10. 2017年12月11日 14:49:53 : 7QlGXXlJFY : CZFTKGhqp8I[1]
売れない理由をズバリ書いてありました。
DIR
百貨店の存在意義を考える〜アウトレットモールに人が集まるワケ〜
2010年3月17日
経営コンサルティング部 土屋秀文
http://www.dir.co.jp/library/column/100317.html(全文引用)
最先端の流行モノをいち早く紹介してきた日本の百貨店。小売の王様とも呼ばれていたが、いまではすっかり元気がない。一方、アウトレットモール(※1)(以下、アウトレット)は人でいっぱいである。最大の要因はおそらく、消費者と百貨店の考えに乖離があることだろう。「買いたいモノ」と「売りたいモノ」に価格を含めてミスマッチがあるのだ。これは、富裕層から大衆層へ主力顧客層がシフトしたエアラインやホテル業界でも同様に当てはまる。格安エアラインや宿泊特化型ホテルがもてはやされているのに対して、事業環境が変化しているにもかかわらず、栄光の時代の常識に捉われた老舗はどこも苦戦している。アウトレットは消費者の安くて良いモノを買いたいという欲望を満たしている。だから、都市部から離れた郊外のアウトレットにわざわざ出かけるひとが多くいるのだろう。
しかも、三井アウトレットパーク(※2)やチェルシープレミアムアウトレット(※3)など急成長している日本のアウトレットで、売っているモノの大部分は百貨店のモノと同じである。海外のようにB級品やブランドタグを剥ぎ取った商品を中心に販売しているのではない。これにはワケがある。委託販売(※4)が中心の日本の百貨店の売場はテナントのブランドメーカーが運営しているのだ。百貨店とアウトレットのテナントは同一業者が運営し、百貨店で売れなかった商品をアウトレットで割安に販売しているのである。ブランドメーカーは日本の消費者の事情に百貨店以上に精通し、実質的に百貨店やアウトレットでの販売を担っている。彼らから見ると百貨店とアウトレットは異なる販売チャネルに過ぎず、自社の収益最大化を目指し、売れる方法で商品供給をしているのである。
日本の百貨店の商品サイクルは大変短いと聞く。流行が目まぐるしい婦人服は7週間程度ですっかり入れ替わるともいわれる。アウトレットで販売しているモノは、時間価値が劣化した流行遅れの商品に過ぎず、本質的な価値にはほとんど違いはないのである。このため、時間価値の劣化を気にしない人にとって、アウトレットは魅力的な買い物スポットなのだろう。百貨店でモノが売れないほど、アウトレットにはより魅力的なモノが揃う。だから、不況のときほどアウトレットは盛況になる。百貨店とアウトレットは表裏一体の関係である。
本来、百貨店の付加価値とは消費者に代わって良いモノを見極め、いち早く紹介して販売するところにあったはず。劇場や美術館を併設し、あこがれのモダンなライフスタイルを提案してきた百貨店のビジネススタイルを文化商業と呼ぶ人もいる。百貨店は単にモノを販売しているだけではなかった。しかも、「現金掛値なし」に表象されるように、価格も適正なはず。しかし、現実はそうなっていない。多くの消費者が手を出せない価格でテナントが売りたい商品を並べているに過ぎない。だから、売れない。
さらに、インターネットの普及が消費者を大きく変化させた。最新情報に誰もが容易にアクセスできる。もはや、消費者は狼に狙われる従順な子羊ではない。価格や品質に関する情報も、プロ以上に詳しい賢い消費者が主役となった。モノや情報が氾濫する社会となり、バラエティに富んだ商品を並べても、消費者が興味をそそられることは少なくなった。テナントの店員に販売を任せ、商品知識をほとんど持たない百貨店店員は出る幕がない。情報通信技術の急速な発達は、事業環境を大きく変化させた。従来型のマーケティングの常識が通じなくなるのも当然である。
このまま百貨店は衰退するのであろうか。人びとの消費に対する欲望には限りがなく、必ずしもそうは思えない。従来型の百貨店のビジネスモデルの限界を本質的に理解している一部の百貨店では、百貨店のビジネスのあり方を環境変化に合わせて変態し始めたようだ。将来の百貨店はいまの百貨店とは似て似つかないものとなっているかも知れない。百貨店の経営者に対して、百貨店の存在意義を改めて問いたい。
(注釈略)