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ロシアとの戦争に執着する大英金融帝国(櫻井ジャーナル)
http://www.asyura2.com/25/warb26/msg/113.html
投稿者 赤かぶ 日時 2025 年 3 月 17 日 01:00:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

ロシアとの戦争に執着する大英金融帝国
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202503170000/
2025.03.17 櫻井ジャーナル

 ウクライナを舞台にした戦闘でロシアが勝利したことは明白である。ロシアにはNATO/ウクライナと話し合う意味がないものの、ウクライナや西側諸国は停戦を実現して体制を立て直す時間が欲しいはずだ。自分たちの好戦的な政策が破綻したことを人びとに気付かれたくないということもあるだろう。

 アメリカをはじめとするNATO諸国は2014年から8年かけて反クーデター派の人びとが生活するドンバスの周辺に要塞線を築き、本格的な攻撃の準備が整った2022年にロシア軍が一歩早く攻撃を開始、そこから戦況はロシアが優勢なまま現在に至っている。要塞線はマリウポリ、ソレダル、マリインカ、アウディーウカの地下要塞が軸になっていたが、2024年2月までに全て陥落。この時点でNATO/ウクライナの敗北は決定的だった。

 ネオ・ナチを使ったクーデターでNATO諸国は2014年2月22日、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒すことに成功するが、軍や治安機関の中にはネオ・ナチ体制に反発する人も少なくなかったようで、約7割が離脱し、一部は半クーデター軍に合流したと言われている。そのためクーデター軍は反クーデター軍に太刀打ちできず、ドンバスでは包囲されて壊滅寸前だった。そうした事態を救ったのが2014年のミンスク1と15年のミンスク2にほかならない。アメリカのドナルド・トランプ政権はロシア政府に対し、「即時暫定30日間停戦」を求めたが、これはミンスク3にしか見えない。ロシア政府は一時的な停戦でなく戦争の恒久的な平和を求めている。

 2013年11月にユーロマイダンで始まったカーニバル的な集まりで人を集めるところからネオコンのクーデター工作は始まった。2014年に入るとステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチのグループが前面に現れて様相は一変、2月に入るとそのメンバーはチェーン、ナイフ、棍棒を手に石や火炎瓶を投げ始め、さらにトラクターやトラックを持ち出し、2月中旬になると広場で無差別の狙撃を始めた。



 狙撃を指揮したのはネオ・ナチのアンドレイ・パルビーだということがのちに判明、2月25日にキエフ入りして調査したエストニアのウルマス・パエト外相もネオ・ナチが実行した可能性が高いと報告している。その報告をEUの外務安全保障政策上級代表(外相)を務めていたキャサリン・アシュトンは封印した。

 しかし、狙撃が始まる前、EU諸国は話し合いでウクライナの戦乱を話し合いで解決しようとしていたようだ。2014年2月上旬、バラク・オバマ政権で国務次官補を務めていたビクトリア・ヌランドがウクライナ駐在アメリカ大使のジェオフリー・パイアットとクーデター後の閣僚人事について電話で話し合ったいる音声が漏れたのだが、その中でヌランドは「EUなんかくそくらえ」と口にしている。この発言について「品のない言葉」で誤魔化そうとする人もいたが、EUがキエフの混乱を話し合いで解決しようとしていたことに対する怒りだった。ヌランドは暴力的にヤヌコビッチを排除したかったと見られている。実際、そうしたことになった。

 その後、EUやNATOのロシアに対する姿勢が好戦的になっていく。その象徴的な存在が欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(ドイツ人)、EU外務安全保障政策上級代表のカヤ・カラス(エストニア人)、ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相、NATOのマルク・ルッテ事務総長(オランダ人)などだろう。



 しかし、ヨーロッパにおける好戦的な言動の中心はイギリスだ。この国ではエリザベス1世の時代(1533年から1603年)に「ブリティッシュ・イスラエル主義」なる信仰が出現、シオニズムを産み出した。その信仰のベースには、アングロ・サクソンが「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だというのだ。この信仰は帝国主義を正当化する思想的な基盤にもなった。

 19世紀に入ると、イギリスには強い反ロシア感情を持つ有力政治家が現れた。19世紀前半に首相や外相として暗躍したヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)だ。

 彼はロシアをイギリスにとって最大のライバルとみなし、「ウクライナ人はわれわれが反ロシア蜂起のストーブに投げ込む薪だ」と語り、ポーランドをロシアとドイツの間の障壁として復活させる計画を立てていた。

 またパーマストン子爵は中国におけるイギリスの権益を守るためにチャールズ・エリオットを1836年に広東へ派遣、東インド艦隊の軍事行動の規制を緩めて清(中国)への軍事的な圧力を強化、1840年にはアヘン戦争を始めた。彼の政策はセシル・ローズ、ナサニエル・ロスチャイルド、アルフレッド・ミルナー、ウィンストン・チャーチルらが引き継ぐ。その経済的な基盤は金融資本であり、大英帝国は金融帝国として今でも生きている。

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コメント
1. 赤かぶ[239070] kNSCqYLU 2025年3月17日 01:15:41 : vg6V5K7TqU : UHl0T1pZQkd5dnc=[347] 報告
<▽37行くらい>

https://x.com/tobimono2/status/1899171046990970933

tobimono2
@tobimono2

ジリノフスキー - イギリスのウクライナに対する態度について: 1854年のクリミア戦争で、イギリス人のパーマストン卿は言った。「ウクライナ人は反ロシア蜂起のストーブに投入する薪だ」。それが今起きていることだ。

我々は全てを取り戻す キエフにナチスが増えれば増えるほど、キエフの指導者が間違いを犯せば犯すほど、彼らはすぐに終わる。そしてウクライナ全土が戻ってくる。ウクライナ全土がロシアに戻る!

■ジリノフスキーへのプーチン大統領の評価
「ジリノフスキーが言ったことは全て現実になる、なぜなら彼は分析と経験に基づいて話していたからだ」。「彼は予言者ではなかったが博学で準備のできた人物だった」。

■第3代パーマストン子爵ヘンリー・ジョン・テンプル
1853年にロシア帝国とオスマン=トルコ帝国の間でクリミア戦争が勃発すると、対ロシア開戦派として行動し、同戦争へのイギリス参戦に導いた。

2. 赤かぶ[239071] kNSCqYLU 2025年3月17日 01:16:21 : vg6V5K7TqU : UHl0T1pZQkd5dnc=[348] 報告

3. 赤かぶ[239072] kNSCqYLU 2025年3月17日 01:32:19 : vg6V5K7TqU : UHl0T1pZQkd5dnc=[349] 報告

4. 赤かぶ[239073] kNSCqYLU 2025年3月17日 01:33:55 : vg6V5K7TqU : UHl0T1pZQkd5dnc=[350] 報告
<▽35行くらい>

https://x.com/PAGE4163929/status/1898295402333671877

チタロ
@PAGE4163929

🇪🇺 ジェフリー・サックス教授、EU議会で真実を語る

ジェフリー・サックス教授はEU議会で、ウクライナ戦争の背後にある西側の策略を暴露した。

アメリカとイギリスがウクライナの和平交渉を妨害し、ボリス・ジョンソン元首相が「戦争の本質はウクライナではなく西側の覇権維持」と明言したと指摘。

さらに、100万人以上のウクライナ人が死亡・負傷した現実を前に、米議員は「最高の投資」と発言。

サックス氏は「アメリカの敵は危険だが、友人は致命的」とキッシンジャーの言葉を引用し、警鐘を鳴らした。

5. 赤かぶ[239074] kNSCqYLU 2025年3月17日 01:42:45 : vg6V5K7TqU : UHl0T1pZQkd5dnc=[351] 報告

6. 赤かぶ[239075] kNSCqYLU 2025年3月17日 01:43:46 : vg6V5K7TqU : UHl0T1pZQkd5dnc=[352] 報告

7. 赤かぶ[239076] kNSCqYLU 2025年3月17日 01:45:04 : vg6V5K7TqU : UHl0T1pZQkd5dnc=[353] 報告

8. 赤かぶ[239077] kNSCqYLU 2025年3月17日 01:45:47 : vg6V5K7TqU : UHl0T1pZQkd5dnc=[354] 報告

9. 弱っプっ腐(笑)ランド豚[95] juOCwYN2gsGVhSiPzimDiYOTg2iT2A 2025年3月17日 03:45:24 : GnoheoBwhw : LkJMOVpZR3RoUUE=[52] 報告
悪メリカ、穢下劣、カスラエルは滅ぼすしかない
これらに忠誠を誓う植民地もな

プーチンや習は覚悟が足りない
所詮は支配層か
ソ連や中国が弱っプっ腐(笑)ランドの一般層に配慮して賠償金や分割統治を配慮した弱っプっ腐(笑)ランドの一般層を見ろ
無意識にソ連や中国を下に見るネオナチばかりだ


10. 位置[1309] iMqSdQ 2025年3月17日 07:23:14 : io1eB6ivGQ : OG1hTUouRk9nYzY=[324] 報告
ブリ公共は、日本の暗治政府と日本軍のお手本になっただけのことはあるという事か。
11. カレー王子[375] g0qDjIFbiaSOcQ 2025年3月17日 07:43:18 : FeeMsGUQXY : aWNxdlpHZEhwVTY=[3] 報告
打倒ロシア金融悪魔は相変わらず。

日露戦争で日本を支援した銀行家
のジェイコブ・シフも日本勝利で
ロシア(ユダヤ)革命を行った。
アヘン戦争、日清戦争も同じ。
日本のマスゴミは中露叩きさえ
やっていれば身分安泰にようだ。

日本とウクライナもロシア叩きの
駒にされる。日本の政治家でも
対ロシア制裁を強化するべきと
表明している輩がやたらに多く、
金融悪魔の手下が国会議員という
特権階級になっていると感じる。

12. 銀の荼毘[1199] i@KCzOS2lPk 2025年3月17日 09:40:04 : JYNwy8aFIA : VjBGZWd5WjY1RWM=[16] 報告
<▽43行くらい>

旧態然とした櫻井ジャーナルでは,いつまで経っても明治維新の時代の(国家・国家)という概念でしか,物事を整理できないようだ。


その昔,グロバリズムと言えば🟰金融に限る←との概念だったが🟰今では,統治の仕組みは←支配層に国境は不在でグロバリズム/非支配層は国家単位の檻に閉じ込める→こういう仕組みが出来上がっている。


