2016年7月7日に品川駅港南口で行われた選挙フェスにおける、安冨歩氏(東京大学教授)の話の書き起こしです。動画は下記URLで見ることができます。(本投稿の添付画像はこの動画をキャプチャしたもの)
安冨歩 - 20160707 選挙フェス品川 三宅洋平(参議院選挙東京都選挙区立候補 無所属・新人)応援
https://www.youtube.com/watch?v=8BDEe_pXE0o
(書き起こしここから)
ありがとうございます。東京大学の安冨と申します。私はこのような場所に立てたことを非常にうれしく思っています。
というのは、私は『ジャパン・イズ・バック』という本を安倍政権ができたときに書いて、日本の私たちの心に潜んでいる立場主義というものを守ろうとする非常に強力でかつ一人一人の心から湧き出してくる邪悪な力、そういうものに動かされてしまっている今の政治を変革するための、非常に重要な人物だと本の中に書きました。
それはなぜかというと、かつて社会主義というものが大きな力を人々に説得力を持っていた時代というのは、暴力と暴力が対立する構図でした。片方には最も極端な形として全体主義があって、もう片方に暴力革命というものを掲げた社会主義・共産主義というものがあったわけですね。
私たちの心の中には暴力というものが巣くっているので、何らかの暴力性を帯びたものに非常に引きつけられるようになっています。そして、片方に全体主義的暴力、もう一つが暴力革命というものによって人々は引きつけられて、そして左翼と右翼というものが現れ、直接の暴力を回避するような穏健な左翼というようなものも人々の関心を引くことができたんです。
しかし、その一方の社会主義というものが崩壊した現在、我々は邪悪な全体主義的な暴力のアメリカンに酔いしれてしまっているので、どんどん保守化していっている。そのように私は理解しています。
そして、私たちはとうとう、間もなく憲法を改正するというところまで来てしまいました。我々の憲法は非常に特殊な憲法であって、暴力というものの軍隊、組織化した軍隊というものを持たないということを明記した憲法なわけですね。
ところが、それを変えるということは、私たちがとうとうその最後の歯止めを失って、アメリカン、アメリカンというのはアメリカという意味ではなくて、暴力のアメリカン。薄められた暴力、隠蔽された暴力によって組織された社会にどっぷりつかっていってしまう、そのような日が近づいているなと私はおびえています。
しかし、二十世紀の間、それに対抗する新しい軸が提示されました。それは主として、それを最初に提示したのは私はガンディーだと思いますが、非暴力というもの。非暴力というものによって暴力に対抗する、そういう政治が可能なのだということが示されたのだと理解しています。
暴力によって引き起こされた革命は、ほとんど全ての場合において、その前の状態よりも必ずしもいい状態を作ることができませんでした。
しかし、非暴力によって主導された、非暴力的抵抗によって主導された闘いというものが、ガンディーの、南アフリカの運動であったり、あるいはインドの運動、それからキングのアメリカの公民権運動というように、私たち人類社会を少しでもいい方に変えていったんだというふうに信じています。
ですから、このことから学ぶべきことは、私たちは暴力に対して非暴力的抵抗という方法でしか闘うことができない。しかも、その闘いはどのようにして行われたのか。それは、暴力に対して暴力で闘うのではなく、暴力に対してアートで闘うということだったのだと理解しています。
例えばガンディーの塩の行進というもの。それは今の現代から見ると、ものすごいパフォーマンスアートだったのではないかと思っています。あるいは糸車。なぜ糸車をまわすとイギリス帝国主義に闘うことができるのか。それは糸車がアートだからです。それを人々がまわすということが、アートのパフォーマンスだったから、それが人々の心を打ち開くことによって、イギリス帝国主義という巨大な暴力に立ち向かうことができたのだと私は考えています。
その精神は、例えばチャップリンあるいはマイケル・ジャクソンというような人物によって継承されて、私たちは今ここに立っているんだと考えていて、日本社会において今私たちがしないといけないことは、そのようなアートによって暴力に対抗するという闘いを、今ここで行うことだというふうに考えています。
そのようなことを現実の選挙という場面において、こういう選挙フェスという形で実現したのが三宅洋平という政治家であって、その意味で私は日本で最も注目すべき強力な政治家だと考えています。
ですから、私たちがなすべき事は何かというと、それは三宅さんの声を聞くことでも、三宅さんの意見を聞くことでもないのだと考えています。そうではなくて、三宅さんがいつも言っているように、立っているのはあなた方一人一人であるということを言っています。
彼が言っているのはどういうことか。全員が選挙に(聞き取れず)と言っているのではないです。そうではなくて、一人一人が三宅さんのようなアーティストとして生きる、一人一人の人生を芸術として生きるということだと思います。
