9. 福三[27] lZ@OTw 2017年1月14日 13:07:07 : p1HGXyk9FA : T0416_a0RwU[24]
トランプが生み出したのは、アメリカ国内の底流にあった不満を表出させた、所謂、現象に過ぎない。
筆者は決してアメリカ崇拝ではないが、少なくともこれまでの潮流を学べば、必然的に導かれる結論はそう多くは無いと言っているだけである。
トランプ現象の持つ意味の本質は、既に多くの識者が分析している通りで、要約すれば空気や風が吹いた程度のものであろう。
ここ阿修羅以外でも書いたが、本選の実況をライブで観ていて、トランプに票が集まる度にトランプ支持者が驚いている様子は、非常に興味深いものがあった。
つまり、「トランプ、イェーイ!!」と盛り上がっている連中の多くの困惑する表情である。オイオイ、マジカー?という反応は、自分たちでも予想だに出来なかった結果であったということだ。
これはイギリスのBrexitと同じで、どうせそうはならないだろうという予想を覆してしまった結果を生んだことに他ならない。
アメリカは日本と違い、税制も議員の選出方法も法整備のあり方も、連邦政府ではなく州法が優先される。特に税制については州によって大きくそのあり方が異なる。
必然的に労働者人口も州によって異なるのだが、ここで注目しなければいけないのは、トランプ票が集まった州の多くは、実は連邦政府の政策に不満を抱えているどちらかと言えば貧しい州であることだ。これはBBCやCNNが分析している通りなので、ここでは詳細は割愛する。
次に、アメリカの大統領選は常に革命である。
大統領が変わるだけで、ホワイトハウスの門番に至るまで人事改革が行われる。数年前に公開された、数人の大統領に仕えたスタッフの映画などごく稀な例で、実に一万人近い人間が入れ替わる。これは政策についても全く同じであって、小さな政府を目指す共和党と、リベラルな民主党との間で、常に革命の起こし合いだ。このダイナミズムについて、アメリカ国民は既に慣れっこになっている。
アメリカは常に世界の中心であり続けたという国民の思いがあるからこそ、国家元首を選択する権利を国民は有するわけだが、それは常に国内国外の情勢の相克であった。
もともと、トランプ現象が起こるきっかけは共和党の政策の不備によるものが大きい。レーガンからクリントンが黒字化した財政を最悪のものに陥れたのはブッシュである。中東に介入したことで財政赤字が増したというのもあるが、それ以上に対中国政策の不味さを取り上げるべきだし、その後、オバマは必至に改善に取り組んだが、道半ばであった。
それら、長年の国民の不満を意図的にオーバライドしたのがトランプである。
また、ヒスパニック系やイスラーム系の移民をやり玉に挙げたのは、トランプの悪辣な手法である。三億二千万人の人口のうち、60%を占める白人層にアメリカ経済や国際社会でのアメリカの低迷の原因を移民に向けさせた、或いは周辺国に向けさせた手法は、ブームを生むことは出来ても、国際社会に受け入れられるものではないだろう。
マスメディアを悪、自分を善とする手法も、敵対関係を煽るだけの幼稚な手立てと言わざるを得ない。
子ブッシュはアメリカ史上最悪の大統領の一人であるが、トランプはそれに匹敵するかそれを超える大統領になるだろう。
加えて、トランプは白人労働者階級の味方でもなければ、彼らを何とかしようという目的はサラサラない。
トランプは大統領に憧れた成り上がりだが、真の意味での大統領にはなれないのだ。
まして、日本の総理大臣に比べて小さな権力しか持たないアメリカ大統領は、国家元首であるにも関わらず、議会への影響力に乏しい。
ただ、アメリカ大統領は世界一の国家の国民の声を代弁する存在であるだけで、そこにこそアメリカ大統領の価値があるのである。
以前も書いたが、アメリカ大統領になる人間に求められる最大の要素は、大統領らしさ、ということだ。
つまりそこにはアメリカ国民の「大統領は偉大な人物であるべき」という性善説に裏打ちされているのだが、トランプはただの現象なだけで、らしさに欠ける。
そのことに一番失望するのは、実はアメリカ国民自身だろう。
若しかしたらアメリカ史上初めて、弾劾裁判に負ける大統領が誕生するかも知れない。それも、犯罪が原因ではなく、国民生活を混乱に陥れたということで。
http://www.asyura2.com/16/cult17/msg/518.html#c9