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[リバイバル3] 史上最高のモニタースピーカー アルテック 612A(銀箱) 中川隆
35. 中川隆[-5889] koaQ7Jey 2021年4月08日 17:43:27 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[1]
Date: 12月 16th, 2009
同軸型ユニットの選択(その9)
http://audiosharing.com/blog/?p=1041

ゆくゆくは604-8Gをマルチアンプ駆動で、チャンネルデバイダーはデジタル信号処理のものにして、
時間軸の整合をとった同軸型ユニットの音を鳴らしてみたい、とは思っている。

それでも最初はネットワークで、どこまでやれるかに挑んでみたい。
ネットワークの場合、時間軸の整合はとれないと考えているひとが少ないようだ。
コイルとコンデンサーといった受動素子で構成されているネットワークで、
604-8Gの場合、ウーファーへの信号を遅らせることは不可能のように捉えられがちだが、
けっしてそんなことはない。

たとえばQUADのESL63は、同心円状に配置した8つの固定電極のそれぞれに遅延回路を通すことにより、
時間差をかけることを実現している。
KEFのレイモンド・クックも、ネットワークでの補正は、高価になってしまうが可能だといっている。

またJBLに在籍した後、マランツにうつりスピーカーの設計を担当したエド・メイは、
マルチウェイスピーカーの場合、個々のユニットの前後位置をずらして位相をあわせるよりも、
ネットワークの補正で行なった方が、より正しいという考えを述べている。
ユニットをずらした場合、バッフル板に段がつくことで無用な反射が発生したり、
音響的なエアポケットができたりするため、であるとしている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1041

同軸型ユニットの選択(その10)
http://audiosharing.com/blog/?p=1042


レイモンド・クックもエド・メイも具体的な方法については何も語っていない。

ふたりのインタビューが載っているのは、
1977年発行のステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界’78」で、
当時出版されていたいくつかの技術書を読んでも、
ネットワークでの時間軸の補正については、まったく記述されてなかった。

だから、どうやるのかは皆目検討がつかなかった。
ただそれでも、ぼんやりとではあるが、コイルを多用するであろうことは想像できた。

同時期、アルテックの604-8Gをベースに、マルチセルラホーンを独自の、水色のホーンに換え、
604-8Gのウーファーとトゥイーターの時間差を補正する特殊なネットワークを採用したUREIの813が登場した。
813についても、ステレオサウンドに詳しい技術解説はなかった。

可能だとわかっていても、そのやり方がわからない。
少し具体的なことがわかったのは、ステレオサウンドの61号のQUAD・ESL63の記事においてである。
長島先生が書かれていた。
http://audiosharing.com/blog/?p=1042


同軸型ユニットの選択(その11)
http://audiosharing.com/blog/?p=1043

ステレオサウンド 61号の記事には、ESL63の回路図が載っている。
たしか長島先生の推測を元にしたものだったと記憶している。

8個の同心円状の固定電極に対して、直列に複数のコイルが使われている。
同心円状の固定電極は、外周にいくにしたがって、通過するコイルの数がふえていくようになっていた(はず)。

やはり、コイルの直列接続によって、時間軸の遅れをつくり出しているのはわかっても、
動作原理まではわからなかったし、どういうふうに定数を決定するのかも、とうぜんわからなかった。

ESL63やUREIの813に使われている回路技術はおそらくおなじものだろうと推測はできても、
具体的なことまで推測できるようになるには、もうすこし時間が必要だった。

ESL63の翌年にCDプレーヤーが登場する。
そしてD/Aコンバーターのあとに設けられているアナログフィルターについての技術的なことを、
少しずつではあるが、知ることとなる。

フィルターには、いくつかの種類がある。
チェビシェフ型、バターワース型、ベッセル型などである。
http://audiosharing.com/blog/?p=1043

同軸型ユニットの選択(その12)
http://audiosharing.com/blog/?p=1044

UREIの813のネットワークに使われているのは、ベッセル型フィルターである。
おそらくESL63のディレイ回路も、ベッセル型フィルターのはずだ。
ベッセル型フィルターの、他のフィルターにはない特徴として、
通過帯域の群遅延(Group Delay)がフラットということがあげられる。

つまりベッセル型のハイカットフィルターをウーファーのネットワークに使えば、
フィルターの次数に応じてディレイ時間を設定できる。

604シリーズのウーファーのハイカットを、ベッセル型フィルターで適切に行なえば、
トゥイーターとの時間差を補正できることになり、
これを実際の製品としてまとめ上げたのが、UREIの813や811といったスピーカーシステムと、
604E、604-8G用に用意されたホーンとネットワークである。

ホーンの型番は800H、ネットワークの型番は、604E用が824、604-8G用が828、
さらに813同様サブウーファーを追加して3ウェイで使用するためのネットワークも用意されており、
604E用が834、604-8G用が838であり、TIME ALIGN NETWORKとUREIでは呼んでいる。
http://audiosharing.com/blog/?p=1044

同軸型ユニットの選択(その13)

川崎先生は「プレゼンテーションの極意」のなかで、特徴と特長について語られている。
     *
「特徴」とは、物事を決定づけている特色ある徴のこと。
「特長」とは、その物事からこそ特別な長所となっている特徴。
     *
ベッセル型フィルターの「特徴」が、同軸型ユニットと組み合わせることで「特長」となる。
http://audiosharing.com/blog/?p=1046


同軸型ユニットの選択(その14)
http://audiosharing.com/blog/?p=1094

UREIの813のネットワーク(TIME ALIGN NETWORK)は、回路図から判断するに、
ウーファー部のハイカットフィルターは、6次のベッセル型である。

ベッセル型フィルターの通過帯域内の群遅延特性はフラットであると前に書いているが、
そううまくウーファーの音だけに遅延がかかって、トゥイーターからの音と時間的な整合がとれているのか、
と疑われる方もおられるだろう。
メーカーの言い分だけでは信じられない、コイルとコンデンサーだけのネットワークで、
タイムアライメントをとることが、ほんとうに可能なのか、と疑問を持たれても不思議ではない。

ステレオサウンドの46号の特集記事はモニタースピーカーだった。
その次の47号で、46号で登場したモニタースピーカーを、三菱電機郡山製作所にての測定結果が載っている。

アルテックの620A、JBLの4343、4333A、ダイヤトーンのMonitor1、キャバスのブリガンタン、
K+Hの092、OL10、ヤマハのNS1000M、そしてUREIの813の、
無響室と2π空間での周波数特性、ウーファー、バスレフポート、パッシヴラジエーターに対する近接周波数特性、
超高域周波数特性、高次高調波歪特性、混変調歪特性と混変調歪差周波掃引、
インパルスレスポンス、群遅延特性、エネルギータイムレスポンス、累積スペクトラム、
裏板振動特性、デジタル計測による混変調歪が載っている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1094


同軸型ユニットの選択(その15)
http://audiosharing.com/blog/?p=1157

ステレオサウンド 47号の測定結果で比較したいのは、
アルテック620AとUREI・813であることはいうまでもない。

813のネットワークの効果がはっきりと出ているのは、
インパルスレスポンス、群遅延特性、エネルギータイムレスポンスにおいてである。

620Aのエネルギータイムレスポンスは、まず-40dB程度のゆるやかな山があらわれたあとに、
高く鋭く、レベルの高い山が続く。
最初の山がウーファーからのエネルギーの到達を示し、それに続く山がトゥイーターからのものである。

813はどうかというと、ゆるやかなウーファーの山の中ほどに、トゥイーターからの鋭い山が入りこんでいる。
ふたつの山の中心が、ほぼ重なり合っている形になっている。

620Aでのウーファーの山のはじまりと、813でのはじまりを比較すると、
813のほうがあきらかに遅れて放射されていることがわかる。
インパルスレスポンスの波形をみても、このことは読み取れる。

620Aでは、やはりゆるやかな低い山がまずあらわれたあとに鋭い、レベルの高い山が続く。
813では、ゆるやかな山の始まりが遅れることで、鋭い山とほぼ重なり合う。

群遅延特性も、同じアルテックの604-8Gを使用しているのに、813はかなり優秀な特性となっている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1157


同軸型ユニットの選択(その16)
http://audiosharing.com/blog/?p=1159

ウーファーとトゥイーターの中心軸を揃えた同軸型ユニットは、
その構造ゆえの欠点も生じても、マルチウェイスピーカーの構成法としては、
ひとつの理想にちかいものを実現している。

同軸型ユニットは、単体のウーファーやトゥイーターなどにくらべ、
構造はどうしても複雑になるし、制約も生じてくる。
それでも、各スピーカーメーカーのいくつかが、いまも同軸型ユニットを、新たな技術で開発しているのをみても、
スピーカーの開発者にとって、魅力的な存在なのかもしれない。

KEFは1980年代の終りに、Uni-Qという同軸型ユニットを発表した。
それまで市場に現れた同軸型ユニットとあきらかに異り、優位と考えられる点は、
ウーファーとトゥイーターのボイスコイルの位置を揃えたことにある。

アルテックの604シリーズ、タンノイのデュアルコンセントリック・ユニットが、
トゥイーターにホーン型を採用したため、ウーファーとトゥイーターの音源の位置のズレは避けられない。

パイオニアのS-F1は、世界初の平面振動板の同軸型、しかも4ウェイと、規模も世界最大だったが、
記憶に間違いがなければ、ウーファー、ミッドバス、ミッドハイ、
トゥイーターのボイスコイルの位置は、同一線上にはなかったはずだ。

ユニットの構造として、Uni-Qは、他の同軸型ユニットを超えているし、
同軸型ユニットを、スピーカーユニットの理想の形として、さらに一歩進めたものともいえる。
http://audiosharing.com/blog/?p=1159

http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/1072.html#c35

[リバイバル3] 史上最高のモニタースピーカー アルテック 612A(銀箱) 中川隆
36. 中川隆[-5888] koaQ7Jey 2021年4月08日 17:47:33 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[2]
Date: 2月 16th, 2010
同軸型ユニットの選択(その17)
http://audiosharing.com/blog/?p=1160


Uni-Qをもってして、同軸型ユニットは完成した、とはいわないが、
Uni-Qからみると、ホーン型トゥイーターのアルテックやタンノイの同軸型は、あきらかに旧型といえるだろう。

ただ、オーディオマニア的、といおうか、モノマニア的には、
アルテックやタンノイのほうに、魅力を強く感じる面があることは否定できない。
Uni-Qの優秀性は素直に認めても、個人的に応援したくなるのは、アルテックだったり、タンノイだったりする。

空想してもしかたのないことではあるが、もしJBLがUni-Qを開発していたら、
モノとしての魅力は、マニア心をくすぐるモノとして仕上っていただろう。

Uni-Qは、あたりまえのことだけど、あくまでもイギリス的に仕上りすぎている。
もっといえば、いかにもKEFらしく仕上がっている。
そこが魅力でもあるのは重々承知した上で、やはりもの足りなさも感じる。

