36. 2017年12月14日 10:31:04 : Eo3cYXWezg : jtbduItYSEM[1]
●2017.6.23 01:00更新
【阿比留瑠比の極言御免】
蔓延するフェイクニュース 朝日新聞のスクープ記事もなぜか不自然 加計学園問題の文書写真が…
http://www.sankei.com/premium/news/170623/prm1706230005-n1.html
22日朝、テレビで民放番組にチャンネルを合わせると、森友学園の籠池泰典・前理事長の顔が大写しとなった。籠池氏が21日夜、安倍晋三首相の私邸などを訪ね、寄付を受けたと主張する100万円を返却しようとしたが断られ、記者団の取材に応じた場面だった。
籠池氏は現金100万円だという紙の束を持っていたが、本物の一万円札は上下の2枚だけで、中身は白い紙であるように見えた。
国会で大騒ぎし証人喚問まで実施した森友問題も、内閣支持率を低下させた加計学園問題も結局、火のないところに煙を立てた
「フェイクニュース(偽記事)」
ではないのか。
「怪しい」
「疑わしい」
「信用できない」
…などといくら追及しても、核心に迫るファクト(事実)は出てこない。その半面、忖度だとか面従腹背だとか曖昧な言葉ばかりが飛び交い、
「事実がないことを証明して納得させろ」
と、不可能とされる
「悪魔の証明」
が堂々と求められている。
■不自然な写真
「自分自身も(記事を)書かれる立場として、(加計問題が)いかにフェイクかとよく分かる。フェイクニュースは蔓延している」
自民党の小泉進次郎衆院議員は1日の記者会見で、こう指摘していた。そもそも加計問題が一気に火を噴いたのは、朝日新聞が5月17日付朝刊の1面トップ記事
「新学部『総理の意向』」
「文科省に記録文書」
がきっかけだった。
記事は、加計学園の獣医学部新設計画について、文部科学省が
「内閣府から『官邸の最高レベルが言っている』『総理のご意向だと聞いている』などと言われたとする記録を文書にしていたことがわかった」
というスクープだった。
それはいいが、記事に添えられた
「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」
と題された文章の写真が不可解である。
写真はなぜか下側が暗く文字がよく読めないが、文科省が15日に発表した同様の文書をみると、その部分にはこうある。
「『国家戦略特区諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」
つまり、安倍首相の指示だと取り繕ってはどうかという話であり、逆に首相の指示などないことを示している。
ところが、そこが朝日の写真では不自然に隠された形となっている。
これでは「印象操作」と言われても仕方があるまい。
■真実は不確実
「安倍政権に批判的な記者の一人」であり、安倍政権が掲げる政治目標に
「ほとんど賛同できない」
という立場の元朝日記者でジャーナリストの烏賀陽弘道氏は、新著『フェイクニュースの見分け方』でさまざまな情報を検証している。
その上で、
(1)日本会議=安倍政権の黒幕説を首肯できる事実は見いだせない
(2)(安倍政権の言論統制を非難する記事や出版物の)「報道に介入した」「圧力を加えた」「統制した」と主張する根拠がわからない
(3)(高市早苗総務相の放送法関連答弁について)民主党時代と同じ発言を根拠にした「安倍政権は報道の自由を恫喝している」という非難は不思議
などと結論付けており、うなずける。
米国の著名なジャーナリスト、リップマンは1922年刊行の著書『世論』で、ジャーナリストの仕事についてこう訴えている。
「人びとの意見形成のもととなるいわゆる真実といわれるものが不確実な性格のものであることを人びとに納得させること」
フェイクニュースが蔓延しているならば、なおさらだろう。
(論説委員兼政治部編集委員)
●2017.11.23 01:00更新
【阿比留瑠比の極言御免】 産経新聞
朝日新聞へ「疑念が晴れない」
http://www.sankei.com/entertainments/news/171123/ent1711230001-n1.html
朝日新聞が学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題に関し、執拗に用いる表現を使えば
「疑念が晴れない」
「疑問が残ったままだ」
「追及を何とかかわしたい。そんな狙いもうかがえる」
とでも言うべきか。
まるで国家の存亡にかかわる重大問題であるかのように、加計問題について膨大な記事を量産してきた朝日が、紙面に載せたがらない事実のことである。
日本維新の会の足立康史衆院議員は15日の衆院文部科学委員会で、
「新学部『総理の意向』」
「文科省に記録文書」
と書いた5月17日付朝日の朝刊1面トップ記事について捏造報道だと指摘し、その理由の一つとしてこう述べた。
「『国家戦略特区諮問会議決定という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか』と書いてある。総理からの指示ではないが、こういう形にすれば総理からの指示があったかのように見えるよね、と書いてある。これを見た朝日が、こういう記事を1面に出すというのは捏造という」
朝日はこの日の1面で、文書を写真入りで報じていたが、足立氏が指摘した部分はなぜか暗い影が落としてあり、判読できないようになっている。筆者も疑問を抱き、6月23日付当欄で
「逆に首相の指示などないことを示している」
と記したところだ。
実は朝日は、5月18日付朝刊2面の記事
「『総理のご意向』記録に」
でも、この文書の写真を掲載している。
ただ、写真はやはり途中で切れており、
「総理からの指示に見えるのではないか」
という肝心の部分は、読者に分からないように処理されていた。
どう考えても不自然であり、記事の趣旨と矛盾するので、わざと隠しているとみられても仕方あるまい。
一方で朝日は、衆院文科委での足立氏の捏造発言は
「事実に反する」
と、まず11月16日付朝刊で足立氏の発言を紹介した上で
「加計問題『総理の意向』本紙記事 複数の文書・関係者取材し報道」
などの複数記事を掲載して反論した。
また、18日付朝刊では
「本社『強く抗議』」
との記事で
「弊社は、関係者に取材し、文書を入手し、それらを踏まえて報道しています」
と記した。
さらに22日付朝刊でも
「『捏造』発言撤回 足立氏に求める」
とたたみかけた。
だが、それらの記事には足立氏が指摘した
「総理からの指示に見えるのではないか」
との部分は、なぜか全く出てこないのである。よほどそこには触れたくないのかもしれないが、反論として不十分である。
「総理のご意向だと聞いている」
という文書作成者の伝聞部分は何十、何百回と強調しておいて、あまりにバランスを欠く。
朝日は21日、著書
『徹底検証「森友・加計事件」 朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』
の中で、足立氏と同様の部分を指摘した文芸評論家の小川栄太郎氏に対しても申入書を送り、こう反論していた。
「弊社は、上記8枚の文書について、その内容を本年5月17日、18日、19日の紙面で紹介しており、『安倍の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず』という指摘は事実に反します」
そこで17〜19日の朝日紙面を改めて読み直してみたが、
「総理からの指示に見えるのではないか」
との部分への言及は見当たらなかった。
朝日はそこは重要だとは判断しなかったというのだろうか。やはり疑念は晴れない。
●2017.11.27 19:52更新 産経新聞
朝日新聞の「総理のご意向」報道に与党が逆襲! 菅原一秀氏「わざと隠したんでしょうかねぇ」
http://www.sankei.com/politics/news/171127/plt1711270028-n1.html
「わざと隠したんでしょうかねぇ」−。
自民党の菅原一秀氏は27日の衆院予算委員会で、学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題について「新学部『総理の意向』」と報じた朝日新聞の報道(5月17日付朝刊)に疑問を投げかけた。
朝日が報道の根拠とした文部科学省の文書は、同省が6月15日、省内調査の結果として公表した。
ただ、文書中の
「『国家戦略特区諮問会議決定』という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか」
という部分は、朝日の記事に添えられた写真では影が落とされ読めなくなっている。
菅原氏は
「これはすなわち『指示がない』ということではないか。朝日新聞はわざと下のほうを隠したんでしょうかねぇ」
と首をかしげた。
その上で
「総理の意向があって困っているのではなくて『意向がなければ困る』『あったらありがたい』という状況だったのではないか」
と指摘した。
文科省の担当者は
「安倍晋三首相や官邸から指示はなかったと認識している」
と重ねて説明した。
◆朝日新聞とNHK社会部の共闘
森友学園騒動もようやく終息しつつあるかに見えた2017年5月16日ー。
深夜11時、NHKが「文科省の審議会 新設獣医学部に『課題あり』と報告」と題するさりげないニュースを報じた。
1分半ほどの短いニュースだ。
タイトル通り、文科省の審議会の報告内容を報じている。
ところが、ニュースの終わりに次のような一言が加わり、画面に10数秒、何やら文書が映し出されるのである。
<この学部はことし1月、規制緩和によって今治市に設置する方針が決まりましたが、選考の途中だった去年9月下旬、内閣府の担当者が、文部科学省側に対し今治市に設置することを前提にスケジュールを作るよう求めたやり取りが文書で残されています>
これがこの後「加計学園問題」の中核となったいわゆる「文科省文書」のスクープだった。
それにしても、努めてそう見えぬよう、そっと挿入されたいかにも奇妙な「スクープ」である。
この時、NHKが放映した画像をよく見ると黒塗り部分があり、それは後で問題視されることになる「官邸の最高レベルが言っている」という箇所だった。
この誰にも気づかれぬ静かなるスクープの数時間後ー翌朝2017年5月17日、朝日新聞が、今度は逆に、1面トップで「文科省文書」をスクープする。
「新学部『総理の意向』」と横に大きくぶち抜き、NHKが隠していた学校名も「加計学園計画 文科省に記録文書」と見出しに打ち出した。
朝日新聞のリードは次のようなものだ。
<安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画について、「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向だと聞いている」などと言われたとする記録を文書にしていたことがわかった>
ところがこの朝日新聞の報道には、非常に不自然なことがあるのである。朝日新聞は入手したスクープ文書の写真を1面左に大きく掲載しているのに、周囲に黒い円形のグラデーションを掛けて、一部しか読めないよう細工を施しているのだ。
一見、推理物の映画やテレビドラマのような演劇的な処理に見え、見過ごしてしまう人が多いだろう。が、少し考えれば、新聞が入手した文書を紹介するやり方としては明らかにおかしい。
普通なら、せっかく入手したスクープ文書なのだからー個人情報保護法の観点からの固有名詞以外はー全体像を誇示したいのではないだろうか。
この部分を拡大してみよう。
第1節は全文が読める。この中に「総理のご意向」が出てくるわけだ。第2節は3行目から両脇が読みにくくなるが、目を凝らしてみればまだ文意は取れる。ところがその下の3節目は1行目の「『諮問会議決定』という形にすれば、総理・・・」と、2行目の「・・・見えるのではないか。平成30年・・・」という中央部分だけが辛うじて読めるが、その下は闇に溶け込むようにまるで読めなくなっている。全体が巧みにグラデーションされているから、一見偶然のように見える。
が、偶然ではない。まさに、朝日新聞の写真で隠されていた第3節の1行目、2行目は、次のような文言だった。
○<「国家戦略特別区域諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので総理からの指示に見えるのではないか。>
これは何としたことか。
「総理のご意向」が書かれた同じ文書のすぐ下に、「総理が議長なので総理からの指示に見えるのではないか」と書かれている。もし「総理の指示」があったらこういう言い方にはなるまい。指示がなかったからこそ「総理からの指示に見える」ような操作が必要だーこの文書はそう読める。
朝日新聞のスクープは、黒い影でこの部分を隠していたのである。
それどころではない。
この日、朝日新聞は後に政府が調査・公開した文書8枚(一部ずれがある)を既に入手していたが、「総理の意向」「官邸の最高レベル」という、安倍首相の関与を想像させる部分以外は、文書内容をほとんど読者に紹介せず、未公開のまま、今日に至っているのである。
入手文書の全文は、何百ページもの記録文書ではない。文字数にしてわずか611字、本来ならば政権スキャンダルとしてスクープした新聞社が、初報で全文公開するのが当然だろう。ところが全文どころか、朝日新聞が繰り返し報道し続けたのは先程の文言2つだけだった。
なぜか。
文書全文を報道すると、朝日新聞が贋造したい「安倍スキャンダル」が雲散霧消してしまうからだ。文書全体は、加計学園の新獣医学部設置が全く「総理の意向」と関係なく折衝が進められていたことを示している。朝日新聞は、最初から世論の誤導を狙って、「総理の意向」でないことが分かってしまう部分を全て隠蔽して報道し続けたのである。
とりわけ、異様と思われるのは、朝日新聞とNHKとが、単純な事件報道ではなく、最初から情報操作しなければ「事件」にならない案件で連動してスクープを出した点だ。
2017年5月16日という前日の夜11時にNHKがごく目立たぬ形で第一報し、翌朝5月17日朝刊で朝日新聞が1面トップに打ち出す。これは四六時中あることではない。
しかも、実は、NHKと朝日新聞がスクープしたのは同一文書ではない。類似してはいるが、別文書である。
NHKが放映したものを文書A、朝日新聞が報道したものを文書群Bとする。
Aは「藤原内閣府審議官との打合せ概要(獣医学部新設)」と題された1枚もので、Bは8枚ものだ。Aは「平成28年9月26日18:30〜18:55」と日時と担当官の実名が明記されているが、B文書は殆どメモのようなものである。B8枚の内、1枚はAとほぼ同じ内容で、それには「獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項」と題されている。書式から言ってAとBは別の人物による記録で、Bは8枚とも同一人物の作成と思われる。
この内、NHKが文書Aを2017年5月16日深夜のニュースで取り上げ、朝日新聞は2017年5月17日朝刊で文書群Bをスクープする。
そして朝日新聞の初報と同じ17日に、早くも民進党が文書群Bを質疑に用い、19日には共産党のしんぶん赤旗が文書Aの写真を公表した。朝日新聞と民進党、NHKと共産党の人的関係の深さが想像される。文書AはNHKも共産党も全文を見せているが、文書群Bはスクープした朝日新聞も質疑に用いた民進党も、今日に至るまで全文公開をしていない。
そして少し後になるが、6月2日、民進党は従来入手していた文書群Bとは別文書を入手したとして、文書Aを公表した。同日のNHKは、それをまるで新たなスクープのように報じたが、実は、これはNHK自身が5月16日に報じたのと同一文書なのである。
一体どういうことだろう。
違う人物から、似た内容の別文書AとBが、NHKと朝日新聞に持ち込まれ、夜11時のスクープと翌朝朝刊のスクープが偶然にも重なるーそんなことがあるはずがない。
では、同一人物が、NHKには文書Aだけを持ち込み、朝日新聞には文書群Bだけを持ち込んだのか。それもありそうにない。情報を持ち込む人物は、情報の素人だ。手持ちの情報は全部見せ、報道する側の選択に委ねるのが普通だろう。
すると、ある人物が朝日新聞とNHKの人間と一堂に会し、相談の結果、NHKが文書Aを夜のニュースで、朝日新聞が翌朝文書群Bを報道することを共謀したとみる他ないのではあるまいか。
文書Aは書いた人物こそ分からないものの、日時も出席者名も書かれており、文書群Bより信憑性が高い。NHKは国の予算が割り当てられ、受信料を強制徴収し、放送法第4条「報道は事実を曲げないですること」などの法的拘束下にある。信憑性が確証できないスクープは危険すぎる。朝日新聞は誤報を繰り返しながらクオリティーペーパーの虚名を保持してきた名うての猛者だ。その点、NHKほどの注意を払わずに済む。信憑性の高いAをNHKのスクープに割り当てたのはその為だろう。
それでも謎が残る。
というのも、これらの文書は普通ならゲテモノというべき取り扱い注意文書だからである。
文科省の記録文書と言っても、署名がない。特に文書群Bに至っては、どのような機会に作成され、使用されたかも分からない。クレジットのまるでないメモ書きだ。こんなものは誰でも簡単に捏造でき、捏造でないと証明するのは難しい。文書Aの方が信憑性が高いとは言え、担当官の名前など誰でも調べられ、多少内部事情を知る人なら偽造は容易であろう。
逆に、もしこれが本物の文科省の内部メモであったなら、流出させた人物は国家公務員法の定める守秘義務違反に問われる可能性がある。そんな危険を冒す人間が現役の官僚にいるだろうか。
朝日新聞とNHKというメディア序列のトップ2が裏を取らずに報道するには、危険すぎる文書なのである。もし贋物だと後で判明したらどうするのか。朝日新聞の場合、慰安婦報道の謝罪、福島原発報告書の捏造以降、部数減はいまだに続き、近年、経営陣は、無理なスクープを控え、無難な報道姿勢を現場に要求しているとされる。
NHKは、猶更逃げようがあるまい。政府攻撃の文書が捏造だったとなれば、国会で指弾された挙句、経営陣総辞職もののスキャンダルだ。
本来ならこの2社が自信を持ってスクープするには文科省職員複数の証言が必要だったろう。ところが、朝日新聞の記事に「文科省現役職員」とか「文科省の複数の職員」という言葉が出てくるのは初報から20日も経った6月6日からなのである(6月6日「加計文書『省内で共有』文科省現役職員が証言」)。
今回のスクープ記事には「加計学園による獣医学部計画の経緯を知る文科省関係者は取材に対し、いずれも昨年9〜10月に文科省が作ったことを認めた」とあり、入手先を書かず、確認者が「文科省関係者」1人だということが分かる。要するに、この文書は現役職員ではない「文科省関係者」が単独で持ち込み、その人物自身が文書の信憑性を保証したことになるわけである。
後に判明したところによれば、この文書を共有していたのは獣医学部新設に関わる当時の文科省職員10数人だった。当時この文書を共有し、その後退職し、1人の証言しかないのにNHKと朝日新聞が裏取りもせずにスクープを決断できる程、社会的地位のあった人物ーさすがにそういう人物は1人しかいまい。言うまでもなく、この後、「安倍の意向」を一貫して主張し続けることになる前文科省事務次官・前川喜平自身だ。
◆「文科省文書」はこう読むのが正しい
朝日新聞が内容をひた隠しながら「総理のご意向」を喧伝する為に利用してきた「文科省文書」が登場する。
以下、基本的には書かれた内容をほぼ事実とみなして全文を提示しながら解読する。時系列で読み解くと、朝日新聞がなぜこの文書をひた隠してきたかがよく分かるはずだ。
■獣医学部新設に係る内閣府からの伝達事項
○平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。成田市ほど時間はかけられない。これは官邸の最高レベルが言っていること。山本大臣も「きちんちやりたい」と言っている。文科省メインで動かないといけないシチュエーションにすでになっている。
○国家戦略特区における獣医学部新設に係る方針については、以下2パターンが考えられる。(今週、来週での対応が必要)
・内閣府・文科省・農水省による方針を作成(例:成田市「医学部新設」)
・国家戦略特区諮問会議による方針の決定(例:「民泊」*諮問会議には厚労大臣も出席。
○今治市分科会において有識者からのヒアリングを実施することも可能。
(成田市分科会では、医師会は呼んでいないが、文科省と厚労省で選んだ有識者の意見を聴取<反対派は呼んでいない>)
○獣医学部新設を1校に限定するかは政治的判断である。
これは2016年9月26日、内閣府の藤原豊審議官から伝えられた内容のメモということだ。10日前の関係省庁ヒアリングを受けたものだとみれば違和感はあるまい。文科省が露骨にサボタージュしようとして、国家戦略特区の委員に揉まれていたのは見た通りだ。あれから10日しても動きがないので藤原豊審議官が乗り込み、あの手この手で急がせているということであろう。
「平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」というのは、石破4条件に「年度内に検討を開始する」とされている以上、もうこれ以上ずるずる伸ばしにするなという意味だ。文科省と農水省は既に9カ月サボタージュしてきた実績がある。強い言葉で尻を切らねば動かないに決まっている。
「文科省メインで動かないといけないシチュエーションにすでになっている」というのは、農水省の需給証明に逃げるのはもう無理だ、事が前に進んだ以上、学部認可官庁である文科省自身の事案だと腹を決めろという意味である。
