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[近代史5] 黒人殺害で暴徒化する抗議デモ、広がる米国の分断 中川隆
8. 2020年6月12日 06:32:14 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[1]

米国の残酷な黒人差別の歴史 歴史家や小説家の書籍から紐解く
書評・テレビ評2020年6月9日
https://www.chosyu-journal.jp/review/17520


400年前の奴隷貿易が発端

 米国ミネソタ州で白人警官が黒人男性に暴行して殺害した事件を契機に、全米各地で抗議デモが巻き起こり、人種や世代をこえた巨大な運動に発展している。全米で40都市以上が夜間外出禁止令を出すのは、黒人の差別撤廃に尽くしたマーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺された1968年以来だという。それにしてもアメリカで、なぜこうした事件が何度もくり返されるのか。人々の怒りの根源はどこにあるのか。それを理解するためには、イギリス植民地時代を含めたアメリカの400年の歴史を見なければならない。これまで歴史学者や小説家、ジャーナリストたちが世に問うてきた奴隷制と黒人差別の歴史をめぐる書籍を読み、それを手がかりに考えてみた。

 世界の歴史においてアメリカ合衆国ほど人種差別がずっと大問題であり続けている国は他にない。人種差別というものはどうやって始まったのか。


 ボストン大学名誉教授で歴史家のハワード・ジンが著した『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史』(上・下、あすなろ書房)は、『民衆のアメリカ史』を青少年向けに書き直したもので、それまでの国民的英雄を中心にしたものではなく、実際に社会を動かしてきた黒人、女性、インディアン、若者、労働者の側からアメリカの歴史を綴っている。

 時は大航海時代にさかのぼる。コロンブスはスペイン王室の援助を得て黄金を手に入れるため、1492年にアメリカ大陸の一角、カリブ海に浮かぶバハマ諸島に到着した。コロンブスは先住民アラクワ族に黄金を持ってくるよう命じ、持ってこれなかった者は手を切断した。アラクワ族は逃げたが、コロンブスは捕虜にして縛り首にするか、火あぶりにした。当時エスパニョーラ島には25万人の先住民がいたが、17世紀には1人もいなくなった。

 こうして南北アメリカ大陸でのヨーロッパ人の歴史が始まった。それは先住民の大量虐殺と奴隷貿易の始まりだった。

 奴隷貿易は15世紀半ばからポルトガルが始め、オランダ、スペイン、イギリス、フランスが加わった。奴隷船はヨーロッパの各港から大西洋を南下してアフリカに向かい、西アフリカの奴隷貿易拠点で奴隷を購入して船に積み込み、大西洋を渡って南北アメリカの各地に上陸。ここで奴隷が砂糖やコーヒー、綿花などと交換され、各地のプランテーションに送られるとともに、この植民地産物はヨーロッパ本国に持ち帰られる。ここで莫大な利益を得たのがヨーロッパの奴隷商人たちで、そのカネが産業革命を支える資本の原始的蓄積となった。


黒人たちはアフリカ西海岸から奴隷船でアメリカ大陸へ運ばれた(絵画)

 黒人の非人間的な扱いは、すでにアフリカで始まっていた。捕らえられた黒人は鎖につながれて海岸まで歩かされ、その距離は時に1000マイル(約1600`)にもなった。こうした「死の行進」の間に、40%の黒人が命を落としたという。何とか海岸にたどり着いても、売られるまで檻に閉じ込められた。

 いよいよ奴隷船に乗せられると、暗い船倉でまたもや互いに鎖でつながれた。1人分のスペースは棺桶ほどの広さしかなかった。不衛生な船倉にぎゅうぎゅう詰めにされ、窒息死する者、苦しみのあまり海へ身を投げる者まで出た。航海中に3分の1が死亡したという。それでも奴隷貿易はもうかるため、奴隷商人は黒人たちを魚のように船に詰め込んだのだ。

 こうして西洋近代文明のはじまりといわれる数世紀の間に、1200万人以上の黒人が南北アメリカ大陸に運ばれた【地図参照】。途中で死んだ者を含めると、総計5000万人が故郷のアフリカ大陸から連れ去られたという記録もある。

イギリス植民地時代 先住民殺し黒人奴隷に

 同様のことがイギリス植民地時代のアメリカでもおこなわれた。

 1607年、イギリス人はアメリカ大陸における最初の植民地として、バージニアにジェームズタウンを建設した。そこはポーハタンと呼ばれるインディアンの首長が治める領地だった。ポーハタンはイギリス人を攻撃せず、「私は平和と戦争の違いをよく知っている。なぜあなたたちは、愛によって静かに得られるものを、力ずくで奪いとろうとするのか? あなたたちに食べ物を提供しているわれわれを、なぜ滅ぼそうとするのか?」との申し立てをおこなった記録が残っている。コロンブス以前、南北アメリカには7500万人のインディアンが遊牧民や農耕民として暮らしていた。

 その頃、ジェームズタウンは深刻な食料不足に見舞われ、入植者の中にはインディアンのところに駆け込む者もいた。1610年、植民地総督はポーハタンに彼らを送り返すよう求めた。ポーハタンが断ると、イギリス人はインディアン居住地を襲い、子どもたちを海に突き落として銃で撃ち、妻たちを銃剣で刺殺した。1622年、今度はインディアンが増え続けるイギリス人を排除しようと、347人を虐殺した。このときからイギリス人とインディアンとの全面戦争が始まる。

 イギリス人はインディアンを奴隷として使うことも、彼らと共存していくこともせず、滅亡させようと決意した。しかし、トウモロコシや綿花のプランテーションには労働力が必要だ。そこで、反抗的なインディアンと違い、故郷の土地からも文化からも切り離され、無気力状態になったアフリカ人に頼るようになった。法律で黒人に読み書きを教えることさえ禁じ、無知蒙昧な状態にして、彼らを思いのままに支配しようとした。

 黒人たちは当初から、奴隷にされることに抵抗し、人間としての尊厳を守ろうとした。仕事をなまけたり、逃亡したりした。しかし逃亡が見つかると、奴隷たちは火で焼かれ、手足を切られて死刑にされた。一方で、白人の入植者たちが黒人奴隷の集団的な反乱をひどく恐れていたことが、当時の文書からわかる。

 アメリカ独立戦争が起こる100年前の1676年、植民地バージニアで怒れる貧しい入植者たちが特権的な植民地政府に対して反乱を起こし(ベーコンの反乱)、首都ジェームズタウンに火が放たれた。植民地総督は町から逃げ出し、イギリスは4万人の入植者を統制するために軍隊を送った。武装した反乱軍に加わったのは、西部開拓の最前線に送り込まれた白人の辺境民と、白人の年季奉公人(イギリスで職を失い、5年から7年間、主人のためにアメリカで働いて渡航費用を返済する)、そして黒人奴隷だった。彼らは植民地総督を怠慢で無能と糾弾し、法律と税金は不公平で厳しすぎると訴えた。

 18世紀になると、アメリカは農業、造船業、貿易が発達し、大都市の人口は2倍、3倍と拡大した。少数の富める者たちは、北アメリカ大陸にイギリスとそっくり同じ階級社会を実現しようと考えた。彼らがもっとも恐れたのは、黒人奴隷と貧困白人(プア・ホワイト)が結束して第二のベーコンの反乱を起こすことだった。そこで白人と黒人が手を組むのを阻止する手段の一つとして、人種差別主義を使うことにした。つまり、人種差別は黒人と白人の肌の色の違いからもたらされる「自然な感情」ではなく、分断支配をおこなうための意図的な政策だったと、ハワード・ジンはのべている。

奴隷制禁止後も続く アンクル・トムの世界

 アメリカ独立戦争後、北部諸州では奴隷制禁止が宣言されたが、その実行には時間がかかり、一方南部諸州は綿花のプランテーションが発達して奴隷制はますます拡大した。アメリカはメキシコ戦争(1846〜48年)でカリフォルニアをはじめ西部の広大な地域を獲得したが、それは新たな奴隷州獲得のための戦争と呼ばれた。1850年代には、毎年約1000人の黒人奴隷が奴隷制を禁止した北部の自由州やカナダ、メキシコへ逃れていた。

 そのときに書かれたのが、日本でも読み継がれている『アンクル・トムの小屋』(1852年、ハリエット・ビーチャー・ストー著)だ。ストーがこの小説を雑誌に連載し始めた南北戦争前のアメリカでは、奴隷解放論者は暴徒の襲撃を受け、それを擁護する出版社は焼き討ちにあっていた。そのなかで書かれたこの小説は、奴隷制のもとで人々がどのような行動をとり、どのような苦痛に耐え、どのような涙を流したかをいきいきと描き、国家が実行している奴隷制の非道さを同胞に訴えかけた。

 黒人奴隷のトムは生涯で3人の奴隷主に買われていくが、そのうちの1人が南部ルイジアナ州ニューオーリンズのセント・クレアだった。セント・クレアは南部における良識的な紳士の1人で、奴隷制についての問題点も理解しているが、1人ではなにもできないというあきらめが先に立ち、世の中を諦観している。妻のマリーは召使いに囲まれ、ずっとちやほやされて育った典型的な奴隷主夫人で、奴隷たちの勝手な振る舞いに業を煮やし、もし夫が反対しなければ、奴隷たちを留置所か、鞭打ちしてくれるところに送りたいと思っている。

 小説には残忍で強欲な奴隷主レグリーも出てくるが、「ああいう男の残酷さを許し、保障しているのは、あなた方の持っているご立派さと人間性なんですよ」という作中の台詞にあるように、アメリカ人に奴隷制の真の姿から目をそむけないよう訴えている。

 一方、主人公のトムは真面目で親切で信心深いが、けっして卑屈ではない。トムがこっそり病身のルーシーの綿摘みの手助けをしていることを知ったレグリーが、奴隷がしらにしてやるからルーシーを鞭打つようトムに命じたとき、トムは「それだけはごめんこうむりますだ。わしはこれまで一度だって人を殴ったことはねえ」と拒絶する。レグリーは「お前は、今は身も心も俺のものだ」と宣言するが、トムは「わしの魂はわしのものだ。どんなことがあっても売らねえ」といい、立ち上がれないほど殴られるが屈しない。また、キャシーとエメリンの逃亡を手助けしたトムは、レグリーの手下からリンチを受けて口がきけなくなるが、その魂からほとばしり出る声なき声は、手下の2人の黒人の胸を打ち、レグリーが立ち去るや2人はトムの傷を洗い、にわかづくりのベッドに横たえる。

 トムは拷問によって死ぬが、次代の奴隷主ジョージは、このアメリカから人間を奴隷として使う恐ろしい制度をなくすために生きることをトムに誓う。ストーはそれによって奴隷主が奴隷主でなくなる未来を示した。


奴隷市場で競売される黒人たち(絵画)

露骨な人種隔離政策 教育の機会均等求める

 南北戦争と奴隷解放宣言は、アフリカ系アメリカ人たちに歓喜と希望をもたらした。しかし大半の黒人は土地を買う経済力を持たず、あいかわらず白人に頼って仕事を得なければ生きていけなかった。南部の土地は、南部連合時代の所有者に戻されるか、北部の土地投機者や投資家に買い占められた。

 黒人に対する暴力は、南北戦争終結後まもなく南部で爆発する。ルイジアナなど南部諸州では1880年代までに、黒人から公民権や選挙権を再び奪いとり、人種差別と白人の優位性を強要する法律を新たにつくり出した。それはジム・クロウ法と総称される。早稲田大学教授のジェームス・M・バーダマンは『黒人差別とアメリカ公民権運動』(集英社新書)で、1954年のブラウン裁判から1968年までの公民権運動の歴史を、名もなき人たちの勇気と犠牲に焦点を当てて描き出している。

 それによると、ジム・クロウ法のもとで、列車は白人専用車と非白人専用車に分けられ、白人が利用するレストランや公共施設に黒人は入ることができず、白人が通う学校に黒人は我が子を通わせることができない。黒人も白人と同様、税金を払っているのに。投票権も奪われ、とくに白人女性に声をかけることは御法度だった。もしそれを破ったり反抗的な態度をとれば、それだけで黒人は解雇や集団リンチの対象となり、手足の切断、拷問、射撃の的、縛り首、さらには火を付けるといった残忍な仕打ちすら受けていた。しかもその場合、警察も裁判所も犯人を無罪放免にした。州政府や権力機関がKKK(クー・クラックス・クラン)など白人至上主義団体と結びつき、容認・共謀していたのだ。

