴を勧めていた。現状を冷静に分析する「考えるヒント」として、ミアシャイマー教授の主張を紹介したい。そして、最後に筆者の反論も記したい。
なお、同教授は、米陸軍士官学校(ウエストポイント)を卒業後、将校として米空軍に5年間在籍した経歴を持つ。大国間の外交に重きを置くリアリズム(現実主義)の論客として知られる。
ミアシャイマー教授は2月15日に出演したYouTubeの冒頭部分で次のように断じている。
「アメリカやイギリスといった西側諸国で広く受け入れられている一般通念では、このウクライナ危機で責任があるのはプーチンであり、ロシアであるということだ。つまり、悪い輩と良い輩がいて、私たちが良い輩、ロシア人が悪い輩だということだ。しかし、これはまったく間違っている。アメリカとその同盟国、とりわけ、アメリカが責任を負っている」
そして、アメリカ主導の西側諸国が3つの柱からなる戦略でロシアをウクライナ軍事侵攻にまで追い込んだと非難している。では、その3つの柱とは何なのか。


@ NATOの東方拡大

1つ目は、既によく指摘されているように、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大政策だ。
ミアシャイマー教授は、1991年のソ連崩壊後、弱体化したロシアが2度にわたって甘んじてNATOの東方拡大を受け入れてきたと指摘する。1度目は1999年の旧ソ連衛星国のポーランド、チェコ、ハンガリーのNATO入り。2度目は2004年のバルト3国やルーマニアなど7カ国のNATO加盟だ。
もともとこれらの国々は、西側のNATOに対抗し、ソ連を盟主とした東ヨーロッパ諸国が結成した軍事同盟のワルシャワ条約機構のメンバーだ。しかし、冷戦終結に伴い、1991年に東側のワルシャワ条約機構が解散した一方、西側のNATOは存続して拡大を続けてきた。冷戦後、唯一の超大国となったアメリカ、とりわけ民主党のビル・クリントン政権が1990年代後半にNATOの東方拡大を本格化させた。
政治学者でソ連史研究家の法政大名誉教授の下斗米伸夫氏は、著書『ソ連を崩壊させた男、エリツィン』(作品社)の中で、アメリカが「(1990年の)ドイツ統一後の同盟不拡大の東西合意を反故にした」と指摘している。


2008年4月、NATO首脳会議が引き金に

プーチン大統領はかねてNATOの東方拡大に強く反対してきた。ミアシャイマー教授は、このNATO東方拡大問題が2008年4月にルーマニアの首都ブカレストで開かれたNATO首脳会議で一気に爆発したと指摘する。この会議では、時のブッシュ・アメリカ大統領が旧ソ連のウクライナとジョージア(旧グルジア)のNATO加盟を提案。ウクライナとジョージアもNATO加盟を明確に表明した。
今から振り返れば、ドイツとフランスはとても冷静で、ロシアから無用な反発を買うことを恐れ、アメリカの提案に反対した。しかし、結局、ウクライナとジョージアの将来的なNATO加盟については合意に至った。
ミアシャイマー教授は「ロシアはこの時、明確にウクライナとジョージアのNATO入りはロシアの国の存亡に関わる脅威であり、受け入れられないと主張した」と指摘し、今回のウクライナ戦争の起源だと言い切っている。
ロシア軍は、そのNATO首脳会議から4カ月後の2008年8月にジョージアに軍事侵攻した。
2014年のロシア軍によるクリミア侵攻については、ミアシャイマー教授は「クリミア半島にはセバストポリという(黒海に面した)重要な海軍基地がある。ロシアがここをNATOの基地にさせることなど考えられない。これがロシアがクリミアを奪った主な理由だ」と指摘する。
そして、同教授は、1962年にアメリカの喉元にあるキューバにソ連の核ミサイルが配備され、ケネディ政権がそれを撤去させた「キューバ危機」を例に挙げた。
このアメリカの危機対応は諸外国による南北アメリカ大陸への干渉を拒否するアメリカの「モンロー主義」であるとし、ロシアも、それと同じように自らの「裏庭」に当たるウクライナを西側の対ロシア防波堤と化すことは決して認めない、と指摘した。
その指摘通り、2014年のロシアのクリミア半島への侵攻以来、ウクライナは新しい東西対立の最前線となってきた。ロシアにしてみれば、ポーランド、ルーマニア、バルト3国などに加え、ウクライナまでもがNATOに加われれば、NATOとの間の「緩衝地帯」を失うことになる。


A EU拡大

ロシアをウクライナ軍事侵攻にまで追い込んだ西側のストラテジーの2つ目の柱としてミアシャイマー教授が挙げたのが、欧州連合(EU)拡大だ。EUは経済的かつ政治的な連合体で、西欧型リベラル民主主義の基盤ともなっている。
そのEUに、ポーランドやチェコ、ハンガリー、バルト3国など10カ国が2004年に、ルーマニアとブルガリアの2カ国が2007年に、さらにクロアチアが2013年にそれぞれ加盟を果たした。
これらの国々に続き、西側がウクライナやジョージアもEUに加盟させようとしていた動きをミアシャイマー教授は指摘する。確かにEUはジョージアやウクライナなどロシアと距離を置く東欧諸国のさらなる加盟に向け、実務的な交渉を進めてきた。そして、ロシアによるウクライナ侵略を受け、ウクライナは2月28日に、ジョージアとモルドバは3月3日にそれぞれ加盟申請を相次いで行った。結果としてロシアを刺激してきたことは想像にかたくない。


ロシアを追い込んだ3つ目の柱
B カラー革命

ミアシャイマー教授によると、ロシアを追い込んだ西側のストラテジーの3つ目の柱は、カラー革命だ。
カラー革命とは、ユーゴスラヴィアやセルビア、グルジア、キルギスなど旧ソ連下の共産主義国家の国々で2000年以降、独裁体制の打倒を目指して起きた民主化運動のことだ。
ミアシャイマー教授は、ウクライナでは2014年2月中旬、アメリカの支援を受けて拡大したクーデターが勃発。親ロシア派のヤヌコビッチ大統領が同月22日、デモ隊の動きを止められずに騒乱の中に解任され、親米派のリーダーが後釜に据えられた事実を指摘した。そして、ロシアはこれを容認せず「違法な政権転覆」と非難、同年3月1日のクリミア軍事侵攻につながったと同教授は述べている。
このウクライナの政変は、プーチン大統領が力を注いでいた2014年のソチ冬季オリンピック期間中に起き、プーチン氏としてもメンツをもろにつぶされる格好になった。
EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表(外相)は、2月22日のパリでの理事会後の記者会見で、プーチン大統領がウクライナ東部の一部地域の独立を承認したことについて、次のように語った。
「(ロシアによる)国際法違反の日付は選ばれていた。決して偶然ではない。2月22日は(親露派の)ウクライナのヴィクトル・ヤヌコビッチ氏が国会で大統領の職を追われてから8周年となる日だった。そして、民主主義の勝利が続いた。プーチン大統領は、ウクライナの民主主義ごっこのプレータイムの終わりと言っている。つまり、プーチン大統領は明らかに意図的にこの日を選んで行った」
つまり、今回のウクライナ侵略は8年越しのプーチン大統領のリベンジだったとの指摘だ。
さらに忘れてはいけないことは、旧東欧諸国が次々と民主国家になり、その民主主義の「津波」がプーチン独裁政権の足元を徐々に揺るがしてきていることだ。今回のウクライナ戦争の背景には、民主主義対独裁体制の対立があることを忘れてはならないだろう。ウクライナは西欧リベラル民主主義と強権的な権威主義の対決の最前線にもなっている。


違和感を覚える点もある
ミアシャイマー教授の主張を聞き、筆者には違和感を覚える点もある。あまりにも大国間の権力政治(パワー・ポリティクス)を重視するあまり、ウクライナのような小国の主権や自国の行く道を選ぶ自主選択権を軽視しているように思えることだ。
ウクライナにしてみれば、チェチェン戦争やジョージア戦争でロシアの脅威を目の当たりにし、早期のNATO加盟入りを果たしたかっただろう。緩衝地帯うんぬんという議論は、大国が小国を容易に扱えるといった帝国主義的な発想とも受け取れる。
いずれにせよ、大国が力尽くで小国の主権を侵害することが許されるようになれば、欧州だけでなく東アジアをはじめとするあちこちで国際秩序が崩れかねない。21世紀のこの時代、大国間外交だけではなく、しっかりと小国の主権保護にも目を向けていきたいものだ。
http://www.asyura2.com/19/warb23/msg/571.html

[戦争b23] ウクライナ戦争の責任はアメリカにある!――アメリカとフランスの研究者が
ウクライナ戦争の責任はアメリカにある!――アメリカとフランスの研究者が
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220413-00291294
遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
4/13(水) 17:11


 アメリカの国際政治学者で元軍人のミアシャイマー氏とフランスの歴者学者エマニュエル・トッド氏が「ウクライナ戦争の責任はアメリカにある」と発表。筆者の「バイデンが起こさせた戦争だ」という見解と一致する。認識を共有する研究者が現れたのは、実にありがたい。


◆『文藝春秋』5月号がエマニュエル・トッド氏を単独取材

 月刊誌『文藝春秋』5月号が、エマニュエル・トッド氏を単独取材している。見出しが「日本核武装のすすめ」なので、見落としてしまうが、実はトッド氏は「ウクライナ戦争の責任はアメリカにある!」と主張している。
 冒頭で、彼は以下のように述べている。

 ――まず申し上げたいのは、ロシアの侵攻が始まって以来、自分の見解を公けにするのは、これが初めてだということです。自国フランスでは、取材をすべて断りました。メディアが冷静な議論を許さない状況にあるからです。 (『文藝春秋』p.95より引用)

 この冒頭の文章を読んで、深い感動を覚えた。
 その通りだ。
 いま世の中は、「知性」でものごとを考えることを許さず、「感情」で発信することしか認められない。まるで戦時中、大本営発表に逆らう者は非国民と言わんばかりだ。
 しかし、このようなことをメディアが続けていると、本当に大本営が招いた結果と同じものを日本にもたらす。真に日本国民の為を思い、日本国を憂うならば、勇気を出して、戦争が起きた背景にある真相を直視しなければならない。
 そうしないと、次にやられるのは日本になるからだ。

 トッド氏の主張の概要は以下のようになる。

 ●感情に流される中、勇敢にも真実を語った者がいる。それが元米空軍軍人で、現在シカゴ大学の教授をしている国際政治学者ジョン・ミアシャイマーだ。彼は「いま起きている戦争の責任はアメリカとNATOにある」と主張している。

 ●この戦争は「ロシアとウクライナの戦争」ではなく、「ロシアとアメリカ&NATOの戦争」だ。アメリカは自国民の死者を出さないために、ウクライナ人を「人間の盾」にしている。

 ●プーチンは何度もNATOと話し合いを持とうとしたが、NATOが相手にしなかった。プーチンがこれ以上、領土拡大を目論んでいるとは思えない。ロシアはすでに広大な自国の領土を抱えており、その保全だけで手一杯だ。

 ●バイデン政権のヌーランド国務次官を「断固たるロシア嫌いのネオコン」として特記している(拙著『ウクライナ戦争における習近平の対ロシア戦略』の第五章、p.159〜p.160にかけて、オバマ政権時代、バイデン元副大統領とヌーランドがどのようにして背後で動いていたかを詳述した)。

