47. 2016年5月25日 11:38:01 : EoLxsASOmk : 7wbE6KtTekE[1]
2016.5.25 01:00
【日米同盟が消える日(下)】
「安保ただ乗り論」は本当? 駐留費負担、実は世界でも突出…米軍人を日本の傭兵にする気なのか
http://www.sankei.com/politics/news/160525/plt1605250003-n1.html
各国の駐留米軍に対する費用負担(2002年)「@負担額A負担率」
http://www.sankei.com/politics/photos/160525/plt1605250003-p1.html
日本:@44億1134万ドルA74.5%
サウジアラビア:@5338万ドルA64.8%
クウェート:@2億5298億ドルA58.0%
スペイン:@1億2726億ドルA57.9%
トルコ:@1億1686億ドルA54.2%
イタリア:@3億6655万ドルA41.0%
韓国:@8億4281万ドルA40.0%
ドイツ:@15億6393億ドルA32.6%
英国:@2億3846万ドルA27.1%
「なぜ、米国は自主防衛の余裕のある国を守るための支払いを止めるべきなのか」
米大統領選で共和党候補指名を確実にした不動産王、ドナルド・トランプ氏が意見広告で問題提起したのは、1987(昭和62)年9月にさかのぼる。日米貿易摩擦が激しかった80年代、米国では日本の「安保ただ乗り論」が吹き荒れていた。トランプ氏の対日認識は、その時点から変わっていないことになる。
日米同盟は、日本が米軍駐留を認め、基地を提供する一方、米国だけが日本の防衛義務を負う非対称の側面を持つ。そこに「ただ乗り論」が浮上する構造的な理由がある。ただ、トランプ氏のいうように、日本はそれに見合う適正なコストを支払わず、同盟にただ乗りしているのだろうか。
日本は在日米軍の駐留経費として、別枠計上の米軍再編関連予算などを除き、平成28年度予算で約5818億円を計上し、地代や周辺対策費、基地で働く人の人件費などに充てている。
そのうち、しばしば取り上げられるのが「思いやり予算」と称される接受国支援(ホスト・ネーション・サポート)だ。日米地位協定上は支払い義務のない負担で、昭和53年度から計上され、平成11年度に2756億円とピークを迎えた後は漸減。28年度は1920億円となっている。
そうした日本の負担が、米軍が駐留する国の中で突出して高いことは、米国防総省が2004年に公表した報告書が示している。報告書によると、02年に日本が駐留米軍1人当たりに支出した金額は約10万6000ドル(約1155万円)。日本側の負担割合は74.5%でサウジアラビア(64.8%)や韓国(40%)、ドイツ(32.6%)などを大きく上回っていた。
トランプ氏は「なぜ100%ではないのか」と全額負担を求めるが、それは米軍将兵の人件費や作戦費まで日本が負担することを意味する。
「米将兵の人件費まで日本が持てば、米軍は日本の『傭兵(ようへい)』になってしまう。国益のために戦う米軍人の誇りを傷つけるだけで彼ら自身が嫌がる」。前海上自衛隊呉地方総監の伊藤俊幸氏はこう指摘する。
日本の負担は米軍駐留に反対する勢力の批判の的になってきた半面、「安保ただ乗り論」への反論材料でもある。さらに、沖縄の基地問題にみられるように、国土を提供することの「重み」や政治的コストは数字に代えがたいものがある。
日本は自衛隊の海外派遣など人的貢献も強化し、米国が主導する国際秩序の維持に貢献してきた。集団的自衛権の行使を柱とする安全保障関連法は、さらにその領域を広げる。
ケビン・メア元米国務省日本部長が「日本が駐留経費負担だけでなく、日本の防衛能力を向上させ、集団的自衛権が行使できるようになったことを理解していない」と指摘するように、日米関係に通じた米側の政策当局者や識者には、日本の貢献は高く評価されてきた。
日米同盟の「受益と負担」の関係は金銭だけでは測れない。ドナルド・トランプ氏に欠けているのは、日米同盟によって、米国自身が死活的な国益を確保しているという視点だ。
「米国の世界の貿易額のうち、約6割がアジア太平洋諸国であり、その国益を維持するのが在日米軍などのプレゼンス(存在)だ。引けば損するのは米国だ」
