5. 2019年12月14日 20:37:16 : 19kOP6nI2Q : cU9mcWZ5RUFiUG8=[1]
>堀田善衛は……
ここで、ヨーロッパの旧貴族の話をしてみることにしましょう。ヨーロッパ各国の旧貴族たちは、それぞれどこかで血がつながっている、すべて親戚なわけです。たとえば、ベルギーのブリュッセルにECの事務局がありますが、そのECの幹部たちのほとんどは旧貴族です。つまり、旧貴族の子弟たちが、今ではECをすべて取り仕切っているということになります。
そこでおもしろいのは、やはり血のつながりがあるからなのでしょうか、彼らは、みんな一様に背が高くて、だいたい似たような顔をしています。それに、戦争が始まるといちばん困るのはあの人たちです。すべて血筋によって結びつけられている彼らにとって、国境などというのはほとんど意味をもたず、必然的にインターナショナリストということになります。だから、ECの事務局に旧貴族たちが集まっているのは、当然といえば当然なのです。
(中略)
そういう具合に、上流階級の人たちがインターナショナリストとなっているヨーロッパ社会では、どうしても中流階級以下がナショナリストになる傾向があります。そして、ナショナリストと重なるのは奇異に思われるかもしれませんが、コミュニスト、ソーシャリストになるのも、同じ階層です。
たとえば、ナチは労働者組織を手がかりとしてナショナリズムを発揚させていくわけですし、一方、フランス共産党は、中産階級以下の階層と、インテリゲンチャ、医者、弁護士、芸術家といった人たちによって組織されている、そういう仕掛けになっているのです。その意味では、ヨーロッパにおいては、そういう二つの階級が、いまだに厳然として分かれて存在しているということです。
(堀田善衞「ゴヤをたずねて」より)
http://www.asyura2.com/19/kokusai27/msg/872.html#c5