117. 中川隆[-6414] koaQ7Jey 2017年9月27日 19:17:59 : b5JdkWvGxs : DbsSfawrpEw[-8523]
機械式駐車場はマンションスラム化の要因になる「金食い虫」だ
9/27(水) 6:00配信 ダイヤモンド・オンライン
● 機械式駐車場は ものすごい“金食い虫”
平置き駐車場が全戸分確保されているマンションにお住まいのラッキーな方には無用の心配だが、それほど恵まれた環境のマンションは多くはない。何度か紹介している「国土交通省・マンション総合調査」(平成25年度)によれば、都市圏では40%ほどのマンションに機械式駐車場がある。
平成7年以降に作られたマンションに限れば、全国で60%近くのマンションに機械式駐車場がある。マンション購入時に、十数年ごとに行う大規模修繕工事や機械式駐車場、エレベーターの耐用年数経過後の入れ替えについて考慮する人はまずいない。
しかし機械式駐車場は、『中古マンション「買ってはいけない」物件の見分け方』で警告させていただいた、マンションスラム化の無視できない要因となる“金食い虫”なのだ。
● 高齢化と新世代のクルマ離れ傾向が 安易な資金計画に致命傷を与える
機械式駐車場のコストは、毎年かかる維持費と、耐用年数に達した時の入れ替えからなる。維持費は1台あたり年に1万〜1万2000円で、20台分あれば、いくら空きがあっても毎年20万〜24万円かかる。さらに25〜30年目には耐用年数が過ぎ、新品に交換するなら1パレットあたり100万円ほどが見込まれる。20台分なら2000万円だ。一概には言えないが、20戸規模のマンションの1回分の機械式駐車場以外の大規模修繕工事と同じような金額になる。
1回目の大規模修繕工事は、エレベーターや機械式駐車場は含まれない。それでも最初に設定されていた積立額では間に合わなくなって、一時金や積立金の値上げという事態を招きがちだ。
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しかし本当に恐ろしいのは2〜3回目の大規模修繕工事時期なのだ。2回目以降には、給排水管の更新や、エレベーター交換、機械式駐車場の交換などのタイミングが重なってやってくるからだ。機械式駐車場をその先も維持するためには、交換しか手はなく、そのためには再びの一時金徴収、さらなる積立金値上げ、借り入れなどが必要となってくる。
満車でフル稼働していれば、その合意形成も不可能ではないだろう。しかし現在、都市部のマンションを中心に機械式駐車場の空きが目立っている。運転をあきらめクルマを手放す高齢者が増えているだけでなく、若い世代のクルマ離れも進んでいるからだ。
駐車場収入の減少で、耐用年数経過後の交換はおろか、車が何台入っていようと毎年かかる維持費ですら負担になってくる。数台のために区分所有者全員が維持費や入れ替え費用を負担することに疑問の声も上がり、理事会方針が決まっても管理組合総会は紛糾するだろう。
あなたは自宅マンションの駐車場の現状を正しく理解しているだろうか?クルマを持っていようがいまいが、機械式駐車場がある限り、この問題から目をそらすわけにはいかない。
いつ耐用年数は切れるのか?空きは多くないのか?耐用年数が過ぎた時のリニューアルにマンション本体の大規模修繕と変わらない金額をかけることができるのか?どのような合意を形成できるのか?しっかり現状を把握してふさわしい解決法を発見しよう。
● 機械式駐車場にも 長期修繕計画が必要
機械式駐車場が十分稼働していて、住民の総意が耐用年数経過後も存続するなら、機械式駐車場についても建物と同様に長期修繕計画をしっかりと立てておく必要がある。現在の積立金状況と建物の大規模修繕工事の予定と予算、機械式駐車場入れ替えのタイミング、その時期にどれだけ積立金を確保できるのかが分かれば、一時金徴収や積立金値上げの要不要もハッキリする。
早ければ早いほどいいので、長期修繕計画がないなら管理会社や設計事務所に依頼しよう。既にあるなら現状に合っているか再検討してほしい。
