9. 2016年12月09日 19:08:22 : 8TfzpsO6YQ : HRMGsV9vgN8[1]
民進党や共産党の言う「平和主義」とは国連平和維持活動(PKO)において「近傍にいる民間人に救援を要請された際、自衛隊に助ける能力があっても法律の制約で見捨てる」ということか?
リスクはある。
リスクがあるのは自衛隊だけでなく他国の軍隊にもある。
リスクがあるからといって日本だけが引っ込むわけにはいかない。
リスクを減らす努力は必要だ。
危害射撃を正当防衛や緊急避難に限らず、襲われる兆候が確認されたら先制攻撃を認めるべきだ。その方が自衛隊のリスクは減る。
極左野党や反日勢力の自衛隊員をさも心配するかのような姿勢は実は偽善だ。
大事なことは国連平和維持活動(PKO)への貢献と自衛隊員のリスク低減を両立させることだ。
「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防護」など他国の軍隊なら普通にやっていることだ。
自衛隊の武器使用制限はまだまだ多すぎる。撃たれてから撃つのでは遅い。敵は自分から撃つまで自衛隊が警告射撃だけで危害射撃をしてこないと思えば十分に態勢を整えてから撃ってくるに違いない。そうなればそれこそ自衛隊員のリスクが高まる。
撃たれる前でも撃ってきそうになったら、警告ぐらいは先にやってもいいが、敵が引かないようであれば、敵より先に撃つのが被害を抑えるのに必要なことだ。
また危なくなったら撤収するってアホか。他国の軍隊から見たら何やねんそれ?となるに違いない。
政府は日本の力を抑え込もうとする反日勢力に与することなくもっと実践的な対応を考えろ。
自衛隊の勢力範囲内で襲うそぶりを見せれば先に自衛隊に攻撃される、そう敵に思わせてこそ本当の抑止力になる。
国連平和維持活動(PKO)の自衛隊海外派遣は日本国憲法前文の「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」に見事に合致している。
2016.11.28 14:30更新
【正論】
南スーダン派遣を名誉としたい 世論より自衛官の言葉を信じる 防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛
http://www.sankei.com/politics/news/161128/plt1611280007-n1.html
11月20日、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に従事するため、青森市の第9師団を中心とする第11次派遣隊が出発した。よく知られているように、これは昨年9月19日に成立した新安保法制に基づき、新たに「駆け付け警護」などを加えて、自衛隊が海外派遣されるケースである。
しかし、これに対する世論の反応は必ずしも良くなかった。
設問に対する若干の違いはあるものの、派遣をめぐる新任務についての反対は、共同通信やNNN・読売新聞、朝日新聞は5割を超え、FNN・産経新聞は4割弱である。
≪命懸けの任務に当たる自衛官≫
私は11月18日、防衛大学校時代のゼミ学生だった一等陸佐に招かれて、ある県の駐屯地を訪ねた。出迎えにきてくれた一曹と道すがら雑談しながら陸自の南スーダン派遣についても感想を尋ねてみた。戻ってきたのは「自衛隊にとり名誉なことです」との答えである。駐屯地司令にその旨を語ると、司令は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえること」を自衛官は宣誓しているので、それも当然のことと思う、と答えた。私はマスメディアによる世論調査結果よりも、この2人の言葉を信じたい。
派遣先である南スーダンの治安が極端に悪いので、今回ばかりは自衛隊からも殉職者が出るのではないかと私も危惧している。けれども、わが国はそういう事態にも耐える必要があるのではないだろうか。
なぜなら1993年4月にはカンボジアで国連ボランティアとして活動していた、25歳の中田厚仁青年と、翌5月には国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の文民警官として活動中だった高田晴行警部補とを、われわれは失っているからである。
民間人や警察官から犠牲者が出た場合は耐えるべきであるが、自衛官から死者が出ることは許容できないというのはアベコベではあるまいか。自衛官は職場での死を覚悟している。警察官の場合も殉職を覚悟している人が多いだろう。しかし、民間人であって、職場での殉職(?)を考えるというようなことがあるだろうか。
≪参考にしたいドイツの例≫
昨年10月、安倍晋三首相は過去1年の警察殉職者を「16柱」と述べた(首相官邸ホームページ)。今年10月に挙行された自衛隊殉職隊員追悼式では「陸自7柱、海自12柱、空自10柱、防大1柱、防医大1柱の計31柱」の殉職者があった旨、報告された。
警察の定員は13年度に29万人強、自衛隊のそれは今年度において25万人弱であるから、組織としては警察の方が大きい。だから平時において自衛隊の方が、より多くの犠牲者を出している。
その自衛隊が海外での平和維持活動で犠牲者ゼロというのは、僥倖(ぎょうこう)に近い。そういう状態の持続を期待するのは、根本的に誤っていると言うべきであろう。
わが国にとり参考になるのはドイツの例である。この国は自国の基本法を「縮小」解釈して、北大西洋条約機構(NATO)域外、つまり同盟国領域外への連邦軍派遣を不可としてきた。しかし冷戦終結後に憲法解釈を改め、国連が展開したボスニア・ヘルツェゴビナの平和安定化部隊(SFOR)、コソボの治安維持部隊(KFOR)、さらにはアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)などに連邦軍を参加させてきた。
