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[原発・フッ素46] まるで、半殺しにされているようだ!! 赤かぶ
30. 2016年8月31日 21:21:26 : JjK2Nk5tyY : yX1w3ZzwYd0[1]
トリチウムは大丈夫ですか?

http://blog.acsir.org/

トリチウムの危険性 ―― 汚染水海洋放出、原発再稼働、再処理工場稼働への動きの中で改めて問われるその健康被害遠藤順子、山田耕作、渡辺悦司 2015 年 9 月 29 日 トリチウム(三重水素)は放射性物質であるにもかかわらず、人間と生物への影響が過小評価され続けてきた。その中でトリチウムは、原爆投下や水爆実験によって地球上に大量にばら撒かれ、原子力発電所や再処理工場からも日常的に放出され続けてきた。そして今まさに福島第一原発から気体および液体(トリチウム水)として放出され続け、さらにタンクにたまった汚染水はトリチウムを除去することなく海へ放出されようとしている。本稿では、トリチウムの物理化学的性質と生成のメカニズム、マウスを使った動物実験や核施設周辺での健康被害の事例を紹介し、今まで無視・軽視されてきたトリチウムの危険性を訴える。また、とくに青森県六ケ所再処理工場が本格稼働した場合のトリチウム大量放出の脅威を警告する。 目次 はじめに ―― なぜいまトリチウムが問題なのか ・・・・・・・・・・・・・ 2 第1節 トリチウムの生成と性質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 第 2 節 トリチウムの福島事故による放出と原発や再処理工場からの日常的放出 ・ 7 2-1. 福島原発事故による汚染水による危険性 ・・・・・・・・・・・・ 7 2-2. 原発や再処理工場からの日常的放出 ・・・・・・・・・・・・・・・ 10 第 3 節 トリチウムによる健康被害について ・・・・・・・・・・・・・・・ 11 3-1. ICRP の線量係数とその仮定の誤り ・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 3-2.低濃度のトリチウムの人間への影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 3-3. 世界各地の再処理工場や原発周辺で報告されている健康被害 ・・・・ 14 [カナダ] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 [アメリカ] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 [ドイツ] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 [フランス] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 [イギリス] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 3-4. 日本の核施設周辺で認められること ・・・・・・・・・・・・・・・ 18 2 [北海道泊原発] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 [佐賀県玄海原発] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 [青森県六ヶ所再処理工場・東通原発] ・・・・・・・・・・・・・・・ 20 [福島県いわき市] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 注記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 はじめに ―― なぜいまトリチウムが問題なのか 現在、トリチウムの危険性をめぐる問題は、放射線被曝をめぐる最大の争点の 1 つとなっている。@福島事故原発からのトリチウム汚染水の海洋投棄、A トリチウムを大量に放出する加圧水型原発の各地での再稼働、B桁違いに莫大な量のトリチウムを放出する再処理工場の稼働という 3 つの事態があわせて切迫しているからである。東京電力は、2015 年 9 月 14 日、事故原発建屋近くの井戸(サブドレン)から汲み上げ浄化したという汚染地下水の海洋放出を始めた。9 月 26 日までに、 3310 トンの汚染地下水が港湾に放出された。その目的は、原子炉建屋に流れ込んで汚染水化する地下水の量を減らすためだと報道されている。だがそれだけではない。もっと重大な目的が込められている。周知の通りトリチウムは ALPS (多核種除去設備)によって吸着回収ができない。東電と政府は、トリチウムを高濃度で含む大量の汚染水(60 万立方メートル注1)を希釈してすべて海洋放出する計画の実施に向かって動き出している。今回の汚染地下水の放出は、実際には、それに向けての第一歩にされようとしている。原子力規制委員会の田中俊一委員長は、早くから(2013 年 9 月から)「基準値以下のもの(汚染水)は海に出すことも検討しなければならない」と発言していた。原子力規制委員会は、2015 年 1 月、その方針に従って、早ければ 2017 年度からの処理汚染水の「規制基準を満足する形での海洋放出」を「中期的なリスクの低減目標」に明記した。国際原子力機関 IAEA も「基準以下の処理水の海洋放出を検討すべきだ」という見解を公然と表明してきた注2。今まで海洋放出反対の立場を取っていた福島県漁業協同組合が今回の地下水放出を容認したことで、この動きを今まで押しとどめてきた勢力配置の一角は大きく崩されてしまった。