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[リバイバル3] 「住宅は資産」という幻想で誰があなたをカモにするのか? 中川隆
278. 中川隆[-12673] koaQ7Jey 2020年5月17日 13:58:24 : Hfn9yD9zt6 : VTY1ZUg4SC5IUEE=[1]
2020年05月17日
コロナで住宅ローンショックが日本を襲う 30代平均残金は1800万円


買う時は3000万した家も、売る時は500万程度に買い叩かれる


ローンショック

新型ウイルスによって経済状況が悪化し、ローンの返済や固定費が支払えない人が急増すると予想されています。

政府の自粛強要から1か月が経ったが、約束した様々な支援策はなにも実施されていません。

国民全員に10万円給付は7月にずれこむ自治体もあると予想され、全員が受け取るのは早い自治体で6月という所です。

電子証明付きマイナンバーを持っている人は電子申請できるが、郵送より遅くなる場合がある。

電子申請しても読み取るのは役所の職員がやっているからで、モニターと役所の情報を目視で確認し照合している。

郵送する書類は機械で読み取るので処理が早く、自治体によっては郵送のほうが早いという。


中小企業やフリーランスへの持続可能給付金も何一つ実行されておらず、大半は受け付けたまま放置されている。

政府の支援策はどれもこんな事で、今までやったのは税金や公共料金支払い猶予くらいです。

数か月すれば政府の支援策が届き始めるが、届いたとしても収入減や売り上げ減少を到底カバーできない。


収入は大幅減少なのに過去に契約した支払いが同じだとしたら、どう考えても日本中で「ローン破産」が起きます。

固定支出としては住居費、光熱費、自動車維持費、過去に消費や契約したローンが大きいと思います。

各種保険や医療支出が大きいという人もいるし、子供の教育費も減らしたくないでしょう。

30代住宅ローン残金の平均は1800万円

この中で最も巨大で減らすのが難しいのは住宅ローンで、自動車とかは売り払ってお父さんが自転車に乗れば済む話です。

高級賃貸マンションは安アパートに引っ越せば良いが、購入した住居を手放すことはできません。

仮にローン返済中の住居を売却したら、どの時点でも多額の借金が残ってしまうそうです。


30年ローンで住居を売却して残金ゼロ(借金ゼロ)になるのは最後の3年と言われています。

15年くらい返済して「もうかなり返したな」と思っても、実際にはまだ半分どころか6割以上元金が残っている筈です。

これは住宅ローンが最初金利だけを払い、最後に元金を払う仕組みだからで、途中で売却すると家を取り上げられて借金だけ残るのです。


総務省の家計調査によると家計の借金の9割は住宅ローンで、30代の平均は1,783万円にも達していた。

持ち家に住む人の中で住宅ローンが残っている割合は約40%なので、家が10軒あったらそのうち4軒はローンの支払い中です。

持ち家の築年数と住宅ローンの関係では築5年以内だと平均2,162万円のローン残高があった。


持ち家が築12年以上の場合はローン残高が600万円になっているので年130万円のペースで元金が減っているのが分かる。

平均すると毎月10万円以上払っていて、ボーナスがあるとは言え年収の2割程度を払っている。

住宅ローンを組んだ人の年収は400万円台から600万円台で、必ずしも高収入というわけではない。

住宅ローンは他を犠牲にしても払い終わる方が良い

年収500万円前後で毎月10万円(年120万)を住宅ローンに払ってる人が、収入大幅減になったら非常に厳しい。

そうなってしまってもすぐ差し押さえられるわけではなく、政府系住宅ローンの場合は繰り延べや返済期間延長など様々な支援を受けられる。

民間住宅ローンの場合もコロナによる一時的な事情だと連絡すれば、すぐ差し押さえられたりはしないでしょう。


それでも支払えないと督促状や催告書が届き、支払えないと結局差し押さえられて競売にかけられます。

ドラマや映画はここで終わるが実際には家を取り上げられても、多額の住宅ローンが残ります。

残った残額は「住宅ローン」ではなく一般融資になり、金利は1%から10%以上に跳ね上がり、金融機関は数年以内の返済を求めて来ます。


支払えないから家を取り上げられたのに、その後の支払い金額は数倍に増えてしまうので絶対に支払えません。

こうなると自己破産を考えますが、本人が自己破産すると金融機関は保証人に請求し、保証人の家を取り上げて競売に掛けます。

闇金ドラマとまったく同じ展開になり、銀行員はハイエナのようになります。


結局住宅ローンは期間を延長してでも払い終わるのが一番得で、他の支出を切り詰めた方が良いです。

住宅ローンを支払うために子供の進学を断念するようなニュースも、今後多くなるでしょう。

住宅ローン破綻し差し押さえられると、多くの家庭が崩壊し一家離散しているので、他の事は犠牲にせざるを得なくなります。

http://www.thutmosev.com/archives/82962623.html
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/615.html#c278

[近代史3] アジア東部集団の形成過程 中川隆
7. 中川隆[-12672] koaQ7Jey 2020年5月17日 14:51:46 : Hfn9yD9zt6 : VTY1ZUg4SC5IUEE=[2]
2020年05月17日
中国南北沿岸部の新石器時代個体群のゲノムデータ
https://sicambre.at.webry.info/202005/article_26.html


