1. 2017年12月27日 21:35:08 : LXB7ARM1mM : PquIjQdIuME[1]
中国政府があやつる「爆買い」渡航先 【イブニング スクープ】
2017/12/27 18:00 日経新聞
「爆買い」で注目される中国人観光客。世界最大の観光客の送り出し国で、年間約1億3千万人と日本の人口にも匹敵する規模に膨らむ。中国にとっていまや、団体客の渡航禁止は外交問題などで相手国をけん制する手段となった。各国が経済振興のために中国人観光客を奪い合っているからだ。手法も巧妙で、相手国からの批判をかわすために行政文書を使わない口頭指導により旅行会社を縛ることで、相手国への最大限の効果を狙う。
「上司が20日に地元の観光局から呼び出しを受け、韓国への団体旅行の販売を禁止する指導を受けた」。山東省青島市の旅行会社の従業員は明かす。観光局とは地方政府で旅行行政を担当する部門だが、文書での通知は一切なかった。
青島など山東省の都市に加え、北京市の旅行会社も韓国への団体旅行の販売を停止した。一方、中国外務省の華春瑩副報道局長は20日の記者会見で「(団体旅行禁止は)聞いていない。中国は中韓交流に開放的だ」と否定した。実態と外務省コメントの差はなぜ生まれるのか。
「特定国への報復的な禁止措置は国際規範に反するため中国政府は公表しない。しかし、相手国に対し不満があるから水面下での指導に走る」。中国の旅行会社元幹部は解説する。「観光局の判断ではなく、より高い立場の共産党組織による指導だろう」と指摘する。
今回の韓国への団体旅行の禁止についても「個別の理由は分からない」としたうえで、「中韓首脳会談の直後に起きたことから考えると、中国側に首脳会談または直後で、なんらかの不満が出たと考えるのが自然だ」との見方を示す。
韓国への旅行禁止は、相手に最大限の効果を与えるために練られた戦略に基づいている。
3月に在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備問題が引き金となって中国全土で禁止された。その後、両国関係の改善で11月に北京市と山東省に限り解禁され、12月になって再度禁止となったのには理由がある。
山東省は海を挟んで韓国と近く企業や個人の往来が盛んだ。北京市は韓国企業の進出が多く、次々回の冬季五輪の開催地であり、冬季五輪つながりで団体旅行を含めた韓国観光が伸びる見通しだったという。旅行禁止の効果が出やすいとして両地域を選んだとの見立てだ。
実は、日本への団体旅行も9月から遼寧省や山東省、重慶市などで人数制限などを受けている。偽造パスポートで入国した中国人の行方不明や外貨制限が理由に挙がったが、ある関係者は「日中政府間で夏に行われた非公式な話し合いで、中国側に不満が生じたことが引き金になったようだ」との見方を示す。
地域によって対応が異なったのは、実効性の観点から説明できる。関係者は「上海、広東省などは個人旅行が多いため効果が薄いうえ、団体旅行のチェックに手間がかかることから見送られた。制限した地域は団体旅行の比率が高く、中国側のチェックもしやすい」と打ち明ける。
中国の団体旅行禁止という手法が目立つようになったのは、海外旅行客が1億人に近づいた2012年から。南シナ海や東シナ海の領有を巡り対立したフィリピンや日本向けを禁止しプレッシャーをかけた。16年は台湾の蔡英文政権の誕生に伴い、台湾旅行が事実上の制限を受けた。
「中国を旅行大国から旅行強国に転換する」。中国が主導して今年9月に立ち上げた観光業の世界組織「世界観光連盟(WTA)」の発足時、主席となった段強氏はあいさつで強調した。
旅行強国とは何を意味するのか。1億3千万人近い中国人観光客の消費額は約30兆円に膨らみ、世界の海外旅行消費に対する寄与度は2割に達するとの試算もある。WTAの理念は「観光で世界をよりよくする」とある。旅行強国とは、相手国の観光に打撃を与え、外交上優位に立つ手段にすることではないはずだ。(北京=多部田俊輔)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25152100X21C17A2EA1000/
http://www.asyura2.com/17/hasan125/msg/239.html#c1