今回放出された「処理水」のトリチウム濃度は、1 リットル当たり 330〜600 ベクレルとされている注3。だが、政府の「規制基準」はこのおよそ 100 倍、1 3 リットル当たり 6 万ベクレルである。今回 1 回の放出量は 850 トンとされている。この量がおそらく現有の日量放出能力であろう。それが毎日稼働し続けたと仮定して、東電のトリチウム現存量推計(タンク中 830 兆ベクレル、後述)を前提とすると、大ざっぱな計算で、半減期を考慮に入れて、およそ 20 年程度で、現在汚染水タンクにたまっているすべてのトリチウム汚染水を放出することが可能となる。放出設備能力を増強すれば、さらに短期間で、すべての処理済み汚染水を排出することが可能となる。このように、汚染水海洋放出の準備は整いつつあり、大量のトリチウムの海洋放出、それによる日本近海だけでなく太平洋全体の海洋汚染が現実の脅威となりつつある。福島から太平洋に放出すれば、放射性物質は日本近海に広がるだけでなく、東に流れ、約 4 年でまずはアメリカ・カナダ東海岸を汚染することになる。さらに南に流れ、次に西転して南太平洋、東南アジア、インド洋に達する。また 20〜30 年後には日本に戻ってくる注4。汚染は太平洋・インド洋地域全体の深刻な問題になるであろう。今回の海洋放出は、これから再稼働が計画されている原発からのトリチウムの日常的な放出への突破口ともなろうとしている。政府・電力会社が先行して再稼働を進めている加圧水型(PWR)原発、とくに川内の次に再稼働されようとしている伊方原発は、トリチウムの発生量が大きく注5、瀬戸内海に放出されて滞留しやすいため危険度も高い。また重要な点は、この始まった海洋放出が、後述するように、原発とは桁違いの、とてつもない量のトリチウムを放出する再処理工場の稼働への突破口とされようとしていることである。自民党の河野太郎氏は、最近、再処理工場の稼働に反対し核燃料サイクル推進を止めるように求める見解を経済誌に寄せた注6。また、自分の公式ホームページでも、再処理工場稼働反対の主張を掲げている注7。そこで河野氏は、政府・自民党内の重要な情報を明らかにしている。「六ヶ所村に使用済み核燃料の再処理工場が造られ、この工場の稼働が迫っている」ということである。(追記:2015 年 8 月 16 日に、日本原燃は 2016 年 3 月に予定していた本格稼働の 2 年先への延期を発表した。これが、報道どおり原子力規制委員会の安全審査が遅れによるものなのか、だとすると安全審査がなぜ遅延しているのか、それとも何らかの安全上の重大な問題あるいは深刻な技術的なトラブルあったためなのかなどは、明らかにならないままである。とはいえ、規制委が数ヶ月後に差し迫っていた本格稼働を認めなかったという事実は重大である。それにもかかわらず政府は、2018 年 3 月の本格稼働の姿勢は崩しておらず、安全上・技術上の重大な問題がはっきりした中で、しかもわずか 2 年程度の猶予期間しかとらずに、本格稼働を強行することになれば、危険性はかえって高まるといわざるをえない。) 4 これら政府・電力会社側の動向に対応して、トリチウムの危険性を軽視し否定するマスコミなどの宣伝は強化されている。原発推進派の読売新聞は書いている。「トリチウムは透過力の弱いベータ線しか出さず、体内に取り込んだ時の内部被曝だけが問題となる。ただ尿や汗として排出されるので 10 日前後で半減する。… 国の放出基準(1 リットル当たり 6 万ベクレル)のトリチウムが含まれる水を毎日 2 リットル摂取するという極端な場合でも、年間の被曝線量は 0.79 ミリシーベルトで、国が定めた食品からの被曝量の上限値(1 ミリシーベルト)に達しない」と。6 万ベクレルでも何の健康影響もないというのである。同紙は、富山大学水素同位体科学研究センターの波多野雄治教授を引用して次のように結んでいる。「トリチウムは、他の放射性物質に比べて危険性は低いと言える。その性質をよく理解し、冷静に受け止める姿勢が大切だ」注8と。政府・支配層はトリチウムの大量放出を「冷静に」受忍せよと国民に要求しているのである。だがこれは本当であろうか? このような見解は科学的事実に合致するであろうか? これを検討するのがここでの課題である注9。 第1節 トリチウムの生成と性質トリチウムは水素の放射性同位元素である。通常の水素原子が正の電荷をもつ陽子1個と負の電荷をもつ1個の電子からできているのに対して、トリチウムは電荷をもたない中性子 2 個を陽子に加えて質量数 3 の原子核を持つ水素原子である(図 1)。中性子 1 個を水素原子に加えた場合の水素原子をデューテリウム、重水素と呼んでいる。トリチウムは三重水素とも呼ばれる。図 1 トリチウム概念図 5 中性子と陽子はほぼ重さが等しく、電子はそれら陽子、中性子に比べて約 1800 分の 1 の重さなので、トリチウムは通常の水素より 3 倍重い水素原子である。原子炉においては、ウランやプルトニウムが核分裂により 3 つに分かれる三体核分裂反応によって生じる(図 2)。また、重水素やリチウム、ボロンなどの軽い元素と中性子の反応によっても生じる。軽水炉でも 0.015%程度含まれる重水や水素が中性子を捕獲して生じた重水がさらに中性子を捕獲してトリチウムを発生する。原子炉では主に二酸化ウラン UO2 の三体核分裂反応で生じるが、そのトリチウムが燃料棒に蓄積される。事故や再処理などで燃料棒が破壊されると外部に放出される。