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2023年01月28日
不正と嘘がはびこるアメリカ / カンニングで優秀になる学生
http://kurokiyorikage.doorblog.jp/archives/68921527.html
「公正厳格」という神話
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日本の一般人と同じく、米国の庶民も「フェア・プレー(fair play)を尊ぶアメリカ」とか、「公正なルールに基づく実力主義のアメリカ」という幻想を抱いている。確かに、アジア・アフリカ・南米の諸外国と比べれば、あからさまな不正行為や瀆職役人は意外と少ない。
例えば、アメリカに住む日本人が、道路を走行中にスピード違反で停車命令を受けたとする。たいていの場合、近寄ってきたパトロール警官は、運転免許証とクルマの登録証を求めるが、その時、ニヤリと笑って免許証と共に50ドル札か100ドル札を渡す日本人はいないだろう。これができる日本人は相当なワルだ。普通の日本人は警官を買収する度胸は無いから、言われた通り、おとなしく従うだけである。たとえ、ニューヨークやカルフォルニアのような都市部でも、「袖の下」を実行すれば即逮捕だし、正常な日本人なら恐ろしくて出来ない。
かつて、日本の学校では教室の壁に「誠実」とか「正直」という揮毫の額が掲げられていた。アメリカでも1950年代くらいまではキリスト教やギリシア・ローマの古典文化による影響が強く、「正直は美徳」という社会常識があった。今では信じられないが、ゲイやレズビアンなんて論外の御法度だ。プロテスタントのキリスト教徒でも、聖トマス・アクィナス(S. Thomae Aquinatis)や聖アンセルムス(S. Anselmus Cantuariensis)の教えを尊び、「勇気(fortitudo)」や「正義(iustitia)」「思慮(prudentia)」といった倫理道徳を守っていた。
しかし、ベトナム戦争を経たアメリカは違う。麻薬の使用やフリーセックスが肯定され、フラワー・チルドレンーが街をうろつくなんて当たり前。大学の教室はフランクフルト学派の左翼に牛耳られ、父親のみならず、神父や牧師の権威まで侮蔑される始末。さらに、自由競争の拡大解釈で、所得格差は急激に広まり、不正手段を使っても立身出世を成し遂げようとする若者が増えてきた。社会学者のチャールズ・マレー(Charles Murray)が嘆いたように、昔のアメリカなら極端な貧富の格差は無く、社長と社員の所得格差だって数倍くらいだ。
日本の学校教師は生徒に教えないが、「自由」の基礎は「財産」である。資産が無いと言論の自由を確保できないし、家族すら養って行けないから、どうしても余裕のある生活を維持するだけの金銭は必要だ。「クビ」が怖いサラリーマンは、不満があっても上司や社長に服従せねばならない。それに、プラグマティズムが浸透するアメリカでは、裕福な者が大いなる自由と快楽を享受する。階級ピラミッドを昇るにしても、裕福な家庭に生まれることが条件だから尚更だ。昔、スウェーデンの人気グループ「ABBA」が、「The Winner Takes It All(勝者が全てを取る)」という曲を唄っていたけど、今のアメリカでは「勝ち組が旨味を食べて、負け組がおこぼれを拾うだけ」の状態となっている。
なかなか認めたくないけど、高額所得者になれなかった者は、一生、社会の底辺で這いずり回り、決して「命令者の地位(command post)」に就くことはできない。米国の賃金労働者が、なぜ野球やアメフトの観戦に熱中するのかと言えば、それは惨めな勤め人でも、スタジアムやテレビの前で“監督”になれるからだ。しがない下っ端職員は、いつも工場長や部長に命令されるだけで、自分の意見を通すことはできない。だから、自宅に帰った時くらいはコーチや監督の気分になって、相手チームの有名選手を野次ったり、ダメな奴に向かって「選手交代」と叫ぶ。同じ階級の友人たちと集まり、一緒にピザやビールを口にし、心に詰まった溜飲を下げれば、もっと気分爽快だ。
そもそも、アメリカ人は白人に生まれたって、立派な学歴が無いとエリート層に迎えられる国際金融業者や大企業の重役にはなれない。それゆえ、一般の平民はがむしゃらに勉強して有名大学に入ろうとする。しかし、中にはボンクラも居るから、地元の州立大学で我慢するしかない。でも、高額所得者の子弟は別。一見するとアメリカは厳しい競争社会に思えるが、ある程度の金額を持つと、目の前の世界がガラッと変わってくる。「カネで買えないものは無い」とは言わないけど、「たいていのモノは買えてしまう」というのが現実のアメリカだ。幼児ポルノ業界を見れば判る。気持ち悪いおっさん達でも、ブローカーに大金を渡せば、金髪碧眼のモデルや小学生の児童だって注文でき、秘密の豪邸で弄ぶことができてしまうのだ。ジェフリー・エプシュタインの例があるから、日本人でも察しがつくだろう。
「不正行為」が「当たり前」となっているアメリカ
日本以上かも知れないが、米国だって相当な学歴社会だ。となれば、華々しい学歴を得るために何らかの“ズル”が横行していてもおかしくはない。例えば、NYのブロンクスにある私立学校の「ホレイス・マン高校(Horace Mann School)」は、様々な不正行為で有名だ。アイヴィー・リーグを目指していた或る女子生徒は、授業で課される期末レポート(term paper)を作成する際、インターネットからダウンロードした文章やウェッブサイトからの盗んできた文章を使ってしまった。
ところが、他の生徒も同じサイトから剽窃してレポートを提出したことが判ったので、件(くだん)の女子生徒は大慌て。直ぐさま担当教師のもとに走り、提出したレポートを“手直し”したいと願い出た。運良く返却してもらえたので、彼女は「盗作」の“発覚”を免れることができたという。その後、彼女は無事に一流大学に進学でき、「ハーヴァードの学生」になれたそうだ。(David Callahan, The Cheating Culture : Why More Americans Are Doing Wrong to Get Ahead, , 2004. p.197.)
