1. 2022年3月08日 05:39:40 : r89wwtMHWg : MjY2YWNTdEc1cDI=[1]
「16歳少女が亡くなり、母親は無理心中…」大島てるが語る“あるアパートで起きた悲劇”の衝撃的な結末
令和3年の事故物件 #1
大島 てる
https://bunshun.jp/articles/-/51392?utm_source=news.yahoo.co.jp&utm_medium=referral&utm_campaign=relatedLink
一昨年に続き、昨年もまた、新型コロナ抜きには語れない1年になってしまいました。一方で、コロナとは直接関係のない大事件も全国で数多く発生し、私たちを驚かせた年でもありました。今回はそんな令和3年(2021年)を、事故物件の観点から振り返っていこうと思います。(全2回の1回目/後編に続く)
アパートで亡くなった16歳少女
昨年のニュースの中では、小田急線や京王線での刺傷事件や、年末に起きた大阪府大阪市でのビル放火事件、また神田沙也加さんの転落死などが、特に衝撃を受けたものとして記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、事故物件という観点から振り返ると、電車はもちろん不動産ではなく、放火事件や転落死の現場となったクリニックやホテルもまた、居住用の賃貸物件でも売買物件でもありません。
そんな中、私にとって印象的だった事件や事故は、なぜか上半期に集中して起きていました。その一つが、和歌山県和歌山市のアパートで16歳の少女が心肺停止の状態で見つかり、搬送先の病院で死亡が確認された6月の事件です。
司法解剖の結果、少女の死因は外傷性ショックと判明。体にはいくつもの痣があり、虐待を受けていた可能性が浮上しました。少女は、両親と妹(4歳)と同居していたため、通常であれば、その後の取り調べなどですぐに真相に辿り着けたのかもしれません。
関西国際空港連絡橋 ©️iStock.com
関西国際空港連絡橋 ©️iStock.com
しかし、その2時間後――。関西国際空港へと繋がる連絡橋から、少女の母親と4歳の妹が海に飛び込みました。目撃者がすぐに110番通報したものの、警察が発見した時には、2人はすでに息を引き取っていました。4歳の娘を巻き込み、母親が無理心中を図ったものと見られています。
なぜ母親は無理心中したのか?
一体、その一家に何が起きていたのか。この不可解すぎる事件は、思わぬ形で注目を集めることになりました。というのも、無理心中を図った母親は、和歌山毒物カレー事件で逮捕された林眞須美死刑囚の長女だったのです。
平成10年(1998年)に起きた和歌山毒物カレー事件では、夏祭りで提供されたカレーライスに毒物が混入されており、67人がヒ素中毒に、そのうち4人の方が亡くなりました。この事件で逮捕された林眞須美死刑囚は今も冤罪だと主張しており、長女たちが亡くなったまさにその日、第2次再審請求を起こしたことが報じられていました。
その後の報道で、無理心中を図った女性は10年以上、自身の家族とは連絡をとっていなかったこともわかりました。幼い頃、彼女の家族に起きた一連の出来事が、今回の事件にも影響しているのかどうか、それはわかりません。しかし、私にとっても、また社会にとっても、非常に印象深く、考えさせられる事件であったことは間違いありません。
この件で唯一残された少女の父親もまた、妻と娘たちが亡くなったその日の夜、カフェイン剤を大量服用して自殺を図りました。しかし、彼は未遂に終わり、その後警察から事情聴取を受けているとのことで、真相の解明が待たれます。
築8年のアパートで……
一方で、4月に東京都八王子市のアパートで外階段が崩落し、住人の女性が転落死した事故では、現場の映像を見て驚いた人も多いのではないでしょうか。「階段が崩落した」という情報だけを聞くと、築何十年の古い建物を想像してしまいますが、今回の事故が起きたのは築8年という、比較的新しいアパートだったからです。
すぐにこのアパートではかなりずさんな工事が行われていたことが判明し、その施工業者である「則武地所」は事故翌月に自己破産を申請して倒産。日本中で「自分のマンションは大丈夫なのか」「施工業者は則武地所じゃないか」と、不安が広がりました。
ただ、私がこの件で考えたのは、“告知義務”についてです。これまでの連載でも説明してきましたが、宅建業法により、事故物件の契約の際には業者に告知義務が生じるため、事故物件であることを隠蔽して貸し出すのは違法です。
しかし、告知が必要なのは何年前までの出来事なのか、また、前の住人が殺人事件や自殺以外で亡くなった場合にも告知が必要なのかなど、ルールに曖昧な部分も多かったため、昨年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が国土交通省から発表されました。
“告知が不要”と判断されるケースとは?
このガイドラインを読んでみると、「自宅の階段からの転落や、入浴中の溺死や転倒事故、食事中の誤嚥など」については、「原則として、これを告げなくてもよい」と書かれています。
ここで想定されているのは、「階段や風呂場で足を滑らせてしまい、転倒時に頭を打って亡くなってしまった」といった“不慮の死”のことではありますが、業者が都合よく解釈すれば、八王子市で起きたような事故も、告知は不要と捉えられてしまう可能性もゼロではありません。
現実問題で言えば、今回のような事故が起きたら大きなニュースとして報じられるため、仮に業者が事故物件であることを告知しなかったとしても、周りから見れば「あの事故が起きたアパートだ」とすぐにわかってしまいます。また、ガイドラインをさらに読み込んでいくと、「その社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合」、つまり社会的に広く知られている事件や事故については告知が必要と書かれているため、やはり今回のような事案では、告知義務が生じると考えられます。
しかし、これが築何十年の古いアパートで起きた事故であったら、ここまで大きく報道されなかった可能性が高いでしょう。その場合に、業者がガイドラインをどう判断するのか――。これは、かなり微妙な問題だと感じます。
※写真はイメージです。 ©iStock.com
※写真はイメージです。 ©iStock.com
事故物件であることを隠す業者
こうした問題について、「事故物件だと告げないことが、そこまで悪いことなのか」と思う人もいるかもしれません。ときには、「事故物件だからといって、別に幽霊が出るわけでもないのに」「気にしなければいいだけだ」などと言う人もいるのですが、この問題はそうしたオカルト的な要素は一切関係なく、そもそも「告知義務」という、法律で定められたルールを遵守しない業者を信頼できるのか、という話なのです。
自身に不都合な情報をちゃんと告知しない大家や業者がいたとして、「彼らは告知義務は果たさないけど、それ以外においては全ての点で良心的だ」と思う人はいないはずです。むしろ、告知義務を果たさないのは、その大家や業者が犯している悪事の“氷山の一角”だと思う方が自然ではないでしょうか。
私自身、事故物件の情報は、その不動産を扱っている人が「良い大家なのか」「良い業者なのか」を見分ける、リトマス試験紙のようなものだと理解しています。
ただ、世の中には事故物件とは定義されないものの、多くの人が「ここに住むのは避けたい」と思ってしまう物件も存在しています。次回は、引き続き昨年の事件を振り返りながら、そうした“事故物件という定義ではカバーできない不動産”についてご紹介しましょう。
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1759.html#c1