すこし話はそれるが、アルテックとタンノイの同軸型ユニットを比較するときに、磁気回路の話がある。
タンノイはウーファーとトゥイーターでひとつのマグネットを兼用している、
アルテックはそれぞれ独立している、と。

たしかに604や605などのアルテックの同軸型ユニットにおいて、
ウーファーとトゥイーターのマグネットは独立している。
が、磁気回路が完全に独立しているかという、そうではない。

604の構造図をみればすぐにわかることだが、ウーファー磁気回路のバックプレートと、
トゥイーターのバックプレートは兼用していることに気がつくはずだ。
http://audiosharing.com/blog/?p=1160

同軸型ユニットの選択(その18)
http://audiosharing.com/blog/?p=1161

アルテック、タンノイといった古典的な同軸型ユニットで、
ウーファー部の磁気回路とホーン型トゥイーター(もしくはスコーカー)の磁気回路が完全に独立しているのは、
長島先生が愛用されてきたジェンセンのG610シリーズがそうである。

完全独立、ときくと、マニアとしてはうれしいことではあるが、
ふたつ以上のマグネットが近距離にあれば干渉しあう。

干渉を防ぐには、距離を離すことが手っとり早い解決法だが、同軸型ユニットではそうもいかない。
ならばひとつのマグネットでウーファー用とトゥイーター用を兼ねよう、という発想が、
タンノイのデュアルコンセントリックの開発に当たっては、あったのかもしれない。

もっともマグネットは直流磁界で、ボイスコイルが発する交流磁界の変化によって、
磁束密度が影響を受ける、それに2次高調波歪がおこることは、
いくつかのスピーカーメーカーの解析によってはっきりとした事実であるから、
一つのマグネット(ひとつの直流磁界)に、二つの交流磁界が干渉するタンノイのデュアルコンセントリックでは、
音楽信号再生時に、どういう状態になっているのかは、専門家の話をうかがいたいと思っている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1161

同軸型ユニットの選択(その19)
http://audiosharing.com/blog/?p=1163

振動板の駆動源といえるマグネットが兼用されているため、
節倹の精神によってタンノイはつくられている、ともいえるし、
口の悪いひとならば、ケチくさいつくり、とか、しみったれたつくり、というかもしれない。

けれどオートグラフという、あれだけ意を尽くし贅を尽くしたスピーカーシステムをつくりあげたタンノイが、
その音源となるユニットに、節倹の精神だけで、ウーファーのコーン紙のカーブを、
トゥイーターのホーンの延長として利用したり、マグネットをひとつにしたとは、私は思っていない。

ボイスコイルがひとつだけの純粋のフルレンジユニットでは、ワイドレンジ再生は不可能。
かといって安易に2ウェイにしてしまうと、タンノイが追い求めていた、
家庭での音楽鑑賞にもっとも大切と思われるものが希薄になってしまう。
そのデメリットをおさえるために、できるかぎりの知恵を出し、
コーン型のウーファーとホーン型のトゥイーターを融合させてようとした結果が、
タンノイ独自のデュアルコンセントリックといっていいだろう。

これは、外観からも伺えないだろうか。
アルテックの604の外観が、同軸型2ウェイであることを顕示しているのに対し、
タンノイのデュアルコンセントリックは、何も知らずにみれば、大口径のフルレンジに見えないこともない。
http://audiosharing.com/blog/?p=1163


同軸型ユニットの選択(その20)
http://audiosharing.com/blog/?p=1165

タンノイの同軸型ユニットは、必ずしもマグネットがひとつだけ、とは限らない。
1977年ごろ登場したバッキンガム、ウィンザー、このふたつのシステムに搭載されているユニット2508は、
フェライトマグネットを、高音域、低音域用とにわかれている。

バッキンガムも、ウィンザーも、ウーファーユニットを追加したモデルだ。
このときのタンノイの主力スピーカーシステムは、アーデン、バークレイなどの、いわゆるABCシリーズで、
使用ユニットはアルニコマグネットのHPDシリーズ。いうまでもなくマグネットはひとつだけ。
さらに同時期登場したメイフェアー、チェスター、ドーセット、アスコットには、2528DUALが使われている。
このユニットもフェライトマグネットだが、低音、高音で兼用している。

HPDシリーズはのちにフェライトマグネット使用のKシリーズに換っていくが、
Kシリーズも、マグネットひとつだけ、である。
2508のマグネットがふたつあるのはフェライトマグネットだからではないことが、このことからわかるだろう。

1996年、キングダムが登場する。
このキングダムに搭載されている同軸型ユニットも、またマグネットを2組持っている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1165

同軸型ユニットの選択(その21)
http://audiosharing.com/blog/?p=1166


キングダムのユニット構成は、同軸型ユニットを中心として、低域にサブウーファーを、
高域にスーパートゥイーターを追加した4ウェイである。

ここまで書けば、察しのいい方ならば気がつかれるだろうが、
タンノイのスピーカーづくりのありかたとして、同軸型ユニットだけでシステムを構築する場合には、
従来からのウーファーとトゥイーターのマグネットを兼用させたものが、
そしてレンジ拡大のためにウーファーやトゥイーターが追加されるときには、
マグネットが独立したタイプが使われる。

このことから推測されるのは、重視する要素が、システム構成によって違いがあるということだ。

それぞれの同軸型ユニットが重視している要素は、調和か明晰か、ではなかろうか。
このことは、エンクロージュアの構造、つくりの違いにも顕れている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1166

同軸型ユニットの選択(その22)

タンノイの創始者、ガイ・R・ファウンテンと、
チーフエンジニアのロナルド・H・ラッカムのふたりが音楽再生においてめざしたものは、調和だった気がする。
それも有機的な調和なのではなかろうか。
http://audiosharing.com/blog/?p=1374


同軸型ユニットの選択(その23)
http://audiosharing.com/blog/?p=1582


この項の(その18)でふれているが、同軸型ユニットにおいて、
ウーファー用とトゥイーター用のマグネットが独立していた方がいいのか、
それともひとつで兼ねた方がいいのか、どちらが技術的には優れているのか、もうひとつはっきりしない。

タンノイのリビングストンは、ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のタンノイ号で、
アルテックの604との比較、それにマグネットを兼用していることについて語っている(聞き手は瀬川先生)。
     *
これ(604のこと)に比べてタンノイのデュアル・コンセントリックは全く違います。まず、ホーンでの不連続性はみられません。第二にコーンの前に障害物が全くないということです。第三に、マグネティックシャントが二つの磁束の間にあるということです。結局、タンノイは一つのマグネットで二つのユニットをドライブしているわけですが、アルテックは二つのマグネットで二つのドライバーユニットを操作しているわけで、この差が大きなものになっています。
     *
第三の理由として語られていることについては、正直、もうすこし解説がほしい。
これだけではなんともいえないけれど、
少なくともタンノイとしては、リビングストンとしては、
マグネットを兼用していることをメリットとして考えていることは確実なことだ。

そのタンノイが、同軸型ユニットなのに、
ウーファーとトゥイーターのマグネットを独立させたものも作っている。

そのヒントとなるリビングストンの発言がある。
     *
スピーカーの基本設計の面で大事なことは、使われているエレメントが、それぞれ独立した思想で作られていたのでは、けっしていいスピーカーを作り上げることはできないと思うのです。サスペンションもコーンもマグネットも、すべて一体となって、それぞれがかかわり合って一つのシステムを作り上げるところに、スピーカーの本来の姿があるわけです。例えば、ボイスコイルを研究しているエンジニアが、それだけを取り上げてやっていると、トータルな相関関係が崩れてしまう。ボイスコイルだけの特性を高めても、コーンがそれに十分対応しなかったり、磁束密度の大きいマグネットにしても、それに対応するサスペンションがなかったりするわけで、そこでスピーカーの一体感というものが損なわれてしまう。やはりスピーカーを作る場合には各エレメントがそれぞれお互いに影響し合い、作用し合って一つのものを作り上げているんだ、ということを十分考えに入れながら作る必要があると思います。
     *
「一体」「一体感」「相関関係」──、
これらの言葉が、いうまでもなく重要である。
http://audiosharing.com/blog/?p=1582

http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/1072.html#c36

[リバイバル3] タンノイで まともな音が出るのはモニターシルバーを入れた小型システムだけ 中川隆
52. 中川隆[-5887] koaQ7Jey 2021年4月08日 17:53:22 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[3]
audio identity (designing)宮ア勝己 
Archive for category 604-8G


Date: 12月 2nd, 2009
同軸型ユニットの選択(その1)
http://audiosharing.com/blog/?p=1017


JBLの4343について、これまで書いてきた。ワイドレンジについては、いまも書いている。
これらを書きながら考えていたのは、放射パターンを考慮したときの同軸型ユニットの優位性について、であり、
同軸型ユニットを中核としたスピーカーシステムの構想について、である。

アルテックの604シリーズ、タンノイのデュアルコンセントリック・シリーズ──、
両社の伝統的ユニットを使い、最低域と最高域を、ぞれぞれ別のユニットで補う。

すでに、実際の製品として、アルテックには6041があり、タンノイにはキングダム・シリーズがある。
にもかかわらず、自分で確認したいこと、試してみたいことが、いまもくすぶっている。
そのくすぶりが、書くことで次の段階へとうつろうとしている。

今日、604-8Gが届いた。
http://audiosharing.com/blog/?p=1017


同軸型ユニットの選択(その2)
http://audiosharing.com/blog/?p=1025

同軸型ユニットを中心としたワイドレンジのスピーカーシステム構築を考えれば、
タンノイとアルテックの同軸型ユニットを、私と同世代、上の世代の方は、最初に思い浮かべるだろう。

タンノイにするかアルテックにするか……。
別に迷ってはいなかった。最初に手にしたほうを使おう、そういうつもりでいたからだ。

主体性のない、やや受け身のスピーカー選びだが、それでも、モノとの巡り合いがあるだろうから、
ひとつくらい、こんなふうにスピーカーを選ぶのもいいかもしれない。

タンノイには、五味先生の本でオーディオと出合っただけに、その想いは簡単には語れない。
アルテックは、ここに書いたことをきいて知っていただけに、
一度は、自分の手で鳴らしてみたいと、ここ数年想い続けてきた。

タンノイとアルテック、ふたつとも手に入れてシステムを組むというのは、いまは無理だ。
だから、最初に私のところに来てくれたほうを使おうと決めた。そしてアルテックが到着した。
http://audiosharing.com/blog/?p=1025


同軸型ユニットの選択(その3)
http://audiosharing.com/blog/?p=1026


604-8Gに関して、こんな記事が出ていたことがある。
管球王国 Vol.25において、604シリーズ6機種の試聴記事が載っている。

そこで、篠田寛一氏が、604-8Gに604EのネットワークN1500Aを使うと、
「604Eに限りなく近い音で鳴る」と発言されている。
これを受けて、杉井真人氏(どういう方なのかは知らない)が、
「8Gのネットワークを解析するとわかるのですが、かなりイコライジングしているんです。
音質補正回路みたいなものが入っていて、
ある帯域にピークやディップを持たせたりして独特の音作りをしています」と補足されている。