 中国南北沿岸部の新石器時代個体群のゲノムデータに関する研究(Yang et al., 2020)が報道されました。『ネイチャー』のサイトには解説記事が掲載されています。日本語の解説記事もあります。この研究はオンライン版での先行公開となります。中国・モンゴル・朝鮮半島および日本列島など近隣の島々で構成されるアジア東部には、世界の人口のほぼ1/4が住んでおり、多様な民族・言語集団が存在します。しかし、アジア東部、とくに中国の遺伝的歴史はよく分かっていません。現代アジア東部人の遺伝的関連性パターンは、北から南への勾配で、アジア東部における遺伝的浮動の高水準から、アジア東部集団が完新世の前にヨーロッパ人よりも強い集団ボトルネック(瓶首効果)を経験した、と示唆されます。これまでの研究により、オセアニアの太平洋南西部諸島の人々が、アジア東部本土人と密接な関係を有する台湾の現代オーストロネシア語集団と遺伝的に密接な関係を有している、と明らかになりました。

 しかし、これまでほとんどの研究では、たとえば漢人や傣(Dai)人のような現代アジア東部人がアジア東部系統を表している、との仮定が採用されてきました。しかし、考古学的記録からは、アジア東部人が過去には現在よりも多様だった、と強調されます。この遺伝的多様性の研究は充分ではなく、おもに標本抽出の欠如に起因します。そのため、アジア東部南北における過去の集団構造の特徴づけは難しく、過去の集団がどのように現代アジア東部人に影響を及ぼしたのか、推測を制約しています。頭蓋研究では、アジアの人類史は2層の系統で特徴づけられる、と指摘されています(関連記事)。その研究では、新石器時代前の狩猟採集民が「第1層」で、アジア東部北方関連系統の「第2層」が新石器時代から現代にかけてアジア東部に拡大し、多くの現代アジア東部人系に寄与した、と想定されます。本論文は、新石器時代アジア東部人の遺伝的データをとくに中国から得て、現代アジア東部人の遺伝的パターンの形成に果たした役割を解明します。


●現代と新石器時代のアジア東部人の遺伝的関係

 アジア東部における人口史の解明のため、本論文は較正年代で9500〜300年前頃のアジア東部の個体群のDNAを解析しました。アジア東部北方(秦嶺・淮河線以北)では中華人民共和国の内モンゴル自治区と山東省、アジア東部南方では中国福建省と台湾の個体群が対象となりました。26人のDNAが解析され、そのうち11遺跡の24人が分析フィルターを通過しました。内訳は、アジア東部南方が16人、アジア東部北方が8人です。標的とした一塩基多型での網羅率は0.01〜7.60倍です。ほとんどの個体の年代は新石器時代で、福建省の1個体のみ300年前頃です。

 本論文は、これらの個体群が現代アジア東部人から深く分岐した系統を有するのか決定するため、アジア東部人の共通祖先から早期に分離した、すでにDNA解析された古代アジア人の標本群と、これら個体群がどの程度系統を共有するのか、検証しました。アジア東部人の共通祖先は本論文では「早期アジア人」とされ、たとえば8000〜4000年前頃のアジア南東部のホアビン文化(Hòabìnhian)個体群(関連記事)や、3000年前頃の愛知県の縄文時代の伊川津遺跡個体(関連記事)や、4万年前頃となる北京の南西56kmにある田园(田園)洞窟(Tianyuan Cave)の男性個体(関連記事)です。

 古代および現代のアジア東部人を含む主成分分析では、すべての新石器時代アジア東部人は、現代アジア東部人・新石器時代シベリアのアジア人・チベット人・アジア南東部人・太平洋南西部人を含む、アジア東部系統集団とクラスタ(集団、まとまり)を形成します。これには、上述の頭蓋分析で「第1層」に分類された前期新石器時代アジア東部南方個体も含まれます。具体的には、福建省連江県亮島の粮道(Liangdao)遺跡と福建省の斎河(Qihe)遺跡の個体です。したがって、本論文の分析結果は、上述の頭蓋形態に基づくアジア東部・南東部の「2層」モデルを支持しません。外群f3分析でも、新石器時代アジア東部人は「早期アジア人」よりも新石器時代のシベリア人・チベット人・太平洋南西部諸島人の方と遺伝的類似性をより多く共有します。

 対称性テストでの新石器時代アジア東部人と現代アジア東部人および「早期アジア人」との直接的比較の結果、新石器時代アジア東部人はどの「早期アジア人」よりも現代アジア東部人の方と密接に関連する傾向にある、と明らかになりました。したがって、前期新石器時代アジア東部南方人を含む新たに標本抽出された個体群は、遺伝的にはアジア東部系統の現代集団と遺伝的に最も密接です。