大半は(産業別)(学会)という2つのカテゴリで世界組織が張り巡らされていて🟰国家は,隷従する者を区分し,世界組織の意向に従わぬ者が有れば🟰戦争など,それを理由に消失させるための道具としてしか機能していない。


それでも(善意と悪意)は個々に存在していて🟰概ね,人類は良い方に発展してきていた。


(良い)の定義が🟰櫻井ジャーナルなどと筆者では価値観が異なるため🟰彼らに言わせれば(悪化の一途を辿った)との評価となるのだろうが。。。。


それらを🟰(筆者の評価で悪い方/櫻井ジャーナルの評価で良い方)←こう引き戻す,現代版ressentiment反動主義が,プーチンとか,トランプとかに力を与えていると言えるだろう。


もとより,(民主主義とはアメリカ主義)のことであって,(民主化とアメリカ化)は同義一限の概念である。
 ※細かく言えば→レーニン主導型・ウイルソン主導型←という2つの多数決主義に集約され🟰敵・英仏露蘭4国の植民支配が,(民主の対義語・保守)を構成する基本構成概念だ。
 ※アメリカ型しかなくなってしまった理由は🟰レーニン主導型は→後継のスターリンもトロツキも,内ゲバで殺し合っただけで,両者(超保守主義者)だったことによる。


この,権力者の自由を阻害する概念←→を,常に敵としてきた者が🟰言わばDSであって,今は(アメリカ合衆国が保守化)という🟰自ら民主主義を捨て去る方向性にあるので🟰レーニンの訴えた帝国主義論に基づく限り→当時(英仏露蘭)とされた保守国家🟰現代版では(露中2カ国だったところへアメリカが加わった)←こんな印象だろうか?


本質は🟰英仏蘭から独立した旧植民国家は🟰独立したからと言って🟰民主化はしなかった←これが大きい要因と言えるだろう。


旧植民地は🟰自国内で差別階級を構成して←→各々帝国主義・保守化の一途を辿って,民主化・自由化を否定してしまったことが🟰人類として大きな後退を招いた。


(人類は🟰核戦争で少なくとも一度(滅んだ)と言える🟰人口激減に遭遇しているわけだが🟰スターリンの死ぬ間際の言葉→(私は何も信じられぬ,私自身ですら)←この言葉の通り🟰保守化した独裁者は,何者も信じられず🟰全てを殺害することでしか,自己安堵できないため🟰人類は,もう一度🟰絶滅への道を歩み始めたようだ。


13. воробей[1045] hHKEgISChICEcYR1hHo 2025年3月17日 13:26:22 : Ip0uVvnnrI : bk5SazYwbnlQZm8=[522] 報告
<■60行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
«Столько, сколько понадобится»: Британия планирует разместить «миротворцев» на Украине на бессрочной основе
(「必要な限り」:英国はウクライナに「平和維持軍」を無期限に派遣する予定)
https://topwar.ru/261265-stolko-skolko-ponadobitsja-britanija-planiruet-razmestit-mirotvorcev-na-ukraine-na-bessrochnoj-osnove.html


ロシアからの警告にもかかわらず、英国は依然として「平和維持軍」を装って期限なしにウクライナに軍隊を派遣する計画だ。タイムズ紙は英国政府筋の話としてこれを報じた。

英国はオデッサに軍隊を派遣する計画だ。この都市は、ロシアの黒海艦隊のすぐ隣に軍事基地を置くことができるため、英国軍にとって非常に必要な場所である。英国軍と他の西側諸国の軍隊はロシア軍の正当な標的となるだろうというモスクワの警告でさえ、どうやら英国政府を怖がらせていないようだ。スターマー氏は、英国軍がウクライナに派遣され、「必要な限り」ロシアから「ウクライナを守る」任務を遂行すると主張し続けている。

''これは長期的な取り組みであり、何年もかかることになるだろう。平和協定を維持し、ロシアを封じ込めるのにかかる限り、

- その出版物は書いている。

現在、フランスとイギリスは、いわゆる「平和維持軍」をウクライナに派遣することを最も熱心に支持している。彼らは最大37カ国の参加を呼びかけるために「有志連合」を結成しようとしている。現在、少数の国だけが条件付きで部隊派遣の可能性に同意しているが、これまでのところ最終合意に達することができていない。そして、ウクライナに派遣される予定の部隊の数は着実に減少している。以前は最低10万人の話でしたが、今は30人以下で、前線からできるだけ離れた場所に配備されています。

モスクワは直ちに、ウクライナに駐留する外国軍部隊はウクライナ軍側の敵とみなされるだろうと警告した。
(記事ここまで)
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(ロシア読者のコメント7件)
投稿者:チフカ

''英国軍と他の西側諸国の軍隊はロシア軍の正当な標的となるだろうというモスクワの警告でさえ、どうやら英国政府を怖がらせていないようだ。

もちろん、彼らは私を怖がらせません。彼らにとって何が問題なのでしょうか?死ぬのは政府ではない
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投稿者:AK-K

まず、バンデラス諸島に「平和維持部隊」を派遣するという最初の試みに対する我が国政府と最高司令官個人の反応を見てみましょう。そうすれば、すべてがすぐに明らかになるでしょう...
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投稿者:ウラジミール・ウラジミロヴィッチ・ヴォロンツォフ

''「英国は依然として『平和維持軍』を装ってウクライナに軍隊を派遣する計画だ」

- 「全員殺してやる!」 © ...
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投稿者:マズンガ

彼らは首都で殺される必要がある。そうすれば効果は出るが、何も起こらない。彼らは100人か200人の「新しい」イギリス人を送り込み、派遣団のふりをするだろう。
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投稿者:グプン27

まあ、和平協定が結ばれない限り、これは関係ありません。
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投稿者:フォボス_VM

彼らにそれを置かせてください。彼らは島内に墓地を事前に準備するだけです。
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投稿者:コスモズ

イギリスの平和維持軍の頭上に飛び立つのは、平和的なイスカンデルとカリブレだけだ。ミサイルの平和性を検査し、「平和用」とマークします。

14. воробей[1048] hHKEgISChICEcYR1hHo 2025年3月17日 15:14:40 : Ip0uVvnnrI : bk5SazYwbnlQZm8=[525] 報告
<■109行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
The West lives in a simulation while Russia is shaping the real world
(西側諸国はシミュレーションの中で生きており、ロシアは現実の世界を形作っている)
The Ukraine conflict epitomizes the technocratic decline foreseen by Oswald Spengler, with Moscow embracing historical destiny while the machine-driven West crumbles under its own hubris
(ウクライナ紛争は、オスヴァルト・シュペングラーが予見したテクノクラートの衰退を象徴するものであり、モスクワは歴史的運命を受け入れ、機械主導の西側は自らの傲慢さの下で崩壊する。)

By Constantin von Hoffmeister, a political and cultural commentator from Germany, author of the new book ‘MULTIPOLARITY!’, and editor-in-chief of Arktos Publishing
(ドイツの政治・文化評論家、新著 『MULTIPOLARITY!』の著者、Arktos Publishingの編集長、コンスタンティン・フォン・ホフマイスター氏による )
https://www.rt.com/news/614311-west-russia-simulation-reality/


ウクライナ紛争はウクライナに関するものではない。もはや自分たちを必要としない世界を支配するための、西側諸国の最後の狂気の試みである。西側諸国は、自らのテクノクラートの悪夢の迷宮に迷い込み、機械化され盲目になった死にゆく獣のようにもがいている。ドイツの歴史哲学者オスヴァルト・シュペングラー(1880-1936)は、「人間と技術」(1931年)で、ファウスト文明の最終的な没落について書いた。かつては有機文化の延長であった技術が鉄の檻となり、その創造者をもはや理解できない世界に閉じ込めるのである。ウクライナに対する西側諸国の対応はまさにこれである。ドローン、制裁、リアルタイムで作られるメディアの物語、アルゴリズムによって維持される全能の幻想、そして人工知能。しかし、現実は隙間から抜け落ちつつある。西側諸国が機械化すればするほど、支配しようとする生きた文化を認識する能力が失われる。

停戦?交渉?西側諸国は、あたかも戦争が四半期ごとの予測に合わせて調整できるスプレッドシートであるかのように、新しい税制を提案する官僚のようにそれらを提案する。ドナルド・トランプ米大統領の特使がロシア当局者と会談するのは、彼らが平和を信じているからではなく、古いアメリカ、つまり彼のアメリカが変化を察知したからだ。生々しい力の世界秩序が西側のデジタル覇権の夢に取って代わろうとしており、ロシア、中国、そして千年の歴史がそれに反対している。シュペングラーはそれが起こることを予見していた。機械が魂を乗っ取り、西側諸国は有機的な思考ができなくなるだろう。これが彼らがロシアを理解できない理由である。彼らに知性が欠けているからではなく、彼らの知性が文化的深みを奪われたアルゴリズムのプロセスにまで低下しているからだ。西側諸国は機械のように考えており、ロシアは依然として歴史の産物であり、帝国のように考えている。

ロシアのウラジミール・プーチン大統領は停戦提案を却下した。それが幻想だとわかっているからだ。彼は根本的な原因、歴史、取引や外交策略に還元できない世界について語った。西側諸国は恐怖でひるむ。これが根本的な違いだ。ロシアは依然として戦争の意味を理解しているが、西側諸国は死傷者、武器輸送、戦略目標の終わりのないデータの流れしか見ていない。シュペングラーはこれをファウスト文明の悲劇的な転回と呼んだ。機械を作った人間が、もはやそれを制御できなくなるときだ。西側諸国は権力や領土のために戦争を起こすのではなく、まだ支配しているという見せかけを維持するためだ。プロセスとしての戦争。アルゴリズムとしての戦争。最終目標は決して勝利ではなく、危機の永続的な管理だけだ。

一方、G7の金融テクノクラートは、ロシアの凍結資産の利息を利用して、500億ドルをどこからともなく作り出している。これは、シュペングラーが西側諸国の衰退の最終段階と認識するであろう巧妙な手口である。つまり、経済操作が真の生産に取って代わり、人工的な富が真の文化的力に取って代わるのだ。西側諸国はもはや建設を行わない。単に搾取し、再分配し、制裁を加え、世界金融の仕組みが台頭する文明の自然な勢いに取って代わることを期待している。対照的に、ロシアは古いやり方、つまり産業、軍事力、自立性に戻っている。その違いは明らかだ。一方の文明は、自らの機械的なハットトリックにますます絡みつくようになり、もう一方の文明は歴史の根本的な論理に戻る。