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1982年、フランスの『ザ・カンニングIQ = 0 (Les Sous-doués Passent le Bac)』という映画が日本で公開されたけど、筆者も劇場に赴き、笑いながら鑑賞したのを覚えている。しかし、現在のアメリカで行われるカンニング(cheating)はなかなか巧妙で、ハイテク製品を使っているから摘発されにくい。
例えば、ある生徒はハッカーの如く学校のコンピュータ・システムに侵入し、自分の成績を改竄することで知られていたそうだ。別の者はカンニング用に改造したペンや鉛筆を持ち込み、その中にメモを隠していた。アメリカの学校だと、数学の試験では電卓の使用が許可されるので、その中に「虎の巻(解答に導くデータ)」を仕込んだりする者もいるそうだ。SAT(英語や数学の共通大学入試)でもズルをする奴が多く、試験の途中で便所に行き、こっそりと携帯用の辞書を見る者も居たらしい。また、別の生徒は「学習障碍」という手口を使い、試験監督官に陳情して「制限時間無し」という特別待遇を得たという。つまり、大金を払って悪徳業者(or 銭ゲバの医者)から架空の診断書を購入した、ということだ。
NYにある名門校でアイヴィー・リーグへの進学率が高い「ストイヴサント高校(Stuyvesant High School)でも、所謂“ズル行為”が横行しているそうだ。この学校にはユダヤ系や東歐系ばかりじゃなく、パキ人やベトナム人の生徒も混じっているそうで、低所得層から這い上がろうとする子供達であふれている。学校側も進学率を上げようと必死になようで、数学、理科、英語、歴史の科目で高い得点を求めているそうだ。
しかし、上昇志向の生徒達は、大量の宿題や課題を背負い込むだけじゃない。親からの多大な重圧も受けている。学歴重視の親達は、息子や娘のGPA(Grade Point Average / 成績評価点の平均)に目を光らせているから、猛勉強する子供達も大変だ。親からの要求と期待に応えねばならぬ子供達は、「不正行為」と解っていても、自然と「ズル」に手を染めしまうらしい。それゆえ、「みんながズルをしているから、私も・・・」という“空気”が言い訳になるそうだ。インターネット世代の子供が「悪の道」を歩むのは意外と簡単で、携帯端末を使ってカンニングする子供も居れば、優等生を取り込んで奇妙な成績を伸ばす生徒も居るらしい。支那人の子供だと大人を真似るのか、極小のイヤホンを耳に装着して、外部からの指示に従うこともある。女子生徒なら長い髪で耳のハイテク機器を隠すから、試験官の先生にバレにくい。
学校で子供が「不正行為」を展開すれば、親の方だって更なる不正を考え出す。“教育熱心”な親達は、幼稚園の前から出世競争の火蓋を開く。ハーバード大学に入るよりも難しい名門幼稚園があるいというから呆れてしまうじゃないか。寄宿制のプレップ・スクールに我が子を入れる親達は、大学進学が視野に入ってくると、今度はプロの進学カウンセラーを用意する。親に雇われた学習指導者は、入試に向けた長期計画を提案し、当事者たる中学生や高校生の坊ちゃん達は、推奨された「課外活動」を実践するそうだ。彼らは入試論文や面接の話題に出来るよう、海外旅行や社会奉仕に勤しむ。おそらく、養老院の高齢者や身体障碍者を助けるボランティアになれば、面接官の印象が良くなると考えているんだろう。
米国ではサービス産業が盛んである。大学入試の“お手伝い”をする「アイヴィー・ワイズ(Ivy Wise)」という会社では、受験指南用の「プラチナム・パッケージ(platinum pakage)」というサービスがあるそうだ。料金は約3万ドル(345万円 /1ドル = 150円で換算)で、相談の頻度は24回くらい。高校二年生以上が対象となっている。(上掲書、p.206.) 大学へ合格した新入生の聞き取り調査で、入試カウンセリングを受けたかどうかを尋ねてみると、驚きの結果が得られたという。1990年代には僅か1%くらいだったのに、2000年代に入ると約10%の学生が何らかの有料カウンセリングを受けていたのだ。
高額所得者の親達は、こうしたカウンセラーだけでは満足できないし、なんとなく心配で安心できない。そこで、彼らは高い給料を払って家庭教師を雇う。ただし、こうした先生には教員免許や倫理規範なんて関係無い。ゼロが幾つも並んだ小切手をもらえばOK。学習指導に関しては「結果」が全て。それゆえ、お雇い教師はレポートの代筆もやるし、難しい宿題をこなす幽霊にもなる。もし、良心に従って代理を断れば、即座にクビになるから厭でも代行するしかない。時には、親から「無言の命令」があったりする。(高校生の良い子は、「あれ、秋篠宮家の悠仁殿下みたいだ !」なんい言っちゃいけないよ! 担任の先生が鬼の目になるから。)