 新石器時代アジア東部人の非現生人類ホモ属(古代型ホモ属)との混合パターンは、現代アジア東部人と類似していました。新石器時代アジア東部人は、35000年前頃のベルギーの個体とも南アメリカ大陸人とも一貫したつながりを示さず、4万年前頃の田园洞窟個体とはパターンが異なり、現代アジア東部人と類似しています。以前の研究では、新石器時代前のアジアで深く分岐した系統はアジア東部集団の「第1層」と関連している、と主張されました。しかし、中国の南北両方の前期新石器時代集団は異なるパターンを示し、「第1層」には分類されず、現代アジア東部人とおもに関連する系統を有する、と示唆されます。


●前期新石器時代におけるアジア東部南北間の集団区分

 主成分分析では、新たに標本抽出された個体群は地理的分離を示します。沿岸部新石器時代アジア東部南方人は現代アジア東部南方人と集団化(クラスタ化)して密接ですが、沿岸部新石器時代アジア東部北方人は、現代アジア東部北方人と集団化して密接です。これらの結果は、新石器時代以降のアジア東部南北両方の間の集団構造を示唆します。

 本論文は、新石器時代アジア東部における遺伝的関係の決定のため、まず外群f3値のペアワイズ比較を用いて、他の新石器時代集団とアジア東部関連系統との関係を評価します。新石器時代アジア東部南方人は、新石器時代アジア南東部人・オーストロネシア関連の太平洋南西部諸島人とそれぞれ高い遺伝的類似性を示し、これは主成分分析でも観察されたパターンです。f4分析では、新石器時代アジア東部南方人と3000年前頃となる太平洋南西部のオーストロネシア関連諸島人とが一貫して、他の沿岸部および内陸部新石器時代アジア東部北方人とシベリア人とチベット人よりも、相互に遺伝的に密接な関係を共有していますが、後期新石器時代アジア東部南方人個体の中には、アジア東部北方人との遺伝的つながりを共有している個体もあり、混合が示唆されます。

 最尤法系統樹では、新石器時代アジア東部南方人集団は、新石器時代アジア東部北方人・シベリア人・チベット人と比較して、集団化しています。したがって、アジア東部南方本土と台湾では、共有されたアジア東部南方系統が見られます。この系統は、新石器時代アジア東部北方人で観察された系統とは異なり、南北のアジア東部人の混合後も持続するパターンです。

 前期新石器時代のアジア東部北方人では、新石器時代アジア東部南方人では見られないものの、新石器時代シベリア人とチベット人には存在する系統が見られます。たとえば最尤法系統樹では、新石器時代アジア東部北方人とシベリア人とチベット人集団は、新石器時代アジア東部南方人およびオーストロネシア関連諸島人との比較で集団化し、外群f3分析でも相互に高い遺伝的類似性を共有します。とくに、沿岸部新石器時代アジア東部北方人が集団化する一方で、内陸部アジア東部北方人を表す内モンゴル自治区の裕民(Yumin)遺跡個体は、ユーラシア東部草原地帯および極東ロシアのプリモライ(Primorye)地域の新石器時代シベリア人と集団化します。ほとんどの新石器時代アジア東部北方人とシベリア人は、新石器時代アジア東部南方人とよりも相互に密接な遺伝的関係を共有します。f2・f3・f4統計すべてを用いて開発されたモデルでは、南北のアジア東部関連系統が2系統に区分する、と観察されます。

 新石器時代は明確な南北のアジア東部関連系統で強調されますが、この時期に遺伝子流動も集団に影響を与えました。主成分分析では、内陸部新石器時代アジア東部北方人である裕民遺跡個体は、新石器時代シベリア人や沿岸部アジア東部北方人と同様に他のアジア東部北方人と集団化せず、むしろ現代のチベットとアジア東部北方人との間に位置します。さらに、最尤法系統樹ではまず、上部旧石器時代シベリア北部人が、おそらくはアメリカ大陸先住民と密接に関連したシベリア集団経由で新石器時代シベリア人系統に影響を与え(関連記事)、これはf4分析でも確認されました。次に、シベリアやチベットのようなアジアのより内陸の集団と比較すると、沿岸部前期新石器時代アジア東部北方人の中には、沿岸部後期新石器時代アジア東部南方人との類似性を示す個体がいる、と明らかになりました。沿岸部前期新石器時代アジア東部北方人は、同様に前期新石器時代アジア東部南方人とのつながりを示します。これらの関連は、沿岸部アジア東部南北間の集団関係が、混合(交雑)なしでは容易に解明できないことを示します。


●アジア東部南方におけるアジア東部北方人系統の増加

 時空間分析では、新石器時代と現代の間のアジア東部系統の違いが評価されました。新石器時代アジア東部系統のおもな特徴は、新石器時代アジア東部北方人とシベリア人とチベット人により表される北方系統と、新石器時代アジア東部南方人およびオーストロネシア関連太平洋南西部諸島人により表される南方系統です。遺伝的差異の検証では、沿岸部新石器時代アジア東部北方および南方人が相互に、現代のアジア東部北方および南方人との間よりもずっと異なる、と示されます。新石器時代の遺伝的違い(FST=0.042)に対して、現代ではずっと小さくなります(FST=0.023)です。この違いは、現代アジア東部人が新石器時代アジア東部人よりも遺伝的に均質であることを示します。