 ●アフガニスタン、イラク、シリア、ウクライナと、米国は常に戦争や軍事介入を繰り返してきた。戦争はもはや米国の文化やビジネスの一部になっている(拙著『ウクライナ戦争における習近平の対ロシア戦略』の「おわりに」――戦争で得をするのは誰か?に書いた内容と完全に一致する)。

 何というありがたいことだろう。
 日本で筆者1人が主張しても、ただバッシングの対象となるだけで、非常に数少ない知性人しか理解してくれない。
 しかし、こうしてフランスの学者が声を上げてくれると、日本はようやく真実に目覚め始める。月刊誌『文藝春秋』の勇気を讃えたい。


◆米国際政治学者・ミアシャイマー「ウクライナ戦争を起こした責任はアメリカにある!」

 世界には感情を抑えて、知性で真実を訴えていく研究者は、ほかにもいる。トッド氏が事例として挙げているアメリカの元空軍軍人で、今はシカゴ大学の教授として国政政治を研究しているジョン・ミアシャイマー氏が、その一人だ。
 彼は3月3日に「ウクライナ戦争を起こした責任はアメリカとNATOにある」とユーチューブで話している。
 非常にありがたいことに、マキシムという人が日本語の字幕スーパーを付けてくれているので、日本人は容易にミアシャイマー氏の主張を聞くことができる。
 ミアシャイマー氏が言っている内容で筆者が特に興味を持った部分を以下に適宜列挙してみる。

 ●特に昨年(2021年)の夏、ウクライナ軍がドンバス地域のロシア軍に対して無人偵察機を使用したとき、ロシア人を恐怖させました(ユーチューブの経過時間7:40前後)。(これに関しては拙著『ウクライナ戦争における習近平の対ロシア戦略』のp.177〜p.178で詳述した)。

 ●太平洋戦争の末期1945年初頭に、アメリカが日本本土に侵攻する可能性に直面したとき、何が起こったか、ご存じですか(ユーチューブ経過時間17:29)?硫黄島で起こったこと、そして沖縄で起こったことの後、アメリカが日本本土に侵攻するという作戦は、アメリカ国民をある種の恐怖に陥れました(17:42)。終戦間近の1945年3月10日から、アメリカは日本各地の大都市の無辜の市民に、次々に無差別空襲爆撃を行いました(17:51)。その後、東京に最初に特殊爆弾(焼夷弾)を投下した一夜だけで、なんと、広島(9万人)や長崎(6万人)の犠牲者よりももっと多くの一般市民(10万人)を焼き殺したのです(17:54)。実に計画的かつ意図的に、アメリカは日本の大都市を空襲で焼き払ったのです(18:00)。なぜか?大国日本が脅威を感じているときに、日本の主要な島々に、直接軍事侵攻したくなかったからです(18:04)。

 ●アメリカはウクライナがどうなろうと、それほど気にかけていません(20:34)。アメリカ(バイデン)は、ウクライナのために戦い、兵士を死なせるつもりはないと明言しています(20:39)。アメリカにとっては、今回の戦争が、自国存亡の危機を脅かすものではないので、今回の結果はたいして重要ではないのです(20:43)。しかし、ロシアにとって今回の事態は自国ロシアの存亡の危機であると思っていることは明らかです(20:49)。両者の決意を比べれば、ロシアに圧倒的に強い大義があるのは、自明の理です(20:50)。(筆者注:筆者自身は、この点はミアシャイマー氏と意見を異にする。但し、ミアシャイマー氏が言いたかったのは、前半で繰り返し話しているように、プーチンは何度もNATOの東方拡大を警告し、話し合いを求めたがNATOが無視をして逆の方向に動いたという事実なのだろう。あまりに長いので省略したが、ミアシャイマー氏は、プーチンには切羽詰まって危機感があったと言い、太平洋戦争を例に取ったのは、切羽詰まった危機感を感じたときに何をやるか分からないということのようだ。)

 ●ここで起こったことは、アメリカが、花で飾られた棺へと、ウクライナを誘導していったことだけだと思います(21:30)(これは正に筆者が書き続けてきたことで、拙著『ウクライナ戦争における習近平の対ロシア戦略』の第五章で詳細な年表を使いながら解説した内容と一致し、表現は異なるが内容的には2月25日のコラム<バイデンに利用され捨てられたウクライナの悲痛>とも一致する)。

 ●アメリカは棒で熊(ロシア=プーチン)の目を突いたのです(21:58)。当然のことですが、そんなことをされたら、熊はおそらくアメリカのしたことに喜びはしないでしょう。熊はおそらく反撃に出るでしょう(22:12)
                  (ユーチューブからの引用はここまで)

 ミアシャイマーが言うところの、この「棒」は、「アメリカ(特にバイデン)がウクライナにNATO加盟を強く勧めてきたこと」と、「ウクライナを武装化させてきたこと」を指しているが、筆者自身は、加えて最後の一撃は12月7日のバイデンの発言にあると思っている。

 バイデンは、何としても強引にプーチンと電話会談し、会談後の記者会見で、ウクライナで紛争が起きたときに「米軍が介入する可能性は極めて低い」と回答した。
 ミアシャイマー氏が指摘するように、2021年10月26日、ウクライナ軍はドンバス地域にいる親ロシア派軍隊に向けてドローン攻撃をするのだが、10月23日にバイデンがウクライナに対戦車ミサイルシステム(ジャベリン)180基を配備した3日後のことだ。ウクライナはバイデンの「激励」に応えてドローン攻撃をしたものと解釈される。バイデンはウクライナを武装化させて「熊を怒らせる」ことに必死だった。
 これは戦争の第一砲に当たるはずだが、それでもプーチンが動かないので、もう一突きして、「米軍が介入しないので、どうぞ自由にウクライナに軍事侵攻してくれ」と催促したようなものである。
 あの残忍で獰猛(どうもう)な「熊」を野に放ったバイデンの責任は重い。


◆三者の視点が一致
 トッド氏とミアシャイマー氏の見解と、筆者が『ウクライナ戦争における習近平の対ロシア戦略』でアメリカに関して書いた見解は、基本的には一致する。
 トッド氏は歴史学者あるいは人類学者からの立場から分析し、ミアシャイマー氏は元米空軍軍人で現在は国際政治学者の立場から分析している。

 筆者自身は日中戦争と中国の国共内戦(解放戦争)および(避難先の吉林省延吉市で)朝鮮戦争を経験し、実際の戦争経験者として中国問題研究に携わってきた。
 1945年8月、まだ4歳の時に長春に攻め込んできたソ連軍にマンドリン(短機関銃)を突き付けられ、1947年から48年にかけて中国共産党軍によって食糧封鎖を受け、街路のあちこちには餓死体が放置されたままで、それを犬が喰らい、人肉で太った犬を人間が殺して食べる光景の中で生きてきた。そして最後には共産党軍と国民党軍に挟まれた中間地帯に閉じ込められ、餓死体が敷き詰められている、その上で野宿をさせられた。
 あまりの恐怖から、しばらくのあいだ記憶喪失になり、今もあのトラウマをひきずって生きている。

 そういった原体験を通して、骨の髄から戦争を憎み、「如何にして戦争が起き、如何にして戦争が展開されるか」を、全生命を懸けて見てきた。その意味で、原因が何であれ、ロシアの蛮行には耐え難い嫌悪感を覚え、到底許せるものではない。人間のものとも思えないほどの残虐極まりないロシアの狂気は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を蘇らせ、激しい拒否反応を引き起こす。

 それぞれの立場と斬り込み方は異なるが、三者が少なくとも、「責任はアメリカにある」という同じ結論に達したことは重視したい。
 人類から戦争を無くすためには、私たちは「誰が戦争の本当の原因を作っているか」を正視しなければならない。そうでないと、その災禍は必ず再び日本に降りかかってくる。その思いが伝わることを切に祈る。


遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(4月16日出版予定、PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させたケ小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
http://www.asyura2.com/19/warb23/msg/628.html

[戦争b23] 「アメリカはウクライナ戦争を終わらせたくない」と米保守系ウェブサイトが(遠藤誉)
「アメリカはウクライナ戦争を終わらせたくない」と米保守系ウェブサイトが
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220416-00291675

遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
4/16(土) 11:37


 4月14日、米保守系ウェブサイトが「アメリカはウクライナ戦争が停戦になるのを邪魔している」という趣旨の論考を発表した。15日には中国のCCTVが同じ解説をしている。双方の見解を比較してみよう。

◆米保守系サイト「ワシントンはウクライナ人が最後の一人になるまでロシアと戦う」
 反ネオコン(ネオコン=新保守主義)を掲げるアメリカの純粋な保守系ウェブサイトであるThe American Conservative(アメリカの保守)は、4月14日に<Washington Will Fight Russia To The Last Ukrainian(ワシントンはウクライナ人が最後の一人になるまでロシアと戦う)>という見出しでバイデン政権の好戦性を批判する論考を発表した。
 そのサブタイトルには<Kiev faces a choice: make peace for its people or war for its supposed friends?(キーウは選択を迫られている:国民のために平和を作りだすのか、それとも仮想の友人のために戦い続けるのか?)>とある。
 この「仮想の友人」とは、もちろん「アメリカ」のことだ。
 作者のダグ・バンドウ(Doug Bandow)氏はレーガン政権で外交アドバイザーを務めたこともあり、現在はワシントンにあるシンクタンクのシニアフェローとして多数のメディアで執筆活動を行っている。
 彼の主張の概要を以下に記す。

1.アメリカと欧州はウクライナを支援しているが、しかし、それは平和を作るためではない。それどころか、モスクワと戦うウクライナ人が最後の一人になるまで、ゼレンスキー政府を支援するつもりだ。
2.アメリカと欧州は、キ―ウに豊富な武器を提供し、モスクワに耐え難い経済制裁を科しているが、それはウクライナ戦争を長引かせることに役立っている。最も憂慮すべきことは、ウクライナ国民が最も必要としている平和を、アメリカと欧州は支持していないことだ。「アメリカはウクライナ戦争の外交的解決(=停戦)を邪魔したい」のだ。
3.戦争が長引けば長引くほど、死者数が増え破壊の程度は高まるが、アメリカと欧州は平和支援をしていない。ワシントンは、ウクライナ指導部が平和のための妥協案を検討するのを思いとどまらせようとしている。
4.戦闘資金の援助は戦いを長引かせることを意味し、アメリカと欧州は、ウクライナ人が永遠に戦えるようにするだろう。
5.戦争によって荒廃しているのはウクライナだ。現在進行中の紛争を止める必要があるのはウクライナ人だ。たしかにロシアはウクライナ侵略の全責任を負っている。しかし、米国と欧州の政府は、紛争を引き起こした責任を共有している。欧米の私利私欲と偽善のために、世界は今、高い代償を払っている。
                         (引用はここまで。)

