1. 2017年8月04日 16:13:44 : 0vTNXkKjFI : DwACrSJlfig[1]
続き
■ボーナスをもっと要求せよ
だとすれば、賃金を上げる手だてはないのだろうか。確かに賃下げを労働者が嫌う傾向はあるが、それは毎月の給料支払いに限られ、ボーナスには当てはまらない。月給は安定的に維持する。一方で人手不足に対処すべく労働者のさらなる頑張りを期待するなら、まずは一時的にせよ、ボーナス増加で報いるのが先決だ。反対に今後業績が悪化し、人件費を調整する必要が生じた場合は減らすことを認めるなど、ボーナスにもっとメリハリをつけていい。
その交渉過程を通じ、労働市場の需給変動に対し年収を調整できる仕組みを整えるのだ。企業別組合が力を持っていた時代には、労使合意を基にボーナスはもっと柔軟に支払われていた。それが日本の失業率を低水準にとどめたという指摘もある。
日本経済新聞が行った2017年夏のボーナス調査では、人手不足が深刻な非製造業において、前年比5.5%増で27年ぶりに5%を上回った。今冬に向け、さらなるボーナス増加を労働者は要求すべきだ。
日本の労働者は働く報酬に対し、あまりにおとなし過ぎる。賃上げは、労働市場の神の見えざる手に導かれて、自然と実現するものではない。労働者の結束による発言(ボイス)の強化が今こそ問われている。
(2017年7月25日 記)
玄田 有史 GENDA Yuji
nippon.com 編集企画委員。東京大学社会科学研究所教授。1964年生まれ。1988年東京大学経済学部卒業。経済学博士。ハーバード大学、オックスフォード大学各客員研究員、学習院大学教授等を経て、2007年から同職。著書に『危機と雇用』(岩波書店、2015年、沖永賞)、『孤立無業(SNEP)』(日本経済新聞出版社、2013年)、『ジョブ・クリエイション』(日本経済新聞社、2004年、エコノミスト賞)、『仕事のなかの曖昧な不安』(中央公論新社、2001年、サントリー学芸賞)など。