24. 中川隆[-5026] koaQ7Jey 2021年5月04日 15:51:58 : vbgG8GEIm2 : bDllNGVRQTBaamM=[1]
真空管の種類や働きを整理
知識ゼロからの真空管アンプ選び。これだけ覚えればOK!
2021年05月04日
https://www.phileweb.com/review/column/202105/04/1253.html
ほのかに灯る光とともに、柔らかな響きが立ち上る——そんな時間を過ごさせてくれるのが真空管アンプです。……とは言ってみたものの、そもそも真空管アンプってどんな仕組みなの? 球にもアンプにも、いろんな種類があるようだけどどう違うの? マニアックな情報は多いけれど、入門者にやさしい入り口になるような情報がなかなか見当たらない! というわけで、ここではイチ、いやゼロから真空管アンプについて学び、アンプ選びに最低限必要な知識をまとめてみました。
ご協力いただいたのは、数々の真空管アンプのヒット作を世に送り出しているメーカー「トライオード」の社長・山崎順一さん。何もわかっていない超ド初心者の筆者でもわかるように、辛抱強くいろいろな質問にお答えいただきました。
トライオード社長の山崎順一さん(右)と、「真空管女子」まっしぐらの飯田有抄さん(右)
■真空管ってなに?
CDプレーヤーやレコードプレーヤー自体が発する音の信号はとても弱いため、そのままではスピーカーを鳴らすだけの力がありません。そこで、アンプが必要になるわけですが、プレーヤーからの音の情報を電気的に増幅させる際に真空管を使ったものが、いわゆる真空管アンプです(管球式アンプとも呼ばれます)。
真空管とは、電球のような形のガラス管で、その内部は文字通り真空状態になっています。管の中には電気の流れる回路が仕込んであります。
アンプで使用される真空管の内部には、3つの回路がセットされています。そのため「三極管」と呼ばれます。ちなみに、覚える必要はぜんぜんありませんが、その3つの回路に付けられている部品の名称は、「フィラメント」「グリッド」「プレート」です。それぞれの役割についてはここでは深入りしないことにしますが、ものすごく簡単に言えば、フィラメントとプレートの間を行き来する電子の量をグリッドが調整し、それによって音の増幅がコントロールできる仕組みになっています。
三極管の仕組み(出典:wikipedia 真空管)
なお、三極管が発明される前に、2つの回路からなる「二極管」が発明されています。二極管にはグリッドが存在せず、フィラメントとプレートの間を電子が流れ、熱や光を出したり、電気の流れを(交流から直流へと)変える“整流”の働きをします。
■真空管アンプの構造と管球の種類
真空管アンプとひとくちに言っても、全体のサイズや、使用される球の数も形もさまざまです。何を基準に選び、どんなものを購入すれば良いかを知るために、真空管アンプの大まかな構造と、管球の種類について、ざっくりとつかんでおきましょう。
代表的な真空管。一番左が出力管の「300B」、残り2つは電圧増幅管で、中央が「12AU7」、右が「12AX7」。サイズや役割も真空管によってさまざま!