「獣医学部新設を1校に限定するかは政治的判断である」という文言は、日本獣医師会からの新設反対の圧力に他ならない。
2枚目は「義家副大臣レク概要」である。
○平成30年4月開学で早くやれ、と言われても、手続きはちゃんと踏まないといあけない。
○(国家戦略特区諮問会議決定について)教育と民泊はちがう。
○農水省や厚労省は逃げているのか。
○官邸はどうなっているのか。萩生田副長官に聞いてみる。
やれと言うならやるが、閣内不一致<麻生財務大臣反対>をどうにかしてくれないと文科省が悪者になってしまうと。
○農水副大臣にも需給はおたくの話でしょ、と話してみる。
○本件は預かる。また連絡する。
先の内閣府からの伝達を担当課から聞いた、義家副大臣の反応である。
当然、担当課は、ここまで紹介した文科省側の議論ー農水省が獣医の需要を示さない以上、文科省は認可できないーをベースに、義家副大臣にレクチャーを入れたわけだ。
ここでの義家副大臣はその文脈上に立っているものの、ごくまともな手続き論を語っている。
義家副大臣は「平成30年4月開学で早くやれ、と言われても、手続きはちゃんと踏まないといあけない」と指示している。前川喜平は「行政が歪められた」と証言しているが、義家副大臣は行政を歪めぬよう指示をしているのである。何よりもこれは、安倍首相子飼いの副大臣である義家に「総理の意向」なるものが伝わっていなかった証拠である。
一方、義家副大臣が、民泊と教育(学部設置)を一緒にするなと、国家戦略特区の議論にケチをつけているのは、文科省の担当が、義家副大臣に対して会議内容を歪めて伝えていることを示している。既に見たように、教育を歪めて需給の話に固執したのは文科省であり、国家戦略特区ワーキンググループ委員は、逆に、文科省は教育や研究水準だけで判断する原点に返れと諭していたのだからである。
「農水省や厚労省は逃げているのか?」とは、日本獣医師会、日本医師会という強烈な圧力団体や族議員のせいで、両省がサボタージュしている現状を指す。さらに義家副大臣が「農水副大臣にも需給はおたくの話でしょ、と話してみる」と言っているのは、前川喜平以下、文科省事務方の上級官が仕事をしないから、義家副大臣が調整に動き始めるということだ。
「閣内不一致<麻生財務大臣反対>」との認識も重要である。麻生副総理が獣医学部新設反対であるのに、文科省が新設を主導しては、閣内不一致にならないかと懸念している。
次の「大臣ご指示事項」という文書も、松野大臣が、義家副大臣とほぼ同様の認識をしていたことを示している。
■大臣ご指示事項
以下2点につき、内閣府に確認してほしい。
○平成30年4月に開学するためには、平成29年3月に設置認可申請する必要があるが、大学として教員確保や設置設備等の設置認可に必要な準備が整わないのではないか。平成31年4月開学を目指した対応とすべきではないか。
○麻生副総理、森英介議員など獣医学部新設に強く反対している議員がいる中で、党の手続きをこなすためには、文科・農水・内閣府の部会の合同部会もしくはPTを設置して検討を終えた後に動くべきではないか。
*鳩山二郎氏(鳩山邦夫元総務相次男、前福岡県大川市長)、蔵内謙氏(日本獣医師会会長長男、林芳正前農水相秘書が候補者)
安倍首相と同じ派閥、清和会でごく近い松野大臣も、この段階で「総理の意向」なるものを全く聞いていない。やはり開学時期に難色を示している。事務方は、2017年1月に国家戦略特区指定を受けたこの件を9カ月間報告していなかった。松野大臣や義家副大臣から見れば、内閣府側の性急で強引な話に思われたに違いない。
また、松野大臣は政治的な懸念も示している。
福岡補選は平成28年(2016年)6月に死去した鳩山邦夫元総務相の議席を巡って争われたが、非常に面倒な構図だった。
山邦夫元総務相の息子である二郎と、日本獣医師会会長の蔵内の息子で、安倍首相とは父親の代から選挙区で因縁のある林芳正の秘書・蔵内謙が自民党公認を争っていたが、熾烈な争いの挙句、鳩山二郎が公認候補で出馬した。問題は、それぞれの後ろ盾である。二郎の選挙には菅義偉官房長官が応援に入り、蔵内には麻生副総理が入るという政権中枢の分裂選挙になってしまったのである。
先回りして言えば、当選したのは鳩山二郎だった。
つまり、麻生副総理が推した蔵内が公認漏れの上、対立候補の側に菅義偉官房長官が入り、そちらが勝ったわけで、麻生副総理は二重に面子を潰されたことになる。
それと同時期に、麻生副総理がカヤの外に置かれたまま、52年ぶりの獣医学部新設が官邸主導で決まることになれば、麻生副総理が感情的に面白かろうはずがない。
要するに文科大臣、副大臣共に、この事案の政治性に関する配慮の軸は、「総理の意向」ではなく「副総理の意向」だったのである。
そして、次の文章が来る。義家副大臣が動いた後のものだ。
■義家副大臣のご感触
○斉藤健農林水産副大臣は「そのような話は上がってきていない。確認をしておく」ということだった。
○萩生田内閣官房副長官にも話したが、あまり反応がなかった。
○大臣のご指示のとおり、(内閣府への確認を)進めてほしい。
この期に及んで農水副大臣に報告が上がっていないというのである。内閣府や首相官邸からの「圧力」と、日本獣医師会や関係議員の「圧力」のどちらが官僚に効き目があるかは直ちに想像できよう。霞が関の課長級以下の官僚にとって、所詮、総理大臣など遥か遠くの上座に鎮座する別世界の存在だ。あくまで役所内部の論理、人脈、圧力こそが強固で恐ろしいのである。
一方、報道とは異なり、萩生田副長官は、この件をよく知らなかった。松野、義家、萩生田ー安倍首相に最も近い政治家たちが誰もこの件を、この文書が書かれた時点でまるで認識していなかったのだ。「総理の意向」が聞いて呆れる。
■10/4義家副大臣レク概要
○私が萩生田副長官のところに「ちゃんと調整してくれ」と言いに行く。アポ取りして正式に行こう。シナリオを書いてくれ。
○斉藤健農林副大臣に、「農水省が需給の部分をちゃんと責任持ってくれないと困るよ」と話した際には「何も聞いていない。やばい話じゃないか」という反応だった。
確かに、国家戦略特区認定から10カ月経っても、役人が農水副大臣に報告を上げずに済ませられるほど、日本獣医師会や族議員の圧力の強い案件だとすれば、当選3回の斉藤農水副大臣にとっては処理に困る「やばい話」と思われたに違いない。
そして、その3日後には義家副大臣の依頼を受けた萩生田副長官が、説明に来た文科省担当課に対して、次のように発言したという。
■<取扱注意>10/7萩生田副長官ご発言概要
○再興戦略改定2015の要件は承知している。問題は、「既存の大学・学部では対応が困難な場合」という要件について、例えば伝染病研究を構想にした場合、既存の大学が「うちの大学でもできますよ」と言われると困難になる。
○四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつくのか。(感染症も、一義的には県や国による対応であるとの獣医師会の反論を説明。)
○平成30年4月は早い。無理だと思う。要するに、加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな。構想をブラッシュアップしないといけない。
○学校ありきでやっているという誤解を招くので、無理をしない方がいい。
○福岡6区補選選挙(10月23日)が終わってからではないか。
○文科省だけで、この案件をこなすことは難しいということはよくわかる。獣医師会や農水関係議員との関係でも、農水省などの協力が必要。
○私の方で整理しよう。
全体に穏健な助言という他はない。「再興戦略改定2015の要件は承知している」とは、石破4条件のことであり、それがクリアできる件なのかを文科省に尋ねている。文科省側は「獣医師会の反論を説明」するなど、相変わらず業界団体を代弁している。萩生田副長官が「平成30年4月は早い。無理だと思う」としているのも、文科省のレク自体が、平成30年4月開学阻止で動いていることを思わせる。獣医学部新設が既定路線となってしまった以上、開学時期を遅らせることが文科省から日本獣医師会へのせめてもの言い訳になるからであろう。
そして7枚目が「総理のご意向」の出て来る文書である。
前川喜平はこの文書を受け取ったのが平成28年10月17日だったとしている。
担当課長が藤原豊審議官から聞いた回答だとされる。
■大臣ご確認事項に対する内閣府の回答
○設置の時期については、今治市の区域指定時より「最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。
○規制緩和措置と大学設置審査は、独立の手続きであり、内閣府は規制緩和部分は担当しているが、大学設置審査文部科学省。大学設置審査のところで不測の事態(平成30年開学が間に合わない)ことはあり得る話。関係者が納得するのであれば内閣府は困らない。
○「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。平成30年4月開学に向け、11月上中旬には本件を諮問会にかける必要あり。
○農水省、厚労省への会議案内等は内閣府で事務的にやるが、前面に立つのは不可能。二省を土俵に上げるのは文部科学省がやるべき。副長官のところに、文部科学省、厚生労働省、農林水産省を呼んで、指示を出してもらえばよいのではないか。
○獣医は告示なので手続きは不要。党の手続きについては、文科省と党の関係なので、政調とよく相談していただきたい。以前、官邸から「内閣」としてやろうとしていることを党の部会で議論するな、と怒られた。党の議会では、内閣府は質疑対応はあり得るがメインでの対応は行わない。
○官房長官、官房長官の補佐官、古谷副長官補、和泉総理大臣補佐官等の要人には、「1、2ヶ月単位で議論せざると(原文ママ)得ない状況」と説明している。
こうして事態の推移を追いかけてみれば、藤原豊審議官の発言は至極合理的という他はない。
そもそも「総理のご意向」は伝聞であり、そうである以上、それは今治の個別案件に掛かっているはずはない。藤原豊審議官が伝聞で安倍首相が加計学園の個別案件を進めろと指示していると知っていたとすれば、安倍首相はそれをあちこちで喋っていることになるからだ。普通に読めば、「『最短距離で規制改革』そのものを前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、個別案件の話ではなく、規制改革全体を進めることが総理のご意向だと聞いている」ということになる。
むしろ重要なのは、3項目目の、『「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか』との一文だ。
単に、安倍首相の指示がなかったことを示しているからだけではない。
なぜ文科省に対して藤原豊審議官が「総理からの指示に見える」ような決定形態を助言したのか。文科省が日本獣医師会と族議員らから、規制を崩された責任を糾弾された時に、「総理からの指示」で仕方なく呑んだという話にする以外に考えられまい。
次の項も同様だ。大学の許認可を前進させられるのは文科省の仕事だが、圧力に脅える農水省と厚労省を動かすのは大変だろうから、首相側近の萩生田副長官のところでミーティングをセットすれば、彼らも圧力団体に言い訳が立つという話に違いない。
ちなみに前川喜平は、国会の証人喚問を含む様々な場所で平成30年4月開学が安倍首相の意向だったかのように発言している。だが、この文書によると藤原豊審議官は「(平成30年開学が間に合わない)ことはあり得る話。関係者が納得するのであれば内閣府は困らない」と発言している。
・・・こうして8枚いずれの文書も、徹底的にサボタージュしてきた関係省庁を、藤原豊審議官、義家副大臣、松野大臣、萩生田副長官らがそれぞれの立場から解きほぐし、圧力団体や麻生副総理の意向に配慮しながら、行政手続きと規制突破を両立させるべく腐心している様を伝えている。
朝日新聞をはじめマスコミが「総理の意向」以外の部分を徹底的に隠したのはその為だったのだ。
朝日新聞や前川喜平の主張し続けた「安倍首相の意向」は全て、彼らが持ち出して大騒ぎした文書自体によって否定されていたのである。
◆なぜ平成30年4月開学に決まったのか
2点補っておく。
平成30年4月開学に最終的に決まったのはなぜか。これは愛媛県今治市の強い希望だった。当然ながら予算措置の関係上、開学時期が曖昧なまま、日本獣医師会の圧力で文科省に寝返られたらたまらない。尻を決めなければ予算も教員確保も設備の目途を立てられないのである。
さらに言えば、獣医が育つのには6年かかる。平成30年4月に開学しても新人の獣医が誕生するのは平成36年3月以降になる。1人前になるのは10年後だ。ここまで10年間却下され続けた挙げ句、平成30年4月に開学しても自らの県で養成した獣医師の活躍が10年後となれば、彼らが開学を急ぐのは当然だろう。
さて、もう1つは小さな茶番劇の補足である。
国会閉会の2017年6月19日夜、NHKクローズアップ現代が、文科省調査とは別の新文書が出たとして、今度は2016年10月21日付の萩生田副長官の発言概要をスクープしたのだ。NHKによる実に3度目のスクープであり、前川喜平ルートとNHKの深い関係、又、NHK上層部における反安倍派の存在を思わせる。
この文書によると、萩生田副長官が加計学園の獣医学部新設について、詳細な指示を文科官僚にしていることになる。一部抜粋する。
○総理は「平成30年4月開学」とおしりを切っていた。工期は24ヶ月でやる。
○何が問題なのか、書き出して欲しい。その上で、渡邉加計学園事務局長を浅野課長のところにいかせる
萩生田副長官はこの文書内容を全面否定し、総理からのいかなる指示も受けたことはなく、官房副長官として気づきの点をコメントすることはあっても、自分から具体的な指示や調整を行った事はないと回答している。
「なお、今回の件では、心当たりのない内容が、私の発言・指示として文書・メールに記載されていることについて、非常に理解に苦しむとともに、強い憤りを感じています」
萩生田副長官の否定を持ち出すまでもなく、極めて馬鹿げた文書という他はない。
ここまでの経緯で明らかにした通り、文科省は挙証責任を果たせなかった以上、行政案件として前に進める責務が既に発生している。義家副大臣が調整に入り、それを受け、藤原豊審議官と課長レベルで事はむ前に進み始めているのである。
ここで唯一、政治案件として配慮すべきは麻生太郎副総理である。従って、萩生田副長官が麻生太郎副総理との間の調整に、この時期動いていたというならば話は分かる。
が、麻生太郎副総理と関係もなく、文科省の担当課の尻を叩く為に、なぜ、官房副長官が、わざわざ総理大臣の名前まで持ち出して、あくせく汗をかかねばならないのだろうか。NHKNのスクープとしては責任問題の発生するほど拙劣な偽文書と言えよう。
NHK、朝日新聞のスクープを受けて、2017年5月17日の午後、民進党は慌ただしく衆議院議員会館で「加計学園疑惑調査チーム」を立ち上げてヒアリングを開いた。
朝日新聞の1面スクープの午後であればマスコミの注目度は急上昇する。民進党幹部が並ぶ正面背後には「加計学園疑惑調査チーム」と書かれた横断幕が掲げられ、カメラに収まるようにしてある。いきなり呼びつけられた文科省や内閣府の官僚たちは、内部文書の真偽も、経緯の詳細も答えようがない。彼らが答えられない姿がテレビに晒され、朝日新聞は得意げに書く。
「文科省幹部は『記憶にございません』と答弁」
国会でもこの日から文科省文書に関する質疑が始まった。
民進党の玉木雄一郎が、朝日新聞がスクープした文書群Bを早速入手し、衆議院の文科委員会で質問に立ったのである。
夜の各局ニュースが、前夜のNHK、朝日新聞朝刊の1面スクープ、民進党が「疑惑調査チーム」を立ち上げ、国会でも質問した4重の「信用」に依存し、大々的に報じたのは言うまでもない。
報道時間は以下の通りだ。
・NHK「ニュースウオッチ9」約7分半
・日本テレビ「NEWS ZERO」約4分半
・TBS「NEWS23」約8分半
・テレビ朝日「報道ステーション」約14分半
・フジテレビ「ユアタイム」約1分半
テレビ朝日を筆頭に、TBS、NHKの報道時間が際立っている。本来なら出所不明で、まずは信憑性から吟味に入るべき文書が、こうしてたった1日で、確かに存在する「疑惑」になってしまったのだ。
さらに驚くべきことがある。
実は、朝日新聞は、加計学園問題を2017年3月14日の第1報からこの日まで2カ月もの間、わずか10点にも満たぬ記事でしか報じていない。
ところが、国会では、3月3日の参院予算委員会での民進党舟山康江の質疑に始まり、5月15日まで、加計学園に関する質問は実に56回もあったのである。
朝日新聞はそれらの質疑を黙殺し続けていたのだ。
理由は2つ考えられる。安倍叩きとしては森友スキャンダルを賞味期限が切れるギリギリまで使いたかったというのが1点であろう。
第2に、加計学園問題の方が、森友学園に比べ不透明性が乏しい。安倍晋三と加計孝太郎が友人という以外に何も問題を作り出せない。森友の時のような劇場化も難しそうだ。決定打やシナリオを模索し続けていたに違いない。
そこに決定打はネギを背負ってやってきた。前文科事務次官という大物だ。
だが、前川喜平がこの文科省文書を手元に持っていたのは偶然だろうか。
国家公務員法は、公務員に対して、現役のみならず退職後も、職務中知り得た情報の守秘を定めている。前川が情報の流出者だと明確になれば、彼自身が違法行為を問われる可能性がある。
いや、そんな事以前の問題もある。文科省職員らの証言によれば前川は机回りを整理しない人で、デスクには書類が山積みになっていたという。そんな人物が、よりによって加計学園の経緯メモだけを退職時に持ち出したとは考えにくい。
以下は、私の推理である。
加計問題をスキャンダル化できる特ダネを探していた朝日新聞、NHK幹部らは3月以来、密議を繰り返してきた。その中で、文科事務次官を天下り斡旋で事実上更迭された直後だった前川喜平との接触が始まる。
業界内部で根強い噂となっているのは前川とNHKの社会部出身の幹部職員との長年にわたる親密な関係である。前川は安保法制反対デモに出るなど政治的には反安倍だった上、天下り斡旋の責任を政権から問われて辞任に追い込まれた遺恨がある。NHK社会部は放送業界で最も過激な労組として知られる日本放送労働組合の思想的・人的流れを今なお強く残している。NHK社会部の過激分子とNHK上層部に食い込んだ社会部左派幹部との線上に前川が浮かび上がる一方で、朝日新聞社会部とNHK社会部も広範に人脈を共有しているであろう。
そうした中、加計問題をどう安倍叩きに使うのかの材料探しが、前川に対して依頼され、前川が子飼いの部下に情報を探させた。数日ないし1〜2カ月かけた証拠探しによって前川の手元に文書が確保される。その段階でNHK、朝日新聞ともに、現役の社会部に取材に行かせたー。
もしこれがNHKと朝日新聞それぞれの現場記者から上に上がった情報だったなら、スクープの判断を両社の上層部が同時にできたとは思えない。逆に、上層部からの使嗾があった上で現場が前川に取材しているのであれば、スクープの判断が同時に可能になるだろう。
こうして朝日新聞・NHKが文書を間髪入れずにスクープし、民進党は疑惑調査チームを急遽朝日報道と同日に設定することで、ワイドショーと夜のテレビが大々的に報じる流れを準備し、かつNHKは文書Aをスクープ、朝日新聞は文書群Bをスクープして情報源が違うと言い訳ができるアリバイを作った挙げ句、事に臨んだ。
以上、現時点では取材拒否が多く、明らかにならない推定を多く含むことはお断りしておく。が、当たらずと言えども遠からずではないか。要するに、加計スキャンダルは朝日新聞とNHKとの幹部職員が絡む組織的な情報操作である可能性が高いということだ。
安倍政権に与えた打撃の深刻さと、安倍の関与がゼロで、関係する行政や民間の諸氏の不正が全く存在しなかった事を考えれば、これは、日本のトップメディアが情報を使って政治破壊活動を実践した”戦後最大級のスキャンダル”というべきではなかろうか。
◆全ては朝日新聞の隠蔽に始まった
森友問題から加計問題に賭場を乗り換え、朝日新聞の安倍叩き第2幕は開幕した。
実際、記事の質量で見ると、森友問題が如何に偽装された問題に過ぎなかったかは明白である。森友報道初出の2017年2月9日から、文科省文書スクープが1面トップを飾る5月17日までの98日間の間、森友関連記事数は223本だったのに対し、翌日5月18日からの同じ98日間の8月23日までの森友関連報道は、森友と加計を並べて扱った社説などを含めても、50件に激減し、しかも扱いはごく地味なものばかりになっている。
疑惑が真に実在するものだったなら、このような不自然な記事件数の激減は生じまい。
実際この日からシャワーのように続く加計問題記事も、中身は空疎そのものだ。しかも、朝日新聞の報道内容には当初から重大な隠蔽がある。
スクープ記事本文を詳しく解析してみよう。
5月17日のスクープには同紙が入手した一連の文書の内容が次のように紹介されている。
<朝日新聞が入手した一連の文書には、「10/4」といった具体的な日付や、文科省や首相官邸の幹部の実名、「加計学園」という具体名が記されたものもある。加計学園による獣医学部計画の経緯を知る文科省関係者は取材に対し、いずれも昨年9〜10月に文科省が作ったことを認めた。また、文書の内容は同省の一部の幹部らで共有されているという>
これは文書が、具体的であること、又、幹部で共有されていたと同紙が伝聞したこと、要するに信憑性のある文書だということの説明である。
では朝日新聞は、文書の中身をどう紹介しているか。