604-8Gのネットワークには型番はない。
クロスオーバー周波数は1.5kHzで、ウーファーのハイカットは12dB/oct.、
トゥイーターのローカットは18dB/oct. となっていて、レベルコントロールは連続可変で、ツマミはひとつ。

この専用ネットワークは、ほんとうに杉井氏の指摘のとおり、
回路構成によって独特の音作りを行っているのだろうか。
http://audiosharing.com/blog/?p=1026


同軸型ユニットの選択(その4)
http://audiosharing.com/blog/?p=1027


手もとに604-8Gがあるから、ネットワークの内部を見ることができる。
シャーシー内部には、鉄芯入りのコイルが2個、コンデンサーが3個、
あとはレベルコントロール用の巻線型のアッテネーターだけである。

12dB/oct.のハイカットフィルターには、コイルとコンデンサーがひとつずつ、
18dB/oct.のローカットには、コイルはひとつ、コンデンサーはふたついる。
ハイカット、ローカットあわせて2個のコイルと3個のコンデンサーは、最低でも必要である。

インピーダンス補正や周波数特性をいじるのであれば、さらにコンデンサーやコイルが必要になる。
604-8Gの専用ネットワークには、必要最小限の部品しか収められていない。
インピーダンス補正も周波数のイコライジングを行なう部品は、何ひとつない。

アルテックのサイトから、604-8Gのネットワークの回路図がダウンロードできる。
見れば一目瞭然である。どこにも杉井氏が指摘されるようなところは、ない

杉井氏の「解析」とはどういうことなのだろうか。
http://audiosharing.com/blog/?p=1027


同軸型ユニットの選択(その5)
http://audiosharing.com/blog/?p=1028

おそらく杉井氏は、604-8Gと604-8Hのネットワークを混同されていたのだろう。
勘違いの発言だったのだろう。

604-8Hはマンタレーホーンを採用している関係上、ある帯域での周波数補正が必要となる。
それに2ウェイにも関わらず、3ウェイ同様に中域のレベルコントロールも可能としたネットワークであるため、
構成は複雑になり、使用部品も増えている。

だから、杉井氏の発言は、604-8Hのネットワークのことだろう。
勘違いを批判したいわけではない。

この記事の問題は、その勘違いに誰も気がつかず、活字となって、事実であるかのように語られていることである。

この試聴記事に参加されている篠田氏は、エレクトリでアルテックの担当だった人だ。
アルテックについて、詳しいひとのはずだ。
604-8Gと604-8Hのネットワークについて、何も知らないというのはないはずだ。

本来なら、篠田氏は、杉井氏の勘違いを指摘する立場にあるべきだろうに、
むしろ「アルテックのあがき≠ンたいなものがこの音に出ている」と、肯定ぎみの発言をされている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1028


同軸型ユニットの選択(その6)
http://audiosharing.com/blog/?p=1033


604Eのネットワーク、N1500Aは、クロスオーバー周波数は1.5kHzで、
減衰特性はウーファーは6dB/oct.、トゥイーターは12dB/oct.。
604-8Gのネットワークとはスペックの上では減衰特性が異るわけだが、
もっとも大きな違いはスペックに、ではなく、回路構成にある。

いま市販されている大半のスピーカーのネットワークは、並列型であろう。
604-8Gのネットワークも並列型である。

パワーアンプから見た場合、ウーファーとトゥイーターに、それぞれネットワークの回路がはいったうえで、
並列接続されたかっこうになっている。だからこそ、バイワイアリングという接続方法も可能になる。

直列型は、文字通り、ユニットを直列接続した回路構成となっており、
ウーファーのマイナス端子とトゥイーターのプラス端子が接続される。
12dB/oct.の場合は、並列型と同じようにトゥイーターの極性を反転させることもある。

604Eと直列型のネットワークN1500Aの組合せもその例にもれず、
ウーファーとトゥイーターのマイナス端子同士が接続される。
一見、トゥイーターの極性を反転しているかのように思えるが、
N1500Aの入力端子のプラス側は、トゥイーターのプラス側に接がっている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1033


同軸型ユニットの選択(その7)
http://audiosharing.com/blog/?p=1034

つまり、604Eは、N1500Aを接いで鳴らすと、ウーファーは逆相接続になる。
プラスの信号が入力されると、コーン紙は前にではなく、後に動く。

もちろんウーファーを正相接続にして、トゥイーターの極性を反転させるという手もあるだろうし、
ウーファーもトゥイーターも正相接続もあるなかで、
アルテックは、ウーファーを逆相にするという手を選択している。

それに直列型のネットワークを採用する例では、ウーファーのプラス端子が、
そのまま入力端子のプラスとなることが多いはずだが、
この点でも、604EとN1500Aの組合せは異る。

スピーカーユニットを逆相にすると、音の表情は大きく変化する。
フルレンジユニットで試してみると、よくわかる。

これらのことをふまえてN1500Aの回路図を見ていると、アルテックの音づくりの一端がうかがえる。
http://audiosharing.com/blog/?p=1034


同軸型ユニットの選択(その8)
http://audiosharing.com/blog/?p=1040


604EとN1500Aの組合せにおける、こまかな工夫にくらべると、
604-8Gと、そのネットワークの組合せは、ウーファーもトゥイーターも正相接続で、
スピーカーの教科書に載っているそのままで、おもしろみといった要素はない。

それだけN1500Aと604-8G用ネットワークの仕様は違うわけだ。
だから管球王国 Vol.25にあるように、604-8GにN1500Aを組み合わせれば、
純正の組合せの音は、同じアルテックの604というスピーカーの中での範疇ではあるものの、
かなり傾向は異ってきて当然であろう。

優れたユニットであればあるほど、活かすも殺すもネットワーク次第のところがある。
604-8Gでシステムを構築するにあたって、ネットワークをどうするか。

604-8Gについているネットワークをそのまま使うつもりはない。
ひとつのリファレンスとして、純正ネットワークの音はいつでも聴けるようにはしておくが、
ネットワークに関しては、新たに作る予定でいる。

N1500Aと同じ回路のものを試しにつくってもいいが、私が参考にするのは UREIの813である。
http://audiosharing.com/blog/?p=1040


Date: 12月 16th, 2009
同軸型ユニットの選択(その9)
http://audiosharing.com/blog/?p=1041

ゆくゆくは604-8Gをマルチアンプ駆動で、チャンネルデバイダーはデジタル信号処理のものにして、
時間軸の整合をとった同軸型ユニットの音を鳴らしてみたい、とは思っている。

それでも最初はネットワークで、どこまでやれるかに挑んでみたい。
ネットワークの場合、時間軸の整合はとれないと考えているひとが少ないようだ。
コイルとコンデンサーといった受動素子で構成されているネットワークで、
604-8Gの場合、ウーファーへの信号を遅らせることは不可能のように捉えられがちだが、
けっしてそんなことはない。

たとえばQUADのESL63は、同心円状に配置した8つの固定電極のそれぞれに遅延回路を通すことにより、
時間差をかけることを実現している。
KEFのレイモンド・クックも、ネットワークでの補正は、高価になってしまうが可能だといっている。

またJBLに在籍した後、マランツにうつりスピーカーの設計を担当したエド・メイは、
マルチウェイスピーカーの場合、個々のユニットの前後位置をずらして位相をあわせるよりも、
ネットワークの補正で行なった方が、より正しいという考えを述べている。
ユニットをずらした場合、バッフル板に段がつくことで無用な反射が発生したり、
音響的なエアポケットができたりするため、であるとしている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1041

同軸型ユニットの選択(その10)
http://audiosharing.com/blog/?p=1042


レイモンド・クックもエド・メイも具体的な方法については何も語っていない。

ふたりのインタビューが載っているのは、
1977年発行のステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界’78」で、
当時出版されていたいくつかの技術書を読んでも、
ネットワークでの時間軸の補正については、まったく記述されてなかった。

だから、どうやるのかは皆目検討がつかなかった。
ただそれでも、ぼんやりとではあるが、コイルを多用するであろうことは想像できた。

同時期、アルテックの604-8Gをベースに、マルチセルラホーンを独自の、水色のホーンに換え、
604-8Gのウーファーとトゥイーターの時間差を補正する特殊なネットワークを採用したUREIの813が登場した。
813についても、ステレオサウンドに詳しい技術解説はなかった。

可能だとわかっていても、そのやり方がわからない。
少し具体的なことがわかったのは、ステレオサウンドの61号のQUAD・ESL63の記事においてである。
長島先生が書かれていた。
http://audiosharing.com/blog/?p=1042


同軸型ユニットの選択(その11)
http://audiosharing.com/blog/?p=1043

ステレオサウンド 61号の記事には、ESL63の回路図が載っている。
たしか長島先生の推測を元にしたものだったと記憶している。

8個の同心円状の固定電極に対して、直列に複数のコイルが使われている。
同心円状の固定電極は、外周にいくにしたがって、通過するコイルの数がふえていくようになっていた(はず)。

やはり、コイルの直列接続によって、時間軸の遅れをつくり出しているのはわかっても、
動作原理まではわからなかったし、どういうふうに定数を決定するのかも、とうぜんわからなかった。

ESL63やUREIの813に使われている回路技術はおそらくおなじものだろうと推測はできても、
具体的なことまで推測できるようになるには、もうすこし時間が必要だった。

ESL63の翌年にCDプレーヤーが登場する。
そしてD/Aコンバーターのあとに設けられているアナログフィルターについての技術的なことを、
少しずつではあるが、知ることとなる。

フィルターには、いくつかの種類がある。
チェビシェフ型、バターワース型、ベッセル型などである。
http://audiosharing.com/blog/?p=1043

同軸型ユニットの選択(その12)
http://audiosharing.com/blog/?p=1044

UREIの813のネットワークに使われているのは、ベッセル型フィルターである。
おそらくESL63のディレイ回路も、ベッセル型フィルターのはずだ。
ベッセル型フィルターの、他のフィルターにはない特徴として、
通過帯域の群遅延(Group Delay)がフラットということがあげられる。

つまりベッセル型のハイカットフィルターをウーファーのネットワークに使えば、
フィルターの次数に応じてディレイ時間を設定できる。

604シリーズのウーファーのハイカットを、ベッセル型フィルターで適切に行なえば、
トゥイーターとの時間差を補正できることになり、
これを実際の製品としてまとめ上げたのが、UREIの813や811といったスピーカーシステムと、
604E、604-8G用に用意されたホーンとネットワークである。

ホーンの型番は800H、ネットワークの型番は、604E用が824、604-8G用が828、
さらに813同様サブウーファーを追加して3ウェイで使用するためのネットワークも用意されており、
604E用が834、604-8G用が838であり、TIME ALIGN NETWORKとUREIでは呼んでいる。
http://audiosharing.com/blog/?p=1044