 新石器時代から現代にかけて遺伝的差異が減少した要因の特定のため、f4分析が用いられ、対称性テストが行なわれました。前期および後期新石器時代では、明確な地理的区分があり、北方集団は9500年前頃となる山東省の變變(Bianbian)遺跡個体と、南方集団は福建省の斎河遺跡個体とより密接関係を共有しています(図3A・B)。このパターンは、斎河個体を他の前期新石器時代アジア東部南方人、變變個体を他のアジア東部北方人に置き換えても変わりませんでした。qpAdmを用いての混合モデルでは、新石器時代集団における系統の割合が推定され、新石器時代アジア東部の北方人および南方人はそれぞれ、その地理(アジア東部北方もしくは南方)と関連した異なる系統に属します(図3D・E)。

 対称的に、現代アジア東部人のパターンは、その内部の遺伝的差異を減少させる主因が、アジア東部南方におけるアジア東部北方関連系統の増加であることを示します。現代アジア東部人では、地理に関わらず、全アジア東部人が新石器時代アジア東部北方人と類似性を共有するという、劇的な変化が観察されます。本論文の混合モデルにおける系統の割合の推定は、アジア東部南方本土におけるアジア東部北方系統の21〜55%の増加です。一方、アジア東部南方系統の北方への拡大も見られ、中国北部の漢人集団では36〜41%、朝鮮人集団では35〜36%と推定されます。古代シベリア人関連系統は、300年前頃となる沿岸部アジア東部南方本土個体や台湾集団やチベット人や日本人を除いて、最近のアジア東部人にも大きく影響を与えています。アジア東部周縁部における古代シベリア人関連系統の欠如は、北から南への遺伝子流動の異なるタイプがアジア東部で起きたことを示唆します。

 遺伝子流動事象の年代は推定できませんが、上述のf4分析で後期新石器時代アジア東部南方人個体の中にアジア東部北方人との遺伝的つながりを共有している個体が示されることから、後期新石器時代までにはアジア東部人に影響を与え始めたかもしれない、と示唆されます。後期新石器時代アジア東部南方人は、前期新石器時代アジア東部南方人が共有していない沿岸部アジア東部北方人の變變個体とつながりを共有しています。他の混合検定もこの知見を支持し、後期新石器時代アジア東部南方人におけるアジア東部北方系統を推定します。

 また、アジア東部北方人が内陸部の裕民遺跡個体と沿岸部の變變遺跡個体のどちらに近いのか、検証されました。対称性のf4検定では、全ての新石器時代アジア東部人と沿岸部新石器時代シベリア人は、内陸部の裕民遺跡個体よりも沿岸部の變變遺跡個体の方と密接な関係を共有していましたが、全ての内陸部シベリア人とチベット人はそうではありませんでした。これは、全ての現代アジア東部本土人で見られるアジア東部北方系統が、おもに黄河下流沿いの集団と関連していることを示唆します。これらの観察結果は、漢人という民族集団の起源が黄河流域の中国北部にある、と推測する考古学的および歴史学的研究と一致します。


●中国南部と沿岸部のつながりにおける先オーストロネシア人の起源

 オーストロネシア語集団は台湾から太平洋南西部とマダガスカル島にまで及びます。中国南部本土は、地理的近さと遺物から、台湾に拡散した先オーストロネシア語集団の起源地と考えられてきました。さらに、現代アジア南東部人のミトコンドリアDNA(mtDNA)ゲノム分析でも、中国南部起源が示唆されています。8320〜8060年前頃となる福建省の粮道遺跡個体のmtDNAハプログループ(mtHg)はE1で、台湾やフィリピンやインドネシアの現代オーストロネシア語集団において一般的で、台湾先住民のmtHgと最も類似しています。

 本論文のデータは、祖型オーストロネシア語集団の中国南部起源を支持します。主成分分析では、新石器時代アジア東部南方人は一貫して、他の現代アジア東部南方集団よりも、現代オーストロネシア人の勾配に収まり、他の現代アジア東部南方人と比較して、現代オーストロネシア人である台湾先住民のアミ人(Ami)とつながりを共有します。中国南部本土と台湾の全新石器時代個体で見られる現代オーストロネシア人とのこのつながりは、祖型オーストロネシア人の中国南部起源を支持します。

 さらに、本論文で分析された古代の個体群と、現代オーストロネシア人と密接な関係を共有する太平洋南西部のバヌアツ諸島の3000年前頃の個体群(関連記事)との間のつながりが分析されました。中国南部本土と台湾の新石器時代個体群は、最尤法系統樹では集団を形成し、外群f3分析では3000年前頃のバヌアツ諸島個体群との高い遺伝的類似性を共有します。さらに、直接的なf4比較では、後期新石器時代アジア東部南方人はオーストロネシア関連太平洋南西部諸島人と密接な遺伝的関係を共有し、新石器時代アジア東部北方人のどの集団とも過剰なつながりを有しません。これらの結果は、新石器時代アジア東部南方人と祖型オーストロネシア人との間の提案されてきたつながりをさらに支持します。