<「平成30年(2018年)4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい」と記載。そのうえで「これは官邸の最高レベルが言っていること」と書かれている>
一方、文科省側については、朝日新聞は次のように紹介する。
<松野博一文科相が「大学として教員確保や施設設備等の設置認可に必要な準備が整わないのではないか。平成31年(2019年)4月開学を目指した対応とすべきえはないか」とし、18年の開学は難しいとする考えを示したことが記載されている。
一方、「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」という題名の文書には、「(愛媛県)今治市の特区指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況である。これは総理のご意向だと聞いている」と記されている>
つまり、文科大臣は難色を示しているが、内閣府側が「官邸の最高レベル」「総理のご意向」などの文言を使って強引に事を推し進めているという構図である。
とりわけ朝日新聞が、「総理のご意向」との文言を大見出しにし、リードを「安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人『加計学園』」と書き出しているのは、今後の朝日新聞の報道方針ーというより闘争方針と言うべきだろうーを象徴する。この後、朝日新聞の報道は、毎回必ず、「安倍晋三首相の知人が理事長を務める学校法人『加計学園』」という文言と、「『総理の意向』『官邸の最高レベルが言っている』などと書かれた文書」という枕詞付きで、記事が書かれ続けるのである。森友学園の時には、安倍首相の関与が初めからあり得ないと分かっていながら、朝日新聞はスキャンダルを仕掛けた。
しかし、大阪の地元役所の裁量には問題があった。財務省が藪蛇を怖れて答弁を手控えたことが、事件を長引かせる理由となった。籠池夫妻のキャラクター、昭恵夫人バッシングという、仕掛けた側も予想外の材料が次々に飛び出して事を大きく見せていった。ついには籠池の数々の詐欺と破綻が来る。安倍スキャンダルは嘘だったが、森友=大阪役場スキャンダルは実在したのであった。
ところが、加計学園問題は更に酷い。全編仕掛けと捏造で意図的に作り出された虚報である。偶然の波乱含みだった森友の場合と違い、今回は朝日新聞が明確に司令塔の役割を演じ、全てを手の内に入れながら、確信をもって誤報、虚報の山を築き続けていく。
何よりも驚くべきは、前川喜平たった1人の証言で2カ月半、加計問題を炎上させ続けたことだ。
森友騒動の時には、当事者は地方局や大阪府の役人で、財務省もこれを庇い、真相を明らかにし難い面があった。だが、加計は違う。国家戦略特区で認可した八田達夫、原英史ら専門委員にせよ、獣医学部招致の起案者である前愛媛県知事加戸守行にせよ、文科省側で調整しを主導した副大臣の義家弘介や責任大臣である松野博一にせよ、官邸から圧力をかけたと報道された官房副長官萩生田光一にせよ、取材を全く拒んでいない。
さらには、この問題で加計学園の認可に強力に反対してきた日本獣医師会やその背後にいる大物議員たちー石破茂、麻生太郎らーの存在をきちんと報道しなければ、本当の構図はまるで見えてこない。
ところが、朝日新聞とそれに追随するマスコミは、大騒ぎを演じた2カ月半、これらの当事者に殆ど取材せず、報道もしていない。
前川喜平1人の証言だけで加計問題を報じ続けた。
虚報とすら言えない。
他の当事者全部を隠して前川喜平というー当事者能力ゼロだった人物ー1人の、貧弱な証言だけで事件を構成しても、全く事実は浮かび上がってこないからだ。
加計問題は比喩的な意味ではなく実際に朝日新聞演出、前川喜平独演による創作劇だったのである。
が、話を急ぐまい。
◆仕掛け、次々と炸裂
朝日新聞が入手した文書と同じ文書群Bを手に、スクープ当日の2017年5月17日衆院文科委員会で初回質問に立ったのは、民進党の玉木雄一郎だ。同17日の朝日新聞夕刊は、玉木と文科大臣松野博一の問答を次のように報じている。
<民進党の玉木雄一郎氏は(略)「強い総理の意向を受けて、多少無理があってもやらなければならない。仕方なしに物事を進めたという思いが大臣自身になかったか」とただした。(略)松野博一文科相は(略)「設置認可をしっかり審議するというのが私も文科省も一貫した姿勢だ」と答弁>
松野文科相が「総理の強い意向」など全く知らず、気にもしていないことは、実は玉木が入手していた文科省文書にはっきり書かれているのである。
玉木はそれを隠して、以上のような「科白」を国会で語る。そして、朝日新聞も、文書内容を隠して、こうした科白部分だけを切り取って報じる。
一方、翌5月18日の「時時刻刻」で、朝日新聞は「獣医学部の新設は、獣医師の増え過ぎを抑えるという理由で、長年、文科省が認めてこなかった」と、獣医師の需要について一言で片付けている。この後、6月8日まで、朝日新聞には、獣医師の需要や現状について、1本の概観記事も取材記事もない。
異常な事だ。
加計学園の案件は、獣医学部新設問題である。獣医学部を巡る状況を説明する記事が1本もなければ、話の土台が購読者に全く伝わらないはずではないか。
朝日新聞はこの記事で「長年、文科省が認めてこなかった」と簡単に片付けているが、長年とは実は52年なのである。時代の流れで自然にその業態が廃れて、新規参入者が消えてしまうというのなら分かる。だが、省庁が特定の業種について52年間も新規参入を禁じてきたというのは、それ自体おかしくはないだろうか。
ところが、朝日新聞はその問題に全く立ち入らない。なぜなら、ここで獣医学部規制を巡る長年の歪みを報じてしまっては、「総理の意向」が吹き飛んでしまうからだ。
安倍首相に打撃を与えるためなら、文科行政の多年の歪みも獣医師業界の実態も、朝日新聞にとってはどうでもよかったということになる。
さらにこの「時時刻刻」では同時期に獣医学部の申請をしていた京都産業大学の件も書かれている。
<京都府と京都産業大(京都市)も関西圏特区で獣医学部をつくることを提案していたが、この日の諮問会議で、獣医学部の「空白地域」に限って新設を認めるという方針が示されたため、京産大は断念した。このとき、加計学園が選ばれるレールが敷かれた>
平成28年(2016年)11月9日の国家戦略特区諮問会議が獣医学部新設を巡る方針を出した。その中に「広域的に」に獣医学部が「空白」な地域に限って新設を認めるとの文言が入った。この文言のために、すぐ近くに大阪府立大学獣医学部がある京産大は、新規参入を断念せざるを得なくなり、加計学園が選ばれることになったと記事は言う。
要するに、「総理の意向」で、他の新規参入者を締め出す文言を加えて、加計学園に認可を与える流れを作ったというのが朝日新聞が誘導したい筋書きである。
これは、この後マスコミを乱舞する「はじめに加計ありき」なるキャッチフレーズのきっかけとなる記事だった。
まず断っておかねばならない。広範な誤解があるが、この事案では加計学園のみが特区指定を受けたのではない。国家戦略特区は、地方自治体の広域的・総合的な地域課発提案に対して指定されるもので、今回の特区指定は、広島県と愛媛県今治市の共同提案に対して認可されたものである。この共同提案によって14事業が既に推進されている。加計学園はそれらの1つに過ぎない。加計学園のみに焦点を当てた議論がそもそも全くおかしいのである。
また、特区の特長として、最初の認定者が軌道に乗れば、第2、第3へと拡大してゆくのが原則である。加計学園はすでに10年間に様々な形で15回も獣医学部の申請を行い、全て却下されてきた。
それらを踏まえれば、もし誰かが加計学園の参入を狙って条件を操作するなら、複数の特区提案に獣医学部が入っていても、同時に認可が通るよう参入基準緩め、落選の確率を下げようとするのが普通だろう。それが難しければ、来年度以降、獣医学部が第2、第3番目の認可へと確実に道が開けるような覚書を付して、将来の参入幅を事前に確保しておこうとするに違いない。なぜ、加計学園の認可を進めたい人間が、参入幅を狭くする文言を付け加えようなどとするだろう。理屈が全く逆なのである。
実際には、参入枠を1校に絞ろうとして強く圧力を掛け続けたのは、安倍首相でも官邸でもなく、日本獣医師会だった。日本獣医師会会長の蔵内勇夫自身が会報誌でその事を明言しているのである。だが、その事実は一切報じられなかった。「広域的」を付言することで安倍首相が「初めに加計ありき」を図ったとのデマが数カ月にわたり定着することになったのである。
◆政府の後手にーほくそ笑む朝日新聞
ところが、こうしてNHKと朝日新聞が満を持して仕込んだ安倍叩きの切り札に、当初、政府は全く反応しようとしない。
官房長官の菅義偉は、朝日新聞のスクープが出た2017年5月17日の記者会見で「全く、怪文書みたいな文章じゃないでしょうか。出所も明確になっていない」と「怪文書」扱いにした。
朝日新聞上層部は内心、狂喜したに違いない。すぐ後に、前川喜平という証人を出すつもりだった朝日新聞としては、菅官房長官が否定を強く打ち出すほどに、後から菅官房長官の信用が失墜することになるからである。「怪文書」とまで言い切ってくれれば、前川喜平登場の効果は絶大になる上、盤石を誇っていた菅官房長官の危機管理能力への安倍首相や政権周囲の信頼が揺らぐ。政権内部の信頼感情を分断する効果も狙えるわけだ。
だが、実際には菅官房長官の感覚そのものは正しかったのだ。
誰が書いたか、何に使ったか、内容への責任は誰が担保するかが1つもはっきりしない文書が外に流出する。内容の真偽以前にそれだけで怪文書と言うべきだろう。
さらに、誰が書いたか分からないメモ書きに「総理の意向」と書かれていたら、書かれた総理の側に説明責任が生じたり総理の側のスキャンダルになるなどということを1度通用させれば、行政も政治もーいや、どんな組織だろうと組織そのものが崩壊するだろう。言うまでもなく、内輪の駆け引きや辛辣なコメント、部外秘、また同じ組織内でも他部署に秘しておくべきメモはどんな組織にもある。家族の間でも見せれば長年の信頼が崩壊するようなメモ書きはいくらでもあり得よう。1度こんな文書に権威を認めてしまえば、今後、どんな役人テロ、クーデターも可能になる。
だが、菅官房長官を含め、政権中枢の判断は、森友騒動の後だったことを考えると、甘かった。筋論が筋論として通用しない3カ月を経た後だったのである。しかも、この文書は、2017年5月17日朝日新聞が1面トップに出し、前夜にNHKが同じ情報を報じている。民進党も同時にチームを立ち上げた。組織ぐるみでの情報の裏付けがあったと見なして、即座に最大限の対処に入るべきだった。
まして文書群Bの内容を把握すれば、何らの違法性や不当な政権の介入が書かれているわけではないことはすぐに分かったはずだ。
むしろ出所不明の文書をNHKが初報した点を重視し、政府側が強い意志で調査を指示すべきだった。国家公務員が内部情報を告発した際、「公益通報者」として保護されるのは、違法行為の告発に限られる。今回のように違法行為を全く含まない文科省内部メモがよりによってNHKに流出したとなれば、これは報道の自由の範疇を超える。そのけじめを断乎最初に政権が主導すべきだった。
ところが、文書の性格を明確に位置付けることもないまま、政府は型通りの文書調査を行う。個人のパソコンは確認しなかった。違法性がないのに、内部文書を個人レベルまで精査するのは、人権問題だからである。ところが、これが情報隠蔽のように攻撃された。
個人情報の精査は拒むというのなら、政府は人権問題を強く打ち出すべきだった。
人権問題と内容に違法性がない事を盾に個人情報の調査は拒みつつ、文書内容については「怪文書だから関知しない」という建前論に逃げずに、先手で政府見解を出すー初動はそうあるべきではなかったか。
安倍政権は稀に見る国家危機管理能力の高い政権だが、自己を守る能力に大きな欠落があったと言わざるを得ない。
後智慧で言っているのではない。朝日新聞が主導しての一連の森友・加計報道は、事ここに至り、どう見ても情報戦であって、通常の意味での報道ではない。もし現政権が多大な国民益をもたらす力量ある政権であるならば、情報戦に対して十分に自己防御できる態勢を作り直せなねばならない。政権自体を守る事も、国民の負託に対する責務だからである。
いずれにせよ、こうした政府の”気のない対応”の中、前文科次官による証言という爆弾が炸裂することになる。
◆前川喜平登場
2017年5月25日、朝日新聞は、前川喜平前文科次官の単独インタビューを1面に掲げた。証言を1面と社会面で、それ以外の記事も含めれば、この日、朝日新聞は、加計問題実に8件の記事を掲載している。
前川によれば、取材申し出はNHKと朝日新聞からだったが、NHKは報道しなかったと後で怒ってみせている。が、これはNHK内部の力学を頭に置いた政治的発言のように思われなくもない。
前川喜平はNHK社会部出身の幹部と旧知の仲とされている。
2017年1月25日に籾井勝人前会長から上田良一会長体制に交代して以後、NHKの報道は社会部極左の主導力が目に見えて増し、放送法遵守を組織是とするNHKとして異例の事態が発生している。前会長の籾井は発言が軽く、メディアでも散々叩かれたが、放送の中立性を守る重しにはなっていた。現会長の上田は、穏便な実務派であるが、報道内容については、タガが外れたように野放し状態だ。
実は、NHKの5月16日夜11時のスクープにしても奇妙な点がある。
『週刊ポスト』が、次のように報じているが、事実の裏が取れないのである。
<報道機関として先にスクープを打つのは名誉なことですが、1発目が黒塗り報道だったため、まるで我々が後追いしたような形になったのは非常に不本意です。これらはすべて『小池さん』の指示だったと言われています」
「小池さん」とは、2017年4月の人事異動で報道局長になった小池英夫氏のことである。NHK政治部で長く自民党を担当し、政治部長も務めたことから、現政権とのパイプも太い。NHK報道局記者の話。
16日の放送直前、小池さんが”こんなものは怪文書と同じだ”と言い、問題の部分を黒塗りにして放送するよう指示したそうです。文書を入手した社会部の記者の中には爆弾スクープを”不発弾”にされたと不満を漏らす者も少なくなかった。(『週刊ポスト』2017年6月23日号)>
むろん、この文書は既に書いたように普通に見せられれば「怪文書」であって、常識ある報道局長なら裏を取らずに報道することを許すはずはないだろう。ところが、その時間、小池は既に退社していて局内にいなかったとの情報がある。それどころか社会部長さえこの報道を知らなかったともいう。すると話は逆になる。報道局長や社会部長に見せれば裏を取れと言われるから、7時や9時のニュースでスクープにせず、わざとノーチェックになる深夜帯に、極力さりげなく放送した。
NHKの社会部にしてみれば、朝日新聞と共同で前川喜平のネタを追いかけてきたのにスクープを逃すのは惜しい。そこで形だけでも先陣を切るため手管を弄したーそうも推察されないだろうか。だがこうした掟破りのスクープがNHK内で許されるとしたら、報道局長、社会部長以上の「意向」か「圧力」が現在のNHK内にあり、前川喜平とのつながりもより根深いものだという可能性が出てくる。
いずれにせよ、前川喜平のインタビューは、朝日新聞の単独公表となった。
見出しは1面に「前文科次官『文書示された』」と大きく躍る。
菅義偉官房長官が「怪文書」と切り捨て、文科省調査で存在しなかったとされた文書を、前文科次官が「文書はあった」と証言したのである。効果的な政府攻撃となった。
見出しはさらに「獣医学部の新設計画『行政がゆがめられた』」と続いている。
つまり、「総理の意向」により「行政がゆがめられた」という構図である。それを文科省元トップが証言した事は重い。
<前川氏はこの文書について「獣医学部の新設について、自分が昨年秋に、担当の専門教育課から説明を受けた際、示された」と証言した。同氏によると、昨年9月9日〜10月31日に計6回、専門教育課の課長や課長補佐らと事務次官室で獣医学部の新設について打ち合わせをした。(同日付朝日新聞記事より)>
前川喜平は、菅義偉官房長官が「怪文書」とし、文科省が調査で文書はなかったと結論したことに対して「あるものが、ないことにされてはならないと思った」と、証言に立った理由を説明している。
そしてこう語る。
<文科省がそれらの言葉を持ち出され、圧力を感じなかったといえば、うそになる。「総理のご意向」「最高レベル」という言葉は誰だって気にする。私だって気にしますよ。ただ、あくまでも内閣府の審議官が語ったという言葉なので、真実はわからない>
だが、これはおかしい。
「総理の意向」の発言をしたとされるのは藤原豊審議官である。熱意は人一倍強いかわり、強引な手法への批判も聞こえる。だが、藤原豊審議官は、内閣府の経済産業省大臣官房付審議官だ。霞が関の序列の中でも、「審議官」という肩書はややこしく、様々な立場の審議官が存在する。例えば、単純に内閣府審議官といえば、次官に次ぐ内閣府ナンバー2になる。だが、藤原豊審議官は経済産業省大臣官房付審議官、その序列は局長と課長の間であり、カウンターは文科省担当課長だった。藤原豊審議官が折衝した文科省の担当課長と前川喜平事務次官の間には、担当課長→官房3課長→次長→部長→官房長、局長→審議官→次官という極端な地位の隔たりがある。霞が関という序列社会において前川喜平はそれほど「偉い人」なのだ。
逆に言えば、課長とカウンターの藤原豊審議官が総理と用談できるはずもない。そうした藤原豊審議官が「総理の意向」を持ち出しても実際には安倍首相の具体的な意向と関係ないことなど霞が関の常識だ。前川喜平が藤原豊審議官の言う「総理の意向」を気にする筈は元々なかったのである。
逆に、安倍首相の側にしてみれば、もし何らかの強い意向があれば政治家ルートを使えばいいだけの話である。松野文科大臣は安倍首相と同じ派閥清和会の身内だし、副大臣の義家弘介は子飼いなのである。
ところが、そうした事情に口を閉ざし、前川喜平は、このインタビューで、逆に尤もらしくこんな「反省」をしてみせるのだ。
<本当は、私自身が内閣府に対して「こんなことは認められない」と強く主張して筋を通すべきだった。反省している>
今さら反省する必要などない。なぜならば、文科省文書では、松野大臣も義家副大臣も、「強く主張して筋を通す」のが当然と考えており、義家副大臣が内閣府、農水省と「筋を通して」折衝している様がはっきり描かれているからだ。前川喜平に「反省」が必要だったとすれば、大臣と副大臣を働かしておいて、自分は何も仕事をしていなかったことであろう。
何よりやりきれないのは、この反省が、実は「総理の意向」に抵抗するのは不可能だったと強く暗示するための、反省を装った安倍攻撃だという点だ。やり口が汚い。
そして、その先で「行政が歪められた」と証言するのである。
<獣医学部の新設を認めるのは文科省だ(が、獣医師の需給見通しを示す)農水省や(公衆衛生を担当する)厚生労働省が、獣医師が足りていないというデータや、生命科学など新しい分野で必要なニーズなどを示さない中では、本来は踏み切れない。踏むべきステップを踏まずに飛び越えろと言われたように感じ、筋を通そうにも通せなかった。行政が歪められた>
農水省や厚労省から獣医師数が不足している根拠が示されなければ、文科省としては獣医学部新設に踏み切れないと前川喜平は言う。これは確かに文科省の公式の立場である。だが、その規制が52年続いている。ここにはどれほどの歪みがあり、規制絶対維持派と規制打破派のどんな戦いがあったか。
いずれにせよ、前川喜平の「行政が歪められた」という一言が、この後、マスコミを埋め尽くすことになったのは言うまでもない。
●前川前次官がまた不可解発言
2017年6月30日
前川喜平・前文科事務次官が2017年6月23日に日本記者クラブで記者会見を行った。その際、2015年6月の閣議決定における、いわゆる「石破4条件」について、相変わらず「文部科学省に挙証責任はない」と言っている。これは重大な不可解発言だ。
国家戦略特区に関しては、その諸手続きを法律・閣議決定で定めている。中でも「国家戦略特別区域基本方針」はその名の通り特区に関する基本であり、これは2014年2月に閣議決定されている。
その23ページでは「規制所管府省庁がこれらの規制・制度改革が困難と判断する場合には、当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を適切に行うこととする」と書かれている。
つまり、国家戦略特区に関しては、文科省側に合理的に規制緩和できない根拠を示す必要があり、できなければ新規参入を認める、ということだ。
文科省は機会があったにもかかわらず、これを実行していない。悪いのは文科省だ。前川氏が辞めてから文句を言うのは卑怯だ。
これは許認可をもつ規制官庁なら当然であるので、わざわざ書く必要もないことだと思っているが、国家戦略特区に関わる省庁には、文科省のような「非常識官庁」もあるために、念のために書いたのだろう。
●国家戦略特別区域基本方針
平成26 年2月25 日閣議決定
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai4/sankou_kihon.pdf
23ページでは「規制所管府省庁がこれらの規制・制度改革が困難と判断する場合には、当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を適切に行うこととする」と書かれている。
●平成15年文部科学省告示第53号(専門職大学院に関し必要な事項について定める件)
2003年5月1日
