★阿修羅♪ > ペンネームごとのコメント > 烏滸の者 iUef9YLMjtI
 
g検索 iUef9YLMjtI g検索 hk3SORw2nEVEw
 
烏滸の者 iUef9YLMjtI 全コメント
[テスト31] テスト
柄谷行人「憲法9条の今日的意義」(2016年1月23日講演のテキスト起こし)



柄谷行人 「憲法9条の今日的意義」 市民連合 基調講演 2016.1.23(PlaceUniversity)


[0:35] 今日は憲法9条について話しますが、その前に一ついっておきたいことがあります。昨年の九月、ソウルの延世(ヨンセ)大学であった「平和に関する国際会議」で講演しました。そのときにじつは憲法9条について話したんですが、今日話したいのはその会議で聞いたことがらです。その会議では、私が話す前に延世大学の国際政治学の文(ムン)教授が講演しまして、その最後にこういうことをいった。日本では最近若い人たちが盛んにデモをやっていてすばらしい。それに引きかえ韓国では若者は政治活動をしない。将来を考えると暗澹たる気持ちがすると。そういって講演を締めくくったわけです。去年の九月半ばですからまだ日本のデモの余韻が残っていたころです。私は彼の発言を聞いて驚きました。それまで私は、日本にはないけど韓国にはデモがある、とくに学生のデモがあるとずっと思っていた。よりにもよって韓国人から日本のデモのことで、今後に希望があると賞賛された。「お前にそれをいわれたくないよ」といういい方がありますけど、悪いときに使うものなんですけど、誉められているのにそういいたくなった。


[2:30] にわかに信じられないので、その後いろんな人に意見を聞きました。するとこういうことがわかりました。むろん韓国にはデモがあります。大いにある。まだ火炎瓶を投げているといっています。あまり報道されないけど。しかしそれは主として労働者のデモであって、学生がデモをしなくなったというのは事実のようです。理由は就職が大変だからです。その一方で、私は一人の学生から深刻な相談を受けました。彼は、軍隊に行きたくない。しかし、そのためには亡命するほかないと言うんです。日本でも、徴兵忌避をしているので韓国に帰れないという韓国人の若者に会ったことがあります。彼らは日本の若者とは根本的に違った条件に置かれています。そのような話を聞くと、日本に憲法9条があるということを実感します。ともあれ、日本に若者のデモが起こっていることに感銘を受けた人が外国にいた。私はそれをよろこばしく思いました。


[4:10] 私は2002年イラク戦争のころから日本になぜデモがないのかを考えてきました。デモが必要だと。だから2011年福島の原発事故とともに大きなデモが起こったとき、こういいました。デモなどで社会が変わるかという人たちがいる。しかしデモで社会は確実に変わる。なぜならデモをすれば、日本は人がデモをする社会に変わるからだと。確かに韓国の教授は日本がデモをする社会になったということを認めたわけです。私のみるところそれまで日本では、デモは手段であると見なされていました。一つには革命のための手段です。そのために過激なデモが追求されていた。もう一つは選挙のための手段だという考えです。デモによって人々に意見を訴える、選挙でそれを実現すると。この二つの考えが、日本でデモをだめにしてきたと思います。前の方のははっきりしています。過激なデモがあったために普通の人はデモに行かなくなったという歴史的な事実があるからです。ただ、後者については考えられていないと思うんです。しかし、じつは今起こっているのはそれと繋がる問題です。昨年の夏にあったデモをつぎの選挙に有効に生かそうとする。それはよいです。しかし、ここで忘れてもらいたくない問題があります。それは、デモはけっして選挙のための手段ではない、選挙あるいは政党政治に従属するようなものではないということです。


[6:28] 私は以前デモについて考えた時、つぎのようなことに気づきました。日本語ではデモは集会と区別されています。しかし英語でいうと、デモを表すいい方はいろいろありますが、正式にはassemblyです。それは日本語で「集会」と訳されています。だからデモも集会もassemblyなんですね。日本の憲法21条には「集会、結社、表現の自由」というのがありますけれども、「デモの自由」がない。だからかつては「デモの自由」を「表現の自由」から根拠づけるような論がありましたけど、単純な誤解です。デモはassemblyである。だから「集会の自由」が「デモの自由」を意味しているわけです。ちなみに憲法21条にある「結社の自由」という表現、これはわからないものです。これは英語でいうとassociationの自由なんです。「結社」というとほとんどの人は秘密結社ぐらいしか思い浮かばないんです。associationというのはどこにでもあるものです。小学校に行けばあります。PTAのAだから。親と教師のassociationなんですよ。つまり非常にありふれた言葉です。日本語でいえばassemblyというのは寄合です。どの村や町にも寄合がありました。今もあると思います、所によっては。それが元になるわけです。西洋ではそういう寄合が議会にもなったわけです。だから議会はassemblyというんです。寄合です。つまり議会とデモは親戚のようなものですね。たとえば、ルソーが『社会契約論』で「権力は民衆のassemblyを嫌う」と書いている。その場合、assemblyというのは議会というよりも集会・デモという意味だと思います。歴史的には絶対王政に対するassemblyですね。集会・デモがだんだんと大きくなって議会として承認されるようになったわけです。その意味で議会の起源はデモ・集会なんですね。またルソーはこういっています。人民は集会に来たときにだけ主権者として行動しうると。人民という主権者は個々人ではないんです。個々人が集会をしたときに登場するものです。そこにルソーがいう「一般意思」も存在してるわけです。個々人を集めた総和ではありません。その集会において「一般意思」が存在する。だからルソーは同時代の議会制が発達したイギリスにかんしてこういっています。イギリスの人民は自由だと思っているが、それは大まちがいだ。彼らが自由なのは議員を選挙するあいだだけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人は奴隷となり、無に帰してしまうと。またルソーはこうもいっています。代表者という考えは近世のものである。それは封建政治に由来していると。つまり、代表制議会には主権者としての人民はいません。代表者は封建制における領主のようなものです。そのことは現在の日本の代議士をみるとよくわかります。安倍首相を初め、彼らの多くは何代にもわたる世襲です。徳川時代の方が養子制があったから今よりはましです。こんな議会に主権者として人民が存在するはずがない。それが存在するのはもう一つのassemblyすなわちデモ・集会においてです。


[11:25] 議会がまったく人民主権に反するかというと、そうではありません。議会もデモ・集会というassemblyを反映するかぎり、そのかぎりで人民主権的であるということができます。たとえば、選挙によって決まったことをデモで変えてしまうのは民主主義に反するという類の発言をした政治家がいました。これは民主主義が何であるかを考えたことがないんだと思うんです。選挙で決めたことをデモで修正することがありうるときに人民主権ということができるんです。反原発の国会前デモ・集会、またそれ以後の国会前デモ・集会では、おもしろい現象がありました。それは国会の前だったからいえるんですけど、二つのassemblyが直面したということです。デモと議会。デモの側から国会に行くことはないですが、国会の側からデモに挨拶に来ている。政治家が来ました。なぜならば、デモが本当のassemblyだからです。一方、一昨年台湾のひまわり革命では、デモの方が国会に行きました。それによってむしろデモこそ本来のassemblyであるということを示したわけです。先日彼らは選挙で勝ちました。しかし、あれはデモの延長だと思います。またそうでないと今後だめになります。したがって、われわれはデモ・集会をたんなる手段と見なしてはいけない。そこに主権者としての人民がいるというわけですから。それは数の問題ではありません。デモ・集会が原点である。そのことを私は再確認しておきたいと思います。


[13:47] 私の今日の講演は「憲法9条の今日的意義」という題になっていますが、これは私が決めたものではありません。気がつくとそうなっていた。もちろん憲法9条に普遍的な意義があることはまちがいありません。たとえば憲法9条は、カントの『永遠平和のために』、あるいは『世界史的市民的立場からみた人類の普遍史の構想』というものから来ています。カントの理念は第一次大戦後、1920年の国際連盟として結実しました。1928年には戦争を違法化する「パリ不戦条約」が作られた。憲法9条はそれを受けつぐものです。事実英語版でみると憲法9条にはその中から取られた表現が残っています。しかし、私は今日そのことについて語ることはしません。みなさんは憲法9条の普遍的意義を再確認して、それによって改憲を阻止する力としようと考えておられるかもしれませんが、じつは私はその必要はないと思っているんです。というのは、改憲がなされることはないと思っているからです。今日はその話をしたい。むしろそこに普遍的な意義があると思います。


[15:16] 日本の戦後憲法は、9条においていくつもの謎があります。第一に、世界史的に異例のこのような条項が戦後日本の憲法にあるのはなぜかということです。第二に、それがあるにもかかわらず実行されていないのはなぜかということです。たとえば自衛隊があり、米軍基地も多数存在しています。第三に、もし実行しないのであればふつうは法を変えるはずですが、9条はまだ残されているのはなぜかということです。まず第三の謎から考えてみましょう。そうすれば第二、第一の謎も解けると思うからです。自衛隊や米軍基地などは、憲法9条の解釈によって肯定されています。また、集団的自衛権、これは軍事同盟の別名です。そういうものも可能だという解釈改憲もなされています。しかし、憲法9条を変えるということはけっしてなされないのです。なぜそうしないのでしょうか。むろん、それを公然と提起すれば選挙で負けてしまうからです。では、なぜ負けてしまうのか。人々が憲法9条を支持するのは戦争への深い反省があるからだという見方がありますが、私はそれを疑います。たとえ敗戦後にそのような気持ちがあったとしても、それで憲法9条のようなものができるわけがない。事実、それができたのは占領軍が命じたからです。また、憲法9条が人々の戦争体験にもとづいているのだとしたら、それを持たない人が大多数になれば消えてしまうでしょう。実際、そうなるのではないかと護憲論者は懸念しています。ではなぜ9条が今も残り、また人々はそれを守ろうとするのでしょうか。護憲論者は、それは自分らが戦争の経験を伝え、また憲法9条の重要さを訴えてきたからだというでしょう。が、それは疑わしい。


[17:35] ここで問題をその反対の側から、つまり憲法9条を廃棄したいと考えている側からみてみたいと思います。彼らは60年にわたってこれを廃棄しようとしてきたができなかった。なぜなのでしょうか。彼らは、それは国民の多くが左翼知識人に洗脳されているからだと考えます。しかしこれは端的にまちがいです。左翼は元来憲法9条に賛成ではなかったからです。たとえば1946年6月26日新憲法を審議する帝国議会、野坂参三共産党議員は、戦争には正しい戦争とそうでない戦争がある。侵略された国が祖国を守るための戦争は正しいのではないかと述べました。これは左翼にとってはふつうの見方であって、後の新左翼においても同じです。その中には赤軍派がいたからですか、新左翼の多くは後に護憲派に転じました。しかし、彼らが意見を変えたことを非難する資格は保守派にはありません。たとえば首班の吉田茂首相は、野坂参三の質問に対してこう答えたんです。近年の戦争の多くは国家防衛権の名において行なわれたることは顕著なる事実であります。故に正当防衛権を認めることが戦争を誘発するゆえんであると思うのでありますと。さらに朝鮮戦争でアメリカから再軍備を迫られたとき、彼はそれを拒絶していった。再軍備など愚の骨頂であり、痴人の夢であると書いています。こんなことをいう保守派が今……いないと思います。今や彼らは憲法9条の解釈で集団的自衛権、軍事同盟を正当防衛権としています。要するに保守派が意見を変えたわけです。ところが彼らは憲法9条を廃棄しようとはしない。なぜか。たんにそうすることができないからです。もしそれが選挙で争点となるならば、大敗するのは確実です。したがって、彼らはごまかしながらやっていくほかない。改憲を目論んで60年余りたったというのにまだできないんですね。それはなぜか。彼ら自身にとっても謎のはずです。その謎を解明しようとせずに、左翼政党、進歩的文化人、知識人のせいにする。それは自分の無力、無理解を棚上げすることです。憲法9条が執拗に残ってきたのは、それを人々が意識的に守ってきたからではありません。もしそうであればとうに消えていたでしょう。人間の意志などは気紛れで脆弱なものです。9条はゆえに無意識の問題なのです。


[21:06] 無意識というと一般に、意識されていないという程度の意味で理解されています。あるいは潜在意識と同一視されています。たとえば宣伝などで無意識、潜在意識に働きかけるサブリミナル効果を狙うことがあります。先ほどもいわれたように何べんも繰り返していると人はだんだんと受けとるようになるんだとかそういう意味です。しかし、フロイトはそのようなものを前意識と呼んで、無意識とは区別したんです。ただフロイトがいう無意識にも二つの種類があります。一つはエスというもので、「それ」ということで、名づけようのないものを指しているわけです。もう一つは超自我です。私の考えでは、憲法9条は超自我のようなものです。このような無意識の超自我は、意識とは異なって、説得や宣伝によって操作することができないものです。現に保守派の60年以上にわたる努力は徒労に終わっています。いくら彼らが9条は非現実的な理想主義であると訴えたところで無駄です。9条は無意識の次元に根ざすものだから、説得不可能なんです。意識的な次元であれば説得はできますけど。ただし、このことを理解していないのは護憲派も同様です。憲法9条は、護憲派が啓蒙することによって続いてきたのではありません。9条は護憲派によって守られているのではない。その逆に護憲派こそ憲法9条によって守られている。私はそれを皮肉でいっているわけではありません。ただたんに安心してよいといっているんです。そしてその上で何をすべきか、何をなしうるかを考え直してほしいのです。


[23:34] 私は戦後日本に生まれた憲法にかんして、フロイトのいう超自我という概念を導入して考えようとしました。これはたんに心理学の応用ではありません。フロイトが超自我について考えるようになったことは、深く戦争の問題と関連しているのです。それについて少し述べておきたいと思います。フロイトは第一次大戦後に、あることがきっかけで無意識にかんする考えを根本的に変えたんです。それを境にして前期フロイトと後期フロイトに区別できると思います。前期のフロイトの考えでは、無意識が欲望を満たそうとする快感原則と、それを満たすことがもたらす危険を避けるために抑制しようとする現実原則がある。現実原則というのは、いうならば社会の規範です。親を通して子どもに刷り込まれる。それが無意識において人を規制する、あるいは検閲するわけです。フロイトの『夢判断』はそのような考えにもとづいて書かれています。しかし、この考えは新しいものではあるのですが、ある意味では常識的なものです。たとえば、人間は思うままに欲望を満たすわけにはいかない。だからそれを現実原則によって抑制しないといけない。したがって社会的文化的な規範に従うことになる。それが成熟することである。だけど、同時にときにはそれから解放されないといけない。たとえば祭りや戦争になると、それが解放されるというわけです。実際、フロイトは第一次大戦の中で戦争についてはむしろ肯定的でした。そしてまた戦争が終われば自然に元に戻ると考えていました。彼の考えが変わったのは戦後です。しかし、それは彼自身が戦争を経験したことによるのではありません。


[26:09] 彼の考えを変えたのは、戦後に戦争神経症に苦しむ患者に出会ったことです。彼らにとって、戦争はしだいに消え去るどころではなかったわけですね。毎晩戦争の夢を見て飛び起きていたのだから。このような反復強迫は何なのか、何によるのか。フロイトはそれを考えた。そして彼は、快感原則と現実原則というような二元性の底に死の欲動、あるいはその派生物である攻撃欲動を見出した。フロイトはこう考えました。患者らの反復強迫は、戦争期に外に向けられていた攻撃欲動が戦後に内に向けられることによって生じたのだと。フロイトが超自我という概念を提起したのはその後です。それに似たものは以前からあります。それは現実原則を担う無意識の検閲官なるものです。が、それは社会的規範が親を通して子どもに内面化されて生じたものです。つまりそれは外から来るものです。それに対して超自我はいわば内部から来る。なぜならば当人の死の欲動、攻撃欲動に根ざしているからです。フロイトのこのような考えの展開は、狭義の精神分析よりもむしろ彼の文化論においてより明快に示されていると思います。後期フロイトの考えを典型的に示すのは、1930年に書いた『文化の中の居心地悪さ』という論文です。ここでフロイトは、超自我は個人だけではなく集団にもあるといいます。というよりもむしろ、超自我は集団の方により顕著にあらわれると書いています。そしてこの超自我の集団的現れの一形態が文化だというわけです。その意味で、私は戦後の日本に生まれた憲法9条を超自我としてみるのがふさわしいと思います。いい換えれば、意識ではなく無意識の問題として。たとえばフロイトは、強迫神経症の患者は外からみると罪責感に苦しんでいるようにみえるけれども、当の本人はそれについて何も意識していない、ということを指摘しました。それでフロイトはそれを「無意識的罪悪感」と呼びました。


[29:19] 日本人が憲法9条に拘るのはそれと似ています。それは一種の強迫神経症であり、「無意識的罪悪感」を示すものです。くり返すと、日本人に戦争に対する罪悪感があるとしても、それは意識的なものではないということです。憲法9条は人々が罪悪感を抱いたから作られたのではないし、過去の行動への反省意識を強めることによって維持されてきたものでもありません。もしそれが意識的な反省によるものであったなら、9条はとうの昔に廃棄されていたでしょう。なぜなら意識を変えるのはたやすいことだからです。教育、宣伝その他で世論を変えることはできます。それなのに9条が変えられないのはなぜでしょうか。そこで改憲派は、教育、宣伝が不足しているからだと思ったり、護憲派の教育、宣伝が強いからだと考える。逆に護憲派は、改憲派の宣伝工作にいつも怯えている。そういう光景がずっと続いてきたわけです。憲法9条には戦争を忌避する強い倫理的な意志があります。しかし、それは意識的あるいは自発的に出てきたものではありません。9条は明らかに占領軍の強制によるものなのです。だから真に自主的な憲法を新たに作ろうという人たちが戦後にはずっといたし、今もいます。しかし、憲法9条が強制されたものだということと、日本人がそれを自主的に受け入れたということとは矛盾しないのです。私のみるところ、フロイトの言葉はその疑問に答えていると思います。


[31:20] 「人は通常、倫理的な要求が最初にあり、欲動の断念がその結果として生まれると考えがちである。しかしそれでは、倫理性の由来が不明なままである。実際にはその反対に進行するように思われる。最初の欲動の断念は、外部の力によって強制されたものであり、欲動の断念が初めて倫理性を生み出し、これが良心というかたちで表現され、欲動の断念をさらに求めるのである。」


[31:58] フロイトのこの考えはべつに憲法について書いたものではないんですが 憲法9条が生じた過程をじつにうまく示していると思います。というのは、憲法9条は外部の力、つまり占領軍の指令によって生まれたわけです。にもかかわらず、それは日本人の無意識に深く定着した。なぜか。まず外部の力による戦争(攻撃性)の断念がある。それが良心を生み出して、それが戦争の断念をいっそう求めることになったわけです。だから憲法9条は自発的な意志によってできたのではない。外部からの押しつけによるものですが、だからこそそれはその後に深く定着したのです。それはもし人々の意志によるものであれば成立しなかったし、たとえ成立してもとうに廃棄されていたと思います。


[32:56] ところで、個人の無意識の場合は精神分析医が対話を通してアクセスできるかもしれませんが、集団の場合はそうはいきません。しかし、選挙、国民投票になると、それはある程度出てきます。もちろんそのような認識はありませんが、経験的にそれがわかっている。だから改憲をねらう政党、政治家はいざとなると憲法9条を争点からひっこめます。そして選挙の後でまた改憲を唱える。それをくり返してきたわけです。このような集団的無意識は総選挙や国民投票を通す以外に察知しえないのかといえば、そうではありません。私はそれを知る方法があると思います。無作為抽出(ランダムサンプリング)による世論調査がそうです。このやり方は、戦後アメリカの占領政策の一環として導入したものなんです。彼らは日本の民主化には世論調査が必要だと考えた。しかも彼らが導入したのが統計学の理論にもとづいたランダムサンプリングによる調査です。それはアメリカでもまだ実行されていなかったものなんです。それが日本で実行された。1948年朝日新聞が行なった世論調査が最初のものだといわれています。ある意味でこのような世論調査は、憲法9条と類似する点があります。それはどちらも占領軍がアメリカでもやっていないことを日本でやろうとしたから。さらにもう一つの類似点は、占領軍が日本の統治のために持ち込んだそれらのものが、占領軍にとって裏目に出たことです。たとえば、朝鮮戦争が始まったときにマッカーサーは憲法9条を作ったことを後悔したと思います。彼はそこで吉田茂に再軍備、したがって憲法の改正を要請したわけです。吉田はそれをすげなく断った。それについて吉田は回想録でこう書いています。まず、日本は再軍備のための資金を持たない。それが第一の理由である。第二に、国民思想の実情から言って、再軍備の背景たるべき心理的基盤が全く失われている。第三に、理由なき戦争に駆り立てられた国民にとって、敗戦の傷跡が幾つも残っておって、その処理の未だ終らざるものが多いと。このいい方をみますと吉田が妙に「心理的基盤」だとか「敗戦の傷跡」だとかいうのはなぜか。おそらく彼は世論調査の結果を知っていたのではないかと思います。彼はこう考えた。もしここで再軍備をしたらたいへんな反対運動が起こり、内閣が壊れるどころか革命騒ぎになってしまう。おそらく彼はそれをマッカーサーにいったにちがいない。ただ、吉田茂はマッカーサーの要求に従って警察予備隊を作りました。米軍が朝鮮半島に向かった後の安全保障のためという名目です。とはいえ、吉田はあくまで憲法改正は退けた。警察予備隊が保安隊、自衛隊と発展していった段階でも、それらは「戦力」ではないといい張って、憲法9条の改正の必要を否定したんです。これはある意味で9条の解釈改憲のようなものです。以来、9条の文面を変えないままに、それに相反するような軍備拡大がなされ続けてきたわけです。


[37:17] ここで世論と選挙の関係について一言述べておきます。結論からいうと、選挙は集団的無意識としての世論を表すものにはなりえません。なぜならば争点が曖昧なうえ、投票率も概して低く、投票者の地域や年齢などの割合にも偏りがあるからです。ただ選挙を通して憲法9条を改正しようとする場合、最後に国民投票を行う必要があります。国民投票も何らかの操作や策動は可能だから、世論を十分に反映するものとはいえませんが、争点がはっきりしているので、投票率も高く、無意識が前面に出てきます。ゆえに国民投票では負けてしまいます。選挙で勝っても国民投票で敗北すれば、政権は致命的なダメージを受けます。解釈改憲すら維持できなくなってしまう可能性がある。むろん選挙でも9条改定を唯一の争点としたなら大敗すると思います。だから政府自民党は普段は9条の改定を唱えているにもかかわらず、選挙となるとけっして憲法9条を争点にはしないんです。今後も同じです。


[38:47] なお、世論を知るということでは、ランダムサンプリングによる世論調査の方がもっと的確だと思います。しかし、その場合は質問のし方に注意しないといけないんです。たとえば「憲法9条をどう思うか」というような質問はだめなんですよ、漠然としているから。「憲法9条を廃棄するかどうか」と確定して問わないといけない。とにかく質問を適切にすることが肝心です。なにしろ問うている相手は個々人の意識ごときではなくて、無意識さまなんですから。ついでにいうと、現在やられているような電話によるやり方はランダムサンプリングにならないと思います。電話を持っていない人は除外されてしまいます。とくに最近の若者は携帯しか持ってないからできないんです。これではランダムな抽出にはなりません。だから面接しないといけないんですが、金がかかるのでやらない。要するに私がいいたいのは、憲法9条が無意識の超自我であるということは、心理的な憶測ではなくて、統計学的に裏づけられるものだということです。


[40:20] 最後に一言。現在世界中で戦争の危機が迫っていることはまちがいありません。どの国もこの危機のもとにあり、それぞれに対策を講じています。そしてそれが他国に影響し、相互的に敵対心が増幅される。その中で日本で優勢になってきたのは、米国との軍事同盟(集団的自衛権)を確立するという案です。それは戦争が切迫した現状のもとではリアリスティックな対応であるようにみえます。しかし、逆に各国のリアリスティックな対応のせいで、思いがけないかたちで世界戦争に巻き込まれてしまう蓋然性が高い
のです。第一次大戦はまさにそういうものでした。ヨーロッパの地域的な紛争、オーストリアとセルビアの紛争が、軍事同盟の国際的ネットワークによって日本も参加するような世界戦争に展開していったわけです。日本の場合は日英同盟があったからです。またその第一次大戦の結果として国際連盟が生まれ、戦争を違法とする「不戦条約」が成立しました。日本の憲法9条がその「不戦条約」に負うことは先にも言いましたけど、国際連盟から脱退し、かつ「不戦条約」を踏みにじったのは実はドイツと日本なのです。どちらもそのようなカント的理念を嘲笑して、自国の安全をリアリスティックに確保しようとしたわけです。その結果が第二次大戦です。したがって、防衛のための集団的軍事同盟は何ら平和を保障するものではない。


[42:27] しかし、今もそれがリアリスティックなやり方だと考えられています。そして日本人がそれを実現するためには何としても非現実的な憲法9条を廃棄しなければならないということになります。しかし、彼らはそう望んでもできません。60年以上にわたって憲法9条を廃棄しようとしてきたのに、それを実現できなかったのです。今保守派の中枢部は、なぜ改憲できないのかわからないながら、たぶん改憲をあきらめているのだと思います。もちろんいつも改憲を口にします。しかし、それを実現できるとは考えていない。そのかわりに議会で多数派となって安保法案のような法律を作ることや、また今後に憲法に緊急事態条項を加えるなどで、9条を無力化する方法をとろうと画策しています。これは国会では通っても国民投票では確実に却下されますから、やらないでしょう。要するに安倍政権は、9条があっても戦争ができるような体制を作ろうとしているわけです。


[43:40] ゆえに護憲派は9条がなくなってしまうのではないかということを恐れる必要はまったくありません。問題はむしろ護憲派のあいだに改憲を恐れるあまり9条の条文さえ保持できればよいと考えるふしがあることです。かたちの上でのみ9条を守るだけなら、9条があっても何でもできるような体制になってしまいます。それが今後に起こりうることです。その意味で私は憲法9条の改定を恐れてはいけないといいたい。彼らには正々堂々と憲法9条を変えたらどうかといえばいいんです。ぜひ国民投票をやりましょう。べつに3分の2の議席を取らなくても、一緒にやりましょうといって、全員賛成に回ってもいいんですよ、国民投票にしようと。これは冗談。


[44:44] だから注意すべきことは、彼らが憲法9条を変えることなくさまざまな手口で戦争を行える体制を作ってしまうことです。今後に日本が戦争に巻き込まれることは大いにありえます。あるいはそのような危機をあえて作り出して憲法改正をはかるということもありえるでしょう。しかし、そのあげくにどうなるかといえば、いずれ高すぎる代償を払って憲法9条を再び取り戻すことになるだけです。そんなことは現在からみても明白です。したがって、戦争の危機が身近に迫る時期においてもっともリアリスティックなやり方は、一般に非現実的と目されている憲法9条を掲げ、それを文字通り実行することです。9条を実行することは、おそらく日本人ができる唯一の普遍的かつ強力な行為です。それが今日の演題にあるように「憲法9条の今日的意義」です。


[投稿者コメント]


この文章は、2016年1月23日に東京都北区で行われた市民連合主催のシンポジウム「2016年をどう戦い抜くか」における柄谷行人の基調講演を、投稿者がテキストに起こしたものです。シンポジウムを企画実行してくれた市民連合および参加者、YouTube動画をあげてくれたPlaceUniversityに感謝します。
段落頭に付した数字は、動画の再生時間です。聞き取りやタイプなどで間違いがあったらご容赦ください。
なお、『世界 2015年9月号』(岩波書店)には「反復強迫としての平和」という題でほぼ同趣旨の文章が掲載されています。

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/428.html

[雑談・Story41] 柄谷行人「憲法9条の今日的意義」(2016年1月23日講演のテキスト起こし)
柄谷行人「憲法9条の今日的意義」(2016年1月23日講演のテキスト起こし)



柄谷行人 「憲法9条の今日的意義」 市民連合 基調講演 2016.1.23(PlaceUniversity)


[0:35] 今日は憲法9条について話しますが、その前に一ついっておきたいことがあります。昨年の九月、ソウルの延世(ヨンセ)大学であった「平和に関する国際会議」で講演しました。そのときにじつは憲法9条について話したんですが、今日話したいのはその会議で聞いたことがらです。その会議では、私が話す前に延世大学の国際政治学の文(ムン)教授が講演しまして、その最後にこういうことをいった。日本では最近若い人たちが盛んにデモをやっていてすばらしい。それに引きかえ韓国では若者は政治活動をしない。将来を考えると暗澹たる気持ちがすると。そういって講演を締めくくったわけです。去年の九月半ばですからまだ日本のデモの余韻が残っていたころです。私は彼の発言を聞いて驚きました。それまで私は、日本にはないけど韓国にはデモがある、とくに学生のデモがあるとずっと思っていた。よりにもよって韓国人から日本のデモのことで、今後に希望があると賞賛された。「お前にそれをいわれたくないよ」といういい方がありますけど、悪いときに使うものなんですけど、誉められているのにそういいたくなった。


[2:30] にわかに信じられないので、その後いろんな人に意見を聞きました。するとこういうことがわかりました。むろん韓国にはデモがあります。大いにある。まだ火炎瓶を投げているといっています。あまり報道されないけど。しかしそれは主として労働者のデモであって、学生がデモをしなくなったというのは事実のようです。理由は就職が大変だからです。その一方で、私は一人の学生から深刻な相談を受けました。彼は、軍隊に行きたくない。しかし、そのためには亡命するほかないと言うんです。日本でも、徴兵忌避をしているので韓国に帰れないという韓国人の若者に会ったことがあります。彼らは日本の若者とは根本的に違った条件に置かれています。そのような話を聞くと、日本に憲法9条があるということを実感します。ともあれ、日本に若者のデモが起こっていることに感銘を受けた人が外国にいた。私はそれをよろこばしく思いました。


[4:10] 私は2002年イラク戦争のころから日本になぜデモがないのかを考えてきました。デモが必要だと。だから2011年福島の原発事故とともに大きなデモが起こったとき、こういいました。デモなどで社会が変わるかという人たちがいる。しかしデモで社会は確実に変わる。なぜならデモをすれば、日本は人がデモをする社会に変わるからだと。確かに韓国の教授は日本がデモをする社会になったということを認めたわけです。私のみるところそれまで日本では、デモは手段であると見なされていました。一つには革命のための手段です。そのために過激なデモが追求されていた。もう一つは選挙のための手段だという考えです。デモによって人々に意見を訴える、選挙でそれを実現すると。この二つの考えが、日本でデモをだめにしてきたと思います。前の方のははっきりしています。過激なデモがあったために普通の人はデモに行かなくなったという歴史的な事実があるからです。ただ、後者については考えられていないと思うんです。しかし、じつは今起こっているのはそれと繋がる問題です。昨年の夏にあったデモをつぎの選挙に有効に生かそうとする。それはよいです。しかし、ここで忘れてもらいたくない問題があります。それは、デモはけっして選挙のための手段ではない、選挙あるいは政党政治に従属するようなものではないということです。


[6:28] 私は以前デモについて考えた時、つぎのようなことに気づきました。日本語ではデモは集会と区別されています。しかし英語でいうと、デモを表すいい方はいろいろありますが、正式にはassemblyです。それは日本語で「集会」と訳されています。だからデモも集会もassemblyなんですね。日本の憲法21条には「集会、結社、表現の自由」というのがありますけれども、「デモの自由」がない。だからかつては「デモの自由」を「表現の自由」から根拠づけるような論がありましたけど、単純な誤解です。デモはassemblyである。だから「集会の自由」が「デモの自由」を意味しているわけです。ちなみに憲法21条にある「結社の自由」という表現、これはわからないものです。これは英語でいうとassociationの自由なんです。「結社」というとほとんどの人は秘密結社ぐらいしか思い浮かばないんです。associationというのはどこにでもあるものです。小学校に行けばあります。PTAのAだから。親と教師のassociationなんですよ。つまり非常にありふれた言葉です。日本語でいえばassemblyというのは寄合です。どの村や町にも寄合がありました。今もあると思います、所によっては。それが元になるわけです。西洋ではそういう寄合が議会にもなったわけです。だから議会はassemblyというんです。寄合です。つまり議会とデモは親戚のようなものですね。たとえば、ルソーが『社会契約論』で「権力は民衆のassemblyを嫌う」と書いている。その場合、assemblyというのは議会というよりも集会・デモという意味だと思います。歴史的には絶対王政に対するassemblyですね。集会・デモがだんだんと大きくなって議会として承認されるようになったわけです。その意味で議会の起源はデモ・集会なんですね。またルソーはこういっています。人民は集会に来たときにだけ主権者として行動しうると。人民という主権者は個々人ではないんです。個々人が集会をしたときに登場するものです。そこにルソーがいう「一般意思」も存在してるわけです。個々人を集めた総和ではありません。その集会において「一般意思」が存在する。だからルソーは同時代の議会制が発達したイギリスにかんしてこういっています。イギリスの人民は自由だと思っているが、それは大まちがいだ。彼らが自由なのは議員を選挙するあいだだけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人は奴隷となり、無に帰してしまうと。またルソーはこうもいっています。代表者という考えは近世のものである。それは封建政治に由来していると。つまり、代表制議会には主権者としての人民はいません。代表者は封建制における領主のようなものです。そのことは現在の日本の代議士をみるとよくわかります。安倍首相を初め、彼らの多くは何代にもわたる世襲です。徳川時代の方が養子制があったから今よりはましです。こんな議会に主権者として人民が存在するはずがない。それが存在するのはもう一つのassemblyすなわちデモ・集会においてです。


[11:25] 議会がまったく人民主権に反するかというと、そうではありません。議会もデモ・集会というassemblyを反映するかぎり、そのかぎりで人民主権的であるということができます。たとえば、選挙によって決まったことをデモで変えてしまうのは民主主義に反するという類の発言をした政治家がいました。これは民主主義が何であるかを考えたことがないんだと思うんです。選挙で決めたことをデモで修正することがありうるときに人民主権ということができるんです。反原発の国会前デモ・集会、またそれ以後の国会前デモ・集会では、おもしろい現象がありました。それは国会の前だったからいえるんですけど、二つのassemblyが直面したということです。デモと議会。デモの側から国会に行くことはないですが、国会の側からデモに挨拶に来ている。政治家が来ました。なぜならば、デモが本当のassemblyだからです。一方、一昨年台湾のひまわり革命では、デモの方が国会に行きました。それによってむしろデモこそ本来のassemblyであるということを示したわけです。先日彼らは選挙で勝ちました。しかし、あれはデモの延長だと思います。またそうでないと今後だめになります。したがって、われわれはデモ・集会をたんなる手段と見なしてはいけない。そこに主権者としての人民がいるというわけですから。それは数の問題ではありません。デモ・集会が原点である。そのことを私は再確認しておきたいと思います。


[13:47] 私の今日の講演は「憲法9条の今日的意義」という題になっていますが、これは私が決めたものではありません。気がつくとそうなっていた。もちろん憲法9条に普遍的な意義があることはまちがいありません。たとえば憲法9条は、カントの『永遠平和のために』、あるいは『世界史的市民的立場からみた人類の普遍史の構想』というものから来ています。カントの理念は第一次大戦後、1920年の国際連盟として結実しました。1928年には戦争を違法化する「パリ不戦条約」が作られた。憲法9条はそれを受けつぐものです。事実英語版でみると憲法9条にはその中から取られた表現が残っています。しかし、私は今日そのことについて語ることはしません。みなさんは憲法9条の普遍的意義を再確認して、それによって改憲を阻止する力としようと考えておられるかもしれませんが、じつは私はその必要はないと思っているんです。というのは、改憲がなされることはないと思っているからです。今日はその話をしたい。むしろそこに普遍的な意義があると思います。


[15:16] 日本の戦後憲法は、9条においていくつもの謎があります。第一に、世界史的に異例のこのような条項が戦後日本の憲法にあるのはなぜかということです。第二に、それがあるにもかかわらず実行されていないのはなぜかということです。たとえば自衛隊があり、米軍基地も多数存在しています。第三に、もし実行しないのであればふつうは法を変えるはずですが、9条はまだ残されているのはなぜかということです。まず第三の謎から考えてみましょう。そうすれば第二、第一の謎も解けると思うからです。自衛隊や米軍基地などは、憲法9条の解釈によって肯定されています。また、集団的自衛権、これは軍事同盟の別名です。そういうものも可能だという解釈改憲もなされています。しかし、憲法9条を変えるということはけっしてなされないのです。なぜそうしないのでしょうか。むろん、それを公然と提起すれば選挙で負けてしまうからです。では、なぜ負けてしまうのか。人々が憲法9条を支持するのは戦争への深い反省があるからだという見方がありますが、私はそれを疑います。たとえ敗戦後にそのような気持ちがあったとしても、それで憲法9条のようなものができるわけがない。事実、それができたのは占領軍が命じたからです。また、憲法9条が人々の戦争体験にもとづいているのだとしたら、それを持たない人が大多数になれば消えてしまうでしょう。実際、そうなるのではないかと護憲論者は懸念しています。ではなぜ9条が今も残り、また人々はそれを守ろうとするのでしょうか。護憲論者は、それは自分らが戦争の経験を伝え、また憲法9条の重要さを訴えてきたからだというでしょう。が、それは疑わしい。


[17:35] ここで問題をその反対の側から、つまり憲法9条を廃棄したいと考えている側からみてみたいと思います。彼らは60年にわたってこれを廃棄しようとしてきたができなかった。なぜなのでしょうか。彼らは、それは国民の多くが左翼知識人に洗脳されているからだと考えます。しかしこれは端的にまちがいです。左翼は元来憲法9条に賛成ではなかったからです。たとえば1946年6月26日新憲法を審議する帝国議会、野坂参三共産党議員は、戦争には正しい戦争とそうでない戦争がある。侵略された国が祖国を守るための戦争は正しいのではないかと述べました。これは左翼にとってはふつうの見方であって、後の新左翼においても同じです。その中には赤軍派がいたからですか、新左翼の多くは後に護憲派に転じました。しかし、彼らが意見を変えたことを非難する資格は保守派にはありません。たとえば首班の吉田茂首相は、野坂参三の質問に対してこう答えたんです。近年の戦争の多くは国家防衛権の名において行なわれたることは顕著なる事実であります。故に正当防衛権を認めることが戦争を誘発するゆえんであると思うのでありますと。さらに朝鮮戦争でアメリカから再軍備を迫られたとき、彼はそれを拒絶していった。再軍備など愚の骨頂であり、痴人の夢であると書いています。こんなことをいう保守派が今……いないと思います。今や彼らは憲法9条の解釈で集団的自衛権、軍事同盟を正当防衛権としています。要するに保守派が意見を変えたわけです。ところが彼らは憲法9条を廃棄しようとはしない。なぜか。たんにそうすることができないからです。もしそれが選挙で争点となるならば、大敗するのは確実です。したがって、彼らはごまかしながらやっていくほかない。改憲を目論んで60年余りたったというのにまだできないんですね。それはなぜか。彼ら自身にとっても謎のはずです。その謎を解明しようとせずに、左翼政党、進歩的文化人、知識人のせいにする。それは自分の無力、無理解を棚上げすることです。憲法9条が執拗に残ってきたのは、それを人々が意識的に守ってきたからではありません。もしそうであればとうに消えていたでしょう。人間の意志などは気紛れで脆弱なものです。9条はゆえに無意識の問題なのです。


[21:06] 無意識というと一般に、意識されていないという程度の意味で理解されています。あるいは潜在意識と同一視されています。たとえば宣伝などで無意識、潜在意識に働きかけるサブリミナル効果を狙うことがあります。先ほどもいわれたように何べんも繰り返していると人はだんだんと受けとるようになるんだとかそういう意味です。しかし、フロイトはそのようなものを前意識と呼んで、無意識とは区別したんです。ただフロイトがいう無意識にも二つの種類があります。一つはエスというもので、「それ」ということで、名づけようのないものを指しているわけです。もう一つは超自我です。私の考えでは、憲法9条は超自我のようなものです。このような無意識の超自我は、意識とは異なって、説得や宣伝によって操作することができないものです。現に保守派の60年以上にわたる努力は徒労に終わっています。いくら彼らが9条は非現実的な理想主義であると訴えたところで無駄です。9条は無意識の次元に根ざすものだから、説得不可能なんです。意識的な次元であれば説得はできますけど。ただし、このことを理解していないのは護憲派も同様です。憲法9条は、護憲派が啓蒙することによって続いてきたのではありません。9条は護憲派によって守られているのではない。その逆に護憲派こそ憲法9条によって守られている。私はそれを皮肉でいっているわけではありません。ただたんに安心してよいといっているんです。そしてその上で何をすべきか、何をなしうるかを考え直してほしいのです。


[23:34] 私は戦後日本に生まれた憲法にかんして、フロイトのいう超自我という概念を導入して考えようとしました。これはたんに心理学の応用ではありません。フロイトが超自我について考えるようになったことは、深く戦争の問題と関連しているのです。それについて少し述べておきたいと思います。フロイトは第一次大戦後に、あることがきっかけで無意識にかんする考えを根本的に変えたんです。それを境にして前期フロイトと後期フロイトに区別できると思います。前期のフロイトの考えでは、無意識が欲望を満たそうとする快感原則と、それを満たすことがもたらす危険を避けるために抑制しようとする現実原則がある。現実原則というのは、いうならば社会の規範です。親を通して子どもに刷り込まれる。それが無意識において人を規制する、あるいは検閲するわけです。フロイトの『夢判断』はそのような考えにもとづいて書かれています。しかし、この考えは新しいものではあるのですが、ある意味では常識的なものです。たとえば、人間は思うままに欲望を満たすわけにはいかない。だからそれを現実原則によって抑制しないといけない。したがって社会的文化的な規範に従うことになる。それが成熟することである。だけど、同時にときにはそれから解放されないといけない。たとえば祭りや戦争になると、それが解放されるというわけです。実際、フロイトは第一次大戦の中で戦争についてはむしろ肯定的でした。そしてまた戦争が終われば自然に元に戻ると考えていました。彼の考えが変わったのは戦後です。しかし、それは彼自身が戦争を経験したことによるのではありません。


[26:09] 彼の考えを変えたのは、戦後に戦争神経症に苦しむ患者に出会ったことです。彼らにとって、戦争はしだいに消え去るどころではなかったわけですね。毎晩戦争の夢を見て飛び起きていたのだから。このような反復強迫は何なのか、何によるのか。フロイトはそれを考えた。そして彼は、快感原則と現実原則というような二元性の底に死の欲動、あるいはその派生物である攻撃欲動を見出した。フロイトはこう考えました。患者らの反復強迫は、戦争期に外に向けられていた攻撃欲動が戦後に内に向けられることによって生じたのだと。フロイトが超自我という概念を提起したのはその後です。それに似たものは以前からあります。それは現実原則を担う無意識の検閲官なるものです。が、それは社会的規範が親を通して子どもに内面化されて生じたものです。つまりそれは外から来るものです。それに対して超自我はいわば内部から来る。なぜならば当人の死の欲動、攻撃欲動に根ざしているからです。フロイトのこのような考えの展開は、狭義の精神分析よりもむしろ彼の文化論においてより明快に示されていると思います。後期フロイトの考えを典型的に示すのは、1930年に書いた『文化の中の居心地悪さ』という論文です。ここでフロイトは、超自我は個人だけではなく集団にもあるといいます。というよりもむしろ、超自我は集団の方により顕著にあらわれると書いています。そしてこの超自我の集団的現れの一形態が文化だというわけです。その意味で、私は戦後の日本に生まれた憲法9条を超自我としてみるのがふさわしいと思います。いい換えれば、意識ではなく無意識の問題として。たとえばフロイトは、強迫神経症の患者は外からみると罪責感に苦しんでいるようにみえるけれども、当の本人はそれについて何も意識していない、ということを指摘しました。それでフロイトはそれを「無意識的罪悪感」と呼びました。


[29:19] 日本人が憲法9条に拘るのはそれと似ています。それは一種の強迫神経症であり、「無意識的罪悪感」を示すものです。くり返すと、日本人に戦争に対する罪悪感があるとしても、それは意識的なものではないということです。憲法9条は人々が罪悪感を抱いたから作られたのではないし、過去の行動への反省意識を強めることによって維持されてきたものでもありません。もしそれが意識的な反省によるものであったなら、9条はとうの昔に廃棄されていたでしょう。なぜなら意識を変えるのはたやすいことだからです。教育、宣伝その他で世論を変えることはできます。それなのに9条が変えられないのはなぜでしょうか。そこで改憲派は、教育、宣伝が不足しているからだと思ったり、護憲派の教育、宣伝が強いからだと考える。逆に護憲派は、改憲派の宣伝工作にいつも怯えている。そういう光景がずっと続いてきたわけです。憲法9条には戦争を忌避する強い倫理的な意志があります。しかし、それは意識的あるいは自発的に出てきたものではありません。9条は明らかに占領軍の強制によるものなのです。だから真に自主的な憲法を新たに作ろうという人たちが戦後にはずっといたし、今もいます。しかし、憲法9条が強制されたものだということと、日本人がそれを自主的に受け入れたということとは矛盾しないのです。私のみるところ、フロイトの言葉はその疑問に答えていると思います。


[31:20] 「人は通常、倫理的な要求が最初にあり、欲動の断念がその結果として生まれると考えがちである。しかしそれでは、倫理性の由来が不明なままである。実際にはその反対に進行するように思われる。最初の欲動の断念は、外部の力によって強制されたものであり、欲動の断念が初めて倫理性を生み出し、これが良心というかたちで表現され、欲動の断念をさらに求めるのである。」


[31:58] フロイトのこの考えはべつに憲法について書いたものではないのですが 憲法9条が生じた過程をじつにうまく示していると思います。というのは、憲法9条は外部の力、つまり占領軍の指令によって生まれたわけです。にもかかわらず、それは日本人の無意識に深く定着した。なぜか。まず外部の力による戦争(攻撃性)の断念がある。それが良心を生み出して、それが戦争の断念をいっそう求めることになったわけです。だから憲法9条は自発的な意志によってできたのではない。外部からの押しつけによるものですが、だからこそそれはその後に深く定着したのです。それはもし人々の意志によるものであれば成立しなかったし、たとえ成立してもとうに廃棄されていたと思います。


[32:56] ところで、個人の無意識の場合は精神分析医が対話を通してアクセスできるかもしれませんが、集団の場合はそうはいきません。しかし、選挙、国民投票になると、それはある程度出てきます。もちろんそのような認識はありませんが、経験的にそれがわかっている。だから改憲をねらう政党、政治家はいざとなると憲法9条を争点からひっこめます。そして選挙の後でまた改憲を唱える。それをくり返してきたわけです。このような集団的無意識は総選挙や国民投票を通す以外に察知しえないのかといえば、そうではありません。私はそれを知る方法があると思います。無作為抽出(ランダムサンプリング)による世論調査がそうです。このやり方は、戦後アメリカの占領政策の一環として導入したものなんです。彼らは日本の民主化には世論調査が必要だと考えた。しかも彼らが導入したのが統計学の理論にもとづいたランダムサンプリングによる調査です。それはアメリカでもまだ実行されていなかったものなんです。それが日本で実行された。1948年朝日新聞が行なった世論調査が最初のものだといわれています。ある意味でこのような世論調査は、憲法9条と類似する点があります。それはどちらも占領軍がアメリカでもやっていないことを日本でやろうとしたから。さらにもう一つの類似点は、占領軍が日本の統治のために持ち込んだそれらのものが、占領軍にとって裏目に出たことです。たとえば、朝鮮戦争が始まったときにマッカーサーは憲法9条を作ったことを後悔したと思います。彼はそこで吉田茂に再軍備、したがって憲法の改正を要請したわけです。吉田はそれをすげなく断った。それについて吉田は回想録でこう書いています。まず、日本は再軍備のための資金を持たない。それが第一の理由である。第二に、国民思想の実情から言って、再軍備の背景たるべき心理的基盤が全く失われている。第三に、理由なき戦争に駆り立てられた国民にとって、敗戦の傷跡が幾つも残っておって、その処理の未だ終らざるものが多いと。吉田が妙に「心理的基盤」だとか「敗戦の傷跡」だとかいうのはなぜか。おそらく彼は世論調査の結果を知っていたのではないかと思います。彼はこう考えた。もしここで再軍備をしたらたいへんな反対運動が起こり、内閣が壊れるどころか革命騒ぎになってしまうと。おそらく彼はそれをマッカーサーにいったにちがいない。ただ、吉田茂はマッカーサーの要求に従って警察予備隊を作りました。米軍が朝鮮半島に向かった後の安全保障のためという名目です。とはいえ、吉田はあくまで憲法改正は退けた。警察予備隊が保安隊、自衛隊と発展していった段階でも、それらは「戦力」ではないといい張って、憲法9条の改正の必要を否定したんです。これはある意味で9条の解釈改憲のようなものです。以来、9条の文面を変えないままに、それに相反するような軍備拡大がなされ続けてきたわけです。


[37:17] ここで世論と選挙の関係について一言述べておきます。結論からいうと、選挙は集団的無意識としての世論を表すものにはなりえません。なぜならば争点が曖昧なうえ、投票率も概して低く、投票者の地域や年齢などの割合にも偏りがあるからです。ただ選挙を通して憲法9条を改正しようとする場合、最後に国民投票を行う必要があります。国民投票も何らかの操作や策動は可能だから、世論を十分に反映するものとはいえませんが、争点がはっきりしているので、投票率も高く、無意識が前面に出てきます。ゆえに国民投票では負けてしまいます。選挙で勝っても国民投票で敗北すれば、政権は致命的なダメージを受けます。解釈改憲すら維持できなくなってしまう可能性がある。むろん選挙でも9条改定を唯一の争点としたなら大敗すると思います。だから政府自民党は普段は9条の改定を唱えているにもかかわらず、選挙となるとけっして憲法9条を争点にはしないんです。今後も同じです。


[38:47] なお、世論を知るということでは、ランダムサンプリングによる世論調査の方がもっと的確だと思います。しかし、その場合は質問のし方に注意しないといけないんです。たとえば「憲法9条をどう思うか」というような質問はだめなんですよ、漠然としているから。「憲法9条を廃棄するかどうか」と確定して問わないといけない。とにかく質問を適切にすることが肝心です。なにしろ問うている相手は個々人の意識ごときではなくて、無意識さまなんですから。ついでにいうと、現在やられているような電話によるやり方はランダムサンプリングにならないと思います。電話を持っていない人は除外されてしまいます。とくに最近の若者は携帯しか持ってないからできないんです。これではランダムな抽出にはなりません。だから面接しないといけないんですが、金がかかるのでやらない。要するに私がいいたいのは、憲法9条が無意識の超自我であるということは、心理的な憶測ではなくて、統計学的に裏づけられるものだということです。


[40:20] 最後に一言。現在世界中で戦争の危機が迫っていることはまちがいありません。どの国もこの危機のもとにあり、それぞれに対策を講じています。そしてそれが他国に影響し、相互的に敵対心が増幅される。その中で日本で優勢になってきたのは、米国との軍事同盟(集団的自衛権)を確立するという案です。それは戦争が切迫した現状のもとではリアリスティックな対応であるようにみえます。しかし、逆に各国のリアリスティックな対応のせいで、思いがけないかたちで世界戦争に巻き込まれてしまう蓋然性が高い
のです。第一次大戦はまさにそういうものでした。ヨーロッパの地域的な紛争、オーストリアとセルビアの紛争が、軍事同盟の国際的ネットワークによって日本も参加するような世界戦争に展開していったわけです。日本の場合は日英同盟があったからです。またその第一次大戦の結果として国際連盟が生まれ、戦争を違法とする「不戦条約」が成立しました。日本の憲法9条がその「不戦条約」に負うことは先にも言いましたけど、国際連盟から脱退し、かつ「不戦条約」を踏みにじったのは実はドイツと日本なのです。どちらもそのようなカント的理念を嘲笑して、自国の安全をリアリスティックに確保しようとしたわけです。その結果が第二次大戦です。したがって、防衛のための集団的軍事同盟は何ら平和を保障するものではない。


[42:27] しかし、今もそれがリアリスティックなやり方だと考えられています。そして日本人がそれを実現するためには何としても非現実的な憲法9条を廃棄しなければならないということになります。しかし、彼らはそう望んでもできません。60年以上にわたって憲法9条を廃棄しようとしてきたのに、それを実現できなかったのです。今保守派の中枢部は、なぜ改憲できないのかわからないながら、たぶん改憲をあきらめているのだと思います。もちろんいつも改憲を口にします。しかし、それを実現できるとは考えていない。そのかわりに議会で多数派となって安保法案のような法律を作ることや、また今後に憲法に緊急事態条項を加えるなどで、9条を無力化する方法をとろうと画策しています。これは国会では通っても国民投票では確実に却下されますから、やらないでしょう。要するに安倍政権は、9条があっても戦争ができるような体制を作ろうとしているわけです。


[43:40] ゆえに護憲派は9条がなくなってしまうのではないかということを恐れる必要はまったくありません。問題はむしろ護憲派のあいだに改憲を恐れるあまり9条の条文さえ保持できればよいと考えるふしがあることです。かたちの上でのみ9条を守るだけなら、9条があっても何でもできるような体制になってしまいます。それが今後に起こりうることです。その意味で私は憲法9条の改定を恐れてはいけないといいたい。彼らには正々堂々と憲法9条を変えたらどうかといえばいいんです。ぜひ国民投票をやりましょう。べつに3分の2の議席を取らなくても、一緒にやりましょうといって、全員賛成に回ってもいいんですよ、国民投票にしようと。これは冗談。


[44:44] だから注意すべきことは、彼らが憲法9条を変えることなくさまざまな手口で戦争を行える体制を作ってしまうことです。今後に日本が戦争に巻き込まれることは大いにありえます。あるいはそのような危機をあえて作り出して憲法改正をはかるということもありえるでしょう。しかし、そのあげくにどうなるかといえば、いずれ高すぎる代償を払って憲法9条を再び取り戻すことになるだけです。そんなことは現在からみても明白です。したがって、戦争の危機が身近に迫る時期においてもっともリアリスティックなやり方は、一般に非現実的と目されている憲法9条を掲げ、それを文字通り実行することです。9条を実行することは、おそらく日本人ができる唯一の普遍的かつ強力な行為です。それが今日の演題にあるように「憲法9条の今日的意義」です。


[投稿者コメント]


この文章は、2016年1月23日に東京都北区で行われた市民連合主催のシンポジウム「2016年をどう戦い抜くか」における柄谷行人の基調講演を、投稿者がテキストに起こしたものです。シンポジウムを企画実行した市民連合および参加者、YouTube動画をあげてくれたPlaceUniversityに感謝します。
段落頭に付した数字は動画の再生時間です。聞き取りやタイプなどで間違いがあったらご容赦ください。
なお、『世界 2015年9月号』(岩波書店)には、「反復強迫としての平和」という題でほぼ同趣旨の文章が掲載されています。

http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/300.html

[政治・選挙・NHK200] 柄谷行人「憲法9条の今日的意義」(2016年1月23日講演のテキスト起こし) :雑談板リンク
柄谷行人「憲法9条の今日的意義」(2016年1月23日講演のテキスト起こし)
http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/300.html

http://www.asyura2.com/16/senkyo200/msg/635.html
[テスト31] テスト
(池上彰の新聞ななめ読み)高市氏の電波停止発言 権力は油断も隙もない
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12228246.html
朝日新聞デジタル 2016年2月26日05時00分

 「総務省から停波命令が出ないように気をつけないとね」

 テレビの現場では、こんな自虐的な言い方をする人が出てきました。

 「なんだか上から無言のプレッシャーがかかってくるんですよね」

 こういう言い方をする放送局の人もいます。

 高市早苗総務相の発言は、見事に効力を発揮しているようです。国が放送局に電波停止を命じることができる。まるで中国政府がやるようなことを平然と言ってのける大臣がいる。驚くべきことです。欧米の民主主義国なら、政権がひっくり返ってしまいかねない発言です。

 高市発言が最初に出たのは2月8日の衆議院予算委員会。これをいち早く大きく報じたのは朝日新聞でした。9日付朝刊の1面左肩に3段と、目立つ扱いです。この日の他の新聞朝刊は取り上げなかったり、それほど大きな扱いではなかったりで、朝日の好判断でしょう。この後、各紙も次第に高市発言に注目するようになります。

 朝日は1面で発言を報じた上で、4面の「焦点採録」で、具体的な答弁の内容を記載しています。読んでみましょう。

 〈政治的な問題を扱う放送番組の編集にあたっては、不偏不党の立場から特定の政治的見解に偏ることなく番組全体としてバランスのとれたものであることと解釈してきた。その適合性は、一つの番組ではなく放送事業者の番組全体をみて判断する〉
[投稿者注: 「焦点採録 衆院・予算委員会 8日」 朝日新聞デジタル 2016年2月9日 http://digital.asahi.com/articles/DA3S12200600.html

     *

 「特定の政治的見解に偏ることなく」「バランスのとれたもの」ということを判断するのは、誰か。総務相が判断するのです。総務相は政治家ですから、特定の政治的見解や信念を持っています。その人から見て「偏っている」と判断されたものは、本当に偏ったものなのか。疑義が出ます。

 しかも、電波停止の根拠になるのは放送法第4条。ここには、放送事業者に対して、「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」など4項目を守ることを求めています。

 ところが、その直前の第3条には、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と規定されています。つまり放送法は、権力からの干渉を排し、放送局の自由な活動を保障したものであり、第4条は、その際の努力目標を示したものに過ぎないというのが学界の定説です。

 番組編集の基本方針を定めた第4条を、権力が放送局に対して命令する根拠として使う。まことに権力とは油断も隙もないものです。だからこそ、放送法が作られたのに。

     *

 安倍内閣としては、歴代の総務相も発言してきたことだと説明していますが、その点に関して朝日は10日付朝刊で、2007年の福田政権(自民党政権です)での増田寛也総務相の国会答弁を紹介しています。この中で増田総務相は電波停止命令について、「適用が可能だとは思う。ただ、行政処分は大変重たいので、国民生活に必要な情報の提供が行われなくなったり、表現の自由を制約したりする側面もあることから、極めて大きな社会的影響をもたらす。したがって、そうした点も慎重に判断してしかるべきだと考えている」と述べています。
[投稿者注:「高市総務相の停波発言に波紋 与党にも慎重対応求める声」 朝日新聞デジタル 2016年2月10日05時04分 http://digital.asahi.com/articles/ASJ295DB7J29UTFK00Q.html

 権力の行使は抑制的でなければならない。現行法制の下での妥当な判断でしょう。

 しかし、政権が変わると、こういう方針が守られなくなってしまうということを、今回の高市発言は示しています。

 想像してみてください。今後、政権交代が行われ、反自民の政権が登場し、公正な報道をしようとしている放送局に対し、電波停止をちらつかせることになったら、どうするのか。自民党にとって、極めて憂慮すべき事態だとは思いませんか。そういうことが起きないようにするためにも、権力の行使には歯止めが必要なのです。

 こうした事態は、放送局の監督権限を総務省が持っているから。この際、アメリカの連邦通信委員会(FCC)のような独立した委員会が、国民の代表として監督するような仕組みが必要かも知れません。

 ◆東京本社発行の最終版を基にしています。
http://www.asyura2.com/14/test31/msg/444.html

[テスト31] テスト
池上彰の新聞ななめ読み
(池上彰の新聞ななめ読み)高市氏の電波停止発言 権力は油断も隙もない
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12228246.html
朝日新聞デジタル 2016年2月26日05時00分


 「総務省から停波命令が出ないように気をつけないとね」


 テレビの現場では、こんな自虐的な言い方をする人が出てきました。


 「なんだか上から無言のプレッシャーがかかってくるんですよね」


 こういう言い方をする放送局の人もいます。


 高市早苗総務相の発言は、見事に効力を発揮しているようです。国が放送局に電波停止を命じることができる。まるで中国政府がやるようなことを平然と言ってのける大臣がいる。驚くべきことです。欧米の民主主義国なら、政権がひっくり返ってしまいかねない発言です。


 高市発言が最初に出たのは2月8日の衆議院予算委員会。これをいち早く大きく報じたのは朝日新聞でした。9日付朝刊の1面左肩に3段と、目立つ扱いです。この日の他の新聞朝刊は取り上げなかったり、それほど大きな扱いではなかったりで、朝日の好判断でしょう。この後、各紙も次第に高市発言に注目するようになります。


 朝日は1面で発言を報じた上で、4面の「焦点採録」で、具体的な答弁の内容を記載しています。読んでみましょう。


 〈政治的な問題を扱う放送番組の編集にあたっては、不偏不党の立場から特定の政治的見解に偏ることなく番組全体としてバランスのとれたものであることと解釈してきた。その適合性は、一つの番組ではなく放送事業者の番組全体をみて判断する〉

「焦点採録 衆院・予算委員会 8日」(朝日新聞デジタル 2016年2月9日)―投稿者注]


     *


 「特定の政治的見解に偏ることなく」「バランスのとれたもの」ということを判断するのは、誰か。総務相が判断するのです。総務相は政治家ですから、特定の政治的見解や信念を持っています。その人から見て「偏っている」と判断されたものは、本当に偏ったものなのか。疑義が出ます。


 しかも、電波停止の根拠になるのは放送法第4条。ここには、放送事業者に対して、「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」など4項目を守ることを求めています。


 ところが、その直前の第3条には、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と規定されています。つまり放送法は、権力からの干渉を排し、放送局の自由な活動を保障したものであり、第4条は、その際の努力目標を示したものに過ぎないというのが学界の定説です。


 番組編集の基本方針を定めた第4条を、権力が放送局に対して命令する根拠として使う。まことに権力とは油断も隙もないものです。だからこそ、放送法が作られたのに。


     *


 安倍内閣としては、歴代の総務相も発言してきたことだと説明していますが、その点に関して朝日は10日付朝刊で、2007年の福田政権(自民党政権です)での増田寛也総務相の国会答弁を紹介しています。この中で増田総務相は電波停止命令について、「適用が可能だとは思う。ただ、行政処分は大変重たいので、国民生活に必要な情報の提供が行われなくなったり、表現の自由を制約したりする側面もあることから、極めて大きな社会的影響をもたらす。したがって、そうした点も慎重に判断してしかるべきだと考えている」と述べています。

「高市総務相の停波発言に波紋 与党にも慎重対応求める声」(朝日新聞デジタル 2016年2月10日)―投稿者注]


 権力の行使は抑制的でなければならない。現行法制の下での妥当な判断でしょう。


 しかし、政権が変わると、こういう方針が守られなくなってしまうということを、今回の高市発言は示しています。


 想像してみてください。今後、政権交代が行われ、反自民の政権が登場し、公正な報道をしようとしている放送局に対し、電波停止をちらつかせることになったら、どうするのか。自民党にとって、極めて憂慮すべき事態だとは思いませんか。そういうことが起きないようにするためにも、権力の行使には歯止めが必要なのです。


 こうした事態は、放送局の監督権限を総務省が持っているから。この際、アメリカの連邦通信委員会(FCC)のような独立した委員会が、国民の代表として監督するような仕組みが必要かも知れません。


 ◆東京本社発行の最終版を基にしています。

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/445.html

[政治・選挙・NHK201] (池上彰の新聞ななめ読み)高市氏の電波停止発言 権力は油断も隙もない(朝日新聞デジタル)
池上彰の新聞ななめ読み
(池上彰の新聞ななめ読み)高市氏の電波停止発言 権力は油断も隙もない
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12228246.html
朝日新聞デジタル 2016年2月26日05時00分


 「総務省から停波命令が出ないように気をつけないとね」


 テレビの現場では、こんな自虐的な言い方をする人が出てきました。


 「なんだか上から無言のプレッシャーがかかってくるんですよね」


 こういう言い方をする放送局の人もいます。


 高市早苗総務相の発言は、見事に効力を発揮しているようです。国が放送局に電波停止を命じることができる。まるで中国政府がやるようなことを平然と言ってのける大臣がいる。驚くべきことです。欧米の民主主義国なら、政権がひっくり返ってしまいかねない発言です。


 高市発言が最初に出たのは2月8日の衆議院予算委員会。これをいち早く大きく報じたのは朝日新聞でした。9日付朝刊の1面左肩に3段と、目立つ扱いです。この日の他の新聞朝刊は取り上げなかったり、それほど大きな扱いではなかったりで、朝日の好判断でしょう。この後、各紙も次第に高市発言に注目するようになります。


 朝日は1面で発言を報じた上で、4面の「焦点採録」で、具体的な答弁の内容を記載しています。読んでみましょう。


 〈政治的な問題を扱う放送番組の編集にあたっては、不偏不党の立場から特定の政治的見解に偏ることなく番組全体としてバランスのとれたものであることと解釈してきた。その適合性は、一つの番組ではなく放送事業者の番組全体をみて判断する〉

「焦点採録 衆院・予算委員会 8日」 朝日新聞デジタル 2016年2月9日 ―投稿者注]


     *


 「特定の政治的見解に偏ることなく」「バランスのとれたもの」ということを判断するのは、誰か。総務相が判断するのです。総務相は政治家ですから、特定の政治的見解や信念を持っています。その人から見て「偏っている」と判断されたものは、本当に偏ったものなのか。疑義が出ます。


 しかも、電波停止の根拠になるのは放送法第4条。ここには、放送事業者に対して、「政治的に公平であること」「報道は事実をまげないですること」など4項目を守ることを求めています。


 ところが、その直前の第3条には、「放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と規定されています。つまり放送法は、権力からの干渉を排し、放送局の自由な活動を保障したものであり、第4条は、その際の努力目標を示したものに過ぎないというのが学界の定説です。


 番組編集の基本方針を定めた第4条を、権力が放送局に対して命令する根拠として使う。まことに権力とは油断も隙もないものです。だからこそ、放送法が作られたのに。


     *


 安倍内閣としては、歴代の総務相も発言してきたことだと説明していますが、その点に関して朝日は10日付朝刊で、2007年の福田政権(自民党政権です)での増田寛也総務相の国会答弁を紹介しています。この中で増田総務相は電波停止命令について、「適用が可能だとは思う。ただ、行政処分は大変重たいので、国民生活に必要な情報の提供が行われなくなったり、表現の自由を制約したりする側面もあることから、極めて大きな社会的影響をもたらす。したがって、そうした点も慎重に判断してしかるべきだと考えている」と述べています。

「高市総務相の停波発言に波紋 与党にも慎重対応求める声」 朝日新聞デジタル 2016年2月10日 ―投稿者注]


 権力の行使は抑制的でなければならない。現行法制の下での妥当な判断でしょう。


 しかし、政権が変わると、こういう方針が守られなくなってしまうということを、今回の高市発言は示しています。


 想像してみてください。今後、政権交代が行われ、反自民の政権が登場し、公正な報道をしようとしている放送局に対し、電波停止をちらつかせることになったら、どうするのか。自民党にとって、極めて憂慮すべき事態だとは思いませんか。そういうことが起きないようにするためにも、権力の行使には歯止めが必要なのです。


 こうした事態は、放送局の監督権限を総務省が持っているから。この際、アメリカの連邦通信委員会(FCC)のような独立した委員会が、国民の代表として監督するような仕組みが必要かも知れません。


 ◆東京本社発行の最終版を基にしています。

http://www.asyura2.com/16/senkyo201/msg/877.html

[政治・選挙・NHK201] (池上彰の新聞ななめ読み)高市氏の電波停止発言 権力は油断も隙もない(朝日新聞デジタル) 烏滸の者
2. 烏滸の者[1] iUef9YLMjtI 2016年2月27日 11:56:06 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[57]
>続きは元サイトの無料登録で。管理人が会員限定記事を勝手に削除処理しました

これは申し訳ありませんでした。
今後会員限定部分の含まれる記事を引用するときには気をつけます。
お手数おかけしました。

投稿者
http://www.asyura2.com/16/senkyo201/msg/877.html#c2

[お知らせ・管理21] 2016年2月 削除依頼・削除報告・投稿制限連絡場所。突然投稿できなくなった方は見てください。2重投稿削除依頼もこちら 管理人さん
143. 烏滸の者[2] iUef9YLMjtI 2016年2月27日 12:16:54 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[58]
>>141
規定を理解しました。
今後は投稿記事に会員限定部分のコピペをしないように気をつけます。
すみませんでした。

なお、その引用の規定についてはお知らせ板内での管理人さんコメントで明示されているものと推察しますが、★阿修羅♪掲示板の道案内から開ける「阿修羅掲示板の投稿規定 2011.09.12版」では明文化されていませんでした。投稿規定のアップデートも要望いたします。
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/433.html#c143

[お知らせ・管理21] 2016年2月 削除依頼・削除報告・投稿制限連絡場所。突然投稿できなくなった方は見てください。2重投稿削除依頼もこちら 管理人さん
145. 烏滸の者[3] iUef9YLMjtI 2016年2月27日 16:01:25 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[59]
>>144
>烏滸の者さんの投稿可能数を元に戻しておきました。

ありがとうございます。

>投稿規定に明記してないことを確認しました。
>あまりに当たり前のことなので、今のところはこのままにしておきます。

ログインしなくても読める新聞記事のコピペならよいが、無料会員登録をしてログインしなければ読めない部分のコピペはいけないというのは、はたして「当たり前のこと」でしょうか。新聞記事の著作権をふりかざす立場からすれば、どちらもいけないのではありませんか。

著作権について (朝日新聞デジタル)
http://www.asahi.com/policy/copyright.html
ネットワーク上の著作権について (日本新聞協会)
http://www.pressnet.or.jp/statement/copyright/971106_86.html

数年前のことですが、個人ブログの有料記事(一定期間無料公開されていた)がコピペされていたので、私も当該投稿記事のコメントで数回たしなめたことがあります。お知らせ板でもコピペ記事と著作権の問題についての議論を目にしました。結局、阿修羅掲示板でコピペを許容する基準(およびその根拠)は、あまり明確に示されたことがないのではありませんか。これが難しい問題であるのはまちがいないので、投稿規定を「今のところはこのまま」にしておくというのも悪くないご判断だろうと思います。
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/433.html#c145

[政治・選挙・NHK201] (池上彰の新聞ななめ読み)高市氏の電波停止発言 権力は油断も隙もない(朝日新聞デジタル) 烏滸の者
3. 烏滸の者[4] iUef9YLMjtI 2016年2月28日 10:07:04 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[60]
投稿者補足:

この池上彰の記事は、「世相を斬る あいば達也」ブログで全文引用して紹介されている。「世相を斬る」の元サイトで読んだ方が引用部分がわかりやすいが、阿修羅掲示板でも読むことができる。「世相を斬る」にしろ「朝日新聞デジタル」にしろ、元記事が読めなくなった時に阿修羅掲示板でその引用記事が読めるというのが、コピペ投稿記事なけなしの存在意義の1つではないだろうか。

●日本メディアは政府とベッドイン 高市の電波停止とキャスター追放
http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/e/16005cd920a7acd64380fc627ca6440b
世相を斬る あいば達也 2016年02月28日

日本メディアは政府とベッドイン 高市の電波停止とキャスター追放(世相を斬る あいば達也)
http://www.asyura2.com/16/senkyo202/msg/103.html
投稿者 笑坊 2016年2月28日07:04:32
http://www.asyura2.com/16/senkyo201/msg/877.html#c3

[お知らせ・管理21] 2016年2月 削除依頼・削除報告・投稿制限連絡場所。突然投稿できなくなった方は見てください。2重投稿削除依頼もこちら 管理人さん
149. 烏滸の者[5] iUef9YLMjtI 2016年2月29日 18:02:36 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[62]
>>147

ご考慮いただき感謝します。

ところで、>>146の投稿記事では、投稿者が引用記事について論じています。コピペだけの投稿とひとしなみにこうした投稿にも「会員限定」部分の引用不可を適用すべきなのかどうかは、検討の余地があるだろうと思います。「会員限定」部分が引用できないとなれば、読者は元記事に即して投稿者の論を検討することができなくなります。それでもたとえば>>148で触れられているような、投稿者の論と引用記事の分量のバランスの問題はあるのでしょうね。
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/433.html#c149

[経世済民106] スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合(日本経済新聞)
スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H26_W6A310C1000000/
2016/3/16 9:51 (2016/3/16 11:58更新) 日本経済新聞 

 政府は16日午前、世界経済について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」を初めて開いた。講師として招いたノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は、世界経済は難局にあり「2016年はより弱くなるだろう」との見解を示した。「現在のタイミングでは消費税を引き上げる時期ではない」とも述べ、来年4月の消費税率10%への引き上げを見送るよう提言した。

 菅義偉官房長官は16日午前の記者会見で「スティグリッツ氏から税制について、総需要を喚起するものではないとの観点から、消費税引き上げはいまのタイミングではないとの趣旨の発言があった」と説明した。

 分析会合の終了後、安倍晋三首相とスティグリッツ氏のほか、首相の経済政策のブレーンを務める浜田宏一、本田悦朗両内閣官房参与を交え意見交換した。スティグリッツ氏は首相官邸で記者団に「首相は(消費増税先送りを)恐らく、確実に検討するだろう」と述べた。

 首相は分析会合の冒頭で「伊勢志摩サミットの議長の責任を果たすため、世界の経済・金融情勢について率直な意見交換をしたい。アベノミクスに関しても、どしどし意見を頂きたい」とあいさつした。

 スティグリッツ氏は分析会合で「世界経済は低迷している」との認識を表明。「日銀の金融政策だけでは限界がある。次に財政政策をとることが重要だ」と強調し、政府に財政出動を促した。

 分析会合の座長には石原伸晃経済財政・再生相が就いた。林幹雄経済産業相や加藤勝信一億総活躍相、菅氏や日銀の黒田東彦総裁が出席。本田、浜田両氏も陪席した。

 分析会合は17日に米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授と元日銀副総裁で日本経済研究センターの岩田一政理事長を招く。22日にはノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏を呼ぶ。

 首相はこれまでの国会答弁で増税の是非について「世界経済の収縮が起こっているか、専門的見地から分析し判断していかねばならない」と発言している。首相周辺は「有識者が経済収縮のリスクを指摘するなら増税見送りの判断はありうる」と語る。

 サミットまで継続的に開く予定で、5月の大型連休に安倍首相が欧州を歴訪する際にも外遊先で現地の経済学者らを招いた分析会合を開く方向で調整している。
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/603.html

[政治・選挙・NHK202] 経済分析会合:「増税延期」浮足立つ与野党 同日選に警戒(毎日新聞)
経済分析会合:「増税延期」浮足立つ与野党 同日選に警戒
http://mainichi.jp/articles/20160317/k00/00m/010/133000c
2016年3月16日 21時58分(最終更新 3月16日 22時41分) 毎日新聞


 政府の「国際金融経済分析会合」初日の16日に、講師のスティグリッツ米コロンビア大教授が消費増税延期を提言したことで、与野党は浮足立った。安倍晋三首相が来年4月の消費税率10%への引き上げ見送りに傾くのではないかとの観測が広がったからだ。自民党内には、増税再延期で解散し、衆参同日選−−との見方が強まり、早くも選挙準備に入る動きも出始めた。

 「もう決まりだろ」。自民党幹部の一人は、つぶやいた。首相は会合後、スティグリッツ氏や消費増税延期を主張する本田悦朗、浜田宏一両内閣官房参与と約45分間、懇談もしている。「密室で説得されれば(消費増税先送りで)首相の気持ちも固まるだろう」

 消費増税延期と衆院解散を絡める見方は、2014年に例があるからだ。しかも、スティグリッツ氏は各国の積極的な需要創出を呼びかけ、景気対策や消費増税延期に「大義名分」を与えた格好だ。与党内では、夏の参院選に向け要望が高まる景気対策を打ち出し、消費増税先送りを名目に解散して衆参同日選に持ち込むとのシナリオがささやかれ始めた。

 改選の参院議員は「衆院議員の方が地元での活動が活発で、相乗効果がある」と期待。中堅の衆院議員は「選挙ポスターはもう決めた」と明かし、一気に選挙モードになっている。ただ、同日選挙に慎重な公明党の石田祝稔政調会長は16日の記者会見で「(分析会合と)衆院解散を結びつけるのは飛躍しすぎではないか」とけん制した。

 一方、民主党の枝野幸男幹事長は16日の記者会見で「(14年の延期時には)『次は絶対に(税率を)上げられる環境をつくる』と言ったのは首相だ。できないなら経済運営が大失敗だったと認めることだ」と批判した。

 ただ、野党側も「同日選シフト」を強めている。民主は、16日の会合の狙いを見透かすかのように、幹部が参院選の重点選挙区だけでなく、衆院小選挙区にも入り始めている。共産党は同日、参院選ポスターを発表した。従来よりも2倍近い50万枚を刷るという。山下芳生書記局長は会見で「衆院選でもこのポスターで訴える」と述べ、同日選モードに入ったことをうかがわせた。【横田愛、影山哲也】
http://www.asyura2.com/16/senkyo202/msg/865.html

[政治・選挙・NHK202] スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合(日本経済新聞):経済板リンク
スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合(日本経済新聞)
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/603.html
投稿者 烏滸の者 日時 2016 年 3 月 16 日 22:44:33
http://www.asyura2.com/16/senkyo202/msg/866.html
[政治・選挙・NHK203] ≪速報&朗報!≫参院新潟選挙区は生活の党森ゆうこ氏に一本化!民主党は候補取り下げへ 赤かぶ
7. 烏滸の者[6] iUef9YLMjtI 2016年3月18日 12:38:43 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[83]
Yippeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!
体を動かして応援させてもらいます。
民主党を少し見直しました。
共産党および米山隆一さんとの合意についてもよい報告を待っています。
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/119.html#c7
[政治・選挙・NHK203] 「国民の利益にならず」 環境破壊 懸念も TPPでスティグリッツ教授 民主が懇談会 (日本農業新聞)
「国民の利益にならず」 環境破壊 懸念も TPPでスティグリッツ教授 民主が懇談会
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36655
2016/3/18 日本農業新聞 e農ネット


 民主党は17日、東京都内で、ノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授との懇談会を開いた。教授は、TPPについて「国民の利益にはならず、企業を利するだけ」「不公正を拡大し、環境を壊す」などと強い懸念を示した。

 懇談会には、野党議員や有識者でつくる「TPP阻止国民会議」のメンバーも参加した。

 出席者によると、スティグリッツ氏は、TPPは民主的な過程を経ていないと問題視。特に、医療分野に関し「大きな製薬会社だけがもうかる仕組みになっており、国民の健康が損なわれる」との見方を示した。

 さらに、投資家と国との紛争解決手続きを定めた投資家・国家訴訟(ISD)条項に強い懸念を表明。外国企業が進出先の政府を訴えることが頻発し、その国の環境保護規制が後退する恐れがあると訴えた。

 政府は、TPP承認案と関連法案を今国会に提出し、成立を急ぐ。出席した民主党議員の一人は「あらためてTPPの問題が多いことが分かった。何としても食い止めなければいけない」と息巻く。


[日本農業新聞 e農ネット 関連記事より]

TPPは悪い協定 米議会で批准されぬ ノーベル経済学賞・スティグリッツ教授 (2016/3/17)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=36639
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/138.html

[政治・選挙・NHK203] スティグリッツ氏講演「完全雇用、インクルージョン、差別をなくす」政策を (民主党)
スティグリッツ氏講演「完全雇用、インクルージョン、差別をなくす」政策を
https://www.dpj.or.jp/article/108628/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%84%E6%B0%8F%E8%AC%9B%E6%BC%94%E3%80%8C%E5%AE%8C%E5%85%A8%E9%9B%87%E7%94%A8%E3%80%81%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%80%81%E5%B7%AE%E5%88%A5%E3%82%92%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%99%E3%80%8D%E6%94%BF%E7%AD%96%E3%82%92
2016年03月17日 民主党


 党共生社会創造本部は17日朝、ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授を招き、東京都内で講演会を開いた。スティグリッツ教授は2014年に亡くなった経済学者の故宇沢弘文氏のシカゴ大学での教え子で、今回の訪日は宇沢氏の追悼講演を行うのが目的。宇沢氏が、かつて民主党が設立したシンクタンクの理事長を務めた経緯から、今回の講演会が実現した。

 講演に先立ち、長妻昭代表代行が党共生社会創造本部の取り組みを紹介し、「『わが意を得たり』と思ったのは、スティグリッツ教授の説明資料の中に、『格差と戦う』とか『人間への投資の拡大』ということが書かれてあり、まさに私どもが考えている話と合致している。今日のお話から、格差の壁をどう取り除き、支え合う力をどう育み、日本が持続的な成長をするにはどうしたらいいのか、ご示唆をいただきたい」とあいさつした。

 スティグリッツ教授は、自身と宇沢氏とのつながりを紹介し、宇沢氏の経済理論は、(1)貧しい人たちのために経済がどう機能すべきかという社会正義 (2)世代の中の公正さ (3)平和への確信――に価値を置いたもので、スティグリッツ教授自身もこうした考え方を受け継いでいると説明。その上で「GDPの最大化は経済の目的ではなく、平等性が重要」などと述べた。

 スティグリッツ教授は米国の現状について、「今ほど分裂していたことはない」として格差の拡大を指摘。たとえば、米国の失業率は5%程度とされているが実質的な失業率はもっと高く、賃金の伸びも停滞しているとした。その上で日本と米国は同じような課題を抱えていることをと指摘し、必要なことは「正しい消費を伸ばすための財政政策」であり、「完全雇用、インクルージョン(包摂)、差別をなくすこと」を実現することだと主張した。その具体策としては、炭素税や相続税などの税制、子育て支援や家庭支援、労働時間を短縮して労働を分かち合うこと、男女間の賃金格差を是正することなどが想定されるとした。

 また、TPPについては、今回合意した協定内容は、米国内の一部の大手企業の利益のためのものとなっており、地球温暖化や社会正義などへの観点がなく、「21世紀の近代社会にふさわしい協定になっていない」などと批判した。

 講演の後、岡田代表が「日本のGDPの2倍という過大な債務がある中、財政出動と財政健全化をどうバランスさせるべきか」と質問。スティグリッツ教授は、債務を増やさずに景気を刺激する方法としては税制の役割が大きいとの認識を示しつつ、消費増税については「状況をさらに悪化させる」などとして否定的な見方を示した。

 司会は藤田幸久国際局長が務めた。


民主党広報委員会
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/139.html

[テスト31] テスト
スティグリッツ教授提出資料(事務局による日本語訳) 
第1回国際金融経済分析会合配付資料 資料2(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai1/gijisidai.html

「資料2」

仮訳

大低迷と金融の安定を超え、
健全で持続的な成長に向けて


ジョセフ・E・スティグリッツ
東京
2016年3月

[p.2]

I.我々は今どこにいるか

・緩慢な成長―大低迷(Great Malaise)、新たな凡庸(New Mediocre)
 ・今のところまだ危機ではない。

 ・しかし、G7の多くの国々では(覆い隠されたケースも含め)恒常的に多くの失業が発生している。
  若年層や社会の主流から取り残された層では更に高率の失業が発生。

 ・この緩慢な成長の果実は一部のトップ層に偏って分配されている―格差は拡大し、賃金の上昇は停滞。
  ・「公式には」失業率が低いとされている国でさえ、雇用の質や覆い隠された失業には疑問符。

 ・世界経済危機前にも関わらず、2007年の世界経済は実際には弱かった。
   ・バブルによって支えられていただけだった。
   ・経済危機前の2007年の世界を取り戻すということは、かつて我々が保持していたものと同じ、
    弱い経済に戻ってしまうことを意味する。

・入り交じる見通し―堅調な成長に戻る可能性は小さく、景気後退や停滞の可能性は高い。
 ・資産価格バブルの収縮への、もっともな懸念。
 ・国家や企業が多額の債務を抱える中、新興国は巨額の資本流出に直面。

[p.3]

伸び悩む米国経済

・仮に1980年から1998年までの経済成長が継続していたとしたら、今の米国のGDPは、現実のGDPよりも15%
 ほど高いものとなっていたはずである。

・女性の労働参加が急速に進んだ1980年代初頭と比較しても、現在の生産年齢人口の就業率は低い。

・中位の(家計)所得は、1989年と比較して1%の上昇すら達成していない。

・最下層の実質賃金は60年前よりも低い。

・若年層のアフリカ系アメリカ人の失業率は未だに23.7%。

[p.4]

[グラフ]米国GDPのトレンド分析 [省略]

[p.5]

欧州はもっと悪い

・失業率は更に高い。

・特に若年層の失業が深刻。

・経済成長も更に低い水準。

・ユーロ危機は終わっていない。一時的な「小康状態(remission)」にあるだけ。
 ・統一通貨が機能するために必要な制度が創設されていない。
  そして、その制度が創設される見込みも当面ない。

・欧州の現状と、仮に欧州が経済成長していたとしたら実現していただろう姿との間にはギャップが存在。

[p.6]

危機以来、欧州のパフォーマンスは悲惨なもの

[グラフ]ユーロ圏のGDPのトレンド分析 [省略]



[p.7]

中国

・世界金融危機以来、中国が世界経済の牽引役だった。
 ・先進国は直接的、間接的に影響を受ける。

・深刻な経済減速となる見込み。

・欧州と米国では、中国経済の減速を埋め合わせることはできそうもない。

[p.8]

大不況(the Great Recession)に関する誤った診断

ただの金融危機ではない。

・銀行のバランスシートは概ね再構築された。

・規制改革もいくらか行われた(ドッド・フランク法)。

・しかし、経済は未だに健全な状態に戻っていない。
 ・クレジット・チャネルの改善に十分な注意が払われていない。
 ・このことは、金融緩和が期待されたほどの効果を得られていない理由の一つ。

[p.9]

大不況(the Great Recession)に関する誤った診断

ただのバランスシート不況ではない。

・大企業のバランスシートは概ね再構築された。

・企業が投資に積極的にならないのは、バランスシートや資金調達の問題ではない。
 ・需要が足りないことが問題なのだ。

[p.10]

更なる懸念

・永続的な世界の不均衡
 ・ユーロ圏が問題を悪化させている。

・非対称な調整
 ・所得の低下に直面する国家(企業、家計)は消費を減少させざるを得ない。
 ・所得が増加した国家(企業、家計)はその分の支出を増加させていない。
 ・原油価格の変動への対応では以下の点が特徴。
   ・原油価格の下落は需要を増加させると期待されていたが、「敗者」(losers)への悪影響が
    それらの便益を上回っている。


[p.11]

・中心的課題の診断

・世界的な総需要の不足。

・それと相まって、各国において、非貿易セクターへの支援は不十分。

・債務・金融化への過度の依存。

・さらに広くみれば、約30年前に市場経済のルールの転換(税制の再設計、ずさんな自由化)のプロセスが
 多くの先進国で始まった。これらは、当初の目論見に反して、更なる経済成長率の低下、不安定化、
 不平等化を招いた。

[p.12]

大低迷(Great malaise)は、驚くほどに進展を見せない、より深刻な問題を覆い隠している

・気候変動

・格差、多数の貧困層
 ・富の不平等、健康の不平等(医療を民間の提供に依存する国においては)、裁判へのアクセスの不平等、
  と多岐に渡る。
 ・先進国では中間層が縮小。途上国においても中間層が縮小。
 ・これらの問題は、社会の主流から取り残された層や(しばしば)若年層では特に深刻。

・持続的成長を実現するためには、徹底的な「構造変革」(structural transformations)が求められる。

・市場経済に根付く問題が、生産性の停滞をもたらしている。
 ・民間部門・公的部門の両部門における短期的志向。
 ・基礎研究への投資の不足。そして、多くの国ではインフラへの投資の不足。
 ・過度の金融化。過度の金融化は以下の過程の一部でもあり、原因の一部でもある。
   ・富と資本の間のギャップの広がり。
   ・多くの国で産出に対する富の割合が高まる一方、産出に対する資本の比率が低下。
 ・教育システムの適合の失敗。

[p.13]

II.これらの状況への対応

当然の手段に関する対立する見解:金融政策

・金融政策は、概ねその役割を全うした。

・深刻な停滞時において、金融政策が極めて有効だったことはこれまでにない。
 唯一の効果的な手段は財政政策。

・本当の問題は、ゼロ金利制約ではない。金利を少し下げること(例えマイナスの領域に入ったとしても)
 は機能しない。
・マイナス金利の試みは、景気を大きくは刺激せず、悪い副作用をもたらす可能性も。

・量的緩和政策は不平等を拡大した。しかし、(もしあったとしても)投資の大幅な増加にはつながらず、
 金融市場の不完全性あるいは不合理性により、リスクのミスプライシングやその他の金融市場の歪みを
 もたらした可能性。
 ・主な便益の一つは、競争的な通貨の切り下げである。しかし、それは、ゼロ・サム・ゲーム。
 ・適切な財政政策なしでは、「唯一の選択肢」問題は更に悪化する一途。

[p.14]

当然の手段に関する対立する見解:財政政策

・財政政策が債務増大のリスクを高める懸念。
 ・2008〜2009年に実施した景気刺激策は効果がなかったという見方は全くの間違い。
 ・対策がなければ更に悪化していたであろう失業率の低下をもたらすことができ、更なる景気後退、不況
  に陥るのを防いだ。
 ・危機時においては、支出を最適化する時間はなかった。―たとえ、不完全な歳出であっても、大量の
  資源を活用せずにいることや不況に比べれば望ましい。
 ・債務への懸念は、バランスシート・アプローチへの問題のすり替え。そこでは、政府は生産的な投資に
  対して支出することが前提とされている。

・グローバリゼーションにより政策効果は損なわれている。―便益は他国に流出し、費用は自国に発生。
 ・しかし、「優位」な解決策を提示するには、世界の協調関係は弱すぎる。

[p.15]

繁栄を取り戻すためには機能しないもの、不十分なもの

1.金融政策
  ・根本的な問題は、ゼロ金利制約ではない。
  ・低金利は資本集約型テクノロジーを生み出し、「雇用なき」経済回復につながる可能性。

2.貿易協定
  ・関税は既にかなりの低水準。
  ・G7諸国による、資本集約財を輸出する一方で労働集約財を輸入するという「バランスの取れた」
   貿易取引の増加は、雇用を減少させる。

3.見当違いの供給サイドの施策
  ・法人所得課税。

4.更なる緊縮財政

これらの対策のなかには、逆効果となるものも存在。

[p.16]

対処法: 緊急の問題―世界の総需要を取り戻す

1.(パリ協定を受け)炭素に高価格を設定することは、気候変動に対応する世界経済への改革に向けた
  投資を促す。

2.経常黒字の一部の再活用(例えば開発銀行の資本再構成、新たな開発銀行の創設)は、インフラを
  含めた投資の必要性を満たすもの。
  ・民間部門は、仲介機能において非効率であることを自ら示している。
  ・長期的な投資家と長期的な投資をつなぐものが、短期取引中心の金融市場である。

[p.17]

効果的な施策

3.政府支出の増加。部分的に税で賄われたものでも経済を刺激する。
  ・均衡予算乗数に関する原則:適切に設計された税と支出によって、乗数は極めて高いものとなる。
  ・国のバランスシートにおいては、負債のみではなく、資産・負債両面を見ることが適切な会計
   フレームワーク。
    ・教育、若者の健康への支出は投資であり、バランスシートの資産サイドを改善。
    ・インフラとテクノロジーへの投資も同様。
  ・環境税や土地税は、持続可能な成長を実現する経済再構築に役立つ。
  ・構造変革を推進し、平等性を高める政府支出も同様。

4.平等性を高めるその他の施策は世界の総需要を増加させる。
  ・経済ルールの大転換:市場で得る所得をもっと平等に。
  ・所得移転と税制の改善。
  ・賃金上昇と労働者保護を高める施策。
    ・いくつかの国では、組合や交渉を取り巻く法的枠組みを改善。

5.グローバルな基軸通貨制度を構築することで、需要を縮小させる外貨準備の積み立ての必要性を減らす
  ことができる。

[p.18]

世界的な総需要の先に

・特に世界的にサービス経済への移行が進む中、非貿易セクターはますます重要に。

・国内需要の低迷は供給を減らす。

・国内需要は民間消費より大きい。
 ・環境や人間、(知識ギャップを埋める)テクノロジー、インフラ、住みよい街にするための投資も
  含まれる。

・これらの国内需要の大半は公的ファイナンスで調達されるべきもの。
 ・健康や教育はその中でも重要なサービス部門。

[p.19]

A.緊縮財政をやめる

・米国ですら、緩やかな形で緊縮になっている。
 ・通常の景気拡大局面では200万人の公的セクターの雇用が生まれるが、現在は逆に50万人減少している。

・景気拡張的な財政緊縮や、債務が一定の閾値を超えると経済成長が低下する、といった考えの正しさは
 否定されている。

・もしそれらの考えが正しかったとしても、今のGDPと将来のGDP、いずれも増加させるように税収と投資を
 歩調を合わせて増加させていくということが均衡予算乗数の教え。

[p.20]

バランスの取れたアプローチが必要―債務 対 税

・債務や税収の水準、成長率の見通しにより、各国ごとに最適な債務と税のバランスは異なる。
 ・常にバランスシート視点を持つことが求められる。

・すべての国において、炭素税を含めた環境税(渋滞課金を含む「課金」)の引き上げで、相当な歳入が
 得られ、経済のパフォーマンスも改善するだろう。

・金融取引税についても同様 。

・ほとんどすべての国において、土地や(「弾力的に供給を増加させることができない」)他の天然資源に
 対する税を引き上げることで、相当な歳入を増やし、成長率を上昇させるだろう(貯蓄の非生産的な用途
 への流入を減らすことができる)。

(次ページに続く)

[p.21]

バランスの取れたアプローチが必要―債務 対 税(続き)

・法人税減税は投資拡大には寄与しない。なぜなら、大抵の投資は借入が原資であり、支払利子は所得控除
 となるからだ(減税はネットの資本コストを上昇させ、投資意欲を減退させる!)
 ・むしろ、国内での投資や雇用創出に積極的でない企業に対して、法人税を引き上げる方が、投資拡大を
  促す。

・(炭素税・相続税など)いくつかの税金は、実際に現時点での支出を促す効果がある。

・均衡予算乗数は、増税と歩調を合わせた支出拡大が経済を刺激することを示唆している。

適切に設計された税制は、格差・不安定・環境悪化といった主要な問題に取り組む手段となる。

[p.22]

緊縮策を超えて

予算ルール・フレームワークの再考

・資本予算(Capital Budgeting)
 ・資金調達コストが低く、投資リターンが高い時には、バランスシートの観点が特に重要である。

・投資促進のための開発銀行(development banks)の活用
 ・税と支出が適切に選択されれば、乗数の効果は極めて高い。

[p.23]

B.効果的に支出する:重要な長期の問題に焦点を当てる―生産性の観点の欠落

テクノロジーやインフラに対する投資は、民間投資を補完する効果を有するものであるが、最適な水準と
比べると低く留まっている。
・基礎研究に対する政府支援額(対GDP比)は、半世紀前よりも低くなっている。
・生産性向上につながる新たなイノベーションを推進するアイデアの源が干上がっている。

必要なことは、インフラとテクノロジーへのより積極的な投資である。
・インフラ・テクノロジーへの公共投資は民間投資と補完的であり、民間投資を刺激する事につながる。
・投資はインフラ銀行(infrastructure bank)からファイナンスすることができる。

[p.24]

C.効果的に支出する:重要な長期の問題に焦点を当てる―構造変革(Structural Transformation)

・世界的に、製造業の雇用が減少している。

・グローバリゼーションとともに、先進国では雇用に占める製造業のシェアが低下していく。

・サービス産業にシフトする必要がある。
 ・いくつかの国では、サービス産業の生産性が向上している。

・そのような大規模な構造変革(structural transformation)が求められているが、市場はそれ自体では
 必要とされている構造変革を達成することが上手くできない。
 ・かつて行われた農業から製造業への移行がそれを証明している。

・サービス産業の中では、教育・健康に改善の余地がある。
 ・これらの部門では、政府が正当に重要な役割を担うものである。
 ・ただし、緊縮財政は、政府がその役割を果たすことを抑制してしまう。

[p.25]

構造変革(Structural Transformation)に伴って発生する課題

・その新しい経済構造は、かつてほど資本集約的(capital-intensive)ではなくなるだろう。
 ・従って、想定されるGDP成長率を達成するために必要となる投資は、より小さなものだろう。

・特に熟年労働者は、新しい経済構造に対して準備不足であろう。
 ・ベビーブーム世代の高齢化と合わせて、労働者のかなりの部分が高齢化している。
 ・その世代の再活躍を促さないことによる社会的なコスト―つまり、その世代の人的資本の陳腐化を単に
  受け入れること―は増大している。

・今存在する取り決めが、高齢者と若者に関わる問題を生み出している。
 ・国債を通じて手堅く運用している高齢者がわずかな所得しか得られないということを、ゼロ金利の環境
  は意味する。
 ・若者は家を買う余裕は無く、職を得るまで長期間待つ必要が多々あり、職を得ても自らのスキル・才能
  を生かせず、そして多くの国では若者は多大な債務を背負い込まされている。

[p.26]

構造変革(Structural Transformation) 促進に向けた政策

・農業から製造業への移行において、多くの国で政府が中心的な役割を果たした。

・より積極的な労働市場政策を含め、政府は再び積極的な役割を担うことが求められている。

・しかしながら、これらの政策は、再職業教育を受けた労働者のための仕事が存在する場合に限って効果が
 ある。
 ・完全雇用を取り戻すための包括的なフレームワークが求められる。

[p.27]

D.格差と戦う

・単なる再分配の話ではない。

・事前分配:市場で得ることのできる所得のより公正な分配を確実なものとするための経済ルールの大転換。
 ・市場は真空の中に存在するものではない:市場の構築方法により、市場の機能・効果・分配が決まる。
 ・家賃の上昇は、所得に対する生産的な資本の比率が減少しているにも関わらず、所得に対する富の比率
  が上昇しているという異常さを物語っている。

[p.28]

格差と戦う

・これらの理論は、労働生産性と実質賃金における著しい不均衡を示している。
 ・この不均衡は、スキル偏重型の技術進歩や貯蓄率の差異といった標準的な理論では説明できない。

・格差縮小は、短期的にも、長期的にも、経済パフォーマンスを改善する。

ジョセフ・E・スティグリッツ(桐谷知未訳)『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」
の教科書』(徳間書店、2016年)(原著:Stiglitz, J. E., N. Abernathy, A. Hersh, S. Holmberg, and
M. Konczal (2015). Rewriting the Rules of the American Economy, New York: W.W. Norton, 2015.)
を参照。

[p.29]

III. 構造改革(Structural Reforms)

基本的な原則

・適切な需要なしには、サプライサイドの改革は、失業を増加させるだけで、経済成長には寄与しない。
 ・低生産性部門からゼロ生産性、つまり、人々を失業に追いやるものである。
 ・供給は、それ自体の需要を作り出さない。
 ・実際に、サプライサイドの改革は需要を弱め、GDPを低下させ得る。
 ・しかし、適切に設計された需要刺激策は、供給/生産性を増加させ、現在および潜在的なGDP成長率を
  引き上げることができる。

[p.30]

機能するサプライサイドの施策

「需要」と一体となってこそ、機能することが多い。

・テクノロジーへの投資拡大
 ・革新的経済(innovation economy)と学習社会(learning society)を作り出す上で、とりわけ重要。

・人間への投資の拡大―より健康でより生産性の高い労働力を創出する。

・経済を再構築し、古い産業から新しい産業への移行に役立つ産業政策
 ・市場だけでは、これらの変革は作り出せない。

・競争政策―経済的な権力が合従することを防ぐ
 ・独占は産出を阻害する。

・金融市場改革
 ・金融機関が他に害を及ぼすことを防ぐだけでは不十分。
 ・とりわけ中小企業のために期待される役割を果たし、金融を仲介し、民間資金を提供するように
  金融機関に促すことが求められる。
 ・債務よりも資本性の資金を促すことが求められる。

[p.31]

機能するサプライサイドの施策

・労働参加を促進する施策
 ・有効な公共交通システム
 ・育児休暇、有給病気休暇
 ・子育て支援

・被差別層・社会の主流から取り残された層の包摂
 ・女性
 ・少数派・マイノリティー
 ・移民

[p.32]

機能するサプライサイドの施策

・効果的でない(または逆効果な)サプライサイドの施策が多く存在する。
 ・法人所得税率の引下げ。
  ・例外として、投資をして雇用を創出させる企業には減税し、投資や雇用創出に消極的な企業には増税
   する施策。
 ・金融市場の規制緩和。
  ・投資の減少、投機の拡大、市場の不安定化につながる。
 ・貿易政策においてサプライサイドの効果は期待されてこなかった。
  ・効果は常に過大評価される。
    ・.米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される。
  ・TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないであろう
    ・特に投資条項が好ましくない―新しい差別をもたらし、より強い成長や環境保護等のための
     経済規制手段を制限する

[p.33]

他の逆効果なサプライサイド施策

・後ろ向きなサプライサイド改革も機能しない。
 ・米国における住宅の過剰供給(ネバダ砂漠の空き家)の削減は、米国経済の回復に寄与していない。
 ・韓国の経済危機(1998年)における半導体チップの過剰生産能力の破壊は、同国経済の回復を遅らせた。
  ・オプションを持つことの価値は無視される。
 ・競争相手を減らすことを望む向きがよく持ち出す議論。
  ・「国の代表的企業」(“national champions”) という言葉は、 実のところは寡占事業者を意味
   するもの。

[p.34]

サプライサイド施策の失敗

・1980年代初頭の米国(および他国)におけるサプライサイド施策の失敗。
 ・税収増加の約束は果たされなかった―実際には減収。
 ・成長率を高める約束は果たされなかった―実際には低下。
  ・貯蓄率低下。
    ・より最近の2000年代初頭における減税でも同じ結果がみられた。
  ・労働参加率低下。
 ・サプライサイド施策の正当化よりも、サプライサイド施策による格差への影響の懸念は最高潮に達して
  いる。

[p.35]

IV.金融セクターと金融混乱

・金融の混乱は、金融市場の不透明感を反映。

・金融の混乱は、金融市場の近視眼的な性質を反映―金融市場は常にとても気まぐれ。

・金融の混乱は、世界経済の先行きに関する深刻な不確実性を反映。

・金融の混乱は、いくつかの国における金融政策調整の失敗に関連しており、結果として為替レートの
 不確実性や不安定な資本フローの大きな動きが生じている。
 ・資本市場、金融市場の自由化がこれらを促進。

・金融の混乱の多くは、金融セクターにおける根本的な問題への取組の失敗を反映したもの。

・このような金融の混乱が実体経済に波及する可能性が高いことが問題である。

[p.36]

金融セクターを改革する

・金融セクターからの害を防ぎ、以下も阻止する。
 ・過度なリスクテイク
 ・市場操作、略奪的貸付など
 ・市場における支配的地位の乱用

・金融セクターが低い取引コストで社会的役割を担えるようにする。
 ・中小企業金融や住宅金融の供給
 ・年金口座の管理や決済システムの運用を低い取引コストで実施

今までのところ、両方のタスクに失敗。

より広くより深い改革と、与信を提供する公的手段の拡大が必要。
・学資ローン
・住宅ローンに関する公的オプション
・年金勘定に関する公的オプション  

[p.37]

V.世界規模の改革

・新しい世界基軸通貨制度の必要性
 ・現在のシステムは過去の遺物。
 ・経常黒字を追求するバイアスにつながっている。
 ・準備通貨国の脆弱性。
 ・ケインズや最近の国連委員会が提唱しているように、世界基軸通貨制度はより強固な世界の安定に
  つながるもの。

[p.38]

世界規模の改革

・世界の不均衡を縮小させる世界的な協調が求められている。
 ・中国の経常黒字は減少過程にある。
 ・しかし、ユーロ圏の経常黒字は増加している、
  ・ユーロ圏において大きな改革が必要となる。

・世界的なマクロ経済(金融および財政)政策協調が求められている。
 ・世界金融危機後に起きうることが期待された。
 ・しかし、未だに実現していない―むしろ、政策の不調和は拡大している。

・経常黒字を活用するより良い手段が求められている。
 ・新しい開発銀行は正しい方向。
 ・ただし、ガバナンス改革と開発銀行間の資本再構成の必要性が存在。

[p.39]

開発に向けて資金を提供する

開発に向けた資金の提供は、経常黒字の活用、世界需要の増加、開発の促進というメリットを同時に実現
するものであるが、3つの障害がある。

・債務の市場:債務再構成に関する国際的なフレームワークがない。
 ・国連における重要な発議があり、大多数の国が支持。
 ・しかし、米国と幾つかのヨーロッパ諸国が「法の支配」(rule of law)に反対。

・海外直接投資: 投資協定が協定国の規制能力を損なう。

・多国籍企業への課税:国際的な税体系が税収の拡大を困難にしている。
 ・「底辺への競争」(Race to the bottom)
 ・G20におけるBEPS(税制浸食と利益移転)合意では、重要課題への取組が不十分。
 ・国際的な税体系のより抜本的な改革が求められる。

[p.40]

気候変動へのアクション

・気候変動への対策として行う投資は、世界経済にとって必要な刺激策となるだろう。

・環境と経済成長は補完的な関係にある。
 ・とりわけ経済成長を正確に捉えた場合に。

・炭素に価格を設定することにより、投資が喚起される。

・国連気候変動パリ会議は、この気運を醸成するという観点から重要だった。経済界は、どのような形に
 なるにせよ、やがては炭素に価格が設定されることを理解したはずである。
 ・鍵となる投資(インフラ、住宅、建築、発電所)は長期的な投資。

[p.41]

VI.世界的な意思決定プロセスの改革

・世界的な経済統合は、世界的な政治統合よりも速く進んできた。

・国を越えた波及効果がある場合にはいつも、外部性には集団的な対処が求められる。

・しかし、世界的な対応を行うに当たっての優れた枠組みは現時点では存在しない。

・世界的な経済政策は、あまりに頻繁に権力や特定の利害に左右される。
 ・世界規模の協力や調和が求められる分野に必ずしも焦点が当てられていない。
  ・知的所有権ルールの過剰な調和。
  ・国内で説明責任を十分に果たさないような特定の利害を反映したルールの調和は、世界的に民主的な
   プロセスから生まれる調和とは異なるものである。
  ・各国政府が民主的なやり方で必要な規制を実施しようとした際に、新たな貿易取り決めがその能力を
   損なうことが特に懸念される。
 ・焦点を当てられるべきは、下方への調和であり、最も恵まれない立場にある者との共通の基盤への調和
  である。

[p.42]

世界的な意思決定プロセスの改革

・どのように代表性を高めるか。
 ・小国、貧困国の代表性は低い。
 ・世界経済に占めるウェイトは小さいとしても、それらの国々は重要な存在である。

・どのように正当性を増すか。
 ・国連は、世界的な正当性を有する国際的な機関である。
 ・IMFもその権限内において、同様に、更に大きな正当性を有する。

・「特定の会員」(”club”)が全員のための意思決定を行う危険。
 ・他の組織の信頼性を損なう。

・代替策:世界経済調整委員会(Global Economic Coordinating Council)の創設
 ・国連、IMFの下で運営

[p.43]

世界的な意思決定を再考する

・可変形状(Variable Geometry)
 ・多くの問題で、全会一致に近づくことは困難であると認識すること。

・「有志連合」(“Coalition of willing”)―例えば、気候変動
 ・国境を越えた課税により、他国の協力を促す。

・新しい世界基軸通貨制度は、恐らく全ての国の合意を得ることは難しい。
 ・この場合も有志連合が有効。―参加による利益が存在するため、他の国もやがて参加する。

・外部性が最も有効な場面を注意深く検討する。
 ・共同でリスク分散を行う仕組みが存在しない限り、高水準の貯蓄を行う国が生まれ、世界的な総需要を
  縮小させる。
 ・資本集積に有利に働く世界的なルールは、格差を拡大させ、世界的な総需要の拡大には逆効果。
 ・世界的な不安定性は格差を生み出し、高水準の貯蓄につながるもの。そして、それらは、世界的な
  総需要の欠乏の要因となる。

[p.44]

VII.遠近法で今の世界を見る

・30年ほど前、多くの先進国では、税率の引き下げや規制緩和といった実験を始めた。

・変化する経済環境に対応し、経済の枠組みを調整する必要があった。
 ・しかし、誤った調整がなされてきた。

・結果として、経済成長は鈍化し、格差が拡大。

・今となって漸く、それらの結果が全て目に見えるものとなったが、過去からずっと進行してきた結果
 なのである。

・現在の方向性が維持されると、状況は更に悪化するだろう。
 ・未だ語られていない政治的な帰結もある。そのうちの幾つかは分かり始めている。

・これらの実験は、大きな失敗であったと今や言うことができる。大きな失敗であったと言うべきである。

・新たな方向性が求められる。
 ・現在の取り決めの微調整では上手くいかないだろう。

[p.45]

この失敗した実験の断片

・金融政策への新たなアプローチ
 ・経済成長、雇用、経済安定化といったバランスのある視点よりも、インフレの安定化に焦点。

・財政政策への新たなアプローチ
 ・欧州では、財政赤字に対して厳重な制約。

・民営化の新たな流れ
 ・社会保障分野にまで民営化の流れが及ぶ国も存在。

これらの政策は、期待するほどの成果を上げていない。

[p.46]

世界の制度設計に関する実験も失敗している

・40年前から、資本移動の自由化が試みられてきた。
 ・それにより、経済が安定化した時代が訪れると期待されていた。

・政府よりも市場メカニズムの方が効果的とされていた。

・こうした実験の結果、逆に、世界的な不安定化の時代に突入した。
 ・特に、短期的な資本移動に関連して不安定性が発生。

・現在では、IMFでさえ資本移動の制限(資本勘定の管理)が必要と主張。

[p.47]

この道しかない

・政府と市場のバランスを取り戻す。

・政府・民間とは異なる「第三のセクター」(“third sector”)や、新たな制度枠組みの重要性を認識
 する。

・緊縮財政をやめる。

・世界的な基本的ニーズ、世界的な公共財、世界的な外部性に対して、世界的に対処する。
 ・気候変動を超えて、世界的な科学基盤を含めるべきである。
 ・底辺への競争を行うのではなく、世界的に生産性向上に務めるべきである。

・世界中・全ての人間の生活水準を引き上げる施策に全てを捧げる。

・進歩に関する指標の世界的な再評価を行う。
 ・評価基準が行動にも影響する。
 ・「経済パフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会」(※)におけるメインメッセージ。
 ・その検討はOECDにおいて継続されている。


 (※)スティグリッツ教授が中心となって、フランスのサルコジ大統領のイニシアティブの下で、
    社会の幸福度を測定しようとした取組。

[p.48]

世界経済:この道を進もう

・「新たな凡庸」(The New Mediocre)、 「大低迷」(the Great Malaise)、「長期停滞」
 (Secular Stagnation)は避けられないものではない。
 ・これらは、政策の失敗による帰結。

・統合が進展する中、前進するための最善の方法は、バランスを取り戻し、総需要を増加させるために
 国際的な協調を行うことだ。
 ・例えば、世界公共財の供給―研究、地球温暖化対策―に向けた国際協調。
 ・この国際協調はとりわけ困難である。
 ・G7において、日本がリーダーシップを発揮することが、前に進むための一歩となるだろう。

・しかし、そういった国際協力が不十分な状況下にあってさえ、需要の強化や生産性の向上のために各国が
 単独で行うことのできることは多く存在する。
 ・それは、大きな好影響を他の国に対しても与えるのだ。
 
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
投稿者によるコメント

スティグリッツといえば、より望ましいグローバリゼーションへの道筋を示してくれるということで高名な経済学者の一人だ。今回2016年3月16日の国際金融経済分析会合については、ノーベル経済学賞受賞者としての権威をもつスティグリッツが消費税率引き上げの見送りを提言したということで、実際の見送りについての観測も含めて大きく報じられた。また日本農業新聞は、配布資料の中でスティグリッツがTPPの効果や批准の見通しに否定的な見解を示したことを取り上げた。そのような話題性のある配布資料に目を通したついでに、テキスト化してみた。

しかし、この資料を読む分にはやはりリンク先のオリジナルPDFで読んでもらったがよさそうだ。投稿者がブラケットでページ番号を付した下にはそれぞれのページの見出しがついているのだが、テキスト化したらそれが見出しだということがわかりにくくなり、かなり読みにくくなってしまった。2つのグラフも省略している。手作業のレイアウトでミスがないともかぎらない。もとのPDFの劣化コピーとしかいいようのないしろもので、誰の役にも立たないかもしれないが、実験的な意味あいも込めて投稿させていただく。
http://www.asyura2.com/14/test31/msg/464.html

[テスト31] テスト
スティグリッツ教授提出資料(事務局による日本語訳) 
第1回国際金融経済分析会合配付資料 資料2(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai1/gijisidai.html

「資料2」

仮訳

大低迷と金融の安定を超え、健全で持続的な成長に向けて
 
 
ジョセフ・E・スティグリッツ
東京
2016年3月
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.2]I.我々は今どこにいるか

・緩慢な成長―大低迷(Great Malaise)、新たな凡庸(New Mediocre)
 ・今のところまだ危機ではない。

 ・しかし、G7の多くの国々では(覆い隠されたケースも含め)恒常的に多くの失業が発生している。
  若年層や社会の主流から取り残された層では更に高率の失業が発生。

 ・この緩慢な成長の果実は一部のトップ層に偏って分配されている―格差は拡大し、賃金の上昇は停滞。
  ・「公式には」失業率が低いとされている国でさえ、雇用の質や覆い隠された失業には疑問符。

 ・世界経済危機前にも関わらず、2007年の世界経済は実際には弱かった。
   ・バブルによって支えられていただけだった。
   ・経済危機前の2007年の世界を取り戻すということは、かつて我々が保持していたものと同じ、
    弱い経済に戻ってしまうことを意味する。

・入り交じる見通し―堅調な成長に戻る可能性は小さく、景気後退や停滞の可能性は高い。
 ・資産価格バブルの収縮への、もっともな懸念。
 ・国家や企業が多額の債務を抱える中、新興国は巨額の資本流出に直面。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.3]伸び悩む米国経済

・仮に1980年から1998年までの経済成長が継続していたとしたら、今の米国のGDPは、現実のGDPよりも
 15%ほど高いものとなっていたはずである。

・女性の労働参加が急速に進んだ1980年代初頭と比較しても、現在の生産年齢人口の就業率は低い。

・中位の(家計)所得は、1989年と比較して1%の上昇すら達成していない。

・最下層の実質賃金は60年前よりも低い。

・若年層のアフリカ系アメリカ人の失業率は未だに23.7%。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.4][グラフ]米国GDPのトレンド分析 [省略]
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.5]欧州はもっと悪い

・失業率は更に高い。

・特に若年層の失業が深刻。

・経済成長も更に低い水準。

・ユーロ危機は終わっていない。一時的な「小康状態(remission)」にあるだけ。
 ・統一通貨が機能するために必要な制度が創設されていない。
  そして、その制度が創設される見込みも当面ない。

・欧州の現状と、仮に欧州が経済成長していたとしたら実現していただろう姿との間にはギャップが存在。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.6]危機以来、欧州のパフォーマンスは悲惨なもの

[グラフ]ユーロ圏のGDPのトレンド分析 [省略]
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.7]中国

・世界金融危機以来、中国が世界経済の牽引役だった。
 ・先進国は直接的、間接的に影響を受ける。

・深刻な経済減速となる見込み。

・欧州と米国では、中国経済の減速を埋め合わせることはできそうもない。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.8]大不況(the Great Recession)に関する誤った診断

ただの金融危機ではない。

・銀行のバランスシートは概ね再構築された。

・規制改革もいくらか行われた(ドッド・フランク法)。

・しかし、経済は未だに健全な状態に戻っていない。
 ・クレジット・チャネルの改善に十分な注意が払われていない。
 ・このことは、金融緩和が期待されたほどの効果を得られていない理由の一つ。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.9]大不況(the Great Recession)に関する誤った診断

ただのバランスシート不況ではない。

・大企業のバランスシートは概ね再構築された。

・企業が投資に積極的にならないのは、バランスシートや資金調達の問題ではない。
 ・需要が足りないことが問題なのだ。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.10]更なる懸念

・永続的な世界の不均衡
 ・ユーロ圏が問題を悪化させている。

・非対称な調整
 ・所得の低下に直面する国家(企業、家計)は消費を減少させざるを得ない。
 ・所得が増加した国家(企業、家計)はその分の支出を増加させていない。
 ・原油価格の変動への対応では以下の点が特徴。
   ・原油価格の下落は需要を増加させると期待されていたが、「敗者」(losers)への悪影響が
    それらの便益を上回っている。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.11]中心的課題の診断

・世界的な総需要の不足。

・それと相まって、各国において、非貿易セクターへの支援は不十分。

・債務・金融化への過度の依存。

・さらに広くみれば、約30年前に市場経済のルールの転換(税制の再設計、ずさんな自由化)のプロセスが
 多くの先進国で始まった。これらは、当初の目論見に反して、更なる経済成長率の低下、不安定化、
 不平等化を招いた。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.12]大低迷(Great malaise)は、驚くほどに進展を見せない、より深刻な問題を覆い隠している

・気候変動

・格差、多数の貧困層
 ・富の不平等、健康の不平等(医療を民間の提供に依存する国においては)、裁判へのアクセスの不平等、
  と多岐に渡る。
 ・先進国では中間層が縮小。途上国においても中間層が縮小。
 ・これらの問題は、社会の主流から取り残された層や(しばしば)若年層では特に深刻。

・持続的成長を実現するためには、徹底的な「構造変革」(structural transformations)が求められる。

・市場経済に根付く問題が、生産性の停滞をもたらしている。
 ・民間部門・公的部門の両部門における短期的志向。
 ・基礎研究への投資の不足。そして、多くの国ではインフラへの投資の不足。
 ・過度の金融化。過度の金融化は以下の過程の一部でもあり、原因の一部でもある。
   ・富と資本の間のギャップの広がり。
   ・多くの国で産出に対する富の割合が高まる一方、産出に対する資本の比率が低下。
 ・教育システムの適合の失敗。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.13]II.これらの状況への対応

当然の手段に関する対立する見解:金融政策

・金融政策は、概ねその役割を全うした。

・深刻な停滞時において、金融政策が極めて有効だったことはこれまでにない。
 唯一の効果的な手段は財政政策。

・本当の問題は、ゼロ金利制約ではない。金利を少し下げること(例えマイナスの領域に入ったとしても)
 は機能しない。
・マイナス金利の試みは、景気を大きくは刺激せず、悪い副作用をもたらす可能性も。

・量的緩和政策は不平等を拡大した。しかし、(もしあったとしても)投資の大幅な増加にはつながらず、
 金融市場の不完全性あるいは不合理性により、リスクのミスプライシングやその他の金融市場の歪みを
 もたらした可能性。
 ・主な便益の一つは、競争的な通貨の切り下げである。しかし、それは、ゼロ・サム・ゲーム。
 ・適切な財政政策なしでは、「唯一の選択肢」問題は更に悪化する一途。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.14]当然の手段に関する対立する見解:財政政策

・財政政策が債務増大のリスクを高める懸念。
 ・2008〜2009年に実施した景気刺激策は効果がなかったという見方は全くの間違い。
 ・対策がなければ更に悪化していたであろう失業率の低下をもたらすことができ、更なる景気後退、不況
  に陥るのを防いだ。
 ・危機時においては、支出を最適化する時間はなかった。―たとえ、不完全な歳出であっても、大量の
  資源を活用せずにいることや不況に比べれば望ましい。
 ・債務への懸念は、バランスシート・アプローチへの問題のすり替え。そこでは、政府は生産的な投資に
  対して支出することが前提とされている。

・グローバリゼーションにより政策効果は損なわれている。―便益は他国に流出し、費用は自国に発生。
 ・しかし、「優位」な解決策を提示するには、世界の協調関係は弱すぎる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.15]繁栄を取り戻すためには機能しないもの、不十分なもの

1.金融政策
  ・根本的な問題は、ゼロ金利制約ではない。
  ・低金利は資本集約型テクノロジーを生み出し、「雇用なき」経済回復につながる可能性。

2.貿易協定
  ・関税は既にかなりの低水準。
  ・G7諸国による、資本集約財を輸出する一方で労働集約財を輸入するという「バランスの取れた」
   貿易取引の増加は、雇用を減少させる。

3.見当違いの供給サイドの施策
  ・法人所得課税。

4.更なる緊縮財政

これらの対策のなかには、逆効果となるものも存在。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.16]対処法: 緊急の問題―世界の総需要を取り戻す

1.(パリ協定を受け)炭素に高価格を設定することは、気候変動に対応する世界経済への改革に向けた
  投資を促す。

2.経常黒字の一部の再活用(例えば開発銀行の資本再構成、新たな開発銀行の創設)は、インフラを
  含めた投資の必要性を満たすもの。
  ・民間部門は、仲介機能において非効率であることを自ら示している。
  ・長期的な投資家と長期的な投資をつなぐものが、短期取引中心の金融市場である。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.17]効果的な施策

3.政府支出の増加。部分的に税で賄われたものでも経済を刺激する。
  ・均衡予算乗数に関する原則:適切に設計された税と支出によって、乗数は極めて高いものとなる。
  ・国のバランスシートにおいては、負債のみではなく、資産・負債両面を見ることが適切な会計
   フレームワーク。
    ・教育、若者の健康への支出は投資であり、バランスシートの資産サイドを改善。
    ・インフラとテクノロジーへの投資も同様。
  ・環境税や土地税は、持続可能な成長を実現する経済再構築に役立つ。
  ・構造変革を推進し、平等性を高める政府支出も同様。

4.平等性を高めるその他の施策は世界の総需要を増加させる。
  ・経済ルールの大転換:市場で得る所得をもっと平等に。
  ・所得移転と税制の改善。
  ・賃金上昇と労働者保護を高める施策。
    ・いくつかの国では、組合や交渉を取り巻く法的枠組みを改善。

5.グローバルな基軸通貨制度を構築することで、需要を縮小させる外貨準備の積み立ての必要性を減らす
  ことができる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.18]世界的な総需要の先に

・特に世界的にサービス経済への移行が進む中、非貿易セクターはますます重要に。

・国内需要の低迷は供給を減らす。

・国内需要は民間消費より大きい。
 ・環境や人間、(知識ギャップを埋める)テクノロジー、インフラ、住みよい街にするための投資も
  含まれる。

・これらの国内需要の大半は公的ファイナンスで調達されるべきもの。
 ・健康や教育はその中でも重要なサービス部門。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.19]A.緊縮財政をやめる

・米国ですら、緩やかな形で緊縮になっている。
 ・通常の景気拡大局面では200万人の公的セクターの雇用が生まれるが、現在は逆に50万人減少している。

・景気拡張的な財政緊縮や、債務が一定の閾値を超えると経済成長が低下する、といった考えの正しさは
 否定されている。

・もしそれらの考えが正しかったとしても、今のGDPと将来のGDP、いずれも増加させるように税収と投資を
 歩調を合わせて増加させていくということが均衡予算乗数の教え。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.20]バランスの取れたアプローチが必要―債務 対 税

・債務や税収の水準、成長率の見通しにより、各国ごとに最適な債務と税のバランスは異なる。
 ・常にバランスシート視点を持つことが求められる。

・すべての国において、炭素税を含めた環境税(渋滞課金を含む「課金」)の引き上げで、相当な歳入が
 得られ、経済のパフォーマンスも改善するだろう。

・金融取引税についても同様 。

・ほとんどすべての国において、土地や(「弾力的に供給を増加させることができない」)他の天然資源に
 対する税を引き上げることで、相当な歳入を増やし、成長率を上昇させるだろう(貯蓄の非生産的な用途
 への流入を減らすことができる)。

(次ページに続く)
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.21]バランスの取れたアプローチが必要―債務 対 税(続き)

・法人税減税は投資拡大には寄与しない。なぜなら、大抵の投資は借入が原資であり、支払利子は所得控除
 となるからだ(減税はネットの資本コストを上昇させ、投資意欲を減退させる!)
 ・むしろ、国内での投資や雇用創出に積極的でない企業に対して、法人税を引き上げる方が、投資拡大を
  促す。

・(炭素税・相続税など)いくつかの税金は、実際に現時点での支出を促す効果がある。

・均衡予算乗数は、増税と歩調を合わせた支出拡大が経済を刺激することを示唆している。

適切に設計された税制は、格差・不安定・環境悪化といった主要な問題に取り組む手段となる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.22]緊縮策を超えて

予算ルール・フレームワークの再考

・資本予算(Capital Budgeting)
 ・資金調達コストが低く、投資リターンが高い時には、バランスシートの観点が特に重要である。

・投資促進のための開発銀行(development banks)の活用
 ・税と支出が適切に選択されれば、乗数の効果は極めて高い。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.23]B.効果的に支出する:重要な長期の問題に焦点を当てる―生産性の観点の欠落

テクノロジーやインフラに対する投資は、民間投資を補完する効果を有するものであるが、最適な水準と
比べると低く留まっている。
・基礎研究に対する政府支援額(対GDP比)は、半世紀前よりも低くなっている。
・生産性向上につながる新たなイノベーションを推進するアイデアの源が干上がっている。

必要なことは、インフラとテクノロジーへのより積極的な投資である。
・インフラ・テクノロジーへの公共投資は民間投資と補完的であり、民間投資を刺激する事につながる。
・投資はインフラ銀行(infrastructure bank)からファイナンスすることができる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.24]C.効果的に支出する:重要な長期の問題に焦点を当てる―構造変革(Structural Transformation)

・世界的に、製造業の雇用が減少している。

・グローバリゼーションとともに、先進国では雇用に占める製造業のシェアが低下していく。

・サービス産業にシフトする必要がある。
 ・いくつかの国では、サービス産業の生産性が向上している。

・そのような大規模な構造変革(structural transformation)が求められているが、市場はそれ自体では
 必要とされている構造変革を達成することが上手くできない。
 ・かつて行われた農業から製造業への移行がそれを証明している。

・サービス産業の中では、教育・健康に改善の余地がある。
 ・これらの部門では、政府が正当に重要な役割を担うものである。
 ・ただし、緊縮財政は、政府がその役割を果たすことを抑制してしまう。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.25]構造変革(Structural Transformation)に伴って発生する課題

・その新しい経済構造は、かつてほど資本集約的(capital-intensive)ではなくなるだろう。
 ・従って、想定されるGDP成長率を達成するために必要となる投資は、より小さなものだろう。

・特に熟年労働者は、新しい経済構造に対して準備不足であろう。
 ・ベビーブーム世代の高齢化と合わせて、労働者のかなりの部分が高齢化している。
 ・その世代の再活躍を促さないことによる社会的なコスト―つまり、その世代の人的資本の陳腐化を単に
  受け入れること―は増大している。

・今存在する取り決めが、高齢者と若者に関わる問題を生み出している。
 ・国債を通じて手堅く運用している高齢者がわずかな所得しか得られないということを、ゼロ金利の環境
  は意味する。
 ・若者は家を買う余裕は無く、職を得るまで長期間待つ必要が多々あり、職を得ても自らのスキル・才能
  を生かせず、そして多くの国では若者は多大な債務を背負い込まされている。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.26]構造変革(Structural Transformation) 促進に向けた政策

・農業から製造業への移行において、多くの国で政府が中心的な役割を果たした。

・より積極的な労働市場政策を含め、政府は再び積極的な役割を担うことが求められている。

・しかしながら、これらの政策は、再職業教育を受けた労働者のための仕事が存在する場合に限って効果が
 ある。
 ・完全雇用を取り戻すための包括的なフレームワークが求められる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.27]D.格差と戦う

・単なる再分配の話ではない。

・事前分配:市場で得ることのできる所得のより公正な分配を確実なものとするための経済ルールの大転換。
 ・市場は真空の中に存在するものではない:市場の構築方法により、市場の機能・効果・分配が決まる。
 ・家賃の上昇は、所得に対する生産的な資本の比率が減少しているにも関わらず、所得に対する富の比率
  が上昇しているという異常さを物語っている。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.28]格差と戦う

・これらの理論は、労働生産性と実質賃金における著しい不均衡を示している。
 ・この不均衡は、スキル偏重型の技術進歩や貯蓄率の差異といった標準的な理論では説明できない。

・格差縮小は、短期的にも、長期的にも、経済パフォーマンスを改善する。

ジョセフ・E・スティグリッツ(桐谷知未訳)『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」
の教科書』(徳間書店、2016年)(原著:Stiglitz, J. E., N. Abernathy, A. Hersh, S. Holmberg, and
M. Konczal (2015). Rewriting the Rules of the American Economy, New York: W.W. Norton, 2015.)
を参照。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.29]III. 構造改革(Structural Reforms)

基本的な原則

・適切な需要なしには、サプライサイドの改革は、失業を増加させるだけで、経済成長には寄与しない。
 ・低生産性部門からゼロ生産性、つまり、人々を失業に追いやるものである。
 ・供給は、それ自体の需要を作り出さない。
 ・実際に、サプライサイドの改革は需要を弱め、GDPを低下させ得る。
 ・しかし、適切に設計された需要刺激策は、供給/生産性を増加させ、現在および潜在的なGDP成長率を
  引き上げることができる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.30]機能するサプライサイドの施策

「需要」と一体となってこそ、機能することが多い。

・テクノロジーへの投資拡大
 ・革新的経済(innovation economy)と学習社会(learning society)を作り出す上で、とりわけ重要。

・人間への投資の拡大―より健康でより生産性の高い労働力を創出する。

・経済を再構築し、古い産業から新しい産業への移行に役立つ産業政策
 ・市場だけでは、これらの変革は作り出せない。

・競争政策―経済的な権力が合従することを防ぐ
 ・独占は産出を阻害する。

・金融市場改革
 ・金融機関が他に害を及ぼすことを防ぐだけでは不十分。
 ・とりわけ中小企業のために期待される役割を果たし、金融を仲介し、民間資金を提供するように
  金融機関に促すことが求められる。
 ・債務よりも資本性の資金を促すことが求められる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.31]機能するサプライサイドの施策

・労働参加を促進する施策
 ・有効な公共交通システム
 ・育児休暇、有給病気休暇
 ・子育て支援

・被差別層・社会の主流から取り残された層の包摂
 ・女性
 ・少数派・マイノリティー
 ・移民
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.32]機能するサプライサイドの施策

・効果的でない(または逆効果な)サプライサイドの施策が多く存在する。
 ・法人所得税率の引下げ。
  ・例外として、投資をして雇用を創出させる企業には減税し、投資や雇用創出に消極的な企業には増税
   する施策。
 ・金融市場の規制緩和。
  ・投資の減少、投機の拡大、市場の不安定化につながる。
 ・貿易政策においてサプライサイドの効果は期待されてこなかった。
  ・効果は常に過大評価される。
    ・.米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される。
  ・TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないであろう
    ・特に投資条項が好ましくない―新しい差別をもたらし、より強い成長や環境保護等のための
     経済規制手段を制限する
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.33]他の逆効果なサプライサイド施策

・後ろ向きなサプライサイド改革も機能しない。
 ・米国における住宅の過剰供給(ネバダ砂漠の空き家)の削減は、米国経済の回復に寄与していない。
 ・韓国の経済危機(1998年)における半導体チップの過剰生産能力の破壊は、同国経済の回復を遅らせた。
  ・オプションを持つことの価値は無視される。
 ・競争相手を減らすことを望む向きがよく持ち出す議論。
  ・「国の代表的企業」(“national champions”) という言葉は、 実のところは寡占事業者を意味
   するもの。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.34]サプライサイド施策の失敗

・1980年代初頭の米国(および他国)におけるサプライサイド施策の失敗。
 ・税収増加の約束は果たされなかった―実際には減収。
 ・成長率を高める約束は果たされなかった―実際には低下。
  ・貯蓄率低下。
    ・より最近の2000年代初頭における減税でも同じ結果がみられた。
  ・労働参加率低下。
 ・サプライサイド施策の正当化よりも、サプライサイド施策による格差への影響の懸念は最高潮に達して
  いる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.35]IV.金融セクターと金融混乱

・金融の混乱は、金融市場の不透明感を反映。

・金融の混乱は、金融市場の近視眼的な性質を反映―金融市場は常にとても気まぐれ。

・金融の混乱は、世界経済の先行きに関する深刻な不確実性を反映。

・金融の混乱は、いくつかの国における金融政策調整の失敗に関連しており、結果として為替レートの
 不確実性や不安定な資本フローの大きな動きが生じている。
 ・資本市場、金融市場の自由化がこれらを促進。

・金融の混乱の多くは、金融セクターにおける根本的な問題への取組の失敗を反映したもの。

・このような金融の混乱が実体経済に波及する可能性が高いことが問題である。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.36]金融セクターを改革する

・金融セクターからの害を防ぎ、以下も阻止する。
 ・過度なリスクテイク
 ・市場操作、略奪的貸付など
 ・市場における支配的地位の乱用

・金融セクターが低い取引コストで社会的役割を担えるようにする。
 ・中小企業金融や住宅金融の供給
 ・年金口座の管理や決済システムの運用を低い取引コストで実施

今までのところ、両方のタスクに失敗。

より広くより深い改革と、与信を提供する公的手段の拡大が必要。
・学資ローン
・住宅ローンに関する公的オプション
・年金勘定に関する公的オプション  
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.37]V.世界規模の改革

・新しい世界基軸通貨制度の必要性
 ・現在のシステムは過去の遺物。
 ・経常黒字を追求するバイアスにつながっている。
 ・準備通貨国の脆弱性。
 ・ケインズや最近の国連委員会が提唱しているように、世界基軸通貨制度はより強固な世界の安定に
  つながるもの。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.38]世界規模の改革

・世界の不均衡を縮小させる世界的な協調が求められている。
 ・中国の経常黒字は減少過程にある。
 ・しかし、ユーロ圏の経常黒字は増加している、
  ・ユーロ圏において大きな改革が必要となる。

・世界的なマクロ経済(金融および財政)政策協調が求められている。
 ・世界金融危機後に起きうることが期待された。
 ・しかし、未だに実現していない―むしろ、政策の不調和は拡大している。

・経常黒字を活用するより良い手段が求められている。
 ・新しい開発銀行は正しい方向。
 ・ただし、ガバナンス改革と開発銀行間の資本再構成の必要性が存在。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.39]開発に向けて資金を提供する

開発に向けた資金の提供は、経常黒字の活用、世界需要の増加、開発の促進というメリットを同時に実現
するものであるが、3つの障害がある。

・債務の市場:債務再構成に関する国際的なフレームワークがない。
 ・国連における重要な発議があり、大多数の国が支持。
 ・しかし、米国と幾つかのヨーロッパ諸国が「法の支配」(rule of law)に反対。

・海外直接投資: 投資協定が協定国の規制能力を損なう。

・多国籍企業への課税:国際的な税体系が税収の拡大を困難にしている。
 ・「底辺への競争」(Race to the bottom)
 ・G20におけるBEPS(税制浸食と利益移転)合意では、重要課題への取組が不十分。
 ・国際的な税体系のより抜本的な改革が求められる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.40]気候変動へのアクション

・気候変動への対策として行う投資は、世界経済にとって必要な刺激策となるだろう。

・環境と経済成長は補完的な関係にある。
 ・とりわけ経済成長を正確に捉えた場合に。

・炭素に価格を設定することにより、投資が喚起される。

・国連気候変動パリ会議は、この気運を醸成するという観点から重要だった。経済界は、どのような形に
 なるにせよ、やがては炭素に価格が設定されることを理解したはずである。
 ・鍵となる投資(インフラ、住宅、建築、発電所)は長期的な投資。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.41]VI.世界的な意思決定プロセスの改革

・世界的な経済統合は、世界的な政治統合よりも速く進んできた。

・国を越えた波及効果がある場合にはいつも、外部性には集団的な対処が求められる。

・しかし、世界的な対応を行うに当たっての優れた枠組みは現時点では存在しない。

・世界的な経済政策は、あまりに頻繁に権力や特定の利害に左右される。
 ・世界規模の協力や調和が求められる分野に必ずしも焦点が当てられていない。
  ・知的所有権ルールの過剰な調和。
  ・国内で説明責任を十分に果たさないような特定の利害を反映したルールの調和は、世界的に民主的な
   プロセスから生まれる調和とは異なるものである。
  ・各国政府が民主的なやり方で必要な規制を実施しようとした際に、新たな貿易取り決めがその能力を
   損なうことが特に懸念される。
 ・焦点を当てられるべきは、下方への調和であり、最も恵まれない立場にある者との共通の基盤への調和
  である。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.42]世界的な意思決定プロセスの改革

・どのように代表性を高めるか。
 ・小国、貧困国の代表性は低い。
 ・世界経済に占めるウェイトは小さいとしても、それらの国々は重要な存在である。

・どのように正当性を増すか。
 ・国連は、世界的な正当性を有する国際的な機関である。
 ・IMFもその権限内において、同様に、更に大きな正当性を有する。

・「特定の会員」(”club”)が全員のための意思決定を行う危険。
 ・他の組織の信頼性を損なう。

・代替策:世界経済調整委員会(Global Economic Coordinating Council)の創設
 ・国連、IMFの下で運営
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.43]世界的な意思決定を再考する

・可変形状(Variable Geometry)
 ・多くの問題で、全会一致に近づくことは困難であると認識すること。

・「有志連合」(“Coalition of willing”)―例えば、気候変動
 ・国境を越えた課税により、他国の協力を促す。

・新しい世界基軸通貨制度は、恐らく全ての国の合意を得ることは難しい。
 ・この場合も有志連合が有効。―参加による利益が存在するため、他の国もやがて参加する。

・外部性が最も有効な場面を注意深く検討する。
 ・共同でリスク分散を行う仕組みが存在しない限り、高水準の貯蓄を行う国が生まれ、世界的な総需要を
  縮小させる。
 ・資本集積に有利に働く世界的なルールは、格差を拡大させ、世界的な総需要の拡大には逆効果。
 ・世界的な不安定性は格差を生み出し、高水準の貯蓄につながるもの。そして、それらは、世界的な
  総需要の欠乏の要因となる。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.44]VII.遠近法で今の世界を見る

・30年ほど前、多くの先進国では、税率の引き下げや規制緩和といった実験を始めた。

・変化する経済環境に対応し、経済の枠組みを調整する必要があった。
 ・しかし、誤った調整がなされてきた。

・結果として、経済成長は鈍化し、格差が拡大。

・今となって漸く、それらの結果が全て目に見えるものとなったが、過去からずっと進行してきた結果
 なのである。

・現在の方向性が維持されると、状況は更に悪化するだろう。
 ・未だ語られていない政治的な帰結もある。そのうちの幾つかは分かり始めている。

・これらの実験は、大きな失敗であったと今や言うことができる。大きな失敗であったと言うべきである。

・新たな方向性が求められる。
 ・現在の取り決めの微調整では上手くいかないだろう。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.45]この失敗した実験の断片

・金融政策への新たなアプローチ
 ・経済成長、雇用、経済安定化といったバランスのある視点よりも、インフレの安定化に焦点。

・財政政策への新たなアプローチ
 ・欧州では、財政赤字に対して厳重な制約。

・民営化の新たな流れ
 ・社会保障分野にまで民営化の流れが及ぶ国も存在。

これらの政策は、期待するほどの成果を上げていない。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.46]世界の制度設計に関する実験も失敗している

・40年前から、資本移動の自由化が試みられてきた。
 ・それにより、経済が安定化した時代が訪れると期待されていた。

・政府よりも市場メカニズムの方が効果的とされていた。

・こうした実験の結果、逆に、世界的な不安定化の時代に突入した。
 ・特に、短期的な資本移動に関連して不安定性が発生。

・現在では、IMFでさえ資本移動の制限(資本勘定の管理)が必要と主張。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.47]この道しかない

・政府と市場のバランスを取り戻す。

・政府・民間とは異なる「第三のセクター」(“third sector”)や、新たな制度枠組みの重要性を認識
 する。

・緊縮財政をやめる。

・世界的な基本的ニーズ、世界的な公共財、世界的な外部性に対して、世界的に対処する。
 ・気候変動を超えて、世界的な科学基盤を含めるべきである。
 ・底辺への競争を行うのではなく、世界的に生産性向上に務めるべきである。

・世界中・全ての人間の生活水準を引き上げる施策に全てを捧げる。

・進歩に関する指標の世界的な再評価を行う。
 ・評価基準が行動にも影響する。
 ・「経済パフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会」(※)におけるメインメッセージ。
 ・その検討はOECDにおいて継続されている。


 (※)スティグリッツ教授が中心となって、フランスのサルコジ大統領のイニシアティブの下で、
    社会の幸福度を測定しようとした取組。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.48]世界経済:この道を進もう

・「新たな凡庸」(The New Mediocre)、 「大低迷」(the Great Malaise)、「長期停滞」
 (Secular Stagnation)は避けられないものではない。
 ・これらは、政策の失敗による帰結。

・統合が進展する中、前進するための最善の方法は、バランスを取り戻し、総需要を増加させるために
 国際的な協調を行うことだ。
 ・例えば、世界公共財の供給―研究、地球温暖化対策―に向けた国際協調。
 ・この国際協調はとりわけ困難である。
 ・G7において、日本がリーダーシップを発揮することが、前に進むための一歩となるだろう。

・しかし、そういった国際協力が不十分な状況下にあってさえ、需要の強化や生産性の向上のために各国が
 単独で行うことのできることは多く存在する。
 ・それは、大きな好影響を他の国に対しても与えるのだ。
 
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
投稿者によるコメント

スティグリッツといえば、より望ましいグローバリゼーションへの道筋を示してくれるということで高名な経済学者の一人だ。今回2016年3月16日の国際金融経済分析会合については、ノーベル経済学賞受賞者としての権威をもつスティグリッツが消費税率引き上げの見送りを提言したということで、実際の見送りについての観測も含めて大きく報じられた。また日本農業新聞は、配布資料の中でスティグリッツがTPPの効果や批准の見通しに否定的な見解を示したことを取り上げた。

そのような話題性のある配布資料に自分が目を通したついでに、テキスト化してみた。ページ番号などのブラッケットは投稿者が付した。しかし、この資料を読む分にはやはりリンク先のオリジナルPDFの方が読みやすい。2つのグラフは省略している。手作業のレイアウトでミスがないともかぎらない。もとのPDFの劣化コピーとしかいいようのないしろもので、誰の役にも立たないかもしれないが、実験的な意味あいも込めて投稿させていただく。
http://www.asyura2.com/14/test31/msg/465.html

[テスト31] テスト
スティグリッツ教授提出資料(英語) 
第1回国際金融経済分析会合 2016年3月16日
配付資料 資料1(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai1/gijisidai.html
 
 
Beyond the Great Malaise and Financial Stability towards Robust and Sustainable Growth
 
 
Joseph E. Stiglitz
Tokyo
March, 2016
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.2]I. Where we are
 
 
• Slow growth―Great Malaise, New Mediocre
  ・Not a crisis yet
  ・But with persistent moderately high unemployment (in some cases disguised) in
   many of G-7, higher unemployment among youth and marginalized groups
  ・Disproportionate share of slow growth going to a few at the top―growing inequality, wage
   stagnation
    ・Even in countries with low "official" unemployment, raising questions of quality of job
     growth and disguised unemployment
  ・World economy was weak in 2007, before crisis
    ・Only sustained by a bubble
    ・Restoring the world to 2007 simply restores us to the weak economy we had then

• Mixed prospects―small probably of returning to robust growth, large probability of recession
 or worse
  ・Justifiable concerns about asset price bubbles that might deflate
  ・Emerging markets facing massive capital outflows, with many countries and
   companies over-indebted

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.3]Underperformance of US Economy
 
 
• GDP some 15% below what it would have been had the growth rates that prevailed between 1980 and
 1998 continued

• Percentage of the working‐age population employed lower than it was in the early 1980s, when
 women were entering the workforce en masse

• Median real (household) income is less than 1% higher than it was in 1989

• Real wages at the bottom are lower than 60 years ago

• African-American youth unemployment rate is still 23.7%

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.4]

[graph] United States GDP Trend Analysis [省略]

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.5]Europe is even worse
 
 
• With higher levels of unemployment

• Especially youth unemployment

• And lower levels of growth

• Euro crisis is not over ― only under short term "remission"
  ・Haven't created institutions that are necessary to make a single currency work, and not
   likely to do so at time soon

• Gap between where they are and where they would have been growing

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.6]Dismal European performance since crisis

[graph] Euro Area GDP Trend Analysis [省略]

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.7]China
 
 
• Has been driver of global economic since GFC
  ・Advanced countries affected directly and indirectly

• Likely to be significant slowdown

• Europe and US not likely to be able to make up for the slowdown of China's economy

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.8]Misdiagnosis of the Great Recession
 
 
More than a financial crisis

• Banks' balance sheets are largely restored

• Some regulatory reform (Dodd Frank)

• Yet economy is not back to health
  ・Insufficient attention paid to improving credit channel
  ・Helps explain why monetary easing didn’t help as much as hoped

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.9]Misdiagnosis of the Great Recession
 
 
More than a balance sheet recession

• Balance sheet of large corporations largely restored

• It is not corporate balance sheets or their access to finance that are holding them back from
 investing
  ・It is lack of demand.