シュペングラーは、テクノロジーを西洋の偉大な業績であると同時に、西洋の最終的な破滅であるとみなしていた。テクノロジーは当初、人間の意志の延長である道具として始まったが、後期にはその創造者に背を向け、創造者をもはや役に立たないシステムの単なる構成要素に貶める。西洋の制裁、監視、物語のコントロールへの執着は、力の表れではない。それは弱さの表れである。真の帝国文明は世界を細かく管理する必要はない。彼らは純粋な意志によって世界を形作る。だからこそ、トランプは欠点はあるものの、西洋復活の唯一の現実的な可能性を代表しているのだ。彼は管理的精神を拒否する。彼は昔の支配者たちのように、権力を本能的に理解している。アメリカの新しい保守革命はイデオロギーに関するものではない。それは機械から主体性を取り戻すことである。

それでも、技術によって生み出された怪物のような有機体であるメディア機構は、容赦なく前進を続け、歪曲によって現実を形作っている。シュペングラーは、西洋文明の末期の段階では、報道機関は情報を伝えることをやめ、代わりに信じるべきことを指示していると書いた。この壮大な物語の中で、ウクライナは象徴的な戦場に成り下がっている。ロシアが悪役なのは、システムが悪役を必要とするからだ。真実は重要ではない。見出しは出来事が起こる前に書かれる。戦争は物理的な闘争というよりは、メディアの見せ物、つまり、西側諸国の指導者たちが戦士を演じながら、自分たちの行動の結果から遠く離れていることを保証するグロテスクな儀式として存在している。

しかし、西側諸国がシミュレーションに囚われている一方で、ロシアは現実に活動している。戦場は比喩ではない。それは人が殺し合い死ぬ場所である。シュペングラーは、後期段階の文明は真の戦争ができなくなるだろうと警告した。彼らは戦争に加わるが、歴史上の大戦争を特徴づけた深い実存的闘争を欠いた、技術官僚的な演習としてのみ戦争に加わるだろう。これが、西側諸国がウクライナで勝てない理由である。彼らは国民としてではなく、官僚組織として戦っている。そしてロシアは、欠点はあるものの、国民として戦っている。その違いがすべてである。

というわけで、私たちは今、一つの時代の終わりを目の当たりにしている。西側の技術では時代を救うことはできない。技術に頼れば頼るほど、弱体化する。西側のテクノクラートたちは自分たちが歴史を導いていると信じているが、歴史は彼らの手から逃れつつある。ウクライナは、はるかに大きな物語の一章にすぎない。それは、旧世界が復活し、帝国が管理国家の地位を取り戻す物語だ。ではトランプは?彼は解決策ではないが、兆候だ。官僚主義とデジタル壁紙の層の下のどこかに埋もれ、西側が権力がどのようなものかまだ覚えているという兆候だ。

この戦争はウクライナに関するものではありません。これまでもそうでした。これは技術と歴史、機械と魂の間の最後の戦いです。そして最後には機械は失敗するでしょう。シュペングラーはそれを見ていました。私たちは今それを見ています。そしてロシアは、それが何であれ、西側諸国よりもそれをよく理解しています。

15. カレー王子[376] g0qDjIFbiaSOcQ 2025年3月17日 15:44:43 : FeeMsGUQXY : aWNxdlpHZEhwVTY=[4] 報告
そうね、コロナもウクライナも
西側支配層の脚本というか妄想
によって実行されたものだから
途中で世界にネタバレしたり
妄想とは違う展開になると
身動きがとれなくなりますね。

アフリカ西部のサヘル地域でも
あまりにも搾取が酷かったので
ロシアを受け入れて、かつての
宗主国フランスは追い出される。

グリーンランドは調べてないが
先住民に対する搾取や差別、
幼児虐待などが酷いのかも。
西側支配層は植民地住民に対して
同じような酷いことをやってきた。

16. 罵愚[3267] lGyL8A 2025年3月18日 06:32:01 : dLV7KORD0A : TkxhRUl1ZEs1Yk0=[932] 報告
 もとはと言えば、プーチンの悪だくみ…いたずらのような戦争だったウクライナ侵攻に、正義のアメリカが民主主義のマントをひるがえして参入したという、ありきたりの筋書きに、トランプと呼ぶ異色の悪役が飛び込んできて、筋書きが狂ってしまった。正義のヒ−ロ−の出番に、奴隷商人が飛び込んできてしまって、ドラマは30分では終わらなくなってしまったんだな。
 東西冷戦の結末にも影響しそうな、市場主義経済をも否定されそうな、EU市場を脅かす、、、、第二次大戦後の国際秩序の書き換えは、しかし、まだ始まったばかりで、この先、どんな展開を見せるのか? は、まったくわからない。


[18初期非表示理由]:担当:掲示板を『自分の意見をできるだけ多く繰り返し書く場所』と考えているhttp://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/616.html#c93こと、かつ管理人の依頼を無視するhttp://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/615.html#c41ことにより全部処理
17. 罵愚[3268] lGyL8A 2025年3月18日 06:41:18 : dLV7KORD0A : TkxhRUl1ZEs1Yk0=[933] 報告
 いろいろな観点からの解説があるのだろうが、思いっきり視野を拡大して“人類史の観点から”なんて、大上段に構えてみると、日本人としては、かつての大東亜共栄圏構想…西欧の近代に対抗して有色人種、非キリスト教徒の居場所を地球上に確保する外交政策が、アタマをもたげてくる…

[18初期非表示理由]:担当:掲示板を『自分の意見をできるだけ多く繰り返し書く場所』と考えているhttp://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/616.html#c93こと、かつ管理人の依頼を無視するhttp://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/615.html#c41ことにより全部処理
18. 罵愚[3269] lGyL8A 2025年3月18日 06:55:26 : dLV7KORD0A : TkxhRUl1ZEs1Yk0=[934] 報告
 だってさぁ…舞台の上を、もう一度、見直してごらんよ! 真ん中に、ポッカリと巨大な穴が開いているだろう。主役の一人が、まだ登壇していないんだよな!!
 共産支那と呼ぶ千両役者が、どこから出てきて、どんなせりふを吐くのか? 目の肥えた観客なら、そこに気づいて舞台にかじりついている。というか、支那って、ホントに主役かなぁ? 最近、数百年は、馬の足でしかなかったよネ?

[18初期非表示理由]:担当:掲示板を『自分の意見をできるだけ多く繰り返し書く場所』と考えているhttp://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/616.html#c93こと、かつ管理人の依頼を無視するhttp://www.asyura2.com/13/kanri21/msg/615.html#c41ことにより全部処理
19. воробей[1049] hHKEgISChICEcYR1hHo 2025年3月18日 12:29:23 : Ip0uVvnnrI : bk5SazYwbnlQZm8=[526] 報告
<■121行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
プーチン大統領、けばけばしいだけの歌舞伎のような「停戦」の仮面を剥ぐ

<記事原文 寺島先生推薦>
Putin peels off the masks of the ceasefire kabuki
筆者:ペペ・エスコバル(Pepe Escobar)
出典:Strategic Culture Foundation 2054年3月14日
<記事翻訳 寺島メソッド翻訳グループ> 2025年3月17日
http://tmmethod.blog.fc2.com/blog-entry-3064.html


プーチンは、2021年12月にワシントンに突き付けたロシアの「安全保障の不可分性」の要求(これに対しては何の反応もなかった)を犠牲にすることはないだろう。


トランプ第二期政権チームが誇張して発表した「停戦」は、安っぽいマトリョーシカ人形の中のけばけばしいだけの歌舞伎として見るべきである。

次々とマスクをはがしていくと、マトリョーシカの中に最後に出てくるのは、「目覚めた(woke)」服装倒錯者の小柄な踊り手だ。つまり女装したミンスク3だ。

ここで「停戦」の再現が始まる。プーチン大統領は、制服姿で、SMO(特別軍事作戦)開始以来2度目となる真剣な表情でクルスクの最前線を訪問した。

最後に、実際の引きはがし作戦の開始となったのは、モスクワでのルカシェンコ・ベラルーシ大統領との会談後のプーチンの記者会見である。

停戦?もちろん、われわれはそれを支持する。そして、ロシア大統領は、緻密かつ巧妙に、外交的にカラヴァッジオの絵画を引っ張り出し、アメリカの策略の地政学的および軍事的詳細のすべてに徹底した明暗法を施した。熟練した巧妙な分解。

結論:ボールは再びドナルド・トランプの手に戻った。ちなみに、現在進行中の「帝国の混乱」の改革を主導する人物(トランプ)は、切り札を持っていない(強調は筆者)。

巧みな外交的ニュアンス

最高レベルの外交とはそういうものだ。ルビオ米国務長官のような田舎者アメリカ人に手が届くようなものではない。

プーチン大統領は「紛争解決に多大な注意を払ってくれた米国大統領、トランプ氏」に厚く感謝の意を表した。

結局のところ、アメリカ人も「敵対行為と人命の損失を止めるという崇高な使命を達成する」ことに関わっているようだ。

そして、彼はこうとどめを刺した。「この停戦は長期的な平和につながり、この危機の初期の原因を排除することになるでしょう」。

ロシアにとって、少なくとも2024年6月以降広く知られている重要な要請は満たされなければならない。結局のところ、戦場で戦争に勝利しているのはロシアであり、米国でも、すでに分裂しているNATOでも、ましてやウクライナでもない。

プーチン大統領は停戦について「私たちはそれに賛成しています」と断固とした態度を示した。

しかし、微妙なニュアンスの違いがある。繰り返しになるが、これは外交と呼ばれるものだ。その検証から始めよう。ほぼ間違いのないプーチン大統領の主張の核心は次のことだ。

「この30日間はどのように使われるのでしょうか?ウクライナでの強制動員を継続するためですか?より多くの武器供給を受けるためですか?新たに動員された部隊を訓練するためですか?それとも、何もおこなわれないのでしょうか?」

管理と検証の問題はどのように解決されるのでしょうか? このようなことが起こらないことをどのように保証できるのでしょうか? 管理はどのように組織化されるのでしょうか?