同軸型ユニットの選択(その13)

川崎先生は「プレゼンテーションの極意」のなかで、特徴と特長について語られている。
     *
「特徴」とは、物事を決定づけている特色ある徴のこと。
「特長」とは、その物事からこそ特別な長所となっている特徴。
     *
ベッセル型フィルターの「特徴」が、同軸型ユニットと組み合わせることで「特長」となる。
http://audiosharing.com/blog/?p=1046


同軸型ユニットの選択(その14)
http://audiosharing.com/blog/?p=1094

UREIの813のネットワーク(TIME ALIGN NETWORK)は、回路図から判断するに、
ウーファー部のハイカットフィルターは、6次のベッセル型である。

ベッセル型フィルターの通過帯域内の群遅延特性はフラットであると前に書いているが、
そううまくウーファーの音だけに遅延がかかって、トゥイーターからの音と時間的な整合がとれているのか、
と疑われる方もおられるだろう。
メーカーの言い分だけでは信じられない、コイルとコンデンサーだけのネットワークで、
タイムアライメントをとることが、ほんとうに可能なのか、と疑問を持たれても不思議ではない。

ステレオサウンドの46号の特集記事はモニタースピーカーだった。
その次の47号で、46号で登場したモニタースピーカーを、三菱電機郡山製作所にての測定結果が載っている。

アルテックの620A、JBLの4343、4333A、ダイヤトーンのMonitor1、キャバスのブリガンタン、
K+Hの092、OL10、ヤマハのNS1000M、そしてUREIの813の、
無響室と2π空間での周波数特性、ウーファー、バスレフポート、パッシヴラジエーターに対する近接周波数特性、
超高域周波数特性、高次高調波歪特性、混変調歪特性と混変調歪差周波掃引、
インパルスレスポンス、群遅延特性、エネルギータイムレスポンス、累積スペクトラム、
裏板振動特性、デジタル計測による混変調歪が載っている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1094


同軸型ユニットの選択(その15)
http://audiosharing.com/blog/?p=1157

ステレオサウンド 47号の測定結果で比較したいのは、
アルテック620AとUREI・813であることはいうまでもない。

813のネットワークの効果がはっきりと出ているのは、
インパルスレスポンス、群遅延特性、エネルギータイムレスポンスにおいてである。

620Aのエネルギータイムレスポンスは、まず-40dB程度のゆるやかな山があらわれたあとに、
高く鋭く、レベルの高い山が続く。
最初の山がウーファーからのエネルギーの到達を示し、それに続く山がトゥイーターからのものである。

813はどうかというと、ゆるやかなウーファーの山の中ほどに、トゥイーターからの鋭い山が入りこんでいる。
ふたつの山の中心が、ほぼ重なり合っている形になっている。

620Aでのウーファーの山のはじまりと、813でのはじまりを比較すると、
813のほうがあきらかに遅れて放射されていることがわかる。
インパルスレスポンスの波形をみても、このことは読み取れる。

620Aでは、やはりゆるやかな低い山がまずあらわれたあとに鋭い、レベルの高い山が続く。
813では、ゆるやかな山の始まりが遅れることで、鋭い山とほぼ重なり合う。

群遅延特性も、同じアルテックの604-8Gを使用しているのに、813はかなり優秀な特性となっている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1157


同軸型ユニットの選択(その16)
http://audiosharing.com/blog/?p=1159

ウーファーとトゥイーターの中心軸を揃えた同軸型ユニットは、
その構造ゆえの欠点も生じても、マルチウェイスピーカーの構成法としては、
ひとつの理想にちかいものを実現している。

同軸型ユニットは、単体のウーファーやトゥイーターなどにくらべ、
構造はどうしても複雑になるし、制約も生じてくる。
それでも、各スピーカーメーカーのいくつかが、いまも同軸型ユニットを、新たな技術で開発しているのをみても、
スピーカーの開発者にとって、魅力的な存在なのかもしれない。

KEFは1980年代の終りに、Uni-Qという同軸型ユニットを発表した。
それまで市場に現れた同軸型ユニットとあきらかに異り、優位と考えられる点は、
ウーファーとトゥイーターのボイスコイルの位置を揃えたことにある。

アルテックの604シリーズ、タンノイのデュアルコンセントリック・ユニットが、
トゥイーターにホーン型を採用したため、ウーファーとトゥイーターの音源の位置のズレは避けられない。

パイオニアのS-F1は、世界初の平面振動板の同軸型、しかも4ウェイと、規模も世界最大だったが、
記憶に間違いがなければ、ウーファー、ミッドバス、ミッドハイ、
トゥイーターのボイスコイルの位置は、同一線上にはなかったはずだ。

ユニットの構造として、Uni-Qは、他の同軸型ユニットを超えているし、
同軸型ユニットを、スピーカーユニットの理想の形として、さらに一歩進めたものともいえる。
http://audiosharing.com/blog/?p=1159

Date: 2月 16th, 2010
同軸型ユニットの選択(その17)
http://audiosharing.com/blog/?p=1160

Uni-Qをもってして、同軸型ユニットは完成した、とはいわないが、
Uni-Qからみると、ホーン型トゥイーターのアルテックやタンノイの同軸型は、あきらかに旧型といえるだろう。

ただ、オーディオマニア的、といおうか、モノマニア的には、
アルテックやタンノイのほうに、魅力を強く感じる面があることは否定できない。
Uni-Qの優秀性は素直に認めても、個人的に応援したくなるのは、アルテックだったり、タンノイだったりする。

空想してもしかたのないことではあるが、もしJBLがUni-Qを開発していたら、
モノとしての魅力は、マニア心をくすぐるモノとして仕上っていただろう。

Uni-Qは、あたりまえのことだけど、あくまでもイギリス的に仕上りすぎている。
もっといえば、いかにもKEFらしく仕上がっている。
そこが魅力でもあるのは重々承知した上で、やはりもの足りなさも感じる。

すこし話はそれるが、アルテックとタンノイの同軸型ユニットを比較するときに、磁気回路の話がある。
タンノイはウーファーとトゥイーターでひとつのマグネットを兼用している、
アルテックはそれぞれ独立している、と。

たしかに604や605などのアルテックの同軸型ユニットにおいて、
ウーファーとトゥイーターのマグネットは独立している。
が、磁気回路が完全に独立しているかという、そうではない。

604の構造図をみればすぐにわかることだが、ウーファー磁気回路のバックプレートと、
トゥイーターのバックプレートは兼用していることに気がつくはずだ。
http://audiosharing.com/blog/?p=1160

同軸型ユニットの選択(その18)
http://audiosharing.com/blog/?p=1161

アルテック、タンノイといった古典的な同軸型ユニットで、
ウーファー部の磁気回路とホーン型トゥイーター(もしくはスコーカー)の磁気回路が完全に独立しているのは、
長島先生が愛用されてきたジェンセンのG610シリーズがそうである。

完全独立、ときくと、マニアとしてはうれしいことではあるが、
ふたつ以上のマグネットが近距離にあれば干渉しあう。

干渉を防ぐには、距離を離すことが手っとり早い解決法だが、同軸型ユニットではそうもいかない。
ならばひとつのマグネットでウーファー用とトゥイーター用を兼ねよう、という発想が、
タンノイのデュアルコンセントリックの開発に当たっては、あったのかもしれない。

もっともマグネットは直流磁界で、ボイスコイルが発する交流磁界の変化によって、
磁束密度が影響を受ける、それに2次高調波歪がおこることは、
いくつかのスピーカーメーカーの解析によってはっきりとした事実であるから、
一つのマグネット(ひとつの直流磁界)に、二つの交流磁界が干渉するタンノイのデュアルコンセントリックでは、
音楽信号再生時に、どういう状態になっているのかは、専門家の話をうかがいたいと思っている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1161

同軸型ユニットの選択(その19)
http://audiosharing.com/blog/?p=1163

振動板の駆動源といえるマグネットが兼用されているため、
節倹の精神によってタンノイはつくられている、ともいえるし、
口の悪いひとならば、ケチくさいつくり、とか、しみったれたつくり、というかもしれない。

けれどオートグラフという、あれだけ意を尽くし贅を尽くしたスピーカーシステムをつくりあげたタンノイが、
その音源となるユニットに、節倹の精神だけで、ウーファーのコーン紙のカーブを、
トゥイーターのホーンの延長として利用したり、マグネットをひとつにしたとは、私は思っていない。

ボイスコイルがひとつだけの純粋のフルレンジユニットでは、ワイドレンジ再生は不可能。
かといって安易に2ウェイにしてしまうと、タンノイが追い求めていた、
家庭での音楽鑑賞にもっとも大切と思われるものが希薄になってしまう。
そのデメリットをおさえるために、できるかぎりの知恵を出し、
コーン型のウーファーとホーン型のトゥイーターを融合させてようとした結果が、
タンノイ独自のデュアルコンセントリックといっていいだろう。

これは、外観からも伺えないだろうか。
アルテックの604の外観が、同軸型2ウェイであることを顕示しているのに対し、
タンノイのデュアルコンセントリックは、何も知らずにみれば、大口径のフルレンジに見えないこともない。
http://audiosharing.com/blog/?p=1163


同軸型ユニットの選択(その20)
http://audiosharing.com/blog/?p=1165

タンノイの同軸型ユニットは、必ずしもマグネットがひとつだけ、とは限らない。
1977年ごろ登場したバッキンガム、ウィンザー、このふたつのシステムに搭載されているユニット2508は、
フェライトマグネットを、高音域、低音域用とにわかれている。

バッキンガムも、ウィンザーも、ウーファーユニットを追加したモデルだ。
このときのタンノイの主力スピーカーシステムは、アーデン、バークレイなどの、いわゆるABCシリーズで、
使用ユニットはアルニコマグネットのHPDシリーズ。いうまでもなくマグネットはひとつだけ。
さらに同時期登場したメイフェアー、チェスター、ドーセット、アスコットには、2528DUALが使われている。
このユニットもフェライトマグネットだが、低音、高音で兼用している。

HPDシリーズはのちにフェライトマグネット使用のKシリーズに換っていくが、
Kシリーズも、マグネットひとつだけ、である。
2508のマグネットがふたつあるのはフェライトマグネットだからではないことが、このことからわかるだろう。

1996年、キングダムが登場する。
このキングダムに搭載されている同軸型ユニットも、またマグネットを2組持っている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1165

同軸型ユニットの選択(その21)
http://audiosharing.com/blog/?p=1166


キングダムのユニット構成は、同軸型ユニットを中心として、低域にサブウーファーを、
高域にスーパートゥイーターを追加した4ウェイである。

ここまで書けば、察しのいい方ならば気がつかれるだろうが、
タンノイのスピーカーづくりのありかたとして、同軸型ユニットだけでシステムを構築する場合には、
従来からのウーファーとトゥイーターのマグネットを兼用させたものが、
そしてレンジ拡大のためにウーファーやトゥイーターが追加されるときには、
マグネットが独立したタイプが使われる。

