1. 中川隆[-13419] koaQ7Jey 2022年3月28日 07:14:24 : yLyxuEx3MU : cnZrM3pSdTBWNE0=[1]
ビスコロイドって何者だ(その正体をさぐってみた)?
まさか、お菓子のビスコ(なつかしいな)を思い浮かべる者はいないだろうが、後半のコロイドから多少は察しがつくかも知れない。ところが、これほど有名なものなのに、調べてみると正体についての記述はどこにも見つからない。もともと外来品なのだから英語で検索するにもスペルがわからずにいろいろ思いつくスペルで検索したあげくに辿り着いたのはViscoloidという社名で米国化学メーカー大手デュポン社に1925年に買収され1977年までデュポン・ビスコロイド社として存在していたことがわかった。
前身となったビスコロイド社は当時米国最大のセルロイド製品メーカーとして有名だったようだ。そこで、買収側のデュポンは、ビ社が生産するセルロイドの主原料ピロキシリンが目的で同社を吸収した。ここから、話が少々ややこしくなるがピロキシリンという名にピンときた方が少なからず居るかも知れない。
以外と身近なところにある物質で接着剤の原料の他に最近では液体包帯(コロスキン、サカムケアなどの商品名で流通)の主原料として用いられている。ピロキシリンは別名ニトロセルロースと言い、一種の化学繊維である(詳しくはネットで検索すればいくらでも出てくる)。
このピロキシリンをエタノールとジエチルエーテルで溶かして出来るのがコロジオンで前述の液体包帯の主成分だ。ちなみに、このコロジオンとはフランス人化学者メナール(Louis Menard) が1850年ころに発明し、1860年代には戦場において液体包帯として活用されたそうだ。
さて、これがどうしてエッジに塗られたビスコロイドと結びつくのか? 原料の検索とは別にアルテックの資料を紐解くとコーン紙張り替えのマニュアルが出てきた。そこには、この塗布剤の部品番号が記されており、その説明に有機溶剤ベースのドープ材とあった。そう、あの塗布材は何なのかとあちこち探した挙げ句に見つけたのがドープ材というキーワードだったのだ。始めはダンプ材などで探していたが、いまいち目的の情報に辿り着けず、あるところで見つけたのがドープというキーワードであった。ドープ材ですぐ思い浮かぶのは航空機に塗布するあれだが、同じようなものである。
スピーカーにおける塗布の目的は、大きく分けると2つあり、一つはダンピング、そしてもうひとつは密閉性を保つことだ。まだウレタン等の素材が無い時代には所謂フィックスドエッジか布エッヂが主流であった。ご存じのように布は通気性があるので特に密閉箱などにおいては都合が悪い。そこでビスコロイドを塗って密閉性を上げるのである。また、フィックスドエッヂにおいては、所謂コーン鳴きを防ぐ意味でのダンピング材として使用された。なるほど、ドープ材とはよく言ったものだ。
そして、とある古いラジオの修理に関して書かれたサイトに、それはあった。エッジにドープ材としてコロジオンを塗布との記述だ。かなり遠回りをしたが、想像するにアレはビスコロイド社のコロジオン(もしくは、それに類するもの)で社名がその代名詞になったのではないかと想像する。
その使用目的からいってコロジオンはその性質が当時の素材の中で最も適していたのであろう。もっとも、その後に色々な化学物質が誕生し、今やビスコロイドを塗布したスピーカーなど見かけないのは言うまでもない。エッヂ部分を薄く漉いたフィックスドエッヂが破れてしまった時は、コロスキンを塗って直して(治しての方が似合うか?)やると良い。
事実、米国のある掲示板でアルテックの古いスピーカーのエッヂ補修に液体バンドエイドを使用したら調子が良かったとの記事があった。なお、乾ききって硬化してしまったエッヂは溶剤で溶かすのもよいが、思い切って切除して最新のエッヂに張り替えると低音再生が蘇ることだろう。
http://www.ceres.dti.ne.jp/~takojin/Speakers/monologue.htm#%E3%83%93%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E3%81%A3%E3%81%A6%E4%BD%95%E8%80%85%E3%81%A0%EF%BC%88%E3%81%9D%E3%81%AE%E6%AD%A3%E4%BD%93%E3%82%92%E3%81%95%E3%81%90%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%81%9F%EF%BC%89%EF%BC%9F
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/1225.html#c1