その結果、15年10月時点で総計106人の殉職者を出している。その大旨はアフガニスタンで56人、コソボで29人である。しかし、それに劣らず悲劇的というべきは、任地からの帰国後、20人を超える青年が自殺の道を選んだという事実である。
≪「例外国家」の道をとるな≫
では、ドイツではこのような悲劇に政治がどう対応したのであろうか。
当時、『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じたところによると、コール政権のクラウス・キンケル外相は国会論戦の場で、連邦軍初の「同盟国領域」外への派遣に反対する野党の一女性議員が、「最初の亜鉛の棺がボスニアから到着したら」どうするつもりか、と詰問したのに対し、「その場合、リューエ国防相と私が棺の傍らに立つ」と言い放ったという。この言葉に満座は水を打ったように静まり返ったと報道された。感動的ではないか。
今日、国連南スーダン派遣団(UNMISS)には、インド、ルワンダ、ネパール、エチオピア、中国、ドイツなど、わが国を含めて計63カ国が要員を派遣している。
その中で殉職者ゼロにこだわり続けている国はわが国以外にはあるまい。そういう「例外国家」の道をとるべきではない。
私とて派遣自衛官が「亜鉛の棺」で帰国するのをよしとする者ではない。ただ、わが国は「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」(日本国憲法前文)のである。(防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛 させまさもり)
日本国憲法
(昭和二十一年十一月三日憲法)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。
2016.11.26 07:17更新
【一筆多論】
日本と自衛隊の安全損なう「リスク論」の氾濫 榊原智
http://www.sankei.com/politics/news/161126/plt1611260040-n1.html
南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣される自衛隊の安全に配慮するのは当然だが、過剰ともいえるリスク論の横行には違和感がある。日本と自衛隊の安全を損なうからだ。
南スーダンPKOで「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」の新任務を与えられた陸上自衛隊の11次隊が、首都ジュバの宿営地に順次展開中だ。
10次隊から指揮権を引き継ぐ12月12日から、新任務が適用される。安全保障関連法に基づき、稲田朋美防衛相が行動命令を下した。施設科主体の350人規模の派遣部隊のうち、第5普通科連隊中心の警備部隊約60人が新任務を主に担う。
国会やメディアでは「未知の領域」などと、リスク論がかまびすしい。その多くが安保関連法反対、新任務反対の立場から唱えられている。隊員の安全を心配しているようでも本物とは思えない。
集団的自衛権の行使容認へ憲法解釈を変更したときも、安保関連法案の審議中もそうだった。災害派遣以外は自衛隊に批判的か、軽視してきた左翼・リベラル陣営から隊員を心配する声が起こった。
「おためごかし」というほかない。安保関連法を敵視するばかりに、リスク論を連呼しているのだろう。
駆け付け警護は国連や非政府組織(NGO)の職員らが危難に陥ったとき、救いの手を差し伸べる任務だ。危険な地だから自衛隊が派遣されている。部隊の選択肢に駆け付け警護を含むのは人道上当たり前だ。
確かにリスクは高まる。しかし、だからまかりならぬというのでは、非人道的すぎる。日本と自衛隊の名誉を顧みない恥ずかしい発想でもある。
そもそも自衛隊は、尖閣諸島をはじめとする領土、領海、領空を守り抜く戦いに備えている。日本は安全地帯で、PKOばかりが危ないと思っているなら、能天気すぎる。
もちろん、駆け付け警護に割ける兵員の数や装備には限界がある。無謀な行動をとることはない。現地情勢を踏まえ、実施の可否を判断することになる。
幾つかのPKOやイラク派遣、ルワンダ難民のためのザイール(当時)への派遣では、先の大戦で力戦奮闘した日本軍に関する記憶、イメージが現地にあった。自衛隊と重ねられ、派遣部隊を守った面があった。
政治家やメディアがリスクばかりを論じていては、かえって危うい。決して友好的とはいえない日本の周辺国の政府や軍部、世界のテロ勢力などへ「日本与(くみ)し易(やす)し」「自衛隊へ手出しをしてもいい」というシグナルを発することになってしまう。
日本人も自衛隊も侮られ、先達が命がけで築いてくれた「強い日本軍」に重なる印象という“財産”を削ってしまう。日本防衛上も国際貢献上もマイナスとなる愚かな議論である。
石原慎太郎元東京都知事は本紙で、自衛隊が現場へ十分な麻酔薬を携行できていない態勢にあると指摘した。必要なのは、このような「強い自衛隊」をつくる議論と早急な対応だ。任務遂行の態勢をいかにとるか。その議論こそ抑止力を高め、平和を保つ方向へ働く。(論説委員)
厚生労働省は国連平和維持活動(PKO)派遣の自衛隊員へのモルヒネ携帯を認めよ。
2016.11.21 08:00更新
【石原慎太郎 日本よ】
「モルヒネ」すら携帯できぬ衛生兵 気の毒な日本の自衛隊
http://www.sankei.com/column/news/161121/clm1611210004-n1.html
