3. 2020年6月20日 11:04:58 : aJzrYhZXuM : UGtFb2ZLS0s2Vy4=[1]
持続化給付金だけじゃない、日本の至る所にちらつく「竹中平蔵氏の影」
その全容に迫る
時任 兼作 2020/6/18
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73379?_gl=1*1bowwkp*_ga*N2pKYmFLcXhVUk5pYWdfa2VPMUN1OVhDN3hQZ0p1RnJUZnBjeVdlOGJiT2xxV181NHluZ0d6NnJtdHp5NU43eg..
規制緩和の先に利益がある
国の持続化給付金に関する経産省の委託費をめぐり、一般社団法人「デザインサービス協議会」から広告代理店大手・電通へ、さらに電通から人材派遣大手・パソナなどへ業務が何重にも外注されていたことが指摘され、問題となっている。
「新型コロナ禍で生まれた利権にまで食い込んでいるとは……彼の常套手段とはいえ、呆れてしまう」
さる政府関係者がこう述べるのは、かねて「政商」あるいは「レントシーカー」と指摘されてきたパソナグループ会長・竹中平蔵氏を指してのことだ。
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「レントシーカー」とは、政府や役所に働きかけ、法や制度、政策を自らに都合のいいように変更させて、利益を得る者のことをいう。
竹中氏は、東洋大学教授、慶應義塾大学名誉教授といった学識者の肩書に加えて、パソナグループ取締役会長、オリックス社外取締役など企業人としての肩書を持つ。その一方で、安倍政権の成長戦略のアドバイザーとして未来投資会議、国家戦略特別区域諮問会議において民間議員の肩書も持っており、規制緩和や民間委託を推進する立場にある。
竹中氏が旗振り役となって規制緩和を推し進めた先に、竹中氏の利益があるという、いわばマッチポンプ的な構図が出来上がっているのだ。
外国人労働者の拡充にも…
前出の政府関係者によれば、竹中氏の「利権への関与」は近年だけでも枚挙に暇がない。順を追って挙げてゆこう。
まずは、外国人労働者にかかわる事業だ。
2018年12月8日、入管法が改正され(正式には「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」)、これにより外国人労働者の受け入れが大幅に拡大されるとともに、それにかかわる業務も拡充される運びになった。
改正を主導したのは、国家戦略特区諮問会議。前述の通り、同会議の議員のひとりである竹中氏は、入管法改正を「きわめて重要」な規制緩和だとして、早期の実現を主張していた。
一方、2019年4月の改正法施行に先立つ同年2月、竹中氏が会長を務める人材派遣大手のパソナグループは、外国人労働者をサポートする「外国籍人材定着支援サービス」を開始すると発表した。これは、日本で働こうとする外国人に、在留資格や就労ビザ取得などの事務手続きに関する説明や代行取次、日本語学習、日本のビジネスマナー講習、さらには新生活開始のための諸手続きの支援などを行う事業だ。
もし入管法改正、外国人労働者受け入れの拡大がなかったら、果たしてパソナはこのタイミングで、このような事業に乗り出していただろうか。竹中氏が規制緩和を推進し、それによって生まれたビジネスチャンスに、竹中氏自身が経営に関わる企業がいち早く参入してくる――この「丸儲け」のしくみが、いまや日本の至るところに存在する。
水道事業の民営化にも…
次に触れたいのが水道事業だ。2019年12月25日、水道法が改正された(正式には「水道法の一部を改正する法律」)。これについても、竹中氏の数年がかりの関与が見てとれる。
たとえば2013年4月。竹中氏は産業競争力会議(現・未来投資会議)において、「インフラの運営権を民間に売却して、その運営を民間に任せる。世界を見渡してみれば、港湾であれ空港であれ、インフラを運営する世界的企業が存在します」と発言している。
翌2014年5月には、産業競争力会議と経済財政諮問会議(内閣府に設置)の合同会議の場で、『コンセッション制度(注・所有権はそのままに、運営権だけ民間に売却すること)の利活用を通じた成長戦略の加速』という資料を配付。さらに2016年10月、未来投資会議において、「(『水メジャー』と呼ばれる世界的な水処理企業である)ヴェオリアは世界数十カ国で水道事業をやっている。ヴェオリアは日本に進出しようとしているけれども、日本にそういう企業がない」と、外資系企業が日本の水道事業に参入することに、エールを贈るかのような発言までしていた。