◆中国のCCTVが類似の報道を
 アメリカにはさまざまな勢力があるものだと感心していたところ、なんと、翌日の4月15日、中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTVがほぼ類似の報道をした。
 キャスターが「もう一つ、私たちが注意しなければならない点があります」と前置きして、評論員(解説委員)に以下のような質問をした。
 ――アメリカの報道によれば、アメリカは1ヵ月以内に8億ドル相当の新しい軍事支援をウクライナに提供すると予想されています。また別のアメリカ報道によれば、バイデンは政府高官をウクライナに派遣することを検討しているとも言われています。それはロシアとウクライナの現在の状況にどのような影響を与えるか、あなたの分析をお聞かせください。(質問ここまで)
 するとCCTVの特約評論員である曹衛東氏は、概ね以下のように答えている。

 ――そうですね、アメリカとNATOは絶え間なくウクライナに軍事援助を増強しています。その意図は、ウクライナの(停戦への)交渉を妨げることにあると見ていいでしょう。ウクライナとロシアの間で、少しでも交渉の進展があると、すぐさまアメリカや欧州が慌ててウクライナに大量の武器や資金を提供していることに注目しないといけません。彼らはなぜ停戦交渉を邪魔しなければならないのでしょうか?なぜなら、停戦交渉が進むということは、すなわち、ウクライナが中立国になることを意味するからです。これはアメリカをはじめとするNATOが最も望まないことで、「NATOの東方拡大」の方針に合致しないからなのです。アメリカは停戦協定に署名させたくない。だから絶え間なく軍事支援を増強しているのです。そうすれば、その分だけ、戦争を長く続けることができますから。
 なぜ米政府高官がウクライナを訪問しなければならないかというと、戦争を長引かせるよう、決して停戦のための和平交渉を進めないよう、ウクライナを激励するためなんです。そんなことをすれば、より多くの人が犠牲になるわけですが、アメリカはその分だけ利益を得ることができるので、誰かを派遣して、できるだけ長い期間戦争を続けるようにするのがアメリカの目的です。
                       (評論員の解説はここまで)

 反ネオコン派とは言えアメリカのそれなりの地位にあった人物の意見と、中国のCCTV解説委員の意見が、ここまで合致するというのは興味深いという思いで、CCTVを観た。
 しかし、CCTVがそういう報道をするのなら、習近平は一刻も早く積極的に停戦に持っていくべくプーチンを説得すべきだろう。

◆ネオコンはウクライナ戦争で如何なる役割を果たしているのか?
 そもそもネオコン(Neoconservatism )とは、アメリカの「新しい保守主義」を指し、「国際政治へのアメリカの積極的介入」あるいは「アメリカの世界覇権」や「アメリカ的な思想を世界に広めること」などを信条としているため、従来の保守主義とは異なる。
 ネオコンは今では「軍需産業」(武器商人)と密接に結びつき、アメリカの民主党との結びつきが強い傾向にある。ならば共和党はみな反ネオコンかと言ったら必ずしもそうではなく、後述するようにトランプ政権にも少なからぬネオコン派が入っていた。
 ただ、本来の保守主義を主張するThe American Conservativeは、反ネオコンで、ウクライナ戦争は武器商人と結びついて、バイデン政権が起こしたものであるとしている。これは4月13日のコラム<ウクライナ戦争の責任はアメリカにある!――アメリカとフランスの研究者が>で書いた、アメリカのジョン・ミアシャイマー氏やフランスのエマニュエル・トッド氏などの見解と一致している。
 特に、ネオコンの代表格であるバイデン政権のヌーランド国務次官などは、2013年末にウクライナ政権クーデター(親露派ヤヌコーヴィチ政権を打倒して親欧米派ポロシェンコ政権を樹立させたマイダン革命)をバイデン(副大統領)とともに背後で動かした中心人物だ。このことは拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』の第五章(p.159〜p.160)で詳述したが、筆者はそこではネオコンという言葉を一回も使っていない。そういうイデオロギー的概念を持ち込まず、あくまでも客観的ファクトを、これでもか、これでもかとばかりに拾い上げて年表を作成し(p.150-p.155)、時系列的に分析しただけだ。
 斬り込み方や視点が全く異なるのに、結果として見えてきたものが同じだった。

 年表を作成していると、面白い発見がある。
 アメリカの動きは、ひたすら「ウクライナをNATO加盟させる方向に奔走する」という動きに満ちているのだが、その中で一ヵ所だけ特異な事象がある。
 それはトランプ元大統領だ。
 彼だけは「NATOなど要らない」と言っており、案の定、トランプ政権の時は、瞬発的な外国への攻撃はあっても、その瞬間だけで、いわゆる他国に干渉する「戦争」は起こしていない。なぜならトランプはネオコンではないからだ。ポンペオ(国務長官)やボルトン(国家安全保障問題担当大統領補佐官)などネオコン傾向のメンバーもいたが、バイデン政権のネオコン一辺倒とは比べ物にならない。
 だからトランプが豪語する通り、もしトランプが大統領だったら、ウクライナ戦争は絶対に起きてないだろう。そもそもプーチンとトランプは仲良しだったのだから。
 何が何でもウクライナをNATOに加盟させようとしたのはバイデンだ。副大統領時代の2009年7月から始めていた。

 バイデン政権にいるブリンケン国務長官もオースティン国防長官も生粋のネオコンだ。オースティンなどは、アメリカの巨大軍需企業のレイセオン・テクノロジーズの取締役をしていたのだから、戦争が起きていないと困るネオコンそのものである。
 バイデンは先日、米政府高官の誰かをウクライナに派遣する可能性があると発言しているが、その候補として名前が挙がっているのが、このブリンケンとオースティンだ。
 いずれにしてもネオコンの代表で、ウクライナを訪問する目的は、The American Conservativeにダグ・バンドウが書いている通り、ウクライナ戦争を何としても長引かせることにある。
 日本の大手メディアや岸田内閣は、こういった事実を直視する勇気を持っているだろうか?

 ロシアの旗艦モスクワ号が沈没したというニュースを知ると、つい思わず「いいぞ、ウクライナ、もっと頑張れ」という気持ちが湧いてきてしまうが、それは、ある意味危険なのかもしれない。戦争が続けばウクライナの民の犠牲者が増えていくだけでなく、さらに強力な破壊力を持った兵器を使う方向にプーチンを誘い込むことにつながるからだ。
 ウクライナを支援したい気持ちは変わらないが、何としてもロシア軍の蛮行を止めることが全てに優先する。一刻も早く停戦に持っていくべきだ。

 そのためには、ジョン・ミアシャイマーやエマニュエル・トッド、あるいはThe American Conservativeが書いている戦争が起きたメカニズムを直視するしかない。
 それを見ない限り、次にやられるのは日本だと覚悟しなければならないだろう。 
 さらに恐るべきは、ウクライナ戦争は中国が最後の勝者となるのを助長しているということだ。その理由は『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』で詳述した。     

遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略 世界はどう変わるのか』(4月16日出版予定、PHP)、『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させたケ小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
http://www.asyura2.com/19/warb23/msg/643.html

[戦争b23] 「露ウの衝突は米国に責任がある」 「村山首相談話の会」理事長(CGTN Japanese/AFPBB News)
「露ウの衝突は米国に責任がある」 「村山首相談話の会」理事長
https://www.afpbb.com/articles/-/3400543

2022年4月15日 20:16 発信地:中国 [ 中国 中国・台湾 ]
CGTN Japanese


【4月15日 CGTN Japanese】ロシアとウクライナの衝突は1カ月以上続いています。それに伴い、緊張した情勢の根源は米国の扇動や北大西洋条約機構(NATO)の長年にわたる東方拡大にあると指摘する国際問題関係者が、ますます増えています。日本の「村山談話を継承し発展させる会」の藤田高景理事長は中央広播電視総台(チャイナ・メディア・グループ、CMG)の独占取材に答えて、「西側、特に米国にこの衝突の責任がある」と述べました。

 藤田理事長は、「米国のシカゴ大学のミルズ・ハイマー教授は、米国とNATOに今回のウクライナ危機の責任があると指摘した。私はこの重要な観点に賛成する」と述べました。
 藤田理事長はまた、冷戦終結後にNATOが東に拡大しつづけてロシアの戦略的安全空間を圧迫したのであり、ロシアとウクライナ情勢に火を付けたのは、覇権主義と冷戦思考による災いだと指摘しました。

 藤田理事長は「NATOは今なお存在している。これは大きな問題だ。NATOが東に拡大し続けると地域情勢の緊張が高まるだけだ。ロシアを激怒させても何の役にも立たない。私はNATOが望むがままに東に拡大することに反対する。これは誤ったやり方だ。情勢の緊張を激化させ、戦争の危機を招くだけだ。欧州諸国にとって、NATOを東に拡大させなければならない理由はない」と述べました。

 藤田理事長はさらに「米国はウクライナへの軍事支援を続けている。米国は武器を供与して自国の軍事産業を儲けさせるやり方をやめるべきだ。武器提供は戦争をひたすら激化させる愚かな行為だ。バイデン大統領は現在の政策を変えるべきだ」と強調しました。(c)CGTN Japanese/AFPBB News
http://www.asyura2.com/19/warb23/msg/645.html

[戦争b23] エマニュエル・トッドが語った“この戦争が長期化する”理由『第三次世界大戦はもう始まっている』(文春オンライン)
https://bunshun.jp/articles/-/55103

「ウクライナ軍の成功が戦争をより暴力的な方向に向かわせる」エマニュエル・トッドが語った“この戦争が長期化する”理由
『第三次世界大戦はもう始まっている』 #1
エマニュエル トッド
source : 文春新書


「ウクライナ軍が軍事的に成功すればするほど、ロシア軍はより強い武器を用いることになり、戦闘はいっそう激化していきます。実際、その傾向がすでに見られます。」

 いまだ戦火のやまぬロシアのウクライナ侵攻に対して、仏の歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏は何を思うのか? トッド氏の新刊『第三次世界大戦はもう始まっている』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)


「戦争の責任はアメリカとNATOにある」

 今回の戦争に対する反応として、実はアメリカと西欧の間には大きな違いがあります。イギリス、フランス、ドイツなどの西欧諸国では、地政学的思考や戦略的思考がまったく姿を消してしまい、皆が感情に流されています。

 それに対して、アメリカでは議論が起きています。この戦争が、地政学的・戦略的視点からも論じられているのです。

 その代表格が、元米空軍軍人で、現在、シカゴ大学教授の国際政治学者ジョン・ミアシャイマーです。

 彼は、ハーバード大学教授の国際政治学者スティーヴン・ウォルトと『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』(講談社)という共著もある戦略的現実主義の論客で、今回の戦争に関して、「まずは感情に流されず、リアル・ポリティクスの観点から、戦争の原因を考えなければならない」と問題提起をしています。

 ミアシャイマーが出した最初の結論は、「いま起きている戦争の責任は、プーチンやロシアではなく、アメリカとNATOにある」ということです。

「ウクライナのNATO入りは絶対に許さない」とロシアは明確に警告を発してきたのにもかかわらず、アメリカとNATOがこれを無視したことが、今回の戦争の原因だとしているのです。


ウクライナはNATOの“事実上”の加盟国だった

 重要なのは、「この問題は、ウクライナが実際に加盟申請をしたかどうかという形式的な問題としては片付けられない」とミアシャイマーが指摘していることです。ロシアの攻撃が始まる以前から、「ウクライナはすでにNATOの“事実上”(de facto)の加盟国」だったと彼は述べています。

