15. 2017年1月14日 07:04:05 : 4CEDFZBo86 : w0rijpHbbA4[3]
日本はテロ関連条約のうち「核よるテロリズムの行為の防止に関する国際条約」を除く全てを既に批准している。
条約上の行為を既に国内法で犯罪と規定していて、国際的越境犯罪が未遂に至らない段階から処罰できる体制が既に国内法で整っている。
しかし安倍政権と法務省、外務省は、憲法と整合性の取れない憲法違反の可能性が大である「共謀罪」を、国連越境組織犯罪防止条約が批准国に求めている、国際的な犯罪組織を罰する法律とは全く関係ない509もの犯罪にオリンピック、パラリンピック開催を口実として適用しようとしている。
テロに関する罪では167の犯罪に共謀罪を新たに導入、適用しようとしているが、それは既にある憲法と整合性の取れた現刑法ですでに処罰可能な状態となっている。
今直ぐにでも日本は国連越境組織犯罪防止条約を批准する事が出来るのに、同条約第5条第1項が共謀(共謀罪)又は組織的な犯罪集団の活動への参加(参加罪)の少なくとも一方を犯罪とすることを義務付けているという理由で、共謀罪を国内刑法に内包していない現在の日本の状況では日本は国連越境組織犯罪防止条約を批准する事が出来ないとして、日本政府は未だに同条約を批准してはいない。
ちなみに日本は共謀罪と参加罪どちらを国内で犯罪として扱うかの選択において、法務省は共謀罪を国内で犯罪とするという事を選択し現在の状況に至っている。
(参加罪を選択しなかった理由http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji35-5.html)
今回、共謀罪から名前を変えて上程されようとしている「テロ等準備罪」だが、自民党の菅幹事長は「一般の方々が対象になることはあり得ない」という発言を行った。
しかしこの発言はこの条約を批准する為に国内法に新たに共謀罪を新設する事において起こりうる問題とは全く関係のない的外れな物言いだ。
国連越境組織犯罪防止条約にある条約第5条の定める共謀罪は、「重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意すること」を犯罪とするとしているが、日本の現行の刑法では、日本国憲法第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。に基づき、「法益侵害の意思だけでは処罰しない」という、(法益を侵害するまたは侵害する危険性のある)行為を処罰する行為主義を原則としている。
今の日本の刑法では同条約に書かれている「合意をすること」だけでは犯罪として取り締まる事は出来ない。
従って日本が国連越境組織犯罪防止条約を批准する為には、新たに「合意をする」だけで犯罪として取り締まれる様にならないと、国連越境組織犯罪防止条約を批准する事が出来ず、批准各国と連携が取れない。
この様に法務省は主張している。
今までは憲法の規定で出来なかった「合意する事」を犯罪として取り締まる法律、つまり人の内心を取り締まる法律を作りますと法務省は言っているのだ。
菅官房長官の発言は「一般の人は逮捕されません。しかし何か犯罪行為に合意した人間は逮捕される様になる法律を新たに作ります。」と言っている事になる。
しかしこれは大きな問題だ。
前述の様に日本国憲法第19条に 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
とあり、現刑法も憲法と整合性を持たせる為に「法益侵害の意思だけでは処罰しない」という、(法益を侵害するまたは侵害する危険性のある)行為を処罰する行為主義を日本の国内法では原則としている。
だから現在は例え何か犯罪にあたる行為を考えたとしても、それを実際に準備したり実際に起こしたりしなければ逮捕される事はない。
しかしながら、今回安倍政権、法務省が上程しようとしている「テロ等準備罪」が成立すると、何か心の中で思っただけで犯罪として成立してしまうという、内心で犯罪の意思を有していることと紙一重の「共謀」という「意思の合致」のみで処罰することから、国民は共謀罪での処罰を避けるため、自由な言論・行動など思想表現活動を自粛せざるをえなくなり、これらの自由に多大な萎縮的効果を与えることとなる。
加えて共謀罪法案が成立した後には、捜査機関が「共謀の事実」を立証するために、市民間の電話、電子メール、SNS等を広汎に監視して、国民の通信の秘密を含むプライバシーを著しく侵害するおそれがあり、さらなる人権侵害行為が行われることが予測される。
従ってこの様な「合意」をする事を取り締まる「テロ等準備罪」という新たな法律を作るという事は憲法19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 21条第2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。 に抵触するという事になってしまう。
こういう問題もありこの「共謀罪」今回は名前を変えて「テロ等準備罪」は2003年 2005年 2009年と上程されて国会審議されたが3回に渡って廃案となってきた経緯がある。