【入力管】
どちらのモデルも真空管が複数本使われてますが、「入力管」と「出力管」に分かれています(「プリ管/パワー管」、「電圧増幅管/電力増幅管」などといった言い方もされます)。入力管は、CDプレーヤーやレコードプレーヤーからの音楽信号を最初に受け取る場所です。まずは一旦ここでエネルギー(電圧・電流)を増幅し、出力管へと信号を送ります。「12AX7」(ECC83とも呼ばれます、国によって呼び方が違うだけで同じものを指します)、「12AU7」(ECC82)、「12AT7」(ECC81)などがあります。
【出力管】
入力管から受け取った信号をさらに増幅させて、スピーカーから鳴らせるようにします。真空管の王様とも呼ばれる「300B」や「KT88」、「EL34」といったモデルが有名です。
【整流管】
一般の家庭に流れてくる電気はAC100Vです(ACとはAlternating Currentの略で、交流の意味)。しかし多くの電気製品はDC(Direct Current、直流の意味)に変換しなくては使用できません。そこで、整流作用が必要になります。昨今では整流ダイオードによって整流されることがほとんですが、上述の二極管を整流管として用いるアンプもあります。「274B」や「5AR4」といった管球が知られています。
ここで、入力管と出力管に使用される真空管の種類を整理してみましょう。トライオードの製品を例に、具体的に見ていきます。
小型の機種「Ruby」および「Pearl」では、入力管も出力管も、見た目に小さなサイズの真空管が4本使用されています。入力管は内側の2つで「12AX7」という球。出力管は外側の2つで「6BQ5」という球です。2つずつあるのは、左右のスピーカーのためにそれぞれ増幅しているからです。
トライオードのジュエルシリーズ、「Ruby」(左)と「Pearl」(右)。中央2本が入力管「12AX7」、外側2本が出力管「6BQ5」。右の青い光は発光ダイオードで光らせています
一方、より大きなサイズの「TRV-A300XR」では5本の真空管が使われています。入力管は2段階になっており、まずは中央に1本ある「12AX7」で受けます。スピーカーは左右あるのに、なぜここは1本で良いのでしょうか? 実は「12AX7」という球はとても小さいのに優秀で、先に説明した「三極管」が、1つのガラス管の中に2つ入っているのです! こうした三極管のことを「双三極管」と呼びます。
トライオードの「TRV-A300XR」。中央が双三極管「12AX7」、その外側が「12AU7」、一番外側のひと回りサイズが大きいのが「300B」
1本の「12AX7」で受けた音の信号は一旦増幅されて両隣の「12AU7」に送られます。ここまでが入力管です。
なんと真空管って取り外して交換できるんですよ!? 知ってました?
3本の入力管の後ろに控えているのが、存在感のある大きな出力管です。TRV-A300XRにはPSVANE(プスヴァン)の「300B」という人気の高い真空管が使われています。「300B」はまさにオーディオファンの憧れ、国内外を問わず多くのブランドが300B搭載モデルを発売しています。
「TRV-A300XR」の真空管5本を全部はずしたところ。300Bの足は4本、12AX7と12AU7の足は7本と異なるのが分かります。また、どこにどの真空管が入るかソケットの近くに記載されており、好みの真空管との差し替えも可能です
なお、形についての名称もあります。300Bのような形をした真空管は「ST管」、12AX7や6BQ5のように小型で、突起のついた銀色のベレー帽を被ったような格好をしているのは「MT管」です。MT管は現代の真空管アンプの主戦力として使われています。そのほかに、ST管とMT管の間のサイズで「GT管」というのもあります。
MT管のベレー帽のような頭部や、ST管の下部側面は銀色になった部分があります。これは「マグネシウム・ゲッタ」と呼ばれ、真空管内にガスや空気が入った場合に吸着し、真空を維持する働きをしています。
真空管内に発生するガスを取り除いてくれます
【トランス】
どんな真空管アンプでも、たいてい真空管の後ろに、四角い箱のようなものが並んでいますね。通常、2つないし3つの箱に分かれていますが、電源を変圧して供給する「電源トランス」と、真空管によって増幅された信号をスピーカーへと送る「出力トランス」です(RubyやTRV-A300XRの場合、真ん中の箱が「電源トランス」、左右の2つの箱が「出力トランス」)。
真空管アンプがずっしりと重いのは、このトランス部分が重いからなんですね。持ち上げるときは、トランスを自分の体側に持ってきた方が腰にいいみたいです(笑)。
さて、出力トランスは、アンプの音質の決め手といっていいくらい、とても重要な働きをしています。真空管からの高い電圧と、スピーカーが要する低い電圧との繋ぎ手になってくれるトランス。簡単に言ってしまえば、ここが大きくて重たい方が、いい音が出ます。大きいと値段も大きくなりますし、もちろん場所も取ります。購入の際には、音質・価格・スペースから総合的に判断して、納得のいくものを選びたいですね。
真空管の種類も大切だが、音の決め手になるのは後ろの「トランス」。ここが重たいので持ち運ぶときは注意!
https://www.phileweb.com/review/column/202105/04/1253.html
■真空管アンプ、それぞれ音もぜんぜん違う!
