17. 2017年8月12日 00:44:20 : ee2pfuNOvY : oS33K0QPYhA[1]
WEBRONZA
テーマ加計学園問題と「獣医師は足りているか?」
科学・環境
加計学園「半世紀ぶり獣医学部」の本当の意味
世界レベルから取り残される日本の貧困な教育環境
唐木英明 東京大学名誉教授、公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長
2017年06月05日
http://webronza.asahi.com/science/articles/2017052700001.html(全文)
「忖度」という言葉を流行語にした加計学園問題は、前文科事務次官まで登場して週刊誌的な騒動が続いている。そんな騒ぎの中に、「なぜ、今、半世紀ぶりに獣医学部の設置が必要なのか」という最も重要な問題が埋もれようとしている。日本獣医師会が学部設置に反対してきた理由はなにか。日本全体にとっての、学部設置問題がもつ本当の意味とは——。筆者は、東大在籍中から獣医学教育の改善に取り組み、定年後は加計学園関連の倉敷芸術科学大学長を務めた。その立場から、解説する。
多くの人が知らない仕事の中身
最初に書かなくてはならないのは、ほとんどの人が獣医師は「犬・猫のお医者さん」だと思っていることだ。ペットが家族の一員になった現在、小動物臨床は獣医師の半分以上が従事する大事な仕事である。他方、よく知られていないのは、それ以外の獣医師の仕事である。
(写真)拡大臨床実習を受ける獣医学の学生たち=岐阜大学獣医学科(北川均特任教授提供)
その第一は家畜臨床、すなわち牛、馬、豚、鶏などの家畜の病気の予防と治療で、鳥インフルエンザ、口蹄疫、BSEなどの対策を行う仕事だ。二番目は公衆衛生・食品衛生で、国や地方の公務員としてと畜場での食肉検査、輸入や国産食品の安全性検査、外食店などの衛生状態の検査など、食の安全に直結した仕事だ。そして3番目は医薬品の開発だ。それは医師、薬剤師の仕事と思っている人が多いが、薬の効果も毒性も実験動物の試験から始まるため、薬の試験の大部分は獣医師の仕事であり、医師の出番は最終段階でのヒトでの試験だけだ。
このように獣医師が国民の食の安全を守る仕事をしていることも、内閣府食品安全委員会の委員長、事務局長、専門委員の多くを獣医師が務めるなど、国や地方の行政の重要な仕事をしていることも知られていない。
始まりは軍馬と農耕馬の世話から
獣医師の仕事の内容を国民が知らない理由は、獣医師の歴史にある。畜産製品が主要な食料である欧米では家畜の健康を守ることが人間の健康に直結する。そのための職業として獣医師が生まれ、国民も獣医師の重要性をよく知っていた。一方、農業国である日本で獣医師が生まれたのは、明治政府が獣医師養成学校を作ったことに始まる。その理由は、トラックがない時代に帝国陸軍の唯一の輸送手段だった軍馬と食料増産のための農耕馬の世話をする獣医師の養成だった。
終戦とともに、軍馬は大陸に置き去りになり、獣医師だけが帰還したが、彼らが世話をすべき家畜はいなかった。そんなときに占領軍総司令部は日本の教育改革を命じたのだが、その一つが医学、歯学、獣医学教育を6年制にすることだった。その理由はこれらが国民の生活の安全に直結する重要な職種だからだが、日本政府は獣医師の重要性が理解できなかったため獣医学だけが放置され、6年制が実施されたのはそれから約40年後だった。
またこのとき、全国の馬産地と陸軍師団所在地に設置された小規模の獣医師養成所の多くが入学定員30〜40名の小さな学科として新制大学の中に存続することになった。これが表に示す11校の国公立大学獣医学科(北大だけは学部)のルーツである。そのほかに入学定員が80〜120名の私立獣医科大学が5校あるが、最後に設置されたのが約半世紀前の北里大学と酪農学園大学獣医学部だった。
(一覧表 全国の国公立大と私立大学の、定員、国家試験受験者数と合格者数、専任教員数)
国家試験関係は2016年農林水産省、教員数は08年文部科学省の調査。合格者1000名を確保するには定員を1200名程度に増やす必要がある。また各大学の教員数は最低必要数とされる72名を大きく下回り、早急な改善が求めらるが、入学定員が30〜40名では困難だ
