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怠け者オッシーが起こす変革の風
変わりはじめた旧東独の労働者
シュテファン・タイル(ベルリン)
ウォルフガンク・ノイベルトは昔、東ドイツの冷蔵庫工場で働いていた。東西ドイツ統一後に工場は倒産し、ノイベルトは43歳で失業してしまう。だが失業手当には頼らず、旧西独の自動車部品会社に仕事を見つけた。
現在は旧東独のケムニッツで、社員83人の自動車部品会社を経営している。BMWとも取引し、不景気のなかでもビジネスは順調だ。「ゼロからここまで来るのは、本当に大変だった」と、彼は言う。
これまで東独出身者は、旧西独の人々に「怠け者オッシー(東独人)」とばかにされてきた。怠惰なくせに社会保障に頼りたがる連中、という意味合いがあるが、ノイベルトのような人々のおかげで、そんな見方も薄れてきた。
今も旧東独地域は、ドイツ経済の「ブラックホール」だ。失業率は旧西独の2倍で、年間1000億ユーロの補助金を吸い込んでいる。
その一方で、以前は考えられなかったような起業家精神や勤勉さを発揮する東独出身者が増えてきた。統一後の13年間で、東独出身者が設立した企業は50万社以上と、旧西独に迫る勢い。年間の平均労働時間も1725時間で、西独出身者の1592時間を上回る。
東独出身者は仕事のために引っ越すことも、経験のない職に就くことも嫌がらない。「西の人間よりも変化と挑戦に抵抗感がない」と、ベルリンにある人材斡旋会社のグリット・レーデス社長は言う。
規制緩和にも一役買う
意外な話だが、東独出身者は市場の変革にも大きな役割を果たしている。政府は3月、小売店の営業時間に関する規制を緩和したが、これは旧東独で大半の店が規制を無視していたためでもある。
6月には、ドイツ最大の労働組合IGメタルにも盾ついた。旧東独での労働時間短縮を求めてストに突入したのだが、旧東独の労働者は大半が不参加。IGメタルは史上初ともいえる敗北を喫した。
旧東独の人々を変えたものは何なのか。答えは危機感だ。
統一直後の旧東独には失業者があふれ、多くの人が出直しを迫られた。農業エンジニアだったカーリン・クキールスキー(45)も、畑違いの経理を勉強。今はウェブデザイン会社で最高財務責任者を務める。「自分でなんとかするしかなかった」と、彼女は言う。
停滞するドイツ経済に風穴を開けたのは「怠け者オッシー」だったといわれる日が、やがて来るのかもしれない。
ニューズウィーク日本版