 もう一つミアシャイマーの指摘で重要なのは、「ウクライナのNATO加盟、つまりNATOがロシア国境まで拡大することは、ロシアにとっては、生存に関わる『死活問題』であり、そのことをロシアは我々に対して繰り返し強調してきた」ということです。

 非常に明快な指摘で、私も基本的に彼と同じ考えです。ヨーロッパを“戦場”にしたアメリカに怒りを覚えています。

 とはいえ、今の時点で、こう言い切るのは勇気のあることです。ただしアメリカには、彼の考えに賛同する人も数多くいるようです。というのも、ミアシャイマーがそう断言した20分ほどの動画は、アメリカを中心にわずか数日の間に1800万人もの人々が視聴した、と言われているからです。


ミュンヘン会談よりキューバ危機

「プーチンは、かつてのソ連やロシア帝国の復活を目論んでいて、東欧全体を支配しようとしている。ウクライナで終わりではない。その後は、ポーランドやバルト三国に侵攻する。ゆえにウクライナ問題でプーチンと交渉し、妥協することは、融和的態度で結局ヒトラーの暴走を許した1938年のミュンヘン会談の二の舞になる」──西側メディアでは、日々こう語られています。

 これに対してミアシャイマーは、この見方は間違っていると言っています。歴史のアナロジーで言えば、「ミュンヘン会談」よりも、ソ連がキューバという“アメリカの裏庭”に核ミサイルを設置しようとして、アメリカがこれを許さなかった1962年の「キューバ危機」になぞらえるべきだ、と。

 そして、この危機の起源と全体像をつかむには、冷戦終結後の歴史を振り返る必要がある、と説いています。


「NATOは東方に拡大しない」という約束

 冷戦後、NATOは東方に拡大しましたが、これには、2つの画期がありました。ポーランド、ハンガリー、チェコが加盟した1999年と、ルーマニア、ブルガリア、スロバキア、スロベニア、エストニア、ラトビア、リトアニアが加盟した2004年です。

 ドイツ統一が決まった1990年の時点で、「NATOは東方に拡大しない」といった“約束”がソ連に対してなされていましたが〔当時のソ連書記長ゴルバチョフに対し、1990年2月9日、アメリカのベーカー国務長官が「NATOを東方へは1インチたりとも拡大しないと保証する」と伝え、翌日にはコール西独首相が「NATOはその活動範囲を広げるべきでないと考える」と伝えている──編集部注〕、にもかかわらず、ロシアは、不快感を示しながら二度にわたるNATOの東方拡大を受け入れたのです。

 その上で、2008年4月のブカレストでのNATO首脳会議で、「ジョージアとウクライナを将来的にNATOに組み込む」ことが宣言されました。

 その直後、プーチンは、緊急記者会見を開き、「強力な国際機構が国境を接するということはわが国の安全保障への直接的な脅威とみなされる」と主張しました。

 つまり、この時点でロシアは、「ジョージアとウクライナのNATO入りは絶対に許さない」という警告を発し、「ロシアにとって越えてはならないレッドライン」を明確に示していたわけです。

 そして2014年2月22日、ウクライナで、「ユーロマイダン革命」と呼ばれる「クーデタ」──民主主義的手続きによらずに親EU派によってヤヌコビッチ政権が倒される──が発生しました。

 これを受けて、ロシアはクリミアを編入し、親露派が東部ドンバス地方を実効支配しましたが、それは住民の大部分が、この「クーデタ」を認めなかったからです。


ウクライナを「武装化」した米国と英国

 ウクライナは正式にはNATOに加盟していません。しかし、ロシアの侵攻が始まる前の段階で、ウクライナは「米英の衛星国」「NATOの“事実上”の加盟国」になっていた、とミアシャイマーは指摘しています。アメリカとイギリスが、高性能の兵器を大量に送り、軍事顧問団も派遣して、ウクライナを「武装化」していたからです。「ウクライナをすぐにNATOの一部にするとは誰も言っていない」というレトリックを用いながら、ウクライナを「武装化」し、“事実上”NATOに組み入れていたわけです。

 現在、ウクライナ軍がロシア軍の攻勢を止めるほどの力を見せているのは、ウクライナ人兵士の奮闘にもよりますが、何よりもアメリカとイギリスによって効果的に増強されていたからです。

「ウクライナ軍の予想を上回る抵抗」は、まさに「アメリカとイギリスによる軍事支援の成果」なのです。


「手遅れになる前にウクライナ軍を破壊する」が目的だった

 ロシアが看過できなかったのは、この「武装化」がクリミアとドンバス地方の奪還を目指すものだったからです。

 フランスの『ル・モンド』紙──読者層は“インテリ”で反ロシア的立場──には、「クリミアへの水道供給を遮断し、クリミアからロシア人を追い出すことが、ウクライナ側の目的だ」という記事が出ていました。

 要するに、2014年に“ロシアによって奪われた土地”を奪還することが、ウクライナの政治的、軍事的目標だったのです。

 こうしたウクライナの動きに対して、「我々はスターリンの誤りを繰り返してはいけない。手遅れになる前に行動しなければならない」とプーチンは注目すべき発言をしていました。つまり、軍事上、今回のロシアの侵攻の目的は、何よりも日増しに強くなるウクライナ軍を手遅れになる前に破壊することにあったわけです。


ウクライナ軍が抵抗するほど戦争は激化

 こうした状況で、ウクライナ側の軍事的抵抗を西側の人間は喜んではいられない、とミアシャイマーは指摘しています。ウクライナ軍が強く抵抗するほど、ロシア軍はより攻撃的になるだけだからです。ウクライナ軍が軍事的に成功すればするほど、ロシア軍はより強い武器を用いることになり、戦闘はいっそう激化していきます。実際、その傾向がすでに見られます。

 マリウポリの街が“見せしめ”のように攻撃されているのには理由があります。アゾフ海に面した戦略的要衝というだけでなく、ネオナチの極右勢力「アゾフ大隊」〔2014年に白人至上主義極右思想の外国人義勇兵も含めた民兵組織として発足。現在はウクライナ内務省傘下にあるが、ナチスを彷彿とさせるエンブレム「ヴォルフスアンゲル」を部隊章として用いている。日本の公安調査庁も「ネオナチ組織がアゾフ大隊を結成した」としていたが、現在、この記事はHPから削除されている──編集部注〕の発祥地だからです。

 ロシアが言っていることに我々は耳を傾けなければなりません。「非ナチ化」とは、このアゾフ大隊を叩き潰すという意味です。

 ウクライナ軍の成功の一つ一つが、この戦争をより暴力的な方向へと向かわせていきます。ロシアにとって「死活問題」、つまり「生存をかけた問題」だからです。ミアシャイマーはこのように述べていて、私もその通りだと思います。


米国にとっても「死活問題」に

 ここからミアシャイマーは、「ロシアはアメリカやNATOよりも決然たる態度でこの戦争に臨むので、いかなる犠牲を払ってでもロシアが勝利するだろう」と結論するのですが、この点は間違っているのではないでしょうか。ここに、「戦略的現実主義」と呼ばれるアメリカの地政学的思考の限界や欠点が露わになっているように思うのです。

 要するに、ウクライナ問題は、ロシアにとっては「死活問題」であっても、アメリカにとっては「遠い問題」「優先度の低い問題」であるとミアシャイマーは言っているのですが、この問題は、実はアメリカにとっても、「死活問題」になりつつあるのです。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、アメリカ主導の国際秩序に直接挑みかかるもので、この点にアメリカは衝撃を受けました。

 そしてアメリカを始めとする西側諸国は、ロシアに対する経済制裁やウクライナに対する軍事的、財政的支援など、直接的な軍事介入以外のあらゆる手段を用いて、ロシアの侵攻を食い止め、ロシアを敗北させようとしています。

 これでもし、ロシアの勝利を阻止できなかったとしたら、どうなるのか。アメリカの威信が傷つき、アメリカ主導の国際秩序自体が揺るがされることになるでしょう。

 アメリカは、軍事と金融の面で世界的な覇権を握るなかで、実物経済の面では、世界各地からの供給に全面的に依存していますが、このシステム全体が崩壊する恐れが出てくるのです。ウクライナ問題は、アメリカにとっても、それほどの「死活問題」になっています。ここがミアシャイマーの見誤った点で、アメリカはこの戦争に、彼が想像する以上に深くのめり込む可能性があるのです。

 この意味で、ウクライナ問題は、すでに「グローバル化」しています。



https://bunshun.jp/articles/-/55108

「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」エマニュエル・トッドが指摘した世界戦争を激化させる“アメリカの無責任”
『第三次世界大戦はもう始まっている』 #2


 当初は、ローカルな問題に留まるはずだったウクライナ問題はなぜ国際秩序に大混乱を招くグローバルな問題に発展したのか?

 ウクライナ問題に関わる大国たちの思惑を、仏の歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏の新刊『第三次世界大戦はもう始まっている』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)


ウクライナは「NATOの“事実上”の加盟国」

 ウクライナ問題は、元来は、ソ連崩壊後の国境の修正という「ローカルな問題」でした。1991年当時、ロシアがソ連解体を平和裏に受け入れたことに世界は驚いたわけですが、ロシアからすれば、1990年代前半に行なうべきだった国境の修正をいま試みている、とも言えるでしょう。

 しかしこの問題は、初めから「グローバルな問題」としてもありました。

 アメリカの地政学的思考を代表するポーランド出身のズビグネフ・ブレジンスキーは、「ウクライナなしではロシアは帝国にはなれない」と述べています(The Grand Chessboard、邦訳『地政学で世界を読む──21世紀のユーラシア覇権ゲーム』日経ビジネス人文庫)。アメリカに対抗しうる帝国となるのを防ぐには、ウクライナをロシアから引き離せばよい、と。

 そして実際、アメリカは、こうした戦略に基づいて、ウクライナを「武装化」して「NATOの“事実上”の加盟国」としたわけです。つまり、こうしたアメリカの政策こそが、本来、「ローカルな問題」に留まるはずだったウクライナ問題を「グローバル化=世界戦争化」してしまったのです。

 いま人々は「世界は第三次世界大戦に向かっている」と話していますが、「我々はすでに第三次世界大戦に突入した」と私は見ています。

 ウクライナ軍は、アメリカとイギリスの指導と訓練によって再組織化され、歩兵に加えて、対戦車砲や対空砲も備えています。とくにアメリカの軍事衛星による支援が、ウクライナ軍の抵抗に決定的に寄与しています。

 その意味で、ロシアとアメリカの間の軍事的衝突は、すでに始まっているのです。ただ、アメリカは、自国民の死者を出したくないだけです。


「20世紀最大の地政学的大惨事」

 ロシアは、ある意味でエレガントな形で、共産主義体制から抜け出しました。人類史上最も強固な全体主義体制をみずからの手で打倒したのです。これは、ゴルバチョフの偉大な功績です。

 そして東欧の衛星国の独立を受け入れ、さらにはソ連の解体さえも受け入れました。
 バルト諸国、カフカスならびに中央アジアの諸共和国が独立を果たすことを平和裏に受け入れたのです。

 それだけではありません。「広義のロシア」すなわち「スラヴ」の核心部は、ロシア(大ロシア)、ベラルーシ(白ロシア)、ウクライナ(小ロシア)からなりますが、ベラルーシとウクライナの分離独立、すなわち「広義のロシア」の核心部が分裂することまで受け入れたのです。

