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(波聞風問)デフレ脱却 宣言しない本当の理由は 原真人
2018年1月30日05時00分 朝日新聞
今月、10年ぶりに改訂された広辞苑が発売された。すぐにいくつかの説明の誤りが指摘され、ニュースになった。言葉ひとつ、いちいち批判されるのも日本を代表する国語辞典ゆえだろう。
改訂版には新たな語義もたくさん加わった。たとえば火が燃え上がることを表す「炎上」には、インターネット上で非難や中傷が多数届く、という説明も入った。ためしに気になる言葉を引いてみた。
デフレーション=(通貨収縮の意)物価が持続的に下落すること。企業の倒産、失業者の増大など不況や社会不安を伴うことが多い――。
旧版と一言一句おなじだ。一般的な説明としてはこれでも十分。ただ第2次安倍政権の5年を経たいまは物足りない感じがしてしまう。実態とずいぶん違うからだ。
金融危機以来、政府・日本銀行は日本経済が「デフレ」だと認定してきた。とはいえこの20年、物価が大幅に下落し続けたことはない。下落した年もマイナス1%に満たないわずかな下落がほとんど。最近はプラス0〜1%で安定している。
実体経済はといえば、このところ企業業績は過去最高の水準だ。雇用もバブル以来の好調さである。
安倍晋三首相は「物価が持続的に下落するという意味のデフレではなくなった」と言う。なのにデフレ脱却宣言まで踏み込まないのはなぜか。
政府・日銀が掲げる2%インフレ目標が未達成だから、というのが公式見解だ。ただその理屈は苦しい。なにしろ政府も日銀も「景気は拡大中」と言っているのだ。
宣言できない本当の理由は異次元緩和を終わらせられないからではないか。
日銀は異次元緩和の一環で国債と株式ファンドを大量に買い続けている。いまや苦しい政府の借金財政を支えるのも、株価の高騰を下支えしているのも日銀だ。日銀がこれらの政策をやめたら、あるいは購入量を減らしただけでもまちがいなく国債価格と株価は急落する。避けるには政策継続しかない、というのが政権の本音だろう。
ただ国債や株を永遠に買い支え続けることはできない。政策の「正常化」を先送りすればするほど反動は大きくなるから修正は早いほどいい。だが高株価とゼロ金利の微温景気にどっぷり浸った安倍政権にその気はなさそうだ。
日銀自身もいまや引くに引けなくなった。みずから引いてショックを起こせば戦犯とみなされる。ならば動かぬが得、と決め込んでいる風だ。
平均株価は26年ぶりの高値を記録。世の中にはバブルの空気さえ漂う。日本経済の実態はしかし、異常なマクロ政策の砂上に立つ楼閣である。
広辞苑には現状を映すこんな語義も加えてほしかった。
デフレ=物価が2%以上の上昇をしない状態。景気の良しあしはどっちでもいい。異常な金融政策を続ける理屈としてもっともらしい言葉。
(はらまこと 編集委員)
https://www.asahi.com/articles/DA3S13336399.html
http://www.asyura2.com/18/senkyo239/msg/230.html#c2