22. 2018年1月15日 16:57:17 : DbKHEH6Tnc : sB7cKCTwLQc[1]
ironna
格差社会
ピケティが本当に伝えたかった3つの論点
『田中秀臣』
http://ironna.jp/article/1137
(前略)
●ひとことで言うと、日本の経済格差の問題点は、「貧しい人が多すぎる」ということだ。
デフレによる長期停滞は、失業者の増加、非正規雇用の増加などで低所得者層を生み出しつづけてきた。いま日本の生活保護世帯に属する人たちは約216万人いる。さらに今回の消費税増税(5%から8%増へ)の際に、政府は低所得者層に地方自治体を経由して1万円を補助する政策を打ち出した。その対象となる人たちの総数が約2400万人に上っていた(軽部謙介「消費増税でわかった二四〇〇万人の貧困」『文藝春秋』2014年4月号)。日本の人口の約20%が「低所得者層」に属する。その一方で、富の集中は深刻ではない。つまりピケティの問題視する経済格差は社会のわずかな人たちに富や所得が集中することで出現するのだが、日本ではその種の経済格差は深刻ではない。むしろ日本では「貧しい人が多すぎる」ことが経済格差を深刻化している。
この多数の貧困化現象は、経済停滞の長期化と大きく関連している。そのため対策は、ピケティの富裕税よりも経済成長を促す政策であり、現状ではアベノミクスの積極的な金融緩和政策である。そのほかに日本の高齢化の進展にともなう老人格差も問題ではある。この論点については、(対談以外)の私の上記論説を参照してほしい。
ともあれピケティによる経済格差問題への注目は当分続くだろう。このことは私にはとてもいいことだと思う。経済問題という理解するのに取っ付きにくいが、それでも日々の生活の上で重要な問題に人々の関心がいくからである。
●もちろんこのピケティブームはさまざまな派生的な論争を提起するだろう。例えば、最近、伊東光晴(京都大学名誉教授)のピケティ批判「誤読・誤謬・エトセトラ」(『世界』2015年3月号)を読んだ。そこで伊東はピケティの議論は日本の実情をみていないとする。ここまでは私と同じだ。しかし日本の経済格差は、ジニ係数をみると1981年の0.3491から最新調査(2011年)の0.5536まで「異常な値」をとっていると伊東は見ている。ジニ係数は所得の不平等度を測る指標のひとつで、値が1に近いほど所得の不平等度は高まる。このジニ係数の「異常な値」の主因は、伊東によれば、80年代からの「規制緩和をはじめ、市場優位の新自由主義的経済政策」だという。この延長で、現状のアベノミクスも伊東によれば「新自由主義的経済政策」の弊害を象徴したものになるのだろう(伊東光晴『アベノミクス批判』岩波書店、参照)。
●しかし伊東の主張には疑問がある。まず問題にすべきは、税や社会保険などによる再分配後所得のジニ係数であるはずだ。再分配前のジニ係数は、高齢化の進行とともに上昇しているが、再分配後のジニ係数はこの20年、0.3前半から後半で安定している。ただ問題は、1997年以降、若い世代中心にほぼ全世代でジニ係数が0.3前半から後半にシフトしたことだ。この原因は、当時の消費増税を起点とする経済の極端な落ち込みと、それに対処しそこなった日本銀行の金融政策の失敗だった(詳細は拙著『経済政策を歴史に学ぶ』ソフトバンク新書参照)。
●日本の経済格差論争というのは、先の民主党の政策スタンスやこの伊東論説のように、消費増税の悪影響を軽視し、また金融政策の改善効果に批判的な人たちと、それに抗する人たち(ピケティも日本については抗する側だろう)との論争でもあるのかもしれない。
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伊藤氏は2014年の赤旗に執筆した人なんですね。↓
熱心な九条死守派だそうです。
それに中国の復旦大学(国立)名誉教授大学名誉教授でもあらせられるとか。
澤藤統一郎の憲法日記
改憲への危機感から毎日書き続けています
「憲法9条は現実主義」ー伊東光晴が語る安倍右翼政権批判
http://article9.jp/wordpress/?p=3843
日曜(10月9日)の赤旗一面「2014 黙ってはいられない」に、伊藤光晴が登場。●よくぞ赤旗に、である。いまや、この人こそ日本の知性。日本の良心。