私が長らく住んでいた逗子市はごく小さな町でひと頃タクシーの数も僅かなもので、そのせいか運転手はほとんど高齢者ばかりだったが、ある時珍しくごく若い運転手に乗り合わせた。私が訳を尋ねたら、実は彼は以前習志野の空挺(くうてい)隊の隊員だったが、かつて北富士での大演習の際パラシュートで降下した時運悪く着地地点が突出した岩で足を骨折してしまい、その場での応急の手当てが間にあわず身体が不自由となり退官して今は仕方なしにこんな仕事をしていますという。これは実は極めて重大かつ象徴的な挿話で日本の自衛隊の置かれた危険かつ不運な立場を表象していると思われる。私の主治医の佐々木医師はかつては首都圏随一の救急病院を仕立てた院長で救急治療の権威だが、彼の知見では日本の自衛隊の医療体制は極めてお粗末なものでその象徴的事例として自衛隊の衛生兵はなぜかモルヒネを携帯していない。こんな事例は世界中のどの国の軍隊でも在り得ぬことで、件(くだん)の元自衛官の悲惨な末路がそれを証していると思われる。
ベトナム戦争を題材にした映画でもよく見られるように、アメリカの軍では衛生兵どころか普通の兵隊までが戦場ではモルヒネを常時携帯しているようで、敵の地雷を踏んで片足がふきとばされた仲間に軍服の上からいきなりモルヒネを注射してしまい暫時苦痛とショックを抑えてヘリで野戦病院に搬送する。
それがこの現代で戦に臨む軍隊の最低限だろうが、この動乱の時代に集団的自衛権を認め同じ価値観を抱く友国と共同の作戦に臨まざるを得まいわが国の自衛隊が戦場での最低限の医療の保証もなしに現地に赴かざる得ないという実情を隊員やその家族国民全体にどう釈明できるというのだろうか。
自衛隊の衛生兵が常時モルヒネを携帯できない訳は厚生労働省の縦割り行政の悪弊のせいでモルヒネという強度な麻薬を医師以外の民間人には携帯させぬという制約によるものだ。自衛隊の軍医までが戦闘の第一線に同行する訳はない。政府は近々の政情の極めて不穏な南スーダンに集団的自衛権にのっとって自衛隊を派遣するようだがああした異常な状況下にある国でもしも一人でも自衛隊員に戦死者が出たならば世論は沸騰し自衛隊そのものの存続に支障をきたしかねまい。
そうした懸念の中で私が思い出すのは私がかつて自民党の外交調査会会長を務めていた時カンボジアでの初の選挙の管理指導に赴いていた民間隊員の一人がポルポト派のテロに遭い死亡し、急遽(きゅうきょ)対策会議が開かれた際に出席した外務省の役人がまず事実の説明報告の際に、『いや、これが民間人で良かったですが、これが正式の自衛隊員だったらえらいことでした』とぬけぬけと発言し私が激怒したものだった。
しかしそれは案外政府の本音ともいえそうだ。これでもし南スーダンなり他のどこかでの集団安保のための作戦行動の中で派遣されている自衛隊に戦死者が出たならばせっかくの集団的自衛の体制は大きく毀損(きそん)されかねまい。それを防ぐためにもモルヒネの不携帯も含めて、総体的に野ざらしに近い状態に置かれている日本の国軍のより安全の確保のためにすべき努力を速やかに講じることこそが不安定極まる今日の世界の中で日本の孤立を防ぐために絶対に必要と思われる。
第一に、今の自衛隊に欠けている交戦規定の設立が肝要に違いはない。かつて紅海の出口のソマリアの海域に出没するに悪質な海賊制圧と管理を請われて日本の海上自衛隊が出動した際野党のある議員がこれを違法と非難しその監視のためと焚(た)き付けて一部の民間人たちがピースボートなるものをしたてて現地に赴いたのはいいが、現地での余りの危険による不安に駆られ厚かましくも彼等自らが非難している自衛隊に保護を求めてきたものだった。
困惑した艦長が本省に相談したらなんとその返事が、交戦規定の無いままに『警察官の職務遂行規定に倣って、禁錮五十日に相当する相手の行為に対しては発動せよ』との返答だったそうな。どこの国の軍隊が警察を見習って戦闘しなくてはならぬという滑稽に晒(さら)されながら戦うことがあるものだろうか。因(ちな)みにかつて、自衛隊には確たる交戦規定がないのでこれをすみやかに作成してほしいと建言した当時の統幕議長は時の防衛庁長官金丸信によって文民統制違反として更迭されてしまったものだった。
こうした世界に例を見ない条件下で場合によっては命がけでの行動を義務づけられている我が国軍の不安をいかに取り除いて彼等に国家の名誉を負託するかを熟慮するかは国民の義務に他なるまいと思うのだが。
駆けつけ警護付与命令 防衛省 官邸HPで新任務解説 2016年11月19日
稲田防衛相は2016年11月18日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊部隊に、安全保障関連法で可能となった「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防護」の新任務を与える命令を出した。新任務を巡っては、現地の治安情勢の流動化もあり、国民の懸念が根強い。首相官邸ホームページ(HP)に、新任務についての特集ページを開設、懸念を払拭していきたい考えだ。
新任務は、2016年11月20日から順次南スーダンに出発する、陸自第9師団(青森市)が中心の第11次隊約350人に与えられ、2016年12月12日から実施可能となる。離れた場所にいる国連職員らが襲われた場合、要請があれば武器を持って救援にあたることができるほか、宿営地が襲われた場合、他国軍と協力して防護できる。
政府は新任務について、極めて限定的な場面でのみ運用する方針だ。活動範囲は、治安が比較的安定している首都ジュバとその周辺に限定。部隊の行動が妥当であることを検証できるよう、隊員の行動を映像で記録する装着型小型カメラも配備する。
2016年11月18日に開設した特集ページでは、南スーダンに自衛隊を派遣する意義や新任務の具体的内容、付与の必要性を動画や写真、イラスト付きで解説。隊員のリスクが高まるとの指摘には、「安全を確保しつつ、対応できる範囲内で行うものだ」とした。稲田防衛相は2016年11月18日の記者会見で、「記者会見や国会審議、テレビ出演などの際に(新任務の意義を)説明していきたい」と述べ、今後も国民への説明を尽くす考えを示した。
首相官邸