笑っちゃいけないけど、家庭教師の“助力”による作文だと、あまりにも指導が良すぎるため、どこが教師による文章で、どの部分が子供自身の文章なのか判らなくなるケースがあるらしい。また、不正作文を判別する学校教師も大変で、「教育コンサルタント」による代筆を見破るのはとても難しいという。それゆえ、困った先生は学校の授業で筆記試験を課す。そうすれば、教室内で本人の“実力”が判るので、誰が幽霊作家を雇っているか、だいたいの目星がつく。(筑波大附属高校の教師も参考にすべきだ。)
ある女性の家庭教師が告白していたが、彼女は子供から“せがまれて”宿題を代行したことがあるそうだ。(上掲書、p.208.) ただし、彼女は自分のルール違反を悪いと思っていたが、“より広範囲な枠組み”の一部と考えていた。確かに、こうした家庭教師は受験産業の駒に過ぎない。たとえ彼女が断っても、他に幾らでも「代わり」がいるから、拒絶するだけ損である。
「バナナ・リパブリック(南米にある腐敗国家)」と化してしまったアメリカでは、個人の「正義」なんて、いくら振り回したところで所詮「鼻糞」程度である。富裕層の親は学校に多額の寄附をしているし、理事長と顔見知りだったりする。学長にも個人的な電話を掛ける仲だったりするから、鈍くさい子供でも裏口からスルッと御入学だ。(筑波大学や一橋大学の経営者は耳が痛いだろう。) 倫理的には問題となるが、家庭教師を雇う親からすれば、「必要悪」といった感じである。「みんながやっているんだから、ウチの子だけやらないのは、非常に不利じゃないか !」という理屈らしい。
学歴は全能の神じゃないけど、魔法の杖くらいにはなっている。日本企業と同じく、米国企業も新入社員の採用では学歴を重視するという。なぜなら、新卒者の採用には、多くの時間がかかるうえに、「ダメ社員」をつかまされるリスクが伴うからだ。個別的に見れば、有名大学卒の新入社員だから“優秀”とは限らない。しかし、「劣悪な人材」を採用する危険性は比較的少なくなる。世間からの非難が湧き起こりそうだが、企業経営者からすれば、無名大学のボンクラ学生よりも、一流大学を卒業した優等生の方が安心だ。難関校をくぐり抜けてきた者となれば、複雑な仕事の覚えも良く、理解力や実行力にも富んでいる。Fランク大学の学生じゃ、潰しのきかない碌でなしか、窓際族の予備軍にしかならない。
「一旦淫売、一生淫売 ! (Once a whore, always a whore.)」という言葉があるように、高校で「ズル」をしてきた奴は、大学に入っても「ズル」をしたがる。1960年代、コロンビア大学の研究者であるウィリアム・バワーズ(William J. Bowers)が、『大学生の不誠実と大学での管理(Student Dishonesty and Its Control in College)』という本を出版した。彼が99校で5千名を超える学生を調査したところ、全学生の4分の3が何らかの不正に関与していた、という実態が判明した。1960年代だと学生運動が盛んで、左翼思想の黄金期であったから、キャンパス全体が背徳の温床になっていても不思議じゃない。
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(左 : 裏口入学を斡旋したユダヤ人と依頼人となった有名女優 / 右 : 不正が発覚したロリ・ロフリンと娘達)
アカデミック界隈の不正に関しては、ラトガーズ大学で教鞭を執っていたドナルド・マケイブ(Donald L. McCabe)教授が、その道の第一人者であろう。今は教授職を引退しているが、彼は「学問誠実センター(Center for Academic Integrity)」の創設者となっている。マケイブ氏によると、大学での不正行為レベルは1960年代よりも酷くなっているそうで、今日の学生による不正の方が遙かに深刻らしい。彼がビジネス・スクールでの不正行為を調べたところ、大学院生の56%が何らかの不正行為、あるいは疑問視される行動を取っていた、というのだ。ビジネス・スクール以外の大学院生だと、その割合は47%であった。(Donald L. McCabe, Kenneth D. Butterfield and Linda Klebe Trevino, ‘Academic Dishonesty in Graduate Business’Programs : Prevalence, Causes, and Proposed Action
http://www.asyura2.com/09/bun2/msg/492.html#c277