元防衛相の森本敏拓殖大総長はそう指摘する。
日本国内には約130カ所の米軍基地がある。海兵隊が米本土外で司令部を置くのは沖縄だけだ。西太平洋からインド洋までを作戦海域とする米海軍第7艦隊は神奈川・横須賀を拠点とする。後方支援機能を含め、日本は「米軍の地球規模での作戦行動を支える上で、代えることができない戦略的根拠地」(防衛省幹部)というわけだ。
日米同盟の役割は軍事面にとどまらない。東日本大震災や2013(平成25)年のフィリピンの台風災害で、米軍は自衛隊と共同で救援活動を行い、多くの人命を救った。元在沖縄海兵隊政務外交部次長のロバート・エルドリッヂ氏は日本にある海兵隊基地や台湾、フィリピンなどを大規模災害に備える救援拠点とし、ネットワーク化する構想を提唱している。「軌道に乗れば、より幅広い分野の安全保障協力に発展していく」と期待を込める。
日米はそれぞれがコストを支払い、死活的な国益を守っている。その恩恵はアジア太平洋全域に及ぶ−。ただ、そうした理屈が通用しないのが「トランプ現象」の根深さだ。
神保謙慶応大准教授(国際安全保障)は「エリートがきれいな言葉で語る同盟論はトランプを支持する素朴な米国民の心には届かない」と指摘する。森本氏も「米国民は世界の警察官の役割を果たすために海外で何千人もの兵員が傷ついているのに、同盟国が必要な対価を支払っていないと不満を表明している。日本が駐留経費負担をいくら増やせばいいという話は全く本質ではない」と分析する。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが4月に全米で実施した世論調査では、57%が「米国は自己の問題に取り組み、他国のことは他国に任せるべきだ」と回答。「他国を助けるべきだ」は37%にとどまった。別の調査では、10年時点で2つの回答は拮抗(きっこう)していた。多くの識者は、トランプ氏が大統領になるかどうかにかかわらず、米国の「内向き志向」は続くと予測する。
米国の世論が今後、日本にさらなる負担を求めてくることは間違いない。ただ、それを負担とだけ捉えるのは一面的に過ぎる。
戦後日本は経済優先で、直接的な防衛予算を国内総生産(GDP)比で実質1%と低い水準に抑える代償として、米軍駐留費など「自立性」を犠牲にするコストを高く支払ってきた。
「負担の割合を変えなければならない。米軍駐留経費を増やすくらいなら直接的な防衛予算を増やすべきだ。それはトランプ氏の問いに答えることにもつながる」。防衛大の武田康裕教授はこう提言する。
森本氏は、人工知能やサイバー空間など、技術面での日米協力がカギになると指摘。同盟内での貢献拡大の在り方について「われわれが主体的に考えなければならない。日本が同盟をどういう形にするかを提案する時期が年内にも来るのではないか」とみている。
「予測不可能であること。これこそが私のよき資質の一つであり、私に大金をもたらすことになった」
トランプ氏は昨秋に出版した著書で、そう誇った。日米同盟は今後、先行きを予想できない不安定な時代を迎えるかもしれない。しかし、日本では、集団的自衛権行使の合憲性など、米国とは別の意味で「内向き」の議論が横行する。
「日本では机上の空論のような安全保障論が繰り返されてきて、トランプ氏の提起に応える知的準備ができていない。それが一番恐ろしいことだ」
キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦研究主幹はそう語る。「同盟解体」は今の時点では現実味は乏しい。だが、暴言と聞き流すだけでは、いつの日か現実のものとなりかねない。トランプ氏の「劇薬」は長年、日本人が直視を避けてきた現実を付きつけた。自民党国防族の一人はいう。
「黒船の来航だ。日本は戦後70年の太平の眠りから目覚めるときになるだろう」
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この企画は千葉倫之、石鍋圭、小野晋史、ワシントン 加納宏幸が担当しました。
http://www.asyura2.com/16/senkyo206/msg/498.html#c47