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ソロスファンド: 皆が口にする投資アイデアには大して根拠がない
2022年6月2日 GLOBALMACRORESEARCH
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24987
ジョージ・ソロス氏のSoros Fund ManagementのCEOをやっているドーン・フィッツパトリック女史が、Bloombergのインタビューで投資について語っている。
ジョージ・ソロス氏とソロスファンド
投資の業界では知らない人のいないソロス氏だが、現在は特にウクライナ情勢もあり投資よりは政治活動の方に時間を割いており、ソロスファンドを実際に運用しているのはフィッツパトリック氏である。
彼女は今回のインタビューで、ソロスファンドの内幕について語っている。彼女は次のように述べる。
ジョージは時間の大半を(オープンソサエティ)財団のために費やしているが、彼は今でも金融市場を見ており、興味を惹かれたことがあれば電話で共有してくれる。そういう電話は有難く、彼の話を聴けることは貴重だと思っている。
フィッツパトリック氏が言うには、ソロス氏はやはりウクライナで忙しいらしい。ソロス氏は最近ダボスでウクライナについて語っている。
ソロス氏: ウクライナはわたしたちの戦いを戦っている
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24847
ソロスファンドの意思決定
その間、フィッツパトリック氏が運用を任されているわけだが、ソロスファンドには他にも多数の金融家が雇われている。
多くのメンバーを抱えるソロスファンドではどのように投資決定を行なっているのか? フィッツパトリック氏は次のように説明する。
ソロスファンドでは、トップダウンの資産配分を行なっている。まず世界中の株式や債券にいくら賭けるかという全体的な決定がある。
一方で、投資チームには100人以上のメンバーがいて、それぞれ任されている領分があり、彼らの仕事の結果がわたしのところに来る。だから彼らは自分に任された裁量の内での自由がある。
ただ、彼らが好んだ投資アイデアの中で、例えば1億ドルではなく5億ドル賭けたいと言ってくることはよくある。そういう時には、増額をするべきかどうか一緒に話し合う。
普段はそれぞれのメンバーが扱える資金の量に制限があるが、問題になるのは自分の投資アイデアにもっとお金をかけるべきだと考えた時だろう。
ソロス流の一点賭け
そして有名なのは、以前ソロスファンドを率いていたスタンレー・ドラッケンミラー氏がポンド危機においてポンドの空売りをしていたとき、ソロス氏がやってきて「それでポジションのつもりか」と言い放った一幕である。
ドラッケンミラー氏はそれでポジションを大幅に増額した。そしてそれは当たった。凡庸なポジションと優れたポジションに同額賭けるか、優れたポジションにだけ倍賭けるかでは、後者の方がリターンが良いのは当たり前の話だろう。
だがフィッツパトリック氏が来る前のソロスファンドでは、そういうカルチャーは失われていたようだ。彼女は次のように述べている。
5年前わたしがソロスファンドに来たときには、ジョージは既に日々のトレードには関わってなかった。そしてわたしが受け継いだポートフォリオは、過度に分散投資されていた。
だが過度に分散されたポートフォリオは、平凡であることが保証されているようなものだ。
それは良いアイデアにも平凡なアイデアにも同額が賭けられているからである。
好機にだけ賭けること
また、フィッツパトリック氏は良い投資機会のある時にのみ大金を賭けることを勧めている。
投資の利益に目標を定めることは少々危険だと思う。何故ならば、投資機会はいつも均等ではないからだ。
決まったリターンの目標値を定めると、最高の投資機会があるときに少しのリスクしか取らなかったり、投資機会が最悪の時に多くのリスクを取ったりする危険がある。だからリターンは上下するものだと考える方が良い。
これが出来る人はプロにも少ない。多くの人は賭けないということが出来ない。だが量的緩和が行われ始めたアベノミクスの頃と、強力な金融引き締めが行われている2022年で、株式に同額を賭けていればそれはどう考えてもおかしいのである。
ここで思い出されるのは、金融庁が吹聴した「米国株長期投資」である。それはデフレだったために金融緩和が続けられた1980年以来40年成功した投資法であって、インフレで金融引き締めが避けられない今年からの相場ではまったく違う結果をもたらすだろう。
世界最大のヘッジファンド: 40年続いた米国株強気相場が崩壊する
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24577
だが多くの人は正反対の状況でも同じ投資法を続けることを躊躇しない。
恐らくそれは、集団心理の問題なのである。フィッツパトリック氏は次のように語る。
この業界では同業者とは違う情報源を持っていることは重要だ。集団心理には陥りたくはないだろう。
誰もが同じ人の話を聞き、そうした考えがコンセンサスになるが、そうした考えには本来あるべきほどの根拠がないということは投資ではよくあることだ。
金融緩和が行われていた40年間で成功した投資法が、強力な金融引き締め下でも同じパフォーマンスになるという夢物語にはまったく根拠がないのだが、何故誰も疑問を持たないのだろうか。
大体、皆が同じものに資金を傾けていれば、それはそれ自体がバブルの定義なのである。
2022年インフレ株価暴落は個人投資家が全員退場するまで続く
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24460
この状況でフィッツパトリック氏の率いるソロスファンドはどうしているか。それについては既に報じている。
ジョージ・ソロス氏、インフレ株価暴落で米国株空売りを大幅拡大
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24390
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/24987
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/822.html#c392