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.10]Further concerns
 
 
• Persistent Global imbalances
  ・Eurozone has exacerbated problem
• Asymmetrical adjustment
  ・Countries (firms, households) facing a decline in income have to reduce consumption
  ・Those with increased income do not expand spending symmetrically
  ・Response to changes in oil price illustrates
    ・Many had expected lower prices to increase demand, but adverse effects of "losers"
     more than offsetting these benefits

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.11]Diagnosis of the central problem
 
 
• Lack of global aggregate demand

• Combined with insufficient efforts in each country to support non-traded sectors

• Excessive reliance on debt, financialization

• More broadly, in large parts of advanced countries about a third of a century ago, there began
 a process of rewriting the rules of the market economy (redesigning tax structures, ill-thought
 out liberalization) that led to slower growth, more instability and more inequality―just the
 opposite of what was promised

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.12]Great malaise hides deeper problems on which there is being made remarkable little
    progress
 
 
• Climate change

• Inequality, large number of individuals in poverty
  ・With many dimensions―inequality in wealth, health (in countries relying on private provision
   of health care), and access to justice
  ・Hollowing out of the middle in advanced countries―and even in developing world
  ・Problems especially severe for marginalized groups and (often) youth

• Deep structural transformations needed to achieve sustainable growth

• Deeper problems in market economies leading to productivity slowdown
  ・Short termism in both private and public sector
  ・Insufficient investment in basic research, and in many countries, infrastructure
  ・Excessive financialization, part of process, part of cause
    ・Opening up major gaps between wealth and capital
    ・Capital output ratio in many countries going down even as wealth output ratio increases
  ・Failures to adapt education system

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.13]II. Responding to the situation
 
 
Conflicting views about obvious instruments: monetary policy

• Monetary policy has largely run its course

• Never very effective in deep downturns: the only effective instrument is fiscal policy

• Real problem not zero lower bound―slight lowering of interest rates (into negative territory)
 will not work
  ・Experiments with negative interest rates unlikely to stimulate much, may have adverse side
   effects
• QE increased inequality, did not lead to significant increase in investment (if any) and
 because of financial market imperfections/irrationalities may have led to mispricing of risk
 and other financial market distortions
  ・One of main benefits was competitive devaluation―but that's a zero sum game
  ・In absence of adequate fiscal policies, "only game in town"―matters would have been worse
   in its absence

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.14]Conflicting views about obvious instruments: fiscal policy
 
 
• Worry that fiscal policy risks damaging build up of debts
  ・View that fiscal stimuli in 2008/2009 didn’t work is absolutely wrong
  ・Reduced unemployment from what it otherwise would have been, prevented deeper recession,
   depression
  ・In crisis, didn't have time to optimize spending―but even imperfect expenditures were
   better than alternative of massive idle resources and depressions
  ・Worry about debts is fundamentally misplaced in balance sheet approach, where government
   spends money on productive investments

• Effectiveness of policies undermined by globalization―large spillovers to others, costs borne
 at home
  ・But global coordination sufficiently weak to provide "superior" globally coordinated
   solutions

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.15]What will not work―or not be sufficient―to restore prosperity
 
 
1. Monetary Policy
  ・Underlying problem is not Zero Lower Bound
  ・Low interest rates induce capital intensive technology, may lead to "jobless" recovery

2. Trade agreements
  ・Tariffs already very low
  ・With G‐7 exporting capital intensive goods, importing labor intensive goods, a "balanced"
   increase in trade leads to lower employment

3. Misguided supply side measures
  ・Corporate income taxes

4. Another dose of austerity

Some of these measures would be counterproductive

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.16]Remedies: Immediate issue―restoring global aggregate demand
 
 
1. Setting a high price on carbon (following up on Paris) will induce investments to retrofit
  the global economy for climate change

2. Recycle some of the surpluses, e.g. through recapitalization of development banks, or creating
  new development banks: would help meet deep investment needs, including infrastructure
  ・Private sector has proven itself relatively ineffective in intermediation
  ・Short term financial markets sit between long term investors and long term investments

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.17]Measures that would work
 
 
3. Increasing government spending, financed partially by taxes, will stimulate economy
  ・Principle of balanced budget multiplier; with well designed taxes and expenditures,
   multiplier can be quite high
  ・Appropriate accounting framework looks at both sides of the national balance sheet, not
   just at liabilities
    ・Spending on education, health of young people are investments which improve asset side
     of balance sheet
    ・So do investments in infrastructure and technology
  ・Environmental taxes and land taxes will help restructure the economy to create sustainable
   growth
  ・So will government expenditures to promote structural transformation and promote equality

4. Other measures to increase equality will increase global aggregate demand
  ・Rewriting the rules: improving equality of market income
  ・Improving on transfer and tax system
  ・Measures that increases wages and worker security
    ・In some countries, improving legal framework surrounding unions/bargaining

5. A global reserve system will reduce need for demand-reducing build up of reserves

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.18]Beyond global aggregate demand
 
 
• Especially as world moves to service sector economy, non-traded sector likely to be
 increasingly important

• Absence of domestic demand impairs supply

• Domestic demand is more than private consumption
  ・Includes investment in environment, people, technology (closing the knowledge gap),
   infrastructure, making cities livable

• Much of this domestic demand will have to be publicly financed
  ・Health and education are among key service sectors

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.19]A. Ending austerity
 
 
• Even the US has had a mild firm of austerity
  ・500,000 fewer public sector employees, normal expansion would have some 2 million more

• Notions of expansionary contractions and that there is a critical threshold, above which debt
 lowers growth have been discredited

• Even if that were the case, the balanced budget multiplier means that increasing taxes in
 tandem with investment spending increases GDP now and in the future

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.20]Need balanced approach to finance―debt vs. tax
 
 
• Will vary from country to country, depending on levels of debt and taxes, growth paths
  ・Always need to keep balance sheet perspective

• In all countries, raising environmental taxes ("charges", including congestion fees),
 including carbon tax, would generate substantial revenues and improve economic performance

• So too would a Financial Transaction Tax

• In virtually all countries, raising taxes on land and other natural resources ("inelastically
 supplied") would raise substantial revenues, increase growth (less diversion of savings to
 unproductive uses)

(Cont'd on next slide)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.21]Need balanced approach to finance―debt vs. tax (Cont'd)
 
 
• Lowering taxes on corporations would not increase investment, since most investment is debt
 financed, and interest is tax deductible (lowering taxes raises net cost of capital, and thus
 discourages investment!)
  ・Increasing taxes on companies that do not invest in the country and create jobs may
   incentivize investment

• Some taxes actually stimulate spending today (carbon tax, inheritance tax)

• Balanced budget multiplier implies that raising taxes and spending in tandem stimulates economy

Well designed taxes would also address key issues of inequality, instability, and environmental
degradation

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.22]Beyond austerity
 
 
Rethinking budgetary rules and frameworks

• Capital Budgeting
  ・Balance sheet perspective is especially important when cost of funds is low and returns
   to investments are high

• Using development banks to promote investment
  ・With well designed taxes and expenditures, multiplier can be quite high

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.23]B. Spending money well: focusing on key long run problems―lack of productivity
 
 
There has been under-investment in technology and infrastructure which is complementary to
private investment
  ・with government support of basic research (as a percentage of GDP) lower than it was a half
   century ago
  ・wellspring of ideas driving new innovations to increase productivity may be drying up

What is need is more Investment infrastructure and technology
  ・since much of this public investment is complementary with private investment, private
   investment will be stimulated
  ・investment could be financed through an infrastructure bank

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.24]C. Spending money well: focusing on key long run problems―Structural Transformation
 
 
• Global manufacturing employment is in the decline

• With globalization, the advanced countries will be seizing a declining share of that employment

• Needs to be shift to service sector
  ・And in some countries, improving productivity of service sector

• Markets on their own do a poor job at managing the kind of large structural transformation that
 is needed
  ・Evidenced in earlier transition from agricultural to manufacturing

• Among the service sectors that should be taking up the slack are education and health
  ・Government rightly plays an important role in these sectors
  ・Austerity has constrained the ability of the government to play that role

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.25]Challenges posed by this structural transformation
 
 
• New economy may be less capital-intensive
  ・So that the investment needed to support a given growth in GDP may be smaller

• Older workers especially may be ill-prepared for the new economy
  ・With the aging of the baby-boomers, a larger fraction of workers are older
  ・The societal costs of not retooling―of simply accepting their obsolescence―are higher

• Existing arrangements creating large issues for old and young
  ・Zero interest rate environment means that old who saved prudently through government bonds
   have low income
  ・Young can't afford to buy houses, often have to wait long time to get a job, when they get
   a job, it doesn't use their skills and talents, and in many countries, they are saddled
   with large debts

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.26]Policies for promoting Structural Transformation
 
 
• In many countries government action was central in transition from agriculture to manufacturing

• The government needs to again take an active role, including through more active labor market
 policies.

• Such policies only work, however, if there are jobs for the retrained workers.
  ・There needs to be a comprehensive framework for restoring full employment

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.27]D. Fighting Inequality
 
 
• More than redistribution

• Pre-distribution: Rewriting the Rules to ensure more equitable distribution of market income
  ・Markets don't exist in a vacuum: the way they are structured affects how they function,
   efficiency, and distribution
  ・Increases in rents explains the anomaly of an increase wealth/income ratio accompanied by
   a decrease in the ratio of productive capital to income

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.28]Fighting Inequality
 
 
• These theories explain the marked disparity between the growth in labor productivity and real
 wages
  ・Wedge can't be explained by standard theories―skilled bias technical change or differential
   savings rates

• Reduced inequality would improve economic performance, in the short term, and in the long term

See Stiglitz, J. E., N. Abernathy, A. Hersh, S. Holmberg, and M. Konczal (2015).
Rewriting the Rules of the American Economy, New York: W.W. Norton, 2015.

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.29]III. Structural Reforms
 
 
Some basic principles

• In the absence of adequate demand, supply side reforms will increase unemployment, not promote
growth
  ・Moving people from low productivity sector to zero productivity unemployment
  ・Supply does not create its own demand
  ・Indeed, supply side reforms can weaken demand and lead to lower GDP
  ・But well designed demand policies can increase supply/productivity, can increase GDP today
   and potential growth rates

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.30]Supply side measures that would work
 
 
Often working in conjunction with "demand"

• Increased investment in technology

• Especially important as one creating an innovation economy and a learning society

• Increased investment in people―creating a healthier and more productive labor force

• Industrial policies which help restructure the economy, moving from old sectors to new
  ・Markets don't make these transformation well on their own

• Competition policies―preventing the agglomeration of economic power
  ・Monopolies restrict output

• Financial market reform
  ・Not just prevent financial sector from imposing harms
  ・Encouraging it to do what it is supposed to do, intermediate, private finance, especially
   for small and medium sized enterprises
  ・Encouraging equity rather than debt

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.31]Supply side measures that would work
 
 
• Measures to facilitate participation in labor force
  ・Good public transportation systems
  ・Parental and sick leave
  ・Child care

• Inclusion of groups that have been discriminated against and marginalized
  ・Women
  ・Minorities
  ・immigrants

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.32]Supply side measures that would work
 
 
• There are many ineffective (or counterproductive) supply side measures
  ・Lowering corporate income tax
    ・But lowering taxes on corporations that invest and create jobs and increasing it on
     corporations that don't would incentivize investment and job creation
  ・Financial market deregulation
    ・Leads to less investment, more speculation, instability
  ・Trade measures have not had hoped for supply side benefits
    ・Benefits always overestimated
      ・Current estimates of TPP for US around zero
    ・Growing consensus TPP is a bad trade agreement, will not be ratified by US Congress
      ・Investment provisions especially objectionable―introduce new source of
       discrimination, limits ability to regulate economy in ways that would lead
       to stronger growth, protect environment, etc.

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.33]Other counterproductive supply side measures
 
 
• Backward looking supply side reforms also will not work
  ・Reducing excess housing capacity in the US (empty homes in Nevada desert) would not have
   helped US recovery
  ・Destroying excess chip capacity in Korean crisis (1998) would have impeded its recovery
    ・Ignored option value
  ・Arguments often made by those wishing a reduction in competition
    ・"national champions" = oligopolies

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.34]Failure of Supply side measures
 
 
• Supply side measures in US (and other countries) in early 1980s failed
  ・Didn't live up to promise of increasing tax revenues―actually fell
  ・Didn't live up to promise of increasing growth―actually fell
    ・Savings rate fell
      ・Same effect seen in more recent tax cuts in beginning of 2000s
    ・Labor force participation fell
  ・Worries about impact on inequality more than justified―have reached new heights

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.35]IV. Financial sector and financial turmoil
 
 
• Some of turmoil is reflection of lack of transparency in financial markets

• Some of turmoil is reflection of short-sighted nature of financial markets―they have always
 been very fickle

• Some of turmoil is reflection of deep uncertainty about the direction of the global economy

• Some of turmoil related to failure of countries to coordinate monetary policy, resulting
 uncertainty in exchange rates, large movements in destabilizing capital flows
  ・Facilitated by capital and financial market liberalization

• Much of the turmoil reflects failure to address fundamental problems in the financial sector

• Problem is that the turmoil is likely to have consequences for the real sector

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.36]Reforming the financial sector
 
 
• More than preventing the sector from imposing harm
  ・Through excessive risk taking
  ・Market manipulation, predatory lending, etc.
  ・Abuse of market power

• Ensuring that it plays societal role at low transactions costs
  ・providing SME and housing finance
  ・managing retirement accounts and running the payments system at low transactions cost

So far, we have failed in both tasks

There is the need for broader and deeper reforms and broadening public instruments for providing
access to credit
• Student loans
• Public option in mortgages
• Public option in retirement accounts

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.37]V. Global Reforms
 
 
• Need new global reserve system
  ・Current system is a historical anachronism
  ・Leads to biases towards surpluses
  ・Weaknesses in reserve currency countries
  ・A global reserve system, as suggested by Keynes and recent UN Commission would lead to
   greater global stability

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.38]Global reforms
 
 
• Need global coordination to reduce global imbalances
  ・China's surpluses are in process of being reduced
  ・But those in the Eurozone are increasing
    ・Will need deep reforms in Eurozone

• Need global macro‐economic (monetary and fiscal) coordination
  ・Was hope that this would happen after Global Financial Crisis
  ・Hasn't materialized―even greater asynchronous movements

• Need better ways of recycling surpluses
  ・New development banks move in the right direction
  ・But there is a need for governance reforms and recapitalization of Multilateral development
   banks

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.39]Finance for development
 
 
Could simultaneously recycle surpluses, adding to global demand, and promote development, but
there are three impediments

• Debt markets: no international framework for debt restructuring
  ・Important initiative at the UN, supported by vast majority of countries
  ・But US and some European countries arguing against a "rule of law"

• FDI: investment agreements undermine the ability of countries to regulate

• Taxation of multinationals: international tax regime makes raising revenues difficult
  ・Race to the bottom
  ・BEPS agreement at G-20 left key issues unaddressed
  ・Deeper reform of global tax regime needed

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.40]Action on climate change
 
 
• Investments to retrofit the economy for climate change would provide needed stimulus to global
economy

• Environment and economic growth are complementary
  ・Especially if we measure growth correctly

• Providing a price on carbon would provide incentives for investment

• Paris meeting was important in creating momentum, so business community realizes that in one
 form or another there will eventually be a price for carbon
  ・Key investments (infrastructure, housing, buildings, power plants) are long term

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.41]VI. Reforms in the global decision making process
 
 
• Global economic integration has outpaced than of global political integration

• Whenever there are spillovers, externalities need for collective action

• But we have no good framework for doing so at the global level

• Global economic policy too often reflects power and special interests
  ・Not necessarily focusing on areas where global cooperation and harmonization are necessary
    ・Excessive harmonization of IPR rules
    ・Harmonization on rules that reflect special interests, with insufficient democratic
     accountability―different from what might emerge from a more global democratic process
    ・Especial concern that new trade agreements will impair ability of governments to
     perform essential regulatory functions in a democratic way
  ・Focus is on harmonizing down, to lowest common denominator

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.42]Reforms in global decision making process
 
 
• How to increase representativeness
  ・Under-representation of small and poor countries
  ・Important, even if they have little weight in global economy

• How to increase legitimacy
  ・UN is the international body with global legitimacy
  ・IMF has similarly more legitimacy within its remit

• Danger of "club" getting together to make decisions for all
  ・Undermines credibility of other organizations

• Alternative: Global Economic Coordinating Council
  ・Operating under the UN, IMF

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.43]Rethinking global decision making
 
 
• Variable geometry
  ・Recognizing that it will be difficult to get close to unanimity on many issues

• "Coalition of willing"―for instance on climate change
  ・With cross-border taxes to induce others to cooperate

• May not be able to get all to agree to new global reserve system
  ・Again coalition of willing―advantages will induce others eventually to join

• Thinking carefully about where externalities are most important
  ・Absence of collective risk bearing induces high level of savings, reduces global aggregate
   demand
  ・Global rules favoring capital increase inequality, with adverse effects on global aggregate
   demand
  ・Global instability creates inequality, leads to high savings, both of which contribute to
   deficiency in global aggregate demand

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.44]VII. The World Today in Perspective
 
 
• Many of the advanced countries began an experiment a third of a century ago―lowering taxes,
 deregulation

• There was a need to adjust economic framework to changing economic circumstances
  ・But they made wrong adjustments

• Consequence has been slower growth and increasing inequality

• Full effects are just now being felt―but they have been on their way

• If current course continues things will get worse
  ・With untold political consequences―some of which we are beginning to see

• This experiment can and should now be declared a major failure

• There is a need for a new course
  ・Minor changes, tweaking of current arrangements will not do

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.45]Many pieces to this failed experiment
 
 
• New approaches to monetary policy
  ・Focus on inflation, rather than balanced perspective―growth, employment and stability

• New approaches to fiscal policy
  ・In Europe, stringent constraints on deficits

• New emphasis on privatization
  ・Extending even to social security in some countries

These too have not brought promised benefits

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.46]Experiment in new global architecture is also a failure
 
 
• Forty years ago would began experiment with unfettered capital flows
  ・Was supposed to bring a new era of stability

• Markets would do a better job than governments

• Instead it ushered in new era of global instability
  ・Especially associated with short term capital flows

• Now even the IMF says that there should be capital controls (capital account management)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.47]There is a way forward
 
 
• Restoring the balance between the government and the market

• Recognizing the importance of the "third sector" and new institutional arrangements

• Ending austerity

• Global efforts to address global needs, global public goods, global externalities
  ・Beyond climate change to include a global science foundation
  ・Global efforts to increase productivity―instead of a race to bottom

• Commitment to measures to increase living standards for all

• Global reassessment of how we measure progress
  ・What we measure affects what we do
  ・Main message of the Commission on the Measurement of Economic Performance and Social
   Progress
  ・Work continuing at the OECD

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.48]The World Economy: The Way Forward
 
 
• The New Mediocre, the Great Malaise, Secular Stagnation are not inevitable
  ・They are the result of failed policies

• In an increasingly integrated world, the best way forward would entail global cooperation in
restoring balance and increasing aggregate demand
  ・Combined with cooperation, for instance, in the provision of global public goods
   ―research, global warming
  ・Achieving that cooperation has proven difficult
  ・Japan’s leadership in G-7 may be part of way forward

• But even lacking that cooperation, there is much that each country can do to strengthen demand
 and improve productivity within its own borders
  ・With significant spill-overs to others

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
http://www.asyura2.com/14/test31/msg/466.html

[雑談・Story41] スティグリッツ教授提出資料(事務局による日本語訳) 第1回国際金融経済分析会合配付資料(首相官邸)
スティグリッツ教授提出資料(事務局による日本語訳) 
第1回国際金融経済分析会合 2016年3月16日
配付資料 資料2(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai1/gijisidai.html

仮訳 

大低迷と金融の安定を超え、健全で持続的な成長に向けて
 
 
ジョセフ・E・スティグリッツ
東京
2016年3月
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.2]I.我々は今どこにいるか
 
 
• 緩慢な成長―大低迷(Great Malaise)、新たな凡庸(New Mediocre)
 ・今のところまだ危機ではない。

 ・しかし、G7の多くの国々では(覆い隠されたケースも含め)恒常的に多くの失業が発生している。
  若年層や社会の主流から取り残された層では更に高率の失業が発生。

 ・この緩慢な成長の果実は一部のトップ層に偏って分配されている―格差は拡大し、賃金の上昇は停滞。
   ・「公式には」失業率が低いとされている国でさえ、雇用の質や覆い隠された失業には疑問符。

 ・世界経済危機前にも関わらず、2007年の世界経済は実際には弱かった。
   ・バブルによって支えられていただけだった。
   ・経済危機前の2007年の世界を取り戻すということは、かつて我々が保持していたものと同じ、
    弱い経済に戻ってしまうことを意味する。

• 入り交じる見通し―堅調な成長に戻る可能性は小さく、景気後退や停滞の可能性は高い。
 ・資産価格バブルの収縮への、もっともな懸念。
 ・国家や企業が多額の債務を抱える中、新興国は巨額の資本流出に直面。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.3]伸び悩む米国経済
 
 
• 仮に1980年から1998年までの経済成長が継続していたとしたら、今の米国のGDPは、現実のGDPよりも
 15%ほど高いものとなっていたはずである。

• 女性の労働参加が急速に進んだ1980年代初頭と比較しても、現在の生産年齢人口の就業率は低い。

• 中位の(家計)所得は、1989年と比較して1%の上昇すら達成していない。

• 最下層の実質賃金は60年前よりも低い。

• 若年層のアフリカ系アメリカ人の失業率は未だに23.7%。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.4]

[グラフ]米国GDPのトレンド分析 [省略]
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.5]欧州はもっと悪い
 
 
• 失業率は更に高い。

• 特に若年層の失業が深刻。

• 経済成長も更に低い水準。

• ユーロ危機は終わっていない。一時的な「小康状態(remission)」にあるだけ。
 ・統一通貨が機能するために必要な制度が創設されていない。
  そして、その制度が創設される見込みも当面ない。

• 欧州の現状と、仮に欧州が経済成長していたとしたら実現していただろう姿との間にはギャップが存在。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.6]危機以来、欧州のパフォーマンスは悲惨なもの

[グラフ]ユーロ圏のGDPのトレンド分析 [省略]
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.7]中国
 
 
• 世界金融危機以来、中国が世界経済の牽引役だった。
 ・先進国は直接的、間接的に影響を受ける。

• 深刻な経済減速となる見込み。

• 欧州と米国では、中国経済の減速を埋め合わせることはできそうもない。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.8]大不況(the Great Recession)に関する誤った診断
 
 
ただの金融危機ではない。

• 銀行のバランスシートは概ね再構築された。

• 規制改革もいくらか行われた(ドッド・フランク法)。

• しかし、経済は未だに健全な状態に戻っていない。
 ・クレジット・チャネルの改善に十分な注意が払われていない。
 ・このことは、金融緩和が期待されたほどの効果を得られていない理由の一つ。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.9]大不況(the Great Recession)に関する誤った診断
 
 
ただのバランスシート不況ではない。

• 大企業のバランスシートは概ね再構築された。

• 企業が投資に積極的にならないのは、バランスシートや資金調達の問題ではない。
 ・需要が足りないことが問題なのだ。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.10]更なる懸念
 
 
• 永続的な世界の不均衡
 ・ユーロ圏が問題を悪化させている。

• 非対称な調整
 ・所得の低下に直面する国家(企業、家計)は消費を減少させざるを得ない。
 ・所得が増加した国家(企業、家計)はその分の支出を増加させていない。
 ・原油価格の変動への対応では以下の点が特徴。
   ・原油価格の下落は需要を増加させると期待されていたが、「敗者」(losers)への悪影響が
    それらの便益を上回っている。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.11]中心的課題の診断
 
 
• 世界的な総需要の不足。

• それと相まって、各国において、非貿易セクターへの支援は不十分。

• 債務・金融化への過度の依存。

• さらに広くみれば、約30年前に市場経済のルールの転換(税制の再設計、ずさんな自由化)のプロセスが
 多くの先進国で始まった。これらは、当初の目論見に反して、更なる経済成長率の低下、不安定化、
 不平等化を招いた。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.12]大低迷(Great malaise)は、驚くほどに進展を見せない、より深刻な問題を覆い隠している
 
 
• 気候変動

• 格差、多数の貧困層
 ・富の不平等、健康の不平等(医療を民間の提供に依存する国においては)、裁判へのアクセスの不平等、
  と多岐に渡る。
 ・先進国では中間層が縮小。途上国においても中間層が縮小。
 ・これらの問題は、社会の主流から取り残された層や(しばしば)若年層では特に深刻。

• 持続的成長を実現するためには、徹底的な「構造変革」(structural transformations)が求められる。

• 市場経済に根付く問題が、生産性の停滞をもたらしている。
 ・民間部門・公的部門の両部門における短期的志向。
 ・基礎研究への投資の不足。そして、多くの国ではインフラへの投資の不足。
 ・過度の金融化。過度の金融化は以下の過程の一部でもあり、原因の一部でもある。
   ・富と資本の間のギャップの広がり。
   ・多くの国で産出に対する富の割合が高まる一方、産出に対する資本の比率が低下。
 ・教育システムの適合の失敗。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.13]II.これらの状況への対応
 
 
当然の手段に関する対立する見解:金融政策

• 金融政策は、概ねその役割を全うした。

• 深刻な停滞時において、金融政策が極めて有効だったことはこれまでにない。
 唯一の効果的な手段は財政政策。

• 本当の問題は、ゼロ金利制約ではない。金利を少し下げること(例えマイナスの領域に入ったとしても)
 は機能しない。
• マイナス金利の試みは、景気を大きくは刺激せず、悪い副作用をもたらす可能性も。

• 量的緩和政策は不平等を拡大した。しかし、(もしあったとしても)投資の大幅な増加にはつながらず、
 金融市場の不完全性あるいは不合理性により、リスクのミスプライシングやその他の金融市場の歪みを
 もたらした可能性。
 ・主な便益の一つは、競争的な通貨の切り下げである。しかし、それは、ゼロ・サム・ゲーム。
 ・適切な財政政策なしでは、「唯一の選択肢」問題は更に悪化する一途。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.14]当然の手段に関する対立する見解:財政政策
 
 
• 財政政策が債務増大のリスクを高める懸念。
 ・2008〜2009年に実施した景気刺激策は効果がなかったという見方は全くの間違い。
 ・対策がなければ更に悪化していたであろう失業率の低下をもたらすことができ、更なる景気後退、不況
  に陥るのを防いだ。
 ・危機時においては、支出を最適化する時間はなかった。―たとえ、不完全な歳出であっても、大量の
  資源を活用せずにいることや不況に比べれば望ましい。
 ・債務への懸念は、バランスシート・アプローチへの問題のすり替え。そこでは、政府は生産的な投資に
  対して支出することが前提とされている。

• グローバリゼーションにより政策効果は損なわれている。―便益は他国に流出し、費用は自国に発生。
 ・しかし、「優位」な解決策を提示するには、世界の協調関係は弱すぎる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.15]繁栄を取り戻すためには機能しないもの、不十分なもの
 
 
1.金融政策
  ・根本的な問題は、ゼロ金利制約ではない。
  ・低金利は資本集約型テクノロジーを生み出し、「雇用なき」経済回復につながる可能性。

2.貿易協定
  ・関税は既にかなりの低水準。
  ・G7諸国による、資本集約財を輸出する一方で労働集約財を輸入するという「バランスの取れた」
   貿易取引の増加は、雇用を減少させる。

3.見当違いの供給サイドの施策
  ・法人所得課税。

4.更なる緊縮財政

これらの対策のなかには、逆効果となるものも存在。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.16]対処法: 緊急の問題―世界の総需要を取り戻す
 
 
1.(パリ協定を受け)炭素に高価格を設定することは、気候変動に対応する世界経済への改革に向けた
  投資を促す。

2.経常黒字の一部の再活用(例えば開発銀行の資本再構成、新たな開発銀行の創設)は、インフラを
  含めた投資の必要性を満たすもの。
  ・民間部門は、仲介機能において非効率であることを自ら示している。
  ・長期的な投資家と長期的な投資をつなぐものが、短期取引中心の金融市場である。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.17]効果的な施策
 
 
3.政府支出の増加。部分的に税で賄われたものでも経済を刺激する。
  ・均衡予算乗数に関する原則:適切に設計された税と支出によって、乗数は極めて高いものとなる。
  ・国のバランスシートにおいては、負債のみではなく、資産・負債両面を見ることが適切な会計
   フレームワーク。
    ・教育、若者の健康への支出は投資であり、バランスシートの資産サイドを改善。
    ・インフラとテクノロジーへの投資も同様。
  ・環境税や土地税は、持続可能な成長を実現する経済再構築に役立つ。
  ・構造変革を推進し、平等性を高める政府支出も同様。

4.平等性を高めるその他の施策は世界の総需要を増加させる。
  ・経済ルールの大転換:市場で得る所得をもっと平等に。
  ・所得移転と税制の改善。
  ・賃金上昇と労働者保護を高める施策。
    ・いくつかの国では、組合や交渉を取り巻く法的枠組みを改善。

5.グローバルな基軸通貨制度を構築することで、需要を縮小させる外貨準備の積み立ての必要性を減らす
  ことができる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.18]世界的な総需要の先に
 
 
• 特に世界的にサービス経済への移行が進む中、非貿易セクターはますます重要に。

• 国内需要の低迷は供給を減らす。

• 国内需要は民間消費より大きい。
 ・環境や人間、(知識ギャップを埋める)テクノロジー、インフラ、住みよい街にするための投資も
  含まれる。

• これらの国内需要の大半は公的ファイナンスで調達されるべきもの。
 ・健康や教育はその中でも重要なサービス部門。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.19]A.緊縮財政をやめる
 
 
• 米国ですら、緩やかな形で緊縮になっている。
 ・通常の景気拡大局面では200万人の公的セクターの雇用が生まれるが、現在は逆に50万人減少している。

• 景気拡張的な財政緊縮や、債務が一定の閾値を超えると経済成長が低下する、といった考えの正しさは
 否定されている。

• もしそれらの考えが正しかったとしても、今のGDPと将来のGDP、いずれも増加させるように税収と投資を
 歩調を合わせて増加させていくということが均衡予算乗数の教え。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.20]バランスの取れたアプローチが必要―債務 対 税
 
 
• 債務や税収の水準、成長率の見通しにより、各国ごとに最適な債務と税のバランスは異なる。
 ・常にバランスシート視点を持つことが求められる。

• すべての国において、炭素税を含めた環境税(渋滞課金を含む「課金」)の引き上げで、相当な歳入が
 得られ、経済のパフォーマンスも改善するだろう。

• 金融取引税についても同様 。

• ほとんどすべての国において、土地や(「弾力的に供給を増加させることができない」)他の天然資源に
 対する税を引き上げることで、相当な歳入を増やし、成長率を上昇させるだろう(貯蓄の非生産的な用途
 への流入を減らすことができる)。

(次ページに続く)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.21]バランスの取れたアプローチが必要―債務 対 税(続き)
 
 
• 法人税減税は投資拡大には寄与しない。なぜなら、大抵の投資は借入が原資であり、支払利子は所得控除
 となるからだ(減税はネットの資本コストを上昇させ、投資意欲を減退させる!)
 ・むしろ、国内での投資や雇用創出に積極的でない企業に対して、法人税を引き上げる方が、投資拡大を
  促す。

• (炭素税・相続税など)いくつかの税金は、実際に現時点での支出を促す効果がある。

• 均衡予算乗数は、増税と歩調を合わせた支出拡大が経済を刺激することを示唆している。

適切に設計された税制は、格差・不安定・環境悪化といった主要な問題に取り組む手段となる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.22]緊縮策を超えて
 
 
予算ルール・フレームワークの再考

• 資本予算(Capital Budgeting)
 ・資金調達コストが低く、投資リターンが高い時には、バランスシートの観点が特に重要である。

• 投資促進のための開発銀行(development banks)の活用
 ・税と支出が適切に選択されれば、乗数の効果は極めて高い。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.23]B.効果的に支出する:重要な長期の問題に焦点を当てる―生産性の観点の欠落
 
 
テクノロジーやインフラに対する投資は、民間投資を補完する効果を有するものであるが、最適な水準と
比べると低く留まっている。
• 基礎研究に対する政府支援額(対GDP比)は、半世紀前よりも低くなっている。
• 生産性向上につながる新たなイノベーションを推進するアイデアの源が干上がっている。

必要なことは、インフラとテクノロジーへのより積極的な投資である。
• インフラ・テクノロジーへの公共投資は民間投資と補完的であり、民間投資を刺激する事につながる。
• 投資はインフラ銀行(infrastructure bank)からファイナンスすることができる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.24]C.効果的に支出する:重要な長期の問題に焦点を当てる―構造変革(Structural Transformation)
 
 
• 世界的に、製造業の雇用が減少している。

• グローバリゼーションとともに、先進国では雇用に占める製造業のシェアが低下していく。

• サービス産業にシフトする必要がある。
 ・いくつかの国では、サービス産業の生産性が向上している。

• そのような大規模な構造変革(structural transformation)が求められているが、市場はそれ自体では
 必要とされている構造変革を達成することが上手くできない。
 ・かつて行われた農業から製造業への移行がそれを証明している。

• サービス産業の中では、教育・健康に改善の余地がある。
 ・これらの部門では、政府が正当に重要な役割を担うものである。
 ・ただし、緊縮財政は、政府がその役割を果たすことを抑制してしまう。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.25]構造変革(Structural Transformation)に伴って発生する課題
 
 
• その新しい経済構造は、かつてほど資本集約的(capital-intensive)ではなくなるだろう。
 ・従って、想定されるGDP成長率を達成するために必要となる投資は、より小さなものだろう。

• 特に熟年労働者は、新しい経済構造に対して準備不足であろう。
 ・ベビーブーム世代の高齢化と合わせて、労働者のかなりの部分が高齢化している。
 ・その世代の再活躍を促さないことによる社会的なコスト―つまり、その世代の人的資本の陳腐化を単に
  受け入れること―は増大している。

• 今存在する取り決めが、高齢者と若者に関わる問題を生み出している。
 ・国債を通じて手堅く運用している高齢者がわずかな所得しか得られないということを、ゼロ金利の環境
  は意味する。
 ・若者は家を買う余裕は無く、職を得るまで長期間待つ必要が多々あり、職を得ても自らのスキル・才能
  を生かせず、そして多くの国では若者は多大な債務を背負い込まされている。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.26]構造変革(Structural Transformation) 促進に向けた政策
 
 
• 農業から製造業への移行において、多くの国で政府が中心的な役割を果たした。

• より積極的な労働市場政策を含め、政府は再び積極的な役割を担うことが求められている。

• しかしながら、これらの政策は、再職業教育を受けた労働者のための仕事が存在する場合に限って効果が
 ある。
 ・完全雇用を取り戻すための包括的なフレームワークが求められる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.27]D.格差と戦う
 
 
• 単なる再分配の話ではない。

• 事前分配:市場で得ることのできる所得のより公正な分配を確実なものとするための経済ルールの大転換。
 ・市場は真空の中に存在するものではない:市場の構築方法により、市場の機能・効果・分配が決まる。
 ・家賃の上昇は、所得に対する生産的な資本の比率が減少しているにも関わらず、所得に対する富の比率
  が上昇しているという異常さを物語っている。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.28]格差と戦う
 
 
• これらの理論は、労働生産性と実質賃金における著しい不均衡を示している。
 ・この不均衡は、スキル偏重型の技術進歩や貯蓄率の差異といった標準的な理論では説明できない。

• 格差縮小は、短期的にも、長期的にも、経済パフォーマンスを改善する。

ジョセフ・E・スティグリッツ(桐谷知未訳)『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」
の教科書』(徳間書店、2016年)(原著:Stiglitz, J. E., N. Abernathy, A. Hersh, S. Holmberg, and
M. Konczal (2015). Rewriting the Rules of the American Economy, New York: W.W. Norton, 2015.)
を参照。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.29]III. 構造改革(Structural Reforms)
 
 
基本的な原則

• 適切な需要なしには、サプライサイドの改革は、失業を増加させるだけで、経済成長には寄与しない。
 ・低生産性部門からゼロ生産性、つまり、人々を失業に追いやるものである。
 ・供給は、それ自体の需要を作り出さない。
 ・実際に、サプライサイドの改革は需要を弱め、GDPを低下させ得る。
 ・しかし、適切に設計された需要刺激策は、供給/生産性を増加させ、現在および潜在的なGDP成長率を
  引き上げることができる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.30]機能するサプライサイドの施策
 
 
「需要」と一体となってこそ、機能することが多い。

• テクノロジーへの投資拡大
 ・革新的経済(innovation economy)と学習社会(learning society)を作り出す上で、とりわけ重要。

• 人間への投資の拡大―より健康でより生産性の高い労働力を創出する。

• 経済を再構築し、古い産業から新しい産業への移行に役立つ産業政策
 ・市場だけでは、これらの変革は作り出せない。

• 競争政策―経済的な権力が合従することを防ぐ
 ・独占は産出を阻害する。

• 金融市場改革
 ・金融機関が他に害を及ぼすことを防ぐだけでは不十分。
 ・とりわけ中小企業のために期待される役割を果たし、金融を仲介し、民間資金を提供するように
  金融機関に促すことが求められる。
 ・債務よりも資本性の資金を促すことが求められる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.31]機能するサプライサイドの施策
 
 
• 労働参加を促進する施策
 ・有効な公共交通システム
 ・育児休暇、有給病気休暇
 ・子育て支援

• 被差別層・社会の主流から取り残された層の包摂
 ・女性
 ・少数派・マイノリティー
 ・移民
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.32]機能するサプライサイドの施策
 
 
• 効果的でない(または逆効果な)サプライサイドの施策が多く存在する。
 ・法人所得税率の引下げ。
   ・例外として、投資をして雇用を創出させる企業には減税し、投資や雇用創出に消極的な企業には
    増税する施策。
 ・金融市場の規制緩和。
   ・投資の減少、投機の拡大、市場の不安定化につながる。
 ・貿易政策においてサプライサイドの効果は期待されてこなかった。
   ・効果は常に過大評価される。
     ・米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される。
   ・TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないであろう
     ・特に投資条項が好ましくない―新しい差別をもたらし、より強い成長や環境保護等のための
      経済規制手段を制限する
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.33]他の逆効果なサプライサイド施策
 
 
• 後ろ向きなサプライサイド改革も機能しない。
 ・米国における住宅の過剰供給(ネバダ砂漠の空き家)の削減は、米国経済の回復に寄与していない。
 ・韓国の経済危機(1998年)における半導体チップの過剰生産能力の破壊は、同国経済の回復を遅らせた。
   ・オプションを持つことの価値は無視される。
 ・競争相手を減らすことを望む向きがよく持ち出す議論。
   ・「国の代表的企業」(“national champions”) という言葉は、 実のところは寡占事業者を意味
   するもの。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.34]サプライサイド施策の失敗
 
 
• 1980年代初頭の米国(および他国)におけるサプライサイド施策の失敗。
 ・税収増加の約束は果たされなかった―実際には減収。
 ・成長率を高める約束は果たされなかった―実際には低下。
   ・貯蓄率低下。
     ・より最近の2000年代初頭における減税でも同じ結果がみられた。
   ・労働参加率低下。
 ・サプライサイド施策の正当化よりも、サプライサイド施策による格差への影響の懸念は最高潮に達して
  いる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.35]IV.金融セクターと金融混乱
 
 
• 金融の混乱は、金融市場の不透明感を反映。

• 金融の混乱は、金融市場の近視眼的な性質を反映―金融市場は常にとても気まぐれ。

• 金融の混乱は、世界経済の先行きに関する深刻な不確実性を反映。

• 金融の混乱は、いくつかの国における金融政策調整の失敗に関連しており、結果として為替レートの
 不確実性や不安定な資本フローの大きな動きが生じている。
 ・資本市場、金融市場の自由化がこれらを促進。

• 金融の混乱の多くは、金融セクターにおける根本的な問題への取組の失敗を反映したもの。

• このような金融の混乱が実体経済に波及する可能性が高いことが問題である。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.36]金融セクターを改革する
 
 
• 金融セクターからの害を防ぎ、以下も阻止する。
 ・過度なリスクテイク
 ・市場操作、略奪的貸付など
 ・市場における支配的地位の乱用

• 金融セクターが低い取引コストで社会的役割を担えるようにする。
 ・中小企業金融や住宅金融の供給
 ・年金口座の管理や決済システムの運用を低い取引コストで実施

今までのところ、両方のタスクに失敗。

より広くより深い改革と、与信を提供する公的手段の拡大が必要。
• 学資ローン
• 住宅ローンに関する公的オプション
• 年金勘定に関する公的オプション  
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.37]V.世界規模の改革
 
 
• 新しい世界基軸通貨制度の必要性
 ・現在のシステムは過去の遺物。
 ・経常黒字を追求するバイアスにつながっている。
 ・準備通貨国の脆弱性。
 ・ケインズや最近の国連委員会が提唱しているように、世界基軸通貨制度はより強固な世界の安定に
  つながるもの。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.38]世界規模の改革
 
 
• 世界の不均衡を縮小させる世界的な協調が求められている。
 ・中国の経常黒字は減少過程にある。
 ・しかし、ユーロ圏の経常黒字は増加している、
   ・ユーロ圏において大きな改革が必要となる。

• 世界的なマクロ経済(金融および財政)政策協調が求められている。
 ・世界金融危機後に起きうることが期待された。
 ・しかし、未だに実現していない―むしろ、政策の不調和は拡大している。

• 経常黒字を活用するより良い手段が求められている。
 ・新しい開発銀行は正しい方向。
 ・ただし、ガバナンス改革と開発銀行間の資本再構成の必要性が存在。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.39]開発に向けて資金を提供する
 
 
開発に向けた資金の提供は、経常黒字の活用、世界需要の増加、開発の促進というメリットを同時に実現
するものであるが、3つの障害がある。

• 債務の市場:債務再構成に関する国際的なフレームワークがない。
 ・国連における重要な発議があり、大多数の国が支持。
 ・しかし、米国と幾つかのヨーロッパ諸国が「法の支配」(rule of law)に反対。

• 海外直接投資: 投資協定が協定国の規制能力を損なう。

• 多国籍企業への課税:国際的な税体系が税収の拡大を困難にしている。
 ・「底辺への競争」(Race to the bottom)
 ・G20におけるBEPS(税制浸食と利益移転)合意では、重要課題への取組が不十分。
 ・国際的な税体系のより抜本的な改革が求められる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.40]気候変動へのアクション
 
 
• 気候変動への対策として行う投資は、世界経済にとって必要な刺激策となるだろう。

• 環境と経済成長は補完的な関係にある。
 ・とりわけ経済成長を正確に捉えた場合に。

• 炭素に価格を設定することにより、投資が喚起される。

• 国連気候変動パリ会議は、この気運を醸成するという観点から重要だった。経済界は、どのような形に
 なるにせよ、やがては炭素に価格が設定されることを理解したはずである。
 ・鍵となる投資(インフラ、住宅、建築、発電所)は長期的な投資。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.41]VI.世界的な意思決定プロセスの改革
 
 
• 世界的な経済統合は、世界的な政治統合よりも速く進んできた。

• 国を越えた波及効果がある場合にはいつも、外部性には集団的な対処が求められる。

• しかし、世界的な対応を行うに当たっての優れた枠組みは現時点では存在しない。

• 世界的な経済政策は、あまりに頻繁に権力や特定の利害に左右される。
 ・世界規模の協力や調和が求められる分野に必ずしも焦点が当てられていない。
   ・知的所有権ルールの過剰な調和。
   ・国内で説明責任を十分に果たさないような特定の利害を反映したルールの調和は、世界的に民主的な
    プロセスから生まれる調和とは異なるものである。
   ・各国政府が民主的なやり方で必要な規制を実施しようとした際に、新たな貿易取り決めがその能力を
    損なうことが特に懸念される。
 ・焦点を当てられるべきは、下方への調和であり、最も恵まれない立場にある者との共通の基盤への調和
  である。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.42]世界的な意思決定プロセスの改革
 
 
• どのように代表性を高めるか。
 ・小国、貧困国の代表性は低い。
 ・世界経済に占めるウェイトは小さいとしても、それらの国々は重要な存在である。

• どのように正当性を増すか。
 ・国連は、世界的な正当性を有する国際的な機関である。
 ・IMFもその権限内において、同様に、更に大きな正当性を有する。

• 「特定の会員」(“club”)が全員のための意思決定を行う危険。
 ・他の組織の信頼性を損なう。

• 代替策:世界経済調整委員会(Global Economic Coordinating Council)の創設
 ・国連、IMFの下で運営
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.43]世界的な意思決定を再考する
 
 
• 可変形状(Variable Geometry)
 ・多くの問題で、全会一致に近づくことは困難であると認識すること。

• 「有志連合」(“Coalition of willing”)―例えば、気候変動
 ・国境を越えた課税により、他国の協力を促す。

• 新しい世界基軸通貨制度は、恐らく全ての国の合意を得ることは難しい。
 ・この場合も有志連合が有効。―参加による利益が存在するため、他の国もやがて参加する。

• 外部性が最も有効な場面を注意深く検討する。
 ・共同でリスク分散を行う仕組みが存在しない限り、高水準の貯蓄を行う国が生まれ、世界的な総需要を
  縮小させる。
 ・資本集積に有利に働く世界的なルールは、格差を拡大させ、世界的な総需要の拡大には逆効果。
 ・世界的な不安定性は格差を生み出し、高水準の貯蓄につながるもの。そして、それらは、世界的な
  総需要の欠乏の要因となる。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.44]VII.遠近法で今の世界を見る
 
 
• 30年ほど前、多くの先進国では、税率の引き下げや規制緩和といった実験を始めた。

• 変化する経済環境に対応し、経済の枠組みを調整する必要があった。
 ・しかし、誤った調整がなされてきた。

• 結果として、経済成長は鈍化し、格差が拡大。

• 今となって漸く、それらの結果が全て目に見えるものとなったが、過去からずっと進行してきた結果
 なのである。

• 現在の方向性が維持されると、状況は更に悪化するだろう。
 ・未だ語られていない政治的な帰結もある。そのうちの幾つかは分かり始めている。

• これらの実験は、大きな失敗であったと今や言うことができる。大きな失敗であったと言うべきである。

• 新たな方向性が求められる。
 ・現在の取り決めの微調整では上手くいかないだろう。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.45]この失敗した実験の断片
 
 
• 金融政策への新たなアプローチ
 ・経済成長、雇用、経済安定化といったバランスのある視点よりも、インフレの安定化に焦点。

• 財政政策への新たなアプローチ
 ・欧州では、財政赤字に対して厳重な制約。

• 民営化の新たな流れ
 ・社会保障分野にまで民営化の流れが及ぶ国も存在。

これらの政策は、期待するほどの成果を上げていない。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.46]世界の制度設計に関する実験も失敗している
 
 
• 40年前から、資本移動の自由化が試みられてきた。
 ・それにより、経済が安定化した時代が訪れると期待されていた。

• 政府よりも市場メカニズムの方が効果的とされていた。

• こうした実験の結果、逆に、世界的な不安定化の時代に突入した。
 ・特に、短期的な資本移動に関連して不安定性が発生。

• 現在では、IMFでさえ資本移動の制限(資本勘定の管理)が必要と主張。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.47]この道しかない
 
 
• 政府と市場のバランスを取り戻す。

• 政府・民間とは異なる「第三のセクター」(“third sector”)や、新たな制度枠組みの重要性を認識
 する。

• 緊縮財政をやめる。

• 世界的な基本的ニーズ、世界的な公共財、世界的な外部性に対して、世界的に対処する。
 ・気候変動を超えて、世界的な科学基盤を含めるべきである。
 ・底辺への競争を行うのではなく、世界的に生産性向上に務めるべきである。

• 世界中・全ての人間の生活水準を引き上げる施策に全てを捧げる。

• 進歩に関する指標の世界的な再評価を行う。
 ・評価基準が行動にも影響する。
 ・「経済パフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会」(※)におけるメインメッセージ。
 ・その検討はOECDにおいて継続されている。


 (※)スティグリッツ教授が中心となって、フランスのサルコジ大統領のイニシアティブの下で、
    社会の幸福度を測定しようとした取組。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.48]世界経済:この道を進もう
 
 
• 「新たな凡庸」(The New Mediocre)、 「大低迷」(the Great Malaise)、「長期停滞」
 (Secular Stagnation)は避けられないものではない。
 ・これらは、政策の失敗による帰結。

• 統合が進展する中、前進するための最善の方法は、バランスを取り戻し、総需要を増加させるために
 国際的な協調を行うことだ。
 ・例えば、世界公共財の供給―研究、地球温暖化対策―に向けた国際協調。
 ・この国際協調はとりわけ困難である。
 ・G7において、日本がリーダーシップを発揮することが、前に進むための一歩となるだろう。

• しかし、そういった国際協力が不十分な状況下にあってさえ、需要の強化や生産性の向上のために各国が
 単独で行うことのできることは多く存在する。
 ・それは、大きな好影響を他の国に対しても与えるのだ。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
投稿者によるコメント

スティグリッツといえば、「99%」の側の人間にとってより望ましいグローバル化への道筋を示してくれるというようなことで評価されている高名な経済学者の一人だ。今回の国際金融経済分析会合については、ノーベル経済学賞受賞者としての権威をもつスティグリッツが消費税率引き上げの見送りを提言したということで、実際の見送りについての観測も含めて大きく報じられた。また日本農業新聞は、スティグリッツが配布した資料の中でTPPの効果や批准の見通しに否定的な見解を示したことを取り上げた。

そのような話題性のある配布資料に目を通したついでに、それをテキスト化してみた。しかし、やはりこの資料を読む分にはリンク先のオリジナルPDFの方が読みやすい。2つのグラフは省略した(省略やページ番号を示すブラケットは投稿者が付した)。手作業のレイアウトでミスがないともかぎらない。もとのPDFの劣化コピーとしかいいようのないしろもので、誰の役にも立たないかもしれないが、実験的な意味あいも込めて投稿させていただく。
http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/317.html

[雑談・Story41] スティグリッツ教授提出資料(英語) 第1回国際金融経済分析会合配付資料(首相官邸)
スティグリッツ教授提出資料(英語) 
第1回国際金融経済分析会合 2016年3月16日
配付資料 資料1(首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai1/gijisidai.html
 
 
Beyond the Great Malaise and Financial Stability towards Robust and Sustainable Growth
 
 
Joseph E. Stiglitz
Tokyo
March, 2016
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.2]I. Where we are
 
 
• Slow growth―Great Malaise, New Mediocre
  ・Not a crisis yet
  ・But with persistent moderately high unemployment (in some cases disguised) in
   many of G-7, higher unemployment among youth and marginalized groups
  ・Disproportionate share of slow growth going to a few at the top―growing inequality, wage
   stagnation
    ・Even in countries with low "official" unemployment, raising questions of quality of job
     growth and disguised unemployment
  ・World economy was weak in 2007, before crisis
    ・Only sustained by a bubble
    ・Restoring the world to 2007 simply restores us to the weak economy we had then

• Mixed prospects―small probably of returning to robust growth, large probability of recession
 or worse
  ・Justifiable concerns about asset price bubbles that might deflate
  ・Emerging markets facing massive capital outflows, with many countries and
   companies over-indebted

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.3]Underperformance of US Economy
 
 
• GDP some 15% below what it would have been had the growth rates that prevailed between 1980
 and 1998 continued

• Percentage of the working‐age population employed lower than it was in the early 1980s, when
 women were entering the workforce en masse

• Median real (household) income is less than 1% higher than it was in 1989

• Real wages at the bottom are lower than 60 years ago

• African-American youth unemployment rate is still 23.7%

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.4]

[graph] United States GDP Trend Analysis [省略]

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.5]Europe is even worse
 
 
• With higher levels of unemployment

• Especially youth unemployment

• And lower levels of growth

• Euro crisis is not over ― only under short term "remission"
  ・Haven't created institutions that are necessary to make a single currency work, and not
   likely to do so at time soon

• Gap between where they are and where they would have been growing

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.6]Dismal European performance since crisis

[graph] Euro Area GDP Trend Analysis [省略]

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.7]China
 
 
• Has been driver of global economic since GFC
  ・Advanced countries affected directly and indirectly

• Likely to be significant slowdown

• Europe and US not likely to be able to make up for the slowdown of China's economy

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.8]Misdiagnosis of the Great Recession
 
 
More than a financial crisis

• Banks' balance sheets are largely restored

• Some regulatory reform (Dodd Frank)

• Yet economy is not back to health
  ・Insufficient attention paid to improving credit channel
  ・Helps explain why monetary easing didn’t help as much as hoped

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.9]Misdiagnosis of the Great Recession
 
 
More than a balance sheet recession

• Balance sheet of large corporations largely restored

• It is not corporate balance sheets or their access to finance that are holding them back from
 investing
  ・It is lack of demand.

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.10]Further concerns
 
 
• Persistent Global imbalances
  ・Eurozone has exacerbated problem
• Asymmetrical adjustment
  ・Countries (firms, households) facing a decline in income have to reduce consumption
  ・Those with increased income do not expand spending symmetrically
  ・Response to changes in oil price illustrates
    ・Many had expected lower prices to increase demand, but adverse effects of "losers"
     more than offsetting these benefits

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.11]Diagnosis of the central problem
 
 
• Lack of global aggregate demand

• Combined with insufficient efforts in each country to support non-traded sectors

• Excessive reliance on debt, financialization

• More broadly, in large parts of advanced countries about a third of a century ago, there began
 a process of rewriting the rules of the market economy (redesigning tax structures, ill-thought
 out liberalization) that led to slower growth, more instability and more inequality―just the
 opposite of what was promised

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.12]Great malaise hides deeper problems on which there is being made remarkable little
    progress
 
 
• Climate change

• Inequality, large number of individuals in poverty
  ・With many dimensions―inequality in wealth, health (in countries relying on private provision
   of health care), and access to justice
  ・Hollowing out of the middle in advanced countries―and even in developing world
  ・Problems especially severe for marginalized groups and (often) youth

• Deep structural transformations needed to achieve sustainable growth

• Deeper problems in market economies leading to productivity slowdown
  ・Short termism in both private and public sector
  ・Insufficient investment in basic research, and in many countries, infrastructure
  ・Excessive financialization, part of process, part of cause
    ・Opening up major gaps between wealth and capital
    ・Capital output ratio in many countries going down even as wealth output ratio increases
  ・Failures to adapt education system

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.13]II. Responding to the situation
 
 
Conflicting views about obvious instruments: monetary policy

• Monetary policy has largely run its course

• Never very effective in deep downturns: the only effective instrument is fiscal policy

• Real problem not zero lower bound―slight lowering of interest rates (into negative territory)
 will not work
  ・Experiments with negative interest rates unlikely to stimulate much, may have adverse side
   effects
• QE increased inequality, did not lead to significant increase in investment (if any) and
 because of financial market imperfections/irrationalities may have led to mispricing of risk
 and other financial market distortions
  ・One of main benefits was competitive devaluation―but that's a zero sum game
  ・In absence of adequate fiscal policies, "only game in town"―matters would have been worse
   in its absence

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.14]Conflicting views about obvious instruments: fiscal policy
 
 
• Worry that fiscal policy risks damaging build up of debts
  ・View that fiscal stimuli in 2008/2009 didn't work is absolutely wrong
  ・Reduced unemployment from what it otherwise would have been, prevented deeper
   recession, depression
  ・In crisis, didn't have time to optimize spending―but even imperfect expenditures were
   better than alternative of massive idle resources and depressions
  ・Worry about debts is fundamentally misplaced in balance sheet approach, where government
   spends money on productive investments

• Effectiveness of policies undermined by globalization―large spillovers to others, costs borne
 at home
  ・But global coordination sufficiently weak to provide "superior" globally coordinated
   solutions

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.15]What will not work―or not be sufficient―to restore prosperity
 
 
1. Monetary Policy
  ・Underlying problem is not Zero Lower Bound
  ・Low interest rates induce capital intensive technology, may lead to "jobless" recovery

2. Trade agreements
  ・Tariffs already very low
  ・With G‐7 exporting capital intensive goods, importing labor intensive goods, a "balanced"
   increase in trade leads to lower employment

3. Misguided supply side measures
  ・Corporate income taxes

4. Another dose of austerity

Some of these measures would be counterproductive

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.16]Remedies: Immediate issue―restoring global aggregate demand
 
 
1. Setting a high price on carbon (following up on Paris) will induce investments to retrofit
  the global economy for climate change

2. Recycle some of the surpluses, e.g. through recapitalization of development banks, or creating
  new development banks: would help meet deep investment needs, including infrastructure
  ・Private sector has proven itself relatively ineffective in intermediation
  ・Short term financial markets sit between long term investors and long term investments

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.17]Measures that would work
 
 
3. Increasing government spending, financed partially by taxes, will stimulate economy
  ・Principle of balanced budget multiplier; with well designed taxes and expenditures,
   multiplier can be quite high
  ・Appropriate accounting framework looks at both sides of the national balance sheet, not
   just at liabilities
    ・Spending on education, health of young people are investments which improve asset side
     of balance sheet
    ・So do investments in infrastructure and technology
  ・Environmental taxes and land taxes will help restructure the economy to create sustainable
   growth
  ・So will government expenditures to promote structural transformation and promote equality

4. Other measures to increase equality will increase global aggregate demand
  ・Rewriting the rules: improving equality of market income
  ・Improving on transfer and tax system
  ・Measures that increases wages and worker security
    ・In some countries, improving legal framework surrounding unions/bargaining

5. A global reserve system will reduce need for demand-reducing build up of reserves

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.18]Beyond global aggregate demand
 
 
• Especially as world moves to service sector economy, non-traded sector likely to be
 increasingly important

• Absence of domestic demand impairs supply

• Domestic demand is more than private consumption
  ・Includes investment in environment, people, technology (closing the knowledge gap),
   infrastructure, making cities livable

• Much of this domestic demand will have to be publicly financed
  ・Health and education are among key service sectors

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.19]A. Ending austerity
 
 
• Even the US has had a mild firm of austerity
  ・500,000 fewer public sector employees, normal expansion would have some 2 million more

• Notions of expansionary contractions and that there is a critical threshold, above which debt
 lowers growth have been discredited

• Even if that were the case, the balanced budget multiplier means that increasing taxes in
 tandem with investment spending increases GDP now and in the future

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.20]Need balanced approach to finance―debt vs. tax
 
 
• Will vary from country to country, depending on levels of debt and taxes, growth paths
  ・Always need to keep balance sheet perspective

• In all countries, raising environmental taxes ("charges", including congestion fees),
 including carbon tax, would generate substantial revenues and improve economic performance

• So too would a Financial Transaction Tax

• In virtually all countries, raising taxes on land and other natural resources ("inelastically
 supplied") would raise substantial revenues, increase growth (less diversion of savings to
 unproductive uses)

(Cont'd on next slide)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.21]Need balanced approach to finance―debt vs. tax (Cont'd)
 
 
• Lowering taxes on corporations would not increase investment, since most investment is debt
 financed, and interest is tax deductible (lowering taxes raises net cost of capital, and thus
 discourages investment!)
  ・Increasing taxes on companies that do not invest in the country and create jobs may
   incentivize investment

• Some taxes actually stimulate spending today (carbon tax, inheritance tax)

• Balanced budget multiplier implies that raising taxes and spending in tandem stimulates economy

Well designed taxes would also address key issues of inequality, instability, and environmental
degradation

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.22]Beyond austerity
 
 
Rethinking budgetary rules and frameworks

• Capital Budgeting
  ・Balance sheet perspective is especially important when cost of funds is low and returns
   to investments are high

• Using development banks to promote investment
  ・With well designed taxes and expenditures, multiplier can be quite high

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.23]B. Spending money well: focusing on key long run problems―lack of productivity
 
 
There has been under-investment in technology and infrastructure which is complementary to
private investment
  ・with government support of basic research (as a percentage of GDP) lower than it was a half
   century ago
  ・wellspring of ideas driving new innovations to increase productivity may be drying up

What is need is more Investment infrastructure and technology
  ・since much of this public investment is complementary with private investment, private
   investment will be stimulated
  ・investment could be financed through an infrastructure bank

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.24]C. Spending money well: focusing on key long run problems―Structural Transformation
 
 
• Global manufacturing employment is in the decline

• With globalization, the advanced countries will be seizing a declining share of that employment

• Needs to be shift to service sector
  ・And in some countries, improving productivity of service sector

• Markets on their own do a poor job at managing the kind of large structural transformation that
 is needed
  ・Evidenced in earlier transition from agricultural to manufacturing

• Among the service sectors that should be taking up the slack are education and health
  ・Government rightly plays an important role in these sectors
  ・Austerity has constrained the ability of the government to play that role

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.25]Challenges posed by this structural transformation
 
 
• New economy may be less capital-intensive
  ・So that the investment needed to support a given growth in GDP may be smaller

• Older workers especially may be ill-prepared for the new economy
  ・With the aging of the baby-boomers, a larger fraction of workers are older
  ・The societal costs of not retooling―of simply accepting their obsolescence―are higher

• Existing arrangements creating large issues for old and young
  ・Zero interest rate environment means that old who saved prudently through government
  bonds have low income
  ・Young can't afford to buy houses, often have to wait long time to get a job, when they get
   a job, it doesn't use their skills and talents, and in many countries, they are saddled
   with large debts

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.26]Policies for promoting Structural Transformation
 
 
• In many countries government action was central in transition from agriculture to manufacturing

• The government needs to again take an active role, including through more active labor market
 policies.

• Such policies only work, however, if there are jobs for the retrained workers.
  ・There needs to be a comprehensive framework for restoring full employment

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.27]D. Fighting Inequality
 
 
• More than redistribution

• Pre-distribution: Rewriting the Rules to ensure more equitable distribution of market income
  ・Markets don't exist in a vacuum: the way they are structured affects how they function,
   efficiency, and distribution
  ・Increases in rents explains the anomaly of an increase wealth/income ratio accompanied by
   a decrease in the ratio of productive capital to income

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.28]Fighting Inequality
 
 
• These theories explain the marked disparity between the growth in labor productivity and real
 wages
  ・Wedge can't be explained by standard theories―skilled bias technical change or differential
   savings rates

• Reduced inequality would improve economic performance, in the short term, and in the long term

See Stiglitz, J. E., N. Abernathy, A. Hersh, S. Holmberg, and M. Konczal (2015).
Rewriting the Rules of the American Economy, New York: W.W. Norton, 2015.

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.29]III. Structural Reforms
 
 
Some basic principles

• In the absence of adequate demand, supply side reforms will increase unemployment, not
 promote growth
  ・Moving people from low productivity sector to zero productivity unemployment
  ・Supply does not create its own demand
  ・Indeed, supply side reforms can weaken demand and lead to lower GDP
  ・But well designed demand policies can increase supply/productivity, can increase GDP today
   and potential growth rates

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.30]Supply side measures that would work
 
 
Often working in conjunction with "demand"

• Increased investment in technology

• Especially important as one creating an innovation economy and a learning society

• Increased investment in people―creating a healthier and more productive labor force

• Industrial policies which help restructure the economy, moving from old sectors to new
  ・Markets don't make these transformation well on their own

• Competition policies―preventing the agglomeration of economic power
  ・Monopolies restrict output

• Financial market reform
  ・Not just prevent financial sector from imposing harms
  ・Encouraging it to do what it is supposed to do, intermediate, private finance, especially
   for small and medium sized enterprises
  ・Encouraging equity rather than debt

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.31]Supply side measures that would work
 
 
• Measures to facilitate participation in labor force
  ・Good public transportation systems
  ・Parental and sick leave
  ・Child care

• Inclusion of groups that have been discriminated against and marginalized
  ・Women
  ・Minorities
  ・immigrants

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.32]Supply side measures that would work
 
 
• There are many ineffective (or counterproductive) supply side measures
  ・Lowering corporate income tax
    ・But lowering taxes on corporations that invest and create jobs and increasing it on
     corporations that don't would incentivize investment and job creation
  ・Financial market deregulation
    ・Leads to less investment, more speculation, instability
  ・Trade measures have not had hoped for supply side benefits
    ・Benefits always overestimated
      ・Current estimates of TPP for US around zero
    ・Growing consensus TPP is a bad trade agreement, will not be ratified by US Congress
      ・Investment provisions especially objectionable―introduce new source of
       discrimination, limits ability to regulate economy in ways that would lead
       to stronger growth, protect environment, etc.

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.33]Other counterproductive supply side measures
 
 
• Backward looking supply side reforms also will not work
  ・Reducing excess housing capacity in the US (empty homes in Nevada desert) would not have
   helped US recovery
  ・Destroying excess chip capacity in Korean crisis (1998) would have impeded its recovery
    ・Ignored option value
  ・Arguments often made by those wishing a reduction in competition
    ・"national champions" = oligopolies

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.34]Failure of Supply side measures
 
 
• Supply side measures in US (and other countries) in early 1980s failed
  ・Didn't live up to promise of increasing tax revenues―actually fell
  ・Didn't live up to promise of increasing growth―actually fell
    ・Savings rate fell
      ・Same effect seen in more recent tax cuts in beginning of 2000s
    ・Labor force participation fell
  ・Worries about impact on inequality more than justified―have reached new heights

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.35]IV. Financial sector and financial turmoil
 
 
• Some of turmoil is reflection of lack of transparency in financial markets

• Some of turmoil is reflection of short-sighted nature of financial markets―they have always
 been very fickle

• Some of turmoil is reflection of deep uncertainty about the direction of the global economy

• Some of turmoil related to failure of countries to coordinate monetary policy, resulting
 uncertainty in exchange rates, large movements in destabilizing capital flows
  ・Facilitated by capital and financial market liberalization

• Much of the turmoil reflects failure to address fundamental problems in the financial sector

• Problem is that the turmoil is likely to have consequences for the real sector

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.36]Reforming the financial sector
 
 
• More than preventing the sector from imposing harm
  ・Through excessive risk taking
  ・Market manipulation, predatory lending, etc.
  ・Abuse of market power

• Ensuring that it plays societal role at low transactions costs
  ・providing SME and housing finance
  ・managing retirement accounts and running the payments system at low transactions cost

So far, we have failed in both tasks

There is the need for broader and deeper reforms and broadening public instruments for providing
access to credit
• Student loans
• Public option in mortgages
• Public option in retirement accounts

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.37]V. Global Reforms
 
 
• Need new global reserve system
  ・Current system is a historical anachronism
  ・Leads to biases towards surpluses
  ・Weaknesses in reserve currency countries
  ・A global reserve system, as suggested by Keynes and recent UN Commission would lead to
   greater global stability

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.38]Global reforms
 
 
• Need global coordination to reduce global imbalances
  ・China's surpluses are in process of being reduced
  ・But those in the Eurozone are increasing
    ・Will need deep reforms in Eurozone

• Need global macro‐economic (monetary and fiscal) coordination
  ・Was hope that this would happen after Global Financial Crisis
  ・Hasn't materialized―even greater asynchronous movements

• Need better ways of recycling surpluses
  ・New development banks move in the right direction
  ・But there is a need for governance reforms and recapitalization of Multilateral development
   banks

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.39]Finance for development
 
 
Could simultaneously recycle surpluses, adding to global demand, and promote development, but
there are three impediments

• Debt markets: no international framework for debt restructuring
  ・Important initiative at the UN, supported by vast majority of countries
  ・But US and some European countries arguing against a "rule of law"

• FDI: investment agreements undermine the ability of countries to regulate

• Taxation of multinationals: international tax regime makes raising revenues difficult
  ・Race to the bottom
  ・BEPS agreement at G-20 left key issues unaddressed
  ・Deeper reform of global tax regime needed

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.40]Action on climate change
 
 
• Investments to retrofit the economy for climate change would provide needed stimulus to global
 economy

• Environment and economic growth are complementary
  ・Especially if we measure growth correctly

• Providing a price on carbon would provide incentives for investment

• Paris meeting was important in creating momentum, so business community realizes that in one
 form or another there will eventually be a price for carbon
  ・Key investments (infrastructure, housing, buildings, power plants) are long term

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.41]VI. Reforms in the global decision making process
 
 
• Global economic integration has outpaced than of global political integration

• Whenever there are spillovers, externalities need for collective action

• But we have no good framework for doing so at the global level

• Global economic policy too often reflects power and special interests
  ・Not necessarily focusing on areas where global cooperation and harmonization are necessary
    ・Excessive harmonization of IPR rules
    ・Harmonization on rules that reflect special interests, with insufficient democratic
     accountability―different from what might emerge from a more global democratic process
    ・Especial concern that new trade agreements will impair ability of governments to
     perform essential regulatory functions in a democratic way
  ・Focus is on harmonizing down, to lowest common denominator

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.42]Reforms in global decision making process
 
 
• How to increase representativeness
  ・Under-representation of small and poor countries
  ・Important, even if they have little weight in global economy

• How to increase legitimacy
  ・UN is the international body with global legitimacy
  ・IMF has similarly more legitimacy within its remit

• Danger of "club" getting together to make decisions for all
  ・Undermines credibility of other organizations

• Alternative: Global Economic Coordinating Council
  ・Operating under the UN, IMF

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.43]Rethinking global decision making
 
 
• Variable geometry
  ・Recognizing that it will be difficult to get close to unanimity on many issues

• "Coalition of willing"―for instance on climate change
  ・With cross-border taxes to induce others to cooperate

• May not be able to get all to agree to new global reserve system
  ・Again coalition of willing―advantages will induce others eventually to join

• Thinking carefully about where externalities are most important
  ・Absence of collective risk bearing induces high level of savings, reduces global aggregate
   demand
  ・Global rules favoring capital increase inequality, with adverse effects on global aggregate
   demand
  ・Global instability creates inequality, leads to high savings, both of which contribute to
   deficiency in global aggregate demand

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.44]VII. The World Today in Perspective
 
 
• Many of the advanced countries began an experiment a third of a century ago―lowering taxes,
 deregulation

• There was a need to adjust economic framework to changing economic circumstances
  ・But they made wrong adjustments

• Consequence has been slower growth and increasing inequality

• Full effects are just now being felt―but they have been on their way

• If current course continues things will get worse
  ・With untold political consequences―some of which we are beginning to see

• This experiment can and should now be declared a major failure

• There is a need for a new course
  ・Minor changes, tweaking of current arrangements will not do

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.45]Many pieces to this failed experiment
 
 
• New approaches to monetary policy
  ・Focus on inflation, rather than balanced perspective―growth, employment and stability

• New approaches to fiscal policy
  ・In Europe, stringent constraints on deficits

• New emphasis on privatization
  ・Extending even to social security in some countries

These too have not brought promised benefits

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.46]Experiment in new global architecture is also a failure
 
 
• Forty years ago would began experiment with unfettered capital flows
  ・Was supposed to bring a new era of stability

• Markets would do a better job than governments

• Instead it ushered in new era of global instability
  ・Especially associated with short term capital flows

• Now even the IMF says that there should be capital controls (capital account management)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.47]There is a way forward
 
 
• Restoring the balance between the government and the market

• Recognizing the importance of the "third sector" and new institutional arrangements

• Ending austerity

• Global efforts to address global needs, global public goods, global externalities
  ・Beyond climate change to include a global science foundation
  ・Global efforts to increase productivity―instead of a race to bottom

• Commitment to measures to increase living standards for all

• Global reassessment of how we measure progress
  ・What we measure affects what we do
  ・Main message of the Commission on the Measurement of Economic Performance and Social
   Progress
  ・Work continuing at the OECD

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[p.48]The World Economy: The Way Forward
 
 
• The New Mediocre, the Great Malaise, Secular Stagnation are not inevitable
  ・They are the result of failed policies

• In an increasingly integrated world, the best way forward would entail global cooperation in
restoring balance and increasing aggregate demand
  ・Combined with cooperation, for instance, in the provision of global public goods
   ―research, global warming
  ・Achieving that cooperation has proven difficult
  ・Japan’s leadership in G-7 may be part of way forward

• But even lacking that cooperation, there is much that each country can do to strengthen demand
 and improve productivity within its own borders
  ・With significant spill-overs to others

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/318.html

[政治・選挙・NHK203] スティグリッツ教授提出資料(事務局による日本語訳) 第1回国際金融経済分析会合配付資料(首相官邸):雑談板リンク
スティグリッツ教授提出資料(事務局による日本語訳) 第1回国際金融経済分析会合配付資料(首相官邸)
http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/317.html
投稿者 烏滸の者 日時 2016 年 3 月 21 日 05:00:06
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/230.html
[政治・選挙・NHK203] アメリカの碩学の反TPP - スティグリッツ教授の日本へのアドバイス(しのはら孝blog)
アメリカの碩学の反TPP - スティグリッツ教授の日本へのアドバイス
http://www.shinohara21.com/blog/archives/2016/03/tpp52tpp_2016320.html
しのはら孝blog 2016年03月20日
 
 
 ノーベル経済学賞を受賞(2001年)したスティグリッツ・コロンビア大学教授が来日した。
 主たる目的は、シカゴ大学時代(1965年頃)の恩師、故宇沢弘文東大教授の一周忌の記念講演だったが、ついでの第一番が宇沢さんが共同代表を務めていた「TPP阻止国民会議」での勉強会の講師で、そこに私が会長を務める「TPPを慎重に考える会」が乗ることになっていた。ところが、安倍政権が途中から入り込み、16日に首相官邸で開いた国際金融経済分析会合で、消費税率10%の引き上げに反対意見を述べ、大きく報道された。
 
 
<宇沢教授3大関心事:公正、環境、平和>
 
 その翌朝、これまた便乗組の岡田代表以下民主党幹部とTPP組とが丸テーブル3つに分かれ、約30人弱で1時間講演していただいた。前々から、TPPは日本のためにもアメリカのためにもならないと公言し、新聞にも寄稿したりしていることは承知していたが、話を直接聞いたのは初めてである。率直な話し方といい、その含蓄のある内容といい、宇沢さんの弟子ならではと合点がいった。
 スティグリッツ教授は、宇沢教授はGDPを増やすことだけに関心がいく並みの経済学者とは違い、公正、環境、平和の3つを重視していたと懐かしんだ。私は宇沢教授の本は数冊読んでいるが、スティグリッツ教授が恩師の価値観をそのまま受け継いでいることがよくわかった。
 以下、その概要を紹介する。
 
 
<消費増税より炭素税の導入>
 
 日本は経済成長率が低いとの批判があるが、それよりも生活の質が大切であり、それほどの心配は無用。アメリカの方が問題は深刻だ。例えば、日本は平均寿命が長い。それに対し大学卒ではないアメリカの白人男性の寿命が急激に下がっている。なぜならば、賃金が40年前より低く、生活が苦しくなっているからだ。
 格差が拡大している。この点は、日本にも同じ悩みがある。格差是正には消費増税などせずに、もっと需要を喚起する政策を取り入れた方がよい。
 税制なら、炭素税は政府の財政にも貢献するし、経済も強くする。相続税は収入を増やし、公平(分配)に役立つ。
 他に包摂(inclusion)や差別をなくすことも必要だ。例えば、元気な高齢者に働いてもらうのもよい。
 
 
<TPPは多国籍企業のロビイストが書いただけ>
 
 圧巻はTPPについての主張である。講演の半分近くをTPP批判に充てた。
 TPPは自由貿易協定(Free Trade Agreement)だというが、それなら3頁ですむ話なのに、何と6000頁。誰も全部を読みこなしていないだろう。
 オバマ大統領は、21世紀の世界のルールは中国に書かせず、アメリカが書くと言ったが、多国籍企業のロビイストが書いているだけのことで、大企業に都合よく書いている。
 特許等知的財産のルールが問題である。特に薬の問題が大きく、安いジェネリックにできないようになっている。大きな製薬会社の利益が増えるようになっており、アメリカ人の健康が損なわれることになる。この分野でもいいことはほとんどない。
 
 
<ISDSは害だらけ、アメリカ議会は批准しない>
 
 特に投資条項は好ましくない。
 1980年頃までは、CO2の排出など問題にならなかった。今は違う。地球に代わりはなく一つしかない。環境を壊したらおしまいである。だから、環境規制は必要だが、カナダ政府の規制により損害を被ったとアメリカの企業がISDSで訴えて、カナダ政府が敗けている。タバコの規制も訴えられている。ISDSは新しい差別をもたらし、人間の健康や環境をも害する懸念がある。
 アメリカにとってTPPの効果はゼロであり、アメリカの議会で批准されないだろう。従って、日本も批准すべきではない、とまで言い切った。
 TPPはいずれにしろ害だらけであり、賛成できない。
 原中勝征前日本医師会会長が閉会のあいさつで、まるで宇沢教授の講演を聞いているようだと結んだ。全く同感である。
 
 
<日本にはピリッとした大御所学者がおらず、マスコミもTPPになびいてばかり>
 
 アメリカの学者は日本の学者よりずっと率直のようだ。国に媚びを売ることなどせず、ダメなものはダメと言い切っている。アメリカの各紙への投稿等や訪日時のインタビュー記事で反TPPであること、積極経済論者だと若干は知っていたが、直に話を聞くとやはり印象が強烈である。そしてふと思うのは、ノーベル経済学賞とは言わないまでも、政府の主要審議会の委員を務める日本の並みいる経済学者の中に、このような学者がいないことに、一抹の寂しさを感じた次第である。
 
 
<なぜかTPPに関心がいかない日本のマスコミ>
 
 私は、消費税も所得税と法人税と並ぶ日本の三大税収源の一つにすぎず、税率の上げ下げにそんな大騒ぎするものではないと思っている。それよりもずっと衝撃が大きいのがTPPである。入手した官邸会合資料にはTPPに触れた部分もあったが、残念ながら東京新聞と日本農業新聞が報じただけで、他の五大紙は全く扱っていない。今までは全容が明らかになっていないから仕方がないと思っていたが、今少なくとも条文は明らかにされている。アメリカでは大統領選の争点となっているのに、日本はTPPは批准するのが当然のような扱いで、どこも取り上げようとしない。民主党幹部も記者会見等でこのことに全く触れていない。
 
 
<民主党も共和党も国民もTPPに反対しているアメリカ>
 
 アメリカでは、率直なのは学者だけでなく、国民も同じである。
 共和党の重鎮がトランプ旋風をおかしいと感じ始めて、指名阻止に乗り出したが、今もその勢いは止まらない。トランプ氏は、スティグリッツ教授と同じく、貿易協定は雇用を奪い、賃金を下げていると批判し、共和党の支持者の多くもTPPに反対し始めている。工場労働者の多いミシガン州もトランプ氏が大勝した。トランプ人気の一つに貿易で中国、日本に負けている、TPPなど結ばず、アメリカを強い偉大な国にすると主張していることもあるようだ。
 民主党でもサンダース氏が、クリントン元国務長官がNAFTAに賛成し、TPP反対に躊躇した、と批判しミシガン州で勝利している。かつて自由貿易を支持していると思われた共和党も、元々反対の民主党も、こぞってTPPに強烈なNOを突きつけ始め、政治的対立要因となりつつある。
 
 
<民主党も共和党もこぞって反対するTPPは批准の見込みなし>
 
 そして、今や共和党支持者の方(たぶん白人が多い)が、民主党支持者より自由貿易に否定的になっている。格差が拡大し、アメリカ人全体が貧しさを感じるようになったからである。昨年春、オバマが遺産(レガシー)にしたいというTPPに対し、民主党がこぞって反対したが、共和党の賛成により、やっとTPPの署名にまで漕ぎつけた。オバマ大統領は、太平洋に重点を移すリバランス外交の上で、TPPを中国と競争する上での通商外交上の戦略の要にしている。ところが、今や頼みの共和党もそっぽを向きだした。スティグリッツ教授も予測したとおり、2016年にはとても批准されないだろう。
 
 
<安倍政権の悪巧みを打ち砕く>
 
 一方、我が日本は、予算案の参議院通過も目前となり、政府与党はTPP特別委員会の設置を急いでいる。日本がTPPをリードしているという格好をつけたいというのが一番の理由のようだが、もう一つ参議院選前に厄介なことを済ませてしまおうという悪い魂胆も垣間見える。
 私は、こんな悪協定を批准させないように頑張るつもりである。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
関連リンク(投稿者)

民主党・スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日
https://www.youtube.com/watch?v=RX334pHGOJM
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/403.html

[テスト31] テスト
民主党・スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日
https://www.youtube.com/watch?v=RX334pHGOJM
民主党/YouTube 2016/03/22
  
 
投稿者抄訳


■宇沢弘文とグローバルな進歩主義[08:48/42:53]
 
宇沢弘文先生をしのびながらこのような会に参加させてもらえてうれしい。私は1965年シカゴ大学で、全米の最高の学生たちとともに宇沢先生のもとで数理経済学を学んだ。われわれは先生の力強い人柄にたちまち心服し、先生と一生の絆で結ばれた。先生はその世代の最高の数理経済学者の一人だった。先生の数理の下には深く根ざした価値観があった。第一に社会正義、第二に環境、第三に平和。


私がそうした問題について書くようになったとき、たとえばイラク戦争に反対した『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』[1]を書いたとき、よく先生のことを思った。すなわち、GDPの最大化は社会の目的ではない。戦費はGDPに寄与するが、イラク戦争に投じられたお金で社会は豊かになっていない。イラクで殺された人たちにとってはなおさらのことだ。


私が議長を務めた「経済パフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会」[2]では、GDPでは測れない生活の質を問題にした。このことは日本で特に重要だ。日本が経済成長をしていないとか、労働力人口が低下しているとかいった、統計にもとづく批判がある。しかし、時間あたり労働者あたりでみると、日本の生産性は最高水準なのだ。


グローバルな進歩主義とでもいうべき近年の動きは、宇沢先生と同じように社会正義、環境、平和に向けられている。その動きが米国ではこれまでになく強まっている。大統領予備選挙では、民主党の候補が2人とも不平等や環境問題への対策としてグローバルで進歩主義的な政策をかかげた。一方で、米国社会はこれまでになく分断されている。所得、資産、健康保険などにおいて格差がますます広がっている。


共和党側に見られる怒りは、ある部分でそれを反映している。日本は米国よりも平均余命が長い。国民皆保険制度が確立している。というより、健康にたいする権利が保障されていない先進国は米国くらいだ。近年では大学を出ていない白人男性の平均余命が大きく低下し、大学を出ていない男性の収入が年々低下している。男性全体の中位収入は40年前より低くなった。現在の実質最低賃金は60年前よりも低い。つまり低所得者の賃金は60年間上昇していない。この社会では高所得者が毎年ますます豊かになっているのに、圧倒的多数の人々はそうでない。それがある種の怒りを引き起こしている。しかし、残念ながらその怒りは建設的な方向に向けられていない。民主党の側では、同じ不満がこうした問題を解決する進歩主義的な方向に向けられている。


■グローバルな進歩主義の政策[17:05/42:53]


今日はこの進歩主義的な政策課題についてかんたんに述べたい。この立場は特定の政党にとらわれず、その政策を受け入れるすべての候補者を支持する。


第一の原則は、完全雇用である。そもそも完全雇用とは何か。たとえばFRBの副議長が「失業率は4.9%であり完全雇用とみなせる」といった。しかし統計をよくみれば、実際の失業率はその倍である。たとえば週に1時間しか働かなくても統計上は雇用とみなされている。4年間求職して仕事が見つからなければ失業とはみなされなくなる。このように実際の失業率が4.9%よりもはるかに高いので、賃金が上昇しないのだ。


日本についても同じことがいえる。3.7%という失業率は米国よりも低いが、やはり賃金が上がっていない。ほんとうの完全雇用が達成されるまでは景気の刺激策が必要である。インフレの懸念があるのならべつだが、現在日本が心配しなければならないのはデフレの方だ。2%のインフレターゲットすら達成されていない。


このように、米国も日本も積極的な方策を必要としている。金融政策ではできるだけのことをやった。したがって次は財政政策に重点を置かなければならない。


均衡予算乗数とよばれる基本原理がある。増税してもその分だけ政府支出を増やせば景気を刺激するというものだ。課税と政府支出の選択が適切であれば、政府支出は景気の拡大に乗数効果をもたらす。


景気を刺激する課税の例として、炭素税がある。これは二酸化炭素の排出を課税対象とすることで事業者に生産工程の改良を促し、消費者には断熱建築や低燃費の自動車の購入を促す。すでに日本の効率は米国よりもずっと高いが、まだまだ向上の余地がある。このように、炭素税は税収と景気対策の両方に効果がある。


相続税は、自分の生きているあいだにお金を使うようにしむけるので、税収を上げるとともに資産格差を縮小する。取引税は、経済を不安定にするだけで実際の成長には寄与しない短期的な投機を抑制し、格差の縮小と税収増をもたらす。固定資産税、とくに不動産取得税は、減税しても土地が増えるというわけではないので減税する必要がない。それはむしろ格差の縮小と経済成長をうながす。以上が、完全雇用に向けた第一の政策課題である。


第二に、社会的包摂と差別の解消。社会的少数者や女性にたいする差別がどの社会にも存在する。女性は、男性と同じ資格で同じ仕事をしても、平均賃金が低い。米国では同一賃金を保証する憲法改正の議論があったが、共和党がそれを拒否した。育児・介護休業、フレックスタイム制など、ほかにも社会的包摂を促進する政策がある。


なかでも重要なのは高齢化対策だ。これまでの経済システムはこの問題を無視してきた。65歳になった人はゴミの山に投げこんで自分でなんとかしろといわんばかりだった。金融緩和が事態をさらに悪くした。老後に備えて買った国債は、利息がつかないどころかマイナスになろうとしている。これでは安心した老後は望めない。人々がもっと長く働き続けられるようにするべきだ。人は高齢になってもなお生産的であり、再訓練の機会や柔順な労働環境がぜひとも必要である。


平等といえば再分配、課税、移転所得に目が向けられがちであり、それらは重要である。しかし、私は最近の本『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』[3]でべつのことを取り上げた。すなわち、経済構造の似ている国でも市場所得[4]の格差の状態はまったく異なるということである。米国では1970年代以降労働力の生産性が倍増したにもかかわらず、賃金が停滞している。かつては生産性が上がれば賃金も上昇したが、現在はそうでない。これは、レーガン政権以来市場経済のルールが書き変えられた結果である。労働者の交渉力を弱め、雇用を不安なものにし、コーポレート・ガバナンスや反トラスト法の執行など経済の枠組み全体にかかわるルールが書き変えられてきた。


■貿易協定の問題[26:18/42:53]


しめくくりに、宇沢弘文先生と私が深くかかわってきた貿易協定について触れたい。これらの貿易協定をめぐって、米国では多くの議論がされてきた。私は、南米の国で大統領をしていたある医師[5]から、米国との自由貿易協定に署名すべきかどうか意見を聞かれたことがある。私は、そもそもそれは自由貿易ではない、と指摘した。自由貿易なら3ページですむのに、TPPは6000ページもある。それは管理貿易であって、米国をはじめとする企業の利益をもたらそうとしている。オバマ大統領は、この協定は、21世紀の貿易ルールを書くのが「われわれ」かそれとも中国かという問題だといった。しかし、そこでいう「われわれ」とは、われわれのことではない。それを書いたのは企業のロビーストたちだ。われわれの求めている貿易協定とは、われわれがそれを書き、民主的な手続きによって成立し、公表されている重要な問題がTPP参加諸国の議会で議論されるようなものだ。


先ほどの医師に話に戻ると、私は彼にこうたずねた。「あなたもヒポクラテスの誓いに署名したのですよね。」これはすべての医師が署名しなければならない誓約で、「害を与えるなかれ」ではじまる[6]。彼が「そうですよ」と答えたので私はいった。「あなたはその貿易協定にサインできませんよ。なぜならヒポクラテスの誓いに背くことになるだろうからです。あなたの職業的な責任である人々の健康にまで危害がおよぶのです。」


この貿易協定は3部から成る。第1部の貿易にかんしてはとても短い。それは、関税障壁がすでにかなり取り除かれているからだ。影響のある産業は比較的には少ない。


第2部は医薬品アクセスについて。かれらは知財と称しているが医薬品のことだけだ。ここではジェネリック医薬品へのアクセスが問題となる。これまでどこの国でも、巨大な製薬団体とジェネリック医薬品とのバランスが議論されてきた。米国でも25年前に議論があり、ハッチ・ワックスマン法ができた。これはあまりにも製薬会社寄りで、ジェネリック医薬品へのアクセスが不十分だが、それでも販売される医薬品の87%がジェネリックで占められるようになった。その条項がなければ、ただでさえ世界一高額な米国の医薬品がもっと高くなる。


製薬会社は、公開された議論の場ではそのバランスを変えられないとわかっているので、内容が秘密にされている貿易協定でジェネリック医薬品を入手しづらくしようとした。かつてはかれらの望むものは何でも手に入ったので、要求に際限がない。私はすべての保健福祉省長官と会って「本気で交渉しないといけない」と伝えてきたが、そしてかれらは実際そうしたのだが、それでも米国の製薬団体は要求のほとんどを通した。この貿易協定はまずまちがいなく医薬品の値段を上げてジェネリック医薬品へのアクセスを減らすことになる。オバマ大統領の主要な功績はオバマケアであり、米国の医療アクセスを拡大した。ところが、この貿易協定でかれはその功績を自分で掘り崩そうとしている。なぜそんなことをするのか、私にはさっぱり理解できない。


しかし、TPPで最悪なのは[第3部の]投資条項である。それは投資を保護するためのものではない。なぜなら米国はEUとのあいだで同様の協定を結ぼうとしているが、EUにはすでによい法律があり、より優れた知財保護があるからだ。


内国民待遇とよばれるもの。規制の撤廃、停止。それが米国の経済団体ビジネス・ラウンドテーブルの求めている条項だ。経済界が後押ししているのはそのためだ。この条項が意図し結果としてもたらすのは、状況の変化に対応した新たな規制がますます作りにくくなるということだ。たとえばわれわれは地球温暖化について40年前には何も知らず、1980年代になってはじめて聞かされた。それに取り組もうとすれば、二酸化炭素排出量を減らすための規制を設けなければならない。ところがTPPのもとでは、ある国で設けた規制は、それによって不利益をこうむる企業から訴えられる可能性がある。カナダ政府は9つの重要な訴訟に負けたが、その多くは環境規制に関係している。この間も環境アセスメントが不適切だと訴えた企業に負けてしまった[7]。その企業はカナダの裁判所に訴えることもできたのだが、民間の仲裁人による仲裁委員会を選んだ。仲裁人は3人で、1人は企業が指名し、1人は政府から、もう1人は両者の合意によって指名される。ところが仲裁にあたるこれらの法律家たちはきわめて企業の側にかたよっている[8]。それでカナダはこれほど多くの訴訟に負けているのだ。


同様の条項に関連したもので、現在係争中でもっとも有名な訴訟としては、タバコのパッケージに健康危害の記載を義務づけた規制についてフィリップ・モリス社がウルグアイ政府を訴えた裁判がある。その規制はただの告知義務にすぎなくても人々がタバコを買わなくなるという効果があったので、フィリップ・モリス社の利益が低下した。そこでフィリップ・モリス社は損失の補償を求めた。まるでかれらは人々を殺してもいい基本的権利があるのを確信しているみたいだ。その権利を取り上げるのなら賠償してもらわなければならないといっている。


その重要な条項を起草した男[9]、これは初期の投資保護[訴訟]にさかのぼるが、かれはこういった。「その[新たな]規制がたとえば離乳食への放射性物質の混入を防ぐようなものだとしても、われわれはそれを訴えることができるように条項を書いた。」これが投資にかんする協定の内容だ。


かれらは、これ[TPP]が21世紀の協定であり、こうした[NAFTAの]問題のすべてに対処したと主張している。しかし、われわれの側の法律家の意見によれば、まったく解決されていない。人々の怒りが大きいタバコだけは取り除かれたが、二酸化炭素の排出も、「離乳食の放射性物質」も、それ以外のすべてはそのまま残されている。たとえばアスベストの危険が明らかになったときにアスベストを規制したとする。現行法ではアスベストによる健康被害にたいしてわれわれがアスベストの製造業者を訴えることができる。ところが新しいTPPの規制のもとでは、製造業者はわれわれを殺さずにいるという理由でわれわれから支払いを受けるのだ。これはとても容認できない。このようなルールが、宇沢弘文先生の支持した基本原則とは相容れないやり方で秘密裏に書かれ、書き変えられている。格差を拡大し、社会的正義と環境保護の基盤を掘り崩そうとしている。この条項一つをとっても私はTPPに賛成できない。


EUは、民間の仲裁人委員会による裁定制度のある協定には署名しないことを明確にした。べつのやり方を主張している。日本が署名した[批准しようとしている]のは20世紀の協定だ。EUがつくろうとしているのは21世紀の協定だ。近代社会の必要性を満たせないことが明らかになっている協定を、あなたがたはどうして欲しがるのか。


以上、グローバルな進歩主義の向かっている方向と主要な取り組みについて参考にしていただきたい。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
投稿者注


[1]The Commission on the Measurement of Economic Performance and Social Progress(Wikipedia)
https://en.wikipedia.org/wiki/Commission_on_the_Measurement_of_Economic_Performance_and_Social_Progress


[2]The Three Trillion Dollar War(Wikipedia)
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Three_Trillion_Dollar_War


[3]Rewriting the Rules of the American Economy(Roosevelt Institute)
http://rooseveltinstitute.org/rewriting-rules-report/


[4]market income: 賃金や給与などの雇用者報酬と自営業者所得、財産所得および企業年金や仕送りなどを含んでおり、税や社会保障費を控除する前の所得を意味する。
「JIL労働政策レポートVol.3 日本の所得格差をどうみるか」(労働政策研究・研修機構)
http://www.jil.go.jp/institute/rodo/documents/report3.pdf


[5]ウルグアイ大統領タバレ・バスケス(Tabare Vazquez)をさすか。
"La guerra del opio del siglo XXI"[21世紀のアヘン戦争](Red De Militantes De Izquierda)
http://reddemilitantesdeizquierda.org/2015/12/27/la-guerra-global-del-opio-del-siglo-xxi-tpp-ttip-tisa-alianza-del-pacifico-tlc-mercosur-union-europea/


[6]First, Do No Harm: これについてはスティグリッツに誤認があるようだ。
「「First, Do No Harm」をヒポクラテスの誓いとして使うべきではない」(EARLの医学ノート)
http://drmagician.exblog.jp/22144349/


[7]"Clayton/Bilcon v. Government of Canada"(Global Affairs Canada)
http://www.international.gc.ca/trade-agreements-accords-commerciaux/topics-domaines/disp-diff/clayton.aspx?lang=eng
"NAFTA ruling in Nova Scotia quarry case sparks fears for future settlements"(The Globe and Mail)
http://www.theglobeandmail.com/report-on-business/nafta-ruling-against-canada-sparks-fears-over-future-dispute-settlements/article23603613/


[8]ISDSの仲裁制度の問題点(自由のための統一戦線)
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/575.html


[9]Barry Appleton, Canadian lawyer for Ethyl Corp. NAFTAの条項の起草にあたったかどうかは不明。
”Elizabeth May's submission on the Environmental Assessment for the Canada-China Foreign Investment Protection and Promotion Agreement ”(Elizabeth May)
http://elizabethmaymp.ca/parliament/letters/2012/11/10/elizabeth-mays-submission-on-the-environmental-assessment-for-the-canada-china-foreign-investment-protection-and-promotion-agreement/


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
投稿者ディクテーション


[08:48/42:53]


It's a real pleasure to be here and participate in this session, in part commemorating the life of
Hirofumi Uzawa, who is my teacher. I studied under him in 1965 at the University of Chicago, where
he had brought the best students from all over the United States to discuss economic theory,
mathematic economics. He had a very powerful personality and in just a very short time we all became his disciples. We all maintained a lifelong connection with Professor Uzawa. There were three
themes that distinguished Professor Uzawa. He was a mathematical economist. He was one of the best
mathematical economist of his generation. But underlying the mathematics were very deeply held
values. Those values are values I think that he maintained he lived his life by. One of them was
Social Justice. A concern about inequality, concern about poor, concern about the way our society
functions discriminates. The second was the Environment. He was vey committed to the environment.
Economists often talk about this in terms of inter-generational equity, fairness across generations. He was deeply concerned not only about fairness within a generation which was the distribution of
income and wealth within a generation , but fairness across generations, social justice at one
moment of time and over time. Finally, he was vey concerned about Peace. Having grown up in part
during World War II, he was very committed to making sure that that kind of occurrence never
happened again.


Often when I write my work about Inequality, about the Environment, or my book "The Three Trillion
Dollar War" which was written to try to persuade America that it should not be engaged in the war
in Iraq and it was a war that was not going to be successful, which's going to cost us a great deal,I thought of Hirofumi Uzawa. One of the points that was just raised echoes one of those that I made
in ... work, which is maximizing GDP is not what the society is about. The spending on war adds to
GDP. But nobody thinks our society is better off as result of the money that was wasted in Iraq,
especially the people who got killed didn't think it was a good way of spending money.


I chaired an international commission on the Measurement of Economic Performance and Social Progress. Main theme of that commission was that GDP doesn't measure what is important and we have to focus
our attention not on GDP but on the quality of life. That's particularly important here in Japan
because the statistics often mislead people to criticizing Japan for saying it's not growing very
well but Japan has a declining labor force. In terms of output per hour, output per worker, is
actually among the best performance of the best advanced countries. That doesn't mean you can't do
better, but the single-minded focus on growth, I believe, is very much misplaced.
    
In recent years there has developed what might be called a Global Progressive Movement, which is
focused on precisely these issues that were the mainstay of Professor Uzawa, on Social Justice and
Environment and Peace. Right now is a very interesting moment in terms of the Global Progressive
Movement. Because in the United States, for instance, on one side, I don't think the Global
Progressive Movement has ever been stronger. Both of the Democratic candidates have espoused
policies that are broadly consistent with ... many of the pillars of the Progressive Movement. They
talked about Inequality is being America's most important problem and what we can do about it. They
talked about the Environment and how we can protect it. On the other hand, never has ... been more
divided society. Income, wealth, health, every metric shows a society that is moving further and further apart. Part of the reason that you see on the Republican side, such anger on certain part, is
because for a large fraction of Americans life has not been very good.


Japan has a higher life expectancy than the United States. Japan has recognized the right of access
to health for everybody. The United States is one of the, I think the only advanced country that
does not recognize that as a basic right. The result of that is that in the United States there are
large disparities in access to health. Recent data show that among white males who are not college
graduates, life expectancy is declining very strongly. American males, for instance, who have not
graduated from college have seen their income decline year after year. The median income for men as
a whole, half above and half below, is now lower than it was 40 years ago. Real wages today in the
United States at the bottom are lower than it were in January 1955, 60 years ago. Those at the
bottom have not seen a pay raise in 60 years. This is not a society which is getting better every
year. This is a society in which the top are doing better every year, but the vast majority are not. That of course has spurred the kind of anger that you see. But unfortunately it's not being
channeled in a constructive way. On the other side, in the Democratic side, the discontent is being
channeled in a progressive way, in a way that's trying to see what we can do about those problems.


[17:05/42:53]


What I want to do this morning is very briefly talk about that Progressive agenda. Let me say that
we were.., The Progressive Movement has been very careful to say, "It's not partisan." It supports
anybody, any candidate that is going to support these ideas and talk to anybody who supports these
ideas.


Among the first principles is Full Employment. But what is Full Employment mean? There are some
people in the United States i.e. vice chair of the U.S. Federal Reserve who says, "Well, we are
4.9% unemployment and that means we are full employment." But of course those statistics don't
reflect the lives of those who don't have a job. If you are one of those 4.9% you don't feel fully
employed. If you look underneath the statistics you realize the true unemployment rate in the
United States is twice that number. The true unemployment rate reflects the fact that many Americans are called employed if they work just one hour a week. Of course that's not a meaningful employment. You can't get an income to survive. If you've looked for job for four years and you still can't get a job, you are not called unemployed. But you are not employed. When we look at the statistics what we realize is that the true unemployment is much larger. That is why even with 4.9% unemployment
wages are stagnating. If there were really no unemployment, wages would be bid up.


The same thing is true in Japan, except you are in a better shape. You have unemployment of ...
3.7%? But wages are not doing very well. Until you get truly full employment where wage pressures
are going up, you should try to continue to stimulate the economy. The only reason to stop
stimulating the economy is a worry about inflation. The worry now in Japan is about deflation. It's
difficult you getting up to a 2% target.


So, both in the United States and in Japan, there is a need for more aggressive measures. Monetary
policy has done as much as it can. Therefore the burden has to shift fiscal policy.


Here, there is a fundamental principle in economics which is called the Balance Budget Multiplier.
If you increase taxes and increase spending in tandem, it stimulates the economy. If you choose
your taxes right and your spending right, it increases the economy by a multiple of what the
spending.


For instance, taxes that stimulates the economy, a carbon tax. A carbon tax induces firms to invest
to retrofit their production processes for the higher charges of emissions, induces homes to invest
to insulate, it induces people to relocate to buy new cars that are more fuel efficient. Japan is
already much more efficient than in the United States, but there's still a long way to go. So a
carbon tax is a tax that both raises revenue and stimulates the economy.


There are other taxes like an inheritance tax. Inheritance taxes can often induce people to spend
money before they die, increase revenue and improve equality. Financial transaction tax discourages
the kind of short-term speculation that destabilizes the economy and produces no real growth,
reduces inequality and raises revenue. Taxes on property, particularly capital gains taxes on
property. Lower taxes on land do not result in more land, so have no negative incentive effects but
raise revenue, increase equality and promote growth. That's the first agenda which is promoting
full employment.


The second is inclusion and discrimination. All societies engage in discrimination to some extent.
There's discrimination against minorities, discrimination against women. Women receive on average a
fraction of the wages the men doing comparable work, comparable qualifications. United States,
we've been discussing constitutional amendment for guaranteeing equal wages, but Republicans have
refused to support this idea. There are other policies that promote inclusion. Child care, family
leave policy, flexible working hours, these are all aspects of inclusion.


There are other aspects of inclusion that are important, one of which was mentioned. Japan has an
aging population. All societies are now having aging population. We have an economic system that
has ignored that challenge. Traditionally, when people get the age of 65 you throw them in the
garbage heap and say, "try to survive." With QE, things have become even worse because many of
those elderly who acted safe and bought government bonds, those bonds yield zero interest rates.
They are about to yield negative interest rates. That's not a way to have a comfortable retirement.
You can't live on zero interest rates. One has to think about how we can include these people
longer in the labor force. The reason, they are living longer? But they don't want to retire. We
force them to retire. They are still productive. They would be productive particularly if we
retrain them and we made work more flexible. So greater flexibility in the work place recognizing
imperative inclusion is another part of the inclusion agenda.


When we talk about Equality, often people focus on redistribution, on taxes and transfers, and
those are important. But in my most recent book called "Rewriting the Rules," what we focused on
is something different. What we realize is that countries with similar economic structures wind up
with very different market income inequality. So ...... the demand and supply operate the same on
both sides of Atlantic, both sides of Pacific, in countries that is similar stages of development,
but market income is markedly different. For instance, one of the astounding things in the United
States is that since 1970s productivity of American labor force is roughly doubled. Wages,
compensation has stagnated. It used to be the productivity and wages move together. Now they don't.
This result of what happened beginning in the Reagan era where there was a rewriting of the rules
of the market economy, rewriting the rules in ways that weaken the bargaining power of workers,
increase their insecurity and changed the economic framework in a whole ...... ways, like changes
in corporate governance, changes in enforcement of antitrust laws and so forth.
    
[26:18/42:53]


I want to conclude my brief remarks this morning by talking about one area that I understand that
Hirofumi Uzawa was very involved in and I've been involved in a great deal. That's a trade
agreements. These trade agreements have motivated a lot of the discussion in the United States.
I was once asked by a doctor who was the President of a Latin American country whether he should
sign a free trade agreement with the United States. I first pointed out it was not a free trade
agreement. If it was a free trade agreement, it would be about three pages, "We eliminate our tariffs, you eliminate your tariffs, we eliminate our non-tariffs, you eliminate yours, we eliminate our
subsidies, you eliminate yours," about three pages. Do you know how long? The TPP agreement is
6,000 pages. I have not met a single person who has ever read the entire agreement. That's not a
free trade agreement, it's a managed trade agreement. It's a managed trade agreement that ......
manage for the interest of corporate interest, corporate interest mostly in the United States, but
corporate interest in other countries as well. When the United States President Obama said that
this agreement is about who writes the rules of trade in the 21st century, China and the United
States, or he said, "Do we or China write it." The question is which "we". We didn't write it, the
corporate lobbyists wrote it. What we are asking is for a trade agreement that we write, that is
arrived at through a more democratic process, that the key issues are laid out in the open and
discussed in the parliaments of all of the TPP countries.


Well, could go back to this doctor, I asked him, "Did you sign the Hippocratic Oath?" which all
the doctors have to sign. The Hippocratic Oath begins, "Do no harm." He said, "Yes," he signed it.
So I told him, "You can't sign the trade agreement 'cause that would be a violation of the oath
that you have signed. It would actually even harm health and that is your responsibility."


There are three parts of the trade agreement. The first part is about trade. It's very small part
because tariff barrier's already relatively low. There are specially interested industries get
hurt, get helped, but that is a relatively small part.


The second part is about access to medicine. They call it intellectual property, but it's only
about medicine. The question is access to generic medicine. Most countries have had a debate about
the balance between Big Pharma and generics. United States we had that debate 25 years ago. Result
was the Hatch-Waxman Act, which created a balance I thought was not good. Quite the right balance?
It was too weighted for Big Pharma and not enough for access to generic medicines, but even with
that unbalanced agreement, about 87% of all drugs are sold generically. If it were not for the
provision, the price of drugs in the United States, already the highest in the world, would be much
much higher.


The drug companies knew that they could not get that changed in an open debate, so they went in the
secret trade agreement and got that balance unbalanced to make it more difficult to get generic
medicines. That was the key part of this provision. They didn't get everything they wanted so they
are complaining, because they used to win everything. I met with all the health ministers and I
used to say, "You really have to bargain hard," and they did, but still the U.S. Big Pharma got
most of what they wanted. And effect of this agreement almost surely will be to raise the price of
drugs and reduce access to generic medicines. For me, this is a big puzzle because Obama's
Signature Achievement is Obamacare, making access to health care more affordable, greater in the
United States. Yet with this trade agreement, he is undermining his Signature Achievement.


But the worst provision in the TPP is the investment provision. It's not about protecting
investment, let's make that clear, because we are insisting, United States is insisting on the
same agreement with Europe, where they have good laws, even better protection of intellectual
property rights. So it's not about ... systems, it's not about protecting property right, it's not
about discrimination, it's nothing to do with discrimination.


We just called National Treatment. It is about deregulation, stopping regulations, and that
provision is what the Business Roundtable wanted. It is the main reason that some of the business
community is behind it. The intent and the consequence of this part of the agreement is to make it
increasingly difficult to pass new regulations as the circumstances change. We didn't know about
global warming 40 years ago. We just learned about it in the 1980s. As we're going about we have
to pass regulations that will reduce carbon emissions. But under the TPP, if a country passes a
regulation, they may be sued if the profit of the company goes down. Canada has lost nine important
suits, many of them in the area of the environment. They even just lost a suit where the company
claimed that environmental assessment was done improperly. They could have gone to the Canadian
courts, but they chose to go to a biased private arbitration panel. Three people, one appointed by
the business, one by the government, one by two together. But the ... of these lawyers who do these
arbitration cases is such that they are very biased toward the business side. That's why Canada's
lost so many cases.


Most famous case going on right now, in a similar kind of legal provision, is the suit by Phillip
Morris against Uruguay for the regulations simply saying that you have to disclose that cigarettes
are bad for your health. Just a disclosure, but that disclosure work because people stopped buying
as many cigarettes Phillip Morris' profits went down. Philip Morris is suing for the loss of
profits. They believe they have a fundamental right to kill people. You take away that right,
you have to compensate them. The guy who drafted the key provision, this is back in the earlier
investment protection, said, "We've designed it so if you pass a regulation preventing plutonium
in baby cereal, we will sue." That is what is in the investment agreement.
    
Now, they claimed this is a 21st century agreement, they've taken care of all these problems. Our
lawyers have looked at that. Answer is "No." They have not solved. The way you can see that is
they explicitly carved out tobacco, because people are so angry about tobacco. But they left
carbon emissions, they left `plutonium in baby cereal` in, they left every other topic in. Only
thing they carved out was cigarettes. If we discovered that asbestos was dangerous for your health
and we regulated asbestos, under the current law, we can sue the asbestos manufacturers for what
they've done for our health. Under the new regulations of TPP, the asbestos manufacturers would be
paid by us for not killing us. That should be totally unacceptable. It is an example of how in
secret the rules are being written, rewritten, in ways that contradicts basic principles for which
Hirofumi Uzawa stood. It will increase Inequality and undermines basic principles of Social Justice
and the protection of the Environment. So, for me, this provision by itself is ground for rejecting
TPP.


Let me make one more point clear before ending. Europe has made it very clear that they will not
sign an agreement with the process of adjudication with these private arbitration panels, that they
have insisted on another way of doing it. So if Japan signs this agreement, it will be signing a
20th century agreement, while Europe will be getting a 21st century agreement. Why would you want
an agreement that has been shown to be inadequate to the needs of a modern society?


I hope that these words have given you some thinking about to where the Global Progressive Movement
is going and how it believes the key problems of our society can be addressed today. Thank you.


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
投稿者コメント


民主党(現民進党)が公開してくれた表題の動画を聞き取って訳した。動画には日本語のかんたんな字幕がついているが、ところどころまちがって訳されている。民進党にはなるべく早くきちんと翻訳した講演録を作って公開してくれることを要望する。
講演の聞き取りでは日本語字幕だけでなくYouTubeの自動生成字幕を参考にしたが、どうしても聞き取れなくて......のように示したところが数ヶ所ある。それ以外にもあやしいところが少なくない。訳し方もかなりいいかげんなので、重要なまちがいに気づいたらコメント欄で指摘、修正、補足をお願いしたい。小見出しやブラケットは投稿者による補足。
 
 
動画のスティグリッツ講演以外の内容


講演の趣旨および参加者については、動画冒頭で藤田幸久民主党国際局長が説明、紹介している。
講演に先立って、長妻昭民主党代表代行が民主党共生社会創造本部の取り組みを紹介した。
https://youtu.be/RX334pHGOJM?t=140
講演の後の質疑応答では、岡田克也民主党代表が「財政健全化と世界的な需要不足に対する投資[財政出動]のバランス」について質問した。ここでスティグリッツは、岡田代表が言及しなかった消費増税について、景気対策という観点からするとまちがった課税選択であると断じた。
https://youtu.be/RX334pHGOJM?t=2245 
動画の最後では、TPP阻止国民会議の原中勝征氏(前日本医師会会長=前日本会議代表委員)からのスピーチがあった。
https://youtu.be/RX334pHGOJM?t=2422
 
 
民主党朝食講演会関連の阿修羅掲示板投稿リンク


スティグリッツ氏講演「完全雇用、インクルージョン、差別をなくす」政策を (民主党)
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/139.html
アメリカの碩学の反TPP - スティグリッツ教授の日本へのアドバイス(しのはら孝blog)
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/403.html
「国民の利益にならず」 環境破壊 懸念も TPPでスティグリッツ教授 民主が懇談会 (日本農業新聞)
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/138.html
これから始まる「新しい世界経済」の教科書 ジョセフ・E・スティグリッツ著 中間層を成長させる政策主張
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/151.html
民主党はなぜみすみす再生のチャンスを逃したのか? 党首を変え、経済政策を変えれば可能性はあったのに…(現代ビジネス)
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/560.html

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/469.html

[テスト31] テスト
民主党・スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日
https://www.youtube.com/watch?v=RX334pHGOJM
民主党/YouTube 2016/03/22
 

 
 
□投稿者による抄訳


■宇沢弘文とグローバルな進歩主義[08:48/42:53]
 
宇沢弘文先生をしのびながらこのような会に参加させてもらえてうれしい。私は1965年シカゴ大学で、全米の最高の学生たちとともに宇沢先生のもとで数理経済学を学んだ。われわれは先生の力強い人柄にたちまち心服し、先生と一生の絆で結ばれた。先生はその世代の最高の数理経済学者の一人だった。先生の数理の下には深く根ざした価値観があった。第一に社会正義、第二に環境、第三に平和。


私がそうした問題について書くようになったとき、たとえばイラク戦争に反対した『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』[1]を書いたとき、よく先生のことを思った。すなわち、GDPの最大化は社会の目的ではない。戦費はGDPに寄与するが、イラク戦争に投じられたお金で社会は豊かになっていない。イラクで殺された人たちにとってはなおさらのことだ。


私が議長を務めた「経済パフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会」[2]では、GDPでは測れない生活の質を問題にした。このことは日本で特に重要だ。日本が経済成長をしていないとか、労働力人口が低下しているとかいった、統計にもとづく批判がある。しかし、時間あたり労働者あたりでみると、日本の生産性は最高水準なのだ。


グローバルな進歩主義とでもいうべき近年の動きは、宇沢先生と同じように社会正義、環境、平和に向けられている。その動きが米国ではこれまでになく強まっている。大統領予備選挙では、民主党の候補が2人とも不平等や環境問題への対策としてグローバルで進歩主義的な政策をかかげた。一方で、米国社会はこれまでになく分断されている。所得、資産、健康保険などにおいて格差がますます広がっている。


共和党側に見られる怒りは、ある部分でそれを反映している。日本は米国よりも平均余命が長い。国民皆保険制度が確立している。というより、健康にたいする権利が保障されていない先進国は米国くらいだ。近年では大学を出ていない白人男性の平均余命が大きく低下し、大学を出ていない男性の収入が年々低下している。男性全体の中位収入は40年前より低くなった。現在の実質最低賃金は60年前よりも低い。つまり低所得者の賃金は60年間上昇していない。この社会では高所得者が毎年ますます豊かになっているのに、圧倒的多数の人々はそうでない。それがある種の怒りを引き起こしている。しかし、残念ながらその怒りは建設的な方向に向けられていない。民主党の側では、同じ不満がこうした問題を解決する進歩主義的な方向に向けられている。


■グローバルな進歩主義の政策[17:05/42:53]


今日はこの進歩主義的な政策課題についてかんたんに述べたい。この立場は特定の政党にとらわれず、その政策を受け入れるすべての候補者を支持する。


第一の原則は、完全雇用である。そもそも完全雇用とは何か。たとえばFRBの副議長が「失業率は4.9%であり完全雇用とみなせる」といった。しかし統計をよくみれば、実際の失業率はその倍である。たとえば週に1時間しか働かなくても統計上は雇用とみなされている。4年間求職して仕事が見つからなければ失業とはみなされなくなる。このように実際の失業率が4.9%よりもはるかに高いので、賃金が上昇しないのだ。


日本についても同じことがいえる。3.7%という失業率は米国よりも低いが、やはり賃金が上がっていない。ほんとうの完全雇用が達成されるまでは景気の刺激策が必要である。インフレの懸念があるのならべつだが、現在日本が心配しなければならないのはデフレの方だ。2%のインフレターゲットすら達成されていない。


このように、米国も日本も積極的な方策を必要としている。金融政策ではできるだけのことをやった。したがって次は財政政策に重点を置かなければならない。


均衡予算乗数とよばれる基本原理がある。増税してもその分だけ政府支出を増やせば景気を刺激するというものだ。課税と政府支出の選択が適切であれば、政府支出は景気の拡大に乗数効果をもたらす。


景気を刺激する課税の例として、炭素税がある。これは二酸化炭素の排出を課税対象とすることで事業者に生産工程の改良を促し、消費者には断熱建築や低燃費の自動車の購入を促す。すでに日本の効率は米国よりもずっと高いが、まだまだ向上の余地がある。このように、炭素税は税収と景気対策の両方に効果がある。


相続税は、自分の生きているあいだにお金を使うようにしむけるので、税収を上げるとともに資産格差を縮小する。取引税は、経済を不安定にするだけで実際の成長には寄与しない短期的な投機を抑制し、格差の縮小と税収増をもたらす。固定資産税、とくに不動産取得税は、減税しても土地が増えるというわけではないので減税する必要がない。それはむしろ格差の縮小と経済成長をうながす。以上が、完全雇用に向けた第一の政策課題である。


第二に、社会的包摂と差別の解消。社会的少数者や女性にたいする差別がどの社会にも存在する。女性は、男性と同じ資格で同じ仕事をしても、平均賃金が低い。米国では同一賃金を保証する憲法改正の議論があったが、共和党がそれを拒否した。育児・介護休業、フレックスタイム制など、ほかにも社会的包摂を促進する政策がある。


なかでも重要なのは高齢化対策だ。これまでの経済システムはこの問題を無視してきた。65歳になった人はゴミの山に投げこんで自分でなんとかしろといわんばかりだった。金融緩和が事態をさらに悪くした。老後に備えて買った国債は、利息がつかないどころかマイナスになろうとしている。これでは安心した老後は望めない。人々がもっと長く働き続けられるようにするべきだ。人は高齢になってもなお生産的であり、再訓練の機会や柔順な労働環境がぜひとも必要である。


平等といえば再分配、課税、移転所得に目が向けられがちであり、それらは重要である。しかし、私は最近の本『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』[3]でべつのことを取り上げた。すなわち、経済構造の似ている国でも市場所得[4]の格差の状態はまったく異なるということである。米国では1970年代以降労働力の生産性が倍増したにもかかわらず、賃金が停滞している。かつては生産性が上がれば賃金も上昇したが、現在はそうでない。これは、レーガン政権以来市場経済のルールが書き変えられた結果である。労働者の交渉力を弱め、雇用を不安なものにし、コーポレート・ガバナンスや反トラスト法の執行など経済の枠組み全体にかかわるルールが書き変えられてきた。


■貿易協定の問題[26:18/42:53]


しめくくりに、宇沢弘文先生と私が深くかかわってきた貿易協定について触れたい。これらの貿易協定をめぐって、米国では多くの議論がされてきた。私は、南米の国で大統領をしていたある医師[5]から、米国との自由貿易協定に署名すべきかどうか意見を聞かれたことがある。私は、そもそもそれは自由貿易ではない、と指摘した。自由貿易なら3ページですむのに、TPPは6000ページもある。それは管理貿易であって、米国をはじめとする企業の利益をもたらそうとしている。オバマ大統領は、この協定は、21世紀の貿易ルールを書くのが「われわれ」かそれとも中国かという問題だといった。しかし、そこでいう「われわれ」とは、われわれのことではない。それを書いたのは企業のロビーストたちだ。われわれの求めている貿易協定とは、われわれがそれを書き、民主的な手続きによって成立し、公表されている重要な問題がTPP参加諸国の議会で議論されるようなものだ。


先ほどの医師に話に戻ると、私は彼にこうたずねた。「あなたもヒポクラテスの誓いに署名したのですよね。」これはすべての医師が署名しなければならない誓約で、「害を与えるなかれ」ではじまる[6]。彼が「そうですよ」と答えたので私はいった。「あなたはその貿易協定にサインできませんよ。なぜならヒポクラテスの誓いに背くことになるだろうからです。あなたの職業的な責任である人々の健康にまで危害がおよぶのです。」


この貿易協定は3部から成る。第1部の貿易にかんしてはとても短い。それは、関税障壁がすでにかなり取り除かれているからだ。影響のある産業は比較的には少ない。


第2部は医薬品アクセスについて。かれらは知財と称しているが医薬品のことだけだ。ここではジェネリック医薬品へのアクセスが問題となる。これまでどこの国でも、巨大な製薬団体とジェネリック医薬品とのバランスが議論されてきた。米国でも25年前に議論があり、ハッチ・ワックスマン法ができた。これはあまりにも製薬会社寄りで、ジェネリック医薬品へのアクセスが不十分だが、それでも販売される医薬品の87%がジェネリックで占められるようになった。その条項がなければ、ただでさえ世界一高額な米国の医薬品がもっと高くなる。


製薬会社は、公開された議論の場ではそのバランスを変えられないとわかっているので、内容が秘密にされている貿易協定でジェネリック医薬品を入手しづらくしようとした。かつてはかれらの望むものは何でも手に入ったので、要求に際限がない。私はすべての保健福祉省長官と会って「本気で交渉しないといけない」と伝えてきたが、そしてかれらは実際そうしたのだが、それでも米国の製薬団体は要求のほとんどを通した。この貿易協定はまずまちがいなく医薬品の値段を上げてジェネリック医薬品へのアクセスを減らすことになる。オバマ大統領の主要な功績はオバマケアであり、米国の医療アクセスを拡大した。ところが、この貿易協定でかれはその功績を自分で掘り崩そうとしている。なぜそんなことをするのか、私にはさっぱり理解できない。


しかし、TPPで最悪なのは[第3部の]投資条項である。それは投資を保護するためのものではない。なぜなら米国はEUとのあいだで同様の協定を結ぼうとしているが、EUにはすでによい法律があり、より優れた知財保護があるからだ。


内国民待遇とよばれるもの。規制の撤廃、停止。それが米国の経済団体ビジネス・ラウンドテーブルの求めている条項だ。経済界が後押ししているのはそのためだ。この条項が意図し結果としてもたらすのは、状況の変化に対応した新たな規制がますます作りにくくなるということだ。たとえばわれわれは地球温暖化について40年前には何も知らず、1980年代になってはじめて聞かされた。それに取り組もうとすれば、二酸化炭素排出量を減らすための規制を設けなければならない。ところがTPPのもとでは、ある国で設けた規制は、それによって不利益をこうむる企業から訴えられる可能性がある。カナダ政府は9つの重要な訴訟に負けたが、その多くは環境規制に関係している。この間も環境アセスメントが不適切だと訴えた企業に負けてしまった[7]。その企業はカナダの裁判所に訴えることもできたのだが、民間の仲裁人による仲裁委員会を選んだ。仲裁人は3人で、1人は企業が指名し、1人は政府から、もう1人は両者の合意によって指名される。ところが仲裁にあたるこれらの法律家たちはきわめて企業の側にかたよっている[8]。それでカナダはこれほど多くの訴訟に負けているのだ。


同様の条項に関連したもので、現在係争中でもっとも有名な訴訟としては、タバコのパッケージに健康危害の記載を義務づけた規制についてフィリップ・モリス社がウルグアイ政府を訴えた裁判がある。その規制はただの告知義務にすぎなくても人々がタバコを買わなくなるという効果があったので、フィリップ・モリス社の利益が低下した。そこでフィリップ・モリス社は損失の補償を求めた。まるでかれらは人々を殺してもいい基本的権利があるのを確信しているみたいだ。その権利を取り上げるのなら賠償してもらわなければならないといっている。


その重要な条項を起草した男[9]、これは初期の投資保護[訴訟]にさかのぼるが、かれはこういった。「その[新たな]規制がたとえば離乳食への放射性物質の混入を防ぐようなものだとしても、われわれはそれを訴えることができるように条項を書いた。」これが投資にかんする協定の内容だ。


かれらは、これ[TPP]が21世紀の協定であり、こうした[NAFTAの]問題のすべてに対処したと主張している。しかし、われわれの側の法律家の意見によれば、まったく解決されていない。人々の怒りが大きいタバコだけは取り除かれたが、二酸化炭素の排出も、「離乳食の放射性物質」も、それ以外のすべてはそのまま残されている。たとえばアスベストの危険が明らかになったときにアスベストを規制したとする。現行法ではアスベストによる健康被害にたいしてわれわれがアスベストの製造業者を訴えることができる。ところが新しいTPPの規制のもとでは、製造業者はわれわれを殺さずにいるという理由でわれわれから支払いを受けるのだ。これはとても容認できない。このようなルールが、宇沢弘文先生の支持した基本原則とは相容れないやり方で秘密裏に書かれ、書き変えられている。格差を拡大し、社会的正義と環境保護の基盤を掘り崩そうとしている。この条項一つをとっても私はTPPに賛成できない。


EUは、民間の仲裁人委員会による裁定制度のある協定には署名しないことを明確にした。べつのやり方を主張している。日本が署名した[批准しようとしている]のは20世紀の協定だ。EUがつくろうとしているのは21世紀の協定だ。近代社会の必要性を満たせないことが明らかになっている協定を、あなたがたはどうして欲しがるのか。


以上、グローバルな進歩主義の向かっている方向と主要な取り組みについて参考にしていただきたい。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
□投稿者による注


[1]The Commission on the Measurement of Economic Performance and Social Progress(Wikipedia)
[2]The Three Trillion Dollar War(Wikipedia)
[3]Rewriting the Rules of the American Economy(Roosevelt Institute)
[4]market income: 賃金や給与などの雇用者報酬と自営業者所得、財産所得および企業年金や仕送りなどを含んでおり、税や社会保障費を控除する前の所得を意味する。[社会保障給付は含まない]
「JIL労働政策レポートVol.3 日本の所得格差をどうみるか」(労働政策研究・研修機構)
[5]ウルグアイ大統領タバレ・バスケス(Tabare Vazquez)をさすか。
"La guerra del opio del siglo XXI"[21世紀のアヘン戦争](Red De Militantes De Izquierda)
[6]First, Do No Harm: これについてはスティグリッツに誤認があるようだ。
「「First, Do No Harm」をヒポクラテスの誓いとして使うべきではない」(EARLの医学ノート)
[7]"Clayton/Bilcon v. Government of Canada"(Global Affairs Canada)
"NAFTA ruling in Nova Scotia quarry case sparks fears for future settlements"(The Globe and Mail)
[8]ISDSの仲裁制度の問題点(自由のための統一戦線)
[9]Barry Appleton, Canadian lawyer for Ethyl Corp. NAFTAの条項の起草にあたったかどうかは不明。
"Elizabeth May's submission on the Environmental Assessment for the Canada-China Foreign Investment Protection and Promotion Agreement"(Elizabeth May)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
□投稿者によるディクテーション


[08:48/42:53]


It's a real pleasure to be here and participate in this session, in part commemorating the life of
Hirofumi Uzawa, who is my teacher. I studied under him in 1965 at the University of Chicago, where
he had brought the best students from all over the United States to discuss economic theory,
mathematic economics. He had a very powerful personality and in just a very short time we all
became his disciples. We all maintained a lifelong connection with Professor Uzawa. There were
three themes that distinguished Professor Uzawa. He was a mathematical economist. He was one
of the best mathematical economist of his generation. But underlying the mathematics were very
deeply held values. Those values are values I think that he maintained he lived his life by. One
of them was Social Justice. A concern about inequality, concern about poor, concern about the way
our society functions discriminates. The second was the Environment. He was vey committed to the
environment. Economists often talk about this in terms of inter-generational equity, fairness
across generations. He was deeply concerned not only about fairness within a generation which was
the distribution of income and wealth within a generation , but fairness across generations, social
justice at one moment of time and over time. Finally, he was vey concerned about Peace. Having
grown up in part during World War II, he was very committed to making sure that that kind of
occurrence never happened again.


Often when I write my work about Inequality, about the Environment, or my book "The Three
Trillion Dollar War" which was written to try to persuade America that it should not be engaged in
the war in Iraq and it was a war that was not going to be successful, which's going to cost us a
great deal,I thought of Hirofumi Uzawa. One of the points that was just raised echoes one of those
that I made in ... work, which is maximizing GDP is not what the society is about. The spending on
war adds to GDP. But nobody thinks our society is better off as result of the money that was
wasted in Iraq, especially the people who got killed didn't think it was a good way of spending
money.


I chaired an international commission on the Measurement of Economic Performance and Social
Progress. Main theme of that commission was that GDP doesn't measure what is important and
we have to focus our attention not on GDP but on the quality of life. That's particularly important
here in Japan because the statistics often mislead people to criticizing Japan for saying it's not
growing very well but Japan has a declining labor force. In terms of output per hour, output per
worker, is actually among the best performance of the best advanced countries. That doesn't
mean you can't do better, but the single-minded focus on growth, I believe, is very much
misplaced.
    
In recent years there has developed what might be called a Global Progressive Movement, which is
focused on precisely these issues that were the mainstay of Professor Uzawa, on Social Justice and
Environment and Peace. Right now is a very interesting moment in terms of the Global Progressive
Movement. Because in the United States, for instance, on one side, I don't think the Global
Progressive Movement has ever been stronger. Both of the Democratic candidates have espoused
policies that are broadly consistent with ... many of the pillars of the Progressive Movement. They
talked about Inequality is being America's most important problem and what we can do about it.
They talked about the Environment and how we can protect it. On the other hand, never has ......
been more divided society. Income, wealth, health, every metric shows a society that is moving
further and further apart. Part of the reason that you see on the Republican side, such anger on
certain part, is because for a large fraction of Americans life has not been very good.


Japan has a higher life expectancy than the United States. Japan has recognized the right of access
to health for everybody. The United States is one of the, I think the only advanced country that
does not recognize that as a basic right. The result of that is that in the United States there are
large disparities in access to health. Recent data show that among white males who are not college
graduates, life expectancy is declining very strongly. American males, for instance, who have not
graduated from college have seen their income decline year after year. The median income for men
as a whole, half above and half below, is now lower than it was 40 years ago. Real wages today in
the United States at the bottom are lower than it were in January 1955, 60 years ago. Those at the
bottom have not seen a pay raise in 60 years. This is not a society which is getting better every
year. This is a society in which the top are doing better every year, but the vast majority are not.
That of course has spurred the kind of anger that you see. But unfortunately it's not being
channeled in a constructive way. On the other side, in the Democratic side, the discontent is being
channeled in a progressive way, in a way that's trying to see what we can do about those problems.


[17:05/42:53]


What I want to do this morning is very briefly talk about that Progressive agenda. Let me say that
we were.., The Progressive Movement has been very careful to say, "It's not partisan." It supports
anybody, any candidate that is going to support these ideas and talk to anybody who supports these
ideas.


Among the first principles is Full Employment. But what is Full Employment mean? There are some
people in the United States i.e. vice chair of the U.S. Federal Reserve who says, "Well, we are
4.9% unemployment and that means we are full employment." But of course those statistics don't
reflect the lives of those who don't have a job. If you are one of those 4.9% you don't feel fully
employed. If you look underneath the statistics you realize the true unemployment rate in the
United States is twice that number. The true unemployment rate reflects the fact that many
Americans are called employed if they work just one hour a week. Of course that's not a
meaningful employment. You can't get an income to survive. If you've looked for job for four
years and you still can't get a job, you are not called unemployed. But you are not employed.
When we look at the statistics what we realize is that the true unemployment is much larger.
That is why even with 4.9% unemployment wages are stagnating. If there were really no
unemployment, wages would be bid up.


The same thing is true in Japan, except you are in a better shape. You have unemployment of ......
3.7%? But wages are not doing very well. Until you get truly full employment where wage pressures
are going up, you should try to continue to stimulate the economy. The only reason to stop
stimulating the economy is a worry about inflation. The worry now in Japan is about deflation. It's
difficult you getting up to a 2% target.


So, both in the United States and in Japan, there is a need for more aggressive measures. Monetary
policy has done as much as it can. Therefore the burden has to shift fiscal policy.


Here, there is a fundamental principle in economics which is called the Balance Budget Multiplier.
If you increase taxes and increase spending in tandem, it stimulates the economy. If you choose
your taxes right and your spending right, it increases the economy by a multiple of what the
spending.


For instance, taxes that stimulates the economy, a carbon tax. A carbon tax induces firms to invest
to retrofit their production processes for the higher charges of emissions, induces homes to invest
to insulate, it induces people to relocate to buy new cars that are more fuel efficient. Japan is
already much more efficient than in the United States, but there's still a long way to go. So a
carbon tax is a tax that both raises revenue and stimulates the economy.


There are other taxes like an inheritance tax. Inheritance taxes can often induce people to spend
money before they die, increase revenue and improve equality. Financial transaction tax discourages
the kind of short-term speculation that destabilizes the economy and produces no real growth,
reduces inequality and raises revenue. Taxes on property, particularly capital gains taxes on
property. Lower taxes on land do not result in more land, so have no negative incentive effects but
raise revenue, increase equality and promote growth. That's the first agenda which is promoting
full employment.


The second is inclusion and discrimination. All societies engage in discrimination to some extent.
There's discrimination against minorities, discrimination against women. Women receive on average
a fraction of the wages the men doing comparable work, comparable qualifications. United States,
we've been discussing constitutional amendment for guaranteeing equal wages, but Republicans
have refused to support this idea. There are other policies that promote inclusion. Child care,
family leave policy, flexible working hours, these are all aspects of inclusion.


There are other aspects of inclusion that are important, one of which was mentioned. Japan has an
aging population. All societies are now having aging population. We have an economic system that
has ignored that challenge. Traditionally, when people get the age of 65 you throw them in the
garbage heap and say, "try to survive." With QE, things have become even worse because many of
those elderly who acted safe and bought government bonds, those bonds yield zero interest rates.
They are about to yield negative interest rates. That's not a way to have a comfortable retirement.
You can't live on zero interest rates. One has to think about how we can include these people
longer in the labor force. The reason, they are living longer? But they don't want to retire. We
force them to retire. They are still productive. They would be productive particularly if we
retrain them and we made work more flexible. So greater flexibility in the work place recognizing
imperative inclusion is another part of the inclusion agenda.


When we talk about Equality, often people focus on redistribution, on taxes and transfers, and
those are important. But in my most recent book called "Rewriting the Rules," what we focused on
is something different. What we realize is that countries with similar economic structures wind up
with very different market income inequality. So ...... the demand and supply operate the same on
both sides of Atlantic, both sides of Pacific, in countries that is similar stages of development,
but market income is markedly different. For instance, one of the astounding things in the United
States is that since 1970s productivity of American labor force is roughly doubled. Wages,
compensation has stagnated. It used to be the productivity and wages move together. Now they
don't. This result of what happened beginning in the Reagan era where there was a rewriting of
the rules of the market economy, rewriting the rules in ways that weaken the bargaining power of
workers, increase their insecurity and changed the economic framework in a whole ...... ways, like
changes in corporate governance, changes in enforcement of antitrust laws and so forth.
    
[26:18/42:53]


I want to conclude my brief remarks this morning by talking about one area that I understand that
Hirofumi Uzawa was very involved in and I've been involved in a great deal. That's a trade
agreements. These trade agreements have motivated a lot of the discussion in the United States.
I was once asked by a doctor who was the President of a Latin American country whether he should
sign a free trade agreement with the United States. I first pointed out it was not a free trade
agreement. If it was a free trade agreement, it would be about three pages, "We eliminate our
tariffs, you eliminate your tariffs, we eliminate our non-tariffs, you eliminate yours, we
eliminate our subsidies, you eliminate yours," about three pages. Do you know how long? The TPP
agreement is 6,000 pages. I have not met a single person who has ever read the entire agreement.
That's not a free trade agreement, it's a managed trade agreement. It's a managed trade agreement
that ...... manage for the interest of corporate interest, corporate interest mostly in the
United States, but corporate interest in other countries as well. When the United States President
Obama said that this agreement is about who writes the rules of trade in the 21st century, China
and the United States, or he said, "Do we or China write it." The question is which "we". We did
not write it, the corporate lobbyists wrote it. What we are asking is for a trade agreement that
we write, that is arrived at through a more democratic process, that the key issues are laid out
in the open and discussed in the parliaments of all of the TPP countries.


Well, could go back to this doctor, I asked him, "Did you sign the Hippocratic Oath?" which all
the doctors have to sign. The Hippocratic Oath begins, "Do no harm." He said, "Yes," he signed it.
So I told him, "You can't sign the trade agreement 'cause that would be a violation of the oath
that you have signed. It would actually even harm health and that is your responsibility."


There are three parts of the trade agreement. The first part is about trade. It's very small part
because tariff barrier's already relatively low. There are specially interested industries get
hurt, get helped, but that is a relatively small part.


The second part is about access to medicine. They call it intellectual property, but it's only
about medicine. The question is access to generic medicine. Most countries have had a debate about
the balance between Big Pharma and generics. United States we had that debate 25 years ago.
Result was the Hatch-Waxman Act, which created a balance I thought was not good. Quite the right
balance? It was too weighted for Big Pharma and not enough for access to generic medicines,
but even with that unbalanced agreement, about 87% of all drugs are sold generically. If it were
not for the provision, the price of drugs in the United States, already the highest in the world,
would be much much higher.


The drug companies knew that they could not get that changed in an open debate, so they went in
the secret trade agreement and got that balance unbalanced to make it more difficult to get
generic medicines. That was the key part of this provision. They didn't get everything they wanted
so they are complaining, because they used to win everything. I met with all the health ministers
and I used to say, "You really have to bargain hard," and they did, but still the U.S. Big Pharma
got most of what they wanted. And effect of this agreement almost surely will be to raise the price
of drugs and reduce access to generic medicines. For me, this is a big puzzle because Obama's
Signature Achievement is Obamacare, making access to health care more affordable, greater in
the United States. Yet with this trade agreement, he is undermining his Signature Achievement.


But the worst provision in the TPP is the investment provision. It's not about protecting
investment, let's make that clear, because we are insisting, United States is insisting on the
same agreement with Europe, where they have good laws, even better protection of intellectual
property rights. So it's not about ... systems, it's not about protecting property right, it's not
about discrimination, it's nothing to do with discrimination.


We just called National Treatment. It is about deregulation, stopping regulations, and that
provision is what the Business Roundtable wanted. It is the main reason that some of the business
community is behind it. The intent and the consequence of this part of the agreement is to make it
increasingly difficult to pass new regulations as the circumstances change. We didn't know about
global warming 40 years ago. We just learned about it in the 1980s. As we're going about we have
to pass regulations that will reduce carbon emissions. But under the TPP, if a country passes a
regulation, they may be sued if the profit of the company goes down. Canada has lost nine
important suits, many of them in the area of the environment. They even just lost a suit where
the company claimed that environmental assessment was done improperly. They could have gone
to the Canadian courts, but they chose to go to a biased private arbitration panel. Three people,
one appointed by the business, one by the government, one by two together. But the ... of these
lawyers who do these arbitration cases is such that they are very biased toward the business side.
That's why Canada's lost so many cases.


Most famous case going on right now, in a similar kind of legal provision, is the suit by Phillip
Morris against Uruguay for the regulations simply saying that you have to disclose that cigarettes
are bad for your health. Just a disclosure, but that disclosure work because people stopped buying
as many cigarettes Phillip Morris' profits went down. Philip Morris is suing for the loss of
profits. They believe they have a fundamental right to kill people. You take away that right,
you have to compensate them. The guy who drafted the key provision, this is back in the earlier
investment protection, said, "We've designed it so if you pass a regulation preventing plutonium
in baby cereal, we will sue." That is what is in the investment agreement.
    
Now, they claimed this is a 21st century agreement, they've taken care of all these problems. Our
lawyers have looked at that. Answer is "No." They have not solved. The way you can see that is
they explicitly carved out tobacco, because people are so angry about tobacco. But they left
carbon emissions, they left `plutonium in baby cereal` in, they left every other topic in. Only
thing they carved out was cigarettes. If we discovered that asbestos was dangerous for your health
and we regulated asbestos, under the current law, we can sue the asbestos manufacturers for what
they've done for our health. Under the new regulations of TPP, the asbestos manufacturers would be
paid by us for not killing us. That should be totally unacceptable. It is an example of how in
secret the rules are being written, rewritten, in ways that contradicts basic principles for which
Hirofumi Uzawa stood. It will increase Inequality and undermines basic principles of Social Justice
and the protection of the Environment. So, for me, this provision by itself is ground for rejecting
TPP.


Let me make one more point clear before ending. Europe has made it very clear that they will not
sign an agreement with the process of adjudication with these private arbitration panels, that they
have insisted on another way of doing it. So if Japan signs this agreement, it will be signing a
20th century agreement, while Europe will be getting a 21st century agreement. Why would you
want an agreement that has been shown to be inadequate to the needs of a modern society?


I hope that these words have given you some thinking about to where the Global Progressive
Movement is going and how it believes the key problems of our society can be addressed today.
Thank you.