実は日本政府は「憲法違反の共謀罪、テロ等準備罪」を新設しなくても、既に上に書いた各種テロ防止条約の存在と、下に書く既に存在する国内法によって、今すぐにでも国連越境組織犯罪防止条約を批准する事ができる状態にある。
その理由は同条約第34条1項に、「締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置(立法上及び行政上の措置を含む。)をとる。」と規定しているので、日本が新たな法律を作らなくても、本条約第5条第1項で(a)(i)の「合意により成立する犯罪を取り締まる」を選択し、組織犯罪に関連する重大犯罪について、合意により成立する犯罪が未遂以前の段階で国内法で既に可罰的とされているならば、本条約を批准することは可能であるという事になっているからだ。
(「組織的な犯罪の共謀罪」の創設が条約上の義務であることについてhttp://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji35-1.html)
既に日本には、 現行法上、予備罪が35、準備罪が6あり、さらに共謀罪が13、陰謀罪が8あり、合計62の主要重大犯罪について,未遂に至らない段階で処罰することが可能な立法が存在しており、そこには、組織犯罪に関連する重大犯罪も含まれている。(これはあくまでも日本の刑法は既遂」の処罰を原則とし、「未遂」は例外的、「予備」は更に例外的、「共謀」に至っては極めて特別な重大な法益侵害に関するものに限って処罰するというもの。)
しかも日本には独自の判例理論として,共謀共同正犯理論が確立しており,その当否はともかく,組織犯罪については広範な共犯処罰が可能となっている。
しかも,我が国の判例上,予備罪についても共謀共同正犯の成立が認められるだけでなく,他人予備行為(他人に犯罪の実行をさせる目的で準備する行為)も予備罪が成立することが認められている。そのため,予備罪の適用範囲はさらに広く認められている。
その結果,予備の共謀共同正犯の場合には,共謀をした者のうちの一人が予備行為を行えば,共謀者の全員に予備罪の共謀共同正犯が成立することになるが,その結果は,共謀罪が成立した場合とほとんど異ならない結論になると考えられる。
そうであるとすると,我が国の法制上,組織犯罪集団に関連した主要犯罪については,合意により成立する犯罪を,未遂に至らない段階から処罰できる法整備は既になされていると言っても過言ではない。 (あくまでも例外的な犯罪として)
従って同条約第5条との関係において、我が国の各種処罰規定を総合的に見れば、本条約第5条第1項(a)(i)の選択肢を採用し,同条第3項の求めている組織犯罪集団の関与する全ての重大な犯罪について、合意により成立する犯罪を未遂に至らない段階から処罰する立法は,既に我が国において十分に整備されており、同条約を締結するために、新たな立法は必要ないということになり、国連越境組織犯罪防止条約を日本政府が今すぐに新たな立法なしで批准する事は可能という事になる。
(共謀罪の創設に反対する意見書http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2012/opinion_120413_4.pdf)
新たに676もの法律に憲法違反の可能性が大である共謀罪を適用する必要はないという事だ。
アメリカ政府は既にアメリカ国内法において同条約5条第1項と同等の法整備がされているとして、同条約5条第1項にある共謀罪については留保をして2005年11月に国連越境組織犯罪防止条約を批准している。
本条約第5条の履行に関して報告を行った48か国のうち,少なくとも5か国(ブラジル,モロッコ,エルサルバドル,アンゴラ,メキシコ)は,同条第3項の追加要件について,組織犯罪集団の関与を要件としながら,組織犯罪集団の関与する全ての重大犯罪を適用範囲とはしてはいない。
(諸外国の状況についてhttp://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2012/opinion_120413_4.pdf)
この様にこの条約を批准した各国とも、その国の法制度で既に条約を満たしているとするか、多少の法整備をするなどして批准している国がほとんどである事実がある。
共謀罪を制定することなく、条約の一部について留保をしたり、解釈宣言(自国による条約の解釈を示す一方的な宣言)をするなどの柔軟な対応によって、批准が可能であると考えられ、現にそのようにしている国もある。(前述のアメリカ等)
だから安倍政権や法務省が言う様な「合意する」事自体を犯罪認定する、憲法に抵触する可能性が大の「共謀罪」改め「テロ等準備罪」を制定する事なく、今直ぐにでも日本政府が国連越境組織犯罪防止条約を批准する事は可能であり、締結国間でやり取りされるテロ関連情報を共有する事も可能なのである。
(最後まで読んでくれた人ありがとうございます。お疲れ様でした。)
http://www.asyura2.com/17/senkyo219/msg/140.html#c15