2. 2016年9月10日 07:16:40 : KMRaHnM0hk : DaVmUA_gkOA[1]
国際海洋法には公海の自由航行が保障されており、それらは海洋法を批准した国々が決められた海域(公海および領海)を何の制限もなく自由に航行できると定められている。
つまり、航行する側が領有する国に害を及ぼさない限り、領海でも航行できるということである。
これを無害通航権という。
米国が南沙領有問題で岩礁を埋め立てて人工島を作り面積を広げたから領海も広がったと主張する中国に対して、自然物以外の人工物で領海の範囲が変わることはないと海洋法で決められている航行の自由を妨げる行為は認められないと従来の航行範囲に軍艦を走らせてけん制している理屈もそれである。
米国は公海の自由作戦と称して海洋法に則った航行をしているだけで、中国を刺激しているわけではないと中国に事前通告しており、海洋法に批准している中国も表向きでは米国に不遜な態度を見せてはいるが、受け入れざる得ないことは十二分に承知している。
さて、尖閣に対してだがこれは主に日本と中国の領有問題であり、領海が日中いずれにあるのかは両国それぞれが自分にあると主張し合うだけで国際的にいずれかの主張が認められたわけではない。
ただ、領有を主張する一方の国が勝手に警察、軍の監視塔とか人員を配置して領有を事実化すれば印象的には領有の既成化は出来上がってしまう。
いわゆる実効支配というものである。
その意味で言うなら、尖閣は日本政府が買い上げたという事実を以ってここは日本の領土だと全世界に示してみせたことは実効支配と言えるわけだが、それはあくまで日本の都合と理由で合って中国にとっては意味を成さないことは言うまでもない。
まして、では日本がもっとわかりやすく、たとえば韓国が独島として見張りの人員を配置し監視塔も常設した竹島のような実効支配をなぜ尖閣でやらないのかという疑問も出てくる。
国際海洋法では領土問題を武力に訴えることを禁じている。
それは航行の自由を保証した国際海洋法に抵触する恐れがあるからで、実効支配とはあくまで仮の支配であって獲った獲り返したを武力で争うことを目的にしてはいけないという決まりからすれば、実はギリギリの戦術でありコストに見合わない。
わかりやすく言うなら、日本が尖閣で韓国のようにわかりやすい実効支配をすれば中国がわかりやすい反撃をしてくるであろうことを以って、武力衝突を招きかねない実効支配を施した側にも海洋法違反の誹りを免れない恐れがあるからだ。
ここが領土問題のややこしいところで、領有宣言したからといってそれで宣言した側の権利が担保されたわけでも、主張が正義となったわけでもない。
中国が米国を真似て、尖閣諸島を航行の自由であると領海を航行することは海洋法に照らしていえば合法である。
もちろん中国側が尖閣を奪うとか害を及ぼさない意思を見せることが不可欠であるが、中国側の航行の自由を否定することはできないと考えるのが普通だろう。
米国が尖閣問題で日中どちらにも与しないと明言するのは、以上から当然のことである。
その米国であるが、国際海洋法を持ち出して公海の自由を盾に裁定者を気取ってはいるものの、米国は肝心の国際海洋法に批准しておらず、いわば自分たちだけは海洋法に縛られずどの国の海も自由に航行できると我が儘を通してきた。
中国が米国を見て、言っていることとやっていることの落差を逆に利用してやれと目論んだとしたら、それは当然すぎる逆襲だろう。
この記事にあるように米国が日本の領土問題に介入できる口実を中国に作らせる膨張政策の欠点という指摘は、実は米国にこそ当てはまる皮肉を中国が突いて出てきているという反撃によって覆されている現実を欠いている。