 沿岸部集団間の遺伝的孤立の欠如は、アジア東部および南東部の沿岸すべてで観察できます。ほとんどの新石器時代アジア南東部人は、ホアビン文化関連系統とアジア東部南方関連系統の混合ですが、ベトナムの4000年前頃の集団はとくに、沿岸部後期新石器時代アジア東部南方人と密接な関係を共有しています。さらに、この沿岸部のつながりはさらに北方まで拡大します。2700年前頃の愛知県の伊川津遺跡の縄文時代の個体は現代アジア東部人とは早期に分岐した系統で、ホアビン文化集団と遺伝的類似性を共有していますが(関連記事)、新石器時代アジア東部人を含む比較はこのパターンを示しません。代わりに伊川津個体は、アジア東部南方人と同様にいくつかのシベリア沿岸部新石器時代集団との類似性を示します。このパターンは、沿岸部が孤立よりも相互のつながりと遺伝子流動の地域だったことを示します。アジア東岸および東岸から離れた島嶼部の集団間の類似性は内陸部のアジア東部集団には共有されておらず、海洋関連環境に沿った相互作用が沿岸部アジア東部の先史時代に重要な役割を果たした、と示唆します。以下、本論文の図1および図2および図3です。


https://science.sciencemag.org/content/sci/early/2020/05/14/science.aba0909/F1.large.jpg
https://science.sciencemag.org/content/sci/early/2020/05/14/science.aba0909/F2.large.jpg
https://science.sciencemag.org/content/sci/early/2020/05/14/science.aba0909/F3.large.jpg

●まとめ

 アジア東部南北の遺伝的調査は、アジア東部では現代よりも前期新石器時代において集団間の差異が大きかったことを示します。上述のように、頭蓋分析では、アジア東部北方関連集団の「第2層」が前期新石器時代にアジア東部全域に拡大し、新石器時代より前の狩猟採集民である「第1層」を少なくとも部分的に置換した、と想定されていました。本論文の遺伝的分析では、8400年前頃までの沿岸部アジア東部南方における「第1層」の証拠は見つかりませんでしたが、前期新石器時代と現代との間のアジア東部南方における北方系統の影響増加は観察されました。したがって、アジア東部北方系統と関連する「第2層」の拡大についての議論は依然として、アジア東部先史時代の文脈で調査すべき重要なモデルです。

 しかし、アジア東部北方系統の拡大は、両方向での混合の増加に至りました。現代アジア東部人のほとんどは、アジア東部の南北両系統の混合です。したがって、アジア東部南方へのアジア東部北方系統の拡大だけではなく、現代アジア東部北方人の一部におけるアジア東部南方系統も見られます。新石器時代において現代の水準ほどのこうした混合は観察されず、現代アジア東部人の遺伝的パターンに寄与した人類の移動は新石器時代後に起きただろう、と示唆されます。

 アジア東部本土南岸と台湾と太平洋南西部バヌアツ諸島の古代の個体群間の共有された系統が示唆するのは、オーストロネシア人が中国南部から到来した集団に由来し、そのパターンは、mtDNA研究と共に、中国南東部沿岸とオーストロネシアの物質文化の類似性で支持される、ということです。さらに、アジア東部沿岸部集団間の遺伝子流動は一般的傾向で、異なる沿岸部のつながりが、シベリア沿岸部から日本列島を経てベトナム沿岸部まで、南北の広大な距離の新石器時代集団で観察できます。

 中国南北の9500〜300年前頃の個体群では、新石器時代の集団移動と混合を示唆する系統の変化はあるものの、アジア東部人の間の密接な遺伝的関係が観察されます。アジア東部新石器時代個体群は明確に南北に区分されるものの、他地域集団との比較では近縁になる、というわけです。本論文は、旧石器時代の個体の遺伝的解析数が増加していけば、中国中央部のさらに内陸の集団と同様に、旧石器時代狩猟採集民と新石器時代農耕民と現代アジア東部人の間の関係をさらに明確にできるでしょう、と今後の展望を述べています。


 以上、本論文についてざっと見てきました。アジア東部では、新石器時代には現代よりも人類集団の遺伝的差異がずっと大きく、遺伝的には現代よりも多様な集団が存在していたことになります。これは、日本列島の「縄文人」など「早期アジア人」系統の影響の強い集団が存在していたからでもあります。しかし新石器時代の中国では、現代アジア東部人と遺伝的に比較的類似していた系統が南北に存在していました。この2系統は他系統との比較でアジア東部系統を形成します。しかし、この2系統が明確に区分されることも確かで、文化的交流はあっただろうとはいえ、新石器時代にはまだ中国の広範な地域が一体的とは言えなかったことを示唆します。

 このアジア東部の南北両系統のうち、現代アジア東部人に強い影響を残しているのは北方系統で、南方系統はオーストロネシア語集団との強い類似性を示します。これは上述のように、祖型オーストロネシア語集団が中国南部から台湾に移動し、そこからさらにアジア南東部を経てオセアニアやマダガスカル島まで拡散した、という以前からの有力説を改めて確認しました。アジア東部北方系統の拡大は、華北の勢力に江南が政治的に取り込まれていった中国史の大きな動向を反映している、と考えられます。上述のように、中国南北の混合は後期新石器時代には始まっていたものの、それが大きな動向となったのは新石器時代後なのでしょう。