高度経済成長の中で獣医師がペットの治療を行うようになり、また畜産が盛んになったこと、食の安全に対する意識が高まったことなどで、獣医師の仕事は戦前とは大きく変わり、現在の形が出来上がった。
世界から大きく遅れた獣医学教育
獣医学教育の内容は医学教育とほとんど同じで、内科、外科などの臨床科目から生理、解剖、薬理などの基礎科目までが並び、海外の獣医科大学ではその講義と実習のために100〜200名の教員と補助者を配置し、入学定員もこれに見合った100〜200名である。
これに比べて日本の国公立11大学の獣医学部・学科では入学定員が30〜40名、教員数も最低必要数とされている72名には遠く及ばない(上の表)。その結果、国際的にみて獣医学教育のレベルは極めて低かった。この状況を改善するために筆者が文科省と協力して行ったのが獣医学科の再編整備である。もし3つの獣医学科を統合すれば入学定員約100名、教員数約100名となり、現在と同じ経費で欧米に近い立派な教育が可能になる。しかし、残念ながらこの努力は、ほとんどの大学の「獣医学科がこちらに来るなら受け入れるが、そちらには出せない」という利己的な主張のため未完に終わっている。
もう一つの課題が、 ・・・続きを読む (※ここから有料記事)
(残り:約2504文字/本文:約4374文字)
\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
唐木英明(からき・ひであき) 東京大学名誉教授、公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長
http://webronza.asahi.com/authors/2016112100001.html(プロフィール抜粋)
1964年東京大学農学部獣医学科卒。農学博士、獣医師。東京大学農学部助手、同助教授、テキサス大学ダラス医学研究所研究員などを経て、東京大学農学部教授、東京大学アイソトープ総合センターセンター長などを務めた。2008〜11年日本学術会議副会長。11〜13年倉敷芸術科学大学学長。著書「不安の構造―リスクを管理する方法」「牛肉安全宣言―BSE問題は終わった」など。
\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\
産経WEST
2017.7.27 09:05更新
【加計学園問題】
「お友達に口きいたとか、そんなことばかりが問題になってる」和歌山県知事 公務員の獣医師不足は地方共通の課題
(1/3ページ)
http://www.sankei.com/west/news/170727/wst1707270025-n1.html(1頁全文)
学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画をめぐる国会の閉会中審査などで、獣医師の地域偏在という本質的な問題が浮き彫りになってきた。誘致を進めた愛媛県の加戸守行前知事は国会で獣医師不足の苦衷(くちゅう)を明かしたが、和歌山県にとっても人ごとではなく、鳥インフルエンザや口蹄(こうてい)疫といった伝染病対策に不可欠な公務員の獣医師には欠員も出ている状況だ。
「大事なことは獣医師が足りているのかどうかということだが、『お友達』に口をきいたとか、そういうことばかりが問題になっている」。安倍晋三首相が出席した参議院予算委員会の閉会中審査と同じ25日に開かれた定例会見で、仁坂吉伸知事は、加計学園の一連の問題で、安倍首相と加計学園の理事長との関係性ばかりが報道でクローズアップされていることを嘆いた。
閉会中審査では加戸前知事が愛媛県の獣医師不足の現状を繰り返し説明。6月の産経新聞のインタビューでも「県庁への志願者が不足しているゆえに公務員獣医師を採用できない。そのため、鳥インフルエンザや狂牛病やらで獣医師が手いっぱいなのに人手が足りない」などと語っていた。
(2/3ページ)
2年連続で追加募集…獣医師確保へ手当も上乗せ、そして・・
http://www.sankei.com/west/news/170727/wst1707270025-n2.html
(3/3ページ)
http://www.sankei.com/west/news/170727/wst1707270025-n3.html
http://www.asyura2.com/17/senkyo230/msg/529.html#c17