自衛隊の新任務「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」@
(最終更新日:平成28年11月18日)
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/keigo.html
自衛隊が行う活動に「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」が追加されました
国連は、外国で治安に不安が生じ、その加盟国一国では治安を確保し国民の安全を守ることができないなどの場合、PKO活動(Peacekeeping Operations:平和維持活動)を行います。日本は、国連から要請があり、憲法の許す中で、このPKO活動のために、自衛隊を派遣することがあります。このことを法的に担保するために、平成4年に国際平和協力法が国会で成立しています。
•「駆け付け警護」は、自衛隊が外国でPKO活動をしている場合に、自衛隊の近くで活動するNGOなどが暴徒などに襲撃されたときに、襲撃されたNGOなどの緊急の要請を受け、自衛隊が駆け付けてその保護にあたるものです。無論、自衛隊がPKOに参加するのは、国際平和協力法で決められたPKOの参加5原則をすべて満たしている場合に限られます。この点に関しては、今回の任務追加によって、いささかの変更もありません。
駆け付け警護の説明図
•「宿営地の共同防護」は、自衛隊と他国の部隊の共同宿営地が暴徒などによる襲撃を受けた場合、一緒にいる自衛隊と他国の部隊が共に危険と判断し、連携して防護活動を行うものです。
宿泊地の共同防護の説明図(従来と改正後の比較)
国連の要請を受け、国際平和協力法で決められているPKOの参加5原則をいずれも満たす場合、自衛隊を派遣することがあります。
PKO参加5原則
1.紛争当事者の間で停戦の合意が成立していること。
2.国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該国連平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
3.当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的な立場を厳守すること。
4.上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができること。
5.武器使用は要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能。 ※下線部が平和安全法制により追加された部分です。
なぜ任務を追加することになったのか、お答えします
Q1.今回新たに追加される任務を過去に行ったことはないですか?従来の法的な仕組みで不都合はあるのですか?
A.過去、自衛隊が、東ティモールやザイール(当時。現在のコンゴ民主共和国)に派遣されていた際に、日本人が経営するレストランが所在する市内で暴徒による大規模な暴動の発生や日本人が乗ったNGOの車両への難民による襲撃などの不測の事態が発生し、邦人から保護を要請されたことがありました。
しかしながら、当時、自衛隊は「駆け付け警護」の任務が与えられていなかったため、保護に当たるための十分な訓練を受けることができておらず、法律上の任務や権限が限定されている中で対応せざるを得ませんでした。それでも現場に駆け付け、邦人を安全な場所まで輸送するなど、邦人の保護のために全力を尽くしてきました。
こうした過去の事例にもみられるように、実際の現場においては、緊急の保護要請を受けた際に、自衛隊が近くにいて助ける能力があるにもかかわらず、何もせずにこれらの邦人などが危険に晒されてしまうことも考えられます。この事態を放っておいて良いというわけにはいきません。これまでは、現場の自衛隊員は、法律上の任務や権限が限定されていたため、十分な訓練を受けることができない中、可能な範囲で対応せざるを得ず、こうした法律上の制約によるしわ寄せを、現場の自衛隊員が押し付けられる形となっていました。
こうした過去の事例を踏まえ、今般のPKO法改正により、しっかりとした任務と必要な権限をきちんと追加し、事前に十分な訓練を行うことができるよう、法的な枠組みが整えられました。
Q2.南スーダンで、自衛隊は、いつからPKOに参加しているのですか?
A.当時の野田内閣において、平成23年11月から部隊の調整等を行う司令部要員を、平成24年1月からは道路や避難民向けの施設などを整備する施設部隊を派遣しています。これは、その前の平成23年7月に、約20年に亘るスーダンとの武力紛争を経て南北間の和平が達成され、独立を果たした南スーダンを支援するため、同月に国連安全保障理事会決議第1996号に基づき設立された国際連合南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に対し、国連の要請を受け、自衛隊の派遣が決定されたものです。
我が国の施設部隊は、南スーダンの首都ジュバ及びその周辺において、道路整備や避難民向けの施設構築を行うなど、意義のある活動を行っており、南スーダン政府や国連をはじめ、国際社会から高い評価を得ています。
平成28年10月31日から11月1日に柴山内閣総理大臣補佐官が南スーダンを訪問した際には、キール大統領から、派遣施設隊のインフラ整備を始めとする日本のこれまでの協力に対する謝意が示されるとともに、今後の変わらぬ貢献を歓迎する旨の発言がありました。また、ロイUNMISS事務総長特別代表からは、派遣施設隊の活動について高い評価と心からの感謝の意が伝えられた上で、同施設隊の活動が当面継続することについて、歓迎の意が表明されました。
Q3.なぜ、南スーダンに自衛隊を派遣し続ける必要があるのですか?