さらなる梃入れもあった。竹中氏は水道事業の民間委託を広げる目的で、自らの「名代」を補佐官として菅義偉官房長官のもとに送り込んだと永田町では噂された。PFI(Private Finance Initiative:民間資金を利用して公共施設などを整備すること)に通じる、コンサルタントの福田隆之氏のことだ。同氏は、ヴェオリアからの接待疑惑が報じられる中、2018年11月に辞任したが、改正法そのものは無事、成立した。
なお、竹中氏が社外取締役を務めるオリックスは、2017年5月に設立された「浜松ウォーターシンフォニー」なる会社にヴェオリアとともに出資している。同社は2018年4月、コンセッション方式を採用した浜松市の下水道事業を受注している。
そしてオリンピックにも…
三つ目がオリンピックだ。
会計検査院は2019年12月、東京オリンピック・パラリンピックの関連事業に対する国の支出がすでに1兆600億円に達しているとの集計結果を公表したが、この事業にもパソナグループは手を伸ばしている。
パソナグループの中核企業・パソナは、会計検査院の発表の直前にあたる同年11月、「組織委員会運営スタッフ」を募集した。求人誌に掲載された情報によれば、時給1600円以上の有償のアルバイト・スタッフで、募集人数は2000人。10月には大会組織委員会が、20万人もの応募があった「ボランティア・スタッフ」のうち12万人を不採用としたばかりであった。
これに関しては、竹中氏が政権のアドバイザーとしてあからさまな介入を行った形跡はない。しかし、ならばなぜ、膨れ上がる五輪費用の削減に目が向けられる中、余分な出費までしてパソナを潤わせるのか。
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ちなみに、有償のスタッフの任期は2月から9月の約240日間。日給およそ1万3000円として、1日当たり2600万円の出費。総費用は60億円以上にも上る。これにパソナへの手数料――委託費が加算される。
そして、今回の持続化給付金に関する騒動で、国民の目に触れなかった利権漁りの一つがまた明らかになったわけである。
「持続化給付金」だけではなさそうだ
一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」は、2016年5月、パソナの他に大手広告代理店の電通、IT企業のトランス・コスモスなどよって設立されたが、その直後から経産省から多くの委託事業を受注していた。
同年8月に「サービス産業海外展開基盤整備事業」を4680万円で受託したのをはじめ、2017年には「IT導入補助金事業」を100億円で、また「IT導入支援事業」を499億円で請け負っている。
さらに2018年「IT導入補助金事業」で100億円、2019年には「事業継承補助金」などで54億円の受注がある。これらの事業の多くが、電通グループやパソナなどに再委託されていることも確認されている。
そして、今年5月、新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業などへの緊急経済対策の目玉の一つとして支給が決定され「持続化給付金」の手続き業務を769億円で受託。20億円を中抜きし、749億円で電通に丸投げしていた。今後もほかの手続き事業を受注する予定だとされている。
このほかにも、現在進行中のものがあるという。空港事業だ。
竹中氏は現在、未来投資会議の分科会である「構造改革徹底推進会合・第4次産業革命会合」会長でもあり、公共施設のコンセッション政策のとりまとめも行っている。全国各地の空港もその対象に含まれているが、今年1月に開かれた会合で、竹中氏は各空港の財務状況を分析した資料を開示するよう、国交省に強硬に求めたという。
竹中氏が社外取締役を務めるオリックスは、関西国際空港の運営に参入している。そのため、国交省は利益相反の観点から当初、難色を示したものの、最終的には折れざるを得なかった。
竹中氏の頭には、今後の空港事業の入札があったとみられる。
「竹中氏については『政商』や『レントシーカー』『利益相反』との批判が常につきまとうが、批判だけではこうした行為を止めることはできない。そろそろ法律で規制することを考える時ではないか」(前出・政府関係者)
政治の世界を跋扈し、そこで生み出した果実を自らの経営する企業に食わせる――「規制緩和」の流行が生み出したこのやり口を、このまま野放しにしてよいのだろうか。