 ちなみにソ連邦が成立した1922年以前に、ウクライナも、ベラルーシも「国家」として存在したことは一度もありません。「ソ連崩壊」は、「共産主義体制の終焉」と「(ソ連という)国家の解体」という二重の意味をもっていましたが、ソ連崩壊直後の「無政府状態」によって、ソ連時代に人工的につくられた国境がそのまま尊重される結果となったのです。プーチンが、ソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的大惨事」と呼ぶのは、この意味に他なりません。

 ロシアによるクリミア編入も、ウクライナにおけるロシア系住民の自律性獲得のための支援(ドンバス地方における親露派の実効支配の支援)も、「人民自決権」という伝統的な考え方に照らせば、それなりの正当性をもっています。しかし西側諸国においては、「とんでもなく忌まわしいこと」とみなされているのです。


冷戦後の米露関係

 冷戦後のロシアは、「西側との共存」を目指しました。けれども、ロシア人はすぐに裏切られたのです。

 ソ連崩壊後、欧米はロシアに新自由主義者の助言者を送り込みました。1990年から1997年までの間、アメリカ人顧問の助けを借りて経済自由化の乱暴な企てが推進されましたが、ロシアの経済と国家を破綻させただけでした。彼らが間違った助言を行なったことで、ロシアがプーチン主導で経済的に立ち直るのに、多大な努力が必要となったのです。
 
 さらにアメリカは「NATOは東方に拡大しない」と言っていたのに、実際は、可能なかぎり戦略的な優位を保って、結局、ロシアを軍事的にも囲い込んでしまいました。誰もがロシアを責めますが、アメリカと同盟国の軍事基地のネットワークを見れば一目瞭然であるように、囲い込まれているのは西側ではなく、ロシアの方です。軍事的緊張を高めてきたのは、ロシアではなくNATOの方だったのです。


戦争前の各国の思惑

「今回の戦争がなぜ始まったか」を理解するには、まず戦争前の各国の思惑を理解する必要があります。

 アメリカの目的は、ウクライナをNATOの事実上の加盟国とし、ロシアをアメリカには対抗できない従属的な地位に追いやることでした。

 それに対してロシアの目的は、アメリカの目論見を阻止し、アメリカに対抗しうる大国としての地位を維持することでした。

 ロシアは、人口規模は日本と同程度ですが、アメリカに対抗しうる勢力であり続けようとしたわけです。だからこそ、アメリカによるウクライナの「武装化」がこれ以上進むことを恐れ、ロシアは侵攻を決断したのです。

 今の状況は、「強いロシアが弱いウクライナを攻撃している」と見ることができますが、地政学的により大きく捉えれば、「弱いロシアが強いアメリカを攻撃している」と見ることもできます。


超大国は1つだけより2つ以上ある方がいい

 ちなみに、1つの国家、1つの帝国が、誰もブレーキをかけられない状態で世界全体に絶対的な支配力を及ぼすのが、よいことであるはずはありません。超大国は、たった1つしかない状態よりも、2つ以上ある方が、世界の均衡はとれるのです。

 要するに、冷戦の勝利に酔うアメリカが「全世界の支配者」として君臨するのを阻止できる唯一の存在は、ロシアだったのです。2003年、イラクに対してアメリカが独善的に行動した時も、“西側の自由な空間の保全”に貢献したのはロシアでした。スノーデンをあえて迎え入れることで、結果的に“西洋の市民の自由の擁護”に貢献したのも、ロシアです。そのことに我々は感謝すべきなのです。

 そもそも第二次世界大戦時に、みずから多大な犠牲を払ってドイツ国防軍を打ち破り、アメリカ・イギリス・カナダの連合軍による「フランス解放」を可能にしてくれたのも、ソ連でした。ソ連は、2000万人以上の犠牲者を出しながら、ナチスドイツの悪夢からヨーロッパを解放するのに、ある意味でアメリカ以上に貢献したのです。ところが、冷戦後の西側は、その歴史をすっかり忘却してしまったかのような振る舞いをロシアに対してしてきました。

 それどころか、ロシアが回復に向かうにつれて、「ロシア嫌い(ロシア恐怖症)」の感情は、弱まるのではなく、いっそう強まりました。プーチン率いるロシアの権威的民主主義体制が、それ自体として憎しみの対象になってしまったのです。西側諸国における「歴史の忘却」や「地政学的な無思慮」以上に、唖然とせざるを得ないのは、この「ロシア嫌い」の高まりです。
http://www.asyura2.com/19/warb23/msg/841.html
[お知らせ・管理21] 2022年08月 困った時、意見、提案、相談などなんでも。管理人が24時間以内に必ず見るスレ 管理人さん
18. カノヨウニ[2] g0qDbYOIg0WDag 2022年8月15日 02:10:53 : UUStHiME3k : eEJ2R1IvU2RSbGM=[15]
板違い投稿したので投稿のせないよと言われた「カノヨウニ」です。

しかし、板違いとの警告なく投稿不許可とされるのはちょっときつ過ぎませんか。
今日消費税に関する投稿しようとしたら、駄目だとのテロップが流れてがっかり。

投稿不許可は警告に従わない場合として頂けないかと思います。

また、不許可は何時まで続くのでしょうか。
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/639.html#c18

[お知らせ・管理21] 2022年08月 困った時、意見、提案、相談などなんでも。管理人が24時間以内に必ず見るスレ 管理人さん
23. カノヨウニ[3] g0qDbYOIg0WDag 2022年8月16日 20:23:08 : UUStHiME3k : eEJ2R1IvU2RSbGM=[16]
>>21
警告頂いていたということ、教えていただいて初めて知りました。
この「管理板」というのも、今回の私のコメント投稿のような内容を管理人さんにお伝えする手段がないかとサイト内を探して初めて訪れましたので。

>>22
>以下の2つの投稿が、日本の政治板に適切だ、と思った理由を参考までに教えていただけますか?

とのお尋ねですが、そう思ったことはないので、理由もありません。
と言いますのも、腑に落ちないテレビ報道を見て、おかしいのではないかと久しぶりに阿修羅を訪れて、「日本の政治板」にウクライナだとかプーチンだとかの文字が並んでいたので、ウクライナ問題はここで議論されているのだと思って投稿したからです。「適切か否か」などと考えることは全くありませんでした。

>管理人は明らかな投稿規定違反を意図的に繰り返したと解釈しているのですが。

強者を相手にされている管理人さんがそう解釈されるもの分からなくないですが、私のような愚か者が紛れ込むこともありますのでお手柔らかにお願い致します。


http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/639.html#c23

[戦争b24] ロシアより先に戦争を始めたのは米国とウクライナの可能性 (JPpress)
ロシアより先に戦争を始めたのは米国とウクライナの可能性
「ロシアの正義」を全否定せず、日本は停戦協議の場を用意せよ
2022.11.23(水) 大崎 巌
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72795

 一歩間違えれば、ロシアと西側の核戦争が勃発し、人類は滅亡するかもしれない。

 ウクライナ危機は地球の存続を左右する大惨事であるにもかかわらず、日本を含む西側諸国は停戦の努力を放棄し、戦争の一方の当事者であるウクライナを絶対正義とみなして全面支援し、徹底的にロシアを敗北させようとしている。
 この戦争は、ロシア・ベラルーシ対ウクライナ・NATO(北大西洋条約機構)の軍事紛争であり、ロシア対西側連合の経済・イデオロギー戦争だ。

 岸田文雄政権はウクライナに攻撃兵器となるドローンを供与し、ヒステリックな対ロ制裁を実施し、ロシアの世界観を全否定している。
 米国の正義を狂信するジョー・バイデン政権が極東でも事態をエスカレートさせれば、既に戦争の当事国となった日本は第3次世界大戦の戦場となる可能性がある。

 一刻も早く停戦を実現させるために私たちができることは何か。
 市民一人ひとりがロシア側の主張についても冷静かつ客観的に議論を深め、無責任な日本政府に戦争当事者であることをやめさせ、中立国として停戦協議の場を提供させることだ。

 私は一人の人間として、あらゆる戦争に反対だ。ロシアでは部分動員が完了し、極東連邦大学(ウラジオストク)の教え子や元同僚が前線に派遣される可能性が高まっている。
「祖国を守るため」と戦う者もいれば、反戦の意志を貫く者もいるだろう。立場がどうであれ、彼らには何があっても生き残ってほしい。これ以上、ウクライナ人、ロシア人、外国人義勇兵の尊い命が奪われないよう、祈るしかない。

 ただ、一政治学者として、中立・客観的な立場から、この戦争の本質を冷徹に分析する義務がある。
 この間、日米欧の政治家・メディア・専門家の多くが「西側のリベラルな理想」と「国際社会の現実」を混同して議論していることに強い危機感を覚える。
 彼らは集団催眠状態に陥ったかのように、「ウラジーミル・プーチン大統領は領土拡大のために一方的な侵略戦争を始め、無実のウクライナ人は祖国を守るために戦っているだけだ」というマントラを唱え続けている。

 だが、これは「プーチンの戦争」ではない。
 ロシア国民の大多数は「祖国防衛とロシア人解放のための軍事作戦」だと考えている。なぜか?
 日本では「ウクライナと西側の正義」は語り尽くされてきたので、「ロシアの正義」についても真剣に議論する必要があるだろう。

<戦争の根源とミンスク合意>

 誰がどうやってこの戦争を始めたのかを正確に理解することは重要だ。
 なぜなら、西側の主要メディアの多くは、「2・24に大義もなく突然ウクライナを侵攻したロシアは処罰すべき悪い国だ」という確信に基づいて戦争報道を続けており、その大前提が崩れた時、彼らの報道の客観性が大いに疑われることになるからだ。
 実は、ロシアが「特別軍事作戦」を開始する前から戦争は既に始まっていたという議論がある。
 例えば、国連平和維持活動の政策責任者を務め、NATOではウクライナ支援プログラムにも参加したジャック・ボー(Jacques Baud)氏は、今年2月16日にウクライナが戦争を始めたと主張している。
 以下、ボー氏がフランス情報研究センター(Centre Français de Recherche sur le Renseignement)『文献速報』第27号に寄稿した論文「ウクライナの軍事情勢:https://cf2r.org/documentation/la-situation-militaire-en-ukraine/」の内容を整理した上で、「2・16開戦説」について検証したい。

 ボー氏はまず、ミンスク合意に至る過程について次のように指摘している。
・この紛争の根源は、2014年2月にヤヌコヴィッチ政権を転覆させた直後、新政府がロシア語を公用語から外し、ウクライナ東・南部のロシア語話者地域に対して激しい弾圧を実行し、オデッサやマリウポリなど各地で虐殺事件が発生したことにある。

・2014年5月に東部のドンバス地域で自称ドネツク・ルガンスク両共和国が行った住民投票は、プーチン大統領の助言に反して行われた。
「親露派」という言い方はロシアが紛争の当事者だったことを示唆するが、それは事実ではなく、「ロシア語話者」と言った方が適切だろう。