このことから推測されるのは、重視する要素が、システム構成によって違いがあるということだ。

それぞれの同軸型ユニットが重視している要素は、調和か明晰か、ではなかろうか。
このことは、エンクロージュアの構造、つくりの違いにも顕れている。
http://audiosharing.com/blog/?p=1166

同軸型ユニットの選択(その22)

タンノイの創始者、ガイ・R・ファウンテンと、
チーフエンジニアのロナルド・H・ラッカムのふたりが音楽再生においてめざしたものは、調和だった気がする。
それも有機的な調和なのではなかろうか。
http://audiosharing.com/blog/?p=1374


同軸型ユニットの選択(その23)
http://audiosharing.com/blog/?p=1582


この項の(その18)でふれているが、同軸型ユニットにおいて、
ウーファー用とトゥイーター用のマグネットが独立していた方がいいのか、
それともひとつで兼ねた方がいいのか、どちらが技術的には優れているのか、もうひとつはっきりしない。

タンノイのリビングストンは、ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のタンノイ号で、
アルテックの604との比較、それにマグネットを兼用していることについて語っている(聞き手は瀬川先生)。
     *
これ(604のこと)に比べてタンノイのデュアル・コンセントリックは全く違います。まず、ホーンでの不連続性はみられません。第二にコーンの前に障害物が全くないということです。第三に、マグネティックシャントが二つの磁束の間にあるということです。結局、タンノイは一つのマグネットで二つのユニットをドライブしているわけですが、アルテックは二つのマグネットで二つのドライバーユニットを操作しているわけで、この差が大きなものになっています。
     *
第三の理由として語られていることについては、正直、もうすこし解説がほしい。
これだけではなんともいえないけれど、
少なくともタンノイとしては、リビングストンとしては、
マグネットを兼用していることをメリットとして考えていることは確実なことだ。

そのタンノイが、同軸型ユニットなのに、
ウーファーとトゥイーターのマグネットを独立させたものも作っている。

そのヒントとなるリビングストンの発言がある。
     *
スピーカーの基本設計の面で大事なことは、使われているエレメントが、それぞれ独立した思想で作られていたのでは、けっしていいスピーカーを作り上げることはできないと思うのです。サスペンションもコーンもマグネットも、すべて一体となって、それぞれがかかわり合って一つのシステムを作り上げるところに、スピーカーの本来の姿があるわけです。例えば、ボイスコイルを研究しているエンジニアが、それだけを取り上げてやっていると、トータルな相関関係が崩れてしまう。ボイスコイルだけの特性を高めても、コーンがそれに十分対応しなかったり、磁束密度の大きいマグネットにしても、それに対応するサスペンションがなかったりするわけで、そこでスピーカーの一体感というものが損なわれてしまう。やはりスピーカーを作る場合には各エレメントがそれぞれお互いに影響し合い、作用し合って一つのものを作り上げているんだ、ということを十分考えに入れながら作る必要があると思います。
     *
「一体」「一体感」「相関関係」──、
これらの言葉が、いうまでもなく重要である。
http://audiosharing.com/blog/?p=1582
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/1085.html#c52

[近代史3] アメリカの医療費は何故常識では考えられない程高額なのか? 中川隆
15. 2021年4月08日 18:00:11 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[4]
『アメリカの病』 ティモシー・スナイダー著 池田年穂・訳
書評・テレビ評2021年4月8日
https://www.chosyu-journal.jp/review/20745

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AE%E7%97%85-%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%8C%E6%9A%B4%E3%81%8F%E8%87%AA%E7%94%B1%E3%81%A8%E9%80%A3%E5%B8%AF%E3%81%AE%E5%8D%B1%E6%A9%9F-%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A2%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC/dp/4766427157


 本書は、コロナ感染拡大が始まる直前の2019年末から3カ月の間、肝疾患による敗血症のために生死の淵をさまよったイエール大学歴史学部教授の著者が、自分では起きあがれない状態にありながら病床でメモをとり続けて緊急出版したものだ。アメリカはコロナ禍で感染者数も死者も世界一だが、その背景には、連邦政府が新自由主義の論理で国民が平等に医療を受ける権利を否定し、巨大保険会社や製薬会社、病院企業がカネのために病気で苦しむ国民を食い物にしてきたことがあり、その矛盾がコロナで爆発したのだ。アメリカ社会の病を、自分自身の体験を通して、怒りをこめて告発している。

 そもそも著者が3カ月も苦しんだのは、病院が経費削減のために、著者の虫垂炎の手術の後にあらわれていた次の感染症についての情報を本人に教えないまま、病院から追い出したことにある。

 その3カ月の間、ほとんど医師を見つけることができず、忙しく行き来する看護師たちもいつ医師が回診に来るのか、誰が当直なのかも知らなかった。実は医師はできるだけ多くの患者を診察するよう、病院企業の経営陣からプレッシャーをかけられ続け、企業のたんなる道具と化していた。看護師もきちんと話をするだけの余裕がないようで、著者は驚くほど大勢いた年配のボランティアに助けられた。

 また、入院したどの病院も、救急救命室は年配のアル中患者や、銃で撃たれたり刃物で刺されたりした若者で満杯で、通路にまでベッドが列をなし、著者のベッドは他の何十台ものベッドと黄色いカーテンで仕切られていただけだった。ベッドの不足の原因は、ジャストインタイムの納品と同じで、最大限の利潤を上げるよう数が制限されているからだ。

 くわえて医者にかかるにも薬を処方されるにも、法外なカネがかかる。およそ半数のアメリカ人は、治療費が払えないために医療行為を避けているという。

 このアメリカ医療システムの問題点は、著者の妻がオーストリアで出産し、そこで現地の医療を受けたことでより鮮明になった。オーストリアでは産科医の診療は無料(外国人も)。妊娠第3期になると、出血や破水、あるいは陣痛が20分おきになれば病院に来るよう指示される。そのうえ2年間の有給の育児休暇が母親か父親に与えられる。それに比べてアメリカは、ベッドが長く占有されないよう出産の直前にならないと入院できない。赤ん坊はしばしば車のバックシートで産まれるし、母親や新生児が命を落とす場合が多い。アメリカ黒人の新生児の死亡率は、アルバニアやカザフスタンはじめ世界の70カ国を上回っている。

 この矛盾は、新型コロナ感染拡大によってより深刻に露呈した。著者はそれを各方面から詳しく描き出している。

 昨年1月と2月、コロナは静かに国中に広がっていったが、政府は何一つ手を打たなかった。トランプ政府はそれまでに、国家安全保障会議や国土安全保障省などのなかにあった感染症の予防や対処のための部局を廃止し、アメリカの保健の専門家たちを中国をはじめ世界各国から撤退させていたので、新たなパンデミックについての科学的究明や討論はやられなかった。

 また、PCR検査を全土で大規模に実施すべきだったのにそうしなかった。トランプは3月初めに「望む者なら誰でも検査は受けられている」といったが、2月末までに全米で352人を検査しただけだった。最初の2カ月間、連邦政府はただ拱手傍観し、「アンダーコントロール(制御できている)」というウソで塗り固めてすませていたが、それで失われた時間はとり戻せなかった、と著者はいう。

 今報道されている数字だけを見ても、アメリカは感染者も死者も世界最大だが、本書を読むとそれすら極端な数え落としがおこなわれていることがわかる。アメリカでは、公的な死亡者数の発表はあまりにも低すぎると皆が知っているそうだ。なぜなら、人々はほとんど検査がおこなわれない間に病院で、家で命を落とし続けるからだ。老人ホームではコロナ感染者や死者がほとんど数えられていない。また、説明のない「超過死亡」が毎月報告されている。

 全米各地の地元メディアはリーマン・ショックで大企業傘下に吸収され、次いでフェイスブックやグーグルなどによって駆逐されたため、そもそも各地の感染拡大の事実が報道されず、しくまれた陰謀論がはびこっているという。

 連邦政府はコロナ対策の2兆jの予算を、本当に必要な検査キットやマスク、防護服、人工呼吸器といった資材を購入するために使わず、別のものに散財した。医師や看護師はマスクもないまま、感染症の患者であふれた病室で働かざるを得ず、多くの医師や看護師が命を落としているが、四半期ごとの利益最大化を追求する病院企業の経営者のもとではこうした問題をおおっぴらに話すことすらできない。

 本書を読むにつれ、これは日本とまったく同じではないかと幾度も思ってしまった。著者は、巨大保険会社や病院企業にコロナ感染を抑制する意志はないとし、医師たちにパンデミックに対処する役割と権限を持たせて現場を仕切らせるべきだ、そしてすべての国民が加入する国民皆保険をつくり、貧富の差なく誰もが医療を受けられるようにすべきだと強く訴えている。  
https://www.chosyu-journal.jp/review/20745
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/254.html#c15

[リバイバル4] EL34 を使ったアンプ 中川隆
5. 中川隆[-5886] koaQ7Jey 2021年4月08日 18:15:55 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[5]
audio identity (designing)宮ア勝己

Date: 6月 18th, 2018
真空管アンプの存在(ふたつのEL34プッシュプル・その1)
http://audiosharing.com/blog/?p=26032


EL34といえば、ポピュラーな出力管である。
EL34のプッシュプルといえば、
マランツの一連のパワーアンプを真っ先に思い出す人も多い。

私は、伊藤先生のEL34のプッシュプルアンプが、真っ先に浮ぶ。
それからマランツのModel 2、Model 9、Model 8という順番がずっと続いていたけれど、
ある時から、デッカ・デコラのアンプのことが気になりはじめていた。

きっかけは管球王国 Vol.41(2006年夏号)で、
是枝重治氏発表のEL34プッシュプルのKSM41の製作記事である。

KSM41は、デコラのアンプの再現である。
記事最後の音の印象に、
《あでやかで彫りが深く解像度が高い》とあった。

個人的に多極管の三極管接続は好まない。
デコラのパワーアンプはEL34の三極管接続である。
そのことは以前から知っていた。

それでも記事を読んでいて、
そのへんのところが少しだけ変った。

管球王国 Vol.41は買おう、と思ったが、
この記事のためだけに、この値段……、という気持が強くて、買わずにいた。

先日、友人のKさんが記事をコピーしてくれた。
管球王国 Vol.41の記事だけでなく、
その前にラジオ技術(2005年9月号)で発表された記事も一緒に、だった。

EF86が初段、ECC83のムラード型位相反転回路で電圧増幅段は構成されている。
あれっ? この構成、そういえば……と思い出したのが、
ウェストレックス・ロンドンの2192Fである。