 このアジア東部北方系統の拡大は、南方だけではなく西方でも見られ、まだ査読前ですが、最近公表されたアジア東部の古代ゲノムデータを報告した研究で指摘されています(関連記事)。現代日本人の多くは、「早期アジア人」とされる先住の「縄文人」と、弥生時代もしくは縄文時代後期〜晩期以降に到来したアジア東部北方系統を主体とする集団との混合で成立し、アジア東部北方系統の影響が圧倒的に強い、と推測されます。一方、日本列島でもアイヌ集団では「縄文人」の遺伝的影響が他の日本人よりも強く残っている、と推測されます(関連記事)。

 ただ、考古学者の秦嶺(Ling Qin)氏は、本論文が取り上げた中国南部の人々は孤立集団で、広範な地域を代表していない可能性があり、稲作の起源的な中心地である長江流域の早期農耕民のDNA解析が優先されるべきと指摘します。確かにこの指摘は妥当で、福建省の新石器時代個体群は特異な集団で、長江流域とは遺伝的構成が異なっていた可能性も考えられます。あるいは、中国南北の一体化は後期新石器時代の時点でそれなりに進展していたかもしれません。この問題は、長江流域の新石器時代個体群のゲノムデータでより詳しく解明されるでしょう。

 本論文は、アジア東部の古代DNA研究がヨーロッパと比較してずっと遅れていたことを考えると、たいへん意義深いと思います。とはいえ、本論文も認めるように、旧石器時代(更新世)のゲノムデータの増加など、まだ課題は多くあり、とてもヨーロッパの水準には及びません。そのため、アジア東部における現代人の形成史については、まだ確定的には発言できない状況と考えるべきでしょう。本論文の図3も、あくまでも現時点での知見に基づいてソース集団を設定しモデル化したもので、より妥当な集団形成史の提示には、さらなる古代ゲノムデータの蓄積が必要となります。

 本論文ではとくに言及されていませんでしたが、私が注目しているのは、沿岸部新石器時代アジア東部個体群では見られない古代シベリア人関連系統が、現代アジア東部では台湾や日本のような島嶼部とチベットを除いて、一定以上の影響を残していることです。これは、漢文史料に見える匈奴や鮮卑や女真など華北よりも北方の集団が華北、さらには華南や朝鮮半島へと到来したことを反映しているのではないか、とも思うのですが、現時点では私の妄想にすぎません。今後、匈奴や鮮卑や女真など歴史時代の華北よりも北方の集団の古代ゲノムデータが蓄積されていけば、たとえば北京住民の数千年にわたる遺伝的構成の詳細な推移(変容と継続の度合)も解明されるのではないか、と期待されます。


参考文献:
Yang MA. et al.(2020): Ancient DNA indicates human population shifts and admixture in northern and southern China. Science.
https://doi.org/10.1126/science.aba0909


https://sicambre.at.webry.info/202005/article_26.html
http://www.asyura2.com/18/reki3/msg/739.html#c7

[番外地7] プラザ合意で円高になったのに内需主導経済に移行しないで、賃金を下げて輸出主導経済を続けたのが原因だよ。 中川隆
1. 中川隆[-12671] koaQ7Jey 2020年5月17日 16:51:30 : Hfn9yD9zt6 : VTY1ZUg4SC5IUEE=[3]
>あとは日本国内の工場をアメリカや外国に生産拠点を移動したからです。

それは輸出主導経済を続けたという事だ
円高覚悟で輸出で稼ぐには労働者の賃金を下げるしかないんだよ
そうするとデフレになる
http://www.asyura2.com/17/ban7/msg/641.html#c1

[近代史4] 中央銀行の金融緩和こそがデフレの原因 中川隆
1. 中川隆[-12670] koaQ7Jey 2020年5月17日 20:03:14 : Hfn9yD9zt6 : VTY1ZUg4SC5IUEE=[4]

日本経済はこうすれば復活する: 自民党が絶対に実行しない経済政策2016年5月26日
http://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/3366

日本経済は本当に瀬戸際にある。アベノミクスは円安と株高で経済を持ち上げようとしたが、それは永遠に続くものではなく、金融市場が日銀に反旗を翻した途端、日本経済は失速し、それは既にGDPに表れている。これは最初から分かりきっていたことである。

•金融市場に隷属する中銀: マイナス金利に踏み込んだ日銀の追加緩和が示す株式市場の先行き
•2016年1-3月期日本のGDP内訳: ついにマイナス成長、円安減速で輸出減加速

ではどうすれば良いか? 批判するばかりでは芸がないから、本稿では瀕死の日本経済を少なくとも可能な限り最良な状態へ持って行くための経済政策を考えてみたい。

消費税の撤廃

先ずは消費税からである。消費増税と法人減税が日本経済のためになるという、自民党の面白い論理から崩してゆこうと思う。

そもそも日本経済の問題とは何か。労働人口減少による個人消費の長期的減少傾向である。高齢化により仕事を辞めて年金で暮らす人が増えれば、仕事をして収入を得ていた頃と比べ、人々は消費をしなくなるだろう。日本は先進国で一番初めに、いわゆる長期停滞に陥ったのである。