図 2 三体核分裂とトリチウムの生成(模式図)参考文献:日本原子力学会「トリチウム研究会――トリチウムとその取り扱いを知るために」 http://fukushima.jaea.go.jp/initiatives/cat05/pdf/20140311.pdf “Ternary fission”, Wikipedia 英語版 https://en.wikipedia.org/wiki/Ternary_fission Edward L. Albenesius, et al., “Discovery That Nuclear Fission Produces Tritium” http://www.c-n-t-a.com/srs50_files/127albenesius.pdf 6 トリチウムの化学的な性質は、陽子と中性子から形成される原子核の周りに束縛されている負電荷をもつ電子によって決まるので、水素原子と変わりがなく、どこでも通常の水素に置き換わり、いろいろな原子と結合する。酸素と結合して通常の水 HHO から、トリチウム T を含む水 HTO となる。特に有機高分子化合物と結合して有機結合型トリチウムOBTになると体の一部となるので長く体内にとどまり、大変危険である。細胞の構成要素、特に遺伝情報を担う DNA 中の水素とも置き換わるので、次に述べるベータ崩壊(図 3)により DNA はじめ細胞が損傷される。図 3 トリチウムのベータ崩壊の概念図トリチウムは物理的な半減期約 12.3 年でベータ崩壊し、電子を放出し、正電荷の陽子 2 個、中性子 1 個で質量数 3 を持つヘリウム 3 になる。このベータ崩壊で放出される電子のエネルギーは、最大 18.6keV(キロ電子ボルト)、平均 5.7keV で小さく、射程距離は 1〜10µm 程度であるが、局所的な被曝となり狭い領域に集中的な被曝を与える。それ故、低エネルギーでもかえって危険である。もう一点危険なことは、水素原子がトリチウムに置き換えられると、ベータ崩壊で結合に寄与していた三重水素原子がヘリウム 3 になることにより、結合が切れることである。遺伝子で起こるといっそう危険である。トリチウムの危険性に関しては「広島 1 万人委員会」のサイトがすぐれた報告をしている注10。特に加圧水型の原子炉は、ボロンやリチウムを含むのでトリチウムの放出量が多く注11、同サイトは伊方原発の日常運転におけるトリチウム被曝の危険性を指摘している。トリチウムの健康被害については以下の諸点を確認しておくことが重要である。トリチウムが化学的には水素であり、HTO の形で水となり、通常の HHO の水と区別ができない。それ故、トリチウムを水から分離することができない。さらに、体内の有機体の高分子化合物の水素におけるトリチウムの濃度が環境における濃度と平衡になるように紛れ込む。遺伝子の DNA は水素結合や水素を持つから、置き換わったトリチウムのベータ崩壊によって重大な被害を受ける。 7 どのような原因であれ、環境中のトリチウム濃度の上昇は、水を通じてトリチウムを細胞内に取り込むので、生体にとって極めて危険である。気体の形で放出されたトリチウムが高分子化合物と結合した有機結合型トリチウムOBTを食事などを通じて体内の細胞に取り込むと、その重要な構成要素となり、容易に体外に排出されない。例えば次のような議論がある。「最近の雨水中のトリチウム濃度をリットル当たり2ベクレル/Lとして、この水を1年間摂取すると、実効線量は約0.00004 ミリシーベルトになる」。しかし、これは局所的な 10µm 程度の距離の領域の被曝を ICRP の方法で臓器を一様物体として平均して、ICRP の換算係数を用いて被曝の実効線量を求めたもので、根拠もない過小評価である。トリチウムのベータ線が低エネルギーだからといっても、内部被曝ではより危険でさえある。その理由は局所的・集中的被曝と後述のトリチウムの元素変換効果による。第 2 節 トリチウムの福島事故による放出と原発や再処理工場からの日常的放出 2-1. 福島原発事故による汚染水による危険性 上澤千尋氏は『科学』誌によせた論文「福島第一原発のトリチウム汚染水」(2013 年 5 月号)注12で次のように書いている。「セシウムの濃度を低下させた処理済みの汚染水のなかには,なおストロンチウム 89 および 90 をはじめとする放射性物質が,きわめて高い濃度で含まれている。処理済み汚染水から,プルトニウムなどのアルファ核種,コバルト 60,マンガン 54 などの放射化生成物,ストロンチウム 89 および 90 などの核分裂生成物など,62 の核種をあるレベル以下になるように取り除くために設置されたのが,多核種除去装置(Advanced Liquid Processing System、略称 ALPS)である。…多核種除去装置が用いる方法は,ろ過,凝集沈殿,イオン交換などの方法であり,水として存在するトリチウム(三重水素)を取り除くことはできない」。それ故、トリチウムはタンクに今も保存されざるを得ない。除染しても海にトリチウムを放出してはならない。東電や政府、原子力規制委員会はトリチウムの被害を過小に評価し、海などに投棄したいと考えている。それ故、トリチウム汚染による被曝がどのような危険性を持つのかは重要な問題である。 8 東京電力は以下のように発表している(東京電力「福島第一原子力発電所でのトリチウムについて」 2013 年 2 月 28 日)注13。「滞留水はサンプリング結果からトリチウム濃度が 100 万〜500 万 Bq/L程度であると考えられる」(多核種除去装置 ALPS ではトリチウムが除去できないことから処理した水、ならびに廃棄物に含まれる水にも同程度のトリチウムが含まれると考えられる)。これはトン当たりにすると 10 億 Bq/t〜50 億 Bq/t となる。毎日 400 トン汚染水が出るとすると4000億ベクレルから2兆ベクレルが毎日タンクに溜まっていることになる。