1. 2016年1月11日 12:09:59 : W37UQ4bWik : ep1m1@oOnK0[1]
(日曜に想う)今年、分かれ道に立つ日米 特別編集委員・星浩
2016年1月10日05時00分
昨年11月上旬、来日中の米連邦議会のスタッフ7人と日米関係などについて意見交換する機会があった。ひと通り話した後、私から「米大統領選の共和党候補指名争いでは、不動産王のトランプ氏が優位に立っているが、彼は勝てるのか」と水を向けたら、一瞬、気まずい雰囲気になった。
「米国民には、ワシントンで進められている政治への不信感が強い。トランプ氏は、その心理をうまくかき立てている。私たちも批判の対象だ」という説明が続いた。それでも「トランプ人気はいずれしぼむ。週単位では難しいが、月単位では確実に支持率が下がるだろう」という発言には、全員がうなずいていた。「最終的には、民主党のクリントン前国務長官と共和党のルビオ上院議員の争いになるだろう」という予測が7人中4人だった。
「月単位」で2カ月が過ぎたが、トランプ人気は衰えを見せていない。カリフォルニア州での銃撃テロに関連して「イスラム教徒の入国禁止」を叫んだトランプ氏には、有力政治家から批判が相次いだのに、支持率は急上昇したという調査結果もあった。
自由や寛容といった建国の精神とは大きく隔たるトランプ流ポピュリズム(大衆迎合)に、どう向き合うのか。それは、今年の米国政治の大きな分かれ道になるだろう。
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そして、日本も節目の年である。まず集団的自衛権の行使容認に伴う安全保障法制が問い直されなければならない。「憲法違反」との指摘が相次いだなか、政府・与党が採決を強行した一連の法律が3月には施行され、この通常国会で再び大きな論点となる。
法律の問題点をうまく説明するにはどうすればよいか――。考え込んでいたら、安保法制を担当した外交官の話を思い出した。昨秋、転勤が決まり、法案づくりで世話になった内閣法制局にあいさつに行った時、幹部から釘を刺されたという。「これからは米国に『ノー』と言えるかどうかが大事だ。日本外交をずっと見ているぞ」
確かに、ここがポイントだ。米軍支援のために自衛隊の派遣をたびたび迫ってきた米政府に対し、外務省など日本側はこれまで「憲法解釈上、派遣できない」「派遣のための法律がない」ことを理由に断る場面が多かった。新しい安保法制下で状況は一変する。限定付きとはいえ、米軍への攻撃を「日本への攻撃と見なして」自衛隊が武力行使に踏み出すことが法律上、できるようになるのだ。
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協力を求める米側に、日本の政権が「法律上はできるが、政治決断としてやらない」と言い切れるかどうか。戦後日本の「対米追随外交」を振り返れば、「ノー」と言うには政治リーダーの強い意志が欠かせないと思うが、昨年の法案審議のなかでは、この点の議論は深まらなかった。この通常国会でこそ、安倍晋三首相と岡田克也民主党代表らの深い論争を期待したい。
経済や財政はどうか。自由な立場で永田町をながめている武村正義元官房長官から最近、こんな指摘を受けた。
「安倍内閣の支持率が高い理由は簡単。国民の痛みを伴う政策を進めていないからだ。8%から10%への消費増税も延期したし、社会保障の負担増も避けている。それによって、ツケは後の世代に先送りだ。メディアはそこを伝えなくてはいけないのに、役割を果たしていない」
確かに、今年度の補正予算案では低所得の高齢者らに1人3万円を配る臨時給付金が盛り込まれているし、来年度予算案では、医療費の負担見直しなど社会保障の抜本改革は見送られた。17年4月からの消費増税を予定通り実施するか、再び延期するか。今秋までには最終決定しなければならない。
政治家が対立点を明確に示し、メディアがきちんと伝え、有権者が熟慮して票を投じる。民主主義の大切な回路を築き上げるという意味でも、分かれ道になる2016年である。
http://www.asahi.com/articles/DA3S12152466.html
http://www.asyura2.com/16/senkyo199/msg/496.html#c1