サウンドボーイ(1981年8月号〜10月号)で伊藤先生が発表されたEL34のアンプの、
範となっているのが2192Fである。

このアンプもデコラのアンプと同じ構成である。
そればかりか、EF86、ECC83周りの抵抗とコンデンサーの値も同じである。
回路も同じだ。

出力段が2192FはUL接続、デコラは三極管接続という違いと、
電源の違いくらいである。
NFBの抵抗値も違うが、そのくらいの違いしかない。

設計者は同じなのか。
http://audiosharing.com/blog/?p=26032


真空管アンプの存在(ふたつのEL34プッシュプル・その2)
http://audiosharing.com/blog/?p=26597


(その1)で、EL34のプッシュプルアンプとして、
マランツのアンプを真っ先に思い出す人は多い、とした。

マランツのアンプは、どれもEL34のプッシュプルだ(Model 9はパラレルプッシュプル)。
Model 2、5、8(B)、9。
ここで取り上げるのは唯一のステレオモデルであるModel 8(B)。

出力35W+35W。
アメリカには、もう一機種、出力35W+35WのEL34のプッシュプルのステレオアンプがある。
ダイナコのStereo 70である。

外形寸法はModel 8がW34.3×H18.4×D26.7cm、Stereo 70がW33.0×H16.5×D24.0cm、
そう大きくは違わない。

全体のレイアウトもシャーシー後方に三つのトランス、前方に真空管。
その真空管のレイアウトも、電圧増幅管を左右に二本ずつ配置した出力管で取り囲む。

とはいえ、細部を比較していくと、Model 8とStereo 70はずいぶん違うアンプだ。
まずStereo 70はキットでも販売していた。

Model 8もマランツのラインナップでは普及クラスとはいえなくもないが、
市場全体からみれば、そうではないのに対し、Stereo 70はダイナコの製品である以上、
はっきりと普及クラスのEL34のプッシュプルアンプである。

キットも出ていたStereo 70は、高価な測定器を必要としなくても、
ハンダ付けがきちんとなされていて、テスターが一台あれば完成できなければならない。
ちなみに1977年当時の完成品のStereo 70は89,000円、
キットのStereo 70は69,000円だった。

Model 8Bにもキットはあった。
1978年にModel 7とModel 9のキットが、日本マランツから出て好評だったため、
翌年にModel 8BKが出ている。

同じキットとはいえ、ダイナコとマランツとでは、意味あいが違う。
http://audiosharing.com/blog/?p=26597

真空管アンプの存在(ふたつのEL34プッシュプル・その3)
http://audiosharing.com/blog/?p=26607


ダイナコとマランツの真空管アンプでは、
Mark IVとModel 5の対比も好き、というコメントがfacebookにあった。

Mark IVとModel 5の対比もありだな、と思っていたが、
実はMark IVは実機を見たことがない。
Model 5に関しても、みたことはあるけれど音は聴いたことはない。

とはいえ回路図、外観、内部を含めてインターネット上にはけっこうな数あるから、
特に音について書くわけではないから、
Mark IVとModel 5の対比でもなんら問題ないけれど、
Stereo 70とModel 8Bのほうが、私には身近な存在だけに、選んでいる。

ついでに書いておくと、ダイナコにはMark VIというモノーラルアンプもある。
ステレオサウンド 42号(1977年)の新製品紹介で登場している。

出力管に8417を四本使ったパラレルプッシュプルで、出力は120W。
ダイナコの真空管アンプとして初めての19インチラックサイズのフロントパネルをもち、
バイアスチェックをかねたパワーメーター、ラックハンドルがついている。

マランツのModel 9のプロ用機器版9Rを強く意識したような造りのアンプである。
Model 9は1960年に登場しているから、約20年経っての新製品Mark VIである。

ダイナコは真空管アンプにおいては、マランツの真空管アンプを、
どこか意識していたように感じる。
http://audiosharing.com/blog/?p=26607

真空管アンプの存在(ふたつのEL34プッシュプル・その4)
http://audiosharing.com/blog/?p=26641


キットを出していたということでは、
ダイナコとラックスの対比ではないか、と思われるかもしれない。

私にもそういう気持はないわけではないのだが、
ラックスのEL34プッシュプルアンプというのは印象がとても薄い。

私がオーディオに興味を持ち始めたころのラックスの真空管アンプといえば、
プリメインアンプのSQ38FD/IIであり、登場したばかりの薄型のコントロールアンプのCL32、
パワーアンプではMB3045だった。

そのころキットでA3500がEL34プッシュプルで、出力はUL接続で40W、三極管接続で30Wだった。
1978年にはMQ70も登場した。
出力は45Wだった。
MQ70はA3500の完成品ではなく、レイアウトも違っていた。

どちらも私には印象が薄い、というか、存在が稀薄だった。

日本では真空管アンプを、
トランジスターアンプ全盛時代になっても造りつづけているメーカーとして、
ラックスは知られていた。

ラックス以外にも真空管アンプメーカーはあったが、
トランジスターアンプと真空管アンプの両方、それに会社の規模ということで、
ラックスが日本における真空管アンプの最後の砦的であった。

それでもラックスのEL34プッシュプルは、印象がなさすぎる。
http://audiosharing.com/blog/?p=26641

真空管アンプの存在(ふたつのEL34プッシュプル・その5)
http://audiosharing.com/blog/?p=26856


ダイナコのStereo 70のキットの実物を見たことがないため断言できないが、
電圧増幅檀のプリント基板に関しては、部品が最初から取り付けてあり、
ハンダ付けもなされていた(はずだ)。

キットの内容は穴あきシャーシーに、出力トランス、電源トランス、チョークコイル、
出力管、整流管とそのソケット、電圧増幅管に内部配線材に、入出力端子などに、
完成済のプリント基板のはずだ。

もちろんハンダ付けはしなければならないが、細かいハンダ付けが求められるわけではない。
仮にプリント基板が組み立て済でなかったとしても、部品点数はそう多くないし、
部品の取り付けを間違えずに丁寧にハンダ付けをしていけば、失敗は少ない。

製作の難易度は、高いとはいえない。
完成後の各部のチェックもそれほど多くないし、基本は電圧のチェックである。

つまりダイナコのキットは、誰が組み立てても、ある一定以上の性能を保証している。
ところがマランツのキットは、そういう性格のモノだと思って取りかかると、
痛い目に合うことは必至である。

マランツのキットは、Model 7、Model 8B、Model 9にしても、
プリント基板は一切使っていない。
ラグ端子に部品のリード線をからげてハンダ付けしていく。

しかもひとつの端子に部品一つということはまずない。
複数の部品のリード線をからげ、内部配線材もそこにくる。

どの部品からからげていくか、その順番によって音は違ってくるし、
マランツのアンプはその順番も指定されていた、と聞いている。

ハンダ付けの箇所もマランツは多い。

ダイナコは完成品が隣になくとも、きちんと完成することは大変ではないが、
マランツの場合は、特にModel 7は、
実機を隣に置いて、じっくりそれを観察した上での製作が望ましいだろう。
http://audiosharing.com/blog/?p=26856
http://www.asyura2.com/18/revival4/msg/137.html#c5

[近代史4] マルクス経済学の世界 中川隆
6. 中川隆[-5885] koaQ7Jey 2021年4月08日 18:41:28 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[6]
資本主義を終わらせるための、新しいマルクス
斎藤 美奈子
http://www.webchikuma.jp/articles/-/2334


ただいま話題のあのニュースや流行の出来事を、毎月3冊の関連本を選んで論じます。書評として読んでもよし、時評として読んでもよし。「本を読まないと分からないことがある」ことがよく分かる、目から鱗がはらはら落ちます。PR誌「ちくま」2021年3月号より転載。

 斎藤幸平『人新世の「資本論」』が評判になっている。

https://www.amazon.co.jp/%E4%BA%BA%E6%96%B0%E4%B8%96%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%B3%87%E6%9C%AC%E8%AB%96%E3%80%8D-%E9%9B%86%E8%8B%B1%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%96%8E%E8%97%A4-%E5%B9%B8%E5%B9%B3/dp/4087211355/ref=sr_1_2?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%B3%87%E6%9C%AC%E8%AB%96%E3%80%8D&qid=1615352902&s=books&sr=1-2


 帯にも、錚々たる面子の華々しい推薦文が躍っている。〈斎藤はピケティを超えた。これぞ、真の「21世紀の『資本論』」である〉(佐藤優)。〈気候、マルクス、人新世。これらを横断する経済思想が、ついに出現したね。日本は、そんな才能を待っていた!〉(松岡正剛)。〈気候危機をとめ、生活を豊かにし、余暇を増やし、格差もなくなる、そんな社会が可能だとしたら〉(坂本龍一)。〈資本主義を終わらせれば、豊かな社会がやってくる。だが、資本主義を止めなければ、歴史が終わる。常識を破る、衝撃の名著だ〉(水野和夫氏)。すごいな。各氏大絶賛!
 いまさらマルクス? という人もいるだろうけど、最近またマルクスが「来ている」という感触はあった。格差が極限にまで広がり、労働者は最悪の状態に置かれ、にもかかわらず出口が見えない社会の打開策として、マルクスが呼び戻されているともいえる。新世代のマルクス解釈とはどのようなものなのだろうか。

新自由主義に対抗するためのマルクス

 その前に、マルクスがらみの別の本を見ておきたい。
 白井聡『武器としての「資本論」』は〈みんなが一生懸命『資本論』を読むという世界が訪れてほしいと思うのです。そこまで行けば世の中は、大きく変わります〉と豪語する。

https://www.amazon.co.jp/%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%B3%87%E6%9C%AC%E8%AB%96%E3%80%8D-%E7%99%BD%E4%BA%95-%E8%81%A1/dp/4492212418/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%B3%87%E6%9C%AC%E8%AB%96%E3%80%8D&qid=1615352902&s=books&sr=1-1


 いま『資本論』を読む理由は〈「生き延びるために」です〉と著者はいいきる。環境破壊、経済危機、戦争……。一〇〇年後に人類が存続しているかどうかもわからない。〈「では、その原因は」と考えると、間違いなく資本主義なのです〉。
 本書の八割以上は『資本論』第一巻をベースにした資本主義のしくみの解説で、そこは画期的にわかりやすい。物足りない部分があるとしたら『資本論』を武器に、私たちはどんな方法で社会変革を起こし、どんな社会を目指すのかが曖昧な点だろう。

 かつてのマルクス主義者たちは、暴力革命によって、労働者階級主体の社会主義国をつくるべきだと考えた。一九世紀末には暴力革命ではなく選挙(代議制民主主義)で合法的に政権を奪取する、という考え方が広がり、いまはこっちが主流になった。しかし結局のところ、ソ連型の計画経済は頓挫し、ヨーロッパで誕生した社会民主主義も新自由主義に席巻されてしまった。

〈かつて期待がかけられた階級闘争の戦略は悉く無効化してしまった〉。それが今の現実。しかし、階級闘争の原点は〈生活レベルの低下に耐えられるのか、それとも耐えられないのか〉だと著者はいう。〈本書は『資本論』の入門書ではありますが、裏にあるテーマは「新自由主義の打倒」です〉。これが本書の要諦だろう。〈新自由主義とは実は『上から下へ』の階級闘争〉という現実を変えること。〈「自分にはうまいものを食う権利があるんだ」と言わなければいけない。人間としての権利を主張しなければならない〉。

