ちなみに項羽という人は楚の国の人で、大変武芸に秀でたイケメンでした。女性にはモテモテで虞姫という絶世の美女と大恋愛した果てに結婚していた。今で言う超勝ち組、リア充ですね。地元8000人の仲間と共に長江を渡り、強い軍隊で漢の元祖である劉備に幾度も煮え湯を飲ませました。しかし最後には自殺するほど追い詰められました。リア充が精神的が弱い所を劉備に突かれた形です。

対して劉備は武術はダメダメ、乞食もどきのキモメンだったようです。しかしこの人、他人に泣き落としをかける名人だったのですよ。項羽に戦争で負ける度に有力者に泣き付いて援助を請い、最後には物量にものを言わせて項羽を凌駕しました。ダメ人間が他人の同情を買い、どうせこいつは俺の脅威にならないと安心感を持たれたのでしょうね。一方項羽の方は最初の仲間から勢力が増える事もなく消耗戦になり、追い詰められました。

劉備が如何に人間心理を操作するのに長けていたのかは四面楚歌という諺からも分かります。最後に項羽の軍勢を包囲した時に劉備は部下の兵士たちに楚の国の歌を歌うように命令しました。お前の仲間は大勢が俺の方についているぞ、と項羽に圧力をかけたわけです。項羽はこのストレスに耐えられずに自殺しました。奥さんも一人だけ生き残っていてもロクな事には成らないので後を追いました。項羽ほどの武術の達人なら包囲網を突破するなど造作もない事ですが、江東の人たちに会わせる顔がないと。

この昔話の教訓は、人付き合いというのは器用さでは計れない、というところだと思います。キモメンがイケメンに勝ってしまったのですから。項羽がもっと不器用な人間ならしぶとく生き残って劉備を苦しめ続けたでしょう。

アメリカの経済学者がアジアはクローニー資本主義だと批判した事がありますが、じゃあなぜあなたはクローニー資本主義の概念が理解できるのか。簡単な話で要するに欧米もクローニー資本主義なのですよ。クローニー資本主義で勝つには能力や器用さなどは役に立ちません。業界のボスに泣き落としをかける能力がものを言うのです。ですので項羽のように戦争に強いだけではダメなのですね。

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