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需要減少のもたらす結果は、成長減速とデフレである。インフレ率とは需要と供給のバランスで決まるのであり、需要が供給に対して少なすぎる場合、物価は下がりデフレとなる。

デフレは需要が足りていないというサインである。クルーグマン氏らとともに安倍首相が招聘したハーバード大学のジョルゲンソン氏は、日本経済の問題点は生産性の低さであり、そのためには法人減税を行うべきだと述べて経団連と財務省を喜ばせたが、この論理は無茶苦茶である。

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先ず、世界経済のデフレ傾向はもう40年ほど続いているが、われわれはその間にIT革命を含む近世以降稀に見るほどの生産性向上を経験している。そしてそもそも、生産性の向上とはコスト減を意味するのであり、コスト減の結果は物価の低下となる。

実際に世界経済はデフレなのであり、生産性が低下しているとする学者らの主張はこうした物価動向を説明できていない。低い生産性はコスト増、そして物価の上昇を生むはずだからである。

だから低成長の原因は生産性ではなく需要減である。アベノミクスの目的もデフレ脱却であったはずなのだが、それでは需要の腰を折る消費増税は理にかなっていない。あり得る選択肢は、デフレ脱却を標榜して消費減税を行うか、デフレ容認を標榜して消費増税を行うかのどちらかであり、それ以外の選択肢はない。上げるべき税金があるとすれば、それは少なくとも消費税では有り得ないのである。これは法人税との比較において詳しく説明しよう。

法人税の大幅増税

消費税を減らすのであれば、その分を補う方法を様々考えなければならないが、先ずは法人税の大幅増税である。

そもそも自民党がさも当然のように法人税の引き下げを行っているのは、経団連がそれを望んでいるからである。経団連とは要するに役員賞与を受けている会社社長などの集まりであり、社内政治以外に特技のあまりない方々である。日本企業で働いている読者が居れば、能力と役職が一致しない会社員など見飽きているだろう。彼らはその成れの果てである。

彼らの受けている役員賞与には会社の費用として計上されるものとそうでないものがあり、費用として計上されないものについては法人税を引いた後の会社の利益から支払われるため、経団連は利益というパイを法人税と取り合っていることになる。だから法人減税を望むのである。

しかし消費税と法人税、どちらを増やすべきか、少し考えてみてもらいたい。消費税とは経済が上手くいっているかどうかにかかわらず、経済活動そのものに課税するものである一方で、法人税とはビジネスを行い利益が出た場合にのみ課税し、儲からない場合には課税をしないというものである。

この意味では消費税は国民が経済活動を行うインセンティブそのものを失わせるものである。どのような場合にも課税がなされるからである。

法人税のように利益に課税されるのであれば、経済活動への影響は軽微で済む。利益が出なければ税金を払わなくとも良いからである。しかしいずれの場合にも課税が発生するのであれば、利益が僅かしか出ないような場合においては経済活動を行わないほうが得となる場合があり、行われるはずだった経済活動が消滅してしまう。したがって法人増税、消費免税が当然の帰結だと思うのだが、自民党がそう思わないのはただ経団連を利するためなのである。

法人税を増税すれば日本からビジネスが逃げてゆくという反論があるかもしれないが、これはナンセンスである。グローバルビジネスの当事者がどのように動くかを理解していない。法人税を40%程度まで上げたとしても、事業が海外に流出することはほとんどないだろう。この理由についてはグローバル・ビジネスにおける法人設立について説明した記事で解説しておいたので、そちらを参考にしてほしい。

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緊縮財政

次に行こう。次は緊縮財政である。しかし公共事業を減らすという意味においてであり、増税という意味においてではない。

ここでは先ず、そもそも政府の役割というものを考えてみたい。政府には主要な機能が二つあり、一つは公共サービスの提供、もう一つは所得の再分配である。

しかし現在の政権が公共事業を行う目的はそのどちらでもなく、主に景気刺激という名目である。麻生財務相は次のように述べている。

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(日本経済では)年間約30兆くらい借りてくれる人が足りない。(中略)誰かがそれを借りてくれない限りは30兆分だけデフレになりますから。それを借りてくれてるのが政府。

つまりは需要が足りないから公共事業で政府が需要を創出するという論理だが、これはおかしいのである。

そもそもの話だが、政府の創りだした需要よりも経済活動で自然に生まれた需要の方が効率的であることに議論の余地はない。だから政府が先ず行うべきは、需要の成長を妨げる課税を先ず取り払い、それでも需要が足りないようであれば財政出動を行う、という手順でなければならない。しかし自民党は消費増税と財政出動を行っている。

増税と財政出動を同時に行うことを正当化する唯一の論理は、所得の再分配である。しかし日本の財政出動は貧困層の利益にはなっていない。上がった株価と上がらない賃金を見ればそれは明らかである。そもそも財政出動は雇用を生み出す目的で行うのだが、日本の労働市場は完全雇用である。

