3. 2015年12月14日 18:49:14 : mIeuJoV5ws : 1offSXoRnyI[1]
リビアはシリア以上に厄介だと言われているのは、イスラム国のリビア伸長だけではない。
統一政府にもあるようにリビアに横たわるトリポリとベンガジの支配権構造がある。
そしてアラブ系とアフリカ系との対立もある。
カダフィは世俗主義のナセル主義者でありながら、議会も議員も置かずリビア人民による合議合意を基本にジャマ〜ヒリ〜ヤという政治体制を敷いた。
とはいうものの、君主も大統領も置かず指導者は必要ないと説いたカダフィ自身が、クーデターで現政治体制を作り上げたわけであるから、事実上はカダフィがリビア人民の上に君臨する構造は変わらなかった。
もっともこれはカダフィに限らず、政治思想や支配構造の差異はあっても、フセインにしてもアサドにしても地政学的な意味において、志向するものは同じであった。
一方でイスラム急進主義に代表される復古主義者や、分離独立を画策する民族主義者に対しては容赦なく弾圧、圧殺した。
フセインもアサドも同じことをやって、これが欧米の人権団体や政治グループから非難の的になっていたことは、いうまでもないことであった。
しかしリビアの場合、イラクやシリアと異なるのは前述したように、深刻なアラブ系とアフリカ系との対立である。
ここに長年の支配構造において損得の差に苦しめられてきた積年の恨みつらみを晴らそうとカダフィ追い落としに協力した勢力と、カダフィ時代に得を享受してきた勢力が、カダフィ亡き後に失った権益を取りもどそうとして互いにぶつかりあう対立図が被さっている。
統一政府にとってISは共通の敵だとして共に戦う合意ができたとしても、アフリカ系のイスラム勢力にもISに近い連中がいるのが現状であり、何が何やら捉えきれないほどに混乱しているのがリビアの現状。
統一政府すら今後も統一が維持できる確証はない。
なぜならリビアという国自体が国家意識が薄いからで、カダフィ自身がリビアはアラブに連帯するのかアフリカに連帯するのかで右往左往したくらいだったから。
カダフィを追いやり潰したツケは重すぎるほどに重たいのである。