 松尾匡『左翼の逆襲』の副題は「社会破壊に屈しないための経済学」。こっちの提言はもう少し具体的だ。

https://www.amazon.co.jp/%E5%B7%A6%E7%BF%BC%E3%81%AE%E9%80%86%E8%A5%B2-%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E3%81%AB%E5%B1%88%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%9D%BE%E5%B0%BE-%E5%8C%A1/dp/4065142393/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E5%B7%A6%E7%BF%BC%E3%81%AE%E9%80%86%E8%A5%B2&qid=1615352955&s=books&sr=1-1


〈私たちは「左翼」を忘却のかなたから呼び起こさないといけません〉と著者は焚きつける。新自由主義経済と「反新自由主義」から派生した右派ポピュリズムに対抗するには「豊かな時代のリベラリズム」ではもうダメで、「生活が苦しい労働者」に寄り添うマルクスの思想を取り戻すことが必要だと。
 反緊縮を掲げる左派ポピュリズムに希望を見いだしつつ、本書が提唱するのは「レフト3・0」の方向性だ。

 急進的な「マルクス=レーニン主義」から穏健な社会民主主義まで含む「レフト1・0」は七〇年代に全盛を迎えた。それは〈@国家主導型で、「大きな政府」を志向、A生産力主義であること、B労働者階級主義であること、そして、C社会主義を名乗る大国に甘いことでした〉と総括できる。が、それは社会主義国の停滞、「大きな政府」の赤字の累積、労働者中心主義への批判などがあいまって、八〇年代に入った頃から行き詰まる。
 代わって九〇年代に台頭した「レフト2・0」は、過去への反省から、「反生産力主義」的なエコロジズム(環境主義〉や「脱労働組合依存」を打ち出し、「労働者階級主義」にかわって女性やマイノリティを含む多様な人々との共生を求める市民運動に軸足を移した。が、労働者階級意識を捨てたため、市場原理や「小さな政府」に飲み込まれ、格差と貧困が広がってしまった。
「レフト3・0」は、労働者意識も多様性も保持しつつ両者を総合した、その先の思想という。具体的な政策のひとつが「グリーンニューディール」である。これは〈代替エネルギーの開発や、化石燃料消費を減らす交通システム転換、環境保全などに、大々的に公共投資することによってたくさんの優良な雇用を創出し、公正な移行過程を通じて、二酸化炭素をあまり出さないケア労働など、環境負荷が少ない部門が中心になるような産業構造転換をめざすもの〉で、欧米の3・0勢力の共通した政策になっている。
 必要なのは〈誰もが「生きていてよかった」という人生をおくれることを目的にすること〉。〈その怒りは共感と連帯を呼び、この道に至る世の中をくつがえすでしょう〉。
 冷戦終結から約三〇年。バブル崩壊からも三〇年。マルクスの人気が一時凋落したのは、暮らしがそこそこ豊かになり、革命によって社会主義国家を建設するというビジョンがリアリティを失ったためだろう。が、この三〇年で状況は変わった。ソ連型の共産主義というモデル幻想から脱却すれば、マルクスの読み方は変わるのだ。

マルクスは環境危機を予言していた
 で、『人新世の「資本論」』。人新世とは〈人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代〉のこと。

 この本が他のマルクス解釈本と大きく異なるのは、地球環境の危機を前面に押し出していることだ。国連が推進するSDGs(持続可能な開発目標)など何の足しにもならない、という話から本書ははじまる。それは資本主義の現実から目をそらすアヘンにすぎない。資本主義社会が続く限り、根本的解決はないからだ。
〈近代化による経済成長は、豊かな生活を約束していたはずだった。ところが、「人新世」の環境危機によって明らかになりつつあるのは、皮肉なことに、まさに経済成長が、人類の繁栄の基盤を切り崩しつつあるという事実である〉。
 大量生産・大量消費をベースとする「帝国的生活様式」は魅力的であり、先進国を豊かにしたが、その裏で南北問題と呼ばれる事態、すなわちグローバル化によって犠牲を被る地域や住民(グローバル・サウス)を生み出した。資本主義による収奪の対象はしかも、周辺地域の労働力だけでなく地球全体に及んでいる。〈資源、エネルギー、食料も先進国との「不等価交換」によってグローバル・サウスから奪われていくのである。人間を資本蓄積のための道具として扱う資本主義は、自然もまた単なる略奪の対象とみなす〉。
 ここからはじまる脱資本主義論はなかなかにラジカルだ。新自由主義が倒れても、資本主義が続く限り「本源的蓄積」は継続するし、グリーンニューディールを押し進めても、経済成長を続ける限り二酸化炭素は削減できず、環境危機は回避できない。
〈私的所有や階級といった問題に触れることなく、資本主義にブレーキをかけ、持続可能なものに修正できるとでもいうのだろうか〉。〈労働を抜本的に変革し、搾取と支配の階級的対立を乗り越え、自由、平等で、公正かつ持続可能な社会を打ち立てる。これこそが、新世代の脱成長論である〉。
 本書の目玉は、一九世紀のマルクスが環境危機による資本主義の限界に気づき、右のような認識に達していたという指摘だろう。
『資本論』はマルクスが執筆した第一巻が一八六七年に刊行された後、未完のまま残された。第二巻・第三巻はマルクスの没後、エンゲルスが遺稿を編集したものである。ところが第一巻の刊行後、マルクスは思想的な大転換を遂げていた。最新の研究から見えてくるのは、晩年のマルクスが進歩史観(史的唯物論)を超えた「脱成長コミュニズム」に到達していたことだった。
〈マルクスが求めていたのは、無限の経済成長ではなく、大地=地球を《コモン》として持続可能に管理することだった〉。コモンとは共同体の富のこと。〈要するに、マルクスが最晩年に目指したコミュニズムとは、平等で持続可能な脱成長型経済なのだ〉。
 この部分にこそ、目指す社会の未来像があると著者はいう。
 脱成長コミュニズムの柱は、@「使用価値」に重きを置いた経済に転換して大量生産・大量消費から脱却する、A労働時間を削減して生活の質を向上させる、B画一的な労働をもたらす分業を廃止して、労働の創造性を回復させる、C生産のプロセスの民主化を進めて経済を減速させる、D使用価値経済に転換し、労働集約型のエッセンシャル・ワークを重視するなどの五つ。
〈古い脱成長論では、なぜダメなのか。古い脱成長論は一見すると資本主義に批判的に見えるが、最終的には、資本主義を受け入れてしまっているから〉だという批判は痛烈だ。
 とはいえ白井や松尾の主張と本書は対立するものではなく、もう一歩先に踏みだしたものと考えるべきだろう。その証拠に「気候非常事態宣言」を出したスペイン・バルセロナの実践例などを紹介しつつ、本書も読者を焚きつけるのだ。三・五%の人の非暴力的な行動で、世の中は変わる。ワーカーズ・コープでも、学校ストライキでも、有機農業でもいい、アクションを起こせ、と。
 コロナ禍は現在の経済システムの脆弱さを暴きだした。資本主義の呪縛からいかにして脱却するかが問われているのだ。

【この記事で紹介された本】

『人新世の「資本論」』
斎藤幸平、集英社新書、2020年、1020円+税
https://www.amazon.co.jp/%E4%BA%BA%E6%96%B0%E4%B8%96%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%B3%87%E6%9C%AC%E8%AB%96%E3%80%8D-%E9%9B%86%E8%8B%B1%E7%A4%BE%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%96%8E%E8%97%A4-%E5%B9%B8%E5%B9%B3/dp/4087211355/ref=sr_1_2?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%B3%87%E6%9C%AC%E8%AB%96%E3%80%8D&qid=1615352902&s=books&sr=1-2



〈気候変動、コロナ禍…。文明崩壊の危機。唯一の解決策は潤沢な脱成長経済だ。〉(帯より)。著者は1987年生まれで、専攻は経済思想・社会思想。気候危機が喫緊の課題として迫っている現在、もはや一刻の猶予もない。そんな現状認識からスタートし、資本主義の根源的な限界と、それにかわる「脱成長型コミュニズム」の姿を描く。晩年のマルクスが残したノートの解析が白眉。

『武器としての「資本論」』
白井聡、東洋経済新報社、2020年、1600円+税
https://www.amazon.co.jp/%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%B3%87%E6%9C%AC%E8%AB%96%E3%80%8D-%E7%99%BD%E4%BA%95-%E8%81%A1/dp/4492212418/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%B3%87%E6%9C%AC%E8%AB%96%E3%80%8D&qid=1615352902&s=books&sr=1-1


〈資本主義を内面化した人生から脱却するための思考法〉(帯より)。著者は1977年生まれの政治学者。「なぜ満員電車に乗らなければならないのか」「なぜイヤな上司がいるのか」などの身近な疑問から出発し、『資本論』にいう「商品」「包摂」「階級」「疎外」「剰余価値」「本源的蓄積」などの概念を解説する。階級闘争を「等価交換の廃棄」とみなすあたりが新しい。

『左翼の逆襲――社会破壊に屈しないための経済学』
松尾匡、講談社現代新書、2020年、1000円+税
https://www.amazon.co.jp/%E5%B7%A6%E7%BF%BC%E3%81%AE%E9%80%86%E8%A5%B2-%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E3%81%AB%E5%B1%88%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E8%AC%9B%E8%AB%87%E7%A4%BE%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E6%9D%BE%E5%B0%BE-%E5%8C%A1/dp/4065142393/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&dchild=1&keywords=%E5%B7%A6%E7%BF%BC%E3%81%AE%E9%80%86%E8%A5%B2&qid=1615352955&s=books&sr=1-1


〈人は生きているだけで価値がある!〉(帯より)。著者は1964年生まれの経済学者。反緊縮論の代表的な論客だが、コロナ禍で新自由主義は加速すると警告。「国際競争力が必要だ」「財政が破綻する」といった新自由主義的言説に乗った「中道左派リベラル」の思考体系を批判し、マルクスの精神に沿った「レフト3・0」のビジョンを説く。半分くらいは具体的な政策の提言。

http://www.webchikuma.jp/articles/-/2334
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/915.html#c6

[近代史4] 統一教会 中川隆
9. 中川隆[-5884] koaQ7Jey 2021年4月08日 19:30:32 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[7]
◆自民党と統一協会
http://sfu9xi.sa.yona.la/91

 自民党と統一教会の繋がりについて少し触れてみたい。〔略〕
 〔略〕国際勝共連合(IFVOC)の会員がほぼ統一教会の信者であることは、賢明な読者ならよく知っているはずである。