・2014年、NATOで小型武器の拡散との戦いを担当していた時、ロシアから反政府勢力に兵器や軍装備品が渡されたことはなかった。
 ロシア語を話すウクライナ軍部隊が味方につき、反政府勢力の武装化が進んだ。ドンバスに対する大規模な反テロ作戦を開始したウクライナ政府がデバルツェボで完敗を喫し、2015年2月に「ミンスク2」協定が結ばれた。

・東部紛争をめぐる停戦協定である「ミンスク合意」は、ドネツク・ルガンスク両共和国の分離や独立ではなく、ウクライナ国内での自治を規定していた。
 両共和国の地位は政府と両共和国の代表との間で交渉されると書かれており、ウクライナの国内問題なので、2014年以降、ロシアは交渉の当事者になることを拒否し、合意の履行を求め続けていた。
 2022年2月23〜24日より前にOSCE(欧州安全保障協力機構)の監視員がドンバスで活動するロシア軍部隊の痕跡を観測したことは一度もなかった。

<極右民兵の創設と2・16以降の集中砲撃>

 ボー氏は、ウクライナ政府が弱体化した軍の兵力不足を補うために準軍事組織の民兵に頼り、基本的に外国人傭兵から成る民兵の多くは極右過激派だと指摘する。
(ウクライナの軍事力をまとめたロイター通信によると、2020年、全兵力31万1000人の内、民兵は10万2000人)。
 彼はウクライナの民兵の特徴について、次の点を明らかにしている。

・19カ国から集まった民兵は、米英仏・カナダによって武装化され、資金提供を受け、訓練された。西側は、2014年から民間人に対するレイプ・拷問・虐殺などの数多くの犯罪を犯してきた彼らに武器を与え続けた。

・西側諸国によって支えられた極右民兵は、2014年からドンバスで活動し続けた。彼らは暴力的で吐き気を催させるイデオロギーを伝え、猛烈な反ユダヤ主義者だ。
 アゾフ連隊などの狂信的で残忍な過激派民兵は、ユーロマイダン革命を活気づけた極右集団から創設された。ロシアだけでなく、ユダヤ人団体、西側メディア、米陸軍士官学校の反テロセンターなどもウクライナの民兵を「ナチ」や「ネオナチ」と特徴付けている。
 その上で、今年2月24日にロシアが軍事介入するまでのドンバスの状況について、次のように分析している。

・2021年3月24日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はクリミア奪還命令を出し、南部に軍を配備し始めた。
 同時に黒海とバルト海の間でNATOの軍事演習が何度か行われ、ロシア国境沿いの偵察飛行が大幅に増加した。
 その後、ロシアは軍事演習を実施した。同年10月、ウクライナはミンスク合意に違反し、ドンバスでドローン攻撃を行った。

・2022年2月11日、独仏露ウの補佐官級会合は具体的な成果が出ずに終わり、明らかに米国からの圧力の下で、ウクライナはミンスク合意の適用を拒否した。
 プーチン大統領は、西側は空約束をするだけで合意を遵守させるつもりはないと言及した。ドンバスの両軍接触地帯での政府側の軍事的準備が進み、15日、ロシア議会は両共和国の独立を承認するようプーチン氏に求めたが、彼は承認を拒絶した。

・2月16日以降、OSCE監視団の日報が示す通り、ドンバスの住民に対する砲撃が激増した。当然のことながら、西側のメディアと政府、EU、NATOは何も反応せず、介入しなかった。
 EUや一部の国々は、ドンバス住民の虐殺がロシアの介入を引き起こすことを知りながら、虐殺について故意に沈黙を保ったようだ。

・早ければ2月16日にバイデン大統領は、ウクライナ軍がドンバスの民間人を砲撃し始めたことを知っていた。
 プーチン大統領は、ドンバスを軍事的に助けて国際問題を引き起こすか、ロシア語話者の住民が粉砕されるのを傍観するか、難しい選択を迫られた。

・プーチン氏は、介入すれば、「保護する責任」(R2P)の国際義務を呼び起こせること、介入の性質や規模にかかわらず制裁の嵐を引き起こすことを知っていた。
 ロシアの介入がドンバスに限定されようが、ウクライナの地位について西側に圧力をかけるためにさらに突き進もうが、支払う代償は同じだろう。
 2月21日、彼は演説でこのことを説明し、下院の要請に応じて2共和国の独立を承認し、彼らとの友好・援助条約に署名した。

・ドンバスの住民に対するウクライナ軍の砲撃は続き、2月23日、両共和国はロシアに軍事援助を求めた。24日、プーチン氏は、防衛同盟の枠組みの中での相互軍事援助を規定する国連憲章第51条を発動した。

・国民の目から見てロシアの介入を完全に違法なものとするために、西側諸国は戦争が実際には2月16日に始まったという事実を意図的に隠した。
 一部のロシアと欧州の情報機関が十分認識していたように、ウクライナ軍は早ければ21年にドンバスを攻撃する準備をしていた。

<「2・16開戦説」を検証>

 米英の情報機関で訓練を受け、スイス戦略情報局員だったジャック・ボー氏は、主に西側の公開情報や国連・OSCE(欧州安全保障協力機構)の客観的なデータを提示しながらこの戦争を緻密に分析している。
 ロシアの介入が始まる前の軍事情勢も踏まえつつ、中立機関のデータなどを基に2・16開戦説を検証してみよう。

「今年2月16日からウクライナ軍がドンバスの住民を集中砲撃し始めた」とボー氏が主張する根拠となっているのは、OSCEが作成した「ウクライナ特別監視団の日報・現地報告(Daily and spot reports from the Special Monitoring Mission to Ukraine):https://www.osce.org/ukraine-smm/reports/」だ。
 日報では、ドネツク・ルガンスク地域における停戦違反と砲撃の回数・場所が報告されている。

 実際にデータを確認してみたが、1日平均の停戦違反・砲撃数は、昨年は257回・約70発、今年は2月14日までは200回余り・約50発だった。
 2月15日は153回・76発だったが、16日になると591回・316発と急増している。
 その後は17日に870回・654発、18日に1566回・1413発、19〜20日は3231回・2026発だった。プーチン大統領がドンバスの2共和国の独立を承認した21日には1927回・1481発、22日は1710回・1420発だった。
 また、日報の停戦違反・砲撃地が示された地図を見ると、16日からドネツク・ルガンスクにおける政府管理地域と両人民共和国の境界線上で激しい戦闘が始まったことが分かる。

 17日以降の地図からは、ロシアが介入するまで、ウクライナ軍が日を追うごとに両共和国内に攻め込んで激しく砲撃している状況が読み取れる。
 1日の砲撃数が300発を超えた16日からドンバスでは戦争状態になったというボー氏の主張には説得力がある。
 だが、OSCEの日報だけでは、戦争を始めたのがウクライナ軍だったのか共和国側だったのかは分からない。
 米国・NATOの動き、ドンバスの軍事情勢、民間人死傷者に関するデータなどから、どのようにこの戦争が始まったのか分析を試みる。

 ウクライナが独仏露ウ会合でミンスク合意の適用を拒否した2月11日、バイデン大統領はNATO・EUの指導者に「プーチン氏がウクライナの侵攻を決定し、16日にも攻撃する」と伝えた。
 13日、OSCEウクライナ特別監視団が「最近、特定の参加国が、自国の監視員は数日以内にウクライナから退去すべきだという決定を下した」というプレス声明を出す。
 同日、ロシア外務省のザハロワ報道官は「この決定には深刻な懸念を抱かざるを得ない。監視団は米国によって故意に軍事的ヒステリー状態に引きずり込まれ、今後起こりうる挑発の道具として利用されている」と反応した。

 13日にはルガンスク人民共和国の幹部も「米英・EUの監視員の撤退はウクライナと西側が大規模な挑発を始めることを意味する」と発言し、ドネツク人民共和国の幹部は「米英・デンマークの監視員が共和国を去った」と話していた。

 17日、米英などに拠点がある「戦争・平和報道研究所(IWPR)」も、「情報筋によると、2月16日時点で米英・カナダ・デンマーク・アルバニアがウクライナから監視員を撤退させ、オランダは政府管理地域へ団員を移動させた」と報じている。
 実際に集中砲撃が始まる16日の前に米国と一部のNATO加盟国は自国監視員をウクライナあるいは共和国側から退去させ、バイデン氏の「予言」は西側メディアでも機能し続けていた。

 一方、ロシアは監視活動の継続を訴え、国連安保理でもウクライナを侵攻する計画はなく、軍事的緊張を高めているのは米国率いる西側だと非難し続けていた。

 このような状況下、まだ多くのOSCE監視員がミンスク合意の遵守を監視する中、まさに予言された日から共和国側が政府管理地域との境界線上で全面戦争を始めたとは考えにくい。

 2月16日にはロシアのペスコフ大統領報道官が「全世界は既にウクライナ政府がドンバスで軍事作戦を始めたことを目撃した」と発言している。

 また、昨年12月1日にロイター通信は、紛争地のドンバスに12万5000人の部隊を配備したウクライナをロシアが非難したと報じていた。

 今年2月21日には国連安保理でロシアのネベンジャ国連大使が、ウクライナがドンバスの境界線に12万の部隊を配備していたと指摘した。

 2・24前に西側メディアの多くは、10〜15万のロシア軍がウクライナとの国境周辺にいると報道し続けたが、2・16から約12万のウクライナ軍と4万〜4.5万と言われる2共和国の武装勢力が激しい戦闘状態に入ったという構図は伝えなかった。

 プーチン氏が両共和国の独立を承認するか不明だった16日の段階で、共和国側が米国などの最新兵器を有するウクライナ軍12万に対して全面戦争を始めるだろうか?

 ロシアが軍事介入した24日時点でも、総兵力31万以上のNATO化されたウクライナ軍と計約20万のロシア軍・共和国武装勢力が戦うという軍事情勢だったとも言える。

 さらに、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が今年1月27日に公表した「ウクライナにおける紛争関連の民間人死傷者(Conflict-related civilian casualties in Ukraine)」によると、2018年から21年までのドンバスでの激しい戦闘による民間人死傷者の81.4%は両共和国の管理地域内で発生しており、ウクライナ軍の攻撃の結果だと分かる(政府管理地域の民間人死傷者は、16.3%)。
 少なくとも2018年から、事実上のNATO軍になりつつあったウクライナ軍がロシア語話者の民間人も激しく攻撃し続けていたと言える。

 以上の状況から、断言はできないが、米国・NATOと一体化し、軍事力で反政府勢力を圧倒していたウクライナ政府が2月16日に戦争を始めた可能性が高いと言えるだろう。

<なぜプーチン大統領は全面介入したのか>

 2・24にロシアがウクライナに軍事介入した理由は、ゼレンスキー政権がロシア語話者の住民を猛烈に砲撃し続けるのを傍観できなかったからだと思われる。

 1日の砲撃数が1481発まで激増した2月21日にプーチン大統領は2共和国の独立を承認したが、ウクライナ政府はロシアが集団的自衛権を行使することを知りながら、22日もロシア語話者の住民を集中砲撃し、米国・西側諸国はそれを黙認していた。

 プーチン氏が全面的な介入を選択した理由としては、以下の点が挙げられよう。

・マイダン革命後の8年間、米国・NATOに支えられたポロシェンコ・ゼレンスキー両政権は、ロシア系ウクライナ人のロシア語を使用する権利を奪い続け、自治の拡大と生存権を求めて闘っていたロシア語話者の自国民をテロリストと呼んで弾圧・攻撃・虐殺し続けた。

