97. 中川隆[-8084] koaQ7Jey 2024年12月28日 07:11:51 : yOszhNnqik : UzlCd3lwYnQ4bjI=[1]
2024年12月26日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57557
アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領がレックス・フリードマン氏の動画配信で、アメリカの新トランプ政権に対して助言を送っている。
ハイパーインフレを退治した大統領
アルゼンチンのミレイ大統領は、アルゼンチンが200%を超えるハイパーインフレに襲われている中で当選し、インフレ率を2.7%にまで押し下げた傑物である。
ミレイ氏はそれをどうやってやったか? 政府支出を極限まで押し下げたのである。ミレイ氏が当選して最初にやったのは閣僚の数を半分にすることだった。
新アルゼンチン大統領のミレイ氏、経費削減のため閣僚の半分を削減する
それはインフレを引き起こしたインフレ政策を討ち滅ぼすことだった。
更にはミレイ大統領は最近、税金の9割を廃止し、最高でも6種類の税金だけを残すことを表明した。これは税額の話ではなく、税金の種類の話である。税制を簡素化することで煩雑な事務手続きを撤廃し、政府の支出を極限まで減らそうというわけである。
ミレイ氏は本気だ。無駄な政府支出を切り落とし、ハイパーインフレを退治した上に、IMFは2025年のアルゼンチンの経済成長率を5%と見積もっている。
ミレイ氏は政府の経済への介入を悪と見なすオーストリア学派の経済学者であり、自分の学説を自分の経済政策で証明したわけである。
ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
ミレイ大統領: 政府は国民への納税の強要によって成り立っている
トランプ政権とミレイ大統領
さて、トランプ政権は今、アメリカのインフレを悪化させずに経済成長を実現させるという難事業を強いられている。
大統領選挙後のトランプ氏、インフレを起こさずに株価上昇を引き起こす余地があるか?
そんなトランプ政権にとってインフレを退治して経済成長を実現したミレイ氏は師のような存在である。トランプ氏から政府効率化省(DOGE)の設立を任じられたイーロン・マスク氏とヴィヴェック・ラマスワミ氏はミレイ氏の改革を賞賛している。
マスク氏とミレイ氏はTwitter上でよく交流しており、4月にはテキサス州のTeslaの工場で顔を合わせている。
政策でトランプ政権の先を行くミレイ氏はトランプ氏について何と言っているか。
ミレイ氏は先ずトランプ氏はリベラル派の価値観に抵抗していることを称賛し、次のように述べている。
トランプ大統領についてわたしが尊敬することがいくつかある。
トランプ氏は現在行われている文化的な闘いの本質を理解している。トランプ氏は社会主義に反対することを公言している。彼の主張は公に社会主義を敵としている。彼はリベラル派のウィルスを理解しており、その本質を理解していることは大きな価値をもつ。
ミレイ氏はよほどのリベラル嫌いらしい。それは彼の経済学上の信念と結びついている。オーストリア学派の経済学では、公共事業や政府による規制には何の倫理的根拠もないからである。それは他人から金や権限を盗んで自分(あるいは自分の票田)の政治的目的のために自由に使うことである。
ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
彼らは「貧しい人々に補助金を与えずに放置するのか」と言うだろうが、その資金源は常に他人の財布である。自分の金でやれば誰も文句を言わないのだが。
トランプ政権は政府支出を削減できるか
さて、より重要なのは、トランプ政権がミレイ大統領のように、政府支出を削減した上で経済成長を実現できるかどうかである。
ミレイ氏は自分の友人でもあるマスク氏ら政府効率化省の職員に対して次の言葉を送っている。
限界まで支出を削減することだ。限界までだ。たったそれだけだ。
わたしの助言は最後までやり切ることだ。限界まで削減する。決して諦めてはならない。油断するな。
