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東京新聞社説 2017年1月24日
安倍首相答弁 野党批判の度が過ぎる
国会という言論の府で一党の党首が他党を批判するのは当然だろう。しかし、安倍晋三自民党総裁の場合、度が過ぎはしないか。安倍氏は同時に行政府の長だ。野党批判にもおのずから限度がある。
きのう衆院で始まった各党代表質問。冒頭、質問に立ったのは民進党の野田佳彦幹事長だった。
現職首相と前職首相との「大将戦」である。野田氏が「大局的な視野から質問する」と述べたように、本来なら「国の在り方」をめぐる骨太の議論が期待されるところだ。しかし、後味の悪さが残ったのは、首相の野党批判と無縁ではなかろう。
野田氏は成長重視の経済政策の行き詰まりを指摘し、二〇一七年度予算案について「メリハリに欠け、ニーズにも的確に対応した予算とは言えない」として、予算案を撤回して「人への投資」に重点的に予算配分することを提案した。
これに対し、首相は、安倍内閣では旧民主党政権時代と比べて国と地方の税収が二十二兆円増加したことや、毎年一兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びを五千億円以下に抑えたことなどを列挙し、「私たちは言葉だけではなく、結果を出している」と強調した。
保育士の処遇についても「民主党政権では三年三カ月、何も行わず給与はむしろ引き下げられた。安倍内閣は言葉を重ねるだけでなく結果で応えていく」と述べた。
現衆院議員は任期四年の半分が過ぎ、年内の衆院解散の可能性が取り沙汰される政治状況だ。政権与党の党首が選挙に勝つために、野党第一党への批判に力を入れる意図は理解できなくもない。
しかし、首相は政権与党の党首であると同時に、権力を行使する行政府の長でもある。立法府に対する行き過ぎた批判は、三権分立の大原則を逸脱しかねない。
首相は先週の施政方針演説でも民進党を念頭に「ただ批判に明け暮れ、国会の中でプラカードを掲げても何も生まれない」と述べ、民進党は抗議した。
自民党側も理解を示し、衆院議院運営委員会理事会では「行政府の長である首相が立法府を評価するのは適切ではない」と政府に伝えることを申し合わせた、という。当然である。
首相はこれまでも国会の場で野党批判を繰り返してきた。安倍一強の「おごり」にほかならない。国会が批判合戦に明け暮れず、建設的な議論の場となるよう、首相には猛省を、野党側には奮起を促したい。
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