A.南スーダンは、最も新しい国連加盟国であり、独立から間もない、世界で一番若い国です。独立から5年経過した今、国内における政治的混乱の解決が南スーダンの国造り支援の大きな課題となっていますが、南スーダンは、自らの力のみでは、平和と安定を確保することができていない状況です。
南スーダンの治安情勢は厳しく、首都ジュバも、現在は比較的落ち着いているものの、本年7月に大規模な武力衝突が発生するなど、今後の治安情勢は楽観できない状況です。
だからこそ、国連による平和維持活動が行われており、世界から多くの国々が部隊等を派遣しています。アフリカの国々だけではなく、
@ 国連安全保障理事会常任理事国の米国、英国、ロシア、中国
A 地域別には、 •アジアから、韓国、ベトナム、インドネシア、モンゴル、ネパール、キルギス、タイ、ミャンマー、ブータン
•大洋州から、豪州、ニュージーランド、フィジー、パプア・ニューギニア、サモア
•北米から、カナダ
•南米から、ブラジル、ペルー、アルゼンチン
•欧州から、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、スイス、ポーランド
に加え、自らも困難な状況にあるウクライナも部隊・要員を派遣しており、その数は60ヶ国を超えています。
これらの国々は南スーダンの平和と安定のために力を合わせており、国連は、本年8月、安全保障理事会決議第2304号により、活動期間を延長すると共に、新たに4千人の地域保護部隊を創設し、増派を決めるなど、国際社会は力を合わせて取組みを強化しています。
そうしたことから、我が国も、国際社会の責任ある一員として、こうした国際社会の努力に貢献するため、自衛隊の派遣期間を延長することとしました。
Q4.南スーダンへのPKO派遣が、日本にとってどんな意義やプラスをもたらすのですか?
A.自衛隊は、20年以上にわたる国際平和協力の経験の中で、カンボジアや東ティモールの国造りを支援するために部隊・要員を派遣し、国連や国際社会から高い評価を得てきました。今回、国造りを始めた南スーダンへ自衛隊を派遣し、我が国の得意分野である施設能力を用いた先進国型の貢献を行うことは大変意義のあることであり、アフリカの平和と安定にも役立つものです。
南スーダンは6か国と国境を接し、アフリカ大陸を東西南北に結ぶ、極めて重要な位置にあります。南スーダンの平和と安定は、南スーダン一国のみならず、周辺諸国の平和と安定、ひいてはアフリカ全体の平和と安定、「希望」につながるものです。また、南スーダンが更に不安定化すれば、難民が増大するおそれもありますし、また、同国の国境管理能力が向上していかなければ、アフリカ、ひいては我が国を含む全世界に対するテロの脅威が増すおそれもあります。
今や、いかなる国も、一国だけでは自国の平和を守れません。国際社会の平和と我が国の平和は、分かち難いものです。
南スーダンの平和と安定に日本が貢献することによって、アフリカや先進国も含む国際社会から日本に対する信頼が高まることになりますが、それだけではありません。我が国防衛のための重要な柱の一つである域内外のパートナーとの協力関係も深まり、ひいては日本の平和と安定にもプラスの効果をもたらすことになります。自衛隊派遣は、南スーダン政府や国連はもとより、国際社会から高い評価を受けており、大きな意義があるものです。
Q5.派遣を始めて既に5年が経過していますが、自衛隊がこれまでに仕上げたものは何ですか? それらは南スーダンの国民にどのように役立っているのですか?
A.我が国は、平成24年1月から南スーダンに部隊を派遣し、その中で道路整備や避難民向けの施設をつくるなどインフラ整備により人的貢献を続けてきました。
具体的には、陸上自衛隊の派遣施設隊約350名が、国連からの要請に基づき、ジュバ市内の国連施設内外で道路整備や避難民向けの施設の構築を行っており、厳しい治安情勢の下ではありますが、安全を確保しつつ、人道支援実施の環境作りを下支えしています。
Q6.今回、なぜ、「駆け付け警護」を新任務として追加しなければならないのですか? 南スーダンで危険度が増したということですか?
A.南スーダンにおいては、UNMISSなどの国際機関やNGOの職員などが活動を行っています。これらの活動の関係者が危険に遭遇した場合に、これらの人から、自衛隊の部隊が救助の要請を受ける場合も考えられます。このような要請に応えることは、要請された人を危害から守るためにも、また活動関係者との一層の協力関係を築き、我が国の活動を円滑に進めていくためにも必要です。こうした状況を踏まえ、新任務追加の要否について、政府として、現地の情勢や訓練の進捗状況等を慎重に見極めながら、総合的に検討してきた結果、「駆け付け警護」の任務を追加することとしました。
自衛隊が活動している南スーダンのジュバ市内は、現在比較的落ち着いており、自衛隊が安全を確保した上で、意義ある活動を行える状況です。
Q7.また、「駆け付け警護」により、派遣される隊員のリスクは増すことにならないのですか?
A.任務が増えた分だけリスクが増すということではありません。
「駆け付け警護」は、PKO参加5原則がすべて満たされ、かつ、その国から受入れの同意が安定的に維持されている場合に限られます。また、派遣される自衛隊は道路や避難民向けの施設の整備などを行う施設部隊です。その人員・装備などに応じ、あくまでも、安全を確保しつつ、対応できる範囲内で行うものです。
自衛隊の活動は常にリスクを伴うものですが、しっかりとした任務と権限を付与し、事前に十分な訓練と準備を行った上で、「駆け付け警護」を適切な場合に行う体制を整えることは、自衛隊員のリスクの低減にも繋がることになると考えています。
Q8.危険度が増していなければ、「駆け付け警護」の任務の追加は不要ではないのですか?