https://www.phileweb.com/review/column/202105/04/1253_2.html
トライオード社製の製品で見れば、RubyとTRV-A300XRではトランスの大きさも重さもかなり違います。それぞれ試聴すると、トランスの大きさの違いは、音にそっくりそのまま反映されているのを実感しました。Rubyはコンパクトで持ち運びもしやすく、軽やかなスタイルで楽しめます。音質も聴き疲れしない軽快さ。
TRIODEの真空管アンプをイタリアAUDELのスピーカー「Nika mk2 ART」(176,000円/ペア/税込)と組み合わせ。寄木細工のカラフルな色合いでRubyちゃんと素敵なマッチング
一方、TRV-A300XRは重さも音質もズッシリです。音が濃厚になる印象。とはいえ重量は17kgなので、女性でも一人でセッティング可能。実はわたくし、この取材ですっかり気に入ってしまい、自宅に購入しましたが、16Lのスピーカーを元気に優雅に鳴らしてくれています。
真空管は、1つ1つが手作りです。そのため大量生産はできません。現在では、人件費が比較的安価な旧共産圏のロシアや中国に生産工場があります。トライオード社の山崎社長から、女工さんが1つ1つ丁寧に制作している写真を見せてもらいました。一生懸命、丁寧に作っています!
■真空管アンプの選び方
さて、ここまで全体の仕組みや代表的な真空管の種類・働きを見てきましたので、何もわからずに購入に踏み切る、といったリスクは避けられると思います。なお、カタログにはよく「A級」や「AB級」といった言葉も出てきます。「A級」は発熱が大きく、自動車で言うところの燃費があまりよろしくないのですが、音質は非常にハイクオリティ。「AB級」は発熱を低めに抑えながら音質も良好となっています。
入門機としての具体的なチェックポイントとしては以下でしょうか。
・入力系統(いくつのプレイヤーをつなげるか)
・重さやサイズ
・価格
・外観(意外と大事!)
また、真空管と半導体を組み合わせたハイブリッド形式の真空管アンプもあります。例えば、前段を半導体、後段を真空管とすることで、小型でもハイパワーなアンプを作ることもできるのです。
最終的には、ご自身のライフスタイル、かけられるコスト、置けるスペースなどから現実的に選ぶしかありませんが、可能な限りお店などで実機を見たり試聴することをオススメします。最後は何といっても、音質が自分の好みに合うかどうか、かもしれません。
■真空管アンプの魅力と使用上のTips
カタログ数値的にはトランジスタアンプより“劣る”はずなのに、なぜ「真空管アンプの音は良い」と言われ、人気が途絶えないのでしょうか。なぜ、どこか生々しく、温かみがあり、流麗で気品を感じさせる響きとなるのでしょう。
山崎社長によると、「そこはわからないんです」とのこと。アッサリしたご回答にやや戸惑いましたが、こればかりは人間の感覚の不思議かもしれません。
そもそも音というのは、空気振動を通じて私たちの耳に届きます。鼓膜を通じて「聴こえ」として認知されますが、実はそれ以外にも微細な波動を肌でも知覚しているのでしょう。自分で「聴こえている」と思っている音以外の、いわゆる高次倍音や周波数なども体全体で受け止めているわけですが、「スペックで表されない何か」は、どうやらそういった部分に働きかけているのかもしれません。
さて、実際に真空管アンプをお迎えしたら、存分に楽しみたいですね。新品は、1日3時間ほどの使用で10日間くらいで「慣らし」がおわり、馴染んでくるそうです。また真空管は発熱が大事ですから、毎回聴き始めるときは、スイッチを入れてから20分ほど温めるのが理想的です。
ときには部屋の電気を消して、真空管の明かりとともに音楽を楽しむのはいかがでしょう?