少しでも負担を減らすために保守会社や管理会社を変えることも一案だ。完成以来、同じ会社が担当しているなら、その料金は実勢に合っていない(高すぎる)場合が多いだろう。管理組合が言いなりなら、高額部品の不要な予備的交換を勧められることもある。管理会社の関連企業や管理会社経由で決まった会社ならなおさらだ。
保守会社や管理会社に計画書提案を依頼するのはいいが、出てくる「機械式駐車場長期修繕計画」は「たたき台」に過ぎないという認識が大切だ(マンション全体の長期修繕計画にも同じことがいえる)。出てきたものは住民本位ではなく管理会社本位のものだからだ。しかしそこから、管理組合側がもう一手間を惜しまなければ、住民の負担はぐっと減ることになる。管理会社経由ではなく、直接メンテナンス会社に見積もりを依頼してみるのだ。
ググれば多くの会社が出てくるので、使用状況や設置状況や機種を伝えて、メンテナンス契約の見積もりを請求することができる。企業努力を怠らない会社なら、黙っていても「機械式駐車場長期修繕計画」の雛形やより説得力のある「定期点検報告書」をアピールしてくれるはずだ。
● どうする?30年後 入れ替え、部分入れ替え、平置き
それでは、どう考えても予算が立たない。合意を形成できない時にはどのような方法があるのだろうか。
機械式駐車場を全部、あるいは一部撤去して平置きに変えるという方法がある、現在では何種類かの工法が提案されていて、それなりに値段はかかるが、総入れ替えの比ではないし、そのあとのメンテナンス費用は基本的にかからなくなるわけだ。
シーアイピーが「管理会社の変更」と「第一回大規模修繕」をお手伝いしたマンションの実例を紹介しよう。
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このマンションは都心から通勤電車で40分、駅から歩いて15分の住宅地内に位置する30戸、築25年になる一棟型のマンションで、クルマがなければ生活できないというほどではないが、クルマのニーズは都心よりも高く20戸ほどはクルマを所有している。ただ、マンション建設当時から、背の高いクルマは軽でも入れられないこともあって、半数は近隣の駐車場と契約している。16台分ある機械式駐車場は動作の必要のない地上部は常に満車だが、下段は空きが目立つという状況がずっと続いてきた。ほとんど動作させないのにかかるメンテナンス費や、耐用年数経過後にやって来る大きな出費を考えて、できるだけ早く平置化することになっていた。
ところが最近、多くの区分所有者が借りていた近隣の月極駐車場がなくなり、車を小型車に変えても機械式駐車場に入れたいという希望が増えたので、現在ではほぼ満車の状態だ。しかし、増えた駐車場収入を加えても今の積立ペースでは、やはり機械式駐車場の交換は無理。結論は、耐用年数をギリギリ粘って最終的には平置化ということになった。
問題はまだある。一つは法的な問題だ。マンションは建設の際、自治体から駐車場附置義務が課せられている。このマンションのある地域では50%以上の駐車場確保が義務づけられている。これは数十年前に作られた条例であり、現実とはかけ離れている。しかし条例である以上、平置化したら基準数を下回り、“違法状態”になるのだ。違反に対する罰則規定はないのだが、自治体への折衝も必要となってくる。
もう一つは平面化による駐車台数の減少によって、そこに駐められなくなる人が出ることだ。不公平感を拭うために、管理規定の細則を新設するか、改変することを検討しなければならない。
ユダヤ人の知恵を伝える『旧約聖書』は「ビジョンのない民族は滅びる」と警告している。それが企業や個人に当てはまることは知られているが、マンション管理組合も例外ではない。あなたには、あなたのマンションの20年後、30年後のビジョンが見えているだろうか?マンションもまたビジョンがなければ滅びる運命にあることをお忘れなく!
(株式会社シーアイピー代表取締役・一級建築士 須藤桂一)