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
□投稿者のコメント


民主党(現民進党)がYouTubeに公開しているスティグリッツの講演を聞き取って訳してみた。動画には日本語のかんたんな字幕がついているが、ところどころまちがって訳されている。民進党にはなるべく早くきちんと翻訳した講演録を作って公開してくれることを要望する。それまでこの投稿が誰かの役に立てばうれしい。
聞き取りでは日本語字幕およびYouTubeの自動生成字幕が参考になったが、どうしても聞き取れなくて......のように示したところが数ヶ所ある。それ以外にもあやしいところが少なくない。訳し方もいいかげんなので、重要なまちがいに気がついたらコメント欄で修正や補足をお願いしたい。
小見出しとブラケットは投稿者による補足。
 
 
□スティグリッツ講演以外の動画の内容


講演の趣旨および参加者については、動画冒頭で藤田幸久民主党国際局長が説明、紹介している。講演に先立って、長妻昭民主党代表代行が民主党共生社会創造本部の取り組みを報告している[2:20/42:53]。講演の後の質疑応答では、岡田克也民主党代表が「財政健全化と世界的な需要不足に対する投資[財政出動]のバランス」について質問した。ここでスティグリッツは岡田代表が言及しなかった消費増税について、景気対策という観点からするとまちがった課税の選択であると断じた[37:26/42:53]。 動画の最後には、TPP阻止国民会議の原中勝征氏(前日本医師会会長)からのスピーチがある[40:22/42:53]
 
 
□民主党主催スティグリッツ講演関連の阿修羅掲示板投稿リンク


スティグリッツ氏講演「完全雇用、インクルージョン、差別をなくす」政策を (民主党)
アメリカの碩学の反TPP - スティグリッツ教授の日本へのアドバイス(しのはら孝blog)
「国民の利益にならず」 環境破壊 懸念も TPPでスティグリッツ教授 民主が懇談会 (日本農業新聞)
民主党はなぜみすみす再生のチャンスを逃したのか? 党首を変え、経済政策を変えれば可能性はあったのに…(現代ビジネス)
これから始まる「新しい世界経済」の教科書 ジョセフ・E・スティグリッツ著 中間層を成長させる政策主張

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/470.html

[テスト31] テスト
民主党・スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日[試訳]


民主党・スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日
https://www.youtube.com/watch?v=RX334pHGOJM
YouTube(民主党) 2016/03/22

 
 
○投稿者による抄訳


■宇沢弘文とグローバルな進歩主義[08:48/42:53]
 
宇沢弘文先生をしのびながらこのような会に参加させてもらえてうれしい。私は1965年シカゴ大学で、全米の最高の学生たちとともに宇沢先生のもとで数理経済学を学んだ。われわれは先生の力強い人柄にたちまち心服し、先生と一生の絆で結ばれた。先生はその世代の最高の数理経済学者の一人だった。先生の数理の下には深く根ざした価値観があった。第一に社会正義、第二に環境、第三に平和。


私がそうした問題について書くようになったとき、たとえばイラク戦争に反対した『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』[1]を書いたとき、よく先生のことを思った。すなわち、GDPの最大化は社会の目的ではない。戦費はGDPに寄与するが、イラク戦争に投じられたお金で社会は豊かになっていない。イラクで殺された人たちにとってはなおさらのことだ。


私が議長を務めた「経済パフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会」[2]では、GDPでは測れない生活の質を問題にした。このことは日本で特に重要だ。日本が経済成長をしていないとか、労働力人口が低下しているとかいった、統計にもとづく批判がある。しかし、時間あたり労働者あたりでみると、日本の生産性は最高水準なのだ。


グローバルな進歩主義とでもいうべき近年の動きは、宇沢先生と同じように社会正義、環境、平和に向けられている。その動きが米国ではこれまでになく強まっている。大統領予備選挙では、民主党の候補が2人とも不平等や環境問題への対策としてグローバルで進歩主義的な政策をかかげた。一方で、米国社会はこれまでになく分断されている。所得、資産、健康保険などにおいて格差がますます広がっている。


共和党側に見られる怒りは、ある部分でそれを反映している。日本は米国よりも平均余命が長い。国民皆保険制度が確立している。というより、健康にたいする権利が保障されていない先進国は米国くらいだ。近年では大学を出ていない白人男性の平均余命が大きく低下し、大学を出ていない男性の収入が年々低下している。男性全体の中位収入は40年前より低くなった。現在の実質最低賃金は60年前よりも低い。つまり低所得者の賃金は60年間上昇していない。この社会では高所得者が毎年ますます豊かになっているのに、圧倒的多数の人々はそうでない。それがある種の怒りを引き起こしている。しかし、残念ながらその怒りは建設的な方向に向けられていない。民主党の側では、同じ不満がこうした問題を解決する進歩主義的な方向に向けられている。


■グローバルな進歩主義の政策[17:05/42:53]


今日はこの進歩主義的な政策課題についてかんたんに述べたい。この立場は特定の政党にとらわれず、その政策を受け入れるすべての候補者を支持する。


第一の原則は、完全雇用である。そもそも完全雇用とは何か。たとえばFRBの副議長が「失業率は4.9%であり完全雇用とみなせる」といった。しかし統計をよくみれば、実際の失業率はその倍である。たとえば週に1時間しか働かなくても統計上は雇用とみなされている。4年間求職して仕事が見つからなければ失業とはみなされなくなる。このように実際の失業率が4.9%よりもはるかに高いので、賃金が上昇しないのだ。


日本についても同じことがいえる。3.7%という失業率は米国よりも低いが、やはり賃金が上がっていない。ほんとうの完全雇用が達成されるまでは景気の刺激策が必要である。インフレの懸念があるのならべつだが、現在日本が心配しなければならないのはデフレの方だ。2%のインフレターゲットすら達成されていない。


このように、米国も日本も積極的な方策を必要としている。金融政策ではできるだけのことをやった。したがって次は財政政策に重点を置かなければならない。


均衡予算乗数とよばれる基本原理がある。増税してもその分だけ政府支出を増やせば景気を刺激するというものだ。課税と政府支出の選択が適切であれば、政府支出は景気の拡大に乗数効果をもたらす。


景気を刺激する課税の例として、炭素税がある。これは二酸化炭素の排出を課税対象とすることで事業者に生産工程の改良を促し、消費者には断熱建築や低燃費の自動車の購入を促す。すでに日本の効率は米国よりもずっと高いが、まだまだ向上の余地がある。このように、炭素税は税収と景気対策の両方に効果がある。


相続税は、自分の生きているあいだにお金を使うようにしむけるので、税収を上げるとともに資産格差を縮小する。取引税は、経済を不安定にするだけで実際の成長には寄与しない短期的な投機を抑制し、格差の縮小と税収増をもたらす。固定資産税、とくに不動産取得税は、減税しても土地が増えるというわけではないので減税する必要がない。それはむしろ格差の縮小と経済成長をうながす。以上が、完全雇用に向けた第一の政策課題である。


第二に、社会的包摂と差別の解消。社会的少数者や女性にたいする差別がどの社会にも存在する。女性は、男性と同じ資格で同じ仕事をしても、平均賃金が低い。米国では同一賃金を保証する憲法改正の議論があったが、共和党がそれを拒否した。育児・介護休業、フレックスタイム制など、ほかにも社会的包摂を促進する政策がある。


なかでも重要なのは高齢化対策だ。これまでの経済システムはこの問題を無視してきた。65歳になった人はゴミの山に投げこんで自分でなんとかしろといわんばかりだった。金融緩和が事態をさらに悪くした。老後に備えて買った国債は、利息がつかないどころかマイナスになろうとしている。これでは安心した老後は望めない。人々がもっと長く働き続けられるようにするべきだ。人は高齢になってもなお生産的であり、再訓練の機会や柔順な労働環境がぜひとも必要である。


平等といえば再分配、課税、移転所得に目が向けられがちであり、それらは重要である。しかし、私は最近の本『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』[3]でべつのことを取り上げた。すなわち、経済構造の似ている国でも市場所得[4]の格差の状態はまったく異なるということである。米国では1970年代以降労働力の生産性が倍増したにもかかわらず、賃金が停滞している。かつては生産性が上がれば賃金も上昇したが、現在はそうでない。これは、レーガン政権以来市場経済のルールが書き変えられた結果である。労働者の交渉力を弱め、雇用を不安なものにし、コーポレート・ガバナンスや反トラスト法の執行など経済の枠組み全体にかかわるルールが書き変えられてきた。


■貿易協定の問題[26:18/42:53]


しめくくりに、宇沢弘文先生と私が深くかかわってきた貿易協定について触れたい。これらの貿易協定をめぐって、米国では多くの議論がされてきた。私は、南米の国で大統領をしていたある医師[5]から、米国との自由貿易協定に署名すべきかどうか意見を聞かれたことがある。私は、そもそもそれは自由貿易ではない、と指摘した。自由貿易なら3ページですむのに、TPPは6000ページもある。それは管理貿易であって、米国をはじめとする企業の利益をもたらそうとしている。オバマ大統領は、この協定は、21世紀の貿易ルールを書くのが「われわれ」かそれとも中国かという問題だといった。しかし、そこでいう「われわれ」とは、われわれのことではない。それを書いたのは企業のロビーストたちだ。われわれの求めている貿易協定とは、われわれがそれを書き、民主的な手続きによって成立し、公表されている重要な問題がTPP参加諸国の議会で議論されるようなものだ。


先ほどの医師に話に戻ると、私は彼にこうたずねた。「あなたもヒポクラテスの誓いに署名したのですよね。」これはすべての医師が署名しなければならない誓約で、「害を与えるなかれ」ではじまる[6]。彼が「そうですよ」と答えたので私はいった。「あなたはその貿易協定にサインできませんよ。なぜならヒポクラテスの誓いに背くことになるだろうからです。あなたの職業的な責任である人々の健康にまで危害がおよぶのです。」


この貿易協定は3部から成る。第1部の貿易にかんしてはとても短い。それは、関税障壁がすでにかなり取り除かれているからだ。影響のある産業は比較的には少ない。


第2部は医薬品アクセスについて。かれらは知財と称しているが医薬品のことだけだ。ここではジェネリック医薬品へのアクセスが問題となる。これまでどこの国でも、巨大な製薬団体とジェネリック医薬品とのバランスが議論されてきた。米国でも25年前に議論があり、ハッチ・ワックスマン法ができた。これはあまりにも製薬会社寄りで、ジェネリック医薬品へのアクセスが不十分だが、それでも販売される医薬品の87%がジェネリックで占められるようになった。その条項がなければ、ただでさえ世界一高額な米国の医薬品がもっと高くなる。


製薬会社は、公開された議論の場ではそのバランスを変えられないとわかっているので、内容が秘密にされている貿易協定でジェネリック医薬品を入手しづらくしようとした。かつてはかれらの望むものは何でも手に入ったので、要求に際限がない。私はすべての保健福祉省長官と会って「本気で交渉しないといけない」と伝えてきたが、そしてかれらは実際そうしたのだが、それでも米国の製薬団体は要求のほとんどを通した。この貿易協定はまずまちがいなく医薬品の値段を上げてジェネリック医薬品へのアクセスを減らすことになる。オバマ大統領の主要な功績はオバマケアであり、米国の医療アクセスを拡大した。ところが、この貿易協定でかれはその功績を自分で掘り崩そうとしている。なぜそんなことをするのか、私にはさっぱり理解できない。


しかし、TPPで最悪なのは[第3部の]投資条項である。それは投資を保護するためのものではない。なぜなら米国はEUとのあいだで同様の協定を結ぼうとしているが、EUにはすでによい法律があり、より優れた知財保護があるからだ。


内国民待遇とよばれるもの。規制の撤廃、停止。それが米国の経済団体ビジネス・ラウンドテーブルの求めている条項だ。経済界が後押ししているのはそのためだ。この条項が意図し結果としてもたらすのは、状況の変化に対応した新たな規制がますます作りにくくなるということだ。たとえばわれわれは地球温暖化について40年前には何も知らず、1980年代になってはじめて聞かされた。それに取り組もうとすれば、二酸化炭素排出量を減らすための規制を設けなければならない。ところがTPPのもとでは、ある国で設けた規制は、それによって不利益をこうむる企業から訴えられる可能性がある。カナダ政府は9つの重要な訴訟に負けたが、その多くは環境規制に関係している。この間も環境アセスメントが不適切だと訴えた企業に負けてしまった[7]。その企業はカナダの裁判所に訴えることもできたのだが、民間の仲裁人による仲裁委員会を選んだ。仲裁人は3人で、1人は企業が指名し、1人は政府から、もう1人は両者の合意によって指名される。ところが仲裁にあたるこれらの法律家たちはきわめて企業の側にかたよっている[8]。それでカナダはこれほど多くの訴訟に負けているのだ。


同様の条項に関連したもので、現在係争中でもっとも有名な訴訟としては、タバコのパッケージに健康危害の記載を義務づけた規制についてフィリップ・モリス社がウルグアイ政府を訴えた裁判がある。その規制はただの告知義務にすぎなくても人々がタバコを買わなくなるという効果があったので、フィリップ・モリス社の利益が低下した。そこでフィリップ・モリス社は損失の補償を求めた。まるでかれらは人々を殺してもいい基本的権利があるのを確信しているみたいだ。その権利を取り上げるのなら賠償してもらわなければならないといっている。


その重要な条項を起草した男[9]、これは初期の投資保護[訴訟]にさかのぼるが、かれはこういった。「その[新たな]規制がたとえば離乳食への放射性物質の混入を防ぐようなものだとしても、われわれはそれを訴えることができるように条項を書いた。」これが投資にかんする協定の内容だ。


かれらは、これ[TPP]が21世紀の協定であり、こうした[NAFTAの]問題のすべてに対処したと主張している。しかし、われわれの側の法律家の意見によれば、まったく解決されていない。人々の怒りが大きいタバコだけは取り除かれたが、二酸化炭素の排出も、「離乳食の放射性物質」も、それ以外のすべてはそのまま残されている。たとえばアスベストの危険が明らかになったときにアスベストを規制したとする。現行法ではアスベストによる健康被害にたいしてわれわれがアスベストの製造業者を訴えることができる。ところが新しいTPPの規制のもとでは、製造業者はわれわれを殺さずにいるという理由でわれわれから支払いを受けるのだ。これはとても容認できない。このようなルールが、宇沢弘文先生の支持した基本原則とは相容れないやり方で秘密裏に書かれ、書き変えられている。格差を拡大し、社会的正義と環境保護の基盤を掘り崩そうとしている。この条項一つをとっても私はTPPに賛成できない。


EUは、民間の仲裁人委員会による裁定制度のある協定には署名しないことを明確にした。べつのやり方を主張している。日本が署名した[批准しようとしている]のは20世紀の協定だ。EUがつくろうとしているのは21世紀の協定だ。近代社会の必要性を満たせないことが明らかになっている協定を、あなたがたはどうして欲しがるのか。


以上、グローバルな進歩主義の向かっている方向と主要な取り組みについて参考にしていただきたい。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○投稿者による注


[1]The Commission on the Measurement of Economic Performance and Social Progress
(Wikipedia)

[2]The Three Trillion Dollar War(Wikipedia)
[3]Rewriting the Rules of the American Economy(Roosevelt Institute)
[4]market income: 賃金や給与などの雇用者報酬と自営業者所得、財産所得および企業年金や仕送りなどを含んでおり、税や社会保障費を控除する前の所得を意味する。[社会保障給付は含まない]
「JIL労働政策レポートVol.3 日本の所得格差をどうみるか」(労働政策研究・研修機構)
[5]ウルグアイ大統領タバレ・バスケス(Tabare Vazquez)をさすか。
La guerra del opio del siglo XXI[21世紀のアヘン戦争](Red De Militantes De Izquierda)
[6]First, Do No Harm: これについてはスティグリッツに誤認があるようだ。
「First, Do No Harm」をヒポクラテスの誓いとして使うべきではない(EARLの医学ノート)
[7]"Clayton/Bilcon v. Government of Canada"(Global Affairs Canada)
"NAFTA ruling in Nova Scotia quarry case sparks fears for future settlements"(The Globe and Mail)
[8]ISDSの仲裁制度の問題点(自由のための統一戦線)
[9]Barry Appleton, Canadian lawyer for Ethyl Corp. NAFTAの条項の起草にあたったかどうかは不明。
Elizabeth May's submission on the Environmental Assessment for the Canada-China Foreign Investment Protection and Promotion Agreement(Elizabeth May)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○投稿者によるディクテーション


[08:48/42:53]


It's a real pleasure to be here and participate in this session, in part commemorating the life of
Hirofumi Uzawa, who is my teacher. I studied under him in 1965 at the University of Chicago,
where he had brought the best students from all over the United States to discuss economic theory,
mathematic economics. He had a very powerful personality and in just a very short time we all
became his disciples. We all maintained a lifelong connection with Professor Uzawa. There were
three themes that distinguished Professor Uzawa. He was a mathematical economist. He was one
of the best mathematical economist of his generation. But underlying the mathematics were very
deeply held values. Those values are values I think that he maintained he lived his life by. One
of them was Social Justice. A concern about inequality, concern about poor, concern about the way
our society functions discriminates. The second was the Environment. He was vey committed to the
environment. Economists often talk about this in terms of inter-generational equity, fairness
across generations. He was deeply concerned not only about fairness within a generation which was
the distribution of income and wealth within a generation , but fairness across generations, social
justice at one moment of time and over time. Finally, he was vey concerned about Peace. Having
grown up in part during World War II, he was very committed to making sure that that kind of
occurrence never happened again.


Often when I write my work about Inequality, about the Environment, or my book "The Three
Trillion Dollar War" which was written to try to persuade America that it should not be engaged in
the war in Iraq and it was a war that was not going to be successful, which's going to cost us a
great deal,I thought of Hirofumi Uzawa. One of the points that was just raised echoes one of those
that I made in ... work, which is maximizing GDP is not what the society is about. The spending on
war adds to GDP. But nobody thinks our society is better off as result of the money that was
wasted in Iraq, especially the people who got killed didn't think it was a good way of spending
money.


I chaired an international commission on the Measurement of Economic Performance and Social
Progress. Main theme of that commission was that GDP doesn't measure what is important and
we have to focus our attention not on GDP but on the quality of life. That's particularly important
here in Japan because the statistics often mislead people to criticizing Japan for saying it's not
growing very well but Japan has a declining labor force. In terms of output per hour, output per
worker, is actually among the best performance of the best advanced countries. That doesn't
mean you can't do better, but the single-minded focus on growth, I believe, is very much
misplaced.
    
In recent years there has developed what might be called a Global Progressive Movement, which is
focused on precisely these issues that were the mainstay of Professor Uzawa, on Social Justice and
Environment and Peace. Right now is a very interesting moment in terms of the Global Progressive
Movement. Because in the United States, for instance, on one side, I don't think the Global
Progressive Movement has ever been stronger. Both of the Democratic candidates have espoused
policies that are broadly consistent with ... many of the pillars of the Progressive Movement. They
talked about Inequality is being America's most important problem and what we can do about it.
They talked about the Environment and how we can protect it. On the other hand, never has ......
been more divided society. Income, wealth, health, every metric shows a society that is moving
further and further apart. Part of the reason that you see on the Republican side, such anger on
certain part, is because for a large fraction of Americans life has not been very good.


Japan has a higher life expectancy than the United States. Japan has recognized the right of access
to health for everybody. The United States is one of the, I think the only advanced country that
does not recognize that as a basic right. The result of that is that in the United States there are
large disparities in access to health. Recent data show that among white males who are not college
graduates, life expectancy is declining very strongly. American males, for instance, who have not
graduated from college have seen their income decline year after year. The median income for men
as a whole, half above and half below, is now lower than it was 40 years ago. Real wages today in
the United States at the bottom are lower than it were in January 1955, 60 years ago. Those at the
bottom have not seen a pay raise in 60 years. This is not a society which is getting better every
year. This is a society in which the top are doing better every year, but the vast majority are not.
That of course has spurred the kind of anger that you see. But unfortunately it's not being
channeled in a constructive way. On the other side, in the Democratic side, the discontent is being
channeled in a progressive way, in a way that's trying to see what we can do about those problems.


[17:05/42:53]


What I want to do this morning is very briefly talk about that Progressive agenda. Let me say that
we were.., The Progressive Movement has been very careful to say, "It's not partisan." It supports
anybody, any candidate that is going to support these ideas and talk to anybody who supports these
ideas.


Among the first principles is Full Employment. But what is Full Employment mean? There are some
people in the United States i.e. vice chair of the U.S. Federal Reserve who says, "Well, we are
4.9% unemployment and that means we are full employment." But of course those statistics don't
reflect the lives of those who don't have a job. If you are one of those 4.9% you don't feel fully
employed. If you look underneath the statistics you realize the true unemployment rate in the
United States is twice that number. The true unemployment rate reflects the fact that many
Americans are called employed if they work just one hour a week. Of course that's not a
meaningful employment. You can't get an income to survive. If you've looked for job for four
years and you still can't get a job, you are not called unemployed. But you are not employed.
When we look at the statistics what we realize is that the true unemployment is much larger.
That is why even with 4.9% unemployment wages are stagnating. If there were really no
unemployment, wages would be bid up.


The same thing is true in Japan, except you are in a better shape. You have unemployment of ......
3.7%? But wages are not doing very well. Until you get truly full employment where wage pressures
are going up, you should try to continue to stimulate the economy. The only reason to stop
stimulating the economy is a worry about inflation. The worry now in Japan is about deflation. It's
difficult you getting up to a 2% target.


So, both in the United States and in Japan, there is a need for more aggressive measures. Monetary
policy has done as much as it can. Therefore the burden has to shift fiscal policy.


Here, there is a fundamental principle in economics which is called the Balance Budget Multiplier.
If you increase taxes and increase spending in tandem, it stimulates the economy. If you choose
your taxes right and your spending right, it increases the economy by a multiple of what the
spending.


For instance, taxes that stimulates the economy, a carbon tax. A carbon tax induces firms to invest
to retrofit their production processes for the higher charges of emissions, induces homes to invest
to insulate, it induces people to relocate to buy new cars that are more fuel efficient. Japan is
already much more efficient than in the United States, but there's still a long way to go. So a
carbon tax is a tax that both raises revenue and stimulates the economy.


There are other taxes like an inheritance tax. Inheritance taxes can often induce people to spend
money before they die, increase revenue and improve equality. Financial transaction tax discourages
the kind of short-term speculation that destabilizes the economy and produces no real growth,
reduces inequality and raises revenue. Taxes on property, particularly capital gains taxes on
property. Lower taxes on land do not result in more land, so have no negative incentive effects but
raise revenue, increase equality and promote growth. That's the first agenda which is promoting
full employment.


The second is inclusion and discrimination. All societies engage in discrimination to some extent.
There's discrimination against minorities, discrimination against women. Women receive on average
a fraction of the wages the men doing comparable work, comparable qualifications. United States,
we've been discussing constitutional amendment for guaranteeing equal wages, but Republicans
have refused to support this idea. There are other policies that promote inclusion. Child care,
family leave policy, flexible working hours, these are all aspects of inclusion.


There are other aspects of inclusion that are important, one of which was mentioned. Japan has an
aging population. All societies are now having aging population. We have an economic system that
has ignored that challenge. Traditionally, when people get the age of 65 you throw them in the
garbage heap and say, "try to survive." With QE, things have become even worse because many of
those elderly who acted safe and bought government bonds, those bonds yield zero interest rates.
They are about to yield negative interest rates. That's not a way to have a comfortable retirement.
You can't live on zero interest rates. One has to think about how we can include these people
longer in the labor force. The reason, they are living longer? But they don't want to retire. We
force them to retire. They are still productive. They would be productive particularly if we
retrain them and we made work more flexible. So greater flexibility in the work place recognizing
imperative inclusion is another part of the inclusion agenda.


When we talk about Equality, often people focus on redistribution, on taxes and transfers, and
those are important. But in my most recent book called "Rewriting the Rules," what we focused on
is something different. What we realize is that countries with similar economic structures wind up
with very different market income inequality. So ...... the demand and supply operate the same on
both sides of Atlantic, both sides of Pacific, in countries that is similar stages of development,
but market income is markedly different. For instance, one of the astounding things in the United
States is that since 1970s productivity of American labor force is roughly doubled. Wages,
compensation has stagnated. It used to be the productivity and wages move together. Now they
don't. This result of what happened beginning in the Reagan era where there was a rewriting of
the rules of the market economy, rewriting the rules in ways that weaken the bargaining power of
workers, increase their insecurity and changed the economic framework in a whole ...... ways, like
changes in corporate governance, changes in enforcement of antitrust laws and so forth.
    
[26:18/42:53]


I want to conclude my brief remarks this morning by talking about one area that I understand that
Hirofumi Uzawa was very involved in and I've been involved in a great deal. That's a trade
agreements. These trade agreements have motivated a lot of the discussion in the United States.
I was once asked by a doctor who was the President of a Latin American country whether he should
sign a free trade agreement with the United States. I first pointed out it was not a free trade
agreement. If it was a free trade agreement, it would be about three pages, "We eliminate our
tariffs, you eliminate your tariffs, we eliminate our non-tariffs, you eliminate yours, we
eliminate our subsidies, you eliminate yours," about three pages. Do you know how long? The TPP
agreement is 6,000 pages. I have not met a single person who has ever read the entire agreement.
That's not a free trade agreement, it's a managed trade agreement. It's a managed trade
agreement that ...... manage for the interest of corporate interest, corporate interest mostly
in the United States, but corporate interest in other countries as well. When the United States
President Obama said that this agreement is about who writes the rules of trade in the 21st
century, China and the United States, or he said, "Do we or China write it." The question is
which "we". We did not write it, the corporate lobbyists wrote it. What we are asking is for a
trade agreement that we write, that is arrived at through a more democratic process, that the key
issues are laid out in the open and discussed in the parliaments of all of the TPP countries.


Well, could go back to this doctor, I asked him, "Did you sign the Hippocratic Oath?" which all
the doctors have to sign. The Hippocratic Oath begins, "Do no harm." He said, "Yes," he signed it.
So I told him, "You can't sign the trade agreement 'cause that would be a violation of the oath
that you have signed. It would actually even harm health and that is your responsibility."


There are three parts of the trade agreement. The first part is about trade. It's very small part
because tariff barrier's already relatively low. There are specially interested industries get
hurt, get helped, but that is a relatively small part.


The second part is about access to medicine. They call it intellectual property, but it's only
about medicine. The question is access to generic medicine. Most countries have had a debate about
the balance between Big Pharma and generics. United States we had that debate 25 years ago.
Result was the Hatch-Waxman Act, which created a balance I thought was not good. Quite the right
balance? It was too weighted for Big Pharma and not enough for access to generic medicines,
but even with that unbalanced agreement, about 87% of all drugs are sold generically. If it were
not for the provision, the price of drugs in the United States, already the highest in the world,
would be much much higher.


The drug companies knew that they could not get that changed in an open debate, so they went in
the secret trade agreement and got that balance unbalanced to make it more difficult to get
generic medicines. That was the key part of this provision. They didn't get everything they wanted
so they are complaining, because they used to win everything. I met with all the health ministers
and I used to say, "You really have to bargain hard," and they did, but still the U.S. Big Pharma
got most of what they wanted. And effect of this agreement almost surely will be to raise the price
of drugs and reduce access to generic medicines. For me, this is a big puzzle because Obama's
Signature Achievement is Obamacare, making access to health care more affordable, greater in
the United States. Yet with this trade agreement, he is undermining his Signature Achievement.


But the worst provision in the TPP is the investment provision. It's not about protecting
investment, let's make that clear, because we are insisting, United States is insisting on the
same agreement with Europe, where they have good laws, even better protection of intellectual
property rights. So it's not about ... systems, it's not about protecting property right, it's not
about discrimination, it's nothing to do with discrimination.


We just called National Treatment. It is about deregulation, stopping regulations, and that
provision is what the Business Roundtable wanted. It is the main reason that some of the business
community is behind it. The intent and the consequence of this part of the agreement is to make it
increasingly difficult to pass new regulations as the circumstances change. We didn't know about
global warming 40 years ago. We just learned about it in the 1980s. As we're going about we have
to pass regulations that will reduce carbon emissions. But under the TPP, if a country passes a
regulation, they may be sued if the profit of the company goes down. Canada has lost nine
important suits, many of them in the area of the environment. They even just lost a suit where
the company claimed that environmental assessment was done improperly. They could have gone
to the Canadian courts, but they chose to go to a biased private arbitration panel. Three people,
one appointed by the business, one by the government, one by two together. But the ... of these
lawyers who do these arbitration cases is such that they are very biased toward the business side.
That's why Canada's lost so many cases.


Most famous case going on right now, in a similar kind of legal provision, is the suit by Phillip
Morris against Uruguay for the regulations simply saying that you have to disclose that cigarettes
are bad for your health. Just a disclosure, but that disclosure work because people stopped buying
as many cigarettes Phillip Morris' profits went down. Philip Morris is suing for the loss of
profits. They believe they have a fundamental right to kill people. You take away that right,
you have to compensate them. The guy who drafted the key provision, this is back in the earlier
investment protection, said, "We've designed it so if you pass a regulation preventing plutonium
in baby cereal, we will sue." That is what is in the investment agreement.
    
Now, they claimed this is a 21st century agreement, they've taken care of all these problems. Our
lawyers have looked at that. Answer is "No." They have not solved. The way you can see that is
they explicitly carved out tobacco, because people are so angry about tobacco. But they left
carbon emissions, they left `plutonium in baby cereal` in, they left every other topic in. Only
thing they carved out was cigarettes. If we discovered that asbestos was dangerous for your health
and we regulated asbestos, under the current law, we can sue the asbestos manufacturers for what
they've done for our health. Under the new regulations of TPP, the asbestos manufacturers would be
paid by us for not killing us. That should be totally unacceptable. It is an example of how in
secret the rules are being written, rewritten, in ways that contradicts basic principles for which
Hirofumi Uzawa stood. It will increase Inequality and undermines basic principles of Social Justice
and the protection of the Environment. So, for me, this provision by itself is ground for rejecting
TPP.


Let me make one more point clear before ending. Europe has made it very clear that they will not
sign an agreement with the process of adjudication with these private arbitration panels, that they
have insisted on another way of doing it. So if Japan signs this agreement, it will be signing a
20th century agreement, while Europe will be getting a 21st century agreement. Why would you
want an agreement that has been shown to be inadequate to the needs of a modern society?


I hope that these words have given you some thinking about to where the Global Progressive
Movement is going and how it believes the key problems of our society can be addressed today.
Thank you.


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○投稿者のコメント


民主党(現民進党)がYouTubeに公開しているスティグリッツの講演を聞き取って訳してみた。動画には日本語のかんたんな字幕がついているが、ところどころまちがって訳されている。民進党にはもっときちんと翻訳した講演録をなるべく早く完成して公開してくれることを期待する。それまでこの投稿が誰かの役に立てばうれしい。
聞き取りでは日本語字幕およびYouTubeの自動生成字幕が参考になったが、どうしても聞き取れなくて、......のように示したところが数ヶ所ある。それ以外にもあやしいところは少なくない。訳し方もいいかげんなので、重要なまちがいに気がついたらコメント欄で修正や補足をお願いしたい。
小見出しとブラケットは投稿者による補足。
 
 
○スティグリッツ講演以外の動画の内容


講演の趣旨および参加者については、動画冒頭で藤田幸久民主党国際局長が説明、紹介している。講演に先立って、長妻昭民主党代表代行が民主党共生社会創造本部の取り組みを報告している[2:20/42:53]。講演の後の質疑応答では、岡田克也民主党代表が「財政健全化と世界的な需要不足に対する投資[財政出動]のバランス」について質問した。ここでスティグリッツは岡田代表が言及しなかった消費増税について、景気対策という観点からするとまちがった課税の選択であると断じた[37:26/42:53]。 動画の最後には、TPP阻止国民会議の原中勝征氏(前日本医師会会長)からのスピーチがある[40:22/42:53]
 
 
○民主党主催スティグリッツ講演関連の阿修羅掲示板投稿リンク


スティグリッツ氏講演「完全雇用、インクルージョン、差別をなくす」政策を (民主党)
アメリカの碩学の反TPP - スティグリッツ教授の日本へのアドバイス(しのはら孝blog)
「国民の利益にならず」 環境破壊 懸念も TPPでスティグリッツ教授 民主が懇談会 (日本農業新聞)
民主党はなぜみすみす再生のチャンスを逃したのか? 党首を変え、経済政策を変えれば可能性はあったのに…(現代ビジネス)
これから始まる「新しい世界経済」の教科書 ジョセフ・E・スティグリッツ著 中間層を成長させる政策主張

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/471.html

[雑談・Story41] 民主党・スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日[試訳]
民主党・スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日
https://www.youtube.com/watch?v=RX334pHGOJM
YouTube(民主党) 2016/03/22



 
 
○投稿者による抄訳


■宇沢弘文とグローバルな進歩主義[08:48/42:53]
 
宇沢弘文先生をしのびながらこのような会に参加させてもらえてうれしい。私は1965年シカゴ大学で、全米の最高の学生たちとともに宇沢先生のもとで数理経済学を学んだ。われわれは先生の力強い人柄にたちまち心服し、先生と一生の絆で結ばれた。先生はその世代の最高の数理経済学者の一人だった。先生の数理の下には深く根ざした価値観があった。第一に社会正義、第二に環境、第三に平和。


私がそうした問題について書くようになったとき、たとえばイラク戦争に反対した『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』[1]を書いたとき、よく先生のことを思った。すなわち、GDPの最大化は社会の目的ではない。戦費はGDPに寄与するが、イラク戦争に投じられたお金で社会は豊かになっていない。イラクで殺された人たちにとってはなおさらのことだ。


私が議長を務めた「経済パフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会」[2]では、GDPでは測れない生活の質を問題にした。このことは日本で特に重要だ。日本が経済成長をしていないとか、労働力人口が低下しているとかいった、統計にもとづく批判がある。しかし、時間あたり労働者あたりでみると、日本の生産性は最高水準なのだ。


グローバルな進歩主義とでもいうべき近年の動きは、宇沢先生と同じように社会正義、環境、平和に向けられている。その動きが米国ではこれまでになく強まっている。大統領予備選挙では、民主党の候補が2人とも不平等や環境問題への対策としてグローバルで進歩主義的な政策をかかげた。一方で、米国社会はこれまでになく分断されている。所得、資産、健康保険などにおいて格差がますます広がっている。


共和党側に見られる怒りは、ある部分でそれを反映している。日本は米国よりも平均余命が長い。国民皆保険制度が確立している。というより、健康にたいする権利が保障されていない先進国は米国くらいだ。近年では大学を出ていない白人男性の平均余命が大きく低下し、大学を出ていない男性の収入が年々低下している。男性全体の中位収入は40年前より低くなった。現在の実質最低賃金は60年前よりも低い。つまり低所得者の賃金は60年間上昇していない。この社会では高所得者が毎年ますます豊かになっているのに、圧倒的多数の人々はそうでない。それがある種の怒りを引き起こしている。しかし、残念ながらその怒りは建設的な方向に向けられていない。民主党の側では、同じ不満がこうした問題を解決する進歩主義的な方向に向けられている。


■グローバルな進歩主義の政策[17:05/42:53]


今日はこの進歩主義的な政策課題についてかんたんに述べたい。この立場は特定の政党にとらわれず、その政策を受け入れるすべての候補者を支持する。


第一の原則は、完全雇用である。そもそも完全雇用とは何か。たとえばFRBの副議長が「失業率は4.9%であり完全雇用とみなせる」といった。しかし統計をよくみれば、実際の失業率はその倍である。たとえば週に1時間しか働かなくても統計上は雇用とみなされている。4年間求職して仕事が見つからなければ失業とはみなされなくなる。このように実際の失業率が4.9%よりもはるかに高いので、賃金が上昇しないのだ。


日本についても同じことがいえる。3.7%という失業率は米国よりも低いが、やはり賃金が上がっていない。ほんとうの完全雇用が達成されるまでは景気の刺激策が必要である。インフレの懸念があるのならべつだが、現在日本が心配しなければならないのはデフレの方だ。2%のインフレターゲットすら達成されていない。


このように、米国も日本も積極的な方策を必要としている。金融政策ではできるだけのことをやった。したがって次は財政政策に重点を置かなければならない。


均衡予算乗数とよばれる基本原理がある。増税してもその分だけ政府支出を増やせば景気を刺激するというものだ。課税と政府支出の選択が適切であれば、政府支出は景気の拡大に乗数効果をもたらす。


景気を刺激する課税の例として、炭素税がある。これは二酸化炭素の排出を課税対象とすることで事業者に生産工程の改良を促し、消費者には断熱建築や低燃費の自動車の購入を促す。すでに日本の効率は米国よりもずっと高いが、まだまだ向上の余地がある。このように、炭素税は税収と景気対策の両方に効果がある。


相続税は、自分の生きているあいだにお金を使うようにしむけるので、税収を上げるとともに資産格差を縮小する。取引税は、経済を不安定にするだけで実際の成長には寄与しない短期的な投機を抑制し、格差の縮小と税収増をもたらす。固定資産税、とくに不動産取得税は、減税しても土地が増えるというわけではないので減税する必要がない。それはむしろ格差の縮小と経済成長をうながす。以上が、完全雇用に向けた第一の政策課題である。


第二に、社会的包摂と差別の解消。社会的少数者や女性にたいする差別がどの社会にも存在する。女性は、男性と同じ資格で同じ仕事をしても、平均賃金が低い。米国では同一賃金を保証する憲法改正の議論があったが、共和党がそれを拒否した。育児・介護休業、フレックスタイム制など、ほかにも社会的包摂を促進する政策がある。


なかでも重要なのは高齢化対策だ。これまでの経済システムはこの問題を無視してきた。65歳になった人はゴミの山に投げこんで自分でなんとかしろといわんばかりだった。金融緩和が事態をさらに悪くした。老後に備えて買った国債は、利息がつかないどころかマイナスになろうとしている。これでは安心した老後は望めない。人々がもっと長く働き続けられるようにするべきだ。人は高齢になってもなお生産的であり、再訓練の機会や柔順な労働環境がぜひとも必要である。


平等といえば再分配、課税、移転所得に目が向けられがちであり、それらは重要である。しかし、私は最近の本『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』[3]でべつのことを取り上げた。すなわち、経済構造の似ている国でも市場所得[4]の格差の状態はまったく異なるということである。米国では1970年代以降労働力の生産性が倍増したにもかかわらず、賃金が停滞している。かつては生産性が上がれば賃金も上昇したが、現在はそうでない。これは、レーガン政権以来市場経済のルールが書き変えられた結果である。労働者の交渉力を弱め、雇用を不安なものにし、コーポレート・ガバナンスや反トラスト法の執行など経済の枠組み全体にかかわるルールが書き変えられてきた。


■貿易協定の問題[26:18/42:53]


しめくくりに、宇沢弘文先生と私が深くかかわってきた貿易協定について触れたい。これらの貿易協定をめぐって、米国では多くの議論がされてきた。私は、南米の国で大統領をしていたある医師[5]から、米国との自由貿易協定に署名すべきかどうか意見を聞かれたことがある。私は、そもそもそれは自由貿易ではない、と指摘した。自由貿易なら3ページですむのに、TPPは6000ページもある。それは管理貿易であって、米国をはじめとする企業の利益をもたらそうとしている。オバマ大統領は、この協定は、21世紀の貿易ルールを書くのが「われわれ」かそれとも中国かという問題だといった。しかし、そこでいう「われわれ」とは、われわれのことではない。それを書いたのは企業のロビーストたちだ。われわれの求めている貿易協定とは、われわれがそれを書き、民主的な手続きによって成立し、公表されている重要な問題がTPP参加諸国の議会で議論されるようなものだ。


先ほどの医師に話に戻ると、私は彼にこうたずねた。「あなたもヒポクラテスの誓いに署名したのですよね。」これはすべての医師が署名しなければならない誓約で、「害を与えるなかれ」ではじまる[6]。彼が「そうですよ」と答えたので私はいった。「あなたはその貿易協定にサインできませんよ。なぜならヒポクラテスの誓いに背くことになるだろうからです。あなたの職業的な責任である人々の健康にまで危害がおよぶのです。」


この貿易協定は3部から成る。第1部の貿易にかんしてはとても短い。それは、関税障壁がすでにかなり取り除かれているからだ。影響のある産業は比較的には少ない。


第2部は医薬品アクセスについて。かれらは知財と称しているが医薬品のことだけだ。ここではジェネリック医薬品へのアクセスが問題となる。これまでどこの国でも、巨大な製薬団体とジェネリック医薬品とのバランスが議論されてきた。米国でも25年前に議論があり、ハッチ・ワックスマン法ができた。これはあまりにも製薬会社寄りで、ジェネリック医薬品へのアクセスが不十分だが、それでも販売される医薬品の87%がジェネリックで占められるようになった。その条項がなければ、ただでさえ世界一高額な米国の医薬品がもっと高くなる。


製薬会社は、公開された議論の場ではそのバランスを変えられないとわかっているので、内容が秘密にされている貿易協定でジェネリック医薬品を入手しづらくしようとした。かつてはかれらの望むものは何でも手に入ったので、要求に際限がない。私はすべての保健福祉省長官と会って「本気で交渉しないといけない」と伝えてきたが、そしてかれらは実際そうしたのだが、それでも米国の製薬団体は要求のほとんどを通した。この貿易協定はまずまちがいなく医薬品の値段を上げてジェネリック医薬品へのアクセスを減らすことになる。オバマ大統領の主要な功績はオバマケアであり、米国の医療アクセスを拡大した。ところが、この貿易協定でかれはその功績を自分で掘り崩そうとしている。なぜそんなことをするのか、私にはさっぱり理解できない。


しかし、TPPで最悪なのは[第3部の]投資条項である。それは投資を保護するためのものではない。なぜなら米国はEUとのあいだで同様の協定を結ぼうとしているが、EUにはすでによい法律があり、より優れた知財保護があるからだ。


内国民待遇とよばれるもの。規制の撤廃、停止。それが米国の経済団体ビジネス・ラウンドテーブルの求めている条項だ。経済界が後押ししているのはそのためだ。この条項が意図し結果としてもたらすのは、状況の変化に対応した新たな規制がますます作りにくくなるということだ。たとえばわれわれは地球温暖化について40年前には何も知らず、1980年代になってはじめて聞かされた。それに取り組もうとすれば、二酸化炭素排出量を減らすための規制を設けなければならない。ところがTPPのもとでは、ある国で設けた規制は、それによって不利益をこうむる企業から訴えられる可能性がある。カナダ政府は9つの重要な訴訟に負けたが、その多くは環境規制に関係している。この間も環境アセスメントが不適切だと訴えた企業に負けてしまった[7]。その企業はカナダの裁判所に訴えることもできたのだが、民間の仲裁人による仲裁委員会を選んだ。仲裁人は3人で、1人は企業が指名し、1人は政府から、もう1人は両者の合意によって指名される。ところが仲裁にあたるこれらの法律家たちはきわめて企業の側にかたよっている[8]。それでカナダはこれほど多くの訴訟に負けているのだ。


同様の条項に関連したもので、現在係争中でもっとも有名な訴訟としては、タバコのパッケージに健康危害の記載を義務づけた規制についてフィリップ・モリス社がウルグアイ政府を訴えた裁判がある。その規制はただの告知義務にすぎなくても人々がタバコを買わなくなるという効果があったので、フィリップ・モリス社の利益が低下した。そこでフィリップ・モリス社は損失の補償を求めた。まるでかれらは人々を殺してもいい基本的権利があるのを確信しているみたいだ。その権利を取り上げるのなら賠償してもらわなければならないといっている。


その重要な条項を起草した男[9]、これは初期の投資保護[訴訟]にさかのぼるが、かれはこういった。「その[新たな]規制がたとえば離乳食への放射性物質の混入を防ぐようなものだとしても、われわれはそれを訴えることができるように条項を書いた。」これが投資にかんする協定の内容だ。


かれらは、これ[TPP]が21世紀の協定であり、こうした[NAFTAの]問題のすべてに対処したと主張している。しかし、われわれの側の法律家の意見によれば、まったく解決されていない。人々の怒りが大きいタバコだけは取り除かれたが、二酸化炭素の排出も、「離乳食の放射性物質」も、それ以外のすべてはそのまま残されている。たとえばアスベストの危険が明らかになったときにアスベストを規制したとする。現行法ではアスベストによる健康被害にたいしてわれわれがアスベストの製造業者を訴えることができる。ところが新しいTPPの規制のもとでは、製造業者はわれわれを殺さずにいるという理由でわれわれから支払いを受けるのだ。これはとても容認できない。このようなルールが、宇沢弘文先生の支持した基本原則とは相容れないやり方で秘密裏に書かれ、書き変えられている。格差を拡大し、社会的正義と環境保護の基盤を掘り崩そうとしている。この条項一つをとっても私はTPPに賛成できない。


EUは、民間の仲裁人委員会による裁定制度のある協定には署名しないことを明確にした。べつのやり方を主張している。日本が署名した[批准しようとしている]のは20世紀の協定だ。EUがつくろうとしているのは21世紀の協定だ。近代社会の必要性を満たせないことが明らかになっている協定を、あなたがたはどうして欲しがるのか。


以上、グローバルな進歩主義の向かっている方向と主要な取り組みについて参考にしていただきたい。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○投稿者による注


[1]The Commission on the Measurement of Economic Performance and Social Progress
(Wikipedia)

[2]The Three Trillion Dollar War(Wikipedia)
[3]Rewriting the Rules of the American Economy(Roosevelt Institute)
[4]market income: 賃金や給与などの雇用者報酬と自営業者所得、財産所得および企業年金や仕送りなどを含んでおり、税や社会保障費を控除する前の所得を意味する。[社会保障給付は含まない]
「JIL労働政策レポートVol.3 日本の所得格差をどうみるか」(労働政策研究・研修機構)
[5]ウルグアイ大統領タバレ・バスケス(Tabare Vazquez)をさすか。
La guerra del opio del siglo XXI[21世紀のアヘン戦争](Red De Militantes De Izquierda)
[6]First, Do No Harm: これについてはスティグリッツに誤認があるようだ。
「First, Do No Harm」をヒポクラテスの誓いとして使うべきではない(EARLの医学ノート)
[7]"Clayton/Bilcon v. Government of Canada"(Global Affairs Canada)
"NAFTA ruling in Nova Scotia quarry case sparks fears for future settlements"(The Globe and Mail)
[8]ISDSの仲裁制度の問題点(自由のための統一戦線)
[9]Barry Appleton, Canadian lawyer for Ethyl Corp. NAFTAの条項の起草にあたったかどうかは不明。
Elizabeth May's submission on the Environmental Assessment for the Canada-China Foreign Investment Protection and Promotion Agreement(Elizabeth May)


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○投稿者によるディクテーション


[08:48/42:53]


It's a real pleasure to be here and participate in this session, in part commemorating the life of
Hirofumi Uzawa, who is my teacher. I studied under him in 1965 at the University of Chicago,
where he had brought the best students from all over the United States to discuss economic theory,
mathematic economics. He had a very powerful personality and in just a very short time we all
became his disciples. We all maintained a lifelong connection with Professor Uzawa. There were
three themes that distinguished Professor Uzawa. He was a mathematical economist. He was one
of the best mathematical economist of his generation. But underlying the mathematics were very
deeply held values. Those values are values I think that he maintained he lived his life by. One
of them was Social Justice. A concern about inequality, concern about poor, concern about the way
our society functions discriminates. The second was the Environment. He was vey committed to the
environment. Economists often talk about this in terms of inter-generational equity, fairness
across generations. He was deeply concerned not only about fairness within a generation which was
the distribution of income and wealth within a generation , but fairness across generations, social
justice at one moment of time and over time. Finally, he was vey concerned about Peace. Having
grown up in part during World War II, he was very committed to making sure that that kind of
occurrence never happened again.


Often when I write my work about Inequality, about the Environment, or my book "The Three
Trillion Dollar War" which was written to try to persuade America that it should not be engaged in
the war in Iraq and it was a war that was not going to be successful, which's going to cost us a
great deal,I thought of Hirofumi Uzawa. One of the points that was just raised echoes one of those
that I made in ... work, which is maximizing GDP is not what the society is about. The spending on
war adds to GDP. But nobody thinks our society is better off as result of the money that was
wasted in Iraq, especially the people who got killed didn't think it was a good way of spending
money.


I chaired an international commission on the Measurement of Economic Performance and Social
Progress. Main theme of that commission was that GDP doesn't measure what is important and
we have to focus our attention not on GDP but on the quality of life. That's particularly important
here in Japan because the statistics often mislead people to criticizing Japan for saying it's not
growing very well but Japan has a declining labor force. In terms of output per hour, output per
worker, is actually among the best performance of the best advanced countries. That doesn't
mean you can't do better, but the single-minded focus on growth, I believe, is very much
misplaced.
    
In recent years there has developed what might be called a Global Progressive Movement, which is
focused on precisely these issues that were the mainstay of Professor Uzawa, on Social Justice and
Environment and Peace. Right now is a very interesting moment in terms of the Global Progressive
Movement. Because in the United States, for instance, on one side, I don't think the Global
Progressive Movement has ever been stronger. Both of the Democratic candidates have espoused
policies that are broadly consistent with ... many of the pillars of the Progressive Movement. They
talked about Inequality is being America's most important problem and what we can do about it.
They talked about the Environment and how we can protect it. On the other hand, never has ......
been more divided society. Income, wealth, health, every metric shows a society that is moving
further and further apart. Part of the reason that you see on the Republican side, such anger on
certain part, is because for a large fraction of Americans life has not been very good.


Japan has a higher life expectancy than the United States. Japan has recognized the right of access
to health for everybody. The United States is one of the, I think the only advanced country that
does not recognize that as a basic right. The result of that is that in the United States there are
large disparities in access to health. Recent data show that among white males who are not college
graduates, life expectancy is declining very strongly. American males, for instance, who have not
graduated from college have seen their income decline year after year. The median income for men
as a whole, half above and half below, is now lower than it was 40 years ago. Real wages today in
the United States at the bottom are lower than it were in January 1955, 60 years ago. Those at the
bottom have not seen a pay raise in 60 years. This is not a society which is getting better every
year. This is a society in which the top are doing better every year, but the vast majority are not.
That of course has spurred the kind of anger that you see. But unfortunately it's not being
channeled in a constructive way. On the other side, in the Democratic side, the discontent is being
channeled in a progressive way, in a way that's trying to see what we can do about those problems.


[17:05/42:53]


What I want to do this morning is very briefly talk about that Progressive agenda. Let me say that
we were.., The Progressive Movement has been very careful to say, "It's not partisan." It supports
anybody, any candidate that is going to support these ideas and talk to anybody who supports these
ideas.


Among the first principles is Full Employment. But what is Full Employment mean? There are some
people in the United States i.e. vice chair of the U.S. Federal Reserve who says, "Well, we are
4.9% unemployment and that means we are full employment." But of course those statistics don't
reflect the lives of those who don't have a job. If you are one of those 4.9% you don't feel fully
employed. If you look underneath the statistics you realize the true unemployment rate in the
United States is twice that number. The true unemployment rate reflects the fact that many
Americans are called employed if they work just one hour a week. Of course that's not a
meaningful employment. You can't get an income to survive. If you've looked for job for four
years and you still can't get a job, you are not called unemployed. But you are not employed.
When we look at the statistics what we realize is that the true unemployment is much larger.
That is why even with 4.9% unemployment wages are stagnating. If there were really no
unemployment, wages would be bid up.


The same thing is true in Japan, except you are in a better shape. You have unemployment of ......
3.7%? But wages are not doing very well. Until you get truly full employment where wage pressures
are going up, you should try to continue to stimulate the economy. The only reason to stop
stimulating the economy is a worry about inflation. The worry now in Japan is about deflation. It's
difficult you getting up to a 2% target.


So, both in the United States and in Japan, there is a need for more aggressive measures. Monetary
policy has done as much as it can. Therefore the burden has to shift fiscal policy.


Here, there is a fundamental principle in economics which is called the Balance Budget Multiplier.
If you increase taxes and increase spending in tandem, it stimulates the economy. If you choose
your taxes right and your spending right, it increases the economy by a multiple of what the
spending.


For instance, taxes that stimulates the economy, a carbon tax. A carbon tax induces firms to invest
to retrofit their production processes for the higher charges of emissions, induces homes to invest
to insulate, it induces people to relocate to buy new cars that are more fuel efficient. Japan is
already much more efficient than in the United States, but there's still a long way to go. So a
carbon tax is a tax that both raises revenue and stimulates the economy.


There are other taxes like an inheritance tax. Inheritance taxes can often induce people to spend
money before they die, increase revenue and improve equality. Financial transaction tax discourages
the kind of short-term speculation that destabilizes the economy and produces no real growth,
reduces inequality and raises revenue. Taxes on property, particularly capital gains taxes on
property. Lower taxes on land do not result in more land, so have no negative incentive effects but
raise revenue, increase equality and promote growth. That's the first agenda which is promoting
full employment.


The second is inclusion and discrimination. All societies engage in discrimination to some extent.
There's discrimination against minorities, discrimination against women. Women receive on average
a fraction of the wages the men doing comparable work, comparable qualifications. United States,
we've been discussing constitutional amendment for guaranteeing equal wages, but Republicans
have refused to support this idea. There are other policies that promote inclusion. Child care,
family leave policy, flexible working hours, these are all aspects of inclusion.


There are other aspects of inclusion that are important, one of which was mentioned. Japan has an
aging population. All societies are now having aging population. We have an economic system that
has ignored that challenge. Traditionally, when people get the age of 65 you throw them in the
garbage heap and say, "try to survive." With QE, things have become even worse because many of
those elderly who acted safe and bought government bonds, those bonds yield zero interest rates.
They are about to yield negative interest rates. That's not a way to have a comfortable retirement.
You can't live on zero interest rates. One has to think about how we can include these people
longer in the labor force. The reason, they are living longer? But they don't want to retire. We
force them to retire. They are still productive. They would be productive particularly if we
retrain them and we made work more flexible. So greater flexibility in the work place recognizing
imperative inclusion is another part of the inclusion agenda.


When we talk about Equality, often people focus on redistribution, on taxes and transfers, and
those are important. But in my most recent book called "Rewriting the Rules," what we focused on
is something different. What we realize is that countries with similar economic structures wind up
with very different market income inequality. So ...... the demand and supply operate the same on
both sides of Atlantic, both sides of Pacific, in countries that is similar stages of development,
but market income is markedly different. For instance, one of the astounding things in the United
States is that since 1970s productivity of American labor force is roughly doubled. Wages,
compensation has stagnated. It used to be the productivity and wages move together. Now they
don't. This result of what happened beginning in the Reagan era where there was a rewriting of
the rules of the market economy, rewriting the rules in ways that weaken the bargaining power of
workers, increase their insecurity and changed the economic framework in a whole ...... ways, like
changes in corporate governance, changes in enforcement of antitrust laws and so forth.
    
[26:18/42:53]


I want to conclude my brief remarks this morning by talking about one area that I understand that
Hirofumi Uzawa was very involved in and I've been involved in a great deal. That's a trade
agreements. These trade agreements have motivated a lot of the discussion in the United States.
I was once asked by a doctor who was the President of a Latin American country whether he should
sign a free trade agreement with the United States. I first pointed out it was not a free trade
agreement. If it was a free trade agreement, it would be about three pages, "We eliminate our
tariffs, you eliminate your tariffs, we eliminate our non-tariffs, you eliminate yours, we
eliminate our subsidies, you eliminate yours," about three pages. Do you know how long? The TPP
agreement is 6,000 pages. I have not met a single person who has ever read the entire agreement.
That's not a free trade agreement, it's a managed trade agreement. It's a managed trade
agreement that ...... manage for the interest of corporate interest, corporate interest mostly
in the United States, but corporate interest in other countries as well. When the United States
President Obama said that this agreement is about who writes the rules of trade in the 21st
century, China and the United States, or he said, "Do we or China write it." The question is
which "we". We did not write it, the corporate lobbyists wrote it. What we are asking is for a
trade agreement that we write, that is arrived at through a more democratic process, that the key
issues are laid out in the open and discussed in the parliaments of all of the TPP countries.


Well, could go back to this doctor, I asked him, "Did you sign the Hippocratic Oath?" which all
the doctors have to sign. The Hippocratic Oath begins, "Do no harm." He said, "Yes," he signed it.
So I told him, "You can't sign the trade agreement 'cause that would be a violation of the oath
that you have signed. It would actually even harm health and that is your responsibility."


There are three parts of the trade agreement. The first part is about trade. It's very small part
because tariff barrier's already relatively low. There are specially interested industries get
hurt, get helped, but that is a relatively small part.


The second part is about access to medicine. They call it intellectual property, but it's only
about medicine. The question is access to generic medicine. Most countries have had a debate about
the balance between Big Pharma and generics. United States we had that debate 25 years ago.
Result was the Hatch-Waxman Act, which created a balance I thought was not good. Quite the right
balance? It was too weighted for Big Pharma and not enough for access to generic medicines,
but even with that unbalanced agreement, about 87% of all drugs are sold generically. If it were
not for the provision, the price of drugs in the United States, already the highest in the world,
would be much much higher.


The drug companies knew that they could not get that changed in an open debate, so they went in
the secret trade agreement and got that balance unbalanced to make it more difficult to get
generic medicines. That was the key part of this provision. They didn't get everything they wanted
so they are complaining, because they used to win everything. I met with all the health ministers
and I used to say, "You really have to bargain hard," and they did, but still the U.S. Big Pharma
got most of what they wanted. And effect of this agreement almost surely will be to raise the price
of drugs and reduce access to generic medicines. For me, this is a big puzzle because Obama's
Signature Achievement is Obamacare, making access to health care more affordable, greater in
the United States. Yet with this trade agreement, he is undermining his Signature Achievement.


But the worst provision in the TPP is the investment provision. It's not about protecting
investment, let's make that clear, because we are insisting, United States is insisting on the
same agreement with Europe, where they have good laws, even better protection of intellectual
property rights. So it's not about ... systems, it's not about protecting property right, it's not
about discrimination, it's nothing to do with discrimination.


We just called National Treatment. It is about deregulation, stopping regulations, and that
provision is what the Business Roundtable wanted. It is the main reason that some of the business
community is behind it. The intent and the consequence of this part of the agreement is to make it
increasingly difficult to pass new regulations as the circumstances change. We didn't know about
global warming 40 years ago. We just learned about it in the 1980s. As we're going about we have
to pass regulations that will reduce carbon emissions. But under the TPP, if a country passes a
regulation, they may be sued if the profit of the company goes down. Canada has lost nine
important suits, many of them in the area of the environment. They even just lost a suit where
the company claimed that environmental assessment was done improperly. They could have gone
to the Canadian courts, but they chose to go to a biased private arbitration panel. Three people,
one appointed by the business, one by the government, one by two together. But the ... of these
lawyers who do these arbitration cases is such that they are very biased toward the business side.
That's why Canada's lost so many cases.


Most famous case going on right now, in a similar kind of legal provision, is the suit by Phillip
Morris against Uruguay for the regulations simply saying that you have to disclose that cigarettes
are bad for your health. Just a disclosure, but that disclosure work because people stopped buying
as many cigarettes Phillip Morris' profits went down. Philip Morris is suing for the loss of
profits. They believe they have a fundamental right to kill people. You take away that right,
you have to compensate them. The guy who drafted the key provision, this is back in the earlier
investment protection, said, "We've designed it so if you pass a regulation preventing plutonium
in baby cereal, we will sue." That is what is in the investment agreement.
    
Now, they claimed this is a 21st century agreement, they've taken care of all these problems. Our
lawyers have looked at that. Answer is "No." They have not solved. The way you can see that is
they explicitly carved out tobacco, because people are so angry about tobacco. But they left
carbon emissions, they left `plutonium in baby cereal` in, they left every other topic in. Only
thing they carved out was cigarettes. If we discovered that asbestos was dangerous for your health
and we regulated asbestos, under the current law, we can sue the asbestos manufacturers for what
they've done for our health. Under the new regulations of TPP, the asbestos manufacturers would be
paid by us for not killing us. That should be totally unacceptable. It is an example of how in
secret the rules are being written, rewritten, in ways that contradicts basic principles for which
Hirofumi Uzawa stood. It will increase Inequality and undermines basic principles of Social Justice
and the protection of the Environment. So, for me, this provision by itself is ground for rejecting
TPP.


Let me make one more point clear before ending. Europe has made it very clear that they will not
sign an agreement with the process of adjudication with these private arbitration panels, that they
have insisted on another way of doing it. So if Japan signs this agreement, it will be signing a
20th century agreement, while Europe will be getting a 21st century agreement. Why would you
want an agreement that has been shown to be inadequate to the needs of a modern society?


I hope that these words have given you some thinking about to where the Global Progressive
Movement is going and how it believes the key problems of our society can be addressed today.
Thank you.


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
○投稿者のコメント


民主党(現民進党)がYouTubeに公開しているスティグリッツの講演を聞き取って訳してみた。YouTube動画には日本語のかんたんな字幕がついているが、ところどころまちがって訳されている。民進党にはきちんと翻訳した講演録をなるべく早く完成して公開してくれることを期待する。それまでこの投稿が誰かの役に立てばうれしい。
聞き取りでは日本語字幕およびYouTubeの自動生成英語字幕を参考にしたが、どうしても聞き取れなくて、......のように示したところが数ヶ所ある。それ以外にもあやしいところは少なくない。訳し方もいいかげんなので、重要なまちがいに気がついたらコメント欄で修正や補足をお願いしたい。
小見出しとブラケットは投稿者による補足。
 
 
○スティグリッツ講演以外の動画の内容


講演の趣旨および参加者については、動画冒頭で藤田幸久民主党国際局長が説明、紹介している。講演に先立って、長妻昭民主党代表代行が民主党共生社会創造本部の取り組みを報告している[2:20/42:53]。講演の後の質疑応答では、岡田克也民主党代表が「財政健全化と世界的な需要不足に対する投資[財政出動]のバランス」について質問した。ここでスティグリッツは岡田代表が言及しなかった消費増税について、景気対策という観点からするとまちがった課税の選択であると断じた[37:26/42:53]。 動画の最後には、TPP阻止国民会議の原中勝征氏(前日本医師会会長)からのスピーチがある[40:22/42:53]
 
 
○民主党主催スティグリッツ講演関連の阿修羅掲示板投稿リンク


スティグリッツ氏講演「完全雇用、インクルージョン、差別をなくす」政策を (民主党)
アメリカの碩学の反TPP - スティグリッツ教授の日本へのアドバイス(しのはら孝blog)
「国民の利益にならず」 環境破壊 懸念も TPPでスティグリッツ教授 民主が懇談会 (日本農業新聞)
民主党はなぜみすみす再生のチャンスを逃したのか? 党首を変え、経済政策を変えれば可能性はあったのに…(現代ビジネス)
これから始まる「新しい世界経済」の教科書 ジョセフ・E・スティグリッツ著 中間層を成長させる政策主張

http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/323.html

[政治・選挙・NHK203] 民主党・スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日[試訳]:雑談板リンク
民主党・スティグリッツ教授朝食講演会 2016年3月17日[試訳]
http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/323.html
投稿者 烏滸の者 日時 2016 年 3 月 29 日 22:55:00
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/627.html
[政治・選挙・NHK203] 篠原孝 TPPを批准させない3.30国会行動決起集会挨拶(動画とテキスト)
篠原孝 TPPを批准させない3.30国会行動決起集会挨拶
「20160330 UPLAN【憲政記念館にて決起会】TPPを批准させない3.30国会行動 国民の同意なきTPP協定 止めるなら今しかない!」(YouTube/三輪祐児 2016/03/30) より



 
[28:08/1:47:41]


――特別委員会、本格的に論議が始まります。今日は国会議員のみなさんも多数お見えです。ご参加の議員のお名前を紹介し、代表の方からご挨拶をいただきます。


――先日27日に結党されました民進党から、佐々木隆博衆議院議員、篠原孝衆議院議員、福島伸享(のぶゆき)衆議院議員、宮崎岳志衆議院議員がお見えです。民進党を代表して、篠原孝衆議院議員よりご挨拶をいただきます。
 
 
みなさんこんにちは。民進党の篠原孝です。私は党首とちがって党名をまちがえません。やっと我々というか、国会議員の出番がまいりました。


私はさいわいというか、当然ですけれども、TPP対策特別委員会の委員になりました。来週4月5日に、今のところでは本会議があります。国会のルール、いろいろなヘンチクリンなのがあるのですが、だいじなだいじな法律は本会議できちんと趣旨説明をし、質疑応答を総理入りでして、それから委員会に付託されます。審議は4月6日から始まるか、7日から始まるかわかりませんが、今のところ1日目と2日目は総理入りで全部をテレビ中継することになっております。私も、これから1週間悪いことをしなければ、テレビ入りで質問することになっております。ちょっといろいろ悪さをしているもんで、お灸が据えられるかもしれないのですが、それはしないように気をつけます。


で、TPP大変です。今安保法制で日本の国がおかしくなるんじゃないかとみなさん心配されています。心配です。しかし安保法制でもってアメリカが日本を攻めてくることはないです。まあちょっとあるんですけどね。プルトニウム問題で、すぐ原子爆弾を作れるプルトニウムを日本は30kg以上持ってるんです。4000発、5000発なんです。で、日本は狂ったと。原子爆弾を作りそうになったといって、大量破壊兵器を作り始めたとかいいがかりをつけて爆撃してくるかもしれません。どこか中東の国でやってますけど。まあだけどこれはありえないと思います。


しかし、TPPこそ危険なんです。なんででしょう。TPPを手段として我々の富をみんな奪っていこうとしてるんです。で、富を奪うのもそうですけど、まずは日本の安定した地域社会をつぶしてダメな国にしようという、悪いのがあるんです。日本の地方はガタガタになります。みなさんおわかりの通り、限界集落というのが生まれています。なんででしょう。一番最初に大きな品目で関税ゼロになったのが丸太なんです。1951年占領下。それから1964年オリンピックの年に、板がゼロになりました。自動車は1978年です。木がまったく売れなくなったんで、それで限界集落が日本のあちこちにできたんです。長野県の中山間地域は限界集落どころじゃないと文句いわれました。崩壊集落だと。涙が出てきます。


考えてみてください。今、保育所問題で名をなした山尾志桜里さん、かわいい子です。あれもまあ問題ですけどね、もっと問題なのがあるんです。長野県の過疎地に保育園児、消えた。地方は死んでいく。おわかりになりますか。20年前、30年前から地方にもう子どもはいなくなっているんです。これを放置しておいたんです。農産物の関税を下げたりゼロにはしてないとかいってますけれども、農山漁村もっともっと打撃を受けて、日本全国各地の市町村が限界市町村になってしまいます。これがTPPがおそろしいといってる一番の理由です。


二つめ。まだあるんです。薬のことをお話したいと思います。薬。この中でハーボニーを使っておられる方があるかもしれません。C型肝炎に効く1粒8万円の薬です。さっき保険製剤、植草さんの話の中にありました。死守する、死守したといってますけれども、崩壊していきます。どうしてでしょう。アメリカの製薬会社は日本に薬を売りつけて、それを使わせるんです。途中から、保険を壊すんじゃなくて、日本にある制度を活用して、悪用して儲けようとし始めたんです。


郵政民営化。さんざん文句いってきました。郵政民営化しろしろと。政府をバックに保険制度なんてやっちゃいけないと。で、民営化しました。そしたら今どうなったんでしょうか。知ってます? アフラックの保険を郵便局が扱っているんです。方針転換したんです。日本の制度をうんと悪用して儲けてから、壊してやろうと。同じことを保険医療制度でもやろうとしてるんです。どういうことかというと、1粒8万円の薬を12週間飲み続けるんです。そうするとC型肝炎ウィルスが完全になくなるんです。じゃ680万円を誰が払うのか。日本国政府はやさしいんです。保険対象医薬にしたんです。わかります? じゃあ3分の1は自己負担じゃないか……もっとやさしいんです。上限2万円で済むんです。どういうことでしょうか。日本の医療保険制度から650万円、アメリカのギリアド社に行くんです。わかります? 郵便局を悪用するのと同じように、日本の保険制度を悪用して、アメリカの製薬会社が儲けようとしているんです。おわかりになりますでしょうか。


だからオーストラリアもニュージーランドも必死になってバイオ医薬品のデータ保護期間を5年にしろ、5年にしろといってるんです。甘利大臣はどういってたんでしょうか。行司役に徹すると。バカなことをいうんじゃない。行司役なんていうのは国連事務総長かWTO事務局長がやればいいんであって、交渉担当者なのにまったく交渉していなかったんです。私はこれでもって大臣を首にすべきだと思っていました。TPP対策特別委員会に引っぱり出して。だけど二度目の首を取ろうと思ってます。絶対、TPP批准させません。……ここに同僚議員が来ております。一緒にがんばるつもりでおります。一緒にがんばりましょう。
 
 
[投稿者コメント]


埋め込みのYouTube動画から篠原孝氏の挨拶部分を投稿者が文字に起こした。
 
 
○動画の内容


[0:01:30/1:47:41]原中勝征
[0:07:05/1:47:41]醍醐聰
[0:13:04/1:47:41]植草一秀
[0:21:13/1:47:41]内田聖子
[0:28:08/1:47:41]篠原孝
[0:35:30/1:47:41]亀井静香
[0:43:25/1:47:41]畠山和也
[0:47:35/1:47:41]吉田忠智
[0:54:27/1:47:41]主濱了
[0:59:28/1:47:41]メッセージ紹介
[1:03:25/1:47:41]制服向上委員会
[1:08:04/1:47:41]カンパのお願い
[1:09:06/1:47:41]各界各地域からの決意表明
[1:46:21/1:47:41]アピール採択
 
 
○阿修羅掲示板関連投稿


TPP批准反対 母親たちもベビーカー押し国会請願デモ(田中龍作ジャーナル)
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/667.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016年3月30日


TPPを絶対阻止するべき理由がどこにあるかー(植草一秀氏)
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/739.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016年4月01日

http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/750.html

[テスト31] テスト
そうだったのか!TPP 
誰のため? 何のため? TPP協定文からわかった事実
http://notppaction.blogspot.jp/
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アクション
http://notppaction.blogspot.jp/p/home.html

いのちより利益を優先するTPPに「NO」を!


 昨年10月に「大筋合意」をし、2月4日に12か国での署名が行われたTPP協定。日本政府は暫定仮訳を公開していますが、そもそも協定文は本文と付属書だけでも5000ページを超える膨大な量であり、付属書や二国間交換文書など関連文書すべてが公開・翻訳されているわけでもありません。TPPの全体像を十分に把握し、私たちの暮らしや日本社会にとっての問題や懸念を精査することはまだまだ時間がかるといえます。米国はじめ各国でも、協定文の公開以降、国会議員や市民団体が分析と問題提起を続けています

 TPPは農産品の関税だけの問題でなく、投資や金融、食の安全基準や食品表示、サービス貿易全般も含んでおり、さらには国有企業や電子商取引などこれまでの貿易協定になかった分野もカヴァーする実に多岐にわたる内容です。


 日本政府は関連法案をまとめ、3月中にも特別委員会を設置し4月から批准のための審議を本格化するといわれています。しかし十分な情報公開と議論、専門家・各自治体による詳細な影響評価もなされないまま「批准ありき」で審議が進むことは絶対に避けなければなりません。


 私たちTPPに強い懸念を持つ市民団体・農業団体・労働組合などは11月に「TPPテキスト分析チーム」を立ち上げ、問題点をまとめてきました。このたび第2次報告として、下記のとおり公開の報告集会を行ないます。多くの方々と問題を共有し、幅広い議論を起こしたいと一同願っております。
 
 

このまま批准させるわけにはいかない!
あなたにもできるアクション


1.家族・友人と話そう!
まずは身近な人に伝えましょう。ぜひ、このリーフレットをご活用ください。
2.周囲に広めよう!
勉強会、TPPカフェなどを開きませんか。テキスト分析チームも説明に行きます。
3.議員に働きかけよう!
TPPは日米が批准しなければ発効しません。地元の国会議員に、批准阻止を働きかけましょう。
 
 
TPPテキスト分析チーム
山田正彦(元農林水産大臣、TPP交渉差止・違憲訴訟の会幹事長)
内田聖子(アジア太平洋資料センター事務局長)
近藤康男(TPPに反対する人々の運動)
和田聖仁(TPP交渉差止・違憲訴訟の会副代表、弁護士)
山浦康明(TPPに反対する人々の運動、明治大学)
東山 寛(北海道大学准教授)
岡崎衆史(農民連国際部副部長)
坂口正明(全国食健連事務局長)
寺尾正之(全国保険医団体連合会)
布施恵輔(全労連国際局)
三雲崇正(TPP交渉差止・違憲訴訟の会、弁護士)他


お問い合わせ
特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)
[連絡先省略]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
分析
http://notppaction.blogspot.jp/p/tpp-text.html

■そうだったのか!TPP


ここでは協定文の分析からわかったことをわかりやすく解説します。
【TPPテキスト分析@】農産品の関税
http://notppaction.blogspot.jp/2016/03/blog-post_28.html
【TPPテキスト分析A】医療・保険編:薬価が高騰、製薬大企業の思うがままに?
http://notppaction.blogspot.jp/2016/03/tpp_31.html
【TPPテキスト分析B】知的財産:米国流の著作権システムに
http://notppaction.blogspot.jp/2016/04/tpp.html
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2016年3月31日木曜日
http://notppaction.blogspot.jp/2016/03/tpp.html

そうだったのか!TPP―リーフレット完成!みんなで広げましょう


TPPテキスト分析チームは昨年11月以降、TPP協定文の分析と結果の発信を行なってきました。
報告書も第4版となり、多くの皆さまにご活用いただいておりますが、「報告書の中身も難しくてよくわからない」「人にTPPの問題を伝えたいけれど、わかりやすく説明できない」などの声もいただいてきました。


そこで、チームではこのたび、「そうだったのか!TPP」と題したリーフレットを制作しました。


[そうだったのか!TPP 誰のため? 何のため? TPP協定文からわかった事実
  2016年3月30日 TPPテキスト分析チーム(全9ページ)]


下記からPDFにてご覧いただけます。印刷・配布も無料・自由です。


また現物がほしい!という方は、近日中に申し込みシステムを整えますので、少しお待ちください。


リーフレットのPDFはこちらからダウンロードできます。
http://www.parc-jp.org/teigen/img/tpp_leaflet.pdf
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2016年3月29日火曜日
http://notppaction.blogspot.jp/2016/03/ver4.html

TPP協定テキスト分析レポートver.4をリリースしました!


3月30日、TPPテキスト分析チームは分析レポート ver.4をリリースいたしました。


[TPP協定の全体像と問題点―市民団体による分析報告― Ver.4
  2016年4月3日 TPPテキスト分析チーム(全140ページ)]


ぜひご活用ください。無料でダウンロード可能です。


ダウンロードはこちらから
http://www.parc-jp.org/teigen/2016/TPPtextanalysis_ver.4.pdf
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[投稿者コメント]


TPP協定の全体像と問題点について、現時点での最新で詳細な分析を提供してくれていると思われるサイトの紹介。その分析レポート(ver.4)自体は140ページもあってさすがに貼れなかったので、ダウンロードのリンクのみを付した。私の場合にはこのサイトやほかの記事での分析内容を詳しく確認したいときに参照するという使い方になるだろうか。


TPPの問題をめぐっては、古い情報がアップデートされないまま、さらはまちがった情報が修正をされないまま拡散されている場合もあるので、気をつけないといけない。そのうえで「まずは身近な人に伝えましょう」。

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/475.html

[雑談・Story41] そうだったのか!TPP  誰のため? 何のため? TPP協定文からわかった事実
そうだったのか!TPP 
誰のため? 何のため? TPP協定文からわかった事実
http://notppaction.blogspot.jp/
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
アクション
http://notppaction.blogspot.jp/p/home.html

いのちより利益を優先するTPPに「NO」を!


 昨年10月に「大筋合意」をし、2月4日に12か国での署名が行われたTPP協定。日本政府は暫定仮訳を公開していますが、そもそも協定文は本文と付属書だけでも5000ページを超える膨大な量であり、付属書や二国間交換文書など関連文書すべてが公開・翻訳されているわけでもありません。TPPの全体像を十分に把握し、私たちの暮らしや日本社会にとっての問題や懸念を精査することはまだまだ時間がかるといえます。米国はじめ各国でも、協定文の公開以降、国会議員や市民団体が分析と問題提起を続けています。
 TPPは農産品の関税だけの問題でなく、投資や金融、食の安全基準や食品表示、サービス貿易全般も含んでおり、さらには国有企業や電子商取引などこれまでの貿易協定になかった分野もカヴァーする実に多岐にわたる内容です。
 日本政府は関連法案をまとめ、3月中にも特別委員会を設置し4月から批准のための審議を本格化するといわれています。しかし十分な情報公開と議論、専門家・各自治体による詳細な影響評価もなされないまま「批准ありき」で審議が進むことは絶対に避けなければなりません。
 私たちTPPに強い懸念を持つ市民団体・農業団体・労働組合などは11月に「TPPテキスト分析チーム」を立ち上げ、問題点をまとめてきました。このたび第2次報告として、下記のとおり公開の報告集会を行ないます。多くの方々と問題を共有し、幅広い議論を起こしたいと一同願っております。
 

このまま批准させるわけにはいかない!
あなたにもできるアクション


1.家族・友人と話そう!
まずは身近な人に伝えましょう。ぜひ、このリーフレットをご活用ください。
2.周囲に広めよう!
勉強会、TPPカフェなどを開きませんか。テキスト分析チームも説明に行きます。
3.議員に働きかけよう!
TPPは日米が批准しなければ発効しません。地元の国会議員に、批准阻止を働きかけましょう。
 
 
TPPテキスト分析チーム
山田正彦(元農林水産大臣、TPP交渉差止・違憲訴訟の会幹事長)
内田聖子(アジア太平洋資料センター事務局長)
近藤康男(TPPに反対する人々の運動)
和田聖仁(TPP交渉差止・違憲訴訟の会副代表、弁護士)
山浦康明(TPPに反対する人々の運動、明治大学)
東山 寛(北海道大学准教授)
岡崎衆史(農民連国際部副部長)
坂口正明(全国食健連事務局長)
寺尾正之(全国保険医団体連合会)
布施恵輔(全労連国際局)
三雲崇正(TPP交渉差止・違憲訴訟の会、弁護士)他


お問い合わせ
特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)
[連絡先省略]
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
分析
http://notppaction.blogspot.jp/p/tpp-text.html

■そうだったのか!TPP


ここでは協定文の分析からわかったことをわかりやすく解説します。
【TPPテキスト分析@】農産品の関税
http://notppaction.blogspot.jp/2016/03/blog-post_28.html
【TPPテキスト分析A】医療・保険編:薬価が高騰、製薬大企業の思うがままに?
http://notppaction.blogspot.jp/2016/03/tpp_31.html
【TPPテキスト分析B】知的財産:米国流の著作権システムに
http://notppaction.blogspot.jp/2016/04/tpp.html
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2016年3月31日木曜日
http://notppaction.blogspot.jp/2016/03/tpp.html

そうだったのか!TPP―リーフレット完成!みんなで広げましょう


TPPテキスト分析チームは昨年11月以降、TPP協定文の分析と結果の発信を行なってきました。
報告書も第4版となり、多くの皆さまにご活用いただいておりますが、「報告書の中身も難しくてよくわからない」「人にTPPの問題を伝えたいけれど、わかりやすく説明できない」などの声もいただいてきました。
そこで、チームではこのたび、「そうだったのか!TPP」と題したリーフレットを制作しました。
[そうだったのか!TPP 誰のため? 何のため? TPP協定文からわかった事実
  2016年3月30日 TPPテキスト分析チーム(全9ページ)]
下記からPDFにてご覧いただけます。印刷・配布も無料・自由です。
また現物がほしい!という方は、近日中に申し込みシステムを整えますので、少しお待ちください。
リーフレットのPDFはこちらからダウンロードできます。
http://www.parc-jp.org/teigen/img/tpp_leaflet.pdf
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2016年3月29日火曜日
http://notppaction.blogspot.jp/2016/03/ver4.html

TPP協定テキスト分析レポートver.4をリリースしました!


3月30日、TPPテキスト分析チームは分析レポート ver.4をリリースいたしました。
[TPP協定の全体像と問題点―市民団体による分析報告― Ver.4
  2016年4月3日 TPPテキスト分析チーム(全140ページ)]
ぜひご活用ください。無料でダウンロード可能です。
ダウンロードはこちらから
http://www.parc-jp.org/teigen/2016/TPPtextanalysis_ver.4.pdf
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[投稿者コメント]
TPP協定の全体像と問題点について、最新で詳細な分析を提供してくれていると思われるサイトの紹介。その分析レポート(ver.4)自体は140ページもあってさすがに貼れないので、ダウンロードのリンクのみを付した。投稿者の場合には、このサイトやほかの記事で紹介されている内容をくわしく確認したいときに参照するという使い方になるだろうか。TPPの問題をめぐっては、古い情報がアップデートされないまま、さらはまちがった情報が修正をされないまま拡散されている(拡散してしまう)こともあるので、気をつけないといけない。そのうえで「まずは身近な人に伝えましょう」。

http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/329.html
[政治・選挙・NHK203] そうだったのか!TPP  誰のため? 何のため? TPP協定文からわかった事実:雑談板リンク
そうだったのか!TPP  誰のため? 何のため? TPP協定文からわかった事実
http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/329.html
投稿者 烏滸の者 日時 2016年4月04日 01:36:06
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/848.html
[政治・選挙・NHK204] 新潟5区は変わったか 〜新潟5区総支部長就任〜(米山隆一の10年先のために)
新潟5区は変わったか 〜新潟5区総支部長就任〜
http://www.election.ne.jp/10840/98878.html
米山隆一の10年先のために 2016/4/06 20:23:09
 
 
 昨日民進党常任幹事会で、私の新潟5区総支部長就任が認められ、3月27日にさかのぼって民進党新潟5区支部長となるとの通知を頂きました。大変ありがたく思っています。

 さて、もう言うまでもないのかもしれませんが、新潟5区は、私の生まれ故郷かつ本拠地にして、私がもう10年前の2005年に選挙に出て、3回も負けた選挙区です(笑)。自民党現職である長島議員には当時大変お世話になりましたし、地元政界・財界を固めて選挙に非常に強い方であることもまた、言うまでもありません。

 しかし私は、5区の皆さんに、敢えて問いたいと思います。

「この10年間で、5区は変わりましたか?日本は変わりましたか?あなたの生活は良くなりましたか?」と。

 2005年小泉政権は、変革を掲げて郵政解散に打って出ました。当時の小泉政権には、日本を変える気概がみなぎっていました。
 その小泉政権を引き継いだ麻生内閣の政権を、年金改革、高速道路無料、コンクリートから人への公共事業改革を掲げて奪取した民主党政権にもまた、改革の機運が満ちていました。
 あの当時皆さんの胸には、「これで、皆が年金をきちんともらえるようになる。これで福祉が充実して、安心して暮らせるようになる、安い高速道路を使って、日本中が発展する。」という希望があったと思います。

 しかし、その夢は、民主党政権とともに、潰えました。
その後安倍政権は、「アベノミクス」を掲げて圧勝し、圧倒的な支持率を背景に、権力構造を固めましたが、その過程で、政治はいつの間にすっかり旧来型自民党政治に立ち戻り、従来型の箱物公共事業が復活する一方で子育てや介護の福祉は放置され、国民年金のと厚生年金の受給額格差を是正しようとする議論さえなくなり、高速道路の料金は旧に復し、多くの人が物価高による実質賃金の低下に苦しみ、景気は低迷したまま回復せず、地域は人口減少による消滅の危機に瀕しています。そして魚沼のコシヒカリをはじめとする5区の農業は、TPP絶対反対を掲げたはずの自民党による関税撤廃で、消滅の危機に瀕しています。

私はそれを、変えたいと思っています。10年間持ち続けた志で、日本の政治の本当の問題点−高度成長時代に固定化された旧来型自民党政治が、完全に制度疲労を起こしていること−を正面から改革し、時代に即した政治・社会を作りたいと思っています。
 地域の土木箱物建設インフラに偏った公共事業は、最早地域の負担となり、かつ、何ほども地域を発展させなかったことは既に十分わかったと思います。それなら、保育施設、介護施設、病院の中身や制度いった、「福祉インフラ」を作る「福祉公共事業」に、お金を使うべきです。そうやって本当にこの新潟5区で安心して暮らせるようになってこそ、新潟5区は発展します。
年金の不公平は何一つ変わらず、真面目に働いて、一生懸命年金を払ってきた人が、老後最低限の生活さえできないのは、あまりに理不尽です。国民年金であれ厚生年金であれ、きちんと年金を払って来たら、その年金で、老後、心配することなく介護を受けられる制度を、作るべきです。そうやって本当にこの新潟5区で安心して老後を送れるようになってこそ、消費が拡大し、新潟5区は発展します。
人口減少社会の中で、新しい道路は、使う人がいません。それよりも既存の道路を安全に、より効率的に使えるようにすることが経済の発展につながります。高速道路料金を現在の1/2〜1/3、将来的には無料にして(この政策には再チャレンジすべきです)、東京から、さらに世界からの新潟5区へのアクセスを高めるべきです。そうやって新潟5区の経済的利便性を高めてこそ、新潟5区は発展します。
世界に誇る新潟5区の農業は、「TPP絶対反対!」の過去を覆い隠す、自民党的農業土木では守れません。民主党が実現し、自民党が土木予算のために半減の上廃止を決定している戸別所得補償制度を復活し、やる気のある農家が安心して農業に取り組める制度を構築すべきです。そうやって、TPP下においても、本当に額に汗する農家を支える制度を作ってこそ、新潟5区の農業は発展します。

 そしてこれらの政策は、新潟5区のみならず、全国の地方、東京を含めた日本全体に、適用できるものと私は思います。

これらの政策を実行するために、新潟5区と日本を変えるために、新潟5区と全国の地方と日本全体に住むすべての人が本当に生活が良くなったと実感できる政治を実現するために、全力で頑張ろうと思います。
 
新潟5区の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。


                           民進党新潟県第5選挙区総支部
                             総支部長   米山 隆一

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[投稿者のコメント]

米山隆一氏。はじめ参院選新潟選挙区に維新の党から立候補を表明しており、一時は民主党(当時)が野党統一候補として擁立を検討するとも報じられた。今回、民進党新潟5区総支部長に就任。そのブログ報告を紹介する。

じつは投稿者はこの所信表明に不満がある。それは、東京電力柏崎刈羽原発のことがまったく言及されていないからだ。泉田県政への評価も聞きたい。ちなみに2013年から更新されていない米山氏の別のサイトには、「政策・理念」として次のように短く書かれている。現在もその考えに変わりはないのだろうか。

 政策
   (5)エネルギー政策
 原子力発電の安全の確保は、絶対に達成される
 べき課題です。そしてそれと同時に、科学的知
 見から長期的に安定的なエネルギー確保がな
 されてこそ、本当に安心・安全にエネルギーを
 使うことが可能になります。
 http://www.yoneyamaryuichi.com/idea.html

条件つき原発容認と受け取れるこのような政策をのぞけば、あるいはそれも含めてというべきなのか、米山氏はまちがいなく見識の高い保守政治家である(まだ議員にはなっていないが)。東京大学教養学部時代には佐藤誠三郎ゼミで勉強したというのだが、そのこともバックボーンの一つになっているのだろう。このような人が自民党の政治家になれなかった(新潟5区の公認をはずされた)というところにもなにしろ時代があらわれている。

たまにしか見ないが、facebookの記事もおもしろい。
https://www.facebook.com/ryuichi.yoneyama.5
http://www.asyura2.com/16/senkyo204/msg/141.html

[雑談・Story41] エリザベス・ウォーレン「破られた約束」(2015年5月18日)[抄訳]
エリザベス・ウォーレン「破られた約束」(2015年5月18日)[抄訳]
Broken Promises: Decades of Failure to Enforce Labor Standards in Free Trade Agreements
Prepared by the Staff of Sen. Elizabeth Warren(MAY 18, 2015)
http://www.warren.senate.gov/files/documents/BrokenPromises.pdf


破られた約束:
自由貿易協定における労働基準施行の失敗の20年
作成: エリザベス・ウォーレン上院議員スタッフ

 
[p.1]


概要


 上院議会ではまもなく、2015年超党派議会貿易優先権説明責任法案(TPA法案)――ファスト・トラック(貿易促進権限)――が採決されようとしている。オバマ大統領は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の妥結を円滑化するため、貿易促進権限を議会に求めた。TPPは、世界経済の40%近くを占める12ヶ国による大規模な貿易協定である。オバマ大統領は繰り返しこう述べている。TPPは労働、環境、人権についての高い基準をもつ「歴史上最も進んだ貿易法案」であると。大統領は、TPPが「より高い労働基準、より高い環境基準」および「国々に責任をもたせる新しい手段」を備えることになると主張する。


しかし、過去20年間のほとんどすべての自由貿易協定(FTA)の推進者たちは、まったく同じことを主張していた。


・ 1993年、クリントン大統領はこう主張した。「北米自由貿易協定(NAFTA)は、環境基準の問題に正面から取り組む、相手国に自国の労働者および労働基準についてなすべきことに取り組ませる初めての協定である。このようなものはこれまでにない」と。


・ 2005年、米通商代表部[USTR]のロブ・ポートマンはこう主張した。「(中米自由貿易協定[CAFTA]は)これまでに米国が交渉したどんな貿易協定よりも強力な労働・環境条項をもつ」と。


・ 2007年、USTRのスーザン・シュワブはこう主張した。ペルー、コロンビア、パナマとの貿易協定には「かつてないほどの労働権および環境基準の保護」が盛り込まれていると。


・ 2010年、オバマ大統領はこう言った。韓国との協定には「画期的な労働者の権利保護」が含まれたと。


・ 2011年、ホワイトハウスはこう主張した。コロンビアとの貿易協定には、「貿易協定に高い労働基準を組み込むために2007年5月10日連邦議会が超党派で承認した行政協定にもとづき、労働者の権利の強力な保護が含まれた」と。オバマ大統領は、2012年にこう言った。「労働者および環境の強力な保護規定をもつこの協定は、われわれの労働者と環境にとっての勝利であり、われわれはその責任をまっとうするのだ」と。


・ その数ヶ月後、パナマとの自由貿易協定について、ホワイトハウスはほとんど同じことを主張した。


[p.2]


しかし、これらの協定の経過は厳しい現実を露呈している:過去の米国自由貿易協定の労働条項の施行は、約束されたことにはるかに立ち遅れている。今回のウォーレン上院議員のスタッフによる分析が明らかにしたのは、米国が、20年にわたる一様な約束にもかかわらず、自由貿易協定の強制基準の実施にも推薦基準の適用にも失敗し続けているということである。


何度も何度も、自由貿易協定の推進者たちは、今度こそは新しい貿易協定が強力で有意義な保護条項をもつことを主張し、そのたびにそれらの保護条項では最悪の侵害も食い止められないことが明らかになった。民主党、共和党にかかわらずこれまでの大統領がそれを執行しようとせず、協定にも欠陥があったので、法規制が弱くて労働、環境が保護されてない国々では協定の条項が形骸化され、米国の労働者と関係団体は協定に頼れない状態におかれた。今回の分析では、次のことが明らかになった:


・ 米国は、貿易協定の労働保護を実行していない。超党派の政府監査院(GAO)による一連の報告や労働省(DOL)および国務省による報告は、われわれの自由貿易協定相手国における重大で常習的な労働侵害を証拠立てている。GAOは、相手国による条項の履行と監督機関による監督に向上を認めつつも、こう結論づけた。USTRとDOLは、「FTAの労働条項の順守を組織的に監視、施行していない」と。また、米国の機関は概して「条項順守の問題の認定、それにたいする対応と執行」をおこなってこなかったと。


・ 米国は、強制執行を遂行したことがほとんどない。DOLは自由貿易協定での労働侵害の正式な申し立てを2008年までは1件も受理していない。その後、オバマ政権下で申し立てについての徹底した調査をおこない、実態報告と提言を公表した。それでもDOLは、労働契約違反のあった国々にたいする5件の告発しか受理せず、2014年に6年前の申し立てについての強制執行――これは米国の自由貿易協定では初めてのものとなる――の再開に合意しただけだった。このことは、申し立て手続きの困難と、協定の強制執行全体の問題をしめしている。


・ 蔓延する労働関連人権侵害。米国は20ヶ国との間で14の自由貿易協定を締結している。労働条件が向上している国もあるが、労働権などの人権侵害は蔓延している。米国その他の調査機関は、児童労働などの労働に関連する重大な人権侵害を20ヶ国中の11ヶ国で認めた。


・ 最悪の権利侵害にも歯止めがかけられない。米国が自由貿易協定を結んでいるいくつかの国々についての事例研究は、継続中のおそろしい労働虐待を明らかにしている。グアテマラは、米国との貿易協定に加入してから5年後に、「労働組合員にとって世界一危険な国」に挙げられた。コロンビアでは、長年にわたる問題を解決してFTAを実現するために特別に策定された労働措置計画(Labor Action Plan)の存在にもかかわらず、その計画が4年前に成立して以来、105人の労働組合活動家が殺害され、1337人が殺害の脅しを受けた。


[p.3]


1. 序論:オバマ政府はTPPが歴史上最も進歩主義的な貿易協定になると主張する


 上院議会ではまもなく、2015年超党派議会貿易優先権説明責任法案(TPA法案)―――ファスト・トラック(貿易促進権限)――が採決されようとしている。オバマ大統領は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の妥結を円滑化するため、貿易促進権限を議会に求めた。TPPは、世界経済の40%近くを占める12ヶ国による大規模な貿易協定である。オバマ大統領はあらゆる場面で、最終的な協定が労働、環境、人権の面で「歴史上最も進歩主義的な貿易協定」になるだろうと主張してきた。1 たとえば大統領は先月このように宣言した:2


「私はこう確信している。これは歴史上最も進歩主義的な貿易法案になる。そこにはいままでの協定にはなかったような労働、環境、人権保護が盛り込まれる。」


ホワイトハウスの概況報告書は大統領の約束に同調している:3


「TPPを通して、われわれはNAFTAを再交渉し、より強力で完全な強制力のある労働、環境基準を設けようとしている。これらの高い基準は、数億人を強制力のある労働基準のもとにみちびきいれ、世界有数の急速成長地帯で危機に瀕する野生生物を保護するだけではない――貿易相手国を競争のルールに従わせることで、わが国の労働者と企業の条件をも公平にする。」


 ホワイトハウスはTPPについて、「海洋を保護し、地球上の広域でおこなわれている野生動物の密売や密漁、違法伐採と戦う、歴史上最も環境に優しい貿易協定」であると称している。4 また、TPPは「最低賃金、労働時間、労働安全衛生についての強制的要求」により「労働基準を引き上げる」と主張している。5


 USTRによれば、大統領は「完全な強制力のある労働基準をもつ貿易協定だけを支持する」ことと、最終合意が「搾取的な児童労働や強制労働と戦い雇用差別を阻止する新しい手段を提供し、メキシコおよびカナダとの貿易協定に含まれる基本的な労働基準を組み込んだものになる」ことを、「つねに明確にしてきた」。6


 主要な政府当局者たちは、同じような主張を繰り返している。ホワイトハウスによれば、この協定の「高い基準」は、「数億人を強制力のある労働基準のもとにみちびきいれ、世界有数の急速成長地帯で危機に瀕する野生生物を保護するだけではない――貿易相手国を競争のルールに従わせることで、わが国の労働者と企業の条件をも公平にする。」7


2. これまでの貿易協定についての約束


 オバマ政権のTPPについての約束は新しいものではない。20年以上にわたって。民主共和両党の大統領たちは、政府による貿易協定の交渉においては米国の労働者の利益を最優先にすることを約束してきた。NAFTAとCAFTAからはじまって近年のペルー、コロンビア、パナマ、韓国との協定にいたるまで、これらの貿易協定の推進者たちは、何度も何度も何度も、そっくり同じことを約束してきた。


A. クリントン大統領のもとでのNAFTA


[省略]


[p.4]


B. ジョージ・W・ブッシュ大統領のもとでのCAFTA-DR


[省略]


C. 同ブッシュ大統領のもとでのペルーとのFTA


[省略]


[p.5-6]


D. オバマ大統領のもとでの韓国、コロンビア、パナマとの協定


[省略]


[p.7]


3. 破られた約束:


 政府監査官や専門家による一連の報告は、自由貿易協定相手国での労働、環境、人権の問題についての事例分析とあわせて、民主共和両党の大統領たちの約束にもかかわらず、しばしば自由貿易協定が相手国での基準違反を解決あるいは防止することができなかったことを明らかにしている。


A. GAOによる認定


 2014年、GAO(政府監査院)は、現行の自由貿易協定の主要な労働条項の実施状況についての徹底した評価はおこなった。GAOは、ある状況については協定加盟国に改善がみられると指摘しながらも、広範に固着した問題をみとめた。調査報告によれば次の通りである:25


「強固な労働権侵害を政府機関が報告し、GAOが認定した。たとえば、基準が十分に実施されておらず、直接雇用を回避するために下請けが使われており、コロンビアとグアテマラでは労働組合の指導者たちにたいして暴行がある。」


 DOL(労働省)が自由貿易協定違反の正式な告発を受理した場合であっても、対応は遅く効果的なものでない。2008年まで、DOLは正式な告発を1件も受理しなかった。その後、1つ1つの告発についての徹底した調査をおこない、実態報告とそれにもとづく提言を公表した。それでもDOLは、2008年以来提出された5件の告発のうち1件しか解決することができず、GAOはDOLについて、時間がかかりすぎることと告発の手続きがほとんど利害関係者に周知されていないことを認定した。GAOによれば次の通りである:26


「2008年以降、労働省(DOL)は、…FTAの労働条項違反の疑いで…5件の正式な告発を受理し、そのうちの1件を解決した。…DOLは、それぞれの申請について、FTA関連の労働申請を調査し報告書を出すの設定された6ヶ月の時間枠を、平均9ヶ月も超過している。これは時間枠が非現実的だったということをしめす。また、GAOの聞き取り調査では、相手国の労働組合代表や利害関係者がしばしば申請手続きを理解しておらず、それが原因で申請にいたっていないケースも考えられる。さらに、利害関係者たちは、DOLの審査の時間枠超過を一因とする解決の遅れが、労働者に影響の及ぶFTAの基準にそぐわない状況の存続をゆるしているのではないかと懸念している。」


こうした問題は新しいものではない―その多くは2009年の同様のGAO報告でも確認されており、当時の政府高官たちが対処することを誓った。27 GAOは関係機関の対応を4年間くわしく追跡し、一定の改善があったことを証明した。2014年の報告は、関係国が義務を果たし、機関が進捗を見守り諸問題を解決する上での進歩を認めたのだが、これらの取り組みにも重大な問題があることをなおも確認した。GAOはこのように結論づけた。USTRとDOLは「FTA労働条項の順守を組織的に監視、施行していない」と。28 また、米国の機関は概して「条項順守の問題の認定、またそれにたいする対応と執行措置」をおこなってこなかったと。29


[p.8]


B. 児童労働、人身売買、人権にかんする労働省および国務省の報告


 毎年、DOL(労働省)は児童労働と強制労働による製品についての報告書を連邦議会に提出し、国務省は世界各国の人権についての報告書を提出する。これらの報告書は、FTAが労働者を守り公平な競争の場をつくるという約束に反して、米国のFTA締結諸国に重大な問題があることをしめしている。


 たとえば、DOLの報告書は、現在米国が自由貿易協定を締結している10ヶ国(コロンビア、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ヨルダン、メキシコ、ニカラグア、パナマ、ペルー)が、国際法に違反して児童労働と強制労働による製品を生産しつづけていることを確認している。30 報告書によれば、コロンビアは8品目(煉瓦、石炭、コカ、コーヒー、エメラルド、金、ポルノ、サトウキビ)を、児童労働もしくは強制労働によって生産している。グアテマラはブロッコリ、コーヒー、トウモロコシ、花火、砂利、サトウキビを、児童労働によって生産している。メキシコは11品目を、児童労働によって生産している。


 同様に、国務省は世界各国の人権について年次報告書を公表している。31 そこには労働者の人権についての情報が含まれている。米国との自由貿易協定が発効している17ヶ国で、報告書は直接労働権や労働条件に関係する人権侵害を確認した。10ヶ国(コロンビア、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ヨルダン、メキシコ、モロッコ、ニカラグア、パナマ)で、報告書は労働権にかんする問題と、人権侵害の責任者が罪に問われていないことを確認した。


 たとえば、メキシコには「児童労働の搾取」がある。32 ホンジュラスでは「労働法が有効に執行されないこと」、「児童労働」、「免責をはびこらせる司法制度の弱さ」などの深刻な問題がある。33 ヨルダンでは「政府が労働権を制限しており、外国人家事労働者への虐待を国内外の人権団体が報告している」。「免責は蔓延したままであり、政府は人権を侵害した公務員を捜査、起訴、処罰する十分な措置を講じていない。」34


C. 失敗した自由貿易協定執行の詳細例


I. ペルーとの自由貿易協定での破られた約束


 ペルーとの自由貿易協定は2009年に発効した。この米国・ペルー貿易促進協定(PTPA)は、USTRのいうところの「環境・労働権保護にかんする画期的な条項」を含んでいる。35 しかし、PTPAの発効以降、ペルーは多様な産業分野で児童労働と強制労働を利用していることが報告されている。あるいはアマゾンからの違法木材を輸出しつづけている。そして2014年には、外国からの投資を誘発するために、それまでの環境保護と安全衛生規制の大がかりな引き下げをおこなった。


 DOL(労働省)によれば、ペルーから輸入される煉瓦、コカ、花火、魚加工品の多くは児童労働で生産されている。ブラジルナッツと木材製品は人身売買を含む強制労働で生産されている。金製品は児童労働と強制労働の両方で生産されている。36


[p.9]


 同様に、PTPAの発効以降の違法な森林伐採権と石油採掘権の急拡大について多くの追跡調査がおこなわれた。[NGOの]環境調査機関(Environmental InvestigationAgency)の2012年の報告によれば、PTPAの批准から2年半の間に、ペルーから米国に違法木材が100回出荷された。37 2014年のある調査報告によれば、違法伐採を禁じるPTPAの条項にもかかわらず、ペルー国内で認められている伐採権の70%近くにそれにたいする重大な違反が疑われる。38 この報告は次のように結論づけている:


「2009年に発効した米国・ペルー貿易促進協定(TPA)には、ペルーの森林部門の統治と森林資源の持続可能な管理を強化するための重要な付属書が含まれていた。米国・ペルーTPAが発効してから、……こうした努力にもかかわらず、持続可能な森林管理がいまだに達成されず、ペルーのアマゾンにはびこる違法伐採が続いているこということが、しだいに明らかになってきた。」39


 2014年7月、ペルーは、労働安全衛生基準を引き下げ、環境省の執行権限をなくし、投資促進の名目で環境事前調査の要件を緩和するという一括法案を成立させた。40 その法律は安全衛生、環境基準に違反した企業にたいする罰則を制限した。41 労働、環境その他の市民団体はこの基準の引き下げを批判して、それが明らかなPTPA違反であると主張した。42 これらの団体はUSTR(米通商代表部)にたいしても、この引き下げを中止させるためにPTPAの執行条項を適用するように求めた。実際、こうした基準の引き下げ以前に、すでにペルーは2009年の基準に従っていないと宣告されていた。43 それにもかかわらず、USTRのとった対応は状況を「注視する」というものでしかなかった。44


II. コロンビアとの自由貿易協定での破られた約束


 コロンビアとのFTAが連邦議会で承認されたとき、オバマ大統領は、協定が「労働権、環境、知的財産を保護する」と述べた。45 政府は、これとは別の「労働措置計画」[LAP](Labor Action Plan)についても称揚した。そこには、「コロンビアの労働組合員にたいする暴力、そうした事件の殺人犯を処罰する努力の不足、コロンビアでの労働者の権利保護の不足」についての政府の懸念に対処するためにコロンビア政府が合意した一連の計画が詳述されている。46


 しかし、FTAもLAPも労働権保護にはかばかしい改善をもたらさなかった。昨年、[NGOの]フリーダム・ハウス(Freedom House)は次のように指摘した。LAPは「権利侵害の捜査と虐待的な労働慣行の取り締まりの強化をめざしているが、わずかな改善しか実現していない」と。47 LAPで信頼できる情報源として認められているコロンビアの[NGO]全国労働組合学校[ENS](National Union School)によれば、4年前のLAPの成立以来、105人の組合活動家が殺害され、1337人の組合員が殺害の脅しを受けた。48 また、国務省は、2013年の時点で「(組合員殺害の)捜査と処罰ははかどっておらず、依然として高い割合の免責がある」と認定した。49


 USTR(米通商代表部)とDOL(労働省)は、コロンビアの労働法執行の取り組みになお「大きな課題」があることを認めている。2011年以来コロンビア政府によって報告された110件の労働関連の殺人のうち、有罪判決は4件にすぎない。組合指導者と組合員にたいする脅迫はこの4年間で増加しているにもかかわらず、どの脅迫事件もまともに解決されていない。50 国務省はまた、「コロンビア政府の課した罰金には、権利侵害者を抑制する効果がほとんどなかった。罰金はしばしば徴収されずにおわり、多くの企業は罰金を払うよりも控訴することを選択した」と指摘した。51


[p.10]


 AFL-CIO(米国労働総同盟・産業別組合会議)は、次のように結論づけた。「罰金は、雇用者に不正なやり方を改めさせる措置というより、労働省の広報活動にしかなっていない。」また、労働監査官の雇用慣行が「監査官の裁量と技能を大きく損なっている。」52


 コロンビアの児童労働もまた現在進行中の問題にみえる。2013年、国務省は、粘土質煉瓦、石炭、エメラルド、金、コカ、ポルノの生産における児童労働の「いちじるしい発生率」を報告した。さらに、鉱業と建設業での児童労働の禁止が「ほとんど無視されている」と指摘した。53


III. グアテマラ(CAFTA加盟国)での破られた約束


 グアテマラでは、CAFTA-DR(中米自由貿易協定)が2006年に発効した。7年後、国際労働組合総連合(ITUC)は、グアテマラを「労働組合員にとって世界一危険な国」として挙げた。54 ITUCによれば、2007年以来「少なくとも53人の組合指導者と代表者が殺害され、数え切れないほどの殺人未遂、拷問、誘拐、乱入、殺害の脅しがあった。これらにより、労働組合権など行使できない恐怖と暴力の風土が形成された。」55


 2008年、ジョージ・W・ブッシュ大統領のときに、AFL-CIOとグアテマラの6つの労働組織は、グアテマラ政府が効果的に労働法を執行せず、ILO(国際労働機関)の基準を順守していないとして、DOL(労働省)に申し立てた。2009年1月、オバマ大統領の就任直前に、DOLはそれに回答する報告書を発表し、多数の問題を認定した。たとえば、グアテマラの労働省には査察をおこなったり労働権侵害のあった雇用者に制裁措置をとったりする能力がなく、「裁判所の判決の執行について重大な問題がある。」56


 2010年、DOLは、それまでの18ヶ月以上のあいだのグアテマラの対応を「報告書の提起した懸念への取り組みとして不十分なもの」と判断し、オバマ政府がグアテマラにたいして、自由貿易協定では初めてとなる執行措置を開始した。57 しかし、延期が繰り返され、5年後にも解決されていない。


 この問題の解決のために米国が要求した協議は、米国が仲裁委員会を要求するまで、1年間長引いた。仲裁委員会は両国が新しい計画を交渉するために延期されていたが、計画は2013年に合意に達した。当時、USTR(米通商代表部)の概況報告はその計画をこのように評した。「グアテマラ政府が労働法の施行の改善のために明確な時間枠のなかで実行する重要で具体的な対策が含まれる、意欲的、包括的な実施計画」であると。58


 2013年の国務省人権報告書によれば、「[グラテマラ]政府は、結社の自由、団体交渉のために、あるいは労働組合差別にたいして、効果的な法執行をおこなわなかった。不十分な予算配分と非効率な法律・行政手続きのせいで、政府の関係機関は、結社の自由、団体交渉を保障する法律に違反した雇用者を効果的に捜査、起訴、処罰したり、組合活動に参加したために違法に解雇された労働者を復職させたりすることができなかった。」59


[p.11]


 2014年9月、グアテマラがCAFTA-DRの義務を順守する計画の合意からさらに1年半後、AFL-CIOとグアテマラの労働組織による最初の申し立てからは6年後に、オバマ政府はついにグアテマラにたいする労働基準執行の法的措置を再開すると発表した。60 最初の公判は2015年6月に予定されており、この発表からは9ヶ月後になる。61


IV. エルサルバドル(CAFTA加盟国)での破られた約束


 CAFTA-DR(中米自由貿易協定)の別の加盟国、エルサルバドルは、それほど暴力的ではないが、やはりCAFTAの労働基準を順守するうえでの障害に直面している。2013年の国務省人権報告書によれば、エルサルバドル政府は「いかなる場合にも結社の自由と団体交渉を保障する法律を効果的に執行せず、救済措置や刑罰も効果のないままだった。訴訟手続きは遅延と控訴で長期化しがちだった。」62 さらに、「労働組合員にたいする脅迫、労働組合を結成しようとした従業員の解雇、要注意人物リストへの記載などの労働組合差別が報告されている。」63 GAO(政府監査院)は、[エルサルバドル]政府が労働省の予算を増やし査察官を増員したにもかかわらず、米国職員によれば「査察局の実効力が向上していない」とし、また、裁判所命令はしばしば執行されていないとした。64


 グローバル労働者の権利センター(The Center for Global Workers' Rights)と労働者権利組合(Worker Rights Consortium)による報告書は、次のように認定した。65


「雇用者は、労働組織と癒着し贈賄をおこない、特に労働組合連合のFenastrasを通じて、独立労働者の組織化を未然に阻止する。…最後に、ギャングメンバーを通じて組合活動家を脅迫、恫喝するという不穏な傾向がある。勧誘、強制、脅迫のいずれによるものであれ、独立労働者の組織化やまっとうな団体交渉を防ぐことで、雇用者は、行動規範や国内法、国際条約に認められた基本的権利を侵害しているだけでなく、その産業の賃金と労働条件を人為的に抑制している。」


 国務省人権報告書はまた、エルサルバドルの児童労働が「深刻で広く蔓延している問題」であり、「最悪の児童労働はコーヒーとサトウキビの栽培、漁業、貝の殻むき、花火の製造でおきている」と認定した。報告書はまた、労働省による関連法の執行には「限定的な効果」しかないと指摘している。66


[p.12]


4. 結論


 TPPはこれまでで最強の自由貿易協定だと称揚されている。しかし、このような主張を聞かされるのは初めてのことではない。1993年のNAFTA協定から近年のコロンビア、パナマとの協定にいたるまで、過去20年間に批准されたすべての自由貿易協定について、推進者たちは同じようなことを主張した。


 すでにわれわれは、民主共和両党のもとで、自由貿易協定について20年分の経験を積んでいる。これらの協定の支持者たちはいつも、協定が労働者を保護する強固な基準を含んでいると請け合ってきた。


 しかし、本分析はそうした言辞が現実にそぐわなかったことを明らかにする。こうした自由貿易協定の労働条項の執行の妨げとなる広範な問題や欠陥が存在していた。GAO(政府監査院)は、USTR(米通商代表部)とDOL(労働省)が「FTA労働条項の順守について組織的な監視、施行」67 をしておらず、また、米国の機関が概して「条項順守の問題の認定とそれにたいする対応と執行措置」68 をおこなってこなかったと結論づけた。国務省と労働省による報告書は、米国と自由貿易協定を締結した国々に、児童労働や労働権侵害についての解決困難な問題があることを明らかにしている。


 いくつかの締結国での事例研究は、継続中のおそろしい労働虐待を明るみにだした: グアテマラは、米国との貿易協定に加入してから5年後に、「労働組合員にとって世界一危険な国」に挙げられた。コロンビアでは、長年にわたる問題を解決してFTAを実現するために特別に策定された「労働措置計画」の存在にもかかわらず、自由貿易協定の成立以来、105人の労働組合活動家が殺害され、1337人が殺害の脅しを受けた。
 
 
[p.13]
 
原注
 
  1 The White House, See What the Most Progressive Trade Agreement in History Looks Like (March 4, 2015)
  2 CNN, Obama pitches ‘most progressive trade deal in history’, (Apr. 30, 2015)
  3 The White House, Why We Trade, (Retrieved May 8, 2015)
  4 Jeffrey Zients, The White House Blog, Bringing Trade Agreements into the 21st Century, (Apr. 16, 2015)
  5 Jeffrey Zients, The White House Blog, Bringing Trade Agreements into the 21st Century, (Apr. 16, 2015)
  6 Office of the U.S. Trade Representative, FACT SHEET: Values Driving U.S. Trade Policy(Feb.2014)
  7 The White House, Why We Trade (Retrieved May 8, 2015)
  8 Los Angeles Times, New Pacts Break Logjam on Trade (Aug. 14, 1993)
  9 San Francisco Chronicle, Many Still Distrust NAFTA: Side Deals Haven’t Soothed Critics (Aug 14, 1993)
10 President Bill Clinton, Remarks on the Signing of NAFTA (Dec. 8, 1993)
11 President George W. Bush, President Discusses the Central American and Dominican Republic Free Trade Agreement (CAFTA-DR), (May 12, 2005)
12 Remarks of Ambassador Rob Portman, US. Trade Representative (July 19, 2005)
13 Remarks of Ambassador Rob Portman, US. Trade Representative (July 19, 2005)
14 USTR Release,“U.S., Costa Rica Announce Agreement on Free Trade: Agreement hailed for promoting growth in Central America,”(Jan. 26, 2004)
15 The White House, Statement by President George W. Bush (Dec. 4, 2007)
16 Remarks of Ambassador Susan Schwab, United State Trade Representative, FTA Rally (Sep. 10, 2007)
17 Statement of Ambassador John Veraneau, Deputy U.S. Trade Representative, before the House Committee on Small Business (Nov. 1, 2007)
18 The White House, Remarks by the President on the Announcement of a U.S.-Korea Free Trade Agreement (Dec. 4, 2010)
19 Office of the U.S. Trade Representative, Remarks by Ambassador Ron Kirk to the National Bureau of Asian Research (Mar. 30, 2011)
20 The White House, Leveling the Playing Field: Labor Protections and the U.S. Colombia Trade Promotion Agreement (Sep. 30, 2011)
21 The White House, Remarks by President Obama and President Santos of Colombia in Joint Press Conference (Apr. 15, 2012)
22 The White House, Leveling the Playing Field (Sep. 30, 2011)
23 The White House, Labor Protections And The U.S.-Panama Trade Promotion Agreement (Retrieved May 8, 2015)
24 The White House, Benefits Of The U.S.-Panama Trade Promotion Agreement(Sep. 21, 2011)
25 GAO, U.S. Partners Are Addressing Labor Commitments, but More Monitoring and Enforcement Are Needed (Nov. 2014)
26 GAO, U.S. Partners Are Addressing Labor Commitments, but More Monitoring and Enforcement Are Needed (Nov. 2014)
27 GAO, Four Free Trade Agreements GAO Have Reviewed Have Resulted in Commercial Benefits, but Challenges on Labor and Environment Remain (July 2009)
28 GAO, U.S. Partners Are Addressing Labor Commitments, but More Monitoring and Enforcement Are Needed, 34 (Nov. 2014)


[p.14]


29 GAO, U.S. Partners Are Addressing Labor Commitments, but More Monitoring and Enforcement Are Needed, 35 (Nov. 2014)
30 Department of Labor, List of Goods Produced by Child Labor or Forced Labor (Dec. 2014)
31 Department of State, Country Human Rights Practices for 2013 (Dec. 2014)
32 U.S. State Department, Country Reports for Human Rights Practices for 2013: Mexico (Dec. 2014)
33 U.S. State Department, Country Reports for Human Rights Practices for 2013: Honduras (Dec. 2014)
34 U.S. State Department, Country Reports for Human Rights Practices for 2013:Jordan (Dec. 2014)
35 Office of the United States Trade Representative. Peru Trade Promotion Agreement (accessed on May 8, 2015)
36 Department of Labor, List of Goods Produced by Child Labor or Forced Labor (Dec. 2014)
37 Environmental Investigation Agency, The Laundering Machine: How Fraud and Corruption in Peru’s Concession System Are Destroying the Future of Its Forests (2012)
38 Nature, Scientific Reports, Finer, M., et al., Logging Concessions Enable Illegal Logging Crisis in the Peruvian Amazon (Jan. 15, 2014)
39 Nature, Scientific Reports, Finer, M., et al., Logging Concessions Enable Illegal Logging Crisis in the Peruvian Amazon (Jan. 15, 2014)
40 Peruvian Law 30230 (PL 30230), “Tax Law Establishing Measures, Simplified Procedures and Permits for the Promotion and Dynamization of Investment in the Country,” signed by President Humala in July, 2014.
41 Lynda Sullivan, Peru Passes a Packet of Neoliberal Reforms, Erodes Environmental Protections and Labor Rights (July 25, 20145)
42 Inside U.S. Trade, U.S. Enviro Groups Ask USTR To Advance Case With Peru Over Reform Law Inside U.S. Trade (Mar. 13, 2015)
43 Inside U.S. Trade, U.S. Enviro Groups Criticize Inaction on Peru FTA Forestry Sector Requirements (June 4, 2010)
44 Inside U.S. Trade, U.S. Enviro Groups Ask USTR To Advance Case With Peru Over Reform Law Inside U.S. Trade (Mar. 13, 2015)
45 Washington Post, Obama Gets Win as Congress Passes Free-Trade Agreements (October 12, 2011)
46 Office of the U.S. Trade Representative, U.S.-Colombia Trade Agreement: Labor Action Plan (accessed May 12, 2015)
47 Freedom House, Freedom in the World 2014: Colombia (accessed May 2015)
48 AFL-CIO, Statement by AFL-CIO President Richard Trumka on How Failure of Colombia Labor Action Plan Illustrates Problem with U.S. Trade Model (Apr. 7, 2015)
49 U.S. State Department, Country Reports for Human Rights Practices for 2013: Colombia, (Dec. 2014)
50 USTR and DOL, Standing Up for Workers: Promoting Labor Rights Through Trade (Feb. 2015)
51 U.S. State Department, Country Reports for Human Rights Practices for 2013: Colombia, (Dec. 2014)
52 AFL-CIO, Making the Colombia Labor Action Plan Work for Workers (April 2014)
53 U.S. State Department, Country Reports for Human Rights Practices for 2013: Colombia, (Dec. 2014)
54 International Trade Union Confederation, New ITUC Report on Violations of Trade Union Rights (July 2013)
55 International Trade Union Confederation, New ITUC Report on Violations of Trade Union Rights (July 2013)
56 U.S. Department of Labor, Public Report of Review of Office of Trade and Labor Affairs, U.S. Submission 2008-1(Guatemala), (Jan. 16, 2009)


[p.15]


57 U.S. Department of Labor, Guatemalan Submission Under CAFTA-DR (accessed May 2015)
U.S. Trade Representative, USTR Kirk Announces Labor Rights Trade Enforcement Case Against Guatemala (July 2010)
58 Office of the U.S. Trade Representative, Fact Sheet: Guatemala Agrees to Comprehensive Labor Enforcement Plan (Apr. 11, 2013)
59 U.S. Department of State, Country Reports for Human Rights Practices for 2013: Guatemala (Dec. 2014)
60 U.S. Trade Representative, Press Release, United States Proceeds with Labor Enforcement Case Against Guatemala,”(September 2014)
61 U.S. Trade Representative, In the Matter of Guatemala?Issues Relating to the Obligations Under Article 16.2.1(a) of the CAFTA-DR (Retrieved May 12, 2015)
62 U.S. Department of State, Country Reports for Human Rights Practices for 2013: El Salvador (Dec. 2014)
63 U.S. Department of State, Country Reports for Human Rights Practices for 2013: El Salvador (Dec. 2014)
64 GAO, U.S. Partners Are Addressing Labor Commitments, but More Monitoring and Enforcement Are Needed (Nov. 2014)
65 Center for Global Workers’ Rights and Workers Rights Consortium, Unholy Alliances: How Employers in El Salvador’s Garment Industry Collude with a Corrupt Labor Federation, Company Unions, and Violent Gangs to Suppress Workers’ Rights (January 22, 2015)
66 U.S. Department of State, Country Reports for Human Rights Practices for 2013: El Salvador (Dec. 2014)
67 GAO, U.S. Partners Are Addressing Labor Commitments, but More Monitoring and Enforcement Are Needed, 35 (Nov. 2014)
68 GAO, U.S. Partners Are Addressing Labor Commitments, but More Monitoring and Enforcement Are Needed, 35 (Nov. 2014)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[投稿者によるコメント]


TPPに反対する米国の民主党上院議員エリザベス・ウォーレンの報告書 "Broken Promises"(2015年)の抄訳。訳出しなかった部分には[省略]と記した。


ここでウォーレン議員について紹介したり報告書の背景を解説したりできればいいのだが、なにしろ投稿者はウォーレンという議員の存在自体をつい最近知ったばかりだ。この報告書のことは、ウォーレンとTPPについて書かれた記事に言及されていた。報告書の日本語訳や日本語でのくわしい紹介記事がみつけられなかったので、自分が読むついでに訳したという次第。投稿者は英語も素人なので、わかりにくい箇所は原文を参照した方がわかるかもしれない。誤訳があったらコメント欄で指摘、修正していただけるとありがたい。とくに固有名詞や専門用語の訳し方には自信がない。不適切な訳語がありそうだ。


と書いたそばからいうのもなんだが、この報告書にはそれほど重要なTPP関連情報が出てくるわけではない。目下日本のTPP批准に反対している一般人が時間をかけてすみずみまで丁寧にこの報告書を読む必要はないと思う。報告書の論旨はとてもシンプルなので、報告書の概要や2015年当時書かれたブログの紹介記事を読むだけで十分だ。むしろ特筆すべきなのは、このような主張が、日本で広く流通しているTPP反対論のなかにめったにみられないということだ。米国の民主党ひいては米国という国を理解するうえで、この報告書はなかなか示唆に富んでいる。逆にいえば、この報告書の内容にたいする驚きのなかに、自分と自分の国のありのままの姿が映しだされるのではないか。この報告書を読むことで、たとえば日本国憲法の前文が前より新鮮に感じられるようになるかもしれない。


じつはこの報告書の読みにくい理由がさらにもう1つある。同じ引用や主張の言い回しの重複が目立ち、文書全体としての仕上げがどうみてもお粗末なのだ。細かい引用ミスは2ヶ所あった。ひとつひとつの引用を出典と照らし合わせてはいないので、もっとまちがいがあるかもしれない。気がついた2ヶ所はコピーペーストをしているかぎりありえない種類のミスなので、この報告書の下書きがどのように書かれ、どのように編集されたのか興味深いところだ。この報告書の作成者はウォーレンではなく、ウォーレンのスタッフとなっている。スタッフは日本でいえば議員秘書にあたる。上院議員のスタッフは最大50人にもおよぶらしいが、スタッフたちが分担してつくったものを寄せ集めただけで発表してしまったという印象を受ける。荒削りの力強さを感じるといういいかたもできなくはない。


ちなみに、投稿者がウォーレンのことを知ったのは、先月日本の民主党(当時)で講演したスティグリッツが、そのあとカナダのオタワ大学でもTPPについて同じような講演をしており、その話のなかに出てきたからだ。
Sense of the TPP (2016年4月1日 SDM MDS/YOuTube)
スティグリッツが信頼を寄せるウォーレンというのはどんな政治家だろうと思って読んだこの記事に震撼させられた。
"The Other Woman: Elizabeth Warren and the 2016 Election" by Robert Kuttner(2016年4月1日 The American Prospect)
ウォーレンの報告書の紹介を含め、TPPをめぐる米国の動向をポイントをおさえて伝えていたのは、投稿者が開いてみた範囲では、やはりこのブログだった。
マスコミに載らない海外記事
そのブログがウォーレンの報告書の発表を伝えた記事は、阿修羅掲示板にもちゃんと転載されていた。
ウォーレン上院議員、オバマのTPP誓約にぶつけて‘破られた約束’報告書を発表(マスコミに載らない海外記事)(投稿者 赤かぶ 日時 2015年5月22日)

http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/335.html

[国際13] エリザベス・ウォーレン「破られた約束」(2015年5月18日)[抄訳]:雑談板リンク
米民主党ウォーレン上院議員が2015年にTPPのファストトラックに反対したときの報告書
"Broken Promises: Decades of Failure to Enforce Labor Standards in Free Trade Agreements"

最近読もうとしたら訳がみあたらなかったので抄訳した。
ニュース性はないので、おまちがえなきよう。

エリザベス・ウォーレン「破られた約束」(2015年5月18日)[抄訳]
http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/335.html
投稿者 烏滸の者 日時 2016 年 4 月 10 日 19:22:16:
http://www.asyura2.com/16/kokusai13/msg/318.html

[雑談・Story41] 人間と社会を傷つけるヘイトスピーチ(李信恵×安田浩一「世界」2014年11月 岩波書店)
人間と社会を傷つけるヘイトスピーチ(李信恵×安田浩一「世界」2014年11月 岩波書店)

李信恵×安田浩一


リ・シネ フリーライター。1971年、大阪生まれ。在日コリアン2.5世。今年[2014年]8月、ヘイトスピーチを繰り返す「在日特権を許さない市民の会」(在特会)と同会の桜井誠会長、ネット上のブログ運営者に損害賠償を求める訴訟を起こした。
やすだ・こういち ジャーナリスト。1964年、静岡県生まれ。『ネットと愛国――在特会の「闇」を追いかけて』(講談社)でJCJ賞および第34回講談社ノンフィクション賞受賞。他の著書に、『外国人研修生殺人事件』(七つ森書館)など。


 ヘイトスピーチの本質とは何か


――いま、差別や暴力を扇動するヘイトスピーチやヘイトデモが問題になっています。安倍政権のもとで中国や韓国との関係が悪化する中、昨年はほぼ一日に一回のヘイトデモが行なわれたといいます。一方で、それに反対する市民のカウンター行動も活発化しています。ヘイトスピーチが実際にどのような被害を与えているのか、それにどう対抗していけばいいのか、この8月に提訴という選択をされた李信恵さんと、在特会(在日特権を許さない市民の会)を長く取材されてきた安田さんに語り合っていただきます。


安田 ヘイトスピーチが醜いものだとは痛感していましたが、当事者が受けている痛み、被害を肌で感じるようになったのは、李さんの言葉を聞いてからなんです。2013年2月24日、大阪で在日コリアンの人たちが多く暮らす鶴橋で在特会のヘイトデモがあり、私と李さんが取材しながらデモについていったのです。そのとき私は、在特会に名前と顔が知られている李さんが名指しで誹謗中傷されないか、そればかり心配していました。その日のデモも低劣しわまりないものでしたが、李さんへの個人攻撃はないまま終わり、私はそれでほっとしたんです。そこで私は「よかったね」と、李さんについ言ってしまった。李さんは表情を歪めて、泣いて、「死ね、ゴキブリって私はずっと言われていたやんか、あれは私に向けられた言葉やないの?」と。そう言われて初めて気がついた。それまで私は、ヘイトスピーチを「言葉の暴力」と考えていましたが、そんな生易しいものではなかった。暴力そのものだと初めて実感したのです。それに気づかせてくれた李さんに心から感謝しています。


 2011年秋に朝鮮大学で開催された55周年記念フェスタを取材しに行ったとき、それまでは名前も顔も知られていなかったんですが、取材中の様子を撮影されて、その動画をネット上で流されたことで顔が知れわたるようになりました。最初は気づかないふりをして、黙っていました。怖いですし、言い返すようなことをすれば、「暴力的な朝鮮人」とネットに書き込まれるだけだと思っていたからです。実際には黙り込むように仕向けられていたんだと、後から気が付きましたけどね。あの時も、在特会に直接声をぶつければよかったんですが、目の前にいた安田さんに思いをぶつけてしまいました。


安田 私はそれまでもヘイトスピーチを受ける被害者側の心情について、口では述べていましたが、あの鶴橋での一件があってから、ヘイトスピーチは暴力そのものであり、被害者を生み出しつづけているということを痛感しました。「死ね」「殺せ」という言葉は、まさに当事者に向けられている。それだけでなく、沿道にいる人にも聞こえてくる。当然、その中に在日コリアンもいます。被害者を量産していくものがヘイトスピーチであり、これはまさに犯罪そのものです。ある意味で肉体的な傷より深く心臓をえぐるような行為です。
 ヘイトスピーチの本質を明確に意識するようになってからは、そういう気持ちでデモに対峙するようになりました。これまでは、なぜヘイトスピーチを吐くようになるのかという取材をしてきましたが、これからは、より一歩踏み込んで、ヘイトスピーチを制止するための仕事をしないといけない時期に来ていると思います。加害者の心情よりも、現実に被害を受けている人がいることを考えなければならないということです。
 ヘイトスピーチをやめさせていくために、今回、李さんが選んだ提訴という道は、たしかに有効だと思います。ただ、これ以上の被害の拡大を防ぐためとはいえ、なぜ被害者がさらに矢面に立たなければいけないのか。提訴が勇気ある行為だという評価が多数あり、それに私ももちろん同意はしますが、私たちの社会はなぜ被害者が矢面に立たないと問題が解決できないのか。忸怩たる思いです。


 なぜ提訴に踏み切ったのか


――李さんが提訴に踏み切った経緯について教えてください。


 京都朝鮮第一初級学校の裁判を傍聴し、記事を発表していく過程で、在特会から脅迫を受けるようになりました。
 2013年の2月9日、新大久保で、「新社会運動」という団体の主催、在特会協賛で反韓デモがありました。その後の11日にツイッター上で「良い朝鮮人も悪い朝鮮人も追い出そう。んでこういうの(李信恵のこと)は殺ろう」という書き込みがあり、調べていくと、書き込んだのはある在特会のメンバーということがわかりました。この人物は200人規模のデモを主催している人物であり、影響力がある人間ですから、私は警察に連絡しました。向こうは「軽い」気持ちで書いたようですが、「殺す」と言われた側は、たまったものではありません。それと前後して、ネット上の複数のハンドルネームの人物が私に対する罵詈雑言を書き連ねるようになりました。


安田 ネット上で李さんが攻撃されるようになったのはいつごろからですか。


 チャンネル桜の番組に出演した2011年の6、7月ごろからです。


安田 そうですよね。在日コリアン代表のような形で「愛国」的なチャンネル桜に出演し、孤立無援の闘いをしていましたね。その映像を目にしたとき、私は腰を抜かすほど驚きました。なぜ、こんな不平等な議論が展開される場所に李さんを呼び出すのか。なぜ、李さんは一人でこのような場所に出ているのか。チャンネル桜への出演で李さんの顔と名前が一致してしまい、そこから李さんへの攻撃が激化したのですね。彼女が何かを書き込むたびに、「国へ帰れ」といった低俗な罵詈雑言が書き込まれる。


 もともとツイッターやブログで在日コリアンはずっと攻撃の対象でした。ネットウヨ(ネット上の右翼)は在日コリアンのミクシィのコミュニティやツイッターのリストを見つけては攻撃してきますし、ツイッターでは在日だというだけで絡まれます。私がチャンネル桜に出演したのは、保守的な若手評論家に取材を申し込んだことがきっかけでオファーが来たのです。自分もライターだから、これまで、正義感に酔って人を傷つけるような酷いこともしてしまってきたかもしれない。チャンネル桜がどういう性格の場なのかは知っていましたが、あえてそういう場所に出て、自分が晒し者になってもかまわないという気持ちでした。


安田 私も出たことがありますし、できるだけアウェーの場所にも足を向けるようにしています。でも私は日本人の男性で、李さんの場合はまったく違う。


 小さな頃からすぐに迷子になる子どもでしたから(笑)。知らない場所に行くことには躊躇しません。


 まったく動かなかった警察


――先ほど警察に相談されたとのことでしたが、対応はどのようなものでしたか。


 ネット上での私への脅迫などについては、結局、刑事事件として起訴されませんでした。「殺す」などと書いた書き込みをまとめたデータも持っていき、ネット上のさまざまな嫌がらせについても見せました。在特会会長の桜井誠が私に対して五寸釘を送りつけようという話をしていたことも言いました。しかし、ネット上の中傷は、私とのやりとりもあったので、「売り言葉に買い言葉ではないか」と。しかし、中傷してきた相手は女性器のアップ写真を送りつけてくることなどもしていましたし、いろいろと読むに耐えないこともネット上に書き込んでいたわけです。でも警察は、「画像にはモザイクがかかっている」といって問題にしてくれませんでした。相手がなかなか特定できないという問題もあったと思いますが。五寸釘についても「殺傷能力がない」とか「実際に送りつけられたわけではない」と言っていましたね。


安田 警察は脅迫と受け止めなかった?