本当に限界まで支出を削減し、ハイパーインフレのアルゼンチンを財政黒字にしてしまったミレイ氏の言うことは違う。
だがミレイ氏と同じことがマスク氏らに出来るだろうか。アルゼンチンでは、ハイパーインフレという状況がミレイ氏の過激な経済政策に政治的な支持を与えた。
アメリカの大統領選挙ではトランプ氏と共和党は勝利したとはいえ、ミレイ氏と同じくらい過激なことが出来るだろうか。財務長官を任せられているスコット・ベッセント氏の支出削減に関する言葉はやや歯切れが悪い。
ベッセント氏: 米国の債務問題にはアメリカの覇権がかかっている
ミレイ氏もマスメディアなどの強烈な抵抗に遭ったように(ミレイ氏は「彼らはわたしの愛犬までも標的にする」と言っている)、もしマスク氏らが本気であらゆる政府支出を削減しようとすれば、あらゆる抵抗に直面するだろう。
だがミレイ氏は次のように言っている。
政府支出を削減する主義主張には決して政治的な目的はない。何故ならば、最後には自分の権力も破棄してしまうからだ。
もちろん不満を言う人々もいるが、それは特権を失う人々だ。彼らは何故自分たちがそういう特権を持つべきなのかを説明しなければならなくなる。そしてそれは彼らにとって気まずい状況だ。
興味深いのは、日本で自民党が多少その立場に置かれ始めていることだ。国民民主党が減税を主張し、自民党がそれに反対する度に自民党は自分の腹の中をさらけ出さなければならなくなっている。
だが国民民主党も減税は公約にしているが、支出の削減は公約にしていない。それが日本とアルゼンチンの大きな差である。
結局、アルゼンチンが緊縮財政に耐えられたのは、ハイパーインフレとどちらが良いかという現実を突きつけられたからである。
日本人もハイパーインフレを突きつけられるまで、同じ道を選ぶことは出来ないのだろうか。
レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で解説している通り、歴史上の多くの国はそのシナリオを辿っている。日本はどうなるだろうか。日本人の賢明さが問われている。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57557
ミレイ大統領: 自由と財産の権利を擁護し暴力に反対するならば政府はなくなる
2024年12月27日 globalmacroresearch
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57587
アルゼンチンをハイパーインフレから救った大統領であり、オーストリア学派の経済学者でもあるハビエル・ミレイ氏が、レックス・フリードマン氏のインタビューで自身の経済学的信念について語っている。
ハイパーインフレを打ち砕いたミレイ氏
アメリカでは新トランプ政権が政府効率化省を設立してイーロン・マスク氏をトップに据え、政府の無駄を削減し財政赤字の問題を解決しようとしている。
サマーズ氏: アメリカは財政赤字増加による軍事力減少で大英帝国の衰退に近づいている
だが世界にはそれを既に成し遂げている政治家がいる。マスク氏の友人でもあるミレイ氏である。
ミレイ氏は200%を超えるハイパーインフレとなっていたアルゼンチンで、それまでのインフレ政策を一層し政府支出を極限まで抑えることで、インフレ率を年率2%台にまで抑えた上で2025年には5%の経済成長率を達成すると予想されている。
これまでの政治家は政府支出を増やすことでGDPを増やすと標榜し、無駄な公共事業と政府債務を積み上げてきたのに、ミレイ氏は政府支出を削減することで経済成長を実現しようとしている。
ミレイ氏の経済思想
ミレイ氏はどういう考えのもとそれを行なっているのか? 例えば東京五輪やGO TOトラベルのように、政治家が行なう政府支出は経済改善のためではなく自分と票田を潤すためのものであり、それが無い方が経済はよく回るというのは、経済学者でもあるミレイ氏が信じるオーストリア学派の経済学の基本的信条でもある。