 公民権運動の前哨戦は、まず子どもの教育をめぐってたたかわれた。カンザス州に住む黒人の溶接工オリバー・ブラウンは、小学3年生の娘が8`先の黒人専用学校に徒歩で通っているのを見て、目の前の白人が通う学校に通わせたいと「教育の平等」を問うて訴訟を起こした。黒人専用学校は予算面でも冷遇され、設備も貧弱だった。1954年に最高裁が「児童の人種分離政策は違法」との判決を出すこの裁判は、「ブラウン対教育委員会裁判」と呼ばれる。当時はそうした訴訟を起こすこと自体、身を危険にさらすことだったが、教育の機会均等を求める運動は絶えることがなかった。

 ミシシッピ州では翌1955年、14歳の黒人少年エメット・ティルが白人女性をデートに誘ったのを見とがめられ、家族から引き離されて殺害された。川から引き上げられた遺体は損傷が激しく、頭には弾丸の跡があった。遺体が母親の元に戻されるや、母親は全世界に「彼らが私の坊やにしたことを見てもらいたい」といった。結局10万人以上の人が、彼のむごたらしい遺体の前に列をつくった。だが裁判所は、遺体が本人であると確認できないとして、犯人を無罪にした。

 こうした蓄積がやがて行動に転化する。アラバマ州モンゴメリでは同年、43歳でお針子の黒人ローザ・パークスが、バスの前方に座ったまま立つのを拒否したため逮捕され、投獄された。当時バスの前方から10席は、たとえ白人の乗客がいなくても白人専用で、黒人が座ることは許されなかったからだ。するとその夜、大学教員の黒人女性たちが「乗客の4分の3は黒人です。もし黒人がバスを利用しなければ、バス会社は経営困難になるでしょう」と書いた3万5000枚のチラシをつくり、翌早朝全市内に配布した。そこから382日間に及ぶ全市民によるバス・ボイコット運動が始まった。4カ所の黒人教会に爆弾が投げ込まれたものの、1年後に最高裁はバスの人種隔離撤廃を認めた。こうして南部で始まった公民権運動は全米に広がっていく。

 次にはノースカロライナ州で黒人の大学1年生4人が、ドラッグストアの白人専用の食事カウンターに座り、店は食事を出すのを拒否したが、彼らは閉店まで帰ろうとしなかった。このシット・イン(座り込み)運動は全米100都市に広がり、白人を含む5万人以上が参加した。また、白人と黒人の若者グループが南部行きの長距離バスに乗り込むフリーダム・ライド(自由のための乗車)という運動も、バスはしばしば放火され鉄パイプで襲撃されたけれども、数万人の参加者を集めた。

 「人種隔離がもっとも徹底された町」と呼ばれたアラバマ州バーミンガムでは、黒人たちがたびたび差別撤廃の集会を開き、デモ行進に移るようになった。人種差別の黒幕は警察公安部長のブル・コナーで、彼は公民権運動活動家を襲わせる汚い仕事をKKKにやらせていた。警察は6歳から18歳までの1500人のデモ隊に放水し、警察犬に襲わせたが、子どもたちはひるまなかった。

公民権運動の広がり 指導者の暗殺乗り越え

 こうしたすべての運動が、1963年8月28日の「仕事と自由のためのワシントン行進」に結集していった。会場には史上最高の25万人が集まり、うち6万人が白人だった。会場ではボブ・ディランやピーター・ポール&マリーらが歌で参加者を励ました。

 その場でキング牧師は、「奴隷解放宣言から100年たった今も、黒人は人種差別と貧困に置かれ自由ではない」と告発。「私には夢がある。いつの日かこの国は立ち上がり、すべての人間は平等につくられているというこの国の信条を生き抜くようになるだろうという夢だ。いつの日か自分の4人の小さな子どもたちが、皮膚の色によってでなく、人格の中身によって評価される国に住むようになるだろうという夢だ」と演説した。


行進の先頭に立つキング牧師

 その後、FBIはキング牧師の電話を盗聴し、脅迫した。1968年4月4日、彼は恐ろしく腕の立つ狙撃犯に射殺された。

 それでも運動は終わらなかった。マルコムXなどの「ブラック・パワー」をスローガンに掲げる新しいリーダーも登場した。60年代後半には黒人暴動が全米100都市に広がるが、そこではベトナム帰還兵の黒人が大きな役割を果たし、差別反対はベトナム反戦運動と結びついていった。

黒人の投獄率5倍 現代版奴隷の囚人労働

 こうした公民権運動の結果、投票権法(1965年。黒人の選挙権を保障)と公民権法(1968年。公民権運動活動家への暴力の禁止など)が成立した。しかし黒人差別はなくならなかった。なぜならそれが、富める者と貧しい者との階級対立という根本問題に根ざしていたからだ。

 1980年代以降の新自由主義のもと、ITバブルや住宅バブルでウォール街のみが「わが世の春」を謳歌する一方、富を独占する1%と99%の貧困層との対立が激化した。そのもっとも底辺に置かれているのが黒人だ。9・11テロ事件後のイラク、アフガン戦争の過程で、軍のリクルーターは大学の学費免除や医療保険加入と引き替えに貧困地域の高校生を軍隊に勧誘したが、その多くが黒人や中南米系移民の子弟で、彼らは入隊後、最前線に送られた。2005年、ハリケーン・カトリーナによって大水害に見舞われたジョージア州では、水没した地域住民のほとんどが黒人の低所得層だった。

 ジャーナリストのシェーン・バウアーは、アメリカの服役囚のおよそ1割が収容されている民営刑務所の実態を明らかにしようと、ルイジアナ州の民間刑務所で刑務官として働き、その潜入ルポを発表した。それが『アメリカン・プリズン』(東京創元社)である。

 アメリカで刑務所に収監される者の人口に占める割合は、世界のどの国よりも高い。2017年に刑務所や拘置所に入れられていた者は220万人をこえ、過去40年間で500%の増加となった。しかも黒人の投獄率は今でも白人の5倍で、受刑者の大多数が黒人だ。犯罪者といっても、黒人の場合、生きるために窃盗をして捕まった者、子どもの頃からずっと獄中にいる者、友人が白人に射殺され、抵抗しようとして投獄された者などがいる。

 そして民間刑務所は、囚人労働を搾取してもうけている。民間刑務所は運営を委託された州政府や連邦政府から、受刑者1人当たり1日34jなどを受けとり、道路建設などの公共事業に無給で囚人を貸し出している。受刑者たちは44人がひしめき合う部屋で寝起きし、労働法に縛られないので1日12時間以上働かされる。病気になっても放置されたままで、感染症で手足を失ったり、刑務官のリンチで衰弱して死に、ボロ切れのように捨てられる受刑者も少なくない。奴隷制時代とまったく同じだ。こうしてこの民間刑務所は年間2億2100万j以上の純利益を上げ、投資家にとっても刑務所REIT(投資信託)は人気商品の一つだという。

 シェーン・バウアーは、こうした囚人労働は奴隷制が直接に生み出したものだと指摘している。南北戦争後、綿花などプランテーションの労働力が不足したときのこと。奴隷制廃止を決めた合衆国憲法修正第13条には抜け穴があり、犯罪者であれば奴隷労働に従事させることができた。そこで南部の諸州はプランテーションをみずから購入し、20世紀初頭からそれを刑務所として運営し始めた。それが1980年代から刑務所民営化になって現在に至っている。つまりアメリカの歴史を通じて人種差別と利益の追求とは常にセットだったと、バウアーはのべている。

 以上の歴史からわかるのは、黒人の人種差別というものは、低賃金労働力を搾取するためと、白人の貧困層と黒人を分断支配するために、黒人をアフリカからさらってきた400年前からアメリカの支配階級がとってきた政策にほかならないということだ。現在の人種差別はアメリカの金融資本そのものが支えている。

 今アメリカで、新型コロナウイルスの死者や感染者がもっとも多いのも黒人である。それは黒人たちが貧困で育ったことから、糖尿病や心臓疾患、肺疾患という持病をかかえ、医者にかかれない状態にあるからだ。もう一つは、彼らの多くが感染の恐れがあっても休むことができないバス運転手や老人ホームの介護、食料品店で働き、底辺でアメリカ社会を支えていることによる。黒人がいなければアメリカ社会は回らないと同時に、強欲な搾取制度がまともな社会にすることの障害になっていることを示している。

https://www.chosyu-journal.jp/review/17520
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/141.html#c8

[近代史02] 白人はなぜ白人か _ 白人が人間性を失っていった過程 中川隆
209. 中川隆[-12427] koaQ7Jey 2020年6月12日 06:50:56 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[2]
米国の残酷な黒人差別の歴史 歴史家や小説家の書籍から紐解く
書評・テレビ評2020年6月9日
https://www.chosyu-journal.jp/review/17520

400年前の奴隷貿易が発端
 米国ミネソタ州で白人警官が黒人男性に暴行して殺害した事件を契機に、全米各地で抗議デモが巻き起こり、人種や世代をこえた巨大な運動に発展している。全米で40都市以上が夜間外出禁止令を出すのは、黒人の差別撤廃に尽くしたマーチン・ルーサー・キング牧師が暗殺された1968年以来だという。それにしてもアメリカで、なぜこうした事件が何度もくり返されるのか。人々の怒りの根源はどこにあるのか。それを理解するためには、イギリス植民地時代を含めたアメリカの400年の歴史を見なければならない。これまで歴史学者や小説家、ジャーナリストたちが世に問うてきた奴隷制と黒人差別の歴史をめぐる書籍を読み、それを手がかりに考えてみた。

 世界の歴史においてアメリカ合衆国ほど人種差別がずっと大問題であり続けている国は他にない。人種差別というものはどうやって始まったのか。


 ボストン大学名誉教授で歴史家のハワード・ジンが著した『学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史』(上・下、あすなろ書房)は、『民衆のアメリカ史』を青少年向けに書き直したもので、それまでの国民的英雄を中心にしたものではなく、実際に社会を動かしてきた黒人、女性、インディアン、若者、労働者の側からアメリカの歴史を綴っている。

 時は大航海時代にさかのぼる。コロンブスはスペイン王室の援助を得て黄金を手に入れるため、1492年にアメリカ大陸の一角、カリブ海に浮かぶバハマ諸島に到着した。コロンブスは先住民アラクワ族に黄金を持ってくるよう命じ、持ってこれなかった者は手を切断した。アラクワ族は逃げたが、コロンブスは捕虜にして縛り首にするか、火あぶりにした。当時エスパニョーラ島には25万人の先住民がいたが、17世紀には1人もいなくなった。

 こうして南北アメリカ大陸でのヨーロッパ人の歴史が始まった。それは先住民の大量虐殺と奴隷貿易の始まりだった。

 奴隷貿易は15世紀半ばからポルトガルが始め、オランダ、スペイン、イギリス、フランスが加わった。奴隷船はヨーロッパの各港から大西洋を南下してアフリカに向かい、西アフリカの奴隷貿易拠点で奴隷を購入して船に積み込み、大西洋を渡って南北アメリカの各地に上陸。ここで奴隷が砂糖やコーヒー、綿花などと交換され、各地のプランテーションに送られるとともに、この植民地産物はヨーロッパ本国に持ち帰られる。ここで莫大な利益を得たのがヨーロッパの奴隷商人たちで、そのカネが産業革命を支える資本の原始的蓄積となった。


黒人たちはアフリカ西海岸から奴隷船でアメリカ大陸へ運ばれた(絵画)

 黒人の非人間的な扱いは、すでにアフリカで始まっていた。捕らえられた黒人は鎖につながれて海岸まで歩かされ、その距離は時に1000マイル(約1600`)にもなった。こうした「死の行進」の間に、40%の黒人が命を落としたという。何とか海岸にたどり着いても、売られるまで檻に閉じ込められた。

 いよいよ奴隷船に乗せられると、暗い船倉でまたもや互いに鎖でつながれた。1人分のスペースは棺桶ほどの広さしかなかった。不衛生な船倉にぎゅうぎゅう詰めにされ、窒息死する者、苦しみのあまり海へ身を投げる者まで出た。航海中に3分の1が死亡したという。それでも奴隷貿易はもうかるため、奴隷商人は黒人たちを魚のように船に詰め込んだのだ。

 こうして西洋近代文明のはじまりといわれる数世紀の間に、1200万人以上の黒人が南北アメリカ大陸に運ばれた【地図参照】。途中で死んだ者を含めると、総計5000万人が故郷のアフリカ大陸から連れ去られたという記録もある。

イギリス植民地時代 先住民殺し黒人奴隷に

 同様のことがイギリス植民地時代のアメリカでもおこなわれた。

 1607年、イギリス人はアメリカ大陸における最初の植民地として、バージニアにジェームズタウンを建設した。そこはポーハタンと呼ばれるインディアンの首長が治める領地だった。ポーハタンはイギリス人を攻撃せず、「私は平和と戦争の違いをよく知っている。なぜあなたたちは、愛によって静かに得られるものを、力ずくで奪いとろうとするのか? あなたたちに食べ物を提供しているわれわれを、なぜ滅ぼそうとするのか?」との申し立てをおこなった記録が残っている。コロンブス以前、南北アメリカには7500万人のインディアンが遊牧民や農耕民として暮らしていた。

