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戦争繰り返さないために日本は… 石原さとみさんの思い
2016年8月14日00時08分 朝日新聞
俳優の石原さとみさん(29)は、ドキュメンタリー番組などで元日本兵や被爆者と出会い、戦争や体験の継承について考えてきた。戦後71年。「戦争のある世の中にしちゃいけない。じゃあ、日本はどういう立場でいないといけないんだろう」。主に若い世代に向け、語ってくれた。
石原さんが戦争について考えるきっかけとなったのは、20歳前後の頃に出演したテレビの複数のドキュメンタリー番組だ。戦争体験者から直接話を聞いた。
18歳。戦後も約30年間、フィリピンで潜伏した元少尉の小野田寛郎さん=2014年に91歳で死去=と旅をした。小野田さんは「おなかがすいていて、目の前に食べ物があったら、さとみちゃんはどうする」と尋ね、「食べたいでしょ? 殺されそうになったら生きるためにどうする? 人を殺すと思わない?」と語りかけた。
「子どもながらに怖いと思って、そう思うかもしれないけど、自分だったらそうするかなとか。すごく怖くなりました。そういうことにならない世の中にしないといけないと、ものすごく思いました」
20代前半には、長崎の被爆者が入所している原爆ホームを訪れた。知り合った女性には、昨年もプライベートで会ったという。
「原爆のことを思い出す作業すらつらいという人が多い、と聞きました。ホームでは被爆劇を上演している。当時の記憶で脚本を書いて、当時の格好をして、怖さを表している。他の人にはできないことだけど、苦しみから逃れることができないって、なんて残酷だろうとも思いました」
■知らないでいるのは罪
そして、今年。9月3日にNHK総合で放送される「ドラマ 戦艦武蔵」で、武蔵の乗組員だった祖父について調べる主人公を演じている。
石原さんの祖父母は戦争を体験した世代だが、戦争について深く聞いたことはない。「当時、何がつらくて、どうやって乗り越えたのか、何に幸せを感じていたのか、知りたいと思うようになりましたね」
アフリカを舞台とした映画「風に立つライオン」(2015年)への出演がきっかけで、昨年、NHKのドキュメンタリー番組で、かつて紛争があったウガンダを訪れ、元少年兵らと会った。その際、ある言葉が頭に浮かんだ。
《知らなくてはならないことを、知らないで過ごしてしまうような勇気のない人間に、わたしはなりたくありません》
沖縄戦をテーマに書かれた灰谷健次郎さんの小説「太陽の子」の一節だ。
「中1かなあ。読書感想文を書かないといけなくて。そのフレーズだけ思い出しました。知ったからには責任感を持たなきゃいけない。知らなくちゃいけないことを知らないでいるって罪だなって思うので」
知らなくてはいけないことは、たくさんあると考えている。「戦艦武蔵も長崎の原爆ホームも小野田さんもそうだけど、知れば絶対にこんなことしちゃいけないって思います。そのために、先を見ないといけないとも思います。戦争のある世の中にしちゃいけない、じゃあ、日本はどういう立場でいないといけないんだろう、とか」
■「シン・ゴジラ」が表すもの
7月に公開された映画「シン・ゴジラ」にも出演している。ゴジラという存在を現実と重ね、「核」についても考えるようになった。
「ゴジラって、水爆実験から生まれたってことを知らなかった。放射性廃棄物をえさとして食べて化学反応を起こしたということを知り、ゴジラって何なんだろうって台本から探っていきました。ゴジラって何を表しているんだろうと」
演じた役は、日系3世の米国の特使。核兵器使用を巡り、カギを握る役どころだ。石原さんの思いは、現職の米大統領として5月に初めて被爆地・広島を訪れたオバマ氏にも及ぶ。
「オバマさんの広島訪問は、すごいことだと感じました。被爆した方を抱きしめられて献花されて。自分は当事者じゃないにしろ、今までの71年を背負っている人間の行動として。落とした側ですよ?」
「71年後に広島に来て、ああいうことをしてくださって、日本のトップの皆さんは、どう受け止めたんだろう。絶対にしちゃだめだよ、核を一緒に廃絶していきましょうね、って思うのかどうなのかって」
戦争や原爆。過去を知り、今に目を向けることの大切さを語る。体験のない世代ができることは。
「どういう形ででも、当時のことを知る勇気を持つこと。知ったからには、その感情を、思ったことを誰かに伝えることも大事ですし、それが事実だということを知ることも大事です。今生きているうえで、同じことが繰り返されちゃだめだよねということを、声を大にして言っていかなきゃいけない」(岡田将平)
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いしはら・さとみ 1986年生まれ。東京都出身。2002年、第27回ホリプロタレントスカウトキャラバン「ピュアガール2002」でグランプリ受賞。03年、NHK連続テレビ小説「てるてる家族」のヒロインに。出演作に「北の零年」(05年)、「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」(15年)など。
戦争関係では、TBS系終戦60年企画「おじいちゃん、本当のことを聞かせて〜石原さとみと小野田寛郎の戦争と平和を巡る旅」(05年)、テレビ朝日50周年記念特別番組「原爆〜63年目の真実」(08年)のドキュメンタリー番組に出演した。