もしタンクに溜まった総量が 70 万トンとするとトリチウムの総量は 700 兆から 3500 兆ベクレルとなる。東京電力の発表(2014 年 3 月 25 日時点)によれば、「三体核分裂反応」がトリチウムの「主な発生源」とするコード ORIGEN2 を用いた計算では福島原発 1 から 3 号機までの(掲載されている表の表題では 1〜4 号機となっている)トリチウムの総量が 3400 兆ベクレルとしている(表 1)。その内訳はタンク貯留水 830 兆ベクレルや建屋やトレンチ内の貯留水中 96 兆ベクレルや「その他」 2500 兆ベクレルとしている。注があり「その他」は「主に燃料デブリ内などに存在するものと想定される」としている。表1 東電による福島第1原子力発電所の事故原子炉(1〜4 号機)におけるトリチウムの量 9 出典:経済産業省「東日本大震災関連情報」ホームページ http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/140424/140424_02_006.pdf#search='%E4%B8%89%E4 %BD%93%E6%A0%B8%E5%88%86%E8%A3%82%E5%8F%8D%E5%BF%9C' 問題は、気体として大気中に放出されたトリチウムの量の記載がないことである。液体として海水中あるいは地下水中に漏れたトリチウム量も記載されていない。3400 兆ベクレルが事故時の総残存量なら、漏出量は「その他」に含まれていることになる。しかし、一方、東電は「事故前は評価結果のトリチウムのうち、約 60%程度が燃料棒の被覆管に吸蔵していたと考えられる」としているので、燃料棒に吸蔵されない 40%が水素や水蒸気などの気体として大気中に、また汚染水として海水中(あるいは地下水中)に放出された可能性もある。もしこの 40%が気体あるいは液体として大気中・海水中に放出されたとすると 3400×0.4=1360 兆ベクレルが放出されたことになる。もう一つ別の推計を試みてみよう。国連科学委員会のチェルノブイリ事故時の 4 号炉 1 基のトリチウムの総残留量の推定値は 1400 兆ベクレルとなっている注14。チェルノブイリではセシウム 134 と 137 の生成比が 0.55 対 1 である。福島ではその比が 1 対 1 であり、134 の割合が大きい。これは燃焼度が福島原発の方がチェルノブイリ原発より約 1.82 倍大きい結果と推定される。もしこの仮定が妥当で、UO2 の三体核分裂反応が燃焼度に比例するとして、福島原発事故炉とチェルノブイリ原発 4 号炉の出力比をおよそ 2 対 1 と計算すると、トリウム発生量は 1400 兆ベクレルを 1.82 × 2 倍して約 5100 兆ベクレルとなる。上記の東電の推計が大気中・海水中放出量をまったく含んでいないとすると、大気中・海水中への放出量は 1700 兆ベクレル、東電推計から導かれる大気中・海水中への放出量 1360 兆ベクレルを含んでいるとすると 3060 兆ベクレルとなる。これはストールによる福島事故のセシウム 137 放出量(3 京 6600 兆ベクレル)と 1 桁程度の違いで、十分比較可能な水準であり、トリチウムの被曝の影響を考慮すべき値となる。 いずれにせよセシウムと比較しても無視できない放出量である。 2015 年 4 月 1 日のロイターの発表注15では「福島第一には現在、900 兆ベクレル規模のトリチウムがたまっているが、事故前の 2009 年には年間 2 兆ベクレルを海に出している。電力各社が出資する日本原燃が青森県六ケ所村に建設した核燃料再処理施設は、本格操業した場合、福島第一でたまっている量の 20 倍規模となる 1.8×1016(1 京 8000 兆)ベクレルのトリチウムが1年間で排出される」という。ここでの 900 兆ベクレルは東電発表の汚染水中のタンク・建屋・トレンチの合計 926 兆ベクレルを用いているようである。政府は放出量の推計において、トリチウム放出量をなぜか一切発表していない。 10 日本のトリチウムの排出基準は 6 万 Bq/L つまり、6000 万 Bq/t である。これは ICRP 基準に基づき、内部被曝の局所性を無視し、被曝の具体性を無視した極端な被曝の過小評価を口実にした不当な基準である。 2-2. 原発や再処理工場からの日常的放出 原子力資料情報室の上澤氏によれば、加圧水型原子炉では,原子炉水中にホウ素とリチウムが添加されており,このため沸騰水型炉よりトリチウムの生成量が多いという。「広島 1 万人委員会」のサイトによると、四国電力のデータで、平均すると、稼働中は、年間 57 兆ベクレル、事故を起こした東京電力福島第一原発全体が 27 ヶ月間で出したトリチウムが約 40 兆ベクレルと言っているから、大雑把に言って、事故を起こした福島原発全体が毎年出すトリチウムの 2 倍以上を、四国電力の伊方原発は出していることになる。図 4 に見るように、再処理工場ではせん断・溶解工程で燃料棒を破壊することによって、燃料棒の中に閉じ込められていたトリチウムが外部に大量に放出される。燃料中のほとんど全てのトリチウムが放出される。これは大変恐ろしい事実であるが、一般にはほとんど知られていない。 図 4 再処理工場の基本工程
http://www.asyura2.com/16/genpatu46/msg/384.html#c30

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31. 2016年8月31日 21:24:19 : JjK2Nk5tyY : yX1w3ZzwYd0[2]
トリチウムは大丈夫か?