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houka/03050102.htm
◆前川喜平という男
霞が関では省庁の権限と、その官庁に直結する業界の既得権益の結びつきはどこも非常に強い。それは必ずしも否定すべきことではない。省益の総体が国益だという一面は当然あるからだ。が、省益が国益を損なう場合もある。例えば、縦割り行政の弊害であり、業界権益との癒着=天下りの横行であり、正当な新規参入を阻む岩盤規制であり、事なかれ主義と面従腹背という道徳的な腐敗などが、それである。
前川喜平を、朝日新聞らによる安倍潰しの駒という観点ではなく、官僚トップとして、今回の加計問題の中に改めて置いてみると、好ましくない意味での典型的な省益派の役人だと言える。
何よりも前川喜平は、平成28年(2016年)秋に発覚した文科省内の組織的天下りの主犯格であった。第2に、前川喜平は加計問題で、安倍政権による岩盤規制突破をご破算にしようとする旧来の省益の立場に立っていた。第3に、次官時代の仕事ぶりは、縦割り行政の中に潜り込んで事なかれ主義を決め込み、自ら面従腹背を座右の銘とさえ公言している。さらに付け加えれば、東京大学=霞が関の戦後体制に根を下ろしてきた左派官僚の1人でもある。
まず前川喜平は、そもそもなぜこんなマスコミの手先のような形で、安倍政権の告発者になったのか。
必ずしも易しくはない問いである。
前川喜平は天下り斡旋の利で中途退職させられたのに菅義偉官房長官ー杉田官房副長官の恩情で、退職金推定5000万円余で最近文科省を辞めたばかりだ。実家は世界3大冷蔵庫メーカーとされる前川製作所であり、前川喜平の妹は元外相中曽根弘文の妻、つまり中曽根康弘と極めて近い姻戚関係にある。そんな人物が、怪文書を用いた政権批判のお先棒を担ぐ動機は、普通考えれば見当たらない。
幾つかの動機が複合していると思われる。
第1には、天下り斡旋で自分を事実上免職にした安倍政権への強い怨恨である。
第2には、安倍首相の官邸主導の規制打破に対する、省益派官僚としての復讐である。
第3には、安倍首相へのイデオロギー的な反発である。前川喜平は、最近の講演で、審議官時代に、安保法制反対デモに参加していたことを自ら語っている。前川喜平は「あのー、ここだけ。内緒の話ですけど。2年前の9月18日、国会前にいたんです」と切り出し、「集団的自衛権を認めるという解釈は成り立たない。立憲主義に反する」と主張した。一方、「これ、バレてたら事務次官になってなかったんです。おそらく」とも述べ、場内に笑いを呼んだ(講演会「前川さん 大いに語る」(平成29年8月2日)。
また、8月14日の東京新聞のインタビューでは「高校無償化はいい加減だったと思うし、朝鮮学校を入れるということに光を見ていた」と答えている。北朝鮮が日本への核ミサイル攻撃を公言し、日本周辺にミサイルを撃ち込み続けている最中の発言である。
第4には、前川喜平は参考人として立った途端、出会い系バー通いが指摘されたが、この件について、より深い情報を握っている筋から恫喝されている可能性も否定できない。
前川喜平が証言者として登場した当初、事情を知る関係者の多くが真っ先に感じたのは、安倍政権への怨恨だったという。
前川喜平は正規に文科次官を勤めあげて退任したのではない。任期を待たずに辞任に追い込まれた。天下り斡旋という国家公務員法違反の事案に、彼自身が主犯格の1人として関係していたことが露見したからだ。
前川喜平自身は『文藝春秋』平成29年7月号の手記「わが告発は役人の矜持だ」で次のように辞任の経緯を述べている。
<年明けの今年1月5日に松野大臣に引責辞任を申し出たところ、「次官が辞めることはないじゃないか」と1度は慰留されましたが、決心は変わりませんでした。「そういうわけにはいきません、官邸にも報告に行ってまいります」と申し上げて、杉田副長官に辞任の意を報告し、「それは役人の美学だよな、こういう時に腹を切るのが次官ってもんだ」と即ご了承いあただきました>
前川喜平はこの経緯説明を参考人招致でも繰り返した。
が、まず第1に、前川喜平は1月5日に松野文科大臣に辞任を申し出ようがなかった。松野大臣はその日、公用で京都にいたからだ。
第2に、この証言は同じ国会答弁に立った菅義偉官房長官の証言と真っ向から対立する。
菅義偉官房長官は杉田副長官から前川喜平に説明を求めた際、前川喜平は自らの進退を示さなかった。逆に、平成29年年明けになると、役所の慣例に従って、文科省事務方から3月の定年退職を6月国会会期末まで延期する打診が杉田副長官にあった。杉田副長官は、前川喜平は今回の責任を取って辞めるべきであるし、定年延長は難しいと回答した。その後、前川喜平から、せめて定年期限の3月まで次官を続けたいと話があったが、杉田副長官は無理だろうと答え、菅義偉官房長官にその都度報告があったというのである。
前川喜平の証言は、これ以外でも、他の関係者と真っ向から対立する例が目に付く。しかし、この場合は、杉田副長官がその都度菅義偉官房長官に報告している。杉田副長官が嘘の報告を菅義偉官房長官にあげる意味がない。菅義偉官房長官と杉田副長官が申し合わせて嘘をついているのでなければ、2対1の証言ということになる。そもそも、現職の官房長官が副長官と図って、一事務次官の進退などという些細な事案で虚偽の証言をするだろうか。
むろん、言い分が真っ向から対立している以上、厳密に公平な立場に立てば真相は分からないという外はない。が、推測はつく。
この頃、文科省の天下り問題はかなりのスキャンダルになっており、当事者の前川喜平を次官から降ろさねば、国会での責任追及は免れ難い状況だった。国会閉会は1月20日だ。政権側が前川喜平の罷免を急いだのは間違いない。
一方、前川喜平にしてみれば、文科省の内部調査はまだ終わっておらず、報告書は3月まで出ない。報告書が出なければ処分も決まらないはずだという言い分があったろう。
1月中旬に辞職に追い込まれるか、3月の定年まで勤め上げられるかーこれは高級官僚にとっては、天下りシステムの上で、看過できない差異である。「訳あり」の中途退官はキャリアの汚点であり、再就職までの年限や再就職先に狂いが出てしまうからだ。
しかも前川喜平には先輩たちからの天下り構造を引き継いでいるに過ぎないとの意識もあったろう。彼が斡旋した先輩らは大学の学長などに納まり、皆老後の名声を満喫しているのである。ところが、その斡旋に汗をかいた彼だけが蜥蜴の尻尾の側に追い込まれる。前川製作所、和敬塾創始家、中曽根との姻戚、文科省きってのエリート・・・。のんびりした外貌に反して自尊心の塊だとも言われる前川喜平にとって、この蜥蜴の尻尾扱いは耐え難い屈辱だったに違いない。
ところで、前川喜平は先に引用した手記で、天下り事件が発覚し、部下から報告を受けた時のことを次のように述べている。
<私は、すぐにすべてを正直に説明しなければならない、と言いました。事態が気づかず、監督が行き届いていなかった点も含めて、私には大いに責任があります>
しかし、平成29年3月30日、文科省内の調査班が発表した「文部科学省における再就職等問題に係る調査報告(最終まとめhttp://www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/04/19/1382987_04.pdf)を見れば、前川喜平は監督責任を問われているのではない。
彼自身が、国家公務員法に違反する再就職斡旋の窓口だったのである。
私が卒読した限り、前川喜平が関与していた事案は、同報告中、事案6、事案17、事案27、事案29、事案30の合計5事案である。
「再就職斡旋の構造的解明」という記述によれば、
<・W(6)で認定されたとおり、嶋貫(和男)氏の再就職あっせんが継続できるよう、前川喜平官房長、伯井美徳人事課長は、それぞれ自ら有限会社国大協サービスへの要請を行う等の調整に動いていた>
<・V(30)、参考資料7(27)で認定されたとおり、前川文部科学審議官は、職員OBに退任の意向確認を行ったり、現職職員に再就職先の提示を行ったりする等、自らが再就職あっせんに関与していた>
前川喜平自ら「調整に動き」「自らが再就職あっせんに関与していた」と明記されているではないか。
しかも、このうち事案6は、前川喜平が、違法斡旋の中心人物である嶋貫をが国大協サービスに受け入れるよう打診している。
この件について報告書は、「前川官房長は覚えはないと発言している」が、諸々の経緯を勘案すると、「前川官房長は,単に再就職あっせんを行うことを求めただけでなく,嶋貫氏の受入れも求めたと認めるのが自然である」と前川氏の証言を「嘘」とみなし、「法第106条の2第1項に規定する『地位に就かせることを目的として』『役職員であつた者を…地位に就かせることを要求し,若しくは依頼』したものと考えられる」と、違法認定をしている(33頁)。
「すべてを正直に説明しなければいけない」が聞いて呆れる。斡旋の中心人物その人の斡旋をも前川喜平が運動していたのである。他に、慶應義塾大学や中京大学などへの斡旋にも前川喜平は直接関与している。前川喜平自身が、文科省内での構造的な動きの中心人物だったことは疑いようもあるまい。
◆出会い系バー通いという「闇」
さらに驚くべきは、前川喜平が記者会見で、文科省幹部時代、出会い系バーに通っていたことを指摘され、それを認めたことである。
前川喜平が通っていたとされる出会い系バーは新宿歌舞伎町にある「恋活BARラブオンザビーチ」という店だ。前川喜平は、文部科学審議官だった平成27年頃から、次官時代の平成28年末頃まで、週に1回は店を訪れる常連だったという。平日の午後9時頃にスーツ姿で来店することが多く、店では偽名を使っていた。同席した女性と交渉し、連れ立って店外に出たこともあった。店に出入りする女性の1人は「しょっちゅう来ていた時期もあった。値段の交渉をしていた女の子もいるし、私も誘われたことがある」と証言した。(「前川前次官 出会い系バー通い 文科省在職中、平日夜」読売新聞5月22日朝刊より)。
では、前川喜平自身は何と語っているだろうか。
<私が初めて「出会い系バー」を知ったのは、2、3年前に偶然見たテレビのドキュメンタリーでした。その中で新宿・歌舞伎町に「出会い系バー」と呼ばれる店があり、経済的に苦しい女性たちがそこで男性とデートしてお金をもらい、時には身体を売り、なんとか暮らしているという内容でした(略)
そもそも私は、長年初等中等教育に関わってきたことから、「子供の貧困」に強い関心を持っていました。(略)そして「子供の貧困」が「女性の貧困」と密接につながっていることも知っていたので、強い興味を覚えたのです。実際にそのバーを探し当て、仕事終わりにしばしば顔を出すようになりました。何人かの女性と店を出て食事に行き、身の上話を沢山聞かせてもらいました。実際に話を聞いてみると、「親が離婚している」「高校を中退した」「今は自分も離婚してシングルマザーだ」という女性が多くいました。(略)こうしたことについて文科行政は何ができるのか、考えさせられました。無論、1度もやましいことはありません>
退職の経緯や天下り問題でいい子を決め込む前川喜平の狡猾さを知った上で読むと、眉に唾を付けて読みたくなるのは致し方がない。
歌舞伎町は、危険な街だ。
銀座はもとより、新橋や赤坂に通うのとはわけが違う。
テレビで見かけた店に1人でぶらりと入るなど、常識ではあり得ない。まして前川喜平は教育行政の高級官僚である。裏社会や外国の人、金も溢れている。よほど常習性があって街をよく知っているか、マスコミ関係者などに相当の悪友がいて、彼らの案内がなければ、街そのものが歩き回るには危険すぎるのである。
しかも出会い系バーは売買春の為に利用する男女の多い、いわば低額プランのデートクラブなのだ。「出会い系バー」で検索してもネットに殆どあがらない。それほどグレーな営業形態ということだ。
10年程前がピークで、今は様々に模様替えしているところも多い。全盛期には、喫茶店やバーなど飲食業の仮面を被りながら、売春斡旋そのものを目的としていた。出自が非合法なのである。当局から摘発される度に、ブラックからグレーに衣替えをしたり、足が付かないよう四六時中店名や場所を変えるなどしている。店や時期によって性格は異なるが、専門の風俗嬢を登録させ、男性客には素人と思わせながら、店外デートをさせるというビジネスモデルもある。
私自身、前川喜平が通っていた歌舞伎町の店に潜入取材した。
百聞は一見に如かず。−この店に日本の文科官僚のトップが2年以上通い詰めていたと想像しただけで、店に踏み込んだ私の全身に衝撃が走った。
薄暗い照明、場末の安っぽくいかがわしい店内の澱んだ空気、そこにテーブルが並び、男女がぽつりぽつりと座って酒を飲んでいる。男性は1時間3500円、女性はタダで男から声を掛けられるのを待っている。店に入った私に早速店員が女性の4名があるかを尋ね、私は目鼻立ちの整った30絡みの美女を指名した。この店の常連ではないらしい。昼間の仕事があるとのことだが、私の見通したところでは夜の稼業をしていると思しい。店外に誘うと一も二もなく応諾の返事である。
常客の男性の来店動機は主に2つだ。安い値段で女性と気軽に話せるという動機が1つ、もう1つは性の相手を探してということになる。
一方女性客の目的は端的に金しかあるまい。この場末のいかがわしい空気感の中、魅力的な男性との恋を心ときめかして求めに来る女性がいるとは思えない。一夜の宿りを求める家出少女、パトロン探し、体を売っての小遣い稼ぎ・・・。しかもこの店の1階上には極度にいかがわしい店ー系列店ではなかろうかーがあり、その店の仕事が終わった女の子がこちらに立ち寄ることも多いようだ。
そうした客筋の店に、日本の官僚トップ、それも教育行政のトップが常客として通っていた。これは前川喜平が買春していたかどうか以前の大スキャンダルなのである。懲戒免職以外の何があり得るというのか。菅義偉官房長官や杉田官房副長官はさすがに店の実態を知らなかったに違いない。実態を肌で知れば、厳罰以外の判断はあり得なかったであろう。
いや、それでも百歩譲って、前川喜平が実際に、若い女性の貧困の実態を知りたかったと好意的に解釈してみよう。その場合、「文科行政は何ができるのか、考えさせられた」前川喜平は、「文科行政」のトップとして何をしたのだろうか。
本当に社会正義の為に、前川喜平がこの店に出入りしていたというのなら、何年にもわたって女の子をあれこれ連れ出して身の上話を聞くなどと悠長なことをしてはいられなかったろう。組織的な少女買春の温床、強制ポルノ出演、薬物汚染、外国と通じた人身売買など、歌舞伎町の闇への義憤が湧くのが本当ではないか。
教育プロセスに組織的な性犯罪の実態を教える一節を組み込むのも1つだろう。警察や公安と文科行政がリンクして組織犯罪から若者を守るための広範な調査と連携を提言するのも1つだろう。離婚が若者を不幸に陥れると肌身で実感したならば、結婚生活の尊さ、父母揃って子育てを最後まで成し遂げる重要性を教育課程に入れようと頑張るのも1つだろう。
前川喜平はそういう動きを1つでもしているのか。
寡聞にして私は知らない。
「子供の貧困」「女性の貧困」など綺麗ごとを盾にした悪所通いの言い訳に過ぎまい。幾ら何でも嘘の性質が悪すぎるのではないか。
違法天下り斡旋の主犯格、出会い系バー通い・・・。
この2つだけでも、懲戒免職の上、マスコミに袋叩きにされるのが普通の社会的処遇だったに違いない。
ところが、奇妙なことが起きる。
マスコミをあげての前川喜平擁護が猛烈な勢いで始まるのである。
菅義偉官房長官が「文科省トップの出会い系バー通いは強烈な違和感がある」と発言すれば、「政権による個人攻撃」として、菅義偉官房長官の側が糾弾される。天下り斡旋が発覚した時には国会で前川喜平を散々叩いていた民進党や共産党、そしてメディアが前川喜平を突然、正義漢のように囃し立てる。通例なら中曽根との姻戚関係が大きく報じられただろう。何しろ、籠池と安倍首相の「はなから存在しない関係」さえ大きな疑惑として報じ続ける人達なのだ。ところが、前川喜平の中曽根との姻戚関係も、前川喜平の実家である前川製作所が冷凍庫を多くの国立大学に納品していることも一切報じられなかった。
もっとも、さすがに出会い系バー通い、違法天下り斡旋の主犯を、朝日新聞、NHKが先頭に立って持て囃すことまではできない。
ここで前川喜平をヒーロー化する牽引役を買って出たのが文藝春秋である。
文藝春秋は、長年、『月刊文藝春秋』『週刊文春』『諸君!』などそれぞれ編集独立の矜持の下で、主流マスコミと一線を画し、独自の保守的な論陣を張ってきた。在野ジャーナリズムの雄である。
政治権力に対してもむろん、必要とあらば常に挑んできた。
だが、同時に、偽善的な正義を振り回す左翼マスコミへの強い異議申し立てにより、日本の言論空間に大人の余裕と厚みを与えてきたのが文藝春秋だった。
近年、その傾向が大きく崩れつつあり、『月刊文藝春秋』は主流マスコミの焼き直し、『週刊文春』はひたすらなるスキャンダリズムに陥り、昔からの愛読者を嘆かせていたが、今回の加計問題では、安倍叩きの急先鋒を朝日新聞と競い合うまでに至った。
なぜそんなことになるのか。
2016年に就任した現社長松井清人による社命なのではないか。
<12月6日夜、市ヶ谷の私学会館で保坂正康さんの新刊『ナショナリズムと昭和』の出版記念会が開かれた。参加者は250人ほど。
そこで、発起人代表として文藝春秋松井清人社長が挨拶したが、これが驚くべきものだった。「極右の塊である現政権をこれ以上、暴走させてはならない」。現政権、つまり安倍政権を「極右の塊」と批判したのだ。「暴走」と難じたのだ。
お断りしておくが、朝日新聞の社長ではない。文藝春秋の現社長がこう言ったのだ。
( 花田紀凱 『文藝春秋松井社長が、安倍政権を「極右の塊」と発言』)
https://news.yahoo.co.jp/byline/hanadakazuyoshi/20161213-00065447/>
安倍首相は、吉田ドクトリンと岸の自主憲法制定を、独自に融和・継承しているが、これは明らかに多年の文藝春秋自身のスタンスと近い。週刊文春と最も縁の深い歴代の代表的論客である小林秀雄、田中美知太郎、福田恒存、林健太郎、高坂正尭、司馬遼太郎、江藤淳らの名前を一瞥すればそれは明らかだろう。
安倍首相を「極右」と決めつける松井は、驚くべきことに有田芳生と親しいという。が、有田は左派イデオローグでさえない。その言動は破壊活動家と境界を接している。
朝日新聞の森友記事が破壊活動家と市議と連携して始まり、局面ごとに同じく活動家の菅野完の影がちらついていた。
文藝春秋の社長も、本来、保守の牙城だった文藝春秋を会社丸ごと簒奪し、社員もまた、編集権の独立を放棄し、政治プロパガンダに同誌のブランド名を悪用しているのではないか。
もっとも、加計問題での文藝春秋の異様さは『週刊文春』による安倍叩きにはない。
強い権力であれば、無理をしてでも叩くのが週刊誌の役割というものである。どんな不条理な叩き方であれ、週刊誌に叩かれるのはー安倍政権が強い政権ならばー安倍首相の側が甘受するしかない。
むしろ、文藝春秋が異様だったのは、月刊と週刊がー社長の意向を受けてか忖度してかは知らないがー共闘するかのように安倍攻撃を波状的に繰り返し、あまつさえ前川喜平を「聖人化」し続けた点にある。
特に慨嘆に堪えないのは、栄光のジャーナリズム史を背負ってきた月刊誌の劣化だ。
「今になって官邸サイドが『なぜ前川次官は現役のときに抵抗しなかったのか』と責め立てる。先の記者会見を含め、前川は折に触れ、『そこは反省している』と潔く語ってきた(平成29年8月号 森功「加計学園疑惑 下村ルートの全貌」)
「前川氏の筋を通す姿勢や、おかしいことには黙っていられない性分、現場の声に耳を傾ける姿勢には、共感を覚える人が少なくないのだ」(同月号中西茂「読売の前川報道を批判する」)
天下り斡旋と出会い系バー通いを知るだけでもこんな賞賛はこそばゆいが、文藝春秋は、前川喜平自身の自画自賛で、さらにそれに華を添える。
<夜間中学や自主夜間中学に知り合いが沢山できたので、そこでボランティアをしているのです。これまで1度も学校に行く機会がなかった80近いおじいさんに一から鉛筆の持ち方を教えて一緒に漢字を書いたり、高校では、数学が不得意な子に因数分解を教えたりしています>
余りにも臭い「よい子ぶり」ではないか。普通こんな手記を元高級官僚が書き、『月刊文藝春秋』が載せるだろうか。
が、「前川聖人伝説」の極めつけは、出会い系バーが暴露された直後の『週刊文春』の記事であろう。
『週刊文春』によると、同誌は前川喜平が出会い系バーに通う中で、特に気に入りだった女性(A子)との接触に成功したのだという。A子によれば、前川喜平と彼女は週2回会っていた時期もあり、3年間で30回以上は会った。
2人の間に肉体関係はなかったという。
ところが、肉体関係以前に、A子と前川喜平では、通っている時期の証言が全く食い違っている。
前川喜平は2、3年前にテレビで知って出会い系バーを探し当てて通い始めたと証言している。平成26年(2014年)、平成27年(2015年)頃からのことになる。
ところが、A子は、前川喜平が店に来たのは平成23年(2011年)冬からで、平成26年(2014年)には「具合が悪くなっちゃったからもう会えない」と言われたというのだ。
重大な証言の食い違いだ。当然別の店でなければ辻褄が合わないし、行動パターンから考えて、最近はA子とは別に、特別に親密な女性がいた可能性は高い。前川喜平には常習性があり、そのことを隠すために、最近通い始めたことにしたのではないか。
事実、ある文教族有力議員の関係者によれば、前川喜平の悪所通いは課長時代の20年前から相当なものだったという。普通のエリート官僚ならば、夜遊びは、銀座か赤坂になるだろう。ところが、前川喜平はデートクラブ、キャバクラなどや風俗店に近い店が好みで、部下たちが、前川喜平の2次会の誘いには閉口していたといのである。当然だ。文科省の出世コースを歩もうという部下らにとっては万一露見すれば人生設計さえ崩れかねないからだ。