これは常識として皆さんに理解していただきたい。これらはすべてほんとうに大事な問題なのです」。

それに対する答えは「ノー」。EU官僚機構全体は、狂信的な露恐怖症に囚われており、「常識」を理解することはないからだ。

プーチン大統領は、再び外交的に「米国のパートナーと協力する必要性」を理由に先延ばしにした。「トランプ大統領と話すことになるかもしれません」と。

つまり再度の電話会談が遠からずおこなわれるだろう。

一方、常に大言壮語の雲の上を漂っているトランプは、けばけばしいだけの歌舞伎のような「停戦」に対するプーチンの詳細な回答が出る前から、すでに交渉に「影響力」を行使していた。

彼はロシアの石油、ガス、銀行に対する制裁を強化し、今週、ロシアの石油販売に対する免除を失効させた。

つまり、EUの属国やその他のさまざまな「同盟国」は、米国の制裁を回避することなく、ロシアの石油を買うことができなくなったということだ。

それ以前にも、キエフの犯罪組織の一部は「平和」計画の一環としてロシアへのさらなる制裁を懇願していた。トランプは明らかに、基本的な外交をまたも無視して同意した。ドンバスからクルスクまでの戦場で実際に勝っている戦争を終わらせようとしたことで制裁を受ける停戦/「平和プロセス」をモスクワが支持するなどと信じることができるのはIQがゼロ以下の人間だけだろう。

制裁は、米国とロシアの交渉の中心に据えられるべきだろう。少なくとも数千件のうちいくつかは最初から是正されなければならない。ロシアの資産約3000億ドルが「押収」され(つまり盗まれた)、そのほとんどはブリュッセルに保管されているのだ。

われ併合す。ゆえにわれ有り

プーチン描くカラヴァッジョ張りの休戦絵画は、悪名高い火山のようなトランプを敵対させることや、米露間の緊張緩和の可能性を危険にさらすことに、彼がまったく興味を持っていないことを明らかにしている。

キエフとチワワのような忠臣EUについては、メニューには載っているが、交渉のテーブルには出ることはない。

予想どおり、欧米のMSM(主要メディア)は、汚染された瓦礫の波が汚染されていない海岸に打ち寄せるように、プーチン大統領が停戦の提案に「ノー」と答えたことを、それに関するいかなる交渉も打ち切る前兆であるかのように報じている。

こういった手合いは、たとえそれが空を突き抜ける彗星であったとしても、「外交」の意味を理解しないだろう。

イギリスがアメリカとウクライナを「支援」して停戦の策略を練ったという報道などモンティ・パイソンの安っぽいスケッチにも値しない。

英国の支配階級、MI6、そのメディアやシンクタンクは、交渉を嫌悪している。彼らはロシアと直接、正面から戦争している。彼らのプランA(プランBはない)は変わっていない。SVR(ロシア対外情報庁)が熟知しているように、モスクワに「戦略的敗北」を負わせることだ。

問題の核心は黒海だ。タス通信に説明されたウラジミール・カラセフの分析は正確だ。「英国はすでにオデッサ市に進攻しており、同市は重要な拠点とみなされている。英国の特殊部隊が深く関与している。英国はオデッサに海軍基地を建設したいという願望を隠していない。」

オデッサは、スターマーとキエフのスウェットシャツの男(ゼレンスキー)の間で締結された、怪しげで完全に違法な100年協定に基づいて、理論的にはすでに英国に引き渡されたウクライナの膨大な資源の一部である。

怪しい取引とその裏で行われた取引の脚注によれば、ゼレンスキーはすでに鉱物、原子力発電所、地下ガス貯蔵施設、主要港(オデッサを含む)、水力発電所など、あらゆる管理権を英国に譲渡している。

404項目に及ぶ、現在進行中の鉱物/レアアースの騒動、あるいはその余波について、英国は米国と悪質な直接競争を繰り広げている。CIAは明らかに事情を知っている。この件はすぐに非常に不穏な展開になるだろう。

モスクワの事情通の間で真剣に議論されているのは、プーチンが2021年12月にワシントンに突きつけたロシアの「安全保障の不可分性」の要求(これに対しては何の反応もなかった)を、プーチンがどのようなことがあっても決して犠牲にすることはないだろう、というものである。もちろんNATOは決してそれに同意することはないだろう。最終的な決定は米国大統領が下さなければならないだろう。

そして、その後NATOの究極的に哀れな役割をわれわれは目撃することになった。それは、米国大統領が鮮やかに描いてみせたのだが、NATO事務総長である哀れなオランダ人のスケープゴート(マルク・ルッテ)の目の前で、NATO加盟国であるカナダとグリーンランドの併合に向けた動きを大統領執務室で嬉々として拡大したのだ。

その型崩れした古臭いオランダ産ゴーダチーズ(マルク・ルッテ)は、併合について一言も言葉を発しなかっただけでなく、トランプ大統領の前で赤ちゃんのように顔を輝かせていたのだ。

これがNATOの本質だ。支配者トランプの声が彼の望むように支配し、決定するだけだ。加盟国の「安全」や領土保全すら危険にさらされる可能性がある。だから、(子どもたちは)おとなしく砂場で遊んでいたらいい。われわれは次のプーチン・トランプ電話会談を待つことにしよう。

20. 秘密のアッコちゃん[1417] lOmWp4LMg0GDYoNSgr@C4YLx 2025年3月18日 13:04:50 : n4vXmS4Gso : WUN2WklXQ0Fya0k=[855] 報告
<■1701行くらい→右の▽クリックで次のコメントにジャンプ可>
米国の「核の傘」は永遠ならず 揺らぐ対露拡大抑止 欧州、独自の核戦略を模索 黒瀬悦成
グローバルレビュー
2025/3/17 14:00
https://www.sankei.com/article/20250317-GKV2GHPGWBL35HWJUC66TBNVBQ/
先月2025年2月末、米英首脳会談と米ウクライナ首脳会談を取材するため、約7カ月ぶりにワシントンを訪れた。
昔から知る外交・安全保障の関係者らと意見を交わして実感したのは、第二次世界大戦後の自由主義に基づく国際秩序や経済システム、民主主義や法の支配の擁護者として世界を主導してきた米国が、発足間もない第2次トランプ政権の下で本質的に変わりつつあるという現実だった。
欧州や日韓などの自由主義陣営の国々は、米国との共通の価値と信頼に基づく同盟関係を結ぶことで中国やロシアといった専制主義体制に対する抑止力を確保し、世界秩序の安定と平和の維持に努めてきた。
ところがトランプ氏は
「米国第一主義」
と称する大衆迎合的な国内回帰に加え、外交・安全保障や貿易政策で同盟諸国に浅薄な
「取引主義」
を振りかざす一方、ウクライナを侵略したロシアには融和的な態度をとるなど、自由主義的な価値観に基づいて国際社会を主導する役割を実質的に放棄しようとしている。
英国やフランスを筆頭に欧州諸国が米国に過度に依存しない独自の対露防衛態勢の主体的強化に着手したのは、ウクライナを含む欧州を見捨てるような態度を示す米国とは、従来のような信頼に基づく安保連携の維持が困難になったと判断したからに他ならない。
だが、欧州にとって決定的に苦しい点は、ウクライナの恒久平和にせよ、対露防衛を軸とする長期的な欧州の安全保障にせよ、米国の力を全く借りることなしに実現させる能力を持ち合わせていないことだ。
軍事分野に限って論じても、欧州防衛のカギを握るのは、通常戦力もさることながら、ロシアに対する核抑止力をどう確保していくかだ。
欧州では核保有国である英仏に期待がかかる。
マクロン仏大統領は今月2025年3月5日、フランスの核抑止力を欧州の同盟国などに拡大させることについて戦略的議論を始めると表明した。
マクロン氏の発言は、これまで米国が欧州に提供してきた
「核の傘」(拡大抑止)
がトランプ政権の意向で機能しなくなる事態を想定したものだ。
米国はドイツ、イタリア、ベルギー、オランダの4カ国に戦術核を配備する
「核共有」
政策などを通じて対露核抑止力を確保する
「最大限の保証」
を欧州に与えてきたが、米政権の交代で米国の核に対する信頼は低下しつつある。
しかし、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、フランスが保有する核弾頭は290発とされ、ロシアの5580発には遠く及ばない。
英国は225発を保有し、これまでも欧州に拡大抑止を提供してきたものの、その核戦力は国産の原子力潜水艦4隻に米国製のトライデント潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を積んでいるのみで、米国の核戦略の補完的な役割にとどまるのが実情だ。
英国も、トライデントをめぐる米国との提携関係が解消される事態を視野に対策を急ぐが、英仏の核で米国と同等の核抑止力を確保できるかどうかについて懐疑的な見方は強い。
欧州と同様に米国から核の傘を提供されている日本も他人事ではない。
伝統的な同盟の価値を信じないトランプ氏にどう向き合い、先進7カ国(G7)の結束とインド太平洋地域の平和と安定を確保していくのか、日本は国際社会に迅速かつ明確に態度表明していく必要がある。

<主張>核禁条約の会議 「不参加」の判断は妥当だ
社説
2025/2/21 5:00
https://www.sankei.com/article/20250221-ZBR7DTJHN5N2FLAPSHKEB4A3NI/
岩屋毅外相が、核兵器禁止条約第3回締約国会議へのオブザーバー参加見送りを表明した。
国民を守る責務を担う政府として妥当な判断で評価できる。
岩屋氏は、日本周辺で
「質的、量的な核軍拡が進む厳しい現実」
を直視すべきだとし、
「核兵器の使用を仄めかす相手を通常戦力だけでは抑止できない」
「核による拡大抑止が不可欠だ」
と語った。
更に、核兵器を包括的に禁じる核禁条約は核抑止と相容れず、
「オブザーバー参加は、我が国の核抑止政策について誤ったメッセージを与え、自らの平和と安全の確保に支障を来す恐れがある」
と説いた。
日本の周囲には中国、北朝鮮、ロシアという核武装した専制国家がある。
北朝鮮は声明で
「日本列島の4つの島を核爆弾で海中に沈めるべきだ」
と恫喝してきたことがある。
外国からの核攻撃を防ぐ確実な術は見つかっていない。
核兵器による反撃力を自国または同盟国が持つことで、相手国の核攻撃や恫喝を抑止しなければ国民を守れない。
日本が非核三原則を維持できているのは、日本防衛に必要な核抑止力(核の傘)に同盟国米国の核兵器を充ててきたからでもある。
日本が核兵器廃絶の理想を追求するのは当然だが、核抑止を確かなものにしておく努力は欠かせない。
核禁条約に核兵器保有国は加わっていない。
日本は核拡散防止条約(NPT)上、核武装が認められた
「核兵器国」
とそうではない
「非核兵器国」
双方が加わるNPTの枠組みで現実的な核軍縮に取り組むべきだ。
核禁条約の会議へ、北大西洋条約機構(NATO)加盟国として米核抑止力に依存するドイツなどがオブザーバー参加したことはある。
だが、ドイツなどは会議で、核禁条約は自国の安保政策と相容れず締約しないと発言した。
同時に、有事に米軍の核兵器を自国の戦闘機に積んで核報復に従事する
「核共有」(ニュークリア・シェアリング)
の態勢も維持している。
日本のオブザーバー参加は米国の不信を生み、周囲の専制国家に日米同盟の核抑止態勢が動揺していると誤った判断をさせかねない危うい行動だ。
オブザーバー参加を唱える公明党や立憲民主党は翻意し国民を真に守る立場を取ってもらいたい。