・2008年以降、米国はウクライナのNATO加盟だけは絶対に許容できないと訴えてきたロシアを無視し、14年からNATOと共に毎年約1万人のウクライナ兵を訓練し、2・24前までにウクライナ軍は最新兵器を備えた事実上のNATO軍になっていた。

・ネオナチとされる極右民兵などはロシア系ウクライナ人に対する拷問・虐殺などの犯罪を犯し続けたが、政府と裁判所だけでなくウクライナ社会全体に「ドンバスにいるロシア語話者のテロリストたち」に対する暴力を黙認するような「文化」が出現していた。

・ゼレンスキー大統領はミンスク合意で交渉当事者として認められた共和国側の代表との交渉を拒否し、両共和国の存在そのものを否定し、ロシアからクリミアを奪還すると公言し続けてきた。
 西側メディアは「2014年にロシアはクリミアを一方的に併合した」と報道してきたが、18世紀から1991年までロシア・ソ連領であり続けたクリミアでは91年と94年にも住民投票が実施され、クリミアの住民の多くは一貫してウクライナから分離してロシアへ編入されることを望んでいた。
 プーチン大統領は、NATOと一体化して年々強大化するウクライナ軍がドンバスのロシア語話者を全面攻撃し、ロシアにとって死活的に重要なクリミアにもいつ攻め込んでくるか分からない状況を「国家存続を脅かす事態」とみなし、「特別軍事作戦」を開始したと思われる。

 そもそも、ウクライナ語話者とロシア語話者が共存する多民族国家ウクライナに米国が介入しなければ、この戦争は起こらなかった。
 ロシアとも欧州とも協力し合わなければ、ウクライナが発展する道はなかった。にもかかわらず、2014年に米国は、ロシアを弱体化させて自らの絶対正義を世界に拡散させるために親欧米派を支援し、暴力的な政権転覆を成功させた。

 また、「革命」後に新政府がロシア語話者を弾圧・虐殺し続けなければ、クリミア編入もドンバス紛争もロシアの軍事介入もなかっただろう。

 2・24後に西側でロシアに対するヒステリー状態が生まれたのはなぜか。
 西側の指導者とメディアの多くが、客観的な情報やデータを無視し、別の世界観を持つロシアに対して恐怖感を抱き、「侵略国家ロシア」という思い込みから抜け出せないからではないか。

 ジャック・ボー氏や私の分析が絶対に正しいと主張するつもりはない。
 ただ、日本を戦争当事国から停戦の仲介国に変えるためには、中立機関の客観的データなどを基に冷静に議論を深めることが重要ではないだろうか。
 これからも一研究者として、常識や事実と宣伝される仮説について、一つひとつ丁寧に検証していきたい。
http://www.asyura2.com/22/warb24/msg/248.html
[戦争b24] ウクライナ軍はまもなく大敗北喫し戦争終結、これだけの証拠(JBpress)
ウクライナ軍はまもなく大敗北喫し戦争終結、これだけの証拠(JBpress)
紛争の東アジア飛び火に備えて日本がすべきこと
2023.3.1(水) 矢野 義昭
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74137


 開戦から1年を超えたウクライナ戦争に終末が近づいている兆候がみられる。ウクライナが敗北する可能性が高まっている。
 その背景を探ると共に今後の推移と影響を分析する。


陥落寸前のバフムート

 かつては人口7万人の都市で東部ドンバスの交通網の中枢でもあったバフムートは、2014年以降、NATO(北大西洋条約機構)の支援も受けながら全都市の要塞化を進めてきた。
 市内にはコンクリートの堅固な要塞陣地が築かれ、大量の武器・弾薬が備蓄され、要所には戦車、各種の対戦車・対空ミサイルが掩体内に配備され、陣地帯の周囲には何重もの地雷原や対戦車障害などが設けられていた。

 ロシア軍(以下、露軍)は開戦3カ月後の2022年5月から攻撃を開始し、以来約9カ月に及ぶ攻防戦がバフムートでは続いてきた。
 露軍は、ウクライナ軍(以下、宇軍)の対空・対戦車ミサイル、ロケット砲などの射程外から、長射程のスタンドオフミサイルやロケット砲・火砲などにより、徹底的にまず宇軍の陣地を破壊し、必要とあれば地域を犠牲にし占領地域を縮小してでも、宇軍の兵員と装備を損耗させるという「消耗戦略」を採用している。

 消耗戦略を支えたのは、無人機、衛星画像、レーダ評定、戦場の偵察兵の報告などの多様な情報・警戒監視・偵察(ISR)システムによるリアルタイムの目標情報と、それにリンクした司令部の指揮統制・情報処理・意思決定システムによる攻撃兵器への目標配分・攻撃命令、それを受けた陸海空各軍種と新領域を横断する、統合レベルの総合火力システムによる、目標への射撃という、一連のサイクルである。
 このようなISR・指揮統制機能・領域横断的な火力からなるサイクルは、濃密な対空ミサイル網、航空優勢により掩護され、その掩護下から各種の精度の高い長射程火力の集中射撃が宇軍の目標に対してなされた。

 ダグラス・マグレガー米陸軍退役大佐(ドナルド・トランプ政権当時の米国防省顧問)は、このような陸海空の発射母体から発射される対地ミサイル、地上配備のロケット砲・火砲よる損害は、兵員損耗の約75%にも上ったと見積もっている。

 堅固な塹壕陣地に対し大量集中火力が浴びせられ、大量の損耗が生じた、第1次大戦中の「肉引き機」と呼ばれたベルダンの戦いに類似した、それ以上の熾烈な消耗戦が、バフムートの戦場で繰り広げられてきた。

 今そのバフムートで露軍は完全包囲まであと2.8キロに迫っている(February 25, 2023 as of February 25, 2023)。
 バフムートの宇軍は包囲を避けるため離脱中だが、まだ一部の宇軍は市街地に立てこもり抵抗を続けている。
 宇軍の残存部隊等に対し露軍は、各種のミサイルや火砲、装甲戦闘車搭載砲などにより集中射撃を行い、宇軍陣地の建物群などを制圧している。
 露軍の戦車等は、前進経路上の敵目標を制圧しながらさらに前進を続けている(Hindustan Times, February 13 & February 22, 2023 as of February 26, 2023)。
 露軍は宇軍の抵抗が弱まったことから、機動戦に力点を移しているとみられ、進撃速度は1日に1〜2キロに上がり、離脱した宇軍を追撃し前進を続けている。

 被包囲下の宇軍兵士は、補給も途絶え組織的戦闘が困難になっていると訴えている。
 宇軍はバフムート南北の現陣地帯とスラビャンシク〜カラマトルシクの陣地帯の間の河川の線で防御立て直しを図っているが、配備兵力が不足し、露軍の阻止は困難とみられている(HistoryLegends、2023年2月11日 as of February 27, 2023)。


長期消耗戦の勝敗決する兵站能力

 戦いが長期化するに伴い、戦勢を左右する決定的要因となったのが、双方の兵站支援とりわけ各種のミサイル・砲弾など弾薬類の補給能力である。この点では、終始露軍が圧倒してきた。
 元米海兵隊のスコット・リッターは、露軍は各種ミサイル、砲弾を1日当たり6万発発射できる兵站支援能力を維持しているが、宇軍は1日6000発を維持するのもやっとの状態である。
 NATOはロシアとの戦いに勝てないと指摘している(Scott Ritter- NATO: A Broken Alliance, February 13, 2013 as of February 27, 2013)。

 マグレガー退役大佐も、NATOの弾薬生産能力は、米軍すら1日2200発程度であり、他のNATO諸国は併せても米国1国に及ばない。
 NATO全体でも所要数6000〜7000発の半数程度しか生産できず、NATOも米軍も露軍と戦うことはできない。戦闘が長期化するに伴い、NATOの弾薬の在庫は枯渇していくとみている。

 緊急増産態勢を強化するには、生産ラインと施設の増設、技術者の養成確保などに、数カ月以上かかり、当面の戦闘には間に合わない。装備品についても同様であり、HIMARSのような高度な装備の増産には数年を要する。
 装備面でも、露軍のミサイル・火砲や戦車、戦闘車両、航空戦力にはまだ余力がある。他方の宇軍は装備品の多くを9月以降の攻勢で破壊された(Listen to all Straight Calls with Douglas Macgregor, Recorded January 19, 2023)。

 2023年2月23日にはNHKが、露軍のイラン製無人機が底を尽きたとの英国防省の発表を報じている。

 イランはウクライナ戦争で使用されているのはイラン製ではないと主張しており、撃墜された無人機からは米国以下西側の部品が多数使用されていることが確認されている(NHK NEWSWEB、2023年2月23日)。

 西側部品がロシアで入手できなくなり、同型の無人機の生産が止まっている可能性はある。
 しかし2019年3月、当時のゲラシモフ参謀総長は演説で、以下の2つの戦略の発展方向を指摘している。このことは、ロシア側が周到な戦争準備を行っていたことを示している。
 一つは、現代的な情報通信技術を基礎とする、部隊、偵察手段、攻撃手段、部隊と武器の統制手段を統合した統一システムの構築と発展である。
 そのために、リアルタイムに近い状態で、観測し目標指示を行い、戦略および作戦戦術レベルの非核兵器を用いて枢要な目標に選別的な打撃を行うことが求められており、軍事科学は複合的な攻撃システムを基礎づけなければならないとされている。
 もう一つの方向性は、ロボット複合体の大規模な使用に関するものであり、広範な任務を遂行するための無人航空機に関連するもの及び無人航空機や精密誘導兵器に対抗する兵器システムの構築である。
 対抗システムの構築では、目標の種類、その構成、時間的な緊要性に基づいて選択的に影響を及ぼす電子戦部隊およびその手段が決定的な役割を果たすとされている。
 この分野での軍事科学の課題は、ロシア連邦軍の無人兵器の対抗システムに関する戦略策定問題を検討し、将来型戦略電子戦システムの基礎を築くとともに、これを統一システムに統合することであるとされている。
(細部は矢野義昭「ウクライナ軍壊滅の日は近い? ロシアから見える現在の戦況」『JBpress』2022年8月8日参照)。

 このような中長期的な戦略方針のもと、露軍は軍需産業界、科学技術者たちと緊密に連携し、ウクライナ戦争を予期した新型兵器の開発、配備、ミサイル・弾薬の備蓄と緊急増産体制の強化、軍事ドクトリンの開発、編制・装備の改革、訓練などを重ねてきたとみられる。その成果は、ウクライナ戦争でも表れている。

 NATOの見積りの2倍の備蓄量と3倍以上の緊急生産能力をロシア側は保持しているとみられている。
 弱点とみられていた半導体についても、十分な事前備蓄を行い、第三国を経由し迂回輸入をしているとみられ、半導体不足で兵器生産が低下しているという有力な兆候はみられない(WION, February 20, 2023)。
 その意味では西側の経済制裁は、予期したような経済効果をロシアに与えているとは言えないであろう。