それはともかく、全体に『週刊文春』が掲載するA子の証言は、前川喜平を善人に見せていく細部描写が余りにも出来過ぎている。例えば、A子によると前川喜平は「結婚指輪を大切にする奥さん思いの一面があった」そうだ。同衾して目に触れた指輪について会話したとでも言うなら別だが、6年前の客の結婚指輪のことなど普通覚えているだろうか。まして次のような一節になると眉唾どころか、鼻をつままなければ、とてもではないが読み通せまい。
<会う時は、私の友達と一緒のことが多かったけど、よく覚えているのは、ケンタッキーで珍しく2人で話した時のことです。(略)「友達がキャバ嬢だから、私もキャバ嬢になる」って言ったら、凄く怒られて、「親も心配しているんだから早く就職したほうがいいよ」と言われました。その後も会うたび、「ちゃんとした?」とか「仕事どう?」って聞かれました。私が高級ブランドの店員になりたいと思って、前川さんに相談したんです。手っ取り早いのは百貨店で働くことだと言われて、実際百貨店に入って、婦人服売り場で働くことにしたんです。前川さんは喜んでくれて、授業参観と言ってお店に来てくれた事もありました。急に売り場に来られてびっくりしました」(『週刊文春』2017年6月8日号「出会い系バー相手女性)
出会い系バーは売春斡旋目的から出発した営業形態で、前川喜平自身が通っていると認めた店も客筋は極めていかがわしかった。6年前となればなおさらである。A子がそんな店に通い詰め、前川喜平と店外デートを繰り返していることこそ、最も咎められるべきことなのである。
それに比べれば、キャバクラへの就職が「すごく怒られる」ことだとは到底思えない。キャバクラには性サービスはない。風営法により女性の就業環境は守られ、売春の温床になる店は殆どなかろう。キャバクラへの就職を叱る前に、出会い系バーへの「出勤」を即刻辞めさせるのが、常識的な大人の助言であろう。ところが前川喜平は自身が出会い系バーに通い続けていたのだ。話にならない。
一方、就職しようとすれば容易に百貨店の婦人服売り場勤務ができる女性が、出会い系バーに登録していたというのもかなり無理がある。百貨店の婦人服売り場えあれば接客経験のみならず商品知識や学歴が求められることも多い。2人の出会いの時期は民主党政権時代、求人状況は今より遥かに厳しかった。
ジャーナリストの須田慎一郎は件の女性に会い取材したとテレビ出演で明かしている(5月28日、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」)。放送では言葉の一部が伏せられていたが、前川喜平がその女性と肉体関係を持ったことを「裏取りした」として強く示唆した。
真偽は分からない。
が、火のないところでさえスキャンダルを煽るのが得意の『週刊文春』が、前川喜平の夜の生活をこんな美談で飾ることこそが、何より怪しいのである。
安倍叩きの駒としての前川喜平を守るために、他メディアに先駆けて出会い系バーでの美談を急ごしらえしたのではないか。他のマスコミ多数も安倍叩き路線は変わらない。わざわざ前川喜平の信用を落とすネタを拾いにゆくこともない。こうして『週刊文春』が先手を打ち、他のメディアも手控えた為、前川喜平の素行調査はうやむやになったのではなかったか。
『月刊文藝春秋』の前川喜平の手記は次の言葉で終わっている。
<私は人々のために尽くしたい、人を幸せにする仕事をしたいと考え、文科省に入りました。教育とは人々が幸福を追求するために必要不可欠なものです。その教育行政を司る文科省で、「隠蔽」など2度とあってはならないことです。後輩たちが胸を張って仕事ができるように願っています>
黙れ、偽善者よ。君には遡っての懲戒免職以外の道はない。
◆朝日新聞は火をつけ、火は燃え上がる
さて、再び朝日新聞に戻る。
2017年5月26日「池上彰の新聞ななめ読み」が余りに稚拙すぎて目を引くので、ご紹介しておこう。
<加計学園の新学部に関し、安倍晋三首相の意向が働いたかどうか。これが最大の焦点でした。それを示す内部文書が文部科学省の中にあったというのですから。スクープです。(略)そうか、ついに決定的な証拠が出たか。一読して、そう感じたのです。(略)都合の悪い文書の存在が明らかにされたため、関係者たちが右往左往している様子がわかります>
全て誤りである。
新学部に関し、安倍首相の意向が働いたかどうかは本来の焦点ではない。受託収賄に類する何らの物証もないまま、友達だから「意向」があったかもしれないというのは森友問題同様の魔女裁判である。池上彰がジャーナリストなら、まずはこの贋造された「焦点」に疑念を表明すべきではなかったのか。
しかも、朝日新聞のスクープは入手文書を公表していない。池上彰がまともなジャーナリストなら、そこをまず疑うのが当たり前だろう。
そして又、「都合の悪い文書」だから政府関係者が右往左往したのではない。出所不明・真偽不明の文書によってマスコミと民進党の「追及」が始まったから対処しようがなかったのである。
しかし、・・・。
政権中枢や自民党の対応もまた鈍すぎたのだ。
前川喜平の証人喚問を野党側が求めていることに対して、自民党は5月26日、民間人であることなどを理由に拒否した。
文科省文書についての調査要求も拒み続けた。6月18日の会期末まで、それで押し切ろうという腹だったわけである。
自民党の竹下亘国対委員長は、「前川氏は文科省を辞めた民間人だ。現職の時になぜ言わなかったのか」として拒否し、公明党の井上義久幹事長も記者会見で「重い立場にあった人間が辞めた後に言うのは理解できない」と前川喜平を非難した。
一連の対応全てが稚拙である。
前川喜平はその「重い立場」を利用して、文書の存在を確信したのである。今更、前川喜平のモラルを問うても、文書は消えない。前川喜平が何者かではなく、彼の地位と文書の実在が今問題にすべき全てなのだ。
朝日新聞、NHK、文藝春秋、元官僚トップが組んでいるのである。今更政府が前川喜平の人格を嫌味大量たらしく小出しに非難すれば、政府与党の逃げを指摘され、火事は大きくなり続けるに決まっている。
ここまでくれば情報謀略による倒閣運動だ。戦力の逐次投入で火消しなどできない。森友学園でそれは証明済みではなかったか。
こうして、政府の対応が後手に回り続ける中、5月30日の朝日新聞には、また前川喜平の取材記事が1面トップに出た。単独取材、記者会見に続き、2週間で3度目の前川喜平証言のトップニュースである。
前川喜平が、丁度文科省文書が書かれた2016年9〜10月に和泉洋人・首相補佐官と複数回面会した時の会話内容を証言した。それがスクープの内容だ。
見出しを見ると、総理の露骨な圧力があったかのように見える。「要求」の2文字も、何か不正な利益の強要を連想させる。
ところが、記事を見ると、この時期、和泉に呼ばれ密室で2人きりで会った時の断片が書かれているに過ぎない。
<和泉氏から、獣医学部の新設を認める規制改革を早く進めるように、という趣旨のことを言われた。『加計学園』という具体名は出なかったと記憶しているが、加計学園の件であると受け止めた」と証言。そのうえで「このときに和泉氏から『総理は自分の口から言えないから、私が代わって言う』と言われたことをはっきり覚えている」と語った。
この面会で前川氏は和泉氏に明確な返答をしなかったといい、「大臣(松野博一文科相)に直接伝える必要はないと思い、面会の趣旨だけを担当の専門教育課に伝えた」と説明した>
引用を読めば明らかなように、一方的な会話の暴露や感想に過ぎない。裏の取れないそんな「証言」を1面トップにするだけでもどうかしている。その上、前川喜平は、最大の論点である安倍首相が加計学園の便宜を図ったかについては、「『加計学園』という具体名は出なかったと記憶している」と言っている。何のためのスクープなのか。
さらに証言には奇妙な点がある。
前川喜平は和泉首相補佐官から「総理が言えないから私が言う」と言われたと証言している。先に出た藤原豊審議官とは違い、首相補佐官は実際に総理の右腕だ。その人物からここまで強い表現を使って示唆されたのが本当だったなら、前川喜平はなぜ大臣にそれを伝えなかったのだろう。
この案件が行政のトップである総理の意向だと首相補佐官から言われれば、当然大臣の松野か、副大臣の義家に話を持ってゆかねばならない。総理が絡んでいれば政治案件であり、事務方ではお手上げだからだ。ところが、前川喜平は「面会の趣旨だけを担当の専門教育課に伝えた」という。首相補佐官に「総理が言えないから私が言う」と言われたほど重大な案件を担当課に伝えても、彼らは途方に暮れるだけではなかろうか。
おまけに妙な言葉遣いが見られる。前川喜平によれば担当課には「面会の趣旨だけを」伝えたというのだ。逆に言えば「総理が言えないから私が言う」という和泉首相補佐官の言葉そのものは担当課に伝えていなかったということだろう。
要するに一番肝心な「総理が言えないから私が言う」という和泉首相補佐官の「科白」は、前川喜平1人が密室で聞き、証人の誰もいない話でしかないのである。
これ又既視感に襲われる。密室での100万円の授受が大きな争点となった籠池のケースである。
6月1日の朝日新聞も、全く同工異曲だ。前川喜平が加計学園理事で元内閣官房参与だった木曽功と面会したことを1面で大きく報じている。
「加計学園理事の内閣官房参与 新学部 前次官と話題に 面会求める 圧力は否定」「前次官『よろしくと言われた』」という見出しが躍る。
本文を読めば失笑する他ない。文科省OBで加計学園の理事が前川喜平のところに進捗状況を探りに来たといのである。獣医学部新設は52年間禁じられてきた岩盤規制である。この数年、突破する側も、阻止する側も、それぞれに人脈を動員して活発に動いていた。木曽功元内閣官房参与の場合もそのエピソードの1つに過ぎない。行政案件に限らず、何事かが機関決定される前に、関係者や権限者が活発に動くのは当然だろう。
が、これは朝日新聞の情報操作の高等戦術だった。
こうして、ともかくも、文科省文書、和泉補佐官、木曽功元内閣参与と駒を揃えたところで、社会面に「文科省へ要求 複数ルート」と題し、「内閣参与」「補首相佐官」「内閣府」という3本のルートで、獣医学部新設が要求されていたという大見出しを打ったのである。
安倍首相が官邸ぐるみで「自分の意向」を通そうとしていたという筋書きだ。見出しを眺める読者の頭をスクリーニングしてゆく洗脳である。
朝日新聞の幹部が、日本国中を巻き込む創作劇を日々演出している自分に陶酔し始めている気味合いが感じられる。
しかしここまで容赦なく虚報を重ねて叩けるのは、裏返して言えば、加計問題は、朝日新聞が警戒心なく振る舞っても安心できる素材だからとも言える。
和泉補佐官にせよ、木曽功元内閣参与にせよ、霞が関機構での強力な利権の網の目を差配する権限者であるのは事実である。それをここまで叩けるということは、これがマスコミ側が利権に与っていない件だからだと言うことではあるまいか。
例えば同じ国家戦略特区でも、42年ぶりの医学部として開学した国際医療福祉大学の方は、マスコミ自身が役所と結託するかのように利権に組み込まれていた。何しろ同大には、以下の人たちが天下りで役員や理事などに入り込んでいるのである。
■宮地貫一(元文科事務次官)副理事長(大学設立当時。現在は役員に名を連ねず)
■佐藤禎一(元文科事務次官)教授
■渡辺俊介(日経新聞論説委員)教授
■丸木一成(読売新聞医療情報部長)教授・医療福祉学部長
■水巻中正(読売新聞社会保障部長)教授
■金野充博(読売新聞政治部)教授
■木村伊量(朝日新聞前社長)特任教授
■大熊由紀子(朝日新聞論説委員)教授
いやはや凄まじい。一体いつの間に、日本の大学教授は、地味で真面目な研究者の為のポストから、新聞社幹部の荒稼ぎ先に成り下がったのか。学問を舐めるのも大概にしたらどうなのか。
逆に言えば、こうして役所とマスコミ両方にうない汁を吸わせておけば週刊誌やネットで小ネタにはなっても、到底、新聞・テレビで叩けはすまい。マスコミ全体主義が強化される昨今の日本で、こうしてマスコミと役所を同時に取り込んでおくことは、何よりの保険なのである。
逆に言えば森友学園と加計学園で朝日新聞をはじめ全メディアが遠慮会釈なく大騒ぎを演じられ続けたのは、どちらも利権構造と無縁の案件だったからだ。
また、安倍晋三が首相という最高権力者でありながら、これだけ遠慮会釈なく叩かれ続けるのも同様で、安倍首相自身が利権とよほど縁のない政治家だという証左と言えるだろう。
そこを頭に入れながら、朝日新聞の次の社説を読むと、現職総理に対するこの見下したような物の言いようは、ただ事ではあるまい。
<特区であれ、通常の政策であれ、行政府として、それを進める手続きが妥当であると国民や国会から納得が得られるようなものでなくてはならない。なのに首相は自ら調べようともせず、私が知り合いだから頼むと言ったことは一度もない。そうではないというなら証明してほしい」と野党に立証責任を転嫁するような発言をした。考え違いもはなはだしい。(2017年5月31日)>
朝日新聞は考え違いも甚だしい。
安倍首相に違法性があると言うのなら、それを追及する側に立証責任があるのは当然なのだ。
◆朝日新聞、見出しだけで勝負し続ける
安倍首相は、2017年5月25日〜28日、G7タオルミーナ・サミットに出席するため、イタリア及びマルタを訪問した。このサミットで、安倍首相は北朝鮮を世界全体の脅威とする認識をG7リーダー達に訴える一方、「首脳宣言」から「保護主義と闘う」という文言の削除をトランプ大統領が求めたのに対し、文言の最終的な盛り込みに着地させることに成功した。安倍首相はこうした自由貿易の旗手として、2017年に入っての度重なるヨーロッパ歴訪の結果、7月にはEUとの間でEPA合意に至る。
<世界史的なEPA合意など安倍訪欧の成果は上々なのに報道されず
2017年07月11日 11:30
http://agora-web.jp/archives/2027143.html
安倍首相の外遊について成果を低く見る向きもあるが、EPAの締結は、世界における自由貿易退潮を止めるホームランである。それをG20にぶつけるかたちで発表できたのであるから、世界史的な快挙だ。
ヨーロッパの報道でも大々的に取り上げられている。フランスのテレビでは「自由貿易反対派は不意を突かれてこの重大な協定の合意に慌てている」と言っているし、アメリカのマスコミはこれで世界貿易でアメリカが不利になると大騒ぎだ。
日本のマスコミがしっかり報道しないのはいろいろ理由があるが、ロンドンを中心にヨーロッパを見ている歪みも原因だ。各社とも欧州総局をパリかブリュッセルに移すべきだ。
北朝鮮について劇的な展開はないが、そんな簡単なものでないのだから、G20の声明に盛り込まれなかったからといって騒ぐほどのことでない。
各国首脳とのバイの会談もロシアやトルコのテレビでも大きく取り上げられていた。
日本のテレビは本当に安倍首相と外国首脳の会談を報道することを意図的に避けているとしか思えない。トランプとは日米韓だけでなく日米で単独対談をしっかり時間を掛けてできたのは、トランプとマルチの会議のたびに会うといち早く約束しておいた成果だ。オバマにならスルーされかねないところだった。
それから、安倍訪欧とは関係ないが、沖ノ島の世界遺産指定が宗像神社なども含めた一体としての指定に逆転して成功したのは外交的成功。うまく行かなかったときだけ外務省を責めて、うまくいったときは誉めないのはおかしいだろう。>
勿論、朝日新聞をはじめとする反安倍メディアが、一連の安倍外交の成果を伝えるはずもない。外交成果はそっちのけ、5月から6月に入り、朝日新聞の見出しは、国会質疑の実態とさえ大きく乖離した極端な安倍叩きにますます狂奔するのである。
5月31日には「加計究明 政権なおざり 再調査、即座に否定/告発者へ個人攻撃」と書き立てている。
6月3日の朝日新聞見出しは「『官邸の最高レベルが言っている』文書、文科省内で共有か 民進指摘」である。
6月5日の安倍首相による国会答弁の翌日には、政治面に「首相、持論一方的 加計問題の答弁」である。社説では「首相らの答弁 不信が募るばかりだ」と題し、「驚き、あきれ、不信がいっそう募る。きのうの国会で、安倍首相の友人が理事長を務める加計(かけ)学園に関する首相らの答弁を聞いた率直な感想だ」と書き出されている。安倍首相が大変な不祥事を犯しているとしか読めない非難である。
6月6日の時時刻刻は「加計問題 深まる疑問」が見出しである。
6月7日の朝日新聞の記事には「文科省対応『おかしい』」とある。
菅義偉官房長官が6日の記者会見でも、まだ再調査は必要ないとしたことに対して、文科省の現役職員が「自分が見た文書、メールと同じで共有されていたものだ」と認めた。この職員は、「安倍政権の方針に反対ではないが、今回の政府の対応はおかしいと思っている」と述べたというが、これは実感であろう。
実際、6月7日にも「データ次々 政府なお強弁」「怪文書 確認できない 文科省の判断」と、政府が逃げているという構図を描き続ける。
6月8日に、「獣医学部 揺らぐ根拠」と、初めて獣医学部の新設が是か非かという記事が出た。朝日新聞の膨大な加計問題報道で、獣医学部新設という、事の本質に関するまとまった記事の、これが初出である。否定的な側から書かれているのは言うまでもない。
6月9日の朝日新聞には「面会記録『確認できぬ』」「政府側答弁一辺倒 加計問題」という見出しが出る。
自由党の森裕子が愛媛県今治市の行政文書を調べたところ、2015年4月、市企画課長らが首相官邸を訪問したとあった。森裕子は、政府に、その時誰に会ったかと問うた。萩生田光一官房副長官は、記録は1年未満に破棄という行政文書の管理規則に従って破棄されていて分からないと答弁した。規則通りの措置である。
ところが、森裕子は「官邸にいる特区の関係者は1人しかいない。特区諮問会議の議長を務める安倍晋三首相じゃないか」と迫った。今治市の担当課長が密かに首相を訪問したのではないかと詰問しているのだ。ばかばかしくて話にならないが、朝日新聞の見出しは執拗だ。
6月11日には「事前準備『加計ありき』? 面会 スケジュール 想定問答」と追撃して疑惑を演出している。
朝日新聞の見出しだけを見ていると、安倍政権は追及に対して木で鼻を括ったような対応をしたように見える。朝日新聞の愛読者の安倍首相への不信を醸成する上で、さぞや有効な見出し攻撃だったことだろう。
では事実はどうだったのか。
朝日新聞が「驚き、あきれ、不信がいっそう募る」と口を極めて安倍首相を難じた2017年6月5日の国会質疑を見てみよう。
■安倍晋三内閣総理大臣
こういう国家戦略特区、岩盤規制を突破していこうとすると、既存の団体、業界、いわば抵抗勢力と言われる人たち、そしてそれを監督する官庁は、できない理由をずっと並べるんですよ。国家戦略特区というのは、できる理由をしっかり考えていけというのが基本方針です。これは、今一生懸命やじっている方々も、民主党政権も基本的にそういう方針で臨んでいたはずですよ。でも、そうでなければ、できない理由を探していけば、これは絶対できないんです。
だから、例えば、50年間できなかった・・・(発言する者あり)済みません、少し民進党の皆さんも静かにしてくださいよ。静かな環境で議論・・・(発言する者あり)答弁をしているんですから。今一生懸命、ずっと最初から答弁しているじゃないですか。ですから・・・。
■玄葉光一郎委員長(2017年衆院選福島4区無所属で当選)
総理大臣、やじに答えなくて結構ですから、お答えください。
■安倍晋三内閣総理大臣
でも、なかなか、私、やじられると答弁をしにくいものですから。人間は誰でもそうですよ、やじられると答弁がしにくいんですから。
■玄葉光一郎委員長
まあ、でも、答弁してください。
驚くべきは民進党の玄葉光一郎の議事采配ぶりだろう。途中、安倍首相が野次に往生して窘めると、議長が野次を制止するどころか「野次に答えるな」と安倍首相を窘めているのだ。テレビ中継では野次はオフマイクだが、実は、民進党の野次は怒号のように会場に響き渡り、殆ど答弁が聞こえないことなど日常茶飯である。この時も総理答弁は殆ど聞こえなかったと思われる。ここに限らず、玄葉光一郎の議長ぶりは全体に極めて不公平で、党派性剥き出しだ。彼に限らないが、議事録を通読すると、民進党議員については、率直に言って、他のどんな政党以上に、人間性や道徳性を疑わざるを得ない質疑や発言が余りにも多い。党そのものが、公党のあり方などという上等な話以前に、人間失格なのではないか。
朝日新聞が「驚き、あきれ、不信がいっそう募る」と口を極めて安倍首相を難じた2017年6月5日の国会質疑を見てみよう。
次のやり取りもひどい。質問に立った民進党の宮崎岳志(2017年衆院選落選)は基本的な知識もなく、やり取りも実に下品だ。
■宮崎岳志委員
今ぺらぺら言われましたけれども、構造改革特区と国家戦略特区は全く別物じゃないですか。構造改革特区はボトムアップで上げてくるんでしょう。だから加計学園の名前が入って上がってくるんですよ。それはそうですよ。当たり前。国家戦略特区は総理が全部決める仕組みでしょう。国家戦略特区諮問会議は、地域だって政令で総理が決めるんでしょう。諮問会議だって議長は総理でしょう。
「国家戦略特区は総理が全部決める仕組み」と来たものだ。
そんな仕組みが日本の行政にあるわけがないではないか。
政府系の主要な諮問会議の議長が全て総理なのは当然だろう。最終権限者が総理であることと、総理の恣意で議事を動かせることは全く別問題だ。岩盤規制を突破して国家の活力を増すという目標に対して、安倍首相がリーダーシップを取ることと、個々の許認可に口出しするというのはまるで次元が違う話である。そこを安倍首相は丁寧に答弁するが、宮崎岳志は罵詈雑言で安倍首相を侮辱することしか考えていない。