 この国際勝共連合に所属する会員たちは、統一教会の信者として米国で教育を受けた後で、自民党議員の秘書として永田町に送り込まれた。彼らは国際感覚と語学力を身につけ、普通の秘書の数倍も優れているせいで、永田町では一時期、その仕事振りを評価された。そして、すぐに議員になりたがる出世欲の強い、松下政経塾の出身者より尊敬され、一目も二目も置かれた存在だった。また、1980年代に自民党のシンクタンクの総合研究所が、勝共連合によって乗っ取られていたことも、事情通の間では知られていた。

 そして、この線をたどると小泉政権を取り巻く人間たちが、意外なほど勝共連合の線で繋がっていて、中には政界の外に活躍の場を持っていたりするのだ。
 例えば、小林節慶応大学教授の場合は、合同結婚式の名簿に名前が記載されているうえに、かつて「統一原理」という授業を行なって問題視されたが、憲法九条は前文の解釈によって無効化できると説いていた。〔略〕今では改憲ブームに便乗して官邸に出没しているという。

 また、アラブ問題の専門家である佐々木良昭(元拓殖大学教授)は、自衛隊のイラク派兵のアドバイサー役として、官邸に裏口からよく出入りするので知られる。私が関係者から聞いたところでは、彼は「自衛隊を正式な軍隊に変え、防衛庁を国防省に格上げさせるべきだ」と主張しているという。また、佐々木は小池百合子環境大臣と親しく、彼女が理事長の中央アジア研究所の専務理事だし、東京財団のシニア研究員の肩書きを使い、最近はトルクメニスタンに出没しているのだ。しかも、この東京財団は日本財団のフロント組織であり、かつて竹中平蔵が理事をしていたこともある。日本財団は競艇のあがりで故・笹川良一が設立した財団で、思想的には岸信介の衣鉢を継ぐ人々の集まりだから、勝共連合とは緊密に結びつくのである。

 そして、小池百合子といえば政界の渡り鳥で、小泉チルドレンのマドンナとして、2005年9月11日の総選挙では真っ先に刺客を買って出たが、学生時代にはカイロ大学に留学している。これは彼女の父親が中東浪人だったからで、かつて勝共連合の応援を受けて衆議院選挙に出て落選した後、一家をあげてエジプトのカイロに移住したからだと言われている。

 私が中東で仕事をしていたときのことだが、小池の父親がカイロで日本料理店を経営するかたわら、石油利権のフィクサーをしていたという話を聞いている。
このように、小泉政権の内部には統一教会のコネクションが生きており、それに公明党が加わって一種の奇怪な「宗教連帯」の構図になっていて、これではどう考えても「理性」による外交はできない。(226-228p)

◆安倍晋三と統一協会

安倍〔晋三〕もアメリカに留学した経験を持つ2世議員だが、世界で通用する常識を学んでいないのであり、彼の留学経歴が小泉純一郎以上に怪しいと言われていて、日本の政治家の人材枯渇は救い難い状況を呈している。

〔略〕そこで、問題になるのが、安倍がなぜこのような怪しげな遊学をしたのか? そして、それが単なる遊学だったとしても、現在の彼にどのような影響を与えているのかということであろう。

安倍晋三が遊学していた1970年代後半頃のカリフォルニアは、〔略〕この時期から経済大国になったジャパンマネーがカリフォルニアに大量に流れ込み、それとともにあらゆる日本人が流入したのである。

日系企業の駐在員たちの中に混じって〔略〕ひと目で日本のヤクザとわかる男たちがロスの街を闊歩していた。事実、東声会の町井久之をはじめとするヤクザたちが、サンタモニカに投資事務所を開いていたし、ゴルフ場やラスベガスのカジノを買収するために、日本のサラ金や住吉連合の筋が暗躍していた。〔略〕

だから、そんな環境の中、ロスでも金持ちの子弟が行く、南カリフォルニア大学USCに安倍晋三が登録し、日本の有力政治家の岸信介の身内だと知られれば、コリアゲートで知られた朴東宣(パク・ドンソン)のほかにも、いろんな人間が近づくだろうことは想像に難くない。

 当時のロスでは韓国人の移民が激増しており〔略〕〔韓国の〕公安関係者やKCIAの出入りも頻繁であり〔略〕こうした中に、統一教会関係者も多く、活発な布教活動だけではなくビジネスも行なっていた。鮮魚の取り扱いは統一教会が握り、日本人のすし屋の仕入れはそこを通じてだし、ロスやニューヨークの生鮮食料を支配して、財政的には非常に強力であったし、KCIAとの結びつきを韓国人から何度も私は聞いている。彼らの狙いは将来の布石として、若い有力者の子弟を反共の闘士に育てることであり、その組織力の強靭さに目を見張ったほどだ。

ここからは私の経験に基づく推測になるが、なぜ、安倍晋三は今や日本を代表する対北朝鮮強硬派として、脚光を浴びる存在になったのであろうか? またなぜ、地元の山口県下関市では、市長をめぐる放火や銃撃事件に関連して、安倍の名前が囁かれているのであろうか? これらの事件には暴力団が介在していると言われ、パチンコ業界の利権が絡むと一部で報道されているが、それが安倍のロス遊学と関係がないのか? こういった疑問を特派員は現地取材で調べたのか?

しかも、彼の父親の安倍晋太郎(1924-1991)は下関の韓国ビジネスとは密接な繋がりを持ち、朴東宣は安倍親子二代と親しく、それが政治資金に繋がっていたというではないか。(224-226p)
http://sfu9xi.sa.yona.la/91
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/229.html#c9

[番外地9] トランプのイスラエル・ユダヤ人への徹底的な優遇とパレスチナ先住民への人権弾圧 中川隆
1. 中川隆[-5883] koaQ7Jey 2021年4月08日 20:53:26 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[8]
Qアノンは大衆操作のための心理作戦だった。
実はこの話はずっと前から海外ネットでは色々載っていました。
結論を先に書くと、Qは、イスラエルの諜報機関が作ったものです。
この会社。イスラエル民間諜報会社 サイグループ

トランプのイスラエル・ユダヤ人への徹底的な優遇とパレスチナ先住民への人権弾圧
トランプは地球上からイスラム教徒を追放消滅させるシオニズムに邁進している
トランプがウイグル人権法に署名したからといって、それは彼の意思によって、そうしたものではない。大統領戦に向けた「中国叩きの人気取り政策」にすぎないことは、誰でも知っている。参謀の助言に従ったにすぎない。

 もし、トランプが真の人権派だったなら、メキシコ国境の壁によって出稼ぎ労働者を逮捕し、親子を引き裂くような残酷なことをするはずがない。 

 トランプは、オバマが設定した、トランスジェンダーの更衣室・トイレ問題を、「生まれたときの性に限定させる」という「反トランスジェンダー」とも受け取れる大統領令を出し、全米の性移行者を公共トイレから排除しようとした。。これが人権派のやることか? 

 オバマケア=全米公的健康保険制度に対するトランプの憎悪は、はるかに凄まじい。
 トランプは、全米規模の公的健保が成立すると非常に困る民間保険会社(ユダヤ系金融資本)の代理人として、オバマケアを徹底的に潰そうとしてきた。

 医療を大金持ちのものだけに独占しようとしたのだ。だから、新型コロナ禍が始まったとき、あまりに医療費が高額なため、庶民のほとんどは感染ケアを受けることができず、ウイルスが蔓延するに任せ、世界最大の感染者と発病死者を出した。
 これはトランプの責任ではないのか? 

アメリカの、凄まじい医療マフィアの実態 2020年01月08日
 http://tokaiama.blog69.fc2.com/blog-entry-990.html

 トランプの仕事のうちで、もっとも糾弾されべきことは、イスラエル・ユダヤ人への徹底的な優遇と、パレスチナ先住民への人権弾圧だ。

 トランプは娘婿のクシュナーの助言から大統領戦の直前、ユダヤ教徒に改宗した。
 https://toyokeizai.net/articles/-/173824

 その後、トランプは、ユダヤ教徒として「嘆きの壁」を参拝し、米大使館をエルサレムに移転させた。これは、アメリカ経済界の大半を牛耳る超大金持ちのユダヤ人たちの支持を得ようとしたものだろう。

 だが、トランプはエルサレム第三神殿の再建に言及し、ゴラン高原とヨルダン川西岸の先住民の土地はイスラエルのものだとお墨付きを与えた。ネタニヤフは驚喜して、ゴラン高原をトランプ高原に変えると言った。
 イスラエルは何千年も、そこで暮らしてきた先住民を武力で追い出し、殺戮して自分たちの土地に変えてしまっている。これが人権破壊の暴力でなくて何なのだ? 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%A9%E3%83%B3%E9%AB%98%E5%8E%9F
 https://ccp-ngo.jp/palestine/westbank-information/

 エルサレム第三神殿は、ソロモン王の建設したエルサレム神殿の跡地、「岩のドーム」に、ユダヤ教徒のための巨大神殿を建設する計画だ。
 「岩のドーム」は、イスラムにとってメッカに次ぐ聖地中の聖地であり、もしも、ここを破壊してユダヤ教の第三神殿が作られるなら100%確実に、第三次世界大戦が起きる。
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B2%A9%E3%81%AE%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%A0
 http://tukinohikari.jp/seisyo/3-sinden/index.html

 これを、トランプは推進すると発言した。同時に、米国内のイスラム教徒を登録認可制にするとまで言い出した。完全にイスラム教徒への冒涜であり、戦争準備である。
 https://ameblo.jp/ymhkobayasis/entry-12560919125.html

 パレスチナ先住民、ゴラン高原シリア先住民の権利を踏みにじり、武力で殺戮、弾圧しながら、ユダヤ人のための国=グレーターイスラエル=シオニズムを強硬に推進しようとしたトランプが「人権派」だ?

 トランプは、地球上からイスラム教徒を追放消滅させる、シオニズムに邁進しているのだ。

 トランプは、就任から退任までの間、「普遍的人権」を口にしたことなど皆無だ。そもそも、「人権」という概念など彼の脳味噌には絶無だ。あるのは「利己的な金儲け」だけであり、新自由主義である。

 我々が人権というとき、それは「利他主義」に依って立っている。トランプに存在するのは「利己主義」だけであり、自分の利権を守ること以外、何一つ関心のない「人間のクズ」なのだ。
 トランプの本質は、安倍晋三と同じだ。だから波動がよく合っていた。およそ、人権を人類の指標に置く者とは、何一つ波動が合わないだろう。
http://www.asyura2.com/21/ban9/msg/292.html#c1

[近代史5] 真空管アンプの世界 中川隆
14. 2021年4月08日 22:57:28 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[9]
audio identity (designing) 宮ア勝己  現代真空管アンプ考
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/1159.html
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/415.html#c14
[近代史4] 真空管アンプの世界 中川隆
20. 中川隆[-5882] koaQ7Jey 2021年4月08日 22:59:06 : 7vJmlBbsA6 : YzNyY2VzangxR2s=[10]
audio identity (designing) 宮ア勝己  現代真空管アンプ考
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/1159.html
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/116.html#c20

   

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