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トリチウムの危険性 ―― 汚染水海洋放出、原発再稼働、再処理工場稼働への動きの中で改めて問われるその健康被害遠藤順子、山田耕作、渡辺悦司 2015 年 9 月 29 日 トリチウム(三重水素)は放射性物質であるにもかかわらず、人間と生物への影響が過小評価され続けてきた。その中でトリチウムは、原爆投下や水爆実験によって地球上に大量にばら撒かれ、原子力発電所や再処理工場からも日常的に放出され続けてきた。そして今まさに福島第一原発から気体および液体(トリチウム水)として放出され続け、さらにタンクにたまった汚染水はトリチウムを除去することなく海へ放出されようとしている。本稿では、トリチウムの物理化学的性質と生成のメカニズム、マウスを使った動物実験や核施設周辺での健康被害の事例を紹介し、今まで無視・軽視されてきたトリチウムの危険性を訴える。また、とくに青森県六ケ所再処理工場が本格稼働した場合のトリチウム大量放出の脅威を警告する。 目次 はじめに ―― なぜいまトリチウムが問題なのか ・・・・・・・・・・・・・ 2 第1節 トリチウムの生成と性質 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 第 2 節 トリチウムの福島事故による放出と原発や再処理工場からの日常的放出 ・ 7 2-1. 福島原発事故による汚染水による危険性 ・・・・・・・・・・・・ 7 2-2. 原発や再処理工場からの日常的放出 ・・・・・・・・・・・・・・・ 10 第 3 節 トリチウムによる健康被害について ・・・・・・・・・・・・・・・ 11 3-1. ICRP の線量係数とその仮定の誤り ・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 3-2.低濃度のトリチウムの人間への影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 3-3. 世界各地の再処理工場や原発周辺で報告されている健康被害 ・・・・ 14 [カナダ] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 [アメリカ] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15 [ドイツ] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 [フランス] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 [イギリス] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 3-4. 日本の核施設周辺で認められること ・・・・・・・・・・・・・・・ 18 2 [北海道泊原発] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 [佐賀県玄海原発] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 [青森県六ヶ所再処理工場・東通原発] ・・・・・・・・・・・・・・・ 20 [福島県いわき市] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 注記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 はじめに ―― なぜいまトリチウムが問題なのか 現在、トリチウムの危険性をめぐる問題は、放射線被曝をめぐる最大の争点の 1 つとなっている。@福島事故原発からのトリチウム汚染水の海洋投棄、A トリチウムを大量に放出する加圧水型原発の各地での再稼働、B桁違いに莫大な量のトリチウムを放出する再処理工場の稼働という 3 つの事態があわせて切迫しているからである。東京電力は、2015 年 9 月 14 日、事故原発建屋近くの井戸(サブドレン)から汲み上げ浄化したという汚染地下水の海洋放出を始めた。9 月 26 日までに、 3310 トンの汚染地下水が港湾に放出された。その目的は、原子炉建屋に流れ込んで汚染水化する地下水の量を減らすためだと報道されている。だがそれだけではない。もっと重大な目的が込められている。周知の通りトリチウムは ALPS (多核種除去設備)によって吸着回収ができない。東電と政府は、トリチウムを高濃度で含む大量の汚染水(60 万立方メートル注1)を希釈してすべて海洋放出する計画の実施に向かって動き出している。今回の汚染地下水の放出は、実際には、それに向けての第一歩にされようとしている。原子力規制委員会の田中俊一委員長は、早くから(2013 年 9 月から)「基準値以下のもの(汚染水)は海に出すことも検討しなければならない」と発言していた。原子力規制委員会は、2015 年 1 月、その方針に従って、早ければ 2017 年度からの処理汚染水の「規制基準を満足する形での海洋放出」を「中期的なリスクの低減目標」に明記した。国際原子力機関 IAEA も「基準以下の処理水の海洋放出を検討すべきだ」という見解を公然と表明してきた注2。今まで海洋放出反対の立場を取っていた福島県漁業協同組合が今回の地下水放出を容認したことで、この動きを今まで押しとどめてきた勢力配置の一角は大きく崩されてしまった。