筆者が使用した実感では、暖機運転が終わって聴き始め、だいたい30分ほど経つと艶やかでヴィヴィッドなサウンドになっているのを感じます。あまり電源ON/OFFを繰り返すのはよくないと言われますが、山崎社長によれば、「普通に切ってください」とのこと。無駄に付けっぱなしにせず、あまり神経質にならないでよいそうです。
真空管自体は消耗品と言われます。寿命があるなら、もったいなくてあまり使えないかも…という心配はいりません。だいたい人間の一生よりは長く持ってくれるそうです。ただし、何らかの理由で真空状態が保てなかったり、不純物が混入すると、音が薄くなったり歪みが発生するそうです。その場合には交換が必要です。
寿命が来て交換、というのとは別に、真空管そのものの音の個性を味わうための、いわゆる「球転がし」をして遊べるのも真空管アンプの楽しみの1つです。真空管メーカーには、ムラード、テレフンケン、シーメンス、RCA、GEなどといった会社があり、それぞれの音の特性があります。1台のアンプで複数のサウンド体験ができるのもおもしろいところですね。
https://www.phileweb.com/review/column/202105/04/1253_2.html
■おすすめ真空管アンプブランド(編集部)
https://www.phileweb.com/review/column/202105/04/1253_3.html
Carot One(キャロットワン)
予算:6万5000円〜
イタリア・ナポリに本拠地を置くCarot Oneは、その名の通りオレンジ色の「魔法の小箱」といった外観が特徴。コンパクトなプリメインアンプの他、ヘッドホンアンプ、またイヤホンなども取り揃えています。2010年に創業された比較的新しいブランドですが、デスクトップにも設置できるミニマムなサイズに、こだわりの音質技術が込められています。
「ERNESTOLONE PHONO EX」は、フォノ入力も搭載するプリメインアンプで、前段にオペアンプ(半導体)とJJ製の真空管「ECC802S」を採用しています。サイズ感を超えたパワーあるサウンドを聴かせます。取り扱い:(株)ユキム
Carot One「ERNESTOLONE PHONO EX」
AUDIO-TECHNICA(オーディオ・テクニカ)
予算:13万円〜
ヘッドホンやマイクでもよく知られるオーディオ・テクニカも、実は真空管アンプ製品を用意しています! 元々はレコードのカートリッジ製造からスタートした会社ですから、アナログ機材についてはどこよりも長い歴史とノウハウを持っていますね。
「AT-BHA100」は、前段に真空管「ECC83S」、後段に半導体を使用するハイブリッドモデルです。バランス接続のヘッドホン端子を搭載していますので、ちょっと凝ったヘッドホン再生を楽しみたい方はもちろんですし、スピーカー再生も可能。デスクトップで真空管を、という場合におすすめできるモデルです。
AUDIO-TECHNICA「AT-BHA100」
LUXMAN(ラックスマン)
予算:20万円〜
1925年に創業された国内でも有数の歴史を誇るラックスマン。真空管ならではの世界に浸りたい、という場合には大きな候補に上がるブランドでしょう。2020年に発売になった「SQ-N150」は、コンパクトなA4サイズに、フロントにVUメーターも取り付けたアナログライクな見た目もポイント。前段には「12AX7」を2本、後段に「EL84」を4本をプッシュプル構成で搭載しています。
他にも、300Bを出力段に搭載したパワーアンプ「MQ-300B」、「KT88」を搭載した「MQ-88uC」など、真空管の旨味を引き出すラインナップを揃えています。
LUXMAN「SQ-N150」
AIR TIGHT(エアータイト)
予算:95万円〜
国内のみならず、海外でも評価の高い真空管専門ブランド、エアータイト。価格もサイズも重量も、ぐっとハイエンドクラスです。なんと大阪・高槻市で熟練の職人達(通称:エアータイトガールズ)がひとつひとつ手作りで組み上げているそうです。まさに“メイド・イン・ジャパン”のものづくりの真髄を感じさせてくれます。
同社の「ATM-300R」は、まさに300Bの魅力を引き出すために生み出されたパワーアンプ。300B出力管は別売りで、好みの「300B」を取り付けて違いを楽しむことができるというのも、遊びココロの溢れるポイントです!
AIR TIGHT「ATM-300R」
https://www.phileweb.com/review/column/202105/04/1253_3.html
http://www.asyura2.com/09/revival3/msg/923.html#c24