A.南スーダンには、現在も、少数ながらも邦人が滞在しており、過去に他国で発生した事例や現地の厳しい治安情勢を踏まえると、これらの邦人に不測の事態が生じる可能性は皆無ではありません。
今回の新任務の追加は、こうした現地における具体的な状況に基づき決定されたものであり、これにより、万が一の際に、邦人を含む活動関係者を保護する上で、現場の部隊が迷いなく任務に当たることができることとなり、これら活動関係者の安全に資するだけではなく、自衛隊のリスクの低減にも繋がることとなると考えています。
自衛隊員が不測の事態の下で、邦人保護などの任務を遂行できるためには、十分な訓練と準備が不可欠です。新任務が追加されなければ、こうした訓練や準備もできませんでした。
Q9.今回の任務の追加は、平和安全法制が成立したことによる実績づくりではないですか?
A.違います。
今回、新しく追加された任務は、平和安全法制の成立・施行に伴い、自動的に決定されたものではなく、南スーダンの現地情勢やこれまでPKOのために自衛隊を派遣した東ティモールやザイール(当時。現在のコンゴ民主共和国)における過去の事例を含む様々な要素を慎重に検討した結果として、今回新たに、南スーダンにおいて具体的な必要性があると判断し決定されたものです。
Q10.「駆け付け警護」が実際に発動される場合には、誰が、何を基準に、どのような手続きで判断を下すのですか?
A.「駆け付け警護」は、あくまで活動関係者の近くにいる施設部隊が、現地治安当局や安全確保を担う国連PKO等の部隊よりも、速やかに対応できるといった場合に、この活動関係者の緊急の要請に対応して、その現場に駆け付け、当該活動関係者の生命及び身体を保護するものです。
その上で、実際に「駆け付け警護」を行うか否かは、現地治安当局や国連PKOの部隊からの情報を得て、部隊長により個別具体的に判断されることとなります。
Q11.防衛目的に出るにせよ、万が一、任務を遂行し、自衛隊の方から武器を使用したら、相手方は自分を守るためにそれを上回る反撃をし、エスカレートし、「衝突」が「紛争」になってしまうのではないのですか?
A.自衛隊による武器の使用は、暴徒や武装勢力などに対し、まずは相手方と粘り強く交渉するなどし、真に必要な場合には警告用に行われるものです。また、相手に危害を与える射撃が許されるのは、そうした行為では収まらず正当防衛又は緊急避難の場合に限られており、隊員はこれを遵守して活動を行っています。従って紛争を起こすような武器の使用は認められていません。
Q12.自衛隊員に負傷や犠牲を出さないために、どのような工夫や措置を講ずるのですか?
A.自衛隊員の任務の実施には必ずリスクがありますが、法律やそのルールの中に、安全を確保する仕組みがあります。例えば、活動地域の情勢について十分な情報収集を行うこと、隊員の安全確保に十分な装備を携行すること、派遣前に適切な教育訓練を行うこと、地域住民等との良好な関係構築・維持に努めること、などです。
これらにより、隊員のリスクを極力少なくして隊員を派遣します。その際は、計画等をしっかりと策定するなど、様々な対応をとることによって、隊員の安全対策には全力を挙げています。十全な準備と訓練が不可欠です。
また、PKO参加5原則が維持されていても、要員の安全を確保しつつ、意義のある活動を行うことが困難と判断される場合は、我が国の判断で部隊を撤収します。
平和安全法制により、自衛隊は、「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」を実施できるようになりました。これらの新任務の追加に関する政府の考え方については、「新任務付与に関する基本的な考え方」(平成28年11月15日。内閣官房・内閣府・外務省・防衛省発表)をご覧ください。
「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」を安全に適切に遂行するためには、あらゆる面で万全の態勢を整えるため、教育訓練をはじめ、時間をかけて周到な準備をしなければなりません。
自衛隊は、新任務の追加に向けた準備を進め、平成28年8月以降、「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」の訓練をしっかりと積んでおり、派遣部隊の練度は、新たな任務に十分堪えうるレベルに達しています。
また、現地情勢の把握や現地政府の受入れ同意の確認も必要です。
平成28年10月8日には稲田防衛大臣、同月31日から11月1日までの間には柴山内閣総理大臣補佐官が、それぞれ南スーダン共和国を訪問し、我が国派遣施設隊の活動状況を確認するとともに、キール大統領、タバン・デン第一副大統領、ヤウヤウ国防副大臣等の南スーダン政府要人やロイ国際連合南スーダン共和国ミッション(UNMISS)事務総長特別代表と会談し、現地の状況を確認しました。南スーダン政府要人及びロイ特別代表からは我が国派遣施設隊の活動への謝意と今後の活動への期待の表明がありました。
新任務の追加に向けた訓練の状況や現地の情勢などを踏まえて総合的に検討した結果、政府は、今後UNMISSに派遣される第11次隊から、「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」を可能とし、平成28年11月15日に、国家安全保障会議(九大臣会合)の審議・決定を経たのち、実施のための「南スーダン国際平和協力業務実施計画」を変更する閣議決定をしました。
駆けつけ警護 安全確保しつつ新任務を担え
