20. 低所得症候群[93] kuGPipO@j8eM84xR 2016年9月22日 09:55:51 : gD7cmYdD0A : YUOmsbx9IJw[1]
>16さんへの回答
>>Reviewというのは、Reviewの対象となったmanuscriptに対して科学的な評価を行う作業です。
ですので、この場合、Aizawa論文をどう評価するかがReviewerであるAustin Smith氏の仕事です。
私は科学論文に関するさしたる知見もないので強く主張するつもりはありませんが、少なくとも言えることは、スミス博士によるこのReviewは、相沢論文に関し「科学的な評価を行う」というよりも、むしろ「許容可能な科学的水準を満たしていることを確認する」(“to confirm that it is of an acceptable scientific standard”)ことがその目的であると理解しています。
つまり、相沢論文の研究テーマに妥当性があるかどうか、そして科学論文としての要件を不足なく備えているかどうかを判定することが、ここでのスミス博士の仕事であるということです。
何故なら、これはいわゆるレビュー論文(Review articles)ではなく、査読(Peer Review)だからです。
スミス博士はInvited Referee(招待査読者)として、すなわち請われて査読を引き受ける形でこれを行い、Reviewの後段(>15の拙試訳にない部分)では、査読の常として、この論文(の査読用初校)の中で修正の余地のある個所に関しそれぞれsuggestion または questionの提示、あるいはerrorの指摘を行っています。そしてその上で科学技術情報プラットフォーム『F1000Research』に相沢論文を掲載することについて「諾」(許容可能な科学的水準を満たしている)の判定を下したわけです。
>>Austin Smith氏はAizawa論文を高く評価しています。その理由は、Obokataが作った”STAP”細胞でも、STAP論文の内容を再現できなかったことをAizawa論文が示したこと、に尽きます。
上で述べたことから判るように、査読で「諾」の判定を行うことは、対象論文を高く評価することと同義ではありません。
このReviewの中で相沢論文に対する‘評価’は以下のような文言の中に示されています。
・This study is therefore a valuable service to the community. (それ故にこそ、この研究は 我々研究仲間この分野に携わる者たち にとって価値あるものとなっている。)←研究テーマの妥当性に関わる評価
・The study design, results and interpretation are clearly presented. (この研究の設計および結果と解釈は明瞭に提示されている。)←科学論文としての内実に関わる評価
・This is a helpful clarification for the field. (この分野にとって、このことが明確化されたことは有用である。)←科学論文としての内実に関わる評価
>>そんなReviewの中で、「小保方女史を評価している」という貴殿の評価が、私にはさっぱり解りません。具体的にどこが「小保方女史を評価している」箇所なのか、指摘して頂けますか?
私が「小保方を評価」と考える根拠として重視するのは、Reviewの中の次の一文です。
“However, I do not think there is any requirement for her to be a co-author because she carried out the work under the explicit direction and supervision of Dr Aizawa.”(しかしながら、私は、Ms Obokataが共著者として名を連ねる必要性は一切ないと考えている。なぜなら、彼女はこの作業をDr Aizawaのexplicitな(曖昧さを排し細部まで事細かく規定した)指示と監督下において行ったのであるから。)
この一文をどう読み取るかが決め手になるわけです。
端的にいうと、「Dr Aizawaのexplicitな指示と監督」を再現への‘最適な手段’と捉えるか ‘適切さを欠いた手段’と捉えるかの違いであり、前者の場合は「どうやっても再現できない」、後者の場合は「別の方法であれば再現可能」となり、相反する見方に帰着するのです。
私は後者の立場を支持しますが、その根拠の一部として、次の2つの客観的事実を指摘しておきたいと思います。
〔1〕
故笹井博士はNature論文取り下げ問題の渦中にあった2014年04月16日の記者会見で、(1)ライブセルイメージングの観察より死細胞の自家蛍光ではないこと、(2)STAP細胞は非常に小型であり遺伝子発現パターンでもES細胞と一致しないこと、(3)キメラマウス実験においてES細胞の混入では一つの細胞塊にならないこと、(4)胎盤等への細胞貢献がおきないこと、などから「STAP現象は検証する価値のある合理性の高い仮説」「STAP現象が最も有力な仮説と考えられる」と言明した。
(同じ再生医療分野の研究者であるスミス博士が当時最先端で活躍していた笹井博士の当時の見解に不案内であったとは考えにくいことです。)
〔2〕
再生検証実験のやり方を相沢博士自身が報道陣の前で自己批判していた。
下は博士自身の言葉を伝える当時のメディア記事です。東洋経済オンラインやITmediaニュースなど他メディアでも同じ内容を確認することができます。
検証実験は小保方氏「犯罪人扱い」 チームリーダーが異例の自己批判
(2014年12月19日 14時10分 J-CASTニュース)
検証実験でもSTAP細胞を再現できなかったことを報告した理化学研究所の会見の直後、責任者の相澤慎一チームリーダーが会見場に引き返し、異例の自己批判をする一幕があった。
今回の検証実験は「科学のやり方」ではなく、小保方氏を「犯罪人扱いをしたような形」になったことに「責任を感じている」と陳謝した。
一度は会見場を退出して、すぐに戻ってきてマイク持つ
小保方氏が2014年11月末まで行った検証実験では、専用の実験室が設けられ、カードキーで入退室記録を管理し、室内や出入り口にカメラを設置して24時間モニターで監視。実験にも第3者が立ち会うなど、異例の体制がとられた。
2014年12月19日に2時間以上にわたって行われた会見後、相澤氏らは一度は会見場から退出したが、すぐに相澤氏だけ再登場。マイクを持ち、このように述べた。
「この実験がどう元々行われたかは別として、検証実験、特に小保方さんの検証実験を、このようにモニターを置いたり、立ち会い人を置いたりして検証実験するというのは、科学のやり方じゃないと思う。科学のことは科学のやり方で処理しなければならないので、そういう風な検証実験をしてしまったことに対して、検証実験の責任者としては、ものすごく責任を感じている」
検証実験は「私から見ても、明らかに大きな制約があったと思う」
その上で、今回の検証実験が悪しき先例にならないように注文を付けた。
「今後何かあるたびに、このように犯罪人扱いをしたような形で科学の行為を検証するということは、科学にあってはならないことだと思っている。そのことに関しては深く検証実験責任者として、お詫びを申し上げるとともに、責任を痛感している。そのことを、こういう形で大変恐縮だが、お詫びさせていただきたい」
スミス博士はReviewの中で、
検証実験が“under the explicit direction and supervision of Dr Aizawa”で行われたこと
そして“in supervised conditions”では再現できない(cannot be reproduced)こと
を明記しています。
単に再現できないのではなく、「監督されたときの条件下では」再現できないということです。
スミス博士の立場も、全部否定ではなく、部分否定なのです。
以上が、私がAustin Smith博士は小保方女史を評価しているとする根拠です。
http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/410.html#c20