それは、人間というものは、何かを創造的に生み出すか、あるいは破壊するか、その2つの力しか持っていないからであって、何かを破壊するような力、それに頼って生きる。そして、その暴力をあたかも暴力でないかのように巧みな言葉だとかによって隠蔽して生きる。そういう社会に生きることは非常に生きづらいわけです。
しかし、「そういう社会こそが正しい社会だ」「そのようにしなければ秩序なんか生み出せない」と信じている人はものすごくたくさんいて、だからこそ日本社会はそういう勢力によって支配されているのだと私は思います。
それと闘うためにどうしたらいいんでしょうか。それは彼らを別の暴力で打ち倒すことではないんです。そうではなくて、一人一人がそのような抑圧、「お前たちは無力だ」「お前たちなんかどうせ何もできないんだ」「偉い俺たちに任せておけばいいんだ。黙ってろ」という、そういう力に耳を傾けないで生きるということです。
そうではなくて、一人一人の心で感じていること、みなさん一人一人が感じていることを表現してください。それがアートです。そういうふうにして、自分自身が感じているものを常に表現する、あらゆる場面において表現するということが、非暴力的抵抗という考え方だと私は思います。
三宅さんや山本さんは今、一生懸命演説して闘っていますが、彼らの本領は、例えば今日の演説でも何が日本社会はおかしいのか、そういうことを説明されると思います。しかし、それは彼らの本領ではない。彼らの本領はアートです。芸術です。そしてそれこそが実は最も重要な力なんです。
なぜなら、今選挙に行こうと思っている人が選挙に行っても変わりません。全然足りません。そうではなくて、今必要なのは、選挙なんか行こうとも思ってない人が選挙に行くことなんです。選挙に行こうなんて思ってない人に、いくら難しいことを言ったって、絶対に行きません。
そうではなくて、選挙に行って、そしてそれは楽しい、一人一人がアートとしてアートを生み出しながら創造的に生きるということなんだよ、ということを伝えるしかないと思います。
ところが、東京大学に代表されるようなエリートを輩出する機関にいる人間というものは、そういう創造性を失っている人が非常に多い。そして、その暴力を見事な言葉によって巧みな言葉によって隠蔽し、あの巨大な原子力発電所の事故でさえ何事もなかったかのように言葉で隠蔽する、そのような暴挙を実現できる人々です。
そういう人々に政治を任していけば一体どうなるか、よくお考えください。そういう、笑顔を忘れて作り笑顔しか浮かべられないような人々が政治を主導する限り、私たちの社会に将来はないです。
なぜなら、私たちがどこに行くのか、私たちにはわからないからです。その人たちにもわからないんです。知らないんです。何が起きるかわからないけど、目の前の仕事を片付けて自分の立場を守るために全力を挙げて生きている人たちに、オールを渡してはいけません。かじを渡してはいけません。
どこに行くか、自分が何者であるか、何をやりたいのかを感じられる人間が、それはみなさん一人一人です。その一人一人が、自分の言葉で自分の方法で自分の感情を表現していただく以外に、私たちがこの地球を次の世代に引き継ぐことは不可能です。それは、罪悪感によって実現されるのではなくて、創造性によって実現されます。
ですから、三宅さんの演説を聞くために選挙フェスに集まって来られたみなさん一人一人にお願いしたいことは、彼に投票することではないのです。そうではなくて、一人一人がアートにアーティストとして生きるということをお願いしたいと思いますし、それは、三宅さんはそのようにしてみんなが一人一人が立っているんだと言っているんだと考えています。
そのことを示すために、とりあえず私は今日、絵を描いてみました。誰でも絵を描くこともできれば、誰でも音楽を作ることも何でもできます。みなさん一人一人今から取り組んでください。そして、この絵は三宅さんにプレゼントしたいと思います。
どうもありがとうございました。
(書き起こしここまで)
[関連]
安冨歩さんのツイート: AYUMI YRIGOYEN 「選挙フェス」品川駅港南口 20160707
https://twitter.com/anmintei/status/750967865696620544
三宅洋平!選挙フェス!@品川港南口 DAY16 2016.7.7
https://www.youtube.com/watch?v=HqeuT5HpZdQ
160708 選挙フェス <Day16> 〜参院選 東京選挙区 三宅洋平候補
https://www.youtube.com/watch?v=Wn1EM3N9MRw
ジャパン・イズ・バック 〈週刊朝日〉|dot.ドット 朝日新聞出版
http://dot.asahi.com/ent/publication/reviews/2014050100039.html
http://www.asyura2.com/16/senkyo209/msg/221.html