国民は核の議論を求めている
河野克俊 元統合幕僚長
兼原信克 元国家安全保障局次長 同志社大学教授
■核シェアリングの事例
★兼原
日本は中国・北朝鮮・ロシアという3つの核保有国に囲まれています。
これは世界で最も厳しい環境であり、核に関する議論が急務であることを意味している。
★河野
その第一歩として、アメリカとの
「核シェアリング」
の議論を進めるべきです。
また、有事の際には、中国が日本に対して
「アメリカに基地を貸せば、核を使う」
「自衛隊が参戦すれば、核を使う」
などと恫喝してくる可能性があります。
★兼原
アメリカのCIA(中央情報局)は中国の核弾頭数は2035年、1500発となると分析しています。
それだけでなく、低出力の戦術核の開発も行うでしょう。
だからこそ、日本は台湾有事の具体的なシナリオに応じて、どこでどのような核の恫喝があるかということを考えなければならない。
★河野
核シェアリングの代表的な事例として、冷戦中の西ドイツにおける例があります。
冷戦ではソ連を中心とする
「ワルシャワ条約機構」
とアメリカを中心とする
「NATO軍」
がヨーロッパで対立しており、西ドイツが西側陣営の最前線に立っていました。
当時は、ワルシャワ条約機構側が通常戦力において圧倒的に優位な立場にあったことから、西側陣営の戦力を強化し、アメリカも巻き込んでソ連と対峙するためにNATOにおける核シェアリング構想が考えられました。
また、地上発射型の中距離ミサイルに関しても1975年、ソ連が配備を開始した中距離弾道ミサイル
「SS-20」
はヨーロッパが射程圏内であり、アメリカ本土には届かなかった。
つまり、ソ連は米欧のデカップリングを狙ったわけです。
それに対して、イギリスのサッチャー首相(当時)や西ドイツのシュミット首相(当時)がアメリカに要請して、ヨーロッパには中距離ミサイル
「パーシングU」(MGM-31)
などのソ連を射程圏内に収めるミサイルが配備されました。
それによって、中距離弾道ミサイルの均衡状態が生まれ、米ソ間で
「中距離核戦力(INF)全廃条約」
が締結されました。
これこそが核抑止です。
しかし、この条約ではアメリカとロシアにしか制約をかけていなかったことから、その陰で中国が核戦力を増強する結果となった。
トランプ氏は第1次政権時代の2018年にINF全廃条約を破棄しましたが、中国の核戦力の増強もその一因です。
■共有すべきは戦術核
★兼原
日本が核シェアリングを行う場合、現実的なのは潜水艦に配備する海洋戦術核ではないでしょうか。
陸上配備だと、万が一、核抑止力が崩れた際に真っ先に潰されかねないことからも、潜水艦に配備するべきです。
★河野
潜水艦に搭載される核ミサイルは、基本的には先制攻撃を抑止するための第2撃用ですので、核シェアリングに馴染むかという問題があります。
核シェアリングの大前提として、モスクワや北京を狙うことができるアメリカの戦略核はあくまでも均衡と抑止を目的とする
「使えない核」
であり、もし使うことになったら世界が終わることから、アメリカが共有することは現実的には考えられない。
そのため、共有すべきなのは使用可能な戦術核です。
★兼原
核シェアリングでベストは、オーストラリアがやろうとしているAUKUS(アメリカ・イギリス・オーストラリアの3国間軍事同盟)の枠組みに加わり、アメリカが保有している原子力潜水艦を土台に共同開発を行い、原子力潜水艦隊を作り、ローテーション運用も見据えて4隻配備することです。
そこにアメリカの戦術核を日本の潜水艦に積めば、日本の安全は絶対的なものとなる。
そのためには、海上自衛隊が現在保有している潜水艦ではキャパシティなど様々な課題があることから、原子力潜水艦を日本が保有する必要も生じます。
★河野
核シェアリングを行う場合は、撃つ場合の意思決定に日本が関与することができるメカニズムをアメリカと共に構築すべきです。
そうすればアメリカの核戦略におけるプレーヤーが2人となり、中国が日本の行動と思考を読み解く必要も生じ、中国にとって計算がより複雑になることで抑止力を更に高めることに繋がります。
★兼原
陸上配備の米中距離弾道ミサイルを持ち込めば、日米で実践的な核の使用のための協議が始まります。
しかし、どこに持ち込むかが難しい。
南鳥島でしょうか。
日本がここまで切迫した安全保障環境に置かれているにもかかわらず、核に関する議論は全く進んでいません。
2024年7月、木原稔防衛相(当時)と上川陽子外相(当時)がアメリカとの
「2プラス2」
の場で、史上初めて核問題に関する協議を開催したものの、それ以外はさっぱりです。
なぜ、このような状態なのか。
これは政府が戦後一貫して、核について論じないことこそが安全を確保できるかのような幻想を振りまいていたことに大きな理由があります。
★河野
日本における大きな問題として、
「非核三原則」
があります。
日本で唯一取られている核政策は、日本に核の脅威や威嚇が及んだ際にアメリカの核の傘に全面依存することであり、何かあった際にはアメリカに
「核の傘をよろしくお願いします」
と言うことです。
アメリカがウクライナ戦争で核戦争へのエスカレーションを考慮して動かなかったことを見れば、不安は払拭できない。
そういう意味でも非核三原則に関する議論も進めるべきです。
★兼原
非核三原則は1967年、佐藤栄作総理(当時)が
「持たず、作らず、持ち込ませず」
という内容のものを述べましたが、安全保障上有害なものであり、自民党政権最大の失策と言っても過言ではない。
今こそ、
「持たず、作らず、撃ち込ませず」
という現実的なシン・非核三原則に切り替えるべきです。
それから、核の傘などという僅か3文字の言葉に日本の命運をかけること自体が、余りにも無責任な話です。
今まで核の傘は米軍のどの核ミサイルを指すのか、どこにどれだけ配備されているのか、中国のどこを狙い、核使用を阻止できるのか、撃たれたらすぐに撃ち返せるのか、日本が核攻撃された時点で停戦せずに、必ず反撃する保証はあるのか、ということが日本では全く議論されませんでした。
今こそそのような議論を日米の首脳で行い、石破茂総理自身が国民に対し、日本の核抑止政策の中身について説明しなければなりません。
★河野
ウクライナ戦争に関して言えば、アメリカが核戦争を恐れてバイデン大統領(当時)が
「軍事介入はしない」
と宣言して、軍事的に動かなかった事例です。
他方で1990年、イラクがクウェートへ侵攻した際には30数か国を集めて多国籍軍を編成し、1カ月でイラクを撃退しました。
なぜ、アメリカはイラクで動いて、ウクライナでは動かなかったのか。
ロシアの核戦力がアメリカを抑止したとも言えます。
★兼原
ロシアはアメリカが軍事介入してこないと分かった瞬間に、
「それでは好きにやらせてもらおう」
などと思い、ウクライナへ侵攻したのは明らかです。
■核の議論を求める国民
★河野
ウクライナ戦争が始まった2022年2月、安倍晋三元総理が核シェアリングも含めて、タブー無しで核議論をするべきだと主張しました。
その後、行われた毎日新聞の世論調査でも、核共有を
「議論すべきだ」
と答えた人が約6割に上るまでになった。
★兼原
私は2022年8月、広島テレビの核と平和を扱う番組へ出演した際、大変衝撃を受けた出来事がありました。
番組内で女性の被爆者の方が
「核保有が無いと領土を守れない」
「侵略されることがどれほど恐ろしいか」
と述べたのです。
しかも同番組の世論調査では、安倍晋三元総理が提唱した核シェアリングに広島県民の4分の1が賛成した。
国民は現実的な核の議論を求めているのです。
★河野
そういう意味でも、政治の現場で議論を進めていかなければなりません。
2022年12月に策定された安保3文書では、核の問題について一切触れられておらず、
「非核三原則の継承」
とだけ書かれていましたが、これは今後の課題と考えるべきでしょう。
★兼原
一方のアメリカは、連邦議会が国防権限法で攻撃型原子力潜水艦への戦術核ミサイル搭載を認めました。
トランプ氏はこれを推進する可能性が高く、横須賀や佐世保の米軍基地にも核搭載原潜が入港してくることになるでしょう。
これこそが中国の核攻撃から日本を守るための戦術核であり、台湾有事の前線国家である日本が寄港を拒否することは許されません。
最重要課題は中国に日本への核ミサイルを撃ち込ませないことであり、日本国民を非核の理想の殉教者(自ら信仰する宗教のために命を落とした者。信仰のために死んだ信者)にすることは決してあってはならないのです。
そもそも、核廃絶という理想自体が中国や北朝鮮が大規模な核軍拡を進めている現状においては、理想自体がほど遠いと言わざるを得ません。
広島と長崎の悲劇を繰り返さないためにも、核の議論と憲法改正を早急に進めなければなりません。