例えばオーストリア学派の代表的な経済学者であるフリードリヒ・フォン・ハイエク氏は無制限の政府支出の根幹にあるのは政府の通貨発行権だとして、通貨発行を民間にも許し政府の通貨と競争させるべきだと著書『貨幣発行自由化論』で主張している。
ハイエク氏: 通貨を政府がコントロールしなければならないというのは根拠のない幻想
だがミレイ氏自身はどう考えているか。彼は次のように述べている。
厳密に言えばわたしは無政府資本主義者だ。わたしは政府を軽蔑している。暴力を軽蔑している。
わたしはリベラリズムの定義として、アルベルト・ベネガス・リンチ氏の定義を取り上げたい。それはジョン・ロックによる定義とほぼ同じものだ。それは「リベラリズムとは人の生活と自由と財産の権利を擁護し、他者を侵害しない原則に基づき、他人の生活上の活動を無限に尊重することである」というものだ。
政治や経済の記事を普段から読んでいる読者は「リベラリズムとはそういうものだったか?」と思ったに違いない。だがミレイ氏の言うように、リベラリズム(自由主義)の本来の定義はこちらなのである。自由を擁護し、政府による政治家都合の税制や規制を悪とみなす。
しかしここ数十年の変化によっていつの間にかこの言葉は、SDGsなどの奇妙な政治的イデオロギーを持った一部の人々が政府を通してその考えを他人に強要するためのものに変わってしまった。
本当のリベラリズムとは
ミレイ氏は軽蔑の対象として政府と暴力を並べている。なぜこの2つが並ぶのか。それは、政府が人々が必ずしも同意していない資金の移動や規制を強制するからである。
ハイエク氏は、政治家による現金給付を他人から無許可に財産を取り上げて自分の票田にばらまくことだと主張していた。
ハイエク氏: 現金給付や補助金はそれを受けない人に対する窃盗である
ミレイ氏は更に踏み込んで政府の本質は納税の強要だと述べたことがある。
ミレイ大統領: 政府は国民への納税の強要によって成り立っている
そしてこの強要は、究極的には警察という軍事力によって行われている。納税の強要に従わなければ武力で罰を与えるというわけである。だが政治家が誰かから資産を没収して勝手に他の誰かに与えることに何の正当性があるのか。
税制とは暴力である
だからミレイ氏の意見では、あなたが暴力に反対するとき、論理的には税制にも反対しなければならないのである。
ミレイ氏は次のように述べている。
この考えにたどり着いた時、あなたはもう既に事実上無政府資本主義者なのだとわたしは言いたい。
だがミレイ氏は本当に政府を完全になくしてしまおうとしているわけではない。ミレイ氏は次のように続けている。
この考えはわたしの理想の世界を表している。それは理想の世界なのだ。
だが現実には多くの制約がある。いくらかの制約は取り払える。いくらかは取り払えない。だから現実の世界では、わたしは最小国家主義者だ。政府の規模を最小化することを主張する。規制もできるだけ多く取り除く。
そしてミレイ氏はそれを実現した。トランプ政権の政府効率化省も、恐らくはミレイ氏の政策からの借用である。ミレイ氏は次のように述べている。
われわれには規制緩和省というものがあって、毎日1〜5個の規制を撤廃している。
結果どうなったか? 財政赤字を撒き散らしてハイパーインフレに陥っていたアルゼンチンは、ミレイ氏の政府支出の削減によって12年ぶりの財政黒字を達成している。
そして支出を減らしたにもかかわらずアルゼンチンは2025年に高い経済成長を実現しようとしている。
そして株価は大きく上がっている。アメリカに上場しているアルゼンチン株ETFは、2023年11月のミレイ氏の当選以来株価が倍に上がっている。
無駄を減らせば効率は良くなる。そういう当たり前のことをハイエク氏らオーストリア学派の経済学者はもう100年近く言い続けているのだが、これまで誰も耳を貸して来なかった。
だが世界がインフレになって始めて、 人々はインフレ政策に反対してきたオーストリア学派の言葉にようやく耳を貸そうとしている。やや遅いのではないか。
https://www.globalmacroresearch.org/jp/archives/57587
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