今回放出された「処理水」のトリチウム濃度は、1 リットル当たり 330〜600 ベクレルとされている注3。だが、政府の「規制基準」はこのおよそ 100 倍、1 3 リットル当たり 6 万ベクレルである。今回 1 回の放出量は 850 トンとされている。この量がおそらく現有の日量放出能力であろう。それが毎日稼働し続けたと仮定して、東電のトリチウム現存量推計(タンク中 830 兆ベクレル、後述)を前提とすると、大ざっぱな計算で、半減期を考慮に入れて、およそ 20 年程度で、現在汚染水タンクにたまっているすべてのトリチウム汚染水を放出することが可能となる。放出設備能力を増強すれば、さらに短期間で、すべての処理済み汚染水を排出することが可能となる。このように、汚染水海洋放出の準備は整いつつあり、大量のトリチウムの海洋放出、それによる日本近海だけでなく太平洋全体の海洋汚染が現実の脅威となりつつある。福島から太平洋に放出すれば、放射性物質は日本近海に広がるだけでなく、東に流れ、約 4 年でまずはアメリカ・カナダ東海岸を汚染することになる。さらに南に流れ、次に西転して南太平洋、東南アジア、インド洋に達する。また 20〜30 年後には日本に戻ってくる注4。汚染は太平洋・インド洋地域全体の深刻な問題になるであろう。今回の海洋放出は、これから再稼働が計画されている原発からのトリチウムの日常的な放出への突破口ともなろうとしている。政府・電力会社が先行して再稼働を進めている加圧水型(PWR)原発、とくに川内の次に再稼働されようとしている伊方原発は、トリチウムの発生量が大きく注5、瀬戸内海に放出されて滞留しやすいため危険度も高い。また重要な点は、この始まった海洋放出が、後述するように、原発とは桁違いの、とてつもない量のトリチウムを放出する再処理工場の稼働への突破口とされようとしていることである。自民党の河野太郎氏は、最近、再処理工場の稼働に反対し核燃料サイクル推進を止めるように求める見解を経済誌に寄せた注6。また、自分の公式ホームページでも、再処理工場稼働反対の主張を掲げている注7。そこで河野氏は、政府・自民党内の重要な情報を明らかにしている。「六ヶ所村に使用済み核燃料の再処理工場が造られ、この工場の稼働が迫っている」ということである。(追記:2015 年 8 月 16 日に、日本原燃は 2016 年 3 月に予定していた本格稼働の 2 年先への延期を発表した。これが、報道どおり原子力規制委員会の安全審査が遅れによるものなのか、だとすると安全審査がなぜ遅延しているのか、それとも何らかの安全上の重大な問題あるいは深刻な技術的なトラブルあったためなのかなどは、明らかにならないままである。とはいえ、規制委が数ヶ月後に差し迫っていた本格稼働を認めなかったという事実は重大である。それにもかかわらず政府は、2018 年 3 月の本格稼働の姿勢は崩しておらず、安全上・技術上の重大な問題がはっきりした中で、しかもわずか 2 年程度の猶予期間しかとらずに、本格稼働を強行することになれば、危険性はかえって高まるといわざるをえない。) 4 これら政府・電力会社側の動向に対応して、トリチウムの危険性を軽視し否定するマスコミなどの宣伝は強化されている。原発推進派の読売新聞は書いている。「トリチウムは透過力の弱いベータ線しか出さず、体内に取り込んだ時の内部被曝だけが問題となる。ただ尿や汗として排出されるので 10 日前後で半減する。… 国の放出基準(1 リットル当たり 6 万ベクレル)のトリチウムが含まれる水を毎日 2 リットル摂取するという極端な場合でも、年間の被曝線量は 0.79 ミリシーベルトで、国が定めた食品からの被曝量の上限値(1 ミリシーベルト)に達しない」と。6 万ベクレルでも何の健康影響もないというのである。同紙は、富山大学水素同位体科学研究センターの波多野雄治教授を引用して次のように結んでいる。「トリチウムは、他の放射性物質に比べて危険性は低いと言える。その性質をよく理解し、冷静に受け止める姿勢が大切だ」注8と。政府・支配層はトリチウムの大量放出を「冷静に」受忍せよと国民に要求しているのである。だがこれは本当であろうか? このような見解は科学的事実に合致するであろうか? これを検討するのがここでの課題である注9。 第1節 トリチウムの生成と性質トリチウムは水素の放射性同位元素である。通常の水素原子が正の電荷をもつ陽子1個と負の電荷をもつ1個の電子からできているのに対して、トリチウムは電荷をもたない中性子 2 個を陽子に加えて質量数 3 の原子核を持つ水素原子である(図 1)。中性子 1 個を水素原子に加えた場合の水素原子をデューテリウム、重水素と呼んでいる。トリチウムは三重水素とも呼ばれる。図 1 トリチウム概念図 5 中性子と陽子はほぼ重さが等しく、電子はそれら陽子、中性子に比べて約 1800 分の 1 の重さなので、トリチウムは通常の水素より 3 倍重い水素原子である。原子炉においては、ウランやプルトニウムが核分裂により 3 つに分かれる三体核分裂反応によって生じる(図 2)。また、重水素やリチウム、ボロンなどの軽い元素と中性子の反応によっても生じる。軽水炉でも 0.015%程度含まれる重水や水素が中性子を捕獲して生じた重水がさらに中性子を捕獲してトリチウムを発生する。原子炉では主に二酸化ウラン UO2 の三体核分裂反応で生じるが、そのトリチウムが燃料棒に蓄積される。事故や再処理などで燃料棒が破壊されると外部に放出される。