■安倍晋三内閣総理大臣
今また認識の間違いをしておられますから説明しますが、構造改革特区と国家戦略特区、この違いをよく理解されていなんだろうと思います。
まず、どちらにしろサブスタンスを議論するんですから。では、皆さんの時は、構造改革特区というのは上がってきたらめくら判ですか。違いますよね。上がってきたらめくら判ではないんです。上がってきたものを精査するわけですよね。上がってきたものについては、先ほど申し上げましたように、自民党政権においては、熟度等も含めて、あるいは獣医師会等の関係においても対応不可であったわけであります。(略)
最終的には、何でも、どんな仕組みであれ、最終的に決めるのは内閣総理大臣ですよ。そして、どんな色々な会議、例えば経済財政諮問会議だって私が議長です。様々な議長があります。でも、私がそこで勝手に色々なことを決められるんだったら、そもそも諮問会議の意味がないじゃないですか。(略)
■宮崎岳志委員
べらべらべらべら適当な制度論をしゃべった上に、最後は、責任とは、言う必要がないと。
いやあ、総理が、申しわけなんですけれども、構造改革特区と国家戦略特区について全く理解されていないということがよく分かりました。例えば、平成30年4月に開学、あるいは四国に、四国とは限りませんけれども、空白地、広域的に他の獣医学部がない地域に限る、あるいは1校に限る、こういったものは、ライバルであった京都産業大学を追い落とすために後からはめられた条件じゃないですか、こういう疑惑があるわけですよ。(略)
■安倍晋三内閣総理大臣
宮崎委員が言っていることは端から破綻していますよ。今、総理が決めるということを総理は御存知なかったと言ったんだけれども、つまりそれは、私が決めていないから私は知らなかった。言っていることは全く論旨が破綻していると思いますよ。
いいですか。場所等を決めるのはまさに国家戦略特区諮問会議ですよ。読みましたか、議事録、オープンになっていますが。(宮崎岳「全部読みました」と呼ぶ)いや、恐らくそれは、私は、なかなか読んでいるとは。何か相当動揺されましたが、それは読解力の問題だと思いますよ。読解力の問題なんですよ。
では、その中で、例えば医学部と獣医学部の意味についての議論もなされていますが、御存知ですか。
■玄葉光一郎委員長
いいから、答えなくていい。
■安倍晋三内閣総理大臣
御存知ないようですから、つまり、保険診療でやっている医師と、自由診療でやっている医師、これは保険財政あるいは国家財政にかかわりがないので根本から自由にすべきだという議論がありました。しかし、国家戦略特区というのは、その中で何とかキリのように穴を開けていこうということです。(後略)
国家戦略特区の特性を安倍首相が理解していないと宮崎岳志は言う。だがもしそうなら、安倍首相は、宮崎岳志が主張する独裁的な権限を行使できないことになるわけではないか。子供の口論である。
さらに、宮崎岳志はどうやら国家戦略特区関連の議事録に目を通していない。だから特区提案を具体的に検討する、総理出席のないワーキンググループ会合での有識者委員が、議事にどれだけ強い影響力を持つかという基礎知識さえなしに質問しているのだ。
一層興味深いのは、安倍首相に挑発されて医学部と獣医学部の違いに宮崎岳志が答えようとするのを玄葉光一郎が阻止しようとしている点である。身内議員が馬脚を現すのを懸念したわけである。
全編を読んでも安倍首相の答弁は、我慢強く丁寧だ。もしテレビや新聞が、この日の主要なやり取りを充分に報道すれば、国民の大多数は政府の説明に納得しただろう。
それが、朝日新聞の見出しでは「首相らの答弁 不信感が募るばかりだ」となり、社説では「驚き、あきれ、不信がいっそう募る」となる。
こうして、事実は報道せず、延々と見出しによる「創作」が続く中、6月9日、政府は、サミットから帰国した安倍首相の指示で、ようやく文科省文書の調査に方針を転じた。
今回は、文科省はチェックの範囲を大幅に広げ、100万件以上のファイルを検索にかけた。さらに関係職員が持っている紙でも、個人フォルダ、メールボックスに入っているものまで含めて提出を指示した。
政府による再調査の結果は6日後の6月15日に出た。
その際、記者会見で配布された資料に、マスコミの圧力で行政が歪められたことへの政府の懸念が滲み出ている。
<なお、行政文書であっても、政策の意思決定に関わるものであって、行政機関相互間の率直な意見交換が不当に損なわれる等の恐れがあるもの、個人のメモや備忘録は、公開しないこととしているが、今回の件は、国民の声を真摯に受け止めて徹底した調査を行うという特例的な調査であることから、文書の存否について、通例とは異なる対応を行うこととしたものである>
それはそうだろう。
違法性がないのに、国会とマスコミが組んで大騒ぎを演じる度に、内部文書の公表に政府が追い込まれるなどという事態をこれ以上許せば、日本の行政は崩壊する。
だが、6月16日、朝日新聞の朝刊は、政府のそうした懸念をよそに「『怪文書』一転、あった」と、結果として誤報となる記事も交えて、相変わらず鼻息荒い政権攻撃である。
「官邸『官邸、細部まで指示』「異論許さぬ政権体質明らかに」といった文字が躍っている。
「『官房副長官が指示』メール」ともあったが、それは加計学園の獣医学部新設を決定する過程に萩生田光一官房副長官の指示があったと見える文書が新たに見つかったことを指す。
萩生田光一官房副長官は、この文書内容を直ちに全面否定したが、朝日新聞は逆に、萩生田光一官房副長官と文科省が文書の内容を巡って対立しているとして、萩生田光一官房副長官の言い分を全く度外視した紙面を作り続けた。この文書内容は後に文科省自身も誤りを認め萩生田光一官房副長官に謝罪している。もはや、朝日新聞は偽文書を元に政治家を叩くことにさえ躊躇がないのである。
6月18日の朝日新聞朝刊も相変わらずだ。
「認めない 調べない 謝らない 政府、終始『3ない』答弁」とやる。
社説でも「安倍政権『議論なき政治』の危機」「政府 空疎な強弁」と書く。
こうした安倍攻撃の延々たる「創作見出し」の中、2017年6月19日に至って、獣医学部の招致主であり愛媛県今治市についての記事が、何と初めて朝日新聞に出た。文科省文書スクープから1月、国会閉会後の事である。こんな露骨な隠蔽があるだろうか。
6月19日「政治断簡」に、世論調査部長前田直人はこう書いている。
<「あったことを、なかったことにできない」という文科省の前川喜平・前事務次官の言葉が、最も強烈な印象として残っている。その指摘に向き合わずに前川氏の個人攻撃に走った政権の悪態には、国家ぐるみの隠蔽工作を見るかのような戦慄をおぼえた。国会の陰の主役となった前川氏の座右の銘は、「面従腹背」だという。「安倍1強」の闇は、深そうである。>
「総理の意向」という言葉を一人歩きさせて、「なかったことを、あったこと」にしたのは誰だったのか。証拠なき安倍首相の個人攻撃に走り、自白を強要し続けたのは誰だったのか。
逆に「あったこと」である文科省文書の中身も、国会質疑の実態も、特区委員や今治市など当事者も、全て「なかったこと」にし続け、戦慄すべき隠蔽工作を仕立て続けていたのは誰だったのか。
本当に深い「闇」は安倍政権の側にあるのか、朝日新聞をはじめとするメディアにあるのか。
こうした隠蔽と虚報で、「なかったことを、あったことにできた」朝日新聞ーNHKー文藝春秋ー元官僚トップの「悪態」は、真に「戦慄」的ではなかったか。
6月19日、安倍首相は、前日の通常国会閉会を受けての総理大臣記者会見で、「加計対応が二転三転した」として、反省の弁を述べた。
「印象操作のような議論に対して、つい強い口調で反論してしまう。そうした私の姿勢が結果として政策論争以外の話を盛り上げてしまった」と安倍首相は言う。
安倍首相としては姿勢を転じることで攻撃をかわし国民への印象を変えていく一歩だったのであろう。
だが、問題の本質は安倍首相個人の答弁の姿勢にはない。
知らない事を、本当は知っているんだろうと詰問され続けた上、安倍首相がいかに経緯を説明しても、それは全く報道されず、国会質疑の実態と程遠い「創作見出し」が続いたのである。
政権側が打つ手はより抜本的なものであるべきではなかったか。
政権自身が精鋭の防御チームを組織化した上で、安倍首相と菅義偉官房長官らが細部にわたる情報を徹底的・具体的に収集・把握し、受け身の国会答弁ではなく、全体構造を政府側から速やかに発表するしかないということだ。マスコミとは別の自前のロジックを国民に開示し、マスコミの「創作見出し」と政府の詳細説明のどちらが正しいかを政府が広報する新たな体制の構築が必要だ。
マスコミがラウドスピーカーで巨大な嘘をつき続けることを許容しながら、政府中枢に政権防衛の戦略チームがなく、広報手段もなく、総理大臣が答弁能力だけで印象操作と闘うーこれは必敗の戦いになるしかないのだ。
6月19日に報じられた朝日新聞の17、18日の全国世論調査で、安倍内閣での支持率は41%、前回の5月24日、25日の47%から6ポイント、1月の54%から見ると13ポイントも下落した。特にこの6月の調査では「支持する」と「支持しない」が41%と37%に接近し、これを潮目に、各社世論調査の数字が大幅に下落、政権の危機が叫ばれ始めることになる。
それに先立つ16日、二階俊博自民党幹事長は、夜のBSフジの番組で加計学園問題での集中審議を巡ってこう発言した。「大騒ぎして頂いたが、このことで国会審議が左右されることは、馬鹿馬鹿しいことだ」と。
もし加計問題が本当の不祥事であったなら、与党幹事長のこうした発言は、辞任に値する。それが辞任どころか小さな記事で終わったのは、野党もマスコミも、この事件が馬鹿馬鹿しい空騒ぎであることを自覚していたからだ。
マスコミと野党が組んでの、これ程大規模な国民に対する情報謀略は戦後史上、さすがに例を見ない。
私自身、二階俊博自民党幹事長の発言に付け加える言葉はない。
何一つ語るに値せず、論じるに値せぬ架空のスキャンダルに狂奔する異常な言語空間を渉猟し続け、吐き気を催す。
◆隠蔽された問題の全体像
2017年7月10日、24日、25日、国会では、加計問題を扱う閉会中審査、集中審議が行われた。この3日間で招致された参考人は次の通りだ。
前川喜平(前文部科学事務次官)
原英史(国家戦略特区ワーキンググループ委員)
藤原豊(前内閣府地方創生推進事務局審議官)
加戸守行(前愛媛県知事)
八田達夫(国家戦略特区諮問会議有識者議員)
和泉洋人(内閣総理大臣補佐官)
柳瀬唯夫(経済産業省審議官)
朝日新聞をはじめ、2カ月に及ぶマスコミ報道では殆ど1回もお目にかからなかった名前ばかりである。この間、朝日新聞が報じた関係者は前川喜平と、彼が密室で2人きりで会った木曽功元内閣参与と和泉洋人内閣総理大臣補佐官、誤報で名前の出た萩生田光一官房副長官しかいない。前川喜平の1人芝居と誤報だけで2カ月もの間、加計スキャンダルを創り続けたのだ。
だが、獣医学部新設を10年間推進し続けた当事者は、実は、今回初めてここに登場した加戸守行前愛媛県知事であった。その加戸守行前愛媛県知事がここまで1度も報道の局面に登場しなかったとは、何と病み、腐った日本の報道空間であろうか。
また、実際に広島県・今治市共同提案を機関決定として通したのは八田達夫・大阪大学名誉教授が座長、原英史・株式会社政策工房代表取締役社長が座長代理を務める国家戦略特区ワーキンググループである。しかも、それは「総理の意向」が文科省文書に現れる1年以上も前のことなのだ。
さらに今回は、前川喜平の証言で圧力をかけたとされる和泉洋人・首相補佐官も出席している。
こうして、前川喜平以外の主要な登場人物がここに初めて一堂に会したわけだ。
この集中審議によって、初めて、当事者自身の証言による加計問題の構造全体が明らかになり、前川喜平の殆どが暴かれ、スキャンダルとしての加計問題は完全に息の根を止められた。
ところが、国会での徹底究明を要求してきたマスコミ自体が、この暴かれた真相を全く報道せず、この期に及んでさえ、前川喜平の発言のみを一方的に取り上げることに終始したのだ。
言うまでもなく朝日新聞がその急先鋒である。何しろ朝日新聞は、この集中審議における前川喜平以外の証人の証言を紙面から殆ど抹殺してしまったのである。
見出しは相変わらず「加計ありき、疑念消えず 前川氏『官邸が関与』首相ら当事者不在」「首相側近、『記憶ない』連発 加計問題、集中審査」となっている。審査の議事録を読めば、「疑念」は全て消える。首相が「当事者」でないことも分かる。首相側近の和泉洋人・首相補佐官や萩生田光一官房副長官は「記憶にない」を連発していな。事実を強く否定しており、合理的な説明が伴っている。朝日新聞のこれらの見出しは、議事録の実態と限りなく無関係な、例によって「創作見出し」そのものである。
さらにテレビも常軌を逸していた。
集中審議の内、7月10日のテレビ報道に関して、シンクタンク社団法人日本平和学研究所が調査をかけたが、それによると、10日、11日の在京キー局での「加計学園問題」の放映時間は合計8時間44分59秒、その内、参考人の発言を放送した時間は2時間42分22秒だが、その内訳は、前川喜平の発言が2時間33分46秒と実に約95%を占める。残りのわずか約5%が、加戸守行前愛媛県知事と原英史国家戦略特区ワーキンググループ委員に割かれた時間である。
朝日新聞社の安倍内閣支持率は、ついにこの7月8、9日調査で33%、不支持率が47%と劇的な逆転を見せ、第2次安倍政権を通じて最低を記録した。安倍首相を信用できないとした数字も61%にのぼった。
おそらく、まだ国民の大多数は、安倍首相に漫然たる不信感を持っているに違いない。安倍首相自身に何らかのやましい問題があったと感じているに違いない。
朝日新聞をはじめマスコミの隠蔽し続けてきた加計問題の全体像を明らかにしたい。
その時、スキャンダルの真の主役が安倍首相なのか、マスコミ側なのかをはっきり理解されるに違いない。
そもそも加計問題とは何だったのか。
端的に言おう。
獣医学部新設を巡る、反対派と推進者らの間の長年の闘いこそが、事の本質なのである。
7月10日参議院で、前川喜平は、獣医学部新設がそもそも必要ないという認識を次のように示している。
<これは、やはり政策として、これまで獣医学部の定員を増やすという理由がないと判断してきたからでありますし、その際には農水省などとも十分議論をしながら進めてきたと、こういう経緯があるわけであります。
今回この国家戦略特区で認めるということについて議論する中でも、これは、やはり将来的な人材需給というものを踏まえて議論しなければならない、これはもう当然のことだというふうに考えておりましたし、そのためには、やはり農水省、あるいは農水省が手に負えない別の新しい分野というのであれば、厚労省も加わってきちんと政府部内で議論するというプロセスが必要であったと思っております。(略)今治市からの提案もございました。(略)その時に文部科学省は、これは4条件を満たしていないと申し上げておりますし、9月にも、これは加戸先生がやはり提案をしておられますけれども、これについても4条件に照らしてやはり疑問があるというのが文部科学省のスタンスでございました>
前川喜平がここで言っていることを簡単に解説するとこうなる。
第1に、人材需給、つまり獣医師そのものがこれ以上必要とされていないから獣医学部新設は必要ない。
第2に、農水省や厚労省と獣医学部の新たな分野での新設について協議しなければならないが、協議していないから新設は認められない。
第3に、今回の愛媛県今治市は、国家戦略特区に獣医学部を新設する時に満たさなければならぬとされている4条件を満たしていないから、認めるべきではない。4条件とは、平成27年の6月30日に閣議決定された『「日本再興戦略』改定2015−未来への投資・生産性革命ー」という膨大な戦略ペーパーに含まれた「獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討」と題する一節である。世に石破4条件と言われる。4条件の内容を挙げると次のようになる。
<@現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、Aライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、B既存の大学・学部では対応が困難な場合には、C近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う>
前川喜平は、人材需給にやたらこだわるが、大学の学部新設というのは、一般にそこまで人材需給にこだわるものなのだろうか。
例えば経済学部を新設する時日本、需給バランスなどをそんな厳密に議論するのだろうか。無論、獣医師の場合のように特定の免許業の養成を主目的とするわけではないにせよ、若い人材の配分をどうするかという点で、懸念に変わりあるまい。まして最近では、常盤大学ヒューマンサービス学科、東京未来大学モチベーション行動科学部、東北工業大学ライフデザイン学部など、失礼ながら横文字を並べた内実の分からない学部学科が多数認可されている。人は知的伝統の継承の中でしか創造的であり得ない。例えば徹底的に古典に習熟せずに、バッハやベートーヴェンの超絶的な飛躍は不可能だ。新しがることと真に創造的であることは寧ろ対極的であり、新名称の学部・学科を安直に量産するのは、時代の空気への迎合としか見えないが、こうした学部で、文科省は需給など本当に測っているのだろうか。
薬学部に至っては、小泉政権下の平成14年(2002年)の規制緩和の後、46だった大学・学部数が現在74まで急増している。薬剤師の過剰供給や、大学の定員割れ、学力水準の低下などが指摘されるが、文科省は是正に動いていない。
一体52年間新設を全く認めず、その理由をあくまで需給に求める姿勢と、需給を不問に付したままの10年で28校も薬学部を認可してきたことーこの対応の極端なギャップを前川喜平はどう説明し分けるのか。
何しろ、前川喜平の説明には具体性が無さすぎるのである。
国会の証言に限らず、雑誌の寄稿やメディアのインタビューでも「犬、猫、牛、豚をはじめ、国内の動物の数は年々減っており、獣医師の供給が不足している実態がないといいます」(『文藝春秋』7月号97頁)などと大雑把な伝聞を繰り返すだけで、1度として具体的な根拠やデータを示したことがない。前川喜平は、まさに2016年、獣医学部新設の是非を判断すべき文科省の事務方最高責任者だったはずだ。どうしてここまで知識がないのだろうか。
実は、少し調べれば、獣医師の過不足について、データは前川喜平の主張とは全く別の事を語っているのである。
獣医師法第22条の届出状況(農林水産省)に基づく京産大作成資料によると、平成26年現在、約3万4500人の獣医師がいる。その内ペット関連の医師が44%と最も高く、大都市では過剰気味だが、一方で家畜の防疫や改良を担う産業動物獣医師は23%、製薬・大学・研究機関の獣医師は8%に過ぎぬ上、偏在は拡大傾向にある。
BSE、狂牛病、人間への感染が懸念される口蹄疫など、疾病に対応するのは産業獣医師であり、また、研究分野への就業者がそれを下支えする。とりわけ研究者数を安定的に増やすには、大学での研究職を増やすしか手がない。その意味だけでも52年間も新規参入を拒んできた今日までの規制は不合理だ。
実際、現時点で既に、獣医学部は、前川喜平の主張とは反対に、志望者の需要を満たしていない。
現在、国が定める獣医師の定員は1学年930名である。昭和50年の文科省告示で提示されて以来変わっていない。
ところが、2017年7月10日の国会閉会中審査で自民党の青山繁晴議員が明らかにしたところによれば、現在、獣医学部の学生数は約1200名で、告示で固定された定員に対して23%もの水増し入学が横行しているというのだ。青山繁晴議員は言う。
<実は現場の方々に随分尋ねてきました。そうしますと、例えば、教室に入りきれない学生が廊下に溢れて、授業を一種見学している、覗き込んでいるという実態もある。一番大切な実習も、実は背後から覗くだけという状態が、これ大学によって変わりますけれども、起きている所がかなりあると>
ところが、メディアはこうした事実を全く伝えず、大都市部のペット病院が余っているというような事例ばかりをこの数カ月伝えてきた。
大都市部の富裕層を相手にするペット病院は高収入を見込めるため、獣医師免許を取得した人が、都市部で開業したがり、過剰になっている地域があるのは確かだ。一方、産業獣医は公務員規定による給与となる。新型の感染症を扱ったり、大型動物を扱うなど、危険度や難易度が高いにもかかわらず給与が低いため、志望者が少ないのが実情だ。
このアンバランスは、今後日本に深刻な問題を齎す可能性が高い。
鳥インフルエンザは、鳥から鳥にだけ伝染していた状態から、鳥から人へ、更に人から人へと伝染する事態に進展し、死者も既に出ている。内閣官房の「新型インフルエンザ等対策室」によれば、これまでに感染が確定した人の数は1557名、うち死亡者数は605名(致死率約39%、WHO発表、平成29年8月24日時点)である。平成28年末から中国における感染者の急増がみられ、発生規模も拡大している。日本でも同時期に、9道県の12農場で鳥インフルエンザが発生し、約167万羽を殺処分している。感染が拡大しないように、その都度少人数で奔走しているのが公務員獣医師で、全国的に深刻な不足状況に陥っているのが実情だ。