 その頃、ジェームズタウンは深刻な食料不足に見舞われ、入植者の中にはインディアンのところに駆け込む者もいた。1610年、植民地総督はポーハタンに彼らを送り返すよう求めた。ポーハタンが断ると、イギリス人はインディアン居住地を襲い、子どもたちを海に突き落として銃で撃ち、妻たちを銃剣で刺殺した。1622年、今度はインディアンが増え続けるイギリス人を排除しようと、347人を虐殺した。このときからイギリス人とインディアンとの全面戦争が始まる。

 イギリス人はインディアンを奴隷として使うことも、彼らと共存していくこともせず、滅亡させようと決意した。しかし、トウモロコシや綿花のプランテーションには労働力が必要だ。そこで、反抗的なインディアンと違い、故郷の土地からも文化からも切り離され、無気力状態になったアフリカ人に頼るようになった。法律で黒人に読み書きを教えることさえ禁じ、無知蒙昧な状態にして、彼らを思いのままに支配しようとした。

 黒人たちは当初から、奴隷にされることに抵抗し、人間としての尊厳を守ろうとした。仕事をなまけたり、逃亡したりした。しかし逃亡が見つかると、奴隷たちは火で焼かれ、手足を切られて死刑にされた。一方で、白人の入植者たちが黒人奴隷の集団的な反乱をひどく恐れていたことが、当時の文書からわかる。

 アメリカ独立戦争が起こる100年前の1676年、植民地バージニアで怒れる貧しい入植者たちが特権的な植民地政府に対して反乱を起こし(ベーコンの反乱)、首都ジェームズタウンに火が放たれた。植民地総督は町から逃げ出し、イギリスは4万人の入植者を統制するために軍隊を送った。武装した反乱軍に加わったのは、西部開拓の最前線に送り込まれた白人の辺境民と、白人の年季奉公人(イギリスで職を失い、5年から7年間、主人のためにアメリカで働いて渡航費用を返済する)、そして黒人奴隷だった。彼らは植民地総督を怠慢で無能と糾弾し、法律と税金は不公平で厳しすぎると訴えた。

 18世紀になると、アメリカは農業、造船業、貿易が発達し、大都市の人口は2倍、3倍と拡大した。少数の富める者たちは、北アメリカ大陸にイギリスとそっくり同じ階級社会を実現しようと考えた。彼らがもっとも恐れたのは、黒人奴隷と貧困白人(プア・ホワイト)が結束して第二のベーコンの反乱を起こすことだった。そこで白人と黒人が手を組むのを阻止する手段の一つとして、人種差別主義を使うことにした。つまり、人種差別は黒人と白人の肌の色の違いからもたらされる「自然な感情」ではなく、分断支配をおこなうための意図的な政策だったと、ハワード・ジンはのべている。

奴隷制禁止後も続く アンクル・トムの世界

 アメリカ独立戦争後、北部諸州では奴隷制禁止が宣言されたが、その実行には時間がかかり、一方南部諸州は綿花のプランテーションが発達して奴隷制はますます拡大した。アメリカはメキシコ戦争(1846〜48年)でカリフォルニアをはじめ西部の広大な地域を獲得したが、それは新たな奴隷州獲得のための戦争と呼ばれた。1850年代には、毎年約1000人の黒人奴隷が奴隷制を禁止した北部の自由州やカナダ、メキシコへ逃れていた。

 そのときに書かれたのが、日本でも読み継がれている『アンクル・トムの小屋』(1852年、ハリエット・ビーチャー・ストー著)だ。ストーがこの小説を雑誌に連載し始めた南北戦争前のアメリカでは、奴隷解放論者は暴徒の襲撃を受け、それを擁護する出版社は焼き討ちにあっていた。そのなかで書かれたこの小説は、奴隷制のもとで人々がどのような行動をとり、どのような苦痛に耐え、どのような涙を流したかをいきいきと描き、国家が実行している奴隷制の非道さを同胞に訴えかけた。

 黒人奴隷のトムは生涯で3人の奴隷主に買われていくが、そのうちの1人が南部ルイジアナ州ニューオーリンズのセント・クレアだった。セント・クレアは南部における良識的な紳士の1人で、奴隷制についての問題点も理解しているが、1人ではなにもできないというあきらめが先に立ち、世の中を諦観している。妻のマリーは召使いに囲まれ、ずっとちやほやされて育った典型的な奴隷主夫人で、奴隷たちの勝手な振る舞いに業を煮やし、もし夫が反対しなければ、奴隷たちを留置所か、鞭打ちしてくれるところに送りたいと思っている。

 小説には残忍で強欲な奴隷主レグリーも出てくるが、「ああいう男の残酷さを許し、保障しているのは、あなた方の持っているご立派さと人間性なんですよ」という作中の台詞にあるように、アメリカ人に奴隷制の真の姿から目をそむけないよう訴えている。

 一方、主人公のトムは真面目で親切で信心深いが、けっして卑屈ではない。トムがこっそり病身のルーシーの綿摘みの手助けをしていることを知ったレグリーが、奴隷がしらにしてやるからルーシーを鞭打つようトムに命じたとき、トムは「それだけはごめんこうむりますだ。わしはこれまで一度だって人を殴ったことはねえ」と拒絶する。レグリーは「お前は、今は身も心も俺のものだ」と宣言するが、トムは「わしの魂はわしのものだ。どんなことがあっても売らねえ」といい、立ち上がれないほど殴られるが屈しない。また、キャシーとエメリンの逃亡を手助けしたトムは、レグリーの手下からリンチを受けて口がきけなくなるが、その魂からほとばしり出る声なき声は、手下の2人の黒人の胸を打ち、レグリーが立ち去るや2人はトムの傷を洗い、にわかづくりのベッドに横たえる。

 トムは拷問によって死ぬが、次代の奴隷主ジョージは、このアメリカから人間を奴隷として使う恐ろしい制度をなくすために生きることをトムに誓う。ストーはそれによって奴隷主が奴隷主でなくなる未来を示した。


奴隷市場で競売される黒人たち(絵画)

露骨な人種隔離政策 教育の機会均等求める

 南北戦争と奴隷解放宣言は、アフリカ系アメリカ人たちに歓喜と希望をもたらした。しかし大半の黒人は土地を買う経済力を持たず、あいかわらず白人に頼って仕事を得なければ生きていけなかった。南部の土地は、南部連合時代の所有者に戻されるか、北部の土地投機者や投資家に買い占められた。

 黒人に対する暴力は、南北戦争終結後まもなく南部で爆発する。ルイジアナなど南部諸州では1880年代までに、黒人から公民権や選挙権を再び奪いとり、人種差別と白人の優位性を強要する法律を新たにつくり出した。それはジム・クロウ法と総称される。早稲田大学教授のジェームス・M・バーダマンは『黒人差別とアメリカ公民権運動』(集英社新書)で、1954年のブラウン裁判から1968年までの公民権運動の歴史を、名もなき人たちの勇気と犠牲に焦点を当てて描き出している。

 それによると、ジム・クロウ法のもとで、列車は白人専用車と非白人専用車に分けられ、白人が利用するレストランや公共施設に黒人は入ることができず、白人が通う学校に黒人は我が子を通わせることができない。黒人も白人と同様、税金を払っているのに。投票権も奪われ、とくに白人女性に声をかけることは御法度だった。もしそれを破ったり反抗的な態度をとれば、それだけで黒人は解雇や集団リンチの対象となり、手足の切断、拷問、射撃の的、縛り首、さらには火を付けるといった残忍な仕打ちすら受けていた。しかもその場合、警察も裁判所も犯人を無罪放免にした。州政府や権力機関がKKK(クー・クラックス・クラン)など白人至上主義団体と結びつき、容認・共謀していたのだ。

 公民権運動の前哨戦は、まず子どもの教育をめぐってたたかわれた。カンザス州に住む黒人の溶接工オリバー・ブラウンは、小学3年生の娘が8`先の黒人専用学校に徒歩で通っているのを見て、目の前の白人が通う学校に通わせたいと「教育の平等」を問うて訴訟を起こした。黒人専用学校は予算面でも冷遇され、設備も貧弱だった。1954年に最高裁が「児童の人種分離政策は違法」との判決を出すこの裁判は、「ブラウン対教育委員会裁判」と呼ばれる。当時はそうした訴訟を起こすこと自体、身を危険にさらすことだったが、教育の機会均等を求める運動は絶えることがなかった。

 ミシシッピ州では翌1955年、14歳の黒人少年エメット・ティルが白人女性をデートに誘ったのを見とがめられ、家族から引き離されて殺害された。川から引き上げられた遺体は損傷が激しく、頭には弾丸の跡があった。遺体が母親の元に戻されるや、母親は全世界に「彼らが私の坊やにしたことを見てもらいたい」といった。結局10万人以上の人が、彼のむごたらしい遺体の前に列をつくった。だが裁判所は、遺体が本人であると確認できないとして、犯人を無罪にした。

 こうした蓄積がやがて行動に転化する。アラバマ州モンゴメリでは同年、43歳でお針子の黒人ローザ・パークスが、バスの前方に座ったまま立つのを拒否したため逮捕され、投獄された。当時バスの前方から10席は、たとえ白人の乗客がいなくても白人専用で、黒人が座ることは許されなかったからだ。するとその夜、大学教員の黒人女性たちが「乗客の4分の3は黒人です。もし黒人がバスを利用しなければ、バス会社は経営困難になるでしょう」と書いた3万5000枚のチラシをつくり、翌早朝全市内に配布した。そこから382日間に及ぶ全市民によるバス・ボイコット運動が始まった。4カ所の黒人教会に爆弾が投げ込まれたものの、1年後に最高裁はバスの人種隔離撤廃を認めた。こうして南部で始まった公民権運動は全米に広がっていく。

 次にはノースカロライナ州で黒人の大学1年生4人が、ドラッグストアの白人専用の食事カウンターに座り、店は食事を出すのを拒否したが、彼らは閉店まで帰ろうとしなかった。このシット・イン(座り込み)運動は全米100都市に広がり、白人を含む5万人以上が参加した。また、白人と黒人の若者グループが南部行きの長距離バスに乗り込むフリーダム・ライド(自由のための乗車)という運動も、バスはしばしば放火され鉄パイプで襲撃されたけれども、数万人の参加者を集めた。

 「人種隔離がもっとも徹底された町」と呼ばれたアラバマ州バーミンガムでは、黒人たちがたびたび差別撤廃の集会を開き、デモ行進に移るようになった。人種差別の黒幕は警察公安部長のブル・コナーで、彼は公民権運動活動家を襲わせる汚い仕事をKKKにやらせていた。警察は6歳から18歳までの1500人のデモ隊に放水し、警察犬に襲わせたが、子どもたちはひるまなかった。

公民権運動の広がり 指導者の暗殺乗り越え

 こうしたすべての運動が、1963年8月28日の「仕事と自由のためのワシントン行進」に結集していった。会場には史上最高の25万人が集まり、うち6万人が白人だった。会場ではボブ・ディランやピーター・ポール&マリーらが歌で参加者を励ました。

 その場でキング牧師は、「奴隷解放宣言から100年たった今も、黒人は人種差別と貧困に置かれ自由ではない」と告発。「私には夢がある。いつの日かこの国は立ち上がり、すべての人間は平等につくられているというこの国の信条を生き抜くようになるだろうという夢だ。いつの日か自分の4人の小さな子どもたちが、皮膚の色によってでなく、人格の中身によって評価される国に住むようになるだろうという夢だ」と演説した。


行進の先頭に立つキング牧師

 その後、FBIはキング牧師の電話を盗聴し、脅迫した。1968年4月4日、彼は恐ろしく腕の立つ狙撃犯に射殺された。

 それでも運動は終わらなかった。マルコムXなどの「ブラック・パワー」をスローガンに掲げる新しいリーダーも登場した。60年代後半には黒人暴動が全米100都市に広がるが、そこではベトナム帰還兵の黒人が大きな役割を果たし、差別反対はベトナム反戦運動と結びついていった。

黒人の投獄率5倍 現代版奴隷の囚人労働

 こうした公民権運動の結果、投票権法(1965年。黒人の選挙権を保障)と公民権法(1968年。公民権運動活動家への暴力の禁止など)が成立した。しかし黒人差別はなくならなかった。なぜならそれが、富める者と貧しい者との階級対立という根本問題に根ざしていたからだ。