<正論>日本は核抑止戦略の構築を急げ 
麗澤大学特別教授、元空将・織田邦男
2024/5/7 8:00
https://www.sankei.com/article/20240507-FSLKWJRLEJJ3PA3BJCT5ZQUM5M/?578363
■対北「専門家パネル」廃止で
対北朝鮮制裁の履行状況を監視する国連安全保障理事会の専門家パネルの任期が2024年4月末で切れた。
任期を2024年5月以降も延長する決議案に対し、北朝鮮と友好関係を結ぶロシアが拒否権を行使し、専門家パネルは廃止に追い込まれた。
これまで北朝鮮は、安保理決議を無視する形で弾道ミサイルを発射し、軍事挑発を続けてきた。
2022年には約60発、2023年は25発以上の弾道ミサイル等を発射した。
2024年に入ってから既に約10発の弾道ミサイル、巡航ミサイルを発射している(2024年4月22日時点)。
2024年4月2日に発射したミサイルは極超音速滑空体搭載の新型中距離弾道ミサイル
「火星16B」
と発表された。
日本の弾道ミサイル防衛システムでは迎撃が難しいミサイルである。
北朝鮮は6回の核実験を実施し、既に小型化、弾頭化を実現している(防衛白書)。
2023年3月には
「戦術核弾頭」
を初公開し、2023年9月には初の
「戦術核攻撃潜水艦」
を進水させた。
2023年9月の最高人民会議では憲法に核戦力強化の明記を決め、核弾頭の大量生産を示唆した。
2027年までに最大242発の核弾頭を保有するとの見積もりもある(米国ランド研究所と韓国峨山政策研究院の共同研究)。
脅威は
「意図」

「能力」
の掛け算である。
北朝鮮は両者を有し脅威は明白だ。
2017年8月、金正恩総書記は
「日本列島如きは、一瞬で焦土化できる能力を備えて久しい」
と述べた。
2017年9月には
「朝鮮アジア太平洋平和委員会」

「日本列島は核爆弾により海に沈められなければならない」

「意図」
を明らかにしている(2017年9月14日、朝鮮中央通信)。
日本の国家安全保障戦略には
「北朝鮮は、核戦力を質的・量的に最大限のスピードで強化する方針であり、ミサイル関連技術等の急速な発展と合わせて考えれば、北朝鮮の軍事動向は、我が国の安全保障にとって、従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっている」
とある。
専門家パネルがなくなれば、対北朝鮮制裁は更に無効化される。
■脅威に政府の動き鈍い
ロシアに弾薬提供した見返りの先端軍事技術支援もあり、北朝鮮の核・ミサイル整備はますます加速するだろう。
日本にとって北朝鮮の非核化は譲れない。
だが、
「重大かつ差し迫った脅威」
の割には、日本政府の動きは鈍い。
バイデン政権の北朝鮮に対する危機意識は希薄である。
米国家安全保障戦略には、
「拡大抑止を強化しつつ、朝鮮半島の完全な非核化に向けて具体的な進展に向けた外交を模索する」
とある。
これは事実上、何もしない宣言に等しい。
トランプ政権が目指した
CVID「完全で検証可能かつ不可逆的廃棄」
の目標は消滅した。
2017年8月、オバマ政権で大統領補佐官を務めたスーザン・ライス氏が
「核なき世界」
という論考を発表した。
「北朝鮮が核を放棄する見込みはない(略)必要であれば、我々は北朝鮮の核兵器を容認できる」
という核容認論である。
バイデン政権はこの延長上にあるように見える。
2024年4月10日の日米首脳共同声明
「未来のためのグローバル・パートナー」
では、
「国連安保理決議に従った北朝鮮の完全な非核化に対するコミットメントを改めて確認する」
とある。
だが
「次回の日米『2+2』の機会に、拡大抑止に関する突っ込んだ議論を行うよう、日米それぞれの外務・防衛担当閣僚に求める」
とあり、非核化への当事者意識も意欲も感じられない。
日本は米国の脅威認識に引きずられてはならない。
■怯えるだけでは御し易し
北朝鮮のICBMが、米国本土に届くようになれば、米国の
「核の傘」

「破れ傘」
と化す。
2023年12月、米国本土に届く固体燃料の
「火星18号」(射程1万3000キロ)
が初発射された。
米国の拡大抑止が機能不全に陥れば、日本は北朝鮮の核の前に為す術を持たなくなる。
脅威に怯え、右往左往して妥協を繰り返すだけでは、主権国家とは言えない。
「独裁国家が強力な破壊力を持つ軍事技術を有した場合、それを使わなかった歴史的事実を見つけることができない」
と歴史家は語る。
北朝鮮を決して侮ってはならない。
ウクライナ戦争で、核大国ロシアは非核保有国ウクライナを核で威嚇、恫喝した。
その結果、核不拡散体制は瓦解寸前にある。
北朝鮮が核放棄しないだけでなく、核保有を目指す覇権主義国家が続々と現れるだろう。
専門家パネルの消滅は、
「核拡散」
の引き金となるかもしれない。
破れつつある
「核の傘」
に執着し、脅威から目を背け、
「非核3原則」
を壊れたレコードのように繰り返すだけでは平和と安定は保てない。
紙幅の関係上、中国の核については触れなかったが、問題は同じである。
核の脅威にただ怯えているだけでは、それを保有している国から見れば、最も御し易い国に違いない。
降りかかる
「核の脅威」
をどう撥ねのけるか。
核抑止戦略の構築は待ったなしだ。
タブーなき議論を直ちに開始し、早急に核抑止戦略を構築しなければならない。

終戦の日に
首相は核抑止の重要性語れ 悲劇を繰り返さぬために 論説委員長・榊原智
2023/8/15 5:00
https://www.sankei.com/article/20230815-M6JD2NW5IVKCJBNJ3E3NVGW5Q4/
78回目の終戦の日を迎えた。
日本は先の大戦で、軍人、民間人合わせて310万人の同胞を喪った。
すべての御霊安らかなれと鎮魂の祈りを捧げたい。
岸田文雄首相や閣僚には靖国神社を参拝してもらいたい。
英霊を追悼、顕彰し、もし日本が侵略されれば今の世代も立ち上がると誓うことが大切だ。
あの悲劇を繰り返してはならないと日本人は願っている。
だが、今の日本が悲劇を防ぐために抜かりなく取り組んでいるかと言えば疑問である。
それを痛感させられたのが、広島と長崎の原爆忌だった。
■原爆忌の2つの宣言
広島平和宣言は、
「核による威嚇を行う為政者がいる」
として、
「世界中の指導者は核抑止論は破綻」
している点を直視するよう訴えた。
「為政者に核抑止論から脱却を促すことがますます重要」
と唱えた。
ウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領による核威嚇が背景にある。
長崎平和宣言は
「核保有国と核の傘の下にいる国のリーダー」

「核抑止への依存からの脱却を勇気を持って決断」
するよう促した。
核抑止に依存すれば
「核兵器のない世界」
は実現出来ないからという。
このような考えは根強いが、はっきり言って、国民の命と安全を脅かしかねない危うい主張である。
日本のメディアの多くは両宣言の核抑止破綻論、核抑止からの脱却論を肯定的に扱った。
例えば毎日新聞は2023年8月7日付朝刊1面トップで
「核抑止論は破綻した」
との大見出しをつけた。
NHK(NEWS WEB)は2023年8月6日配信で
「広島 平和記念式典に約5万人が参列核抑止論から脱却を=v
という見出しで報じた。
米国による原爆投下で日本は唯一の戦争被爆国になった。
東京大空襲、ソ連軍の満州などへの侵攻と並び大戦末期の決して忘れてはならない出来事である。
日本と被爆地が核の惨禍を伝え、廃絶や軍縮の願いを発信するのは当然だ。
ただしそれは、日本と国民の安全を確かなものにする努力とセットでなければならない。
核兵器の威力が極めて大きいため、核抑止とシェルターなど国民保護の態勢を整えなければ万一の際、大変なことになる。
日本を取り囲むように位置する中国とロシア、北朝鮮は核戦力の強化に走っている。
これら専制国家の指導者が核廃絶の呼び掛けに耳を傾けるだろうか。
極めて考えにくいことだが、全核保有国が同時に核廃絶に踏み切っても、その後、どこかの国や勢力が核武装すれば万事休すだ。
日本を含む各国の独立と主権、国民の自由、繁栄は消え失せる。
また、現代の科学技術では、核攻撃をほぼ確実に止める手立ては見つかっていない。
本来であればすぐにも廃絶したい核兵器を、自国または同盟国が戦力化しておかなければ、相手からの核攻撃を抑止できないというのが世界の厳しい構図と言える。
核抑止という概念自体は破綻していない。
そこで日本や韓国は同盟国米国の
「核の傘」
に頼っている。
北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、米英仏の核兵器を抑止力にしている。
「核抑止の破綻」
を信じて核抑止の手立てを放棄すれば、日本の安全と国民の命はすぐさま、今以上に覚束なくなる。
その危うさに政治家やメディアはもっと敏感になったほうがいい。
■核威嚇されたら
中国、北朝鮮の脅威の高まりやロシアのウクライナ侵略を見て、日本人の安保意識は東西冷戦期や平成の時代と比べ、格段に向上した。
岸田政権は2022年12月、安保3文書を閣議決定した。
反撃能力の保有や5年間で防衛費を43兆円にする方針が決まり、大方の国民はこれを是とした。
平和を守るには抑止力が欠かせないという世界の常識が国民の間に浸透し、戦後、日本の防衛努力を妨げてきた多くのメディアも抑止力構築の大切さまでは否定できなくなった。
ところが、核を巡る分野だけは抑止力を保つ必要性が浸透せず、否定する主張が今も目立っている。
核抑止が非核の分野の防衛を支えている点への理解も広がっていない。
もし尖閣諸島(沖縄県石垣市)が侵略されたり、台湾有事に関連して日本が攻撃されたりする際に、中国が核威嚇してきたらどうするのか。
通常兵力の自衛隊が日本と国民を守ろうとしても、核抑止が効いていなければ動けない。
核と非核の両分野で態勢を整えてはじめて抑止力になる。
このような話は防衛、外務両省も国家安全保障局も分かっている。
岸田首相も知識は有しているだろう。
問題は、首相や政府が国民にこれらをきちんと語っていないことだ。
核抑止には不断の検証、改善が必要な点や、地下シェルター整備など国民保護が急がれる点は浸透していない。
戦争の悲劇を繰り返さないため、真剣な努力が必要である。