 そうです。でも。1万4000人の会員を抱える団体を主催する人物がそう言っているわけです。会員の中にはどんな人がいるかもわからない。そう訴えましたが、結局、警察は私を名指しして「殺す」と言った事件を書類送検にした以外は、まともに取り扱いませんでした。
 書類送検になった後、相手の弁護士から示談にしたいという連絡がありましたが、私は警察に再捜査をお願いしました。示談を受ける気はなかったからです。問題は、私に「殺す」と言ってきた人間だけでなく、それをそそのかしてきた在特会の会長の桜井などでもあるからです。そこで、彼らの責任をさらに追及すべく警察に訴えたのですが、警察は再捜査するとは言ったものの、実際には何もしませんでした。ですから、警察に行っても無駄だと思うようになりました。
 そこで、裁判に必要な経費の心配もあったのですが、朝鮮学校の裁判でよい判決が出た後だったので、弁護士に相談したら提訴に理解を示してくれて。


安田 それで提訴されたわけですね。


 差別で金を稼ぐ輩を許さない


安田 李さんは、在特会会長の桜井だけではなく、インターネット上の「まとめサイト」と言われる「保守速報」の管理人もあわせて提訴しましたね。まとめサイトはきわめて悪質で、その問題を知らしめなければならないのですが、それを訴える発想は持てませんでした。なぜ訴えようと思ったのですか。


 それは、差別で金を稼いでいるからです。


安田 差別的な文言を連ねてアクセスを集めて、アフィリエイト、つまりネット広告などで金を稼いでいる。きわめて下劣な表現で在日叩きをしている2ちゃんねるなどのネット掲示板の文章を「まとめ」ているわけですが、もともと誰が書いたのかはわからない。そこで諦めてしまう人も多いわけだけど、李さんは、そういうひどい書き込みを収集して構築されているまとめサイトを提訴した。そこはとても画期的だと思います。


 ネットに差別を書き込んでいる人間だけでなく、それを扇動してきた人間を訴えなければならない、ある人にもそう言われたのです。京都朝鮮学校の裁判では、桜井は証人としてしか出てこなかった。桜井が被告として出廷しなかったことが悔しかった。扇動してきたボスがのうのうとしていることが許せませんでした。資金も精神的にも大変にはなりますが、それでもやはり桜井は訴えなければいけない。


安田 現時点ですでに「効果」は出ていますね。「保守速報」だけでなく、他のまとめサイトも抑制が見られます。しかし、先ほど言ったことの繰り返しになってしまいますが、当事者がそこまで動かなければ状況が変わらないということが、そもそも問題です。


 ネット上に無数にある差別的な書き込みや動画にいちいち対応するのは大変ですが、内容証明を送って削除を求めれば削除されることが少なくありません。


安田 動画サイトが問題だと思うのは、ヘイトスピーチをそのまま垂れ流しにしていることです。路上デモと同様の被害者を生んでいるわけで、悪質です。匿名の人間が投稿する差別的な動画によって新たな被害が生まれているという事実への想像力と危機意識が、動画サイトの運営会社などに欠如している。


 ツイッターも差別的な書き込みが多いのですが、運営会社に通報しても、返信が英文なんですよね(笑)。日本でサービスを提供しているんだから、日本語で返事をしてほしい。


 人間も社会も壊すヘイトスピーチ


――日本のヘイトデモに対して国連などでも懸念が示されていますが、近年の状況としてはいかがでしょうか。


安田 在特会の路上デモに参加する人は固定化してきていますね、デモの規模が拡大したり人数が増えているということはありません。
 ただ、私は問題は在特会ではないと思っています。在特会は一つの象徴であって、在特会が醸しだす空気が日本の社会に広まりつつあることこそが問題です。在特会の主張が路上で浸透することは、カウンターが存在する以上、ないと思います。デモをする側に身を置いてみると、沿道からカウンターから反撃されるのは恐ろしい。それで在特会のデモに参加しなくなった人も実際に知っています。カウンターは、ギリギリのところで在特会の暴走を食い止めてくれたと思います。
 とはいえ、主張そのものへの賛同者はまだ少なくありません。保守派、右翼とされる人の中にも、路上で「死ね」「殺せ」と叫ぶ在特会には賛同はできないけれども、在日の特権――そんなものがあるはずがないのですが――には反対という主張そのものは正しいと考える人間もいます。このことに、もっと危機感を持ったほうがいいと思います。実際、現在の政権は、在特会の主張に沿うような政策を打ち出してきているわけです。こういうことを許している社会の責任も考えないといけない。
 ヘイトスピーチは、人間を傷つけているだけでなく、社会を壊しているということを、私は強調したいと思います。


 チャンネル桜に出たときも、そこの人たちはみな在特会を否定していました。でも、ああいう存在を育ててきたのはあなたがたではないのか、と内心では思いましたね。私からみたら在特会もチャンネル桜も同じ。彼らは「美しい日本」を自賛して「保守」を自任し、「国を守る」と声高に主張しながら、自分の周囲にいる人間を守ることさえできていない。彼らが在日外国人やホームレス、シングルマザーといった社会的弱者に目を向けることはありません。


安田 国家を代弁することは簡単で、誰にでもできる一方、地域社会や身の回りで本当に困っている人に目を向けることはきわめて難しい。身近な問題に目を向けることなく、国家を借りてきて話をする人が増えているように思います。自分自身が日本を代表している意識を持つのであれば、社会の一員として本当に困っている人のために何をしたのかを問うてほしい。「保守」を自任するのであれば、地域社会をいかに立て直すかから始めなければならないのに、なぜか国家から語り起こす。それによって脆弱な自我をかろうじて保っているという人があまりにも多すぎます。


 すべてのマイノリティが標的とされる


 最近、安田さんが長く外国人労働者や研修生の問題を取材してきたことに、あらためて感動を覚えています。私が東京の公民館で「餃子をつくる会」を開いて安田さんをお呼びしたとき、餃子づくりがとっても上手で驚きました。外国人研修生の取材をしている中で上手になったそうですね。私は自分自身の問題で精一杯だったのですが、安田さんに出会ってからは、この社会で一緒に生活している多くの外国人に、もっと目を向けようと思うようになりました。


安田 自分の問題だけでも大変だと思うのに、李さんがさらに日本社会の中のマイノリティの問題としてとらえなおしていることに、とても共感します。カウンターにも新しい受け止めかたが生まれてきているように思います。マイノリティ間の横の連帯ができれば、それぞれの権利獲得運動などにも広がりが出てくるのではないでしょうか。大阪での「仲良くしようぜパレード」では、在日中国人の人たちが太鼓を叩いたり踊ったりしていましたね。


 私が住んでいる東大阪市での国際交流フェスティバルには、中国人も参加しています。韓国をターゲットにしたヘイトスピーチや日韓断交デモもありましたが、在特会が攻撃の矛先を中国にも向けています。彼らは巧妙にターゲットを変えて、結局、マイノリティなら誰でもターゲットにしてしまう。


安田 その通りです。在特会のように「行動する保守」と称する人がターゲットにするのは、在日コリアンだけではありません。池袋のチャイナタウン前では中国人を追い出せという街宣を行なっています。


 蕨市でのカルデロンさん一家事件もありましたね。


安田 ナチスのハーケンクロイツの旗まで持ち出してきて、「移民を追い出せ」というデモをしていましたね。すべての外国人が排斥の対象になっています。さらに、生活保護受給者や障がい者に対するバッシングもひどい。これは、社会的弱者とされてきた人や、戦後民主主義の中でぎりぎりの権利を守ろうと運動してきた存在に対するバックラッシュだと私は考えています。彼らはマスコミ批判も含め、戦後民主主義的な存在へのバックラッシュの波に乗っているのです。
 水俣病の未認定患者の問題で、患者団体の会長がテレビで発言したところ、自宅にいたずら電話がかかってくるようになったとご本人から聞きました。たいていは非通知で「まだ金が欲しいのか」「なぜ国に補償を求めるのか」という内容だったといいます。これま在特会とまったく同じ発想で、水俣病患者が優越的な権利をもっているように考えている。患者団体の会長から、世間はそう思っているのか、と尋ねられたとき、私は何も答えられなかった。これ以上はないというほど苦しめられてきた被害者が、なぜこんなことでまた苦しまないといけないのでしょうか。
 とりわけ象徴的なのは、8月6日に広島で行なわれる在特会のデモです。核兵器推進を訴える。その政治的主張を行なう自由は認めるにしても、ありもしない「被爆者特権」という言葉まで飛び出す。ほんらい当たり前の、被害者が血と涙で勝ち取った制度的補償ですら、「特権」ということにすり替えてしまう。そして現在の最大の問題は、こうした在特会的な発想を後押しするような社会的雰囲気があることです。


 傷ついた人がバトンを渡す


――警察も政府もまったくあてにならない中で、李さんの裁判闘争やカウンターの人々の努力が、暴力の路上からの拡散を防いでいるのですね。


安田 先日、ジュネーブで開かれた国連人権委員会に行ってきましたが、日本政府と外国の委員とのヘイトスピーチに対する認識の違いを痛感しました。なぜ警察が市民のカウンターに対して過剰な警備をするのか。警察はレイシストのデモを守っているようにしか見えないという意見が、各国の委員から相次いだのは、当然のことではありますが、やはり大事な指摘だったと思います。それに対して警察庁は「安全を保つためので特定の団体を守るためではない」と答弁していましたが、誰の心にも響いていなかった。だからこそ、先日出された人権委の日本政府への勧告にも、そういうことがきちんと盛り込まれたのだと思います。
 警察や行政だけでなく、メディアも一部をのぞいてはほとんど動いてきませんでした。その意味で、李さんの裁判をメディアが取り上げるのはとても大事だと思います。しかし、そのために李さんがどれだけの犠牲を払っているのか。もっとも傷ついてきた人が、さらに自分を傷つけなければ世の中が前進しないという状況は、この社会に生きる人間の一人としてあまりにも悔しく、理不尽だと思っています。


 傷ついた人は強くなります。私の一番の目標は、次の被害者を出さないこと。傷ついた人がバトンを渡すんです。私の友人が「在特会を特に許さない市民の会」を結成しましたが(笑)、若い人が気軽に頑張れるような環境をつくりたいと思っています。なんでよりによって自分が裁判なんか、と思うときもありますが、後の人のための役割を与えられたのかもしれません。怒ったり、笑ったりしながらやっていきたいですね。


――本日はありがとうございました。

(司会 本誌編集部・熊谷伸一郎)



投稿者のコメント:
世界」(第862号 2014年11月 岩波書店)より、李信恵氏と安田浩一氏のインタビュー記事。
その号では、「ヘイトスピーチを許さない社会へ」という特集が組まれている。
横書きでの投稿に伴い、投稿者が漢数字を算用数字に変更するなどした。

http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/357.html
[テスト31] テスト
県市長会の泉田県政検証に小池加茂市長が反論、泉田知事の評価し4選出馬を支持
http://www.kenoh.com/2016/06/29_koike.html
2016年6月29日 ケンオー・ドットコム


 小池清彦加茂市長は28日、記者会見を開き、4月に県市長会と県村長会の連名で「知事3期12年間に生じた問題」とした文書を泉田知事に届け、その内容を記者発表したことなどを受けて、「客観的見地から泉田知事を評価する談話」を発表し、泉田知事の4選出馬を支持した


 「知事3期12年間に生じた問題」の文書は、県市長会と県町村会は、いずみだ裕彦後援会からの推薦依頼を受けたことで、これまでの知事の対応が自治体や県民にとってどのような影響と結果をもたらしたかを検証し、まとめたもの。5月27日に知事の秘書を通じて市長会副会長の妙高市長と町村会副会長の出雲崎町長が届け、さらに同日、記者発表した。


 文書では、子ども医療費・子育て支援にかかる県の市政、震災がれきの処理、北陸新幹線における国などとの調整をはじめとする多数を問題、課題として示し、「泉田知事の受け止め方の是非はあるにしても、我々市町村は、知事の政治姿勢や役割分担を無視した政策推進などに起因したものと理解せざるを得ないと考えており、知事がこのままの政治自生を続けるならば、さらに県政が混乱し新潟県が他県から取り残され、県民の生活に大きな影響が出ると危惧している。」など、市長会長の森民夫長岡市長と村町会長の渡辺廣吉蒸籠町長の連名で書いている。


 小池市長は、午後3時から加茂市役所で開いた会見で、談話とする文書を読み上げた。冒頭は、「この談話は、森市長会長さんや森会長さんと同じ意見の市町村長さんと争うための文書ではありません。」と記し、質疑応答のなかでも何回も繰り返していた。


 続けて「このたび新潟県の森市長会長と渡辺町村会長から、実質的に泉田知事を弾劾する文書が出され、県民に甚大な影響を与えていることにかんがみ、客観的に泉田知事さんを評価してみたものであります」と、発表の経緯を話した。


 市長会長と町村会長が出された文書は、森長岡市長が取りまとめられた文書とし、「4月20日の市長会の席上で突如、森会長から原案が示されたもの。それに対して、数人の市長が知事を非難する発言を行ったが、大部分の市長は発言をしなかった。このあと、森会長は入村副会長と久住見附市長に取りまとめていただくことで意見のある方は事務局まで連絡してほしいとのことでありました」。


 市長会終了後、小池市長は森会長に「わたしはこの資料の作成には加わりません」と伝え、森会長も了承した。そもそも、市長会で推薦を検討するための資料であり、知事に対する実質的な弾劾文書として直接、知事あてに出すものと思わず、ほかの市長もそうだったと思うとし、同文書で問題とされている内容についての反論と「泉田知事の優れた点について」などを記して泉田県政を評価し、知事の4選を支持した。


 報道機関からの質問では、談話発表の意図について、「森会長さんやほかの市町村長さんたちと争うために出したものではありません」と述べてから、「あの文章を見て実質的に泉田知事を弾劾する文書になっている」と言い、読んだ人から「泉田知事はだめですね」と言われており、極めて甚大な影響を及ぼしていると分析。不公平な評価を受けることは公正ではないと思う。さらに泉田知事の地元である加茂市の市長として、「地元の知事が不公平な仕打ちを受けているようでは、地元の市長としては公平にこういうことと申し上げなければならない」。


 また、この日の談話発表のタイミングについての質問で、同日に市長有志が森市長会長のところで話し合いがもたれるということだが、それを知っていたのかとの質問に、「まったく知りません」、「わたしはほかの市町村長さんたちと争うために出したわけではありません」。


 さらに参院選前にこういう検証の文書のが[ママ]公表されることについてどう感じるかの問いには、「内容が公正なものだと思えない。知事さんを弾劾する内容になっておりまして、私の目から見れば妥当でないものが多い」。一方的に市長会長と村長会長が連名で出すと、市町村長がみんな泉田知事さんにそっぽを向いているという印象を与えかねないとして、「市町村長の総意ではない」との考えを示した。「なんでこんなに必死にこういう文章を出すのか、なんかほかに意図があられるのかないのかわからない」とも。


 小池市長から森会長が原案を出したときに、この内容は違うなどの指摘や抗議などしたのかとの質問には、「いたしておりません。森会長さんやほかの市長村長と争う気はありませんので」。ただ、最終的にどういう形になるのかという時には、全員の会議が開かれると思っていたと言い、「とくにこんなセンセーショナルな文章を出すわけですから、そういう時はなおさら開くべき。そうなればそこで言いますよ、こういう文書を出すことは適当ではないと。そういう機会はなかったです」と答えていた。


 「客観的見地から泉田知事を評価する談話」は、加茂市のホームページにPDFで掲載してある。


関連リンク


◆客観的見地から泉田知事を評価する談話〜平成28年6月28日




投稿者による関連リンク:


「泉田県政3期12年間に生じた問題」について検証を行いました
新潟県町村会/町村会よりお知らせ


県市長会・県町村会による県政運営等に対する検証等について
平成28年6月29日 泉田知事定例記者会見要旨
新潟県/知事ホーム

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/507.html

[地域13] 県市長会の泉田県政検証に小池加茂市長が反論、泉田知事の評価し4選出馬を支持 (ケンオー・ドットコム)
県市長会の泉田県政検証に小池加茂市長が反論、泉田知事の評価し4選出馬を支持
http://www.kenoh.com/2016/06/29_koike.html
2016年6月29日 ケンオー・ドットコム


 小池清彦加茂市長は28日、記者会見を開き、4月に県市長会と県村長会の連名で「知事3期12年間に生じた問題」とした文書を泉田知事に届け、その内容を記者発表したことなどを受けて、「客観的見地から泉田知事を評価する談話」を発表し、泉田知事の4選出馬を支持した


 「知事3期12年間に生じた問題」の文書は、県市長会と県町村会は、いずみだ裕彦後援会からの推薦依頼を受けたことで、これまでの知事の対応が自治体や県民にとってどのような影響と結果をもたらしたかを検証し、まとめたもの。5月27日に知事の秘書を通じて市長会副会長の妙高市長と町村会副会長の出雲崎町長が届け、さらに同日、記者発表した。


 文書では、子ども医療費・子育て支援にかかる県の市政、震災がれきの処理、北陸新幹線における国などとの調整をはじめとする多数を問題、課題として示し、「泉田知事の受け止め方の是非はあるにしても、我々市町村は、知事の政治姿勢や役割分担を無視した政策推進などに起因したものと理解せざるを得ないと考えており、知事がこのままの政治自生を続けるならば、さらに県政が混乱し新潟県が他県から取り残され、県民の生活に大きな影響が出ると危惧している。」など、市長会長の森民夫長岡市長と村町会長の渡辺廣吉蒸籠町長の連名で書いている。


 小池市長は、午後3時から加茂市役所で開いた会見で、談話とする文書を読み上げた。冒頭は、「この談話は、森市長会長さんや森会長さんと同じ意見の市町村長さんと争うための文書ではありません。」と記し、質疑応答のなかでも何回も繰り返していた。


 続けて「このたび新潟県の森市長会長と渡辺町村会長から、実質的に泉田知事を弾劾する文書が出され、県民に甚大な影響を与えていることにかんがみ、客観的に泉田知事さんを評価してみたものであります」と、発表の経緯を話した。


 市長会長と町村会長が出された文書は、森長岡市長が取りまとめられた文書とし、「4月20日の市長会の席上で突如、森会長から原案が示されたもの。それに対して、数人の市長が知事を非難する発言を行ったが、大部分の市長は発言をしなかった。このあと、森会長は入村副会長と久住見附市長に取りまとめていただくことで意見のある方は事務局まで連絡してほしいとのことでありました」。


 市長会終了後、小池市長は森会長に「わたしはこの資料の作成には加わりません」と伝え、森会長も了承した。そもそも、市長会で推薦を検討するための資料であり、知事に対する実質的な弾劾文書として直接、知事あてに出すものと思わず、ほかの市長もそうだったと思うとし、同文書で問題とされている内容についての反論と「泉田知事の優れた点について」などを記して泉田県政を評価し、知事の4選を支持した。


 報道機関からの質問では、談話発表の意図について、「森会長さんやほかの市町村長さんたちと争うために出したものではありません」と述べてから、「あの文章を見て実質的に泉田知事を弾劾する文書になっている」と言い、読んだ人から「泉田知事はだめですね」と言われており、極めて甚大な影響を及ぼしていると分析。不公平な評価を受けることは公正ではないと思う。さらに泉田知事の地元である加茂市の市長として、「地元の知事が不公平な仕打ちを受けているようでは、地元の市長としては公平にこういうことと申し上げなければならない」。


 また、この日の談話発表のタイミングについての質問で、同日に市長有志が森市長会長のところで話し合いがもたれるということだが、それを知っていたのかとの質問に、「まったく知りません」、「わたしはほかの市町村長さんたちと争うために出したわけではありません」。


 さらに参院選前にこういう検証の文書のが[ママ]公表されることについてどう感じるかの問いには、「内容が公正なものだと思えない。知事さんを弾劾する内容になっておりまして、私の目から見れば妥当でないものが多い」。一方的に市長会長と村長会長が連名で出すと、市町村長がみんな泉田知事さんにそっぽを向いているという印象を与えかねないとして、「市町村長の総意ではない」との考えを示した。「なんでこんなに必死にこういう文章を出すのか、なんかほかに意図があられるのかないのかわからない」とも。


 小池市長から森会長が原案を出したときに、この内容は違うなどの指摘や抗議などしたのかとの質問には、「いたしておりません。森会長さんやほかの市長村長と争う気はありませんので」。ただ、最終的にどういう形になるのかという時には、全員の会議が開かれると思っていたと言い、「とくにこんなセンセーショナルな文章を出すわけですから、そういう時はなおさら開くべき。そうなればそこで言いますよ、こういう文書を出すことは適当ではないと。そういう機会はなかったです」と答えていた。


 「客観的見地から泉田知事を評価する談話」は、加茂市のホームページにPDFで掲載してある。


関連リンク
客観的見地から泉田知事を評価する談話〜平成28年6月28日



投稿者による関連リンク:


「泉田県政3期12年間に生じた問題」について検証を行いました
新潟県町村会/町村会よりお知らせ


県市長会・県町村会による県政運営等に対する検証等について
平成28年6月29日 泉田知事定例記者会見要旨
新潟県/知事ホーム

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/736.html

[テスト31] テスト
客観的見地から泉田知事を評価する談話
http://www.city.kamo.niigata.jp/section/oshiraseban/shisei/kyakkantekikentikara280628.pdf
2016年6月28日 加茂市長 小池清彦


 この談話は、森市長会長さんや森会長さんと同じ意見の市町村長さんと争うための文書ではありません。


 このたび新潟県の森市長会長と渡辺町村会長から、実質的に泉田知事を弾劾する文書が出され、県民に甚大な影響を与えていることにかんがみ、客観的に泉田知事さんを評価してみたものであります。


 このたび市長会長及び町村会長から出された文書は、森長岡市長がとりまとめられた文書でありますが、去る4月20日の新潟県市長会の席上で、突如森会長から原案が示されたものであります。


 これに対して、数人の市長が立って、知事を非難する発言を行いました。しかし、大部分の市長は、発言をしませんでした。そのあと、森会長から、この資料は入村副会長(妙高市長)と久住見附市長に取りまとめていただくので、意見のある方は事務局まで連絡していただきたいとのことでありました。


 市長会終了後、私は直ちに森会長に会い、「私はこの資料の作成には加わりません。」と申し上げ、森会長も「あなたの立場はよく分かっているので、それで結構です。」といわれました。


 そもそも、この資料は、泉田知事さんから市長会に推薦依頼が来ているので、その検討のための資料だとのことであり、泉田知事に対する実質的な弾劾文書として、直接知事宛てに出すものであるとは、私も全く思わなかったのでありました。他の市長もそうだったと思います。


 もし、このような形の重要文書を知事宛てに出すのであれば、市長全員の会議を開いて最終案を示し、これを直接知事宛てに出すべきかどうかも含めて、十分に議論すべきものであります。


 しかるにこのような手続きは一切なされず、いきなり「本件の取扱いについては、事前にお知らせすべきところではありましたが、町村会との調整により、急遽5月27日に入村妙高市長(本会副会長)及び小林出雲崎町長(町村会副会長)から、県秘書課を通じて泉田知事にお届けいたしました。また、本日、記者発表(棚入れ)するとともに、自民党県連等に情報提供することとしております。」という各市長あての文書を付けて、事後に、この知事に出された文書が送られて来ました。


 泉田知事さんは、「この文書は市町村長の総意ではない。」と言っておられますが、以上の経緯から見て、知事さんの言っておられることは間違いありません。


 次に、この弾劾文書の内容でありますが、次のように多くの点で正確ではありません。


1 「国や他の関係機関との良好な関係に軋みが生じた。」という点について


(1) 泉田知事は、厚生労働省と国土交通省から副知事を連れて来ておられ、この両省庁との関係は、極めて良好です。他の国の省庁との関係も良好であります。


 また、泉田知事は、国からたくさんのお金を取って来ておられ、県会議員各位が驚かれることがあるほどであります。


(2) JRとの関係でありますが、泉田知事が努力されたのは、鉄道の経営に関する地方の分担金が多すぎるので、これを減らしてほしいということであり、もっとJRにお金を出してほしいということでありまして、知事の行動は立派であります。


2 「知事と職員との意思疎通が十分でない。」という点について


 私が県当局と一緒に仕事をして感じることは、知事と職員との意思疎通は、十分に行われております。


 むしろ、知事さんは、下にまかせ過ぎるのではないかと思われるほどであります。


 県の職員も、市町村長の意見をよく聞いてくれます。これは、日頃知事さんが、そのように指導しておられるからだと思います。


3 「知事自身の意見その他の理由により、事業等に遅れが生じている。」とする点


 公平に見て、事業等の遅れはありません。国の財政事情から、国から県に来る金は、どの県も大幅に減っております。新潟県も裕福ではありません。こうした中で、知事さんは、よくやっておられます。


4 「知事が行った指示により、市町村との関係の中でいくつかの問題が生じた。」とする点


(1) こうした点は、それほど多くはありません。こうした点があれば、関係市町村長は、私が加茂病院の産科等について行ったように、知事さんに強く申し上げて議論を続けて行くべきです。


(2) 震災がれきの新潟県内での処理について、知事さんが難色を示しておられる点は、妥当と思います。新潟県内で一たび震災がれきを処理すれば、その後次々に大量のがれきを処理せざるをえなくなります。震災がれきは、放射能を帯びたがれきです。放射線量が許容範囲の中だといっても、処理量が大量になれば、放射能は、県内の土壌に蓄積され、取り返しのつかないことになるおそれがあります。

 他県に対する自分の面子を犠牲にしても頑張っておられる知事さんは、立派だと思います。


5 泉田県政の優れた点について


(1) 防災体制

 知事さんが築き上げられた新潟県の防災体制は、極めて優れたものです。おそらく日本一でしょう。事が起きると打てば響くように対応する立派なものです。


(2) 柏崎刈羽原発について

 福島原発が被災したとき、アメリカから日本政府に緊急の連絡があり、「4号建屋を守れ。4号建屋は燃料庫なので、これがやられると、東北地方全域に、人が住めなくなる。」といって来たといわれています。幸いに4号建屋は守り抜いたわけです。

 柏崎刈羽原発にも、4号建屋があり、燃料棒がつまっています。将来もし、これがやられることがあれば、北陸地方、東北地方、関東地方一帯は、何百年にもわたって人が住めなくなるおそれがあります。


 即ち、原子力発電所などというものは、日本のような狭い国土の国につくるべきものではなく、つくるとすれば広大な国土を持つ国につくるべきものなのです。体を張って、柏崎原発の再開に慎重論をとなえておられる泉田知事さんは、立派です。


6 泉田県政の評価


 以上にかんがみれば、これまでの泉田県政に泉田知事の四選を否定するような失政は、ありません。


 泉田知事さんは、四選されてよい実績を挙げてこられたと考えます。


 各県に国から来る金が大幅に減らされて、厳しい財政状況の中ではあられますが、四選後の泉田知事さんにおかれましては、さらに一層市町村長各位の要望をよく聞かれ、精一杯かなえていただいて、県民各位お一人おひとりをさらに幸せにして行って下さるよう望むものであります。




関連リンク:


要望書・意見書・声明など
加茂市


「泉田県政3期12年間に生じた問題」について検証を行いました
新潟県町村会/町村会よりお知らせ

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/509.html

[地域13] 客観的見地から泉田知事を評価する談話(加茂市長 小池清彦)
客観的見地から泉田知事を評価する談話
http://www.city.kamo.niigata.jp/section/oshiraseban/shisei/kyakkantekikentikara280628.pdf
2016年6月28日 加茂市長 小池 清彦


 この談話は、森市長会長さんや森会長さんと同じ意見の市町村長さんと争うための文書ではありません。


 このたび新潟県の森市長会長と渡辺町村会長から、実質的に泉田知事を弾劾する文書が出され、県民に甚大な影響を与えていることにかんがみ、客観的に泉田知事さんを評価してみたものであります。


 このたび市長会長及び町村会長から出された文書は、森長岡市長がとりまとめられた文書でありますが、去る4月20日の新潟県市長会の席上で、突如森会長から原案が示されたものであります。


 これに対して、数人の市長が立って、知事を非難する発言を行いました。しかし、大部分の市長は、発言をしませんでした。そのあと、森会長から、この資料は入村副会長(妙高市長)と久住見附市長に取りまとめていただくので、意見のある方は事務局まで連絡していただきたいとのことでありました。


 市長会終了後、私は直ちに森会長に会い、「私はこの資料の作成には加わりません。」と申し上げ、森会長も「あなたの立場はよく分かっているので、それで結構です。」といわれました。


 そもそも、この資料は、泉田知事さんから市長会に推薦依頼が来ているので、その検討のための資料だとのことであり、泉田知事に対する実質的な弾劾文書として、直接知事宛てに出すものであるとは、私も全く思わなかったのでありました。他の市長もそうだったと思います。


 もし、このような形の重要文書を知事宛てに出すのであれば、市長全員の会議を開いて最終案を示し、これを直接知事宛てに出すべきかどうかも含めて、十分に議論すべきものであります。


 しかるにこのような手続きは一切なされず、いきなり「本件の取扱いについては、事前にお知らせすべきところではありましたが、町村会との調整により、急遽5月27日に入村妙高市長(本会副会長)及び小林出雲崎町長(町村会副会長)から、県秘書課を通じて泉田知事にお届けいたしました。また、本日、記者発表(棚入れ)するとともに、自民党県連等に情報提供することとしております。」という各市長あての文書を付けて、事後に、この知事に出された文書が送られて来ました。


 泉田知事さんは、「この文書は市町村長の総意ではない。」と言っておられますが、以上の経緯から見て、知事さんの言っておられることは間違いありません。


 次に、この弾劾文書の内容でありますが、次のように多くの点で正確ではありません。


1 「国や他の関係機関との良好な関係に軋みが生じた。」という点について


(1) 泉田知事は、厚生労働省と国土交通省から副知事を連れて来ておられ、この両省庁との関係は、極めて良好です。他の国の省庁との関係も良好であります。


 また、泉田知事は、国からたくさんのお金を取って来ておられ、県会議員各位が驚かれることがあるほどであります。


(2) JRとの関係でありますが、泉田知事が努力されたのは、鉄道の経営に関する地方の分担金が多すぎるので、これを減らしてほしいということであり、もっとJRにお金を出してほしいということでありまして、知事の行動は立派であります。


2 「知事と職員との意思疎通が十分でない。」という点について


 私が県当局と一緒に仕事をして感じることは、知事と職員との意思疎通は、十分に行われております。


 むしろ、知事さんは、下にまかせ過ぎるのではないかと思われるほどであります。


 県の職員も、市町村長の意見をよく聞いてくれます。これは、日頃知事さんが、そのように指導しておられるからだと思います。


3 「知事自身の意見その他の理由により、事業等に遅れが生じている。」とする点


 公平に見て、事業等の遅れはありません。国の財政事情から、国から県に来る金は、どの県も大幅に減っております。新潟県も裕福ではありません。こうした中で、知事さんは、よくやっておられます。


4 「知事が行った指示により、市町村との関係の中でいくつかの問題が生じた。」とする点


(1) こうした点は、それほど多くはありません。こうした点があれば、関係市町村長は、私が加茂病院の産科等について行ったように、知事さんに強く申し上げて議論を続けて行くべきです。


(2) 震災がれきの新潟県内での処理について、知事さんが難色を示しておられる点は、妥当と思います。新潟県内で一たび震災がれきを処理すれば、その後次々に大量のがれきを処理せざるをえなくなります。震災がれきは、放射能を帯びたがれきです。放射線量が許容範囲の中だといっても、処理量が大量になれば、放射能は、県内の土壌に蓄積され、取り返しのつかないことになるおそれがあります。

 他県に対する自分の面子を犠牲にしても頑張っておられる知事さんは、立派だと思います。


5 泉田県政の優れた点について


(1) 防災体制

 知事さんが築き上げられた新潟県の防災体制は、極めて優れたものです。おそらく日本一でしょう。事が起きると打てば響くように対応する立派なものです。


(2) 柏崎刈羽原発について

 福島原発が被災したとき、アメリカから日本政府に緊急の連絡があり、「4号建屋を守れ。4号建屋は燃料庫なので、これがやられると、東北地方全域に、人が住めなくなる。」といって来たといわれています。幸いに4号建屋は守り抜いたわけです。

 柏崎刈羽原発にも、4号建屋があり、燃料棒がつまっています。将来もし、これがやられることがあれば、北陸地方、東北地方、関東地方一帯は、何百年にもわたって人が住めなくなるおそれがあります。


 即ち、原子力発電所などというものは、日本のような狭い国土の国につくるべきものではなく、つくるとすれば広大な国土を持つ国につくるべきものなのです。体を張って、柏崎原発の再開に慎重論をとなえておられる泉田知事さんは、立派です。


6 泉田県政の評価


 以上にかんがみれば、これまでの泉田県政に泉田知事の四選を否定するような失政は、ありません。


 泉田知事さんは、四選されてよい実績を挙げてこられたと考えます。


 各県に国から来る金が大幅に減らされて、厳しい財政状況の中ではあられますが、四選後の泉田知事さんにおかれましては、さらに一層市町村長各位の要望をよく聞かれ、精一杯かなえていただいて、県民各位お一人おひとりをさらに幸せにして行って下さるよう望むものであります。




関連リンク:


要望書・意見書・声明など
加茂市


「泉田県政3期12年間に生じた問題」について検証を行いました
新潟県町村会/町村会よりお知らせ

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/737.html

[テスト31] テスト
「泉田県政3期12年間に生じた問題」の検証について(2016年5月27日)
森民夫(新潟県市長会長・長岡市長)・渡邊廣吉(新潟県町村会長・聖籠町長)


 泉田知事は、本年2月の県議会で四選への出馬を表明し、さらに、このたび市長会及び町村会に対して、泉田知事の後援会から推薦願が出されたところである。


 この推薦願の取り扱いにあたって、市長会及び町村会は、これまでの知事の対応が我々自治体や新潟県民にとって、どのような影響と結果をもたらしたのか検証を行い、「泉田県政3期12年間に生じた問題」としてまとめた。


 その中では、県と市町村との役割分担を無視した知事の指示により市町村等に混乱が生じたこと、国や他の機関に対する知事の行き過ぎた言動や対応により市町村事業等に遅れが生じたこと、知事が自分の主張する意見に固執するあまり、市町村の業務や事業等に大きな支障が生じたこと、県が主導し責任をもって取り組むとされた地域経済の発展や県民生活の向上に資する政策が進展していないことなど、数多くの問題が指摘された。
 


 これらの指摘した問題について、泉田知事の受け止め方の是非はあるにしても、我々市町村は、知事の政治姿勢や役割分担を無視した政策推進などに起因したものと理解せざるを得ないと考えており、知事がこのままの政治姿勢を続けるならば、さらに県政が混乱し新潟県が他県から取り残され、県民の生活に大きな影響が出ると危惧している。


 添付した「泉田県政3期12年間に生じた問題」は、知事がこれまでに行った指示や対応などにより問題となった姿勢を問うものであり、また、「(別添資料)泉田県政3期12年間に生じた問題に関する具体的な事実」は、問題視した事実の経緯である。
 


 市長会及び町村会は、この検証を踏まえた中で、泉田知事がどのように対応する意思があるのかを確認し、その結果を踏まえたうえで推薦願いに対する議論を深めていくこととしている。


  平成28年5月27日

新潟県市長会長 長岡市長  森  民 夫   

新潟県町村会長 聖籠町長  渡 邊 廣 吉   

  新潟県知事 泉 田 裕 彦 様




関連リンク:


「泉田県政3期12年間に生じた問題」について検証を行いました
新潟県町村会/町村会よりお知らせ
「泉田県政3期12年間に生じた問題」(PDF)
(別添資料)「泉田県政3期12年間に生じた問題に関する具体的な内容」(PDF)

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/510.html

[地域13] 「泉田県政3期12年間に生じた問題」の検証について(森民夫長岡市長・渡邊廣吉聖籠町長)
「泉田県政3期12年間に生じた問題」の検証について(2016年5月27日)
森民夫(新潟県市長会長・長岡市長)・渡邊廣吉(新潟県町村会長・聖籠町長)


 泉田知事は、本年2月の県議会で四選への出馬を表明し、さらに、このたび市長会及び町村会に対して、泉田知事の後援会から推薦願が出されたところである。


 この推薦願の取り扱いにあたって、市長会及び町村会は、これまでの知事の対応が我々自治体や新潟県民にとって、どのような影響と結果をもたらしたのか検証を行い、「泉田県政3期12年間に生じた問題」としてまとめた。


 その中では、県と市町村との役割分担を無視した知事の指示により市町村等に混乱が生じたこと、国や他の機関に対する知事の行き過ぎた言動や対応により市町村事業等に遅れが生じたこと、知事が自分の主張する意見に固執するあまり、市町村の業務や事業等に大きな支障が生じたこと、県が主導し責任をもって取り組むとされた地域経済の発展や県民生活の向上に資する政策が進展していないことなど、数多くの問題が指摘された。
 
 これらの指摘した問題について、泉田知事の受け止め方の是非はあるにしても、我々市町村は、知事の政治姿勢や役割分担を無視した政策推進などに起因したものと理解せざるを得ないと考えており、知事がこのままの政治姿勢を続けるならば、さらに県政が混乱し新潟県が他県から取り残され、県民の生活に大きな影響が出ると危惧している。


 添付した「泉田県政3期12年間に生じた問題」は、知事がこれまでに行った指示や対応などにより問題となった姿勢を問うものであり、また、「(別添資料)泉田県政3期12年間に生じた問題に関する具体的な事実」は、問題視した事実の経緯である。
 
 市長会及び町村会は、この検証を踏まえた中で、泉田知事がどのように対応する意思があるのかを確認し、その結果を踏まえたうえで推薦願いに対する議論を深めていくこととしている。


  平成28年5月27日

新潟県市長会長 長岡市長 森   民夫   

新潟県町村会長 聖籠町長 渡邊 廣吉   

  新潟県知事 泉田 裕彦 様




関連リンク:
「泉田県政3期12年間に生じた問題」について検証を行いました(2016年05月31日)
(新潟県町村会/町村会よりお知らせ)
「泉田県政3期12年間に生じた問題」(PDF)
(別添資料)「泉田県政3期12年間に生じた問題に関する具体的な内容」(PDF)

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/738.html
[政治・選挙・NHK208] 県市長会の泉田県政検証に小池加茂市長が反論、泉田知事の評価し4選出馬を支持 (ケンオー・ドットコム): 地方板リンク
県市長会の泉田県政検証に小池加茂市長が反論、泉田知事の評価し4選出馬を支持 (ケンオー・ドットコム)
http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/736.html
投稿者 烏滸の者 日時 2016 年 6 月 30 日 21:33:42

新潟県ローカルです(投稿者)
http://www.asyura2.com/16/senkyo208/msg/623.html

[お知らせ・管理21] 2016年6月 削除依頼・削除報告・投稿制限連絡場所。突然投稿できなくなった方は見てください。2重投稿削除依頼もこちら 管理人さん
94. 烏滸の者[7] iUef9YLMjtI 2016年6月30日 23:14:15 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[163]
テスト投稿の中に不適切なタグがあったため、
自分の「ペンネームごとのコメント」のフォームを壊してしまいました。
http://www.asyura2.com/acpen/iUef9YLMjtI.html

そのテスト投稿を削除していただけないでしょうか。
あるいはタグだけでも削除していただけないでしょうか。
問題を生じたタグはです。
3行目に次のようにあります:

2016年6月28日 加茂市長 小池清彦

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/508.html
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/447.html#c94

[お知らせ・管理21] 2016年6月 削除依頼・削除報告・投稿制限連絡場所。突然投稿できなくなった方は見てください。2重投稿削除依頼もこちら 管理人さん
95. 烏滸の者[8] iUef9YLMjtI 2016年6月30日 23:20:02 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[164]
>>94
タグが表示されなかったので書き直します。
スレを汚して申し訳ありません。

---------------------------------------------------------

テスト投稿の中に不適切なタグがあったため、
自分の「ペンネームごとのコメント」のフォームを壊してしまいました。
http://www.asyura2.com/acpen/iUef9YLMjtI.html

そのテスト投稿を削除していただけないでしょうか。
あるいはタグだけでも削除していただけないでしょうか。
問題を生じたタグはです。
3行目に次のようにあります:

2016年6月28日 加茂市長 小池清彦

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/508.html
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/447.html#c95

[お知らせ・管理21] 2016年6月 削除依頼・削除報告・投稿制限連絡場所。突然投稿できなくなった方は見てください。2重投稿削除依頼もこちら 管理人さん
96. 烏滸の者[9] iUef9YLMjtI 2016年6月30日 23:24:57 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[165]
>>95

タグは< / div >です。
重ね重ね申し訳ありません。
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/447.html#c96

[政治・選挙・NHK208] 泉田包囲網(D's note)
泉田包囲網
http://www.d-style.biz/weblog/15116/
2016年6月30日 D's note
 
 
[前略]


さて、世間的には参院選真っ只中。


しかし、ここ新潟ではそれとは違う何やら不穏な空気が漂っています。


この秋にも行われる県知事選に向けて泉田知事は4選出馬を表明していますが、県市長会と県村長会が事実上泉田知事を非難するような文書を発表。新聞・テレビでもそれを容認するかのような偏向報道がなされてたりします。


また、その件について加茂市長が文書は全市町の総意ではないとフォローする談話を出していて、そのあたりの流れについて詳しくは下記ニュース記事でご覧ください。


県市長会の泉田県政検証に小池加茂市長が反論、泉田知事の評価し4選出馬を支持|ケンオー・ドットコム
 
 
前から知事と一部の市長連中の仲が悪いのは新潟県民なら気付いている方も多いと思います。


にしても、この嫌がらせのような陰湿なやり方はなんでしょう。


泉田県政に対する評価は人それぞれだとしても、総合的に判断すれば現時点で泉田知事以上に知事に相応しい人物は見当たりません。泉田支持の私じゃ偏ってる意見になるのでしょうが、私から言わせれば泉田知事は現職の政治家の中では日本トップレベルの優秀さで、泉田知事を失うのは新潟にとって大きなマイナスだと思います。ホントなら国政を担ってもいいくらいの人ですよ。さすがにそこまで思わなくても、泉田知事を認める県民は多いはずです。


しかし、一部の市長たちは泉田知事が4選するのは阻止したい。どんな汚い手を使ってでも。


その一部の市長の顔ぶれを見てると何となく見えてきますね〜。あー、絆じゃなくお金のために震災ガレキ広域処理に率先して手を挙げた人たちじゃない〜?福島の教訓に学ばず止まってる柏崎刈羽原発を再稼働したい人たちじゃない〜?


まぁこれは私の推測ですけど、つまりはそういうことなんでしょうね。マスコミも含め、後ろにいるのは誰なのか、そのあたりも繋がります。
 
 
今度の参院選もきっと投票率は低いし、中身を見ずに知名度でなんとなく投票しちゃう方、多いと思います。新潟市長も長岡市長も三条市長も、なんとなくで投票した人で選ばれちゃってる感はあるし、実は泉田知事もそんな層に選ばれている面もあります。


でも、やっぱり私たち有権者はちゃんと誰がどんな考えで何をしようとしてるのか、見極めて投票しなきゃいけないと思うのですよ。


なんとなくで泉田知事を選んだ人でも、泉田知事がこれまでに何をしてきたかよく知れば、なんとなくではなく是が非でもと思うはず。泉田知事がいなかったら福島は今頃あんなレベルで済む話じゃなかったんですからね。擁護してる加茂市長もとてもマトモだとよくわかるはずです。某都知事のようにお金の問題ならまだかわいいもの、場合によっては命にかかわりますからね。


マスコミもグルになって展開されている泉田包囲網、報道そのまま鵜呑みにせずに、その裏に何が隠れているのかしっかり考えて自分たちで未来を切り開いていきましょう。


今度の参院選でも再稼働賛成議員を増やすと新潟への圧力・締め付けがもっと強くなりますよ。

http://www.asyura2.com/16/senkyo208/msg/664.html

[政治・選挙・NHK208] なぜメディアは日本会議を報道してこなかったのか(菅野完)
なぜメディアは日本会議を報道してこなかったのか
http://www.sugano.ne.jp/2016/07/01/post-187/
2016年7月1日 sugano.ne.jp
 
 
拙著『日本会議の研究』出版後のここ2ヶ月、たくさんのメディアから日本会議について取材を受けた。みなさん、「自分たちも反省すべきなんですが。。。」と前置きをして、「なぜこれまで、メディアは日本会議について取り上げてこなかったんでしょうか?」とおっしゃる。僕は常に同じことを答える。


僕の答えはこうだ。


「彼らが成功体験として誇るのは『元号法制化』です。しかし彼らのその他の運動は、すべて、『反対運動』であることをご存知でしたか?」とまず確認する。だいたいみなさんご存知ない。だから具体例を挙げる。
「日本会議は、とりわけ細川内閣誕生以来、『壮大なる反対運動団体』になってるんです。曰く、『男女共同参画反対』『慰安婦報道反対』『夫婦別姓反対』『性教育反対』と。40年近くある彼らの歴史は、ずっと反対運動の歴史なんです」と、具体例を挙げる。


で、ここで僕は、「こうして、列挙してみましたが、何かお気づきになったことありませんか?」と尋ねてみる。するとみなさん、ポカーンとされる。だからそこに補助線を引く。


「彼らが反対運動を起こすのは、男女共同参画にしても、慰安婦報道にしても、夫婦別姓にしても、性教育にしても、全部、『女子供』の話なんです」と。ここまで話しても、だいたいの人は気づかない。


だからもう一度念を押す。「男女共同参画にしても、慰安婦報道にしても、夫婦別姓にしても、性教育にしても、全部、『女子供』の話です。これ、皆さん方、メディアの人々も、そしてその需要サイドである我々社会も、最もバカにする分野の話ですよね?」と念を押す。ここまでくると反応が分かれる


「つまり皆さんと皆さんの報道の消費者である僕たち市民社会が、『女子供の話だからどうでもいい』と等閑視していた事柄ばかり、彼らがやってきたから、彼らの運動が報道されないんです。つまり日本会議と我々は両方とも加害者」という話をする。


さらに続ける。「慰安婦報道でさえそうですよね?慰安婦報道は、どちらのサイドからのものであれ、『論争報道』になっている。『日本の言い分が正しい。いや韓国が正しい』と。しかしこれ、完全に『女性の人権』って観点抜けてますよね?そういう報道ないですよね?」と。


さらに続ける「ここ10年ほど、日本会議が主要な行動フィールドとしているのは、学校現場です。性教育反対しかり、親学しかり、江戸しぐさしかり、そして日の丸君が代しかり。しかし『子供の話』として、これをどこか軽く扱ってるところありませんか?」と。
ここまで話すると、女性記者と30代以下の記者と外国メディアの記者は本当に見事なまでに、「あああ!!目からうろこが落ちた!」という顔をされる。しかし、おっさん記者は全然気づかない。だから更に重ねる。


「僕は、日本会議っていいネーミングだと思うんですよ。だってそうでしょ?彼らが言ってることは、天皇崇敬も何もかもお題目だけ。実際にやってることは、さっき振り返ったように、女子供の話ばかり。つまりは『女子供は黙ってろ』と言いたいわけ。これ、『ニッポンのオッサン』ですよね?」と。


「日本会議は小さい。しかし、彼らがレペゼンしてるのは『ニッポンのオッサンのメンタリティ』。国粋主義でも宗教でもない。あなたにもそしてこんな偉そうなことを言ってる僕の中にもあるかもしれないドロドロとしたミソジニーをレペゼンしてるんだから、強いんです」


さらに続ける。「と、考えると、彼らが今改憲議論で、『緊急事態条項』と『家族条項』にこだわる理由もわかるでしょ?緊急時には女子供はすっこんどれと。家族の言うことを聞けと。」と。
 
ここまでくるとほぼ90%の人が理解してくれる。だが、最後まで理解できないのは、左派のおっさん記者


あ。最後まで理解しないのは、左派系メディアのおっさん記者だけでなく、週刊誌メディアの人の中にもたまにいる。前者の場合は、「いや、そんなことはない、自民党は国家神道の復活を目指しており。。。」とか明後日なことを言う。後者は、最後まで「それの何が悪いの?」って顔をしている。


週刊誌メディアの人が最後まで理解できないのは、職業柄だから仕方ないと思う。だってそういうメディアなんだから。「日本会議って『ニッポンのオッサン会議』なんすよ?」って話しても「いやー困ったな。うちはそのオッサンが客なので」って話なんでね。だから不思議なのは、左派系メディアの頑迷さ


いくら口すっぱく「右派運動って考えるのやめたらだろうでしょうね?あれは、壮大なるミソジニー運動だしマチズモ運動ですよ?」と伝えても、左の人は理解してくれない。そして最後には「だとして、だから何が問題なのか?」という。「そんなことよりも、9条ガー 国家神道がー」となる


だからこっちとしても「そりゃ、9条も大切なんでしょう。国家神道も強いんでしょう。しかし今厳然として眼前で『女子供』が抑圧されている。それに抗えず、国家神道に抗えるんですか?」と尋ねる。ここまでくると向こうも意地だ。先日など「君は失敬だ!細かいことにこだわりすぎる」と言われたw


つまり、今話したようことを、資料も見せ、エビデンスを見せ、連中が書いた雑誌記事などを並べてみても、40代以上の左派系メディアの人々は、「そんなことはない!!!!戦争やりたがってるんだよ!!!!」と意固地になって聞く耳を持たない。そりゃメディアが日本会議のことを書けないはずだわね。


だからねみなさん。「国家神道」とか「戦前回帰」とかさ、そういう陰謀論みたいな話置いといてさ、「改憲勢力の首魁である日本会議はこれまでずっと『女子供は黙ってろ』運動をしてきた」って事実を見つめましょうよ。だからこその緊急事態条項であり、だからこその家族条項なんだからさ。


まあこんな偉そうなことを言ってるけども、2年前の僕ならこの理屈に気づけなかった。自分がいかにクソか、自分がいかに人を傷つけるかを直視せざるをえなくなり、自分を変えようと、持ち金全部はたいて、カウンセリングに通い、病院に通い、専門家に助けを求めたから、自分のミソジニーを理解できた


僕がミソジニーを克服できたのか、くだらないマチズモを陶冶できたのか、僕自身ではわからない。そういうものは常に他人が評価すべきものだ。だが「ニッポンのオッサン」とは少しは距離が置けたのではないかとは思う。もしあのまま行ってたら僕は、今頃日本会議のイベントで君が代歌ってるだろう。


僕の講演を聞きにくれた人ならご存知だと思いますが、僕の講演の最後2分間は、「女子供の話だとバカにした結果、女子供の話を真剣に弄る人らが改憲勢力の首魁になった。だから24条なんですよ!女子供の話だとこれ以上バカにするのをやめましょう」と絶叫して終わる。あれ、僕は自分に言ってるんです


まあこうやってね、僕は自分のことを戒めるためにも、自分で自分に懲罰を与えるためにも、「メディアがミソジニーを克服できないから日本会議をメデイアは書かないんです」って話をしま食ってます。これ、日本のオッサンの神経、逆撫でしまくりなのよね。そのうち、壮大な「仕返し」が来るでしょうなぁ
 
 
関連
「日本会議は谷口雅春先生の申し子です」 2016年4月21日
【魚拓】4月30日『日本会議の研究』愈々発売!! ? 谷口雅春先生に帰りましょう・第二 2016年4月19-20日
サヨクって本当にダメだなぁと思った件。 2016年5月5日
百地章先生について 2016年2月26日

http://www.asyura2.com/16/senkyo208/msg/712.html

[政治・選挙・NHK209] 「日本会議」会長に著者・菅野完が反撃「どこが事実誤認なのか? 公開討論を」(週刊朝日)
「日本会議」会長に著者・菅野完が反撃「どこが事実誤認なのか? 公開討論を」
http://dot.asahi.com/wa/2016070500156.html
2016年7月6日 (更新 2016/7/6 07:00) 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版


 安倍政権との“蜜月”ぶりで注目される謎の組織「日本会議」の当事者がついに沈黙を破った。田久保忠衛会長が〈日本会議への誹謗・曲解を正す〉と題した寄稿を「月刊Hanada」8月号に掲載。名指しで批判された『日本会議の研究』著者・菅野完(すがの・たもつ)氏がそれに反撃した。

「田久保氏の寄稿文を読みましたが、彼が正面から否定しているのは外電の記事を始め、私の仕事ではないものばかりで、私の著書については否定できていない。田久保氏の主張では『日本会議の研究』を日本会議の事務局が調べたら『虚実、装飾、誹謗中傷など150カ所以上』の問題箇所があったとのことですが、それは当然でしょう。当事者が読んで問題箇所がないものなんて書くはずがない。ただ、田久保氏は私の著書の主要な論点について明確に事実誤認を指摘できていない。結局、私の本が自分たちを貶(おとし)める目的で書かれたと言いたいだけの、主観的な印象論に過ぎません。そもそも田久保氏は会長と言っても“お飾り”に過ぎない。『日本会議の研究』でも指摘した通り、中心人物は事務総長の椛島有三氏です」
 
 菅野氏は著書の中で、日本会議の活動を実質的に牛耳るのは椛島氏など、生長の家の元信者を中心とした人々だと指摘した。だが、田久保氏は日本会議の組織について、〈会長、副会長、常任理事、理事と、普通の組織と同じだ。(略)特定の人物が壟断できる組織ではない〉と反論した。

「田久保氏の反論文にもある通り、日本会議は私の著書が出版された当日の深夜、版元の扶桑社に対して、椛島事務総長の名義で出版停止を求める申し入れ書を送ってきています。なぜ対外的な文書を会長名義でなく、事務総長に過ぎない椛島氏の名義で送ってくるのか。そんなに早く理事会の議決を経られたのか。『普通の組織』という主張と矛盾するのではないか。

 それでいて、メディアで反論する時には今回のように田久保氏が出てくる。私の主張に異論があるというのなら、申し入れ書の名義人である椛島氏自身が表に出てきて私と公開討論でもすればいい」
 
 菅野氏は日本会議の運動戦略として、地方議会を動かして決議などを獲得し、その力をもって国政を動かすパターンがあると指摘した。田久保氏は〈これはそのとおりだ。しかし、それの何が悪いのか?〉と事実と認めつつも憤っていた。

        ◇

「田久保氏は、政治活動をしていると自ら認めているわけですよね。しかし、こんなに大きな政治運動をしているにもかかわらず、日本会議は単なる任意団体です。財務の公表はどうなっているんでしょう。政治活動するなら、政治資金収支報告書の提出義務がある政治団体として届け出るべきなのではないでしょうか」
 
 菅野氏が日本会議をテーマに選んで取材を始めた動機は何なのか。

「どう考えても安倍晋三首相に強い影響を与えている組織だからです。2015年2月に、自民党憲法改正推進本部の船田元本部長(当時)と安倍首相が話をして、憲法改正の発議は16年夏の参院選後と言い切った。その船田氏の発言を追っていくと、まずは緊急事態条項からという話をしていて、日本会議がそれ以前から主張していたことと一緒だった。ああ、ネタ元は日本会議だったんだと。それをきっかけに、本格的に日本会議の人脈を調べ始めたんです」
 
 意外だが、菅野氏は日本会議は「特定の綱領やドグマで結びついている集団ではない」と語る。では力の源泉は何なのか。

「日本会議の特徴は権利を主張する者、彼らから見た『サヨク』的な者をハラスメント的に敵視することです。これまでの活動を見ていくと、『男女共同参画事業反対』『夫婦別姓反対』『従軍慰安婦報道反対』『ジェンダーフリー反対』、そして、『外国人参政権反対』と、反対運動がほとんどです。こうした主張はつまり、『女、子ども、外国人は黙ってろ』ということを言っているに等しい。男優位の社会が当然と思っていて、女性や若者が権利を主張すると『黙ってろ』、外国人が権利を主張すると『よそ者は出ていけ』と言う。ですが、そういう主張をしているのは、日本会議だけじゃないですよね? 日本のオッサンって、皆そうじゃないですか。日本会議は、実は“日本のオッサン会議”なんですよ。そのオッサンたちの主張のおかしさを、メディアはずっと放置して取り上げてこなかった」
 
 00年代以降、魚住昭氏ら多くのジャーナリストなどが日本会議に関する論を出すようになったが、元祖は異なるという。

「1980年代からいち早く日本会議周辺の人々は危険だぞと警鐘を鳴らし続けてきたのはフェミニストたちでした。しかしメディアはその孤独な戦いを無視した。メディアもまた、世の中と同じで男優位だったからです。だから『日本会議とは何なのか?』と聞かれたら、『お前だよ』としか言いようがない。これは日本の縮図なんですよ。だから、日本会議って本当に良いネーミングだと思います。よくぞつけたなと」

        ◇

 参院選では、改憲勢力が3分の2をうかがう勢いと報じられている。日本会議は何を目指すのだろうか。

「日本会議側が改憲の最初の候補に挙げているのが緊急事態条項の追加です。要は『非常時なんだからガタガタ言うな』というのを合法化する。『女、子どもは黙っていろ』という考え方と同じです。緊急事態法を根拠に独裁を敷いて何か実現したい政策があるのならば、賛成しないもののまだ理解できる。ところが、日本会議の主張というのは『弱い者は黙っていろ』で終わってしまう。その先がないんです。それが日本の国体だから復活させたいというのならば、そんな国体はクソくらえですよ」
 
 意外なことに、菅野氏は自身のことを「極右かつ保守主義者」だと規定する。

「私は憲法改正を否定しません。が、我々は現代に生きているわけで、少なくとも個人主義や基本的人権など近代を形作る諸価値を否定してはいけない。ところが自民党の改憲草案などを見る限り、そうした価値観を否定している。その意味では、日本会議に集う人々はどんな革新政党よりもっとラディカルな、『右の革命勢力』と言えるでしょう。自民党も保守中道の宏池会や木曜クラブ(旧田中派)のような、今で言えば岸田文雄外相や二階俊博総務会長などがしっかりしていれば良いんですが、安倍首相の出身派閥で昔から日本会議と親和性の強い清和会が天下を取ってしまっている。昔なら、清和会が天下を取るなんて信じられないこと。保守主義者として、革命勢力とは戦わなければならないと思っています」

        ◆  ◆  ◆

 本誌は日本会議広報部に田久保会長、椛島氏と菅野氏との対談を申し込んだが、回答は以下の通りだった。

〈本会が菅野氏との会談に応ずることはありません。菅野氏は、出版以前よりツイッター上で本会及び役員を攻撃する発言を繰り返しており、そのような者との会談に応ずることは今後もありません。菅野氏の言論活動は本人の自由であり、本会の関知するところではありませんが、虚偽の吹聴や事実誤認については、別途指摘してまいります〉
 
 菅野氏が指摘した、椛島氏が扶桑社に出版停止を申し入れした経緯については、次のように回答した。

〈申し入れ書送付は店頭発売日当日であり、事態が急を要したため役員間で連絡を取って文書を作成しました。なお、本会から発出する文書は、文書内容に応じ、異なる役職者名義で発する場合があります〉
 
 また、政治団体として届け出をしない理由についてはこう答えた。

〈本会は、自らを政治団体とは認識しておりません。日本会議は、国会や地方議会にさまざまな請願活動を行なっていますが、請願権や集会・結社の自由は憲法で保障された権利であり、それを行使する活動が政治団体登録を義務づけるものではありません〉(本誌・小泉耕平)

週刊朝日  2016年7月15日号

http://www.asyura2.com/16/senkyo209/msg/141.html

[地域13] 2千票差の実相―参院選新潟選挙区(新潟日報)
2千票差の実相 参院選新潟選挙区 <上>  
2016年7月12日 新潟日報[1面]  


 参院選で与党は改選過半数の61議席を上回り、全国的には経済政策「アベノミクス」の追い風が吹いた形となった。最激戦区の一つとして注目を集めていた新潟選挙区(改選数1)では、野党統一候補で無所属元職の森裕子氏(60) =民進党、共産党、社民党、生活の党推薦=が、自民党現職の中原八一氏(57)=公明党推薦=をかわし、返り咲いた。定数削減によって110万票余を与野党が奪い合った未知の激戦は、わずか2千票が明暗を分けた。党を挙げた組織戦を挑んだ自民党が、野党共闘の前によもやの敗退を喫した大接戦の実相を探った。


    自 民 党     

緩む県連、党本部激怒
    終盤猛追も一歩届かず


 「党を挙げての選挙戦だったが、地元の力で勝利を勝ち取れるような基盤づくりが今後の課題になる」
 参院選新潟選挙区で、中原氏の落選が確実となった10日深夜。人影がまばらになった陣営選対事務所(新潟市中央区)で、塚田一郎参院議員が敗戦を総括した。
 党本部が監督する「挙党選挙」は、6月13日に始まった。自民党県連との打ち合わせで来県した党本部の茂木敏充選挙対策委員長の怒声がきっかけだ。


 「新潟は何もしていないじゃないか」「他の選挙区はもっとやっているぞ」「選挙の司令塔は誰だ」
 県連選対の戦略や獲得目標票数が定まっていないなど、党本部が指定した「重点区」のお粗末な実情を知り、強い危機感を抱いた茂木氏は、塚田氏を選対副本部長に指名。以後、塚田氏を県連との窓口役とし、党本部が主導する形で運動を展開した。

◆            ◆

 「経験したことがない」。 重鎮の県連幹部が口をそろえるほど、党本部の注力はすさまじかった。「一度の来県で 5千票増える」と言われる安倍晋三首相は3度来援。菅義偉官房長官や谷垣禎一幹事長、小泉進次郎農林部会長ら幹部が続々と応援に訪れた。
 徐々に県連選対は引き締まった。県議や市町村議が後援会組織をフル回転させ、基盤となる保守層の支持固めに奔走。党本部とは別に、中原氏が所属する二階派も秘書団を多い日で6人送り込み、企業・団体の支援取り付けに動いた。
 「自分の選挙より動いた」と話す県議、市町村議もおり、「大劣勢からのスタート」(選対本部長・星野伊佐夫県連会長)だった選挙戦は最終盤になって「相手と並んだ」とみられた。党本部の世論調査でもわずかに相手を上回った。
 にもかかわらず、当選には一歩届かなかった。
◆            ◆

 新潟日報社などが10日に実施した参院選の県内出口調査では、中原氏の強みや弱みが如実に表れた。
 森氏は推薦を受けた民進党、共産党支持層の9割超、社民党支持層の8割超を固めた。一方、中原氏は自民党支持層は9割近くをまとめたが、 推薦を受けた公明党支持は7割台にとどまっていた。
 県内比例票の政党別得票総数では、自民党は約48万6千票、公明党は約9万2千票を獲得。この票数がそのまま選挙区に流れていれば、森氏を上回る57万8千票に達する計算になるが、足元の支持層を固め切れなかった。無党派の支持は約30%にとどまり、約65%の森氏に差をつけられた。
 「党本部に、おんぶに抱っこだったのかもしれない」。10日深夜、選挙戦のまとめ役を担った沢野修総務会長は敗北を受け、声を振り絞った。
 一方で党本部が実質的に戦いを仕切ることで、大物弁士ばかりに注目が集まり、候補本人へのアピールに直結しなかったという声もある。
 誤算はまだある。投票率が60%近くに上がり、無党派層に浸透した森氏が伸びた。沢野氏は「最大でも55%だと考えていた」と打ち明ける。
 森氏との票差は約2千票。選対本部長の星野氏の地元長岡市では約4千票及ばなかった。陣営幹部は振り返る。「2議席から1議席に減っても、自民党なら大丈夫という雰囲気が最後まであった。負けてようやく目が覚めたときには、遅かった」


2千票差の実相 参院選新潟選挙区 <中>  
2016年7月13日 新潟日報[1面]  

     野  党     

JA・保守層切り崩し
   緩い連携 抵抗感薄める


 10日、参院選新潟選挙区(改選数1)で全ての投票箱が閉じて3時間半後。待ちわびた森裕子氏(60)当確の報が入り、野党4党の県幹部らが集まった事務所は歓喜に包まれた。わずか2279票差。「奇跡的な勝利」(森氏)だった。
 「3年前の前回選の野党候補の票を集めれば勝てる」―。 森氏が4月下旬に野党統一候補に決まり、共産党も含む初めての共闘ができて、陣営のムードは上り調子だった。しかし、現職中原八一氏(57)を立てる自民党が6月22日の公示直前から猛烈な総力戦に出たことで雰囲気は一変、次第に危機感と焦りに包まれるようになった。
 7月初め、さらなる上積みが必要と判断した森陣営はこれまでにない動きに踏み出す。幹部がひそかに地域農協 (JA)を回り始めたのだ。
 接戦を制する鍵は保守層の切り崩しと踏んだ陣営は、狙いを「環太平洋連携協定(TPP)への反発が強い農業票」に定めた。県内JAグループの政治組織は中原氏推薦を決めていたが、森陣営幹部は「TPPに反対する」と訴えて回った。農業者への直接の呼び掛けも強めた。短期間の運動ではあったが、次第に森氏支持の意思を内々に示してくるJA幹部も現れた。
 農業票の動きを象徴するのが、中山間地のコメ農家を多く抱える上越市だ。農業関係者に太いパイプを持つ陣営幹部が中心になって、民主党政権の看板政策だった戸別所得補償制度の復活も訴えた。
 上越市が入る衆院6区は、TPP担当の内閣府副大臣を務める自民党・高鳥修一氏の地盤。ある農業法人経営者は「高鳥氏はTPPに反対していたのに、署名式にまで出席した。周りの農家はみんなが怒っていた」と漏らす。4月の市議選で勢力を伸ばした共産党なども活発に動き、共闘効果に農家票を上乗せできたことで、県内最多の約8千票差をつけた。

◆               ◆

 肝心の野党4党の支持固めは慎重を期して進めた。合同選対は設けず、党ごとに票を積み重ねる緩やかな連携に。代表者が定期的に会合を開いて運動内容などを共有する形とした。
 特に野党第1党の民進党内に、共産党との共闘に反発が強くあったためだ。民進党は合同選対がないことで「同じ組織に入ったわけではない」と、支持者に理解を呼び掛けた。
 民進党の大渕健県連幹事長は「最大公約数的な形で、ハレーションを起こすことなく最善を尽くせた」と振り返る。新潟日報社などの出口調査で森氏は民進支持層の95%を固め、無党派層などにも広く浸透した。
◆               ◆

 過去に例のない野党共闘が奏功した森陣営だが、微妙なバランスでできた枠組みが、たまたまうまく働いて結果が出たともいえる。一歩間違えば枠組みが瓦解し、批判合戦に陥りかねない恐れもあった。
 市民団体が各党の仲介役を担ったものの、当初から「船頭不在」が指摘されていた。各党の支援態勢にも温度差があり、日程などをめぐって陣営内で意見が対立することもあった。
 森氏の得票は約56万票で、前回選の野党候補の合計58万票には達しなかった。文字通り薄氷の勝利だ。
 参院の定数減により、県内の国政選挙は全てが「1人区」になった。今回の野党統一候補の選任までには多大な労力と長い時間を要しており、いつ解散があるか分からない衆院選にうまく応用できるかは不透明だ。


2千票差の実相 参院選新潟選挙区 <下>  
2016年7月14日 新潟日報[3面]  

    知 事 選    

敗北の自民 対応に影
  責任論、党内の攻防左右


 参院選新潟選挙区が投開票された10日夜、泉田裕彦知事の姿は、自民党現職・中原八一氏の選挙事務所にあった。 午後9時前、県庁からほど近い事務所に入った。「なぜ、いまさら」―。周囲はいぶかった。
 10月の知事選に4選出馬の意向を示している泉田氏。参院選が始まった6月22日には中原氏と、野党統一候補の元職・森裕子氏の出陣式や第一声にそれぞれ副知事を派遣、あいさつをさせた。ただ自身は双方の応援に入らず、7月初旬にはプラジルと米国に出張。選挙期間中の外遊は前回2013年参院選に続いてのことだ。
 それが開票日には、中原氏の選挙事務所に早々に入った。テレビの出口調査で優勢が伝えられ、泉田氏に近い県議らが招いたとされる。「少しでも早く顔を出し、知事選で力を貸してほしいという意思表示だ」。ある中堅県議は読み解いた。
 13日の記者会見で来訪の真意を間われた泉田氏は「知事選が近く、個人の思いはあるが知事としては差し控えたい」と明確にしなかった。
 泉田氏の後援会は自民党、民進党、公明党、社民党の県組織に推薦を要請している。中でも自民党は初当選から泉田氏を強力に支えてきた。
 「選挙で応援しないのに、のこのこやってきた。こそくなやり方だ」。選挙事務所に来た泉田氏を複雑な思いで見る県議もいた。結局、中原氏は落選。約2時間半を所在なさげに過ごした泉田氏は、足早に事務所を後にした。

◆               ◆

 参院選で野党に競り負けた影響は、自民党の知事選対応にも影を落とす。
 敗戦から一夜明けた11日、 星野伊佐夫県連会長は報道陣から知事選に向けた党内協議をいつするのかと間われ、断言した。「7月はしない。お盆が終わった頃からだ」。これまで「参院選後」としてきたスケジュールを失送りした。
 背景にうかがえるのは、参院選敗北の「責任論」回避だ。選対本部長として臨んだ星野氏は現有議席を失った上、地元長岡市で森氏に約3700票差をつけられた。
 自民党内には知事を推す勢力と、多選の弊害や市町村長との関係の悪さを理由に、泉田氏続投に反対する勢力のさや当てが続いている。星野氏は泉田氏に近く「後ろ盾」ともいえる存在。知事選対応の先延ばしは参院選の責任論とともに、知事交代論をかわす「時間稼ぎ」とささやかれる。
 星野氏の責任論が党本部、県連内で強まれば、県議団内の「反泉田派」が勢いを増すのは必至。党内の駆け引きは激しくなりそうだ。
◆               ◆

 森氏を立て、参院選に勝利した野党の知事選対応は当面様子見となりそうだ。
 民進党は泉田氏側から推薦を求められたが、党本部推薦は3期までとしており、距離を置く。泉田氏に対立候補をぶつけてきた共産党は、今回も擁立を模索する。泉田氏に理解を示すことの多い社民党も対応は未定だ。参院選に続く「共闘」のムードはない。
 知事選は9月29日に告示、10月16日に投開票される。森氏56万票、中原氏55万8千票。2千票差が明暗を分けた参院選を終え、今度は知事選をにらんだ攻防が本格化する。

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/740.html
[テスト31] テスト
日本の食と農業がモンサントに支配されます(安田節子)


「農業」と「食の安全」が危ない
『月刊現代』2016年5月号増刊(p.194‐205)

日本の食と農業がモンサントに支配されます 安田節子


モンサント社員が食べないGM食品


―― 安田さんは『自殺する種子』(平凡社)で、遺伝子組み換え(GM)食品の安全性と米モンサント社による食の支配に警鐘を鳴らしています。
安田 GM食品は安全性が確認されていないにもかかわらず、世界中で食べられているのが現状です。GM食品が人体にどのような影響を及ぽすかは明らかになっていません。
 GM食品が登場したのは1996年です。同年11月から、アメリカは世界中にGM大豆の輸出をはじめました。アメリカはバイオテクノロジーによる生物特許を背景に、世界の農業や食を支配するという国家戦略に基づいて、GM作物を広めています。
 その中心はモンサントという企業です。モンサントはかつてベトナム戦争において、ベトナムを汚染した枯葉剤を開発した化学メーカーだったのですが、その後農業バイオテクノロジー分野に進出してGM作物の開発を展開。さらに種子会社の買収を繰り返し、現在では世界の種子市場でシエア1位を誇る独占的企業です。
 モンサントは(パパ)ブッシュ大統領のバイオテクノロジー産業をバックアップする規制緩和、すなわち GM食品は規制しないという方針のもと、無規制同様の形だけの安全性評価を採用させました。こうして非常に杜撰な安全基準を元に、GM大豆が輸出されていったのです。
 しかし、GM食品の危険性を誰よりもよく知っているのは他ならぬモンサント社員です。驚くべきことに、 英国モンサント社の社員食堂ではGM食品不使用が掲げられているそうです。彼らは世界中に「GM食品は安全だ」と言っておきながら、自分たちは食べたくないのです[注1]
 それなのに第三者によるGM作物の安全性の研究には、実験用のGM種子の提供を拒むことはもとより数々の妨害を行っています。以下、モンサント社の圧力に 屈しなかった科学者の研究成果を紹介します[注2]
 1998年、英ローウエット研究所のアーパッド・プシュタイ博士は、GMジャガイモの商品化を計画する英国政府の要請によりマウスへGMジャガイモを与える実験を行いました。その結果は、予想外の結果で、マウスの免疫力低下、脳・肝臓・睾丸の発育不全、胃腸の構造変化と細胞増殖が確認されたのです。
 ローウェット研究所はイギリス政府とモンサント社から研究資金が入っています。推進派に不都合なこの結果が握り潰されるまえに、プシュタイ博士は急きょ、テレビ番組に生出演して実験結果を明らかにし、「自分は絶対に食べない」「国民をモルモットにしてはならない」と警鐘を鳴らしました。その2日後、彼は研究所を解雇されました。
 2005年、ロシア科学アカデミーのエルマコヴァ博士は、メスのマウスに、妊娠中も出産後もGM大豆(モンサント社製)を給餌する実験をしました。すると、仔マウスの生後3週間以内の死亡率は50%以上(通常の5〜6倍)という驚くべき結果が出ました。生き残った仔マウスには奇形・成長不全・凶暴性などが多く確認されました。さらに母マウスは妊娠する子どもの数が減り、産後の育児放棄が見られました。この研究はGM大豆を大量に食べている日本人に強く警鐘を鳴らすものです。
 2012年、仏カーン大学のセラリーニ博士を中心とする研究チームがGMトウモロコシ(モンサント社製)を与えた結果、高い発がん率や巨大な腫瘍が確認されました(次頁図[注3])。さらに平均寿命前の死亡率はオス60%(通常の2倍)、メス80%(通常の4倍)という信じられない数値だったのです。


―― そもそもGM作物とは何なのですか。
安田 商品化されたもので最も多いのが、モンサントの除草剤「ラウンドアップ」に耐性がある「ラウンドアップレディ」(大豆、トウモロコシ、菜種、綿など)という作物です。ラウンドアップは強力な除草剤で、雑草だけではなく作物まで枯れてしまうので、作物が生産されている時は使用できませんでした。しかしラウンドアップを浴びても枯れないように遺伝子操作を施されたラウンドアップレディならば育てられます。モンサントは「これなら除草の手間が省けますよ」という触れ込みで、ラウンドアップとラウンドアップレディをセットで販売しています。
 しかしラウンドアップは健康被害・環境破壊の危険性が指摘されています。GM作物の野外試験栽培が広い面積で行われているハワイ州では、大量の除草剤・殺虫剤を空中散布する農場の周囲で健康被害が多発しています。症状は白血病・皮膚障害・先天異常などです。農薬散布が始まると子どもたちが鼻血を出したり頭痛や目の痛みを訴えたりするので、小学校が休校になることも珍しくはありません。
 世界第3位のGM作物栽培国アルゼンチンでは、ラウンドアップの空中散布によって白血病・皮膚潰瘍・遺伝障害が多発し、住民に避難勧告が出されています。またラウンドアップ散布が盛んなサンタフェ州を調査したところ、同州では全国平均に比べ10倍の肝臓がん、3倍の胃がん・精巣がんの発生率が確認されました。2003年にはデンマークの研究所が、ラウンドアップは地下水汚染を引き起こすと発表しました。
 GM作物にはGM作物を食べることの危険性だけではなく、GM作物を作ることの危険性もあるのです。


種を支配するモンサント


―― モンサントはGM作物を通じて、どのようなビジネスをしているのですか。
安田 モンサントは種子を支配することで、莫大な利益を上げています。モンサントはGM作物の種子に特許権を持っています。種子を使用するためにはモンサントに特許料を支払う必要があり、無断で使用すれば罰せられます。種取りが特許権侵害という犯罪になってしまうのです。
 また特許権のついたGM種子は種子価格に特許料を上乗せしていますが、それに加えて特許種子から得た収穫物の売上に対して特許実施料(ライセンス料)も取り立てているのです。ブラジルでは500万軒もの農家が特許料の二重取りとして料金の返還を求めてモンサントを提訴しています。
 さらにモンサントらは農家に毎年種子を買わせるために、種取りを無意味にしてしまう「種子を自殺させる」技術を開発しました。作物に実った2代目の種子に毒を発生させ、自殺させる技術はターミネーター技術と呼ばれています。種子にターミネーター技術をプログラミングしてしまえば、農家の種取りは物理的に不可能になります。この悪魔の技術開発をしたことで、 モンサントは自らの正体が利益のためなら何でもする反社会的強欲企業であると世界に晒したのです。
 当然、世界中から強い反対の声が沸き起こり、モンサントらは「ターミネーター技術は応用化しない」と宣言しました。しかし、その後「食用では応用化しない」と言い変え、GM綿花での応用化を申請し、米農務省はGM綿花でのターミネーター技術の利用を認可しています。


―― モンサントは主に特許権でGM種子を管理している。
安田 それが損害賠償ビジネスに繋がります。モンサントは特許があるGM作物が無断で栽培されているとして農家に損害賠償を求める訴訟を起こすのです。
 その代表例がカナダの農家シュマイザー氏のケースです。1998年、モンサントは「あなたの農場にわが社の特許作物が生えているのを確認した。特許侵害の賠償金を支払わなければ提訴する」と通告しました。 シュマイザー氏は「身に覚えがない」と言って裁判を受けて立ちましたが、最高裁まで戦って敗訴しました。この判例は、特許作物の種子が輸送中のこぼれ種によるものであろうと、鳥や虫、風に運ばれて自生したとしても、特許作物が生えていたら特許侵害にあたるという恐るべきものです[注4]
 米食品安全センターの2007年の調査によれば、モンサントは特許侵害の和解で1億7000万〜1億8600万ドルを集めています。最高額はノースカロライナ州の農家から305万ドル。モンサントは損害賠償ビジネスを強化するために、年間1000万ドル・人員75名の訴訟部門を設置しています。
 さらにモンサントポリスと呼ばれる人員が、農家が特許を侵害していないかを監視しています。モンサントは探偵を雇うだけではなく、農家間の密告も奨励しています。その結果、地域共同体の人間関係がボロボロにされています。
 モンサントの種子を独占するビジネス手法は、もはやビジネスの域を超えています。これは農家を支配し、世界の食料を支配しようとしていると非難されても仕方ありません。


―― GM作物を栽培している農家は豊かになっているのですか。
安田 そうとは言えません。たとえばインドにはモンサント傘下のマヒコ社という種子企業があります。インドの農民は「害虫に強く、収穫量が増える」という触れ込みでマヒコ社のGM綿花を一斉に導入しました。 貧しいインドの綿花農民は借金をして高い特許料のかかったGM綿花の種子や肥料、農薬を購入しましたが、 結果は不作や値下がりに見舞われ、想定の利益が得られないことがしばしば起きました。
 その結果、インドでは負債は一代限りという法律があることもあり、多くの農民が自殺したのです。インド国家犯罪記録局の調査では、自殺した農家は 2002年から10年間で17万人に上っています。中にはラウンドアップを飲んで自殺するケースも少なくありません。


日本人はGM食品を避けられなくなる


―― TPPでGM食品はどうなるのですか。
安田 まずGM作物・GM食品によって食の安全・安心は崩壊するでしょう。現在、日本では大豆、トウモロコシ、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、 てん菜、パパイヤの8種類でGM品種が認可されていますが、一応GMの表示義務があります。
 日本政府は、「GM食品表示を含め、食品の表示要件に関する日本の制度の変更が必要となる規定は設けられていない」と説明しています。しかし企業が政府を訴えることができるISDS条項によって、非GM食品の表示が訴訟の対象になる可能性があります。モンサントらが、「『遺伝子組み換え不使用』という表示は、 GM食品は良くないというイメージを消費者に植え付けている。不当な差別的貿易障壁だ」という理屈で日本政府を訴え、賠償金をとった上で表示規制を撤廃させる恐れがあります。
 また、TPPには「TBT(貿易の技術的障害)」という条項があります。ァメリカではGMの表示は不要ですから、日本の表示義務は「技術的障害」として撤廃を迫られる可能性があります。
 TPPが発効すれば、GMの表示規制は緩和・撤廃されるでしょう。消費者はどの食品がGMなのか判断できず、日本人はGM作物を避けることができなくなります。


―― 政府はTPP大筋合意の一部を「概要」として発表しました[注5]
安田 市民グループが訳してくれた協定書を読みますと、多くの問題があります[注6]。たとえば、違法混入があってもGM作物貿易の中断を回避し、新規承認を促進するとされています。
 さらにGM作物に関する安全審査やGM表示の審議会にモンサントなど開発企業を参加させることになっているのです。安全規制や表示規制は骨抜きにされ、GM食品の流通が一気に拡大することは目に見えています。GM作物の輸出国であるアメリカの手前勝手なルールであり、GM食品の輸出拡大を狙うものです。
 しかし、何か問題があったとしても、国民は真実を知らされません。現在でもGM食品に関する審議会は「企業特許の秘密を守るため」という口実で非公開になっています。私たちは日本食品衛生協会で認可後に閲覧できる申請資料を見て、初めて詳細を知ることができるのですが、閲覧のみで複写も撮影も禁じられています。しかも資料には黒塗りの個所もあります。TPPが発効すれば、「知的所有権強化」を盾に閲覧資料は真っ黒になるのではないかと危倶します。
 「概要」は、利害関係者に審議会への参加を認めるのは、企業に対して「透明性」を確保するためだと謳っています。ですが、本当の利害関係者である国民に対する「透明性」は一顧だにされていません。審議会は企業には透明性があっても、国民にはブラックボックスです。この一事を以てしても、TPPの正体が企業の利益のために国民を犠牲にするものだということは明らかです。


―― その上で、どのようなGM食品が入ってくるのですか。
安田 いまモンサントは日本の関税撤廃・規制撤廃を視野に入れて、アメリカ国内でGM小麦やGM米の商業栽培を狙っていると思われます。すでにGM小麦は商品化が申請されています。ただ、日本の小麦バイヤーは、アメリカでGM小麦の生産が始まれば、混入は避けられないので、GM・非GMを問わずアメリカの小麦は買わないという意思を示したため、アメリカの小麦生産者はGM小麦に反対し、アメリカ政府は認可していませんでした。しかし、日本でGM規制が緩和されれば、アメリカでGM小麦やGM米の生産が始まり、日本に輸出されることになるでしょう。
 モンサントは穀類だけではなく、GM野菜にも着手しています。また、モンサントではありませんが、GM果物の開発も加速しています。切っても茶色にならないリンゴやビタミンAを強化したバナナ、病気になりにくいオレンジなどです。
さらにGM動物まで開発されています。米アクアバウンティ・テクノロジーズ社は、なんとGMサケを開発したのです。これは成長ホルモンが出続けるように遺伝子操作したサケで、普通のサケの2倍の速度で成長します。出荷サイズになる飼育期間が半分で済むわけですが、出荷しないでいれば25倍の大きさにまで成長するそうです。
 ただ成長ホルモンが常時分泌し、細胞分裂が盛んなためがんのリスクに繋がるのではないかと指摘されています。GMサケはカナダとパナマの陸上に設置したコンクリートのプールで養殖されていますが、環境学者たちは、「万が一海に放流された場合、天然のサケが絶滅してしまうのではないか」と強く危慎しています。
 GMサケは2015年11月、米食品医薬品局(FDA) によって表示なしで食品として販売することが認められたのですが、同年12月、連邦議会上院はGMサケの表示を義務化し、表示制度がスタートするまで販売はしてはならないと決定しました。アメリカからの輸出は当面なさそうですが、カナダやパナマなどの他国を迂回して日本へ輸出される可能性は否定できません。


―― GM食品以外にも問題はあります。
安田 日本政府はTPP交渉と並行して、日米二国間協議を義務付けられ、こちらは合意済みです。その交換文書の「衛生植物検疫(SPS)」という項目には、「収穫前及び収穫後に使用される防カビ剤、食品添加物、ゼラチン、コラーゲンで合意した」と書かれています。
 つまり、「日本は国内で禁止している収穫後農薬(ポストハーベスト)を認めます。アメリカ並みに食品添加物を増やします。狂牛病の危険性がある牛由来のゼラチン、コラーゲンを認めます」ということです。安全性に疑問の残る食品がアメリカから日本へ雪崩れ込むことになると思います。


日本農業はモンサントに乗っ取られる


―― TPPで食の安心・安全は壊滅してしまいます。
安田 TPPは食の安全・安心だけではなく、日本の食料の安全保障そのものを崩壊させます。いま最も警戒すべきは、日本国内でのGM作物の生産開始です。今でも日本で流通を認められたGM作物は法的には生産できます。これまでも十勝など数か所で農家によるGM大豆の生産が試みられましたが、周辺農家や市民、県の農政課などの抵抗によって、何とかそれを阻止してきました。
 しかし現在、安倍政権の下で規制改革会議が企業の農地所有の規制緩和を進めています。国の後押しを背景に、企業が本気でGM作物の生産に乗り出せば、それを阻止することは困難になります。
 すでに国家戦略特区の「農業特区」に指定された兵庫県養父市では、外資系企業の農地所有まで認めています。モンサントが日本国内でGM作物を生産する日は、すぐそこまで来ているのです。GMの心配がないなど安全性が売りである「国産」のブランドも失われます。
 日本の農家は窮地に立たされます。関税撤廃で安く入ってくる輸人農産物だけではなく、国内の企業農業との競争に晒され、モンサントによる特許侵害の訴訟リスクも抱えます。たとえGM作物に乗り換えても、毎年種を買わされ、その度に特許料と特許実施料を払わされます。日本農家は破産するリスクが高い。
 そうなれば、モンサントを始めとする企業が廃業した農家の耕作放棄地を所有して、GM作物の栽培を加速させかねません。日本はハワイ同様、農地の回りに住居、学校、病院などが隣接しているため、近隣住民はラウンドアップなど農薬の多量の空中散布によって健康被害を受けることになります。空気、土や水、生物への環境汚染も進みます。こういう悪循環に陥る危険性は非常に高いと思います。
 日本企業も無事では済みません。モンサントが種子産業に乗り出したときは、1995〜2000年までのわずか5年間で、世界の50社以上の種子会社を買収しました。TPPによって外資によるM&Aの規制が緩和されれば、サカタやトキタなど馴染みのある日本の種企業が丸ごと呑みこまれてしまう危険性があります。
 TPPに参加すれば、日本は遅かれ早かれ、モンサントの種子支配体制に組み込まれるでしょう。ただでさえ日本は世界一の食料輸入国であり、アメリカは世界一の食料輸出国です。そしてアメリカは食料を戦略物資と見なし、「食料はアメリカにとって最終兵器である」(1974年、CIAレポート)と考えています。さらにモンサント社は日本の農業の種子を管理下に置こうとするでしょう。USTR(米通商代表部)のTPP農業主席交渉官には、元モンサントのロビイストが就任しているのです。
 日本政府は日本国内の食料を管理する権限、つまり「食料主権」をアメリカ政府・モンサントに差し出すことになります。


日本だけがGM食品を推進している


―― モンサントは恐ろしい企業です。
安田 実際、モンサントは「モン・サタン」と揶揄され、世界中から批判されています。2011年には、健康情報サイト「ナチュラル・ソサイエティー」から「人間の健康および環境の両方に脅威を与えている」として、「ワースト1企業」の熔印を押されています。2013年におこなわれた「反モンサント行進」には、世界中で200万人以上が参加しました。
 反モンサントの動きは民間に留まりません。EUは2014年にGM作物の栽培に関する判断を加盟各国に委ね、28か国中19か国が非GMを選択しました。ロシアもGM作物の栽培を禁止しています。また中国はアメリカ産トウモロコシの一部にGMトウモロコシが混入していたとして輸入拒否に踏み切り、アメリカにとって30億ドルの損害となりました。毎年230万トンの大豆を輸入している台湾政府はこのたび、学校給食全てにGM作物の使用を禁止しました。
 当のアメリカでさえ、GM食品に反対する機運が高まっています。アメリカ環境医学会は2010年に、GM食品のモラトリアムと安全性試験の実施、GM食品の表示義務化を求めるとともに、妊婦や幼児にGM食品を食べないように指導する必要があると指摘しています。また2013年にはハワイ州、バーモント州、メーン州など13州がGM食品の表示を義務づける州法を成立させています。
 世界的にGM作物に対する国家の規制が強まっているにもかかわらず、日本だけは世界の潮流に逆行する形で、モンサントの意向に沿ったアメリカの要求を唯々諾々と受け入れているのです。私たちはTPPに反対し、アメリカに「NO!」と言える政権を一日も早く作らなければなりません。


―― GMはTPPだけではなく世界全体の問題です。
安田 その通りです。そもそもGM作物を中心とする農業そのものが限界になりつつあります。現在、ラウンドアップでも枯れない雑草が何十種類も生まれています。同じ薬剤を撤き続けるうち、雑草が耐性を獲得してしまうのです。そこでモンサントらはラウンドアップより強力な除草剤、それこそベトナム戦争で使われた発がん性の高い枯葉剤の使用を進めています。すでにこれらを浴びても枯れないGM大豆は日本で認可されています。
 強力な枯葉剤はしばらくは効きますが、やがて枯葉剤でも枯れない雑草が出てくるでしょう。こうして自然とのいたちごつこを繰り返している間に健康被害・環境汚染が進み、人間が住めなくなってしまう土地が増えるだけではないでしょうか。
 彼らには自然への畏れがありません。そもそも生命に特許を認めるという発想自体がおかしいのです。
 生命や遺伝子は神の領域です。科学者はヒトの遺伝子の配列を明らかにしましたが、何のためにあるのか分からない遺伝子が沢山ありました。その後、それら無用の長物だと思われていた遺伝子は、実は眠っているだけで、複雑な相互のネットワークのなかで必要な時に目を覚まして働くということがわかってきました。このことからも、モンサントらの「有用な遺伝子」を見つけて利用するという発想が、いかに薄っぺらな科学であるかが分かると思います。
 確かに生命の神秘を解き明かすために、人類は研究を続けるべきだという考えもあると思います。しかし現時点では人間に分からないことが多すぎます。そうである以上、GM食品を応用化し、生産したり、食べたりすることはあまりに時期尚早ですから、厳重に規制すべきです。
 遺伝子組み換え技術は原子力と同じように取り返しのつかない問題を引き起こします。人によって改変された遺伝子はその生物の次世代に伝わります。これから生まれてくる生命は永遠に穢されてしまうのです。 自然界を狂わせ、地球の生態系を歪めてしまうのです。だからこそ世界中の人々が反対しているのです。大自然や生物の命に神聖な存在を感じ、これを畏れ尊んで共に生きてきた私たちの祖先たち。その感性を呼び覚まし、生命をモノのように私物化することは間違っていると反対の声を上げるべきです。


安田節子(やすだ・せつこ)
食政策センター「ビジョン21」代表。著書に『自殺する種子』(平凡社)など。
2016年3月25日取材



投稿者注


注1 「英国モンサント社の社員食堂ではGM食品不使用が掲げられているそうです」「彼らは世界中に「GM食品は安全だ」と言っておきながら、自分たちは食べたくないのです」

これは1999年に報じられた件を指すか。
GM food banned in Monsanto canteen (1999/12/22 INDEPENDENT)
モンサント社は、社員食堂にGM食品不使用が掲げられていた事実を認めながらも、解釈については誤りだとしている。
Myth: Monsanto Only Serves Non-GMO and Organic Foods in Its Cafeterias

注2 「モンサント社の圧力に 屈しなかった科学者の研究成果を紹介します」
ここで紹介されているプシュタイ、エルマコヴァおよびセラリーニの研究チームによる研究については、実験方法やデータ解釈をめぐって、専門家からの批判が殺到したらしい。しかし、ある農学者による2007年の草稿によれば、それに代って長期飼養試験や疫学的調査をしようとする動きはほとんど見られなかったという。その後の研究動向についてはわからないが、現在ではノーベル賞を受賞した科学者たち(現時点で110名)が遺伝子組換え作物および食品の安全性に太鼓判を押す公開書簡を発表するにいたっている。安全性の根拠としては、世界中の研究・規制機関が繰り返し確認して何も問題がなかったから大丈夫だとしている。
Scientific and regulatory agencies around the world have repeatedly and consistently found crops and foods improved through biotechnology to be as safe as, if not safer than those derived from any other method of production. There has never been a single confirmed case of a negative health outcome for humans or animals from their consumption. Their environmental impacts have been shown repeatedly to be less damaging to the environment, and a boon to global biodiversity.
Laureates Letter Supporting Precision Agriculture (GMOs)

注3 「次頁図」
ここには、論文中の画像(Figure 5)のうち、A、B、C(3体のラットの写真)が付されている。
Republished study: long-term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerantgenetically modified maize (Published: 24 June 2014)/Figure 5
なお、このセラリーニらの研究については、たとえば次のように酷評されている。
よみがえったセラリーニの「組換えトウモロコシでラットに発がん性」論文をどう読むか(2014/7/9 白井洋一)

注4 「この判例は、特許作物の種子が輸送中のこぼれ種によるものであろうと、鳥や虫、風に運ばれて自生したとしても、特許作物が生えていたら特許侵害にあたるという恐るべきものです」
これについてもモンサント社は反論している。シュマイザー氏は、自分のナタネ畑に混入していたGMナタネをラウンドアップ除草剤を使用した際に分別して収穫したことで、意図的に特許侵害をしている。また同氏のナタネ畑に育っていたGMナタネが自然に混入したものとは考えられない。意図的でないGM作物の混入について、モンサント社が農家を訴えることはしないと。
パーシー・シュマイザー氏について(Percy Schmeiser)
Percy Schmeiser
Myth: Monsanto Sues Farmers When GMOs or GM Seed is Accidentally in Their Fields

注5 「政府はTPP大筋合意の一部を「概要」として発表しました」
この「概要」をはじめとする関連文書が首相官邸サイトで公開されている。
TPP(環太平洋パートナーシップ)協定

注6 「市民グループが訳してくれた協定書を読みますと、多くの問題があります」
どの市民グループを指すのかはっきりしないが、たとえば山田正彦、内田聖子らによる「TPP協定分析レポート」を参照。
TPP協定の全体像と問題点―市民団体による分析報告―Ver.4(2016/4/3)



http://www.asyura2.com/14/test31/msg/528.html

[国際14] 日本の食と農業がモンサントに支配されます(安田節子)
「農業」と「食の安全」が危ない 
『月刊現代』2016年5月号増刊(p.194‐205)

日本の食と農業がモンサントに支配されます 安田節子


モンサント社員が食べないGM食品


―― 安田さんは『自殺する種子』(平凡社)で、遺伝子組み換え(GM)食品の安全性と米モンサント社による食の支配に警鐘を鳴らしています。
安田 GM食品は安全性が確認されていないにもかかわらず、世界中で食べられているのが現状です。GM食品が人体にどのような影響を及ぽすかは明らかになっていません。
 GM食品が登場したのは1996年です。同年11月から、アメリカは世界中にGM大豆の輸出をはじめました。アメリカはバイオテクノロジーによる生物特許を背景に、世界の農業や食を支配するという国家戦略に基づいて、GM作物を広めています。
 その中心はモンサントという企業です。モンサントはかつてベトナム戦争において、ベトナムを汚染した枯葉剤を開発した化学メーカーだったのですが、その後農業バイオテクノロジー分野に進出してGM作物の開発を展開。さらに種子会社の買収を繰り返し、現在では世界の種子市場でシエア1位を誇る独占的企業です。
 モンサントは(パパ)ブッシュ大統領のバイオテクノロジー産業をバックアップする規制緩和、すなわち GM食品は規制しないという方針のもと、無規制同様の形だけの安全性評価を採用させました。こうして非常に杜撰な安全基準を元に、GM大豆が輸出されていったのです。
 しかし、GM食品の危険性を誰よりもよく知っているのは他ならぬモンサント社員です。驚くべきことに、 英国モンサント社の社員食堂ではGM食品不使用が掲げられているそうです[注1]。彼らは世界中に「GM食品は安全だ」と言っておきながら、自分たちは食べたくないのです。
 それなのに第三者によるGM作物の安全性の研究には、実験用のGM種子の提供を拒むことはもとより数々の妨害を行っています。以下、モンサント社の圧力に 屈しなかった科学者の研究成果を紹介します[注2]
 1998年、英ローウエット研究所のアーパッド・プシュタイ博士は、GMジャガイモの商品化を計画する英国政府の要請によりマウスへGMジャガイモを与える実験を行いました。その結果は、予想外の結果で、マウスの免疫力低下、脳・肝臓・睾丸の発育不全、胃腸の構造変化と細胞増殖が確認されたのです。
 ローウェット研究所はイギリス政府とモンサント社から研究資金が入っています。推進派に不都合なこの結果が握り潰されるまえに、プシュタイ博士は急きょ、テレビ番組に生出演して実験結果を明らかにし、「自分は絶対に食べない」「国民をモルモットにしてはならない」と警鐘を鳴らしました。その2日後、彼は研究所を解雇されました。
 2005年、ロシア科学アカデミーのエルマコヴァ博士は、メスのマウスに、妊娠中も出産後もGM大豆(モンサント社製)を給餌する実験をしました。すると、仔マウスの生後3週間以内の死亡率は50%以上(通常の5〜6倍)という驚くべき結果が出ました。生き残った仔マウスには奇形・成長不全・凶暴性などが多く確認されました。さらに母マウスは妊娠する子どもの数が減り、産後の育児放棄が見られました。この研究はGM大豆を大量に食べている日本人に強く警鐘を鳴らすものです。
 2012年、仏カーン大学のセラリーニ博士を中心とする研究チームがGMトウモロコシ(モンサント社製)を与えた結果、高い発がん率や巨大な腫瘍が確認されました(次頁図[注3])。さらに平均寿命前の死亡率はオス60%(通常の2倍)、メス80%(通常の4倍)という信じられない数値だったのです。


―― そもそもGM作物とは何なのですか。
安田 商品化されたもので最も多いのが、モンサントの除草剤「ラウンドアップ」に耐性がある「ラウンドアップレディ」(大豆、トウモロコシ、菜種、綿など)という作物です。ラウンドアップは強力な除草剤で、雑草だけではなく作物まで枯れてしまうので、作物が生産されている時は使用できませんでした。しかしラウンドアップを浴びても枯れないように遺伝子操作を施されたラウンドアップレディならば育てられます。モンサントは「これなら除草の手間が省けますよ」という触れ込みで、ラウンドアップとラウンドアップレディをセットで販売しています。
 しかしラウンドアップは健康被害・環境破壊の危険性が指摘されています。GM作物の野外試験栽培が広い面積で行われているハワイ州では、大量の除草剤・殺虫剤を空中散布する農場の周囲で健康被害が多発しています。症状は白血病・皮膚障害・先天異常などです。農薬散布が始まると子どもたちが鼻血を出したり頭痛や目の痛みを訴えたりするので、小学校が休校になることも珍しくはありません。
 世界第3位のGM作物栽培国アルゼンチンでは、ラウンドアップの空中散布によって白血病・皮膚潰瘍・遺伝障害が多発し、住民に避難勧告が出されています。またラウンドアップ散布が盛んなサンタフェ州を調査したところ、同州では全国平均に比べ10倍の肝臓がん、3倍の胃がん・精巣がんの発生率が確認されました。2003年にはデンマークの研究所が、ラウンドアップは地下水汚染を引き起こすと発表しました。
 GM作物にはGM作物を食べることの危険性だけではなく、GM作物を作ることの危険性もあるのです。


種を支配するモンサント


―― モンサントはGM作物を通じて、どのようなビジネスをしているのですか。
安田 モンサントは種子を支配することで、莫大な利益を上げています。モンサントはGM作物の種子に特許権を持っています。種子を使用するためにはモンサントに特許料を支払う必要があり、無断で使用すれば罰せられます。種取りが特許権侵害という犯罪になってしまうのです。
 また特許権のついたGM種子は種子価格に特許料を上乗せしていますが、それに加えて特許種子から得た収穫物の売上に対して特許実施料(ライセンス料)も取り立てているのです。ブラジルでは500万軒もの農家が特許料の二重取りとして料金の返還を求めてモンサントを提訴しています。
 さらにモンサントらは農家に毎年種子を買わせるために、種取りを無意味にしてしまう「種子を自殺させる」技術を開発しました。作物に実った2代目の種子に毒を発生させ、自殺させる技術はターミネーター技術と呼ばれています。種子にターミネーター技術をプログラミングしてしまえば、農家の種取りは物理的に不可能になります。この悪魔の技術開発をしたことで、 モンサントは自らの正体が利益のためなら何でもする反社会的強欲企業であると世界に晒したのです。
 当然、世界中から強い反対の声が沸き起こり、モンサントらは「ターミネーター技術は応用化しない」と宣言しました。しかし、その後「食用では応用化しない」と言い変え、GM綿花での応用化を申請し、米農務省はGM綿花でのターミネーター技術の利用を認可しています。


―― モンサントは主に特許権でGM種子を管理している。
安田 それが損害賠償ビジネスに繋がります。モンサントは特許があるGM作物が無断で栽培されているとして農家に損害賠償を求める訴訟を起こすのです。
 その代表例がカナダの農家シュマイザー氏のケースです。1998年、モンサントは「あなたの農場にわが社の特許作物が生えているのを確認した。特許侵害の賠償金を支払わなければ提訴する」と通告しました。 シュマイザー氏は「身に覚えがない」と言って裁判を受けて立ちましたが、最高裁まで戦って敗訴しました。この判例は、特許作物の種子が輸送中のこぼれ種によるものであろうと、鳥や虫、風に運ばれて自生したとしても、特許作物が生えていたら特許侵害にあたるという恐るべきものです[注4]
 米食品安全センターの2007年の調査によれば、モンサントは特許侵害の和解で1億7000万〜1億8600万ドルを集めています。最高額はノースカロライナ州の農家から305万ドル。モンサントは損害賠償ビジネスを強化するために、年間1000万ドル・人員75名の訴訟部門を設置しています。
 さらにモンサントポリスと呼ばれる人員が、農家が特許を侵害していないかを監視しています。モンサントは探偵を雇うだけではなく、農家間の密告も奨励しています。その結果、地域共同体の人間関係がボロボロにされています。
 モンサントの種子を独占するビジネス手法は、もはやビジネスの域を超えています。これは農家を支配し、世界の食料を支配しようとしていると非難されても仕方ありません。


―― GM作物を栽培している農家は豊かになっているのですか。
安田 そうとは言えません。たとえばインドにはモンサント傘下のマヒコ社という種子企業があります。インドの農民は「害虫に強く、収穫量が増える」という触れ込みでマヒコ社のGM綿花を一斉に導入しました。 貧しいインドの綿花農民は借金をして高い特許料のかかったGM綿花の種子や肥料、農薬を購入しましたが、 結果は不作や値下がりに見舞われ、想定の利益が得られないことがしばしば起きました。
 その結果、インドでは負債は一代限りという法律があることもあり、多くの農民が自殺したのです。インド国家犯罪記録局の調査では、自殺した農家は 2002年から10年間で17万人に上っています。中にはラウンドアップを飲んで自殺するケースも少なくありません。


日本人はGM食品を避けられなくなる


―― TPPでGM食品はどうなるのですか。
安田 まずGM作物・GM食品によって食の安全・安心は崩壊するでしょう。現在、日本では大豆、トウモロコシ、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ、 てん菜、パパイヤの8種類でGM品種が認可されていますが、一応GMの表示義務があります。
 日本政府は、「GM食品表示を含め、食品の表示要件に関する日本の制度の変更が必要となる規定は設けられていない」と説明しています。しかし企業が政府を訴えることができるISDS条項によって、非GM食品の表示が訴訟の対象になる可能性があります。モンサントらが、「『遺伝子組み換え不使用』という表示は、 GM食品は良くないというイメージを消費者に植え付けている。不当な差別的貿易障壁だ」という理屈で日本政府を訴え、賠償金をとった上で表示規制を撤廃させる恐れがあります。
 また、TPPには「TBT(貿易の技術的障害)」という条項があります。ァメリカではGMの表示は不要ですから、日本の表示義務は「技術的障害」として撤廃を迫られる可能性があります。
 TPPが発効すれば、GMの表示規制は緩和・撤廃されるでしょう。消費者はどの食品がGMなのか判断できず、日本人はGM作物を避けることができなくなります。


―― 政府はTPP大筋合意の一部を「概要」として発表しました[注5]
安田 市民グループが訳してくれた協定書を読みますと、多くの問題があります[注6]。たとえば、違法混入があってもGM作物貿易の中断を回避し、新規承認を促進するとされています。
 さらにGM作物に関する安全審査やGM表示の審議会にモンサントなど開発企業を参加させることになっているのです。安全規制や表示規制は骨抜きにされ、GM食品の流通が一気に拡大することは目に見えています。GM作物の輸出国であるアメリカの手前勝手なルールであり、GM食品の輸出拡大を狙うものです。
 しかし、何か問題があったとしても、国民は真実を知らされません。現在でもGM食品に関する審議会は「企業特許の秘密を守るため」という口実で非公開になっています。私たちは日本食品衛生協会で認可後に閲覧できる申請資料を見て、初めて詳細を知ることができるのですが、閲覧のみで複写も撮影も禁じられています。しかも資料には黒塗りの個所もあります。TPPが発効すれば、「知的所有権強化」を盾に閲覧資料は真っ黒になるのではないかと危倶します。
 「概要」は、利害関係者に審議会への参加を認めるのは、企業に対して「透明性」を確保するためだと謳っています。ですが、本当の利害関係者である国民に対する「透明性」は一顧だにされていません。審議会は企業には透明性があっても、国民にはブラックボックスです。この一事を以てしても、TPPの正体が企業の利益のために国民を犠牲にするものだということは明らかです。


―― その上で、どのようなGM食品が入ってくるのですか。
安田 いまモンサントは日本の関税撤廃・規制撤廃を視野に入れて、アメリカ国内でGM小麦やGM米の商業栽培を狙っていると思われます。すでにGM小麦は商品化が申請されています。ただ、日本の小麦バイヤーは、アメリカでGM小麦の生産が始まれば、混入は避けられないので、GM・非GMを問わずアメリカの小麦は買わないという意思を示したため、アメリカの小麦生産者はGM小麦に反対し、アメリカ政府は認可していませんでした。しかし、日本でGM規制が緩和されれば、アメリカでGM小麦やGM米の生産が始まり、日本に輸出されることになるでしょう。
 モンサントは穀類だけではなく、GM野菜にも着手しています。また、モンサントではありませんが、GM果物の開発も加速しています。切っても茶色にならないリンゴやビタミンAを強化したバナナ、病気になりにくいオレンジなどです。
さらにGM動物まで開発されています。米アクアバウンティ・テクノロジーズ社は、なんとGMサケを開発したのです。これは成長ホルモンが出続けるように遺伝子操作したサケで、普通のサケの2倍の速度で成長します。出荷サイズになる飼育期間が半分で済むわけですが、出荷しないでいれば25倍の大きさにまで成長するそうです。
 ただ成長ホルモンが常時分泌し、細胞分裂が盛んなためがんのリスクに繋がるのではないかと指摘されています。GMサケはカナダとパナマの陸上に設置したコンクリートのプールで養殖されていますが、環境学者たちは、「万が一海に放流された場合、天然のサケが絶滅してしまうのではないか」と強く危慎しています。
 GMサケは2015年11月、米食品医薬品局(FDA) によって表示なしで食品として販売することが認められたのですが、同年12月、連邦議会上院はGMサケの表示を義務化し、表示制度がスタートするまで販売はしてはならないと決定しました。アメリカからの輸出は当面なさそうですが、カナダやパナマなどの他国を迂回して日本へ輸出される可能性は否定できません。


―― GM食品以外にも問題はあります。
安田 日本政府はTPP交渉と並行して、日米二国間協議を義務付けられ、こちらは合意済みです。その交換文書の「衛生植物検疫(SPS)」という項目には、「収穫前及び収穫後に使用される防カビ剤、食品添加物、ゼラチン、コラーゲンで合意した」と書かれています。
 つまり、「日本は国内で禁止している収穫後農薬(ポストハーベスト)を認めます。アメリカ並みに食品添加物を増やします。狂牛病の危険性がある牛由来のゼラチン、コラーゲンを認めます」ということです。安全性に疑問の残る食品がアメリカから日本へ雪崩れ込むことになると思います。


日本農業はモンサントに乗っ取られる


―― TPPで食の安心・安全は壊滅してしまいます。
安田 TPPは食の安全・安心だけではなく、日本の食料の安全保障そのものを崩壊させます。いま最も警戒すべきは、日本国内でのGM作物の生産開始です。今でも日本で流通を認められたGM作物は法的には生産できます。これまでも十勝など数か所で農家によるGM大豆の生産が試みられましたが、周辺農家や市民、県の農政課などの抵抗によって、何とかそれを阻止してきました。
 しかし現在、安倍政権の下で規制改革会議が企業の農地所有の規制緩和を進めています。国の後押しを背景に、企業が本気でGM作物の生産に乗り出せば、それを阻止することは困難になります。
 すでに国家戦略特区の「農業特区」に指定された兵庫県養父市では、外資系企業の農地所有まで認めています。モンサントが日本国内でGM作物を生産する日は、すぐそこまで来ているのです。GMの心配がないなど安全性が売りである「国産」のブランドも失われます。
 日本の農家は窮地に立たされます。関税撤廃で安く入ってくる輸人農産物だけではなく、国内の企業農業との競争に晒され、モンサントによる特許侵害の訴訟リスクも抱えます。たとえGM作物に乗り換えても、毎年種を買わされ、その度に特許料と特許実施料を払わされます。日本農家は破産するリスクが高い。
 そうなれば、モンサントを始めとする企業が廃業した農家の耕作放棄地を所有して、GM作物の栽培を加速させかねません。日本はハワイ同様、農地の回りに住居、学校、病院などが隣接しているため、近隣住民はラウンドアップなど農薬の多量の空中散布によって健康被害を受けることになります。空気、土や水、生物への環境汚染も進みます。こういう悪循環に陥る危険性は非常に高いと思います。
 日本企業も無事では済みません。モンサントが種子産業に乗り出したときは、1995〜2000年までのわずか5年間で、世界の50社以上の種子会社を買収しました。TPPによって外資によるM&Aの規制が緩和されれば、サカタやトキタなど馴染みのある日本の種企業が丸ごと呑みこまれてしまう危険性があります。
 TPPに参加すれば、日本は遅かれ早かれ、モンサントの種子支配体制に組み込まれるでしょう。ただでさえ日本は世界一の食料輸入国であり、アメリカは世界一の食料輸出国です。そしてアメリカは食料を戦略物資と見なし、「食料はアメリカにとって最終兵器である」(1974年、CIAレポート)と考えています。さらにモンサント社は日本の農業の種子を管理下に置こうとするでしょう。USTR(米通商代表部)のTPP農業主席交渉官には、元モンサントのロビイストが就任しているのです。
 日本政府は日本国内の食料を管理する権限、つまり「食料主権」をアメリカ政府・モンサントに差し出すことになります。


日本だけがGM食品を推進している


―― モンサントは恐ろしい企業です。
安田 実際、モンサントは「モン・サタン」と揶揄され、世界中から批判されています。2011年には、健康情報サイト「ナチュラル・ソサイエティー」から「人間の健康および環境の両方に脅威を与えている」として、「ワースト1企業」の熔印を押されています。2013年におこなわれた「反モンサント行進」には、世界中で200万人以上が参加しました。
 反モンサントの動きは民間に留まりません。EUは2014年にGM作物の栽培に関する判断を加盟各国に委ね、28か国中19か国が非GMを選択しました。ロシアもGM作物の栽培を禁止しています。また中国はアメリカ産トウモロコシの一部にGMトウモロコシが混入していたとして輸入拒否に踏み切り、アメリカにとって30億ドルの損害となりました。毎年230万トンの大豆を輸入している台湾政府はこのたび、学校給食全てにGM作物の使用を禁止しました。
 当のアメリカでさえ、GM食品に反対する機運が高まっています。アメリカ環境医学会は2010年に、GM食品のモラトリアムと安全性試験の実施、GM食品の表示義務化を求めるとともに、妊婦や幼児にGM食品を食べないように指導する必要があると指摘しています。また2013年にはハワイ州、バーモント州、メーン州など13州がGM食品の表示を義務づける州法を成立させています。
 世界的にGM作物に対する国家の規制が強まっているにもかかわらず、日本だけは世界の潮流に逆行する形で、モンサントの意向に沿ったアメリカの要求を唯々諾々と受け入れているのです。私たちはTPPに反対し、アメリカに「NO!」と言える政権を一日も早く作らなければなりません。


―― GMはTPPだけではなく世界全体の問題です。
安田 その通りです。そもそもGM作物を中心とする農業そのものが限界になりつつあります。現在、ラウンドアップでも枯れない雑草が何十種類も生まれています。同じ薬剤を撤き続けるうち、雑草が耐性を獲得してしまうのです。そこでモンサントらはラウンドアップより強力な除草剤、それこそベトナム戦争で使われた発がん性の高い枯葉剤の使用を進めています。すでにこれらを浴びても枯れないGM大豆は日本で認可されています。
 強力な枯葉剤はしばらくは効きますが、やがて枯葉剤でも枯れない雑草が出てくるでしょう。こうして自然とのいたちごつこを繰り返している間に健康被害・環境汚染が進み、人間が住めなくなってしまう土地が増えるだけではないでしょうか。
 彼らには自然への畏れがありません。そもそも生命に特許を認めるという発想自体がおかしいのです。
 生命や遺伝子は神の領域です。科学者はヒトの遺伝子の配列を明らかにしましたが、何のためにあるのか分からない遺伝子が沢山ありました。その後、それら無用の長物だと思われていた遺伝子は、実は眠っているだけで、複雑な相互のネットワークのなかで必要な時に目を覚まして働くということがわかってきました。このことからも、モンサントらの「有用な遺伝子」を見つけて利用するという発想が、いかに薄っぺらな科学であるかが分かると思います。
 確かに生命の神秘を解き明かすために、人類は研究を続けるべきだという考えもあると思います。しかし現時点では人間に分からないことが多すぎます。そうである以上、GM食品を応用化し、生産したり、食べたりすることはあまりに時期尚早ですから、厳重に規制すべきです。
 遺伝子組み換え技術は原子力と同じように取り返しのつかない問題を引き起こします。人によって改変された遺伝子はその生物の次世代に伝わります。これから生まれてくる生命は永遠に穢されてしまうのです。 自然界を狂わせ、地球の生態系を歪めてしまうのです。だからこそ世界中の人々が反対しているのです。大自然や生物の命に神聖な存在を感じ、これを畏れ尊んで共に生きてきた私たちの祖先たち。その感性を呼び覚まし、生命をモノのように私物化することは間違っていると反対の声を上げるべきです。


安田節子(やすだ・せつこ)
食政策センター「ビジョン21」代表。著書に『自殺する種子』(平凡社)など。
2016年3月25日取材



投稿者注


注1 「英国モンサント社の社員食堂ではGM食品不使用が掲げられているそうです」

これは1999年に報じられた件を指すか。
GM food banned in Monsanto canteen (1999/12/22 INDEPENDENT)
モンサント社は、社員食堂にGM食品不使用が掲げられていた事実を認めながらも、解釈については誤りだとしている。
Myth: Monsanto Only Serves Non-GMO and Organic Foods in Its Cafeterias

注2 「モンサント社の圧力に 屈しなかった科学者の研究成果を紹介します」
ここで紹介されているプシュタイ、エルマコヴァおよびセラリーニの研究チームによる研究については、実験方法やデータ解釈をめぐって、専門家からの批判が殺到したらしい。しかし、ある農学者による2007年の草稿によれば、それに代って長期飼養試験や疫学的調査をしようとする動きはほとんど見られなかったという。その後の研究動向についてはわからないが、現在ではノーベル賞を受賞した科学者たち(現時点で110名)が遺伝子組換え作物および食品の安全性に太鼓判を押す公開書簡を発表するにいたっている。安全性の根拠としては、世界中の研究・規制機関が繰り返し確認して何も問題がなかったから大丈夫だとしている。
Scientific and regulatory agencies around the world have repeatedly and consistently found crops and foods improved through biotechnology to be as safe as, if not safer than those derived from any other method of production. There has never been a single confirmed case of a negative health outcome for humans or animals from their consumption. Their environmental impacts have been shown repeatedly to be less damaging to the environment, and a boon to global biodiversity.
Laureates Letter Supporting Precision Agriculture (GMOs)

注3 「次頁図」
ここには、セラリーニらの論文中の画像(Figure 5)のうち、A、B、C(3体のラットの写真)が付されている。
Republished study: long-term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerantgenetically modified maize (Published: 24 June 2014)/Figure 5
なお、このセラリーニらの研究については、たとえば次のように酷評されている。
よみがえったセラリーニの「組換えトウモロコシでラットに発がん性」論文をどう読むか(2014/7/9 白井洋一)

注4 「この判例は、特許作物の種子が輸送中のこぼれ種によるものであろうと、鳥や虫、風に運ばれて自生したとしても、特許作物が生えていたら特許侵害にあたるという恐るべきものです」
これについてもモンサント社は反論している。シュマイザー氏は、自分のナタネ畑に混入していたGMナタネをラウンドアップ除草剤を使用した際に分別して収穫したことで、意図的に特許侵害をしている。また同氏のナタネ畑に育っていたGMナタネが自然に混入したものとは考えられない。意図的でないGM作物の混入について、モンサント社が農家を訴えることはしないと。
パーシー・シュマイザー氏について(Percy Schmeiser)
Percy Schmeiser
Myth: Monsanto Sues Farmers When GMOs or GM Seed is Accidentally in Their Fields

注5 「政府はTPP大筋合意の一部を「概要」として発表しました」
この「概要」をはじめとする関連文書が首相官邸サイトで公開されている。
TPP(環太平洋パートナーシップ)協定

注6 「市民グループが訳してくれた協定書を読みますと、多くの問題があります」
どの市民グループを指すのかはっきりしないが、たとえば山田正彦、内田聖子らによる「TPP協定分析レポート」を参照。
TPP協定の全体像と問題点―市民団体による分析報告―Ver.4(2016/4/3)


http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/604.html
[国際14] 日本の食と農業がモンサントに支配されます(安田節子) 烏滸の者
2. 烏滸の者[10] iUef9YLMjtI 2016年7月18日 15:41:54 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[192]
出典に誤記がありました。
> 『月刊現代』2016年5月号増刊
とありますが、正しくは『月刊日本』2016年5月号増刊です。
たいへん失礼しました。

投稿者

『月刊日本』2016年5月号増刊
http://gekkan-nippon.com/?p=8975
http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/604.html#c2

[政治・選挙・NHK209] 2千票差の実相―参院選新潟選挙区(新潟日報):地方板リンク
2千票差の実相―参院選新潟選挙区(新潟日報)
http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/740.html
投稿者 烏滸の者 日時 2016年7月14日
http://www.asyura2.com/16/senkyo209/msg/691.html
[お知らせ・管理21] 2016年7月 削除依頼・削除報告・投稿制限連絡場所。突然投稿できなくなった方は見てください。2重投稿削除依頼もこちら 管理人さん
80. 烏滸の者[11] iUef9YLMjtI 2016年7月19日 19:36:04 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[194]
次の記事からコメントが削除されました。
http://www.asyura2.com/16/kokusai14/msg/604.html

削除されたコメントは#3および#4で、同一コメント者によるものです。
それらのコメントは現在もページのソースに赤字で表示されているので読むことができますが、
削除されなければならないほどの問題があったとは思えません。
問題のあるコメントについてはふつうは非表示になるだけでその非表示理由も示されると理解していますが、それらのコメントが完全に削除されたことには特別な理由があったのでしょうか。
削除したのが何かの間違いであれば、2つのコメントを復活させていただきたく、間違いではないということであれば、さしつかえがなければ理由を教えてください。
よろしくお願いします。
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/451.html#c80

[お知らせ・管理21] 2016年7月 削除依頼・削除報告・投稿制限連絡場所。突然投稿できなくなった方は見てください。2重投稿削除依頼もこちら 管理人さん
84. 烏滸の者[12] iUef9YLMjtI 2016年7月20日 17:55:18 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[196]
>>82
コメントが削除された理由が理解できました。
コメント復活の代替方法のご教示についても感謝します。
http://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/451.html#c84
[テスト31] テスト
http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-4502.html

本性が露呈された小池百合子と選挙パフォーマー三宅洋平

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-7.jpg

日本をアメリカと瓜二つの国に造り替えようとしている安倍政権。都知事選でも、ミニ大統領選さながらの舌戦が展開されている。

都知事候補の増田寛也は、清和政策研究会(ロックフェラーCFRのカウンターパート)の安倍晋三と森喜朗がオリンピック利権を一手に握ろうと送り込んだ代理人である。

一方の小池百合子の背中には小泉純一郎の生霊が憑いている。どちらも清和政策研究会。叩けば、いくらでも埃が出る

増田寛也は単なる当て馬だ。姦計に長けている自民の本命は小池百合子だ。彼女こそが安倍晋三と軌を一にする候補者だ。
国民は「小泉劇場」のバージョンを見せられているのである。


全国数百万人のガン・サバイバーを失意のどん底に叩き落とした小池百合子という女の残酷さ

「それが選挙ですから」・・・


奇しくも、今回の選挙に絡んで、自民党の女性が言った言葉だ。

ひとつは、都知事選の演説で、“マダム回転寿司”こと小池百合子が鳥越俊太郎氏にあてつけて言った言葉である。

もうひとつは、参院選後、三宅洋平が安倍晋三の奥方、昭恵に会ったとき、彼女が洋平に言った言葉である。

「それが選挙ですから」・・・都知事選、参院選と、シチュエーションは異なるが、小池百合子、安倍昭恵ともに、その意味するところは同じである。

つまり、彼女たちは、「選挙では対立候補を倒すためなら、過激な言動も許される」と言っているのである。たとえ、それが嘘であっても・・・

大嘘つきの人格破綻者、自民党の丸川珠代が、議場で耳をふさぎたくなるようなヤジを飛ばし続けていることは良く知られている。
安倍晋三は、これを「ヤジは議場の華だ」と言った。

ヤジについては、晋三のほうも、決して丸川に負けてはいない

もっとも、小池百合子のヤジは、晋三や丸川のヤジより、いくぶん高品質だ。

相手を倒すためなら、どんな誹謗中傷でも、どんな嘘でも平気でやってしまえ! これが、「自民党の文化」なのである。

その悪しき文化が、自民党インターネットサポータークラブという言論暴力集団をつくり出したのだ。

「自民党の文化」では、二言目には「有権者に丁寧にご説明して・・」が出てくるが、タダの一度も国民に説明したことがない。

それどころか、自民党支持層のB層をいかにして増殖させようかと、日々、騙しのテクニックを磨いているのである。
それが、自民党の強さを支えてきたし、これからも、そう考えているからである。

ただし、政界世渡り上手の小池百合子の鳥越氏に対する今回の差別的な発言は、「自民党の文化」をはるかに逸脱している。

小池は、脅威となっている鳥越俊太郎氏を「病人の役立たず」と印象付けようと、公衆の面前で声を張り上げながら、「病み上がりの人を、ただただ連れてくればいいというものではないんです!」とやってしまったのである。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-1.jpg

これは、誰が聞いてもガン闘病者に対する差別である。
これでは、どんな弁明もできない。

かなり悪質であり、彼女の性悪さ、冷酷さ、姑息さ、卑劣さのすべてが吐露されてしまったという点では致命的となった。

この言葉を聞いた瞬間、小池百合子を応援しようと秋葉原の街頭演説の場に集まった大衆は、彼女の冷酷さに、いっぺんにその熱を冷まされた。

後ろで、「そうだ! そうだ!」と掛け声をかけて、その場に集まった大衆を扇動しているのは、小池のプロ支援者たちである。

しかし、小池は、本当にそんな破廉恥なことを言ったのだろうか・・・。動画では、確かに「病み上がりでは役に立たない」という意味のことを言っている。

早速、マスコミの記者は街頭演説を終えた小池をつかまえて、「どういった意味でおっしゃったのでしょうか?」と問いただす。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-4.jpg

いつものように、ヘラヘラ笑いながら、「私は、ちゃんとファクト(事実)を申し上げた」と彼女は言った。

鳥越氏について、「なんの政策もない、病み上がりガン患者では役に立たない」というのは事実を言ったまでだ、と小池は念押ししたのである。

しかし、鳥越氏は参院選の結果を見て、「なんとかしなければ、と急に都知事選への出馬を決めたので準備不足」とテレビ番組に出演するたびに有権者に断りを入れている。

「なんの政策もない」というのは、むしろ小池百合子が昔から言われ続けていることで、くるくる回る回転スシのように、そのときどきの都合によって、次々と政党を渡り歩くことから「マダム回転スシ」と言われるようになった。

自分の舌禍が大きな波紋を呼びそうな予感を持っていたにもかかわらず、別の記者につかまって同じことを訊かれた小池は、ここでも・・・

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-3.jpg

「そういう意味で言ったのではなく、(鳥越氏が)元気でやっている、ということを強調したかった」と、今度は180度、逆のこと言っている。
「嘘の上塗り」とは、このことである。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-5.jpg

これは複数のテレビ報道で流されてしまった。

鳥越氏のことを「病み上がり」と罵倒することが、鳥越氏が「元気でやっている」ことを強調することになる、と彼女は説明する。

彼女の感覚であれば政治家になってはならない。頭がイカレているからである。

大衆に分からなければ、相手を目の前にして堂々と嘘をつく女

もともと、小池百合子は、エジプトのクフ王のピラミッドの頂上に上って振り袖姿でお茶を立てた変な日本人として有名になった。

しかし、私の中では、なんといっても、彼女が環境大臣のときに、どーしようもないクールビズを普及させたこと、そして、次に防衛大臣になったとき、自衛隊の年間の二酸化炭素(CO2)の排出量は数百万トンに上ることを最悪の環境破壊としながら、「自衛隊は、ハイブリッド戦闘機とか燃料電池戦車に切り替えるべきだ」と言って国民を唖然とさせた、あのイメージが強い。

つい、数日前も、都知事選の討論で、「オスプレイは必要だ。垂直離発着機は環境に優しいからだ」と言った。住民の安全より環境優先の考え方をするところをみると、ナチスの優生学思想に汚染されていることは明白である。

「これは、東電の犬、増田寛也では勝てないと焦った自民党が、電通を通じて小池潰しをテレビ各局に依頼した?」・・・

馬鹿げた妄想だ。

ガン闘病者、その家族――何百万人もの人々を悲しみのどん底に叩き落とし、それでは飽き足らず、冷酷な言葉で弱者を突き放すような暴言を吐いた小池に対して、テレビ局に猛烈な抗議の電話が殺到することを事前に察知して手を打ったのだ。

その日19日の午後、3人の候補者が、坂上忍司会のフジテレビのお昼の番組「バイキング」に出演した。司会者を通さずに、直接、激論を戦わせてもらう、という企画である。

ここで、鳥越氏は、小池百合子に、「本当に、こんなことを言ったのか」と、問いただした。


彼女は、顔を引きつらせながら、次のように嘘をつき通した。

小池:「あはははっ、言ってないですね、記憶にないですね」。

小池:「でも、今、お元気になられてるじゃないですか」。

小池:「いやいや、(言ったことなど)記憶にないですよ}」。

鳥越:「私に言われたのは、いいとしましょう。
ガン・サバイバーという人は何十万、何百万といます。家族もいます。そういう人たちに、一回がんになったら、なにもできない、という差別的なイメージを与える」。

小池:「それが、選挙なんですよ、(司会の)坂上さん」。

ここまで嘘をつき続けることの意味が、どこにあるのか。

小池百合子は、謝罪すれば選挙に負けるという恐怖心から、全国のガン闘病者と、ともにガンと闘っている家族を敵に回してしまった。

鳥越氏が抗議しているのは、自分のためではなく、ガンと闘っている人々の気持ちを代弁すると同時に、小池百合子のような性根の腐りきった悪党に惑わされるな、と警告しているのである。

これは、ガンと闘いながらも家族や身内を亡した人間であれば骨身にしみている。その冷酷さに思わず背筋が凍る。

私も、その一人として、小池の心無い発言に心をいためたガン闘病者や、それを支えるご家族が、病気と闘う気力を失ってしまうことを心配する。

鳥越氏は、むしろ、ジャーナリストとして、ガンと闘っている人々とその家族のために怒ったのである。

彼はこうした弱者を擁護するために、小池のような国民を殺す権力者と戦っているのである。

ハフィントンポストは、「小池が謝罪した」と書いているが、動画を観る限り、小池は謝罪していない。追い詰められて、逃げ場がなくなったから仕方なく「わるうございました」と言うのは、謝罪ではなく自己保身である。そのほうが、自分にとって得だからだ。

これは、日頃からジャーナリスティックな目で世の中を見ている人間でないと理解できないかも知れない。だから、小池のような稚拙な人間にさえ、いとも簡単に騙されてしまうのである。

ここまで分かっても、小池のような人間を都知事に推そうとしている有権者がいるということが私には信じられない。

小泉政権のとき、小池百合子は、自分でつくった愛情弁当を小泉純一郎のいる官邸に届けていた。これを週刊誌は、「小泉の○人」だと書きたてた。
確かに、打算と計算づくで、小池は小泉純一郎に最接近していった。

そんなとき、小池百合子は、突然、姿を消したことがあった。
長期間、姿を現さない小池に対して、週刊誌は、「肺炎か、それとも脳梗塞か。両方とも併発か。かなり重篤らしい」と書きたてた。

今もって謎だ。

さらに謎は、10年以上前から燻っている小池の学歴詐称疑惑だ。
ここにきてエジプト出身のタレントが、小池の学歴詐称を疑い出した。これに対して小池の反応はない。
これが事実でないとするなら、政治家の責任として10年以上も疑惑のママにしておくことは考えられない。

そして、「自民党のもうひとつの文化」として定着している政治資金問題も、やはり浮上している。

いえいえ、「30万円の未記載」というようなケチな話ではなく、もっと大きな政治資金だ。

小池の支持者たちの中には、スピン報道によって国民の目をそらすために週刊誌にリークしている安倍官邸が小池潰しをやっている、と信じている人がいる。

しかし、これを暴露したのは、官邸のリークによって攪乱工作を請け負っている週刊文春ではなく、安倍晋三が目の敵にしている日刊ゲンダイである。小池潰し陰謀説は無理がある。

さっそく、鳥越俊太郎氏のスキャンダルで、コピペサイトが大騒ぎだ。しかし、小池百合子のスキャンダルには触れない。

彼女は、「退路を断って(自民党の推薦を得ることができず)、たった一人の闘いだ」と息巻いているが、これは巧妙な演出である。

youtubeやニュースの動画では、小池が、あたかも孤軍奮闘している女性闘士であるかのように演出されているが、演説が終わると、「いったいどこに、こんなにたくさんのボディーガードが潜んでいたのか」と思うくらい、大勢の支援者が彼女を取り巻く。

鳥越氏にテレビの生番組で「病み上がり発言」を問い詰められた時も同じ。「テレビカメラの前でだけは、お行儀よく笑顔でね」。大衆を騙すことができれば、どんな嘘でも平気でつくのである。これが「自民党の文化」だ。

さすが、小泉の○人だけある。小池は小泉純一郎が使った有名な戦術――「抵抗勢力」を使っているのだ。

小池は、自分を応援しない自民党の連中を「抵抗勢力」に見立てて、「私が都知事になったら、ただちに都議会を解散する」と宣言している。

小泉も、「自民党を、ぶっ壊す!」と豪語した。

しかし、いざ政権を取ったら、正反対のことをやったのだ。
小池は、錆びついた小泉の戦術を倉庫の奥から取り出して、再びそれを利用しているに過ぎない。

偶像崇拝のカルトたち・・・しかし、それは三宅洋平という虚像であったという悲劇

もうひとつの「それが選挙ですから」と言ったのは、安倍晋三のイカレた女房、昭恵だ。

三宅洋平に政治を語る能力がないどころか、単なる扇動屋だと見抜いた安倍陣営が、「安倍自民は圧勝したのだから」と、余裕を持って三宅洋平の取り込みのために近づいてきたのである。

そのとき、昭恵が洋平に、「大丈夫です、それが選挙ですから」と言って、すぐさま携帯電話で安倍晋三に取り継いだと、洋平はツイートしている。これでも、偶然だと言うのだろうか。

洋平が、「国を思い世界を憂う国士」だと。究極のナルシズムに世界が笑っている。

洋平は、安倍晋三と携帯電話で短い会話を交わしたとき、「総理、何なら一緒に高江に行きませんか、とは云えませんでした。三宅はまだそんなもんです」と、己の小ささに気がついたとか・・・

そして、「高江の住民の気持ちを込めて「okinawa noproblem」capを昭恵さんに預けました」と、すっかり昭恵にほだされてしまった。

今日、安倍晋三と彼の官邸の命を受けて、米海兵隊のオスプレイ離発着帯(ヘリパッド)を建設する予定地「高江」に機動隊500人を投入して反対する沖縄の市民たちを強制排除する。

昭恵が、唐突に三宅洋平に近づいてきたのは、「高江」で起こることを、「なんとかフェス」で拡散させないようにするためである、と考える人が出てきても反論できない。

なぜ、洋平は、「何なら一緒に高江に行きませんか、とは云えませんでした」なのか。

機動隊の500人は、地元の人間ではなく、東京をはじめ各地方から私たちの税金で集められた武闘派である。

なぜ、洋平は「高江の住民の気持ちを込めて「okinawa noproblem」capを昭恵さんに預けました」などと言えるのか。

あれほど、沖縄の人々の思いについて熱く語った洋平は嘘だったのか。事実は、そうであると告げている。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-6.jpg

結局、三宅洋平のような中途半端な腰砕けが、宮家のような盲目的な対米従属派の台頭を助けてしまうのである。

ヘンテコリンの安倍昭恵ごときに、いとも簡単に懐柔された洋平が、安倍晋三が河口湖のゴルフ場で、心置きなくゴルフを楽しんでいることを知らないはずはない。

一見して、分別臭い大人たちは、「三宅洋平の言っていることは曖昧で、すべて賛同はできないが、若者が一生懸命になって何かを訴えている。とりあえず応援しよう」と思っている。

今回の参院選では、「誰を、どの政党を選べばいいのか分からない、しかし、選挙には行かなっきゃ」・・・こうした政治オンチの大人たちを引き込もうと、多くの「プロ若者たち」が思い思いに動いたことで、かえって事態を混乱させてしまった。

彼らの多くは民主主義を謳いながら、実は、民主主義をまったく理解していないし、モラトリアム選挙民をつくり出しているだけであるからタチが悪いのだ。

私は、「選挙は25歳から。自分で汗水流して、社会に叩かれて金を稼いだ経験のない人は選挙に行くべきではない」という主張を持っている。
社会の矛盾や不条理に触れ、その原因を追究しようという気になってはじめて候補者の品定めができるようになるのだ。

「18歳の子供は、ボーイフレンドやガールフレンドのことで頭の中を妄想だらけにして、おんもで遊んでろ!」というのが持論だ。

それが、突然、イエス・キリストのようなナルシス君が現れると、一瞬で政治を語る(そう思い込んでいる)プチ・インテリゲンチャに早変わりだ。

三宅洋平の演説に涙したというバカは多い。
そんな涙があるなら、福島の子供のために泣け。パレスチナの子供たちのために泣け。その欺瞞性に反吐が出る。

長い演説の動画を2、3本観てみたが、私には洋平が、いったい何が言いたいのか、まったく分からない。

日本人であれば、洋平の言っていることは当たり前すぎて、「はいはい、分かってる。だからその先は」ということになるはずだ。

お祭り好きの「プロ若者」たちが選挙をダメにした・・・いつものことだが

三宅洋平の戦略は、「選挙に行かない若者たちの目線に合わせて語り掛ける」ということらしい。

この種の見識と知識、構えのない人気取りが目的の人間にとって、「無関心層に易しく語りかけて選挙に行かせる」という言葉は巧妙な逃げ道として使われる。
自分の無知と計算高さを上手に隠してくれるからだ。

だから、選挙前に、このように書いた

・・・それに、むさくるしいヒゲをはやしたままで、立候補しようなどと、有権者をなめているのか、と言われても仕方がない。
「自分の信条? 生きざまそのもの?」 そんなもの捨てちまえだな。

メディア・チームに精鋭なんか集めたって駄目だ。
まずは、自分が何をしたいのか、政治信条を固めることからやり直しだ。

こんな無精面を誰が見たいと思うのか
そのボランティアの精鋭のメディアチームの一人たりとも、洋平君のひげを剃らせることができないのであれば結果は推して知るべし。

洋平君が最初にやるべきことは、自分の弱い心と戦うことだ。

三宅洋平の無精ひげを嫌っている有権者は多い。痩せこけた頬とギラつく目が、あることを連想させるからだ。

しかし、そうした人々は、洋平を批判しているのではない。

まったく逆で、「ひげを剃らなければ投票しない」と言っている有権者が実際に多くいることを知っているからこそ、そして、そうした世間の空気を読んでいるからこそ、そして、洋平に当選してほしいからこそ、ひげを剃るべきだと言っているのである。

「自分らしくありたい」などと、ジョン・レノンのようなことを言えば、愚民ばかりの日本では受ける。

しかし、気まぐれな吟遊詩人、三宅洋平を必死になって応援していた愚民たちは、今になって「裏切られた」と彼に背を向け始めた。しっかりした視座を持てない日本人ならでは・・「昨日の友は今日の敵」・・・いつものことである。

「選挙フェス」の本質は、ミュージシャン三宅洋平のプロモーション・イベントに過ぎない。彼はただの選挙パフォーマーである。

寄付で集めた1750万円という大金は――しかし、彼は本当の意味で政治活動はやらなかったのだから――この「選挙フェス」というイベントの参加費だと思えばいいのだ。

しかし、それ相当の金をつぎこんだイベントにしては、波及力がなかった。

選挙パフォーマーなら、外山恒一の方が数段優れている。彼は、なんと、東京都知事選に立候補した2007年の時点で、すでに日本がグローバリズムに取り込まれることを知っていた。

今、洋平は「いくらでも幻滅すればいい。俺は俺だから、 何も減らない。 I am what I am.」と開き直っている。

三宅洋平は、安倍昭恵に会ってはならなかった。
彼は、自分を支えてくれている人々の思いを斟酌できない気まぐれな男である。

洋平を今まで支えてきた支援者が「お前たち、なんにもわかっちゃいない」という問題ではない。洋平という男が、人の義に報いる男かどうかということである。

彼は、もっとも政治家にしてはならない人間である。
支援者の思いより、「俺様の生き方を優先する」というのであれば、政治などできるはずがない。

これからは、永遠のやんちゃ坊主として生きていくのが「俺らしい」。「俺は俺だから」が、彼の身の丈サイズの世界である。何も無理することはないのだ。自分の生き方を貫き通せばいいのだ。

ただ、それを、税金を使って政治の世界でやるな!と言っているのだ。

映画監督の想田和弘氏が、自身のFacebookで、洋平を気遣いながらも、しっかり総括している。「昭恵との会い方に知恵がなかった」と。

医学部出身のおしどりのマコ氏が、民主主義について自分の考え方をまとめている。
その中で、彼女はこう書いている。

「誰がなんといおうと、すごい肩書の賢い人たちがいろいろ言おうと、 周囲の方々にたくさん詰め寄られようと、最後の一人になろうと、でも、私は、福島第一原発事故の対応は間違ってると思います、と言えなくてはダメだ、 そして、そういう方々が増えないと、何も変わらないんだ、と思ったのですね。」

民主主義は人々が個々の立場で自由に考えることが基盤だ。
しかし、その権利をみすみす放棄している人々が多くいるのである。日本人は、民主主義にもっとも不向きな国民だ。

彼らは「洗脳から覚めた、自分で考えることを実践している」と思い込んでいる。

そうした錯覚を利用して自分を納得させてはならない。自分自身のアングルで見ないと愚民は永遠に愚民のままだ。

だから、東京都民が洗脳から解かれるためには、もう政治家に期待してはならないということだ。
ましてや、政治家に下駄をあずけるなどと、いつまでも候補者依存選挙をやっていてはならない。

安倍晋三と官邸によって、陰湿な言論封鎖が日々、強まっていることが皮膚感覚で分かっているのであれば、彼らが封印しようとしている情報が外に出てくるようにして、一人一人が考える機会を増やすことから、すべてが始まるのである。

だから、小池や増田、その他の候補者は適任ではない。彼らは「隠す側」の人間であるからだ。

唯一、鳥越俊太郎なら、これまでの都知事とは全く正反対で隠されていた情報を国民の前に全開にするだろう。その上で、人々は、それぞれの考え方を構築することができるのだ。

上杉隆氏も立候補しているが、彼は、そもそも勝とうと考えていないように見える。だから、どうしても応援が薄くなってしまう。

いずれにしても、三宅洋平というノーテンキな男を応援していた人々は、やがて彼を批判する側に回るだろう。
そういう人々が、自分の口を汚すことは民主主義から遠のくことを意味する。しかし、それが世の常・・・人々は、そう自分に言い聞かせてきた。

このグータラ男を、鳥越俊太郎氏の応援演説に担ぎ出そうという輩がいる。鳥越選挙対策事務所は、三宅洋平をシャットアウトするように。

それより、洋平、寄付金を今後どう使うのか、寄付してくれた人たちに何らかのコメントを出す必要があるだろう。

大橋巨泉は、週刊誌の連載で、「この男は本当に悪い」と安倍の本性を見抜いていた。

巨泉は、安倍首相主催の「桜を見る会」に呼ばれて有頂天の太田光に「太田、お前は利用されてるんだよ」と叱った。結局、太田は花見会に行って夫婦げんかが勃発。

巨泉にも安倍から招待状が届いたが巨泉は無視した。

彼が生きていたら洋平にも同じことを言うだろうか。

いや、大橋巨泉の性格なら、三宅洋平には何も言わないだろう。彼は、上っ面だけで中身のない女々しい男が大嫌いだからだ。

その大橋巨泉は、今月12日、亡くなった

人々は気づいていないが、日本の状況はかなり深刻だ。それは回避不能なレベルまで来てしまっている。

都知事選の投開票日は31日だ。



[投稿者メモ] カレイドスコープ。 投稿しようとしていたら、元記事が変わっていることに気がついた。 かなりの文章が追加され、そのなかにはおもしろい洞察がある。 明日になってもだれも上げていなければ、改めておれが投稿させてもらおう。
http://www.asyura2.com/14/test31/msg/529.html
[テスト31] テスト

本性が露呈された小池百合子と選挙パフォーマー三宅洋平

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-7.jpg

日本をアメリカと瓜二つの国に造り替えようとしている安倍政権。都知事選でも、ミニ大統領選さながらの舌戦が展開されている。

都知事候補の増田寛也は、清和政策研究会(ロックフェラーCFRのカウンターパート)の安倍晋三と森喜朗がオリンピック利権を一手に握ろうと送り込んだ代理人である。

一方の小池百合子の背中には小泉純一郎の生霊が憑いている。こちらにも、清和政策研究会の亡霊が憑依している。だから、叩けば、いくらでも埃が出る。

増田寛也は単なる当て馬だ。姦計に長けている自民の本命は小池百合子だ。彼女こそが安倍晋三と軌を一にする候補者だ。

自民党本部は、「劇場型候補者に都政を任せるわけにはいかない」と言っているが、そういえば言うほど、小池に支援者が集まることを知っている。
つまり、「東京都知事は、民主主義ではなく、支配者であるわれわれ自民党が決めているのだ」と言っているのである。

小池百合子は、それに、たった一人で立ち向かっていると。

国民は、すでに「小泉劇場」のバージョンを見せられているのである。

全国数百万人のガン・サバイバーを失意のどん底に叩き落とした小池百合子という女の残酷さ

「それが選挙ですから」・・・

奇しくも、今回の選挙に絡んで、自民党の女性が言った言葉だ。

ひとつは、都知事選の演説で、“マダム回転寿司”こと小池百合子が鳥越俊太郎氏にあてつけて言った言葉である。

もうひとつは、参院選後、三宅洋平が安倍晋三の奥方、昭恵に会ったとき、彼女が洋平に言った言葉である。

「それが選挙ですから」・・・都知事選、参院選と、シチュエーションは異なるが、小池百合子、安倍昭恵ともに、その意味するところは同じである。

つまり、彼女たちは、「選挙では対立候補を倒すためなら、過激な言動も許される」と言っているのである。たとえ、それが嘘であっても・・・

大嘘つきの人格破綻者、自民党の丸川珠代が、議場で耳をふさぎたくなるようなヤジを飛ばし続けていることは良く知られている。
安倍晋三は、これを「ヤジは議場の華だ」と言った。

ヤジについては、晋三のほうも、決して丸川に負けてはいない

もっとも、小池百合子のヤジは、晋三や丸川のヤジより、いくぶん高品質だ。

相手を倒すためなら、どんな誹謗中傷でも、どんな嘘でも平気でやってしまえ! これが、「自民党の文化」なのである。

その悪しき文化が、自民党インターネットサポータークラブという言論暴力集団をつくり出したのだ。

「自民党の文化」では、二言目には「有権者に丁寧にご説明して・・」が出てくるが、タダの一度も国民に説明したことがない。

それどころか、自民党支持層のB層をいかにして増殖させようかと、日々、騙しのテクニックを磨いているのである。
それが、自民党の強さを支えてきたし、これからも、そう考えているからである。

ただし、政界世渡り上手の小池百合子の鳥越氏に対する今回の差別的な発言は、「自民党の文化」をはるかに逸脱している。

小池は、脅威となっている鳥越俊太郎氏を「病人の役立たず」と印象付けようと、公衆の面前で声を張り上げながら、「病み上がりの人を、ただただ連れてくればいいというものではないんです!」とやってしまったのである。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-1.jpg

これは、誰が聞いてもガン闘病者に対する差別である。
これでは、どんな弁明もできない。

かなり悪質であり、彼女の性悪さ、冷酷さ、姑息さ、卑劣さのすべてが吐露されてしまったという点では致命的となった。

この言葉を聞いた瞬間、小池百合子を応援しようと秋葉原の街頭演説の場に集まった大衆は、彼女の冷酷さに、いっぺんにその熱を冷まされた。

後ろで、「そうだ! そうだ!」と掛け声をかけて、その場に集まった大衆を扇動しているのは、小池のプロ支援者たちである。

しかし、小池は、本当にそんな破廉恥なことを言ったのだろうか・・・。動画では、確かに「病み上がりでは役に立たない」という意味のことを言っている。

早速、マスコミの記者は街頭演説を終えた小池をつかまえて、「どういった意味でおっしゃったのでしょうか?」と問いただす。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-4.jpg

いつものように、ヘラヘラ笑いながら、「私は、ちゃんとファクト(事実)を申し上げた」と彼女は言った。

鳥越氏について、「なんの政策もない、病み上がりガン患者では役に立たない」というのは事実を言ったまでだ、と小池は念押ししたのである。

しかし、鳥越氏は参院選の結果を見て、「なんとかしなければ、と急に都知事選への出馬を決めたので準備不足」とテレビ番組に出演するたびに有権者に断りを入れている。

「なんの政策もない」というのは、むしろ小池百合子が昔から言われ続けていることで、くるくる回る回転スシのように、そのときどきの都合によって、次々と政党を渡り歩くことから「マダム回転スシ」と言われるようになった。

自分の舌禍が大きな波紋を呼びそうな予感を持っていたにもかかわらず、別の記者につかまって同じことを訊かれた小池は、ここでも・・・

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-3.jpg

「そういう意味で言ったのではなく、(鳥越氏が)元気でやっている、ということを強調したかった」と、今度は180度、逆のこと言っている。
「嘘の上塗り」とは、このことである。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-5.jpg

これは複数のテレビ報道で流されてしまった。

鳥越氏のことを「病み上がり」と罵倒することが、鳥越氏が「元気でやっている」ことを強調することになる、と彼女は説明する。

彼女の感覚であれば政治家になってはならない。頭がイカレているからである。

そう、鳥越氏のことを心配する前に、彼女のほうこそ(これから書く)脳梗塞の後遺症で、正常な思考ができなくなっていることを疑うのだ。

大衆に分からなければ、相手を目の前にして堂々と嘘をつく女

もともと、小池百合子は、エジプトのクフ王のピラミッドの頂上に上って振り袖姿でお茶を立てた変な日本人として有名になった。

しかし、私の中では、なんといっても、彼女が環境大臣のときに、どーしようもないクールビズを普及させたこと、そして、次に防衛大臣になったとき、自衛隊の年間の二酸化炭素(CO2)の排出量は数百万トンに上ることを最悪の環境破壊としながら、「自衛隊は、ハイブリッド戦闘機とか燃料電池戦車に切り替えるべきだ」と言って国民を唖然とさせた、あのイメージが強い。

つい、数日前も、都知事選の討論で、「オスプレイは必要だ。垂直離発着機は環境に優しいからだ」と言った。住民の安全より環境優先の考え方をするところをみると、ナチスの優生学思想に汚染されていることは明白である。

「これは、東電の犬、増田寛也では勝てないと焦った自民党が、電通を通じて小池潰しをテレビ各局に依頼した?」・・・

馬鹿げた妄想だ。

ガン闘病者、その家族ーー何百万人もの人々を悲しみのどん底に叩き落とし、それでは飽き足らず、冷酷な言葉で弱者を突き放すような暴言を吐いた小池に対して、テレビ局に猛烈な抗議の電話が殺到することを事前に察知して手を打ったのだ。

その日19日の午後、3人の候補者が、坂上忍司会のフジテレビのお昼の番組「バイキング」に出演した。司会者を通さずに、直接、激論を戦わせてもらう、という企画である。

ここで、鳥越氏は、小池百合子に、「本当に、こんなことを言ったのか」と、問いただした。

彼女は、顔を引きつらせながら、次のように嘘をつき通した。

小池:「あはははっ、言ってないですね、記憶にないですね」。

小池:「でも、今、お元気になられてるじゃないですか」。

小池:「いやいや、(言ったことなど)記憶にないですよ}」。

鳥越:「私に言われたのは、いいとしましょう。
ガン・サバイバーという人は何十万、何百万といます。家族もいます。そういう人たちに、一回がんになったら、なにもできない、という差別的なイメージを与える」。

小池:「それが、選挙なんですよ、(司会の)坂上さん」。

ここまで嘘をつき続けることの意味が、どこにあるのか。

小池百合子は、謝罪すれば選挙に負けるという恐怖心から、全国のガン闘病者と、ともにガンと闘っている家族を敵に回してしまった。

鳥越氏が抗議しているのは、自分のためではなく、ガンと闘っている人々の気持ちを代弁すると同時に、小池百合子のような性根の腐りきった悪党に惑わされるな、と警告しているのである。

これは、ガンと闘いながらも家族や身内を亡した人間であれば骨身にしみている。その冷酷さに思わず背筋が凍る。

私も、その一人として、小池の心無い発言に心をいためたガン闘病者や、それを支えるご家族が、病気と闘う気力を失ってしまうことを心配する。

鳥越氏は、むしろ、ジャーナリストとして、ガンと闘っている人々とその家族のために怒ったのである。

彼はこうした弱者を擁護するために、小池のような国民を殺す権力者と戦っているのである。

ハフィントンポストは、「小池が謝罪した」と書いているが、動画を観る限り、小池は謝罪していない。追い詰められて、逃げ場がなくなったから仕方なく「わるうございました」と言うのは、謝罪ではなく自己保身である。そのほうが、自分にとって得だからだ。

彼女は、徹底的に追い詰めないと、決して非を認めない。

小池百合子が環境大臣のとき、水俣病の患者切り捨てをした人間として有名である。これは、実際の水俣病患者たちの証言である。 広瀬隆氏は、つい数日前、九州の講演会で、それを確認した。

小池百合子が謝罪することがあるとすれば、それは、道義的とか人道的とか、改悛の情とかとまったく無縁である。
自分にとって、そうすることが利益になるかどうかだけで決めているのである。

まったく、凄まじい冷酷さと打算である。彼女は「人」でなく、悪鬼そのものである。
安倍晋三に匹敵する超危険な国会議員なのである。

これは、日頃からジャーナリスティックな目で世の中を見ている人間でないと理解できないかも知れない。だから、小池のような稚拙な人間にさえ、いとも簡単に騙されてしまうのである。

ここまで分かっても、小池のような人間を都知事に推そうとしている有権者がいるということが私には信じられない。

小泉政権のとき、小池百合子は、自分でつくった愛情弁当を小泉純一郎のいる官邸に届けていた。これを週刊誌は、「小泉の○人」だと書きたてた。
確かに、打算と計算づくで、小池は小泉純一郎に最接近していった。

そんなとき、小池百合子は、突然、姿を消したことがあった。 長期間、姿を現さない小池に対して、週刊誌は、「肺炎か、それとも脳梗塞か。両方とも併発か。かなり重篤らしい」と書きたてた。

今もって謎だ。

さらに謎は、10年以上前から燻っている小池の学歴詐称疑惑だ。 ここにきてエジプト出身のタレントが、小池の学歴詐称を疑い出した。これに対して小池の反応はない。
これが事実でないとするなら、政治家の責任として10年以上も疑惑のママにしていいということはない。

そして、「自民党のもうひとつの文化」として定着している政治資金問題も、やはり浮上している。

いえいえ、「30万円の未記載」というようなケチな話ではなく、もっと大きな政治資金だ。

小池の支持者たちの中には、スピン報道によって国民の目をそらすために週刊誌にリークしている安倍官邸が小池潰しをやっている、と信じている人がいる。

しかし、これを暴露したのは、官邸のリークによって攪乱工作を請け負っている週刊文春ではなく、安倍晋三が目の敵にしている日刊ゲンダイである。小池潰し陰謀説は無理がある。

凶悪犯罪者、安倍晋三は、今度も週刊文春を使って鳥越俊太郎氏に関する捏造記事を書かせ、選挙妨害を仕掛けてきた

安倍晋三の命を受けた内調は、さっそく鳥越俊太郎氏のスキャンダルを仕掛けている。コピペサイトが、それはもう大騒ぎだ。

しかし、不思議なことに、小池百合子の犯罪性を伴う山もりのスキャンダルには触れない。

その鳥越氏の捏造スキャンダル記事を掲載した週刊文春は、「事実無根の選挙妨害」で東京地検に刑事告訴されそうだ。

だから、週刊文春が反安倍の政治家の記事を載せるときは、本当に知られては困ることを隠すときであり、それには内閣官房機密費が使われていると考えて間違いない。国民は、自分たちの払った税金で自分たちを洗脳させているのである。

内調の連中も、オリンピック利権にあやかろうと思っているのだろうか。安倍政権では、国家が主権者である国民に敵対するようになってしまった。

彼女は、「退路を断って(自民党の推薦を得ることができず)、たった一人の闘いだ」と息巻いているが、これもまた、巧妙な演出である。

youtubeやニュースの動画では、小池が、あたかも孤軍奮闘している女性闘士であるかのように演出されているが、演説が終わると、「いったいどこに、こんなにたくさんのボディーガードが潜んでいたのか」と思うくらい、大勢の支援者が彼女を取り巻く。

画像から分かるように、小池百合子は右翼団体「日本会議」の副会長で、ヘイトスピーチの在特会とも蜜月関係にある。

それだけでなく、小池百合子都知事候補の公式サイトに「東京に核ミサイルを」、「核武装を」、「急げ軍法会議」、「少子化の最大の原因は頼もしい男性が減っていること」などなど、あなたの子供の命を奪うためのメニューがズラリと並んでいるのである。

鳥越氏にテレビの生番組で「病み上がり発言」を問い詰められた時も同じ。「テレビカメラの前でだけは、お行儀よく笑顔でね」。 大衆を騙すことができれば、どんな嘘でも平気でつく女性なのである。これが「自民党の文化」が育んだ典型的な議員だ。

さすが、小泉の○人だけある。小池は小泉純一郎が使った有名な戦術ーー「抵抗勢力」を使っているのだ。

小池は、自分を応援しない自民党の連中を「抵抗勢力」に見立てて、「私が都知事になったら、ただちに都議会を解散する」と宣言している。

小泉も、「自民党を、ぶっ壊す!」と豪語した。

しかし、いざ政権を取ったら、正反対のことをやったのだ。
小池は、錆びついた小泉の戦術を倉庫の奥から取り出して、再びそれを利用しているに過ぎない。

偶像崇拝のカルトたち・・・しかし、それは三宅洋平という虚像であったという悲劇

もうひとつの「それが選挙ですから」と言ったのは、安倍晋三のイカレた女房、昭恵だ。

三宅洋平に政治を語る能力がないどころか、単なる扇動屋だと見抜いた安倍陣営が、「安倍自民は圧勝したのだから」と、余裕を持って三宅洋平の取り込みのために近づいてきたのである。

昭恵は、その時のことを、Facebookに書いている

彼女が晋三の指示によって、なぜ洋平を誘ったのか、その理由は、最後に書かれてある「なんで多くの人が、三宅洋平を熱烈に支持するのか、わかったような気がします。」という言葉からうかがい知ることができる。

コメント欄を読めば、三宅洋平の支援者が、続々と昭恵マジックに取り込まれていく様子を知ることができる。洋平の支持者には、こうした輩が揃っている。これを「乞食根性」という。

そのとき、昭恵が洋平に、「大丈夫です、それが選挙ですから」と言って、すぐさま携帯電話で安倍晋三に取り継いだと、洋平はツイートしている。これでも、偶然だと言うのだろうか。

洋平が、「国を思い世界を憂う国士」だと。究極のナルシズムに世界が笑っている。

洋平は、安倍晋三と携帯電話で短い会話を交わしたとき、「総理、何なら一緒に高江に行きませんか、とは云えませんでした。三宅はまだそんなもんです」と、己の小ささに気がついたとか・・・

そして、「高江の住民の気持ちを込めて「okinawa noproblem」capを昭恵さんに預けました」と、すっかり昭恵にほだされてしまった。

今日、安倍晋三と彼の官邸の命を受けて、米海兵隊のオスプレイ離発着帯(ヘリパッド)を建設する予定地「高江」に機動隊500人を投入して反対する沖縄の市民たちを強制排除する。

昭恵が、唐突に三宅洋平に近づいてきたのは、「高江」で起こることを、「なんとかフェス」で拡散させないようにするためである、と考える人が出てきても反論できない。

なぜ、洋平は、「何なら一緒に高江に行きませんか、とは云えませんでした」なのか。

機動隊の500人は、地元の人間ではなく、東京をはじめ各地方から私たちの税金で集められた武闘派である。

なぜ、洋平は「高江の住民の気持ちを込めて「okinawa noproblem」capを昭恵さんに預けました」などと言えるのか。沖縄の人々は、三宅洋平という薄っぺらな男の本性を知って、愛想をつかそうとしている。

あれほど、沖縄の人々の思いについて熱く語った洋平は嘘だったのか。事実は、そうであると告げている。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-6.jpg

結局、三宅洋平のような中途半端な腰砕けが、宮家のような盲目的な対米従属派の台頭を助けてしまうのである。

ヘンテコリンの安倍昭恵ごときに、いとも簡単に懐柔された洋平が、安倍晋三が河口湖のゴルフ場で、心置きなくゴルフを楽しんでいることを知らないはずはない。

晋三がゴルフをやるのが悪いと言っているのではない。それを知っていた洋平が悪いと言っているのでもない。
三宅洋平は、その片手間に取り扱われたという意味を考えろ、と言っているのである。

根強く不仲説が流され、一時期は「離婚秒読み」とまで報じられた安倍昭恵、そして、党本部から、「劇場型候補者に都政を任せるわけにはいかない」とまで言われた小池百合子。

ふたりとも、それでも「さらば安倍晋三」、「さらば自民党」と言わない。お人好しの愚民たちは、彼女たちの正体が、まだ分からない。

昭恵に関して言うなら、確かに原発再稼動の是非については逡巡が見られた。

しかし、選挙に勝ち続ける夫をマスコミが輝かしく描き続け、以前書いたように「自民党総裁任期延長論」がまことしやかに囁かれるになって、安倍帝国の姿が茫洋と浮かぶようになってくると、その迷いも吹っ切れて、久々に内助の功を発揮したくなってきたのだ。

ズバリ言えば、昭恵は夫とマスコミ、そして国家権力に抱擁されて、ナチスの道を選ぶと決めたのである。これが、彼女の本性である。

一見して、分別臭い大人たちは、「三宅洋平の言っていることは曖昧で、すべて賛同はできないが、若者が一生懸命になって何かを訴えている。とりあえず応援しよう」と思っている。

今回の参院選では、「誰を、どの政党を選べばいいのか分からない、しかし、選挙には行かなっきゃ」・・・こうした政治オンチの大人たちを引き込もうと、多くの「プロ若者たち」が思い思いに動いたことで、かえって事態を混乱させてしまった。

彼らの多くは民主主義を謳いながら、実は、民主主義をまったく理解していないし、モラトリアム選挙民をつくり出しているだけであるからタチが悪いのだ。

私は、「選挙は25歳から。自分で汗水流して、社会に叩かれて金を稼いだ経験のない人は選挙に行くべきではない」という主張を持っている。
社会の矛盾や不条理に触れ、その原因を追究しようという気になってはじめて候補者の品定めができるようになるのだ。

「18歳の子供は、ボーイフレンドやガールフレンドのことで頭の中を妄想だらけにして、おんもで遊んでろ!」というのが持論だ。

それが、突然、イエス・キリストのようなナルシス君が現れると、一瞬で政治を語る(そう思い込んでいる)プチ・インテリゲンチャに早変わりだ。

三宅洋平の演説に涙したというバカは多い。
そんな涙があるなら、福島の子供のために泣け。パレスチナの子供たちのために泣け。その欺瞞性に反吐が出る。

では本当のことを言ってやろうか。
「洋平演説に涙した」と書いている連中の半分は、扇動者であり、実際は涙など流していない。

その半分のうちの、さらに半分の連中は、洋平の支援者でなく、彼を追い落とそうとしている連中である。バカの連鎖が始まっているのである。

長い演説の動画を2、3本観てみたが、私には洋平が、いったい何が言いたいのか、まったく分からない。

日本人であれば、洋平の言っていることは当たり前すぎて、「はいはい、分かってる。だからその先は」ということになるはずだ。

お祭り好きの「プロ若者」たちが選挙をダメにした・・・いつものことだが

三宅洋平の戦略は、「選挙に行かない若者たちの目線に合わせて語り掛ける」ということらしい。

この種の見識と知識、構えのない人気取りが目的の人間にとって、「無関心層に易しく語りかけて選挙に行かせる」という言葉は巧妙な逃げ道として使われる。
自分の無知と計算高さを上手に隠してくれるからだ。

だから、選挙前に、このように書いた

・・・それに、むさくるしいヒゲをはやしたままで、立候補しようなどと、有権者をなめているのか、と言われても仕方がない。 「自分の信条? 生きざまそのもの?」 そんなもの捨てちまえだな。

メディア・チームに精鋭なんか集めたって駄目だ。
まずは、自分が何をしたいのか、政治信条を固めることからやり直しだ。

こんな無精面を誰が見たいと思うのか
そのボランティアの精鋭のメディアチームの一人たりとも、洋平君のひげを剃らせることができないのであれば結果は推して知るべし。

洋平君が最初にやるべきことは、自分の弱い心と戦うことだ。

「三宅洋平」でグーグル検索をかけると、ずらずらっと洋平を礼賛する記事が、延々と出て来る。次のページも、その次も・・・

この中の多くが、「ボランティアの精鋭のメディアチーム」とやらが書いた記事である。

これは逆効果である。
ネット上を、「三宅洋平」一色にすれば得票数が増えると思い込んでいるのだ。

本当に優れた選挙プランナーが、そのボランティアのチームの中に一人でもいれば、三宅洋平に批判的な記事を巧妙に入れ込んでくるはずだ。

三宅洋平の無精ひげを嫌っている有権者は多い。痩せこけた頬とギラつく目が、あることを連想させるからだ。

しかし、そうした人々は、洋平を批判しているのではない。

まったく逆で、「ひげを剃らなければ投票しない」と言っている有権者が実際に多くいることを知っているからこそ、そして、そうした世間の空気を読んでいるからこそ、そして、洋平に当選してほしいからこそ、ひげを剃るべきだと言っているのである。

「汚いひげを剃れ」と言っているのは、中高年ではない。三宅洋平と同じ年代か、もっと若い人々である。
彼らは、社会人で会社の上司から身だしなみについて色々言われている。

それがいいとか悪いとかではなく、最低限の「けじめ」くらいはつけろよ。と言っているのである。

洋平は、選挙後、「カルチャー層を中心とした無党派の新たな政治基盤を築けた」と言っている。

カルチャー層? そんなもの存在しない。
あるのは、A層かB層か、それともC層かだけである。

有権者の心理は消費者心理とは違うし、ましてや、それにマーケティングのセオリーを当てはめてをクラスター化すること自体がナンセンスである。

洋平の言っていることが、いかにペテンか、ちゃんとした知識がないと分からないだろうが、だからといって、この程度のことで「うんうん」と頷いている学識者や有識者が多数いることのほうが、恐怖なのである。

「自分らしくありたい」などと、ジョン・レノンのようなことを言えば、愚民ばかりの日本では受ける。

しかし、気まぐれな吟遊詩人、三宅洋平を必死になって応援していた、それらの愚民たちは、今になって「裏切られた」と彼に背を向け始めた。しっかりした視座を持てない日本人ならでは・・「昨日の友は今日の敵」・・・いつものことである。

結局、「選挙フェス」の本質は、ミュージシャン三宅洋平のプロモーション・イベントに過ぎないことが分かって来た。
それは、都市伝説と化し、洋平はただの選挙パフォーマーとして葬り去られるだろう。

それは、「情動」を利用している。そこでは、理性が隅っこに追いやられてしまう。

SEALDsも同様だ。音楽とラップを混ぜ込んだ選挙運動には注意しなければならない。それは、愚民の集客装置に他ならない。

反戦の高まりはウッドストックの大波を引き起こした。
その結果、何が残ったか・・・大量の大麻(マリファナ)をはじめとする麻薬常習者と犯罪者、それに人格崩壊者だ。

ウッドストックを推進した若者たちは、大麻(マリファナ)禁止は、自由主義と資本主義に敵対するものであって、われわれの自由を縛るものである、という間違った事実にもとづく主張をしていた。

ウッドストックによって頂点に達した大麻(マリファナ)解禁運動は、ニューエイジ・ムーヴメントから出てきたものである。そのニューエイジ運動のスポンサーは、ロックフェラーであった。
若者たちを麻薬で退廃させることによって、支配を容易にしようという狙いがあったのである。

今では、ジョージ・ソロスが引き継いで、米国の各州で大麻(マリファナ)合法化が進められている。結果、暴動が起こればFEMAが出動しようかという事態になっている。

「反戦」は、常に頭の良い大悪党に利用されてきた。彼らは、それによって莫大な利益を上げている。

支配者は、戦争を起こして金儲けをする好戦的な犯罪者であり、同時に、反戦を利用して、やはり金儲けをする厭戦的な犯罪者でもあるのだ。
支配者は、往復で金儲けをする。これを両建て主義という。

利用されるのは、いつも決まっている。
そう、無知で愚かな若者が常にたぶらかされる・・・。

その最大の功労者はビートルズである。彼らには、英国王室から大英帝国勲章が贈られた。

リヴァプールのチンピラたちは、今ではナイトであり、名前に「サー」がつく。

ビートルズの仕掛け人は、タヴィストック人間関係研究所である。

そのスポンサーである世界支配層に従順であったポール・マッカートニーは、ロンドン五輪の開幕式で、女王陛下のために、シオニスト・ユダヤのための音楽「ヘイ・ジュード」を歌う栄誉にあずかった。

反対に、自分たちが麻薬の伝道師として利用されたことに気が付いたジョン・レノンは「彼ら」に暗殺された。

三宅洋平にも、その臭いを感じ取る。彼は、やがて政治信条を180度変えるだろう。

彼は、果たして、「ポールになるか、ジョンになるか」・・・ここまで洋平を持ち上げておけば、彼のファンから文句は出ないだろう。

寄付で集めた1750万円という大金はーーしかし、彼は本当の意味で政治活動はやらなかったのだからーーこの「選挙フェス」というイベントの参加費だと思えばいいのだ。

しかし、それ相当の金をつぎこんだイベントにしては、波及力がなかった。

選挙パフォーマーなら、外山恒一の方が数段優れている。彼は、なんと、東京都知事選に立候補した2007年の時点で、すでに日本がグローバリズムに取り込まれることを知っていた。

彼が繰り返し言っている「迫害されている少数派」が、この政見放送から8年経った今、「99%の多数派」になっているというわけである。
それまで、「多数派」にいたはずの中流層が、この間に徐々に崩壊して、気がついたら、かつての「少数派」に組み込まれていた、ということである。

中間層が本来得るべきはずの富は、巧妙な仕組みを経て、「少数派の中の少数派」である「1%」に移転したのだ。

日本の崩壊に加担するハーメルンの笛吹男

三宅洋平は、安倍昭恵に会ってはならなかった。

さっそく、安倍のプロパガンダ紙・産経新聞は、「昭恵夫人介し安倍晋三首相と意気投合」という見出しを掲げて印象操作をやり始めた。
反安倍の分断工作が始まったのだ。

さらに、三宅洋平は、これから出て来るさまざまな酷い経済指標を見た彼の支援者に、「日本の崩壊に加担するハーメルンの笛吹男」とまで言われるだろう。

昭恵は晋三の妻として、立派に内助の功を発揮している、というわけである。

彼は、自分を支えてくれている人々の思いを斟酌できないバカな気まぐれ男である。

今、洋平は「いくらでも幻滅すればいい。俺は俺だから、 何も減らない。 I am what I am.」と開き直っている。

これでは、自分に批判の言葉を浴びせ始めた支援者に対して、「お前たち、なんにもわかっちゃいない」と言っているように受け取られかねない。洋平という男が、人の義に報いる男かどうか、見極めなければならない。彼は、そうではない。

彼は、もっとも政治家にしてはならない人間である。
支援者の思いより、「俺様の生き方を優先する」というのであれば、政治などできるはずがない。

これからは、永遠のやんちゃ坊主として生きていくのが「俺らしい」。「俺は俺だから」が、彼の身の丈サイズの世界である。何も無理することはないのだ。自分の生き方を貫き通せばいいのだ。

ただ、それを、税金を使って政治の世界でやられては困る!と言っているのだ。

映画監督の想田和弘氏が、自身のFacebookで、洋平を気遣いながらも、しっかり総括している。「昭恵との会い方に知恵がなかった」と。

医学部出身のおしどりのマコ氏が、民主主義について自分の考え方をまとめている。
その中で、彼女はこう書いている。

「誰がなんといおうと、すごい肩書の賢い人たちがいろいろ言おうと、 周囲の方々にたくさん詰め寄られようと、最後の一人になろうと、でも、私は、福島第一原発事故の対応は間違ってると思います、と言えなくてはダメだ、 そして、そういう方々が増えないと、何も変わらないんだ、と思ったのですね。」

彼女は、本当の意味で民主主義を理解している。

同時に、数の論理で押し切ろうとする「野合」が、民主主義を破壊することも知っている。
民主主義とは、愚民に与えると凶器に変わる諸刃の剣であることも知っている。

彼女は、それを知った上で、強い意志で民主主義を貫こうとしている。高潔な人柄だ。

もちろん、彼女は他人から称賛されるために身銭を切って活動しているわけではない。
しかし、そこから得られる至福の報果は、彼女にしか与えられないし、彼女にしか理解できない。

残念なことに、限りなく100%の人々は、そうではない。もっとずっと小乗的な人々なのである。

そう、洋平の選挙フェスに何万人、何十万人集まった、と数を競っている愚民のことである。
といって、彼らが、決して数こそが民主主義であると思い込んでいるわけではないことくらい理解している。

問題は、数を誇るという袋小路に追い込まれてしまっていることなのだ。
つまり、三宅洋平に夢を託す「候補者依存という麻薬」に魅せられてしまっているのである。

そこには、自分の思考はない。

民主主義は人々が個々の立場で自由に考えることが基盤だ。
しかし、その権利をみすみす放棄している人々が多くいるのである。常に主張よりも、まずムラを先につくりたがる日本人は、民主主義にもっとも不向きな国民だ。

彼らは「洗脳から覚めた、自分で考えることを実践している」と思い込んでいる。

そうした錯覚を利用して自分を納得させてはならない。自分自身のアングルで見ないと愚民は永遠に愚民のままだ。

だから、東京都民が洗脳から解かれるためには、もう政治家に期待してはならないということだ。
ましてや、政治家に下駄をあずけるなどと、いつまでも候補者依存選挙をやっていてはならない。

安倍晋三と官邸によって、陰湿な言論封鎖が日々、強まっていることが皮膚感覚で分かっているのであれば、彼らが封印しようとしている情報が外に出てくるようにして、一人一人が考える機会を増やすことから、すべてが始まるのである。

だから、小池や増田、その他の候補者は適任ではない。彼らは「隠す側」の人間であるからだ。

唯一、鳥越俊太郎なら、これまでの都知事とは全く正反対で隠されていた情報を国民の前に全開にするだろう。その上で、人々は、それぞれの考え方を構築することができるのだ。

上杉隆氏も立候補しているが、彼は、そもそも勝とうと考えていないように見える。だから、どうしても応援が薄くなってしまう。

それより、このマスコミで報じられない公開討論会の動画を観て何を感じるだろうか。
7月12日、告示に先駆けて東京・赤坂民ホールで行われた公開討論会の一幕である。主催者は、日本青年会議所である。

マック赤坂「ちょっと待った!赤坂警察を呼んでます!公職選挙法違反の現行犯!これは明らかに民主主義じゃない!一部の候補者だけ壇上に上がって!」。

マック赤坂氏は、お騒がせオジサンですか?

