1. 2017年10月30日 13:23:58 : X6EJa8rCOc : twCxNKqCXKM[1]
風知草 日本の核外交は卑屈か=山田孝男
毎日新聞 2017年10月30日
衆院選も既に昔。メディアは負けた野党の後始末報道に忙しいが、私は別の記事が気になった。
日本が国連に出した核兵器廃絶決議案の採択(日本時間28日朝)と、それに対する評価である。
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日本案は、採決に参加した175カ国中、8割を超える144カ国の賛成を得た。だが、日本の新聞報道を見渡すと−−
「賛成23カ国減」
「棄権・批判相次ぐ」
「被爆者への裏切り」
「表現 大幅に後退」
「核禁条約に触れず」
「日本の影響力低下」
良識ある諸国が日本案を見放したというイメージを強調している。今年のノーベル平和賞受賞が決まった国際NGOネットワーク「ICAN」(核兵器廃絶国際キャンペーン)も「あまりに保有国寄り」と批判、「背景に米国の圧力」という報道が飛び交った。
そうなのか? 被爆国日本の核軍縮外交とは、それほど卑屈で、受け身で、情けないものなのか。
「核兵器保有国と非保有国の橋渡し役」という自負は、米国の「核の傘」を頼りつつ、国連では核廃絶の旗手として振る舞うための舌先三寸なのか?
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世界の核兵器の9割以上は米露にあるという。露が7000発、米が6800発。核軍縮はオバマ米大統領時代に進んだが、2014年春、ロシアがウクライナのクリミアを併合して以来、米露対話は停滞。その間に北朝鮮の核・ミサイル開発が加速した。
今年7月、国連は非核保有国122カ国の賛成で核保有の全面禁止を盛り込んだ核兵器禁止条約を採択。条約には拘束力があり、日米同盟と矛盾をきたすので日本は参加を見送った。
そこへ「ICAN」のノーベル平和賞。無条件全廃に乗らぬ日本に不信が広がり、日本の決議案支持が減る伏線になった。
日本が国連に核廃絶決議案を出すのは1994年以来、連続24回目。毎年採択されてきたが、今年の案にはこんな批判が出た。
(1)北朝鮮情勢を強調、安全保障重視に固執している
(2)核禁条約に言及がない
(3)従来の「あらゆる(any use of)核兵器の使用に懸念」という強調が消え、「核兵器使用(the use of)を懸念」へ後退−−
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米国と相談ずくの調整に違いないが、日本政府が核禁条約を敵視しているわけではない。念のため、河野太郎外相(54)に確かめると「核軍縮の重要性を再認識させた意味は大きい。条約と日本の決議案は車の両輪ですよ」と答えた。
外相は「ICAN」のノーベル平和賞受賞に対しても即日、自分のフェイスブックで祝意を表明。
核保有国、非保有国の両方を眺め、「外交官の最高レベル」と評判の英語を操り、日本の立場を動画で発信。各国外相に電話と手紙で支持を訴えた。
その結果、核保有国の米英を含む77カ国が共同提案国に。核保有国の一角・フランスも賛成。核禁条約に賛成した非保有国のうち、86カ国が日本案賛成へ回ったのである。
問題の根は米露英仏中にのみ核保有を認める核拡散防止条約(NPT)の不平等性にある。122カ国が賛成した核禁条約で世界は核廃絶を思い出したが、大国との関係を背景に実際の署名国は53にとどまる。
海外からの批判に縮こまらず、振り回されず、自ら国際世論をリードする器量が問われている。=毎週月曜日に掲載
https://mainichi.jp/articles/20171030/ddm/002/070/072000c
http://www.asyura2.com/17/senkyo234/msg/856.html#c1