7. 2020年9月11日 10:18:42 : tNT3IPmELY : UDlQeXAwc3VCOWs=[1]
4 つづく
http://blog.livedoor.jp/orined2009/archives/6766151.html
福沢諭吉 「賤業婦人輸出」の誤解
鬼塚英昭著『天皇のロザリオ』抜粋
「日本郵船の大株主は天皇家と三菱財閥であった。アメリカへの大量移民を運んだのは、この日本郵船の船であった。
<中略>
天皇家と日本郵船の深い関係は、明治時代から続いていた。この会社の船で娼婦たちが海外に「進出」させられた。詳しくは山田盟子の『ウサギたちが渡った断魂橋』に書かれている。
日本の偉人中の偉人と評価の高い福沢諭吉は、「賤業婦人の海外に出稼ぎするを公然許可すべきこそ得策なれ」(『福沢諭吉全集 』第十五巻)と主張した。娼婦を送り出す船会社が、天皇家と三菱に大いなる利益をもたらすということを計算したうえでの「得策なれ」の主張であった。」
福沢諭吉が日本人子女を娼婦として「輸出」することを奨励し、それによって天皇家と財閥が利益を得た、という言説である。
当時貧しかった日本にとっての「輸出品」が日本人子女であった、という衝撃的な言説であるが、果たして福沢諭吉がそのような政策を奨励したのかどうか、実際に『福沢諭吉全集』の第十五巻を読んでみた。
鬼塚氏が引用した当該箇所は、全集の中の「人民の移住と娼婦の出稼」という章にある。
ここで福沢は、娼婦という職業が一般に賤業として卑しめられているという社会的事実をまず述べながら、それでも「人間社会には娼婦の欠く可(べか)らざるは衛生上に酒、煙草の有害を唱へながら之(これ)を廃すること能(あた)わざると同様にして、経世の眼を以てすれば寧(むし)ろ其(その)必要を認めざるを得ず。」ときわめて現実的な意見を述べている。
その上で福沢は、日本人の海外移住に際しての、精神衛生の論に移る。
「移住民たるものは成る可く夫婦同行して家居団欒の快楽を其儘(そのまま)、外に移行して、新地に安んずること猶(な)ほ故郷に居ると同様ならしめんこそ最も望む所なれども、多数の移住民、必ずしも妻帯のもののみに限らず、否な、最初の間は不知案内の海外に行くこととて、移住の希望者は差当り係累のなき独身者に多きのみか、或(ある)いは妻帯のものとても先(ま)づ一人にて移住したる上、国より妻子を呼寄せんとするものもあらんなれば、移植地の人口は男子に割合して女子に乏しきを訴へざるを得ず。人口繁殖の内地に於(おい)てさえ娼婦の必要は何人も認むる所なるに、況(ま)して新開地の事情に於てはますます其(その)必要を感ぜざるを得ず。」
これは移住民のみならず、戦場の兵士などにも相通じる問題であって、今日なお、慰安婦問題などでも、売春の現実と倫理的問題が絡み合う複雑な論点である。
福沢諭吉は合理主義者であったのだから、こうした問題に関しても現実的な解決策を述べたことは、何も不思議ではない。
そして、いよいよ問題の箇所が出てくる。
上記の点を踏まえた上で、福沢は、
「海外の移植地に娼婦の必要なるは右の事実に徴するも甚だ明白にして、婦人の出稼は人民の移住と是非とも相伴ふべきものなれば、寧ろ公然許可するこそ得策なれ。」
と述べるのである。
以上のように、全集のこの章を見る限りにおいて、そこに「輸出品」として娼婦を公然許可すべきなどということは一切述べられておらず、ここでの論点は移住者の精神衛生面についての具体的な方策にあるのである。
http://www.asyura2.com/20/senkyo275/msg/658.html#c7