牛や豚などの口蹄疫は宮崎県で平成22年(2010年)に大発生した。同年4月頃に発生してから8月27日に終息宣言が出されるまでの間に、29万7808頭が殺処分された。畜産関連の損失額は1400億円、関連損失は950億円に上った。
加戸守行・前愛媛県知事にとって、獣医学部誘致の特に切実な動機は、この宮崎県での口蹄疫による酪農業壊滅だった。
<2017.7.16 16:00更新
【加計学園問題】 産経新聞
加戸守行前愛媛県知事インタビュー「国会は何を議論しているんだ? このバカ野郎!」「役人の矜持はどこへ行った?」
http://www.sankei.com/premium/news/170716/prm1707160032-n1.html
平成22年に宮崎県で口蹄疫が発生した際には愛媛県の港に検疫態勢を取り、入県する車と人は全部消毒し四国への上陸を阻止した。全員が不眠不休でやったが獣医師が足りないから(民間の)ペットの獣医師まで動員して助けてもらった。あのときほど獣医師がほしかったことはなかった。もう一回、口蹄疫が来たらみんなぶっ倒れますね。>
■獣医学関係大学設置状況(平成28年度全国大学一覧を基に作成)
「●国立大学○公立大学□私立大学」
【北海道】
●北海道大学獣医学部(40名)
●帯広畜産大学畜産学部(40名)
□酪農学園大学獣医学群獣医学類(120名)
【東北】
□北里大学獣医学部獣医学科(120名)
●岩手大学農学部(30名)
【関東】
●東京農業大学農学部(35名)
●東京大学農学部獣医学科課程(30名)
□日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科(80名)
□日本大学生物資源科学部獣医学科(120名)
□麻布大学獣医学部獣医学科(120名)
【東海】
●岐阜大学応用生物科学部(30名)
【近畿】
○大阪府立大学生命環境科学行域獣医学類(40名)
【中国】
●鳥取大学農学部(35名)
●山口大学獣医学部(30名)
【四国】
無し
【九州】
●鹿児島大学獣医学部(30名)
●宮崎大学農学部獣医学科(30名)
元々獣医学部は極端な東高西低で、文科省による定員は東日本が10学部735名であるのに対して、西日本は6学部あるものの学生数は195名に過ぎない(平成28年度獣医学系大学設置状況図参照)。近畿から中国地方にかけての広域を見ても大阪府立大の定員40名と鳥取大学35名、山口大学30名など、微々たるものだ。
その上、四国はゼロである。
四国は、獣医師1人当たりの受け持ち頭数が家畜・犬共に最も多い。愛媛県はとりわけ獣医師が不足しており、地元に就職することを条件に学資援助する制度があるが、愛媛県はこの制度の活用が全国で3番目に多く、現在9名が対象となっている。
さらに、四国に獣医学部が1つもないといことは、四国全域に予算規模の大きな動物病院や研究・実験施設がないことを意味する。地方自治体が国と連携して感染症対策を打ちようがない。いざという時の水際作戦も外から要員を借り受けるだけで、継続性を確保できない。獣医師養成や配置を自立的に計画・誘導できない。
こうして四国全体に獣医師が不足していることが統計的・実態的に明らかな上、数十kmの海を隔てた宮崎県での口蹄疫問題に晒された愛媛県が、獣医学部を自県に作りたいという希望は、そんなにも難癖をつけて阻止しなければならない話なのか。
しかもそれだけではない。
加戸守行・前愛媛県知事には更なる大きなヴィジョンがあった。
<【閉会中審査=参院=詳報(5)】
加戸守行氏「『加計ありき』と言うが…12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけ」「東京の有力私学は、けんもほろろでした」
http://www.sankei.com/politics/news/170711/plt1707110010-n1.html
単に獣医学部ということでなくて、アメリカに見習って、先端サイエンスなり、あるいは感染症対策なり全てが国際水準に負けないような新たな分野に取り組む獣医学部として、国際的にも恥ずかしくない拠点にもしたい。
アメリカに、あるいはイギリス、ヨーロッパに10年遅れていると私は思います。10年の後れを取り戻す大切な時期だと、そんな思いできょう、参上させていただいたわけでありまして、そのことがらはそんな意味での地方再生、東京一極集中ではなくて、地方も頑張るんで地方も国際的拠点になり得るんだよと。そういうもののモデルケースとして、愛媛県の、今治の夢を託している事業であって、『加計ありき』と言いますけど、12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけであります。
私の方からも東京の有力な私学に声をかけました。来ていただけませんかと。けんもほろろでした。結局、愛媛県にとっては12年間加計ありきでまいりました。いまさら、1、2年の間で加計ありきではないのです。それは愛媛県の思いがこの加計学園の獣医学部に詰まっているからでもあります>
今治市は申請時に新設獣医学部の特徴として、次の4項目の具体的な構想を表明した。
・動物からヒトへ(医学と獣医学の融合)
・グローバル対応:国際的な獣医学教育拠点の整備
・ローカル対応:危機管理学術支援拠点・ゾーニング
・ライフサイエンスと公共獣医事に重点:第3極の獣医学教育拠点
医学と獣医学の連携が世界的に進む中、日本の現状は規制による閉鎖性が著しい。畜産物の輸出に際しての信用を担保する国際的な獣医学部の創立は、国としても必要であり、ライフサイエンスや試薬の開発も新たな可能性のある分野である。さらに、絶滅危惧種や環境保護生物の保護も、獣医学部の新設がない中で、日本は立ち遅れている。環境問題が叫ばれて久しいが、動物の生態の研究を医学の立場から強化しようにも、獣医学部の現状では対応困難なのだ。日本の医学部は世界的な先端性を一定程度確保しているが、獣医学部は国際的にみて余りにも貧弱で、専門家らによれば「絶望的」なまでに遅れているという。
こうして前川喜平が認可できないとしてあげた理由は全て否定されているのである。
第1に、人材需給上、獣医学部そのものも獣医師も必要であり、四国にとってはとりわけ喫緊の需要があるのである。
第2に、農水省や厚労省と獣医学部の新たな分野での新設について協議していないとすれば、それは関係省庁側の怠慢なのである。
第3に、加計学園は、4条件を満たしていないと前川喜平は主張しているが、全て満たしていると解せる。なぜなら、四国に新設する事自体が「@現在の提主体による既存の獣医師養成でない構想」であり、「B既存の大学・学部では対応が困難な場合」と言える。また、「Aライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野」を担うというヴィジョンを今治市提案は打ち出している。
これだけ合理性と切迫性に富む、加戸守行・前愛媛県知事を主体とした今治市の獣医学部新設提案であるにもかかわらず、実は同市からの提案は、この10年間で15回申請を拒絶されてきた。
一体どうしてここまで阻まれ続けたのかー我々はむしろそちらの方を問わねばならないのではないだろうか。
◆新設へー日本獣医師会との長い闘い
今治市の獣医学部新設の要望は、平成19年(2007年)、福田康夫政権における構造改革特区の要望から始まる。
申請は15回なされ、毎回却下され続けた。
なぜか。
文科省の規制の為である。
昭和50年(1975年)の文部省告示で、獣医学部定員が930名に固定されている上、平成15年(2003年)には獣医学部新設を差し止める文科省告示が出ている。この2つの告示を盾に、文科省は長年、獣医学部新設を頭から拒絶してきたのである。
その為、福田政権であえなく申請が却下されて以来、加計学園の獣医学部新設は、苦難の道を歩むことになった。
驚くべきことに、今回加計潰しに狂奔し続けた民進党=民主党の鳩山由紀夫政権時、枝野幸男が担当大臣の時に初めて、この事案が検討対象となる。
残念ながら、それが元の木阿弥に戻ったのは第2次安倍政権だった。
麻生太郎、石破茂ら、安倍政権下での有力閣僚が日本獣医師会と近かったことが理由と推定される。
日本獣医師会会長の蔵内勇夫は自民党福岡県議会議員の実力者で、麻生太郎と懇意である。
また、日本獣医師政治連盟委員長の北村直人は元自民党衆議院議員で、石破茂と親密な友人だ。
自民党には、各分野ごとに、業界と政治が組んで霞が関に圧力をかけ、かつ既得権益を守る為、新規参入者を阻む仕組みが存在する。
政ー官ー民の強固な基盤が利権で結び付くことは、全面的に否定さえるべきではない。過度な競争と新規参入は、価格破壊や業界倫理の破壊、流動的で不安定な職場環境や低賃金を招く。既得権益は一定範囲内ならば、業界安定の基盤たり得るのである。
だが、弊害も大きい。
業界団体は多年の自民党政権下、有力な族議員に参入規制を陳情し、議員は監督官庁に圧力をかけて、規制を作らせてきた。この規制によって業界は既得権益を保護され、その為に動いた議員には様々な利権が供される。官僚はこの仕組みに積極的に参加することで天下り先を確保できたわけである。この規制の合理性が極度に乏しい場合、既得権益は大きな害悪となる。
昭和50年(1975年)の定員930名の文部省告示と平成15年(2003年)の新設不可を示す文科省告示は、合理性なき規制の典型と言えよう。加計学園の申請が却下され続けきた事を以てもそれは分かる。
それに対して、政ー官ー民の過度の癒着、過度な規制を「岩盤規制」と呼び、国家戦略特区を発足させて、これの打破を掲げたのが第2次安倍政権である。
「特区」とは「経済振興や地域活性化を目的に、区域を限って減税や助成金、規制緩和などの優遇・支援措置を認める仕組み」である。
これまで実施されてきたものには、小泉政権時に作られた「構造改革特区」や、民主党・菅直人政権時代の「総合特区」がある。
構造改革特区は、自治体や企業、NPOなどの提案に基づき、国が認定する方式を採用しているが、従来の規制の弊害を大きく改革することはできなかった。
そこで安倍政権では、構造改革特区制度を継続する一方で、国が自ら主導して規制緩和に取り組むことで「世界で一番ビジネスのしやすい環境」を作り、国際競争力の強化と経済成長を強く促す「国家戦略特区」を発足させた。
その際、従来の構造改革特区が、規制省庁の抵抗(岩盤規制)を大きく打破できなかった点に鑑み、国家戦略特区では、規制の根拠の説明責任を官庁の側に全面的に負わせることにした。規制に関わるロジックを完全に従来と逆転させたのである。
国家戦略特区に新規参入希望者が申請すると、監督官庁の側が、規制がなぜ必要かを説明しなければならなくなる。「初めに規制ありき」が通用しなくなったのである。監督官庁の課長に始まり、国家戦略特区のワーキンググループ(WG)が説明に合理性が不足すると判断した場合、順を追って上級職に説明者の格を上げてゆき、最終的には月1回開かれる国家戦略特区諮問会議で、大臣が総理の前で規制の理由を説明しなければならない。官庁にとっては業界団体や族議員との板挟みになる、大変頭の痛い制度なのである。
この国家戦略特区への獣医学部申請は、実は今治市の前に、新潟市からあった。
平成26年7月のことだ。これを受けて国家戦略特区ワーキンググループは翌年2月3日まで5回にわたる文科省等との折衝を行った。平成27年2月3日のヒアリングで、八田達夫委員が「新潟に関しては今すぐ決めてしまいましょう。それでまず先駆けにしMしょう」などと発言するなど、国家戦略特区ワーキンググループ自体が非常に積極的だった。ところがその後、新潟市からの具体的提案は進まない。
<肝心の大学(新潟食料農業大学、平成30年(2018年)開学予定)がついてこず、具体化しませんでした」(原英史委員 インターネット放送「言論テレビ櫻LIVE」より)。
新潟市が挫折した後だっただけに、今治市による平成27年(2015年)6月の提案には国家戦略特区の期待も大きかったであろう。
6月5日には、国家戦略特区ワーキンググループで提案に対するヒアリングを行い、6月8日には、各省庁ヒアリングで、文科省、農水省が提案に対する見解を述べることになった。
これらの議事録を読むと、両省担当者とも、獣医は足りており、新分野には旧来の獣医学部で全て対応できるとして、新設不要を示唆する答弁に終始しているのが興味深い。
しかも、その答弁の中には看過できない点がある。
■北村専門教育課長
<文部科学省と致してましては、愛媛県・今治市より、既存の獣医師養成でない構想が明らかになり、そのライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになった場合には、近年の獣医師の需要の動向を考慮しつつ、特定地域の問題としてではなく、全国的見地から検討を行う必要があると考えています。>
まず第1に、挙証責任が逆になっている。
国家戦略特区では、規制官庁の側が、規制の必要な理由を説明する責任があるのに、北村は逆に今治市に需要の挙証を求めている。実はここだけではない。全ての議事録を通じて、文科省も農水省も新設不可の数値的根拠を1度も説明していないのだ。一方、今治市側が申請時に4項目の具体的な構想を表明している。
今引用した北村の発言は石破4条件に文言まで共通する。
石破4条件が閣議決定されるのはこの20日余り後の6月30日である。閣議決定前に、文科省の担当者がこの4条件を盾に新規参入を拒む立場で省庁ヒアリングに臨んでいるのは、看過できなぬ情報漏洩ではないか。
日本獣医師会から、4条件を盾に申請を跳ね除けるよう強い圧力があったと推測できる。それというのも、この省庁ヒアリング直後の、平成27年(2015年)6月22日の日本獣医師会の理事会議事録には、獣医学部新設を巡る生々しい政治的攻防が語られているからだ。この議事録は、平成29年8月下旬以後、日本獣医師会のホームページから平成27年以後の議事録のリンクが削除され、現在閲覧できない。
<■日本獣医師会平成27年度第2回理事会
日時:平成27年6月22 日(月)10:30〜12:00
http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06808/a3.pdf
2 そ の 他
日本獣医師政治連盟の活動報告
(1)北村日本獣医師政治連盟委員長から次のとおり説明がなされた.内閣府が取り組んでいる成長戦略特区については,構造改革特区は文部科学省が窓口であるが,成長戦略特区は内閣府が窓口だとして,今回は静観している.いずれにしても特区設置の際は,文部科学省が担当することになるが,これまでの獣医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議においても特区にはなじまないという結論である.
■北村
内閣府では,4 月末から6 月5 日までの間,成長戦略特区の公募をしていたが,愛媛県今治市に新設を望む岡山の学校法人が文部科学大臣にも説明をし,内閣府に申
請したという.藏内会長は麻生財務大臣,下村文部科学大臣へ,担当である石破大臣へは私が折衝を続けている.内閣府では,方針の最終案を公表していないが,藏内会長の強い政治力等により,財務省の担当主計官が文部科学省担当官へ対応のあり方を指摘した.石破大臣は,ライフサイエンスなどは獣医師が新たに対応すべき
分野なのか,その需要があるのか,これら基礎データが示されなければ検討できないとしている.しかし,新設希望側は,5〜10 年間の計画でデータを作り上げるこ
とも視野に置きながら,藏内会長は麻生大臣,下村大臣に,私は石破大臣と折衝をし,一つ大きな壁を作っていただいている状況である.
まず,既存の獣医師養成でない構想が具体化すること,次にライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること,さ
らに既存の大学で対応が困難であることの3 つの壁をクリアして初めて,獣医師の需要の動向を考慮しつつ,全国的な見地から平成27 年度中に検討を行うというスケジュールとなる.内閣府としては平成27 年度内に規制緩和を実施し,数字を残したいという思いがあり,文部科学大臣も官邸も同様の意向である.今後も強い政治力により,この3 つの壁を突き崩すよう論議が展開されることも想定され,気が抜けない状況である.藏内会長も私も進退をかけるくらいの覚悟を持っている.
本日,総会の新役員の選定の間に藏内会長の許可を得て,会場の皆さまに共通した認識だけは持っていただくよう説明をさせていただく予定である.
(2)藏内会長から次のとおり補足説明がなされた.
■蔵内
北村委員長の説明のとおり,きわめて厳しい攻防が連日続いており,委員長をはじめ,政治連盟の役員の方々には,毎日,官邸をはじめ,さまざまな情報をいただき,ともに対応してきた.
先ほどの方針の原案はきわめて厳しいもので,「獣医師養成系大学学部の新設に関する検討.既存の獣医師養成とは異なる獣医師養成系大学学部の新設については,食の安全や人獣共通感染症への国際的対応等の公共獣医師や,応用ライフサイエンスなど,獣医師が新たに対応すべき分野への対応を含め,近年の獣医師の需要の動向や,全国的な影響等を勘案しつつ,検討し,速やかに結論を得る」と記載されており,北村委員長の努力により,石破大臣等からいくつかの規制がかけられた.また麻生財務大臣も財務省経由で文部科学省に強い対応を求めている.基本的に文部科学省も農林水産省も本件に反対であるが,官邸の成長戦略特区を審議するグループが政治的な力を働かせている.要は日本全国での大学新設希望は,この学校法人だけとなり,新たに今までの大学,あるいは今までの獣医師で対応できないような新たな分野,たとえばライフサイエンス等の分野に獣医師の必要性が生じて,既存の獣医学教育の中では対応できないのであれば検討するという解釈である.なお,農協改革で全中の萬歳会長が辞任をされたが,まるで全中は農協改革に抵抗しているように,マスコミを使って悪者にされたのと同様,われわれが大きく反対を表明すると,政治力を使って獣医師に対する悪い風評を流し,獣医師会を悪者にすることも考える必要がある.そのため大学関係者がしっかりと大学での教育は充足しているので,新設には反対する等を明確に表明するとともに,獣医学関係者が獣医師の需給は十分足りていること,たとえば獣医師が地方公務員を志向しないことは,処遇の問題である等を訴えることが重要である.われわれも何十年という時間をかけて獣医学教育の整備,充実に取り組んできたことを理解してもらう必要があり,医師会も新しい医学部の新設に反対をしていることから,できれば医師会との情報交換も行い,場面においては共闘も考慮すべきと考える.
近々,方針の原案が発表されると思われるが,その結果によってきわめて厳しい状況も予測され,少なくともわれわれ,日本獣医師会の中から異論が出ないよう認
識を共有することが不可欠である.>
「はじめに新規参入拒絶ありき」で、獣医界のトップ2が、麻生、石破、下村ら有力議員を口説いて歩いていたというのである。
省庁ヒアリングで農水省や文科省の課長が、新設推進派の委員らを前に及び腰だったのは当然だろう。
そしてこの理事会の8日後の平成27年6月30日、北村から強い要請を受けていた石破茂は「日本再興戦略」の閣議決定に、4条件を潜り込ませることに成功する。
石破4条件を再掲しよう。
<@現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、Aライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、B既存の大学・学部では対応が困難な場合には、C近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う>
建前は新規参入の為の合理的な条件を装ってはいる。先に、加計学園の提案が4条件をクリアしているという理屈は私も示した通りだ。
しかし、この4条件は新規参入を拒む盤石の屁理屈にも使えるのである。
「具体的な需要が明らかになり」というが、新分野での「需要」は確定的には示せない。コンビニエンスストアという新分野にセブンイレブンの創業者鈴木敏文がチャレンジした時、「具体的な需要」を明らかにはできなかった。誰もが鈴木の構想を冷笑した。最初期の携帯電話は巨大サイズで高額だった。その段階で「具体的な需要」など明らかになるはずもない。この文言は尤もらしく言辞を飾りながら新分野の開拓・参入を拒む底意ある文言なのである。そして、この文言と「既存の獣医師養成でない構想」「既存の大学・学部では対応が困難な場合」という条件が組み合わされば、全ての新規参入を拒む口実になる。
なぜか。
Aの「新たな分野」は、厳密に言えば、事前に具体的な需要を明らかにはできない。これは「新たな分野」の提言を拒絶する口実となる。ところが、逆に、条件の@とBによれば、既存の大学では対応できない「新たな分野」へのチャレンジでなければ認可できないことになっている。つまりAを満たせば@Bは満たせず、@Bを満たせばAを満たせていないと突っぱねられる。4条件そのものが、こうした論理矛盾によってあらゆる新規参入を拒むトリックだったのである。
事実、北村によれば、この平成27年6月30日の閣議決定後、石破と北村、蔵内は次のような意見交換を行っている。
<日本獣医師会平成27年度第4回理事会議事録
日時:平成27年9月10日(木)14:00〜17:00
http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06811/a2.pdf
2 そ の 他
日本獣医師政治連盟の活動報告
北村委員長から,日本獣医師政治連盟は,6 月22 日の役員改選以降,北村委員長,鳥海副委員長,篠原幹事長,境会計責任者という布陣で発足したことが報告された.