 1980年代以降の新自由主義のもと、ITバブルや住宅バブルでウォール街のみが「わが世の春」を謳歌する一方、富を独占する1%と99%の貧困層との対立が激化した。そのもっとも底辺に置かれているのが黒人だ。9・11テロ事件後のイラク、アフガン戦争の過程で、軍のリクルーターは大学の学費免除や医療保険加入と引き替えに貧困地域の高校生を軍隊に勧誘したが、その多くが黒人や中南米系移民の子弟で、彼らは入隊後、最前線に送られた。2005年、ハリケーン・カトリーナによって大水害に見舞われたジョージア州では、水没した地域住民のほとんどが黒人の低所得層だった。

 ジャーナリストのシェーン・バウアーは、アメリカの服役囚のおよそ1割が収容されている民営刑務所の実態を明らかにしようと、ルイジアナ州の民間刑務所で刑務官として働き、その潜入ルポを発表した。それが『アメリカン・プリズン』(東京創元社)である。

 アメリカで刑務所に収監される者の人口に占める割合は、世界のどの国よりも高い。2017年に刑務所や拘置所に入れられていた者は220万人をこえ、過去40年間で500%の増加となった。しかも黒人の投獄率は今でも白人の5倍で、受刑者の大多数が黒人だ。犯罪者といっても、黒人の場合、生きるために窃盗をして捕まった者、子どもの頃からずっと獄中にいる者、友人が白人に射殺され、抵抗しようとして投獄された者などがいる。

 そして民間刑務所は、囚人労働を搾取してもうけている。民間刑務所は運営を委託された州政府や連邦政府から、受刑者1人当たり1日34jなどを受けとり、道路建設などの公共事業に無給で囚人を貸し出している。受刑者たちは44人がひしめき合う部屋で寝起きし、労働法に縛られないので1日12時間以上働かされる。病気になっても放置されたままで、感染症で手足を失ったり、刑務官のリンチで衰弱して死に、ボロ切れのように捨てられる受刑者も少なくない。奴隷制時代とまったく同じだ。こうしてこの民間刑務所は年間2億2100万j以上の純利益を上げ、投資家にとっても刑務所REIT(投資信託)は人気商品の一つだという。

 シェーン・バウアーは、こうした囚人労働は奴隷制が直接に生み出したものだと指摘している。南北戦争後、綿花などプランテーションの労働力が不足したときのこと。奴隷制廃止を決めた合衆国憲法修正第13条には抜け穴があり、犯罪者であれば奴隷労働に従事させることができた。そこで南部の諸州はプランテーションをみずから購入し、20世紀初頭からそれを刑務所として運営し始めた。それが1980年代から刑務所民営化になって現在に至っている。つまりアメリカの歴史を通じて人種差別と利益の追求とは常にセットだったと、バウアーはのべている。

 以上の歴史からわかるのは、黒人の人種差別というものは、低賃金労働力を搾取するためと、白人の貧困層と黒人を分断支配するために、黒人をアフリカからさらってきた400年前からアメリカの支配階級がとってきた政策にほかならないということだ。現在の人種差別はアメリカの金融資本そのものが支えている。

 今アメリカで、新型コロナウイルスの死者や感染者がもっとも多いのも黒人である。それは黒人たちが貧困で育ったことから、糖尿病や心臓疾患、肺疾患という持病をかかえ、医者にかかれない状態にあるからだ。もう一つは、彼らの多くが感染の恐れがあっても休むことができないバス運転手や老人ホームの介護、食料品店で働き、底辺でアメリカ社会を支えていることによる。黒人がいなければアメリカ社会は回らないと同時に、強欲な搾取制度がまともな社会にすることの障害になっていることを示している。

https://www.chosyu-journal.jp/review/17520
http://www.asyura2.com/09/reki02/msg/390.html#c209

[番外地7] 僕は最新のDNA解析の結果に基づいて発言しています 中川隆
1. 2020年6月12日 08:08:44 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[3]

朝川遥華
2015年の篠田謙一氏の著書をお勧めします。以前の自説を否定されています。


@朝川遥華
篠田謙一さんは2018年の鳥取の青谷上寺地遺跡の人骨DNA分析以降、意見をそれ以前と180度変えています。
まだ結論は出ていないですが。
http://www.asyura2.com/17/ban7/msg/696.html#c1

[番外地7] 僕は最新のDNA解析の結果に基づいて発言しています 中川隆
2. 2020年6月12日 08:15:40 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[4]
篠田謙一さんは2018年の鳥取の青谷上寺地遺跡の人骨DNA分析以降、意見をそれ以前と180度変えています。
まだ結論は出ていないですが。
現在の篠田謙一さんは日本人は縄文人の子孫ではないという考え方です。
最近は縄文人D1a2*ではなく、済州島に日本人の祖先D1a2aがいたという考え方に傾いている様ですね。

D1a2* :縄文人、アイヌ語を話していた
D1a2a :西日本の縄文時代人の子孫、日本語を話していた、縄文人との関係は不明
http://www.asyura2.com/17/ban7/msg/696.html#c2

[番外地7] 僕は最新のDNA解析の結果に基づいて発言しています 中川隆
3. 中川隆[-12426] koaQ7Jey 2020年6月12日 08:30:02 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[5]
篠田謙一さんは2018年の鳥取の青谷上寺地遺跡の人骨DNA分析以降、意見をそれ以前と180度変えています。

まだ結論は出ていないですが。
現在の篠田謙一さんは日本人は縄文人の子孫ではないという考え方です。
最近は縄文人D1a2*ではなく、済州島に日本人の祖先D1a2aがいたという考え方に傾いている様ですね。

D1a2* :縄文人、アイヌ語を話していた
D1a2a :西日本の縄文時代人の子孫、日本語を話していた、縄文人との関係は不明

現在、確実に縄文人D1a2*の子孫だとわかっているのは同和buraku民とアイヌ人だけです。
http://www.asyura2.com/17/ban7/msg/696.html#c3

[近代史5] 新型コロナウイルス治療法無し、ウイルスは体内に永遠に残る! 肺に到達した感染者全員が5年以内に死ぬ 中川隆
6. 2020年6月12日 09:38:41 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[6]
新型コロナ、重篤な後遺症の報告多数 一生苦しむ恐れも
2020年6月12日 NEWSポストセブン


無症状でも危ないコロナ。回復後に重篤な後遺症も(時事通信フォト)

 世界保健機関(WHO)によるパンデミック宣言から約3か月。すでに全世界で700万人以上が新型コロナウイルスに感染し、300万人近くが回復したとされる。

 感染者のうち、重症化するのは2割とされ、残り8割は軽症もしくは無症状で、症状が出たとしても、インフルエンザより少しきつい程度だという。多くの人が軽症もしくは無症状ですみ、回復者が増えているのは好ましい傾向だが、まったく油断できないことが明らかになりつつある。

 新型コロナから回復した人のなかで、重篤な後遺症が見つかる事例が世界中で次々に報告されているのだ。

 韓国では80代女性が、完治から9日後に心臓と脳の血管疾患で急死。その女性にはうっ血性心不全や高血圧などの持病があったものの、感染症回復後の後遺症が影響したとみられている。

《新型コロナの回復者3割に呼吸疾患などの後遺症が生じる恐れがある》

 5月末、イタリアの呼吸器学会が衝撃的な発表を行った。回復した感染者の調査や、同じコロナウイルス感染症であるSARSなどのデータから、新型コロナが肺に完治し難いほどのダメージを与える可能性があることがわかったという。少なくとも6か月は、肺にリスクのある状態が続く恐れが高いそうだ。

「新型コロナの後遺症として、まず考えられるのは肺への影響です。体内に侵入したウイルスは肺にたまり、肺炎など呼吸器系の疾患を引き起こします。その影響で肺が萎縮して肺組織が硬くなると、充分な酸素を得ることが難しくなる『肺線維症』を発症し、回復したのちも息切れが続く可能性がある。特に長期間、集中治療を受けていた患者ほど後遺症のリスクが高まるとされます」(医療ジャーナリスト)

 しかし、軽症者だからと安心はできない。

 オランダでは集中治療室から出た患者約1200人のほぼ全員の肺に何らかのダメージが残った。その一方で、集中治療を受けなかった入院患者約6000人の約半分には、今後数年間で何らかの症状が出る可能性があると現地メディア「NLタイムス」が報じている。インタビューに応じた現地医師によると「重症化しなかった患者にも後遺症は起こりうるので、回復後に息切れがしたり、運動量の落ちた人は肺の専門医に相談した方がいい」という。

 せっかく回復しても、一生にわたって息苦しさに悩まされるリスクがあるのだ。

◆サイトカインストームで微熱や頭痛が生じる

 さらに進んで、「無症状」の患者にも後遺症があるとの指摘がある。

 前述の通り、新型コロナの8割は軽症か無症状であり、多くの人は、自分が感染したことに気づかず回復する。最近、医療現場では無症状回復者に関連する、ある「異変」がしばしば確認されているという。漢方内科と耳鼻科感染症が専門で、新中野耳鼻咽喉科クリニック院長の陣内賢さんが指摘する。

「現在、クリニックで150人ほどの疑い例を診察しました。微熱や倦怠感、胸の痛み、息苦しさなど多彩な症状が1か月以上続いていると訴える患者さんが目立っています。確証はありませんが、そうした患者は新型コロナに感染したのに無症状のうちに回復しており、その後遺症としてさまざまな症状が出ていると考えられます」

 患者が訴える症状は、人間の免疫システムと関連する「サイトカインストーム(免疫暴走)」として説明できるという。

「サイトカインストームとは、免疫システムが過剰反応する現象のことです。ウイルスに感染すると、体内の免疫システムがウイルスという異物を撃退しようとしますが、その際に免疫システムが正常な細胞に過剰な攻撃をすることで、微熱や頭痛などが生じます。

 ポイントは、無症状の感染においてもサイトカインストームが生じる可能性があることです。患者さんらは“内科で検査したがコロナではなく心因性と言われた”と一様に口にしますが、実際には無症状で回復したものの、サイトカインストームが収まらずに症状が出たと推測できる例が少なからずあります。

 日本でも無症状の患者が市中に蔓延したとされるため、今後、そうした確定診断がつかない原因不明の症状はますます増えるかもしれません」(陣内さん)

 現時点で、無症状の回復者の後遺症と推測される現象がどこまで深刻化するかは判断できないが、決して安心できるものでないことはたしかだ。

※女性セブン2020年6月25日号
https://news.livedoor.com/article/detail/18404198/
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/108.html#c6

[近代史4] 新型コロナウイルス肺炎は「間質性肺炎」で致死率100% ? 中川隆
62. 2020年6月12日 11:16:03 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[7]
当惑する医師たち 新型コロナウイルス治療の最前線で
2020年05月27日
クリス・モリス、BBCリアリティーチェック
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52798281


新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」と戦い続ける集中治療室の医師たちと話すと、同じ表現が繰り返し出てくる。「こんなのは初めてだ」、「こんなのは見たことがない」と。

イギリス各地の病院で集中治療にあたる医師たちは、未知の病気が迫り来ていると承知していた。昨年末に中国で最初に確認された未知の呼吸器系感染症によって、医療機関は逼迫(ひっぱく)し、自分たちは追い詰められるだろうと覚悟していた。

そして、感染者の数が増えるに伴い、イギリス中の医師たちは、中国の同僚たちによる現場の報告を読んでいた。次に、イタリアの同僚たちの報告を。さらには、学術誌やソーシャルメディアで。このウイルスによる感染症がいかに重篤か。

「ある意味で、まるでノルマンディー上陸作戦に備えているみたいな感じでした」。スコットランドのグラスゴー王立病院で集中治療を取り仕切るバーバラ・マイルズ医師はこう言う。「準備期間は3週間しかなくて、何がやってくるのか、知識がさほどない状態で」。

そうして手探りで準備はしていたものの、冬が春に変わるころにイギリスに押し寄せたものは、どれだけ経験豊富だったとしても、集中治療室(ICU)の専門医を驚かせた。

新型ウイルスに感染したほとんどの人は軽症で済む。まったく無症状の人もいる。しかし、重症化して危篤になる大勢の患者にとって、COVID-19は恐ろしく複雑な病気だ。

COVID-19はどのように、人体を攻撃するのか。治療の最前線に立つ医師たちがこれまでに経験から学んできたこと、そしてまだ分かっていないことについて、医師の言葉をまとめてみた――。

肺炎より感染力が高い
「ほとんどの医療者は、肺炎の原因になる呼吸器系のウイルスを想定していたと思う」。ロンドン・パディントンのセントメアリー病院で集中治療にあたるアントニー・ゴードン教授はこう言う。「季節性のインフルエンザに似た、けれどもインフルエンザよりははるかに規模の大きい」