図 2 三体核分裂とトリチウムの生成(模式図)参考文献:日本原子力学会「トリチウム研究会――トリチウムとその取り扱いを知るために」 http://fukushima.jaea.go.jp/initiatives/cat05/pdf/20140311.pdf “Ternary fission”, Wikipedia 英語版 https://en.wikipedia.org/wiki/Ternary_fission Edward L. Albenesius, et al., “Discovery That Nuclear Fission Produces Tritium” http://www.c-n-t-a.com/srs50_files/127albenesius.pdf 6 トリチウムの化学的な性質は、陽子と中性子から形成される原子核の周りに束縛されている負電荷をもつ電子によって決まるので、水素原子と変わりがなく、どこでも通常の水素に置き換わり、いろいろな原子と結合する。酸素と結合して通常の水 HHO から、トリチウム T を含む水 HTO となる。特に有機高分子化合物と結合して有機結合型トリチウムOBTになると体の一部となるので長く体内にとどまり、大変危険である。細胞の構成要素、特に遺伝情報を担う DNA 中の水素とも置き換わるので、次に述べるベータ崩壊(図 3)により DNA はじめ細胞が損傷される。図 3 トリチウムのベータ崩壊の概念図トリチウムは物理的な半減期約 12.3 年でベータ崩壊し、電子を放出し、正電荷の陽子 2 個、中性子 1 個で質量数 3 を持つヘリウム 3 になる。このベータ崩壊で放出される電子のエネルギーは、最大 18.6keV(キロ電子ボルト)、平均 5.7keV で小さく、射程距離は 1〜10µm 程度であるが、局所的な被曝となり狭い領域に集中的な被曝を与える。それ故、低エネルギーでもかえって危険である。もう一点危険なことは、水素原子がトリチウムに置き換えられると、ベータ崩壊で結合に寄与していた三重水素原子がヘリウム 3 になることにより、結合が切れることである。遺伝子で起こるといっそう危険である。トリチウムの危険性に関しては「広島 1 万人委員会」のサイトがすぐれた報告をしている注10。特に加圧水型の原子炉は、ボロンやリチウムを含むのでトリチウムの放出量が多く注11、同サイトは伊方原発の日常運転におけるトリチウム被曝の危険性を指摘している。トリチウムの健康被害については以下の諸点を確認しておくことが重要である。トリチウムが化学的には水素であり、HTO の形で水となり、通常の HHO の水と区別ができない。それ故、トリチウムを水から分離することができない。さらに、体内の有機体の高分子化合物の水素におけるトリチウムの濃度が環境における濃度と平衡になるように紛れ込む。遺伝子の DNA は水素結合や水素を持つから、置き換わったトリチウムのベータ崩壊によって重大な被害を受ける。 7 どのような原因であれ、環境中のトリチウム濃度の上昇は、水を通じてトリチウムを細胞内に取り込むので、生体にとって極めて危険である。気体の形で放出されたトリチウムが高分子化合物と結合した有機結合型トリチウムOBTを食事などを通じて体内の細胞に取り込むと、その重要な構成要素となり、容易に体外に排出されない。例えば次のような議論がある。「最近の雨水中のトリチウム濃度をリットル当たり2ベクレル/Lとして、この水を1年間摂取すると、実効線量は約0.00004 ミリシーベルトになる」。しかし、これは局所的な 10µm 程度の距離の領域の被曝を ICRP の方法で臓器を一様物体として平均して、ICRP の換算係数を用いて被曝の実効線量を求めたもので、根拠もない過小評価である。トリチウムのベータ線が低エネルギーだからといっても、内部被曝ではより危険でさえある。その理由は局所的・集中的被曝と後述のトリチウムの元素変換効果による。第 2 節 トリチウムの福島事故による放出と原発や再処理工場からの日常的放出 2-1. 福島原発事故による汚染水による危険性 上澤千尋氏は『科学』誌によせた論文「福島第一原発のトリチウム汚染水」(2013 年 5 月号)注12で次のように書いている。「セシウムの濃度を低下させた処理済みの汚染水のなかには,なおストロンチウム 89 および 90 をはじめとする放射性物質が,きわめて高い濃度で含まれている。処理済み汚染水から,プルトニウムなどのアルファ核種,コバルト 60,マンガン 54 などの放射化生成物,ストロンチウム 89 および 90 などの核分裂生成物など,62 の核種をあるレベル以下になるように取り除くために設置されたのが,多核種除去装置(Advanced Liquid Processing System、略称 ALPS)である。…多核種除去装置が用いる方法は,ろ過,凝集沈殿,イオン交換などの方法であり,水として存在するトリチウム(三重水素)を取り除くことはできない」。それ故、トリチウムはタンクに今も保存されざるを得ない。除染しても海にトリチウムを放出してはならない。東電や政府、原子力規制委員会はトリチウムの被害を過小に評価し、海などに投棄したいと考えている。それ故、トリチウム汚染による被曝がどのような危険性を持つのかは重要な問題である。 8 東京電力は以下のように発表している(東京電力「福島第一原子力発電所でのトリチウムについて」 2013 年 2 月 28 日)注13。「滞留水はサンプリング結果からトリチウム濃度が 100 万〜500 万 Bq/L程度であると考えられる」(多核種除去装置 ALPS ではトリチウムが除去できないことから処理した水、ならびに廃棄物に含まれる水にも同程度のトリチウムが含まれると考えられる)。