だから異様なまでに膨らんだ日本政府の予算を構成する公共事業は本来不要なのである。所得の再分配にはなっていないし、経済対策と言うのであれば先ずは消費減税である。この論理に反論できる自民党の政治家が一人でもいるだろうか。

経済学的に理にかなっていないにもかかわらず、自民党がそれほどまでに公共事業を行いたがる理由は、いわゆる「大きな政府」を作るためである。

政府とは国民から資金を吸い上げ、そして別の形で吐き出すことを目的としている。そして何処に吐き出すかは政治家が決めることである。だから資金を吐き出す先を決める政治家の周りには企業が集まり、政治家には政治献金や天下りなどの形で便宜が図られる。

これがいわゆる利権であり、政府というものの性質上利権が産まれることは避けられないのだが、日本の場合はかなり度を超えているように思う。ここまで議論してきたように、日本の政策で本当に日本の経済のためを考えて行われた政策は一つもないからである。経団連のために法人減税を行い、財務省のために消費増税を行う。そこに日本経済などは一切関係がない。

政府に存在する利権を拡大する方法とは、端的には増税と財政出動である。こうすれば自民党の経済政策の本質が見えてくるだろう。そうして経済における政府の役割を増やすことで、政府に出入りする資金を増やし、利権を増やしてゆく。

政治家に限らず、財務省が増税を望むのは、財務省が分配する予算が増えれば、財務省に頭を下げに来る政治関係者が増えるからである。そして財務省の権限で配分された予算は、別の利権へと渡ってゆく。そうして日本政府の負債は溜まり、経済は沈む。これが何十年にも及んだ戦後の自民党政治の総決算である。

こうした悪循環を避ける端的な手段は、先ず小さな政府を作ること、そしてもう一つは政府が資金を吐き出す際の政治家の裁量を最小化してしまうことである。つまりは財政出動よりも減税と、そしてヘリコプターマネーである。

ヘリコプターマネー

最後に議論するのは最近話題のヘリコプターマネーであるが、ここで議論をするのは的を絞ったヘリコプターマネーである。

上記のように政治家を利するだけの公共事業をするよりは、国民に直接配ったほうがよほど健全である。とりわけ労働市場が完全雇用であり、公共事業による雇用創出が民間の人材需要締め出しにしかなっていない局面では議論の余地がない。

しかし国民にキャッシュを配るという政策には経済学上の欠点がある。それは消費者の消費性向は企業の消費性向よりも少ないということである。より分かりやすい言葉で言えば、同じ金額を消費者と企業に渡せば、一般的に企業の方がより多くの消費を行う。だから地域振興券などの政策はほとんど使われず、またその事実は財政出動を行う口実にもなる。

これは確かに経済学的な事実である。だからわたしは、ヘリコプターマネーよりは先ず減税を、そしてヘリコプターマネーを行う際には、的を絞って特定の需要のある層に資金を集中投下することを提案したい。

真っ先に対象となるのは子供を産んだ家庭である。日本経済減速の第一の原因は少子高齢化であるが、少子高齢化の原因は20代の若者に子育てのための資金的・時間的な余裕がないことである。

だから少なくとも資金的な問題をヘリコプターマネーで解決する。子供を産んだ家庭には月に5万から10万程度を支給し、出産およびその後の負担を軽減する。

こうした方法の長所は、資金を投下して需要を刺激しようとするのではなく、資金の供給を提示することで消費を増やすインセンティブを作るということである。単に現金をばらまいたのでは、貯蓄に回る可能性が高い。だから需要を増やす特定の行動をした場合には資金を供給する、という順にすることで、個人の消費性向が低いという欠点を回避するのである。

これでどの程度消費性向を上げられるかは分からないが、効果の薄い他の政策よりはやる価値があるのではないかと思っている。所得の再分配としての機能はより単純となり、そこに利権の入る余地はほとんどない。特に子育て家庭への資金供給には意味があると考えている。しかし先ずは消費税撤廃であり、ヘリコプターマネーはそれからだろう。

結論

長くなったが、ここまで眺めてみれば、日本の経済政策の本当の意味が見えてくるだろうと思う。何故消費増税で法人減税か? 何故増税と財政出動か? そうした疑問の答えのなかに、日本経済のためになるからだというものは一つもない。

日本が国として機能していない一番の原因は、自民党に変わるまともな保守政党が存在していないことである。先日取り上げた移民政策などは恐らくは日本人のほとんどが望んでいないものであるにもかかわらず、海外の政治家や安い労働力を望むグローバル企業などを喜ばせるためにそれを実行出来てしまうのは、日本の政治が一党独裁だからである。

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自民党は保守などではない。自民党とは経団連や財務省など様々な既得権益者が集まって利害調整をするための場なのであり、彼らには日本経済がどうなるかなど最初から念頭にないのである。アベノミクスは既にほぼ終了しているが、次に政権を握る政治家も、残念ながらこの枠内から出ることはないだろう。日本には自民党以外の政党が本当に必要なのである。

http://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/3366
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/890.html#c1

   

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