しかし、実際に患者を診始めると、症状は呼吸器にとどまらないことがすぐに分かったという。

ウイルスによるインフルエンザは厄介な病気だ。体がウイルスと戦う過程で、肺に深刻な炎症が起きる。

それでも、特に重篤なCOVID-19の症状はまったく違った。

「現代医学で前例がないほどの、大量の症例数だ」と、中部バーミンガムの複数の病院で集中治療にあたるロン・ダニエルス医師は言う。

「それと同時に実に特徴的な病気で、これまで経験してきた病気の患者とはまったく違う症状が出る」

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新型コロナウイルスに感染した患者の肺。肺炎を起こしている箇所が複数ある
重症化する患者の体内でこのウイルスは、激しい炎症を起こし、たくさんの血栓を作り、複数の臓器を攻撃し、生命を脅かす症状のカスケード(症状の連鎖)を全身で引き起こす。

「医者として、本当に恐ろしいと思うことがある」と、ロンドンの主要病院で集中治療に当たるベヴァリー・ハント医師(血栓専門)は言う。「全身で一気に深刻な変化が大発生する、本当にひどい重症の患者さんが、あまりに大勢いるので」。

「どういう病気なのかもっとちゃんと理解しようと、誰もが大変な思いをしている。いったい何が起きているのか理解するには、何としてももっと研究を進めなくては」

酸素
3月になって新型ウイルスがイギリス国内でますます急速に広がるようになると、多くの患者が息苦しい、酸素が十分に吸えていないと訴えて来院するようになった。けれども、集中治療室に入るような重症患者の多くは、肺だけでなく他の臓器でも問題が起きていた。そしてその血液反応は、まだ十分に説明がつかないほど異例なものだった。

「血中の酸素濃度が極端に低くなっていても、自覚症状としては特に具合は悪くないという患者がいる。どうしてそうなるのか、まだよく分かっていない」と、ロンドン北部のウィティントン病院で集中治療にあたるヒュー・モンゴメリー教授は言う。

医師は「酸素飽和度」というものを計る。つまり、赤血球中のヘモグロビンのうち、酸素と結合して酸素を運んでいるヘモグロビンの割合のことだ。診療中の患者について医師は通常、90%以上の酸素飽和度を維持しようとする。しかし、COVID-19患者の場合、80%かそれよりもっと低いレベルまで下がってしまうことがある。

通常ならばそれだけで緊急事態なのだが、COVID-19の場合、驚くほど血液中の酸素が減ってしまっても患者の状態は見たところそれほど悪くないという症例が、相次いだ。

「炎症が血管に作用していることと関係するかもしれない」と、アントニー・ゴードン医師は言う。「炎症によって酸素が血中に入りにくくなり、それで飽和度が下がるものの、病気の初期では肺そのものはまだそれほど影響を受けていないので」。

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COVID-19についてはこうした謎が多く、研究が早急に必要だ。臨床でのこうした経験から、患者の呼吸を補助する人工呼吸器の使用が、この病気において本当に正しい対応なのか、多くの医師が疑問視するようになっている。

人工呼吸器を使うには患者に麻酔をかけなくてはならないし、気道に挿管する必要もある。これによって実際、多くの重症のCOVID-19患者が救われている。

しかし、患者によっては、肺の治療に集中すべきタイミングではないという、そういうケースもあったのかもしれない。

「この病気は、いくつかの段階を経ていくようだ」と、バーバラ・マイルズ医師は言う。「なので、どの段階で呼吸器を使うのが効果的なのか、今後もっと知見が得られるようになるといいと思う」。

ウイルス性肺炎の重症患者は通常、1週間は人工呼吸器を必要とする。COVID-19の場合、1週間では足りないことが多い。「それよりずっと長いこと人工呼吸器が必要だったケースが相次いでいて、なぜそうなのかよく分かっていない」と、北アイルランド・ベルファストのロイヤル・ヴィクトリア病院で集中治療を担当するダニー・マコーリー教授は言う。

「可能性として、まだ対処できていないウイルスが体を攻撃しているのかもしれない。あるいは、体がウイルスに反応し続けている表れなのかもしれない。ウイルスによって大量に炎症が起きて、これが体内で問題を起こしているのかもしれない」と、マコーリー教授は話す。そしてこういう問題の多くが、血液と関係しているようだ。

炎症と血栓
COVID-19では、ほかに類を見ないほどの炎症が肺に起きる。それゆえにこれはまったく未知の病だと、誰もが同意している。血管の膜に炎症が起きれば、血栓ができやすくなる。そして、COVID-19の重症患者の血液は、とんでもないほど粘度が上がり、どろどろになっている。

「肺の小動脈に小さい血栓があった。それだけでなく、肺の大動脈には大きい血栓があった」と、ヒュー・モンゴメリ医師は言う。「患者の25%以上にかなりの血栓がみられ、これは深刻な問題だ」。

そして、血液の粘度が高ければ高いほど、問題は大きくなる。

「深部静脈血栓症を、かなり発症しやすくなる」と、ベヴァリー・ハント医師は説明する。深部静脈血栓症とは通常、脚にできるものだ。

「そして、肺塞栓症。これは、深部静脈血栓症が体内を移動して、肺に入るはずの血液供給が阻害される状態のこと。肺炎がさらに悪化してしまう」

血栓ができると、心臓や脳などの臓器に血液が正常に行き渡らなくなり、COVID-19の重症患者に心臓発作や脳梗塞が起きる確率が大いに上がってしまう。

血栓ができてしまう危険信号の一部は、医師たちの意表を突くものだった。

血栓の主な原因になる血中のたんぱく質は、フィブリノゲンという。

「正常なフィブリノゲンの量は、血液1リットルあたり2〜4グラムです。妊娠中には少し増えるものの、COVID-19では、1リットルあたり10〜14グラムまで増えている」と、ハント医師は言う。「医者を長年やっているが、こんなのは見たことがない」。

血栓リスクを測る別の指標、「Dダイマー」と呼ばれる血中たんぱく質も、あり得ないような異常値を示す。「健康な患者のDダイマー値は数十から数百だが、COVID-19では、6万、7万、8万といった聞いたことのない数字がしきりに出ている」と、モンゴメリー医師は言う。

免疫系とその他の臓器
これほどの異常値は場合によっては、複数の血栓の発生を意味する。しかし、Dダイマーは重篤な感染の指標(マーカー)になることもある。感染があまりに激しいため、体の免疫系が致命的な過剰反応をしてしまっている状態を、示していることもあるのだ。

サイトカインとは、感染と戦うために体が作り出す小さい分子で、化学的な警報システムだ。炎症を引き起こすもので、それはある程度は体にとって良いことだ。感染と戦い、やがては克服するための仕組みになっている。

しかし、COVID-19は一部の患者に、「サイトカイン・ストーム」と呼ばれる状態を引き起こしてしまう。

「もしも感染と戦う体の反応を感染が圧倒してしまうと、こうした炎症マーカーが大量に放出される。するとさらに激しい炎症が起こり、呼吸器の問題だけでなく、他の臓器も傷つけることになる」と、アントニー・ゴードン医師は話す。

重症患者の研究で特に注目されているのが、T細胞の数だ。T細胞は免疫系にとって重要な血液中の細胞だが、サイトカイン・ストームの最中にはこの量が劇的に減少してしまうようだ。各地の研究者は、T細胞の数を改善することが回復につながることを期待している。

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しかし、こうした様々な要素が合わさることで、COVID-19は症状の変化がきわめて予測しにくい病気になっている。専門家が「多臓器系疾患」と呼ぶものだ。そのせいで、個々の患者にとって最適な治療法が非常に分かりにくく、現状では現場の医師にこうすべしと言える標準治療のマニュアルがない。

「肺だけがやられるわけではないので」と、ヒュー・モンゴメリー医師は言う。「腎臓も、心臓も、肝臓も打撃を受ける。筋肉がひどい炎症を起こして、重症化した症例も見ている」。

集中治療を必要としたCOVID-19患者のうち、2000人以上が腎不全を起こしている。

「その場合は透析装置で支えるものの、機械を通る血液は通常よりはるかに固まりやすくなっている」と、バーバラ・マイルズ医師は言う。「そのため、血液を薄める薬の投与も通常より増やさなくてはならない状態だ」。

さらに、患者の脳の状態についても懸念が高まっている。数週間前から情報を毎日交換してきた管理職の立場にある医師たちは、脳の炎症を警戒するようになっているという。「脳に重篤な炎症が起きる患者が大勢いることが、今では分かっている」とモンゴメリー医師は言う。

「脳の炎症によって、せん妄から混乱、けいれんや『びまん性脳炎』と呼ぶものなど、様々な症状が出ている。集中治療室で普通という状態よりはるかに多い」

「そのため、人工呼吸器を外しても、意識が十分に覚醒(かくせい)しない人たちがいる」

難問山積だ。新型ウイルスがなぜ体のあちこちにこれほどのダメージを与えるのか、その仕組みはどうなっているのか、医師たちは懸命に探ろうとしている。

酸素不足と血管の損傷が、明らかに関係している。しかし、ウイルスが複数の臓器を直接攻撃しているという証拠が積みあがりつつある。しかも、COVID-19と特に多く関係する基礎疾患が、ぜんそくなど呼吸器系の病気ではないことも、特に注目されている。

むしろ、COVID-19に結びつく基礎疾患は、循環器系のものが多い。静脈や動脈に影響する、高血圧や糖尿病や心臓病だ。性別や肥満度、そして高齢かどうかも影響する。

イギリスの集中医療の独立監査機関「集中治療全国監査研究センター(ICNARC)」によると、イングランド、ウェールズ、北アイルランドで集中治療室に入った重症患者の7割以上が男性で、7割以上が太り気味や肥満だったという。

さらに、集中治療を受けながら死亡した人の3分の2以上が、60歳超だった。

軽症の人、重症の人 なぜ違う
しかし、その違いだけでは、なぜ同じようにこの新型ウイルスに感染した多くが軽症や無症状なのに対して、一部の人があっという間に危険なほど重症化するのか、十分に説明がつかない。

「そこはまだ完全には理解できていない。当惑してしまうほどだ」と、ロン・ダニエルズ医師は認める。バーミンガムのダニエルズ医師によると、重症化して集中治療を受ける患者の間でも、その状態は様々だという。

「症状は呼吸不全だけで、人工呼吸器で少しだけ補助すれば何とかなる70代の患者がいるかと思えば、20代の人がたちまち多臓器不全になることもある」

確かな証拠がない状態で、医師たちは観察した患者の状態から諸説を検討しているし、無数の研究も行われている。ICU医の多くは、一部の患者の重症化には遺伝子が関係する可能性が高いと考えているものの、まだ断定はできない。

「アフリカ系や(インド系など)南アジア系の人たちに極端なほど被害が集中しているのも、これが一因なのかもしれない」と、ダニエルズ医師は言う。「個々人の反応の違いにも関係しているかもしれない」

たとえば、高血圧や糖尿病になりやすい原因の遺伝的な差異が、新型ウイルスで重症化しやすいかどうかにも影響する可能性はある。

Image copyrightGETTY IMAGES
特に有力視されている説のひとつは、「ACE-2」というたんぱく質に注目している。「アンギオテンシン転換酵素(ACE)2」は、いろいろな種類の細胞の表面にあり、血圧の制御を助ける。新型コロナウイルスはこのACE-2に結合し、健康な細胞に侵入する。遺伝的に体内のACE-2受容体が特に多い人は、その分だけCOVID-19が体内に侵入しやすく、重症化しやすいという可能性もある。

この説を裏づけるのが、一部の重症患者に起きる腸の問題だ。下部消化器官にはACE-2受容体がたくさんある。そこに症状が出るということは、新型ウイルスが下部消化器官にも作用することを意味する。腎不全の多発にも、ACE-2が関係しているようだ。

COVID-19についてすでに分かったこともあるが、現時点では分かっていないこともたくさんある。

バーバラ・マイルズ医師は、これほどの勢いで一気に学習しなくてはならなかったのは、医者になって初めての経験だと話す。

「COVID-19による血栓症の治療法と予防法について、もっと知りたい。防ぐためには何が最適な方法で、もし血栓ができてしまったら何が最適な治療法なのか」

複数の薬を適切なバランスで使うことが不可欠だ。ひとつの症状を治療しようとして別の症状を起こしてしまうこともある。

「どれくらいの治療をどれくらいの期間、続けるのが適切なのか、まだ正確には分かっていない」と、マイルズ医師は言う。「この病気について経験を積んでいけば、それはやがて分かるようになると期待している」。

臨床試験
イギリスでは集中治療を必要とする患者の数は減りつつある。その中で、専門医たちはいくつかの疑問点について、答えを探し求めている。

COVID-19患者の人工呼吸器使用はどのタイミングで開始するのがいいのか
最適な抗ウイルス薬はどれで、抗炎症剤や免疫抑制剤はどれくらいの量が適切なのか
回復期患者の血漿(けっしょう)、つまり回復した患者の血中にある抗体を使う治療法は、有効なのか
「これが効く、あれが効くという体験談はいろいろ目にする」と、ダニー・マコーリー医師は言う。「この新しい病気について本当に正しい治療法を知るには、今後数カ月の間に大規模な臨床試験を実施するしかない」。