公示の2日前のことではあるが、事実上の公示は済んでいる。
これは、マック赤坂氏がまったく正しいのであって、周囲の人々が狂っているのである。間違いなく、主催者側の日本青年会議所のほうが公職選挙法違反である。

しかし、誰も騒がず大人しくしている。

その後の、電波メディアからの他の候補者の徹底した締め出しは、公職選挙法云々を言う前に、知る権利を侵害している。

安倍政権が続けば続くほど、人々は理性を失い精神崩壊が顕著になっていくのである。

わずかの間に、まったく凄まじい国になった。それでも国民は関心を持たない・・・気が付かない・・・

いずれにしても、三宅洋平というノーテンキな男を応援していた人々は、やがて彼を批判する側に回るだろう。
そういう人々が、自分の口を汚すことは民主主義から遠のくことを意味する。しかし、それが世の常・・・人々は、そう自分に言い聞かせてきた。

このグータラ男を、鳥越俊太郎氏の応援演説に担ぎ出そうという輩がいる。鳥越選挙対策事務所は、三宅洋平をシャットアウトするように。

それより、洋平、寄付金を今後どう使うのか、寄付してくれた人たちに何らかのコメントを出す必要があるだろう。

大橋巨泉は、週刊誌の連載で、「この男は本当に悪い」と安倍の本性を見抜いていた。

巨泉は、安倍首相主催の「桜を見る会」に呼ばれて有頂天の太田光に「太田、お前は利用されてるんだよ」と叱った。結局、太田は花見会に行って夫婦げんかが勃発。

巨泉にも安倍から招待状が届いたが巨泉は無視した。

彼が生きていたら洋平にも同じことを言うだろうか。

いや、大橋巨泉の性格なら、三宅洋平には何も言わないだろう。彼は、上っ面だけで中身のない女々しい男が大嫌いだからだ。

その大橋巨泉は、今月12日、亡くなった

人々は気づいていないが、日本の状況はかなり深刻だ。それは回避不能なレベルまで来てしまっている。

安倍晋三は、案の定、今度の選挙でも国民を騙した。晋三は、「アベノミクスは失敗していないが、道半ばです!」を繰り返し有権者にいい続けている。

選挙で勝ったとたんに経済成長見通しを下方修正してきた。(または、日経新聞)

とっくの昔にアベノミクスは破綻しているのに、まだ信じているのは、本当に世界中で日本の国民だけなのである。
どの英語圏のメディアでも、「アベノミクスは失敗していない」などと書いているメディアは、ただの一つもない。

それだけでなく、29日には、GPIFの年金投資による大損失(その数字は過小評価されている)が発覚して、高齢者の人生が破滅させれられたことを知るだろう。パニックが起こらないことを祈る。

都知事選の投開票日は31日だ。

東京が先か、日本が先か、それとも両方で相乗的な大崩壊に至るのか、それが決まる選挙結果になる。


http://www.asyura2.com/14/test31/msg/530.html
[テスト31] テスト
本性が露呈された小池百合子と選挙パフォーマー三宅洋平(カレイドスコープ)

本性が露呈された小池百合子と選挙パフォーマー三宅洋平
http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-4502.html
2016年07月20日 カレイドスコープ

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-7.jpg

日本をアメリカと瓜二つの国に造り替えようとしている安倍政権。都知事選でも、ミニ大統領選さながらの舌戦が展開されている。

都知事候補の増田寛也は、清和政策研究会(ロックフェラーCFRのカウンターパート)の安倍晋三と森喜朗がオリンピック利権を一手に握ろうと送り込んだ代理人である。

一方の小池百合子の背中には小泉純一郎の生霊が憑いている。こちらにも、清和政策研究会の亡霊が憑依している。だから、叩けば、いくらでも埃が出る。

増田寛也は単なる当て馬だ。姦計に長けている自民の本命は小池百合子だ。彼女こそが安倍晋三と軌を一にする候補者だ。

自民党本部は、「劇場型候補者に都政を任せるわけにはいかない」と言っているが、そういえば言うほど、小池に支援者が集まることを知っている。
つまり、「東京都知事は、民主主義ではなく、支配者であるわれわれ自民党が決めているのだ」と言っているのである。

小池百合子は、それに、たった一人で立ち向かっていると。

国民は、すでに「小泉劇場」のバージョンを見せられているのである。

全国数百万人のガン・サバイバーを失意のどん底に叩き落とした小池百合子という女の残酷さ

「それが選挙ですから」・・・

奇しくも、今回の選挙に絡んで、自民党の女性が言った言葉だ。

ひとつは、都知事選の演説で、“マダム回転寿司”こと小池百合子が鳥越俊太郎氏にあてつけて言った言葉である。

もうひとつは、参院選後、三宅洋平が安倍晋三の奥方、昭恵に会ったとき、彼女が洋平に言った言葉である。

「それが選挙ですから」・・・都知事選、参院選と、シチュエーションは異なるが、小池百合子、安倍昭恵ともに、その意味するところは同じである。

つまり、彼女たちは、「選挙では対立候補を倒すためなら、過激な言動も許される」と言っているのである。たとえ、それが嘘であっても・・・

大嘘つきの人格破綻者、自民党の丸川珠代が、議場で耳をふさぎたくなるようなヤジを飛ばし続けていることは良く知られている。
安倍晋三は、これを「ヤジは議場の華だ」と言った。

ヤジについては、晋三のほうも、決して丸川に負けてはいない

もっとも、小池百合子のヤジは、晋三や丸川のヤジより、いくぶん高品質だ。

相手を倒すためなら、どんな誹謗中傷でも、どんな嘘でも平気でやってしまえ! これが、「自民党の文化」なのである。

その悪しき文化が、自民党インターネットサポータークラブという言論暴力集団をつくり出したのだ。

「自民党の文化」では、二言目には「有権者に丁寧にご説明して・・」が出てくるが、タダの一度も国民に説明したことがない。

それどころか、自民党支持層のB層をいかにして増殖させようかと、日々、騙しのテクニックを磨いているのである。
それが、自民党の強さを支えてきたし、これからも、そう考えているからである。

ただし、政界世渡り上手の小池百合子の鳥越氏に対する今回の差別的な発言は、「自民党の文化」をはるかに逸脱している。

小池は、脅威となっている鳥越俊太郎氏を「病人の役立たず」と印象付けようと、公衆の面前で声を張り上げながら、「病み上がりの人を、ただただ連れてくればいいというものではないんです!」とやってしまったのである。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-1.jpg

これは、誰が聞いてもガン闘病者に対する差別である。
これでは、どんな弁明もできない。

かなり悪質であり、彼女の性悪さ、冷酷さ、姑息さ、卑劣さのすべてが吐露されてしまったという点では致命的となった。

この言葉を聞いた瞬間、小池百合子を応援しようと秋葉原の街頭演説の場に集まった大衆は、彼女の冷酷さに、いっぺんにその熱を冷まされた。

後ろで、「そうだ! そうだ!」と掛け声をかけて、その場に集まった大衆を扇動しているのは、小池のプロ支援者たちである。

しかし、小池は、本当にそんな破廉恥なことを言ったのだろうか・・・。動画では、確かに「病み上がりでは役に立たない」という意味のことを言っている。

早速、マスコミの記者は街頭演説を終えた小池をつかまえて、「どういった意味でおっしゃったのでしょうか?」と問いただす。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-4.jpg

いつものように、ヘラヘラ笑いながら、「私は、ちゃんとファクト(事実)を申し上げた」と彼女は言った。

鳥越氏について、「なんの政策もない、病み上がりガン患者では役に立たない」というのは事実を言ったまでだ、と小池は念押ししたのである。

しかし、鳥越氏は参院選の結果を見て、「なんとかしなければ、と急に都知事選への出馬を決めたので準備不足」とテレビ番組に出演するたびに有権者に断りを入れている。

「なんの政策もない」というのは、むしろ小池百合子が昔から言われ続けていることで、くるくる回る回転スシのように、そのときどきの都合によって、次々と政党を渡り歩くことから「マダム回転スシ」と言われるようになった。

自分の舌禍が大きな波紋を呼びそうな予感を持っていたにもかかわらず、別の記者につかまって同じことを訊かれた小池は、ここでも・・・

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-3.jpg

「そういう意味で言ったのではなく、(鳥越氏が)元気でやっている、ということを強調したかった」と、今度は180度、逆のこと言っている。
「嘘の上塗り」とは、このことである。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-5.jpg

これは複数のテレビ報道で流されてしまった。

鳥越氏のことを「病み上がり」と罵倒することが、鳥越氏が「元気でやっている」ことを強調することになる、と彼女は説明する。

彼女の感覚であれば政治家になってはならない。頭がイカレているからである。

そう、鳥越氏のことを心配する前に、彼女のほうこそ(これから書く)脳梗塞の後遺症で、正常な思考ができなくなっていることを疑うのだ。

大衆に分からなければ、相手を目の前にして堂々と嘘をつく女

もともと、小池百合子は、エジプトのクフ王のピラミッドの頂上に上って振り袖姿でお茶を立てた変な日本人として有名になった。

しかし、私の中では、なんといっても、彼女が環境大臣のときに、どーしようもないクールビズを普及させたこと、そして、次に防衛大臣になったとき、自衛隊の年間の二酸化炭素(CO2)の排出量は数百万トンに上ることを最悪の環境破壊としながら、「自衛隊は、ハイブリッド戦闘機とか燃料電池戦車に切り替えるべきだ」と言って国民を唖然とさせた、あのイメージが強い。

つい、数日前も、都知事選の討論で、「オスプレイは必要だ。垂直離発着機は環境に優しいからだ」と言った。住民の安全より環境優先の考え方をするところをみると、ナチスの優生学思想に汚染されていることは明白である。

「これは、東電の犬、増田寛也では勝てないと焦った自民党が、電通を通じて小池潰しをテレビ各局に依頼した?」・・・

馬鹿げた妄想だ。

ガン闘病者、その家族ーー何百万人もの人々を悲しみのどん底に叩き落とし、それでは飽き足らず、冷酷な言葉で弱者を突き放すような暴言を吐いた小池に対して、テレビ局に猛烈な抗議の電話が殺到することを事前に察知して手を打ったのだ。

その日19日の午後、3人の候補者が、坂上忍司会のフジテレビのお昼の番組「バイキング」に出演した。司会者を通さずに、直接、激論を戦わせてもらう、という企画である。

ここで、鳥越氏は、小池百合子に、「本当に、こんなことを言ったのか」と、問いただした。

彼女は、顔を引きつらせながら、次のように嘘をつき通した。

小池:「あはははっ、言ってないですね、記憶にないですね」。

小池:「でも、今、お元気になられてるじゃないですか」。

小池:「いやいや、(言ったことなど)記憶にないですよ}」。

鳥越:「私に言われたのは、いいとしましょう。
ガン・サバイバーという人は何十万、何百万といます。家族もいます。そういう人たちに、一回がんになったら、なにもできない、という差別的なイメージを与える」。

小池:「それが、選挙なんですよ、(司会の)坂上さん」。

ここまで嘘をつき続けることの意味が、どこにあるのか。

小池百合子は、謝罪すれば選挙に負けるという恐怖心から、全国のガン闘病者と、ともにガンと闘っている家族を敵に回してしまった。

鳥越氏が抗議しているのは、自分のためではなく、ガンと闘っている人々の気持ちを代弁すると同時に、小池百合子のような性根の腐りきった悪党に惑わされるな、と警告しているのである。

これは、ガンと闘いながらも家族や身内を亡した人間であれば骨身にしみている。その冷酷さに思わず背筋が凍る。

私も、その一人として、小池の心無い発言に心をいためたガン闘病者や、それを支えるご家族が、病気と闘う気力を失ってしまうことを心配する。

鳥越氏は、むしろ、ジャーナリストとして、ガンと闘っている人々とその家族のために怒ったのである。

彼はこうした弱者を擁護するために、小池のような国民を殺す権力者と戦っているのである。

ハフィントンポストは、「小池が謝罪した」と書いているが、動画を観る限り、小池は謝罪していない。追い詰められて、逃げ場がなくなったから仕方なく「わるうございました」と言うのは、謝罪ではなく自己保身である。そのほうが、自分にとって得だからだ。

彼女は、徹底的に追い詰めないと、決して非を認めない。

小池百合子が環境大臣のとき、水俣病の患者切り捨てをした人間として有名である。これは、実際の水俣病患者たちの証言である。 広瀬隆氏は、つい数日前、九州の講演会で、それを確認した。

小池百合子が謝罪することがあるとすれば、それは、道義的とか人道的とか、改悛の情とかとまったく無縁である。
自分にとって、そうすることが利益になるかどうかだけで決めているのである。

まったく、凄まじい冷酷さと打算である。彼女は「人」でなく、悪鬼そのものである。
安倍晋三に匹敵する超危険な国会議員なのである。

これは、日頃からジャーナリスティックな目で世の中を見ている人間でないと理解できないかも知れない。だから、小池のような稚拙な人間にさえ、いとも簡単に騙されてしまうのである。

ここまで分かっても、小池のような人間を都知事に推そうとしている有権者がいるということが私には信じられない。

小泉政権のとき、小池百合子は、自分でつくった愛情弁当を小泉純一郎のいる官邸に届けていた。これを週刊誌は、「小泉の○人」だと書きたてた。
確かに、打算と計算づくで、小池は小泉純一郎に最接近していった。

そんなとき、小池百合子は、突然、姿を消したことがあった。 長期間、姿を現さない小池に対して、週刊誌は、「肺炎か、それとも脳梗塞か。両方とも併発か。かなり重篤らしい」と書きたてた。

今もって謎だ。

さらに謎は、10年以上前から燻っている小池の学歴詐称疑惑だ。 ここにきてエジプト出身のタレントが、小池の学歴詐称を疑い出した。これに対して小池の反応はない。
これが事実でないとするなら、政治家の責任として10年以上も疑惑のママにしていいということはない。

そして、「自民党のもうひとつの文化」として定着している政治資金問題も、やはり浮上している。

いえいえ、「30万円の未記載」というようなケチな話ではなく、もっと大きな政治資金だ。

小池の支持者たちの中には、スピン報道によって国民の目をそらすために週刊誌にリークしている安倍官邸が小池潰しをやっている、と信じている人がいる。

しかし、これを暴露したのは、官邸のリークによって攪乱工作を請け負っている週刊文春ではなく、安倍晋三が目の敵にしている日刊ゲンダイである。小池潰し陰謀説は無理がある。

凶悪犯罪者、安倍晋三は、今度も週刊文春を使って鳥越俊太郎氏に関する捏造記事を書かせ、選挙妨害を仕掛けてきた

安倍晋三の命を受けた内調は、さっそく鳥越俊太郎氏のスキャンダルを仕掛けている。コピペサイトが、それはもう大騒ぎだ。

しかし、不思議なことに、小池百合子の犯罪性を伴う山もりのスキャンダルには触れない。

その鳥越氏の捏造スキャンダル記事を掲載した週刊文春は、「事実無根の選挙妨害」で東京地検に刑事告訴されそうだ。

だから、週刊文春が反安倍の政治家の記事を載せるときは、本当に知られては困ることを隠すときであり、それには内閣官房機密費が使われていると考えて間違いない。国民は、自分たちの払った税金で自分たちを洗脳させているのである。

内調の連中も、オリンピック利権にあやかろうと思っているのだろうか。安倍政権では、国家が主権者である国民に敵対するようになってしまった。

彼女は、「退路を断って(自民党の推薦を得ることができず)、たった一人の闘いだ」と息巻いているが、これもまた、巧妙な演出である。

youtubeやニュースの動画では、小池が、あたかも孤軍奮闘している女性闘士であるかのように演出されているが、演説が終わると、「いったいどこに、こんなにたくさんのボディーガードが潜んでいたのか」と思うくらい、大勢の支援者が彼女を取り巻く。

画像から分かるように、小池百合子は右翼団体「日本会議」の副会長で、ヘイトスピーチの在特会とも蜜月関係にある。

それだけでなく、小池百合子都知事候補の公式サイトに「東京に核ミサイルを」、「核武装を」、「急げ軍法会議」、「少子化の最大の原因は頼もしい男性が減っていること」などなど、あなたの子供の命を奪うためのメニューがズラリと並んでいるのである。

鳥越氏にテレビの生番組で「病み上がり発言」を問い詰められた時も同じ。「テレビカメラの前でだけは、お行儀よく笑顔でね」。 大衆を騙すことができれば、どんな嘘でも平気でつく女性なのである。これが「自民党の文化」が育んだ典型的な議員だ。

さすが、小泉の○人だけある。小池は小泉純一郎が使った有名な戦術ーー「抵抗勢力」を使っているのだ。

小池は、自分を応援しない自民党の連中を「抵抗勢力」に見立てて、「私が都知事になったら、ただちに都議会を解散する」と宣言している。

小泉も、「自民党を、ぶっ壊す!」と豪語した。

しかし、いざ政権を取ったら、正反対のことをやったのだ。
小池は、錆びついた小泉の戦術を倉庫の奥から取り出して、再びそれを利用しているに過ぎない。

偶像崇拝のカルトたち・・・しかし、それは三宅洋平という虚像であったという悲劇

もうひとつの「それが選挙ですから」と言ったのは、安倍晋三のイカレた女房、昭恵だ。

三宅洋平に政治を語る能力がないどころか、単なる扇動屋だと見抜いた安倍陣営が、「安倍自民は圧勝したのだから」と、余裕を持って三宅洋平の取り込みのために近づいてきたのである。

昭恵は、その時のことを、Facebookに書いている

彼女が晋三の指示によって、なぜ洋平を誘ったのか、その理由は、最後に書かれてある「なんで多くの人が、三宅洋平を熱烈に支持するのか、わかったような気がします。」という言葉からうかがい知ることができる。

コメント欄を読めば、三宅洋平の支援者が、続々と昭恵マジックに取り込まれていく様子を知ることができる。洋平の支持者には、こうした輩が揃っている。これを「乞食根性」という。

そのとき、昭恵が洋平に、「大丈夫です、それが選挙ですから」と言って、すぐさま携帯電話で安倍晋三に取り継いだと、洋平はツイートしている。これでも、偶然だと言うのだろうか。

洋平が、「国を思い世界を憂う国士」だと。究極のナルシズムに世界が笑っている。

洋平は、安倍晋三と携帯電話で短い会話を交わしたとき、「総理、何なら一緒に高江に行きませんか、とは云えませんでした。三宅はまだそんなもんです」と、己の小ささに気がついたとか・・・

そして、「高江の住民の気持ちを込めて「okinawa noproblem」capを昭恵さんに預けました」と、すっかり昭恵にほだされてしまった。

今日、安倍晋三と彼の官邸の命を受けて、米海兵隊のオスプレイ離発着帯(ヘリパッド)を建設する予定地「高江」に機動隊500人を投入して反対する沖縄の市民たちを強制排除する。

昭恵が、唐突に三宅洋平に近づいてきたのは、「高江」で起こることを、「なんとかフェス」で拡散させないようにするためである、と考える人が出てきても反論できない。

なぜ、洋平は、「何なら一緒に高江に行きませんか、とは云えませんでした」なのか。

機動隊の500人は、地元の人間ではなく、東京をはじめ各地方から私たちの税金で集められた武闘派である。

なぜ、洋平は「高江の住民の気持ちを込めて「okinawa noproblem」capを昭恵さんに預けました」などと言えるのか。沖縄の人々は、三宅洋平という薄っぺらな男の本性を知って、愛想をつかそうとしている。

あれほど、沖縄の人々の思いについて熱く語った洋平は嘘だったのか。事実は、そうであると告げている。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-6.jpg

結局、三宅洋平のような中途半端な腰砕けが、宮家のような盲目的な対米従属派の台頭を助けてしまうのである。

ヘンテコリンの安倍昭恵ごときに、いとも簡単に懐柔された洋平が、安倍晋三が河口湖のゴルフ場で、心置きなくゴルフを楽しんでいることを知らないはずはない。

晋三がゴルフをやるのが悪いと言っているのではない。それを知っていた洋平が悪いと言っているのでもない。
三宅洋平は、その片手間に取り扱われたという意味を考えろ、と言っているのである。

根強く不仲説が流され、一時期は「離婚秒読み」とまで報じられた安倍昭恵、そして、党本部から、「劇場型候補者に都政を任せるわけにはいかない」とまで言われた小池百合子。

ふたりとも、それでも「さらば安倍晋三」、「さらば自民党」と言わない。お人好しの愚民たちは、彼女たちの正体が、まだ分からない。

昭恵に関して言うなら、確かに原発再稼動の是非については逡巡が見られた。

しかし、選挙に勝ち続ける夫をマスコミが輝かしく描き続け、以前書いたように「自民党総裁任期延長論」がまことしやかに囁かれるになって、安倍帝国の姿が茫洋と浮かぶようになってくると、その迷いも吹っ切れて、久々に内助の功を発揮したくなってきたのだ。

ズバリ言えば、昭恵は夫とマスコミ、そして国家権力に抱擁されて、ナチスの道を選ぶと決めたのである。これが、彼女の本性である。

一見して、分別臭い大人たちは、「三宅洋平の言っていることは曖昧で、すべて賛同はできないが、若者が一生懸命になって何かを訴えている。とりあえず応援しよう」と思っている。

今回の参院選では、「誰を、どの政党を選べばいいのか分からない、しかし、選挙には行かなっきゃ」・・・こうした政治オンチの大人たちを引き込もうと、多くの「プロ若者たち」が思い思いに動いたことで、かえって事態を混乱させてしまった。

彼らの多くは民主主義を謳いながら、実は、民主主義をまったく理解していないし、モラトリアム選挙民をつくり出しているだけであるからタチが悪いのだ。

私は、「選挙は25歳から。自分で汗水流して、社会に叩かれて金を稼いだ経験のない人は選挙に行くべきではない」という主張を持っている。
社会の矛盾や不条理に触れ、その原因を追究しようという気になってはじめて候補者の品定めができるようになるのだ。

「18歳の子供は、ボーイフレンドやガールフレンドのことで頭の中を妄想だらけにして、おんもで遊んでろ!」というのが持論だ。

それが、突然、イエス・キリストのようなナルシス君が現れると、一瞬で政治を語る(そう思い込んでいる)プチ・インテリゲンチャに早変わりだ。

三宅洋平の演説に涙したというバカは多い。
そんな涙があるなら、福島の子供のために泣け。パレスチナの子供たちのために泣け。その欺瞞性に反吐が出る。

では本当のことを言ってやろうか。
「洋平演説に涙した」と書いている連中の半分は、扇動者であり、実際は涙など流していない。

その半分のうちの、さらに半分の連中は、洋平の支援者でなく、彼を追い落とそうとしている連中である。バカの連鎖が始まっているのである。

長い演説の動画を2、3本観てみたが、私には洋平が、いったい何が言いたいのか、まったく分からない。

日本人であれば、洋平の言っていることは当たり前すぎて、「はいはい、分かってる。だからその先は」ということになるはずだ。

お祭り好きの「プロ若者」たちが選挙をダメにした・・・いつものことだが

三宅洋平の戦略は、「選挙に行かない若者たちの目線に合わせて語り掛ける」ということらしい。

この種の見識と知識、構えのない人気取りが目的の人間にとって、「無関心層に易しく語りかけて選挙に行かせる」という言葉は巧妙な逃げ道として使われる。
自分の無知と計算高さを上手に隠してくれるからだ。

だから、選挙前に、このように書いた

・・・それに、むさくるしいヒゲをはやしたままで、立候補しようなどと、有権者をなめているのか、と言われても仕方がない。 「自分の信条? 生きざまそのもの?」 そんなもの捨てちまえだな。

メディア・チームに精鋭なんか集めたって駄目だ。
まずは、自分が何をしたいのか、政治信条を固めることからやり直しだ。

こんな無精面を誰が見たいと思うのか
そのボランティアの精鋭のメディアチームの一人たりとも、洋平君のひげを剃らせることができないのであれば結果は推して知るべし。

洋平君が最初にやるべきことは、自分の弱い心と戦うことだ。

「三宅洋平」でグーグル検索をかけると、ずらずらっと洋平を礼賛する記事が、延々と出て来る。次のページも、その次も・・・

この中の多くが、「ボランティアの精鋭のメディアチーム」とやらが書いた記事である。

これは逆効果である。
ネット上を、「三宅洋平」一色にすれば得票数が増えると思い込んでいるのだ。

本当に優れた選挙プランナーが、そのボランティアのチームの中に一人でもいれば、三宅洋平に批判的な記事を巧妙に入れ込んでくるはずだ。

三宅洋平の無精ひげを嫌っている有権者は多い。痩せこけた頬とギラつく目が、あることを連想させるからだ。

しかし、そうした人々は、洋平を批判しているのではない。

まったく逆で、「ひげを剃らなければ投票しない」と言っている有権者が実際に多くいることを知っているからこそ、そして、そうした世間の空気を読んでいるからこそ、そして、洋平に当選してほしいからこそ、ひげを剃るべきだと言っているのである。

「汚いひげを剃れ」と言っているのは、中高年ではない。三宅洋平と同じ年代か、もっと若い人々である。
彼らは、社会人で会社の上司から身だしなみについて色々言われている。

それがいいとか悪いとかではなく、最低限の「けじめ」くらいはつけろよ。と言っているのである。

洋平は、選挙後、「カルチャー層を中心とした無党派の新たな政治基盤を築けた」と言っている。

カルチャー層? そんなもの存在しない。
あるのは、A層かB層か、それともC層かだけである。

有権者の心理は消費者心理とは違うし、ましてや、それにマーケティングのセオリーを当てはめてをクラスター化すること自体がナンセンスである。

洋平の言っていることが、いかにペテンか、ちゃんとした知識がないと分からないだろうが、だからといって、この程度のことで「うんうん」と頷いている学識者や有識者が多数いることのほうが、恐怖なのである。

「自分らしくありたい」などと、ジョン・レノンのようなことを言えば、愚民ばかりの日本では受ける。

しかし、気まぐれな吟遊詩人、三宅洋平を必死になって応援していた、それらの愚民たちは、今になって「裏切られた」と彼に背を向け始めた。しっかりした視座を持てない日本人ならでは・・「昨日の友は今日の敵」・・・いつものことである。

結局、「選挙フェス」の本質は、ミュージシャン三宅洋平のプロモーション・イベントに過ぎないことが分かって来た。
それは、都市伝説と化し、洋平はただの選挙パフォーマーとして葬り去られるだろう。

それは、「情動」を利用している。そこでは、理性が隅っこに追いやられてしまう。

SEALDsも同様だ。音楽とラップを混ぜ込んだ選挙運動には注意しなければならない。それは、愚民の集客装置に他ならない。

反戦の高まりはウッドストックの大波を引き起こした。
その結果、何が残ったか・・・大量の大麻(マリファナ)をはじめとする麻薬常習者と犯罪者、それに人格崩壊者だ。

ウッドストックを推進した若者たちは、大麻(マリファナ)禁止は、自由主義と資本主義に敵対するものであって、われわれの自由を縛るものである、という間違った事実にもとづく主張をしていた。

ウッドストックによって頂点に達した大麻(マリファナ)解禁運動は、ニューエイジ・ムーヴメントから出てきたものである。そのニューエイジ運動のスポンサーは、ロックフェラーであった。
若者たちを麻薬で退廃させることによって、支配を容易にしようという狙いがあったのである。

今では、ジョージ・ソロスが引き継いで、米国の各州で大麻(マリファナ)合法化が進められている。結果、暴動が起こればFEMAが出動しようかという事態になっている。

「反戦」は、常に頭の良い大悪党に利用されてきた。彼らは、それによって莫大な利益を上げている。

支配者は、戦争を起こして金儲けをする好戦的な犯罪者であり、同時に、反戦を利用して、やはり金儲けをする厭戦的な犯罪者でもあるのだ。
支配者は、往復で金儲けをする。これを両建て主義という。

利用されるのは、いつも決まっている。
そう、無知で愚かな若者が常にたぶらかされる・・・。

その最大の功労者はビートルズである。彼らには、英国王室から大英帝国勲章が贈られた。

リヴァプールのチンピラたちは、今ではナイトであり、名前に「サー」がつく。

ビートルズの仕掛け人は、タヴィストック人間関係研究所である。

そのスポンサーである世界支配層に従順であったポール・マッカートニーは、ロンドン五輪の開幕式で、女王陛下のために、シオニスト・ユダヤのための音楽「ヘイ・ジュード」を歌う栄誉にあずかった。

反対に、自分たちが麻薬の伝道師として利用されたことに気が付いたジョン・レノンは「彼ら」に暗殺された。

三宅洋平にも、その臭いを感じ取る。彼は、やがて政治信条を180度変えるだろう。

彼は、果たして、「ポールになるか、ジョンになるか」・・・ここまで洋平を持ち上げておけば、彼のファンから文句は出ないだろう。

寄付で集めた1750万円という大金はーーしかし、彼は本当の意味で政治活動はやらなかったのだからーーこの「選挙フェス」というイベントの参加費だと思えばいいのだ。

しかし、それ相当の金をつぎこんだイベントにしては、波及力がなかった。

選挙パフォーマーなら、外山恒一の方が数段優れている。彼は、なんと、東京都知事選に立候補した2007年の時点で、すでに日本がグローバリズムに取り込まれることを知っていた。

彼が繰り返し言っている「迫害されている少数派」が、この政見放送から8年経った今、「99%の多数派」になっているというわけである。
それまで、「多数派」にいたはずの中流層が、この間に徐々に崩壊して、気がついたら、かつての「少数派」に組み込まれていた、ということである。

中間層が本来得るべきはずの富は、巧妙な仕組みを経て、「少数派の中の少数派」である「1%」に移転したのだ。

日本の崩壊に加担するハーメルンの笛吹男

三宅洋平は、安倍昭恵に会ってはならなかった。

さっそく、安倍のプロパガンダ紙・産経新聞は、「昭恵夫人介し安倍晋三首相と意気投合」という見出しを掲げて印象操作をやり始めた。
反安倍の分断工作が始まったのだ。

さらに、三宅洋平は、これから出て来るさまざまな酷い経済指標を見た彼の支援者に、「日本の崩壊に加担するハーメルンの笛吹男」とまで言われるだろう。

昭恵は晋三の妻として、立派に内助の功を発揮している、というわけである。

彼は、自分を支えてくれている人々の思いを斟酌できないバカな気まぐれ男である。

今、洋平は「いくらでも幻滅すればいい。俺は俺だから、 何も減らない。 I am what I am.」と開き直っている。

これでは、自分に批判の言葉を浴びせ始めた支援者に対して、「お前たち、なんにもわかっちゃいない」と言っているように受け取られかねない。洋平という男が、人の義に報いる男かどうか、見極めなければならない。彼は、そうではない。

彼は、もっとも政治家にしてはならない人間である。
支援者の思いより、「俺様の生き方を優先する」というのであれば、政治などできるはずがない。

これからは、永遠のやんちゃ坊主として生きていくのが「俺らしい」。「俺は俺だから」が、彼の身の丈サイズの世界である。何も無理することはないのだ。自分の生き方を貫き通せばいいのだ。

ただ、それを、税金を使って政治の世界でやられては困る!と言っているのだ。

映画監督の想田和弘氏が、自身のFacebookで、洋平を気遣いながらも、しっかり総括している。「昭恵との会い方に知恵がなかった」と。

医学部出身のおしどりのマコ氏が、民主主義について自分の考え方をまとめている。
その中で、彼女はこう書いている。

「誰がなんといおうと、すごい肩書の賢い人たちがいろいろ言おうと、 周囲の方々にたくさん詰め寄られようと、最後の一人になろうと、でも、私は、福島第一原発事故の対応は間違ってると思います、と言えなくてはダメだ、 そして、そういう方々が増えないと、何も変わらないんだ、と思ったのですね。」

彼女は、本当の意味で民主主義を理解している。

同時に、数の論理で押し切ろうとする「野合」が、民主主義を破壊することも知っている。
民主主義とは、愚民に与えると凶器に変わる諸刃の剣であることも知っている。

彼女は、それを知った上で、強い意志で民主主義を貫こうとしている。高潔な人柄だ。

もちろん、彼女は他人から称賛されるために身銭を切って活動しているわけではない。
しかし、そこから得られる至福の報果は、彼女にしか与えられないし、彼女にしか理解できない。

残念なことに、限りなく100%の人々は、そうではない。もっとずっと小乗的な人々なのである。

そう、洋平の選挙フェスに何万人、何十万人集まった、と数を競っている愚民のことである。
といって、彼らが、決して数こそが民主主義であると思い込んでいるわけではないことくらい理解している。

問題は、数を誇るという袋小路に追い込まれてしまっていることなのだ。
つまり、三宅洋平に夢を託す「候補者依存という麻薬」に魅せられてしまっているのである。

そこには、自分の思考はない。

民主主義は人々が個々の立場で自由に考えることが基盤だ。
しかし、その権利をみすみす放棄している人々が多くいるのである。常に主張よりも、まずムラを先につくりたがる日本人は、民主主義にもっとも不向きな国民だ。

彼らは「洗脳から覚めた、自分で考えることを実践している」と思い込んでいる。

そうした錯覚を利用して自分を納得させてはならない。自分自身のアングルで見ないと愚民は永遠に愚民のままだ。

だから、東京都民が洗脳から解かれるためには、もう政治家に期待してはならないということだ。
ましてや、政治家に下駄をあずけるなどと、いつまでも候補者依存選挙をやっていてはならない。

安倍晋三と官邸によって、陰湿な言論封鎖が日々、強まっていることが皮膚感覚で分かっているのであれば、彼らが封印しようとしている情報が外に出てくるようにして、一人一人が考える機会を増やすことから、すべてが始まるのである。

だから、小池や増田、その他の候補者は適任ではない。彼らは「隠す側」の人間であるからだ。

唯一、鳥越俊太郎なら、これまでの都知事とは全く正反対で隠されていた情報を国民の前に全開にするだろう。その上で、人々は、それぞれの考え方を構築することができるのだ。

上杉隆氏も立候補しているが、彼は、そもそも勝とうと考えていないように見える。だから、どうしても応援が薄くなってしまう。

それより、このマスコミで報じられない公開討論会の動画を観て何を感じるだろうか。
7月12日、告示に先駆けて東京・赤坂民ホールで行われた公開討論会の一幕である。主催者は、日本青年会議所である。

マック赤坂「ちょっと待った!赤坂警察を呼んでます!公職選挙法違反の現行犯!これは明らかに民主主義じゃない!一部の候補者だけ壇上に上がって!」。

マック赤坂氏は、お騒がせオジサンですか?

公示の2日前のことではあるが、事実上の公示は済んでいる。
これは、マック赤坂氏がまったく正しいのであって、周囲の人々が狂っているのである。間違いなく、主催者側の日本青年会議所のほうが公職選挙法違反である。

しかし、誰も騒がず大人しくしている。

その後の、電波メディアからの他の候補者の徹底した締め出しは、公職選挙法云々を言う前に、知る権利を侵害している。

安倍政権が続けば続くほど、人々は理性を失い精神崩壊が顕著になっていくのである。

わずかの間に、まったく凄まじい国になった。それでも国民は関心を持たない・・・気が付かない・・・

いずれにしても、三宅洋平というノーテンキな男を応援していた人々は、やがて彼を批判する側に回るだろう。
そういう人々が、自分の口を汚すことは民主主義から遠のくことを意味する。しかし、それが世の常・・・人々は、そう自分に言い聞かせてきた。

このグータラ男を、鳥越俊太郎氏の応援演説に担ぎ出そうという輩がいる。鳥越選挙対策事務所は、三宅洋平をシャットアウトするように。

それより、洋平、寄付金を今後どう使うのか、寄付してくれた人たちに何らかのコメントを出す必要があるだろう。

大橋巨泉は、週刊誌の連載で、「この男は本当に悪い」と安倍の本性を見抜いていた。

巨泉は、安倍首相主催の「桜を見る会」に呼ばれて有頂天の太田光に「太田、お前は利用されてるんだよ」と叱った。結局、太田は花見会に行って夫婦げんかが勃発。

巨泉にも安倍から招待状が届いたが巨泉は無視した。

彼が生きていたら洋平にも同じことを言うだろうか。

いや、大橋巨泉の性格なら、三宅洋平には何も言わないだろう。彼は、上っ面だけで中身のない女々しい男が大嫌いだからだ。

その大橋巨泉は、今月12日、亡くなった

人々は気づいていないが、日本の状況はかなり深刻だ。それは回避不能なレベルまで来てしまっている。

安倍晋三は、案の定、今度の選挙でも国民を騙した。晋三は、「アベノミクスは失敗していないが、道半ばです!」を繰り返し有権者にいい続けている。

選挙で勝ったとたんに経済成長見通しを下方修正してきた。(または、日経新聞)

とっくの昔にアベノミクスは破綻しているのに、まだ信じているのは、本当に世界中で日本の国民だけなのである。
どの英語圏のメディアでも、「アベノミクスは失敗していない」などと書いているメディアは、ただの一つもない。

それだけでなく、29日には、GPIFの年金投資による大損失(その数字は過小評価されている)が発覚して、高齢者の人生が破滅させれられたことを知るだろう。パニックが起こらないことを祈る。

都知事選の投開票日は31日だ。

東京が先か、日本が先か、それとも両方で相乗的な大崩壊に至るのか、それが決まる選挙結果になる。


投稿者のコメント

2016年7月20日の夜にこの記事を読んで、阿修羅掲示板に投稿したいと思った。阿修羅掲示板の住人には、カレイドスコープについてはコピペ投稿を待つことなく新着の記事を直接チェックするという人が多いのではないだろうか。最近、特に三宅洋平の評価をめぐって阿修羅掲示板でも意見が対立錯綜しているなかで、カレイドスコープを知らない人に紹介したい。投稿者個人の三宅洋平評価もグラグラと揺れ動いている。カレイドスコープの意見にも完全に納得できるわけではない。
なお、今回の記事は、昨夜公開された後でその日のうちにかなり大幅で重要な追記がおこなわれた。今後の追記などもありえなくはないので、元記事を参照することをおすすめする。


http://www.asyura2.com/14/test31/msg/531.html
[政治・選挙・NHK209] 本性が露呈された小池百合子と選挙パフォーマー三宅洋平(カレイドスコープ)

本性が露呈された小池百合子と選挙パフォーマー三宅洋平
http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-4502.html
2016年07月20日 カレイドスコープ

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-7.jpg

日本をアメリカと瓜二つの国に造り替えようとしている安倍政権。都知事選でも、ミニ大統領選さながらの舌戦が展開されている。

都知事候補の増田寛也は、清和政策研究会(ロックフェラーCFRのカウンターパート)の安倍晋三と森喜朗がオリンピック利権を一手に握ろうと送り込んだ代理人である。

一方の小池百合子の背中には小泉純一郎の生霊が憑いている。こちらにも、清和政策研究会の亡霊が憑依している。だから、叩けば、いくらでも埃が出る。

増田寛也は単なる当て馬だ。姦計に長けている自民の本命は小池百合子だ。彼女こそが安倍晋三と軌を一にする候補者だ。

自民党本部は、「劇場型候補者に都政を任せるわけにはいかない」と言っているが、そういえば言うほど、小池に支援者が集まることを知っている。
つまり、「東京都知事は、民主主義ではなく、支配者であるわれわれ自民党が決めているのだ」と言っているのである。

小池百合子は、それに、たった一人で立ち向かっていると。

国民は、すでに「小泉劇場」のバージョンを見せられているのである。

全国数百万人のガン・サバイバーを失意のどん底に叩き落とした小池百合子という女の残酷さ

「それが選挙ですから」・・・

奇しくも、今回の選挙に絡んで、自民党の女性が言った言葉だ。

ひとつは、都知事選の演説で、“マダム回転寿司”こと小池百合子が鳥越俊太郎氏にあてつけて言った言葉である。

もうひとつは、参院選後、三宅洋平が安倍晋三の奥方、昭恵に会ったとき、彼女が洋平に言った言葉である。

「それが選挙ですから」・・・都知事選、参院選と、シチュエーションは異なるが、小池百合子、安倍昭恵ともに、その意味するところは同じである。

つまり、彼女たちは、「選挙では対立候補を倒すためなら、過激な言動も許される」と言っているのである。たとえ、それが嘘であっても・・・

大嘘つきの人格破綻者、自民党の丸川珠代が、議場で耳をふさぎたくなるようなヤジを飛ばし続けていることは良く知られている。
安倍晋三は、これを「ヤジは議場の華だ」と言った。

ヤジについては、晋三のほうも、決して丸川に負けてはいない

もっとも、小池百合子のヤジは、晋三や丸川のヤジより、いくぶん高品質だ。

相手を倒すためなら、どんな誹謗中傷でも、どんな嘘でも平気でやってしまえ! これが、「自民党の文化」なのである。

その悪しき文化が、自民党インターネットサポータークラブという言論暴力集団をつくり出したのだ。

「自民党の文化」では、二言目には「有権者に丁寧にご説明して・・」が出てくるが、タダの一度も国民に説明したことがない。

それどころか、自民党支持層のB層をいかにして増殖させようかと、日々、騙しのテクニックを磨いているのである。
それが、自民党の強さを支えてきたし、これからも、そう考えているからである。

ただし、政界世渡り上手の小池百合子の鳥越氏に対する今回の差別的な発言は、「自民党の文化」をはるかに逸脱している。

小池は、脅威となっている鳥越俊太郎氏を「病人の役立たず」と印象付けようと、公衆の面前で声を張り上げながら、「病み上がりの人を、ただただ連れてくればいいというものではないんです!」とやってしまったのである。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-1.jpg

これは、誰が聞いてもガン闘病者に対する差別である。
これでは、どんな弁明もできない。

かなり悪質であり、彼女の性悪さ、冷酷さ、姑息さ、卑劣さのすべてが吐露されてしまったという点では致命的となった。

この言葉を聞いた瞬間、小池百合子を応援しようと秋葉原の街頭演説の場に集まった大衆は、彼女の冷酷さに、いっぺんにその熱を冷まされた。

後ろで、「そうだ! そうだ!」と掛け声をかけて、その場に集まった大衆を扇動しているのは、小池のプロ支援者たちである。

しかし、小池は、本当にそんな破廉恥なことを言ったのだろうか・・・。動画では、確かに「病み上がりでは役に立たない」という意味のことを言っている。

早速、マスコミの記者は街頭演説を終えた小池をつかまえて、「どういった意味でおっしゃったのでしょうか?」と問いただす。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-4.jpg

いつものように、ヘラヘラ笑いながら、「私は、ちゃんとファクト(事実)を申し上げた」と彼女は言った。

鳥越氏について、「なんの政策もない、病み上がりガン患者では役に立たない」というのは事実を言ったまでだ、と小池は念押ししたのである。

しかし、鳥越氏は参院選の結果を見て、「なんとかしなければ、と急に都知事選への出馬を決めたので準備不足」とテレビ番組に出演するたびに有権者に断りを入れている。

「なんの政策もない」というのは、むしろ小池百合子が昔から言われ続けていることで、くるくる回る回転スシのように、そのときどきの都合によって、次々と政党を渡り歩くことから「マダム回転スシ」と言われるようになった。

自分の舌禍が大きな波紋を呼びそうな予感を持っていたにもかかわらず、別の記者につかまって同じことを訊かれた小池は、ここでも・・・

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-3.jpg

「そういう意味で言ったのではなく、(鳥越氏が)元気でやっている、ということを強調したかった」と、今度は180度、逆のこと言っている。
「嘘の上塗り」とは、このことである。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-5.jpg

これは複数のテレビ報道で流されてしまった。

鳥越氏のことを「病み上がり」と罵倒することが、鳥越氏が「元気でやっている」ことを強調することになる、と彼女は説明する。

彼女の感覚であれば政治家になってはならない。頭がイカレているからである。

そう、鳥越氏のことを心配する前に、彼女のほうこそ(これから書く)脳梗塞の後遺症で、正常な思考ができなくなっていることを疑うのだ。

大衆に分からなければ、相手を目の前にして堂々と嘘をつく女

もともと、小池百合子は、エジプトのクフ王のピラミッドの頂上に上って振り袖姿でお茶を立てた変な日本人として有名になった。

しかし、私の中では、なんといっても、彼女が環境大臣のときに、どーしようもないクールビズを普及させたこと、そして、次に防衛大臣になったとき、自衛隊の年間の二酸化炭素(CO2)の排出量は数百万トンに上ることを最悪の環境破壊としながら、「自衛隊は、ハイブリッド戦闘機とか燃料電池戦車に切り替えるべきだ」と言って国民を唖然とさせた、あのイメージが強い。

つい、数日前も、都知事選の討論で、「オスプレイは必要だ。垂直離発着機は環境に優しいからだ」と言った。住民の安全より環境優先の考え方をするところをみると、ナチスの優生学思想に汚染されていることは明白である。

「これは、東電の犬、増田寛也では勝てないと焦った自民党が、電通を通じて小池潰しをテレビ各局に依頼した?」・・・

馬鹿げた妄想だ。

ガン闘病者、その家族ーー何百万人もの人々を悲しみのどん底に叩き落とし、それでは飽き足らず、冷酷な言葉で弱者を突き放すような暴言を吐いた小池に対して、テレビ局に猛烈な抗議の電話が殺到することを事前に察知して手を打ったのだ。

その日19日の午後、3人の候補者が、坂上忍司会のフジテレビのお昼の番組「バイキング」に出演した。司会者を通さずに、直接、激論を戦わせてもらう、という企画である。

ここで、鳥越氏は、小池百合子に、「本当に、こんなことを言ったのか」と、問いただした。

彼女は、顔を引きつらせながら、次のように嘘をつき通した。

小池:「あはははっ、言ってないですね、記憶にないですね」。

小池:「でも、今、お元気になられてるじゃないですか」。

小池:「いやいや、(言ったことなど)記憶にないですよ}」。

鳥越:「私に言われたのは、いいとしましょう。
ガン・サバイバーという人は何十万、何百万といます。家族もいます。そういう人たちに、一回がんになったら、なにもできない、という差別的なイメージを与える」。

小池:「それが、選挙なんですよ、(司会の)坂上さん」。

ここまで嘘をつき続けることの意味が、どこにあるのか。

小池百合子は、謝罪すれば選挙に負けるという恐怖心から、全国のガン闘病者と、ともにガンと闘っている家族を敵に回してしまった。

鳥越氏が抗議しているのは、自分のためではなく、ガンと闘っている人々の気持ちを代弁すると同時に、小池百合子のような性根の腐りきった悪党に惑わされるな、と警告しているのである。

これは、ガンと闘いながらも家族や身内を亡した人間であれば骨身にしみている。その冷酷さに思わず背筋が凍る。

私も、その一人として、小池の心無い発言に心をいためたガン闘病者や、それを支えるご家族が、病気と闘う気力を失ってしまうことを心配する。

鳥越氏は、むしろ、ジャーナリストとして、ガンと闘っている人々とその家族のために怒ったのである。

彼はこうした弱者を擁護するために、小池のような国民を殺す権力者と戦っているのである。

ハフィントンポストは、「小池が謝罪した」と書いているが、動画を観る限り、小池は謝罪していない。追い詰められて、逃げ場がなくなったから仕方なく「わるうございました」と言うのは、謝罪ではなく自己保身である。そのほうが、自分にとって得だからだ。

彼女は、徹底的に追い詰めないと、決して非を認めない。

小池百合子が環境大臣のとき、水俣病の患者切り捨てをした人間として有名である。これは、実際の水俣病患者たちの証言である。 広瀬隆氏は、つい数日前、九州の講演会で、それを確認した。

小池百合子が謝罪することがあるとすれば、それは、道義的とか人道的とか、改悛の情とかとまったく無縁である。
自分にとって、そうすることが利益になるかどうかだけで決めているのである。

まったく、凄まじい冷酷さと打算である。彼女は「人」でなく、悪鬼そのものである。
安倍晋三に匹敵する超危険な国会議員なのである。

これは、日頃からジャーナリスティックな目で世の中を見ている人間でないと理解できないかも知れない。だから、小池のような稚拙な人間にさえ、いとも簡単に騙されてしまうのである。

ここまで分かっても、小池のような人間を都知事に推そうとしている有権者がいるということが私には信じられない。

小泉政権のとき、小池百合子は、自分でつくった愛情弁当を小泉純一郎のいる官邸に届けていた。これを週刊誌は、「小泉の○人」だと書きたてた。
確かに、打算と計算づくで、小池は小泉純一郎に最接近していった。

そんなとき、小池百合子は、突然、姿を消したことがあった。 長期間、姿を現さない小池に対して、週刊誌は、「肺炎か、それとも脳梗塞か。両方とも併発か。かなり重篤らしい」と書きたてた。

今もって謎だ。

さらに謎は、10年以上前から燻っている小池の学歴詐称疑惑だ。 ここにきてエジプト出身のタレントが、小池の学歴詐称を疑い出した。これに対して小池の反応はない。
これが事実でないとするなら、政治家の責任として10年以上も疑惑のママにしていいということはない。

そして、「自民党のもうひとつの文化」として定着している政治資金問題も、やはり浮上している。

いえいえ、「30万円の未記載」というようなケチな話ではなく、もっと大きな政治資金だ。

小池の支持者たちの中には、スピン報道によって国民の目をそらすために週刊誌にリークしている安倍官邸が小池潰しをやっている、と信じている人がいる。

しかし、これを暴露したのは、官邸のリークによって攪乱工作を請け負っている週刊文春ではなく、安倍晋三が目の敵にしている日刊ゲンダイである。小池潰し陰謀説は無理がある。

凶悪犯罪者、安倍晋三は、今度も週刊文春を使って鳥越俊太郎氏に関する捏造記事を書かせ、選挙妨害を仕掛けてきた

安倍晋三の命を受けた内調は、さっそく鳥越俊太郎氏のスキャンダルを仕掛けている。コピペサイトが、それはもう大騒ぎだ。

しかし、不思議なことに、小池百合子の犯罪性を伴う山もりのスキャンダルには触れない。

その鳥越氏の捏造スキャンダル記事を掲載した週刊文春は、「事実無根の選挙妨害」で東京地検に刑事告訴されそうだ。

だから、週刊文春が反安倍の政治家の記事を載せるときは、本当に知られては困ることを隠すときであり、それには内閣官房機密費が使われていると考えて間違いない。国民は、自分たちの払った税金で自分たちを洗脳させているのである。

内調の連中も、オリンピック利権にあやかろうと思っているのだろうか。安倍政権では、国家が主権者である国民に敵対するようになってしまった。

彼女は、「退路を断って(自民党の推薦を得ることができず)、たった一人の闘いだ」と息巻いているが、これもまた、巧妙な演出である。

youtubeやニュースの動画では、小池が、あたかも孤軍奮闘している女性闘士であるかのように演出されているが、演説が終わると、「いったいどこに、こんなにたくさんのボディーガードが潜んでいたのか」と思うくらい、大勢の支援者が彼女を取り巻く。

画像から分かるように、小池百合子は右翼団体「日本会議」の副会長で、ヘイトスピーチの在特会とも蜜月関係にある。

それだけでなく、小池百合子都知事候補の公式サイトに「東京に核ミサイルを」、「核武装を」、「急げ軍法会議」、「少子化の最大の原因は頼もしい男性が減っていること」などなど、あなたの子供の命を奪うためのメニューがズラリと並んでいるのである。

鳥越氏にテレビの生番組で「病み上がり発言」を問い詰められた時も同じ。「テレビカメラの前でだけは、お行儀よく笑顔でね」。 大衆を騙すことができれば、どんな嘘でも平気でつく女性なのである。これが「自民党の文化」が育んだ典型的な議員だ。

さすが、小泉の○人だけある。小池は小泉純一郎が使った有名な戦術ーー「抵抗勢力」を使っているのだ。

小池は、自分を応援しない自民党の連中を「抵抗勢力」に見立てて、「私が都知事になったら、ただちに都議会を解散する」と宣言している。

小泉も、「自民党を、ぶっ壊す!」と豪語した。

しかし、いざ政権を取ったら、正反対のことをやったのだ。
小池は、錆びついた小泉の戦術を倉庫の奥から取り出して、再びそれを利用しているに過ぎない。

偶像崇拝のカルトたち・・・しかし、それは三宅洋平という虚像であったという悲劇

もうひとつの「それが選挙ですから」と言ったのは、安倍晋三のイカレた女房、昭恵だ。

三宅洋平に政治を語る能力がないどころか、単なる扇動屋だと見抜いた安倍陣営が、「安倍自民は圧勝したのだから」と、余裕を持って三宅洋平の取り込みのために近づいてきたのである。

昭恵は、その時のことを、Facebookに書いている

彼女が晋三の指示によって、なぜ洋平を誘ったのか、その理由は、最後に書かれてある「なんで多くの人が、三宅洋平を熱烈に支持するのか、わかったような気がします。」という言葉からうかがい知ることができる。

コメント欄を読めば、三宅洋平の支援者が、続々と昭恵マジックに取り込まれていく様子を知ることができる。洋平の支持者には、こうした輩が揃っている。これを「乞食根性」という。

そのとき、昭恵が洋平に、「大丈夫です、それが選挙ですから」と言って、すぐさま携帯電話で安倍晋三に取り継いだと、洋平はツイートしている。これでも、偶然だと言うのだろうか。

洋平が、「国を思い世界を憂う国士」だと。究極のナルシズムに世界が笑っている。

洋平は、安倍晋三と携帯電話で短い会話を交わしたとき、「総理、何なら一緒に高江に行きませんか、とは云えませんでした。三宅はまだそんなもんです」と、己の小ささに気がついたとか・・・

そして、「高江の住民の気持ちを込めて「okinawa noproblem」capを昭恵さんに預けました」と、すっかり昭恵にほだされてしまった。

今日、安倍晋三と彼の官邸の命を受けて、米海兵隊のオスプレイ離発着帯(ヘリパッド)を建設する予定地「高江」に機動隊500人を投入して反対する沖縄の市民たちを強制排除する。

昭恵が、唐突に三宅洋平に近づいてきたのは、「高江」で起こることを、「なんとかフェス」で拡散させないようにするためである、と考える人が出てきても反論できない。

なぜ、洋平は、「何なら一緒に高江に行きませんか、とは云えませんでした」なのか。

機動隊の500人は、地元の人間ではなく、東京をはじめ各地方から私たちの税金で集められた武闘派である。

なぜ、洋平は「高江の住民の気持ちを込めて「okinawa noproblem」capを昭恵さんに預けました」などと言えるのか。沖縄の人々は、三宅洋平という薄っぺらな男の本性を知って、愛想をつかそうとしている。

あれほど、沖縄の人々の思いについて熱く語った洋平は嘘だったのか。事実は、そうであると告げている。

http://blog-imgs-93.fc2.com/k/a/l/kaleido11/20160720-6.jpg

結局、三宅洋平のような中途半端な腰砕けが、宮家のような盲目的な対米従属派の台頭を助けてしまうのである。

ヘンテコリンの安倍昭恵ごときに、いとも簡単に懐柔された洋平が、安倍晋三が河口湖のゴルフ場で、心置きなくゴルフを楽しんでいることを知らないはずはない。

晋三がゴルフをやるのが悪いと言っているのではない。それを知っていた洋平が悪いと言っているのでもない。
三宅洋平は、その片手間に取り扱われたという意味を考えろ、と言っているのである。

根強く不仲説が流され、一時期は「離婚秒読み」とまで報じられた安倍昭恵、そして、党本部から、「劇場型候補者に都政を任せるわけにはいかない」とまで言われた小池百合子。

ふたりとも、それでも「さらば安倍晋三」、「さらば自民党」と言わない。お人好しの愚民たちは、彼女たちの正体が、まだ分からない。

昭恵に関して言うなら、確かに原発再稼動の是非については逡巡が見られた。

しかし、選挙に勝ち続ける夫をマスコミが輝かしく描き続け、以前書いたように「自民党総裁任期延長論」がまことしやかに囁かれるになって、安倍帝国の姿が茫洋と浮かぶようになってくると、その迷いも吹っ切れて、久々に内助の功を発揮したくなってきたのだ。

ズバリ言えば、昭恵は夫とマスコミ、そして国家権力に抱擁されて、ナチスの道を選ぶと決めたのである。これが、彼女の本性である。

一見して、分別臭い大人たちは、「三宅洋平の言っていることは曖昧で、すべて賛同はできないが、若者が一生懸命になって何かを訴えている。とりあえず応援しよう」と思っている。

今回の参院選では、「誰を、どの政党を選べばいいのか分からない、しかし、選挙には行かなっきゃ」・・・こうした政治オンチの大人たちを引き込もうと、多くの「プロ若者たち」が思い思いに動いたことで、かえって事態を混乱させてしまった。

彼らの多くは民主主義を謳いながら、実は、民主主義をまったく理解していないし、モラトリアム選挙民をつくり出しているだけであるからタチが悪いのだ。

私は、「選挙は25歳から。自分で汗水流して、社会に叩かれて金を稼いだ経験のない人は選挙に行くべきではない」という主張を持っている。
社会の矛盾や不条理に触れ、その原因を追究しようという気になってはじめて候補者の品定めができるようになるのだ。

「18歳の子供は、ボーイフレンドやガールフレンドのことで頭の中を妄想だらけにして、おんもで遊んでろ!」というのが持論だ。

それが、突然、イエス・キリストのようなナルシス君が現れると、一瞬で政治を語る(そう思い込んでいる)プチ・インテリゲンチャに早変わりだ。

三宅洋平の演説に涙したというバカは多い。
そんな涙があるなら、福島の子供のために泣け。パレスチナの子供たちのために泣け。その欺瞞性に反吐が出る。

では本当のことを言ってやろうか。
「洋平演説に涙した」と書いている連中の半分は、扇動者であり、実際は涙など流していない。

その半分のうちの、さらに半分の連中は、洋平の支援者でなく、彼を追い落とそうとしている連中である。バカの連鎖が始まっているのである。

長い演説の動画を2、3本観てみたが、私には洋平が、いったい何が言いたいのか、まったく分からない。

日本人であれば、洋平の言っていることは当たり前すぎて、「はいはい、分かってる。だからその先は」ということになるはずだ。

お祭り好きの「プロ若者」たちが選挙をダメにした・・・いつものことだが

三宅洋平の戦略は、「選挙に行かない若者たちの目線に合わせて語り掛ける」ということらしい。

この種の見識と知識、構えのない人気取りが目的の人間にとって、「無関心層に易しく語りかけて選挙に行かせる」という言葉は巧妙な逃げ道として使われる。
自分の無知と計算高さを上手に隠してくれるからだ。

だから、選挙前に、このように書いた

・・・それに、むさくるしいヒゲをはやしたままで、立候補しようなどと、有権者をなめているのか、と言われても仕方がない。 「自分の信条? 生きざまそのもの?」 そんなもの捨てちまえだな。

メディア・チームに精鋭なんか集めたって駄目だ。
まずは、自分が何をしたいのか、政治信条を固めることからやり直しだ。

こんな無精面を誰が見たいと思うのか
そのボランティアの精鋭のメディアチームの一人たりとも、洋平君のひげを剃らせることができないのであれば結果は推して知るべし。

洋平君が最初にやるべきことは、自分の弱い心と戦うことだ。

「三宅洋平」でグーグル検索をかけると、ずらずらっと洋平を礼賛する記事が、延々と出て来る。次のページも、その次も・・・

この中の多くが、「ボランティアの精鋭のメディアチーム」とやらが書いた記事である。

これは逆効果である。
ネット上を、「三宅洋平」一色にすれば得票数が増えると思い込んでいるのだ。

本当に優れた選挙プランナーが、そのボランティアのチームの中に一人でもいれば、三宅洋平に批判的な記事を巧妙に入れ込んでくるはずだ。

三宅洋平の無精ひげを嫌っている有権者は多い。痩せこけた頬とギラつく目が、あることを連想させるからだ。

しかし、そうした人々は、洋平を批判しているのではない。

まったく逆で、「ひげを剃らなければ投票しない」と言っている有権者が実際に多くいることを知っているからこそ、そして、そうした世間の空気を読んでいるからこそ、そして、洋平に当選してほしいからこそ、ひげを剃るべきだと言っているのである。

「汚いひげを剃れ」と言っているのは、中高年ではない。三宅洋平と同じ年代か、もっと若い人々である。
彼らは、社会人で会社の上司から身だしなみについて色々言われている。

それがいいとか悪いとかではなく、最低限の「けじめ」くらいはつけろよ。と言っているのである。

洋平は、選挙後、「カルチャー層を中心とした無党派の新たな政治基盤を築けた」と言っている。

カルチャー層? そんなもの存在しない。
あるのは、A層かB層か、それともC層かだけである。

有権者の心理は消費者心理とは違うし、ましてや、それにマーケティングのセオリーを当てはめてをクラスター化すること自体がナンセンスである。

洋平の言っていることが、いかにペテンか、ちゃんとした知識がないと分からないだろうが、だからといって、この程度のことで「うんうん」と頷いている学識者や有識者が多数いることのほうが、恐怖なのである。

「自分らしくありたい」などと、ジョン・レノンのようなことを言えば、愚民ばかりの日本では受ける。

しかし、気まぐれな吟遊詩人、三宅洋平を必死になって応援していた、それらの愚民たちは、今になって「裏切られた」と彼に背を向け始めた。しっかりした視座を持てない日本人ならでは・・「昨日の友は今日の敵」・・・いつものことである。

結局、「選挙フェス」の本質は、ミュージシャン三宅洋平のプロモーション・イベントに過ぎないことが分かって来た。
それは、都市伝説と化し、洋平はただの選挙パフォーマーとして葬り去られるだろう。

それは、「情動」を利用している。そこでは、理性が隅っこに追いやられてしまう。

SEALDsも同様だ。音楽とラップを混ぜ込んだ選挙運動には注意しなければならない。それは、愚民の集客装置に他ならない。

反戦の高まりはウッドストックの大波を引き起こした。
その結果、何が残ったか・・・大量の大麻(マリファナ)をはじめとする麻薬常習者と犯罪者、それに人格崩壊者だ。

ウッドストックを推進した若者たちは、大麻(マリファナ)禁止は、自由主義と資本主義に敵対するものであって、われわれの自由を縛るものである、という間違った事実にもとづく主張をしていた。

ウッドストックによって頂点に達した大麻(マリファナ)解禁運動は、ニューエイジ・ムーヴメントから出てきたものである。そのニューエイジ運動のスポンサーは、ロックフェラーであった。
若者たちを麻薬で退廃させることによって、支配を容易にしようという狙いがあったのである。

今では、ジョージ・ソロスが引き継いで、米国の各州で大麻(マリファナ)合法化が進められている。結果、暴動が起こればFEMAが出動しようかという事態になっている。

「反戦」は、常に頭の良い大悪党に利用されてきた。彼らは、それによって莫大な利益を上げている。

支配者は、戦争を起こして金儲けをする好戦的な犯罪者であり、同時に、反戦を利用して、やはり金儲けをする厭戦的な犯罪者でもあるのだ。
支配者は、往復で金儲けをする。これを両建て主義という。

利用されるのは、いつも決まっている。
そう、無知で愚かな若者が常にたぶらかされる・・・。

その最大の功労者はビートルズである。彼らには、英国王室から大英帝国勲章が贈られた。

リヴァプールのチンピラたちは、今ではナイトであり、名前に「サー」がつく。

ビートルズの仕掛け人は、タヴィストック人間関係研究所である。

そのスポンサーである世界支配層に従順であったポール・マッカートニーは、ロンドン五輪の開幕式で、女王陛下のために、シオニスト・ユダヤのための音楽「ヘイ・ジュード」を歌う栄誉にあずかった。

反対に、自分たちが麻薬の伝道師として利用されたことに気が付いたジョン・レノンは「彼ら」に暗殺された。

三宅洋平にも、その臭いを感じ取る。彼は、やがて政治信条を180度変えるだろう。

彼は、果たして、「ポールになるか、ジョンになるか」・・・ここまで洋平を持ち上げておけば、彼のファンから文句は出ないだろう。

寄付で集めた1750万円という大金はーーしかし、彼は本当の意味で政治活動はやらなかったのだからーーこの「選挙フェス」というイベントの参加費だと思えばいいのだ。

しかし、それ相当の金をつぎこんだイベントにしては、波及力がなかった。

選挙パフォーマーなら、外山恒一の方が数段優れている。彼は、なんと、東京都知事選に立候補した2007年の時点で、すでに日本がグローバリズムに取り込まれることを知っていた。

彼が繰り返し言っている「迫害されている少数派」が、この政見放送から8年経った今、「99%の多数派」になっているというわけである。
それまで、「多数派」にいたはずの中流層が、この間に徐々に崩壊して、気がついたら、かつての「少数派」に組み込まれていた、ということである。

中間層が本来得るべきはずの富は、巧妙な仕組みを経て、「少数派の中の少数派」である「1%」に移転したのだ。

日本の崩壊に加担するハーメルンの笛吹男

三宅洋平は、安倍昭恵に会ってはならなかった。

さっそく、安倍のプロパガンダ紙・産経新聞は、「昭恵夫人介し安倍晋三首相と意気投合」という見出しを掲げて印象操作をやり始めた。
反安倍の分断工作が始まったのだ。

さらに、三宅洋平は、これから出て来るさまざまな酷い経済指標を見た彼の支援者に、「日本の崩壊に加担するハーメルンの笛吹男」とまで言われるだろう。

昭恵は晋三の妻として、立派に内助の功を発揮している、というわけである。

彼は、自分を支えてくれている人々の思いを斟酌できないバカな気まぐれ男である。

今、洋平は「いくらでも幻滅すればいい。俺は俺だから、 何も減らない。 I am what I am.」と開き直っている。

これでは、自分に批判の言葉を浴びせ始めた支援者に対して、「お前たち、なんにもわかっちゃいない」と言っているように受け取られかねない。洋平という男が、人の義に報いる男かどうか、見極めなければならない。彼は、そうではない。

彼は、もっとも政治家にしてはならない人間である。
支援者の思いより、「俺様の生き方を優先する」というのであれば、政治などできるはずがない。

これからは、永遠のやんちゃ坊主として生きていくのが「俺らしい」。「俺は俺だから」が、彼の身の丈サイズの世界である。何も無理することはないのだ。自分の生き方を貫き通せばいいのだ。

ただ、それを、税金を使って政治の世界でやられては困る!と言っているのだ。

映画監督の想田和弘氏が、自身のFacebookで、洋平を気遣いながらも、しっかり総括している。「昭恵との会い方に知恵がなかった」と。

医学部出身のおしどりのマコ氏が、民主主義について自分の考え方をまとめている。
その中で、彼女はこう書いている。

「誰がなんといおうと、すごい肩書の賢い人たちがいろいろ言おうと、 周囲の方々にたくさん詰め寄られようと、最後の一人になろうと、でも、私は、福島第一原発事故の対応は間違ってると思います、と言えなくてはダメだ、 そして、そういう方々が増えないと、何も変わらないんだ、と思ったのですね。」

彼女は、本当の意味で民主主義を理解している。

同時に、数の論理で押し切ろうとする「野合」が、民主主義を破壊することも知っている。
民主主義とは、愚民に与えると凶器に変わる諸刃の剣であることも知っている。

彼女は、それを知った上で、強い意志で民主主義を貫こうとしている。高潔な人柄だ。

もちろん、彼女は他人から称賛されるために身銭を切って活動しているわけではない。
しかし、そこから得られる至福の報果は、彼女にしか与えられないし、彼女にしか理解できない。

残念なことに、限りなく100%の人々は、そうではない。もっとずっと小乗的な人々なのである。

そう、洋平の選挙フェスに何万人、何十万人集まった、と数を競っている愚民のことである。
といって、彼らが、決して数こそが民主主義であると思い込んでいるわけではないことくらい理解している。

問題は、数を誇るという袋小路に追い込まれてしまっていることなのだ。
つまり、三宅洋平に夢を託す「候補者依存という麻薬」に魅せられてしまっているのである。

そこには、自分の思考はない。

民主主義は人々が個々の立場で自由に考えることが基盤だ。
しかし、その権利をみすみす放棄している人々が多くいるのである。常に主張よりも、まずムラを先につくりたがる日本人は、民主主義にもっとも不向きな国民だ。

彼らは「洗脳から覚めた、自分で考えることを実践している」と思い込んでいる。

そうした錯覚を利用して自分を納得させてはならない。自分自身のアングルで見ないと愚民は永遠に愚民のままだ。

だから、東京都民が洗脳から解かれるためには、もう政治家に期待してはならないということだ。
ましてや、政治家に下駄をあずけるなどと、いつまでも候補者依存選挙をやっていてはならない。

安倍晋三と官邸によって、陰湿な言論封鎖が日々、強まっていることが皮膚感覚で分かっているのであれば、彼らが封印しようとしている情報が外に出てくるようにして、一人一人が考える機会を増やすことから、すべてが始まるのである。

だから、小池や増田、その他の候補者は適任ではない。彼らは「隠す側」の人間であるからだ。

唯一、鳥越俊太郎なら、これまでの都知事とは全く正反対で隠されていた情報を国民の前に全開にするだろう。その上で、人々は、それぞれの考え方を構築することができるのだ。

上杉隆氏も立候補しているが、彼は、そもそも勝とうと考えていないように見える。だから、どうしても応援が薄くなってしまう。

それより、このマスコミで報じられない公開討論会の動画を観て何を感じるだろうか。
7月12日、告示に先駆けて東京・赤坂民ホールで行われた公開討論会の一幕である。主催者は、日本青年会議所である。

マック赤坂「ちょっと待った!赤坂警察を呼んでます!公職選挙法違反の現行犯!これは明らかに民主主義じゃない!一部の候補者だけ壇上に上がって!」。

マック赤坂氏は、お騒がせオジサンですか?

公示の2日前のことではあるが、事実上の公示は済んでいる。
これは、マック赤坂氏がまったく正しいのであって、周囲の人々が狂っているのである。間違いなく、主催者側の日本青年会議所のほうが公職選挙法違反である。

しかし、誰も騒がず大人しくしている。

その後の、電波メディアからの他の候補者の徹底した締め出しは、公職選挙法云々を言う前に、知る権利を侵害している。

安倍政権が続けば続くほど、人々は理性を失い精神崩壊が顕著になっていくのである。

わずかの間に、まったく凄まじい国になった。それでも国民は関心を持たない・・・気が付かない・・・

いずれにしても、三宅洋平というノーテンキな男を応援していた人々は、やがて彼を批判する側に回るだろう。
そういう人々が、自分の口を汚すことは民主主義から遠のくことを意味する。しかし、それが世の常・・・人々は、そう自分に言い聞かせてきた。

このグータラ男を、鳥越俊太郎氏の応援演説に担ぎ出そうという輩がいる。鳥越選挙対策事務所は、三宅洋平をシャットアウトするように。

それより、洋平、寄付金を今後どう使うのか、寄付してくれた人たちに何らかのコメントを出す必要があるだろう。

大橋巨泉は、週刊誌の連載で、「この男は本当に悪い」と安倍の本性を見抜いていた。

巨泉は、安倍首相主催の「桜を見る会」に呼ばれて有頂天の太田光に「太田、お前は利用されてるんだよ」と叱った。結局、太田は花見会に行って夫婦げんかが勃発。

巨泉にも安倍から招待状が届いたが巨泉は無視した。

彼が生きていたら洋平にも同じことを言うだろうか。

いや、大橋巨泉の性格なら、三宅洋平には何も言わないだろう。彼は、上っ面だけで中身のない女々しい男が大嫌いだからだ。

その大橋巨泉は、今月12日、亡くなった

人々は気づいていないが、日本の状況はかなり深刻だ。それは回避不能なレベルまで来てしまっている。

安倍晋三は、案の定、今度の選挙でも国民を騙した。晋三は、「アベノミクスは失敗していないが、道半ばです!」を繰り返し有権者にいい続けている。

選挙で勝ったとたんに経済成長見通しを下方修正してきた。(または、日経新聞)

とっくの昔にアベノミクスは破綻しているのに、まだ信じているのは、本当に世界中で日本の国民だけなのである。
どの英語圏のメディアでも、「アベノミクスは失敗していない」などと書いているメディアは、ただの一つもない。

それだけでなく、29日には、GPIFの年金投資による大損失(その数字は過小評価されている)が発覚して、高齢者の人生が破滅させれられたことを知るだろう。パニックが起こらないことを祈る。

都知事選の投開票日は31日だ。

東京が先か、日本が先か、それとも両方で相乗的な大崩壊に至るのか、それが決まる選挙結果になる。


投稿者のコメント

2016年7月20日の夜にこの記事を読んで、阿修羅掲示板に投稿したいと思った。阿修羅掲示板の住人には、カレイドスコープについてはコピペ投稿を待つことなく新着の記事を直接チェックするという人が多いのではないだろうか。最近、特に三宅洋平の評価をめぐって阿修羅掲示板でも意見が対立錯綜しているなかで、カレイドスコープを知らない人に紹介したい。投稿者個人の三宅洋平評価もグラグラと揺れ動いている。
なお、今回の記事は、昨夜公開された後でその日のうちにかなり大幅で重要な追記がおこなわれた。今後の追記などもありえなくはないので、元記事を参照することをおすすめする。


http://www.asyura2.com/16/senkyo209/msg/841.html
[政治・選挙・NHK210] 忠良ナル汝アホ臣民ニ告ク!(補記)― 辺見庸ブログ
忠良ナル汝アホ臣民ニ告ク!(補記)

このたびのオキモチ発表は、たんなる偶然にせよ、相模原の障がい者殺傷とあい前後して生じた底昏い「事件」だとおもう。両者にはいかなる関係もないと言えば言えるけれども、殺傷事件の血煙ごしにオキモチを聞き、あるいはオキモチ発表の茫とした不気味さから重度障がい者の殺傷事件を想ってしまうのは、どうにもいたしかたのないことだ。象徴と言われようが天皇制は天皇制なのであり、〈かれらの血〉とわれらとの関係/無関係性をふりかえるとき、あるしゅの怖気と戦きをともなうのはなぜか。

障がい者の施設はいつも〈かれら〉の居住区から遠ざけられた。昭和天皇が各地を「巡幸」したとき、ヒノマルをうちふる子どもたちの前列には、きまって「健康および体格優良」なる児童がたたされた。現在の天皇の旅でも、当局は事前に、精神障がい者や認知症患者らを外出させないよう沿道の地域に直接間接、工作しているといわれる。スメラギにまつわることどもの湿った「襞」には、不可解な精神がうめこまれ、それじたい、しずやかに狂(たぶ)る 波動である。

このクニのゼノフォビア(xenophobia)は、おしなべて、こよなくスメラギを愛する。異様なほどに。スメラギはオキモチ発表にさいし、なぜそのことに言及しなかったのか。〈朝鮮人は死ね、朝鮮人は息するな〉――などと、だんじて言ってはならぬ、皇祖皇宗は半島よりきたやもしれないのだからと。スメラギが「いきいきとして社会に内在し」ているとは、どういうことか。みずから「内在」を言うとは、スメラギよ、とてもおかしい。

スメラギさんよ、あなたは虚構なのだ。虚構にすぎないのだ。卑怯で卑小な、ずるがしこい権力者たちがこしらえた、哀れなフィクションなのだ。そのようなものとして仮構された〈存在〉兼〈非在〉なのだ。われらとおなじ、そして奇しくも、障害者殺傷事件の青年と同様の、霊長目・直鼻猿亜目・真猿亜目・狭鼻下目・ヒト上科・ヒト科・ヒト亜科・ヒト族・ヒト亜族・ヒト属・ヒトであるにもかかわらず、虚構たることを強要されたひとなのだ。

であるなら、オキモチはやはり「お肝血」であるべきであり、スメラギはいつの日かついに、ヒトとして解放されなければならない。したがって「お肝血」発表では、退位ではなく廃位の希望を、すなわち、天皇制廃止の意向を言うべきであった。逆であった。スメラギはスメラギになりきり、権力者の思惑どおり、虚構を現実ととりちがえていた。ヒトであるならば、極右大臣たちへの認証式を欠席すればよかったのだ。「お肝血」とはそういうことだ。

さて、障害者殺傷事件の青年も、スメラギを敬愛していたのではないか。
(2016/08/10)
  
  
汝アホ臣民ニ告ク(辺見庸ブログ)[回答先の元記事に追加されていた分を抜粋]
http://yo-hemmi.net/article/440874162.html
http://www.asyura2.com/16/senkyo210/msg/926.html

[地域13] 森民夫氏が知事選出馬を表明(新潟日報)
森民夫氏が知事選出馬を表明
県政の再生、信頼回復掲げ
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/politics/20160810272709.html
新潟日報 2016/08/10 20:30
  
  
 全国市長会長で県市長会長も務める森民夫・長岡市長(67)は10日、県庁で記者会見し、9月29日告示、10月16日投開票の知事選に立候補することを正式に表明した。森氏は「失われた県政の信頼を取り戻す」と強調。国や市町村などとの関係を改善し、県政の「再生・正常化」を進める考えを明らかにした。

 現職の泉田裕彦知事(53)は無所属での4選出馬を表明しており、選挙戦となることが確実になった。

 県市長会と県町村会は5月、泉田知事の県政運営を批判する検証結果をまとめた。6日には首長有志5人が森氏に立候補を要請した。森氏は無所属で出馬し、主要政党、各種団体などに推薦を求める方針。

 会見で森氏は「泉田氏が自らの独自の主張にこだわり、新潟は国や北陸各県、市町村と厳しい関係になっている」と指摘し、「県政の信頼回復を果たすことが私の使命」と述べた。

 3期12年の泉田県政について「受け身の姿勢で『不作為』とも言える。積極的に前に出る政策がない」と批判。市町村や近隣県と協力し、国に対して主張するだけでなく国の力を引き出しながら政策を実行する知事を目指すとした。

 県が主導する日本海横断航路の船購入問題では「国際的信用に関わる問題だ。きちんと情報公開し、県民が納得できる解決を図る」と訴えた。

 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題では「県民の安全が第一。厳しく検証する」とした。

 森氏は長岡市出身で東大卒。旧建設省官僚を経て1999年に長岡市長に初当選した。現在5期目。

 知事選出馬に伴い、今秋に長岡市長選が行われる見通しだが、森氏は市長辞職の時期は明言せず、後継指名はしないとした。
http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/742.html

[地域13] 長岡市長、10月投開票の県知事選へ出馬を正式表明(日本経済新聞)
 長岡市の森民夫市長(67)は10日に新潟県庁で記者会見し、任期満了に伴う新潟県知事選(9月29日告示、10月16日投開票)に出馬すると正式に表明した。森氏は4期目を目指す現職の泉田裕彦知事(53)について「独自の主張で国や県内市町村との関係を厳しくした」などと批判。「県政の信頼回復を果たす大義が、私に課せられた使命だ」と出馬理由を説明した。

 森氏は目指す知事像ととして「県民の意見に耳を傾け、現場の知恵を生かす」「国に主張するだけでなく国の力を引き出す」「職員を信頼し、やる気を引き出す」など6項目を挙げた。

 原子力政策を含め具体的な公約について、この日は回答しなかった。「県民の意見を聞きながら順次、発表したい」と述べるにとどめた。その上で「政策は誰にでも書ける。先に掲げた知事像が実現できれば、すべての政策は実行できる」とリーダーシップの重要性を繰り返し強調した。

 森氏は昨年11月に5選を果たしたばかり。市長の任期を3年以上残しての出馬になるが「知事の立場から長岡市を見守り、応援することが長岡市の発展にも寄与する」と市民に理解を求めた。

 森氏は今後、自民、公明、民進などの各政党へ推薦を求める。

 2012年の前回選挙では共産を除く各政党が泉田氏を推薦したが、今回は現時点で各政党は泉田氏から求められている推薦について態度を保留している。県議の間からは「党内には泉田氏に近い勢力と森氏に近い勢力があり、一本化は難しい」(自民)、「9月議会の知事の対応を見て判断したい」(公明)などの意見が漏れる。

 森氏が会長を務める新潟県市長会や、町村会が総意として森氏を推薦するかも不透明だ。三条市の国定勇人市長によると、10人以上の県内首長が森氏を支持する方針という。一方、加茂市の小池清彦市長ら泉田氏を支持する首長もいる。

 前回の知事選では、泉田氏が両会との政策協議の場を設けるなどしたことを評価。両会として同氏を推薦している。

 今回の出馬を巡っては6日に三条市や聖籠町など県内5市町の首長が森氏に面会し、決断を促した。泉田氏は2月、4期目を目指して出馬を表明している。

 森氏は長岡市出身。東大工学部を卒業後、旧建設省に入省。1999年の長岡市長選で初当選した。2009年からは全国市長会会長も兼ねている。

 長岡市長として存在感を発揮したのは災害対策だ。04年10月の中越地震では旧山古志村(現長岡市)の全住民を受け入れるなど対応を指揮。中心市街地活性化では、JR長岡駅前に市役所本庁舎を移転して、大型イベントも開催できる複合拠点「アオーレ長岡」を開くなどした。
http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/743.html

[地域13] 「泉田県政の流れ断つ」 森氏が知事選出馬表明(産経ニュース)
「泉田県政の流れ断つ」 森氏が知事選出馬表明
http://www.sankei.com/region/news/160811/rgn1608110043-n1.html
産経ニュース 2016.8.11 07:04
 
 
 長岡市の森民夫市長(67)は10日、県庁で記者会見し、9月29日告示、10月16日投開票の知事選に無所属で出馬する考えを表明した。立候補を明らかにしたのは現職の泉田裕彦知事(53)に続き、2人目。森氏は「泉田県政の悪しき流れを断ち、県政の信頼回復を果たす大義が私に課せられた使命だと確信した。県民と一緒に県を再生したい」と述べ、泉田氏の4選阻止が動機だと説明した。幅広い県民に支えられる「県民党」を基本姿勢にするという。

 森氏は、3期約12年間にわたる泉田県政について「知事は自身の意見と主張にこだわり、国や近隣県、県内の市町村と厳しい関係になっている」と批判した。その上で最近の“失政”の例として、日本海横断航路計画で使うフェリーの契約トラブルを取り上げ「県民の血税を失う恐れがある」と指摘。医療・福祉関連の法定計画が未策定だったことにも言及し「県政への信用を大きく失墜させ、県職員の士気も低下したのではないか」とした。

 具体的な政策は示さなかったものの、目指す知事像として、県民の意見に耳を傾け現場の知恵を生かす▽市町村の知恵とパワーを生かす▽近隣県と協力してプロジェクトを実現する▽国の力を引き出す▽職員を信頼し、やる気を引き出す▽市民団体と協働しパワーを引き出す−の6つを掲げ、実現に「政治生命をかける」と力を込めた。

 出馬に伴い、任期が残り3年以上ある長岡市長を5期目途中で退任することに関しては「市民の期待を裏切る行為に映るかもしれないが、泉田県政が続く限り市町村が大きなマイナスを被る」と述べ、長岡市を含む県内の自治体の発展につながる決断だとした。退任時期は、明確にしなかった。

 三条市の国定勇人市長ら県内の首長5人から6日に受けた出馬要請については「自分の中にたまっていたものに火をつけた。(出馬は)頼まれたからではない」と述べ、受け身の姿勢ではないと強調した。

 一方、泉田知事は森氏の出馬表明を受けて「どなたが立候補されようとも県民の生命・安全・財産を守り、県の発展に全力を尽くしたい」とのコメントを発表。原子力防災をめぐり、甲状腺被曝(ひばく)を軽減する安定ヨウ素剤の「事前配布の話し合いでさえ協力を得られなかった」と森氏を批判するとともに、原子力防災の見直しに意欲を示した。
 
             ◇
 
 森民夫市長の会見での主な一問一答は次の通り。

 ――出馬の理由は

 「日本海横断航路計画などの問題は県政の信用を大きく失墜させ、職員の士気も低下していると心配している。熟考を重ね、名乗りを挙げる決断をした」

 ――最大の決め手は

 「県内有志の5市町長が(出馬要請に)来てくれたことと(長岡市長の後援会の)『志民(しみん)の会』の理解が得られたことが大きいが、きっかけに過ぎない」

 ――目指す知事像と原発政策は

 「市町村の知恵とパワーを使って近隣県とも連携し国の力を引き出すことができれば、全ての政策を実行できる。(原発政策は)一番大事な県民の安全・安心を守ることを基本に、国や地元とともに厳しく検証していく」

 ――森市政の後継者指名は

 「ない。市民が決めることで、私が決めることではない。誰が立候補するかを見極めて考えたい」

 ――市長の退任時期は

 「公務もあり、全体のスケジュールの中で考える。(9月市議会を区切りにするのも)一つの考え」
http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/744.html

[政治・選挙・NHK211] 「象徴天皇制は人間主義なのか、象徴天皇制は戦前の国体と断絶しているのか、僕は違うと思う。:住友陽文氏」(晴耕雨読)
「象徴天皇制は人間主義なのか、象徴天皇制は戦前の国体と断絶しているのか、僕は違うと思う。:住友陽文氏」 
http://sun.ap.teacup.com/souun/20543.html
晴耕雨読 2016/8/12
 
 
https://twitter.com/akisumitomo
 
@考えが揺れている。もう一度考えを整理するためにツイートする。あらかじめ言っておくが、皇室典範を改正して生前退位を認めることは検討の余地はあるが、慎重にした方がよいという考え。「やめる自由」を認めると「やる自由」を認めるざるをえなくなり、それは憲法改正の問題につながるからだ。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763573704089448448

A象徴天皇制を全く新しい制度だと考え、天皇の人間性を容認することがこの制度を補強し、だからこそ生前退位という天皇個人の「人間らしい自由」を認めることは、より象徴天皇制を完成の高みに上げるのだという議論が形成されつつあるのだとするなら、これはかなり警戒した方がよい。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763573863489732608

B天皇を人間主義的な方向に導くのが象徴天皇制の完成形であるとする見方とは正反対に、生前退位を否定する者を頑迷固陋な守旧派、もしくは戦前回帰型の国体論者とみなすのは、やはり厳密な考察を欠く。象徴天皇制は人間主義なのか、象徴天皇制は戦前の国体と断絶しているのか、僕は違うと思う。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763574044734033921

C象徴天皇制下の天皇にさまざまな自由が制約されており、本来市民なら認められる権利が与えられていないことは誰しも認めるところ。そもそも男系の男子しか皇位継承されないのは戦前の「万世一系」が続いている証拠だ。イデオロギー上、天皇が社会に寄り添う者であるとするのは戦前も今も同じだ。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763574293187788800

Dならば天皇にも人権を? 本来、人権概念は君主という特権的な身分・血統との対抗で出てきたもの。抵抗感なく「天皇にも人権を」と言えないのはそういう点と関係があるし、その事を踏まえて現行憲法が存立している。天皇への人間主義的な思い入れは天皇と国民との懸隔を安易にフラットにしてしまう。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763574491783888896

E天皇と国民との関係を人間主義的なものとして位置づける、支配・被支配という制度上の関係から逸脱する法外の関係性こそ、20世紀に入って新たに国体に付与されだしたイデオロギーだった。情誼的で道徳的な関係性こそ君民関係の本質というのが新しい国体論であり、これこそ護持された国体だった。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763574683966906368

F1946年1月1日に昭和天皇が発した「新日本建設の詔書」で、天皇と国民との間の紐帯は「信頼と敬愛」(この言葉は今回の天皇の談話にも登場する)とによって往古から結ばれていたと過去を言い直したが、この「お言葉」が「人間宣言」と呼ばれるのは、やはり意味深長なのだ。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763574896999829505

G昭和天皇は以上のような新しい国体思想の形成の時期を歩んだが、同時に大元帥であり現人神でもあった。室伏高信(戦前のジャーナリストで敗戦後の憲法研究会の主要メンバー)から柳田国男まで象徴天皇論は戦前から存在したが、それもまた新しい国体論と親和的であった。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763575180379627520

Hすなわち昭和天皇はすでに大日本帝国憲法の体制下でカリスマであり、戦後、自身が国民を統合する象徴だと言われるのは不自然ではなかっただろう。その意味で、昭和天皇はすでに「象徴天皇」で「あった」が、現在の天皇は「象徴天皇」で「あろう」とすることで象徴天皇の地位にいたと言えるだろう。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763575879813378048

Iリベラル派からも愛された現在の天皇が「象徴天皇」たらんとして、戦前の近代天皇制とは区別された天皇像を主体的に追求する存在であればあるほど、天皇と国民との間の障害物(「君側の奸」)は排除され、戦前日本で形成された新たな国体思想に近づくという逆説。歴史とはまたそういう一面を持つ。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763576616630956033

J教育勅語を出す時に、起草者である井上毅は、立憲主義の原則では天皇といえども人民の内面に干渉できないので、教育勅語を社会上の天皇の個人的な著作広告として発布したいと言っていた。立憲主義の制約を離れた道徳上の天皇像は臣民の内面に入り込み、臣民のアイデンティティの一角を形成した。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763576907912712192

K今回の天皇の談話でも憲法上の制約を考慮し、天皇という立場から離れて個人として気持ちを語ると言ってる。個人としての天皇の発言が国民の感動を呼んで、国民統合の象徴としての天皇をいただく国民として一人ひとりが大いなる感化を受ける。もはや天皇が空気みたいで存在感がないなど誰も思わない。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763577278739517441

L今後、皇室典範改正が行なわれて天皇の生前退位が認められていくのかもしれないが、はっきりしている事は、この発端を作ったのはまぎれもない「天皇個人としての気持ち」の発露である。特権的な立場にいる天皇が主権者を動かし、動いた国民はその天皇を自分たちと同じ人間として認める前例ができる。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763577523422711808

M当初、天皇の談話は録画されていると聞いていたので、変に編集されないか気がかりだったが、それはなさそうであったが、逆に全文を国民に向けて直接語りかけるその「仕掛け」には注意が必要だと思った。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763578570438381569

Nいろいろ歴史を知る者として懸念があり、今回の談話(必ずしも内容のことではない)を歴史家としては「すばらしい」とは言えない複雑さを感じている。賛成か反対かをはっきり言えないもどかしさはそこから来ている。「思考」をあえて「停止」するということになっているのもそのため。(了)
https://twitter.com/akisumitomo/status/763578740374765568

>土井洋彦 @doinakamura
『注釈日本国憲法上』(青林書院)から。樋口陽一氏「皇室典範の改正によって退位制度を設けることはもちろん可能であるが、一般的な立法論としていえば、生前退位の可能性を認めることは、皇位を政治的ないし党派的な対立にまきこむおそれが多いことを、考慮しなければならない」
https://twitter.com/doinakamura/status/763038133050937344

このごにおよんでも、まだ日本国憲法は占領軍が「書いた」と言ってる不勉強者がいるが、いちいち応えない。そう思う前に、まず憲法研究会の憲法草案をはじめ、憲法制定過程での国会などの審議過程での議論を見るがいい。何度も書き換えられ、新たに政府発案の条項まで追加されている。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763579654057766912

日本国憲法を「押しつけられた」だけの憲法、占領軍が「書いた」憲法などというのは新手の「自虐史観」だ。敗戦直後の日本の支配層(政府や国会議員や官僚たち)や広汎な知識人層をなめてはいけない。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763580150394957824

>田川滋 @kakitama
現憲法施行時、憲法学者は「日本の国体は変わりました。国民に主権が移ったのですから。8月15日は革命」と言い、政府の(9条発案者とされる)幣原喜重郎は「国体は護持された」と言った。このすれ違いは最初から今まで続いている。
https://twitter.com/kakitama/status/763578747748442113

憲法学者はそう言わざるを得ません。しかし国体は法外の存在ですから、その部分も含めてすべて戦前と戦後が断絶しているというのは無理があります(美濃部自身、国体を憲法の外に置きました)。「ノモス」論はそういう点をついていますね。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763581692774723584

>ITO Toshikazu @toshiitoh
今回の「お言葉」は象徴天皇制の長期的な存続に大きな役割を果たすと思うが、今上は別に「いい人」ではなくて、怖ろしいほど聡明で冷徹な政治家だったという真実を見せつけられた感じがする。
https://twitter.com/toshiitoh/status/763581288162795520

そうかもしれませんし、象徴天皇制の理想像を追求するあまり、絶妙なバランスで憲法と「調和」していた天皇像が大きく崩れ、何か大きな変革を呼ぶ可能性だってあるかもしれません。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763582415805689856

もう一つだけ(じゃないかもしれないが)。象徴天皇制というのは、安定を志向するなら、理想型を追求してはいけないのかもしれない。まさに空気のような存在でいること、それが求められたのかもしれない。象徴天皇制に風穴を開けるのが、「天皇の人権」問題になるというのは皮肉(なことになるかも)。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763583203604955137

>田川滋 @kakitama
戦前にもあった国民と天皇の「超法規的な」共同体関係が、法の枠を飛び越えた政治に繋がる危険。その懸念は分かる。しかし立憲主義においては法の枠を飛び越えた「統治」は絶対に出来ない。「幽霊はいない」と言い続ける事で幽霊は消える。「幽霊が蘇る」と恐れるほどに、幽霊は本当に蘇るんです。
https://twitter.com/kakitama/status/763600719194664960

幽霊は社会の仕組みに何ほども影響を及ぼさないですが、僕が示したような国体思想や規範の問題というのは「陶冶」という問題に関わり、人びとを感化・教化します。ある憲法学者が言うようにその問題は立憲主義にとってのアキレス腱です。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763636224321916928

すなわち立憲主義は、逆説的ですが「法外」にある国体思想や道徳によって補完されます。なぜなら結局、立憲主義を支えるのは人力だからです。田中希生くんもその問題を文学や言葉の問題に広げて考察しています。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763636408103821312

林尚之くんとの共編著『立憲主義の「危機」とは何か』(すずさわ書店)に収載されている田中論文と拙稿をご参照下さい。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763636544448049152

>松本徹三 @matsumotot68 
自国の憲法に「戦争を放棄する」と書いたら、自国の平和と安全は守れると本気で考えている人は、まさか世界のどこにもいないでしょう。そんな事なら世界はバラ色ですから。本気で考えている日本人がいるのなら、韓国やベトナムやウクライナに行って、熱心にその方法を薦めてこられたら如何でしょう。
https://twitter.com/matsumotot68/status/763413126377115649

>Simon_Sin @Simon_Sin
こうやって嘲笑するひとよりも「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と当然のことを当然であるべきだと愚直に宣言している憲法前文のほうが人として立派だとおもう 
https://twitter.com/Simon_Sin/status/763414155252555776

憲法に「戦争放棄」を書いたら平和が保てるのかと言う人は憲法が何かわかっていない。憲法は他国が侵略してくることをストップさせる魔法の言葉ではなく、自国の権力が武力を使って暴走しないようにするためのものだ。それに憲法前文に国際社会への信頼を表明したから日本は壊滅させられなかったのに。
https://twitter.com/akisumitomo/status/763636733833469956
 
                         ◇
 
上に紹介されている文章は、住友陽文 @akisumitomo氏による一連のツイートである。それをさらに投稿者が紹介するにあたり、「復元的」な細かいつけ足しとレイアウトの変更をおこなった。「晴耕雨読」の元記事を参照の上、ご容赦いただきたい。元記事には紹介されていないツイートで要点がコンパクトにまとまっているものがあったので、ついでに紹介しておく。(投稿者)
 
                         ◇
 
戦前の国体思想といっても実に多様です。国体を憲法内秩序として捉える理解があるかと思えば、憲法を越えた秩序として捉える理解もありました。例えば君民は支配・被支配の関係ではなく道徳的な関係にあるといった君民一体論もその一つ。(1/3)
https://twitter.com/akisumitomo/status/763019167599505408

現在、国民は天皇の「お気持ち」を考えることが重要だという言説があったり、また先日の天皇の談話では天皇は国民に寄り添うとも言ってます。戦前の国体思想に近いものがあります。(2/3)
https://twitter.com/akisumitomo/status/763019330007085056

法の次元では国体は変わったが、天皇と国民との人格的な関係としては戦前の国体論が残っていると僕は考えています。こちらを参照→拙著『皇国日本のデモクラシー』(有志舎)。(3/3)
https://twitter.com/akisumitomo/status/763019382859501570
http://www.asyura2.com/16/senkyo211/msg/139.html

[政治・選挙・NHK210] 忠良ナル汝アホ臣民ニ告ク!(補記2)― 辺見庸ブログ
忠良ナル汝アホ臣民ニ告ク!(補記2)


豊葦原の千五百秋の瑞穂のクニの、ドジンどもは、某ドジン系紙の世論調査によるならば、こう思ったのだそうだ。スメラギが「生前退位」のオキモチを示唆したことは「よかった」と。そう答えたものが、ドジンぜんたいの93パーセントを占めた。だからどうしたというのだ。では、ドジン系紙幹部に問う。相模原の障がい者殺傷事件の青年は、死刑判決が相当と思うかどうか世論調査をしたら、やはり93パーセント以上のドジンどもが「イエス」と答えるのではないか。それはなにを意味するのか。


そらみつ倭の国を秋津島とふこの弧状ドジン列島においては、天皇制賛美と死刑制度賛成が黯然といまも並立しつづけている。なぜか?スメラギはかんがえたことがあるだろうか。あなたは、「賎視」や「不浄視」と天皇制の関係について、一個のまともなひととして、深く思いをいたしたことがあるのだろうか?「賎視」され「不浄視」された被差別地域の人民は、スメラギと同様に、生物学的には霊長目・直鼻猿亜目・真猿亜目・狭鼻下目・ヒト上科・ヒト科・ヒト亜科・ヒト族・ヒト亜族・ヒト属・ヒトであるにもかかわらず、あなたやあなたの父たちに一指でも触れることは言わずもがな、車列を沿道にたって見送ることさえ許されなかった。


中上健次はせめても率直であった。天皇制があるから差別が生じる。たんじゅんな事実である。そのような趣旨のことを生前ボソッとつぶやいた。同感である。相模原の障がい者施設は、なぜ相模原にあったのか。なぜ東京都千代田区ではないのか。豊葦原の千五百秋の瑞穂のクニの絞首刑は、スメラギ夫婦の誕生日、宮中の重要行事日程、慶弔日とかさならないように、かつ断乎として執行されているのはなぜか。「日本の皇室が、いかに伝統を現代に生かし、いきいきとして社会に内在し、人々の期待に応えていくかを考えつつ、今日に至っています」――これは、反転させれば、「賎視」「不浄視」「穢れ」といったドジン的因習の永続を宣言したにひとしい。


そこまでむずかしくかんがえるまでもないのかもしれないね。皇室典範をいじらずにやれることはある。若い皇族の方々にちょこっと「おためし労働」をやってもらってはどうか。たとえば「ブラック企業大賞」にノミネートされている、残業代未払い・過労死・自殺(事実上の他殺)があいつぐ企業でのバイトあるいは派遣労働。週連続7日間の深夜労働、午後3 時から午前3 時半の閉店まで12 時間の連続労働。休憩時間なし、休日出勤、強制的なボランティア活動、連日の罵倒・イジメ、懲罰のトイレ掃除、早朝研修……。


スメラギさんよ、スメラギを利活用する犯罪的政治家どもよ、「社会に内在」するのは、以上のような、とてつもない理不尽と貧困、それらと戦う意思をついえさせる「国民統合の象徴」という擬制だ。したがって、生前退位ではなく、生前廃位せよ。石牟礼さんよ、柄谷よ、あの方々は「善いひとだ」ではすまないのだ。ところで、リオ五輪が終わったら、まちがいなくくるだろう、あれが。絞首刑の執行が。たぶん、豊葦原の千五百秋の瑞穂のクニのドジンどもの、ほぼ全員が、あっけらかんと知らぬふりをするだろう。
(2016/08/11)


汝アホ臣民ニ告ク(辺見庸ブログ)[回答先の元記事にさらに追加された部分を抜粋]
http://yo-hemmi.net/article/440874162.html  

http://www.asyura2.com/16/senkyo210/msg/927.html

[政治・選挙・NHK210] 忠良ナル汝アホ臣民ニ告ク!(補記3)― 辺見庸ブログ
忠良ナル汝アホ臣民ニ告ク!(補記3)
 
たそがれどきに皇居のあたりをあるくと、ひどく馬糞くさいときがある。にほひは、こちらからカシコキアタリへの流れではない。馬糞臭はうたがひもなく、あちらからこちらへとただよってくる。やれありがたや、ありがたやと馬糞のにおいを胸いっぱいすっているのかどうかはしらぬが、ドジンどもはだれも文句を言わない。逆ならどうなのだ。こちら側の馬のクソ、ひとのクソのにほひが禁中にながれこんだら、連中、少しもさわがず、歌でも詠むといふのか。 秋風は 涼しくなりぬ 馬並(な)めて いざ野に行かな 萩の花見に 道々クソをひりつつ…。ありえない。旧内務省のエトスをうけつぐ当局と地域住民が、皇居ではなく、人民の側からのクソ異臭遮断に血道をあげるだろう。
 
新憲法担当国務大臣だった金森徳次郎は敗戦の翌年の国会答弁で、天皇を「国家の象徴とし、あこがれの中心として将来も敬愛することは日本人の高い道徳的教養でなければならない」[1]と答弁している。慶べ、これらはいま、ついに全面的に実現されたのだ。マスコミは「オキモチ」「オコトバ」だけでなく「御下血」「御失禁」「御脱糞」「御放尿」「御放屁」「御認知(御ボケ)」までをも、推奨される皇室用語として「記者ハンドブック」に追加するかもしれない。そして天皇(制)を崇拝する「高い道徳的教養」をそなえたものどもが、ヒノマルや旭日旗をふって「朝鮮人は死ね!」「朝鮮人は息するな!」とわめくのだ。だが、かれらをなめてはならない。
 
農本ファシストで超国家主義者の橘孝三郎はたいへんな理論家であり、街頭で「朝鮮人は死ね!」などと叫んだりはしなかったらしい。しかし、五・一五事件に参加し「やむにやまれぬ至情」とか「聖なるか賊か是か非か問ふ勿れ、ただひたすらに祖国抱きて」とうたった。これについてあるひとは書いた。「いかなる行動も、至情から出ている限り、彼自身においては正当である」[2](藤田省三『天皇制国家の支配原理』1966年)。至言である。「聖なるか賊か是か非か問ふ勿れ、ただひたすらに祖国抱きて」――の「祖国」は、「勅命」「大君」「組織」「党」「会社」「天命」などと代替が可能である。「聖なるか賊か是か非か問ふ勿れ、ただひたすらに祖国抱きて」の精神は、このドジンコクにあってはかつて、左右の政治勢力(共産党も反共産党系も)の別ない、殺人をも許容する「至情主義」であった。天皇制に骨がらみ馴致されたその心性は、いまも基本的には変わっていない。
 
どうかおどろかないでいただきたい。障がい者殺傷事件のあの青年について、わたしは「いかなる行動も、至情から出ている限り、彼自身においては正当である」のセンテンスと「聖なるか賊か是か非か問ふ勿れ、ただひたすらに祖国抱きて」の、じつにバカげた一首をおもったのだ。7月26日未明の惨劇は、あの青年の「至情」の結果であり、まぎれもない蹶起でもあった。あれは倒錯した社会がこしらえた、未来を徴す血の影絵でもあった。その社会に、スメラギよ、あなたは「内在」し、なおも深く「内在」しつづけようというのか。
(2016/08/12)
 
汝アホ臣民ニ告ク(辺見庸ブログ)[回答先の元記事に追加された部分を抜粋]
http://yo-hemmi.net/article/440874162.html
 
 
 
                    ◇
 
 
投稿者注[1]
 
「次に國體と云ふことの意味でありまするが、是は御説のやうな考へ方も十分成立し得る餘地があると思ひます、由來國體の言葉は決して一樣には使はれて居りませぬ、延喜式に國體と云ふ言葉が使はれた以來、或は其の前にあるかも知れませぬが、種々雜多な意味に用ひられて居るのであります、併しながら之を學問的な立場で見ないで、國民一般の常識に照して考へて見まする時に、如何なものであらうか、國民全體の心の中に活々として、拭ふべくも拭ふべきにあらず、變化し能はむも變化し能はないものは、度々申して居りますやうに、天皇を憧れの中心とする國民の心の繋りと云ふことでございます、それを本として國家が存在して居ることを、國體と云ふ言葉で言つて居るものと思ふのであります、此の點に付きましては絶對に我々は變つたことはない、又將來變るべきものでないと信じて居りまして、國體不變の原則をはつきり言はざるを得ないと思ふのであります」
 
金森徳次郎(貴族院第90回本会議第23号 昭和21[1946]年08月26日 [30/36] )
 
 
「私は天皇の本當の御地位は我々の心の根柢との繋りに於てあるものである、敢て一片の法律を以て作り得るものでもなく、法律を以て消し得るものでもない、日本民族の熱烈なる血液が流れて居る限り、我々の全精神との繋りに於て天皇の御地位がはつきりと國民の心の中に在るのであるし、又遡つて見れば歴史の中にはつきり現れて居る、其の基本の考を提へて言へば、是が即ち日本の本當の姿ではないか、それの本當の姿と言へば、それは即ち國體と云ふ言葉を一つの意味として言ひ表し得るのではないか、且又國民が常識的に國體と言つて居る其の姿ではなからうか、此の前提の下に此の國體と云ふものは日本國民の心の奧深く持つて居る其の天皇との繋りと云ふものに於て日本民族と云ふものは結成せられ、それに基いて國家が出來て居る、其の特色を言ふのであると云ふ説明をして居つたのでありまして、私は今日に於て其の考が正しいのであると思ひ、先程此の點ではなかつたかも能く存じませすが、南原君は一種の自己欺瞞であると、此の點ではなかつたら申譯ありませぬが、一種の自己欺瞞であると仰せになりました、言葉の使ひ方は別としまして、私は全責任を以て自己欺瞞と信じて居ないと云ふことを明言致したいと考へて居るのであります、次に斯樣な基礎の下に於きまして天皇の御地位はどうであるかと云ふ道徳的方面に於きましては、國民の歴史と心との中に宿つて居る、面も現實の政治の面、法律の面に運び來りまする時に如何にするかと云ふことが起つて來る、是から憲法の問題となつて來るのであります、是以前は憲法の以前の問題であります、其の本質が憲法に接觸して先づ現れまする所が憲法の第一條であります、「天皇は日本國の象徴であり日本國民統合の象徴」であると天皇の御地位は日本國民の總意、所謂國家活動の源泉となる所の「日本國民の至高の總意に基く」と規定してあるのでありまして、茲にはつきり國家活動の源泉となる國民の總意に基く天皇の御地位が神祕的なる考のみに基いて是が説明せられるのではなく、確乎不動の歴史と國民の心の中に根差して居ると云ふことがはつきりしたのであります、今迄の天皇の御地位と云ふものは、小學校の子供と雖も、疑を差挾めば差挾み得るやうな神話を基礎として日本の基礎原理を規定したと云ふことは、どうしてさう云ふことがやれたか今日でも不思議に思はれるのであります、之に依つて愈愈天皇の御地位は御安泰と申すことが出來得た次第であります、斯樣に天皇の御地位がはつきりと國法上に認定し得たことは、先程南原君が申されました通り、諸國の知識を廣く集めると同時に、日本の中に備つて居る美しい特殊なる傳統を尊重しなければならぬと云ふ原理に當ると思ひます、日本國民の心の中心となつておいでになる方が國民の總意に依つて國民統合の象徴であると云ふ風に定めることは、實に適切であると考へて居ります」
 
金森徳次郎(貴族院第90回本会議第24号 昭和21[1946]年08月27日 [8/66] )
 
 
「我々は國が變るとは思つて居りませぬ、我々の國家は一人の天皇、それは過去及び將來に亙つての一貫せる國民結合の倫理的中心である、私は天皇を憧れの中心であると申しましたことは、是は早分りする、謂はば枕詞附に於て言ふ所の言葉でありまして、必しも的確なる内容とは言はれないでありませう、稍稍正確に言へば結局國民の心が天皇に繋つて、奧深くそこに聯繋が出來て居る、之に依つて日本國家が確定不動の一つの結合體となつて居ると云ふことでありまして、此の意味に於きまして我々は變るものとは思つて居りませぬ、だから此の意味に於きまして、我々は何等國家の基本特色は變つて居ないのである、國家は同一性を持つて居るものであると考へて居るのであります、茲に國體と云ふ意義を用ひ來るならば、國體は不可變であると云ふことになり、私は其の言葉を定義を加へつ、今迄説明をして來て居ります、謂はれなく國體は變らぬとは申しては居りませぬ」

「日本の國家は歴史に現れて居りまする若干の文字は、神話を基礎として國民に納得を強ふるが如き姿を呈して居ります、併し我々過去の國民も固より神話に依つて誘導されたものもありませう、併しそれのみに依つて此の日本の國家が結合をして居つたものとは思はれませぬ、近代的の歴史家の論證する所に依りますれば、此の點に於て相當明かなるものがあるのであります、私は歴史家ではありませぬ、從つて包括的なる見地に立つてそれぞれの歴史家の意見を承認するより外に途はありませぬが、我々の知り得べき過去の歴史に遡り、又現在の我々の心に顧みまして、天皇を以て、私の言葉の謂はば憧れの中心とし、之に依つて統一せられて來たと云ふことは結局是は儼然たる事實である、而も斯くの如き姿であると云ふことは、盲目的に國の權力に服從して居つたのではありませぬ、意識的に服從して居つたのである、脅迫せられて服從して居つたのでもなければ、神經を麻痺せられて服從させられて居つた譯ではありませぬ、其の時々の姿に於きましては、或法律の規定、或神話の教へと云ふものは強い姿を持つて居つたかも知れませぬが、心の中に於きまして、はつきり自己の意思と云ふものに、價値を認めて居つたと云ふことは、過去の文學、或は若干の事實、多くの人の所見と云ふものを通して不十分ながらも認め得るであらうと思ひます、私今の立場に立つて、之を反省致しまする時に、我々は過去に於て不十分ではあつたけれども、主權は矢張り私の申しましたやうに、國家の意思の源泉たるものが、國民全體にありと云ふ氣持を持つて居つたのである、或はそれがはつきり意識されないで、外のもが特に顯著に現れて居つたのである、今日必要を生じ、又時代の轉囘に應じて心が目覺めた時に、我々は茲に認識の轉換を生ずるのである、認識の轉換それ自身は、社會的に見て大きな事實である、私は認識の轉換と言つたからつて、事柄が小さくなるとは申しませぬ、昨日申しました變な説ではありまするけれども、天動説、地動説が矢張り此の場合に當嵌るのでありまして、認識が變つたとしても、現實の本質が變らないと云ふことに於きまして、日本の國家は完全なる一貫性を持つて居るのである、既に日本の國家が一貫して居るとすれば、曩に申述べました通り、國家の一貫性に伴つて、憲法は法的一貫性を持つて居る、其の憲法の一貫性を以て、政體が變つて行くと云ふことは、適法に是認せられて宜いのではなからうかと、斯樣に私は考へて居る次第であります」

金森徳次郎(貴族院第90回本会議第25号 昭和21[1946]年08月27日 [11/27] )
 
 
「此の憲法改正案の骨子と致します所は、天皇を憧れの中心とする歴史と國民の感情とに基く基本の事實、基本の原理と云ふものをはつきり把握して居りまして、此の根本の思想に基いて政治的な國法的な世界が其の上に現出されて來るので、其の國法的な世界に於きましては、其の基本の事實と密接して、天皇は國の象徴であると云ふ國法的な地位をはつきり樹立させ、併しそれは神話に基くに非ず、無形の法に基くに非ず、國民の總意に基いてと云ふ確實なる基盤を之に認めまして、さうして其の象徴たる天皇…言ひ換へますれば、誰が見ても天皇を仰ぐことに依つて國家を認め、天皇を仰ぐことに依つて國民統合を現實に意識すると云ふ法律的なる地位たらしめ、其の天皇の御地位を更に充實する爲に、此の憲法改正案に示しまするが如く、多からず少からざる適當なる權能を天皇の御働きの中に歸屬せしめて、而もそれから萬々一弊害が起つて天皇の御徳を傷けたり、國家の政治運行に思はしくない色彩の生ずることは、有らゆる工夫を以て之を排除したのであります、即ち法律的の裁可と云ふやうな積極的なる意思行動の權能は之を存在せしめないことにして、且つ又一切の行爲に付て内閣の助言と承認と云ふ一つの要件に繋らしむる、斯う云ふことに依りまして、國民感情の有らゆる面を必要なる限度に於て適正に盛り込むと云ふことが此の憲法の精神であります」

金森徳次郎(貴族院第90回本会議第26号 昭和21[1946]年08月29日 [11/18] )
 
以上「帝国議会会議録検索システム」 http://teikokugikai-i.ndl.go.jp/
 
 
投稿者注[2]
 
「日本ファシズムが、イタリー・ファシォやナチズムにと比較して、著しい「矮小性」をもっていることは、すでにすぐれた作品によって知られている。その成立のプロセスが、激烈な「変革」によるのではなくて、漸次的な総力戦国家への移行によって特徴づけられること。多くの運動のリーダーは、デモクラシー一般に対する自己の否定衝動から、自己の政治的リアリズムを武器として、大衆を煽動し、自主的結社を打倒し、自己の政治権力を獲得していくのではなくて、つねに究極的には既存の国家機構とくに軍部の一部に依存する姿勢でしかことを運ばなかったこと。そうしてすべてのファシストは、国内的には天皇の前に敬虔なる臣下であり、国際的には、世界否定を試みる無類の攻撃的ニヒリズムとしてのナチズムに対して息切れしながら追随するフォロワーでしかなかったこと。それらすべての特徴が示すことは、「反動」化と呼ばれる過程においてもまた、いかに日本社会の歴史的経過が明確なキレ目を持たないか、そうしてこのことに対応して、その経過を営む人間が、いかに歴史的連続を遮断するだけの主体的行動性を欠いていたか、ということである。」(p.119)
 
「日本では、郷土は国家の郷土でもあった。郷土を離れた個人もなければ、郷土を離れた国家もなかったのである。いかなる国でも一般に都市においては、機械化の程度が進行するにつれて、生活様式の全般にわたる万国普遍の規格化が行なわれるから、そこでは祖国は、物質的生活様式の中にではなく、言語と観念の中にのみ存在するようになる、という傾向をもっている。秩序にたいする内面的自覚と国家の存在理由の合理的認識がない場合には、生活意識における脱国民化は、実に容易に発生し一般化する。そうして明治以来の日本においては、合理的な秩序感覚は、ひとり大衆のみならずいかなる階層にも存在しなかった。国家は「一村一家」の延長であり、家と村における全人格的な心情的結合が直ちに公的な国家秩序の支柱であるとされていたのである(忠孝一致)。したがって都市において、「郷党社会」(伊藤博文)とのつながりを失うことは、同時に祖国を失うことであった。しかも一方で、近代国際社会の権力政治的状況に対処すべく、都市と機械化が国家理性から要求されていた。ここにおいては、国家自体が、国家理性と国家心情の強い内的矛盾を包含していたのである。」(p.120-121)
 
「郷土主義は、かくて日本の対外的緊張が増大し、資本主義恐慌の打撃が農村において深刻化するとともに、祖国=郷土の敵を攻撃しながら立ちあらわれる。ナショナリズムのアルトラ化と「国家改造」の心情的主張が、社会生活の画一的機構化、都市の無習俗性に反撥する。財閥の専制、政党の腐敗、あらゆる日本近代社会の病理現象は、すべてそれに結びつけられた。対外的消極政策と国内の規則合理的機構がその病弊のモトなのである。いまや我国古来から自然に生成した制度に還すべきである。「民俗の成俗」としての郷土自治を主張するものが、「権力者の命令に従順なれと云ふのではなく、汝自らの純心純情を満足させよ」という掛声のもとに運動を起す(権藤成卿「成俗の漸化と立制の期限」、『中央公論』1932年6月号)。この国の歴史的重畳性から生れた制度と機構の乖離が爆発的エネルギーを発揮しはじめた。しかし、その制度は「自然而治」るのであって規範意識を内に含むものではないから、そこからは「心情」の力しか発散しない。組織的行為は生れる余地がない。だから行動の専門家が必要である。「破壊屋」が、待機していた。井上日召一派のように「我々は破壊を引受けて殪れる覚悟でゐるのだから、建設案のことまで研究しようと云ふ気はない」(『日召自伝』)と云って、「閥」打倒に熱狂する、右翼「急進ファシズム」運動の一つの類型がそれであった。彼ら運動家は郷土に籠るのではなくて、逆にそれを離れて「東奔西走」する。彼らは、郷土と農民のために「天皇親政」を実現すべく、非日常的な世界に活躍する「志士」であると考えていた。だからして又、彼等の行動そのものは、アウト・ローズのそれであっても、精神形式においては、天皇に対する徹底的に忠義者である。むしろ逆説的だが、忠義者たることによってアウト・ローズ化していたに過ぎない。何如なる行動規範をも認めないニヒリストではなく、最高価値への献身によって他のすべてを無視できると思い上がっていただけである。彼らもナチ指導者もともに異常者ではあるけれども、ナチ・リーダーのヒステリックな熱狂はあくまでも自己の衝動から発生したのに対して、日本の気狂いは、普通人には真似の出来ない「天皇信仰」に凝り固まっていた一種の「新興宗教」型のオルガナイザーであったにすぎない。こうしたタイプの人間がどうして大手を振って「活動」できたのか。」
(p.121-123)

「天皇制のもとでは、「天皇は道徳的価値の実体でありながら、第一義的に絶対権力者でないことからして、倫理的意思の具体的命令を行いえない相対的絶対者となり、したがって臣民一般はすべて、解釈操作によって自らの恣意を絶対化して、これ又相対的絶対者となる。ここでは、絶対者の相対化は相対的絶対者の普遍化である」(拙著)のだから、天皇絶対の建前をどこまでも貫いて行くものは、天皇を除くすべての「恣意的な相対的絶対者」つまり権力者に反抗することができる。我日本で、共産主義を除くすべての運動が一君万民主義をスローガンとしたのは、こうした事情を利用するという一面をもっていた、そうして日本における反俗物主義と「正義感」の主たる培養基もこのイデオロギーの中にあった。天皇制的俗物とは、建前は天皇の絶対を認めておいて、実際は自分の恣意を貫くとか、天皇を価値の究極目的とするのではなくて、自分の立身出世の単なる道標(そこに近づくか、又はそこに近いものに近づくかの努力の地理標)としてしまうのであるから、天皇「目的」主義は、このような天皇「存在」化傾向に対する憤慨の力となるのである。」(p.123)
 
「けれども、郷土は又、「自然而治」るものであるからこそ、権藤が云うように、決して「衣食住男女のことを離れない」ものなのである。明治以来の天皇制がその社会機構の底辺に置いて「国家の基礎」として重視した村の自治とは、政治権力がそれ自身として独立して存在することを許さない無為自然の共同体であったからこそ、一方では「政争軋轢緩和作用」(伊藤博文)をもっていたけれども、他方そこには普遍的規範精神のいかなるものも存在しえなかった。そうして無規範の世界では、制度は動物的接触によってのみ、その範囲でのみ存在しうる。「生物自然の欲求」の相互関係こそが郷土であるとすれば(権藤、前掲論文)、郷土の日常生活をやめて東奔西走するものは、郷土からの支持を得ることは出来ない。だから郷土主義は、当然に「具体的生活」の価値を強調しながら、部落に根を置いた形で生れ出てくる。そうして現代社会における「具体的生活」を重視する限り、とくに恐慌下においては、日常生活のある程度の合理化は避けられない。その際農業経営の合理化は、「生物自然の欲求」を満たさんとするものであるから、実にナチュラルに行われて、それが内面世界の「純心純情」性を冒すことは決してないのである。それは主体的行為ではなくて、自然の運命であるから、社会経済上の生産関係を変革しようとしないのは勿論、いかなる精神世界の変化をももたらさない。例えば、急進ファッショの中の一類型をなしている愛郷塾橘孝三郎のように「理想部落建設運動」を行なっているものの場合を見よ。彼らは攻撃と破壊だけを行なうのではない。郷土(彼らは兄弟村と呼んだ)の部落経営面で、畜産組合や花卉部や実費診療所まで設けて改良運動を怠らない(橘孝三郎『獄中通信』1934年)。のみならずルヨ・ブレンターノの『イギリス経済発達史』とかF・オッペンハイマーの『社会学体系』とかについて社会科学を熱心に勉強して見たりする。この点は影山正治のように「理論」を全く拒否するのとは対蹠的である。しかしその差は全人間的な差異ではない。橘は、一方、価値の世界では茫漠として合理的理解の出来ない王道楽土主義者であり、行動の世界では、「已むに已まれぬ至情」から、一切の合理的配慮を無視して五・一五事件に参加するのである。そうして行動結果については、「聖なるか賊か是か非か問ふ勿れ、ただひたすらに祖国抱きて」と唱う。漠然たる価値観から発した「至情」の結果は、正確な価値測定の出来ないのが当然である。そこには価値判断のチャンとした尺度そのものがないのだから。ただひたすらに祖国を抱けば、それで価値と行動とは矛盾なくつながる。いかなる行動も、至情から出ている限り、彼自身においては正当である。「抱けばよい」というその精神形式が私生活を貫くとき、そこの生ずるものは、今もわれわれが体験している日本型男女関係である。しかもそれは親子の温情関係と密接に連続している。さすがに「生物自然の欲求」の体系である。天皇制精神の実体はこれであった。こうして、欲望自然主義のもとにはどんな行動もすべて当然のものとして包入される。日常生活の合理化や社会科学の研究もその一部であるに過ぎない。橘やその弟子林正三(洋画家)の通信を見ると、ハイカラな洋画や原書への関心が、新興宗教的な心情的信仰性や「ただすべてに感謝悦服あるのみです」(例えば林)といった自然の運命への徹底的な従順さと、御当人には何の不思議も感じさせないで、奇妙な織合せを示しながら共存している。こうした精神構造こそが、日本ファシズムの「国家改造」をキレ目なく行なわしめた基体であった。天皇制の内部に存在する近代国家としての合理的機構化と前近代的共同態としての伝統的心情の価値化との、二つの傾向が生み出す深刻な矛盾を、更めて媒介し縫合するものは、こうした精神以外にはなかった。ただ、心情のままに何処まで行動が進んでゆくか測り知れない欲望ナチュラリズムに一定の限界を置きさえすればよい。そこに全生活を空間的な郷土の中でだけ行なわせようとする、正真正銘の郷土主義があらわれる。それは明治以来の日本に一貫して存在して居たものであって、橘などは、それの病理現象にすぎなかったのであるが、昭和大恐慌後には、国家の全機関の援助を受けて、ずっと大規模に、展開された。青年団、農民塾、産業組合化などの運動である。」(p.125-127)
 
藤田省三「天皇制とファシズム」(『天皇制国家の支配原理』1966年 未来社※)

※現在みすず書房から出ている。
http://www.msz.co.jp/book/detail/08347.html 
 
                    ◇
 
 
辺見庸は一体何をやっているのだろう。芸人の「つかみ」をひねったような一種の暴力的な「つかみ」のことだ。当然のことながら、客席では金を返せと大騒ぎになる。客は結局、怒りと軽蔑と失望を無理やりおみやげに持たされて、帰る。帰る。どんどん帰る。在特会のデモへのカウンターで功名と悪名を同時にあげたしばき隊の作風にも通じるところがありそうだ。少し違う気もするが、コンサートをやめた有名なピアニストのことも連想される。客をあからさまに拒絶しながらも、同時にドジンにしてアホ臣民たるわれわれへの(およびかたじけなくもスメラギにたいする)辛抱強い親愛の気持ちのようなものを感じさせてくれる「私事片々」での辺見庸の態度は、思うに昔の隠者や数寄者にこそいかにも似つかわしいものだ。

投稿者
http://www.asyura2.com/16/senkyo210/msg/928.html

[政治・選挙・NHK211] 「誰が誰をなぜ殺したのか」辺見庸(乱調@rantyo3141)


琉球新報 12日
再掲】相模原・障害者・殺傷事件「誰が 誰を なぜ 殺したのか 上・下」(辺見庸)
乱調@rantyo3141 2016年8月13日 00:17
https://twitter.com/rantyo3141/status/764118689620701185
 

相模原障がい者殺傷「誰が誰をなぜ殺したのか」辺見庸(上) 
 相模原の障害者施設殺傷事件で、作家の辺見庸氏が事件についての思いをつづった原稿を寄せた[1]
(琉球新報 2016年8月11日) 

 惨劇が照りかえす現在/底なしの穴の深さ


 わたしらは体に大きな穴を暗々とかかえて生きている。その空しさにうすうす気づいてはいる。しかし突きとめようとはしない。穴の、底なしの深さを。かがみこんで覗きでもしたら、だいいち、なにがあるかわかったものではない。だから、穴などないふりをする。空しさは空しさのままに。穴は穴のままに、ほうっておく。いくつもの穴を開けたまま笑う。うたう。さかんにしゃべる。穴ではなく、愛について。ひきつったように笑い、愛をうたい、空しくしゃべる。黒い穴の底に、愛がころがり落ちてゆく。
 相模原の障がい者殺傷事件の容疑者はとっくにつかまっている。だが、誰が、誰を、なぜ殺したのか―こんな肝心なことが正直よくわからない。のどもとにせりあがってきているものはある。それを言葉にしようとする。言葉がボロボロとくずれる。白状すると、わたしは夜中に思わず嗚咽してしまった。闇にただよう痛ましい血のにおいにむせたのではない。人間にとってこれほどの重大事なのに、その "芯" を語ろうとしても、どうしてもうまく語りえないだけでなく、わたしの内奥の穴が、仮説という仮説をのみこんでしまうのだ。それで泣けてきた。
 惨劇からほの見えてくるのは、人には@「生きるに値する存在」A「生きるに値しない存在」―の2種類があると容疑者の青年が大胆に分類したらしいことだ。この二分法じたいを「狂気」と断じるむきがあるけれども、だとしたら、人類は「狂気」の道から有史以来いちども脱したことがないことになりかねない。生きるに値する命か否か―という存在論的設問は、じつのところ古典的なそれであり、論議と煩悶は、哲学でも文学でも宗教でもくりかえされ、ありとある戦争の隠れたテーマでもあったのだ。
 たぶん、勘違いだったのだろう。自他の命が生きるに値するかどうか、という論議と苦悩には、これまでにおびただしい代償を支払い、とうに決着がついた、もう卒業したと思っていたのは。それは決着せず、われわれはまだ卒業もしていなかったのである。あらゆる命が生きるに値する―この理念は自明ではなかった。深い穴があったのだ。考えてもみてほしい。あらゆる命が生きるに値すると無意識に思ってきた人びとでも、おおかたはあの青年へのきたるべき死刑判決・執行はやむをえないと首肯するのではなかろうか。つまり「生きるに値する存在」と「生きるに値しない存在」の識別と選別を、間接的に受けいれ、究極的には後者の「抹殺」をみんなで黙殺することになりはしないか。
 だとしたら…と、わたしは惑う。だとすれば、死刑という生体の「抹殺」をなんとなく黙過する人びとと、「抹殺」をひとりで実行したかれとの距離は、じつのところ、たがいの存在が見えないほどに遠いわけではないのではないか。少なくとも、われわれは地つづきの曠野にいま、たがいに見当識をなくして、ぼうっとたたずんでいると言えはしないか。
 ナチズムは負けた。ニッポン軍国主義は滅びた。優勝劣敗の思想は消えうせた。天賦人権説はあまねく地球にひろがっている。だろうか? ひょっとしたらナチズムやニッポン軍国主義の「根」が、往時とすっかりよそおいをかえて、いま息を吹きかえしてはいないか。7月26日の朝まだきに流された赤い血は、けっして昔日の残照でも幻視でもない。「一億総活躍社会」の一角からふきでた現在の血である。それは近未来の、さらに大量の血を徴してはいないか。
 あの青年はいま、なにを考えているだろうか。悪夢からさめて、ふるえているだろうか。かれにはヒトゴロシをしたという実感的記憶があるだろうか。「除草」のような仕事を終えたとでも思っているだろうか。生きる術さえない徹底的な弱者こそが、かえって、もっとも「生きるに値する存在」であるかもしれない―そんな思念の光が、穴に落ちたかれの脳裡に一閃することはないのだろうか。
 

相模原障がい者殺傷「誰が誰をなぜ殺したのか」辺見庸(下) 
(琉球新報 2016年8月12日) 