 開戦から1年を迎える直前の2023年2月、ジョー・バイデン米大統領はキーウ(キエフ)を電撃訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に戦車700両、戦闘車両数千両など、「揺るぎない支援」を約束した。
 しかし、米国はじめNATO諸国の在庫は底を尽きており、米独の戦車がウクライナに到着し戦力化されるのは、2023年8月頃になるとみられている。
 現在の戦況から見れば、8月までに、露軍が宇軍を撃滅しウクライナが敗北してしまう可能性が高い。
 たとえ一部が届いたとしても訓練時間が不足し、戦車を駆使できる兵員も不足している。また、様々の国の多種類の戦車があり兵站系統が複雑で、整備できる兵員も部品も足りない。
 そのために、今から送る予定のNATOの戦車などは、露軍の攻勢阻止には間に合わないとみられている(Listen to all Straight Calls with Douglas Macgregor, Recorded January 19, 2023)。


膨大な戦死傷者でも余力ある露軍

 宇軍は人的損耗も甚大になり、既に崩壊状態に等しいとみられている。
 開戦当時宇軍は正規軍が約15万人、予備役が約90万人いた。戦時の損耗については、米軍等の見積りによれば、2022年8月頃までは、平均1日千人程度の死傷者と行方不明者が発生したとみられている。
 しかし、9月以降南部やヘルソン州で攻勢を繰り返し死傷者が続出した。
 2023年1月初めの時点で宇軍は、12.2万人が戦死し3.5万人が行方不明となり、その他に最大40万人が負傷したとみられる。
 行方不明者の大半は死亡したとみられ、総計約55.7万人が死傷したと見積もられる。
 露軍1人の戦死者に対し宇軍は8人の戦死者を出しており、宇軍では45歳以上の後備役の老兵や徴兵年齢に満たない15・6歳の少年兵まで前線に投入している模様である(Listen to all Straight Calls with Douglas Macgregor, Recorded January 19, 2023)。

 このような、総兵力の約6割に達する損耗が出ている宇軍の壊滅的な窮状を支援するために、NATO諸国はポーランド軍約4万人、ルーマニア軍約3万人を始めとし、米英仏、東欧諸国、さらに韓国などの国々が総計9万人から10万人の軍人を、個人契約、義勇兵などとしてウクライナ軍の軍服を着せて、第一線部隊に参加させ、平均4%程度の損耗を出しているとみられている(HistoryLegends、2022年12月15日)。

 NATO供与の高度なHIMARS、戦車、対空ミサイルなどの兵器は、宇軍にはなじみがなく、訓練時間もないため、主にNATO諸国からの将校や下士官が現場で指揮・指導しながら戦闘を行っていることが、帰還兵の証言などから明らかになっている。
 米軍出身の要員は、HIMARS、ジャベリンなどの高度の米国製兵器システムの操作や現場指揮も担当しており、約1割の損耗率に達しているとの見方もある。

 他方の露軍の損害については、2022年10月に、ロシアの独立系メディア「バージニエ・イストーリー」は同月12日、戦死傷者と行方不明者で計9万人以上に上っているとみられると伝えた。
 ロシア連邦保安局(FSB)など情報機関の現役将校とOBの話としている。欧米当局はおおむね同等の推計を示していたが、ロシアの内部情報が明るみに出るのは極めて異例と報じられている(『時事エクイティ』2022年10月13日)。
 2022年10月、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は同月9日、ロシア軍はウクライナでの戦争の結果、10万人以上の死傷者を出したと述べている(CNN.co.jp, October 11, 2022 as of February 27, 2023)。

 2023年2月英国防省は、ロシア軍の1日当たりの戦死者数は、最も多かった2022年2月のウクライナ侵攻開始時の規模に近づいていると発表している。
 損害がさらに増えて兵員確保に苦慮すれば、プーチン政権が否定している予備役の動員「第2弾」が現実味を帯びるかもしれない(『時事通信』2023年2月15日)。

 開戦から約1カ月経過した時点での宇軍の損耗は約2万人、露軍の損耗は約1万人との米軍の見積りが報じられたことがある。

 また宇軍の損耗は2022年8月の攻勢開始前は、平均1日1000人程度とみられていた。この見積を前提とすれば、露軍の2022日2月頃の損耗は最大でも1日500人程度とみられる。
 露軍の冬季攻勢は2023年1月中旬頃から路面の凍結を待って開始されており、約50日が経過している。
 1日500人の損耗とすれば累積では2.5万人となる。昨年12月までの露軍の損耗か約10万人とすれば、現在約十数万人の損耗が出ていると見積もられる。

 英国防省は2月17日、ウクライナに侵略しているロシア軍と露民間軍事会社「ワグネル」戦闘員の死傷者数は「17万5000人から20万人」に上り、戦死者数は「4万人から6万人」とする推計を明らかにした(『読売新聞オンライン』2023年2月17日)。
 ワグネルはこれまでソレダル、バフムートなど戦闘の第一線で戦い続けており、死傷率は高いとみられ、ワグネルも含めた戦死傷者数としては、妥当な見積もりかもしれない。

 ただし、英国防省の公表数字は、宇軍に有利で露軍の損害を過大に発表する傾向もあり注意が必要である。

 仮に露軍が10数万人から最大ワグネルも含め20万人の損害を出しているとしても、露軍の予備役総兵力は開戦前には約200万人とみられていた(日本外務省ホームページ「ロシア連邦」)。
 兵員不足に陥っても第2回目の数十万人の動員をかけることはできるであろう。宇軍と比較すれば、兵員不足と見ることはできない。

 また砲弾・ミサイルの射撃数は依然として露軍は宇軍を圧倒しており、本格的な冬季攻勢以降露軍の損害が増加しているとしても、露軍の死傷者の比率が崩壊に瀕している宇軍より高いとみることもできない。
 約20万人以下の損耗であれば、約30万人の動員兵力の戦線配備により補充でき、露軍が兵員不足に陥っているとはみられない。


ロシアの高い戦意戦力と迫る停戦の決断

 問題はロシア国内における戦死傷者家族の反発によるウラジーミル・プーチン大統領に対する支持率低下である。
 プーチンの支持率について、開戦直後の2022年4月1日、『ブルームバーグ(電子・日本語版)』は、「ロシア世論調査、プーチン大統領の支持率83%」との記事を配信した。
 開戦から1年後の最新の世論調査でも支持率は80%前後を維持していると報じられている。
 独立系世論調査機関「レバダセンター」が2023年2月1日に発表した調査では、プーチン大統領の「活動」に対する評価について、「承認」が82%、政府系「全ロシア世論調査センター」の12日発表の調査でも76%と、1年前の侵攻開始以降、高い数字を維持している(『日テレニュース』2023年2月24日)。
 支持率が一時8割を切った昨年9月頃より、支持率は回復傾向にあり、国内での政治的不安定要因にはなっていない。

 露軍にとり、NATOの支援を受けた宇軍は直接的な国家安全保障上の脅威である。
 このため宇軍を殲滅するまで、攻勢を継続するとみられ、その能力も意思も維持されている。

 NATOの支援は人的にも物的にも期待できないか、間に合わないとみられる。
 結局、宇軍はこれ以上戦争を続けても、領土を回復するどころか、ますます損害が増大し領土を喪失することになるだろう。

 バイデン大統領のキーウ訪問直後の2023年2月24日、ゼレンスキー大統領は、キーウで記者会見し、習近平中国国家主席と会談する用意があると明らかにしている。
 ウクライナ国営通信によると、ゼレンスキー氏は「習氏との会談を計画している。両国と世界の安全保障のために有益だと考えている」と述べた。
「中国は歴史的に領土の一体性を尊重してきた。ロシアが我々の領土から撤退するためにできることをするべきだ」とも訴え、ロシアへの武器供与の動きを米国などから指摘される中国を牽制したと報じられている(『読売新聞オンライン』2023年2月25日)。
 このゼレンスキー氏の呼びかけは、ロシアと戦略的な協力的パートナーシップ関係にある中国の影響力を行使して、ロシアとの停戦協議の機会を探ろうとする呼びかけととることもできる。

 その時期が、バイデン大統領のキーウ訪問直後になされたことも、訪問の秘められた目的が、米軍も他のNATO加盟国もこれ以上ウクライナを支援はできず、ロシアとの停戦交渉に応じるよう説得することにあったことを示唆させる。

 バフムートでは激戦が続いているとはいえ、バフムート陥落は時間の問題であり、前述したようにNATOの武器、弾薬、兵員の支援もこれ以上は困難か又は間に合わない状況に追い込まれている。

 マグレガー米陸軍退役大佐は、現在の露軍の態勢について、衛星画像分析その他の諸情報から、総兵力約70万人、そのうち南部に18万〜22万人、東部に15万〜20万人、北部に15万〜20万人が展開し、北部正面からハリコフ、キエフ、リヴィウなどに攻撃をかけることができるとみている。

 装備面でも、戦車1800両、装甲戦闘車数千両、火砲・ロケット砲・各種ミサイル数千門、無人機数千機を既に展開しているとみており、東部ドンバス正面のみならず、北部、南部も含めた三正面から大規模攻勢をかける戦力と態勢を既に展開済みとみられる。
 今後の戦略攻勢について最も注目されるのは、北部正面からの攻勢によるリヴィウからポーランド国境の制圧である。

 もし国境地帯を露軍に制圧されれば、NATOのウクライナに対する支援路が絶たれ、宇軍の戦闘継続は不可能になるであろう。
 その場合、ポーランドなどNATO加盟国が戦闘に直接参加し戦火が東欧諸国に拡大すれば、NATO条約第5条に基づき、全NATO加盟国が被侵略国を支援しなければならなくなるため、露軍とNATOの直接対決を招く。
 そうなれば、紛争は世界規模に拡大し、核戦争へのエスカレーションのおそれも高まる。
 そのような事態に至る前に、ウクライナ戦争を停戦に持ち込むことが、国際社会全体の安全保障にとり死活的に重要な課題になっている。
 日本もそのための停戦交渉成功のために尽力すべきである。


早期停戦実現に努めるべき立場にある日本

 日本にとり最も深刻な脅威は中国だが、その中国はウクライナ戦争において漁夫の利を得る立場にある。
 ウクライナ戦争が長引けば、その立場はますます強くなる。

 他方米国は、台湾向けのHIMARSまでウクライナに転用せざるを得ないほど、弾薬・ミサイルも装備の在庫が底を尽き、緊急増産も当面困難な状況にある。
 ウクライナ戦争が長引くほど、米国の日本・台湾有事における装備、弾薬・ミサイルの支援は国難になる。

 日本はウクライナに死活的国益を有しているわけではなく、ロシアを主な脅威と見ている欧州のNATO加盟国の国益とこの点で相反する立場にある。
 日本は国家安全保障の面からも、ウクライナ戦争の早期終結実現に全力で取り組まねばならない。
 ウクライナの戦後処理問題でも過度の負担を背負う必要はなく、むしろその資源を日本自らの国家安全保障態勢強化と同盟国や周辺国との相互援助体制強化に投ずるべきであろう。
 ウクライナ停戦後、日本周辺の北東アジアが新たな国際的緊張の焦点になる可能性は高く、それに備えるための残された時間は少ない。
 その意味でも、日本は自らの防衛・安全保障態勢の強化に最優先で取り組まねばならない立場にある。

http://www.asyura2.com/22/warb24/msg/380.html

   

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