そして、すでに多数の大規模な臨床試験が行われている。医師たちが第2波に備える中、イギリスだけでも優先指定された全国的な調査が41件、公的資金を受けて進行中だ。

臨床試験の認可がすぐに下りないという不満も一部にあるものの、イギリスの医学研究は世界トップクラスだ。そして、医師の知見が増えれば増えるほど、COVID-19治療も改善されていく。

COVID-19のためICUで亡くなる人に最も多い死因は、呼吸器不全だ。しかし、死因はそれだけではない。つまり、これまでのCOVID-19治療法は、すべての患者にとって最適なものではないということだ。

「まるで中世」のような3カ月だったと、ハント医師は言う。国内最高峰のICU専門医たちが、まったく未経験の病気を前にして、知識や経験をもとに、当て推量するしかなかったのだ。先行実験や既存のデータをもとにした知識ではなく、観察できる症状から治療法を決めるしかなかった。

今後のCOVID-19治療では、ICUに入る患者の回復率を改善しなくてはならない。それが医療にとって特に大きな課題だ。

「実にたくさんのことを学んだし、本当に見事なチームワークだったが、大変だった」と、ゴードン医師は言う。ICUの勤続年数が20年を超えるゴードン医師でさえ、「自分が今日やったことは正しかったのか、実はよく分からないと思いながら帰宅することもあった」という。

「ほかの病気は何百年かけて学んできたことを、この病気についてはたった数カ月で解明しなくてはならない。それは本当に大変な作業だ」

(取材協力:オリヴァー・バーンズ)

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52798281
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/741.html#c62

[近代史4] 新型コロナウイルス感染症は再感染しなくても再活性化する 中川隆
15. 中川隆[-12425] koaQ7Jey 2020年6月12日 11:16:43 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[8]
当惑する医師たち 新型コロナウイルス治療の最前線で
2020年05月27日
クリス・モリス、BBCリアリティーチェック
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52798281


新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」と戦い続ける集中治療室の医師たちと話すと、同じ表現が繰り返し出てくる。「こんなのは初めてだ」、「こんなのは見たことがない」と。

イギリス各地の病院で集中治療にあたる医師たちは、未知の病気が迫り来ていると承知していた。昨年末に中国で最初に確認された未知の呼吸器系感染症によって、医療機関は逼迫(ひっぱく)し、自分たちは追い詰められるだろうと覚悟していた。

そして、感染者の数が増えるに伴い、イギリス中の医師たちは、中国の同僚たちによる現場の報告を読んでいた。次に、イタリアの同僚たちの報告を。さらには、学術誌やソーシャルメディアで。このウイルスによる感染症がいかに重篤か。

「ある意味で、まるでノルマンディー上陸作戦に備えているみたいな感じでした」。スコットランドのグラスゴー王立病院で集中治療を取り仕切るバーバラ・マイルズ医師はこう言う。「準備期間は3週間しかなくて、何がやってくるのか、知識がさほどない状態で」。

そうして手探りで準備はしていたものの、冬が春に変わるころにイギリスに押し寄せたものは、どれだけ経験豊富だったとしても、集中治療室(ICU)の専門医を驚かせた。

新型ウイルスに感染したほとんどの人は軽症で済む。まったく無症状の人もいる。しかし、重症化して危篤になる大勢の患者にとって、COVID-19は恐ろしく複雑な病気だ。

COVID-19はどのように、人体を攻撃するのか。治療の最前線に立つ医師たちがこれまでに経験から学んできたこと、そしてまだ分かっていないことについて、医師の言葉をまとめてみた――。

肺炎より感染力が高い
「ほとんどの医療者は、肺炎の原因になる呼吸器系のウイルスを想定していたと思う」。ロンドン・パディントンのセントメアリー病院で集中治療にあたるアントニー・ゴードン教授はこう言う。「季節性のインフルエンザに似た、けれどもインフルエンザよりははるかに規模の大きい」

しかし、実際に患者を診始めると、症状は呼吸器にとどまらないことがすぐに分かったという。

ウイルスによるインフルエンザは厄介な病気だ。体がウイルスと戦う過程で、肺に深刻な炎症が起きる。

それでも、特に重篤なCOVID-19の症状はまったく違った。

「現代医学で前例がないほどの、大量の症例数だ」と、中部バーミンガムの複数の病院で集中治療にあたるロン・ダニエルス医師は言う。

「それと同時に実に特徴的な病気で、これまで経験してきた病気の患者とはまったく違う症状が出る」

Image copyrightSCIENCE PHOTO LIBRARY
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新型コロナウイルスに感染した患者の肺。肺炎を起こしている箇所が複数ある
重症化する患者の体内でこのウイルスは、激しい炎症を起こし、たくさんの血栓を作り、複数の臓器を攻撃し、生命を脅かす症状のカスケード(症状の連鎖)を全身で引き起こす。

「医者として、本当に恐ろしいと思うことがある」と、ロンドンの主要病院で集中治療に当たるベヴァリー・ハント医師(血栓専門)は言う。「全身で一気に深刻な変化が大発生する、本当にひどい重症の患者さんが、あまりに大勢いるので」。

「どういう病気なのかもっとちゃんと理解しようと、誰もが大変な思いをしている。いったい何が起きているのか理解するには、何としてももっと研究を進めなくては」

酸素
3月になって新型ウイルスがイギリス国内でますます急速に広がるようになると、多くの患者が息苦しい、酸素が十分に吸えていないと訴えて来院するようになった。けれども、集中治療室に入るような重症患者の多くは、肺だけでなく他の臓器でも問題が起きていた。そしてその血液反応は、まだ十分に説明がつかないほど異例なものだった。

「血中の酸素濃度が極端に低くなっていても、自覚症状としては特に具合は悪くないという患者がいる。どうしてそうなるのか、まだよく分かっていない」と、ロンドン北部のウィティントン病院で集中治療にあたるヒュー・モンゴメリー教授は言う。

医師は「酸素飽和度」というものを計る。つまり、赤血球中のヘモグロビンのうち、酸素と結合して酸素を運んでいるヘモグロビンの割合のことだ。診療中の患者について医師は通常、90%以上の酸素飽和度を維持しようとする。しかし、COVID-19患者の場合、80%かそれよりもっと低いレベルまで下がってしまうことがある。

通常ならばそれだけで緊急事態なのだが、COVID-19の場合、驚くほど血液中の酸素が減ってしまっても患者の状態は見たところそれほど悪くないという症例が、相次いだ。

「炎症が血管に作用していることと関係するかもしれない」と、アントニー・ゴードン医師は言う。「炎症によって酸素が血中に入りにくくなり、それで飽和度が下がるものの、病気の初期では肺そのものはまだそれほど影響を受けていないので」。

Image copyrightGETTY IMAGES
COVID-19についてはこうした謎が多く、研究が早急に必要だ。臨床でのこうした経験から、患者の呼吸を補助する人工呼吸器の使用が、この病気において本当に正しい対応なのか、多くの医師が疑問視するようになっている。

人工呼吸器を使うには患者に麻酔をかけなくてはならないし、気道に挿管する必要もある。これによって実際、多くの重症のCOVID-19患者が救われている。

しかし、患者によっては、肺の治療に集中すべきタイミングではないという、そういうケースもあったのかもしれない。

「この病気は、いくつかの段階を経ていくようだ」と、バーバラ・マイルズ医師は言う。「なので、どの段階で呼吸器を使うのが効果的なのか、今後もっと知見が得られるようになるといいと思う」。

ウイルス性肺炎の重症患者は通常、1週間は人工呼吸器を必要とする。COVID-19の場合、1週間では足りないことが多い。「それよりずっと長いこと人工呼吸器が必要だったケースが相次いでいて、なぜそうなのかよく分かっていない」と、北アイルランド・ベルファストのロイヤル・ヴィクトリア病院で集中治療を担当するダニー・マコーリー教授は言う。

「可能性として、まだ対処できていないウイルスが体を攻撃しているのかもしれない。あるいは、体がウイルスに反応し続けている表れなのかもしれない。ウイルスによって大量に炎症が起きて、これが体内で問題を起こしているのかもしれない」と、マコーリー教授は話す。そしてこういう問題の多くが、血液と関係しているようだ。

炎症と血栓
COVID-19では、ほかに類を見ないほどの炎症が肺に起きる。それゆえにこれはまったく未知の病だと、誰もが同意している。血管の膜に炎症が起きれば、血栓ができやすくなる。そして、COVID-19の重症患者の血液は、とんでもないほど粘度が上がり、どろどろになっている。

「肺の小動脈に小さい血栓があった。それだけでなく、肺の大動脈には大きい血栓があった」と、ヒュー・モンゴメリ医師は言う。「患者の25%以上にかなりの血栓がみられ、これは深刻な問題だ」。

そして、血液の粘度が高ければ高いほど、問題は大きくなる。

「深部静脈血栓症を、かなり発症しやすくなる」と、ベヴァリー・ハント医師は説明する。深部静脈血栓症とは通常、脚にできるものだ。

「そして、肺塞栓症。これは、深部静脈血栓症が体内を移動して、肺に入るはずの血液供給が阻害される状態のこと。肺炎がさらに悪化してしまう」

血栓ができると、心臓や脳などの臓器に血液が正常に行き渡らなくなり、COVID-19の重症患者に心臓発作や脳梗塞が起きる確率が大いに上がってしまう。

血栓ができてしまう危険信号の一部は、医師たちの意表を突くものだった。

血栓の主な原因になる血中のたんぱく質は、フィブリノゲンという。

「正常なフィブリノゲンの量は、血液1リットルあたり2〜4グラムです。妊娠中には少し増えるものの、COVID-19では、1リットルあたり10〜14グラムまで増えている」と、ハント医師は言う。「医者を長年やっているが、こんなのは見たことがない」。

血栓リスクを測る別の指標、「Dダイマー」と呼ばれる血中たんぱく質も、あり得ないような異常値を示す。「健康な患者のDダイマー値は数十から数百だが、COVID-19では、6万、7万、8万といった聞いたことのない数字がしきりに出ている」と、モンゴメリー医師は言う。

免疫系とその他の臓器
これほどの異常値は場合によっては、複数の血栓の発生を意味する。しかし、Dダイマーは重篤な感染の指標(マーカー)になることもある。感染があまりに激しいため、体の免疫系が致命的な過剰反応をしてしまっている状態を、示していることもあるのだ。

サイトカインとは、感染と戦うために体が作り出す小さい分子で、化学的な警報システムだ。炎症を引き起こすもので、それはある程度は体にとって良いことだ。感染と戦い、やがては克服するための仕組みになっている。

しかし、COVID-19は一部の患者に、「サイトカイン・ストーム」と呼ばれる状態を引き起こしてしまう。

「もしも感染と戦う体の反応を感染が圧倒してしまうと、こうした炎症マーカーが大量に放出される。するとさらに激しい炎症が起こり、呼吸器の問題だけでなく、他の臓器も傷つけることになる」と、アントニー・ゴードン医師は話す。

重症患者の研究で特に注目されているのが、T細胞の数だ。T細胞は免疫系にとって重要な血液中の細胞だが、サイトカイン・ストームの最中にはこの量が劇的に減少してしまうようだ。各地の研究者は、T細胞の数を改善することが回復につながることを期待している。

Image copyrightGETTY IMAGES
しかし、こうした様々な要素が合わさることで、COVID-19は症状の変化がきわめて予測しにくい病気になっている。専門家が「多臓器系疾患」と呼ぶものだ。そのせいで、個々の患者にとって最適な治療法が非常に分かりにくく、現状では現場の医師にこうすべしと言える標準治療のマニュアルがない。

「肺だけがやられるわけではないので」と、ヒュー・モンゴメリー医師は言う。「腎臓も、心臓も、肝臓も打撃を受ける。筋肉がひどい炎症を起こして、重症化した症例も見ている」。

集中治療を必要としたCOVID-19患者のうち、2000人以上が腎不全を起こしている。

「その場合は透析装置で支えるものの、機械を通る血液は通常よりはるかに固まりやすくなっている」と、バーバラ・マイルズ医師は言う。「そのため、血液を薄める薬の投与も通常より増やさなくてはならない状態だ」。

さらに、患者の脳の状態についても懸念が高まっている。数週間前から情報を毎日交換してきた管理職の立場にある医師たちは、脳の炎症を警戒するようになっているという。「脳に重篤な炎症が起きる患者が大勢いることが、今では分かっている」とモンゴメリー医師は言う。