主張
米韓の核協議 岸田首相は動かないのか
2023/7/23 5:00
https://www.sankei.com/article/20230723-6TCCVGHGIFMCBKYVHU5OQ6HXL4/
核兵器の脅威から自国民を実際に守り抜く取り組みで、岸田文雄首相は韓国の尹錫悦大統領に後れを取っている。
極めて残念と言う他ない。
米韓両政府がソウルで2023年7月18日、米核戦力の運用に関する
「核協議グループ」(NCG)
の初会合を開いた。
これに合わせ、米海軍の戦略原子力潜水艦「ケンタッキー」が韓国・釜山に寄港した。
ケンタッキーは、射程1万2000キロで核装備可能な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)20基を搭載できる。
NCG後の米韓共同文書は、韓国を核攻撃すれば北朝鮮の政権に終末をもたらすと警告した。
尹氏は
「(原潜寄港は)拡大抑止の実行力を強化する韓米両国の意志をよく示している」
と語った。
戦術核兵器の戦力化を進める北朝鮮に対し、米国の
「核の傘」
の実効性を示す狙いがある。
北朝鮮は2023年7月19日未明、日本海へ短距離弾道ミサイルを発射した。
その飛距離は平壌・釜山間と同じ約550kmだった。
北朝鮮の強純男国防相はケンタッキー寄港について
「核兵器の使用条件に該当し得る」
などと述べ、非難した。
北朝鮮の核戦力保有や弾道ミサイル発射は国連の安全保障理事会決議違反だ。
北朝鮮は常軌を逸しており、尹政権が核抑止(拡大抑止)強化を図るのは当然だ。
米韓は年4回程度NCGを開き、米核戦力の運用を含む韓国防衛の計画を深化させる方針だ。
一方、岸田政権の取り組みは十分とは言えない。
核軍縮を呼び掛けたり、核使用と核恫喝を非難したりするに止まっている。
「核兵器なき世界」
の理想を語るのはよいとしても、それだけでは国民を守りきれない現実がある。
廃絶したい核兵器を自国または同盟国が戦力化しておかなければ、相手国からの核攻撃を抑止しきれない―という厳しい、逆説の世界に日本も生きている現実を岸田政権は踏まえる必要がある。
日本は広島、長崎への原爆投下を経験した唯一の戦争被爆国だ。
日韓両国は北朝鮮や中国、ロシアという核武装した専制国家に囲まれている。
韓国の国民と同様に、日本国民も核の脅威から守られなければならない。
国民を守る責務がある岸田首相は核抑止の問題に正面から向き合ってもらいたい。
核抑止の重要性を国民に説き、米国と協力して態勢強化に乗り出すべきである。

米韓、韓国内「核武装論」沈静化図る 米韓高官協議「NCG」初会合
2023/7/18 20:53
https://www.sankei.com/article/20230718-KMLIJA5NEZO2TEORAGUAPZFG7M/
弾道ミサイルの搭載が可能な米戦略原子力潜水艦が2023年7月18日、42年ぶりとなる韓国入港を果たし、米韓は
「核の傘」
に象徴される拡大抑止の強化をアピールした。
同日、米国の核戦略計画に関する情報を共有する米韓の
「核協議グループ(NCG)」
初会合に臨んだ米韓高官は、北朝鮮の核・ミサイル開発に一致して対応する姿勢を強調。
韓国国内でくすぶる
「独自核武装」
論の沈静化を図った。
韓国の李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防相は2023年7月18日、米海軍の戦略原潜ケンタッキーの韓国入港を受け
「米国の韓国に対する拡大抑止が確実に履行されることを行動で示す事例」
だと意義を強調。
北朝鮮に対し
「韓米同盟の圧倒的な能力」
を示すと訴えた。
戦略原潜入港と合わせ、米韓は2023年7月18日、朝鮮半島有事を念頭に置いたNCGの次官級会合をソウルで初開催した。
2023年4月に創設が発表されたNCGは、冷戦期にソ連の核脅威に対応し、米国の核兵器をドイツ、イタリアなど5カ国に配備したとされる北大西洋条約機構(NATO)の
「核計画グループ(NPG)」
がモデルとなった。
NPGとは異なり、NCGの枠組みでは韓国への核配備は行わず、NATO同様の
「核共有」
は想定されていないが、米韓は北朝鮮の核兵器が高度化する中で高まる拡大抑止への不安の払拭に期待を寄せる。
会場には尹錫悦大統領も短時間立ち寄り、
「北朝鮮が核兵器を使う意欲を失うよう、韓米同盟で拡大抑止の実行力を強化しなければならない」
と挨拶。
米韓は会合後、
「韓国に対する如何なる核攻撃も、即刻、圧倒的、決定的な対応に直面する」
と北朝鮮を警告する共同文書を発表した。
会合後の記者会見で、 韓国国家安保室の金泰孝(キム・テヒョ)第1次長は
「如何なる核危機においても、韓米首脳間の合意がなされる体系を用意することで一致した」
と述べ、緊密な協力体制を強調。
「別途の核武装を考慮する必要がないほど、十分で確実な拡大抑止が可能だと確信した」
と述べ、韓国国内の対米不信の払拭を図った。
米国家安全保障会議(NCG)のキャンベル・インド太平洋調整官は会見で、NCGが日本を含む3カ国の協議体に発展する可能性について問われ
「(米韓)2者間の努力に完全に集中している」
と述べた上で、
「将来的には他の分野まで拡大していくことが可能だ」
と含みを残した。

米韓、拡大抑止の強化協議 核協議グループ初会合
2023/7/18 11:47
https://www.sankei.com/article/20230718-CHMALF3JTBKIJH7TBS6V3KZPUM/
米韓両政府は2023年7月18日、核戦略を定期的に話し合う核協議グループ(NCG)の初会合をソウルで開いた。
核戦力開発を進める北朝鮮に対抗し、米国の
「核の傘」
提供を軸とした拡大抑止を強化するため、情報共有や協議体系の構築などを協議する。
韓国大統領府によると、尹錫悦大統領が会場に短時間立ち寄り
「北朝鮮が核兵器を使う意欲を失うよう、拡大抑止の実行力を強化しなければならない」
と述べた。
大統領府の金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第1次長と米国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官らが共同で主宰し、両国の国防・外交当局者らが出席した。
NCGの創設は、2023年4月に国賓訪米した尹氏とバイデン大統領の会談で発表した共同文書
「ワシントン宣言」
で合意した。(共同)

米韓、18日にNCG初会合 ソウルで拡大抑止強化協議
2023/7/8 9:16
https://www.sankei.com/article/20230708-RAYLG6FBJ5IAFPLBVXJ5FERNKE/
韓国大統領室は2023年7月8日、米韓首脳が2023年4月に創設で合意した核協議グループ(NCG)の初会合を2023年7月18日にソウルで開くと発表した。
核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威に対抗するため、米国の
「核の傘」
提供を軸とする拡大抑止力を強化するための具体策を協議する。
韓国大統領府の金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第1次長や米国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官らが参加する。
米韓の国防、外交当局者も出席する。
韓国大統領府は
「拡大抑止強化のための情報共有や協議体系、実効策などを話し合う」
と説明した。
今後、定期的にNCGの会合を開くことで
「核を含む米国の力が総動員され、韓国の戦力と結び付くことでより実効性のある拡大抑止力が構築されることを期待する」
と強調した。(共同)

「核なき世界」首相に高い障壁 歴史に刻んだ広島 阻む中露
2023/5/21 21:14
https://www.sankei.com/article/20230521-NHZZUJK57ZKA3LGTW467KSJ5SM/
岸田文雄首相が先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)で最も強く訴えたのは、自身がライフワークとする
「核兵器のない世界」
への決意だ。
首相は厳しい安全保障環境の現実を理解しつつ、核軍縮・不拡散に向けた歩みを進める必要性を説いた。
ただ、
中国は
「不透明な核戦力の増強」
が指摘され、
ロシアは
「核の威嚇」
を繰り返している現実がある。
首相が掲げる究極の理想に近づくには依然と高いハードルが立ちはだかる。
(中略)
G7首脳が足並みを揃えたとしても、現在の国際情勢を見れば、核軍縮の機運は寧ろ遠のいている。
ロシアはウクライナに核兵器の使用をちらつかせ、米露間の核軍縮協定、
「新戦略兵器削減条約(新START)」
は履行停止となったままだ。
中国に関しては、米国防総省は2022年11月に発表した報告書で、現在推定される核弾頭400発超から2035年までに約1500発を保有する可能性があると分析している。
世界的な核軍縮に向けて、首相は米国の
「核の傘」
を含む拡大抑止を強化しつつ、中露を核軍縮の議論に巻き込むという難しい対応を迫られる。
現実を理想に近付けるため、これからは決意より実効性のある行動が求められる。

広島サミットと核 「核なき世界」へ核抑止の強化を
2023/5/21 17:38
https://www.sankei.com/article/20230521-UWVRRXKD4NJYNF45DL77CWWSFE/
(前略)
レーガン元米大統領は
「核戦争に勝者はいない」
とも喝破した。
だが中露は、同氏の言葉を空念仏と見なすかのような振る舞いを続ける。
ロシアが2023年2月に米露の新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止し、世界は
「核の無法時代」
に突入した。
米国防総省は、中国が核弾頭の保有数を2023年現在の約400発から2035年までに1500まで増やすと分析する。
ロシアは大量の高濃縮ウランを中国に提供し、核戦力の増強を支援しようとしている疑いが強い。
自由世界はこうした状況に照らし、核戦争を防ぐのは核兵器であるという逆説的現実を率直に見据え、中露の核に対する抑止力を強化していく必要がある。
米国の核兵器研究の最大権威であるローレンス・リバモア国立研究所は2023年3月に発表した報告書で、中露の核に同時に対処するには、米国が核戦力を強化すべきであると提言した。
米国は既に、ICBMの近代化や新型ステルス戦略爆撃機B21の開発を進めている。
加えて、攻撃型潜水艦に搭載可能な海上発射型核巡航ミサイル(SLCM-N)や移動式車両搭載ICBMの開発も急務だ。
米国に
「核の傘」
を提供される日本も、中露や北朝鮮の核の脅威を睨み、反撃能力の確保などを通じた抑止力強化に主体的に取り組まなくてはならない。
それこそが、私たちが原爆の悲劇を2度と繰り返さないという
「広島への誓い」
となるからだ。