 痙れんする世界のなかで/冷静な探問こそ必要


 目をそむけずに凝視するならば、怒るより先に、のどの奥で地虫のように低く泣くしかない悲しい風景が、世界にはあふれている。「日本で生活保護をもらわなければ、今日にも明日にも死んでしまうという在日がいるならば、遠慮なく死になさい!」。先だっての都知事選の街頭演説で、外国人排斥をうったえる候補者が、なにはばからず声をはりあげ、聴衆から拍手がわいたという。かれは11万4千票以上を得票している。わたしの予想の倍以上だ。これと相模原の殺傷事件の背景を直線的にむすびつけるのは早計にすぎるだろう。けれども、動乱期の世界がいま、各所で原因不明のはげしい痙れん症状をおこしているのは否定できない。
 あの青年が衆院議長にあてた手紙には、愛と人類についての考えが、こなごなに割れた鏡のかけらのように跳びはねている。「全人類が心の隅に隠した想いを声に出し、実行する決意…」の文面が、ガラス片となって目を射る。「全人類が心の隅に隠した想い」とは、ぜんたいの文脈からして、重度障がい者の「抹殺」なのである。障がい者 は生きるに値せず、公的コストがかかるから排斥すべきだというのが、人びとが「心の隅に隠した想い」だというのだろうか。これが「愛する日本国、全人類の為」というのか。ひどい、ちがう!と言うだけならかんたんである。
 凶行のあったその日も、その後も、世界はポケモンGOの狂騒がつづき、テレビは「真夏のホラー(映画)強化月間」に、リオ五輪中継。リアルとアンリアルのつなぎ目がはっきりしない。そう言えば、善意と悪意の境界もずいぶんあいまいになってきた。障がい者19人を手ずから殺めた青年に、犯行の発条となる持続的な悪意や憎悪があったか、いぶかしい。戦慄すべきは、殺傷者の数であるよりも、これが「善行」や「正義」や「使命」としてなされた可能性である。
 惨劇の原因を、たんに「狂気」に求めるのは、一見わかりやすい分だけ、安直にすぎるだろう。「誰が誰をなぜ殺したのか」の冷静な探問こそがなされなければならない。世界中であいつぐテロもまた「誰が誰をなぜ殺したのか」が、じっさいには不分明な、俯瞰するならば、人倫の錯乱した状況下でおきている痙れんである。そうした症状はなにも貧者のテロのみの異常ではない。
 米軍特殊部隊は2011年、パキスタンでアルカイダ指導者ウサマ・ビンラディンを暗殺したが、その前段で、中央情報局(CIA)のスパイがポリオ・ワクチンの予防接種をよそおってビンラディン家族のDNAを採取していたことはよく知られている。ワクチン接種がポリオ絶滅のためではなく、暗殺のために利用されたのだ。結果、パキスタンでポリオの予防接種にあたる善意の医療従事者への不信感がつのり、反米ゲリラの標的となって殺される事件がことしもつづいている。ポリオ絶滅は遅れている。それでも米政府はビンラディン殺害を誇る。「米国の正義」を守ったとして。
 正義と善意と憎悪と "異物" 浄化(クレンジング)の欲動が、民主的で平和的な意匠をこらし、世界中で錯綜し痙れんしている。7月26日のできごとはそのただなかでおきた、別種のテロであるとわたしは思う。あの青年は "姿なき賛同者" たちを背中に感じつつ、目をかがやかせて返り血を浴びたのかもしれない。かれが純粋な「単独犯」であったかどうかは、究極的にかくていできはしない。石原慎太郎元東京都知事は、前世紀末に障がい者施設を訪れたときに、「ああいう人ってのは人格があるのかね」と言ってのけた。新しい出生前診断で "異常" が見つかった婦人の90%以上が中絶を選択している―なにを物語るのか。
 「生きるに値する存在」と「生きるに値しない存在」の二分法的人間観は、いまだ克服されたことのない、今日も反復されている原罪である。他から求められることの稀な存在を愛することは、厭うよりもむずかしい。だからこそ、その愛は尊い。青年はそれを理解する前に、殺してしまった。かれはわれらの影ではないか。(作家)
 


へんみ・よう 44年宮城県生まれ。96年まで共同通信記者として北京、ハノイ特派員などを歴任。「自動起床装置」で芥川賞、「もの食う人びと」で講談社ノンフィクション賞、詩集「生首」で中原中也賞、「眼の海」で高見順賞を受賞。近刊に「増補版1★9★3★7(イクミナ)」。
 

投稿者注[1]
2016年09月02日付(!)の「辺見庸ブログ」記事によれば次の通り。


◎論考「誰が誰をなぜ殺したか」を共同通信が配信
相模原の障がい者殺傷事件についての辺見庸執筆の論考「誰が誰をなぜ殺したのか」(上下2回)を、共同通信が「特別寄稿」として加盟各紙に配信しました。上は「惨劇が照りかえす現在」、下は「痙れんする世界のなかで」のタイトルがつけられています。新聞の行字数で各160行。
筆者は、このできごとをあらゆる見地からきわめて深刻にうけとめており、さしあたりの初歩的見解を共同通信編集委員室出稿の記事として、したためました。しかし、「オキモチ」やリオ五輪その他の喧噪にかき消され、新聞掲載率は低いとみこまれます。ですので、どの新聞がいつ拙稿を掲載したか、追って本ブログでお知らせしますので、よろしかったらご一読ください。
障がい者殺傷事件(辺見庸ブログ 2016年09月02日)


いくら「新聞掲載率は低いとみこまれ」るといってもこの記事を掲載した新聞はほかにもあっただろう中で、琉球新報の記事の切り抜きをツイートしてくれた乱調@rantyo3141さんに感謝したい。(投稿者) 


関連投稿リンク


天皇陛下の「お気持ち」表明について 辺見庸 阿修羅サイトでは「天皇の人権」を主張する投稿ばかり 政治的堕落はどちらか (ダイナモ 2016年8月9日)
忠良ナル汝アホ臣民ニ告ク!(補記)― 辺見庸ブログ(烏滸の者 2016年8月11日)
忠良ナル汝アホ臣民ニ告ク!(補記2)― 辺見庸ブログ(烏滸の者 2016年8月12日)
忠良ナル汝アホ臣民ニ告ク!(補記3)― 辺見庸ブログ(烏滸の者 2016年8月13日)


これらは「辺見庸ブログ」に「私事片々」として公開され数日にわたって追記された文章だが、すでに元ブログでは削除されている。身辺雑記的な「私事片々」の文章はいつもすぐに削除されてしまう。かなり私的な性格の強い文章であるということを念頭においたうえで、まだ読んでいなければ併せて読んでみることをお勧めする。(投稿者)

http://www.asyura2.com/16/senkyo211/msg/275.html

[テスト31] テスト

自分でやってみる投開票結果の分析―まずはデータの入手

投開票結果分析へのいざない

選挙の投開票結果をある程度は自分で分析できるようになりたい。投開票結果のデータにもとずく選挙結果の論評にたいして、それをさらに検証したり別の角度から分析したりしたくなることがある。あるいは、あまり大きな話題にならなかった選挙では、論評自体が少なくて自力で分析しなくてはならない場合がありうる。しろうとの分析であっても、とくに政治的ポジションの異なる人たちからの批判的な検証を通じて、それなりに客観性が高められていくことを期待できないだろうか。

都知事選挙の不正選挙疑惑

先日東京都知事選挙がおこなわれた。都知事選挙には、開票データの単純な分析結果にもとづく不正選挙疑惑がある。これは、2014年舛添要一前知事が当選した選挙の開票結果について孫崎享氏が疑念を表明したことで話題になった。各開票区での舛添氏の得票数がその前回選挙で当選した猪瀬氏の得票数のほぼ48%できれいにそろっていることがあまりに不自然だという指摘だ。今回の都知事選挙でも同様の分析結果をしめす人たちがいた。これについての判断をわたしはまだ保留している。このような分析をおこなったときにあらわれる数値についての経験知識がないので、「ほぼ48%」というのが不自然といえるほどのものかどうか見当がつかないからだ。ほかの知事選挙や政令市長選挙などを同じように分析したらどうなるのだろう。東京都のようなパターンはやはり珍しいものなのか。もしもまだそのようなあまりにも基本的な検証がおこなわれていないのなら、あるいはおこなわれていたとしてもそれに十分納得ができなければ、自分でやってみるしかない

 知事選挙は実質的な信任投票になっていることが多いので、都知事選挙の比較対象になる選挙は限られそうだ。それでかりに東京都と同じような数値のパターンが見つかったとしても、それだけでは2014年都知事選挙の「不自然さ」を否定する根拠にならない。その類似例がむしろ新たな疑惑の対象になりかねない。こうしたことからすると、めぼしい選挙結果はだれかがとっくに分析していたとしてもおかしくない。

基本は客観的なデータ分析

上に紹介した不正選挙の疑惑が、やはり開票データの分析結果の強引な解釈によって生じたものだったとしよう。そうだったとしても、それをきっかけに多くの人が開票データの分析に関心を向けるようなったとすれば大きな意義がある
選挙管理委員会の公開している投開票結果のデータをどのように分析し、解釈したらいいのか。どのようなグラフや図にするのがわかりやすいのか。都知事選挙ともなると多くの論評記事が書かれる。そのなかには自分でもやってみたくなるようなデータ分析がある。比較的かんたんにできそうなものとしては、たとえば開票区ごとの得票率を算出して地図に落としてみるなど。そうした記事を参考に、みようみまねで選挙結果を分析してみたい。10月には、私の住む新潟県でも知事選挙がおこなわれる。泉田裕彦知事が4選をめざしているが、実質的な信任投票だった前回や前々回とは異なり、いままでの支持基盤に大きな変動が生じているので、予断をゆるさない。どのような結果になるにせよ、今回は自分でも投開票結果を分析してみよう。

 孫崎氏などの不正選挙の問題提起がきっかけでデータ分析にとくに大きな関心をもつようになったという人は、実際にはそれほど多くないのかもしれない。不正選挙の疑惑の対象にはじつにさまざまなものがあるからだ。しかし、その1つを立証するだけでもたいへんな作業だと思われる。データ分析による不正選挙疑惑の解明についていえば、選挙結果のごくふつうの分析をある程度習得してから着手するのが堅実なやり方ではないだろうか。

投開票結果のデータ入手

さて、ようやくここからが本題のつもりだ。ひとくちに投開票結果を自分で分析するといっても、やったことがないと敷居がかなり高く感じられるはずだ。その最初の困難はデータの入手にある。

まず、投開票結果は各自治体のサイトに公表されているが、どこに置いてあるのかわかりにくい場合がある。選挙管理委員会のホームページを開いても選挙結果のリンクがないことはめずらしくない。そこで47都道府県の近年の知事選挙の結果に的をしぼり、選挙結果へのリンクのあるページをまとめてみた [1]

次に、選挙結果のデータ形式の問題がある。データの分析にはエクセルなどの表計算ソフト(スプレッドシート)を使用するが、都道府県によっては、表計算ソフトで直接開くことのできないPDFファイルやHTMLページ上に選挙結果を公表している。これらのデータ形式を表計算ファイル形式に変換、あるいはデータをスプレッドシートに取り込む方法を、かんたんに紹介する [2]

最後に、分析に先立ってデータの編集が必要になることがある。たとえば、孫崎氏が紹介したものもそうだが、直近の選挙を過去の選挙と比較しようとするとき、都道府県によっては市区町村合併で投開票区が大きく変化してしまっているために、投開票区ごとの比較ができない。これは過去の選挙にさかのぼって投開票区を統合することで、一応の比較ができるようになる。かなりの手間がかかるうえに、ミスがないかどうかよくチェックしないといけない。過去4回分の新潟県知事選挙について直近の選挙にあわせて投開票区を編集したものを、サンプルとしてあげておく [3]

これでなんとかデータが準備できた。

データの共有化は今後の課題

それにしても、データの入手から分析までの作業を各自がそれぞれおこなうというのはいかにも効率が悪い。分析をした人が(面倒くさがらずに? 出し惜しみせずに? 恥ずかしがらずに?)データまで公表する習慣ができたらいいのにと思う

 そのさい匿名のユーザ同士がエクセル形式のファイルを直接やりとりすることは、セキュリティ上のリスクがあるので好ましくない。ほかの形式のファイルの配布やウェブページへの貼り付けだと、とくにセル内の数式の受け渡しができないという欠点がある。そこで上に投開票区の編集サンプルとしてあげた新潟県知事選挙のデータ [3] については、Googleドライブのスプレッドシートで公開するというやり方をしてみた。ダウンロードしなくても内容を確認することができ、ダウンロードしようとするとGoogleによるウィルススキャンがはたらく ※※。わたしはふだんGoogleスプレッドシートをまったく使っていないが、エクセルと比較したときの長所もいろいろとあるようだ。デメリットとしては、ユーザの情報を収集しまくり、その膨大なデータが今後われわれにとって致命的なかたちで悪用されないともかぎらないGoogleのサービスの一環であるということが、そもそもの根本的な問題としてある。匿名同士でのデータの共有は、その手段からしてかくも悩ましい。

※※ Googleドライブへのファイルのアップロード(Google Apps 管理者ヘルプ)


[1] 47都道府県の選挙結果ページ

都道府県過去の選挙結果リンクデータ形式
北海道過去の選挙結果[HTM]
青森県過去の選挙結果及び投票率[PDF]
岩手県選挙の結果・予定[Excel]
宮城県選挙の結果[PDF]
秋田県過去の選挙結果[Excel]
山形県各種選挙結果[Excel]
福島県選挙結果・各種資料[Excel]
茨城県過去の選挙結果[Excel]
栃木県選挙の予定・結果[HTML][Excel]
群馬県選挙の記録(平成19年以降の投開票結果)[HTML][PDF]
埼玉県選挙データ[Excel]
千葉県過去の選挙結果(県・国)[Excel]
東京都都内選挙日程/データ[PDF][Excel]
神奈川県神奈川県選挙管理委員会[PDF]
新潟県新潟県選挙管理委員会のホームページ[PDF]
富山県選挙結果[Excel]
石川県石川県選挙管理委員会[PDF]
福井県選挙結果[PDF]
山梨県選挙結果&データ[PDF]
長野県過去の選挙結果 メインページ[PDF]
岐阜県岐阜県選挙管理委員会[Excel]
静岡県選挙管理委員会事務局[HTML][PDF][Excel]
愛知県選挙の記録[PDF]
三重県選挙の記録[PDF][Excel]
滋賀県選挙[PDF]
京都府各種選挙の結果[PDF]
大阪府過去の選挙結果[HTM]
兵庫県選挙データ集[PDF]
奈良県各種選挙の結果について[PDF]
和歌山県選挙データ[PDF]
鳥取県過去の選挙結果[PDF]
島根県島根県選挙管理委員会[HTML]
岡山県選挙管理委員会事務局[PDF]
広島県過去の選挙[PDF]
山口県各種選挙の投開票結果[HTM]
徳島県選挙結果[Excel]
香川県香川県選挙管理委員会[PDF][Excel]
愛媛県選挙関連データ-過去の選挙結果[PDF]
高知県選挙管理委員会事務局[PDF]
福岡県選挙管理委員会[PDF]
佐賀県選挙関係情報(過去分含む)[PDF]
長崎県投票結果・開票結果[PDF]
熊本県選挙結果[PDF]
大分県大分県の選挙[PDF]
宮崎県選挙データライブラリー[Excel]
鹿児島県選挙結果[PDF][Excel]
沖縄県告知・啓発事項[PDF][Excel]

[2] 選挙結果データのエクセル形式ファイルへの変換・取り込み

PDFファイルをエクセル形式ファイルに変換する方法

無料ソフトでも最低限の用は足りる。オンラインサービスを使うのが手軽だ。わたしはSmallpdfをよく使う。ただし、たしか1時間に2回までの回数制限がある。
無料ソフトをパソコンにインストールすることもできる。最近瞬簡PDF変換9の体験版を使ってみた。それなりに満足できる性能だったが、体験版は試用期間内(15日間)しか使えない。また、3ページまでしか変換できないという制限もかかっている(4ページ以降についてはページを指定して別個に変換すればいいのだが、手作業で1つのエクセルファイルにまとめるという手間がかかる)。

 参考記事: PDFファイルをExcel形式に変換する方法(フリーソフト有り)(Excel Hack)

HTMLページ上の表(TABLEデータ)をスプレッドシートに取り込む方法

これは調べてみたらとてもかんたんだった。取り込みたい範囲をマウスで選択してコピーし、スプレッドシートに貼り付けるだけだ。パソコンに保存したHTMLページを表計算ソフトから開く(インポートする)という方法もあるが、これまでのところはコピー&ペーストで用が足りている。


[3] 投開票データ編集サンプルファイル

以下の編集済データおよび原データは、投稿者のGoogleドライブに保存されたエクセル形式(xlsx)ファイルであり、Googleスプレッドシートとして開かれる。閲覧以外にダウンロードとコメントが可能。

編集済データ

平成12〜24(2000〜2012)年 新潟県知事選挙
 投票結果[編集済][Excel]
 開票結果[編集済][Excel]

編集内容
(1)ページを連結した。
(2)直近の平成24年選挙に合わせ、合併のあった市区町村の投開票区を過去にさかのぼって統合した。

原データ

平成24(2012)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]
平成20(2008)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]
平成16(2004)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]
平成12(2000)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]

オリジナルの投開票結果PDFファイル(下のソースを参照)をエクセル形式(xlsx)ファイルに変換し、体裁をととのえた。

ソース:新潟県選挙管理委員会による投開票結果

新潟県サイト 県知事選挙
平成24年10月21日執行 新潟県知事選挙
平成20年10月19日執行 新潟県知事選挙
平成16年10月17日執行 新潟県知事選挙
平成12年10月22日執行 新潟県知事選挙


http://www.asyura2.com/14/test31/msg/546.html
[テスト31] テスト

自分でやってみる投開票結果の分析―まずはデータの入手

投開票結果分析へのいざない

選挙の投開票結果をある程度は自分で分析できるようになりたい。投開票結果のデータにもとずく選挙結果の論評にたいして、それをさらに検証したり別の角度から分析したりしたくなることがある。あるいは、あまり大きな話題にならなかった選挙では、論評自体が少なくて自力で分析しなくてはならない場合がありうる。しろうとの分析であっても、とくに政治的ポジションの異なる人たちからの批判的な検証を通じて、それなりに客観性が高められていくことを期待できないだろうか。

都知事選挙の不正選挙疑惑

先日東京都知事選挙がおこなわれた。都知事選挙には、開票データの単純な分析結果にもとづく不正選挙疑惑がある。これは、2014年舛添要一前知事が当選した選挙の開票結果について孫崎享氏が疑念を表明したことで話題になった。各開票区での舛添氏の得票数がその前回選挙で当選した猪瀬氏の得票数のほぼ48%できれいにそろっていることがあまりに不自然だという指摘だ。今回の都知事選挙でも同様の分析結果をしめす人たちがいた。これについての判断をわたしはまだ保留している。このような分析をおこなったときにあらわれる数値についての経験知識がないので、「ほぼ48%」というのが不自然といえるほどのものかどうか見当がつかないからだ。ほかの知事選挙や政令市長選挙などを同じように分析したらどうなるのだろう。東京都のようなパターンはやはり珍しいものなのか。もしもまだそのようなあまりにも基本的な検証がおこなわれていないのなら、あるいはおこなわれていたとしてもそれに十分納得ができなければ、自分でやってみるしかない

 知事選挙は実質的な信任投票になっていることが多いので、都知事選挙の比較対象になる選挙は限られそうだ。それでかりに東京都と同じような数値のパターンが見つかったとしても、それだけでは2014年都知事選挙の「不自然さ」を否定する根拠にならない。その類似例がむしろ新たな疑惑の対象になりかねない。こうしたことからすると、めぼしい選挙結果はだれかがとっくに分析していたとしてもおかしくない。

基本は客観的なデータ分析

上に紹介した不正選挙の疑惑が、やはり開票データの分析結果の強引な解釈によって生じたものだったとしよう。そうだったとしても、それをきっかけに多くの人が開票データの分析に関心を向けるようなったとすれば大きな意義がある
選挙管理委員会の公開している投開票結果のデータをどのように分析し、解釈したらいいのか。どのようなグラフや図にするのがわかりやすいのか。都知事選挙ともなると多くの論評記事が書かれる。そのなかには自分でもやってみたくなるようなデータ分析がある。比較的かんたんにできそうなものとしては、たとえば開票区ごとの得票率を算出して地図に落としてみるなど。そうした記事を参考に、みようみまねで選挙結果を分析してみたい。10月には、私の住む新潟県でも知事選挙がおこなわれる。泉田裕彦知事が4選をめざしているが、実質的な信任投票だった前回や前々回とは異なり、いままでの支持基盤に大きな変動が生じているので、予断をゆるさない。どのような結果になるにせよ、今回は自分でも投開票結果を分析してみよう。

 孫崎氏などの不正選挙の問題提起がきっかけでデータ分析にとくに大きな関心をもつようになったという人は、実際にはそれほど多くないのかもしれない。不正選挙の疑惑の対象にはじつにさまざまなものがあるからだ。しかし、その1つを立証するだけでもたいへんな作業だと思われる。データ分析による不正選挙疑惑の解明についていえば、選挙結果のごくふつうの分析をある程度習得してから着手するのが堅実なやり方ではないだろうか。

投開票結果のデータ入手

さて、ようやくここからが本題のつもりだ。ひとくちに投開票結果を自分で分析するといっても、やったことがないと敷居がかなり高く感じられるはずだ。その最初の困難はデータの入手にある。

まず、投開票結果は各自治体のサイトに公表されているが、どこに置いてあるのかわかりにくい場合がある。選挙管理委員会のホームページを開いて選挙結果へのリンクがないくらいだったらまだいい方だ。とりあえず近年の知事選挙の結果に的をしぼり、47都道府県について選挙結果へのリンクのあるページをまとめてみた [1]

次に、選挙結果のデータ形式の問題がある。データの分析にはエクセルなどの表計算ソフト(スプレッドシート)を使用するが、都道府県によっては、表計算ソフトで直接開くことのできないPDFファイルやHTMLページ上に選挙結果を公表している。これらのデータ形式を表計算ファイル形式に変換、あるいはデータをスプレッドシートに取り込む方法を、かんたんに紹介する [2]

最後に、分析に先立ってデータの編集が必要になることがある。たとえば、孫崎氏が紹介したものもそうだが、直近の選挙を過去の選挙と比較しようとするとき、都道府県によっては市区町村合併で投開票区が大きく変化してしまっているために、投開票区ごとの比較ができない。これは過去の選挙にさかのぼって投開票区を統合することで、一応の比較ができるようになる。かなりの手間がかかるうえに、ミスがないかどうかよくチェックしないといけない。過去4回分の新潟県知事選挙について直近の選挙にあわせて投開票区を編集したものを、サンプルとしてあげておく [3]

これでなんとかデータが準備できた。

データの共有化は今後の課題

それにしても、データの入手から分析までの作業を各自がそれぞれおこなうというのはいかにも効率が悪い。分析をした人が(面倒くさがらずに? 出し惜しみせずに? 恥ずかしがらずに?)データまで公表する習慣ができたらいいのにと思う

 そのさい匿名のユーザ同士がエクセル形式のファイルを直接やりとりすることは、セキュリティ上のリスクがあるので好ましくない。ほかの形式のファイルの配布やウェブページへの貼り付けだと、とくにセル内の数式の受け渡しができないという欠点がある。そこで上に投開票区の編集サンプルとしてあげた新潟県知事選挙のデータ [3] については、Googleドライブのスプレッドシートで公開するというやり方をしてみた。ダウンロードしなくても内容を確認することができ、ダウンロードしようとするとGoogleによるウィルススキャンがはたらく ※※。わたしはふだんGoogleスプレッドシートをまったく使っていないが、エクセルと比較したときの長所もいろいろとあるようだ。デメリットとしては、ユーザの情報を収集しまくり、その膨大なデータが今後われわれにとって致命的なかたちで悪用されないともかぎらないGoogleのサービスの一環であるということが、そもそもの根本的な問題としてある。実用面では、エクセルとの互換性にどうしても限界がある。匿名同士でのデータの共有は、その手段からしてかくも悩ましい。

※※ Googleドライブへのファイルのアップロード(Google Apps 管理者ヘルプ)


[1] 47都道府県の選挙結果ページ

都道府県過去の選挙結果リンク データ形式 
北海道過去の選挙結果[HTM]
青森県過去の選挙結果及び投票率青森県知事選挙の記録[PDF]
岩手県選挙の結果・予定[Excel]
宮城県選挙の結果[PDF]
秋田県過去の選挙結果[Excel]
山形県各種選挙結果[不明なものが多い][Excel]
福島県選挙結果・各種資料[Excel]
茨城県過去の選挙結果[Excel]
栃木県選挙の予定・結果[HTML][Excel]
群馬県選挙の記録[HTML][PDF]
埼玉県選挙データ[Excel]
千葉県過去の選挙結果(県・国)[Excel]
東京都都内選挙日程/データ[PDF][Excel]
神奈川県神奈川県選挙管理委員会[PDF]
新潟県新潟県選挙管理委員会のホームページ[PDF]
富山県選挙結果[Excel]
石川県石川県選挙管理委員会[PDF]
福井県選挙結果[PDF]
山梨県選挙結果&データ[PDF]
長野県過去の選挙結果 メインページ[PDF]
岐阜県岐阜県選挙管理委員会[Excel]
静岡県選挙管理委員会事務局[HTML][PDF][Excel]
愛知県選挙の記録[PDF]
三重県選挙の記録[PDF][Excel]
滋賀県選挙[PDF]
京都府各種選挙の結果[PDF]
大阪府過去の選挙結果[HTM]
兵庫県選挙データ集[PDF]
奈良県各種選挙の結果について[PDF]
和歌山県選挙データ[PDF]
鳥取県過去の選挙結果[PDF]
島根県島根県選挙管理委員会[詳細な結果が不明][HTML]
岡山県選挙管理委員会事務局[PDF]/ [HTML][Excel]
広島県過去の選挙[PDF]
山口県各種選挙の投開票結果[HTM]
徳島県選挙結果[Excel]
香川県香川県選挙管理委員会[PDF][Excel]
愛媛県選挙関連データ-過去の選挙結果[PDF]
高知県選挙管理委員会事務局[PDF]
福岡県選挙管理委員会[PDF]
佐賀県選挙関係情報(過去分含む)[PDF]
長崎県投票結果・開票結果[PDF]
熊本県選挙結果[PDF]
大分県大分県の選挙[PDF]
宮崎県選挙データライブラリー[Excel]
鹿児島県選挙結果[PDF][Excel]
沖縄県告知・啓発事項[PDF][Excel][GIF]

[2] 選挙結果データのエクセル形式ファイルへの変換・取り込み

PDFファイルをエクセル形式ファイルに変換する方法

無料ソフトでも最低限の用は足りる。オンラインサービスを使うのが手軽だ。わたしはSmallpdfをよく使う。ただし、たしか1時間に2回までの回数制限がある。
無料ソフトをパソコンにインストールすることもできる。最近瞬簡PDF変換9の体験版を使ってみた。それなりに満足できる性能だったが、体験版は試用期間内(15日間)しか使えない。また、3ページまでしか変換できないという制限もかかっている(4ページ以降についてはページを指定して別個に変換すればいいのだが、手作業で1つのエクセルファイルにまとめるという手間がかかる)。

 参考記事: PDFファイルをExcel形式に変換する方法(フリーソフト有り)(Excel Hack)

HTMLページ上の表(TABLEデータ)をスプレッドシートに取り込む方法

これは調べてみたらとてもかんたんだった。取り込みたい範囲をマウスで選択してコピーし、スプレッドシートに貼り付けるだけだ。パソコンに保存したHTMLページを表計算ソフトから開く(インポートする)という方法もあるが、これまでのところはコピー&ペーストで用が足りている。


[3] 投開票データ編集サンプルファイル

以下の編集済データおよび原データは、投稿者のGoogleドライブに保存されたエクセル形式(xlsx)ファイルであり、Googleスプレッドシートとして開かれる。閲覧以外にダウンロードとコメントが可能。

編集済データ

平成12〜24(2000〜2012)年 新潟県知事選挙
 投票結果[編集済][Excel]
 開票結果[編集済][Excel]

編集内容
(1)ページを連結した。
(2)直近の平成24年選挙に合わせ、合併のあった市区町村の投開票区を過去にさかのぼって統合した。

原データ

平成24(2012)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]
平成20(2008)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]
平成16(2004)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]
平成12(2000)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]

オリジナルの投開票結果PDFファイル(下のソースを参照)をエクセル形式(xlsx)ファイルに変換し、体裁をととのえた。

ソース:新潟県選挙管理委員会による投開票結果

新潟県サイト 県知事選挙
平成24年10月21日執行 新潟県知事選挙
平成20年10月19日執行 新潟県知事選挙
平成16年10月17日執行 新潟県知事選挙
平成12年10月22日執行 新潟県知事選挙


http://www.asyura2.com/14/test31/msg/547.html
[政治・選挙・NHK211] 自分でやってみる投開票結果の分析―まずはデータの入手

投開票結果分析へのいざない

選挙の投開票結果をある程度は自分で分析できるようになりたい。投開票結果のデータにもとずく選挙結果の論評にたいして、それをさらに検証したり別の角度から分析したりしたくなることがある。あるいは、あまり大きな話題にならなかった選挙では、論評自体が少なくて自力で分析しなくてはならない場合がありうる。しろうとの分析であっても、とくに政治的ポジションの異なる人たちからの批判的な検証を通じて、それなりに客観性が高められていくことを期待できないだろうか。

都知事選挙の不正選挙疑惑

先日東京都知事選挙がおこなわれた。都知事選挙には、開票データの単純な分析結果にもとづく不正選挙疑惑がある。これは、2014年舛添要一前知事が当選した選挙の開票結果について孫崎享氏が疑念を表明したことで話題になった。各開票区での舛添氏の得票数がその前回選挙で当選した猪瀬氏の得票数のほぼ48%できれいにそろっていることがあまりに不自然だという指摘だ。今回の都知事選挙でも同様の分析結果をしめす人たちがいた。これについての判断をわたしはまだ保留している。このような分析をおこなったときにあらわれる数値についての経験知識がないので、「ほぼ48%」というのが不自然といえるほどのものかどうか見当がつかないからだ。ほかの知事選挙や政令市長選挙などを同じように分析したらどうなるのだろう。東京都のようなパターンはやはり珍しいものなのか。もしもまだそのようなあまりにも基本的な検証がおこなわれていないとしたら、あるいはすでにおこなわれていても十分に納得できなければ、自分でやってみるしかない

 知事選挙は実質的な信任投票になっていることが多いので、都知事選挙の比較対象になる選挙は限られそうだ。それでかりに東京都と同じような数値のパターンが見つかったとしても、それだけでは2014年都知事選挙の「不自然さ」を否定する根拠にならない。その類似例がむしろ新たな疑惑の対象になりかねない。こうしたことからすると、めぼしい選挙結果はだれかがとっくに分析していたとしてもおかしくない。

基本は客観的なデータ分析

上に紹介した不正選挙の疑惑が、やはり開票データの分析結果の強引な解釈によって生じたものだったとしよう。そうだったとしても、それをきっかけに多くの人が開票データの分析に関心を向けるようなったとすれば大きな意義がある
選挙管理委員会の公開している投開票結果のデータをどのように分析し、解釈したらいいのか。どのようなグラフや図にするのがわかりやすいのか。都知事選挙ともなると多くの論評記事が書かれる。そのなかには自分でもやってみたくなるようなデータ分析がある。比較的かんたんにできそうなものとしては、たとえば開票区ごとの得票率を算出して地図に落としてみるなど。そうした記事を参考に、みようみまねで選挙結果を分析してみたい。10月には、私の住む新潟県でも知事選挙がおこなわれる。泉田裕彦知事が4選をめざしているが、実質的な信任投票だった前回や前々回とは異なり、いままでの支持基盤に大きな変動が生じているので、予断をゆるさない。どのような結果になるにせよ、今回は自分でも投開票結果を分析してみよう。

 孫崎氏などの不正選挙の問題提起がきっかけでデータ分析にとくに大きな関心をもつようになったという人は、実際にはそれほど多くないのかもしれない。不正選挙の疑惑の対象にはじつにさまざまなものがあるからだ。しかし、その1つを立証するだけでもたいへんな作業だと思われる。データ分析による不正選挙疑惑の解明についていえば、選挙結果のごくふつうの分析をある程度習得してから着手するのが堅実なやり方ではないだろうか。

投開票結果のデータ入手

さて、ようやくここからが本題のつもりだ。ひとくちに投開票結果を自分で分析するといっても、やったことがないと敷居がかなり高く感じられるはずだ。その最初の困難はデータの入手にある。

まず、投開票結果は各自治体のサイトに公表されているが、どこに置いてあるのかわかりにくい場合がある。選挙管理委員会のホームページを開いて選挙結果へのリンクがないくらいだったらまだいい方だ。とりあえず47都道府県の近年の知事選挙の結果に的をしぼり、選挙結果へのリンクのあるページをまとめてみた [1]

次に、選挙結果のデータ形式の問題がある。データの分析にはエクセルなどの表計算ソフト(スプレッドシート)を使用するが、都道府県によっては、表計算ソフトで直接開くことのできないPDFファイルやHTMLページ上に選挙結果を公表している。これらのデータ形式を表計算ファイル形式に変換、あるいはデータをスプレッドシートに取り込む方法を、かんたんに紹介する [2]

最後に、分析に先立ってデータの編集が必要になることがある。たとえば、孫崎氏が紹介したものもそうだが、直近の選挙を過去の選挙と比較しようとするとき、都道府県によっては市区町村合併で投開票区が大きく変化してしまっているために、投開票区ごとの比較ができない。これは過去の選挙にさかのぼって投開票区を統合することで、一応の比較ができるようになる。かなりの手間がかかるうえに、ミスがないかどうかよくチェックしないといけない。過去4回分の新潟県知事選挙について直近の選挙にあわせて投開票区を編集したものを、サンプルとしてあげておく [3]

これでなんとかデータが準備できた。

分析データの共有化は今後の課題

それにしても、データの入手から分析までの作業を各自がそれぞれにおこなうというのは、いかにも効率が悪い。分析をした人が(面倒くさがらずに? 出し惜しみせずに? 恥ずかしがらずに?)データまで公表する習慣ができたらいいのにと思う

 そのさい匿名のユーザ同士がエクセル形式のファイルを直接やりとりすることは、セキュリティ上のリスクがあるので好ましくない。ほかの形式のファイルの配布やウェブページへの貼り付けだと、とくにセル内の数式の受け渡しができないという欠点がある。そこで上に投開票区の編集サンプルとしてあげた新潟県知事選挙のデータ [3] については、Googleドライブのスプレッドシートで公開するというやり方をしてみた。ダウンロードしなくても内容を確認することができ、ダウンロードしようとするとGoogleによるウィルススキャンがはたらく ※※。わたしはふだんGoogleスプレッドシートをまったく使っていないが、エクセルと比較したときの長所もいろいろとあるようだ。デメリットとしては、ユーザの情報を収集しまくり、その膨大なデータが今後われわれにとって致命的なかたちで悪用されないともかぎらないGoogleのサービスの一環であるということが、そもそもの根本的な問題としてある。実用面では、エクセルとの互換性にどうしても限界がある。匿名同士でのデータの共有は、その手段からしてかくも悩ましい。

※※ Googleドライブへのファイルのアップロード(Google Apps 管理者ヘルプ)


[1] 47都道府県の選挙結果ページ

都道府県過去の選挙結果リンク データ形式 
北海道過去の選挙結果[HTM]
青森県過去の選挙結果及び投票率青森県知事選挙の記録[PDF]
岩手県選挙の結果・予定[Excel]
宮城県選挙の結果[PDF]
秋田県過去の選挙結果[Excel]
山形県各種選挙結果[不明なものが多い][Excel]
福島県選挙結果・各種資料[Excel]
茨城県過去の選挙結果[Excel]
栃木県選挙の予定・結果[HTML][Excel]
群馬県選挙の記録[HTML][PDF]
埼玉県選挙データ[Excel]
千葉県過去の選挙結果(県・国)[Excel]
東京都都内選挙日程/データ[PDF][Excel]
神奈川県神奈川県選挙管理委員会[PDF]
新潟県新潟県選挙管理委員会のホームページ[PDF]
富山県選挙結果[Excel]
石川県石川県選挙管理委員会[PDF]
福井県選挙結果[PDF]
山梨県選挙結果&データ[PDF]
長野県過去の選挙結果 メインページ[PDF]
岐阜県岐阜県選挙管理委員会[Excel]
静岡県選挙管理委員会事務局[HTML][PDF][Excel]
愛知県選挙の記録[PDF]
三重県選挙の記録[PDF][Excel]
滋賀県選挙[PDF]
京都府各種選挙の結果[PDF]
大阪府過去の選挙結果[HTM]
兵庫県選挙データ集[PDF]
奈良県各種選挙の結果について[PDF]
和歌山県選挙データ[PDF]
鳥取県過去の選挙結果[PDF]
島根県島根県選挙管理委員会[詳細な結果が不明][HTML]
岡山県選挙管理委員会事務局[PDF]/ [HTML][Excel]
広島県過去の選挙[PDF]
山口県各種選挙の投開票結果[HTM]
徳島県選挙結果[Excel]
香川県香川県選挙管理委員会[PDF][Excel]
愛媛県選挙関連データ-過去の選挙結果[PDF]
高知県選挙管理委員会事務局[PDF]
福岡県選挙管理委員会[PDF]
佐賀県選挙関係情報(過去分含む)[PDF]
長崎県投票結果・開票結果[PDF]
熊本県選挙結果[PDF]
大分県大分県の選挙[PDF]
宮崎県選挙データライブラリー[Excel]
鹿児島県選挙結果[PDF][Excel]
沖縄県告知・啓発事項[PDF][Excel][GIF]

[2] 選挙結果データのエクセル形式ファイルへの変換・取り込み

PDFファイルをエクセル形式ファイルに変換する方法

無料ソフトでも最低限の用は足りる。オンラインサービスを使うのが手軽だ。わたしはSmallpdfをよく使う。ただし、たしか1時間に2回までの回数制限がある。
無料ソフトをパソコンにインストールすることもできる。最近瞬簡PDF変換9の体験版を使ってみた。それなりに満足できる性能だったが、体験版は試用期間内(15日間)しか使えない。また、3ページまでしか変換できないという制限もかかっている(4ページ以降についてはページを指定して別個に変換すればいいのだが、手作業で1つのエクセルファイルにまとめるという手間がかかる)。

 参考記事: PDFファイルをExcel形式に変換する方法(フリーソフト有り)(Excel Hack)

HTMLページ上の表(TABLEデータ)をスプレッドシートに取り込む方法

これは調べてみたらとてもかんたんだった。取り込みたい範囲をマウスで選択してコピーし、スプレッドシートに貼り付けるだけだ。パソコンに保存したHTMLページを表計算ソフトから開く(インポートする)という方法もあるが、これまでのところはコピー&ペーストで用が足りている。


[3] 投開票データ編集サンプルファイル

以下の編集済データおよび原データは、投稿者のGoogleドライブに保存されたエクセル形式(xlsx)ファイルであり、Googleスプレッドシートとして開かれる。閲覧以外にダウンロードとコメントが可能。

編集済データ

平成12〜24(2000〜2012)年 新潟県知事選挙
 投票結果[編集済][Excel]
 開票結果[編集済][Excel]

編集内容
(1)ページを連結した。
(2)直近の平成24年選挙に合わせ、合併のあった市区町村の投開票区を過去にさかのぼって統合した。

原データ

平成24(2012)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]
平成20(2008)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]
平成16(2004)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]
平成12(2000)年 新潟県知事選挙
 投票結果[原][Excel]
 開票結果[原][Excel]

オリジナルの投開票結果PDFファイル(下のソースを参照)をエクセル形式(xlsx)ファイルに変換し、体裁をととのえた。

ソース:新潟県選挙管理委員会による投開票結果

新潟県サイト 県知事選挙
平成24年10月21日執行 新潟県知事選挙
平成20年10月19日執行 新潟県知事選挙
平成16年10月17日執行 新潟県知事選挙
平成12年10月22日執行 新潟県知事選挙


http://www.asyura2.com/16/senkyo211/msg/531.html
[地域13] 民進党員・サポーター 県連最多の7000人超(新潟日報)
民進党員・サポーター 県連最多の7000人超
新潟日報 2016年8月20日
 
 
 民進党県連の2016年度(6月6日時点)の党員・サポーター登録数が旧民主党時代の前年度から362人増え、過去最多の7353人となった。7月の参院選に向けて各総支部が支援者らへの呼び掛けを強めたことが主因とみられ、7千人を超えるのは初めて。ただ、全国集計は目標だった30万人を大きく下回る24万2907人にとどまり、合流前の旧民主、旧維新両党の合計から3万人近く減らした。党勢の伸び悩みは続いており、党員・サポーターも参加する9月の党代表選では、党支持拡大に向けた取り組みも争点になりそうだ。


参院選で呼び掛け強化/全国、合流前より3万人減


 15年度の民主党県連の党員・サポーターは6991人、維新の党の党員は40人ほど。単純合計の約7030人と民進党結党後の16年度との比較では約320人増となる。県内に旧維新の議員はおらず、増加分はほぼ旧民主党の議員らの活動によるものとみられる。
 県連関係者によると、7月に参院選があったほか、 秋に代表選も控えていたことから国会議員や地方議員が党員・サポーターの獲得に活発に動いた。また、14年12月の衆院選で旧民主党議員が2人から4人に倍増した後、1年間フルに活動して初めての集計となったことも要因にあるようだ。
 ただ、県内の自民党員が約2万4千人いるのに比べると3分の1にも満たない。民進党県連の大渕健幹事長は「増加傾向が続いているのは国会議員も地方議員も一生懸命やった結果。ただ、しっかりした基盤となっているとはまだ言えない。自民党に対抗するためにはもっと増やさなければならない」と話す。


                ■                ■


 全国集計を見ると、両党の単純合計から大きく減らした。民進党結党前の民主党の党員・サポーター数は約23万3千人、維新の党の一般党員数は約3万6千人。単純合計で約27万人に達するはずだったが、実際は約24万3千人。減らした要因について民進党幹部は「自民党1強に対する受け一皿の結集という期待感を打ち出せていない」と省みる。
 ある旧民主党サポーターは「かなり前に登録し、惰性で続けてきた。民進党ができて白紙になり、改めて登録の意思を確認されたので、これを機にやめた」と打ち明けた。旧維新関係者は「維新党員は大多数が保守。旧民主党との合流に疑間を持ち、党員にならなかった人もいる」と語る。


                ■                ■


 代表選に立候補を表明した蓮舫代表代行は世論調査で人気が高く「党員・サポーター票で圧倒する」との見方が強い。他に前原誠司元外相や長島昭久元防衛副大臣らが出馬意欲を見せている。選挙戦となれば、党勢拡大策が問われることになる。
 大渕県連幹事長は「活発な政策論議が展開され、党内に多彩な人材がいることを示すためにも選挙戦が望ましい」と主張。「再び政権を狙えるような態勢を整え、党員やサポーターとして支えたくなるような党にしなければならない。代表選をその第一歩にしないといけない」と強調している。



投稿者による関連記事


民進党新潟県連ホームページ
http://dp-niigata.jp/
http://archive.is/dPcxi(2016年8月21日現在のキャッシュ)


党員・サポーター登録数が推定値で、過去最高の7,000人超に
http://dp-niigata.jp/activity20150701/
民進党新潟県総支部連合会(民進党 新潟県連) 2015年7月1日


民進党 党員が減少 合流前下回る24万2907人
http://mainichi.jp/articles/20160819/k00/00m/010/100000c
http://www.asyura2.com/16/senkyo211/msg/447.html(阿修羅掲示板)
毎日新聞 2016年8月18日 

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/745.html

[地域13] 泉田氏か/森氏か/各党議論白熱(新潟日報)
泉田氏か/森氏か/各党議論白熱
新潟日報[3面] 2016年8月27日


自民 県議に無記名投票/共・社・生 「共闘」構築目指す


9月29日告示、10月16日投開票の知事選は、4選を目指す泉田裕彦知事(53)が2月に立候補を表明して以降、どの政党も対応を決めない状況が続いてきたが、 長岡市の森民夫市長(67)が今月10日に出馬表明し、一気に流動化。ここにきて議論が熱を帯びてきた。自民党は県議や党支部の意向調査を始め、26日には会合を開いて対応を協議した。独自候補見送りで調整する共産党は社民党、生活の党と連携し、「共闘」構築を加速させたい考え。ただ3党から秋波を送られた民進党は慎重な構えをみせる。


民進は連携に慎重


 泉田氏の後援会は前回推薦を得た自民、民進、公明、社民、生活の5党に今回も推薦を要請。森氏はこの5党に加え、共産党にも推薦を依頼している。
 自民党県連は26日、県議会内で拡大役員会を開催した。知事選への対応を初めて話し合った22日の会合に続くもので、出席した県議からは泉田氏、森氏それぞれを推す意見が出た。
 県議会最大会派の自民党は、初当選時から泉田氏を推薦し、県政運営でも後ろ盾となってきた。ただ今回は、泉田氏と市町村長の関係の悪さや、「多選の弊害」を懸念する声が根強く、党内は大きく割れる。
 非公開の会合後、県連の柄沢正三幹事長は報道陣に「まだまだ意見の集約には至らない。役員会などを適宜開き、慎重に進めたい」と述べるにとどめた。県連は支部の意向調査を9月5日まで、県議による無記名投票を2日まで行い、対応の判断材料とする。今後半月ほどがヤマ場となる。
 自民党と同じく過去3回の知事選で泉田氏を推薦した公明党も対応は未定だ。「3期は一区切り」と強調する県本部の志田邦男代表は「9月定例会で泉田県政12年を検証、総括し判断していく」と語る。


               ◆               ◆    


 過去30年の知事選で独自の公認、推薦候補を立ててきた共産党は、今回は擁立見送りに傾いている。社民、生活両党と連携し、7月の参院選新潟選挙区に続いて知事選でも「共闘」を狙うためだ。
 結集の軸としては、原発政策を重視するとみられる。注目は3党が泉田氏、森氏のどちらを推すかだが、「東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題で原子力規制委員会や東京電力を厳しく批判する泉田氏」というのが多くの県政関係者の一致した見方だ。
 共産党県委員会の樋渡士自夫委員長は「まだ分からない」と「白紙」を強調する。一方、原発再稼働に反対し、泉田氏支持に前向きな社民党県連の小山芳元代表は「組織としては決まっていないが、当然そう(泉田氏支持に)なると思う」と期待感をにじませる。
 参院選では共闘の枠組みに民進党や、民進党の支持団体の連合新潟も入っていた。生活の党県連の佐々木茂幹事長は「民進党などの考えも尊重して対応を決めたい」と述べ、足並みをそろえたいとする。


               ◆               ◆   


 民進党も自民党と同様、 党内で泉田氏、森氏のどちらを推すか割れている。民進党県連の大渕健幹事長は「参院選と県政とは切り分けないといけない。形ありきではなく、あくまで党の判断として検討する」と強調する。
 連合新潟は24日に執行委員会で森氏から意見を聞いた。加盟する労組の意向を9月初めまでにまとめ、対応を決める方針だ。
 共闘の動き、特に共産党の判断は選挙戦に影響を与える可能性がある。
 森氏を支持する自民党のベテラン県議は「共産党とは一緒にやれない。社共で泉田氏を推せばいい」と語る。仮に3党が泉田氏につけば、自民党は泉田氏を応援できないと見立てる。
 民進党県連幹部は共闘自体を疑問視する。「原発を焦点にしたいのだろうが、県政では他にも多くの課題がある」と指摘した。



同日付の新潟日報 関連記事(投稿者による紹介)


医療4政治団体 森氏推薦へ[1面]
要旨: 県医師会、県歯科医師会、県薬剤師会、県看護協会それぞれの政治団体が森氏を推薦する方針を固めた。その背景としては、たとえば医療・福祉の法定4計画を県が策定していなかった問題 ※ についての泉田県政への不信がある。


※ 新潟県の福祉4計画未策定 監査委「強く反省を」(産経ニュース 2016年4月1日)
http://www.sankei.com/region/news/160401/rgn1604010012-n1.html


※ 平成28年3月31日 泉田知事臨時記者会見要旨(新潟県知事公式ホームページ 2016年4月1日)
http://chiji.pref.niigata.jp/2016/04/post-0fd6.html


森氏支持を表明/新発田市長[3面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/750.html

[地域13] 共闘の奇策 あえなく/野党3党、候補探し継続(新潟日報)
共闘の奇策 あえなく/野党3党、候補探し継続
新潟日報[1面] 2016年9月18日


 知事選での野党共闘の可能性を探る、まさに奇策だった。17日に展開された共産、社民、生活の3党と市民グループによる民進党衆院5区総支部長・米山隆一氏(49)の擁立劇。自民党と公明党に支えられる前長岡市長・森民夫氏(67)に対抗するべく、「自主投票」を決めようとする民進党県連云の会合直前に示した提案はしかし、あっけなく同党に否定された。7月の参院選新潟選挙区に続く広範な共闘構想は崩れ、焦点は3党の中から候補が出されるかに絞られた。
 民進党県連の常任幹事会が始まる午前11時前、市民グループ呼び掛け人の佐々木寛新潟国際情報大学教授は会場のホテルに自転車で乗り付けた。
 慌ただしく県連担当者に手渡したのは「米山隆一氏を市民有志の候補者として擁立し、他の野党3党と一緒に戦ってまいりたい」として協力を求める要請書。 前日深夜に3党が合意し、取りまとめたものだった。
 支援しようとしていた泉田裕彦知事が8月30日に4選出馬取りやめを表明して以降、野党3党は市民グループとともに対抗馬の擁立を模索していた。
 しかし、民進党とも気脈を通じながら進めた候補者探しは難航。民進党県連は13日、独自候補の擁立断念とともに、森氏を推薦しないことも決めた。
 この事態を受け市民グループと3党が、共闘実現に向けた最後の切り札として目を付けたのが民進党の米山氏だった。現職議員ではなく、維新の党からの移行組で党派色も比較的薄い。野党共闘が持論という米山氏も共鳴し、原発再稼働に慎重姿勢を示したという。
 だが、民進党にとっては受け入れられる話ではなかった。米山氏の名前は党内で一時浮上したものの、他党との協議の中で断念した経緯があった。支持団体の連合新潟は森氏支持を決め、対応が分かれる状況となっている。「これ以上議論を引き延ばせば県民の信頼を失う」との判断もあった。県連として要請書は受理しなかった。
 今後の候補擁立は3党の手に委ねられることになった。本県の知事選で過去に無投票になった例はない。
 社民党県連の小山芳元代表は「何としても選択肢を示さなければいけない」とし、生活の党県連代表の森裕子参院議員も「責任を果たす」と、統一候補探しを続ける考えを強調。長年候補を立ててきた共産党県委員会の樋渡士自夫委員長も「共闘を目指し告示前日、当日までかかってもやる覚悟だ」と力を込める。残された時間は少なく、危機感と焦燥感も漂っている。



同日付の新潟日報 関連記事(投稿者による紹介)


民進が自主投票決定/米山氏擁立案 受け入れず[1面]
米山氏は「野党統一候補として対立軸を示したかったが、みんなでまとまらなければ勝てない。党を無視して個人でやる考えはない」と述べた。その他、つぎのウェブ版記事とほぼ同じ内容。


新潟県知事選、野党3党の擁立焦点/米山氏立候補見送り(2016/09/18 09:30)
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/politics/20160918280368.html

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/751.html

[地域13] 野党"統一" 異例の擁立/米山氏、3党の支援で出馬表明(新潟日報)
野党"統一" 異例の擁立/米山氏、3党の支援で出馬表明
新潟日報[3面] 2016年9月24日


原発政策転換し一致/撤退の民進、引き抜きに反発


 「昨日の夜です」
 23日の記者会見で立候補を決断した時期を問われた米山隆一氏は苦笑交じりに話した。
 その22日夜、米山氏の姿はJR新潟駅前の共産党県委員会の3階にあった。同席したのは生活の党県連代表の森裕子参院議員をはじめ、共闘する共産、社民両党県組織の代表と、「市民連合@新潟」の共同代表を務める市民団体メンバー。午後10時近くまで及んだその会合で、米山氏は参加者に出馬の意思を伝えたという。 終了後、明るい表情で政党関係者らが出てくる中で1人、米山氏は険しい顔を崩さず、「何も答えられない」と繰り返した。決断の重さを背負っているような緊張感を漂わせていた。


■                    ■  


 野党3党側で米山氏の擁立が急加速したのは、13日に民進党が独自候補を断念した後だった。打診した官僚に固辞されるなど候補者探しが難航する中、かねて意欲を示していた米山氏を統一候補とすることで合意。17日に民進党県連に協力を求める要請書を出した。
 しかし、民進党は受け付けずに自主投票を決定した。米山氏の名前は早い段階で3党側に打診していたが、官僚と交渉中の3党側が拒否した経緯があったからだ。米山氏は「組織の決定には従う」と明言し、可能性はしぼんだかに見えた。
 告示まで時間が迫る中、3党側は米山氏を諦めなかった。出馬を表明している前長岡市長の森民夫氏(67)は自民、公明両党が推薦しており、東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働をいずれ容認すると見たからだ。3党側は強い危機感を背に米山氏の説得に当たった。20日には県庁で記者会見を開き「このまま候補が出ないのは新潟県にとって非常に不幸なことだ」と世論の喚起を図った。
 米山氏は、「原発推進」を訴えていたかつての持論を転換。会見では「私が間違っていた」と明言し、「検証なくして再稼働の議論はできない」と泉田裕彦知事と同じ主張をした。


■                    ■  


 3党側と米山氏が共有していたのは、民進党の懐柔の必要性だ。掲げた理論は「自主投票は尊重するが、米山氏が出ることは認めてほしい」―というもの。森裕子氏らは会見などで「独自候補擁立に努力されてきたことには敬意を表したい」と繰り返し、民進党への配慮を強調した。関係者によると、米山氏も「状況が変わらなければ出ない」と繰り返しつつ、旧維新の党時代からの人脈をいかして党本部にもアプローチしていたという。
 しかし、衆院選の候補となる総支部長が他党の支持で出るというやり方に、県連の反発は強かった。幹部の1人は「人の党の人間に手を突っ込んで、なにさまのつもりなんだ」と声を荒げ[ママ]、古参党員は「総支部長としての責任が分かっていない」と憤りをあらわにした。支援団体の連合新潟が既に森民夫氏の支持を決めていることも背景にあり、県連内に米山氏を支持する声は少ない。
 米山氏は会見直前には県連の黒岩宇洋代表らと面会、離党届を出した。黒岩氏は面会後、「県連の決定と齟齬があると伝えたが、意思が強かった。5区を託していたわけで、国政の道のりを上ってほしかった」と疲れた表情で語った。
 とはいえ、民進党が早々に知事選から「撤退」し、野党第1党でありながら有権者に選択肢を示せなかったのは事実。23日に党本部であった蓮舫代表の記者会見では、記者から県連の対応を批判する質間が相次いだ。蓮舫代表は「県連の手続きに瑕疵はないが、県連がどのような考えを持っているかはヒアリングしたい」と話した。



同日付の新潟日報 関連記事(投稿者による紹介)


自公、共闘の広がり警戒/野党 再稼動問題で差示す[3面]
両陣営の状況と最新の動き、関係者のコメントを紹介した記事。以下抜粋。


野党側の課題は時間のなさだ。生活の党県連代表の森裕子参院議員は会見で「細かい政策はこれから協議した上で発表する。ご理解いただきたい」と話した。ポスター作成、選挙事務所の確保といった準備も29日の告示をにらみ、急ピッチで進めている。先行する森民夫氏を必死で追う。


ようやく構図が決まった[5面 社説]
選挙戦の歓迎。柏崎刈羽原発の再稼動をはじめとする多くの県政課題についての論戦の期待。ちぐはぐな対応でリーダーシップが発揮できなかった民進党への批判。
社説なので新潟日報ウェブサイトに掲載されるはずだが、現時点ではまだ出ていない。
新潟日報社説ページ


米山氏、知事選出馬を表明/再稼動「泉田路線継承」[1面]
記事の主要部分は新潟日報ウェブサイトで読める。紙面ではそれに解説がついている。
米山氏が知事選立候補を正式表明/泉田路線継承を強調(2016/09/23 22:27)


政策論争へ 高まる期待[31面]
県民の声を取材して紹介している。

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/753.html

[政治・選挙・NHK213] 知事選立候補〜現在と未来への責任〜(米山隆一の10年先のために)
知事選立候補 〜現在と未来への責任〜
http://www.election.ne.jp/10840/99166.html
米山隆一の10年先のために 2016年9月23日 23:28:09
 
 
 本日、民進党を離党して、新潟県知事選挙への立候補を表明いたしました。


 民進党の離党は私としては心から残念ですが、やむを得ないものと思います。


 立候補の理由は書きだせばいくらでもあるのですが、一言で言うなら、「現在と未来に対し、責任を果たすべきだ。」と思うからです。


 今回の選挙の大きな争点が柏崎刈羽原発の再稼働問題であることは、論を待ちません。既に各所で指摘されている通り、私はかつて原発推進派でした。但しそれは、「現状を容認するのではなく、より安全で、より安心な原子力技術の開発で問題を解決すべきだ。」と言うものでした。
 しかし、福島第一原発事故と、その後5年経った今でも、全く事故収束の目途がつかない現状を見て、私は意見を変えました。我々は、原子力発電という技術に伴う危険の全像を全く理解していなかったのです。私は、福島第一原発事故の原因とその発生プロセスの徹底的な究明、事故の健康への影響の徹底的な究明、そして万が一事故が起こった場合の安全確保(避難)の手段の徹底的な究明の3つの究明がなされない限り、再稼働の議論は始められないという泉田知事の路線は、現在と、そして未来の、県民の命と健康に責任を持つものとして当然だと思います。


 一方私は知事選が、原発問題のワンイシューで争われるべきだとは全く思いません。原発問題は勿論とても重要な問題ですが、本質的にはリスク管理の問題であって、何かの価値を生み出し、提供するものではないからです。


 では何を生み出すかと問われたら私は、まず第一に、子育て、医療、介護の環境を整備して、県民の皆さんに、新潟県で、心から安心して、子供を産み、育て、医療を受け、そして介護を受けられる環境を作りたいと答えたいと思います。今、日本の医療、介護は、急速な高齢化によって、率直に言って崩壊の危機に瀕しています。医療、介護の制度を作るのは国ですが、その執行機関は県です。国の制度の範囲内であっても、私は、県の、着実で効果的な執行、予算の重点配分、そして創意工夫によって、この新潟で、安心で安全な福祉の環境を作ることは可能だと思いますし、少しでもそこに近づくための努力をすることが、現在と未来に対する政治の責任であると思います。


 産業政策は、率直に言って国の制度に依拠するところが大きいのですが、例えば農業県であるわが県にとって非常に大きな問題であるTPPについては、政府がまとめた協定について我が県としての問題点をはっきりと指摘し、戸別所得補償制度等の、明確で実効性のある対策を国に求めたいと思います。
 そして国に我が県の要望を的確に伝えると同時に、例えば新幹線の新潟空港乗り入れや新潟港の整備等で新潟県の利便性を向上させると同時に、農業、工業、商業において努力する企業が円滑にビジネスを進められる環境を整えて、雇用の増加を図りたいと思います。


 そして何より、今を生きる我々が果たすべき最大の未来への責任は、一にも二にも、教育です。義務教育、高校教育の執行機関である県は、誰もが、その能力に応じて、質の高い教育を受けることができる環境を作る、最大限の努力をすべきだと思いますし、その努力によって、私は、子供たちの未来、そして県の未来を、実際に向上させることができると、信じています。今話題となっている国の奨学金の不十分な点については、県のレベルで、これを補う奨学金を作ってくことも必要でしょう。


 以上は概略的に挙げたものにすぎませんが、私は、これらのわが県の様々な政策課題を、着実に、効果的に、創意工夫をもって実行することで、私達の、現在と、そして未来への責任を果たしていきたいと思っています。
 そしてその為に、全力で選挙戦を戦いたいと、思います。


 国政から県政にフィールドが変わりましたが、誰もが、理不尽な思いをすることなく、実りある人生を享受できる社会を作りたいという私の志は、少しも変わっていません。変わらぬご支援を頂けますよう、心からお願い申し上げます。



投稿者からのコメント:


投稿者は米山隆一を支持する。


しかし率直にいって、8月30日に泉田裕彦現知事が立候補を撤回してからすったもんだした今回の新潟県知事選挙では、柏崎刈羽原発の再稼働をもっとも危惧する「こちら側」の陣営が勝てるという気がしない。米山氏は、民進党新潟5区総支部長の地位をなげうっての立候補。県知事候補を突然失って茫然としていたわれわれにとって本当にありがたかったそのぎりぎりの判断は、一方では無責任さをどれだけ批判されたとしてもしかたのないものである。だいたいこれは余計なお世話だろうが、落選したら今後の政治活動をどうするつもりなのか。投稿者の半分は米山氏に呆れている。


米山氏の政策立場についても不満が残る。それはTPPのことだ。米山氏はTPPを自由貿易をめぐる問題としてしかとらえていない節がある。それをもう1回調べてみてほしい。たとえば経団連国際経済本部シニア・アドバイザーの金原主幸という人による次の記事などは、問題の所在に気づくためのとっかかりとしてはよさそうだ。


なぜ米国にとってのTPPと日本にとってのTPPはこんなに違うのか:前途多難なTPP発効までの道筋
(金原主幸 世界経済評論IMPACT 2016年5月23日)
[抜粋]クルーグマン教授によれば,米国ではリベラルな経済学者でTPPに熱心に賛成している人は誰もいないらしい。日本のまともな経済学者でグローバルな視点からTPP反対の論陣を張っている学者を寡聞にして知らない。


私がTPPを支持しない最大の理由〜この協定は、実際には貿易に関するものではない
(ポール・クルーグマン 現代ビジネス 2015年5月30日 archive.is キャッシュ)
[抜粋]TPPによって、すでに低い関税がさらに低くなるかもしれない。しかし提案されている協定の主眼は、薬品の特許や映画の著作権などの知的財産権を強化すること、そして企業や国がそれに関する紛争を解決する方法を変えることにある。


最後に、柏崎刈羽原発とTPPの問題では、共通して新潟県の経済発展の方向性が問われている。付け焼き刃のような経済政策には期待していない。米山氏には、県内各地各界各層の人が力を発揮できる土台となるような基本的な方向性を提示してほしい。

http://www.asyura2.com/16/senkyo213/msg/377.html

[地域13] 連合新潟 黒岩氏の会合出席認めず/知事選対応を問題視(新潟日報)
連合新潟 黒岩氏の会合出席認めず/知事選対応を問題視
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/politics/20160929282322.html
新潟日報モア 2016/09/29 11:03


 連合新潟は28日、民進党県連の黒岩宇洋代表を連合新潟の会合に当面、出席させないことを決めた。黒岩代表が主催する会合、行事への連合新潟側の出席も見送る。知事選で県連が「自主投票」を決めたにもかかわらず、民進党衆院新潟5区総支部長だった米山隆一氏が他の野党3党に擁立されて出馬する事態を問題視した。最大の支持団体が党県連に対して異例の厳しい措置で抗議した形で、影響は尾を引きそうだ。

 知事選で民進党県連は独自候補擁立を断念して自主投票とする一方、連合新潟は森民夫氏の「支持」を決めており、対応が分かれていた。

 連合新潟が特に問題視したのは、連合が党県連の擁立断念を受けて森氏支持を決めたにもかかわらず、その後に米山氏が出馬したことだ。共産、生活、社民3党による米山氏擁立の動きが本格化して以降、連合新潟は「組織運営上おかしい。党の責任として対応してもらいたい」と県連に申し入れてきたという。

 しかし、米山氏は23日に離党し出馬を表明。その直前に黒岩代表と大渕健幹事長が米山氏と面会したが、翻意させることはできなかった。

 県連の対応次第では、米山氏を民進党主導で擁立できる可能性もあっただけに、県連執行部の不手際が際立つ形となった。連合内には、黒岩代表ら執行部への不信感が高まっていた。

 執行委員会の後、連合新潟の斉藤敏明会長は取材に、黒岩代表から十分な説明がないとした上で「この間の対応は大変遺憾で、不快感を持たざるを得ない。今後の関係は県連次第だ」と述べた。

 7月の参院選に続いて知事選でも独自候補を立てられなかった民進党県連。今回の対応については県連内部からも、代表ら一部幹部だけで方針を決めているとして「密室体質」との批判がある。衆院解散が取り沙汰される中、連合新潟との間にも溝をつくる事態となり、責任問題が浮上する可能性もある。

 黒岩代表は米山氏が出馬表明した23日、責任論を問う記者団の質問に「差し控えたい」と話した。
http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/754.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]争点を聞く〈上〉(新潟日報)
争点を聞く〈上〉
新潟日報[3面] 2016年10月5日
 
 県知事選は16日の投開票に向け、中盤戦に入った。候補者は元団体職員の三村誉一氏(70)=新発田市=、前長岡市長の森民夫氏(67)=長岡市=、医師の米山隆一氏(49)=魚沼市=、行政書士の後藤浩昌氏(55)=佐渡市=の無所属新人4人。自民、公明両党が推薦する森氏と、共産、生活、社民の3党が推薦する米山氏が激しい戦いを展開している。原発問題が注目を集めるが、県の課題は多岐にわたる。九つの争点について各候補に考え、政策を聞いた。※
※ 投稿者注: 三村氏、後藤氏の回答については割愛した。引用元記事でも、森氏、米山氏に比して三分の一のスペースしか割かれていない。
 
 [原発問題]
 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機に対する原子力規制委員会の審査結果が新知事の任期中に出る見通しです。再稼動問題などにどのような姿勢で臨みますか。
 
 [交通政策]
 新潟空港の利用促進、空港アクセス改善、上越・北陸新幹線の活用、地域交通の維持、港湾振興、対岸交流など、交通を巡る課題にどう取り組みますか。
 
 [公共事業]
 道路、河川、市街地開発などのインフラ整備は利便性向上や地域振興、防災に関わる課題ですが、財政的な制約もあります。進めたい事業と、その狙いは。
 


 
森 民夫氏(67)=無 新=


原発の安全 厳しく対応
新幹線を空港に/日東道全通促進
 
 【原発】
 原発については、何よりも県民の安全確保を最優先課題として厳しく対応する。原子力規制委員会が(東京電力柏崎刈羽原発の安全性に関する)結論を出したら、市町村や県技術委員会などの意見を聞き、厳しく検証する。国や東電に対して言うべきことはしっかりと主張する。
 これまで全国市長会長として、国などに言いにくいこともきちんと訴えてきた。市町村の声を届け続けてきた。原子力防災に関しても、この立場は変わらない。繰り返すが、県民の安全確保が最優先だ。天然ガス発電所や雪冷熱の利用などに本腰を入れ、自然エネルギー大県を目指す。
 
 【交通】
 羽越新幹線構想の具体化に取り組む。具体的には青森から大阪まで日本海を縦貫する新幹線網を構築し、日本海国土軸を整える。上越新幹線の新潟空港乗り入れも実現する。道路も含め幹線交通の多重化は、本県の拠点性強化につながり、災害時の代替機能として安全確保にも役立つ。
 最も大切なのは近隣県とのつながりや連携、協力を大事にすること。広域観光ルートをつくる上でも有効だ。福島県との接点になる磐越西線など、近隣県を結ぶ鉄道網の活性化も必要になる。並行在来線や北越急行の利便性向上、高速バス路線の活性化にも努める。
 大型クルーズ船を誘致するため、新潟港や直江津港の港湾機能を整備、強化する。直江津港はエネルギー港湾としての拠点性向上を目指す。
 
 【公共事業】
 地震や水害、土砂崩れ、豪雪、火山など災害に強い県土づくりを一層推進し、県民の安全と安心を確保する。道路や橋、河川堤防、砂防、海岸保全など防災・災害対応の強化に関わる公共インフラを積極的に整備する。維持管理も徹底し、安全な利用につなげる。
 松本糸魚川連絡道路(松糸道路)や吉田バイパスなど幹線道路の整備を加速。秋田、山形両県と連携し、日本海沿岸東北自動車道の全線開通も進める。通学路の安全対策や信号機の設置も重要だ。
 



 
米山 隆一氏(49)=無 新=
 
福島事故の検証 最優先
横断航路再検討/生活密着で投資
 
 【原発】
 東京電力福島第1原発事故の検証なしに再稼動の議論はできないという泉田裕彦知事の路線を引き継ぐ。福島事故の原因、健康と生活への影響、避難計画の実効性の検証、この三つの究明ができない限り、再稼動の議論は始められない。
 原発推進派だったが、福島事故が収束しない状況を見て考えが変わった。古里を原発事故で失う人が出てはならない。原発が動かなくてもエネルギーが足りることは事故後に証明された。事故のリスクや放射性廃棄物処理の状況を考えると、現在の原発からは離脱せざるを得ないと思う。
 検証が終われば(再稼動の)議論はする。原発は県民の意見が鋭く対立しているが、方向性は話し合いで見いださないといけない。議論自体は閉ざさない。検証結果をきちんと広報し、最終的に県民投票に委ねることも考えていいと思う。
 
 【交通】
 新幹線と新潟空港のアクセス改善は課題だ。採算が取れるなら上越新幹線を直接乗り入れてもいいが、採算が取れずに他の予算を削るようなら、再考しなければならない。さまざまな手段を検討すべきだ。
 新潟空港は特徴のある路線や格安航空を確保し、ちょっと変わった空港としてニッチ(隙間)で生き残るのが戦略になると思う。
 日本海横断航路計画は事業の進め方がフライング気味だった。ロシアなどとの航路交流は夢のある話だが、採算性を含めてもう一度検討した上で、継続かどうかを決める。
 
 【公共事業】
 大型公共事業を否定はしないが、やれば必ず利便性が上がるという考えは見直すべきだ。きちんと対策はするが、人口減少が進む中では、大型投資の効率性は悪くなる。時代の変化を捉えないといけない。
 事業としては細かく見えても、多くの人に関わる小規模な公共事業に使った方がいい。例えば渋滞を解消するための細かな道路の整備や、街中の公園を子どもだけでなく大人も憩えるスペースにするなどだ。より生活密着型の公共事業にシフトしていく。

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/755.html
[地域13] [2016新潟県知事選挙]争点を聞く〈中〉(新潟日報)
争点を聞く〈中〉
新潟日報[3面] 2016年10月6日
 
 
 [農業・TPP]
 本県はコメの一大産地で農業県です。環太平洋連携協定(T PP)による農産物の輸入増の恐れもいわれ、厳しい状況にあります。どう振興策を描きますか。


 [産業振興]
 県勢発展のためには、製造業をはじめとした産業の振興が欠かせません。企業や地場産地の活性化策、支援策などが間われますが、どのように取り組みますか。
 
 [県庁運営]
 知事は県庁という巨大組織を率いるリーダーです。組織内の意思疎通などに課題があるとの指摘もありますが、どのような姿勢で運営するつもりですか。
 



 
森 民夫氏(67)=無 新=
 
農業経営の安定化図る
県産品販路拡大/市町村の話聞く
 
 【農業・TPP】
 経営がしっかりしている農業者を応援するのが基本政策だ。本県の豊かな食を世界にアピールするとともに、安定した農業経営ができる条件を整備し、誇りとなる強い農業を取り戻す。
 全国一の稲作県として、選択と集中による新たな所得補償制度の創設、担い手育成支援の拡充など、コメ政策を国に提言していく。農業は国の政策に左右される部分が大きい。現場の声を届けることが大切だ。
 コメは特に、販売戦略が鍵となる。新潟のコメはうまいという定評があるうちに世界に売り込んでいく。
 園芸農家には複合経営化に向けた支援を強化し、生産拡大に取り組む。中山間地農業は幅広い地域整備政策と連動して守り抜く。林業や漁業などに関してはブランド化を推進する。
 
 【産業振興】
 地場産業への支援を強化する。燕、三条両市の物づくりのエネルギーはすごい。海外に進出している企業も多い。県内で製造される優れた工業品などを海外輸出するため、東南アジアや欧米での商品見本市に積極的に参加し、販路拡大に努める。
 国際競争の激化を踏まえ、企業の新分野への事業展開や新製品開発を支えるため、技術開発や資金融資などの支援を行う。学生の県内就職を増やすため、地元企業や県内大学、地元での就職を目指す学生らと連携し、支援策を強化する。
 観光産業を巡っては地域や近隣県と協力して観光ルートを設定、外国人観光客の誘致を促す。佐渡金銀山の世界文化遺産登録を目指す。県内自治体の観光資源を再評価し、魅力ある県土を創造する。
 
 【県庁の組織運営】
 第一に風通しの良い組織をつくる。制度改革だけでなく、新人を含めて職員の話を聞く姿勢を心掛ける。長岡市の場合、幹部レベルだけでなく担当者も加えて会議をした。現場の職員が最も事情を把握している。
 現場を確認しないままの机上の政策ではうまくいかない。市町村の考えを聞く姿勢も貫く。知事室にこもらず、現場の声を聞いて歩く知事を目指す。
 


 
米山 隆一氏(49)=無 新=
 
担い手の確保 県が仲介
起業へ支援制度/現場の意見尊重
 
 【農業・TPP】
 政府はTPP交渉で譲歩を重ね、コメなど農業重要5項目がまったく守られていない。海外のコメが入って米価を下げる内容になっている。畜産も壊滅的な打撃を受ける。それなのに国は情報を公開していない。国に対し、徹底的な情報の開示と、戸別所得補償制度の導入など実効性のある対策を求めていく。
 県内農業を守るためには、担い手の確保が重要だ。やめざるを得ない農家はいるわけで、県が仲介して継承者とマッチングさせるシステムを設ける。安定化基金の創設など、米価下落をある程度目算の立つ範囲に収める施策も必要になる。
 攻める農業」を目指し、県産品のプランド化とともに、輸出の強化にも取り組んでいく。
 
 【産業振興】
 地場の企業・産業の振興に重点を置きたい。県内には広い場所も人材もあり、新しい起業ができるポテンシャルがある。起業資金などの支援制度を創設する。
 新産業では、「県版グリーンニューディール」として自然エネルギー企業に支援するほか、健康に関する「ビッグデータ」も活用して医療・介護産業の振興につなげていきたい。
 国際見本市の開催や県内企業の海外進出支援など、ビジネスの場づくりにも積極的に関与する。それが最低賃金のアップにもつながる。
 
 【県庁の組織運営】
 何でも忌揮なくものの言える、風通しのよい組織にしたい。現場の意見が上がってこない、言うことで罰せられるような組織には絶対にしない。的確なことを言ってくれば、どんな立場の人であっても必ず検討するし、その結果をちゃんとレスポンスする。
 これまでも、会社や事務所といったチームを率いてきた経験がある。トップの役目は、上がってきたことを聞いて、かつ正しい決裁をすること。誰が言っているとか、自分の意見に合っているかとかは気にしない。正しいものはフェアに判断するし、最後は価値判断の問題となったら、 私が決めるということにする。
 
 
投稿者注: 森氏、米山氏のほかに立候補している三村氏、後藤氏の回答については割愛した。

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/757.html
[政治・選挙・NHK214] 新潟県新潟県知事選 米山隆一候補 街頭演説(新潟駅万代口)2016.10.7[IWJ動画からの書き起こし]
新潟県知事選 米山隆一候補 街頭演説(新潟駅万代口) ―応援弁士 共産党 志位和夫委員長、生活の党 小沢一郎代表、社民党 福島みずほ副党首、民進党 松野頼久衆院議員 2016.10.7
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/336703
2016.10.7 IWJ Independent Web Journal
 


Broadcast live streaming video on Ustream
 
[00:45:55 / 01:06:27]
 
 どうもみなさん、こんばんは。新潟県知事候補米山隆一です。こんなにも多くのみなさんに集まっていただいて、本当に感激しています。たいへんありがとうございます。
 
 本日私、新潟県内を街宣車で走って回りました。とても気持ちのいい一日でした。みなさんもそうだったんじゃないでしょうか。とても気持ちのいい秋晴れで、空が青くて、山は緑で、空気が澄んでいて、ああ、ふるさとっていいな。新潟っていいな。そう思って回ってきました。わたしのふるさと魚沼市も通りました。そのふるさとが、なくなってしまった人たちがいます。この新潟には、福島からまだ三千人を超える方々が避難していて、まだ帰ることができません。その中のお一人が、ここに着いた時にこの街宣車に立って、こう言われました。「わたしたちのふるさとはなくなってしまった。わたしたちの住んでいた町はもう住めない。」そんな思いをする人が、もうこの新潟で、日本で、一人もあってはいけない。そのみなさんの思いが、そして、みなさん一人一人が大事にされているふるさとへの思いが、わたしをここに立たせてくださいました。本当にありがとうございます。
 
[00:47:50 / 01:06:27]
 
 泉田知事。あの福島原発事故の徹底的な検証なくして再稼動の議論は始められない。そう路線を打ち出しました。先程お話がありました。もっともじゃないですか。当たり前じゃないですか。わたしはこの路線、しっかりと受け継がせていただきます。だから、原発事故の原因の徹底的な検証。原発の事故がわたしたちの、子どもたちの健康、そして生活に与えた影響の徹底的な検証。そして原発事故が万が一起こった場合に安全に避難する方法の検証。その3つの検証がなされない限り、原発再稼動の議論は始められない。そうはっきり申し上げたいと思います。
 
 その3つの検証、いかがでしょうか。先程お話がありました。東京電力。5年間メルトダウンを知っていたことを隠していました。汚染水。処理の目処は立ちません。凍土壁は凍りません。わたしは、東京電力が再稼動をしてもう一度事故を起こさないと信じることはできません。昨日の国会。見られた方もおられると思います。今、福島では175人。それだけの数のお子さんたちに甲状腺癌が見つかっています。私が医学部生の時習った数よりも70倍も多い数です。それを安倍総理はまったく把握していませんでした。わたしは、再稼動して万が一事故が起こった場合に、子どもたちの健康に、わたしたちの健康に、影響がないとはとても信じることができません。そして、避難計画です。泉田知事。今、残り短い任期で避難計画のいろんな問題点を指摘されています。2日前のニュース、ご覧になった方もおられるでしょう。万が一事故が起こった場合に、住民のみなさんを避難させるために、その原発の近くにバスを乗り入れる。そのバスの運転手さんに「行って下さいますか。」とそう聞きました、アンケートをしました。6割の方が「残念ながら行けません。」そういう回答でした。人間です。当たり前じゃないですか。2割の方は「しっかり安全を確保してくれれば行きます。」そういう回答でした。でもわたしは、どんなに考えても、どうやったら運転手の方々の安全を確保できるのか、どうやったら6割の方が「ノー」と言っている状況で運転手さんの数を確保するのか、どうやったら安定ヨウ素剤を配れるのか、いったいその費用を誰が負担するのか、まったくわかりません。だからわたしは、「残念ながら、万が一事故が起こった場合に、住民のみなさんに安全に避難していただく手段は、避難方法はありません」と言うしかないんです。だからわたしは、国から再稼動を認めるのか認めないのか、そう問われたら、「認めることはできません。」そうはっきり申し上げたいと思います。その力をみなさんにお貸しいただきたいんです。どうぞお願いいたします。
 
 今程大きな話をしました。国にみなさんの思いを届ける。230万県民の声をしっかりと国に突きつける。とっても大きな話です。この身が震えます。でも同時にわたしは思うんです。これは本当はとってもささやかな願いじゃないですか。ふるさとで安全に暮らしたい。子どもたちの未来を守りたい。おいしい空気を吸いたい。山や川。このままでいてほしい。ささやかな願いじゃないんですか。この一人一人のささやかな願いがかなえられない。そんな政治じゃいけないんです。わたしは、みなさん一人一人のささやかで、でも切実なその願いを、一つ一つかなえていく。そういう県政を実現したいと思っています。
 
[00:52:35 / 01:06:27]
 
 県政の課題。たくさんあります。
 今程お話をしていただきました。子育て支援。医療。介護。医師としての経験を生かして、日本一の新潟県を作らせていただきたいと思います。お母さん方、たいへんです。病児保育。力を入れさせていただいて、朝お子さんが病気になっても、安心して預けて、お勤めもできて、帰ってちゃんと看病できる。そういう新潟県を作らせていただきたいと思います。今程のお話もありました。お医者さん。新潟県では足りません。医師として、医師が足りなければ救えない命があることはよくわかっています。東京とこの新潟で、命に差はありません。医師の確保に全力を尽くさせていただいて、同じ命が救える新潟県を作らせてください。介護。とってもたいへんです。わたしは介護の現場で医療に携わってきました。老老介護。おじいさんが、認知症になってしまったおばあさんを一生懸命介護して、介護して、でも力突きて、おじいさんが倒れてしまう。そんな現場も目撃しました。そういう人をそのままにしてはいけないんです。介護の職員さん。足りません。待遇を改善して、数を増やして、施設を増やして、そして何より経済的な理由で介護を受けられない、そんな人を作らないように。そういう方に対する支援制度をしっかり作らせていただいて、新潟に住むみなさんはみんなが安心して十分な介護を受けて、このふるさとで老後を送れる。暮らしていける。そういう新潟県を作らせていただきたいと思います。
 
[00:54:28 / 01:06:27]
 
 TPP。とってもたいへんな問題です。ご紹介いただいたように魚沼市の出身です。おいしいお米を食べて育ちました。ほんとはおいしくないお米があることを知りませんでした。東京に行ってびっくりしました。そのおいしいお米。今のままTPPが進んだら守れません。あの魚沼だって、農家は小さい農家がほとんどなんです。みんな必死に生きてるんです。TPPでお米の値段が下がったら、もう魚沼でも、新潟でも、農業で暮らしていくことはできなくなります。そんなことは許してはいけないんです。徹底的な情報開示を求めて、戸別所得補償制度のようにきちんと農家が救われる制度を……[?]させて、そしてみなさんの力を借りて、ありとあらゆる手段を使って、魚沼の……すいません。自分のふるさとですから言ってしまいました。新潟の米作りをTPPから守らせてください。お願いします。
 
[00:55:40 / 01:06:27]
 
 そして働く場所。とっても大事なんです。あの、わたしね……聞いてる方は笑われるかもしれません。相手候補があんまり公約で道路、道路、道路、道路……って言うものですから、「それは公共事業ワンイシュー県政だ」と、「道路作ればいいってもんじゃないぞ」って言ってしまったもんですからね、わたしが道路を作らないと思われている方がおられると思うんですけれども、これもしっかりと作らせていただきます。ちゃんと安全な道路を使いたい。便利に渋滞のない道路を使いたい。切実な願いじゃないですか。この新潟駅。新潟空港。しっかりとアクセスを高めさせていただいて、日本中から、東京から新潟に来る、世界中から、いろんな国から新潟に来る。その観光客がたくさんこの新潟を訪れてくれる。そしてもちろん新潟で暮らすみなさんが、新潟でがんばる中小企業がよりがんばれるように、輸出を支援する。見本市も開く。そういういろんなことをして、汗して働くみなさんの最低賃金を上げられる環境を整えて、ぜひこの新潟。雇用がたくさんある、豊かに働ける、安心して働ける新潟を作らせてください。
 
[00:57:00 / 01:06:27]
 
 そして最後に……最後にわたしいつも言いますから、きっとみなさんはもうおわかりでしょう。政治が果たすべき最大の責任、それは絶対……[?]せてください。それは教育です。教育。教育なんです。この新潟の、日本の、もしかしたら世界の未来を作るのは、今新潟に生まれて育っていらっしゃるお子さんたちです。そのお子さんたちが日本中で、世界中で胸を張っていける。もしかしたら一人や二人や三人や四人や五人や十人がノーベル賞を取るかもしれない。そういう日本一の義務教育、小学校、中学校を、ぜひこの新潟に作らせてください。小学校、中学校を出たお子さんが、ご家庭が経済的に恵まれないから高校に行けない。大学に行けない。そんなことを作っては絶対にいけません。「返さなくていいよ。」そういう新潟県版の給付金型奨学金を作らせていただいて、新潟に生まれ育ったお子さんはみんな自分の志望に応じて高校に行ける。大学に行ける。胸を張って社会に生きていける。そういう新潟県を作らせてください。
 
 みなさん。わたしはがんばります。この新潟の、新潟に暮らすみなさんのお子さん、お孫さんたちの、子どもたちの未来を守るために、全力を尽くします。この身を捧げて、現在とそして未来の責任を果たします。どうか、どうか、新潟県の新しいリーダーとして、私米山隆一を選んでいただけますことを心からお願いいたしまして、私の挨拶とさせていただきます。たいへんありがとうございました。
 


開会時間と各演説の開始時間
 
[00:12:30 / 01:06:27] 司会 森裕子氏(参議院議員、選対本部長)
[00:13:20 / 01:06:27] 佐々木寛氏(新潟に新しいリーダーを誕生させる会共同代表、新潟国際情報大学教授)
[00:16:30 / 01:06:27] 福島みずほ氏(社会民主党副党首、参議院議員)
[00:23:00 / 01:06:27] 志位和夫氏(日本共産党委員長、衆議院議員)
[00:35:40 / 01:06:27] 小沢一郎氏(生活の党と山本太郎となかまたち共同代表、衆議院議員)
[00:45:40 / 01:06:27] 米山隆一氏(新潟県知事選候補、無所属)
[00:59:40 / 01:06:27] 松野頼久氏(衆議院議員、民進党)

http://www.asyura2.com/16/senkyo214/msg/143.html
[地域13] [2016新潟県知事選挙]民進、鈍い動き(朝日新聞)
民進、鈍い動き
朝日新聞[27面 新潟版] 2016年10月7日
 
連合が森氏支持「重い」
 
 激戦が繰り広げられている知事選で、民進党の動きが鈍い。党として自主投票とした上、支持母体の連合新潟が自民、公明両党が推薦する候補への「支持」を決め、身動きが取りにくい状況も見てとれる。
 
 4日、燕市のスーパー前で、民進党で燕市・西蒲原郡選挙区選出の高倉栄県議が、医師の米山隆一氏(49) =共産、社民、生活推薦=と並んでマイクを握った。告示から約1週間たち、県連所属議員で米山氏の支援に表立って動いたのは初めてだ。高倉氏は、市内の一部が東京電力柏崎刈羽原発から半径30キロ圏内にかかっていることに触れ、「だから私も一生懸命なんです。現行の欠陥制度を是正する強い思いがあるのが米山候補なのです」と訴えた。
 高倉氏は取材に、同じ選挙区選出の自民県議が一貫して前長岡市長の森民夫氏 (67)=自民、公明推薦=を支援するなか、支持者から「(米山氏を)なんでやらないんだ」という声が大きく、「地域の声に推されて自分の思いを伝えた」と明かした。
 だが、多くの県議や県選出の国会議員は、表立った動きを見せていない。
 民進の支持母体のーつ、連合新潟は、森氏への「支持」を打ち出している。米山氏の立侯補表明前から決まっていたが、電力関係の労組を抱え、原発を争点にする候補には乗らないのが基本的な立場だ。支持は「推薦」に比べて支援の度合いが低いが、2日には斎藤敏明会長も森氏とともに街頭に立った。
 米山氏を支持する県議は「連合さんの森候補支持というのは重い」と話す。また、連合との関係を別にしても、党の自主投票決定を尊重し、支援者に特定の侯補を押しつけたくないという議員もいる。
 県外の国会議員はうってかわって活発だ。米山陣営には、超党派の反原発グループに所属する阿部知子衆院議員や近藤昭一党副代表が相次いで駆けつけた。
 近藤氏は5日、取材に「新潟の重要性を受け止めている人はいると思う。個々の議員が判断し、意義を感じて行動していけばいい」と話した。維新時代から米山氏と関わりがある木内孝胤衆院議員も新潟入りした。
 県議レベルでは、森氏の地元、長岡市・三島郡選出の佐藤伸広県議が、森氏支援に回る。党が自主投票を決める前から事務所開きにも顔を出し、告示日の出陣式にも並んだ。
 知事選には、元団体職員の三村誉一氏(70)、行政書士の後藤浩昌氏(55)も立候補している。 (田中恭太)

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/758.html
[地域13] [2016新潟県知事選挙]争点を聞く〈下〉(新潟日報)
争点を聞く〈下〉
新潟日報[3面] 2016年10月7日
 
 
 [少子化対策・子育て支援]
 人口減少が深刻化し、県民からは少子化対策や子育て支援の強化を望む声が上がっています。安心して子どもを産み、育てられる社会をどう築きますか。


 [医療・福祉]
 医師・看護師不足や医療体制の整備は本県の長年の課題です。高齢化が進む中で、介護支援の充実も求められます。医療・福祉はどんな政策を重視しますか。
 
 [教育]
 学力向上や教員の過重労働、県立高校の再編など教育分野も課題は山積です。教育費の負担の重さは少子化の一因ともされます。教育は何に重点を置きますか。
 



 
森 民夫氏(67)=無 新=


病児や学童保育を支援
先進福祉広める/特色ある高校へ
 
 【少子化・子育て】
 子ども医療費の助成や未満児・病児保育と学童保育の充実、気軽に子育て相談ができる「子育ての駅」の設置をはじめ、市町村が行う特色ある支援策を応援する。地域開放型の企業内保育所など、若い夫婦が働きながら子育てできる環境も整備していく。
 今の問題は、県が市町村の現場を見に来ないことだ。長岡にある「子育ての駅」は一度もない。市町村長の不満はそこが大きい。市町村の仕事をしっかり把握した上で支援を行う。将来に不安を感じている若者の相談体制を整備し、ともに考える場もつくる。 
 
 【医療・福祉】
 魚沼基幹病院は看護師不足だ。早期全面開院を目指す。救命救急機能を確立するため、県央基幹病院も早期に完成させる。
 医師、看護師不足は地域ごとの病院間の連携を調査した上で、どの程度不足しているのか把握する。医師の確保、看護師養成をしっかりやることを前提に医療計画を見直す必要がある。
 介護でいえば、特別養護老人ホームをつくる手法もあるが、一方で介護予防、健康政策を進めて医療費を抑制し、特養の需要を減らすこともできる。福祉は市町村、医療は県の役割が大きい。市町村の先進事例を県が把握し、広める。
 
 【教育】
 経済的な理由で就学が困難な若者に対する県単独の奨学金制度を拡充していく。教員の加配や支援員らの配置も進めたい。
 県立高校は一定規模以下になったら統廃合するという県の方針に、地元では不満がたまっている。地域には特色ある形で残したいという要望がある。糸魚川市の海洋高校のような特色ある学校づくりを支援する。
 中学校と高校に断絶がある。教員の交流もないし、中学まで地域独特の歴史教育をやっても、その先は市町村の手を離れる感じだ。地域との接点がほとんどない高校も結構ある。Uターン促進の意味でも、独自の技術を有する地域の工場を訪れ、体験するといったキャリア教育を市町村と連携して行う。ふるさとに誇りを持つ子どもを育てたい。
 



 
米山 隆一氏(49)=無 新=
 
若年層の労働環境改善
医師確保に全力/教員の負担軽減
 
 【少子化・子育て】
 子どもを持つことができない大きな理由の一つに、暮らしの問題がある。若年層への生活支援や労働環境の改善で、地域で暮らす人たちを応援していく。
 出生率は一朝一夕に上がるものではない。中長期的な視点で暮らしやすい、子どもを産み育てやすい県をつくるというのが基本的な方向性だ。ただ(モデル事業として)今ある出産時の一時金など、できる施策を試し、良い制度を残す。
 子育て支援の筆頭は病児保育だ。子どもが急に病気になると、親が仕事を休まなければならなくなる。困っている親を減らしたい。
 
 【医療・福祉】
 医師が足りない。労働環境を整備し、医師の経験と知識を生かして医師・看護師の確保に全力で取り組む。新潟でも東京と変わらない医療を受けられる体制をつくる。
 魚沼基幹病院、県央基幹病院は、全面的な開業・運用を目指す。基幹病院と地域の医療機関との連携を高め、中山間地での医療体制を維持する。
 介護の現場は働く人も施設も足りない。経済的な理由から施設を利用できない人が「老老介護」をする現実を見てきた。介護現場の働く環境を良くし、職員の待遇を改善した事業所を補助する。経済的な理由で介護を受けられない人が出ないよう、支援策を講じる。
 市町村と協力し、広域的に施設の配置や定数の配分を考えていく。特に中山間地の施設は運営を補助する必要があると考える。
 
 【教育】
 義務教育の質を高め、「日本一の教育県」を目指す。地道な研修を通じ、教員のレベルを高めていく。
 質の高い教育を目指す前提として、教員の待遇の改善にも取り組む。部活動などでは外部の専門家の力を活用する制度をつくり、教員の負担を軽減する。
 高等教育にも支援をする。経済的な理由で希望の進路に進めないことがあってはならない。返済不要の給付型奨学金制度を創設する。既存の奨学金制度が抱える問題点を補い、一人一人が豊かな教育を受けられる制度をつくる。
 
 
投稿者注: ほかに立候補している三村氏と後藤氏の回答については割愛した。引用元記事での扱いも小さい。

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/759.html
[地域13] [2016新潟県知事選挙]知事選候補者の横顔(朝日新聞)
知事選候補者の横顔
朝日新聞[22面 新潟版] 2016年10月8日


(右から届け出順※、年齢は投票日現在、四角囲み政党は推薦)
※ 森氏、米山氏のほかに立候補している三村誉一氏と後藤浩昌氏については割愛した。元記事での扱いも小さい。(投稿者)
 
森 民夫(67)無新 [自|公]
 
優等生気質 気配り忘れず
 
 少年時代から理科系少年。昆虫採集や天体観測に熱中した。東大に入学後、人に興味が出て、理系の中でも人間くささが感じられる工学部建築学科に進んだ。
 好きな建築家は、自分の設計を追求し、自由奔放な作風で知られる丹下健三。「ああいう他人泣かせのものを作るのは自分にはできない。だからこそ憧れる」。自らはついつい、コストや施工する人の苦労などを考えてしまうという。
 「子どものころから先生の言うことを忠実に受けて学級の仲間を統率する優等生タイプ」と自己分析する。中学時代の生徒会長選挙には落選したが、長岡高校では雪辱を果たし、生徒会長を務めた。
 大学卒業後、民間の設計事務所での2年間の勤務を経て建設省(現・国土交通省) に入省した後も気配りは続いた。酒がほとんど飲めない。代わりに宴会係長に徹して明るい、懐メロ系の歌を歌って場を盛り上げた。歌は得意だが「生意気な若者が上司の前で上手に歌うと左遷される世界。わざと下手に歌った」と振り返る。十八番の曲は「憧れのハワイ航路」だ。
 官僚を辞め、約17年前、長岡市長選に立侯補した。霞が関では東大法学部出身が幅をきかせ、建築学科出身は「人事面で差別されている」と不条理を感じていたことや、故郷を市民が集まって自由な発想でまちづくりをしていく市政に刷新したいと思い立ったからという。今、市役所が入っているシティホールプラザ「アオーレ長岡」は、世界的に著名な建築家で学科の後輩、隈研吾さんが設計を担った。市民が集うのを見て「私の集大成」だと自負する。
 息抜きは温泉巡り。自ら車を運転し、県内のほとんどの温泉に入った。そのおかげで、どこの道路がどういう状況か肌感覚で分かっている。「現場を知らない限り、政策はできない」が信念だ。



 
米山 隆一(49)無新 [共|社|生]
 
医師で弁護士 政策通自負
 
 知事選への立候補を表明する前の夜、ツイッターでこう詠んだ。
 捨ててこそ 浮かぶ瀬もあれ 我が身をぞ 越後の川に 賽と投げ打つ
 政界への挑戦は数を重ねたが、一部野党や市民団体の期待を胸に背水の陣で臨む。
 医師であり、主に労働審判や医療事件を手がける弁護士でもある。月〜水は東京で弁護士活動にいそしみ、木〜土は地元・魚沼市の実家に戻り、訪問診療に取り組む。
 旧湯之谷村(現魚沼市)の養豚農家に生まれた。灘高へ進み、東大医学部を卒業。司法試験にも合格した。勉強好きになった理由はわからないが、共働きの両親は、本だけは買い与えてくれたという。
 小泉チルドレンが誕生した2005年の衆院選で、地元・新潟5区に自民党から立侯補して政界に初挑戦。その後も衆院選に2度、参院選に1度挑むも、田中真紀子・元外相や長島忠美・元山古志村長らにはかなわなかった。落選の度に「すごく落ち込んで、趣味のテニスもする気にならなくなる」という。国政にこだわり続けたのは「制度的な理不尽が放置されることに怒りがわき上がってくるから」だという。
 「政策通」であることが強みと自負し、普段から物事の仕組みを考えるのが好きだ。医療、介護、年金……。きっと仕組みを変えれば問題は解決できる。良い意味のあきらめの悪さが支えてきた。
 知事選の告示が迫り、最後の切り札として一部の野党から立侯補を求められた。立候補すれば、自主投票を決めていた民進党を離れることになり、国政の道は断たれる。後戻りはできない。「でも目の前に求められていることがあった」。表明前夜の歌には、そんな決断への思いを込めた。
 制度は国が作っても、執行役は県。問題点を国に突き付けることもできる。これまでの熱意を県での仕事に注ぎ込む覚悟だ。

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/760.html
[地域13] [2016新潟県知事選挙]原発再稼動問題 踏み込む候補者(朝日新聞)
原発再稼動問題 踏み込む候補者
朝日新聞[23面 新潟版] 2016年10月8日


「ノーと言う覚悟」「できない」


 知事選(16日投開票)の主な侯補者らが相次いで、東京電力柏崎刈羽原発がある柏崎市や刈羽村に入り、支持を訴えた。再稼働問題が注目される中、告示の時と少しずつ主張の言い回しが変わってきている。


 前長岡市長の森民夫氏(67)=自民、公明推薦=は7日、柏崎市の市民プラザやスーパーの前で演説に立った。自民党の細田健一衆院議員(新潟2区)、柏崎市・刈羽郡選挙区選出の三富佳一県議らが並んだ。
 森氏は告示の時から、再稼動について「安全確保を最優先の課題とする」と訴えていた。この日はさらに、原子力規制委員会の適合審査の結果が出ても「すぐ、再稼働することはありません」と踏み込んだ。泉田裕彦知事は県技術委員会と二人三脚で安全確保のために取り組んできたと評した上で、その委員会で独自に検証して問題があれば、東電や国に「再稼働はノーと言う覚悟で臨んでいる」と力を込めた。
 三富県議は、同日朝に安倍晋三首相から「しっかり頑張らないと大変なことになるぞ」と電話があったことを報告し、激戦と言われる中、陣営を引き締めた。


 医師の米山隆一氏(49)=共産、社民、生活推薦=は6日に刈羽村と柏崎市に入り、原発から約1キロのスーパー前や市中心部などでマイクを握った。
 東日本大震災時に福島県双葉町長だった、井戸川克隆氏も応援にかけつけた。井戸川氏は刈羽村の演説で「ここは空気がきれいだ。 私の町はマスクをしないと入れない。防災計画を読んだが、皆さんの生活保障を約束する人はおらず、大きな問題だ」と訴えた。
 米山氏も「原子力防災指針をどう読んでも、皆さんを安全に避難させられる計画は現時点で立てられない」とし、再稼働を間われれば「できないと答える以外にない」と明言した。
 放射線科医の経歴から「万が一を考えるなら刈羽村でも急性被曝へのきちんとした医療ができる機関がないといけない」と主張。 再稼働できない間の雇用対策にも取り組むとした。


 知事選には、元団体職員の三村誉一氏(70)、行政書士の後藤浩昌氏(55)も立候補している。

(松浦祐子、田中恭太) 


http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/761.html
[自然災害21] 人間が起こす地震(島村英紀/新潟日報)
現論 人間が起こす地震
島村 英紀 武蔵野学院大特任教授
新潟日報[29面 オピニオン] 2016年10月8日 ※
 
 
地下開発に伴うリスク
 
 地震学の教科書には、「米国では西岸のカリフォルニア州と北部のアラスカ州だけに地震が起きる」と書いてある。
 しかし情勢は変わった。2014年には米国南部にあるオクラホマ州で地震が以前よりも50倍にも増えて、全米一になったのだ。
 同州では、この9月3日にマグニチュード(M)5
・8の強い地震が起きた。近くに都会があれば、大きな被害を生みかねない規模だ。かつて11年11月に起きた地震でも負傷者が出たり、家屋が倒壊したりするなどの被害が出ていた。
 オクラホマ州では08年までの30年間に起きた地震は、ごく小さなM3まで数えても2回しかなかった。つまり日本とは違って、そもそもは先天的な無地震地帯だった。


 最近起きている地震は、間違いなく「人間が誘発してしまった地震」である。人間が地球内部に対して何かをすれば地震を起こすことが知られるようになってきた。
 最初は1962年のことだった。米国のコロラド州の軍需工場で放射性廃液の始末に困って、約4キロもの深い井戸を掘って捨てた。ところが、それまで地震がまったくなかった所に地震が起き始めた。
 多くは小さな地震だったが、なかにはM5を超える結構な大きさの地震まで起きた。生まれてから一度も地震を感じたこともない地元では大きな騒ぎになった。
 このほか、世界各地でダムが地震を起こしている。大きな被害が出たものに67年にインド西部でM6・3の地震が起きて一説には約2千人もが死傷した例がある。コイナダムという巨大なダムを造ったことで引き起こされた地震である。
 最近、オクラホマ州をはじめ米国各地で起き始めているのはシェールガス採掘によるものだ。
 この採掘には「水圧破砕法(フラッキング)」という手法が使われている。化学物質を含む液体を地下深くに超高圧で注入して岩石を破砕する手法だ。これによってシェール(頁岩)層に割れ目を作る。そこから層内の原油やガスを取り出す掘削法である。
 この手法では大量の廃水が生まれる。これを地下1キロほどの深さに掘った廃水圧入井に圧力をかけて注入することで処分している。
 
 シェールガス採掘に限らず、石油や天然ガスの掘削、ダム、廃液の地下投棄。地球内部に影響を及ぽす作業が地震を起こす例は、このところ世界的に増えている。
 岩の中でひずみがたまっているとき、水や液体は岩と岩の間の摩擦を小さくして滑りやすくする、つまり地震を起こしやすくする働きをするのだ。いわば、地下のエネルギーを解放する「引き金」を引いてしまったのである。
 オクラホマ州では非常事態を宣言して、州内に3200ある廃水圧入用の深井戸のうち37カ所に対し、10日間の使用中止を指示した。この1月にも27カ所に停止を指示したことがある。
 これで事態が収まるかどうかは分からない。今までの世界の例だと、地下への注水量の急激な変化は、圧力が増える場合でも、また減る場合でも地震を多発させることがある。増減いずれの方向でも地下の圧力の変動は地震を起こすことがあるのだ。
 地震を多発させているのはオクラホマ州に限らない。米国で地震観測を担当している米国地質調査所 (USGS)は今年3月に公表した報告書で、地震発生予測地図の対象に初めて人為的な地震も含めた。
 USGSによると米国で人為的地震のリスクが多い
州は、危険度の高い順にオクラホマ、カンザス、テキサス、コロラド、ニューメキシコ、アーカンソーの各州だという。
 これらの州ではM3以上の地震が、11年段階ですでに20世紀の6倍にも増えている。いずれもシェールガス採掘が最近盛んになった州だ。
 化石燃料の中では環境影響が小さく、また安価なために「革命」とまでいわれたシェールガスだが、その開発にはさまざまなリスクが伴うことを忘れてはいけないのだろう。便利さだけを追求した技術は、いつかは地球にしっぺ返しをされるのかもしれないのだ。



 しまむら・ひでき 1941年東京生まれ。69年東京大から理学博士号。専門は地震学。北海道大教授、国立極地研究所長などを歴任。2005年4月から現職。「直下型地震―どう備えるか」(花伝社)、「火山入門―日本誕生から破局噴火まで」(NHK出版新書)など著書多数。
 
 
※ 投稿者注: 「島村英紀・最近の新聞記事から」によれば次の通り。
「共同通信から 2016年10月5日(水曜)に各紙に配信」。『現論』コラム。「人間が起こした地震 シェールガスのリスクに目を」を執筆しました。
http://shima3.fc2web.com/saikinnnokijikara.htm

http://www.asyura2.com/15/jisin21/msg/654.html
[政治・選挙・NHK214] 風間直樹参院議員(民進党)による米山隆一新潟県知事候補の応援演説(2016/10/10上越市)[書き起こし]
風間直樹参院議員(民進党)による米山隆一新潟県知事候補の応援演説(2016/10/10上越市)[書き起こし]
 
niigatamamaさんのライブ 2016/10/10 18:25:02 TwitCasting
http://twitcasting.tv/niigatamama/movie/313637983



 
[13:05/1:33:35]
 
みなさんこんばんは。
ご紹介いただきました参議院議員の風間直樹です。
今日はみなさま、本当にご参加ありがとうございます。


今朝の新潟日報、ご覧になったでしょうか。世論調査の結果が出ました。「森、米山競る」そして「4割が未定」。4割というと約80万人です。80万の新潟県の有権者が「わからない」。2人の違いに迷っている人が多数いるんです。


泉田知事がおっしゃってました。「この間(かん)再稼動しろという圧力が半端ではなかった。」すさまじい物理的、精神的な圧力を泉田さんは受けていたわけです。それだけ自民党が本気で[柏崎]刈羽原発を動かしたい。


9月1日、自民党の二階幹事長、そして森民夫さんが、自民党本部で1時間会談されました。10月12日、つまり明後日(あさって)、二階幹事長が新潟に入ると報道されています。そして永田町では奇妙な噂が流れています。森[民夫]さんが知事に当選した暁には、二階派の特別会員として入会する。


12月、つまりさ来月、原子力規制委員会は刈羽原発の技術的な合格を出すといわれています。その時新潟に自民党推薦の知事が誕生していれば、再稼動はどうなるのでしょうか。


自民党は本気なんです。二階幹事長は経産大臣も務められた大物です。そしてその派閥に森民夫さんが入るといわれている。


みなさん。わたしたちの住む上越[市]、刈羽から40kmです。あの福島の事故で40km圏内はどうなったでしょうか。放射能に汚染されました。上越に住む、そしてここに集う、わたしたちの共通の思い――ぜひ新しい知事には、お金や権力にしがらみのない判断をしてほしい。上越に住む、新潟に住むわたしたちの命と安全を第一に考えてほしい。


米山さんはしがらみがありません。放射線科の医師の経験もあります。わたしは彼ならできると思います。みなさんいかがでしょうか。


わたしども民進党、今回推薦できませんでした。そのことをお詫び申し上げたい。しかし、今日は推薦できなかったのかと本当に思うほど多くの民進党議員が応援にかけつけてくれました。


あと1週間、80万人にわたしたちの声を届けましょう。みなさまのお知り合いにぜひお声がけをお願いします。米山さんを当選させましょう。そして新潟と上越の命と安全を守りましょう。ありがとうございました。



2016年10月10日
米山隆一個人演説会
上越文化会館大ホール
 
司会: 
わたなべ
 
出席議員の紹介と挨拶:
馬場秀幸(新潟に新しいリーダーを誕生させる会)
 
出席議員:
篠原 孝(民進党 衆議院議員)
今井 雅人(民進党 衆議院議員)
風間 直樹(民進党 参議院議員)
小山 芳元(社民党 県議会議員)
秋山 三枝子(民進党 県議会議員)
梅谷 守(民進党6区総支部長)
橋爪 法一(上越市議会議員)
上野 公悦(日本共産党 上越市議会議員)
平良木 哲也(上越市議会議員)
橋本 正幸(上越市議会議員)
牧田 正樹(上越市議会議員)
栗田 英明(上越市議会議員)
小林 和孝(上越市議会議員)
草間 敏幸(上越市議会議員)
山川 香一(妙高市議会議員)
渡辺 幹衛(妙高市議会議員)
霜鳥 栄之(妙高市議会議員)
小野嶋 哲雄(十日町市議会議員)
太田 祐子(十日町市議会議員)
 
応援弁士:
森 ゆうこ(選対本部長)
又市 征治(社民党)
小池 晃(日本共産党)
前原 誠司(民進党)

http://www.asyura2.com/16/senkyo214/msg/260.html
[地域13] [2016新潟県知事選挙]「医療・景気・原発」に期待|「公約・政策」重視46%(新潟日報)
「医療・景気・原発」に期待
新潟日報[1面] 2016年10月10日
 
 
 世論調査で新知事に取り組んでほしい政策を聞いたところ、最も多かったのは「医療・介護・福祉」で24.8%だった。「景気・雇用対策」が21.5%と続き、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題が関心を集める「原発問題への対応」は20.5%で3番目だった。
 以下、「教育・子育て支援対策」(12.8%)、「人口減少対策」(7.2%)と続いた。
 男性は「景気・雇用」(22.8%)、「原発問題」(20.5%)、「医療・介護・福祉」(19.2%)の順。女性は「医療・介護・福祉」 (30.0%)、「原発問題」(20.3%)だった。
 期待する政策に「原発問題」を挙げた年代は50代(25.9%)、60代(28.6%)、70歳以上(22.7%)が多かった。
 森民夫氏を支持する有権者の中では「景気・雇用」と「医療・介護・福祉」が高く、それぞれ27.1%、24.0%。「原発問題」は3番目の14.1%だった。
 原発問題を最大の争点として訴える米山隆一氏を支持する有権者では「原発問題」が(32.0%)で最多。次いで「医療・介護・福祉」(23.0%)、「景気・雇用」(14.3%)だった。


注:グラフ「新知事に望む政策」を省略した。(投稿者)



「公約・政策」重視46%
新潟日報[2面] 2016年10月10日


農林漁業、「手腕」も期待


 「どんな点に重点を置いて候補者を選ぶか」との問いに対しては、「公約・政策」との回答が最も多く、全体の46.4%に上った。次いで「政治・行政手腕」が17.2%、「人柄」が16.2%だった。
 主要候補の森民夫氏は自民、公明、米山隆一氏は共産、生活、社民の推薦をそれぞれ受け、民進を除いた国政の与野党が対決する構図になっている。だが、判断基準に「候補者を支持する政党・団体」を選んだ人は4.6%にとどまった。
 職業別では、農林漁業で手腕を重視する人が31.3%に上り、政策を重視する人とほぼ同様の割合だった。農業は環太平洋連携協定(TPP)など国の政策に左右される面が大きいため、知事候補には政策の中身よりも実行力への期待が集まったとみられる。
 支持政党別では、自民支持層で判断基準に政策を挙げる人(44.0%)だけでなく、手腕や人柄を挙げる人もそれぞれ2割前後と比較的多かった。民進支持層は59.1%が政策に重点を置いていた。
 政策を重視する人の中では、米山氏に投票するとした人が36.5%、森氏に投票するとした人が34.1%だった。手腕を重視する人では、市長経験の長い森氏が56.0%で、米山氏の21.2%を大きく上回った。
 (グラフの数字は四捨五入のため、合計は100%にならない ※)


※ グラフ「知事を選ぶ基準」は省略した。(投稿者)



【調査方法】[2面]
7〜9日の3日間、県内の18歳以上の有権者を対象に、コンピューターで無作為に電話番号を発生させて電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法で実施した。実際に有権者がいる世帯にかかったのは1424件で、このうち911人から回答を得た。


知事選関連[1面]
2面 関心度、7月参院選を上回る
3面 与野党対決"第2幕"の様相に
28面 放射性汚泥問題、新知事の対応期待
29面 柏崎再稼動「反対」が6割超す


同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


森、米山氏競る/知事選1週間前情勢/態度未定なお4割/本社世調[1面]※
森、米山氏が競る 態度未定4割/知事選世論調査(新潟日報モア)
「医療・景気・原発」に期待[1面]
知事選「関心ある」74%/本社世調/7月の参院選上回る[2面]
「公約・政策」重視46%/農林漁業者、「手腕」も期待[2面]
与野党激突「第2幕」/参院選敗北の自民 連敗回避へ全力/勝利再現狙う野党 民進の動向が鍵[3面]
投票率3.77% 期日前[3面]※
期日前投票率 前回選より高く/県知事選(新潟日報モア)
放射性汚泥 処分進まず/県、100ベクレル以下も全量保管/仮置き場近隣住民 新知事に対応期待[28面]
「柏崎」再稼動反対6割超/本社世論調査/もんじゅ「廃炉」、炉心溶融隠蔽/国、東電へ不信感高まる[29面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/762.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]与野党激突「第2幕」(新潟日報)
[2016新潟県知事選挙]与野党激突「第2幕」(新潟日報)


与野党激突「第2幕」
新潟日報[3面] 2016年10月10日
 
 
参院選敗北の自民 連敗回避へ全力
勝利再現狙う野党 民進の動向が鍵

 
 ともに無所属新人で前長岡市長の森民夫氏(67)=自民、公明推薦=と、医師の米山隆一氏(49)=共産、生活、社民推薦=の有力2候補が激突する知事選は16日の投開票まで1週間を切った。野党が制した7月の参院選新潟選挙区に続く与野党対決「第2ラウンド」の様相をみせ、自民党や生活の党の県関係国会議員が全面的に応援する。自主投票を決めた民進党も、一部の国会議員が米山氏支援に回る構え。市町村長の多くは森氏を推す。
 
 自民党は参院選新潟選挙区で、野党統一候補の生活の党県連代表・森裕子氏に惜敗した。「連敗」を避けようと、自民党の衆参国会議員は森民夫氏と街頭に立つ。細田健一衆院議員(2区)は全国市長会長を務めた森氏の経歴に触れ、「首相と直接話ができる男だ。太いパイプをつくってきた」とアピールする。
 当初の楽観ムードが一転する中で衆院の「1月解散説」が広まり、県関係議員は危機感を抱く。
 前回2014年衆院選で、県内6小選挙区の自民党候補で唯一敗れた斎藤洋明衆院議員(比例北陸信越)は地元3区を駆け回る。「熱心にやるのは当たり前。私はあと1回しくじったら終わり。徹底的にやる」と意気込む。
 参院選の結果を衆院小選挙区に当てはめると、1〜3区は自民党が勝ち、4〜6区は野党の勝利となる計算だ。高鳥修一衆院議員(6区)は地盤の上越市で野党に約8千票負けたことを挙げ「参院選は不本意な結果になった。知事選は特に一生懸命にやる」と語る。


 米山陣営では、選対本部長を務める森裕子参院議員が、米山氏と二人三脚で街頭活動を展開する。森氏は「原発が最大の争点だ」と繰り返し、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題を前面に押し出す。
 野党3党が狙うのは参院選の再現だが、今回は民進党が自主投票で、同党の支援団体の連合新潟は森民夫氏の「支持」に回った。
 激戦の中、陣営が期待するのが民進党の支援だ。これまでに高倉栄県議や、民進系会派に属する藤田博史県議が応援に入った。高倉氏は街頭演説で「米山氏は検証がなければ、原発再稼働の議論はしないと言っている」と支持を訴える。
 風間直樹参院議員(新潟選挙区)も「原発再稼働でしがらみなく判断できるのは米山氏だ」として支援することを決めた。ある衆院議員も「民進党の存在感を示せず、(党勢や選挙への)影響は大きい」と現状を危倶。自公に対抗する意味も込め、米山氏支援に意欲をみせる。終盤戦に向け、民進党の動きは大きな焦点となりそうだ。
 
 県市長会、町村会は森民夫氏を推薦しており、多くの市町村長が街頭に立つ。森氏擁立に動いた国定勇人三条市長は7日、市役所前の演説で「長岡市長、全国市長会長の実績を通じた人脈、信頼関係が森氏の力の源泉だ」と力説し、一緒に企業のあいさつ回りをした。篠田昭新潟市長と渡辺広吉聖籠町長は9日、新潟市内のイベント会場を森氏と練り歩いた。
 8月末に突如、出馬を断念した泉田裕彦知事は、これまでの記者会見で、どの候補を応援するか明言していない。
 ただ、自身のツイッター(短文投稿サイト)では原子力防災に関し、各候補に「公開質問」を投げ掛けた。いち早く回答した米山氏に対して「現在の原子力防災に欠陥があることを理解されている。頑張ってください」とエールを送った。知事の質問には森民夫氏も9日、回答した。※投稿者注
 



※投稿者注 泉田裕彦知事と米山隆一・森民夫両候補のツイートのやりとりは次の通り。
 
 
泉田裕彦
@IzumidaHirohiko
本日、次期新潟県知事を決める選挙が告示されました。新潟の未来について、人口減少問題、地方創生、原子力防災、原発にどう向き合うのか等活発な論戦を期待したいと思います。
8:37 - 2016年9月29日
 
 
泉田裕彦
@IzumidaHirohiko
【次期新潟県知事候補に問いたいこと1】
福島原発事故では、8時間半でベント判断でした。甲状腺癌を防ぐ安定ヨウ素剤は放射性プルーム到着数時間前の服用が必要です。屋内退避指示が出る中UPZ圏住民44万人に数時間での配布は困難です。住民に事前配布しますか?
8:38 - 2016年9月29日
 
 
泉田裕彦
@IzumidaHirohiko
【次期新潟県知事候補に問いたいこと2】
地震との原発複合災害時、一律屋内退避した場合、熊本地震のように建物倒壊による死傷者の発生が懸念されます。国に指針の見直しを求めますか?
18:24 - 2016年9月29日
 
 
泉田裕彦
@IzumidaHirohiko
【次期新潟県知事候補に問いたいこと3】
原発事故時、一律屋内退避を求められますが、線量が上昇した際(500μsV/h)の避難では、2時間で年間被曝限度量を超えます。これではUPZ圏住民44万人を避難させることは困難です。国に指針の見直しを求めますか?
12:36 - 2016年10月1日
 
米山 隆一
@RyuichiYoneyama
新潟県知事候補としてお返事させていただきます。一律屋内退避も、線量が500μSv/hに達してからの避難も、ご指摘の通り非現実的であり安全でないと思います。状況に応じた、安全で現実的な避難計画につながる指針の見直しを求めます。不足の点などがあれば、ご教授いただければ幸いです。
1:06 - 2016年10月3日

 
泉田裕彦
@IzumidaHirohiko
米山さん、回答ありがとうございました。他候補からは、安定ヨウ素剤の事前配布を実施するかどうかの回答もない中、現在の原子力防災には欠陥があることを米山さんは理解されていると思います。頑張ってください。
22:33 - 2016年10月5日

 
森 たみお
@moritamio24
【泉田知事からのご質問B】
UPZは20μSvになった時点で順次避難(一次移転)となっていますが、なるべく早期に安全に避難できるよう具体化すべきと考えます。このUPZが屋内退避から避難へと状況が進展した場合の対応も住民視線で具体化するよう国と協議します。
17:34 - 2016年10月9日

 
泉田裕彦
@IzumidaHirohiko
森さん回答ありがとうございました。 規制委の指針の改訂を求めると理解しました。違ったら指摘してください。 長岡市長時代に回答をいただければ、もっと建設的な議論もできたと思いますが、県民の生命、安全確保お願いします。基本を聞けたので、具体策の問いに引き続きお答えお願いします。
12:16 - 2016年10月10日

 
 
泉田裕彦
@IzumidaHirohiko
【次期新潟県知事候補に問いたいこと4】
国は、SPEEDIの活用を地方自治体の判断で認める方針です。避難計画にSPEEDIの活用を明記しますか?
12:16 - 2016年10月10日
 
米山 隆一
@RyuichiYoneyama
新潟県知事候補として回答させていただきます。はい、科学的根拠に基づき、少しでも安全かつ迅速な避難をしていただくために、当然SPEEDIの活用を避難計画に明記させていただきます。
13:51 - 2016年10月10日

 
 
泉田裕彦
@IzumidaHirohiko
【次期新潟県知事候補に問いたいこと5】
事故当事者の東電が避難活動に重大な影響を与える「メルトダウン隠し」は隠蔽と認めました。規制基準の適合審査に組織体質は含まれません。スウェーデンのように柏崎刈羽原発を東電HDから分離して原発構内に本社を設置することを求めますか?
12:18 - 2016年10月10日
 
米山 隆一
@RyuichiYoneyama
新潟県知事候補として回答させていただきます。「メルトダウン隠し」に象徴される東電の体質には非常に大きな問題があると考えざるを得ず、適正運営を担保する具体的手段を講じる事を強く求めます。ご指摘の柏崎刈羽原発分離・原発構内本社設置はそのための最も有効な手段の一つであると考えます。
14:12 - 2016年10月10日

 
 
泉田裕彦
@IzumidaHirohiko
【次期新潟県知事候補に問いたいこと6】
福島原発事故で発生した放射性汚泥等が暫定保管となっています。東電は事故責任を果たしていないということであり、再稼働議論前に既定方針通り同社に引き取りを求めますか?
21:39 - 2016年10月10日
 
 


知事選関連[1面]
2面 関心度、7月参院選を上回る
3面 与野党対決"第2幕"の様相に
28面 放射性汚泥問題、新知事の対応期待
29面 柏崎再稼動「反対」が6割超す


同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


森、米山氏競る/知事選1週間前情勢/態度未定なお4割/本社世調[1面]※
森、米山氏が競る 態度未定4割/知事選世論調査(新潟日報モア)
「医療・景気・原発」に期待[1面]
知事選「関心ある」74%/本社世調/7月の参院選上回る[2面]
「公約・政策」重視46%/農林漁業者、「手腕」も期待[2面]
与野党激突「第2幕」/参院選敗北の自民 連敗回避へ全力/勝利再現狙う野党 民進の動向が鍵[3面]
投票率3.77% 期日前[3面]※
期日前投票率 前回選より高く/県知事選(新潟日報モア)
放射性汚泥 処分進まず/県、100ベクレル以下も全量保管/仮置き場近隣住民 新知事に対応期待[28面]
「柏崎」再稼動反対6割超/本社世論調査/もんじゅ「廃炉」、炉心溶融隠蔽/国、東電へ不信感高まる[29面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/763.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]「柏崎」再稼動反対6割超(新潟日報)
「柏崎」再稼動反対6割超
新潟日報[29面 社会] 2016年10月10日
 
本社世論調査
 
 新潟日報社が7〜9日に実施した世論調査では、知事選での論戦が注目されている東京電力柏崎刈羽原発の再稼働について「反対」「どちらかといえば反対」を合わせた回答が60.9%となり、「賛成」「どちらかといえば賛成」の計24.2%を大きく上回った。賛成と反対の差は36.7ポイントで、昨年12月、今年7月の世論調査時からさらに広がった。反対が増えた背景には再稼働を進める政府、福島第1原発事故を起こした東電に対する不信感の高まりがうかがえる。
 
もんじゅ「廃炉」、炉心溶融隠蔽
国、東電へ不信感高まる

 
 再稼働について、最も多かった回答は「反対」の36.5%で、「どちらかといえば反対」の24.4%が続いた。この二つを合わせた反対は昨年12月の東京新聞との合同世論調査では47.4%、今年7月の参院選時の世論調査では51.5%。今回は6割超と、参院選時に続いて増えた=グラフ参照 ※=。
 一方、今回の「賛成」「どちらかといえば賛成」はそれぞれ8.4%、15.8%。 二つを合わせた賛成が占める割合は前回、前々回とほぼ横ばいだった。
 「どちらともいえない」は13.7%。前々回は28.2%、前回は19.3%と減り続ける中、反対の合計が増えている。
 反対が増えてきた背景には、政府や東電の姿勢に対する疑間や不信がありそうだ。
 政府は9月、これまでに1兆円以上の国費を投じながら本格運転に至っていない高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉を含めた抜本的見直しを表明。原子力政策全般の先行きが不透明になっている。
 東電は福島事故当初、「炉心溶融(メルトダウン)」という深刻な事態を隠蔽していたことを6月に認めた。県と東電は、この隠蔽に関し合同検証委員会で詳しい経緯の解明作業を8月末に始めたばかりだ。
 衆院小選挙区のエリア別に見ると、原発が立地する柏崎市を含む2区エリアで反対が61.5%だった。他の五つのエリアも6割前後を反対が占めた。
 年代別では、20代で再稼動に反対が52.3%だった一方、賛成は34.3%と他の年代より高かった。40代以上の各年代では反対が6割を超えた。
 支持政党別では、自民党支持層で反対が42.2%と賛成の38.7%を上回った。連立与党の公明党支持層は反対が7割超。
 知事選で自主投票としている民進党の支持層は反対が8割超。知事選で共闘する共産、生活、社民の3党の各支持層は7〜9割が反対としている。支持政党がない無党派層は反対が68.6%だった。
 投票動向で見ると、主要2候補のうち、森民夫さん(67)に投票するとした人で反対が44.6%、米山隆一さん(49)に投票するとした人では78.5%。


※ グラフ「柏崎刈羽原発の再稼動について」は省略した。(投稿者)



【調査方法】[2面]
7〜9日の3日間、県内の18歳以上の有権者を対象に、コンピューターで無作為に電話番号を発生させて電話をかけるRDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)法で実施した。実際に有権者がいる世帯にかかったのは1424件で、このうち911人から回答を得た。


知事選関連[1面]
2面 関心度、7月参院選を上回る
3面 与野党対決"第2幕"の様相に
28面 放射性汚泥問題、新知事の対応期待
29面 柏崎再稼動「反対」が6割超す


同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


森、米山氏競る/知事選1週間前情勢/態度未定なお4割/本社世調[1面]※
森、米山氏が競る 態度未定4割/知事選世論調査(新潟日報モア)
「医療・景気・原発」に期待[1面]
知事選「関心ある」74%/本社世調/7月の参院選上回る[2面]
「公約・政策」重視46%/農林漁業者、「手腕」も期待[2面]
与野党激突「第2幕」/参院選敗北の自民 連敗回避へ全力/勝利再現狙う野党 民進の動向が鍵[3面]
投票率3.77% 期日前[3面]※
期日前投票率 前回選より高く/県知事選(新潟日報モア)
放射性汚泥 処分進まず/県、100ベクレル以下も全量保管/仮置き場近隣住民 新知事に対応期待[28面]
「柏崎」再稼動反対6割超/本社世論調査/もんじゅ「廃炉」、炉心溶融隠蔽/国、東電へ不信感高まる[29面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/764.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]原発議論「具体的に」(新潟日報)
原発議論「具体的に」
新潟日報[3面] 2016年10月12日
 
 
県技術委・立石氏が会見
 
 東京電力柏崎刈羽原発の安全性を議論する県技術委員会委員の立石雅昭・新潟大名誉教授が11日、県庁で会見し、16日に投開票される知事選での原発問題の議論について「具体性がなく不十分だ」と指摘し、より積極的な議論を求めた。
 立石氏は、東電が2002年に発覚したトラブル隠しで再発防止を誓ったにもかかわらず、11年の福島第1原発事故時に炉心溶融を隠したことを指摘。「隠蔽体質は改まっていない」と強調した。
 知事選で、どの候補の主張からも東電の隠蔽体質とどう向き合うかが見えないことを問題視。「東電の体質を変えると明言し、そのために知事としてどうするかを示してほしい」と訴えた。
 ほかに、福島第1原発事故の検証の具体的な進め方や、原発事故の際の避難計画の在り方についても議論を深めるよう要望した。




同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


業界団体に温度差も/[建設業]国とのパイプを重視[労働組合]各組織で異なる動き[JA]参院選ほど熱気なく[3面] ※
業界団体 内部に温度差も/知事選 主要団体の動き(新潟日報モア)
再稼動問題での単一争点化懸念/三条市長[3面]
自民トップ36.5%/県内政党支持率/無党派層は増加/本社世論調査[3面] ※
県内政党支持率 自民トップ/知事選 本社世論調査(新潟日報モア)
投票用紙を二重交付/期日前/新潟南区[31面]
要旨:11日新潟市選管発表。10日に南区役所で知事選挙の期日前投票をした80代女性は1日に期日前投票済みだったが、係員が有権者をシステムで検索した際にエラーメッセージの確認を怠り、投票用紙を再交付した。女性が2回目の投票も済ませたため、2票は有効票として扱われる。

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/765.html

[テスト31] テスト
[2016新潟県知事選挙]市区町村別得票率差を地図でながめる


新潟県知事選挙(2016年10月16日) 米山隆一 vs 森たみお


新潟県全体での米山候補と森候補の得票数と得票率はそれぞれ次の通り。


得票数
[当]米山隆一 (49) 無新 528,455票
   森 民夫 (67) 無新 465,044票


得票率
[当]米山隆一 52.2%
   森 民夫 45.9%


 ※ ほかに2人の立候補者がいるので、得票率の合計は100%にならない。


両候補の市区町村別の得票率の差を地図グラフであらわしてみた。


CARTOというウェブサービスを利用した。色分けのしかたは等量分類(quantile)と呼ばれる方法にもとづく。分類方法を選べばあとは自動的に表示されるので、分類の詳細はわからない。等量分類では市区町村のちがいがわかりやすく単純化される。いい方をかえれば、この地図グラフはきわめて大ざっぱな見取り図にすぎない。


 ※ CARTOというなかなか楽しい地図グラフの「おもちゃ」については、武井宏之という朝日新聞記者のツイートで知った。


緑色の濃い市区町村では、米山候補の得票率が森候補を上回っている。色が薄くなるにつれて両候補が互角になり、さらに森候補が米山候補を上回るようになる。


地図にマウスカーソルをあてると、各市区町村の基礎データが表示される。上から順に、市区町村名(該当する衆議院小選挙区)、米山候補の得票率、森候補の得票率、得票率の差(米山候補の得票率から森候補の得票率を引いた値)。


市区町村別開票結果(開票確定 2016/10/16 23:32更新 )
市区町村別得票率計算表



緑色のきわだって濃い市区町村はどこだろう。


加茂市。泉田裕彦現知事の出身地。小池清彦市長も泉田県政支持の立場を鮮明にしていた。
新潟市秋葉区。旧新津市。森ゆうこ議員の出身地。
南蒲原郡田上町。加茂市と秋葉区の間に位置する。佐藤邦義町長は森民夫氏に出馬要請をした首長の1人。
新潟市西蒲区。原発建設をめぐる住民投票で知られる旧西蒲原郡巻町を中心とする開票区。
魚沼市。米山候補の出身地(旧北魚沼郡湯之谷村)。


一方、とりわけ緑色の薄い市区町村もある。


岩船郡粟島浦村。
岩船郡関川村。
刈羽郡刈羽村。
三島郡出雲崎町。
これら4つの町村では、今年7月の参議院選挙新潟選挙区で劇的な「2千票差の当選」をはたした森ゆうこ氏も、相手候補の中原八一氏に大きな差をつけられている。
東蒲原郡阿賀町。ここで相手候補に差をつけられた理由については見当がつかない。地域が人口減少などの切実な課題を抱えるなかで、あるいは米山氏の原発再稼動シングルイシューの訴えが冷ややかにあしらわれたのだろうか。
「合併10年目を迎えて」(神田敏郎町長 2014年)
北蒲原郡聖籠町。渡邊廣吉町長は県町村会の会長であり、今年5月、森民夫県市長会長(当時)とともに首長有志の先頭に立って泉田県政批判の火蓋をきった。
糸魚川市と佐渡市。それぞれ道路や空港のインフラ整備を強く求めている事情が新潟日報に報じられていた。
長岡市。森民夫氏のお膝もと。市長として昨年11月には5選をはたした。とはいえ、米山氏も知事選に立候補するまでは民進党の新潟5区総支部長だった。過去にも新潟5区だけで3回、自民党や日本維新の会から立候補してはそのたびに落選した。長岡市での地元対決に限定していえば米山氏がまた負けるという結果だった。ちなみに森ゆうこ氏も2014年、当時維新の党にいた米山氏に立候補をゆずらせる格好で野党共闘を組み、新潟5区から立候補したことがある。そのときは長島忠美氏に敗れたが、今年7月の参院選では雪辱をはたし、長岡市で相手候補の中原氏を制した。


このように市区町村ごとにながめてみると、米山氏が新潟県全土で同じように支持を集めたわけではないということがわかる。新潟市の各区をはじめとする人口の多い開票区での支持の広がりが、序盤に劣勢だった米山氏に6万3千票差の地滑り的な大勝利をもたらしたのだ。


新潟市の篠田昭市長(4期)は、森民夫氏を支持して応援演説も積極的に行なっていた。このような明確な意思表示にもかかわらず、これまで篠田市長の4選を支えてきた新潟市民の多数が県知事として米山氏を選んだ。田上町(佐藤邦義町長・5期)、燕市(鈴木力市長・2期)、見附市(久住時男市長・4期)、三条市(国定勇人市長・3期)、新発田市(二階堂馨市長・2期)など、強固な支持基盤を有する首長が森民夫氏を応援したほかの自治体でも、同じ現象がおきている。


以上の観察結果についてはさらにくわしく調べて分析したいところだが、投稿者にそれだけの力量がない。気がついたことを指摘するだけにしておく。投稿者は今後、米山県政を応援しながらも、今回は米山氏に県政を委託しなかった格好になる地域の声にはとくに耳を澄ませるようにしたい。また、市区町村や政党をこえて広がった米山氏への期待を共有した人たちが、さらにこれから新潟県の新しい地方自治を模索していくとしたら、その動きにもあまり遅れずについて行かなくてはなるまい。
 
 

[参考]参議院選挙新潟県選挙区(2016年7月10日) 森ゆうこ vs 中原八一


参考までに、2016年7月の参院選新潟選挙区での森裕子候補と中原八一候補の得票率の差についても、同じ要領で地図グラフにしてみた。青色の濃い市区町村では得票率で森裕子候補が中原候補を上回った。


得票数
[当]森 裕子(60)無元 560,429票
   中原八一(57)自現 558,150票


得票率
[当]森 裕子 49.0%
   中原八一 48.8%


 ※ もう1人立候補者がいるので、得票率の合計は100%にならない。


市区町村別開票結果(平成28年7月10日執行 参議院議員通常選挙/新潟県選出議員選挙 開票結果)
市区町村別得票率計算表




http://www.asyura2.com/14/test31/msg/564.html

[政治・選挙・NHK214] [2016新潟県知事選挙]市区町村別得票率差を地図でみる

米山隆一 vs 森たみお(2016年10月16日 新潟県知事選挙)


新潟県全体での米山候補と森候補の得票数と得票率はそれぞれ次の通り。


得票数
[当選]米山隆一 (49) 無新 528,455票
    森 民夫 (67) 無新 465,044票


得票率
[当選]米山隆一 52.2%
    森 民夫 45.9%


 ※ ほかに2人の立候補者がいるので、得票率の合計は100%にならない。


両候補の市区町村別の得票率の差を地図グラフであらわしてみた。


CARTOというウェブサービスを利用した。色分けのしかたは等量分類(quantile)と呼ばれる方法にもとづく。分類方法を選べばあとは自動的に表示されるので、分類の詳細はわからない。等量分類では市区町村のちがいがわかりやすく単純化される。いい方をかえれば、この地図グラフはきわめて大ざっぱな見取り図にすぎない。


 ※ CARTOというなかなか楽しい地図グラフの「おもちゃ」のことは、武井宏之という朝日新聞記者による都知事選挙結果分析のツイートで知った。


緑色の濃い市区町村では、米山隆一候補の得票率が森民夫候補を上回っている。色が薄くなるにつれて両候補が互角になり、さらに森候補が米山候補を上回るようになる。


地図にマウスカーソルをあてると、各市区町村の基礎データが表示される。上から順に、市区町村名(該当する衆議院小選挙区)、米山候補の得票率、森候補の得票率、得票率の差(米山候補の得票率から森候補の得票率を引いた値)。地図左上にあるプラス/マイナスボタンで、表示を拡大/縮小できる。


市区町村別開票結果(開票確定 2016/10/16 23:32更新 )
市区町村別得票率計算表



緑色のきわだって濃い市区町村はどこだろう。


加茂市。泉田裕彦現知事の出身地。小池清彦市長も泉田県政支持の立場を鮮明にしていた。
新潟市秋葉区。旧新津市。森ゆうこ議員の出身地。
南蒲原郡田上町。加茂市と秋葉区の間に位置する。佐藤邦義町長は森民夫氏に出馬要請をした首長の1人。
新潟市西蒲区。原発建設計画への反対運動と住民投票で知られる旧西蒲原郡巻町を中心とする開票区。
魚沼市。米山候補の出身地(旧北魚沼郡湯之谷村)。


一方、とりわけ緑色の薄い市区町村もある。


岩船郡粟島浦村。
岩船郡関川村。
刈羽郡刈羽村。
三島郡出雲崎町。
これら4つの町村では、今年7月の参議院選挙新潟選挙区で劇的な「2千票差の当選」をはたした森ゆうこ氏も、相手候補の中原八一氏に大きな差をつけられている。
東蒲原郡阿賀町。ここで相手候補に差をつけられた理由については見当がつかない。地域が人口減少などの切実な課題を抱えるなかで、あるいは米山氏の原発再稼動シングルイシューの訴えが冷ややかにあしらわれたのだろうか。参考:「合併10年目を迎えて」(神田敏郎町長 2014年)
北蒲原郡聖籠町。渡邊廣吉町長は県町村会の会長であり、今年5月、森民夫県市長会長(当時)とともに首長有志の先頭に立って泉田県政批判の火蓋をきった。
糸魚川市と佐渡市。それぞれ道路や空港のインフラ整備を強く求めている事情が新潟日報に報じられていた。
長岡市。森民夫氏のお膝もと。昨年11月には市長5選をはたした。とはいえ、米山氏も知事選に立候補するまでは民進党の新潟5区総支部長だった。過去にも新潟5区だけで3回、自民党や日本維新の会から立候補してはそのたびに落選した。長岡市での地元対決に焦点をしぼれば、米山氏がまた負けるという結果だった。ちなみに森ゆうこ氏も2014年、新潟5区から立候補している。当時維新の党にいた米山氏に立候補をゆずらせる格好で野党共闘を組んだが、長島忠美氏に敗れた。今年7月の参院選で雪辱をはたし、長岡市で相手候補の中原氏を制した。


このように市区町村ごとにながめてみると、米山氏は新潟県全土で同じように支持を集めたわけではなかったということがわかる。新潟市の各区をはじめとする人口の多い開票区での支持の広がりが、序盤に劣勢だった米山氏に6万3千票差の地滑り的な大勝利をもたらしたのだ。


新潟市の篠田昭市長(4期)は、森民夫氏を支持して応援演説を積極的に行なった。その明確な意思表示にもかかわらず、篠田市長の4選をこれまで支えてきた新潟市民の多数が県知事としては米山氏を選んだ。田上町(佐藤邦義町長・5期)、燕市(鈴木力市長・2期)、見附市(久住時男市長・4期)、三条市(国定勇人市長・3期)、新発田市(二階堂馨市長・2期)など、自身の強固な支持基盤をもっていそうな首長が森民夫氏を応援したほかの自治体でも、同じような現象がおきた。


以上の観察結果についてさらにくわしく調べて分析したいところだが、投稿者にそれだけの力量がない。気がついたことを指摘するだけにしておく。投稿者は今後、米山県政を応援しながらも、今回は米山氏に県政を委託しなかった格好になる地域の声にはとくに耳を澄ませるようにしたい。また、市区町村や政党をこえて広がった米山氏への期待を共有した人たちが、さらにこれから新潟県の新しい地方自治を模索していくとしたら、その動きにもあまり遅れずについて行かなくてはなるまい。
 
 

[参考]森ゆうこ vs 中原八一(2016年7月10日 参議院選挙新潟県選挙区)


2016年7月の参院選新潟選挙区での森裕子候補と中原八一候補の得票率差についても、同じ要領で地図グラフにしてみた。青色の濃い市区町村では得票率で森裕子候補が中原候補を上回っている。



得票数
[当選]森 裕子(60)無元 560,429票
    中原八一(57)自現 558,150票


得票率
[当選]森 裕子 49.0%
    中原八一 48.8%


 ※ もう1人立候補者がいたので、得票率の合計は100%にならない。


市区町村別開票結果(平成28年7月10日執行 参議院議員通常選挙/新潟県選出議員選挙 開票結果)
市区町村別得票率計算表

http://www.asyura2.com/16/senkyo214/msg/605.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]問われる政策実現力|県政課題 原発問題に埋没|ほか(新潟日報)

問われる政策実現力


新潟日報[1面] 2016年10月17日 


解説[投稿者注:選挙結果を報じた1面トップ記事の解説]


 知事選で米山隆一氏が激戦を制した。争点を東京電力柏崎刈羽原発に絞り、有権者に再稼働への賛否を迫る県民投票的な戦いが奏功したといえる。県民の原発への強い不安が顕在化した格好で、同原発の再稼働は一層困難になったことは間違いない。ただ県政には原発以外にも課題は山積している。人口減少が続き、県勢振興は待ったなしだ。国政、県政とも自民党の「1強」状態にあり、県政初の野党系知事の手腕が問われる。


 米山陣営は事実上の「原発ワンイシュー(単一争点)」選挙を展開。与党が推薦する森氏を「再稼働にノーと言えるわけがない」と批判し、原発推進派と位置付けるイメージ戦略が成功した。


 現職の泉田裕彦氏は再稼働への賛否は明確にしてこなかったが、米山氏は選挙戦で再稼働を「認められない」と踏み込んだ。新潟日報社の世論調査で6割超を占めた再稼働反対の声の受け皿となった。


 森氏の全国市長会長などの経験を逆手に取って「古いタイプの政治家」と強調。原発を推進する自民党への県民の不信感も勝利の背景にあったとみられる。


 ただ、県の課題は原発だけではない。「米山県政」に求められるのは、幅広い分野の政策実現力だ。


 県議会では議席の6割超を占める自民党との対立も予想される。米山氏は過去に自民党を離党しており、自民県議とは確執がある。同様に政府与党との関係悪化も懸念される。大半が森氏を支援した市町村長との連携も課題だ。他県では、野党推薦で初当選した知事が県議会と対立し1年ほどで失職した例もある。


 米山氏は、原発対応は「泉田路線を継承する」としたが、他の分野での姿勢は明確ではない。日本海横断航路の船購入問題など、「機能不全」が指摘される泉田県政の負の遺産にどう対処するか。徹底した情報の開示も必要になる。


 米山氏は行政経験がなく、政治手腕も全く未知数だ。「原発は動かないが、他の政策も動かない」とはならないよう、停滞を招かない県政運営を求めたい。




県政課題 原発問題に埋没


報道部長 三島亮 新潟日報[3面] 2016年10月17日


 本県の新たなリーダーとして選ばれたのは、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題を最大の争点に掲げた米山隆一氏(49)=共産、自由、社民推薦=だった。野党系の知事が誕生するのは県政史上初である。


 米山氏は、東電福島第1原発事故の検証なしには再稼動議論はできないとする泉田裕彦知事の路線を継承する。原発に反対する野党3党の支援を受けた米山氏が、前長岡市長の森民夫氏(67)=自民、公明推薦=を破ったことで、安倍政権が進める原発の再稼働路線に県民が「NO」を突きつけた形だ。


 選挙戦はさながら再稼働の是非を選択する県民投票と化した。福島事故以降はとりわけ県民の間で再稼働に反対する声が高まった。それが米山氏を知事の座に押し上げたのは間違いない。


 知事選で原発問題が大きな争点となったことは非常に意義があったと思う。先の参院選もそうだが、国政選挙では政治的思惑から争点化を避けられてきた経緯もあるからだ。


 とはいえ原発問題ばかりに焦点を当てるような選挙戦には違和感を抱いた。


 もちろん重要な問題だが、生活に直接関わる県政課題はほかにもある。人口減少対策や子育て支援、医療・福祉の充実、拠点化など山積する課題の論議が埋没した印象は否めない。


 日本海横断航路計画の船購入問題をはじめとする泉田県政のマイナス面が覆い隠されたかのようになったことも問題だ。


 米山氏は、原発問題への対応で泉田路線を引き継ぐとしている。ただ、賛否が分かれる問題なのにその路線には暖昧さがつきまとってきた。


 泉田知事は、東電や原子力規制委員会を厳しく批判する一方、原発に対する自らの考えは明らかにしていない。実際、「反原発」とは一度も言っていない。態度を明確にしないことで推進、反対ともに期待を抱かせるような手法といえる。


 米山氏は路線継承と言うだけでなく、今後の対応を含めてもっと具体的に説明するべきだ。福島事故後も原発を推進するべきだと述べていた経緯がある。なぜ考えが変わったのか。県民はさらに詳しく聞きたいだろう。立地地域にも丁寧に対応してほしい。


 森民夫氏の出馬の原点は泉田県政に対する批判だった。北陸新幹線の負担金間題で国や近隣県との軋轢を生じさせたほか、県内市町村との対立も招いたとして、県政の再生を訴えていた。


 ところが、選挙戦では泉田氏批判はトーンダウンした。米山氏との対立軸を明確に示せなかったのが最大の敗因だろう。背景には、自民党内の泉田派と反泉田派の対立が尾を引き、泉田氏批判を封じられた実情がある。最後まで一枚岩になれなかった。


 選挙戦終盤には、二階俊博自民党幹事長が党本部で泉田知事に対し、森氏への支援を求める場面もあった。このこと自体、自民党の危機感と焦りを表していた。自民党自らが12年前に誕生させた泉田知事に足元を見られた格好でもある。


 米山県政は県議会では少数与党となる。最大会派の自民党への対応次第では、県政が大混乱に陥る可能性がある。


 原発再稼働に対する民意が明確に示された一方で、県政運営に欠かせない国や市町村との連携はどうなるのか。横断航路問題といった泉田県政の負の遺産への対応も待ち構えている。




単一争点化の劇場型/幅広い政策論争に至らず/田村秀・新大法学部教授


新潟日報[2面] 2016年10月17日


 16日に投開票された知事選は、共産党など野党3党が推す医師の無所属新人・米山隆一氏(49) が、自民、公明両党が推薦する前長岡市長の同・森民夫氏(67)を破り、新知事に就くことになった。この結果の意味を新潟大法学部の田村秀教授に聞いた。


 良くも悪くも東京電力柏崎刈羽原発再稼働の「ワンイシュー(単一争点)」、白黒を迫る住民投票の構図になった。ここ10年来の劇場型の選挙だ。理性でなく、感性の選択になったといえる。それは直近で見ると、イギリスのEU離脱と近い。こうすればばら色の未来になる、というイメージに持ち込んだ住民投票。与党や権力への反発という意味では、米大統領選でのトランプ現象とも共通している。