「脳の炎症によって、せん妄から混乱、けいれんや『びまん性脳炎』と呼ぶものなど、様々な症状が出ている。集中治療室で普通という状態よりはるかに多い」

「そのため、人工呼吸器を外しても、意識が十分に覚醒(かくせい)しない人たちがいる」

難問山積だ。新型ウイルスがなぜ体のあちこちにこれほどのダメージを与えるのか、その仕組みはどうなっているのか、医師たちは懸命に探ろうとしている。

酸素不足と血管の損傷が、明らかに関係している。しかし、ウイルスが複数の臓器を直接攻撃しているという証拠が積みあがりつつある。しかも、COVID-19と特に多く関係する基礎疾患が、ぜんそくなど呼吸器系の病気ではないことも、特に注目されている。

むしろ、COVID-19に結びつく基礎疾患は、循環器系のものが多い。静脈や動脈に影響する、高血圧や糖尿病や心臓病だ。性別や肥満度、そして高齢かどうかも影響する。

イギリスの集中医療の独立監査機関「集中治療全国監査研究センター(ICNARC)」によると、イングランド、ウェールズ、北アイルランドで集中治療室に入った重症患者の7割以上が男性で、7割以上が太り気味や肥満だったという。

さらに、集中治療を受けながら死亡した人の3分の2以上が、60歳超だった。

軽症の人、重症の人 なぜ違う
しかし、その違いだけでは、なぜ同じようにこの新型ウイルスに感染した多くが軽症や無症状なのに対して、一部の人があっという間に危険なほど重症化するのか、十分に説明がつかない。

「そこはまだ完全には理解できていない。当惑してしまうほどだ」と、ロン・ダニエルズ医師は認める。バーミンガムのダニエルズ医師によると、重症化して集中治療を受ける患者の間でも、その状態は様々だという。

「症状は呼吸不全だけで、人工呼吸器で少しだけ補助すれば何とかなる70代の患者がいるかと思えば、20代の人がたちまち多臓器不全になることもある」

確かな証拠がない状態で、医師たちは観察した患者の状態から諸説を検討しているし、無数の研究も行われている。ICU医の多くは、一部の患者の重症化には遺伝子が関係する可能性が高いと考えているものの、まだ断定はできない。

「アフリカ系や(インド系など)南アジア系の人たちに極端なほど被害が集中しているのも、これが一因なのかもしれない」と、ダニエルズ医師は言う。「個々人の反応の違いにも関係しているかもしれない」

たとえば、高血圧や糖尿病になりやすい原因の遺伝的な差異が、新型ウイルスで重症化しやすいかどうかにも影響する可能性はある。

Image copyrightGETTY IMAGES
特に有力視されている説のひとつは、「ACE-2」というたんぱく質に注目している。「アンギオテンシン転換酵素(ACE)2」は、いろいろな種類の細胞の表面にあり、血圧の制御を助ける。新型コロナウイルスはこのACE-2に結合し、健康な細胞に侵入する。遺伝的に体内のACE-2受容体が特に多い人は、その分だけCOVID-19が体内に侵入しやすく、重症化しやすいという可能性もある。

この説を裏づけるのが、一部の重症患者に起きる腸の問題だ。下部消化器官にはACE-2受容体がたくさんある。そこに症状が出るということは、新型ウイルスが下部消化器官にも作用することを意味する。腎不全の多発にも、ACE-2が関係しているようだ。

COVID-19についてすでに分かったこともあるが、現時点では分かっていないこともたくさんある。

バーバラ・マイルズ医師は、これほどの勢いで一気に学習しなくてはならなかったのは、医者になって初めての経験だと話す。

「COVID-19による血栓症の治療法と予防法について、もっと知りたい。防ぐためには何が最適な方法で、もし血栓ができてしまったら何が最適な治療法なのか」

複数の薬を適切なバランスで使うことが不可欠だ。ひとつの症状を治療しようとして別の症状を起こしてしまうこともある。

「どれくらいの治療をどれくらいの期間、続けるのが適切なのか、まだ正確には分かっていない」と、マイルズ医師は言う。「この病気について経験を積んでいけば、それはやがて分かるようになると期待している」。

臨床試験
イギリスでは集中治療を必要とする患者の数は減りつつある。その中で、専門医たちはいくつかの疑問点について、答えを探し求めている。

COVID-19患者の人工呼吸器使用はどのタイミングで開始するのがいいのか
最適な抗ウイルス薬はどれで、抗炎症剤や免疫抑制剤はどれくらいの量が適切なのか
回復期患者の血漿(けっしょう)、つまり回復した患者の血中にある抗体を使う治療法は、有効なのか
「これが効く、あれが効くという体験談はいろいろ目にする」と、ダニー・マコーリー医師は言う。「この新しい病気について本当に正しい治療法を知るには、今後数カ月の間に大規模な臨床試験を実施するしかない」。

そして、すでに多数の大規模な臨床試験が行われている。医師たちが第2波に備える中、イギリスだけでも優先指定された全国的な調査が41件、公的資金を受けて進行中だ。

臨床試験の認可がすぐに下りないという不満も一部にあるものの、イギリスの医学研究は世界トップクラスだ。そして、医師の知見が増えれば増えるほど、COVID-19治療も改善されていく。

COVID-19のためICUで亡くなる人に最も多い死因は、呼吸器不全だ。しかし、死因はそれだけではない。つまり、これまでのCOVID-19治療法は、すべての患者にとって最適なものではないということだ。

「まるで中世」のような3カ月だったと、ハント医師は言う。国内最高峰のICU専門医たちが、まったく未経験の病気を前にして、知識や経験をもとに、当て推量するしかなかったのだ。先行実験や既存のデータをもとにした知識ではなく、観察できる症状から治療法を決めるしかなかった。

今後のCOVID-19治療では、ICUに入る患者の回復率を改善しなくてはならない。それが医療にとって特に大きな課題だ。

「実にたくさんのことを学んだし、本当に見事なチームワークだったが、大変だった」と、ゴードン医師は言う。ICUの勤続年数が20年を超えるゴードン医師でさえ、「自分が今日やったことは正しかったのか、実はよく分からないと思いながら帰宅することもあった」という。

「ほかの病気は何百年かけて学んできたことを、この病気についてはたった数カ月で解明しなくてはならない。それは本当に大変な作業だ」

(取材協力:オリヴァー・バーンズ)

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52798281
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/770.html#c15

[近代史5] 新型コロナウイルス治療法無し、ウイルスは体内に永遠に残る! 肺に到達した感染者全員が5年以内に死ぬ 中川隆
7. 中川隆[-12424] koaQ7Jey 2020年6月12日 11:17:22 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[9]
当惑する医師たち 新型コロナウイルス治療の最前線で
2020年05月27日
クリス・モリス、BBCリアリティーチェック
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52798281


新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」と戦い続ける集中治療室の医師たちと話すと、同じ表現が繰り返し出てくる。「こんなのは初めてだ」、「こんなのは見たことがない」と。

イギリス各地の病院で集中治療にあたる医師たちは、未知の病気が迫り来ていると承知していた。昨年末に中国で最初に確認された未知の呼吸器系感染症によって、医療機関は逼迫(ひっぱく)し、自分たちは追い詰められるだろうと覚悟していた。

そして、感染者の数が増えるに伴い、イギリス中の医師たちは、中国の同僚たちによる現場の報告を読んでいた。次に、イタリアの同僚たちの報告を。さらには、学術誌やソーシャルメディアで。このウイルスによる感染症がいかに重篤か。

「ある意味で、まるでノルマンディー上陸作戦に備えているみたいな感じでした」。スコットランドのグラスゴー王立病院で集中治療を取り仕切るバーバラ・マイルズ医師はこう言う。「準備期間は3週間しかなくて、何がやってくるのか、知識がさほどない状態で」。

そうして手探りで準備はしていたものの、冬が春に変わるころにイギリスに押し寄せたものは、どれだけ経験豊富だったとしても、集中治療室(ICU)の専門医を驚かせた。

新型ウイルスに感染したほとんどの人は軽症で済む。まったく無症状の人もいる。しかし、重症化して危篤になる大勢の患者にとって、COVID-19は恐ろしく複雑な病気だ。

COVID-19はどのように、人体を攻撃するのか。治療の最前線に立つ医師たちがこれまでに経験から学んできたこと、そしてまだ分かっていないことについて、医師の言葉をまとめてみた――。

肺炎より感染力が高い
「ほとんどの医療者は、肺炎の原因になる呼吸器系のウイルスを想定していたと思う」。ロンドン・パディントンのセントメアリー病院で集中治療にあたるアントニー・ゴードン教授はこう言う。「季節性のインフルエンザに似た、けれどもインフルエンザよりははるかに規模の大きい」

しかし、実際に患者を診始めると、症状は呼吸器にとどまらないことがすぐに分かったという。

ウイルスによるインフルエンザは厄介な病気だ。体がウイルスと戦う過程で、肺に深刻な炎症が起きる。

それでも、特に重篤なCOVID-19の症状はまったく違った。

「現代医学で前例がないほどの、大量の症例数だ」と、中部バーミンガムの複数の病院で集中治療にあたるロン・ダニエルス医師は言う。

「それと同時に実に特徴的な病気で、これまで経験してきた病気の患者とはまったく違う症状が出る」

Image copyrightSCIENCE PHOTO LIBRARY
Image caption
新型コロナウイルスに感染した患者の肺。肺炎を起こしている箇所が複数ある
重症化する患者の体内でこのウイルスは、激しい炎症を起こし、たくさんの血栓を作り、複数の臓器を攻撃し、生命を脅かす症状のカスケード(症状の連鎖)を全身で引き起こす。

「医者として、本当に恐ろしいと思うことがある」と、ロンドンの主要病院で集中治療に当たるベヴァリー・ハント医師(血栓専門)は言う。「全身で一気に深刻な変化が大発生する、本当にひどい重症の患者さんが、あまりに大勢いるので」。

「どういう病気なのかもっとちゃんと理解しようと、誰もが大変な思いをしている。いったい何が起きているのか理解するには、何としてももっと研究を進めなくては」

酸素
3月になって新型ウイルスがイギリス国内でますます急速に広がるようになると、多くの患者が息苦しい、酸素が十分に吸えていないと訴えて来院するようになった。けれども、集中治療室に入るような重症患者の多くは、肺だけでなく他の臓器でも問題が起きていた。そしてその血液反応は、まだ十分に説明がつかないほど異例なものだった。

「血中の酸素濃度が極端に低くなっていても、自覚症状としては特に具合は悪くないという患者がいる。どうしてそうなるのか、まだよく分かっていない」と、ロンドン北部のウィティントン病院で集中治療にあたるヒュー・モンゴメリー教授は言う。

医師は「酸素飽和度」というものを計る。つまり、赤血球中のヘモグロビンのうち、酸素と結合して酸素を運んでいるヘモグロビンの割合のことだ。診療中の患者について医師は通常、90%以上の酸素飽和度を維持しようとする。しかし、COVID-19患者の場合、80%かそれよりもっと低いレベルまで下がってしまうことがある。

通常ならばそれだけで緊急事態なのだが、COVID-19の場合、驚くほど血液中の酸素が減ってしまっても患者の状態は見たところそれほど悪くないという症例が、相次いだ。

「炎症が血管に作用していることと関係するかもしれない」と、アントニー・ゴードン医師は言う。「炎症によって酸素が血中に入りにくくなり、それで飽和度が下がるものの、病気の初期では肺そのものはまだそれほど影響を受けていないので」。

Image copyrightGETTY IMAGES
COVID-19についてはこうした謎が多く、研究が早急に必要だ。臨床でのこうした経験から、患者の呼吸を補助する人工呼吸器の使用が、この病気において本当に正しい対応なのか、多くの医師が疑問視するようになっている。

人工呼吸器を使うには患者に麻酔をかけなくてはならないし、気道に挿管する必要もある。これによって実際、多くの重症のCOVID-19患者が救われている。

しかし、患者によっては、肺の治療に集中すべきタイミングではないという、そういうケースもあったのかもしれない。

「この病気は、いくつかの段階を経ていくようだ」と、バーバラ・マイルズ医師は言う。「なので、どの段階で呼吸器を使うのが効果的なのか、今後もっと知見が得られるようになるといいと思う」。

ウイルス性肺炎の重症患者は通常、1週間は人工呼吸器を必要とする。COVID-19の場合、1週間では足りないことが多い。「それよりずっと長いこと人工呼吸器が必要だったケースが相次いでいて、なぜそうなのかよく分かっていない」と、北アイルランド・ベルファストのロイヤル・ヴィクトリア病院で集中治療を担当するダニー・マコーリー教授は言う。