さらに政治連盟は年度が1〜12 月であるため,10 月2 日の第3 回役員会が新役員による初の役員会となるが,7 月1 日には,日本獣医師会と連名で自由民主党の動物愛護推進議員連盟の総会の席上,マイクロチップ推進の要請書を正式に提出する等活動を進めている.続いて8月25 日には,平成28 年度の農林水産関係予算についての団体要望並びに平成27 年度農政推進協議会総会に出席したが,次年度は獣医師関連の税制改正要望はなく,予算概算要求も農林水産省担当部局で確保されており,これを応援するという対応とした.以降,衆参国会議員,特に獣医師問題議員連盟所属議員のセミナーに出席した.
なお,昨日,藏内会長とともに石破茂地方創生大臣と2時間にわたり意見交換をする機会を得た.その際,大臣から今回の成長戦略における大学,学部の新設の条
件については,大変苦慮したが,練りに練って誰がどのような形でも現実的に参入は困難という文言にした旨お聞きした.このように石破大臣へも官邸からの相当な圧力があったものと考える.しかし,特区での新設が認められる可能性もあり,構成獣医師にも理解を深めていただくよう,私が各地区の獣医師大会等に伺い,その旨説明をさせていただいている.
秋には内閣改造も行われると聞いており,新たな動きが想定されるが,政治連盟では,藏内会長と連携をとりながら対応していくので,各位のさらにご指導をお願い
したい旨が説明された.>
<2017.7.17 01:00更新
【加計学園 行政は歪められたのか(上)】
新設認めぬ「石破4条件」は獣医師会の政界工作の「成果」だった! 民主党政権でも献金攻勢…
http://www.sankei.com/premium/news/170717/prm1707170008-n1.html>
石破自身は最近この発言が報道された後、発言そのものを否定しているが、それならば、北村は理事会で虚偽を語ったことになる。日本獣医師会も日本獣医師政治連盟も、事柄を精査して、正式な報告を出すべきではないか。
こうして、日本獣医師会は石破を使って、規制突破を目的とする国家再興戦略に規制強化の一文を入れることに成功した。
深刻なのは、この当時、石破が安倍内閣の地方創生担当大臣だったことだ。まさに規制緩和の担当大臣である。その石破が、安倍政権の政治意図に真っ向から反して、業界団体の「ご意向」のまま、岩盤規制を強化する側に回っていたわけである。
石破を信任した安倍首相及び安倍内閣=国民の負託への背信ではないか。
そしてまた、石破こそが、業界保護のために閣議決定の方針を密かに裏切り「行政を歪めて」いたことになる。
ところが、日本獣医師会が、石破の「練りに練った文言」に安心したのも束の間、この10月の理事会の後、話は前に進んでしまう。
平成27年12月15日、国家戦略特区諮問会議において、今治市、広島市が国家戦略特区指定を受けたのである。
ちなみにこの国家戦略特区の達成目標は「『しまなみ海道(西瀬戸自動車道)』で繋がる広島県と今治市において、多様な外国人材を積極的に受け入れるとともに、産・学・官の保有するビッグデータを最大限に活用し、観光・教育・創業などの多くの分野におけるイノベーションを創出する」という大規模なものだ。グローバル企業の参入や、地場製造業の活性化、観光での先進的な「自治体間連携モデル」の推進が総合的に目指されている。
だが、獣医学部新設は岩盤規制突破の象徴として、国家戦略特区民間有識者委員の間では強く意識されていた。
竹中平蔵は、この日の会議で次のように発言している。
<考えなくてはいけない問題として、地理的分布、ジオグラフィック・ディストリビューション。今まで中国・四国に特区はなかったわけでありますので、その点についても今回新たに入るということは意味があること。広島、今治が入るということだと思います。
今回、その中でとりわけ獣医学部等々を含むライフサイエンス系の問題にこの地域が取り組もうとしているところは、私は高く評価すべきであろうかと思います。この問題は成田で38年ぶりに医学部ができる。これは大変大きな話題、アベノミクスが進捗している象徴になったわけですけれども、獣医学部に関しては、それを上回る47年間新しいものがない。かつ、昭和50年、つまり約40年前から定員が増えていない。これは驚くべきことだと思います>
当初から国家戦略特区民間有識者委員の間で、獣医学部新設が異常な規制だと認識されており、突破の積極的な意思が寧ろ彼らにあったことが読み取れる。
一方、日本獣医師会は強い衝撃を受けた。
会議3日後の平成27年(2015年)12月18日、日本獣医師会の会長蔵内は日本獣医師会会報のエッセー「春夏秋冬」にこう書いた。
<会長短信「春夏秋冬(29)」
「驚きのニュース」
http://nichiju.lin.gr.jp/aisatsu/shunkashuutou/log29.html
12月15日(火)の昼、耳を疑うような驚きのニュースが飛び込んできました。 午前中に開催された国家戦略特区諮問会議において、国家戦略特区3次指定が決定されました。全国16の獣医学系大学、日本獣医学会、日本獣医師政治連盟、本会等が揃って長年にわたり設置に反対してきた獣医師養成系大学・学部の新設案件です。このような情報は、先週、北村政連委員長のご尽力により入手はしていましたが、事実か否か疑う余地もありました。本件については、本年6月30日に閣議決定された「「日本再興戦略」改訂2015」において、「M獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討」として特区指定の候補とされました。しかし、検討に当たっては次の4条件が明記されていました。@現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化 Aライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになること B既存の大学・学部では対応が困難な場合 C近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討 このように大きな壁が4つもあるため、実質的に獣医学系大学の新設は困難であると考えていました。しかし、今回は、このような条件について検証することなく、特区指定が決定されました。その記載内容は、「〈教育〉国際教育拠点の整備(獣医師系(ライフサイエンスなどの新たに対応すべき分野))」というものです。 今後は、提案主体である学校法人等が、内閣府、文部科学省等と具体的な区域計画等について協議を進めていくことになります。その協議過程においては、上記の4条件や大学・学部の設置基準等への適合状況等について審査が行われるものと見込まれます。獣医学系大学、政連等における獣医学部新設反対の活動は、これからが本格的な山場に入ったとも考えられます。そして更に注意を要することは、本件を契機として次々と設置申請が認可されることは、何としても阻止しなければなりません。>
繰り返し書いてきたように、国家戦略特区は、規制官庁側に説明責任がある。農水省、文科省とも、1年間、具体的な規制理由を全く説明できなかった。そうである以上、国家戦略特区ワーキンググループ側が申請を拒絶する理由はなくなる。石破4条件の手の込んだ屁理屈など、規制突破を目的とした国家戦略特区の委員らにはまるで関心がなかったろう。日本獣医師会は、石破の政治力や4条件を過大評価していたのである。
こうして、翌平成28年(2016年)の1月29日、広島県、愛媛県今治市=加計学園の獣医学部構想が国家戦略特区に指定された。
農水省と文科省にとっては面倒な局面に入ったことになる。
日本獣医師会は「獣医学部新設反対の活動は、これからが本格的な山場に入った」と改めて圧力を掛ける気満々だ。
その圧力を受けてであろう、平成28年(2016年)の1月29日の国家戦略特区指定の後も、農水省、文科省には全く動きが見られず、時間だけが過ぎてゆく。「総理の意向」など薬にしたくもない露骨なサボタージュが続くのである。
こうして初回ヒアリングから1年以上も経った平成28年(2016年)9月16日、年度を大きく跨いでようやく国家戦略特区ワーキンググループ関係省庁ヒアリングの第2回会合が行われた。
まず、会合冒頭、文科省文書で「官邸の最高レベル」発言の主と擬されている藤原豊審議官から発言がある。
国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事要旨)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h28/shouchou/160916_gijiyoushi_2.pdf
1 日時 平成28年9月16日(金)14:12〜14:34
■藤原豊審議官
<去年の成長戦略の中でこの問題につきましては政府決定をしておりまして、当時、本年度中(平成28年3月まで)に検討ということなので少し時期をもう越えておるのですが、関係省庁とともに政府として宿題を負った形になっているというのがポイントでございます。>
総理の意向で行政が歪められたのではない。圧力団体の暗躍や関係省庁のサボタージュで、平成28年(2016年)3月までの年度内と決められていた事案の検討が、9月まで持ち越されていたのだ。藤原豊審議官はそこを指摘しているのだ。
また、藤原豊審議官は次のようにも発言している。
■藤原豊審議官
<先週金曜日に国家戦略特区の諮問会議が行われましてまさに八田議員から民間議員ペーパーを御説明いただきましたがその中で重点的に議論していく項目の1つとしてこの課題が挙がり総理からもそういった提案課題について検討を深めようというお話もいただいておりますので少しそういった意味でこの議論についても深めていく必要があるということで今日はお越しいただいた次第でございます。>
何の事は無い。議事録に「総理の意向」が出てくるではないか。藤原豊審議官はこういう物の言い方をする癖があるとの関係者の証言は多い。公式の場でも口にするような裏の無い意味で、サボタージュする関係省庁に発破をかける時、「総理」を口にするのは藤原豊審議官の常套手段だったのだ。
この会合は、国家戦略特区ワーキンググループ座長の八田達夫・大阪大学名誉教授と委員の本間正義・東京大学大学院農学生命科学研究科教授が、強く獣医学部新設の必要を主張し、浅野敦行・文部科学省高等教育局専門教育課長と磯貝保・農林水産省消費安全局畜水産安全管理課長がのんべんだらりな消極姿勢を示して、頭ごなしにやっつけられるという構図である。
例えば、農水省の磯貝保は「産業動物、家畜の数というのは需要が伸びていた時代と違いまして需要自体も減ってきていて減少している。また、ペットのほうもある程度飽和してきて犬の数が減ってきているという実態があるという認識をしている」と発言し、需給バランス上で新しい獣医学部認可に反対であるとことをほのめかす。すると本間正義が反論する。
■本間委員
<その意味では、つまり、獣医師の試験を受けようか、受けないで別のところの職場に行こうか等々は、まさにそういうことのマーケットを踏まえて受験生が決める話であって、そこは定員管理で縛る話ではないと思います。>
一方、農水省と文科省が獣医の需要が足りていると主張したがることに対して、八田達夫は、具体的な計測はしてるのかと繰り返し問うが、2人はいつもはぐらかす。そこで、そこまで需要が足りているというなら「獣医師が新たに必要な分野における研究者の需要を計測すべき」ではないかと八田達夫が畳みかける。すると、浅野敦行は次のように逃げを打った。
■浅野課長
<恐らくこれは文科省だけでは決められないと思いますので、きちっとしかるべく多分政府全体として、需要と供給の問題も全く関係ないわけではありませんので。>
■八田座長
<それは関係ないでしょう。文科省は研究が必要かどうか、その観点からやるから文科省に権限があるので、実際の人たちの損得を斟酌するなどということはあり得ないでしょう。文科省は研究の必要性、ちゃんと需要が十分ある研究者を養成するということが必要なら、それは当然やるべきではないですか。ほかのところを見る必要などは何もないでしょう。>
■浅野課長
<ただ、獣医学部を出た卒業生は、獣医師国家試験の受験資格が与えられますので、当然そこの需給の問題というのはかかわってくる。>
■八田座長
<それは先ほど本間先生がおっしゃったように、その能力があるかどうかを検査すべきで、そこで仮に数が多過ぎて競争によってだめな獣医師が退出して、優秀な獣医師に置きかえられるのは大いに歓迎するべきことです。実際問題として、今、例えば日本はバイオに関する研究者はすごく不足しています。医者が制限しているため不足しているので、結局、理学部の出身の人がバイオ研究を支えているわけですけれども、獣医からも来てほしいわけです。日本のバイオの研究の根底がそういう、医学部や獣医学部の既得権を持った人による供給制限で押さえられているわけです。文科省はそんなところを見るべきでない。やはり日本の研究水準を上げることを第一に考えられるべきではないでしょうか。>
■本間委員
<私も全く同じこと。繰り返しになりますけれども、要するに獣医師が増えるか増えないかということは文科省のマターではないということです。いみじくもライフサイエンスという言葉を使っているわけですから、これは医学、獣医学、理学、薬学等がまさに一体となって、これまでのような縦割りあるいは枠ごとのサイエンスで中でやっていくというのではなくて、相互にコラボレートする必要があるので、その中で獣医学を考えていかないと、今後の日本の獣医学そのものが相当に遅れてしまうという懸念も持っています。ぜひそこは枠を超えた形で、定員管理の話は別の話として、ないしは考慮に置かずに日本の研究レベルを上げるという観点からぜひ御検討いただきたいと思います。>
これに対して農水・文科両省担当課長は、獣医学部新設を認可できないという説得力ある反論を全く示せなかった。
この段階でさえ規制の必要を証明できなかった以上、文科省は最早獣医学部新設から逃げることはできない。石破4条件には、条件が満たせた場合には「本年度内に検討を行う」とある。逆に、最速で事を進めなければならなくなったのだ。
◆さて、前川喜平は何をしていたのか?
ではこの間、前川喜平は何をしていたのか。
何もしていなかった。
前川喜平は、事柄が劇的に動き始める2016年9月16日の国家戦略特区ワーキンググループ会合直前の9月9日、和泉洋人首相補佐官に呼び出され、「総理は自分では言えないから自分が総理に代わって言う」と言われたと証言していた。
密室で相手に何を言われたかを、公的な事案に際して持ち出すのは、嘘つきか卑怯者のやることだ。しかも参考人質疑での前川喜平と和泉洋人首相補佐官のやり取りから、全ては前川喜平の頭の中での連想ゲームに過ぎなかったことが判明したのである。
2017年7月24日衆院予算委員会の集中審議
■前川喜平参考人
(2016年)9月9日と記憶しておりますけれども、和泉総理補佐官から、国家戦略特区における獣医学部の新設について文部科学省の対応を早く進めろ、こういう指示をいただきまして、その際に、総理は自分の口からは言えないから代わって私が言うんだ、こういうお話がございました(略)
■和泉洋人参考人
今おっしゃった、総理が自分の口からは言えないから代わって私が言う、こんな極端な話をすれば私も記憶が残っております。そういった記憶が全く残っておりません。したがって、言っておりません。(発言する者あり)言っておりません。(略)一般論として、スピード感を持って取り組むことが大事だと言ったわけでございまして、具体のことについて、加計学園等については一切触れておりません。
■小野寺委員
和泉参考人にもう1つお伺いいたします。
今、一切そういう話はしていないということですが、総理と加計学園の理事長が親しい関係にある、友人であるということは、その当時、知っていらっしゃいましたか。
■和泉洋人参考人
週刊誌の記事などでそういった話を見たかもしれませんが、加計学園の理事長と総理が友人であるということを明確に認識したのは、3月にこの問題が報道で報じられて以降でございます。(略)
■小野寺委員
それでは、当事者の前川参考人にお伺いしたいと思います。
先程、9月9日に和泉補佐官からのお話があったということですが、その際、具体的に、加計学園とかそのような具体例のお話はあったんでしょうか。
■前川喜平参考人
(略)その時、既に私としては、総理と加計理事長とが御友人であるということは認識しておりました。また、加計学園が今治で獣医学部を作りたいという希望を持っているということも、担当課から説明を受けて聞いておりましたので、知っておりました。
したがいまして、私は、総理が自分の口からは言えないからというお言葉を聞いた時に、これは加計学園のことであると確信した次第でございます。(発言する者あり)
要するに、加計学園については和泉洋人首相補佐官の口から出ておらず、前川喜平が総理と加計学園理事長が友人だから、和泉洋人首相補佐官はその事を言いに来たと勝手に想像しただけだったのである。
ところで、和泉洋人首相補佐官も知らなかった安倍首相と加計学園理事長の友人関係を、なぜ、前川喜平は知っていたのだろう。
<総理と加計理事長とが御友人だということは、私は8月の終わりごろに担当課から説明を受けた際に聞いた覚えがございますが、今ご指摘の写真は、これは10月の半ばごろに私は拝見いたしました。
これは、私は出席しておりませんでしたけれども、獣医師会の皆様方が大臣のところに要請に見えた際にお持ちになったというふうに理解しております。(略)どうしてこの写真をお持ちになったか、その獣医師会の意図はわかりませんが、私としては、この写真を見て、総理と加計理事長との間柄が極めて親密であるということを理解したわけでありまして(略)。
(2017年7月10日閉会中審査議事録24頁下段から引用)>
これ又、つくづく奇妙な話である。
日本獣医師会は、加計学園による獣医学部新設に執拗に反対してきた。その人たちが獣医学部新設の許認可官庁のトップである文科大臣に、加計学園と安倍首相が一緒に写っている写真を資料として見せている。一体どういうつもりだったのだろう。
松野大臣や文科省に対して、安倍首相と加計理事長の親密な関係を見せて、安倍首相が情実で事を進めていると仄めかし、不正な案件だから認可するなと誹謗中傷したのではないか。
蟹は甲羅に似せて穴を掘る。
加計理事長が総理の友達で、それゆえにこの事業自体が、個人的な情実絡みだという筋立ては、日本獣医師会が作り出し、前川喜平もそうした一連の連想の中で、この事案そのもに極力関与せずに傍観を決め込んでいたのである。
義家弘介副大臣の発言を聞いてみよう。
<当時私は副大臣でしたが、実際担当課は途方に暮れていました。どうしよう・・・。報告しても上の空の前川さんを当てにできない状況でしたから、連日私の所に2度3度来て、農水省を議論の土俵に乗せて下さい。厚労省を何とかしてくださいよ、と。そこで私が動いたペーパーが、あの義家ペーパーなんですね>
前川喜平が仕事をしていれば、あの「文科省文書」など存在しなかったのである。前川喜平自身が事務方を動かして関係省庁と連携し、自ら文科省の見解を国家戦略特区の委員に説得していれば、前川喜平に報告する担当課文書が作成される必要はなかったからだ。
前川喜平は和泉補佐官から国家戦略特区の意義を説明され、急げと言われたが、反論もせず、急ぎもしなかった。
担当課長が関係省庁ヒアリングで論破されてきても、自ら立ち上がり、動こうとしなかった。
周りで政治家が懸命に調整している中で「面従腹背」を決め込んで黙っていた。
一方、担当課と政治家が精力的に動いているこの頃、週に1度は新宿の出会い系バーに偽名で通い、貧困女子の素行調査に勤しんでいた。
この直後、天下りの実行犯であることが判明したが、辞職を渋り、杉田官房副長官や菅義偉官房長官の恩情をいいことに、5000万円の退職金をせしめて退官した。
退官後に、その恩義を裏切り、朝日新聞とNHKの安倍叩きに便乗し、文科省文書を提供し、ありもしなかった総理の圧力を仄めかし、国政を混乱させ、文科省の信頼を決定的に失墜させた。
前川喜平の証言は、密室での相手の発言を取り上げるものか、彼自身の憶測ばかりで、裁判になれば証拠能力ゼロである点、籠池の証言と同様だった。
前川喜平劇場の、これが顛末である。
こうして、関係者の水面下の折衝により、2016年12月22日、松野大臣、山本有二農水大臣、山本幸三地方創生担当大臣の3大臣合意が発出され、日本獣医師会の意向を尊重して開校は1校に限るとしながらも、52年ぶりの獣医学部新設が決定された。
本来ならば、安倍政権の大きな業績として華々しく喧伝されていい画期的な悪弊打破だった。それが支持率を30%前後も下落させる架空のスキャンダルに仕立てられた。
しかし、ようやく、ようやく2017年11月14日に加計学園の獣医学部新設が認可された。
主犯は朝日新聞であり、強力な共犯者がNHKと文藝春秋だった。
朝日新聞が使った駒は前文科次官の前川喜平であり、民進党など反安倍野党である。
彼らは、それぞれの思惑やイデオロギー的な理由から、安倍首相を叩いたつもりかもしれない。
だがそれは違う。
本当に破壊されたのは、デモクラシーそのもであり、その基礎となるべき主力言論機関の信頼性であり、不当な規制打破への関係者の努力であり、獣医学部新設によって広がる日本の安全やバイオ技術の飛躍の可能性そのものだった。
言論への信頼を担保に、主権者たる国民が政治判断を下し、政治家に権力を委託する。そうしたデモクラシーにあって、日本最高の情報源と国民の多くがまだ信じ込んでいる朝日新聞とNHKとー後半では文藝春秋もーが、組織戦を想定せざるを得ないような虚報の山によって国民を洗脳し続けた。
彼らの量産した虚報が、本当にコケにし、否定したのは安倍晋三首相でも安倍政治でもない。
日本の主権者たる国民であり、日本の民主主義そのものだったのである。
http://www.asyura2.com/17/senkyo236/msg/895.html#c36