2016年11月16日 06時10分
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20161115-OYT1T50117.html
近傍にいる民間人に救援を要請された際、助ける能力があっても、法律の制約で見捨てるしかない。そんな不条理を解消する意義は大きい。
政府が、南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊部隊に、安全保障関連法に基づく「駆けつけ警護」任務を付与することを決定した。
対象となる部隊は20日に日本を出発し、12月12日に現地で活動を開始する予定だ。「宿営地の共同防護」の任務も可能になる。
駆けつけ警護は、国連や民間活動団体(NGO)の職員らが武装集団などに襲われた際、救援に向かう任務である。従来は、正当防衛・緊急避難でしか武器が使用できないという過剰な法律上の制約から、実施できなかった。
1992年に自衛隊がPKOに参加して以来、人道上の最低限の国際的責務さえ果たせない不正常な状況がようやく是正される。
過去には、東ティモールなどで邦人から救援要請された際、人員の「輸送」任務を援用し、安全な場所に避難させるという、法律上、ぎりぎりの手段を取ってきた。責任を負わされる現場の司令官らの精神的な負担は大きかった。
今後は、正式な任務と権限が認められ、事前に訓練を重ねることもできる。重要な前進である。
疑問なのは、野党が、こうした実情を踏まえず、新任務は危険だと批判ばかりしていることだ。
南スーダンの治安情勢が楽観できないのは事実だが、陸自が活動する首都ジュバ周辺は現在、比較的平穏な状況が続いている。
駆けつけ警護は、あくまで一時的、応急的な任務だ。施設部隊が主体の陸自が救援要請されるケースは、近くに他国の歩兵部隊がいないなど、極めて限られる。陸自の能力上も、武力衝突の現場に駆けつけることは想定されない。
無論、新たな任務には、危険が伴う。そのリスクを最小限にする不断の努力が欠かせない。
政府は、活動範囲をジュバとその周辺に限定した。安全を確保しつつ有意義な活動を行うのが困難な情勢になれば、部隊を撤収する、と実施計画に明記した。医務官も3人から4人に増やす。いずれも妥当な措置だろう。
防衛省や陸自部隊は、PKO司令部や他国部隊と密接に情報を交換するなど、治安情勢に従来以上に気を配る必要がある。
現地で得た情報や教訓を踏まえて、様々なケースを想定した陸自の訓練や装備を中長期的に充実させることも大切となろう。
「駆けつけ警護」を閣議決定、自衛隊に新任務
2016年11月15日 21時34分
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20161115-OYT1T50030.html
政府は15日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣する陸上自衛隊に対し、安全保障関連法に基づく新任務「駆けつけ警護」を可能にする実施計画を閣議決定した。
「宿営地の共同防護」についても、実施できるようにする。自衛隊が新任務を担うのは初めてで、3月に施行された安保関連法を本格運用する第一歩となる。政府は運用方針「新任務付与に関する基本的な考え方」を策定し、安全が確保できない場合に部隊を撤収させることなども決めた。国際貢献活動の拡大と自衛隊員のリスク軽減の両立を図る考えだ。
駆けつけ警護は、自衛隊員が離れた場所にいる国連や民間活動団体(NGO)職員らが武装集団に襲われた場合の救援にあたる。任務遂行に必要な武器使用を認める。また、宿営地の共同防護では、宿営地が暴徒などに襲われた場合に、他国軍と協力して防護にあたる。
運用方針は、駆けつけ警護について、「極めて限定的な場面」で実施すると明確にした。活動範囲を治安情勢が比較的落ち着いている首都ジュバとその周辺地域に限定した。
具体的な活動の指針として、現場付近に「国連部隊が存在しない」といった場面に限り、「緊急の要請を受け、人道性及び緊急性に鑑み、応急的かつ一時的な措置としてその能力の範囲内で行う」と規定した。「他国の軍人」への駆けつけ警護は「想定されない」と明記した。また、宿営地の共同防護については「厳しい治安の下で、自己の安全を高めるためのもの」と意義づけた。
PKO参加5原則が満たされている場合でも、安全確保が困難であれば、部隊を撤収することについて、実施計画に明記した。5原則で義務づけられた現地政府の同意について、国連がPKOの内容や期間を変更すれば、同意を再確認する。
安倍首相は15日の参院環太平洋経済連携協定(TPP)特別委員会で、「自衛隊の安全を確保し、意義ある活動が困難であると判断する場合、撤収を躊躇することはない」と述べ、自衛隊員のリスク軽減に努める考えを強調した。
閣議決定を受け、稲田防衛相は18日、南スーダンで道路整備などを行う施設部隊の第11次隊に新任務を命令する。第11次隊は陸自第9師団(青森市)を中心とする約350人で、20日に出発する。新任務は12月12日から実施可能になる。
新任務に関する基本的な考え方のポイント
▽「駆けつけ警護」は極めて限定的な場面で、緊急の要請を受け、能力の範囲内で実施
▽他国の軍人への「駆けつけ警護」は想定せず
▽活動地域を「ジュバ及びその周辺地域」に限定
▽「宿営地の共同防護」は自己の安全を高める。自衛隊のリスクを低減
▽PKO参加5原則が満たされる場合でも、安全確保や有意義な活動の実施が困難な場合は、自衛隊部隊を撤収