「可能性として、まだ対処できていないウイルスが体を攻撃しているのかもしれない。あるいは、体がウイルスに反応し続けている表れなのかもしれない。ウイルスによって大量に炎症が起きて、これが体内で問題を起こしているのかもしれない」と、マコーリー教授は話す。そしてこういう問題の多くが、血液と関係しているようだ。

炎症と血栓
COVID-19では、ほかに類を見ないほどの炎症が肺に起きる。それゆえにこれはまったく未知の病だと、誰もが同意している。血管の膜に炎症が起きれば、血栓ができやすくなる。そして、COVID-19の重症患者の血液は、とんでもないほど粘度が上がり、どろどろになっている。

「肺の小動脈に小さい血栓があった。それだけでなく、肺の大動脈には大きい血栓があった」と、ヒュー・モンゴメリ医師は言う。「患者の25%以上にかなりの血栓がみられ、これは深刻な問題だ」。

そして、血液の粘度が高ければ高いほど、問題は大きくなる。

「深部静脈血栓症を、かなり発症しやすくなる」と、ベヴァリー・ハント医師は説明する。深部静脈血栓症とは通常、脚にできるものだ。

「そして、肺塞栓症。これは、深部静脈血栓症が体内を移動して、肺に入るはずの血液供給が阻害される状態のこと。肺炎がさらに悪化してしまう」

血栓ができると、心臓や脳などの臓器に血液が正常に行き渡らなくなり、COVID-19の重症患者に心臓発作や脳梗塞が起きる確率が大いに上がってしまう。

血栓ができてしまう危険信号の一部は、医師たちの意表を突くものだった。

血栓の主な原因になる血中のたんぱく質は、フィブリノゲンという。

「正常なフィブリノゲンの量は、血液1リットルあたり2〜4グラムです。妊娠中には少し増えるものの、COVID-19では、1リットルあたり10〜14グラムまで増えている」と、ハント医師は言う。「医者を長年やっているが、こんなのは見たことがない」。

血栓リスクを測る別の指標、「Dダイマー」と呼ばれる血中たんぱく質も、あり得ないような異常値を示す。「健康な患者のDダイマー値は数十から数百だが、COVID-19では、6万、7万、8万といった聞いたことのない数字がしきりに出ている」と、モンゴメリー医師は言う。

免疫系とその他の臓器
これほどの異常値は場合によっては、複数の血栓の発生を意味する。しかし、Dダイマーは重篤な感染の指標(マーカー)になることもある。感染があまりに激しいため、体の免疫系が致命的な過剰反応をしてしまっている状態を、示していることもあるのだ。

サイトカインとは、感染と戦うために体が作り出す小さい分子で、化学的な警報システムだ。炎症を引き起こすもので、それはある程度は体にとって良いことだ。感染と戦い、やがては克服するための仕組みになっている。

しかし、COVID-19は一部の患者に、「サイトカイン・ストーム」と呼ばれる状態を引き起こしてしまう。

「もしも感染と戦う体の反応を感染が圧倒してしまうと、こうした炎症マーカーが大量に放出される。するとさらに激しい炎症が起こり、呼吸器の問題だけでなく、他の臓器も傷つけることになる」と、アントニー・ゴードン医師は話す。

重症患者の研究で特に注目されているのが、T細胞の数だ。T細胞は免疫系にとって重要な血液中の細胞だが、サイトカイン・ストームの最中にはこの量が劇的に減少してしまうようだ。各地の研究者は、T細胞の数を改善することが回復につながることを期待している。

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しかし、こうした様々な要素が合わさることで、COVID-19は症状の変化がきわめて予測しにくい病気になっている。専門家が「多臓器系疾患」と呼ぶものだ。そのせいで、個々の患者にとって最適な治療法が非常に分かりにくく、現状では現場の医師にこうすべしと言える標準治療のマニュアルがない。

「肺だけがやられるわけではないので」と、ヒュー・モンゴメリー医師は言う。「腎臓も、心臓も、肝臓も打撃を受ける。筋肉がひどい炎症を起こして、重症化した症例も見ている」。

集中治療を必要としたCOVID-19患者のうち、2000人以上が腎不全を起こしている。

「その場合は透析装置で支えるものの、機械を通る血液は通常よりはるかに固まりやすくなっている」と、バーバラ・マイルズ医師は言う。「そのため、血液を薄める薬の投与も通常より増やさなくてはならない状態だ」。

さらに、患者の脳の状態についても懸念が高まっている。数週間前から情報を毎日交換してきた管理職の立場にある医師たちは、脳の炎症を警戒するようになっているという。「脳に重篤な炎症が起きる患者が大勢いることが、今では分かっている」とモンゴメリー医師は言う。

「脳の炎症によって、せん妄から混乱、けいれんや『びまん性脳炎』と呼ぶものなど、様々な症状が出ている。集中治療室で普通という状態よりはるかに多い」

「そのため、人工呼吸器を外しても、意識が十分に覚醒(かくせい)しない人たちがいる」

難問山積だ。新型ウイルスがなぜ体のあちこちにこれほどのダメージを与えるのか、その仕組みはどうなっているのか、医師たちは懸命に探ろうとしている。

酸素不足と血管の損傷が、明らかに関係している。しかし、ウイルスが複数の臓器を直接攻撃しているという証拠が積みあがりつつある。しかも、COVID-19と特に多く関係する基礎疾患が、ぜんそくなど呼吸器系の病気ではないことも、特に注目されている。

むしろ、COVID-19に結びつく基礎疾患は、循環器系のものが多い。静脈や動脈に影響する、高血圧や糖尿病や心臓病だ。性別や肥満度、そして高齢かどうかも影響する。

イギリスの集中医療の独立監査機関「集中治療全国監査研究センター(ICNARC)」によると、イングランド、ウェールズ、北アイルランドで集中治療室に入った重症患者の7割以上が男性で、7割以上が太り気味や肥満だったという。

さらに、集中治療を受けながら死亡した人の3分の2以上が、60歳超だった。

軽症の人、重症の人 なぜ違う
しかし、その違いだけでは、なぜ同じようにこの新型ウイルスに感染した多くが軽症や無症状なのに対して、一部の人があっという間に危険なほど重症化するのか、十分に説明がつかない。

「そこはまだ完全には理解できていない。当惑してしまうほどだ」と、ロン・ダニエルズ医師は認める。バーミンガムのダニエルズ医師によると、重症化して集中治療を受ける患者の間でも、その状態は様々だという。

「症状は呼吸不全だけで、人工呼吸器で少しだけ補助すれば何とかなる70代の患者がいるかと思えば、20代の人がたちまち多臓器不全になることもある」

確かな証拠がない状態で、医師たちは観察した患者の状態から諸説を検討しているし、無数の研究も行われている。ICU医の多くは、一部の患者の重症化には遺伝子が関係する可能性が高いと考えているものの、まだ断定はできない。

「アフリカ系や(インド系など)南アジア系の人たちに極端なほど被害が集中しているのも、これが一因なのかもしれない」と、ダニエルズ医師は言う。「個々人の反応の違いにも関係しているかもしれない」

たとえば、高血圧や糖尿病になりやすい原因の遺伝的な差異が、新型ウイルスで重症化しやすいかどうかにも影響する可能性はある。

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特に有力視されている説のひとつは、「ACE-2」というたんぱく質に注目している。「アンギオテンシン転換酵素(ACE)2」は、いろいろな種類の細胞の表面にあり、血圧の制御を助ける。新型コロナウイルスはこのACE-2に結合し、健康な細胞に侵入する。遺伝的に体内のACE-2受容体が特に多い人は、その分だけCOVID-19が体内に侵入しやすく、重症化しやすいという可能性もある。

この説を裏づけるのが、一部の重症患者に起きる腸の問題だ。下部消化器官にはACE-2受容体がたくさんある。そこに症状が出るということは、新型ウイルスが下部消化器官にも作用することを意味する。腎不全の多発にも、ACE-2が関係しているようだ。

COVID-19についてすでに分かったこともあるが、現時点では分かっていないこともたくさんある。

バーバラ・マイルズ医師は、これほどの勢いで一気に学習しなくてはならなかったのは、医者になって初めての経験だと話す。

「COVID-19による血栓症の治療法と予防法について、もっと知りたい。防ぐためには何が最適な方法で、もし血栓ができてしまったら何が最適な治療法なのか」

複数の薬を適切なバランスで使うことが不可欠だ。ひとつの症状を治療しようとして別の症状を起こしてしまうこともある。

「どれくらいの治療をどれくらいの期間、続けるのが適切なのか、まだ正確には分かっていない」と、マイルズ医師は言う。「この病気について経験を積んでいけば、それはやがて分かるようになると期待している」。

臨床試験
イギリスでは集中治療を必要とする患者の数は減りつつある。その中で、専門医たちはいくつかの疑問点について、答えを探し求めている。

COVID-19患者の人工呼吸器使用はどのタイミングで開始するのがいいのか
最適な抗ウイルス薬はどれで、抗炎症剤や免疫抑制剤はどれくらいの量が適切なのか
回復期患者の血漿(けっしょう)、つまり回復した患者の血中にある抗体を使う治療法は、有効なのか
「これが効く、あれが効くという体験談はいろいろ目にする」と、ダニー・マコーリー医師は言う。「この新しい病気について本当に正しい治療法を知るには、今後数カ月の間に大規模な臨床試験を実施するしかない」。

そして、すでに多数の大規模な臨床試験が行われている。医師たちが第2波に備える中、イギリスだけでも優先指定された全国的な調査が41件、公的資金を受けて進行中だ。

臨床試験の認可がすぐに下りないという不満も一部にあるものの、イギリスの医学研究は世界トップクラスだ。そして、医師の知見が増えれば増えるほど、COVID-19治療も改善されていく。

COVID-19のためICUで亡くなる人に最も多い死因は、呼吸器不全だ。しかし、死因はそれだけではない。つまり、これまでのCOVID-19治療法は、すべての患者にとって最適なものではないということだ。

「まるで中世」のような3カ月だったと、ハント医師は言う。国内最高峰のICU専門医たちが、まったく未経験の病気を前にして、知識や経験をもとに、当て推量するしかなかったのだ。先行実験や既存のデータをもとにした知識ではなく、観察できる症状から治療法を決めるしかなかった。

今後のCOVID-19治療では、ICUに入る患者の回復率を改善しなくてはならない。それが医療にとって特に大きな課題だ。

「実にたくさんのことを学んだし、本当に見事なチームワークだったが、大変だった」と、ゴードン医師は言う。ICUの勤続年数が20年を超えるゴードン医師でさえ、「自分が今日やったことは正しかったのか、実はよく分からないと思いながら帰宅することもあった」という。

「ほかの病気は何百年かけて学んできたことを、この病気についてはたった数カ月で解明しなくてはならない。それは本当に大変な作業だ」

(取材協力:オリヴァー・バーンズ)

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-52798281
http://www.asyura2.com/20/reki5/msg/108.html#c7

[近代史4] 山菜を食べよう _ シオデ 中川隆
1. 2020年6月12日 12:04:52 : IpkIqUDpJU : R2kzT3ZNQ3JKbDY=[10]

雪日記
山菜にも個性があるのだ。
http://golgo13zilch.jp/blog-entry-3840.html


標高が低いエリアの山菜は終了。
ちょっと上のエリアではワラビが最盛期となっております。

ワラビは群生するので採り放題。
色や太さを厳選して採取します。

ムムム…!?

またシオデと出会えました。

ん!?

こちらもシオデっぽいけど、何かちょっと違う…。

これがシオデだよね…!?

特徴は似ているけど、
色や太さが微妙に違うのをいくつか発見。

食べて確認するしかない(笑)

やっぱり、シオデでした。

他の山菜も鮮やかな緑やちょっと赤っぽい個体があり、
赤っぽい個体は湯通しすると緑になる。
色だけでなく大きさ太さなども結構個性がある。

日射や標高、気温、雪の量など、生息地の環境に影響されるのかな。
品種改良された野菜と違い、個性がより強く出るのも山菜ならではなのかもしれません。

もちろん、似ている植物で別種って事もあるから注意は必要ですが、
ある程度特徴を捉えていれば識別は可能。

個性豊かな山菜ってやっぱり魅力的ですね。

旬のヤングコーンをお裾分けしていただきました。
山菜もいいけど、旬の野菜もやっぱりいい。

初夏を迎え、そろそろ山菜採りの季節は終わりです。
寂しいけど、季節が巡るのが四季のいい所。

でもまだ食べる方は終わりません(笑)
ワラビはどっさりと冷凍庫の中で眠っています。

冷凍コシアブラとワラビの炒飯。

さいこ〜!!

冷凍すると採りたての新鮮さは無くなってしまいますが、
火を通す料理に使ったり美味しく食べられる調理法を模索中(笑)

http://golgo13zilch.jp/blog-entry-3840.html
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/918.html#c1

   

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