これはトン当たりにすると 10 億 Bq/t〜50 億 Bq/t となる。毎日 400 トン汚染水が出るとすると4000億ベクレルから2兆ベクレルが毎日タンクに溜まっていることになる。もしタンクに溜まった総量が 70 万トンとするとトリチウムの総量は 700 兆から 3500 兆ベクレルとなる。東京電力の発表(2014 年 3 月 25 日時点)によれば、「三体核分裂反応」がトリチウムの「主な発生源」とするコード ORIGEN2 を用いた計算では福島原発 1 から 3 号機までの(掲載されている表の表題では 1〜4 号機となっている)トリチウムの総量が 3400 兆ベクレルとしている(表 1)。その内訳はタンク貯留水 830 兆ベクレルや建屋やトレンチ内の貯留水中 96 兆ベクレルや「その他」 2500 兆ベクレルとしている。注があり「その他」は「主に燃料デブリ内などに存在するものと想定される」としている。表1 東電による福島第1原子力発電所の事故原子炉(1〜4 号機)におけるトリチウムの量 9 出典:経済産業省「東日本大震災関連情報」ホームページ http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/140424/140424_02_006.pdf#search='%E4%B8%89%E4 %BD%93%E6%A0%B8%E5%88%86%E8%A3%82%E5%8F%8D%E5%BF%9C' 問題は、気体として大気中に放出されたトリチウムの量の記載がないことである。液体として海水中あるいは地下水中に漏れたトリチウム量も記載されていない。3400 兆ベクレルが事故時の総残存量なら、漏出量は「その他」に含まれていることになる。しかし、一方、東電は「事故前は評価結果のトリチウムのうち、約 60%程度が燃料棒の被覆管に吸蔵していたと考えられる」としているので、燃料棒に吸蔵されない 40%が水素や水蒸気などの気体として大気中に、また汚染水として海水中(あるいは地下水中)に放出された可能性もある。もしこの 40%が気体あるいは液体として大気中・海水中に放出されたとすると 3400×0.4=1360 兆ベクレルが放出されたことになる。もう一つ別の推計を試みてみよう。国連科学委員会のチェルノブイリ事故時の 4 号炉 1 基のトリチウムの総残留量の推定値は 1400 兆ベクレルとなっている注14。チェルノブイリではセシウム 134 と 137 の生成比が 0.55 対 1 である。福島ではその比が 1 対 1 であり、134 の割合が大きい。これは燃焼度が福島原発の方がチェルノブイリ原発より約 1.82 倍大きい結果と推定される。もしこの仮定が妥当で、UO2 の三体核分裂反応が燃焼度に比例するとして、福島原発事故炉とチェルノブイリ原発 4 号炉の出力比をおよそ 2 対 1 と計算すると、トリウム発生量は 1400 兆ベクレルを 1.82 × 2 倍して約 5100 兆ベクレルとなる。上記の東電の推計が大気中・海水中放出量をまったく含んでいないとすると、大気中・海水中への放出量は 1700 兆ベクレル、東電推計から導かれる大気中・海水中への放出量 1360 兆ベクレルを含んでいるとすると 3060 兆ベクレルとなる。これはストールによる福島事故のセシウム 137 放出量(3 京 6600 兆ベクレル)と 1 桁程度の違いで、十分比較可能な水準であり、トリチウムの被曝の影響を考慮すべき値となる。 いずれにせよセシウムと比較しても無視できない放出量である。 2015 年 4 月 1 日のロイターの発表注15では「福島第一には現在、900 兆ベクレル規模のトリチウムがたまっているが、事故前の 2009 年には年間 2 兆ベクレルを海に出している。電力各社が出資する日本原燃が青森県六ケ所村に建設した核燃料再処理施設は、本格操業した場合、福島第一でたまっている量の 20 倍規模となる 1.8×1016(1 京 8000 兆)ベクレルのトリチウムが1年間で排出される」という。ここでの 900 兆ベクレルは東電発表の汚染水中のタンク・建屋・トレンチの合計 926 兆ベクレルを用いているようである。政府は放出量の推計において、トリチウム放出量をなぜか一切発表していない。 10 日本のトリチウムの排出基準は 6 万 Bq/L つまり、6000 万 Bq/t である。これは ICRP 基準に基づき、内部被曝の局所性を無視し、被曝の具体性を無視した極端な被曝の過小評価を口実にした不当な基準である。 2-2. 原発や再処理工場からの日常的放出 原子力資料情報室の上澤氏によれば、加圧水型原子炉では,原子炉水中にホウ素とリチウムが添加されており,このため沸騰水型炉よりトリチウムの生成量が多いという。「広島 1 万人委員会」のサイトによると、四国電力のデータで、平均すると、稼働中は、年間 57 兆ベクレル、事故を起こした東京電力福島第一原発全体が 27 ヶ月間で出したトリチウムが約 40 兆ベクレルと言っているから、大雑把に言って、事故を起こした福島原発全体が毎年出すトリチウムの 2 倍以上を、四国電力の伊方原発は出していることになる。図 4 に見るように、再処理工場ではせん断・溶解工程で燃料棒を破壊することによって、燃料棒の中に閉じ込められていたトリチウムが外部に大量に放出される。燃料中のほとんど全てのトリチウムが放出される。これは大変恐ろしい事実であるが、一般にはほとんど知られていない。 図 4 再処理工場の基本工程
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