新任務リスク減図る 駆けつけ警護 緊急時のみ・他国軍は対象外
2016年11月16日
政府は安全保障関連法で可能になった新任務「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防護」を自衛隊が行うにあたり、自衛隊員のリスクを低減するため周到に準備を進めてきた。日本が国連平和維持活動(PKO)に参加してから4半世紀近くを経て、懸案がようやく解消されるが、課題はなお残っている。
■しわ寄せ
「長年の自衛隊の活動で、法律がなく訓練もしていない中、(現場の)自衛隊員にしわ寄せがいっていた」
稲田防衛相は2016年11月15日、防衛省で記者団に対し、新任務の意義を強調した。
「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防護」の新任務は、PKOの現場で必要性が長年、指摘されてきた。武装集団に襲われた民間人から要請があれば助け、襲撃を受けた宿営地を他国軍とともに守るー。各国から見れば当然の任務が、自衛隊にはできなかった。十分な訓練をしないまま、法に反しないよう「輸送」名目で実質的な民間人の警護にあたる「苦肉の策」で対応することもあった。
「積極的平和主義」を掲げる安倍政権は、安全保障関連法でこうした任務を可能にした。南スーダンのPKOに参加する部隊に新任務を担わせる方針は「既定路線」だった。
しかし、国会審議では、PKO参加5原則を満たしているかどうかや戦闘の定義など法律論が焦点となってしまい、国民の理解を得ることが課題となっていた。
「国民に分かりやすい説明をするように」
安倍首相は国家安全保障会議(NSC)閣僚会合などで再三指示を飛ばしてきた。政府が腐心するのが、自衛隊のリスクの最小化だ。
NSCの事務局・国家安全保障局を中心に検討を重ね、活動範囲を首都ジュバとその周辺に限ることなどを決定した。実施計画には、PKO参加5原則が満たされていても安全が確保出来なければ撤収する項目を設けた。PKOの実施計画に「撤収」の規定を明文化したのは初めてのことだ。
稲田氏は2016年11月15日の衆院安全保障委員会で、不測の事態に備え、全自衛隊員に米陸軍と同様の救急品を持たせる考えを明らかにした。
背景には、南スーダン各地で依然として衝突が頻発し、治安情勢が流動的なことがある。政府は、ジュバ周辺について「比較的落ち着いている」と説明しているが、今後も情勢を慎重に見極める考えだ。
■国連報告書
自衛隊員のリスク低減を図る政府の説明に水を差したのが、国連が発表した南スーダン情勢の調査報告書だった。
潘基文事務総長の所見として、現地情勢について「南スーダンがカオス(混沌)に陥るという極めて現実的な見通しについて、強く懸念している」との記述があったためだ。
政府が国連に照会すると、国連側は「安全保障理事会が行動を取らなければ状況が深刻になるという趣旨。治安情勢の悪化が起きているのはジュバ以外」と回答したという。安倍首相は2016年11月15日の参院環太平洋経済連携協定(TPP)特別委員会で、「国連が発表する以上、正確なものを発表してほしい」と色をなして語った。
野党は批判を強めている。民進党の山井和則国会対策委員長は2016年11月15日の記者会見で、「(憲法の)平和主義が崩れ去る危険性がある」と述べ、共産党の小池書記局長は「断固糾弾し、撤回を強く要求する」と非難した。
自衛隊 武器使用に制限
「ようやく世界標準に近付いた」。政府の担当者は新任務付与の意義を強調するが、実際の運用には課題がある。
特に、「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防護」の2つの任務のうち、実施の可能性が比較的高いとされる「宿営地の共同防護」では、他国との調整が不可欠だ。
防衛省によると、一般的な共同防護は、暴徒の襲来を察知した部隊が他国部隊にも連絡。その場で協議して状況に応じた配置を決め、連携して拡声器での警告などを行い、場合によっては発砲するという。
自衛隊部隊が宿営地を構える首都ジュバのトンピン地区では、ルワンダやエチオピア、バングラデシュなど複数国の部隊が近接して駐留。地区全体はルワンダが、個々の宿営地はそれぞれの国が警備を担う。
新任務の付与後、自衛隊は他国との共同訓練にも初めて加わり、万が一の場合に備えるが、共同防護の任務が可能になっても、自衛隊員の武器使用には制約が多い。自衛隊幹部は、「訓練を通じて、自衛隊に出来ることと出来ないことを他国の軍隊に理解してもらわなければ、効果的な連携が取れない」と話す。
一方、「駆けつけ警護」では、任務の妨害を排除する目的での武器使用が認められたが、相手を負傷させる恐れのある「危害射撃」は、正当防衛と緊急避難に限定。防衛省幹部は、「実際に想定している任務遂行型の武器使用は、警告射撃と銃口を相手に向ける程度」と明かす。仮に、正当防衛を主張できる事態になっても、人に向けて実弾を撃った経験のない自衛隊員が、即座に引き金を引けるかは未知数だ。
「駆けつけ警護」と「宿営地の共同防護」の2つの任務を巡り、自衛隊は2016年8月下旬から2か月にわたり、派遣される約350人を対象に、様々なパターンを想定した訓練を実施してきた。今後も、訓練を繰り返して習熟度を上げていく方針で、防衛省では「制約がある中で、新たな国際貢献のあり方を模索していくしかない」としている。
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