 参院選新潟選挙区での野党候補勝利の影響も大きい。その流れのままで投票した人も多いだろう。ただ、何人もいる中の一人である国会議員とオンリーワンの知事では違う。本来は違う軸で考えなければならなかった。


 知事は原発だけではなく、産業や福祉などさまざまな分野を担っている。本来であれば討論会などで全体的な政策論争をすべきだったが、いかんせん時間がなかった。原発に隠れ、泉田県政の問題点も論点になりきれなかった。


 米山氏は自民や維新といった政党を渡り歩いてきた。以前は原発を推進してきたのに、今回の出馬に当たってころっと考えを変えた。これは非常に怖いことだし、究極のポピュリズム。本来政治家は、何かを実現するための手段であるはずなのに、米山氏は政治家になることが目的になっていると見えてしまう。


 地方は厳しい状況にあり、県政の課題は山積している。行政経験の全くない新知事を選んだことは、非常に大きなリスクをはらむ。
 
 
 たむら・しげる  北海道出身。東大卒業後、旧自治省に入省し三重県財政課長などを務める。2007年から現職。専門は行政学、地方自治。
 



各党談話


新潟日報[3面] 2016年10月17日


結果受け止め/分析これから
長島忠美・自民党県連会長 結果は受け止めるが、原発への民意を含め敗因分析はこれからだ。党としては選挙対策本部で方針を決め、下部組織を含めて精いっばいやってきた。県議会で自民党は多数野党ということになるが、県議が真摯に向き合っていくだろう。


県議会議論は/「是々非々で」
志田邦男・公明党県本部代表 原発問題だけに全てをかき消されてしまった。森氏の幅広い主張は浸透できなかった。米山氏は農業、人口減少などについてほとんど考えを示していない。県議会では県民益のため、真っ正面から是々非々で議論していく。


自主投票判断/一部に混乱も
大渕健・民進党県連幹事長 自主投票としたが、県連の一部国会議員らが支援したことは米山知事誕生の一翼を担ったのではないか。自主投票が県民や支援団体、党組織に混乱を生じさせたことは否めない。結果を重く受け止め、県連としてしっかり総括する。


参院選を経験/共闘スムーズ
樋渡士自夫・共産党県委員長 現職の原発政策の継承路線を示し、さらに「再稼働に同意できない」と踏み込んだことが大きな勝因だ。参院選を受け、野党共闘もスムーズだった。今後は県民世論に依拠した県政を進めることが、課題解決のポイントになると思う。


歴史の転換点/全国にも影響
森裕子・自由党県連代表 原発問題を初めて大きな争点とした選挙戦で、再稼働に反対する民意を示すことができた。非常に大きな勝利だ。歴史の大きな転換点になるだろう。今後、全国のさまざまな選挙に影響が波及すると思うし、拡大させていきたい。


再稼働是非で/関心高まった
小山芳元・社民党県連代表 原発再稼働の是非が初めて争点となり、有権者の関心が高まったと思う。再稼働を許さないという県民の思いが、候補の訴えにもつながっていった。夏の参院選に続き、市民の力が政治を動かした。県民に寄り添う政治を期待したい。
 



各界談話


新潟日報[3面] 2016年10月17日


新潟の繁栄へ/責任果たして
泉田裕彦知事 当選された米山氏に心からお祝いを申し上げる。未来への責任をしっかり果たし、新潟を繁栄させるよう頑張ってほしい。


米山新知事と/意見交換する
篠田昭・新潟市長 選挙戦が原発再稼働のワンイシューとなってしまい、他の県政課題が埋没してしまったのは残念。県市長会が森氏の推薦を決めた段階で、米山氏は出馬表明していなかった。わだかまりはない。新知事としっかりと意見交換していきたい。


中小企業への/支援が不可欠
福田勝之・新潟商工会議所会頭 県内経済を支える中小企業の経営環境はまだまだ厳しく、支援が不可欠だ。販路拡大、新製品開発への支援といった産業振興策や観光振興、雇用対策など地域活性化に向けた経済政策を強力なリーダーシップの下、推進してほしい。


TPPなどの/農政課題山積
今井長司・県農業協同組合中央会会長 国会で承認案などが審議入りした環太平洋連携協定(TPP)や、2018年産以降のコメ政策見直しへの対応など、重要な農政課題が山積している。新知事となる米山氏には、本県農業の振興にご尽力願いたい。




同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


新知事に米山氏/柏崎再稼動に「反対」/森氏と6万票差/野党系は初[1面]
新知事に米山氏 柏崎再稼働に「反対」
投票率53% 野党系は本県初
(新潟日報モア)
新潟ショック 政権激震/首相の解散戦略に影/野党攻勢 TPP審議 停滞懸念/緩み おごり表れ 与党/共闘に弾み 歓迎 野党[2面]
無党派・民進票取り込む/出口調査分析「原発重視」8割支持[3面]
県知事選 市町村別得票[3面]
投票率53.05% 20年ぶり上昇[3面]
投票率53% 20年ぶり上昇/知事選(新潟日報モア)
再稼動「ノー」の民意示す/新知事に米山氏[5面 社説]
新知事に米山氏 再稼働「ノー」の民意示す(新潟日報モア)
再稼動 厳しい民意/出口調査「反対」は6割超す/米山さんの得票押し上げ[26面]
柏崎原発再稼働「反対」6割超/知事選出口調査
米山さん風つかむ/県知事選/「新しい県政の一歩に」/国政含め5度の挑戦実る/森さん「実力不足」/目潤ませ支持者におわび[27面]
「新しい県政の一歩に」挑戦実る/知事選 候補者の言葉(新潟日報モア)
80代の女性に二重交付ミス/村上市選管[27面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/766.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]知事選 戦いの跡(新潟日報)
知事選 戦いの跡
新潟日報[3面] 2016年10月18日
 

争点絞る戦略奏功


 12年ぶりに新人同士の対決となった16日の知事選は、約52万8千票を獲得した医師・米山隆一氏(49)=共産、自由(旧生活)、社民推薦=が、約46万5千票を得た前長岡市長の森民夫氏(67)=自民、公明推薦=らを破り、初当選を果たした。県政史上初の野党系知事となる米山氏は、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題に争点を絞った戦略が奏功。森氏は分厚い組織に支えられたが、当初の楽観ムードもあって効果的な戦術を組み立てられず、無党派層への広がりを欠いた。激戦となった選挙戦を振り返る。


米山陣営/原発の主張、先鋭化/終盤 民進引き込みに成功


 16日夜、米山氏と万歳を繰り返した後にマイクを握った選対本部長の森裕子参院議員は言い切った。「原発再稼働イエスかノーか。これを最大の争点にした。県民の意思は示された」―。「住民投票化」させた選挙戦の勝利宣言だった。


 告示6日前に出馬表明した米山氏の陣営が短期決戦を勝ち抜くために描いたのは、原発再稼働問題の一点突破。そしてその主張は徐々に先鋭化していった。


 「現状では再稼働は認められない」。選挙戦中盤、米山氏の演説に新たな1節が加わった。泉田裕彦知事の路線を受け継ぐとして「福島事故の検証がなければ議論はできない」としていたが、一歩踏み込んだのだ。


 森民夫氏が再稼働に慎重な言動にシフトし、主張の違いが見えにくくなってきたころだった。選対幹部は「有権者に触れ合う機会を多くつくり、候補に原発を嫌がる声を聞いてもらった。直接的な表現が必要だと感じてもらった」と語る。


 その効果は抜群で、新潟日報社の出口調査では、再稼働に反対とした人の7割近くが米山氏に投票した。無党派層の7割も引き込み、森氏を圧倒。無党派層の多い新潟市で4万票超の差をつけた。


 並行して進めたのが組織票の取り込みだ。7月の参院選の野党共闘の枠組みは縮小。自主投票とした民進党と森民夫氏を支持した連合新潟が抜けていたが、その穴埋めを米山氏、森裕子氏に近しい県外の民進党国会議員が担った。


 狙ったのは保守系や民進党系の組織。農業に強い議員は街頭に立たずに農業団体を回った。保守系の議員は企業回りに注力。分担する戦略を取った。選対幹部は「ウイングを広げるのに最適。バッジがあるのだから説得力も重みもあった」と振り返る。


 県外からの応援は、民進党をなびかせる雰囲気づくりの効果も。健闘が伝えられる中で終盤に黒岩宇洋県連代表ら県関係国会議員も街頭に立つようになり、最終盤には蓮舫代表も来援。出口調査では民進党支持層の8割以上がつき、結果的には野党支持層がまとまった形ともなった。
 
 
森陣営/県議ら動きに濃淡/「自民従来型選挙」限界も


 「自民党として敗れたという言い方が適当かどうか。われわれは支援団体の一つだと思っている」


 16日午後10時前。推薦候補の森氏の落選が判明した約1時間後、自民党県連会長の長島忠美衆院議員はこう言い残し、「祝勝会場」となるはずだった新潟市のホテルを後にした。


 長島氏の言葉が象徴するように、自民党内には森氏を擁立した当事者意識の希薄さ、温度差があった。


 選挙戦の実動部隊を担う国会議員や県議らは活動量に濃淡があった。特に泉田裕彦知事を推していた「泉田派」の一部県議らは最後まで動きが鈍かった。


 「統制が取れていない」「空回りだ」。県連が一枚岩になれていない状況を告示前から察知し、危機感を強めていた党本部は古屋圭司選対委員長が指揮を執り、本県関係国会議員に地元に張り付くよう指示。応援弁士も大量投入し、本部直轄の組織戦を試みた。


 だが「参院選からの2連敗は絶対に避ける」という党本部の思惑は崩れた。ある県議は「相手は指令系統が一本化され、同じ方向を向いていた。こちらよりも組織的。争点を原発に絞る戦略も巧みだ」と認める。


 森氏の得票は約46万5千票。米山氏との差は6万3千票余りに及んだ。建設業など業界団体を引き締め、組織を動員した従来型の「自民党選挙」の限界を指摘する声もある。


 自民党は支持層の約7割を固めたが、大票田の新潟市で約4万2千票、上越市では約9千票負けた。浮動票が多い都市部で水をあけられ、無党派層への浸透という課題が鮮明になった。


 自民党と同じく森氏を推薦した公明党も支持層の8割超をまとめたが、届かなかった。「無党派層や女性票を全く取り込めなかった」。県本部代表の志田邦男県議は敗因を分析する。


 「支持」をした連合新潟の動きも広がりを欠いた。米山氏を支援した一部加盟労組の反発を懸念し、約12万人の組織員を動員するほどの活動に踏み込めなかった。


 県連[自民党―投稿者補足]幹事長の柄沢正三県議は「敗因は原発問題だけではない。森氏の訴えが県内隅々まで十分に浸透しなかった」と話した。



同日付の新潟日報 知事選関連記事の見出し(投稿者による紹介)


再稼動「認められない」/米山次期知事/船問題 早期和解へ[1面]
新知事誕生/米山県政の進路<上>/未知数/野党系に衝撃と期待/自民との距離感が課題[1面]
米山氏に聞く/再稼動 きちんと検証を/自民とも協力関係築ける[2面]
再稼働きちんと検証 米山氏に聞く(新潟日報モア)
多様な課題伝えられず/新潟市長[2面]
原発への姿勢/現県政継承を/十日町市長[2面]
有権者「公約守って」/原発推進への変心 懸念/議会対応、指導力も注視[32面]
どうなる再稼動/新知事に米山さん/地元柏崎 期待と不安/「任期中は動かない」「進展遠のいた」/単一争点化を疑問視/柏崎市長 刈羽村長[33面]
知事選 単一争点化を疑問視/柏崎市長と刈羽村長(新潟日報モア)

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/767.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]県知事選挙/政党に割って入る「民意」(新潟日報/座標軸)
県知事選挙/政党に割って入る「民意」
新潟日報[5面 座標軸] 2016年10月19日
 
 
 与野党対立の構図になった県知事選は、事実上の野党統一候補の米山隆一さんが初当選した。2005年の衆院選出馬から11年、5度目の選挙でつかんだ勝利だ。


 自民党や日本維新の会、民進党などと政党をたどったことや、原発に関する発言の変遷に「一貫性がない」と批判も聞かれた。


 しかし、53万県民から信を得た重みは大きい。今後は、県政の場でどんな結果を出すのかが問われることになる。


 自民党推薦の森民夫さんが米山さんに追い上げられた選挙戦の終盤、反泉田裕彦知事派の自民党県議から「いま思えば、候補は泉田知事のままで良かった」との声が漏れた。


 県政与党の座にいられるなら、担ぐ候補は誰でもよかったのだろう。


 こんな考えでは原発再稼働を最大の争点にした野党の戦略に抗することができなかったのは当然だ。


 野党の要、民進党県連の知事選対応もちぐはぐだった。自主投票を決めた一方、最終盤に党代表の蓮舫氏が米山さんの応援に駆け付け、野党共闘に後乗りした格好となった。


 両党県連とも「負けない選挙」で自らの立ち位置を守ることにこだわって原発再稼働問題にふたをし、かえって傷を負ったのではないか。


 逆にこの二大勢力に割って入る市民の集まりが知事選で存在感を示した。民意といえば簡単だが、時々のテーマで結集し、ネットを活用して積極的に選挙に関与する。従来の無党派層とも違う。


 政党側の機能不全もあるが、与党対野党という単純な構図で選挙を読み解けない時代になった。

 (新発田支局長・横井裕) 



同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


柏崎原発再稼動で米山次期知事「県民投票も選択肢」[1面]
抜粋:世耕弘成経済産業相や東電ホールディングスの首脳から会談を求める声が出ていることについて、米山氏は「東電とも国とも、立場の違いを前提とした上で、話し合いの場を持ちたい」と述べ、就任後、早期に応じる考えを示した。
新知事誕生/米山県政の進路<中>/県議会/自公との論戦に注目/鍵握る民進会派の対応[1面]
知事選 市区町村別得票/明暗分けた都市部票/米山氏、新潟全8区で勝利[3面]
都市部票 明暗分ける 知事選 市区町村別得票(新潟日報モア)
再稼動反対 県民の思い/会見で新潟市長[3面]
次期知事と「会いたい」/世耕経産相[3面]
要旨:世耕弘成経済産業相による18日午前閣議後記者会見でのコメント。
「新知事の意見も踏まえて東電改革をしっかり進めたい。早いタイミングで日程が合えばい会いしたい」、「東電改革は県民にとって再稼動を考えるに当たり重要なポイントだ。検討を踏まえて、県民の関心事項にも対応したい」、「再稼動だけでなく新潟県はロシアとの経済協力を進める上でも地理的に密接不可分な地域だ」。
黒岩民進県連代表 辞任へ/知事選対応混乱で引責[3面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/768.html

[政治・選挙・NHK214] [2016新潟県知事選挙]黒岩民進県連代表 辞任へ(新潟日報)|民進県連代表辞任へ(朝日新聞)
黒岩民進県連代表 辞任へ
新潟日報[3面] 2016年10月19日
 
知事選対応混乱で引責
 
 知事選で推薦しなかった米山隆一氏を終盤に事実上支援するなどして混乱した民進党県連の一連の対応の責任を取り、同党県連代表黒岩宇洋衆院議員(50)=3区=が代表を辞任する見通しになったことが18日、分かった。同日、国会内で開いた県関係国会議員団の会合で辞意を示し、おおむね了承されたという。


 複数の関係者によると、会合では黒岩氏が知事選でのこれまでの対応と今後の総括の方向性などを説明。その上で「こういう結果になり、引かせてもらいたい」と辞意を表明した。後任を含めた今後の体制は、22日の県連常任幹事会などで詰める予定。


 同県連は当初、8月末の泉田裕彦知事の出馬撤回を受けて独自候補擁立を目指したが、選定作業が難航し断念。そのため、最大の支援団体である連合新潟は前長岡市長の森民夫氏の「支持」を決定。県連も特定の候補を推さない自主投票とすることを決めた。


 しかしその後、衆院新潟5区総支部長の米山氏が他の野党3党に推され、民進党を離党して出馬を表明。この際、黒岩氏は米山氏に出馬しないよう求めた経緯があるが、米山氏の健闘が伝わった選挙戦終盤に一転して応援に入り、米山氏の集会や街頭活動に参加した。


 この間、連合新潟は明確な説明をしない黒岩氏を強く非難。連合との一層の関係悪化と今後の衆院選などへの影響が危倶されるとして、県連内からも批判が強まっていた。


 黒岩氏は18日、新潟日報社の取材に「何も言っことはできない」とした。


 黒岩氏は4月の民進党県連結成に伴って代表に就いた。


 知事選への民進党の対応を巡っては他の野党からも「主体性がない」などと批判の声が上がっている。



民進県連代表辞任へ
朝日新聞[19面 新潟版] 2016年10月20日


黒岩氏 知事選の混乱引責


 知事選で自主投票を決めたにもかかわらず、初当選した医師の米山隆一氏を途中から実質的に支援した民進党県連の黒岩宇洋衆院議員=新潟3区=が混乱の責任を取り、県連代表を辞任する意向を固めたことが複数の県連関係者への取材で分かった。議員は続ける見通しだという。


 国会内で18日にあった県内選出国会議員の会合で、黒岩氏は「支援団体である連合新潟との関係を悪化させた責任を取って辞める」との趣旨の発言をしたという。民進党の支持母体である連合新潟は、対立侯補の森民夫氏を支持していた。


 県連は泉田裕彦知事の立侯補撤回後、独自候補の擁立を目指したが断念し、自主投票を決めた。その後、米山氏が、共産、社民、自由(当時は生活)の野党や市民団体などの要請を受け、民進党を離党して立候補した。県連は自主投票の決定を変えずに、選挙戦に入った。


 ところが、選挙戦中盤以降、報道各社の情勢調査などで米山、森両氏が拮抗していると伝えられると、黒岩氏ら県連幹部や蓮舫代表が米山氏の応援に入った。そのため、県連と連合新潟との関係が悪化していた。


 県連は22日の常任幹事会で、黒岩氏の辞任と新代表を決める見通しだという。 黒岩氏は19日、朝日新聞の取材に対し、「18日の会合では何も確定的な話は出ていない」と話した。




投稿者によるコメント


今回の知事選挙での民進党新潟県連の対応は、たしかにとても誉められたものではなかった。しかし、結果としてはこれでよかった。それは、最終的に理想的なかたちで野党共闘が実現したからだ。実は投稿者は、米山隆一氏が当選するとは予想していなかった。県連の国会議員5名中3名が選挙戦終盤に米山氏を応援する態度を明確にしたことで、それが次の選挙協力につながると思ってうれしかった。


その行動が「勝ち馬に乗った」とさんざんにいわれているが、米山氏が森民夫氏に追いつき接戦だという情勢を同じように把握していても、その馬に乗ろうとしなかった民進党新潟県連の国会議員だっているのだ。だから、民進党新潟県連というよりは黒岩宇洋、菊田真紀子、風間直樹という3名の国会議員によって代表される県連の人たちに感謝するとともに、森ゆうこ議員をはじめ共闘した野党、市民連合@新潟の人たちなどと一緒にこれからもがんばってくれるのであれば、ぜひとも応援したい。


今回の知事選は、泉田知事の出馬撤回の経緯をはじめ、今もって不可解なことが多い。黒岩氏たちがはじめから米山氏の側に立っていたのではないかと思われるフシもあるけれどそれはともかく。黒岩氏の代表辞任については、まだ確定したわけではないが、筋としては当然のことだろう。民進党新潟県連代表の後任に日本会議国会議員懇談会に所属しているような人が選ばれないことを、傍からは願うばかりだ。

http://www.asyura2.com/16/senkyo214/msg/697.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]新知事は周囲と協調を/田村秀氏(新潟日報)
日報政経懇/新潟/新知事は周囲と協調を/新潟大法学部教授 田村秀氏 
新潟日報[4面] 2016年10月20日
 
 
 新潟日報政経懇話会新潟会の10月例会が19日、新潟市中央区のホテルイタリア軒で開かれ、田村秀新潟大法学部教授が「新潟県の地方自治の現状と課題」と題し、講演した=写真[省略―投稿者注]=。3期12年の泉田県政は国や近隣県、市町村との連携が不十分だったとし、新知事の米山隆一氏に対し、「協調が大事だ。過去を反省しないと同じことの繰り返しになる」と提言した。


 要旨は次の通り。


 一、泉田県政は問題が多かった。県と新潟市が合併る「新潟州構想」を示したが、結局は連携すれば十分というだけの話だった。 一方、JR新潟駅の連続立体交差事業といった本来やるべき事業が遅れた。拠点性の低下につながっている。北陸新幹線の建設負担金の支払いも一時拒否した。自分の地域を何とかしたいのはみんなの思いだが、今の時代は協力しないとだめ。周辺県の悪評は新潟県民の想像以上だ。無用な対立を招いた責任は重大だ。


 一、トップの泉田裕彦氏の責任は大きいが、周囲もそれを許した。県職員は人事を握られ、ここ数年はトップに言われるがままではなかったか。日本海横断航路問題が出る前に、県議会もきちんと対峙すべきだった。経済界の提言やマスコミの追及も不十分だった。


 一、新潟だけでは生き残れない時代だ。国や近隣県、市町村との関係修復は急務だ。周辺との連携が必要な観光は裾野の広い産業であり、最終的にはインフラ整備にも関わる。新潟県の地盤沈下、埋没もいわれている。野党に推された新知事の米山氏には全国が注目している。県は原発だけでなく、さまざまなことに取り組む組織だ。協調を大事にしないといけない。




投稿者のコメント


田村秀新潟大法学部教授については、10月17日の新潟日報にも知事選挙開票結果を受けてのコメントが紹介されたばかりだ。
[2016新潟県知事選挙]問われる政策実現力|県政課題 原発問題に埋没|ほか(新潟日報)
そのなかで田村氏は、今回の知事選を柏崎刈羽原発再稼動問題の単一争点による劇場型の選挙ととらえ、当選した米山隆一氏について次のように厳しい評価をくだしていた。

米山氏は自民や維新といった政党を渡り歩いてきた。以前は原発を推進してきたのに、今回の出馬に当たってころっと考えを変えた。これは非常に怖いことだし、究極のポピュリズム。本来政治家は、何かを実現するための手段であるはずなのに、米山氏は政治家になることが目的になっていると見えてしまう。

それも一つの見識だろうと思いながら田村氏のfacebookをのぞいてみると、しかし失望させられた。新潟県知事選相手候補の森民夫氏を応援する立場を隠さないのはいっこうに構わない。しかし、そこには行政学・地方自治の専門家としての見識があまり感じられなかった。森民夫さんが孫と一緒にいる写真を田村氏がシェアするのはいい。しかし、金子めぐみ衆議院議員(新潟4区選出 自民党)のブログの文章を、その内容についての注釈や留保ぬきでシェアしてしまう学者とは、いったいどういう学者なのか。


新潟県庁に赤旗が翻る危機(金子めぐみ 2016年10月12日)
ちなみに金子氏は、日本会議国会議員懇談会に所属している。

なお投稿者は、たまたま田村秀氏の著書を1冊だけ読んだことがある。
『データの罠 世論はこうしてつくられる』(2004年 集英社新書)
データリテラシーについての啓蒙書で、ペラペラとページをめくるようにして目を通しただけだが、きちんと読めば勉強になりそうな本だ。
 
まとめ
 
新潟県知事選挙・県政についての田村秀氏の意見が最近連続して取り上げられたことからして、新潟日報の論調に田村氏が一定の影響力を有している可能性がある。田村氏は、地方自治・行政にかんする自分の立場に近い保守的な政治家を応援するにさいして、そうした保守政治家固有の一種の「ポピュリズム」についてはどうやら等閑に付している。新潟日報の論調を分析するうえで、このような田村氏の論説および政治的立場を参照することは、手頃なフィルターになるかもしれない。



同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


新知事誕生/米山県政の進路<下>/原発再稼動/明確な反対方針 核に/任期中に迫られる決断[1面]
泉田知事、最後の定例会見/12年間「幸せだった」[3面]
抜粋: 初当選した米山氏には「判断が子どもたちの将来に影響を与える。歴史で振り返ったときに評価されることをしてほしい」と期待を寄せた。また、「関係者から話をよく聞き、自分の意見を言うのは聞いた後にするというのが、組織運営で重要だ」とアドバイスを送った。
米山次期知事との面会「提案あれば否定はせず」/規制委員長[3面]
抜粋: 泉田知事は、国の原子力防災対策が不十分だとして田中氏[原子力規制委員会田中俊一委員長―投稿者補足]に面会を再三要望。断られ続けたが、2015年8月に全国知事会の危機管理・防災特別委員長の立場で面会が実現し、意見交換した。
民進・野田幹事長 連合会長らに謝罪/蓮舫代表の知事選応援[3面]
投票率53%/「棄権をしたくないのに」[5面 座標軸]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/769.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]知事選 選挙区別戦いの跡|衆院5区の知事選(新潟日報)
知事選 選挙区別戦いの跡
新潟日報[2面] 2016年10月21日


1区 無党派取り込み大差


 米山陣営は無党派層にアピールし、新潟市西区で約9千、東区で約8千、中央区で約7千票の差をつけた。終盤には民進党の蓮舫代表らを招いた街頭演説で耳目を引いた。森陣営には序盤から苦戦が伝えられ、与党議員らが組織票固めを急いだ。後半には2千人規模の集会を開き、篠田昭新潟市長も応援。だが支持層に危機感は浸透せず、参院選の自民候補より得票が大きく減った。


2区 「巻原発」の周辺も重視


 原発再稼動に否定的な考えを打ち出した米山陣営は、東京電力柏崎刈羽原発の立地地域に加え、かつて巻原発の建設計画で揺れた新潟市西蒲区周辺を重視。街頭活動や住宅訪問を展開した。一方、森陣営は県議らがフル稼動。県央地域では地場産業の振興を前面に出して企業や団体を回った。米山氏は柏崎市や刈羽村、佐渡市などで森氏に負けたが、全体では約3500票上回った。


3区 大票田の4市区押さえ


 米山氏が大票田の新発田と五泉、阿賀野、新潟市北区の4市区を押さえて競り勝った。無所属県議や市議らと協力、最終盤には民進の黒岩宇洋衆院議員も応援に立った。反TPPを訴え、農家票の獲得も図った。森氏は自民県議や首長との連携が奏功した村上市、阿賀町など6市町村で上回った。自民の斎藤洋明衆院議員も奔走、組織票は固めたが、都市部の浮動票獲得で及ばなかった。


4区 民進議員の支援で勢い


 米山氏の選対本部長、森裕子氏の地元・新潟市秋葉区や三条、加茂市で引き離した。民進系の地元県議がいち早く支援。終盤には民進の菊田真紀子衆院議員も街頭や集会に加わり、勢いづけた。森民夫氏は国定勇人三条市長ら首長の支援を受け、地場の企業回りもしたが、米山氏支援に動く経営者もおり、まとまりきれなかった。地元長岡エリア以外で広がりを欠いた。


5区 反原発で票掘り起こし


 米山氏は地元・魚沼市で集会を開くなどして中越出身をアピール。5区で衆院選に出た経験のある選対本部長の森裕子氏が別々に街宣し、票を掘り起こした。柏崎刈羽原発に近い地域のため、再稼動を認めない考えも強調した。森民夫氏は長岡市長としての実績をPR。自主投票だった民進の地元議員も応援したが、自民には「泉田派」の県議らもおり、最後まで一体感をつくれなかった。


6区 女性や高齢者層に訴え


 米山陣営は森裕子氏を支持する子育て中の女性たちが電話やネットで情報を拡散。原発に関心が高い女性や高齢者層を取り込み、上越市で参院選を上回る大差をつけた。民進は地元の風間直樹参院議員らが支援した。森陣営は病気療養中の県議の不在も響き、上越市中心部での運動が低迷。地域高規格道路の推進を訴えた糸魚川市では上回ったが、建設・物流業者以外への広がりを欠いた。




衆院5区の知事選
新潟日報[20面 長岡・県央版] 2016年10月21日
 
 16日に投開票された知事選は、長岡市を含む衆院5区エリアでも激しい戦いが繰り広げられた。5区の票を試算すると、医師の米山隆一さん(49)が8万4397票を得て、前長岡市長の森民夫さん(67)の 8万1434票を2963票上回った。米山陣営はきめ細かい街頭演説などで票を掘り起こし、森さんの地盤の長岡市(2、4区エリアを除く)で72O0票差に迫った。「5区で接戦となったことが勝敗に影響した」と両陣営は口をそろえる。


米山陣営 街宣重ね浸透
 
 米山陣営は選挙戦の終盤、大票田であり森民夫さんの強固な地盤がある長岡で票の掘り起こしに力を注いだ。各種調査で長岡での劣勢が分かると「ここでどれだけ追いつけるかが勝負のポイントになる」(幹部) と判断し、集中的に街頭演説を繰り返した。


 選対本部長で、7月の参院選では長岡で自民候補を上回る票を獲得した森裕子参院議員も終盤の13、14の両日、米山さんとは別に動き回って「ゲリラ街宣」し、1日数十カ所でマイクを握った。陣営は「有権者の反応は参院選のとき以上にいい」と無党派層への浸透に手応えをつかんだ。


 米山さんが地元魚沼市で行った街頭演説でも、女性支持者や米山さんの親族らが駆け付け、「魚沼から知事を出そう」とこれまでにない盛り上がりを見せた。


 参院選では森裕子さんを民進党や連合新潟も支援した。しかし、今回は民進党が自主投票とし、同党の佐藤伸広県議は森民夫さんを支援し、連合も「支持」した。それでも共産、自由(旧生活)、社民の3党と市民有志が参院選の共闘の枠組みを使いフル回転し勢いを付けた。


 陣営関係者は「参院選の勝利体験があり、最後まであきらめなかった。市長を5期も務めた相手候補に離されず、逆に差を詰めたことが大きい」と強調した。


森陣営 市長選絡み動き鈍く
 
 一方、森陣営は「地盤の長岡を含む5区エリアで米山さんに5万票は差を付け、他地域のマイナスを補う戦略」を描いていた。終盤の14日に長岡市で行った街頭演説には自民党県連会長の長島忠美衆院議員や前県連会長の星野伊佐夫県議らが並び、「ここは地元」と強調し組織を引き締めた。


 ただ、長岡市では同時に行われた市長選で保守系候補者3人が激しい戦いを繰り広げ、保守層が割れた。このため自民党の国会議員や県議が積極的に動けず、市議も混戦の市長選の支援に集中せざるを得なかった。陣営幹部は「保守系議員や団体が思うように動けなかった」と悔やむ。


 森民夫さんは市長を5期17年務め、知名度があるだけに長岡に入る回数は抑え、他地域の活動に力を注いだ。陣営関係者は「地元だから大丈夫という思いがあった」と油断があったことを認め「まさかここまで迫られるとは」と絶句した。


 長岡市以外では小千谷、魚沼、南魚沼の3市でそれぞれ約3千票、湯沢町で約500票米山さんに差を付けられ、長岡での「貯金」は尽きた。長岡市議の1人は「5区の自民党の立て直しが急務」と指摘した。




同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


衆院選小選挙区シミュレーション/知事選得票基に本社試算/全6区で野党"勝利"[2面]
再稼動問題「約束守る」/米山次期知事 野党3党を訪問[3面]
原発再稼働問題「約束守る」/米山次期知事 野党3党を訪問(新潟日報モア)
野田氏、連合新潟に釈明/斉藤会長 県連対応 疑問示す[3面]
民主野田氏、連合新潟に釈明(新潟日報モア)
連合会長が民進を批判/「自主投票のはず」[3面]
「連合の出先か」/小沢氏 苦言呈す[3面]
柏崎市長選/原発含め熱い論戦を期待[5面 座標軸]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/770.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]上越地域の知事選振り返る(新潟日報)
上越地域の知事選振り返る
新潟日報[19面 中越・上越版] 2016年10月22日


 16日投開票された知事選は、上越地域でも次期衆院選を意識した「与野党対決」が繰り広げられた。7月の参院選で自民公認候補が、野党統一候補に大差で敗れた票田の上越市では、その差が拡大。年明けの解散が取りざたされる中、与党側は危機感を強める。野党関係者は共闘に自信を深める一方、自主投票とした民進党に対する微妙な距離感も漂っている。


自民 解散見据え危機感


 選挙戦終盤の13日夜、糸魚川市で開かれた森民夫さん陣営の集会。自民・高鳥修一衆院議員が訴えた。「上越市の情勢がよくない。1人でもいいので(知り合いに)電話をかけてほしい」


 終了後、高鳥さんは「前回の負けを払拭しないといけないのに(感触が悪い)」と本音を漏らした。「前回」とは7月の参院選のこと。上越市は、市町村別では最多の約8千票差で自民公認候補が敗れた。知事選で高鳥さんは衆院6区エリアの選対本部長に就き、森さんに代わり連日選挙カーに乗車。自民県議も、森さんを支持した連合系労組を回り組織票獲得に動いた。上越、妙高、糸魚川の3市長は森さんを支持した。


 しかし、結果は上越市で約9千票差。参院選より差が開き、6区全体で約7800票差が付いた。


 選挙戦を通じてほころびは見えていた。森さんが上越地域に入る日は少なく、「候補者はどこにいるんだと有権者から怒られる」と陣営幹部はこぽした。党員の士気が上がらない中で組織引き締めに力が割かれ、旧市部を中心に無党派層対策が後手に回った。


 自民の楡井辰雄県議は「無党派層に支持を広げる戦略がなかった。組織戦だけでは勝てない。一からどぶ板をするしかない」と厳しい表情で語った。


野党各党 民進と微妙な距離感


 一方の米山隆一さんの陣営。参院選と同じく共産、社民両党の組織と安保法制反対の市民グループ、自由党の森裕子参院議員を支持する子育てママグループの4者が手を握った。


 10日に上越市の上越文化会館で開いた個人演説会には800人(主催者発表)を集めた。陣営の女性は「参院選で全力を出し切った感じだったママたちが、米山さん本人に会ってスイッチが入った」と話した。


 民進党6区総支部長の梅谷守元県議は森民夫さんを支持した連合に配慮し、表立った応援を控えた。党本部の応援が入った10日の演説会では壇上に立ったもののマイクは持たなかった。


 梅谷さんは取材に、「実質的には米山さんを支援していたが、連合の皆さんに当初から応援してもらっている事情もあった」と苦しさを打ち明ける。今後の野党共闘については「党本部や県連がどう判断するかだが、私としては共闘すべきだろうと思っている」と話した。


 ただ、米山陣営の一部からは選挙期間中、「民進は何やってるんだ」という批判的な声も漏れていた。陣営の中心メンバーは「民進と連合以外の(関係者の)絆が深まった感がある。衆院選に向けては、まず民進と連合の関係がどうなるかだ」と強調した。




同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


知事選の裏側[2-3面]
[主張]米山陣営 民進・連合外れ明確化/森陣営 67の公約 訴え散漫に
[戦術]野党共闘 進化が奏功/森陣営は方針定まらず
[手段]ネット戦略 米山陣営先行/ビラなど配布物 森陣営"弾切れ"
[泉田知事]与野党、取り込みへ攻防/本人は動かず
原発争点なら自民敗北/次期衆院選で小泉元首相/新潟、鹿児島両県知事選「うねり出てきた」[2面]
再稼動へ信頼回復強調/電事連会長 米山氏当選受け見解[2面]
原子力は「つなぎ」/環境相が認識[2面]
米山新県政へ/希望ある長期展望を/オピニオン 報道部県政キャップ 小原広紀[20面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/771.html

[地域13] [2016新潟県知事選挙]黒岩氏辞任 議論できず(新潟日報)
黒岩氏辞任 議論できず
新潟日報[3面] 2016年10月23日


 民進党県連は22日、新潟市中央区のホテルで常任幹事会を開いた。知事選の対応を検証したが、米山隆一氏が離党して出馬した経緯や、自主投票を決めながら終盤に県連代表の黒岩宇洋衆院議員(3区)が米山氏を支援し混乱を招いたことなどを巡り、議論が紛糾。結論は持ち越しとなった。予定していた黒岩氏の代表辞任も先送りとなった。


民進県連幹事会 知事選検証で紛糾


 会合は冒頭以外、非公開。黒岩氏は「混乱を来した責任を痛感している。一定のけじめをつけさせてもらいたい」と述べ、辞任の意向を示した。


 出席者によると、会合では黒岩氏の引責辞任も議題になる予定だったが、その前の知事選の検証で意見が相次ぎ、議論に入れなかった。自主投票を決めた責任者の黒岩氏自らが米山氏を支援した行動などに批判や疑問の声が出たという。
 
 終了後の記者会見で黒岩氏は「多くの意見が出て時間が足りなかった。検証の場を設け、できるだけ早く総括をしたい」と述べた。進退は「総括が終わってから」と言及を避けた。


 同県連は泉田裕彦知事の不出馬表明後、独自候補の擁立を模索したが断念。これを受け支援団体の連合新潟は森民夫氏の「支持」を決めたが、民進党衆院5区総支部長だった米山氏が他の野党3党に推され、離党して出馬した。連合新潟は県連の一連の対応に対し、経緯の説明を求めている。


 会合では7月の参院選で公選法違反(法定外文書頒布)の罪に問われ、罰金30万円の略式命令が確定、公民権停止となった前参院議員の田中直紀氏から9月20日付で本部に離党届が出され、受理されたことが報告された。


場当たり対応に強い批判


 再スタートを切るはずだった場は、混乱に拍車を掛けるだけで終わった。22日の常任幹事会で知事選の総括も、黒岩宇洋代表の辞任も決められなかった民進党県連。知事選での場当たり的な対応への批判は県連だけでなく党全体にも及んでおり、状況は深刻だ。


 「調整力、指導力不足を申し訳なく思っている」。黒岩代表の反省の弁から始まった幹事会は、執行部への批判や疑問が続き、2時間半にも及んだ。


 参加者が求めたのは、独自候補の擁立断念や党衆院5区総支部長だった米山隆一氏の出馬に至る経過説明だ。「どういう判断で独自候補をあきらめたのか」「なぜ米山氏が他党に引き抜かれる形になったのか」…。しかし、黒岩代表や大渕健幹事長から明確な答弁はなく、幹事が声を荒らげる場面もあったという。


 一様に問題視したのは、執行部の説明不足。国会議員からさえ「詳細を聞いておらず、分からない部分が多かった」との声が上がった。知事選が終わり、これまでの不満が爆発した形といえる。


 辞意を示している黒岩代表の後任の議論にすら入れなかったことで、今後の態勢づくりのめども立たない。連合新潟が求めているこれまでの経緯の説明にも入れない事態になった。


 早期の衆院解散がささやかれる中、新潟日報社の試算では、知事選の得票を当てはめると衆院の全6小選挙区で野党側が勝利する。とはいえ、それは野党共闘が前提だ。衆院選では現職4人を抱える民進党が軸となるが、態勢が固まらなければ共闘の協議にも入れない。「決められない党」は党勢回復への道を自ら遠ざけかねない。




同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


新潟ショック/解散風弱まった転換点/永田町天地人 本紙客員論説委員 後藤謙次[2面]
泉田氏後援会 解散へ/新潟で最後の総会「サポートで前進、感謝」[3面]
抜粋:「いずみだ裕彦後援会」(会長・福田勝之新潟商工会議所会頭)/会長は上原明氏、敦井栄一氏、福田氏と、歴代の新潟商議所会頭が務めてきた。/泉田知事の任期は24日まで。
志田代表が続投「無党派重視を」/公明党県本部大会[3面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/772.html

[政治・選挙・NHK214] 輸入米SBS/価格決定過程に不透明さ/既得権益の温床に(新潟日報)
輸入米SBS/価格決定過程に不透明さ/既得権益の温床に
新潟日報[4面] 2016年10月23日


 環太平洋連携協定(TPP) に関する国会審議で、事業者間の不透明な金銭のやりとりがあったとして輸入米の売買同時入札(SBS)が問題になっている。米価に影響はないのか。入札はどのような仕組みで、何が本質的な問題なの


納税者が犠牲の懸念も


 日本の米の関税は1キロ当たり341円の従量税。極めて高いため、民間の輸入はほとんどない。一方、政府は毎年約77万トンを無税で輸入している。ウルグアイ・ラウンドの合意時に対外的に約束したミニマムアクセス(最低輸入量)を埋めるためだ。大半は加工用で、政府が買い付けた後、国内の卸業者に売り渡す際に、マークアップ(輸入差益)を上乗せする。


 安い輸入価格に「げた」を履かせて値段を高くするのは、国産米への影響を抑えると同時に、その収入を稲作農家の支援策の財源にできるからだ。マークアップは実質的に関税と同様の役割を果たしている。


■商社と卸がペア


 政府が輸入する米のうち、主食用はSBS(英語の頭文字)と呼ばれる特殊な方式で調達している。米を輸入する商社は国内の卸業者とペアを組んで入札する。
 
 形式上は国が仲介するが、実質的な直接取引で、実需に見合って柔軟に輸入するのが狙いだ。国はマークアップの幅がもっとも大きい業者の組み合わせから順次、落札していく。上限は年間10万トンだが、TPPが発効すれば米国産とオーストラリア産に対して合計で最大約7万8千トンの輸入枠を追加することが決まっている。


 SBSだと、政府は在庫を抱える必要がなく、買い取った後の値下がりリスクもない。米国の生産者や集荷業者も、日本の商社や卸業者も損をしない。運用が適正なら、「三方得」の仕組みだ。


■米価影響に不安


 しかし、輸入商社が卸業者に「調整金」という名目で、リベートを渡していたことが表面化。「調整金」を受け取った卸業者がその分だけ値引き販売して安い輸入米が流通している疑惑が生じた。農林水産省は10月7日に、一部の業者間で金銭のやりとりがあったと認める調査を発表したが、「国産米の価格に影響はなかった」と説明した。野党は「調査がずさんだ」と納得していない。


 さらに別の疑念もある。本来、国に納入されるはずのマークアップの一部が「調整金」の分だけ圧縮されている疑惑だ。この場目の犠牲者は、直接の痛みを感じない納税者全体だ。この点について国会で問われた山本有二農相は「可能性はある」と歯切れが悪い。


 SBSの最大の闇は、政府の買い入れ予定価格が入札時期や品種ごとに複雑に設定され、事後的にも一切公表されていないことだ。このため、「入札」でありながら、価格の決まり方は不透明だ。買い入れ価格が割高だと、その超過利益を日米双方の流通業者の間で山分けできる。つまり、必要以上に高い「げた」が既得権益となり、「調整金」の原資になっている可能性があるのだ。


 他にもミニマムアクセスには謎が多い。政府は「偶然だ」と説明するが、政府が輸入する米のうち米国産の比率が毎年ほぽ半分を占め安定している。既得権益を守る密約がありうるのだ。


 こうした疑惑を解明するには、最低限、SBSに参加した業者間の金銭授受に関する調査をやり直すことが不可欠だ。


TPPの理念に逆行


解説 国が直接輸出入する国家貿易は、最も強力で古典的な管理貿易の手法だ。日本の米市場は形式上、関税を支払えば輸入できる仕組みになっているが、実態は輸入のほぽ全量を国が管理している。しかも環太平洋連携協定(TPP)で、売買同時入札(SBS)を増枠する。その内容も、対日輸出実績がある米国とオーストラリアだけを優遇する露骨な既得権益保護であり、貿易の自由化とはまったく逆の先祖返りだ。


 日本の米の輸入手続きだけではない。TPPの条文のうち、関税の撤廃・削減に関する記述はごくわずかで、大半は投資や知的財産の保護、政府調達、金融取引などに関する約束だ。ルールでがんじがらめにされたTPPを自由貿易協定だと考えるのは、まったくの幻想だ。




関連記事:


輸入米で不透明取引の疑い TPP国会の火種に(日本経済新聞 2016年09月16日)
[論説]臨時国会召集 SBS問題 徹底究明を(日本農業新聞 2016年09月26日)
SBS取引調査結果 調整金 業者の4割 国産影響認めず 農水省(日本農業新聞 2016年10月07日)
[論説]SBS米調査 全く疑問に答えてない(日本農業新聞 2016年10月08日)
[コラム]SBS米は闇だらけ(農業協同組合新聞 2016年10月11日)
農産物の輸入制度を透明に(日本経済新聞 2016年10月13日)
新潟県知事選 「農の民意」受け止めよ(日本農業新聞 2016年10月18日)
<SBS問題>国会論戦振り返り論点整理(河北新報 2016年10月20日)
<TPP>東北の農業関係者 政府に不信増大(河北新報 2016年10月23日)




投稿者によるコメント


これだけの「解説」の書ける新聞がどれくらいあるだろう。
同じ新潟日報でも数日前の社説ではそこまで踏み込んでいない。


TPP審議 批准急ぐ必要は全くない(新潟日報モア 2016年10月19日)

http://www.asyura2.com/16/senkyo214/msg/823.html

[政治・選挙・NHK214] 輸入米SBS/価格決定過程に不透明さ/既得権益の温床に(新潟日報) 烏滸の者
1. 烏滸の者[13] iUef9YLMjtI 2016年10月24日 04:55:41 : Oozg29Kcag : Qiiwq5NaXgQ[259]
前文(最初の段落)のおわり部分に訂正:

誤  何が本質的な問題なの
正  何が本質的な問題なのか。

失礼しました。

投稿者
http://www.asyura2.com/16/senkyo214/msg/823.html#c1

[地域13] [新潟]黒岩氏辞任/民進県連代表代行に鷲尾氏|民進県連 新体制に(新潟日報)
黒岩氏辞任/民進県連代表代行に鷲尾氏
新潟日報[1面] 2016年10月25日


民進県連「米山県政支える」


 民進党県連は24日、新潟市中央区のホテルで緊急の常任幹事会を開き、代表の黒岩宇洋衆院議員(3区)の辞任を承認した。米山隆一氏が当選した16日の知事選で県連が自主投票とした経緯などを巡り、混乱を招いた責任を取った。代表は当面空席とし、鷲尾英一郎衆院議員(比例北陸信越)が代表代行に就くことも決定。鷲尾氏は、25日から始まる米山県政を支援する方針を示した。


 知事選で民進党県連は独自候補擁立を断念し自主投票を決めたが、その後、他の野党3党に推された米山氏が民進党を離党して出馬した。県連は22日に知事選を総括する常任幹事会を開いたが、選挙戦終盤に米山氏を支援した黒岩氏の行動や一連の対応に批判や不満が相次ぎ、紛糾したまま終わっていた。


 仕切り直しのこの日は、黒岩氏が指名した鷲尾氏を代表代行として承認し、黒岩氏の辞任届を受理。新代表は来春に予定する定期大会まで置かず、鷲尾氏がトップとして運営に当たる。


 終了後の記者会見で黒岩氏は「県連の方向性をあいまいにした。独自候補擁立を決めながら断念となり、離党者も出した。私の指導力、調整力の不足だった」と辞任理由を説明した。


 一方、鷲尾氏は米山県政との関わり方について「米山氏は仲間で、党の国会議員や本部の幹部も選挙に入った。すべてオーケーという短絡的なものではないが、しっかり支える立場で関わる」とし、県政与党の立ち位置で支援する考えを示した。


 さらに「知事選の対応で県民からの信用が失墜した。もう一度信頼されるよう、県民の心をつかめる活動を徹底してやっていきたい」と強調。米山氏が慎重な姿勢を取る東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題に関しては「新知事の方向性をしっかり尊重したい」とした。


 鷲尾氏は2005年衆院選で初当選し4期目。東大卒。




民進県連 新体制に
新潟日報[3面] 2016年10月25日


大きな痛手 課題山積/党内に亀裂/連合との関係修復


 知事選の対応を巡る黒岩宇洋代表の辞任は24日の常任幹事会で承認され、民進党県連の新体制は3日越しでようやく整った。代表代行に就いた鷲尾英一郎氏は失った党の信頼回復に取り組んでいくことになるが、この間の混乱で生じたダメージは大きい。早期の衆院選も取り沙汰される中、県連内に生じた亀裂や最大の支援団体である連合新潟との関係回復など、待ち構える課題は多い。


 22日にあった幹事会では、独自候補断念や米山隆一氏出馬を巡る経緯の説明不足を指摘する声が続出。県連内の亀裂を露呈し、予定していた黒岩氏の辞任は議論にも入れなかった。24日は総括の議論をいったん棚上げし、新体制づくりを先行。米山知事着任前に何とか体裁を整えた形だ。


 鷲尾代表代行がまず直面するのは、連合新潟との関係修復だ。森民夫氏を支持した連合新潟は県連の一連の対応に強い不信感を持っており、党本部の野田佳彦幹事長が自ら釈明する事態にもなっている。


 衆院選に向けては、他の野党3党との共闘が成立するかも鍵となる。参院選、知事選と野党側が勝利したが、いずれも民進党の候補ではなかった。衆院選では現職候補を抱えており、3党にどのような姿勢を取るかも注目される。


 米山県政へのスタンスも課題だ。東京電力柏崎刈羽原発に対する姿勢は、2030年代の原発ゼロを目指す同党と「現段階で再稼動は認められない」とする米山氏とでは異なる部分がある。鷲尾氏は会見で、地元の了解を重視する点では同じだとして「(米山氏が)示した方向性は尊重したい」と強調。その上で「県民の選択で選ばれた。事実上支えていく立場で関わっていかないといけない」と表明した。ただ、党内には離党した米山氏へのわだかまりも残っており、先行きは不透明さも残る。


 党勢回復は、所属国会議員で最年少39歳の鷲尾氏に託された。「原点に立ち返り『県民党』で再出発する」と強調する新リーダーの指導力が問われる。




同日付の新潟日報 関連記事(投稿者による紹介)


泉田知事が退任/「愛される県庁づくりを」[2面]
品田氏5選出馬の意向/刈羽町長選/後援会相談後に表明[2面]
二階幹事長に謝意/自民県連幹部・森氏/党本部で面会[3面]
柏崎原発運転差し止め訴訟で第17回口頭弁論[29面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/773.html

[国際15] 欧米の市民社会は自由貿易にNOと言う―TPP、TTIPと私たちの暮らし―(内田聖子ほか座談会『世界』)
座談会 欧米の市民社会は自由貿易にNOと言う――TTP、TTIPと私たちの暮らし――
メリンダ・セント・ルイス 
ローラ・ブリュッヘ 
内田聖子(司会) 
『世界』 2016年10月号 岩波書店(137-145ページ)
 
 
内田 メリンダさんはアメリカのNGOパブリック・シチズンの貿易問題担当として、TPPやTTIP(環大西洋貿易・投資パートナーシップ協定)の問題を日本の私たちや他国のNGO、労働組合、消費者団体とともに5年以上もウォッチし、交渉会合にも毎回のように足を運んでおられます。またローラさんはベルギーに拠点を置き、多国籍企業の動きを監視するCEOという著名なNGOで、TTIPに反対する多様な層の運動体をまとめ、巨大な運動に発展させてこられました。お二人は米国とEUにおける自由貿易協定に反対する市民社会の運動のトップランナーです。


 日本でも9月の臨時国会で、4月に頓挫したTPP協定の批准審議が再開されるわけですが、マスメディアなどのTPPへの関心は欧米市民社会ほど高まっていません。欧米では確実に、自由貿易が雇用や地域経済を壊し、食の安心・安全や公共サービスなどでの規制を緩和させ、さらに環境、人権、自治、民主主義という価値までも危機にさらすという認識の拡がりのもとで反対が強まっています。特に米国での反対運動は、大統領選も含めこの5年で最頂点に達している。今日はお二人の経験から自由貿易が私たちにもたらす弊害や運動の展望について議論できればと思っています。まず、それぞれの現場でのTPPやTTIPの情勢をお話しいただけますか?


 民主主義に反した秘密協定 


メリンダ いまTPPは、米国で最大の政治課題となっています。大統領選の候補者であるヒラリー・クリントンもドナルド・トランプもTPPに反対しています。クリントンと闘った民主党のバーニー・サンダースも「TPPは打倒されなければならない」と述べていました。その背景には、労働組合や環境団体などがTPP反対運動を広げてきたこともありますが、これまで民主党と共和党の間にあった自由貿易推進というコンセンサスに対して、超党派議員による反乱という事態が起きているのです。


 世論調査を見ても、TPPは支持政党を超えた選挙の大きな争点であることがうかがえます。今年2月の調査で、「あなたはTPPをやめ、米国の雇用を第一にする政策を公約としている大統領候補に投票しますか」という問いに対して54%の人が「投票する」と答えました。 「わからない」が29%、「投票しない」 は17%しかありません。興味深いのはもともと自由貿易推進である共和党支持者の64%もの人がTPP反対候補に投票すると答えていることです。


 なぜこのような反乱が起きているのでしょうか。まずは、その秘密主義です。TPPは史上もっとも秘密性の高い貿易交渉です。国民には交渉過程が完全に秘密である一方で、企業側の影響力が非常に大きい。米国通商代表部(USTR)には「貿易アドバイザー」という制度があり、500人以上いるアドバイザーの9割は大企業あるいは業界団体の代表です。シェブロンの代表やハリバートン、ゼネラル・エレクトリックなどの企業関係者などが多数入っています。彼らは秘密の協定文書を自由に見ることができましたし、条文の提案を政府にすることも可能で、実際に文言を作成することもありました。このような非民主的な秘密主義には米国議会でも怒りが噴出していました。交渉が妥結し昨年11月に条文が公開されましたが、交渉過程を記した文書は協定発効後も4年間は非公開という覚書を各国は交わしています。日本でも4月の国会で「黒塗り文書」が出されたと聞きますが、それもこうした約束義務があるからです。このようにTPPは妥結後も各国政府を説明責任から "擁護" しているのです。


 その結果、表向きは「自由貿易」協定ですが、実際には投資家や企業にとっての新しい権利・権益の拡大となっています。協定の全30章のうち、貿易に関する章はわずか6章だけ。残りは非貿易、つまり、食の安全、医薬品アクセス、環境・気候変動問題、金融規制、人権などの分野で企業の権力を拡大し固定するルールです。企業が政府を提訴できるISDS条項も含まれています。


口ーラ TTIPとは米国とEUとの間の自由貿易交渉で、TPPと非常によく似ています。交渉は2013年7月から約3年間続いていますが、幸いなことにあまりうまくいっていません。


 TTIPの目的も、実は貿易ではありません。EUと米国はすでにモノの貿易では多くの関税が撤廃されていて、重要なことはEUと米国との間で、同じような法律が制定されたり、規制の水準を同じにしていくことなのです。


 TTIPについての大きな論点は、TPPと同様に、民主主義の問題です。TTIPも秘密交渉で、透明性が完全に欠如しています。これまでEU市民や各国議員がさんざん圧力をかけてきた結果、ようやく各国議会での交渉文書の一部閲覧という成果を獲得できましたが、それでもまだ出てくる情報は限られています。たとえば先日、私たちは「透明性に関するEU指令」という規定に基づき、米国のたばこ企業のフィリップ・モリス社と欧州委員会の間で交わされた文書の公開請求をしましたが、真っ黒塗りです。


 フィリップ・モリス社は、各国の政府が国民の健康を守るために行なう規制措置に対して訴訟を起こすことが大好きな会社です。オーストラリアもISDSを使って提訴されたことがありました。だから私たちも同社の関連文書を要求したわけですが、黒塗り文書を出してきた欧州委員会の回答は、「公文書の提供は確かに義務づけられている。透明性は確かに大事である。しかしこのような貿易交渉においてはビジネスの利益が優先される」というものでした。ここにTTIPの本質がまさに表れています。要するに、環境や公共の利益よりも、貿易、経済、ビジネスが優先されるのです。ここに市民社会は猛烈に反発しています。


 期待できない経済効果 


内田 米国でTPPが支持されていない最大の理由は、雇用問題ですね。労働組合も中小企業経営者も労働者も、TPPで雇用が台無しになり家族を守れない、とのスローガンを掲げています。日本ではTPPでGDPが13.6%も増加し、80万人もの雇用が増えると夢のような試算が政府から出されています。


メリンダ 米国には過去の自由貿易で雇用が失われたという「負の経験」があり、自由貿易は経済成長や雇用増加にはつながらないということが人びとの間で十分実感されています。


 1992年に米国、カナダ、メキシコで締結された北米自由貿易協定(NAFTA)で米国の雇用、特に製造業は大きな打撃を受けました。政府はNAFTAで雇用は増える」と大宣伝していましたが、実際には2004年までに100万人もの雇用が失われました。別の統計では4人に1人の製造業の雇用が失われ、5万7000もの工場が国外に出ていきました。賃金の低いサービス業、特に大学の学位を持たない米国在住者の60%以上の人たちにも影響しました。結果的に米国内の賃金は引き下がり、労働組合が団体交渉する力も弱められてしまいました。政府の調査では、NAFTA以降、米国の製造業とサービス輸出の成長率は低下しています。「NAFTAでモノの貿易黒字が増える」といわれたのですが、結果は正反対で、570億ドルもの貿易赤字となりました。また2013年に韓国と結んだ米韓FTAの結果を見ても、米国から韓国への物品輸出は約9%低下し、米国には285億ドルの貿易赤字が生まれるというように、決して米国に経済利益をもたらしてはいません。


 これらの貿易政策の結果、過去20年から30年の間で、米国の格差は徹底的に増大しました。NAFTA以降、もっとも裕福な10%が得た国民所得の割合は24%上昇し、上位1%によって得られた割合は58%上昇しています。こうした実績は、何よりも説得力を持っています。だからこそ、多くの人は現在のTPPに反対をしているのです。


内田 2016年5月、米国政府の国際貿易委員会(ITC)は、TPPによる経済効果はほとんどないという報告書を出し、私も大きな衝撃を受けました。本来は「バラ色の展望」を提示するべき政府試算が、実は大したことはなかった。


メリンダ その通りです。政府もTPPについては、これまでのような楽観的見通しはさすがに出せなかったのでしょう。 ITC報告によればTPPでの経済成長は15年間でGDPがわずか0.23%増というものです。ほとんどゼロです。さらに報告では米国の農業、製造業、サ ービス業など55セクターのうち、36セクターで収支が悪化し、2032年ま
でに米国の総貿易赤字を217億ドル増やすとも試算しています。総論的にいえばTPPに入ることの経済的効果はほとんどなし、といえます。これによって反対運動も大きな根拠を得ましたし、TPPでの経済効果を信じていた人たちの期待も瓦解したといっていいでしょう。


 グローバルに進む規制緩和 


内田 TPPやTTIPの本質である「ルール部分」はどうでしょうか。すでに関税の問題ではなく、ルールの統一がグローバルにされていくことの問題点は欧米では共通の問題意識となっていると思いますが。


口ーラ TTIP交渉では、「規制の協力」という分野が設けられ、その中で米国とョーロッパの法律やルールの統一化が目指されています。しかしこれは法の自主性という意味でも本当に大問題で、 簡単にいえば、例えばヨーロッパで新しい法律を導入したい場合、欧州議会に提出する前に米国政府に相談して、貿易に悪影響を与えないかどうか意見をうかがわないといけないということです。大企業の意向が各国の法整備に大きな影響力を持つことになってしまいます。


 EU市民社会の中で規制の統一について懸念されているテーマは、たとえば化学薬品や化粧品です。ヨーロッパでは多くの国が「安全でない商品は市場に出さない」という原則のもとで規制をしていますが、米国の規制は明らかに弱い。ヨーロッパで化粧品に入れることを禁止している化学物質は約1000ほどありますが、米国ではわずか10ほどです。しかし「規制の協力」といって米国基準に緩和されてしまえば私たちの身近なところでこうした商品が出回るようになってしまいます。協定を批准してただちに規制緩和されることはなくても、10年、20年と経つ間にどんどん基準は引き下げられていくでしょう。


 食の安心・安全についての関心も非常に高く、牛肉の成長ホルモン、遺伝子組み換え作物、塩素処理された鶏などにEUは反対してきました。これはEUの選択です。しかし米国では何の問題もありません。それで米国とEUの間ではこれまでもWTOの紛争も多く起こってきました。このことがTTIPでも問題となることはわかっていますから、多くの農業者や消費者が反対をしています。さらに殺虫剤や環境ホルモンなどの問題です。「危険なものは域内に入れない」というEUが重視してきた原則が、「規制の協力」という名の下で台無しにさせられるかもしれません。実際に、米国の企業や業界団体からはこうした規制に対する攻撃があるわけです。


メリンダ 米国でも食の安全については心配されています。TPPは米国の安全基準を満たさない魚介類、肉、鶏肉の輸入を強いるものです。たとえばベトナムの魚介類から高い濃度の汚染が発見されたこともありますし、マレーシアのエビは最近禁止された抗生物質が高いレベルで発見されたため、輸入が差し止められたのです。これらがTPPで大量に入ってくる危険があります。米国食料医薬品管理局(FDA)は1%に満たない程度の魚介類しか検査していません。


 TPP協定文を読むとよくわかりますが、TPPは遺伝子組み換えなどのバイオテクノロジーを使った農産品を新しい貿易ルールの対象にすることを明記した初めての貿易協定です。米国のアグリビジネスやその意向を受けた政府は、長年、他国の遺伝子組み換え作物への規制や監視体制を「貿易障壁」として攻撃してきました。TPP協定にはこうした各国のルールに対してモンサントやカーギルなどの企業を含む利害関係者が異議申し立てできる規定がありますし、ともすれば食品表示も「貿易違反」として抗議されかねない内容も含まれています。いま米国では有機農産物を求める消費者や有機農業者たちが遺伝子組み換え商品への表示義務制度をつくるよう、州レベルで激しくたたかっています。こうした人たちはTPPでこうした努力も後退してしまうことを危倶し、TPP反対運動にも参加してきています。


 投資家を守るISDS 


内田 TPPにもTTIPにも含まれるしくみとして、投資家対国家の紛争解決メカニズム(ISDS)があります。企業や投資家が、相手国の規制強化や政策変更に対して「当初予定していた利益を損ねた」として多額の賠償金を求め提訴できる制度です。これが欧米市民社会の自由貿易協定反対の最大の焦点だと思いますし、しかもISDSによって環境や人権、公共サービス、そして自治や主権が脅かされるという危機感がかなり共有されていると思っています。


メリンダ ISDSはTPPだけでなく多くの貿易・投資協定に含まれていますが、外国企業や投資家に、相手国の国民や国内企業を超える幅広い権利を与えるものです。国内の法制度や裁判を飛び越え、私的な仲裁廷に提訴することができます。仲裁人は3名いますが、通常は企業の弁護士を務めているような人たちです。裁定は一度限りで、控訴はできません。また投資家は実際に損なわれた利益に限らず、「将来に予測される利益」に対して訴えることが可能です。さらに政府が負ければ賠償金は国民の税金から支払われるわけで、どれをとっても私たちにとって有利なしくみではありません。近年、ISDS訴訟の数は急増していて、1987年以降、累計696件の訴訟があります。たとえば米国の天然ガスの会社ローンパイン社がカナダ政府を訴えたケースは、ケベック州が同社に、環境影響評価を行なう間、開発をしないよう求めたからです。それで利益を失ったとして、2億5000万ドルの賠償請求をして現在も係争中です。米国シェブロン社は、エクアドル政府を訴えました。同社によるアマゾン地域の深刻な汚染のせいで健康被害を受けたと地域住民が告発し、エクアドル政府は操業停止を命じたのですが、それに対してシェブロンは訴訟を起こしたのです。


口ーラ TTIPにもISDSは含まれており、非民主的なしくみだとヨーロッパでは強く非難されています。欧州委員会は、TTIP交渉に際して、ISDSに対する市民からの非難があまりにも強かったために、2014年夏にISDSの賛否を問う公の意見聴取をインターネツトで行ないました。すると回答者15万人のうち97%が「反対」と答えたのです。学会やビジネス界からも反対の声が上がりました。それを受けて欧州委員会は、2015年末にISDSの改革案として投資裁判制度(ICS)を米国に提案しました。ここでは多少の改善が見られますし、また公開聴取の結果という市民社会の声がもたらした勝利ではありますが、私たちが望むような改革案ではありません。専門家もICSはまったく不十分と評価しています。


内田 日本政府はISDSに関して「日本が提訴されることはない」と言っています。最近になって少し考えを変え訴訟された場合の対策を考え始めたようですが、その危機感は欧米の政府や市民社会ほどではありません。


メリンダ それはあまりに楽観的です。米国ではTPPが発効すればISDSで提訴されるという危機感が強くなっています。もちろん米国の大企業は最も頻繁にISDS提訴を主に途上国政府にしてきたのですが、最近では先進国政府が訴えられるケースも増加しています。


 最近の事例でいえば2016年1月、米国はカナダの企業にISDSを使って提訴されました。米国からカナダまでを結ぶパイプライン計画がもともとあったのですが、環境団体や先住民族の運動は、環境を破壊する計画は撤回せよと求めてきました。2015年11月、オバマ大統領は計画の認可を取り消す判断をしました。これは私たち市民社会にとっては歴史的な勝利です。ところが計画に投資していたトランス・カナダ社は、オバマ大統領の判断は「恣意的」であるとして、NAFTAのISDS条項を使って150億ドルの賠償請求をしました。実際の投資額は5分の1の30億ドルしかないにもかかわらず、です。でも考えてみてください。国民がある計画に反対をして、その意思に答えて政策を変更する。これはまさに民主主義です。なぜそれに150億ドルの賠償請求がされなければいけないのでしょう? もしその主張が通れば、環境保護は実現しません。環境ゃコミュニティに害があっても、国際条約に従って汚染を禁止しようとしても、ISDSで政府が訴えられてしまう。汚染をする側が多額の賠償金を得るという奇妙な話になるわけです。TPPが発効すれば訴訟はますます増えるでしょうし、米国企業が日本の自治体や政府、法律を訴える危険性があります。逆に日本の企業が他国政府を訴えるというケースも増えるでしょう。日本はISDSで訴えられることを真剣に考えるべきです。


口ーラ 2011年の福島原発事故はヨーロッパにも大きな衝撃を与えました。事故直後、ドイツ政府は脱原発政策に切り替えました。日本ではあまり知られていないかもしれませんが、このドイツの政策変更に対して、スウェーデンのヴァッテンフォール社はISDSを使いドイツ政府を提訴しています。同社はドイツで原発プラントを開発している会社ですが、脱原発になれば利益が得られないということが理由です。これは日本にとっても大きな示唆ではないでしょうか。


 多様な人たちの参加 


内田 環境や人権、自治などに対する脅威としての自由貿易協定に、それぞれの現場ではどのような運動が展開されているのでしょうか。


メリンダ 日本では環境問題からのTPP反対は少ないと聞いていますが、米国では環境の視点からの自由貿易批判は非常に強いのです。環境保護や気候変動対策は、国際社会、特に先進国にとっては共通の課題です。しかしTPP協定文に「気候変動」という文言は1回も出てきません。これに対してシエラ・クラブや天然資源保護協会など多くの環境団体は厳しく批判しています。また協定文には「環境」に関する章はありますが、動植物の違法取引や、違法な漁業とフカヒレ採取に対してはとても緩い義務規定しかありません。ISDSによって環境政策が攻撃されるという脅威もあります。


 医薬品についての懸念もあります。TPPで医薬品の独占特許延長などがされてしまえば、医薬品大企業には利益が舞い込みますが、医薬品価格は高くなり、ジェネリック医薬品へのアクセスも困難になります。途上国の医薬品コストは上昇します。「国境なき医師団」はTPPを「途上国の医薬品ァクセスにとって最悪の貿易協定」と批判しています。


 人権という観点からの批判もあります。6500ページもある協定文の中に、「人権」という単語は1回も出てこないのです。米国には人権を守っていない国とは経済的取引をしないという前提があるのですが、TPP参加国の中には、人身売買や児童労働を許容したり、労働組合つぶしをしたり、同性愛を犯罪と定めていたり、シングルマザーを石打の刑に処するような国も含まれています。米国政府はこうした実態は棚上げしたまま、そうした国との貿易をひたすらに求めています。これに対して人権団体やLGBT運動が声をあげています。


 このように米国では現在、TPPに反対する大規模で多様な運動があって、非貿易の側面からの反対がますます高まっています。過去に自由貿易協定を支持してきた経済学者たち、ジョセフ・スティグリッツやポール・クルーグマン、ロバート・ライシュなどが「TPPの経済的利益はわずかであり、逆に多くのリスクをもたらす」と反対しています。支持政党を超えて有権者はTPPについて知れば知るほど反対するように変化しています。11月には大統領選と合わせてすべての下院議員と上院の3分の1が改選を迎えるという要素も大きく、要するに候補者は「TPP反対」と言わなければ当選しない状況になっているのです。


内田 大統領選の結果によってTPPそのものがどうなるのかという点は私たちも気になるところです。


メリンダ TPP推進側は、11月の選挙後の「レーム・ダック」(オバマ大統領の残存期間)を唯一、批准可能な時期とみていますが、その見込みは少なくなっています。新しい大統領は「反対」といっていて、議会も通過させたくない。一方、政府や産業界は何とか発効させようとしている。トランプが大統領になればおそらく完全に廃案でしょう。クリントンの下では、少なくとも再交渉になるだろうと考えています。クリントンは以前から、為替操作や自動車その他のモノの原産地規則、知的所有権(医薬品特許)、そして ISDSについても現状の中身ではダメだと言ってきましたから、本音では批准したくても、何らかの手を打つしかないでしょう。


内田 貿易の問題は複雑で難しい、と私たちはどこかで思い込まされていて、日常の暮らしとのかかわりがなかなか実感できない人が日本にも多くいます。異なる層の人たち、無関心でいる人たちとどうやったらつながっていけるのかは日本でも大きな課題です。


口ーラ EUでのTTIP反対運動も多様なセクター、層によって成り立ち、数々のキャンペーンやデモが行なわれています。また自治体での反対決議もどんどん広がっています。各国でTTIPを自国の課題とリンクさせることも有効です。反対運動を牽引する国の1つはドイツですが、先ほど述べたように実際にISDSで提訴されたという経験が非常に大きいですね。もうーつ、TTIPで大きな議論となっているのは水道などの公共サービスの民営化への懸念です。


 私たちがこれまで強いキャンペーンを展開できたのは、今までは考えらなかったセクター、層の人たちと一緒に運動できるようになったからです。これまで自由貿易に反対する人といえば、農民や環境団体、労働組合、消費者運動、NGOなどで、これは世界共通だと思います。しかしこうした人たちに加え、中小企業やキリスト教民主主義の弁護士、研究者、EU議員、欧州委員会の元貿易担当高官なども参加しています。


メリンダ 米国では大企業や商工会議所、業界団体が政治システムの中で影響力を行使し、選挙がお金で買われているような状況があります。要するに「政策をお金で買っている」わけですね。その一方で、貧困や格差、最低賃金や気候変動などの問題も企業の支配が強まっていったわけですが、そこにメスを入れずに長い間やってきたわけです。しかしトリクルダウンがもう起きないという中で、米国に根本的な価値観の変化はありうるのでしょうか。私自身は、TPP反対運動の中でここ数年で起きたことを考えると変革の可能性はあると楽観的に考えています。TPP反対は労働者、高齢者、学生、LGBT、女性、消費者団体、環境など大きな広がりを見せています。そして重要なことは、二大政党の民主党も共和党もこうした人びとの声、有権者の怒りに対応しなければいけなくなったということです。これが私たちのチャンスになっているわけです。お金では対抗できないとしても、人びとの力を結集して対抗しようとしています。


口ーラ ヨーロッパの視点で言えば、この数十年間に「オルター・グローバリゼ ーション」(もう一つのグローバル化)運動がEU各地に存在しています。こうした下地がある上に、各地でTTIPなどの話をしていくと非常に理解が早いことを実感します。またスペインのポデモスに代表されるような「新しい政党」も登場しています。こうした積み重ねの結果、TTIP反対の声は多様で重層的につながりながら、欧州議会を動かす力にもなっています。もちろん課題もあります。TTIP反対の中には排外主義的なナショナリズムを煽る運動も存在することも事実です。これに対しては、排外主義的な考えと私たちは違うということを明確にしなければなりません。


メリンダ 現在、米国での反対運動の成果があるのも、国際市民社会が企業の権利拡大とたたかってきた歴史のおかげだと思います。WTOに対する運動もそうですし、NAFTAを拡大した米国自由貿易圏構想(FTAA)も、多国間投資協定(MAI)も市民の反対によって実現していません。こうした抵抗の延長上に、現在のTPPやTTIPとの闘いがあるわけです。多国籍企業は連帯しています。私たちも連帯しなければいけません。多くの人が、うまく言い表すことはできなくても、企業の巨大な権力やルールが自分の生活にどのような影響を与えているか実感し、不安を感じています。決して伝えにくい問題ではありません。ですからあまり細かいことや技術的な側面にこだわらず、生活者の視点から、そしてそのシステムの恩恵を受けていない人たちが感じたことを率直に伝えていくべきです。日本での国会批准審議がこれから再開するわけですが、米国でのTPPの行き詰まりを、日本の反TPP運動強化にもつなげていけば、ともにTPPを敗北に追い込むことができます。


内田 メリンダさん、ローラさん、ありがとうございました。



座談会 
欧米の市民社会は自由貿易にNOと言う
――TTP、TTIPと私たちの暮らし――
メリンダ・セント・ルイス 
ローラ・ブルュッヘ 
内田聖子(司会)


 9月の臨時国会で、4月に頓挫したTPP協定の批准審議が再開される。しかし、マスメディアなどのTPPへの関心は欧米市民社会ほど高まってはいない。
 欧米では確実に、自由貿易が雇用や地域経済を壊し、食の安心・安全や公共サービスなどでの規制を緩和させ、さらに環境、人権、自治、民主主義という価値までも危機にさらすという認識の拡がりのもとで反対が強まっている。
 特に米国での反対運動は、大統領選も含めこの5年で頂点に達している。アメリカとヨーロッパでそれぞれ活躍中のNGO活動家から、自由貿易が私たちの社会にもたらす弊害などについて議論する。


ローラ・ブルュッヘ/Lora Verheecke ベルギー・ブリュッセルに拠点を置き、EU全域で活動する市民団体「Corporate Europe Observatory (CEO)」にて調査研究とキャンペーンを担当。CEOは自由貿易と大企業とロビイストの動きを、社会正義や環境、貧困削減、人権、民主主義などの観点からウォッチしている。


メリンダ・セント・ルイス/Melinda St. Louis 米国・ワシントンに拠点を置く市民団体パブリック・シチズンの「Global Trade Watch」(貿易・投資問題の担当部署)国際キャンペーン責任者。同団体は1971年にラルフ・ネーダー氏が設立した消費者団体。貿易や投資以外にも環境、人権など幅広い分野で活動している。


うちだ・しょうこ アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長。


https://www.iwanami.co.jp/sekai/2016/10/137.html

http://www.asyura2.com/16/kokusai15/msg/783.html

[地域13] [新潟]政活費 問われる透明性/県内4大議会 実情は(朝日新聞)
政活費 問われる透明性/県内4大議会 実情は
朝日新聞[31面 新潟版] 2016年10月27日


長岡 返還わずか2.2%/上越はHPで領収書公開へ


 富山市議による不正取得が相次いで表面化したことで、政務活動費(政活費) に注目が集まっている。県内4大議会について調べると、議員が受け取った政活費の大半を使い切っている実態が見えてきた。一方、情報公開については、上越市議会がホームページでの領収書公開を決めたように、県外の先進事例を採り入れるケースも出てきた。


 政活費は、議員が調査研究などに使うもので、税金が充てられる。不正が相次いだ富山市議会では、議員1人あたり月15万円となるように会派ごとに交付している。さらに、会派の所属議員数に応じた「加算額」があり、例えば、10〜19人の会派は30万円。15人の会派の場合、1人あたり月17万円の計算になる。


 県内の自治体はどうか。新潟市は人口では富山市の約2倍だが、政活費は会派所属議員が1人あたり15万円、無所属は12万円と、やや少ない。長岡市はさらに少ない6万円、上越市は会派所属議員が5万円、無所属は2万5千円。一方、新潟県議会は会派所属議員は1人あたり33万円、無所属は26万4千円と、市議会よりもかなり多い。


 政活費は、使わなかった分を返金しなければならない。富山市議会では2015年度に計7920万円が交付されたが、返還額はゼロ。交付額のうち、会派や議員が使ったと申告した額の割合を示す執行率は100%だった。


 長岡市議会は、15年度の執行率が97.8%(返還率は2.2%)だった。人口規模が近い中核市の議会の執行率は平均81.6%で、大きく上回ったことになる。上越市議会も90%を超えた。新潟県議会と新潟市議会の執行率はいずれも86%台。平均は都道府県議会が87.8%、政令指定市の議会が85.6%だった(平均値はいずれも全国市民オンブズマン連絡会議調べ)。


 情報公開にも濃淡がある。富山市議会の場合、市民らが政活費の収支報告書や領収書を見るには、情報公開を請求しなければならない。長岡市議会も、領収書を閲覧するには情報公開請求が必要だ。一方、新潟県議会と新潟、上越の両市議会は、情報公開請求をしなくても、県庁や市役所で閲覧できる。


 先進的な議会では数年前から、ホームページでの公開や安価なCDやDVDでの提供に踏み切っている。領収書をコピーすると、コピー代が数十万円に上るケ ースもあり、不正・不当な支出をチェックするにはハ ードルが高いためだ。上越市議会もこのほど、今年度分からホームページでの公開とDVDでの提供を行うことを決めた。


 県外の先進的な事例は他にもある。茨城県議会は第三者機関を設置。学識経験者が指導や助言をし、必要に応じて収支報告書などを検査する。京都府京丹後市は議員に活動報告書や領収書を出してもらい、議長が審査した後で支給する「後払い方式」を採用している。 (増田洋一)

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/774.html

[地域13] [新潟]民進「県政与党」打ち出す/混乱収拾と結束狙う(新潟日報)
民進「県政与党」打ち出す/混乱収拾と結束狙う
新潟日報[3面] 2016年10月28日


共・社歓迎、自民は批判


 25日に就任した米山隆一知事に対し、民進党県連が支持する方針を打ち出した。米山氏は民進党を離党して知事選に出馬し、民進党は米山氏を推薦せず自主投票で臨んだ経緯があるが、初の非自民系県政での存在感を高めるとともに、知事選対応で生じた混乱を収め、意思統一を図りたい狙いがある。米山氏を推薦した共産など3党は歓迎するが、県政で "大多数野党" となる自民党からは「軸がぶれている」と批判も出ている。


 「われわれは米山さんの仲間だ」。知事着任前日の24日、民進党県連の代表代行に就いた鷲尾英一郎衆院議員は記者会見でこう強調した。県連はこの日の会合で米山県政を支える方向を確認した。


 もともと米山氏は党衆院新潟5区総支部長だった。24日に県連代表を辞任した黒岩宇洋衆院議員によると、県連として自主投票を決めた後に米山氏が出馬の意思を示したため、黒岩氏らが立候補断念を求めた。その結果、米山氏は離党し、共産、自由、社民の3野党の支援で出馬した。


 結局、民進党は知事選で積極的な役割を果たせなかった。選挙戦後半になって蓮肪代表や県関係国会議員が米山氏の応援に人ったが、主導権は自由党の森裕子参院議員ら党側が終始握っていた。


■                ■


 とはいえ、新潟H軸社の出口調査では民進党支持層の8割超が米山氏に投じていた。森民夫氏か推薦した自民、公明両党への対抗意識も一因とみられ、民進党県連には「知事を生んだ県民世論を尊重すべきだ。対自民党という流れも大事にしたい」(県連幹部)との雰囲気が強まっている。


 県議会は国政と同様に自民1強が続いており、全53議席のうち、米山氏を推薦した3党の議席はわずか3。民進系会派の7議席と一部の無所属が加われば2桁となり、米山氏の支持は少数与党ながらも一定の存在感を示すことができる。


 民進系会派の県議団長も務める大渕健県連幹事長は「是々非々ではあるが、直前まで同じ党にいたのだから政策の親和性はある」と与党の立場で臨む方針を示す。米山氏は知事就任会見で「大変ありがたい。民進党の期待に応えるのも非常に重要だ」と述べた。


 推薦した3党側も歓迎する。社民党県連代表の小山芳元県議は「県政の安定には多くの議員が必要で、特に複雑な思いはない」と前向きに受け止める。共産党の渋谷明治県議は「民進党にも事情があってのことで、違和感はない。しっかり支えていただきたい」と述べた。


■                ■


 民進党の判断は、県連が置かれた厳しい状況も背景にある。知事選を巡る県連執行部の一貫しない対応は党内外から批判され、とりわけ支援団体の連合新潟は強く非難。連合は、民進党の独自候補断念を受けて森民夫氏の支持を決めた経緯があり、はしごを外された格好になったためだ。民進党としては黒岩氏の代表辞任で体制を刷新すると同時に、県政でのスタンスを明確にして結束を図りたい意図がある。


 今後の主導権争いをにらみ、米山知事を「少数与党」側につなぎとめておきたい狙いもある。県連幹部の1人は「知事が県議会対策で窮すれば、自民党寄りになる恐れもある。少しでも対自民の与党側を増やし、ともに頑張る姿勢を示す必要がある」と明かす。


 これに対し、県議会の3分の2近い議席を押さえる自民党は冷ややかだ。県連総務会長の沢野修県議は「他党のことではあるが、自主投票としながら当選後に米山支持を打ち出すの は、党としてバラバラという印象を持つ。軸がぶれているのではないか」と指摘。他の県議からは「想定内だが、党としての矜持がない。相変わらず調子がいい」といった声も上がる。


 11月16〜18日には臨時議会が開かれる予定で、民進系会派も代表質間に立つ方向だ。原発政策など知事と主張が異なる分野もあり、「県政与党第1党」の姿勢が問われる。



同日付の新潟日報 知事選関連記事(投稿者による紹介)


市町村長と早期対話へ/知事 新潟市長・県会議長と会談[3面]
知事が市町村長と早期対話へ 新潟市長、県議会議長と会談(新潟日報モア 2016年10月28日)
行政経験有無 大きな差ない/上越市長がエール[3面]
東電改革委が「密室」議論/廃炉費用など重要案件[3面]
経産省・東電委「密室会合」を複数回 廃炉費用など重要案件を議論(東京新聞 TOKYO Web 2016年10月28日)※
※ 新潟日報のウェブ版記事には詳細が書かれていない。
東電委、廃炉費用など密室議論 非公式会合を複数回(新潟日報モア 2016年10月27日)
県人口/減少拡大 230万4264人/15年国勢調査確定値/2町村では増加[3面]
県人口230万4264人 減少拡大 15年国勢調査確定値(新潟日報モア 2016年10月28日)
民間調査/企業 首都圏集中が加速/15年転入超過 最多の104/本県からは6社[7面]
東北電9月中間純利益は24%減/燃料価格が影響[7面]
抜粋:原田宏哉社長は記者会見で「コスト低減策を深掘りする一方、原発の再稼動に向けて取り組んでいく」と述べ、東通原発(青森県)と女川原発(宮城県)の再稼動に改めて意欲を示した。
早稲田ジャーナリズム大賞/本紙原発報道に奨励賞/多角的な取材、検証を評価[32面]
本紙原発報道に奨励賞 早稲田ジャーナリズム大賞発表(新潟日報モア 2016年10月28日)
長期連載「原発は必要か」(新潟日報社原発問題取材班)(新潟日報モア)
柏崎原発/タンク検査忘れ 計画入力にミス[32面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/775.html

[地域13] [新潟]民進県連/知事選対応を総括(新潟日報)
民進県連/知事選対応を総括
新潟日報[3面] 2016年10月29日


内部で情報共有不足


 民進党県連は28日、長岡市のホテルで常任幹事会を開き、知事選への対応を総括した。独自候補を出せずに自主投票としながら、衆院5区総支部長だった米山隆一氏が離党して出馬したことなどについて不手際があったとして、「組織内部の情報共有が足りなかった」「県民の不信感を募らせた」と自己批判した。


 当初は22日の幹事会で総括する予定だったが、執行部への批判が続出し、結論を先送りしていた。来年1月の解散総選挙も取り沙汰される中、県連としてようやく一区切りをつけて再スタートする格好だ。


 鷲尾英一郎代表代行らによると、知事選対応を担った黒岩宇洋代表(当時)ら執行部に県連で情報共有する意識が薄く、「県連内で何が行われているか分からないまま推移した」という。米山氏の出馬に「組織として迅速に対処できなかった」と反省を重ねた。


 24日に代表を辞任した黒岩氏について、独自候補擁立に「消極的だった」とした上で、自主投票を決めた責任者にもかかわらず米山氏の応援に入り「混乱に拍車をかけた」と指摘した。


 鷲尾代行は「県民に申し訳ない気持ちだ。内部からも情報共有の部分で不満があった。失敗を次に生かし、『県民党』として再出発したい」と強調。今後は幹部による会合を多く重ねていく考えを示した。


 県連は総括内容を支援団体の連合新潟に30日に説明する。連合新潟は知事選で民進党の独自候補擁立断念を受けて森民夫氏を支持しており、県連の対応に不信感を抱いている。鷲尾代行は「率直に説明して理解を求めたい」と述べた。



同日付の新潟日報記事(投稿者による見出しの紹介)


衆院委/民進、農相を追及/輸入米業者から政治資金[2面]
船問題 早期収拾方針、支持と懸念[3面]
平成28年10月25日 新潟県知事 就任記者会見
県との連携で篠田新潟市長「市長会にも問題あった」[3面]
県内9月/有効求人倍率1.35倍/正社員化の動き強く[6面]
全国/1.38倍に改善[6面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/776.html

[地域13] 連合新潟と関係修復へ/民進 知事選経緯説明し謝罪(新潟日報)
連合新潟と関係修復へ/民進 知事選経緯説明し謝罪
新潟日報[3面] 2016年10月31日


 民進党県連は30日、支援団体の連合新潟との懇談会を新潟市中央区のホテルで開き、一連の知事選対応を説明した。連合新潟は独自候補断念や米山隆一氏の出馬を巡る経緯に不信感を示していたが「一定の理解ができた」として衆院選などの連携に前向きな姿勢を示した。知事選で生じた両者の亀裂は修復に向かうことになった。


黒岩氏「混乱生んだ」


 懇談会は経緯の説明が不十分とする連合新潟の求めによるもので、県連は鷲尾英一郎代表代行と知事選対応に当たった黒岩宇洋前代表らが出席。連合新潟は斉藤敏明会長らが参加した。


 会の冒頭、鷲尾代行は「大変な迷惑をかけた。あらためておわびする」と謝罪。その後は非公開で、28日にまとめた県連の総括を説明した。黒岩氏も「候補擁立への消極的姿勢が混乱を生んだ。(選挙戦中の米山氏支援も)代表の立場にありながら、あるまじき行為だった」と述べたという。


 連合新潟からは、意思疎通に努めるよう求める声が上がったが、全体としては関係修復に前向きな雰囲気だったという。また今後の共産党との共闘には慎重な意見が上がったという。終了後、斉藤会長は「一定の理解はできた。一番近い考えを持っている民進党とおかしな関係にならないようにしたい」と述べた。


 連合新潟はこの日の説明を踏まえ、11月下旬の執行委員会で衆院選対応などを協議する予定。9月末以降見合わせている、連合新潟の会合への黒岩氏出席の可否も議論する。


 鷲尾代行は終了後、「政策を最も理解していただいているパートナー。今後も不断の努力で信頼を回復していきたいし、今日はその第一歩になったと思う」と期待を寄せた。


 知事選で民進党県連は独自候補の擁立を断念し、これを受けて連合新潟は森民夫氏の支持を決定した。その後、米山氏が民進党を離党して共産党など野党3党の支援を受けて出馬。蓮舫代表や黒岩氏は選挙戦後半に米山氏の応援に入り、連合新潟と対応が分かれる事態となった。知事選では米山氏が当選し、選挙後、黒岩氏は「調整力、指導力が不足していた」として県連代表を引責辞任した。


連合新潟と関係修復へ/民進党県連が知事選経緯説明
新潟日報モア 2016/10/31 08:00



同日付の新潟日報記事(投稿者による紹介)


全国世調/TPP「慎重審議を」66%/駆け付け警護57%反対[1面・関連記事2面]


総論★各論/問われる野党の存在意義/身近な争点 政策化を/国民からの信頼感が必要[12面]※
※ 記事に紹介されている論:
「2016年参議院議員選挙と民主主義」(白鳥浩・法政大教授 「調査情報」9‐10月号)
ブログ記事(三浦瑠麗・国際政治学者 9月16日)
インタビュー(西田亮介・東京工業大准教授「SIGHT」64号)
インタビュー(吉田徹・北海道大教授 「シノドス」10月24日)
「このほかの注目論文」として囲みに取り上げられたもの:
「優生は誰を殺すのか」(杉田俊介・批評 「現代思想」10月号)
「英国流"凄まじい"テロ対策の実態」(木村正人・国際ジャーナリスト 「ウェッジ」11月号)
「原発広告復活で再燃する『原発プロパガンダ』」(本間龍・著述業 「創」11月号)*
* 紹介文の引用(全文):
「東日本大震災後に消えていた電力会社による原発推進PRの「復活」をリポート。再稼動を狙い、とりわけ立地県の地元メディアへの広告出稿が目立つという」

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/778.html

[地域13] [新潟]東電方針/福島事故1号機爆発/状況推定結果 年内にも公表/県技術委 米山県政で初会合(新潟日報)
東電方針/福島事故1号機爆発/状況推定結果 年内にも公表/県技術委 米山県政で初会合
新潟日報[3面] 2016年11月01日


状況推定結果 年内にも公表


 東京電力柏崎刈羽原発の安全性を議論する県技術委員会は31日、東電福島第1原発事故を検証する課題別会合を開いた。1号機が水素爆発を起こした状況を推定するためのシミュレーション評価について、東電は年内にも結果を公表する方針を示した。


 米山隆一知事就任後、初の会合。米山知事は柏崎刈羽原発の再稼動について「現状では認められない」との考えで、泉田前県政から続く県技術委の議論に注目が集まる。


 会合では、東電がシミュレーションの解析条件について説明。水素濃度の分布状況や水素爆発の着火場所など、解析に使う複数の想定に関し委員の意見を聞いた。東電は「年内をめどにある程度早い時期に出したい」とした。


 福島事故の国会事故調査委員会で委員を務めた田中三彦委員は会合後、シミュレーションについて「プログラム上の制約が多く、過度に期待はできない」とした上で、「結果を見れば今後の(議論の)展望に期待が持てるかどうか分かるのではないか」と話した。




過去の参考記事:


柏崎原発再稼働問題 議論どうなる/知事選
新潟日報モア 2016年10月03日


 東京電力柏崎刈羽原発の安全性を議論する県技術委員会の取り組みが、知事の交代によってどう変わるか住民から不安の声が上がっている。知事は技術委の議論の進め方に大きな影響力を発揮する立場にあるからだ。9月29日に告示された知事選では原発再稼働問題が大きな争点とされており、候補の技術委への考え方も問われている。


 「知事の交代によって技術委員会の方針が変わっていけば、私たちの安全はかなり不安定なものになる」


 9月上旬、柏崎市で開かれた、柏崎刈羽原発の安全性について地域住民が議論する「原発の透明性を確保する地域の会」会合。委員の一人、刈羽村の高桑千恵さん(70)は県担当者に懸念を訴えた。


 約1週間前、再稼働に慎重な姿勢を示す泉田裕彦知事が出馬を撤回していた。


 地域の会委員で、柏崎市の会社員、高橋優一さん(65)も県技術委の会合をたびたび傍聴し、東電福島第1原発事故の検証などの取り組みを評価する一人だ。取材に対し「福島事故の検証はまだまだ時間が掛かる。知事が代わって検証が終わってしまうことを危惧している」と話した。


 県技術委は、福島事故の翌2012年7月から事故の検証を始め、地震の影響の有無など政府の事故調査委員会でも十分解明されなかった問題について議論してきた。4年間で全体会合が22回、課題別会合が6テーマで計35回開かれた。


 事故当初、炉心溶融(メルトダウン)について東電の公表が遅れた問題では、委員たちは東電の説明に納得せず、再調査を求めた。その結果、今年6月に東電から炉心溶融の隠蔽を認める回答を引き出した。


 知事交代は技術委の取り組みに影響するのか。


 県によると、技術委は県、柏崎市、刈羽村の3者が東電と結ぶ「安全協定」で位置付けられた組織のため、知事の一存で廃止されることはない。福島事故の検証作業も、県から技術委に対して公式に依頼したもののため、知事が交代しても継続される見通しという。


 知事選の主要2候補、森民夫さん(67)、米山隆一さん(49)はいずれも技術委による検証を重視する考えを示している。


 ただ、当事者の委員には知事交代の影響は避けられないとの見方が根強い。技術委の議論に、泉田知事の考えが色濃く反映されてきたと感じているからだ。


 メルトダウンの公表遅れの解明に取り組んできた山内康英委員(多摩大教授)は県の方針転換を懸念し、くぎを刺す。「事故の検証は県民にとって非常に重要だ。新しい知事になっても重要性は変わらない」


■              ■              ■


 柏崎刈羽原発の安全性を議論する県技術委員会 
2002年に発覚した東電トラブル隠しを機に、平山征夫前知事時代の県が03年、原発の安全性を確認する際に技術面の指導・助言を受けるために設置した。原子力工学や地質学などの専門家16人が委員を務める。議論するのは県から要請があった事項。07年の中越沖地震で柏崎刈羽原発が被災した際は、設備に地震の影響がなかったかなどを検討した。現在は福島事故の検証と、柏崎刈羽原発の重大事故に備えた排気設備「フィルター付きベント」の性能などの確認を行っている。



関連リンク:


新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会 新潟県
新潟県原子力安全対策課 新潟県
エネルギー・情報化 新潟県
ようこそ知事室へ 新潟県
新潟県議会 新潟県



同日付の新潟日報記事:


大手電力/東電支援拡大に抵抗/業界再編描く政府と綱引き/自由化で競争激化 重荷[2面]
電力11社/原発重要設備「強度不足の可能性ない」[2面]
要旨:「日本鋳鍛鋼」(北九州市)製造のフランスの原発重要設備に強度不足が指摘された問題で、東電、関電など原発を持つ11社が、自社の原発の重要設備に「強度不足の可能性がないと確認した」と原子力規制委に報告。規制委は報告の妥当性を11月中に判断する。
始動 米山県政/市町村長 思い交錯/関係再構築に期待/政策面では懸念も[3面]※
米山県政 市町村長の思い交錯/新知事に期待と不安 (新潟日報モア)
検証 会田市政 柏崎12年のまちづくり<上>/バランス/原発対立 融和目指す/「判断下さず」不満の声も[21面]
東電社員が労災申請/「原発賠償事務でうつ病」[31面]
知事選出馬、後藤氏/選挙無効訴え 異議申し立て[31面]
要旨:告示日前に米山隆一氏が会合で政策を表明したり、森民夫氏が政策を記者会見で発表し街頭で訴えたりしたことが、公選法の禁じる事前運動に当たるとの主張。
市民団体が設立趣旨説明/「基地問題」解決 新潟から探ろう[31面]
要旨:市民団体「沖縄に応答する会@新潟」の記者会見。「沖縄に米軍基地を集中させる原因は本土の側にある」、「本土での基地負担の可能性を考えたい」。メンバーは福本圭介・新潟県立大准教授、左近幸村・新潟大准教授ら県内大学教員、学生の6人。同趣旨の団体は福岡、大阪などでも発足。
前橋地裁/原発避難訴訟 初の結審/原告「事故は人災」/来年3月判決/本県訴訟も審理大詰め[33面]
最高裁で弁論/厚木訴訟 来月8日判決/住民「飛行差し止めを」」[33面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/779.html

[地域13] [新潟]TPP衆院委可決/農産物輸入に不安強く[抄録]|本県議員反応(新潟日報)
TPP衆院委可決/農産物輸入に不安強く|本県議員反応
新潟日報[3面] 2016年11月05日


1強政権 野党振り切る


 政府、与党が環太平洋連携協定(TPP)承認案と関連法案の採決を強行し、数の力で押し切った。山本有二農相の「冗談」発言に野党が猛反発する中、「安倍1強」政権はアベノミクスの中核となるTPPの早期発効を目指して審議を打ち切った。輸入食品の安全性は保たれるのか、国内農家の支援策は十分なのか。国民が抱いた懸念は、与野党議員の怒号の中で置き去りにされた。


対米再交渉回避へ急ぐ 


[省略] 
 
農産物輸入に不安強く  


(解説) 環太平洋連携協定(TPP)が今国会での承認に向けて大きく前進した。しかし、与野党の論戦は低調なまま混乱の中で採決が強行され、農業や食の安全などを巡る国民の懸念が解消されたというには程遠い。特に農業は海外からの安い農産物輸入の拡大圧力にされられ、大きな変革を迫られるが、不安を残したままとなった。


 政府はTPPが発効しても、国内の農業生産額は最大で約2100億円の減少にとどまるとの試算を公表している。主食のコメは「影響ゼロ」、食料自給率への影響も皆無という強気の内容で、国会審議でも同様の説明を繰り返した。だが専門家からは「非現実的」との指摘が根強く、地方の現場でも不信感がくすぶり続けている。


 これまで政府、与党はTPP発効もにらんで国によるコメ生産調整(減反)の配分廃止、農産物の輸出拡大支援などの施策を相次いで打ち出してきた。11月中には生産資材価格引き下げを柱とした農業改革も取りまとめる方針だが、どこまで農家の経営力強化につながるかは審議では検証されず、不透明なままだ。


 与党は「審議は十分に尽くした」と採決に踏みきったが、問題は時間をどれだけかけたかではない。国民になお不安が消えないのは、国会審議でも政府がTPPの意義や長所を繰り返すばかりで、説明が形式的な内容を超えないからだ。


 政府は、国民が本当に知りたいことに丁寧に答える必要がある。




本県議員反応


 環太平洋連携協定(TPP)承認案と関連法案が衆院特別委員会で可決された4日、本県関係の民進党衆院議員は「強行採決は絶対に許せない」「農家の不安は解消されていない」と怒りの表情で批判のボルテージを上げた。一方、自民党議員は委員会採決に理解を示し、早期承認の意義を訴えた。


野党「議論尽くしてない」


 特別委には民進党の黒岩宇洋氏(3区)、党県連代表代行の鷲尾英一郎氏(比例北陸信越)、菊田真紀子氏(同)の3人が詰め掛けた。委員長席に向かって「強行採決 反対」と書かれた紙を掲げ、怒号を飛ばした。


 採決後、黒岩氏は「議論が全く尽くされておらず、採決は認められない」と猛反発。山本有二農相の度重なる失言に「言葉が軽く、謝罪して済む話ではない」と切り捨てた。菊田氏も「大臣は国会を軽視した発言を繰り返し、反省もないい。審議打ち切りは数の力による(政府与党の)おごりだ」と声を荒らげた。


 鷲尾氏は、コメなど農産物の重要5品目の保護を求めた国会決議が「守られていない」と指摘。「農家の不安が払拭されておらず、極めて残念だ」と厳しく批判した。


与党「やむを得ない選択」


 一方、自民党衆院議員は採決を冷静に受け止める。


 野党の質問が堂々巡りになり、新たな論点が出てこなかった。国会のルーツにのっとって、どこかで採決しなければならない」と語るのは斎藤洋明氏(比例北陸信越)。その上で「TPPを不安に思う農家や生活者がいるのは間違いない。予算措置をし、しっかり説明したい」と力を込めた。


 高鳥修一氏(6区)は8日の米大統領選で民主、共和両党候補が共にTPPに反対していく現状に触れ、「米国に再交渉を迫られ、不利な条件に変えられないよう、国内手続きは急いだ方がいい」と強調、早期承認の必要性を訴えた。


 農水政務官の細田健一氏(2区)は「山本農相の失言でこういう(採決の)形になったのは残念」としながら、「TPP発効は日本が引っ張るべきで、採決はやむを得ない選択だ」と神妙な面持ちで語った。




同日付の新潟日報記事(投稿者による紹介)


TPP 衆院委可決/与党強行、8日通過へ[1面]
始動 米山県政/民進「県政運営に協力」/県連議員が知事を訪問[2面]
県町村会/知事との懇談要請へ[2面]
知事との懇談を要請へ/新潟県町村会 (新潟日報モア)
三条市長/市町村との連携意識を[2面]
市町村との連携意識を/三条・国定市長(新潟日報モア)
小泉元首相、知事を激励「不退転の決意で頑張って」[2面]
要旨:4日、新潟市中央区市民芸術文化会館。「おらってにいがた市民エネルギー協議会」主催シンポジウム。小泉氏の講演前に米山知事が控室を訪問し、10分ほど懇談。
衆院TPP審議/与野党 政策論争深まらず/入り口で時間、主張平行線[4面]
TPP採決強行/国民の理解進んでいない[5面 社説]
TPP採決強行 国民の理解進んでいない(新潟日報モア)
検証 会田市政 柏崎12年のまちづくり/番外編/市長インタビュー/「中越沖」復興に全力/中心部の塩漬け土地開発[15面]
抜粋: ―東京電力柏崎刈羽原発問題について。
 柏崎は原発を巡って長く激しい対立の歴史があり、今もまだ残っている。議会でも推進・反対に分かれ、市民の間でも原発に賛成か反対かということがリトマス試験紙になっている。なかなか市民が一つになれない要因が原発だ。
 原発に依拠して生活する人もいるため、現実的にいきなり廃炉にするというのは無理。安全確保を第一に考えながら、原発に依存しない地域にしていかなければならないと訴えてきた。
 東電福島第1原発事故後は、事故が起これば大変なことになると明らかになり、市民の意識も大きく変わった。柏崎刈羽の再稼動問題は、市民の理解が得られるかどうかが大切。国が安全に責任を持つこと。そして首長は、疑問を一つ一つ国や東電に確認していくことが必要だ。
落選候補の得票/約半数の民意、尊重を[20面 オピニオン]/報道部県政担当 井川恭一
抜粋: 森氏自身は再稼動に慎重だったが、支持した人の中には「原発再稼動はやむを得ない」という声も少なくなかった。一方で長年の行政経験を評価し、産業振興や子育て支援を進めてくれるとの期待もまた多かった。
 原発は知事選の大事な論点だった。ただ、それだけでもないことを森氏が得た46万票は語っているのではないか。
 米山知事は2日の記者会見で「ほぼ同数の人が相手候補に投票した」と述べ、森氏の政策も今後の参考にする考えを示した。県民のさまざまな思いが交錯した選挙だったことを忘れないでほしい。
小泉元首相 新潟で講演/米山知事の誕生「原発政策に影響」[30面]
TPP衆院委可決/深まらぬ議論 不満噴出/県内生産者 国内対策に注文も[31面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/781.html

[テスト31] テスト
ヒラリー・クリントンとは誰か(上)(百々峰だより)


ヒラリー・クリントンとは誰か(上)―アメリカ大統領選挙を目前にして
2016年11月6日 百々峰だより
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-275.html


http://tacktaka.blog.fc2.com/img/2016110615273710f.jpg/

[写真]ハリウッドの有名な大通りに刻まれたトランプ氏の名前を、破壊から守ろうとしてヒラリー支持者からカートごと倒されたホームレスの老齢黒人女性
https://www.rt.com/usa/364631-crowd-attacks-homeless-trump/


 アメリカの選挙情勢は11月8日の投票日を目前にしながら混沌としています。
 というのは、オバマ大統領や民主党幹部・特権階級だけでなく金融街や大手メディアからも圧倒的な支援を得ながらも、世論調査ではヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏の支持率は拮抗しているからです。
 トランプ氏は共和党幹部からもアメリカの財界・支配層からも支持や援助を得ていないにもかかわらず、そして大手メディアから袋叩きにあいながらも、拮抗状態なのです。
 たとえば、民主党のヒラリー女史は、19日に行われた最後のテレビ討論に出演しましたが、直後におこなわれたCNNテレビおよび世論調査機関ORCの調べでは、クリントン女史が勝ったと答えた回答者は52%、反対にトランプ氏が上まわったと答えたのは39%に留まっていました。
https://jp.sputniknews.com/us/201610202923228/


 ところがワシントン・タイムズ紙は、最後のテレビ討論に関する緊急調査で、同討論会で共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏がライバルのヒラリー・クリントン氏に圧勝したと報じているのです。
 同紙はサイト上で討論後に「最後の討論会、勝ったのはどっち?」という質問をおこなったのですが、討論の終了直後、トランプ氏には77%または1万8290票だったのに反し、ヒラリー女史には4100票または17%しか集まりませんでした。
 その後しばらく経つと状況はさらに変わり、10月20日の日本時間14時35分にはトランプ氏3万2000票(74%)クリントン氏9000票(21%)となりました。
 ワシントン・タイムズは米国で最も著名かつ保守的な編集方針で知られていますから、新聞社のバイアスがかかっているのかも知れませんが、それにしても、トランプ氏は圧倒的な支持を得ているのです。[※ 投稿者注―あるいはワシントン・ポスト紙と混同か]
https://jp.sputniknews.com/us/201610202923228/


 さらに、米国大統領選挙まであと16日という時点(10月23日)でのロサンゼルス・タイムズの世論調査では、トランプ支持44.4%、ヒラリーン[ママ]支持44.1%」という結果でした。
https://jp.sputniknews.com/us/201610242935467/
 ご覧のとおり、共和党トランプ氏と民主党ヒラリー女史の支持率は、ほぼ拮抗しているのです。
 
 
 さらに、もうひとつ面白い情報があります。「Sputnik日本」(10月28日)は、イギリス高級紙インデペンデントからの情報として次のような記事を載せているのです。


ニューヨーク大学のヘルムト・ノーポース教授は、自分の作った米大統領選結果予測モデルによると勝利するのは共和党のドナルド・トランプ候補であることを明らかにした。インディペンデント紙が報じている。
ノーポース教授の開発した選挙結果予測モデルは1992年から今までの米大統領選挙の予測を2000年の一度を除いて全て当てている。モデルは2000年は民主党の勝利を予測したが、実際はフロリダ州の浮遊票を集め、共和党のジョージ・ブッシュ氏が当選した。
さて今回だが、このモデルの予測ではプライマリーでより見事な演説を行なった候補者が勝利する。ノースポース氏の見解では、プライマリー(予備選)で勝利を収めたのはトランプ氏で、このことから選挙で勝利する確率は高い。
https://jp.sputniknews.com/us/201610282953757/


 トランプ氏は共和党幹部からもアメリカの財界・支配層からも支持や援助を得ていません。にもかかわらず、そして大手メディアから袋叩きにあいながらも、なぜこのように選挙で勝利する確率が高くなっているのでしょうか。
 それはヒラリー女史とトランプ氏の論争が進めば進むほど、ヒラリー女史の本性が民衆に分かり始めてきたことです。
 すでに民主党内の予備選でさえ、社会主義者を自称するバーニー・サンダース氏に追い上げられて、一時はサンダース氏が勝利するかも知れないと言われていたことすらあったのですが、民主党幹部の裏工作、大手メディアの加勢で何とか乗り切ることができました。この間の事情を櫻井ジャーナル(2016年6月17日)は次のように書いています。


 ところで、民主党幹部たちが昨年5月26日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールが公表されている。本ブログでは何度か取り上げたように、昨年6月11日から14日にかけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加、欧米の支配層は彼女を大統領にする方向で動き出したと言われていたわけで、この電子メールの内容は驚きでない。
この内定を揺るがしたのがサンダース。急速に人気を集め、支持率はヒラリーと拮抗するまでになった。ただ、そうした動きが現れる前に選挙人登録は終わっていたため、支持率が投票に反映されたとは言い難い。例えば、4月に投票があったニューヨーク州の場合は昨年10月9日までに民主党と共和党のどちらを支持しているかを登録しておかないと予備選で投票できず、投票できなかった人が少なくない。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20160617/


 このニューヨーク州の事態については長周新聞2016年5月4日で、私は「続・世界に恥ずべきアメリカの選挙制度」と題して既に拙論を載せてあったのですが、サンダース氏の進出を阻止する動きがもっと露骨になったのはカリフォルニア州の予備選でした。
 それを櫻井ジャーナルは上記に続けて次のように書いています。


 支持政党を登録していなくても投票できるカリフォルニアで予備選が行われる直前の世論調査ではサンダースがクリントンをリード、幹部たちを慌てさせたようだ。民主党支持者ではサンダースが57%、クリントンが40%、無所属の人ではそれぞれ68%と26%だとされている。
そうした状況の中、予備選の前夜にAP通信は「クリントン勝利」を宣告した。「スーパー代議員(上位代議員、あるいは特別代議員と訳されている)」の投票予測でクリントンが圧倒し、勝利は確定しているというのだ。この「報道」がカリフォルニアにおける予備選でサンダースへの投票を減らしたことは間違いないだろう。
カリフォルニア州の場合、本ブログではすでに紹介したように、投票妨害とも言えそうなことが行われていたという。政党の登録をしなかった人びとはサンダースを支持する人が多く、民主党の登録をしている人はヒラリー支持者が多いが、登録しているかしていないかで投票用紙が違う。
投票所によっては投票用紙を受け取ろうとすると、政党無登録の人には予備選に投票できない用紙を自動的に渡す投票所があったという。投票するためには民主党支持変更用紙を要求しなければならない。予備選に投票するにはどうすべきかと尋ねられた係員は、政党無登録の人には民主党用の用紙は渡せないと答え、民主党支持変更用紙のことには触れないよう指示されていたケースもあったようだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20160617/


 こうした動きのなかで、突如、サンダース氏は選挙戦から降りると宣言し、勢いを増しつつあった支持者の運動や願いを裏切り、あろうことか「ヒラリー女史こそ大統領としてベストの候補者だ」という演説までもするようになりました。
 ではサンダース氏が今まで言ってきたこと、「ヒラリー女史はウォール街と一心同体であり富裕層の代弁者だ」という言はどこへ行ったのかと、支持者たちはやりきれない思いをしたに違いありません。
 ヒラリー女史および民主党幹部とサンダース氏の間に、裏でどんな取引があったのか分かりませんが、とにかくヒラリー女史はこうして無事に予備選をくぐり抜け、本選に挑むことができるようになりました。
 しかし相手は共和党のなかでさえ評判の悪いトランプ氏ですから、ヒラリー女史は本選では楽勝となり、「アメリカ史で初めての女性大統領」という栄冠を難なく手にすることができると思われていました。
 ところがウィキリークスがヒラリー女史や民主党幹部の裏舞台を暴露し始めた頃から雲行きが怪しくなってきました。
 元共和党政権の経済政策担当の財務次官補のポール・グレイグ・ロバーツは自分のブログ(2016年10月5日)で、それを次のように書いています。


・・・。彼女は、ウオール街・巨大銀行・軍-安保複合体の巨大な政治力を有するひと握りの連中、および外国利益の集団によって買収されている。その証拠は、クリントンの12,000万ドルという個人資産と、二人の財団の160,000万ドルだ。ゴールドマン・サックスは、講演で語られた智恵に対して、ヒラリーの三回の20分講演に、675,000ドルを払ったわけではあるまい。・・・
* Washington Leads The World To War「世界を戦争へと導くワシントン」
http://www.paulcraigroberts.org/2016/10/05/washington-leads-the-world-to-war-paul-craig-roberts/


 上記で登場するゴールドマン・サックスは、2008年の世界金融危機の震源地のひとつとなった世界最大級の投資銀行です。そのように世界経済を破壊した機関で講演すること自体が問題ですが、その謝礼も私たち凡人の想像を絶する金額です。
 かつて私が大学教授として60〜90分の講演をしても、その謝礼は3〜5万円でしたから(ときには全く無料のものもあります)。ところがヒラリー女史は、そこで20分の講演を3回しただけで、67万5000ドル(約7000万円)の謝礼です。つまり、1回20分で約2300万円もの大金がもらえるのですから、いかに破格の謝礼であるかがよくわかるはずです。
 だからこそ、世界金融危機につながった住宅ローン担保証券の不正販売を巡る事件は、ゴールドマン・サックスから誰一人として刑務所に送られたものはなく、2016年1月に制裁金等33億ドルと借り手救済金18億ドルの和解金で決着してしまったのでしょう。世界最大級の投資銀行としては、おそらく、全くの端金(はしたがね)だったに違いありません。
 かつて民主党の支持基盤のひとつは労働組合だったのに、夫のビル・クリントンが大統領だったときにNAFTA(米国、カナダ・メキシコ3カ国による域内貿易自由化取り決め)によって、大企業がメキシコなどの国外へと移転して、労働者の多くは仕事を失いました。その結果、多くの労働組合が縮小・解体され、民主党は新しい財政基盤を必要とするようになりました。
 民主党が、労働者や一般民衆ではなく、財界や金融街に頼らざるを得なくなった物質的基盤は、このようなところにあります。自ら墓穴を掘ったと言うべきかも知れません。
 NAFTAを通じてビル・クリントンが追求した新自由主義政策は、貧富の格差を広げましたから、勤労者や貧困者から見れば、民主党というのは共和党と何も変わらない政党になったわけです。(日本の民進党と自民党も、全く同じ流れです。)
 
 
 このような貧困化しつつあるアメリカ民衆の不満を代弁したかたちで登場したのが、民主党ではバーニー・サンダース氏であり、共和党ではドナルド・トランプ氏でした。しかし先述のとおり、サンダース氏は支持者を裏切るかたちで選挙戦から身を引きました。しかしトランプ氏の場合、共和党の幹部・特権階級からの妨害をものともせず進撃しつつあります。
 そして、かつては黒人票は民主党のものと思われていたのに、トランプ氏は着実に黒人票をも獲得しつつあるようです。とくに貧困層の黒人は、ヒラリー女史に見切りをつけ、トランプ氏に流れているようです。最近それを象徴する事件がありました。
 映画産業で有名なハリウッドの大通りには、有名スターの名前が入った星形メダルが埋め込まれた街路「ウォーク・オブ・フェイム」があるのですが、そのひとつにトランプ氏の名前が刻み込まれています。
 ところがヒラリー女史の支持者が、この刻み込まれたトランプ氏の名前をツルハシで破壊する事件が起きました。それにたいして今度は、この刻み込まれたトランプ氏の名前を守ろうとして座り込む女性が現れました。
 しかし、ここにもうひとつの事件が起きます。この座り込んでいた一人の黒人女性(しかもホームレスの老いた黒人女性だった)にたいして、なんとヒラリー女史支持者たちが罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせかけ、彼女の衣類などが入っていたカートを彼女もろとも引っくり返して足蹴にする事件が起きたのです。
 そのうえ、なぜトランプを支持するかを書いた彼女のビラやポスターをずたずたに引き裂くようすがユーチューブに載せられたのでした。
 RT(2016年10月29日)の記事によれば、そのポスターのひとつには「オバマはクリントン一家に恩義を感じて我々黒人どもをバスの下に投げ込んでいる」といった文句が書かれていたそうです。
* Violent crowd attacks, insults homeless woman guarding Trump's Hollywood star
* 「暴力的群衆が、ハリウッド大通りに刻まれたトランプ氏の名前を守る女性を、襲ったり辱めたりした」

https://www.rt.com/usa/364631-crowd-attacks-homeless-trump/


 ロサンゼルス・タイムズは、今やカリフォルニア州立大学[全部で23校から成るが全体でひとつの大学機構]の学生の、10人に1人がホームレスだと報じ(2016年6月20日)驚かされましたが、このような事態を生み出した民主党の特権階級にたいする怒りが、ホームレスの老いた黒人女性を上記のような行動に駆り立てたのではないでしょうか。

* 1 in 10 Cal State students is homeless, study finds
「カリフォルニア州立大学の10人に1人がホームレス」

http://www.latimes.com/local/lanow/la-me-cal-state-homelessness-20160620-snap-story.html


 オバマという、「アメリカ史上、初の黒人大統領」と持てはやされる人物を頭(かしら)にいだく民主党政権が、貧富の差を拡大させ、黒人どころか白人のホームレスまでもアメリカ全土に広がりつつあるのですから、実に皮肉と言えば皮肉です。


 このような事態を考えると、社会主義者を自称するサンダース氏が選挙戦から落馬した現在、共和党から出馬したトランプ氏がアメリカ民衆の怒りを一身に背負うことになってきたことは、ある意味で当然のこととも言えます。
 これを裏書きするような象徴的な爆弾が、映画監督マイケル・ムーアによって投げつけられました。ムーアと言えば、映画『華氏911』やアメリカ医療を鋭く告発した映画『シッコ』などで有名ですが、そのムーア監督が、今度はトランプ氏を題材とした映画『トランプ・ランド』をつくりました。その映画上演会のため訪れたオハイオで彼は次のようなスピーチをして聴衆を驚かせました。



「トランプ氏に投票する人たちは、必ずしもそんなに彼が好きなわけではありませんし、必ずしも彼の意見に同意しているというわけでもありません。彼らは必ずしも人種差別主義者ではありませんし、白人の肉体労働者でもありません。じっさい彼らはかなり礼儀正しい人たちです」
「ドナルド・トランプ氏はデトロイト経済同友会にやって来て、フォード社の経営陣の前に立ってこう言ったのです。『あなた方がデトロイトでやろうと計画しているように、これらの工場を閉鎖してメキシコで建て直すつもりなら、そしてそこで生産した車をアメリカに送り返すなら、私はそれらの車に35パーセントの関税率をつけるつもりだ。そうすれば誰もそれらを買わないだろう』」
「それは、驚くべきことでした。政治家の誰も、共和党員であれ民主党員であれ、これまでに誰もそんなことを、これらの経営陣に言ったものはいません。それは、ミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州の民衆の耳には実に心地よい調べだったでしょう。Brexitの諸州、つまりアメリカから脱出しようとする大企業の存在する州では、民衆は同じ思いで聴くでしょう」
「トランプ氏の言っていることが本気かどうかは、ここではあまり関係がありません。なぜなら、それは傷ついている人々が聴きたいと思っていたことだからです。だからこそ、あらゆる打ちのめされて役立たずになり忘れさられた一般労働者、いわゆる中流階級の一部を成す人々のすべてが、トランプ氏を好きになるのです」
「トランプ氏は、そのような人たちの待ち望んでいた人間火焔瓶・人間手榴弾なのです。彼らは、自分たちから生活を盗み奪った組織や機構に、それを投げ込むことができるからです」
「そして11月8日は選挙の投票日です。民衆・勤労者は仕事を失い、銀行によって家を差し押さえされ、次にやってきたのが離婚。今や妻と子供は去って自分のところにはいない。そして車も回収・没収。彼らは何年ものあいだ本当の休暇をとったことがない。くそにもならないオバマケア(医療保険改革法)ブロンズプランは、お先真っ暗。この保険では解熱剤すら手に入らない。要するに彼らは持てるもの全てを失ったのです。民衆の手に残されたものがひとつだけあります。それをもつには一セントのお金すら必要ありません。それは合州国憲法によって所有が保証されているからです。それが投票権です」
* Michael Moore just gave the most convincing speech for Trump
* 「マイケル・ムーアが、今までのなかで最も説得力のある演説を、トランプ氏のためにおこなった」

http://redalertpolitics.com/2016/10/26/michael-moore-just-gave-convincing-speech-trump-video/#dJRVoxe3kmvHf6MJ.99


 ムーア監督のスピーチは、まだ続いているのですが長くなるので、翻訳はここで止めます。ただスピーチの最後が次のよな文句で結ばれていることだけを紹介しておきます。
 「トランプが選ばれれば、人類史に記録された最大のイベントになること間違いなしです。『やってやったぜ、この野郎!』というわけです。勤労大衆にはさぞかし気持ちのよかったことでしょう」
 今までサンダースを支援していたムーア監督が、ことここに至って、このようなスピーチをせざるを得なくなった悔しさがにじみ出ているようなスピーチではありませんか。
 ゼネラルモーターズの生産拠点の一つであったミシガン州フリントで生まれたムーア監督が、故郷フリントの自動車工場が閉鎖され失業者が増大したことを題材にしたドキュメンタリーの名作『ロジャー&ミー』をつくっているだけに、この無念さはひとしおだったことでしょう。
 
 
 さて、このようなトランプ氏の動きに対してヒラリー女史はどのように対応したでしょうか。
 最初は財界寄りの政策でしたがサンダースの打ち出す政策が民主党の若者や貧困層の支持を得て自分が劣勢になりそうなのに気づいて、TPPなど民衆の生活を破壊する政策に反対を表明するように変わってきました。
 しかし最近のウィキリークスが暴露したところによると、「政治家は表の顔と裏の顔があるのは当然だ」とする意見を彼女は身内のものに漏らしています。さらに予備選では「左寄りの政策を掲げても本選では右に戻せばよい」とも語っています。
 もっと恐ろしいことには、RT(2016年10月29日)の記事によれば、彼女は『Jewish Press』というユダヤ人のための週刊紙のインタビューで、「パレスチナの選挙に裏工作をしてファタハを勝たせるべきだった、そうすればハマスの一派が勝利することはなかった」とすら述べています。
* Clinton bemoans US not rigging 2006 Palestinian election in newly-released tape
* 「クリントンは、新しく公開されたテープ録音のなかで、2006年のパレスチナにおける選挙で不正操作しなかったことを、悔いている」

https://www.rt.com/usa/364628-clinton-rigging-palestine-tape/


 このようにヒラリー女史は、他国の選挙に干渉して傀儡(かいらい)政権をつくることを何ら悪いことだと思っていないのです。
 2014年年[ママ]のウクライナ政変では、彼女の盟友であるヌーランド国務次官補が、米国ウクライナ大使と一緒になって反政府デモに加わり、デモ参加者にお菓子を配って歩いている光景が堂々とテレビ画面に登場していますが、これほど露骨な内政干渉はないでしょう。
 (ロシアの外務省高官や在米大使館員が、ニューヨークその他のデモや集会、座り込みテントに参加して、差し入れなどすれば、アメリカがどんな態度をとるか。想像してみればすぐ分かることです。)
 ところがトランプ氏との論争になると、ヒラリー女史は、政策をめぐる論争はほとんどやめてしまい、「トランプ氏はプーチンの操り人形だ」とか「ウィキリークスによるヒラリー関係のメール暴露は、プーチンがアメリカのコンピュータに侵入してウィキリークスに渡したものだ」といった主張を繰りかえすだけになってしまいました。政策論争ではトランプ氏と争っても勝ち目がないということを自ら認めたに等しいでしょう。
 それどころか、自分が国務長官として公的なメールサーバーを使うべきだったのに、私的サーバーを使って外部から侵入しやすくなったことにたいする反省もありませんし、その漏れた国家的重要機密情報が、リビアのアメリカ大使館に勤務する大使その他の職員を死に至らしめる結果になったかも知れないのに、そのことにたいする反省もありません。
 もっと奇妙なのは、このように私的サーバーを使って最高機密情報を漏らした当人は、FBIから訴追されることもなく堂々と選挙に出馬できているという事態です。イラクにおける米軍の悪事を暴いたマニング上等兵が牢獄につながれ元情報機関職員だったスノーデンが亡命に追い込まれたのとは、天と地の違いです。「悪いやつほどよく眠る」の典型例と言うべきかも知れません。
 
 
 ここまでは、ドナルド・トランプ氏と比較しながらながら[ママ]、アメリカの国内政策を中心にして「ヒラリー・クリントンとは誰か」を論じてきたのですが、以下では外交政策をとりあげてヒラリー女史の問題点を探ってみたいと思います。
 しかし、これを論じていると長大なものになる予感がするので、今回は幹の部分だけを紹介して詳しくは次回に譲りたいと思います。
 それはともかく、ヒラリー女史とトランプ氏の外交政策における最大の違いは、ロシアとどう対峙するかという問題です。いまアメリカはシリアにおける内戦をどう解決するかという点で、ロシアと鋭く対立しているからです。
 いまヒラリー女史がシリア情勢で強く主張しているのは「リビア内戦時と同じようにシリアにおいても飛行禁止区域をもうけるべきだ」ということです。その理由としてあげられているのが、「ロシア軍とシリア政府軍がシリア第二の大都市アレッポを無差別に爆撃し一般市民からたくさんの犠牲者が出ているから」という口実です。
 これにたいしてトランプ氏は次のように主張しています。
 「アメリカは他国に内政干渉したり政権転覆に手を出すべきではない。国内には問題が山積していて他国に手を出す余裕などないはずだ」
 「今はロシアと手をつないで、『アルカイダ』『イスラム国』といったテロリスト=イスラム原理主義者集団をシリアから追い出すべきだ」
 これに関してロシアもシリア政府も、「リビア内戦時と同じようにシリアにおいても飛行禁止区域をもうけるべきだという主張は、シリアをリビアと同じような混乱に陥れ、シリアを破壊・解体して、さらに死傷者と難民を激増させるだけだ。休戦地帯をもうけろと言う主張は、テロと戦うという名目でアサド政権をつぶそうとする隠れ蓑にすぎない」と反論しています。
 この飛行禁止区域の設定については、ロシアもシリア政府も次のように主張し、アメリカの要求をきっぱりと退ける姿勢を示しています。
 「アレッポの東部地区を占拠して一般市民を『人間の盾』としながら休戦協定を無視してアレッポの西部地区の一般市民を無差別に攻撃しているのは、むしろ反政府勢力のほうだ。しかも彼らはアメリカの主張する『穏健派』どころか、『アルカイダ』『イスラム国』の一派であり、シリアには『穏健派』など存在しない」
 
 
 ですから、このまま緊張状態が続けば、アメリカ軍とロシア軍との直接的な戦闘になり、いつ世界大戦になるか、いつ核戦争になるか分からない情勢です。トランプ氏は『アルカイダ』『イスラム国』といった過激なイスラム原理集団をつくり出したのは、アメリカなのだから、そのような政策から手を引くべきだ」と言っているのですから、今までの感覚でアメリカを見ていたひとたちは頭が混乱するかも知れません。
 というのは、従来の図式からすれば、民主党=リベラル=ハト派であり、共和党=保守派=タカ派なのに、ヒラリー女史の方がトランプ氏よりはるかに好戦的だからです。 トランプ氏は、ロイター通信(2016年110月25日)によれば、「ヒラリー氏が大統領になれば第三次世界大戦になりかねない」とすら主張しているのです。
 これはトランプ氏の単なる選挙戦術のようにもみえますが、同じ警告はあちこちから聞こえてきます。
 すでに前半で紹介したように、元共和党政権の経済政策担当の財務次官補だったポール・グレイグ・ロバーツは自分のブログ(2016年10月5日)で、下記のような「戦争に導くワシントン」という記事を書いてています。
* Washington Leads The World To War「世界を戦争へと導くワシントン」
http://www.paulcraigroberts.org/2016/10/05/washington-leads-the-world-to-war-paul-craig-roberts/


 またイギリスの保守的高級紙と言われるインデペンデント紙(2016年10月25日)も次のような論文を載せています。
* Could Hillary Clinton start a world war? Sure as hell she could ? and here's how
*「ヒラリー・クリントンは世界大戦を始める可能性があるか?確かにそうだ。それはこうして始まる」

http://www.independent.co.uk/voices/could-hillary-start-a-world-war-sure-as-hell-she-could-and-here-s-how-a7379051.html


 どちらかというと今まではトランプに批判的だったインデペンデント紙がこのような論説を載せるようになったこと自体が、現在の情勢がいかに緊迫しているかをしめすものではないでしょうか
 
 
 もっと驚いたことには、調べてみると既に4月の時点で、クリントン氏の自叙伝の著者ディアナ・ジョンストン氏は、イタリアのイオ・ジョルナーレ紙のインタビューで、「クリントン氏の大統領選の勝利は、第三次世界大戦の勃発も含め予想外の結果をもたらす可能性がある」と語っているのです。
 RTの記事(2016年4月29日)によると、ジョンストン氏は次のように語っています。



クリントン氏がまだ国務長官に在任していた頃、押しの強い外交政策を掲げていた。クリントン氏はアメリカのイラク侵攻及びリビアでの戦争参加を支持し、そして現在はシリアのバッシャール・アサド大統領に反対する姿勢を支持している。これに加え、クリントン氏は反ロシア的見解に固執している。世界は不安を呼び起こすような選挙公約を掲げるクリントン氏の「積極的な活動」に対して用心するべきだ。クリントン氏は外交の代わりに軍事力を用い、あらゆる事件が第三次世界大戦を引き起こしかねないほどにNATOを強化するつもりである。
https://jp.sputniknews.com/us/201604292050173/


 このように、今まさに世界はアメリカ大統領選挙を前にして「伸るか反るか」の曲がり角に来ているのです。にもかかわらず、アメリカや日本の、リベラルを自称する知識人も大手メディアも、「アメリカ史上、初の女性大統領」という殺し文句に惑わされて、現在の深刻な事態が見えなくなっているように思われます。
 しかし現在の事態の深刻さを理解してもらうためには、ヒラリー女史が国務長官だったときだけでなく、それ以前に外交政策で彼女が何を主張し、どのような行動をとってきたかを、もっと詳しく説明する必要があります。
 とはいえ、すでに長くなりすぎていますので、これについては、次回の論考に譲りたいと思います。



投稿者より


アメリカ大統領選挙をめぐって阿修羅掲示板にも紹介されていたさまざまな記事から断片的には知っていた内容が、わかりやすく整理されて全体像として描き出されている。
この記事のことは晴耕雨読ブログによる転載で知った。
「ヒラリー・クリントンとは誰か――アメリカ大統領選挙を目前にして 寺 島 隆 吉:長州新聞」(2016年11月7日 晴耕雨読)
ヒラリー・クリントンとは誰か   国際教育総合文化研究所 寺島隆吉(2016年11月2日 長周新聞)
長周新聞に掲載された元記事のそのさらにオリジナルだろうとおもわれるのが、「百々峰だより」のブログ記事だ。「百々峰だより」からの転載にあたり、投稿者が記事中の漢数字を半角算用数字にあらため、ブラケット(角括弧)による注記も付した。


投稿者は「百々峰だより」に出会うのがこれで2回目だ。今年1月、国連人権理事会の独立専門家アルフレッド・デ・サヤスという人が、TPP関係各国政府にたいして、TPPに署名も批准もしないようにとの異例の呼びかけをおこなった。国連人権高等弁務官事務所のサイトに英文で掲載されていたその声明文をなんとか解読しようと思ったら、すでに日本語訳してくれているサイトがあった。それが「百々峰だより」だった。うれしい再会だ。
署名も批准もするな! TPP署名式の直前に国連が各国政府にたいして異例の呼びかけ(2016年2月24日 百々峰だより)
≪署名も批准もするな!≫TPP署名式の直前に国連が各国政府にたいして異例の呼びかけをしていたことが判明!(健康になるためのブログ|赤かぶ 2016年3月17日)

http://www.asyura2.com/14/test31/msg/566.html

[国際16] ヒラリー・クリントンとは誰か(上)(百々峰だより)
ヒラリー・クリントンとは誰か(上)―アメリカ大統領選挙を目前にして
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-275.html
2016年11月6日 百々峰だより


http://tacktaka.blog.fc2.com/img/2016110615273710f.jpg/

[写真]ハリウッドの有名な大通りに刻まれたトランプ氏の名前を、破壊から守ろうとしてヒラリー支持者からカートごと倒されたホームレスの老齢黒人女性
https://www.rt.com/usa/364631-crowd-attacks-homeless-trump/


 アメリカの選挙情勢は11月8日の投票日を目前にしながら混沌としています。
 というのは、オバマ大統領や民主党幹部・特権階級だけでなく金融街や大手メディアからも圧倒的な支援を得ながらも、世論調査ではヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏の支持率は拮抗しているからです。
 トランプ氏は共和党幹部からもアメリカの財界・支配層からも支持や援助を得ていないにもかかわらず、そして大手メディアから袋叩きにあいながらも、拮抗状態なのです。
 たとえば、民主党のヒラリー女史は、19日に行われた最後のテレビ討論に出演しましたが、直後におこなわれたCNNテレビおよび世論調査機関ORCの調べでは、クリントン女史が勝ったと答えた回答者は52%、反対にトランプ氏が上まわったと答えたのは39%に留まっていました。
https://jp.sputniknews.com/us/201610202923228/
 ところがワシントン・タイムズ紙は、最後のテレビ討論に関する緊急調査で、同討論会で共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏がライバルのヒラリー・クリントン氏に圧勝したと報じているのです。
 同紙はサイト上で討論後に「最後の討論会、勝ったのはどっち?」という質問をおこなったのですが、討論の終了直後、トランプ氏には77%または1万8290票だったのに反し、ヒラリー女史には4100票または17%しか集まりませんでした。
 その後しばらく経つと状況はさらに変わり、10月20日の日本時間14時35分にはトランプ氏3万2000票(74%)クリントン氏9000票(21%)となりました。
 ワシントン・タイムズは米国で最も著名かつ保守的な編集方針で知られていますから、新聞社のバイアスがかかっているのかも知れませんが、それにしても、トランプ氏は圧倒的な支持を得ているのです。[※ 投稿者注―ワシントン・ポスト紙と混同しているのではないか]
https://jp.sputniknews.com/us/201610202923228/
 さらに、米国大統領選挙まであと16日という時点(10月23日)でのロサンゼルス・タイムズの世論調査では、トランプ支持44.4%、ヒラリーン[ママ]支持44.1%」という結果でした。
https://jp.sputniknews.com/us/201610242935467/
 ご覧のとおり、共和党トランプ氏と民主党ヒラリー女史の支持率は、ほぼ拮抗しているのです。
 
 
 さらに、もうひとつ面白い情報があります。「Sputnik日本」(10月28日)は、イギリス高級紙インデペンデントからの情報として次のような記事を載せているのです。

ニューヨーク大学のヘルムト・ノーポース教授は、自分の作った米大統領選結果予測モデルによると勝利するのは共和党のドナルド・トランプ候補であることを明らかにした。インディペンデント紙が報じている。
ノーポース教授の開発した選挙結果予測モデルは1992年から今までの米大統領選挙の予測を2000年の一度を除いて全て当てている。モデルは2000年は民主党の勝利を予測したが、実際はフロリダ州の浮遊票を集め、共和党のジョージ・ブッシュ氏が当選した。
さて今回だが、このモデルの予測ではプライマリーでより見事な演説を行なった候補者が勝利する。ノースポース氏の見解では、プライマリー(予備選)で勝利を収めたのはトランプ氏で、このことから選挙で勝利する確率は高い。
https://jp.sputniknews.com/us/201610282953757/


 トランプ氏は共和党幹部からもアメリカの財界・支配層からも支持や援助を得ていません。にもかかわらず、そして大手メディアから袋叩きにあいながらも、なぜこのように選挙で勝利する確率が高くなっているのでしょうか。
 それはヒラリー女史とトランプ氏の論争が進めば進むほど、ヒラリー女史の本性が民衆に分かり始めてきたことです。
 すでに民主党内の予備選でさえ、社会主義者を自称するバーニー・サンダース氏に追い上げられて、一時はサンダース氏が勝利するかも知れないと言われていたことすらあったのですが、民主党幹部の裏工作、大手メディアの加勢で何とか乗り切ることができました。この間の事情を櫻井ジャーナル(2016年6月17日)は次のように書いています。

 ところで、民主党幹部たちが昨年5月26日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆する電子メールが公表されている。本ブログでは何度か取り上げたように、昨年6月11日から14日にかけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加、欧米の支配層は彼女を大統領にする方向で動き出したと言われていたわけで、この電子メールの内容は驚きでない。
この内定を揺るがしたのがサンダース。急速に人気を集め、支持率はヒラリーと拮抗するまでになった。ただ、そうした動きが現れる前に選挙人登録は終わっていたため、支持率が投票に反映されたとは言い難い。例えば、4月に投票があったニューヨーク州の場合は昨年10月9日までに民主党と共和党のどちらを支持しているかを登録しておかないと予備選で投票できず、投票できなかった人が少なくない。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20160617/


 このニューヨーク州の事態については長周新聞2016年5月4日で、私は「続・世界に恥ずべきアメリカの選挙制度」と題して既に拙論を載せてあったのですが、サンダース氏の進出を阻止する動きがもっと露骨になったのはカリフォルニア州の予備選でした。
 それを櫻井ジャーナルは上記に続けて次のように書いています。

 支持政党を登録していなくても投票できるカリフォルニアで予備選が行われる直前の世論調査ではサンダースがクリントンをリード、幹部たちを慌てさせたようだ。民主党支持者ではサンダースが57%、クリントンが40%、無所属の人ではそれぞれ68%と26%だとされている。
そうした状況の中、予備選の前夜にAP通信は「クリントン勝利」を宣告した。「スーパー代議員(上位代議員、あるいは特別代議員と訳されている)」の投票予測でクリントンが圧倒し、勝利は確定しているというのだ。この「報道」がカリフォルニアにおける予備選でサンダースへの投票を減らしたことは間違いないだろう。
カリフォルニア州の場合、本ブログではすでに紹介したように、投票妨害とも言えそうなことが行われていたという。政党の登録をしなかった人びとはサンダースを支持する人が多く、民主党の登録をしている人はヒラリー支持者が多いが、登録しているかしていないかで投票用紙が違う。
投票所によっては投票用紙を受け取ろうとすると、政党無登録の人には予備選に投票できない用紙を自動的に渡す投票所があったという。投票するためには民主党支持変更用紙を要求しなければならない。予備選に投票するにはどうすべきかと尋ねられた係員は、政党無登録の人には民主党用の用紙は渡せないと答え、民主党支持変更用紙のことには触れないよう指示されていたケースもあったようだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20160617/


 こうした動きのなかで、突如、サンダース氏は選挙戦から降りると宣言し、勢いを増しつつあった支持者の運動や願いを裏切り、あろうことか「ヒラリー女史こそ大統領としてベストの候補者だ」という演説までもするようになりました。
 ではサンダース氏が今まで言ってきたこと、「ヒラリー女史はウォール街と一心同体であり富裕層の代弁者だ」という言はどこへ行ったのかと、支持者たちはやりきれない思いをしたに違いありません。
 ヒラリー女史および民主党幹部とサンダース氏の間に、裏でどんな取引があったのか分かりませんが、とにかくヒラリー女史はこうして無事に予備選をくぐり抜け、本選に挑むことができるようになりました。
 しかし相手は共和党のなかでさえ評判の悪いトランプ氏ですから、ヒラリー女史は本選では楽勝となり、「アメリカ史で初めての女性大統領」という栄冠を難なく手にすることができると思われていました。
 ところがウィキリークスがヒラリー女史や民主党幹部の裏舞台を暴露し始めた頃から雲行きが怪しくなってきました。
 元共和党政権の経済政策担当の財務次官補のポール・グレイグ・ロバーツは自分のブログ(2016年10月5日)で、それを次のように書いています。

・・・。彼女は、ウオール街・巨大銀行・軍-安保複合体の巨大な政治力を有するひと握りの連中、および外国利益の集団によって買収されている。その証拠は、クリントンの12,000万ドルという個人資産と、二人の財団の160,000万ドルだ。ゴールドマン・サックスは、講演で語られた智恵に対して、ヒラリーの三回の20分講演に、675,000ドルを払ったわけではあるまい。・・・
* Washington Leads The World To War「世界を戦争へと導くワシントン」
http://www.paulcraigroberts.org/2016/10/05/washington-leads-the-world-to-war-paul-craig-roberts/


 上記で登場するゴールドマン・サックスは、2008年の世界金融危機の震源地のひとつとなった世界最大級の投資銀行です。そのように世界経済を破壊した機関で講演すること自体が問題ですが、その謝礼も私たち凡人の想像を絶する金額です。
 かつて私が大学教授として60〜90分の講演をしても、その謝礼は3〜5万円でしたから(ときには全く無料のものもあります)。ところがヒラリー女史は、そこで20分の講演を3回しただけで、67万5000ドル(約7000万円)の謝礼です。つまり、1回20分で約2300万円もの大金がもらえるのですから、いかに破格の謝礼であるかがよくわかるはずです。
 だからこそ、世界金融危機につながった住宅ローン担保証券の不正販売を巡る事件は、ゴールドマン・サックスから誰一人として刑務所に送られたものはなく、2016年1月に制裁金等33億ドルと借り手救済金18億ドルの和解金で決着してしまったのでしょう。世界最大級の投資銀行としては、おそらく、全くの端金(はしたがね)だったに違いありません。
 かつて民主党の支持基盤のひとつは労働組合だったのに、夫のビル・クリントンが大統領だったときにNAFTA(米国、カナダ・メキシコ3カ国による域内貿易自由化取り決め)によって、大企業がメキシコなどの国外へと移転して、労働者の多くは仕事を失いました。その結果、多くの労働組合が縮小・解体され、民主党は新しい財政基盤を必要とするようになりました。
 民主党が、労働者や一般民衆ではなく、財界や金融街に頼らざるを得なくなった物質的基盤は、このようなところにあります。自ら墓穴を掘ったと言うべきかも知れません。
 NAFTAを通じてビル・クリントンが追求した新自由主義政策は、貧富の格差を広げましたから、勤労者や貧困者から見れば、民主党というのは共和党と何も変わらない政党になったわけです。(日本の民進党と自民党も、全く同じ流れです。)
 
 
 このような貧困化しつつあるアメリカ民衆の不満を代弁したかたちで登場したのが、民主党ではバーニー・サンダース氏であり、共和党ではドナルド・トランプ氏でした。しかし先述のとおり、サンダース氏は支持者を裏切るかたちで選挙戦から身を引きました。しかしトランプ氏の場合、共和党の幹部・特権階級からの妨害をものともせず進撃しつつあります。
 そして、かつては黒人票は民主党のものと思われていたのに、トランプ氏は着実に黒人票をも獲得しつつあるようです。とくに貧困層の黒人は、ヒラリー女史に見切りをつけ、トランプ氏に流れているようです。最近それを象徴する事件がありました。
 映画産業で有名なハリウッドの大通りには、有名スターの名前が入った星形メダルが埋め込まれた街路「ウォーク・オブ・フェイム」があるのですが、そのひとつにトランプ氏の名前が刻み込まれています。
 ところがヒラリー女史の支持者が、この刻み込まれたトランプ氏の名前をツルハシで破壊する事件が起きました。それにたいして今度は、この刻み込まれたトランプ氏の名前を守ろうとして座り込む女性が現れました。
 しかし、ここにもうひとつの事件が起きます。この座り込んでいた一人の黒人女性(しかもホームレスの老いた黒人女性だった)にたいして、なんとヒラリー女史支持者たちが罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせかけ、彼女の衣類などが入っていたカートを彼女もろとも引っくり返して足蹴にする事件が起きたのです。
 そのうえ、なぜトランプを支持するかを書いた彼女のビラやポスターをずたずたに引き裂くようすがユーチューブに載せられたのでした。
 RT(2016年10月29日)の記事によれば、そのポスターのひとつには「オバマはクリントン一家に恩義を感じて我々黒人どもをバスの下に投げ込んでいる」といった文句が書かれていたそうです。
* Violent crowd attacks, insults homeless woman guarding Trump's Hollywood star
* 「暴力的群衆が、ハリウッド大通りに刻まれたトランプ氏の名前を守る女性を、襲ったり辱めたりした」

https://www.rt.com/usa/364631-crowd-attacks-homeless-trump/


 ロサンゼルス・タイムズは、今やカリフォルニア州立大学[全部で23校から成るが全体でひとつの大学機構]の学生の、10人に1人がホームレスだと報じ(2016年6月20日)驚かされましたが、このような事態を生み出した民主党の特権階級にたいする怒りが、ホームレスの老いた黒人女性を上記のような行動に駆り立てたのではないでしょうか。

* 1 in 10 Cal State students is homeless, study finds
「カリフォルニア州立大学の10人に1人がホームレス」

http://www.latimes.com/local/lanow/la-me-cal-state-homelessness-20160620-snap-story.html


 オバマという、「アメリカ史上、初の黒人大統領」と持てはやされる人物を頭(かしら)にいだく民主党政権が、貧富の差を拡大させ、黒人どころか白人のホームレスまでもアメリカ全土に広がりつつあるのですから、実に皮肉と言えば皮肉です。


 このような事態を考えると、社会主義者を自称するサンダース氏が選挙戦から落馬した現在、共和党から出馬したトランプ氏がアメリカ民衆の怒りを一身に背負うことになってきたことは、ある意味で当然のこととも言えます。
 これを裏書きするような象徴的な爆弾が、映画監督マイケル・ムーアによって投げつけられました。ムーアと言えば、映画『華氏911』やアメリカ医療を鋭く告発した映画『シッコ』などで有名ですが、そのムーア監督が、今度はトランプ氏を題材とした映画『トランプ・ランド』をつくりました。その映画上演会のため訪れたオハイオで彼は次のようなスピーチをして聴衆を驚かせました。

