6. 2021年3月31日 16:03:35 : BLypVMkkxE : b0Q4TnRZV05jQlk=[1]
ついに明るみに出た、超富裕層の脱税実態
堀田 佳男 2021/03/31
オフショアを使った税金逃れの手口がますます巧妙化している© JBpress 提供 オフショアを使った税金逃れの手口がますます巧妙化している
読者の方は漠然と気づいているはずである。多くの国民が脱税をしていることを――。
ただその不正行為が暴かれない限り、実態は表には出てこない。
高額所得者の脱税手口
米東部マサチューセッツ州ケンブリッジ市にある全米最大の経済研究組織「全米経済研究所(NBER)」はこのほど、「高額所得者の脱税:手口と証拠」という長文(77ページ)の論文を発表し、内外から注目を集めている。
全米経済研究所は1920年に創設された経済問題に特化したシンクタンクで、ノーベル経済学賞の受賞者35人のうち20人が同研究所の関係者であり影響力は大きい。
最初に、論文の結論から端的に述べさせていただききたい。
内国歳入庁(IRS:日本の国税庁)のエコノミストと大学教授が複数年に及ぶ調査を行った結果、米富裕層は所得の20%以上を申告していないことが判明した。
そればかりか、超富裕層と言われるトップ1%の人たちが脱税している額は、米国政府が被った脱税被害総額の3分の1に及ぶことも分かった。
より多くの稼ぎがあれば税額も大きくなり、「そんなに払いたくない」という人間の心理は容易に想像がつくが、脱税額は巨大である。
連邦政府が「取り逃がした」金額は、同論文によると年間1750億ドル(約19兆円)に達している。
これまでも米国の富裕層による脱税事件はたびたびメディアに取り上げられてきた。だが多くは単発の事件として扱われ、今回のように複数年にわたって全体を俯瞰できる論文はこれまでほとんどなかった。
論文を執筆したのはIRSのエコノミストであるジョン・ガイトン氏とパトリック・ランジェティーグ氏、さらに英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのダニエル・レック助教授、米カーネギー・メロン大学のマックス・リーシュ助教授、そしてカリフォルニア大学バークレー校のダニエル・ザックマン准教授の5人。
泣く子も黙るIRSは昔話に
IRSはかつて、米国では「泣く子も黙るIRS」と言われ、国税庁の職務の徹底ぶりは容赦ないとの評判があった。
しかし、近年は取り逃がしが多く、多くの抜け穴ができてしまっているのが現実だ。
IRSは司法省とともに長年、億万長者を対象にした脱税の捜査・取締りを行ってきてはいる。
だが納税者側は、脱税をしていても明白に犯罪と定義できないような手法を会得してきており、監査が入っても脱税となる証拠がほとんど示されないことも多くなっている。
同論文では、億万長者たちは専門の弁護士と会計士を雇用して徹底的な税金対策を施しているため、「合法的な租税回避と違法な脱税の区別が非常に曖昧になってきている」と記している。
それが租税回避の代表例といわれるオフショア(国外)での資産運用であり、不動産投資で利益を最大限に得られるパススルー課税、さらに「保全地役権」といった日本ではあまり馴染みのない権利を行為するなどの手法である。
ある億万長者は専門家からの指南を受けて、より高度な会計手法を駆使するようになったことで、2017年には数億円の所得があったにもかかわらず、支払った連邦税はわずか750ドル(約8万円)だったという例さえある。
さらに驚くべきことは、IRSの監査人が企業に調査に入っても、オフショア・ビジネスの全体像を捉えることは極めて困難になっているため、ある企業のオフショア資産の93%が見過ごされていたという事実もある。
IRSが適切な業務を行えなくなってきた理由がある。
それはIRSにかつてのような十分な予算と人的資源がなくなってきていることである。IRSのチャールズ・レティッグ長官は連邦議会での証言でこう述べている。
削減されてきたIRSの予算と人員
「2010年以降、IRSの予算と人員はそれぞれ20%ずつ削減されている」
同長官はこうした状況を踏まえて、「我々は『15分の名声』に生きている」という比喩的表現を議会の公聴会で使った。
つまり、内国歳入庁という役所は税金を徴取しはするが、短期間だけの名声であり、他の時間は批判され、苦難の道を歩んでいるというのだ。
さらに昨年からは新型コロナウイルスの蔓延によって、米政府の多額の予算がコロナ対策に回されたことで、今まで以上に脱税の取締りが困難を極めるようになってきた現実がある。
確かにIRSは2000年以降、オフショアの銀行口座を凍結するなど、積極的な対策を施してきてはいる。
だが論文の執筆者の一人、ダニエル・レック助教授は効果的と呼べるまでには至っていないと記す。
「IRSが取締りを強化したからといって、それで脱税がなくなる理由はありません。いま脱税に目を光らせる人たちは、メガバンクが富裕層の所得隠しを手助けしているとも指摘しており、脱税がなくなる方向にはありません」
ひと昔のように、単にスイスに資産を隠すといった時代は終わり、それ以外の国で複雑なネットワークを築き、積極的な税務体制を築き上げることで資産の確保をするようになってきている。
同論文ではさらに、脱税の実態だけでなく、IRSという米政府機関が高度なテクニックを駆使する脱税者に対抗するため、脱税を見抜き、首謀者を発見して起訴する「新たな道具」を獲得する必要があると提案している。
多くの事例が示すように、米政府機関は後手に回りがちになる。
というのも、億万長者たちは正規なルートでの納税を逃れるために新種の手口を絶えず案出してきており、それを取締まるための法令や規範が犯罪よりも先に来ることはないからだ。
司法省は捜査・取締りを強化することで、「脱税は犯罪」といった罪の意識を脱税者に抱かせると同時に、脱税者を監視・取締まる「新たな道具」を持って積極的に動いていかなくてはいけない。
https://www.msn.com/ja-jp/money/other/%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%AB%E6%98%8E%E3%82%8B%E3%81%BF%E3%81%AB%E5%87%BA%E3%81%9F-%E8%B6%85%E5%AF%8C%E8%A3%95%E5%B1%A4%E3%81%AE%E8%84%B1%E7%A8%8E%E5%AE%9F%E6%85%8B/ar-BB1f8lZd?ocid=msedgntp
http://www.asyura2.com/20/reki4/msg/1093.html#c6