「トランプ氏に投票する人たちは、必ずしもそんなに彼が好きなわけではありませんし、必ずしも彼の意見に同意しているというわけでもありません。彼らは必ずしも人種差別主義者ではありませんし、白人の肉体労働者でもありません。じっさい彼らはかなり礼儀正しい人たちです」
「ドナルド・トランプ氏はデトロイト経済同友会にやって来て、フォード社の経営陣の前に立ってこう言ったのです。『あなた方がデトロイトでやろうと計画しているように、これらの工場を閉鎖してメキシコで建て直すつもりなら、そしてそこで生産した車をアメリカに送り返すなら、私はそれらの車に35パーセントの関税率をつけるつもりだ。そうすれば誰もそれらを買わないだろう』」
「それは、驚くべきことでした。政治家の誰も、共和党員であれ民主党員であれ、これまでに誰もそんなことを、これらの経営陣に言ったものはいません。それは、ミシガン州、オハイオ州、ペンシルバニア州、ウィスコンシン州の民衆の耳には実に心地よい調べだったでしょう。Brexitの諸州、つまりアメリカから脱出しようとする大企業の存在する州では、民衆は同じ思いで聴くでしょう」
「トランプ氏の言っていることが本気かどうかは、ここではあまり関係がありません。なぜなら、それは傷ついている人々が聴きたいと思っていたことだからです。だからこそ、あらゆる打ちのめされて役立たずになり忘れさられた一般労働者、いわゆる中流階級の一部を成す人々のすべてが、トランプ氏を好きになるのです」
「トランプ氏は、そのような人たちの待ち望んでいた人間火焔瓶・人間手榴弾なのです。彼らは、自分たちから生活を盗み奪った組織や機構に、それを投げ込むことができるからです」
「そして11月8日は選挙の投票日です。民衆・勤労者は仕事を失い、銀行によって家を差し押さえされ、次にやってきたのが離婚。今や妻と子供は去って自分のところにはいない。そして車も回収・没収。彼らは何年ものあいだ本当の休暇をとったことがない。くそにもならないオバマケア(医療保険改革法)ブロンズプランは、お先真っ暗。この保険では解熱剤すら手に入らない。要するに彼らは持てるもの全てを失ったのです。民衆の手に残されたものがひとつだけあります。それをもつには1セントのお金すら必要ありません。それは合州国憲法によって所有が保証されているからです。それが投票権です」
* Michael Moore just gave the most convincing speech for Trump
* 「マイケル・ムーアが、今までのなかで最も説得力のある演説を、トランプ氏のためにおこなった」

http://redalertpolitics.com/2016/10/26/michael-moore-just-gave-convincing-speech-trump-video/#dJRVoxe3kmvHf6MJ.99


 ムーア監督のスピーチは、まだ続いているのですが長くなるので、翻訳はここで止めます。ただスピーチの最後が次のよな文句で結ばれていることだけを紹介しておきます。
 「トランプが選ばれれば、人類史に記録された最大のイベントになること間違いなしです。『やってやったぜ、この野郎!』というわけです。勤労大衆にはさぞかし気持ちのよかったことでしょう」
 今までサンダースを支援していたムーア監督が、ことここに至って、このようなスピーチをせざるを得なくなった悔しさがにじみ出ているようなスピーチではありませんか。
 ゼネラルモーターズの生産拠点の一つであったミシガン州フリントで生まれたムーア監督が、故郷フリントの自動車工場が閉鎖され失業者が増大したことを題材にしたドキュメンタリーの名作『ロジャー&ミー』をつくっているだけに、この無念さはひとしおだったことでしょう。
 
 
 さて、このようなトランプ氏の動きに対してヒラリー女史はどのように対応したでしょうか。
 最初は財界寄りの政策でしたがサンダースの打ち出す政策が民主党の若者や貧困層の支持を得て自分が劣勢になりそうなのに気づいて、TPPなど民衆の生活を破壊する政策に反対を表明するように変わってきました。
 しかし最近のウィキリークスが暴露したところによると、「政治家は表の顔と裏の顔があるのは当然だ」とする意見を彼女は身内のものに漏らしています。さらに予備選では「左寄りの政策を掲げても本選では右に戻せばよい」とも語っています。
 もっと恐ろしいことには、RT(2016年10月29日)の記事によれば、彼女は『Jewish Press』というユダヤ人のための週刊紙のインタビューで、「パレスチナの選挙に裏工作をしてファタハを勝たせるべきだった、そうすればハマスの一派が勝利することはなかった」とすら述べています。
* Clinton bemoans US not rigging 2006 Palestinian election in newly-released tape
* 「クリントンは、新しく公開されたテープ録音のなかで、2006年のパレスチナにおける選挙で不正操作しなかったことを、悔いている」

https://www.rt.com/usa/364628-clinton-rigging-palestine-tape/


 このようにヒラリー女史は、他国の選挙に干渉して傀儡(かいらい)政権をつくることを何ら悪いことだと思っていないのです。
 2014年年[ママ]のウクライナ政変では、彼女の盟友であるヌーランド国務次官補が、米国ウクライナ大使と一緒になって反政府デモに加わり、デモ参加者にお菓子を配って歩いている光景が堂々とテレビ画面に登場していますが、これほど露骨な内政干渉はないでしょう。
 (ロシアの外務省高官や在米大使館員が、ニューヨークその他のデモや集会、座り込みテントに参加して、差し入れなどすれば、アメリカがどんな態度をとるか。想像してみればすぐ分かることです。)
 ところがトランプ氏との論争になると、ヒラリー女史は、政策をめぐる論争はほとんどやめてしまい、「トランプ氏はプーチンの操り人形だ」とか「ウィキリークスによるヒラリー関係のメール暴露は、プーチンがアメリカのコンピュータに侵入してウィキリークスに渡したものだ」といった主張を繰りかえすだけになってしまいました。政策論争ではトランプ氏と争っても勝ち目がないということを自ら認めたに等しいでしょう。
 それどころか、自分が国務長官として公的なメールサーバーを使うべきだったのに、私的サーバーを使って外部から侵入しやすくなったことにたいする反省もありませんし、その漏れた国家的重要機密情報が、リビアのアメリカ大使館に勤務する大使その他の職員を死に至らしめる結果になったかも知れないのに、そのことにたいする反省もありません。
 もっと奇妙なのは、このように私的サーバーを使って最高機密情報を漏らした当人は、FBIから訴追されることもなく堂々と選挙に出馬できているという事態です。イラクにおける米軍の悪事を暴いたマニング上等兵が牢獄につながれ元情報機関職員だったスノーデンが亡命に追い込まれたのとは、天と地の違いです。「悪いやつほどよく眠る」の典型例と言うべきかも知れません。
 
 
 ここまでは、ドナルド・トランプ氏と比較しながらながら[ママ]、アメリカの国内政策を中心にして「ヒラリー・クリントンとは誰か」を論じてきたのですが、以下では外交政策をとりあげてヒラリー女史の問題点を探ってみたいと思います。
 しかし、これを論じていると長大なものになる予感がするので、今回は幹の部分だけを紹介して詳しくは次回に譲りたいと思います。
 それはともかく、ヒラリー女史とトランプ氏の外交政策における最大の違いは、ロシアとどう対峙するかという問題です。いまアメリカはシリアにおける内戦をどう解決するかという点で、ロシアと鋭く対立しているからです。
 いまヒラリー女史がシリア情勢で強く主張しているのは「リビア内戦時と同じようにシリアにおいても飛行禁止区域をもうけるべきだ」ということです。その理由としてあげられているのが、「ロシア軍とシリア政府軍がシリア第二の大都市アレッポを無差別に爆撃し一般市民からたくさんの犠牲者が出ているから」という口実です。
 これにたいしてトランプ氏は次のように主張しています。
 「アメリカは他国に内政干渉したり政権転覆に手を出すべきではない。国内には問題が山積していて他国に手を出す余裕などないはずだ」
 「今はロシアと手をつないで、『アルカイダ』『イスラム国』といったテロリスト=イスラム原理主義者集団をシリアから追い出すべきだ」
 これに関してロシアもシリア政府も、「リビア内戦時と同じようにシリアにおいても飛行禁止区域をもうけるべきだという主張は、シリアをリビアと同じような混乱に陥れ、シリアを破壊・解体して、さらに死傷者と難民を激増させるだけだ。休戦地帯をもうけろと言う主張は、テロと戦うという名目でアサド政権をつぶそうとする隠れ蓑にすぎない」と反論しています。
 この飛行禁止区域の設定については、ロシアもシリア政府も次のように主張し、アメリカの要求をきっぱりと退ける姿勢を示しています。
 「アレッポの東部地区を占拠して一般市民を『人間の盾』としながら休戦協定を無視してアレッポの西部地区の一般市民を無差別に攻撃しているのは、むしろ反政府勢力のほうだ。しかも彼らはアメリカの主張する『穏健派』どころか、『アルカイダ』『イスラム国』の一派であり、シリアには『穏健派』など存在しない」
 
 
 ですから、このまま緊張状態が続けば、アメリカ軍とロシア軍との直接的な戦闘になり、いつ世界大戦になるか、いつ核戦争になるか分からない情勢です。トランプ氏は『アルカイダ』『イスラム国』といった過激なイスラム原理集団をつくり出したのは、アメリカなのだから、そのような政策から手を引くべきだ」と言っているのですから、今までの感覚でアメリカを見ていたひとたちは頭が混乱するかも知れません。
 というのは、従来の図式からすれば、民主党=リベラル=ハト派であり、共和党=保守派=タカ派なのに、ヒラリー女史の方がトランプ氏よりはるかに好戦的だからです。 トランプ氏は、ロイター通信(2016年110月25日)によれば、「ヒラリー氏が大統領になれば第三次世界大戦になりかねない」とすら主張しているのです。
 これはトランプ氏の単なる選挙戦術のようにもみえますが、同じ警告はあちこちから聞こえてきます。
 すでに前半で紹介したように、元共和党政権の経済政策担当の財務次官補だったポール・グレイグ・ロバーツは自分のブログ(2016年10月5日)で、下記のような「戦争に導くワシントン」という記事を書いてています。
* Washington Leads The World To War「世界を戦争へと導くワシントン」
http://www.paulcraigroberts.org/2016/10/05/washington-leads-the-world-to-war-paul-craig-roberts/


 またイギリスの保守的高級紙と言われるインデペンデント紙(2016年10月25日)も次のような論文を載せています。
* Could Hillary Clinton start a world war? Sure as hell she could ? and here's how
*「ヒラリー・クリントンは世界大戦を始める可能性があるか?確かにそうだ。それはこうして始まる」

http://www.independent.co.uk/voices/could-hillary-start-a-world-war-sure-as-hell-she-could-and-here-s-how-a7379051.html


 どちらかというと今まではトランプに批判的だったインデペンデント紙がこのような論説を載せるようになったこと自体が、現在の情勢がいかに緊迫しているかをしめすものではないでしょうか
 
 
 もっと驚いたことには、調べてみると既に4月の時点で、クリントン氏の自叙伝の著者ディアナ・ジョンストン氏は、イタリアのイオ・ジョルナーレ紙のインタビューで、「クリントン氏の大統領選の勝利は、第三次世界大戦の勃発も含め予想外の結果をもたらす可能性がある」と語っているのです。
 RTの記事(2016年4月29日)によると、ジョンストン氏は次のように語っています。

クリントン氏がまだ国務長官に在任していた頃、押しの強い外交政策を掲げていた。クリントン氏はアメリカのイラク侵攻及びリビアでの戦争参加を支持し、そして現在はシリアのバッシャール・アサド大統領に反対する姿勢を支持している。これに加え、クリントン氏は反ロシア的見解に固執している。世界は不安を呼び起こすような選挙公約を掲げるクリントン氏の「積極的な活動」に対して用心するべきだ。クリントン氏は外交の代わりに軍事力を用い、あらゆる事件が第三次世界大戦を引き起こしかねないほどにNATOを強化するつもりである。
https://jp.sputniknews.com/us/201604292050173/


 このように、今まさに世界はアメリカ大統領選挙を前にして「伸るか反るか」の曲がり角に来ているのです。にもかかわらず、アメリカや日本の、リベラルを自称する知識人も大手メディアも、「アメリカ史上、初の女性大統領」という殺し文句に惑わされて、現在の深刻な事態が見えなくなっているように思われます。
 しかし現在の事態の深刻さを理解してもらうためには、ヒラリー女史が国務長官だったときだけでなく、それ以前に外交政策で彼女が何を主張し、どのような行動をとってきたかを、もっと詳しく説明する必要があります。
 とはいえ、すでに長くなりすぎていますので、これについては、次回の論考に譲りたいと思います。



投稿者より


アメリカ大統領選挙をめぐって阿修羅掲示板にも紹介されていたさまざまな記事から断片的には知っていた内容が、わかりやすく整理されて全体像として描き出されている。「ヒラリー女史」という呼び方にはひっかかりを覚えるが、みごとなまとめ記事だと思う。


この記事のことは「晴耕雨読」ブログによる紹介で知った。
「ヒラリー・クリントンとは誰か――アメリカ大統領選挙を目前にして 寺 島 隆 吉:長州新聞」(2016年11月7日 晴耕雨読)
ヒラリー・クリントンとは誰か   国際教育総合文化研究所 寺島隆吉(2016年11月2日 長周新聞)
長周新聞に掲載された元記事のさらにオリジナルとおもわれるのが、「百々峰だより」のブログ記事だ。「百々峰だより」からの転載にあたり、投稿者が記事中の漢数字を半角算用数字にあらため、一部注記も付した(※、ママ)。


投稿者が「百々峰だより」に出会うのはこれで2回目だ。今年1月、国連人権理事会の独立専門家アルフレッド・デ・サヤスという人が、TPP関係各国政府にたいして、TPPに署名も批准もしないようにとの異例の呼びかけをおこなった。その声明文が国連人権高等弁務官事務所のサイトに英文で掲載されていることがわかり、なんとか読解しようとしていたとき、それをすでに日本語訳してくれているサイトをみつけた。それが「百々峰だより」だった。うれしい再会だ。
署名も批准もするな! TPP署名式の直前に国連が各国政府にたいして異例の呼びかけ(2016年2月24日 百々峰だより)
≪署名も批准もするな!≫TPP署名式の直前に国連が各国政府にたいして異例の呼びかけをしていたことが判明!(健康になるためのブログ|赤かぶ 2016年3月17日)

http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/162.html

[地域13] [新潟]県連拡大幹事会/森氏、自由党所属を表明|小沢代表/共闘へ調整急ぐ(新潟日報)
県連拡大幹事会/森氏、自由党所属を表明/「活動に制約、復帰必要」
新潟日報[2面] 2016年11月06日


 7月の参院選新潟選挙区(改選数1)で野党統一候補として当選し、無所属で国会活動をしている森裕子参院議員は5日、近く自由党の所属議員となる考えを明らかにした。森氏は自由党県連代表だが、参院選時に支援を受けた市民団体と「当面は無所属で活動する」との協定を交わしていた。森氏は無所属では活動に制約があるとし「期待に応えるには、早い(所属)復帰が必要だと思っている」と述べた。


 新潟市中央区で開いた自由党県連の拡大幹事会で提案し、承認された。参院選で支援を受けた民進、共産、社民の各党県組織、連合新潟、市民団体「市民連合@新潟」には、既に相談しているが、正式に承諾を得た上で手続きを行うとした。


 森氏が所属すれば、自由党の国会議員は6人となる。参院では自由、社民両党が統一会派「希望の会」を結成しており、森氏も同会派に入ることになる。


 森氏は幹事会で、環太平洋連携協定(TPP)承認案などの審議が参院で始まる見通しとなったことも指摘し「無所属では正直、何もできない。できるだけ早く手続きをしたい」と理解を求めた。幹事会後の取材には「無所属は委員会での発言など、あらゆる面が制限される」と強調。「当面という約束は守らせていただいた。理解は得られると思っている」と話した。


 幹事会には自由党の推薦を受けて10月の知事選で初当選した米山隆一知事も出席し、あいさつした。選挙戦で反対を訴えていたTPP承認案に触れ、「きちんとした情報、審議がないままだ。このままでは県農業が大打撃を受ける。参院では森氏の追及で、廃案にもっていってほしい」と述べた。




小沢代表/共闘へ調整急ぐ/民進・野田幹事長と一致
新潟日報[2面] 2016年11月06日


 自由党の小沢一郎共同代表は5日、新潟市中央区で開かれた同党県連の拡大幹事会に出席し、次期衆院選での野党共闘について、民進党の野田佳彦幹事長と会談し、調整を急いでいることを明らかにした。来年1月の衆院解散を想定する必要があるとし、「今月中には粗々にでも共闘態勢をつくらないといけない」と述べた。


 小沢代表は野田幹事長からの申し入れを受け、10月29日と今月2日に会談を行ったと説明。「野田さんとは犬猿の仲ともいわれるが、過去のいきさつは関係ない。国の将来のため、互いに力を合わせることで一致した」と話した。


 また、小沢代表は「野党が一つになれば、負けないということを新潟県知事選が証明し、中央政界にも大きな影響を与えている」と述べ、野党が推した米山隆一氏が当選した10月の知事選の意義を強調。「野田さんが私と話してみようという気分になったのも、そのせいかもしれない。野党が個別では自民党に勝てない。今後、(共闘の)流れが加速すると思う」と述べた。




同日付の新潟日報記事(投稿者による紹介)


福島・整備場 洗車で放射性汚泥/国、東電 対策取らず/推計数千トン 最大6万ベクレル[1面]
民進、8日にも農相不信任案[1面]
国の農業経営支援/補助金制度 運用ずさん/目標設定未検証も[2面]
「1月解散風」勢い陰る/政府・与党 幹部一転火消し/「偽装」との観測も[3面]
福島「洗車汚泥」/"第2の汚染水"業界緊迫/危険な手作業 保管場所限界/震災直後、本県でも検出[27面]
原発避難で富岡町長/来年1月末に解除時期決定[27面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/782.html

[テスト31] テスト
ヒラリー・クリントンとは誰か(下)(百々峰だより)


ヒラリー・クリントンとは誰か(下)―アメリカ大統領選挙を目前にして
2016年11月7日 百々峰だより
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-276.html



[写真]カダフィ惨殺を知らされ、「来た、見た、死んだ」と言って喜色満面の笑みをうかべるヒラリー・クリントン

 
 
私は前回の論考「ヒラリー・クリントンとは誰か」(11月2日号)を次のように結びました。
「このように、今まさに世界はアメリカ大統領選挙を前にして『伸るか反るか』の曲がり角に来ているのです。にもかかわらず、アメリカや日本の、リベラルを自称する知識人も大手メディアも、『アメリカ史上、初の女性大統領』という殺し文句に惑わされて、現在の深刻な事態が見えなくなっているように思われます。
 しかし現在の事態の深刻さを理解してもらうためには、ヒラリー女史が国務長官だったときだけでなく、それ以前に外交政策で彼女が何を主張し、どのような行動をとってきたかを、もっと詳しく説明する必要があります。とはいえ、すでに長くなりすぎていますので、これについては、次回の論考に譲りたいと思います。」
 そこで今回は、ヒラリー・クリントンなる人物が、アメリカの国務長官として何をしてきたかを、まず調べてみることにします。
 
 
 さて「国務長官」というと、まるでアメリカの国内行政における最高責任者のように聞こえてきますが、実は日本の「外務大臣」にあたる外交政策の責任者です。
 アメリカの「防衛省」は、今は「防衛総省」(別名ペンタゴン)と言っていますが、かつては「戦争省」と言っていました。
 日本では「陸軍省」と誤訳(意図的?)されていますが、第二次大戦が終わる前までの正式名称は、「United States Department of War」すなわち「アメリカ戦争省」でした。
 まるで外国にたいして侵略戦争をし続けてきたアメリカの歴史を象徴するような名称ですが、アメリカにとって軍事力による外交=戦争は、内政よりも重要な「国務」であったからこそ、「外務省」を「国務省」(United States Department of State)と名付けたのかも知れません。
 アメリカ軍人として伝説的な英雄スメドレー・バトラー将軍は、退職したあと自分が軍人として果たしてきた役割を振り返って『戦争はペテンだ』という著書を著し、そのなかで、右のような事情を、次のように述べています。


 私は、大企業、ウォール街、銀行、お偉方の用心棒として時を過ごした。要するに私は資本主義に奉仕する恐喝者でありギャングの一員だった」「私はウォール街の利益のために中米の6つの共和国の略奪を手伝った。恐喝の記録は長い」「ギャングの親玉アル・カポネがやれたのは、せいぜい3つの地区のボロ儲けの口を操っただけのことだ。私なんか3大陸を操ったんだ(『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻442頁)


 このスメドレー将軍のことばは、アメリカ外交の本質を赤裸々に暴露しているのではないでしょうか。
それはともかく、ブッシュ氏が大統領になったとき、「9・11事件」を口実にアフガニスタンを爆撃し、それをイラクへの侵略戦争に拡大したのですが、それでもアメリカによる戦争は中東の小さな範囲にとどまっていました。ところがオバマ大統領とヒラリー国務長官のもとで、戦火は一気に地中海沿岸の北アフリカ(リビアの内戦)や東ヨーロッパ近辺(ウクライナやシリアの内戦)にまで拡大しました。
 それどころか、今まではブッシュ大統領が表立って手出しをしなかった中南米にまで手を出してクーデター工作をおこなうようになりました。このような戦争やクーデターの拡大に深く関わってきたのが、ヒラリー国務長官でした。
 いま深刻な人道危機をもたらしているシリアの内戦について、ヒラリー女史が「リビアと同じような飛行禁止区域をもうけるべき」だと強く主張していることは、前回の拙稿で紹介したとおりです。
 アサド政権の要請でロシアが本格的にイスラム原理主義集団の掃討作戦に乗りだし、彼らの拠点を空爆し始めてからは、ダーイッシュ(今まではISISとかイスラム国と呼ばれていた)などのイスラム原理主義集団諸派は、負け戦です。
 サウジを中心とする湾岸諸国が資金と人員を供給し、アメリカやNATO諸国が(さらにイスラエルも)裏で武器や特殊部隊を派遣して軍事訓練をしてきたにもかかわらず、この状態なのです。
 アメリカの基本戦略は、あくまでアサド政権の転覆です。そのためにはロシア軍の空爆をやめさせる必要があります。ロシア軍の空爆はアサド政権の正式な要請によるものですから、国際法に則った行為ですが、イスラエルやNATO諸国(トルコも含む)のシリア領内における空爆は、領空侵犯になりますから、どうしてもリビアの時と同じような「飛行禁止区域」の設定が必要になります。
 これを強く主張しているのが、先述のとおり、ヒラリー女史です。
 しかし、ロシアは安全保障理事国ですから、今のままでは国連の許可を得ることができません。残された道は、偽の人道危機をつくりだして、「ロシア軍やアサド軍は民間人を無差別に殺傷している」とか、「彼らは化学兵器を使っている」とかの口実で、世論を喚起して彼らを押さえ込む以外にありません。
 他方、ロシアの主張は次のとおりです。
 「リビアでは『独裁者カダフィが自国の民衆を無差別に爆撃して大量の死傷者を出している。だから非行禁止区域を』という口実で、カダフィはイスラム原理主義集団と戦う手段を奪われてしまった。その結果、何が生まれたか。国土の荒廃と大量の難民だった。同じことをシリアでも繰りかえすつもりか」
 
 
 シリアになだれ込んでいるイスラム原理主義集団は、サウジを中心とした湾岸諸国からだけでなく、ロシアのチェチェンや中国の新疆ウイグル地区といったイスラム教徒が多い地域からも流入してきています。彼らはロシアや中国を不安定化させる勢力としてCIAが以前から訓練してきた勢力だと言われています。
 ですから、シリアが内戦で崩壊した場合、そこで勝利したイスラム原理主義集団は、次の攻撃目標として、ロシアや中国に還流し、ロシアや中国を不安定化させることに最大の精力を注ぎ込むことになるでしょう。
 今やEUとアメリカに対抗する勢力として経済的にも軍事的にも対抗する大国になりつつある動きを、アメリカとしては何としても阻止しなければなりません。
 BRICSという興隆しつつある経済共同体の中心がロシアと中国だから、これはなおさら、アメリカにとっては放置できない事態です。
 だからこそ、ロシアと中国を不安定化させることが必要なのです。
 かつて中東一円からイスラム原理主義集団(ビンラディンもその中の一人でした)をかき集めてソ連をアフガニスタンに引きずり込み不安定化し崩壊させた方法を、シリアでもやろうというわけでしょう。
 
 
しかし、これはロシアや中国にとっても座視できない重大事です。
 ロシアと違って、中国は表立ってシリアに味方しては来ませんでしたが、最近、中国も、アサド政権を支えるために、裏で大きく動きはじめていると言われるのも、このような情勢から見ると当然のこととも言えます。
 ですから、ヒラリー女史が「シリアに飛行禁止区域を!」と大声で叫び、「ロシアやシリアが言うことをきかないのであれば軍事力の行使もいとわない」と主張することは、世界大戦になることを意味します。
 この戦いは、NATO諸国やサウジなどの湾岸諸国と一緒になって、アメリカが、ロシア=シリア=イラン=中国といった勢力と、軍事力で戦うことになるからです。
 前回の論考で述べたことですが、イギリスの高級紙インデペンデントだけでなく、ヒラリー女史の自叙伝を書いたディアナ・ジョンストンなどが、イタリアの新聞イタビューで「クリントン氏の大統領選の勝利は、第3次世界大戦の勃発も含め予想外の結果をもたらす可能性がある」と語っているのも、このような背景をふまえてのことだと、私は理解しています。
 
 
 ここで、もうひとつ考えておかねばならないことは、ロシアの軍事力はシリアにおける原理主義集団との戦いで明らかになったように、通常兵器ではアメリカ軍をはるかに凌駕しているということです。
 ですから、アメリカ軍がロシア軍や中国軍と戦って本気で勝つつもりならば、残されている手段は核兵器による先制攻撃しかありません。
 しかも集団的自衛権でアメリカに縛られることになった日本も、否応なしに、この核戦争に巻き込まれるかも知れません。
 しかし、いったん核戦争が起きれば、生き残れる国はほとんどないでしょう。今は、それほど深刻な事態なのです。
 
 
 話が少し横道にそれたので、クリントン女史に話を戻します。
 ロシアはヒラリーの主張する「飛行禁止区域の設定」について、「シリアをリビアのように破壊して、再び大量の死傷者を出し、EU全土を更なる難民であふれさせようとするのか」と怒っているわけですが、このリビア内戦にヒラリーは、どのようにかかわっていたのでしょうか。
 2016年10月20日は、リビアの元首だったカダフィ大佐が、アルカイダの一派に惨殺されて5周年になる日でした。
 カダイフィが殺されたとき、ヒラリー女史は国務長官として、NATO軍のリビア攻撃を指揮・監督する立場にいたのですが、カダフィ惨殺の報が届いたとき、CBSのインタビューの中で「来た・見た・死んだ」"We came, We saw, He died" と、身振り手振りをまじえて、嬉しげに言っています。
 この言葉は、共和制ローマの将軍カエサル(日本ではシーザーとして知られている)が言ったとされることば「来た・見た・勝った」をもじったものですが、その嬉しげに語っている映像がユーチューブに流れ、ヒラリー女史の冷酷さ・好戦性を浮き彫りにするものとなりました。
 
 
 では、リビアとはどのような国で、カダフィとはどのような人物だったのでしょうか。
 元財務省省高官(財務次官補)で、かつウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者だったポール・グレイグ・ロバーツ氏は、このカダフィ惨殺5周年の日に、自分のブログで、それを次のように書いています。


ムアマル・カダフィは、世界で最も進歩的な指導者だった。カダフィはリビアの石油の富をリビア国民のために使っていた。
 彼は宮殿ではなく、立派なテントではあるが、テントで暮らしており、アメリカ政府の中東同盟国であるサウジアラビアや産油首長国支配者一族につきものの、ヨーロッパ高級車や他のあらゆる身の回り品のコレクションを持っていなかった。
 リビアでは、教育・医療・電力は無料だった。ガソリンは事実上無料で、1リットル14セントで売られていた。子どもを産んだ女性は現金の助成金を貰い、カップルが結婚すると現金の助成金が貰えた。リビアの国営銀行は無利子で融資し、農民には無償で開業資金を供与した。
* Hillary's War Crime「ヒラリーの戦争犯罪」October 20, 2016
http://www.paulcraigroberts.org/2016/10/20/hillarys-war-crime-paul-craig-roberts/


 ロバーツ氏は、これらの事実を、グローバル・リサーチという独立メディアに載せられた「リビア:知られては困る、カダフィに関する10の事実」という小論に依拠しながら書いているのですが、日本では全く紹介されていない事実ばかりです。
 このロバーツ氏が依拠した小論には、カダフィが計画していた世界最大の灌漑施設の地図も載せられていて、驚かされました。カダフィの言う「緑の革命」は単なる夢想ではなかったのです。
 しかし日本で紹介されているカダフィ像は、アメリカ政府から流れてきた情報にもとづいた「自分の国民を冷酷に支配する独裁者」という悪魔化されたものばかりでした。
* Global Research
"Libya: Ten Things About Gaddafi They Don't Want You to Know"
「リビア。知られては困るカダフィ10の事実」

では、上記のような理想国家をつくろうとしていたカダフィ政権を、なぜアメリカとNATOは倒そうとしたのでしょうか。それをロバーツ氏は、先の引用に続けて次のように書いています。


 カダフィがアメリカ政府から自立していたことが彼の没落をもたらしたのだ。若い頃のカダフィの目標は、アラブを欧米の略奪に抵抗できる一つの連合に組織することだった。
 それが思うように進展しないことにいらだった彼は、汎アフリカ主義に向かい、アメリカのアフリカ軍に参加するのを拒否した。また彼は、ドルではなく金をもとにしたアフリカ統一通貨を導入ようとした。そうすればアフリカをアメリカの金融覇権から解放できるからだ。
 カダフィは、中国のエネルギー企業にリビアのエネルギー資源を開発させた。以前から地中海におけるロシアの存在に腹を立てていたアメリカ政府は、今や中国の存在にも向き合わねばならなくなった。だからアメリカ政府は結論を出した。カダフィは悪い連中と付き合っているので退陣させるべきだと。


 私は今まで、アメリカとNATO軍によるカダフィの追放は、リビアの石油が目当てだとばかり思ってきたのですが、実はもっと深い理由があったのです。「ドルによる世界支配」を維持し、「中国のアフリカ進出」を阻止することが、カダフィ追放の真の理由だったのです。
 では、何を口実に、どのような手段で、カダフィを追放するか。それがアメリカにとって次の問題になります。米軍が直接、アフリカに乗りだしてリビアを破壊するのでは、世界の世論はもちろんのこと、アフガン戦争やイラク戦争に嫌悪感が強くなっているアメリカの世論も賛成しないでしょう。ではどうするか。それをロバーツ氏は先のブログで次のように説明しています。


 アメリカ政府はイスラム原理主義者を使って傭兵を編成し、シリアでと同様、連中を『反政府派』と名付け、リビア政府にけしかけた。
 カダフィ軍が勝っていることが明らかになると、アメリカ政府は、初心(うぶ)で騙(だま)されやすいロシアと中国の政府を罠(わな)にかけ、国連でリビア領空に飛行禁止空域を設定することを認めさせた。それを実行するのはNATO軍だ。
 飛行禁止空域の口実は、カダフィによる民間人攻撃を防ぐためということだった。しかしそれは嘘だった。本当の理由は、主権国家のリビアが自分の領空を使えないようにして、傭兵と戦っている地上軍をリビア空軍が支援できないようにするためだった。
ロシアと中国がこれに騙されて、安全保障理事会の議決で拒否権を行使しそこねると、今度はアメリカとNATO自身が、決議に違反してNATOの空軍力を用いてカダフィ軍を攻撃した。こうして戦局はCIAが組織した傭兵に有利になった。
カダフィは捕らわれ惨殺された。それ以来、かつて繁栄し成功していた国家リビアは混乱・混沌の極みだ。それは、オバマ政権が望んでいたものだ。


 ところが今やイギリスでは議会による調査報告書が、「カダフィが欧米の覇権にとっての障害と見なされていたがゆえにリビアは破壊された」と明白に結論づけているのです。だからこそ、ロバーツ氏は上記のブログを次のように締めくくっているのでしょう。


 注目すべきなのは、ニュルンベルク裁判をもとにした国際法では、彼女が有罪であることは明らかなのに、この戦争犯罪について、この「殺人婆(ばばあ)」(killer bitch)に質問したマスコミは皆無だということだ。
 なぜなら、この戦争はヒラリーが国務長官の職に就いているときに、彼女の監督下で準備されたものだからだ。
 もうひとつ注目すべきなのは、この「殺人婆」を所有している巨大な政治力を持ったひと握りの集団オリガーキーと、連中の手先である「売(ばい)女(た)マスコミ」(presstitute=press+prostitute)は、この戦犯を次期アメリカ大統領にするつもりだということだ。


 この「殺人婆(ばばあ)」や「売女(ばいた)マスコミ」という言葉づかいのなかに、元アメリカ財務省高官だったロバーツ氏の憤りが伝わってくるような気がします。
 ヒラリー女史にたいする怒りもさることながら、ロバーツ氏の大きな怒りは、トランプ叩きに終始しているアメリカの大手マスコミにも向けられているのです。
 それにしても、実名で公けにしているブログなのに、よくぞここまで大胆に言い切れるものだと、その勇気に感心・感動しました。日本の元政府高官に、このようなひとはいるのでしょうか。私は寡聞にして知りません。 *
 以上で「シリアに飛行禁止区域を!」と主張するヒラリー女史の冷酷さ・好戦性が少しは分かっていただけたかと思いますが、これだけでは、リビア空爆の残酷さや戦犯性が今少し伝わりにくいように思いますので、そのようすを物理化学者・藤永茂氏のブログ「私の闇の奥」から引用して紹介したいと思います。
※ 投稿者によるリンクの補足:私の闇の奥
 このブログの日付は「2011年8月31日」となっています。カダフィが惨殺されたのは10月20日ですから、そのことを念頭において読んでいただければと思います。


 いま、リビアについての我々の関心は(好奇心は)、カダフィが何処でどのようにして捕まり、どのように処分されるかに釘付けにされているようですが、我々の本当の関心は、今回のリビア内戦でNATOが何をしたか、何をしているかに集中されるべきだと私は考えます。
カダフィの政府軍による大虐殺からリビア国民を守るという名目の下に開始されたNATOによるリビア空爆は、想像を絶する物凄さで行なわれました。8月23日のNATOの公式発表によると、過去5ヶ月間にNATO空軍機の出撃回数は2万回を超えました。1日あたり130回の物凄さです。
対地攻撃を行なった戦闘爆撃機が一機に複数の爆弾や誘導ミサイルを搭載しているとすると、正確激烈な破壊力を持った数万の爆弾やミサイルがリビアの人々の上に降り注いだことになります。
リビアの人口約650万人、人口的には福岡県と佐賀県を合わせた位の小国です。ミサイルの標的が戦車であれ、輸送車両、船舶であれ、カダフィの住宅であれ、放送局、大学であれ、無人ではない場合が普通でしょうから、多数の人間が殺傷されたに違いありません。8月上旬に、NATO空爆による死者2万という報道がちらりと流れたことがありましたが、あり得ない数字ではありません。
しかも、NATOの反政府軍支援は空爆に限られたわけではありません。大型ヘリコプターなどによる兵器、弾薬、物資の補給も行なわれ、地上でも多数のNATOやCIAの要員が間接的に参戦した模様です。しかし、こうしたNATOの活動の具体的報道は殆ど完全な管制下にあります。
これだけの規模の軍事暴力が、国際法的には全く合法性のないままで(UNの決議内容をはるかに超えて)、人口数百万の小独立国に襲いかかったのです。まことに言語道断の恐るべき前例が確立されました。カダフィと息子たちの今後の命運など、この暴虐行為の歴史的意義に較べれば、三面記事の値打ちしかありません。
※ 投稿者によるリンクの補足:リビア挽歌(2)(2011年08月31日 私の闇の奥)


 これを読んでいただければ、ロバーツ氏が先に、「注目すべきなのは、ニュルンベルク裁判をもとにした国際法では彼女が有罪であることは明らかなのに、この戦争犯罪について殺人婆(killer bitch)に質問したマスコミは皆無だということだ」と言っていたことの意味が、改めてよく理解できるのではないでしょうか。
 そして、満面に笑みを浮かべて「来た・見た・死んだ」と言ったヒラリー女史にたいして、ロバーツ氏が悪罵を投げつけたくなった理由も。
 
 
 それにしても、藤永氏は1926年生まれですから、2016年11月の現在で、氏は90歳前後のはずです。
 九州大学やカナダのアルバータ大学で教鞭を執っていた一流の物理化学者でありながら、老体にむち打ちつつ、NHKや朝日新聞などの大手メディアが目をつむって通り過ぎている事実を掘り起こし、上記ブログを通じてそれを私たちに伝える仕事を続けておられます。
 唯々(ただただ)、頭が下がります。
 
 
ところでリビアの事態は、単にカダフィの惨殺に終わったわけではありませんでした。
 前述のとおり、この戦争は全土を瓦礫に変え、「リビアの民主化」どころか大量の死者と難民をうみだしただけでした。そしてリビアはいまだに混沌の極致にあります。
 そのうえ今度は、このような惨劇をシリアに輸出しようとしているのがヒラリー女史なのです。
 それは単に彼女が「シリアにも飛行禁止区域を!」と叫んでいるからだけではありません。リビアで使ったイスラム原理主義集団を、実際にシリアに輸出しようとしてきたのが、ヒラリー女史を外交政策の責任者とするアメリカだったからです。
 この間の事情を櫻井ジャーナル(2016年8月20日)は次のように伝えています。


 カダフィ体制が倒された直後、リビアのベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、その映像がユーチューブにアップロードされた。その事実をイギリスのデイリー・メイル紙でさえ、伝えている。リビアを侵略した軍隊は空がNATO軍、地上はアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)だった。
リビアを破壊した後、侵略軍はリビア軍の倉庫から武器/兵器を持ち出してトルコへ運んでいる。勿論、戦闘員も同じように移動した。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設。輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。
運び出された武器/兵器の中に化学兵器も含まれ、これをシリアで使い、政府軍に責任をなすりつけてNATO軍が直接、シリアへ軍事介入する口実にしようとしたと言われている。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20160820/


 これを読むと、リビアから傭兵集団が兵器もろともトルコを経由してシリアに輸送されていることが分かります。しかも輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設で、輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたというのですから、二重の驚きです。というよりも二重の犯罪と言うべきかも知れません。それはともかく、櫻井ジャーナルの説明は次のように続いています。


 そうした武器や戦闘員の輸送をアメリカ国務省は黙認した。2009年1月から13年2月まで国務長官を務めたヒラリー・クリントンもこの工作を知っていたはず。
 しかも、クリントンの部下にあたるクリストファー・スティーブンス大使は2012年9月10日、CIAの武器輸送担当者と会談、その翌日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている。勿論、武器はトルコ経由でシリアの侵略軍へ渡される手はずになっていた。
 その9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃されてスティーブンス大使が殺されている。リビア議会が首相を指名する前日だ。その2カ月後にCIA長官を辞めたデイビッド・ペトレイアスはヒラリーと緊密な関係にあることで知られ、このルートからもシリアでの工作を知らされていたはずだ。


 これを読むと、アメリカ大使館や領事館はCIAの拠点になっていることがよく分かります。日本のアメリカ大使館や領事館も同じ機能を果たしているのでしょうか。
 しかし、ここでもっと重大なのは、その領事館が襲撃されてスティーブンス大使が殺されていることです。ヒラリー国務長官が公的なメールサーバーを使わずハッカー攻撃に弱い私的メールを使ったことが、大使殺害につながったかもしれないのです。
 あるいは、うがった見方をすれば、このような極秘事項を手配した人物だけに、それを外部に知られては困るから、密かにテロリスト=傭兵集団に頼んで大使を消してもらったのでしょうか。
 櫻井ジャーナルは、これについては何も述べていないのですが、この私の仮説が正しければ、これほど身の毛のよだつ話はないでしょう。櫻井氏は、これに続けて次のように述べているだけです。


 クリントンは戦争犯罪人と言われても仕方のないようなことをしてきたわけだが、欧米の支配層はクリントンを支持してきた。投機家で体制転覆に多額の資金を提供してきたジョージ・ソロスも支援者のひとり。
この支配層は軍事的に世界制覇を進めるだけでなく、巨大資本が国や国際機関を支配する仕組みを作り上げようとしている。それがTPP(環太平洋連携協定)、TPIP (環大西洋貿易投資協定)、そしてTiSA(新サービス貿易協定)の三点セットだ。[※ 投稿者注―TTIPの誤記だと思われる]

ヒラリー女史の好戦性、あるいはヒラリー女史が大統領になると、なぜ第3次世界大戦になる危険性があるかは、以上の説明で、かなり分かっていただけたのではないかと思います。
 しかし彼女の好戦的履歴は、このリビア爆撃にとどまるものではありません。
 とはいえ、本稿もすでにかなり長くなってきていますので、以下ではその略歴だけを紹介して、この論考を閉じたいと思います。以下の引用は先の櫻井ジャーナル(同日付け)からのものです。


 ウィキリークスによる電子メールのハッキング情報が続いている。今回は投機家で体制転覆に多額の資金を提供してきたジョージ・ソロスだ。
 彼がターゲット国の体制を転覆させるために使っているオープン・ソサエティ基金もハッキングされたという。そうした電子メールの中には、ソロスがヒラリー・クリントンに対してユーゴスラビア=アルバニア情勢に対する対処の仕方をアドバイスするものがある。そのメールが書かれたのは2011年1月24日で、国務長官だったクリントンはソロスのアドバイスに従って動いたようだ。
ヒラリー・クリントンは夫が大統領だった1990年代、マデリーン・オルブライト(国連大使から国務長官)やビクトリア・ヌランド(国務副長官の首席補佐官)と連携して政権をユーゴスラビアに対する先制攻撃へと導いているが、その背後にソロスがいたということだろう。国務長官に就任したオルブライトが主導する形で1999年3月にNATO軍は偽情報で環境作りをしながらユーゴスラビアを先制攻撃、ひとつの国を破壊した。


 上記に登場するマデリーン・オルブライトとビクトリア・ヌランドという二人の女性は好戦的人物として有名ですが、この二人を、戦争にあまり乗り気ではなかった夫のビル・クリントンに紹介し強引に新しい国務長官や国務副長官の首席補佐官に据え付けたのも、ファーストレディだったヒラリー女史だったと言われています。
 ですから、彼女のタカ派ぶりは、ここでみごとに発揮されていると言えます。
 櫻井ジャーナルの叙述は、さらに次のように続いています。


 2003年11月にはジョージア(グルジア)で「バラ革命」、04年から05年にかけてはウクライナで「オレンジ革命」があり、新自由主義体制になった。当然、一部のグループが不正な手段で国民の財産を奪って莫大な富を築き、その後ろ盾になっていた西側の巨大資本も利益や利権を手にした。こうした「革命」でもソロスはスポンサーとしての役割を果たしていた。
言うまでもなく両国の庶民は貧困化、そうした状況への怒りからソロスたち西側の富豪や巨大資本にとって好ましくない方向へ動いた。そこで仕掛けられたのがウクライナ首都キエフのクーデター。2014年2月22日、ネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を主力とするグループがビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除している。そのクーデターを現場で指揮していたのがヌランド国務次官補だった。クリントンは2013年2月に国務長官を辞めているが、ヌランドは彼女の同志だ。


 私は「バラ革命」や「オレンジ革命」のニュースを聞いたとき、旧ソ連圏の東ヨーロッパで、新しい民衆運動が起きているものと信じていました。
 しかし今から考えると、実に巧妙に仕組まれた「偽の民衆革命」だったのです。これは一種のクーデターでした。
 しかも、このクーデターは東欧だけにとどまりませんでした。ヒラリー国務長官のもとで、クーデターは中米にまで飛び火していました。あの悪名高いブッシュ大統領ですら、やらなかったことです。以下の櫻井氏による説明は次のようになっています。


 クリントンが長官に就任したのはバラク・オバマが大統領に就任した2009年1月のことだが、その年の6月にホンジュラスで実行されたクーデターでクリントンは黒幕的な役割を果たしたと言われている。約100名の兵士が大統領官邸を襲い、マヌエル・セラヤ大統領を拉致し、コスタ・リカへ連れ去っている。
現地のアメリカ大使館は国務省に対し、クーデターは軍、最高裁、そして国会が仕組んだ陰謀であり、違法で憲法にも違反していると報告している。つまり、クーデター政権には正当性がないと明言した。
 このクーデター政権は翌2010年、最初の半年だけで約3000名を殺害したとも報告されている。そのクーデターの背後にクリントン長官がいたということだ。


 以上で櫻井ジャーナルからの引用を終えます。まだまだヒラリー女史の好戦性・冷酷さを示す事例に事欠かないのですが、長くなりすぎていますので、ひとまずここで筆をおきます。今のアメリカ情勢を理解する一助にしていただければ幸いです。
 ただ一つだけ付け加えておきたいことがあります。それはアメリカの民衆が、知れば知るほどヒラリー女史に嫌気がさしているのに、他方の大手メディアがトランプ叩きに終始しているという事実です。
 これでは、アメリカ民衆は「どちらがワルとして我慢できるか」という選択肢しか残されていないことになります。これはアメリカ史上。最悪の大統領選挙と言えるでしょう。
 ただ私たち日本人に一つだけメリットがあるとすれば、今までアメリカは理想の国、民主主義のモデル国だと思われていたのに、それは虚像に過ぎなかったことが、この選挙戦を通じて見えてきたことではないでしょうか。


註1。ヒラリー女史が「来た・見た・死んだ」と嬉しげに言っている映像は、次のURLで見ることが出来ます。
https://www.youtube.com/watch?v=Fgcd1ghag5Y
註2。物理化学者・藤永茂氏の著書には、『分子軌道法』(岩波書店)などといった専門書の他に、『アメリカ・インディアン悲史』(朝日選書)、『アメリカン・ドリームという悪夢、建国神話の偽善と二つの原罪』(三交社)やジョゼフ・コンラッド『闇の奥』(藤永・訳、三交社)といった専門外の本も少なくありません。
 私が藤永氏を初めて知ったのは、20年近くも前に、『アメリカ・インディアン悲史』を読んだときでした。なぜ物理化学者がアメリカ先住民の歴史を書くのか、そのときは理解できませんでしたが、これを書かざるを得なかった氏の気持ちがヒシヒシと伝わってくる名著でした。
 それ以来、インディアン研究者の専門書を機会があれば目を通すのですが、藤永氏の本を超えるものに出会ったことがありません。
註3。ポール・グレイグ・ロバーツのブログについては、「マスコミに載らない海外記事」に載っていた翻訳を参考にさせていただきました。しかし、原文をもとに私が大幅に手を加えてあります。




投稿者より


「マスコミに載らない海外記事」の翻訳によるポール・クレイグ・ロバーツと「櫻井ジャーナル」の記事は阿修羅掲示板にも頻繁に転載されている。検索してみると「私の闇の奥」もたまに転載されているのだが、その話題に自分の関心が向いていなかったためにこれまで一度も開いて読んだことがない。ブログの名前にも見覚えがなかった。しかし『アメリカ・インディアン悲史』なら知っている。繰り返し読んだ時期がある。これはうれしい驚きだった。


記事の内容については特にいうことがない。もちろん事実関係についてはどこまで正しいのか投稿者には判定できない部分があまりにも大きい。このような立場からすると、「殺人婆(killer bitch)」とか「売女マスコミ(presstitute)」とかいったロバーツの言葉づかいにたいしても手放しの共感には躊躇する。


この記事の転載にあたって、投稿者が記事中の漢数字を半角算用数字にあらため、一部注記を付し、リンクしていなかったURLをリンクした。


先行転載記事:ヒラリー・クリントンとは誰か(上)(百々峰だより)(投稿日 2016年11月07日)



http://www.asyura2.com/14/test31/msg/567.html

[国際16] ヒラリー・クリントンとは誰か(下)(百々峰だより)
ヒラリー・クリントンとは誰か(下)―アメリカ大統領選挙を目前にして
2016年11月7日 百々峰だより
http://tacktaka.blog.fc2.com/blog-entry-276.html



[写真]カダフィ惨殺を知らされ、「来た、見た、死んだ」と言って喜色満面の笑みをうかべるヒラリー・クリントン

 
 
 私は前回の論考「ヒラリー・クリントンとは誰か」(11月2日号)を次のように結びました。
「このように、今まさに世界はアメリカ大統領選挙を前にして『伸るか反るか』の曲がり角に来ているのです。にもかかわらず、アメリカや日本の、リベラルを自称する知識人も大手メディアも、『アメリカ史上、初の女性大統領』という殺し文句に惑わされて、現在の深刻な事態が見えなくなっているように思われます。
 しかし現在の事態の深刻さを理解してもらうためには、ヒラリー女史が国務長官だったときだけでなく、それ以前に外交政策で彼女が何を主張し、どのような行動をとってきたかを、もっと詳しく説明する必要があります。とはいえ、すでに長くなりすぎていますので、これについては、次回の論考に譲りたいと思います。」
 そこで今回は、ヒラリー・クリントンなる人物が、アメリカの国務長官として何をしてきたかを、まず調べてみることにします。
 
 
 さて「国務長官」というと、まるでアメリカの国内行政における最高責任者のように聞こえてきますが、実は日本の「外務大臣」にあたる外交政策の責任者です。
 アメリカの「防衛省」は、今は「防衛総省」(別名ペンタゴン)と言っていますが、かつては「戦争省」と言っていました。
 日本では「陸軍省」と誤訳(意図的?)されていますが、第二次大戦が終わる前までの正式名称は、「United States Department of War」すなわち「アメリカ戦争省」でした。
 まるで外国にたいして侵略戦争をし続けてきたアメリカの歴史を象徴するような名称ですが、アメリカにとって軍事力による外交=戦争は、内政よりも重要な「国務」であったからこそ、「外務省」を「国務省」(United States Department of State)と名付けたのかも知れません。
 アメリカ軍人として伝説的な英雄スメドレー・バトラー将軍は、退職したあと自分が軍人として果たしてきた役割を振り返って『戦争はペテンだ』という著書を著し、そのなかで、右のような事情を、次のように述べています。
 私は、大企業、ウォール街、銀行、お偉方の用心棒として時を過ごした。要するに私は資本主義に奉仕する恐喝者でありギャングの一員だった」「私はウォール街の利益のために中米の6つの共和国の略奪を手伝った。恐喝の記録は長い」「ギャングの親玉アル・カポネがやれたのは、せいぜい3つの地区のボロ儲けの口を操っただけのことだ。私なんか3大陸を操ったんだ(『肉声でつづる民衆のアメリカ史』上巻442頁)


 このスメドレー将軍のことばは、アメリカ外交の本質を赤裸々に暴露しているのではないでしょうか。
それはともかく、ブッシュ氏が大統領になったとき、「9・11事件」を口実にアフガニスタンを爆撃し、それをイラクへの侵略戦争に拡大したのですが、それでもアメリカによる戦争は中東の小さな範囲にとどまっていました。ところがオバマ大統領とヒラリー国務長官のもとで、戦火は一気に地中海沿岸の北アフリカ(リビアの内戦)や東ヨーロッパ近辺(ウクライナやシリアの内戦)にまで拡大しました。
 それどころか、今まではブッシュ大統領が表立って手出しをしなかった中南米にまで手を出してクーデター工作をおこなうようになりました。このような戦争やクーデターの拡大に深く関わってきたのが、ヒラリー国務長官でした。
 いま深刻な人道危機をもたらしているシリアの内戦について、ヒラリー女史が「リビアと同じような飛行禁止区域をもうけるべき」だと強く主張していることは、前回の拙稿で紹介したとおりです。
 アサド政権の要請でロシアが本格的にイスラム原理主義集団の掃討作戦に乗りだし、彼らの拠点を空爆し始めてからは、ダーイッシュ(今まではISISとかイスラム国と呼ばれていた)などのイスラム原理主義集団諸派は、負け戦です。
 サウジを中心とする湾岸諸国が資金と人員を供給し、アメリカやNATO諸国が(さらにイスラエルも)裏で武器や特殊部隊を派遣して軍事訓練をしてきたにもかかわらず、この状態なのです。
 アメリカの基本戦略は、あくまでアサド政権の転覆です。そのためにはロシア軍の空爆をやめさせる必要があります。ロシア軍の空爆はアサド政権の正式な要請によるものですから、国際法に則った行為ですが、イスラエルやNATO諸国(トルコも含む)のシリア領内における空爆は、領空侵犯になりますから、どうしてもリビアの時と同じような「飛行禁止区域」の設定が必要になります。
 これを強く主張しているのが、先述のとおり、ヒラリー女史です。
 しかし、ロシアは安全保障理事国ですから、今のままでは国連の許可を得ることができません。残された道は、偽の人道危機をつくりだして、「ロシア軍やアサド軍は民間人を無差別に殺傷している」とか、「彼らは化学兵器を使っている」とかの口実で、世論を喚起して彼らを押さえ込む以外にありません。
 他方、ロシアの主張は次のとおりです。
 「リビアでは『独裁者カダフィが自国の民衆を無差別に爆撃して大量の死傷者を出している。だから非行禁止区域を』という口実で、カダフィはイスラム原理主義集団と戦う手段を奪われてしまった。その結果、何が生まれたか。国土の荒廃と大量の難民だった。同じことをシリアでも繰りかえすつもりか」
 
 
 シリアになだれ込んでいるイスラム原理主義集団は、サウジを中心とした湾岸諸国からだけでなく、ロシアのチェチェンや中国の新疆ウイグル地区といったイスラム教徒が多い地域からも流入してきています。彼らはロシアや中国を不安定化させる勢力としてCIAが以前から訓練してきた勢力だと言われています。
 ですから、シリアが内戦で崩壊した場合、そこで勝利したイスラム原理主義集団は、次の攻撃目標として、ロシアや中国に還流し、ロシアや中国を不安定化させることに最大の精力を注ぎ込むことになるでしょう。
 今やEUとアメリカに対抗する勢力として経済的にも軍事的にも対抗する大国になりつつある動きを、アメリカとしては何としても阻止しなければなりません。
 BRICSという興隆しつつある経済共同体の中心がロシアと中国だから、これはなおさら、アメリカにとっては放置できない事態です。
 だからこそ、ロシアと中国を不安定化させることが必要なのです。
 かつて中東一円からイスラム原理主義集団(ビンラディンもその中の一人でした)をかき集めてソ連をアフガニスタンに引きずり込み不安定化し崩壊させた方法を、シリアでもやろうというわけでしょう。
 
 
 しかし、これはロシアや中国にとっても座視できない重大事です。
 ロシアと違って、中国は表立ってシリアに味方しては来ませんでしたが、最近、中国も、アサド政権を支えるために、裏で大きく動きはじめていると言われるのも、このような情勢から見ると当然のこととも言えます。
 ですから、ヒラリー女史が「シリアに飛行禁止区域を!」と大声で叫び、「ロシアやシリアが言うことをきかないのであれば軍事力の行使もいとわない」と主張することは、世界大戦になることを意味します。
 この戦いは、NATO諸国やサウジなどの湾岸諸国と一緒になって、アメリカが、ロシア=シリア=イラン=中国といった勢力と、軍事力で戦うことになるからです。
 前回の論考で述べたことですが、イギリスの高級紙インデペンデントだけでなく、ヒラリー女史の自叙伝を書いたディアナ・ジョンストンなどが、イタリアの新聞イタビューで「クリントン氏の大統領選の勝利は、第3次世界大戦の勃発も含め予想外の結果をもたらす可能性がある」と語っているのも、このような背景をふまえてのことだと、私は理解しています。
 
 
 ここで、もうひとつ考えておかねばならないことは、ロシアの軍事力はシリアにおける原理主義集団との戦いで明らかになったように、通常兵器ではアメリカ軍をはるかに凌駕しているということです。
 ですから、アメリカ軍がロシア軍や中国軍と戦って本気で勝つつもりならば、残されている手段は核兵器による先制攻撃しかありません。
 しかも集団的自衛権でアメリカに縛られることになった日本も、否応なしに、この核戦争に巻き込まれるかも知れません。
 しかし、いったん核戦争が起きれば、生き残れる国はほとんどないでしょう。今は、それほど深刻な事態なのです。
 
 
 話が少し横道にそれたので、クリントン女史に話を戻します。
 ロシアはヒラリーの主張する「飛行禁止区域の設定」について、「シリアをリビアのように破壊して、再び大量の死傷者を出し、EU全土を更なる難民であふれさせようとするのか」と怒っているわけですが、このリビア内戦にヒラリーは、どのようにかかわっていたのでしょうか。
 2016年10月20日は、リビアの元首だったカダフィ大佐が、アルカイダの一派に惨殺されて5周年になる日でした。
 カダイフィが殺されたとき、ヒラリー女史は国務長官として、NATO軍のリビア攻撃を指揮・監督する立場にいたのですが、カダフィ惨殺の報が届いたとき、CBSのインタビューの中で「来た・見た・死んだ」"We came, We saw, He died" と、身振り手振りをまじえて、嬉しげに言っています。
 この言葉は、共和制ローマの将軍カエサル(日本ではシーザーとして知られている)が言ったとされることば「来た・見た・勝った」をもじったものですが、その嬉しげに語っている映像がユーチューブに流れ、ヒラリー女史の冷酷さ・好戦性を浮き彫りにするものとなりました。
 
 
 では、リビアとはどのような国で、カダフィとはどのような人物だったのでしょうか。
 元財務省省高官(財務次官補)で、かつウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者だったポール・グレイグ・ロバーツ氏は、このカダフィ惨殺5周年の日に、自分のブログで、それを次のように書いています。

ムアマル・カダフィは、世界で最も進歩的な指導者だった。カダフィはリビアの石油の富をリビア国民のために使っていた。
 彼は宮殿ではなく、立派なテントではあるが、テントで暮らしており、アメリカ政府の中東同盟国であるサウジアラビアや産油首長国支配者一族につきものの、ヨーロッパ高級車や他のあらゆる身の回り品のコレクションを持っていなかった。
 リビアでは、教育・医療・電力は無料だった。ガソリンは事実上無料で、1リットル14セントで売られていた。子どもを産んだ女性は現金の助成金を貰い、カップルが結婚すると現金の助成金が貰えた。リビアの国営銀行は無利子で融資し、農民には無償で開業資金を供与した。
* Hillary's War Crime「ヒラリーの戦争犯罪」October 20, 2016
http://www.paulcraigroberts.org/2016/10/20/hillarys-war-crime-paul-craig-roberts/


 ロバーツ氏は、これらの事実を、グローバル・リサーチという独立メディアに載せられた「リビア:知られては困る、カダフィに関する10の事実」という小論に依拠しながら書いているのですが、日本では全く紹介されていない事実ばかりです。
 このロバーツ氏が依拠した小論には、カダフィが計画していた世界最大の灌漑施設の地図も載せられていて、驚かされました。カダフィの言う「緑の革命」は単なる夢想ではなかったのです。
 しかし日本で紹介されているカダフィ像は、アメリカ政府から流れてきた情報にもとづいた「自分の国民を冷酷に支配する独裁者」という悪魔化されたものばかりでした。
* Global Research
"Libya: Ten Things About Gaddafi They Don't Want You to Know"
「リビア。知られては困るカダフィ10の事実」

 では、上記のような理想国家をつくろうとしていたカダフィ政権を、なぜアメリカとNATOは倒そうとしたのでしょうか。それをロバーツ氏は、先の引用に続けて次のように書いています。

 カダフィがアメリカ政府から自立していたことが彼の没落をもたらしたのだ。若い頃のカダフィの目標は、アラブを欧米の略奪に抵抗できる一つの連合に組織することだった。
 それが思うように進展しないことにいらだった彼は、汎アフリカ主義に向かい、アメリカのアフリカ軍に参加するのを拒否した。また彼は、ドルではなく金をもとにしたアフリカ統一通貨を導入ようとした。そうすればアフリカをアメリカの金融覇権から解放できるからだ。
 カダフィは、中国のエネルギー企業にリビアのエネルギー資源を開発させた。以前から地中海におけるロシアの存在に腹を立てていたアメリカ政府は、今や中国の存在にも向き合わねばならなくなった。だからアメリカ政府は結論を出した。カダフィは悪い連中と付き合っているので退陣させるべきだと。


 私は今まで、アメリカとNATO軍によるカダフィの追放は、リビアの石油が目当てだとばかり思ってきたのですが、実はもっと深い理由があったのです。「ドルによる世界支配」を維持し、「中国のアフリカ進出」を阻止することが、カダフィ追放の真の理由だったのです。
 では、何を口実に、どのような手段で、カダフィを追放するか。それがアメリカにとって次の問題になります。米軍が直接、アフリカに乗りだしてリビアを破壊するのでは、世界の世論はもちろんのこと、アフガン戦争やイラク戦争に嫌悪感が強くなっているアメリカの世論も賛成しないでしょう。ではどうするか。それをロバーツ氏は先のブログで次のように説明しています。

 アメリカ政府はイスラム原理主義者を使って傭兵を編成し、シリアでと同様、連中を『反政府派』と名付け、リビア政府にけしかけた。
 カダフィ軍が勝っていることが明らかになると、アメリカ政府は、初心(うぶ)で騙(だま)されやすいロシアと中国の政府を罠(わな)にかけ、国連でリビア領空に飛行禁止空域を設定することを認めさせた。それを実行するのはNATO軍だ。
 飛行禁止空域の口実は、カダフィによる民間人攻撃を防ぐためということだった。しかしそれは嘘だった。本当の理由は、主権国家のリビアが自分の領空を使えないようにして、傭兵と戦っている地上軍をリビア空軍が支援できないようにするためだった。
ロシアと中国がこれに騙されて、安全保障理事会の議決で拒否権を行使しそこねると、今度はアメリカとNATO自身が、決議に違反してNATOの空軍力を用いてカダフィ軍を攻撃した。こうして戦局はCIAが組織した傭兵に有利になった。
カダフィは捕らわれ惨殺された。それ以来、かつて繁栄し成功していた国家リビアは混乱・混沌の極みだ。それは、オバマ政権が望んでいたものだ。


 ところが今やイギリスでは議会による調査報告書が、「カダフィが欧米の覇権にとっての障害と見なされていたがゆえにリビアは破壊された」と明白に結論づけているのです。だからこそ、ロバーツ氏は上記のブログを次のように締めくくっているのでしょう。

 注目すべきなのは、ニュルンベルク裁判をもとにした国際法では、彼女が有罪であることは明らかなのに、この戦争犯罪について、この「殺人婆(ばばあ)」(killer bitch)に質問したマスコミは皆無だということだ。
 なぜなら、この戦争はヒラリーが国務長官の職に就いているときに、彼女の監督下で準備されたものだからだ。
 もうひとつ注目すべきなのは、この「殺人婆」を所有している巨大な政治力を持ったひと握りの集団オリガーキーと、連中の手先である「売(ばい)女(た)マスコミ」(presstitute=press+prostitute)は、この戦犯を次期アメリカ大統領にするつもりだということだ。


 この「殺人婆(ばばあ)」や「売女(ばいた)マスコミ」という言葉づかいのなかに、元アメリカ財務省高官だったロバーツ氏の憤りが伝わってくるような気がします。
 ヒラリー女史にたいする怒りもさることながら、ロバーツ氏の大きな怒りは、トランプ叩きに終始しているアメリカの大手マスコミにも向けられているのです。
 それにしても、実名で公けにしているブログなのに、よくぞここまで大胆に言い切れるものだと、その勇気に感心・感動しました。日本の元政府高官に、このようなひとはいるのでしょうか。私は寡聞にして知りません。 *
 以上で「シリアに飛行禁止区域を!」と主張するヒラリー女史の冷酷さ・好戦性が少しは分かっていただけたかと思いますが、これだけでは、リビア空爆の残酷さや戦犯性が今少し伝わりにくいように思いますので、そのようすを物理化学者・藤永茂氏のブログ「私の闇の奥」から引用して紹介したいと思います。
私の闇の奥 ―投稿者によるリンクの補足
 このブログの日付は「2011年8月31日」となっています。カダフィが惨殺されたのは10月20日ですから、そのことを念頭において読んでいただければと思います。

 いま、リビアについての我々の関心は(好奇心は)、カダフィが何処でどのようにして捕まり、どのように処分されるかに釘付けにされているようですが、我々の本当の関心は、今回のリビア内戦でNATOが何をしたか、何をしているかに集中されるべきだと私は考えます。
カダフィの政府軍による大虐殺からリビア国民を守るという名目の下に開始されたNATOによるリビア空爆は、想像を絶する物凄さで行なわれました。8月23日のNATOの公式発表によると、過去5ヶ月間にNATO空軍機の出撃回数は2万回を超えました。1日あたり130回の物凄さです。
対地攻撃を行なった戦闘爆撃機が一機に複数の爆弾や誘導ミサイルを搭載しているとすると、正確激烈な破壊力を持った数万の爆弾やミサイルがリビアの人々の上に降り注いだことになります。
リビアの人口約650万人、人口的には福岡県と佐賀県を合わせた位の小国です。ミサイルの標的が戦車であれ、輸送車両、船舶であれ、カダフィの住宅であれ、放送局、大学であれ、無人ではない場合が普通でしょうから、多数の人間が殺傷されたに違いありません。8月上旬に、NATO空爆による死者2万という報道がちらりと流れたことがありましたが、あり得ない数字ではありません。
しかも、NATOの反政府軍支援は空爆に限られたわけではありません。大型ヘリコプターなどによる兵器、弾薬、物資の補給も行なわれ、地上でも多数のNATOやCIAの要員が間接的に参戦した模様です。しかし、こうしたNATOの活動の具体的報道は殆ど完全な管制下にあります。
これだけの規模の軍事暴力が、国際法的には全く合法性のないままで(UNの決議内容をはるかに超えて)、人口数百万の小独立国に襲いかかったのです。まことに言語道断の恐るべき前例が確立されました。カダフィと息子たちの今後の命運など、この暴虐行為の歴史的意義に較べれば、三面記事の値打ちしかありません。
リビア挽歌(2)(2011年08月31日 私の闇の奥) ―投稿者によるリンクの補足


 これを読んでいただければ、ロバーツ氏が先に、「注目すべきなのは、ニュルンベルク裁判をもとにした国際法では彼女が有罪であることは明らかなのに、この戦争犯罪について殺人婆(killer bitch)に質問したマスコミは皆無だということだ」と言っていたことの意味が、改めてよく理解できるのではないでしょうか。
 そして、満面に笑みを浮かべて「来た・見た・死んだ」と言ったヒラリー女史にたいして、ロバーツ氏が悪罵を投げつけたくなった理由も。
 
 
 それにしても、藤永氏は1926年生まれですから、2016年11月の現在で、氏は90歳前後のはずです。
 九州大学やカナダのアルバータ大学で教鞭を執っていた一流の物理化学者でありながら、老体にむち打ちつつ、NHKや朝日新聞などの大手メディアが目をつむって通り過ぎている事実を掘り起こし、上記ブログを通じてそれを私たちに伝える仕事を続けておられます。
 唯々(ただただ)、頭が下がります。
 
 
 ところでリビアの事態は、単にカダフィの惨殺に終わったわけではありませんでした。
 前述のとおり、この戦争は全土を瓦礫に変え、「リビアの民主化」どころか大量の死者と難民をうみだしただけでした。そしてリビアはいまだに混沌の極致にあります。
 そのうえ今度は、このような惨劇をシリアに輸出しようとしているのがヒラリー女史なのです。
 それは単に彼女が「シリアにも飛行禁止区域を!」と叫んでいるからだけではありません。リビアで使ったイスラム原理主義集団を、実際にシリアに輸出しようとしてきたのが、ヒラリー女史を外交政策の責任者とするアメリカだったからです。
 この間の事情を櫻井ジャーナル(2016年8月20日)は次のように伝えています。

 カダフィ体制が倒された直後、リビアのベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、その映像がユーチューブにアップロードされた。その事実をイギリスのデイリー・メイル紙でさえ、伝えている。リビアを侵略した軍隊は空がNATO軍、地上はアル・カイダ系のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)だった。
リビアを破壊した後、侵略軍はリビア軍の倉庫から武器/兵器を持ち出してトルコへ運んでいる。勿論、戦闘員も同じように移動した。調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設。輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたとも伝えられている。
運び出された武器/兵器の中に化学兵器も含まれ、これをシリアで使い、政府軍に責任をなすりつけてNATO軍が直接、シリアへ軍事介入する口実にしようとしたと言われている。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/20160820/


 これを読むと、リビアから傭兵集団が兵器もろともトルコを経由してシリアに輸送されていることが分かります。しかも輸送の拠点になったのはベンガジにあるCIAの施設で、輸送にはマークを消したNATOの輸送機が使われたというのですから、二重の驚きです。というよりも二重の犯罪と言うべきかも知れません。それはともかく、櫻井ジャーナルの説明は次のように続いています。

 そうした武器や戦闘員の輸送をアメリカ国務省は黙認した。2009年1月から13年2月まで国務長官を務めたヒラリー・クリントンもこの工作を知っていたはず。
 しかも、クリントンの部下にあたるクリストファー・スティーブンス大使は2012年9月10日、CIAの武器輸送担当者と会談、その翌日には武器を輸送する海運会社の人間と会っている。勿論、武器はトルコ経由でシリアの侵略軍へ渡される手はずになっていた。
 その9月11日にベンガジのアメリカ領事館が襲撃されてスティーブンス大使が殺されている。リビア議会が首相を指名する前日だ。その2カ月後にCIA長官を辞めたデイビッド・ペトレイアスはヒラリーと緊密な関係にあることで知られ、このルートからもシリアでの工作を知らされていたはずだ。


 これを読むと、アメリカ大使館や領事館はCIAの拠点になっていることがよく分かります。日本のアメリカ大使館や領事館も同じ機能を果たしているのでしょうか。
 しかし、ここでもっと重大なのは、その領事館が襲撃されてスティーブンス大使が殺されていることです。ヒラリー国務長官が公的なメールサーバーを使わずハッカー攻撃に弱い私的メールを使ったことが、大使殺害につながったかもしれないのです。
 あるいは、うがった見方をすれば、このような極秘事項を手配した人物だけに、それを外部に知られては困るから、密かにテロリスト=傭兵集団に頼んで大使を消してもらったのでしょうか。
 櫻井ジャーナルは、これについては何も述べていないのですが、この私の仮説が正しければ、これほど身の毛のよだつ話はないでしょう。櫻井氏は、これに続けて次のように述べているだけです。

 クリントンは戦争犯罪人と言われても仕方のないようなことをしてきたわけだが、欧米の支配層はクリントンを支持してきた。投機家で体制転覆に多額の資金を提供してきたジョージ・ソロスも支援者のひとり。
この支配層は軍事的に世界制覇を進めるだけでなく、巨大資本が国や国際機関を支配する仕組みを作り上げようとしている。それがTPP(環太平洋連携協定)、TPIP (環大西洋貿易投資協定)、そしてTiSA(新サービス貿易協定)の三点セットだ。[※ 投稿者注―TTIPの誤記だと思われる]

 ヒラリー女史の好戦性、あるいはヒラリー女史が大統領になると、なぜ第3次世界大戦になる危険性があるかは、以上の説明で、かなり分かっていただけたのではないかと思います。
 しかし彼女の好戦的履歴は、このリビア爆撃にとどまるものではありません。
 とはいえ、本稿もすでにかなり長くなってきていますので、以下ではその略歴だけを紹介して、この論考を閉じたいと思います。以下の引用は先の櫻井ジャーナル(同日付け)からのものです。
 ウィキリークスによる電子メールのハッキング情報が続いている。今回は投機家で体制転覆に多額の資金を提供してきたジョージ・ソロスだ。
 彼がターゲット国の体制を転覆させるために使っているオープン・ソサエティ基金もハッキングされたという。そうした電子メールの中には、ソロスがヒラリー・クリントンに対してユーゴスラビア=アルバニア情勢に対する対処の仕方をアドバイスするものがある。そのメールが書かれたのは2011年1月24日で、国務長官だったクリントンはソロスのアドバイスに従って動いたようだ。
ヒラリー・クリントンは夫が大統領だった1990年代、マデリーン・オルブライト(国連大使から国務長官)やビクトリア・ヌランド(国務副長官の首席補佐官)と連携して政権をユーゴスラビアに対する先制攻撃へと導いているが、その背後にソロスがいたということだろう。国務長官に就任したオルブライトが主導する形で1999年3月にNATO軍は偽情報で環境作りをしながらユーゴスラビアを先制攻撃、ひとつの国を破壊した。


 上記に登場するマデリーン・オルブライトとビクトリア・ヌランドという二人の女性は好戦的人物として有名ですが、この二人を、戦争にあまり乗り気ではなかった夫のビル・クリントンに紹介し強引に新しい国務長官や国務副長官の首席補佐官に据え付けたのも、ファーストレディだったヒラリー女史だったと言われています。
 ですから、彼女のタカ派ぶりは、ここでみごとに発揮されていると言えます。
 櫻井ジャーナルの叙述は、さらに次のように続いています。

 2003年11月にはジョージア(グルジア)で「バラ革命」、04年から05年にかけてはウクライナで「オレンジ革命」があり、新自由主義体制になった。当然、一部のグループが不正な手段で国民の財産を奪って莫大な富を築き、その後ろ盾になっていた西側の巨大資本も利益や利権を手にした。こうした「革命」でもソロスはスポンサーとしての役割を果たしていた。
言うまでもなく両国の庶民は貧困化、そうした状況への怒りからソロスたち西側の富豪や巨大資本にとって好ましくない方向へ動いた。そこで仕掛けられたのがウクライナ首都キエフのクーデター。2014年2月22日、ネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を主力とするグループがビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除している。そのクーデターを現場で指揮していたのがヌランド国務次官補だった。クリントンは2013年2月に国務長官を辞めているが、ヌランドは彼女の同志だ。


 私は「バラ革命」や「オレンジ革命」のニュースを聞いたとき、旧ソ連圏の東ヨーロッパで、新しい民衆運動が起きているものと信じていました。
 しかし今から考えると、実に巧妙に仕組まれた「偽の民衆革命」だったのです。これは一種のクーデターでした。
 しかも、このクーデターは東欧だけにとどまりませんでした。ヒラリー国務長官のもとで、クーデターは中米にまで飛び火していました。あの悪名高いブッシュ大統領ですら、やらなかったことです。以下の櫻井氏による説明は次のようになっています。

 クリントンが長官に就任したのはバラク・オバマが大統領に就任した2009年1月のことだが、その年の6月にホンジュラスで実行されたクーデターでクリントンは黒幕的な役割を果たしたと言われている。約100名の兵士が大統領官邸を襲い、マヌエル・セラヤ大統領を拉致し、コスタ・リカへ連れ去っている。
現地のアメリカ大使館は国務省に対し、クーデターは軍、最高裁、そして国会が仕組んだ陰謀であり、違法で憲法にも違反していると報告している。つまり、クーデター政権には正当性がないと明言した。
 このクーデター政権は翌2010年、最初の半年だけで約3000名を殺害したとも報告されている。そのクーデターの背後にクリントン長官がいたということだ。


 以上で櫻井ジャーナルからの引用を終えます。まだまだヒラリー女史の好戦性・冷酷さを示す事例に事欠かないのですが、長くなりすぎていますので、ひとまずここで筆をおきます。今のアメリカ情勢を理解する一助にしていただければ幸いです。
 ただ一つだけ付け加えておきたいことがあります。それはアメリカの民衆が、知れば知るほどヒラリー女史に嫌気がさしているのに、他方の大手メディアがトランプ叩きに終始しているという事実です。
 これでは、アメリカ民衆は「どちらがワルとして我慢できるか」という選択肢しか残されていないことになります。これはアメリカ史上。最悪の大統領選挙と言えるでしょう。
 ただ私たち日本人に一つだけメリットがあるとすれば、今までアメリカは理想の国、民主主義のモデル国だと思われていたのに、それは虚像に過ぎなかったことが、この選挙戦を通じて見えてきたことではないでしょうか。


註1。ヒラリー女史が「来た・見た・死んだ」と嬉しげに言っている映像は、次のURLで見ることが出来ます。
https://www.youtube.com/watch?v=Fgcd1ghag5Y
註2。物理化学者・藤永茂氏の著書には、『分子軌道法』(岩波書店)などといった専門書の他に、『アメリカ・インディアン悲史』(朝日選書)、『アメリカン・ドリームという悪夢、建国神話の偽善と二つの原罪』(三交社)やジョゼフ・コンラッド『闇の奥』(藤永・訳、三交社)といった専門外の本も少なくありません。
 私が藤永氏を初めて知ったのは、20年近くも前に、『アメリカ・インディアン悲史』を読んだときでした。なぜ物理化学者がアメリカ先住民の歴史を書くのか、そのときは理解できませんでしたが、これを書かざるを得なかった氏の気持ちがヒシヒシと伝わってくる名著でした。
 それ以来、インディアン研究者の専門書を機会があれば目を通すのですが、藤永氏の本を超えるものに出会ったことがありません。
註3。ポール・グレイグ・ロバーツのブログについては、「マスコミに載らない海外記事」に載っていた翻訳を参考にさせていただきました。しかし、原文をもとに私が大幅に手を加えてあります。




投稿者より


「マスコミに載らない海外記事」の翻訳によるポール・クレイグ・ロバーツの記事や「櫻井ジャーナル」の記事は、阿修羅掲示板にも頻繁に転載されている。「私の闇の奥」の記事も検索してみるとたまに転載されているのだが、その話題に自分の関心が向いていなかったためにこれまで一度も開いて読んだことがない。ブログの名前にも見覚えがなかった。しかし藤永茂氏の『アメリカ・インディアン悲史』なら知っている。繰り返し読んだ時期がある。これはうれしい驚きだった。


記事の内容については特にいうことがない。もちろん事実関係についてはどこまで正しいのか投稿者には判定できない部分があまりにも大きい。このような立場からして、「殺人婆(killer bitch)」とか「売女マスコミ(presstitute)」とかいったロバーツの言葉づかいにたいしても手放しで共感することに躊躇するところがある。


この記事の転載にあたって、投稿者が記事中の漢数字を半角算用数字にあらため、一部注記を付し、リンクしていなかったURLをリンクするなどした。


先行転載記事:ヒラリー・クリントンとは誰か(上)(百々峰だより)(投稿日 2016年11月07日)

http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/177.html

[地域13] [新潟]自民県連 衆院選へ危機感あらわ(新潟日報)
自民県連 衆院選へ危機感あらわ
新潟日報[2面] 2016年11月08日
 
 
参院選、知事選で2連敗


 自民党県連が次期衆院選に向け、危機感を高めている。公認候補を擁立した7月の参院選、推薦候補を支援した10月の知事選と2連敗し、野党共闘に対する脅威論が強まったためだ。知事選の得票を基にした試算では県内6小選挙区全てで野党票が上回る。県連内には自民党が下野した2009年衆院選で全敗した「悪夢の再来」(県連幹部)への懸念も広がっており、早期の解散・総選挙を視野に対策の検討に着手した。


野党共闘、原発単一争点化、衆院選へ 対抗策手探り


 「次の総選挙をにらみ、同じ轍を踏まないように盤石な態勢をつくりたい」。11月2日、15人を超える県連幹部が顔をそろえた拡大役員会終了後、幹事長の柄沢正三県議が危機感をあらわにした。


 県連は7月の参院選で、党公認候補の中原八一氏が約2200票差で惜敗。「連敗は絶対に避けたい」として臨んだ10月の知事選では、推薦した前長岡市長の森民夫氏が約6万票差をつけられて敗れた。両選挙とも野党共闘の前に屈した形となった。


 いずれも「重要選挙」と位置付け、党本部を挙げて戦った選挙の2連敗で県連内には動揺が広がった。そのため、県連幹部は「知事選の総括と次期衆院選の対策を急ぐべきだ」と判断。2日の役員会は知事選の総括の場だったが、次期衆院選に向けた準備会合のような位置付けにもなった。


 役員会では知事選の敗因として、野党陣営が「原発ワンイシュー(単一争点)」の選挙戦略を取り、自民推薦候補に「原発推進派」とのレッテルを貼る戦術に対応できなかったことなどが挙がった。幹部からは「衆院選も同じ戦い方をされたら厳しい。原発問題の理解がより得られやすい見解を党本部に示してほしい」などの意見が出た。


◆             ◆


 新潟日報社の試算では、知事選の得票を県内の衆院6選挙区に当てはめると、全区で野党系の票が与党を上回る。全区で野党共闘が実現、機能したと仮定すると、自民党が全敗することになる。


 試算では最も票差が小さい5区で約3千票、2、3区も3千票台で、最も離れた1区は約2万5千票差となる。特に都市部では、世論の「風」が結果を大きく左右する可能性がある現実が浮き彫りになった。


 年明けの1月解散も取り沙汰される中、県連内には苦々しい記憶がよみがえる。民主党が勝った09年の政権交代選挙で県内6選挙区も全敗。ベテラン県議は「国会議員がいなくなれば、国とのパイプがもっと細くなる。暗黒の時代に逆戻りしてしまう」と危惧する。


 ただ、次期衆院選に向けた有効な手だてはまだ見えていないのが実情だ。柄沢幹事長も「検討課題はいくつかある。具体策はこれからだ」と打ち明ける。原発ワンイシューへの対策をはじめ、ネット選挙や無党派、若年層…対策を打つべき課題は多い。


◆             ◆


 本県衆院議員には地盤の弱い若手が多く、以前から苦戦が懸念されている。党本部関係者は「このままでは新潟の衆院議員は厳しいだろう。小泉元首相のように『自民党をぶっ壊す』と自民を批判して、自虐的に票を得る作戦しかなくなってしまう」と語る。


 県連会長の長島忠美衆院議員(5区)は「安閑としていられる状況ではない」と強調。本県衆院議員に対し「(選挙準備のため)地元に張り付くように指示している。年明け解散のあるなしを別にして、12月には選挙準備が完了するようにさらに指示を出そうと思っている」としている。




同日付の新潟日報記事(投稿者による紹介)


TPP審議 募る不信感/山本農相の失言[4面 多面鏡(東京支社・小熊隆也)]
内容:新潟県関係与党衆院議員からの農相批判の声を紹介している。長島忠美・自民党県連会長(5区)と漆原良夫・公明党中央幹事会会長(比例北陸信越)。
規制改革推進会議/首相、全農の刷新指示/月内にも提言 資材事業縮小促す/販売手数料にメス[7面]
三条/検証 国定市政10年(1)/行動力/首長まとめ 国に提言/知事選対応に批判の声も[16面 (三条総局・河野雄也)]
上越市長選まで1年/沈黙の現職 動きだす新人/共産など 候補者擁立を模索[17面]

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/783.html

[国際16] トランプ氏政権移行チーム、閣僚の人選に着手(ウォール・ストリート・ジャーナル)
トランプ氏政権移行チーム、閣僚の人選に着手
By MICHAEL C. BENDER and BETH REINHARD
http://jp.wsj.com/articles/SB10192246251775523818204582427072952328032
2016年11月10日 13:02 JST 更新 ウォール・ストリート・ジャーナル


 米次大統領選に勝利したドナルド・トランプ氏が、選挙期間中に集会で大勢の支持者に向けて演説していたころ、幾つかの少人数のグループがワシントンのオフィスで大統領就任後の最初の数カ月間のプランを練っていた。このトランプ氏の政権移行チームの中には、米国とメキシコの国境に壁を構築する問題に専念するグループもある。


 政権移行チームのスタッフは、過去の共和党大統領候補の場合と比べるとはるかに少ない。また、前回の大統領選のミット・ロムニー共和党候補のように、膨大の政策提言はまとめず、具体的な問題についてはほとんどの場合、簡単なメモを策定しただけだ。例えば、「トランプ氏は財務省について何を知っておくべきか」、「大統領直属の国家経済会議(NEC)の目的は何か」、「大統領就任の最初の日、最初の100日間、最初の200日間の優先課題は何か」などである。


 チームはまた、トランプ政権の重要閣僚・補佐官の候補リストも作成している。身近な人物もリストアップされている。トランプ陣営の2人の側近によれば、司法長官候補には、政権移行チームの責任者を務めるニュージャージー州知事のクリス・クリスティー氏や、アーカンソー州知事のアサ・ハッチンソン氏の名前が挙がっているという。少人数の移行チームには、元ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニ氏やニュート・ギングリッチ元下院議長が加わっており、この2人がトランプ政権の核となる可能性がある。移行チームのあるメンバーによれば、厚生長官には、ルイジアナ州知事のボビー・ジンダル氏のほか、政権移行チームのメンバ―で、共和党大統領選予備選でトランプ氏に対抗した元神経外科医のベン・カーソン氏が検討されているという。


 政権移行チームに助言している元ユタ州知事のマイク・レビット氏によると、トランプ氏は大統領首席補佐官を2週間以内に任命し、その後、大統領就任後2週間以内に閣僚を指名して議会での承認を受けることになる。「最優先事項は、トランプ・チームを編成し実戦配置することだ」と同氏は強調。「さまざまな重要法案の提示に着手する。必ずしもこれら法案が直ちに議会で承認されると期待しているわけではないが、法案を提出する必要がある」と述べた。


 トランプ氏は10月にペンシルベニア州ゲティスバーグで行った演説で、大統領就任当初の大まかなプランについて語った。それによると、軍や治安、公衆衛生の各部門を除き、連邦職員の新規採用を凍結し、行政府・立法府の職員に対して退職後5年間ロビー活動を禁止する。さらに、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しや、環太平洋連携協定(TPP)からの撤退を発表するとともに、「米国の労働者に不当な影響を与えているあらゆる貿易上の行為の乱用」を特定し、是正するよう商務長官に命じる方針だ。また、備蓄原油の放出制限の撤廃や、キーストーン原油パイプラインの認可、国連地球温暖化対策への資金拠出の撤回に踏み切る計画だ。


 トランプ氏は、子供の時に米国に入国した不法移民は強制送還しないとしたオバマ大統領の計画を覆し、犯罪歴のある最大200万人の不法移民の強制送還を開始すると公約している。ギングリッチ氏は、トランプ政権発足後およそ100日間は「メキシコとの国境管理を含め3〜5つの構造改革に集中するだろう」と説明。さらに「公務員制度を大幅改革し、無能だったり、腐敗していたり、法律に違反したりした職員を解雇できるようにするのはほぼ確実だ」と述べた。


 政権移行チームは、ホワイトハウスから1ブロック離れたペンシルベニア通り沿いにオフィスを構え、2つのフロアに分かれている。閣僚・補佐官の人選チームは8階に陣取り、移行チームの責任者のクリスティー氏のほか、元ニュージャージー州上院議員でクリスティー知事の首席補佐官だったリッチ・バッガー氏、ヘリテージ財団の理事長だったエド・フェルナー氏などからなる。


 7階には、元海軍将校でボストン・コンサルティング・グループの顧問を長年務めているロン・ニコル氏が統括する5つの主要政策チームが入っている。そのうち経済チームは、プライベート・エクイティ会社を運営するウィリアム・ウォルトン氏と、証券大手ベア−・スターンズ(JPモルガン・チェースが吸収)の主席エコノミストだったデービッド・マルパス氏が率いている。


 国家安全保障チームはマイク・ロジャーズ元下院議員(共和、ミシガン州)、国防チームはJ・キース・ケロッグ退役陸軍中将、国内問題チームはケン・ブラックウェル元オハイオ州務長官、さらに行政管理・予算チームはレーガン大統領時代の司法長官だったエド・ミーズ氏と、父と息子のブッシュ大統領に仕えたケイ・コールズ・ジェームズ氏が、それぞれトップとなっている。


 このほか、オバマ政権の行政施策や規制改革、移民政策をレビューするチームもあり、ディック・チェイニー前副大統領の国内政策担当補佐官だったアド・マチダ氏が取り仕切っている。移民政策チームは、長年にわたり移民法の強化を唱えているジェフ・セッションズ上院議員(共和、アラバマ州)とつながりがあり、メキシコとの国境に壁を建設する方策を検討する部署もここに属する。



投稿者より


ヒラリー・クリントンを熱心に支持したエリザベス・ウォーレンやバーニー・サンダースたちは、おもうに自分たちがクリントンの手綱を握っているからにはだいじょうぶだという自信があったのだろう。ところが大方(投稿者を含む)の予想に反して、ドナルド・トランプが大統領に当選した。トランプには手綱がついてない。


ウォール・ストリート・ジャーナルの記事には触れられていないが、トランプの政権移行チームには巨大企業およびウォール街のロビーストたちが集められている(下の記事を参照)。人事これすなわち政策(Personnel is Policy)。ドナルド・トランプはすでに自分の"王国"(Political Establishment *)の建設に着手した。


Donald Trump Recruits Corporate Lobbyists to Select His Future Administration
https://theintercept.com/2016/11/08/trump-transition-lobbyists/
By LEE FANG 2016年11月08日 The Intercept Unofficial _Sources


Lee Fang: Donald Trump Recruits Corporate Lobbyists to Select His Future Administration
http://www.democracynow.org/2016/11/9/lee_fang_donald_trump_recruits_corporate
2016年11月09日 DEMOCRACY NOW!


* "Political Establishment" について多くの人が共感したトランプ演説(2016/10/13 West Palm Beach, Florida)にもとづく選挙広告動画
Donald Trump's Argument For America
https://www.youtube.com/watch?v=vST61W4bGm8
Team Trump 2016/11/06 YouTube

http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/247.html

[国際16] Democrats see silver lining in release from Clinton grip
Democrats see silver lining in release from Clinton grip
Party combs its ranks for progressive candidates to take over the helm
by: Courtney Weaver and Barney Jopson in Washington
https://www.ft.com/content/ef21b3c0-a80d-11e6-8898-79a99e2a4de6
November 11, 2016 Finantial Times
 
 
Nearly 25 years after they first conquered the White House and captured the commanding heights of the Democratic party, the Clinton family crashed to earth on Wednesday, shattering the ambitions of Hillary Clinton and her clan of fiercely loyal operatives.
25年間におよんだクリントンによる民主党支配が終わった


But as they come to terms with their rout some Democrats see a glimmer of hope, and a badly needed chance to rebuild a party that can appeal to a broader swath of America, and, quite frankly, does not include the Clinton coterie.
大統領選挙の敗北を民主党再建のチャンスととらえる党員もいる


“I see a lot of silver lining in this,” one former staffer of Bill Clinton’s administration admitted. “It’s good for us to let go of that stranglehold.”
「希望の光がみえる」とビル・クリントン政権時代のスタッフが語る


“We’re going to start from a very clean slate,” he said. “Let us fight it out and figure it out.”
「われわれは白紙からやり直すつもりだ」


In the wake of Mrs Clinton’s defeat, most Democrats have been careful not to blame their candidate, focusing on the populist mood and the surprising resonance of Mr Trump’s unique, upstart candidacy.
多くの民主党員は、選挙結果を知ってもヒラリー・クリントン候補を責めなかった


Yet others have wondered aloud whether the party would have done better to allow for a more robust primary that would have enabled Democratic voters to pick from a wider selection of candidates ― and perhaps one better suited to the race’s populist undercurrents.
それでも予備選挙のやり方がまずかったのではないかという声があがった


Over the course of the race, Mrs Clinton struggled to swipe her MetroCard while taking a well-publicised ride on the New York subway ― a sign, critics said, that she was out of touch with the common voter. While harmless on the surface, the incident seemed to highlight senior aides’ top fears: that Mrs Clinton had spent so many years in high-profile positions, she had ended up in a sort of bubble ― ensconced in various private jets and limousines and surrounded by acolytes.
ヒラリー氏の選挙パフォーマンスで、地下鉄に乗ろうとして自動改札がスムーズに通れなかったのは象徴的な出来事だった


In Arkansas, the state where Mrs Clinton spent more than a decade as first lady, she received just 374,000 votes ― or 6,000 fewer votes than Barack Obama received in 2012.
かつてビル氏が長く州知事を務めたアーカンサソー州では、ヒラリー氏の得票が伸びなかった


In Michigan and Wisconsin, the two states that arguably swung the election, Mrs Clinton received roughly 300,000 fewer votes than Mr Obama did, suggesting that the president’s supporters either stayed at home or cast their votes for Mr Trump or a third-party candidate.
重要なミシガン州とウィスコンシン州では、前回オバマ氏に投票したうちの30万人がヒラリー氏に投票しなかった


“By and large, there were parts of the Obama coalition that didn’t end up providing the number of votes that Clinton needed and that’s true among younger voters,” admitted Geoff Garin, a Democratic pollster who worked for Mrs Clinton’s main super PAC, Priorities USA. “It was clear from the start that Clinton had a problem with that.”
「オバマ支持層とくに若者の票が動かなかった」と民主党のジェフ・ガリン世論調査担当員


Debbie Dingell, a Democratic congresswoman from Michigan, said she had tried to warn the Clinton campaign were struggling in Michigan back during the Democratic primary and throughout the general election but that she was ignored.
ミシガン州のデビー・ディンゲル下院議員は、予備選と本選を通じて苦戦の警告を発したが無視された


“Much of [my] district is Democratic and those voters strongly supported Bernie Sanders in the primary. That result didn’t surprise me, It did infuriate me that Clinton and her team did not show up until the weekend before the primary, when it suddenly became clear they had a problem. I took Bill Clinton grocery shopping that Saturday ― too little, way too late. They never stopped on a campus; never went to a union hall, never talked to the Arab-American community,” she wrote in a Washington Post op-ed this week.
I said Clinton was in trouble with the voters I represent. Democrats didn’t listen. (The Washington Post 2016/11/10)


Paradoxically, Mr Clinton was one of the few people inside the clan to have warned of the lack of enthusiasm among working-class voters for his wife, but was rebuffed by other campaign aides.
ビル氏は労働者層に熱気がみられないことを警告した数少ない1人だが、相手にされなかった


While some of Mrs Clinton’s staffers played down the existence of an enthusiasm gap during the campaign, that disconnection does seem to have been borne out in the results.
支持層の盛り上がりにギャップがあったことは選挙結果で実証されたようだ


“Her voters didn’t vote,” said the former Clinton staff member. “Why didn’t they vote? Because they weren’t energised and excited. The people who were most jazzed about her were the Clinton cabal who were plotting their Paris ambassadorship or their job in the administration.”
「政権で与えられる地位を夢みる取り巻き連中だけが熱狂していた」と前出のスタッフ


Rick Boucher, a former Democratic congressman who represented a rural part of Virginia that turned Republican in 2010, linked Mrs Clinton’s defeat to the term “flyover country”, an epithet used by some on east and west coasts to describe the territory in between.
バージニアの農村部を共和党に奪われたリック・バウチャ−前議員によれば、東と西の海岸から「飛び越えられてしまう」中央部に敗因があった


“It’s a dismissive phrase. ‘We don’t have to be concerned about these folks’. But it has a very tangible effect. The people in the heartland of America obviously feel ignored. They have a sense that people don’t care about them. This election was about those sentiments. It was a cry to be heard. And the Democratic party must respond. It’s essential.”
「無視されているという中部の人たちの気持ちが今回選挙結果を左右した」


While some have blamed FBI director James Comey for Mrs Clinton’s defeat, and his decision to open a new FBI probe into Mrs Clinton’s emails one week before the election, others rejected this suggestion, saying it ignored the fundamentals on the ground.
コミーFBI長官のヒラリー氏再捜査発表については、本質的な問題ではないという声もある


“Anyone blaming Comey is kidding themselves,” said Matt Bennett, co-founder of the Democratic think-tank Third Way. “It wasn’t Comey. It was anger at government and anger at the party of government that she represented and this desire to express this anger as aggressively as possible,” he said.
民主党シンクタンク「サード・ウェイ」を創設したマット・ベネットによれば、「選挙結果は政府と民主党への怒りの表出だった」


“This is the worst shape the Democrats have been in since reconstruction in terms of legislative seats in Congress. It’s kind of a smoking pile of rubble.”
「議席数としては最悪の結果だ。民主党は煙をあげる残骸と化した」


Already, Democrats are plotting the best path forward, and the backbench politicians who could take up Mrs Clinton’s mantle as the figurehead and leader of the party. On Thursday, Howard Dean, the former presidential candidate, put his name forward for his old job ― the head of the Democratic National Committee ― while Mr Sanders has put forward the name of Keith Ellison, a fellow progressive.
>同党ではすでにクリントン氏の代わりが探し始められた。民主党全国委員会のハワード・ディーン元委員長は、以前の役職に戻る希望を表明した。バーニー・サンダース氏はキース・エリソン候補を推薦した。


Among those seen of the future of the party are Mr Sanders, Massachusetts senator Elizabeth Warren, New Jersey senator Corey Booker and Julian Castro, Mr Obama’s secretary of housing and urban development.
>現在、サンダース氏、マサチューセッツ州選出の上院議員エリザベス・ウォーレン氏、ニュージャージー州選出のコーリー・ブルッカー氏、ジュリアン・カストロ住宅都市開発長官に期待が寄せられている。


Barney Frank, a former Democratic congressman and architect of landmark financial reform that bear his name, said one good outcome from the election was that it had helped the Democratic party to unite on two key issues: foreign policy and trade, with Democrats rejecting the idea that America had to “play the role of keeping order in the world” and demanding that future trade agreements come with measures to address inequality.
バーニー・フランク前議員・建築家によれば、この選挙結果によって民主党は2つの重要課題で結束できるようになった。外交政策と貿易だ。もうアメリカが国際社会をリードする役割を背負い込む必要はない。これからの貿易協定には格差是正の方策を盛り込まなければならない


“Historically over the past 20 years those were two issues which divided Democrats. Those are now over,” he claimed.
「民主党はこの2つの問題で20年以上割れていた。それがいま終わった」



※ パラグラフごとの簡訳、注(※)、回答先記事からの引用(>)は投稿者がつけた。

http://www.asyura2.com/16/kokusai16/msg/296.html
[地域13] [新潟]始動米山県政/泉田路線継承を問う(新潟日報)
始動米山県政/泉田路線継承を問う(上)
新潟日報[3面] 2016年11月11日

 反原発を掲げる野党3党の支援を受けて初当選した米山隆一知事は16日、就任後初の県議会で所信表明を行い、県政運営の基本方針を示す。10月の知事選では東京電力柏崎刈羽原発の再稼動問題を最大の争点に据えて戦い、県民の負託を受けた。原発についての主張の柱は、泉田裕彦前知事が進めた「泉田路線」の継承だった。前知事の路線とは何だったのか。米山知事は何をどう継承していくのか。前知事の原発施策を振り返りつつ、本県原発行政の課題を探る。


立ち位置/貫けるか「再稼動反対」/知事選 県民から重い負託


 「福島第1原発事故の検証なしに、柏崎刈羽原発再稼動の議論はできない」
 米山知事は知事選で、泉田氏が繰り返してきたフレーズを使って訴えた。
 選挙戦中盤には「現段階では再稼動は認められない」と泉田路線から一歩踏み込んだ。原発再稼働に反対する多くの県民の思いを託された形で当選した。
 ただ、米山氏は数年前まで脱原発の対極にいて、再稼働容認を明言していた。今は「福島事故から5年がたっても収束しない状況を見て考えが変わったと説明する。元の立ち位置に戻ることはないのか。


X               X


 泉田路線も決して脱原発や反原発ではなかった。
 泉田氏は原発再稼動に慎重と見られていた。それは、福島事故時に東電が炉心溶融を隠した原因を徹底追及するなどの厳しい姿勢によるものだった。
 本人の発言は、仮に再稼働を認めたとしても矛盾しない範囲内にとどまっていた。そのことを印象付けたのが4選出馬の意向を表明した2月の県議会答弁だ。
 「これまでも観念的に脱原発と申し上げたことはありません」
 「安全が確認できても再稼働の議論はできないということは、これまでも申し上げておりません」[1]
 確かに、議会答弁などの記録を調べても、泉田氏が脱原発や再稼働反対に言及する場面は見当たらない。
 原発の利用についてはむしろ、就任当初から一貫して認める発言をしてきた。2OO4年11月の就任後初の臨時会での議会答弁では「私の基本的スタンス」として、こう述べている。
 「エネルギー資源が乏しいわが国において当面、原子力発電は必要である。安全の確保と地元の理解を大前提に、国のエネルギー政策に協力していきたい」[2]
 この言い回しは、07に柏崎刈羽原発が被災した中越沖地震後もほとんど変わらなかった。11年の福島事故後は、言い方を「原発は過渡的エネルギー」と変えたが、当面の利用を否定していない点では同じだ。
 泉田路線とは、原発容認の本音を、「再稼働の議論はしない」という建前で覆い隠していたようにも映る。


X               X


 毎週金曜日、新潟市のJR新潟駅前で脱原発を訴える活動を続けている上野邦雄さん(66)は、泉田氏の原発に対する立ち位置に不安を感じていた。「再稼動に慎重かと思えば、原発推進の自民党にリップサービスをする。カメレオンみたいだった」と憤る。
 だからこそ「再稼動反対」を明言して当選した米山氏に大きな期待を抱く。
 「米山さんは『県民の負託を受けて知事になったので、姿勢が変わることはない』と言っていた。その言葉を信じている」
 一方、柏崎市の会田洋市長は12年間、原発問題と向き合ってきた経験から別の見方をする。原発再稼動を巡る姿勢は、自分自身も泉田氏も米山氏も大きくは変わらないと考えている。
 「みんな通る道は同じ。国から(安全性の判断を)聞いて、それを検証し、安全なら再稼動を認めるし、安全でなければ認めない」
 実際、米山氏は福島事故などの検証が済めば、再稼動の議論には応じる考えを示している。
 会田氏は指摘する。
 「論理的に議論したら、いつまでも『再稼動を認めない』とは言っていられなくなるのではないか」



始動米山県政/泉田路線継承を問う(中)
新潟日報[3面] 2016年11月12日

再稼動判断/県民に議論の場不可欠/前知事の手法 禍根を残す


 米山隆一知事が任期中に迎えるであろう重大局面がある。東京電力福島第1原発事故などの検証作業が終わり、東電柏崎刈羽原発の再稼働問題についての判断を県民に語る場面だ。
 知事はどう臨むのか。
 就任時の会見では「最終的にどう解決するかも含めて、そのときに責任を持って(再稼動問題について)判断する」と話した。
 県民にどう説明し、県民の声をどう反映させるのか。今は具体的な方法を示していない。


X               X


 原発の再稼動を巡って泉田裕彦前知事は禍根を残すような手法を取った。2009年のことだ。
 泉田氏は当時、07年に発生した中越沖地震を受けて停止していた7号機の再稼働に同意するかどうかの判断を迫られていた。
 09年5月7日、県議会全員協議会。自らの考えを初めて語った。
 「安全性はおおむね確保されていると受け止めた。原発なしに現在の生活に必要な電力を供給し続けることは困難。運転再開に同意したい」[3]
 泉田氏は翌8日に東電に同意を伝えた。東電は同日中に7号機の原子炉を起動させる作業に入った。
 7日の県議会では、質疑応答の機会が設けられていなかった。泉田氏が自らの判断について県民の声を聞き、県政に反映させる手続きは一切なかった。
 泉田氏が「同意」の判断で重視したのは、柏崎刈羽原発の安全性を議論する県技術委員会の見解だ。1カ月前の4月7日に技術委が原子炉の起動を認める見解を県に報告した。
 ただ、県技術委の一部の専門家から「審議が不十分」との声が出ていた。柏崎刈羽原発近くの断層について、地質学の専門家、立石雅昭委員=新潟大教授(当時)=が調査の不十分さを指摘していたのだ。
 泉田氏が判断のよりどころとした県技術委の委員ですら安全かどうかの判断が分かれている状況だった。そして、県民の間でも再稼働の是非について意見が割れていた。


X               X


 柏崎刈羽原発反対地元3団体の矢部忠夫・柏崎市議は、11年に起きた東電福島第1原発事故後の原発を巡る政策などに対し、慎重な姿勢をとってきた泉田氏を評価する一人だ。しかし、09年の再稼動同意には強い不満を覚えている。
 「技術委の結論に曖昧な部分があったのに、それをうのみにし、県民に説明もせずにゴーサインを出したのはおかしいと思った」
 技術委の立石委員は、再稼動について判断する直前まで自らの考えを明かさない姿勢が福島事故後も続いているように感じていたという。泉田氏が「福島事故の検証と総括がなければ、再稼動の議論はしない」と慎重な姿勢を示す一方、検証が終わった後にどう対応するかを示してこなかったからだ。
 立石氏は、新知事の米山氏が09年の泉田氏と同じ轍を踏まないことを願う。
 「首長がどう考えているかは、県民が議論するために必要な情報。きっちり提示し、住民が判断する場をつくってほしい」



始動米山県政/泉田路線継承を問う(下)
新潟日報[3面] 2016年11月13日

原子力防災/避難の体制整備に遅れ/県と市町村の連携に課題


 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を「現状では認めることはできない」とする米山隆一知事が、理由のーつとして挙げるのは本県の原子力防災体制が不十分だという点だ。
 東電福島第1原発事故を受け、原発から半径30キロ圏内の市町村に義務付けられた避難計画の実効性について「絵に描いた餅にすらなっていない」と指摘する。
 原子力防災を重視する姿勢は、米山知事が泉田裕彦前知事から継承するという路線の核といえる。


X               X


 泉田氏の原子力防災体制の整備に向けた取り組みには、成果が見えてきた面と、明らかに停滞した面とがある。
 成果といえるのは、避難計画の実効性確保に向け「法制度など国レベルの課題解決」を訴え、実際に国を動かしたことだ。
 「法体系が自然災害と原子力災害で二重になっている。一体化をお願いしたい」[4]
 2014年5月、泉田氏は参院原子力問題特別委員会に参考人として出席し、訴えた。
 福島事故や、07年に中越沖地震で柏崎刈羽原発が被災した経験を踏まえ、原発事故と自然災害が同時に発生する複合災害時の指揮命令系統を明確にするよう求める指摘だ。
 泉田氏はこうした課題の解決について、関係省庁にも繰り返し要望してきた。
 これに対し国はことし3月の原子力関係閣僚会議で、原子力防災の充実に向けた新たな方針を決定した。複合災害時については、自然災害と原発事故の二つの対策本部が合同会議で一元的に情報収集、意思決定を行うとした。泉田氏の訴えに対応する内容だ。
 半面、泉田氏の足元では停滞が生じた。福島事故から5年以上たった今も、本県の原子力防災体制は多くの課題が積み残されている。
 原発事故時に体内の甲状腺被ばくを抑える安定ヨウ素剤の配布方法が、長岡市などで決まっていない。自治体間をまたぐ広域避難でも、避難時に使う具体的な交通手段などは詳細が詰められてない。


X               X


「課題解決に向けた県の具体的な動きが鈍い」。ほぽ全域が柏崎刈羽原発から30キロ圏に入る長岡市の小嶋洋一・原子力安全対策室長は原子力防災の現状に不満を漏らす。
 体制の不備や現実に起きうる事故に対する危機感から県内全市町村で研究会をつくり、研究会主導で原子力防災対策について実務的な検討を進めてきたと説明する。
 一方、県原子力安全対策課は「県主導で課題に取り組んできた」と強調。両者の認識は食い違う。
 原子力防災体制の整備について、全国の自治体を支援する内閣府によると、原発立地道県の中で本県は体制の整備が遅れている。
 内閣府の橋本薫専門官は「一般論だが、県と市町村のコミュニケーションが密なところは課題解決に向けた動きが早い」と語る。
 実際、原発が立地する柏崎市の会田洋市長も、泉田前知事時代は県とのコミュニケーションが「うまくとれなかった」と振り返る。
 米山知事に対しては「市町村との連携をしっかりとってもらいたい」と強く要望する。




投稿者注^[1]


 まず、炉心溶融の判定基準に関する東京電力の公表についてであります。
 これまで東京電力は、県の安全管理に関する技術委員会において、メルトダウンの定義がなかったため、炉心状況の解析結果に基づき、メルトダウンの公表が2カ月後となったと説明をしてきました。
 このたび、社内調査で当時のマニュアルにメルトダウンの定義が記載されていることが判明したとのことであります。
 社内で作成したマニュアルであり、事故当時にあっても、この定義は組織的に共有されていたものであります。
 事故後5年もの間、このような重要な事実が公表されず、技術委員会の議論に真摯に対応してこなかったことは、極めて遺憾であります。
 ようやくこのような事実が公表されましたが、メルトダウンを隠蔽した背景や、それが誰の指示であったかなどについて、今後、真摯に調査をし、真実を明らかにしていただきたいと思います。
 次に、柏崎刈羽原子力発電所の適合審査と再稼働についてでありますが、原子力規制委員会の田中委員長も、規制基準に適合しても絶対安全とは言わないと説明をしており、福島第一原子力発電所事故の分析を踏まえ、安全を確認することは重要であると考えております。
 その際、国際原子力機関の深層防護の考え方である、第4層の過酷事故対策や第5層の過酷事故後の対策についても考慮する必要があります。
 特に、事故時における被曝を避け得る避難計画の策定や自衛隊、消防、警察の役割分担を明確化し、実効性のある対応ができる体制をどうつくっていくのかということも重要な課題であると考えております。
 こうした状況の中では、県といたしましては、仮に適合とされても、内容を十分精査し、事故時における実効性のある対応が可能であるのか、可能な限りの安全性の確認を迅速に行うことが必要であります。その結果、安全確保に必要と判断されることは、国や事業者に要請をしてまいります。
 そうした前提に立って、仮に安全が確認できたとしても再稼働の議論ができないとは、これまでも申し上げておりませんし、その考えに変わりはありません。
 次に、原子力発電所の安全確保に向けた対応についてでありますが、今ほどお答えをいたしましたとおり、原子力規制委員会の田中委員長も、規制基準に適合しても絶対安全とは言わないと説明しており、福島第一原子力発電所事故の分析を踏まえ、安全を確認することは重要と考えております。
 安全確保に必要と判断されることは、国や事業者に要請していくこととし、これまでも県としてだけでなく、全国知事会や立地道県で構成する原子力発電関係団体協議会など、さまざまなチャンネルで改善をお願いしておりますし、今後も必要に応じて行ってまいります。
 次に、原子力発電所の規制基準についてでありますが、できるだけ早く、県民の安全・安心を確保できる基準としていただくことが必要であると考えております。
 具体的には、繰り返しになりますが、国際原子力機関の深層防護の考え方における、第4層の過酷事故対策や第5層の過酷事故後の対策についても考慮する必要があります。
 特に、事故時における被曝を避け得る避難計画の策定や自衛隊、消防、警察の役割分担を明確化し、実効性のある対応ができる体制をどうつくっていくのかということも重要な課題であると考えております。
 安全確保に必要と判断されることは、国や事業者に要請していくこととし、これまでも県としてだけでなく、全国知事会や立地道県で構成する原子力発電関係団体協議会など、さまざまなチャンネルで改善をお願いいたしておりますし、今後も必要に応じて行ってまいります。
 次に、原子力規制委員会についてでありますが、原子力規制委員会は、その設置法上、原子力利用における安全の確保を図ることを任務としており、その責務をしっかりと果たしてもらいたいと考えております。
 次に、原子力発電の必要性についてでありますが、どういう資源を使って必要なエネルギーをつくるのがよいかは、資源には枯渇もある中で、全体のリスク、コスト、世界情勢を総合的に判断して決まっていくことであり、それは原子力発電も同じであります。
 これまでも、観念的に脱原発と申し上げたことはありません。
 原子力発電については、福島第一原子力発電所事故の分析を踏まえなければ、全体のコストがわからない状況にあるものと認識をいたしております。
 今後、長期的な視点に立った安全性の確保と経済合理性の判断の中で決めていくべきと考えております。
 次に、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働と今後の方向性についてでありますが、地元経済への影響は見きわめていく必要がありますし、それに対する対応はこれまでも行ってきたところであります。
 国レベルの経済的な負担についての対応は、原子力発電所についての長期的な視点に立った安全性の確保と経済合理性の判断の上で決めていくべきことと考えております。
 再稼働につきましては、その是非を判断する場合の最大のメルクマールは安全かどうかということであり、立地地域やその周辺を含め、県民の生命・安全・財産を守ることを最優先に考えて判断すべきだと考えております。
 その前提に立って、安全が確認できても再稼働の議論はできないということは、これまでも申し上げておりませんし、その考えに変わりはありません。
 なお、再稼働後に、仮に過酷事故が起こった場合の最終的な責任は、事故を起こした電力会社と原子力政策を進めている国が負うべきであり、責任のとり方については、県民への説明も国が前面に出て行う必要があると考えております。
(2016(平成28)年 2月定例会 本会議 02月26日−委員長報告、代表質問−02号)
新潟県議会 会議録の検索と閲覧


投稿者注^[2]


次に、原子力政策についての所見と私の基本的スタンスについてでございます。
エネルギー資源が極めて乏しい我が国におきまして、エネルギーや地球環境の問題等社会的な課題にこたえていくためには、現実的な対応といたしまして、当面、原子力発電は必要であると考えております。私といたしましては、当面、原子力発電所に対する安全の確保と地元の理解を大前提に、国のエネルギー政策に協力してまいりたいと思います。
(2004(平成16)年11月臨時会 本会議 11月17日−知事の所信表明に対する質疑−02号)
新潟県議会 会議録の検索と閲覧


投稿者注^[3]


柏崎刈羽原子力発電所7号機の運転再開について、議員協議会における知事の説明内容をお知らせします  2009年05月07日 新潟県
参考記事:柏崎刈羽原発、苦渋の再開 知事「相当プレッシャー」 2009年5月8日 朝日新聞


投稿者注^[4]


 まず規制委員会にお願いをしたいんですが、設備の性能に偏った規制基準ではなくて、組織のマネジメント、ヒューマンエラーも含めた、事故を起こさない、また、事故が起きたときには被害を拡大させないという仕組みを是非つくっていただきたい。
 班目前安全委員長が私の話を聞かなくてもいいのかということを発言されているというふうに承知をいたしております。過去の事故の教訓を酌み取って、法制度、仕組み、マネジメント、こういったものをどうするかという観点を是非原子力利用の安全の確保に関することに責任を有している田中規制委員長にはしっかりやっていただきたい、これをお願い申し上げたいと思います。様々な立地自治体の面会拒否をするのではなくて、説明責任を果たすという形で原子力規制委員会が役割を果たしていただきたい。これ心からお願いを申し上げたいと思います。
 それから、一点、法体系が今原子力災害と自然災害で二重になっております。これ現場で大変混乱する原因になっておりますので、大体原子力災害が起きるようなときは大きな自然災害も起きているわけですから、この自然災害と原子力災害を一体化する法体系への改正、これ是非お願いを申し上げたいと思います。
 あと最後に、東京電力に対しては、メルトダウンを二か月間隠したという事実がございます。私のところにも技術の分かる担当の方が来られて虚偽説明をしていかれました。依然として訂正もございません。早い段階からメルトダウンが分かっていたのになぜ隠したのかということを究明をして、二度と起こさないような対策を取っていただきたい、これもお願い申し上げたいと思います。
(2014(平成26)年05月28日 第186回国会(常会)参議院 - 原子力問題特別委員会(第四回))
国会会議録検索システム



関連リンク


新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会 新潟県
新潟県原子力安全対策課 新潟県
エネルギー・情報化 新潟県
ようこそ知事室へ 新潟県
新潟県議会 新潟県
長岡市原子力安全対策室 長岡市

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/784.html

[地域13] [新潟]始動米山県政/初の所信表明(新潟日報)
始動米山県政/初の所信表明
2016年11月17日 新潟日報[3面]


対立回避の姿勢示す/前県政から起動修正も


 16日に始まった県議会11月臨時会で米山隆一知事が初めて所信を表明した。知事選での公約をベースに、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題では泉田裕彦前知事の路線を踏襲するとして慎重姿勢を見せたが、選挙戦で訴えた「現状では再稼働は認められない」との文言は使わず、議論を重ねて対立を避けたい考えを示した。市町村との意思疎通の改善を強調するなど、前県政からの軌道修正をにじませた部分も少なからず見られた。


 原発再稼働問題は「泉田前知事の路線を継承」とし、福島事故の原因などの検証がなければ「議論は始められない」との立場を改めて示した。ただ国や東電と「議論を閉ざすことなく、協働を基本として対応していく」と対話路線を打ち出した。この点は泉田前知事とは異なる対応だ。


 自民ベテラン県議は「できるだけ穏やかに、という感じだ」とみる。一方で非自民党の県議には「東電との『協働』とはどういう意味か」といぶかる声もあった。


 自民党などが支え続けた前知事とは異なり、初の野党系知事となった米山氏の支持基盤は弱い。県議会で3分の2の議席を占める自民、公明両党と決定的に対立すれば県政が停滞するため、「安全運転」でスタートしたとみる向きが多い。他にも泉田前知事と異なる方向性を示した点がある。前県政で意思疎通不足が指摘されていた市町村や国との関係では、関係改善を図る考えを強調した。


 市町村に対しては「連携、協力が不可欠」と主張。住民の福祉向上という目標は共通だとして歩み寄りを打ち出し、国に対しても同様の姿勢を示した。


 風通しの悪さが指摘されていた県庁内のマネジメントでは「職員一人一人が持てる力を発揮できるような組織運営を行う」と主張。その上で「最終的責任は私が取る体制を構築する」とし、協力を呼び掛けた。


 また日本海横断航路の中古船購入問題でも、トラブルは「民間取引」によるものだったと強調していた泉田前知事とは異なる姿勢を見せた。「事態を収拾する責任を果たす」と県として主体的に動く意向を改めて強調。情報開示が不十分との指摘が県議会から挙がっていたため、「事実関係を県議会、県民に報告させていただく」と約束した。


 臨時会は17、18の両日に5党会派の代表が質問に立つ。県政運営や個別政策について、米山知事がどう具体的な方向性を示すかが焦点となる。


再稼働 対立回避の姿勢示す/米山知事、初の所信表明(新潟日報モア)



各会派評価二分/ビジョン見えず/選挙公約を反映 ※


 米山隆一知事の所信表明に対し、県議会各党会派の評価は分かれた。「県政野党」の自民、公明両党は「県発展に向けた新しいビジョンが見えなかった」と批判。一方で民進にいがた、社会民主県民連合、共産の3会派は「選挙戦の公約をしっかりまとめた」と上々の滑り出しと受け止めた。


 県議会は定数53のうち34議席を占める最大会派・自民党の発言力が圧倒的に強い。同党県連幹事長の柄沢正三県議は「表層的なことに終始し、真新しい政策がなかった。明るい構想をもっと示してくれるかと思ったが、期待外れだった」と厳しく指摘。知事が慎重姿勢を示す原発再稼働に関しては「原発は国のエネルギ ー政策という考えが乏しいと感じた」とした。


 公明党県議団(2人)の志田邦男団長も「各部局の案件をさらっとなぞった感じ」と物足りなさに不満な様子だ。ただ県組織の運営については「風通しをよくし、組織を活性化するとの取り組みは評価したい」と述べた。


 米山知事を支持する「与党側」は「基本的な考えがよく出ていた」との評価で一致した。民進にいがた(7人)の大渕健団長は「協力、対話という言葉が印象的だった」と好意的にみる。米山知事が民進党の衆院5区総支部長だったこともあり、「政策的に親和性を持てる」と述べた。


 「命と暮らしを守るという基本理念がきちんと打ち出された」と歓迎するのは、社会民主県民連合(2人)の小山芳元団長。原発再稼働問題でも「訴えてきたことをぶれずにやっていく姿勢が表れた」とした。
共産党(1人)の渋谷明治県議も「知事のまじめさが表れた所信だった。公約を実行できるようにどう支えていくかが、われわれの役割になる」と話した。


県議会各党会派、評価二分/米山知事、初の所信表明(新潟日報モア)



所信表明(要旨) ※


 米山隆一知事の所信表明の要旨は次の通り。


 「命と暮らしを守り、現在と未来への責任を果たす」ことを基本理念とする県政を実現していく。


 大きな課題が人口減少問題だ。本県が総合的に魅力ある地であることこそが重要。県政のあらゆる分野の取り組みを総動員して暮らしやすさを高めていく。


 県政運営では県議会や市町村との連携、協力が不可欠。真撃に話し合い、確かな信頼関係を築けるよう全力を尽くす。市町村長と直接かつ定期的に話し合う場を設け、相互の理解を深めたい。国に対しては議論すべきは議論し、協調すべきは協調して、県民全体の利益を第一に考えた対応に努める。


 県の総合力を発揮するために、職員が自由にものが言える、風通しの良い組織運営をしたい。努力が正当に報われ、最終的責任は私がとる体制を構築する。


 県政の方向性を「6つの柱」で示す。第1は「安全への貢任」。柏崎刈羽原発の再稼働問題は泉田前知事の路線を継承し、@福島原発事故の原因 A事故が健康と生活に及ぼす影響 B安全な避難方法 ― の3つの検証がなされない限り、再稼働の議論は始められないという立場を堅持していく。


 私が目指すのは対立ではない。国や東京電力をはじめ関係者との議論を閉ざすことなく、協働を基本として対応する。


 第2は「食と農を守る責任」。まずは本県の農業をいかに守るかを主眼に施策を進めたい。TPPは米大統領選で先行きが不透明となったが、県内と国内の農林水産業の持続的な発展のための万全な対応、対策を国に強く求めていく。


 第3は「命への責任」。医師・看護師ら医療福祉の人材確保が課題。地域医療の経験が経歴にプラスになる環境をつくるなど、医師としての経験を生かして取り組む。病児保育の充実に向け、市町村と連携する。


 新潟水俣病は全ての被害者が迅速に救済されるよう努力する。拉致問題では国に「全ての拉致被害者の帰国」の実現を強く要望するとともに、県民運動に全力で取り組む。


 第4は「雇用責任」。本県は日本海側の表玄関として大きく発展する基盤がある。人と企業が集まり、繁栄する県をつくる。


 高速道路を含めた道路網の整備と併せ、渋滞や雪害対策などのためのきめ細かな公共事業を進める。産業振興では「県版グリーンニューディール」として自然エネルギー産業への参入を支援するほか、医療・健康産業の育成に取り組む。


 第5は「住民参加への責任」。情報を開示し、多様な意見を県政に反映させる「対話型県政」を基本にする。徹底した情報公開を進め、直接県民と対話する場を創設する。


 第6は「教育への責任」。子どもの個性や能力を伸ばすため、教員のレベルアップを図り、働きやすい環境をつくる。地域や時代が求める人材に対応した高等教育機関の充実を支援する。給付型奨学金の制度設計を早期に進める。


 最後に日本海横断航路事業。船舶調達トラプルを巡り、売り主が県出資企業を提訴している。県として事態収拾の責任を果たすべく、適切な対応を図る。船調達の経緯、事実関係は県議会、県民に報告する。
 
 
米山知事の所信表明要旨(新潟日報モア)
平成28年11月臨時会知事所信表明(新潟県)[オリジナルの所信表明演説草稿
平成28年11月臨時会(会期日程)(新潟県)[所信表明演説動画のリンクもある
新潟県議会 会議録の検索と閲覧(新潟県議会)[平成28年11月臨時会の会議録は現時点ではまだ掲載されていない



同日付の新潟日報記事(投稿者による紹介)


議会・市町村と連携/米山知事、初の所信表明[1面] 


柏崎市長選 2候補の主張比較/桜井氏「原発で対立 終止符を」/竹内氏「再稼動 認められない」/教育、医療でも舌戦展開[2面] 
[以下付表からの抜粋]
原発などに対する両候補の考え
市長選の争点
[桜井]原発だけが市の課題ではない 
[竹内]原発再稼動問題が最も重要だ 
原発再稼動へのスタンス 
[桜井]国に一層の安全安心を求め、市民の生活、経済が向上することを条件に認める。
[竹内]再稼動すれば柏崎でも過酷事故が起こりうる。市民を守るため認めない 
原発とどう向き合うか 
[桜井]生活の安全安心と経済を両立。賛成反対両派の融和を目指す。国の方針に基づいて徐々に減らす
[竹内]原発では事故が起こる前提で、市民や東電社員らと議論を重ねる。廃炉産業に頼らない新産業も構築
原発以外の主な政策
[桜井]企業への助成による若者の定着。自然を生かしたまちづくり。ハードワークを重ねる教職員への支援充実 
[竹内]子どもの医療費助成を18歳までに拡充。病児、病後児保育を充実。市民の声を市政に生かす仕組みをつくる


原発事故賠償/電力会社負担 上限設けず/原子力委、現行制度を維持[3面]  


民進・黒岩氏の会合出席禁止/連合新潟が解除へ[4面]
民進・黒岩氏の会合出席禁止解除へ/連合新潟(新潟日報モア)


知事所信表明/未来への責任どう果たす[5面 社説]
知事所信表明/未来への責任どう果たす(新潟日報モア)

http://www.asyura2.com/09/ishihara13/msg/785.html

[政治・選挙・NHK216] 世論調査の現実と公議輿論の理想/民主党代表選と世論調査を考える(佐藤卓己)
世論調査の現実と公議輿論の理想
民主党代表選と世論調査を考える
 
佐藤卓己 (京都大学大学院准教授[2010年当時])
http://www.chosakai.gr.jp/news/pdf/2210.pdf
メディア展望 平成22[2010]年10月1日 第585号
 
 
 民主党代表選挙は9月14日に行われ、世論調査の結果通り、菅直人首相が再選された。今回の 選挙では9月1日告示前から、新聞各社が菅直人、小沢一郎の両候補の「人気」調査を発表して いた。いずれも、RDD(ランダム・ディジッ ト・ダイヤリング)方式の電話調査である。その見出しを並べてみよう。「菅氏69%、小沢氏15% 民主代表選で緊急世論調査」(共同通信社、 8月28日)、「代表にふさわしいのは? 菅氏67%・小沢氏14%」(読売新聞社、8月29日)、「首相にふさわしい人、菅氏78%、小沢氏17%」(毎日新聞社、8月30日)、「『首相にふさわしい』菅氏60.1%、小沢氏16.4%」(産経新聞FNN合同世論調査、8月30日)、「『首相は菅氏』65%、小沢氏17%」(朝日新聞社、9月5日)……。おおむね7割が菅氏支持、2割弱が小沢氏支持という傾向を示しており、国民一般の「空気」を測るという意味では世論調査の結果は妥当だったと言えるかもしれない。


 しかし、今回の代表戦をめぐる新聞社等の世論調査に対しては、マスコミへのカウンターメディアであるインターネットばかりか、一部の週刊誌なども含め数多くの批判が展開されている。世論の操作あるいは誘導をめぐる単純な「陰謀説」は度外視しても、吟味に値する批判も少なくなかった。その論点は大きく3つに整理できるだろう。


 「新聞は世論調査を使うべきだ」


 1つは、公示前からのマスコミ報道の流れの中で世論調査が小沢出馬を批判する政治的手段として利用されたというものだ。実際、そうした意図を公的に語るマスコミ人も存在した。オンラインニュースポータルサイト「あらたにす」の8月25日付「民主代表選・新聞は世論調査を使うべきだ」で池内正人(元日本経済新聞経済部長・東京テレビ副社長)はこう結んでいる。


 「国民は民主党の規約に文句は言えない。それならば新聞が世論調査で、外部からの影響力を行使する。これが民主主義における力のバランスというものではないのか」


 実際、「小沢支持15%前後」という結果は全国調査をしなくても事前に予想できたはずである。「政治と金」をめぐる報道に連日接した新聞読者、テレビ視聴者の間で小沢氏のイメージは悪化しており、電話口で即答を求められた場合、政策よりもイメージで反応する方が自然である。だとすれば、15%であれ、17%であれ、その数字はそもそもニュース、つまり報道に値する「新しい出来事」だっただろうか。こうした世間の空気を数値としてニュース報道したいという動機は、やはり政治的と呼ぶべきだろう。


 世論調査の手続きがどれほど「客観的」「科学的」であっても、その世論調査報道が「中立的」に作用するわけではない。ただし、後述するように世論(世間の空気)と輿論(公的意見)の使い分けを主張する筆者は、「中立的」であることが必ずしも正しい報道姿勢だとは考えていない。小沢氏の政治手法を批判したいのであれば、地道な取材を通じて論理的な調査報道がなされるべきである。単なる電話調査の数字で批判しようとする姿勢に私はジャーナリズムの衰弱を感じる。


 世論調査は国民投票か


 2つ目は、総選挙など国政選挙ではなく、民主党代表選挙に関して民主党党員、サポーターでなく国民一般を調査対象とすることへの疑問である。分かりやすく言えば、自民党や共産党の支持者に「菅と小沢のどちらが民主党代表にふさわしいか」と問うことの意味は何かということである。もし政権交代を期待する自民党支持者が戦略的に判断するならば、より無能な候補者を「代表にふさわしい」と答えても不思議ではない。いや、不思議でないというよりも、政権交代を前提とする政党政治においては、それこそが合理的な発想である。


 そうした点が世論調査であまり問題とされない理由は、世論調査が模擬的な「国民投票」と信じられているためだろう。実際、終戦直後から世論調査は民主化に向けた「動態的な国民投票」として喧伝されてきた。例えば、戦後初期の世論調査テキストである時事通信社調査局編『輿論調査』(1946年)で、内閣参事官・吉原一真は次のように述べている。吉原は同盟通信社から情報局に移り、世論調査を担当した人物である。


 「デモクラシーが実現されるためには自由な人民の意志に基礎を置いて輿論の動向に準拠した政治を行ふことにより新日本の再建が行はれねばならないのでありまして、国民投票(レフェレンダム)が必要とされる所以であります」


 もちろん、実質において民主党代表選挙は首相選挙である。しかし、この実質をあまり強調すると、すなわち与党代表選挙に世論調査(≒国民投票)を重ねて判断すると、建前としての国会投票、議員による首班指名の意味をますます空洞化させることになるだろう。一政党の代表選挙と世論調査を結び付けたいというのであれば、論理的には首相公選制の導入を視野に置くべきではないだろうか。代表選での権謀術数や国会指名での党利党略によって選ばれた首相では、国民一人ひとりが政治的な自己責任を実感できない。私は短命内閣を繰り返さないためにも首相公選制を考える時期に来ていると考えている。


 「ネット世論」は不信のバロメータ


 3つ目は、各新聞社でほぼ一致する世論調査結果とは異なる「ネット世論」に注目が集まったことである。特に、小沢支持派においてはそれがマスメディアの世論誘導を批判する論拠として引用された。「菅首相より小沢新首相 サイト調査で圧倒8割」(『スポニチ』、8月28日)、「世論調査と逆 小沢氏ネット人気≠フ理由とは」(共同通信、9月10日)など新聞等でも紹介されている。例えば、ヤフー「みんなの政治」アンケート(9月1日開始・10日現在)の小沢氏支持63%、菅氏25%などである。


 こうしたネット世論調査は希望者が勝手に回答する方式であり、サンプリング処理がないため統計的には無意味な数値である。世論調査の専門家からすれば、「興味本位のおもしろさ以上に考えることは極めて危険である」ということになる(遠藤薫「「ネット世論」という曖昧」『マス・コミュニケーション研究』77号・2010年)。


 さらに世論を厳密な世論調査から得られた数値と定義するならば、次のような批判も妥当だろう。


 「ネットに世論がある、世論が表出されていると想定すること自体、バカげている。「ネット世論」という言葉も不適切で、「ネット小言」あたりに言い換えたほうがよい。」(菅原琢『世論の曲解』光文社新書・2009年)


 こうした「ネット世論」の怪しさにもかかわらず、それが世論調査を批判する対抗物として提示されていることは重要である。つまり「ネット世論」の盛り上がりはマスメディアの世論調査とその報道に対する不信感のバロメーターなのである。


 世論調査・選挙・視聴率至上主義


 そうした不信感を引き起こした直接的原因としては、近年の劣化した電話世論調査の量産を挙げることもできるだろう。今日では、平均すれば約3日置きに内閣支持率が各メディアから発表されているという。簡単な電話応対だけの調査結果が、あたかも国民投票のごとく「民意」として政治プロセスに組み込まれ、内閣支持率がストレートに政局に反映される政治状況を、私はファスト(高速)政治と評した(「内閣支持率とファスト政治」『東京新聞』2010年6月15日夕刊)。


 そもそも「科学的」世論調査とは20世紀の観客民主主義において、大衆の声を政治に反映する「合意の製造」(ウォルター・リップマン)のために開発されたものである。


 科学的世論調査の始まりは1935年、ジョージ・ギャラップによるアメリカ世論研究所設立とされている。その政治利用は同時期にニューディールを掲げたルーズベルト政権下で飛躍的に発展した。長期化する議会審議を打ち切って法案を通すべく、民意の科学的根拠として世論調査が繰り返された。それは大統領が直接ラジオで呼び掛けて「参加なき参加感覚」を国民に与える炉辺談話と不可分の国民統合システムである。第2次世界大戦への参戦に向けた総力戦体制の中で、慎重な政策論議よりも迅速な政治行動が必要とされていたのである。


 その意味では「Yes」か「No」か二者択一を迫り、統計的な民意を背景に即決を迫るファスト政治は、ファシズム時代の産物である。さらにいえば、1930年代の「非常時」政治たるニューディール・デモクラシーは、即断即決を求める戦争民主主義にほかならない。こうした世論動員のニューディール批判は、日本でも占領終了直後から存在していた。統計学者・上杉正二郎は「世論調査のはなし」(『産業月報』 1953年7・8月号)でこう批判している。


 「アメリカの世論調査はリンカーンの民主主義ではなくルーズベルトの民主主義以後の産物であつた。……『世論調査によると』という口実が、議会の存在に代つて重要となる」


 ちなみに、ファストフードの代名詞「マクドナルド」の創業も同じ政権下の1940年である。総動員体制が求めた食生活の合理化が、ファストフード化を加速させた。それは世論調査についても言えることで、ハーバード・シラー『世論操作』(青木書店・1979年)は戦時体制下における世論調査の発展をこう総括している。


 「マーケティングの必要が世論調査の生みの親だとすれば、戦争は調査技法の開発をうながす育ての親だった。第2次大戦の勃発によって、世論調査の技法にお誂え向きのさまざまな情報ニーズが生じた」


 マーケティング(市場調査)との関連でいえば、世論調査がアメリカで始まった一因は、ラジオがヨーロッパや日本のような公共放送ではなく、商業放送として始まったためである。ラジオという広告媒体の効果は新聞、雑誌のように販売部数で計測できないため、クライアントへの説明材料としてラジオ聴取を示す統計数値が必要とされた。実際、G・ギャラップ、E・ローパー、A・クロスレーなど世論調査会社の創業者はいずれもマーケティング業界の出身である。


 結局、世論調査主義と政治の選挙至上主義、放送の視聴率至上主義は三位一体である。いずれも、観客(有権者・視聴者)の「思考」ではなく「嗜好」を計量するシステムの思想なのだ。


 主権者不在のポリズム


 アメリカで発展したポリズム(世論調査主義)は、戦後日本にもアメリカ占領軍によって持ち込まれた。その政治的含意については、井川充雄「もう一つの世論調査史〜アメリカの〈広報外交〉と世論調査」(『マス・コミュニケーション研究』第77号 2010年)が的確に要約している。


「〔日本で〕USIA(合衆国情報庁)の実施した世論調査は、まさに巨大な国家権力の行使として捉えることができる。そこにおいては、世論調査の回答者は、決して政治的主体としての主権者ではなく、宣伝にさらされ、説得され、効果を測定され、操作される客体に他ならない」


 それにもかかわらず、というよりそれ故にこそ、世論調査は国民投票の代用とされた。世論調査が主権者である国民の声を政治に生かすための疑似国民投票であるという建前は、今日でも一般に流布している。世論調査=国民投票ですべての案件が決定できるならば、代議制、つまり自分に代わって議論してもらう制度は不要となる。


 インターネットが普及した今日、電子端末による日々の国民投票など技術的にたやすいはずだ。ファスト政治の究極の姿はそれである。それでも私たちが「ウェブ世論」のデモクラシーに懐疑的な理由は、普通の生活者がさまざまな政治案件を十分に熟考できるとは考えていないからである。


 分かりやすい例で考えてみよう。夕食時に電話のベルが鳴り、唐突に「首相にふさわしい政治家」や「憲法改正の是非」を問われたとする。唐突な質問に対しては、周囲の空気を読むことで無難にやり過ごすのが普通だろう。つまり、日ごろマスコミが報じている多数世論をおうむ返しに回答する人が少なくないのである。こうして増殖する雰囲気の合算が、どれほど統計的に正確であっても、それを「民意」と見なすことは理性的だろうか。しかも、この世論「調査」を世論「操作」にすり替えることはさほど困難なことではない。


 「輿論の世論化」


こうした世論調査に有権者が冷静に向き合うために、私は『輿論と世論』(新潮選書・2008年)などでヨロン(意見)とセロン(気分)の区別を訴えてきた。


 今日、英語の public opinion は中国、台湾、韓国など漢字文化圏で輿論(舆论)と表記されるが、1946年公布の当用漢字表で「輿」の字を制限した戦後の日本でだけ「世論」が使われ、それが「よろん」と湯桶読みされている。


 だが、そもそも輿論(よろん)と世論(せろん)は別の言葉であった。輿論は「多数の意見」を示す漢語だが、世論は仏典などに使用例はあるものの、明治期日本で使われるようになった新語である。当然ながら、現代中国で「世論」は使われていない。初出例として福澤諭吉『文明論之概略』(1875年)が引かれることが多いが、福澤は責任ある公論(輿論)と世上の雰囲気(世論)を区別しようと考えていた。こうして輿論と世論を区別する発想がヨーロッパ政治思想史に淵源することは、谷藤悦史「世論観の変遷〜民主主義理論との関連で」(『マス・コミュニケーション研究』第77巻 2010年)に詳しい。17世紀市民革命期の思想家ジョン・ロックの議論を谷藤は次のように要約している。


 「ロックは、人々の行動を規制する社会勢力としての『世論ないし世評の法』と、政治社会の成立と運営を導き出す正当性の根拠として『輿論』を別にして、包括的に議論していたのである」


 もちろん、ロックの時代に目指されたのは、議会における「世論」から「輿論」への結晶化である。しかし、19世紀になると、「理性に導かれた集合的な同意としての輿論」は、「快苦に基づく個人の意見としての世論」に転換したと、谷藤はその変質を指摘している。


 だとすれば、明治天皇が発した勅語の用例はまさしくロックが思い描いた市民社会モデルに近いものだ。五か条の御誓文(1868年)で「広く会議を興し、万機公論に決すべし」と表現された公論とは、公議輿論の短縮語である。輿論は尊重すべき公的意見を意味した。一方、軍人勅諭(1882年)の「世論に惑はず、政治に拘かかわらず」が示す通り、世論とは暴走を阻止すべき大衆感情である。つまり、明治期において輿論は政治的正統性の根拠であるが、世論は熱しやすく冷めやすい「空気」であり、政治のかく乱要素と考えられた。


 しかし、1925年普通選挙法成立に至る「政治の大衆化」の中で、理性的な討議より情緒的共感を重視する「輿論の世論化」が始まった。もちろん「輿論の世論化」は、日独伊ファシズムに特有な現象ではない。むしろ、先に述べた通り、科学的世論調査が生まれたアメリカこそ、第1次世界大戦に始まる総力戦体制のシステム化で先頭を走っていた。つまり、マスコミュニケーションと世論調査は観客民主主義の有権者に参加感覚を与えるシステムとして編成されたものである。


 「はなはだ迷惑な議論」


 本稿では特集「世論と世論調査」を掲げた『マス・コミュニケーション研究』(日本マス・コミュニケーション学会)の2010年最新号掲載の論文3本を既に引用した。私が提唱してきた「輿論/世論」の区分が一定の理解を得ていることがそこで確認できる。同じ特集号の峰久和哲「新聞の世論調査手法の変遷」には、次の一節がある。


 「一部の学者たちが『輿論』『世論』を峻別して論文を書くようになった。民意のあり方を深く論じる『思考実験』としては実に優れたものであり、多くのことを学ぶことができた。まずは称賛したい。しかしながら、世論調査を実施し、報道する立場のものにとっては、はなはだ迷惑な議論である。現代の日本人が使っている『世論』は、ただ単に『輿論』の『輿』の字を『世』に代えただけのものである。軍人勅諭に使われた『世論』は死語である」


 峰久和哲朝日新聞論説委員は世論調査センター長などを務めた調査の専門家であり、私は同氏の論説によって多くを学んできた。調査の第一人者から「はなはだ迷惑な議論」と評されたことも大変な名誉と受け取るべきだろう。ただ、調査報道の送り手である峰久氏に対して、私がその受け手としてリテラシー教育を構想している立ち位置の違いは大きい。それでも、尊敬するジャーナリストにこの場を借りて応答させていただきたい。


 まず指摘しておきたいことは、戦後「輿論」の代用として「世論」の採用をリードしたのが新聞社だったという歴史的経緯である。『「毎日」の3世紀』別巻(2002年)はこう記述している。


 「当時の本社輿論調査部員・宮森喜久二が『輿論』から『世論』への切り替えを朝日新聞に提唱し、共同歩調をとったことが統一使用のきっかけとなった。(略)従来、『世論』は戦時中、『世論(せろん)にまどわず』などと流言飛語か俗論のような言葉として使われていた。これに対して『輿論』は『輿論に基づく民主政治』など建設的なニュアンスがあった」


 この意味では「世論化」を主導した責任は、まず新聞社自身が自覚すべき問題である。朝日新聞社は1945年11月7日の有名な社告「国民と共に立たん」と同時に次の社説を掲載している。


 「天下の公器を自称する新聞が、今後激流に棹し、あくまで国民輿論の指導機関たるの役割を果すためには、先づ自らの戦争責任を明かにしなければならぬこと論ずるまでもない」


 高次リテラシーとしての「輿論/世論」


 だが、「国民輿論の指導機関」、あるいは「輿論指導」という理想は、「輿」の字の退場とともに紙面からは消えている。「輿論指導」が「世論指導」に置き換え可能だと当時の論説委員が考えたとは思えない。軍人勅諭だけに議論を限定すべきではないのである。


 この代用の結果、「よろん」という理想的響きを残した世論(セロン)調査の数値が、あたかも国民投票結果のごとく議論の正当性を裏付けるものとして新聞紙面で利用されてきたのではなかったか。世論調査を自ら批判的に検討する足場として、調査による数値化が困難であっても、規範的「輿論」は必要だと私は考えている。


 それは認知心理学における批判的思考の新しい知見と重ねて理解することも可能だろう。批判的思考とは「自分の思考の質を改善する思考法」であり、情緒的に働く「直観的思考」とセットで理解されている(楠見孝編『現代の認知心理学3 思考と言語』〈北大路書房・2010年〉所収の楠見論文「批判的思考と高次リテラシー」参照)。


 もちろん、批判的思考には分析や反省に時間的コストがかかり、目的志向的な努力が不可欠である。それ故、現実のファスト社会で私たちは自動化された直観的思考に流されがちである。しかし、そうした衝動的態度は政治において望ましいものではない。熟慮的態度への発展を促すためにも、高次「世論」としての「輿論」が必要なのだ。


 私たちは明治維新のスローガンだった公議輿論にいま一度思いを致すべきではないだろうか。公に熟議する時間の中で生まれる輿論は、移ろいやすい世論調査の数値とは別物である。もちろん、輿論の計量は難しく、公議輿論への道も至難だろう。だが、その理想を失ったジャーナリズムに世論を批判する足場はないはずである。



投稿者より


2010年民主党代表選挙で大々的におこなわれた世論調査について池内正人氏が書いたという記事「民主代表選・新聞は世論調査を使うべきだ」の原文を探していて、それはみつけられなかったかわりにこの記事をみつけた。佐藤卓己氏の文章は、雑誌などの思いがけないところで時々目にする。目にすれば必ず読む。この記事の内容も期待にたがわないものだった。


元記事は縦書き。横書きでの投稿スタイルに合わせ、投稿者が漢数字を算用数字に直すなどした。



http://www.asyura2.com/16/senkyo216/msg/346.html

   

▲このページのTOPへ      ★阿修羅♪ > ペンネームごとのコメント > iUef9YLMjtI  g検索 iUef9YLMjtI

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。