主張
サミットの開幕 国民守る核抑止も論じよ
2023/5/20 5:00
https://www.sankei.com/article/20230520-GVNQ2HN2XNKQVM5ON2QY76TANY/
先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の初日、G7首脳が広島市・平和記念公園内の原爆資料館を視察し、被爆者と面会した。
揃って原爆慰霊碑に献花した。
先の大戦末期、米国が広島と長崎に原爆を投下した。
多くの人が死傷した。
被爆で今も苦しむ人々がいる。
岸田文雄首相の働き掛けにより、核保有国の米英仏を含むG7首脳が、悲惨な被害の実相を伝える展示を視察し、犠牲者を悼んだことは意味がある。
岸田首相はサミット開幕に先立ち、
「『核兵器のない世界』という理想を目指す機運が後退している」
「(サミットを)再び盛り上げる転機にしたい」
と語った。
サミットは、この理想に向けた特別文書
「広島宣言」
を準備しているという。
岸田首相主導の今回の訪問や
「広島宣言」
は内外で歓迎されるだろう。
ただし、それだけでは足りない。
核の惨禍を避ける上で核抑止態勢の整備が必要な現実から目を逸らしているからだ。
広島サミットだからこそ、核抑止の重要性もきちんと論じるべきだ。
岸田首相は国民に、理想の追求と同時に核抑止も必要だと正直に説く必要がある。
それなしには核の現実的な脅威に対処する緊急性への理解が国民の間で広まらない。
周辺国の核の脅威が高まっている今、米国の核の傘など日本と国民を守る核戦力の充実が課題になっているのである。
ウクライナのゼレンスキー大統領のサミット対面出席が決まったが、侵略者のプーチン露大統領は核使用の恫喝を重ねてきた。
北朝鮮も同様だ。
核武装した専制国家の指導者はG7が核廃絶の理想を語っても聞く耳を持たない。
人類の科学技術は、核ミサイル攻撃を確実に迎撃できる水準には程遠い。
もし全核保有国が核を廃絶しても密かに核兵器を作る国や勢力が現れれば万事休すだ。
これらから、核兵器の脅威には自国または同盟国の核兵器で備える核抑止の態勢が欠かせない。
そこで日米同盟や米韓同盟、北大西洋条約機構(NATO)が存在している。
大量破壊兵器の生物・化学兵器の抑止にも核兵器が役割を果たしている。
中露や北朝鮮は核戦力増強に余念がない。
岸田首相には、厳しい安全保障環境を直視し、核の脅威から国民を守る手立てを講じてもらいたい。

「今こそ核抑止力の拡大を」 被爆3世の女性が訴え
2022/8/4 19:25
https://www.sankei.com/article/20220804-XPB5MO4YQBNRNOHH4YTNTUPURY/
77年前と同じ過ちを繰り返させないように−。
ウクライナに侵攻したロシアの
「核の脅威」
に晒され、中国や北朝鮮の核戦力増強が日本の安全保障を脅かす中、広島出身で被爆3世の女性が現実認識を欠く観念論的な平和主義からの脱却を訴えている。
核抑止力の拡大こそ戦争被爆国の責務だという。
女性は、都内在住の橋本琴絵さん(33)。
会社員として勤務する傍ら、月刊誌などで著述活動をしており、2022年夏に
「被爆三世だから言う 日本は核武装せよ!」(ワック社)
を上梓した。
昭和20年8月6日、祖母が広島で入市被爆。
生前、日本が原爆を投下されたのは
「新型爆弾を持っていなかったから」
と話していたのを覚えている。
原爆の日が近づくと
「平和教育」
として、熱線を浴びて人間の眼球が溶けるシーンが挿入された戦争アニメを見せられた。
「『戦争は怖い』と植え付けられる」
「でもどうすれば戦争を回避できるのか、先生は教えてくれなかった」
中には、共産主義国家だったソ連の核実験は平和利用で、米国の核は戦争目的だと主張する教員もおり、子供心にも違和感が拭えなかった。
今となっては、特定のイデオロギーを受け入れさせるための
「思想統制だったのでは」
とすら思えてしまう。
実際、広島でも反核や非核一辺倒ではないという。
ただ、幼少時の刷り込みにも似た教育が、核抑止に関する議論すら封じる一種の圧力的な空気の醸成に寄与したと、橋本さんはみる。
橋本さんは、非核三原則とともに戦後77年間は日本に原爆を投下されなかったことに縋り付く余り、
「反核だけが是」
とされ、核抑止の議論が封殺されてきたと主張。
その上で
「迫る対外的な危機に目を背け、観念的に核廃絶を唱えても、我が国の平和と安全は得られない」
と話す。
日本の究極の安全保障手段は米国が提供する核抑止力(核の傘)だ。
北大西洋条約機構(NATO)加盟のドイツなども米国と戦術核を共有している。
橋本さんは
「核使用の悲惨さを知る唯一の戦争被爆国として同盟に基づく核共有の権利を保有している」
と指摘する。
ウクライナ侵攻に際し、ロシアのプーチン大統領は核兵器の使用を辞さない強硬姿勢を示した。
冷徹な国際政治の現実を前に
「平和で安全な国を次代に繋ぐ責任がある」
と、3児の母親としても声を上げずにはいられなかったという。
核を持たないウクライナの悲劇を目の当たりにして日本の冷静な国民世論も、核共有の議論を求めているとも考えている。
「非核を唱えるだけで国を守れるはずがない」
「妄信は捨て去るべきだ」

台湾有事における核恫喝にどう備えるA
正論2023年6月号
同志社大学特別客員教授・元国家安全保障局次長 兼原信克
■前線国家の核の心理
核抑止を巡る核兵器国と非核兵器国の間には、独特の心理的なダイナミズムが働く。
2021年にグローバル・アフェアーズ・シカゴ評議会が、ヘーゲル元米国防長官を中心に取りまとめた
「核拡散防止と核の保証」
報告書作成に筆者も参画したが、そこで中心的な課題の1つはとなったのは、核の保証(reassurance)の問題であった。
同報告書が指摘するように、核兵器国は
「自らの核兵力で敵勢力を十分に抑止できる」
と考えるが、前線に立つ非核兵器国の同盟国は更なる核の絶対的保証を求める。
自らが捨て駒となることを恐れるからである。
この切羽詰まった捨て駒心理が、敵の平和攻勢や微笑外交の対象となる。
フランスが核兵器保有に踏み切った時、ドゴール将軍は、
「パリが核攻撃された時、ワシントンは自らを犠牲にしてモスクワを攻撃するのか」
と嘯いたと言われる。
その発言は正鵠を得ている。
米国は、第二次世界大戦後、それまでの孤立主義的な平和主義を捨て、米軍を大西洋及び太平洋を越えて前方展開し、同盟国に核の傘を被せて、ロシアの膨張を阻止した。
それは裏を返せば、北米大陸からできるだけ遠方で戦うことである。
9・11米国同時多発テロの後、米軍がNATO軍を率いてタリバンが本拠地を構えるアフガニスタンになだれ込んだ時、第43代ブッシュ大統領は
「戦場は敵地だ(bring the war to the enemy)」
と言い放った。
国民、国土を守る指導者の当然の判断であろう。
しかし、欧州や極東で前線となる国家は異なる考え方をする。
冷戦中、西ドイツ人は、自らが核の戦場となるかもしれないと感じていた。
眼前の敵は同族の東ドイツ人である。
西ドイツは地上国境を挟んで強大な赤軍の戦車師団と向かい合っていた。
核兵器は、通常兵力で弱い方が先に持ち出す。
NATOは核の先行不使用を拒否し続けた。
しかし一旦、NATO側が核を使えば、ロシア側も容赦はしないであろう。
東西ドイツは核の戦場になる。
だが、そのまま米露の超大国が核の応酬に向かうはずがない。
どこかで停戦協定が結ばれる。
捨て駒にされ、核の廃墟となったドイツのいない欧州の平和が回復される。
そんなことは認められない。
だから、戦争は絶対に始めさせてはならない。
それがドイツの結論である。
ドイツが、自国領内に大量に持ち込まれた米国の核兵器の運用に執念を見せたのは当然である。
ドイツ国会は、早くも1956年には核兵器運搬手段の保有決議を採択している。
それがやがてNATO核という核共有の仕組みに発展していく。
また、ロシアが、1980年代に、SS20と呼ばれる中距離核ミサイルを東欧に配備しょうとした時、時の西ドイツ首相ヘルムート・シュミット氏は、米国のパーシングU核ミサイルの配備に拘った。
ロシアがSS20を西ドイツに使った時、米国は戦略核で反応しないだろうと恐れたのである。
シュミット首相は、ロシアがSS20を撤収すれば、パーシングUは配備しないという条文を突き付けて、ブレジネフ書記長と直談判に及んだ。
結論は、中曾根康弘首相の介入も奏功して、米露間の中距離核戦力(INF)全廃条約となった。
米国から見れば、北極海を挟んで米露の大量の戦略核が相互に照準を合わせており、核の相互抑止は十分に効いていると言いたいところであろう。
ドイツも米本土と同様に米戦略核によって守れらていると言いたいところであろう。
そのような狭隘で合理的な軍事的論理は、政治指導者であるシュミット首相の耳には入らなかった。
ドイツ国民を指導せねばならないシュミット首相は、一分の隙も無い東西対称な万全の抑制体制構築を望んだのである。
■核抑止力の信頼性を高める
それでは日本はどうすれば良いのか。
日本の独自核武装の道は、核不拡散条約の下で封じられている。
被爆者の方々は、生涯を懸けて広島、長崎の悲劇を訴えてきた。
日本が核武装の道を選ぶことはできない。
しかし、中国の恫喝を跳ね返す核抑止力は必要である。
そもそも日本が核不拡散条約を締結する際に、その代償として米国の核の傘が提供された。
日本政府は、核の傘が真に機能するように米国に常に求め続ける権利があり、また、国民に対してその義務を負う。
平和主義は尊いが、自らの命を犠牲にしてまで貫くガンジーやキング牧師のような聖者の平和主義は、国民の生命財産に責任を持つ政府の取り得るところではない。
日本が取り得る方法は3つある。
第1に、反核団体を支持者に持つバイデン政権が頑なに拒否している海洋核(潜水艦搭載中距離巡航ミサイル)の復活である。
元々空母とその艦隊を守るための兵器であるが、日本に対する戦術核攻撃への反撃にも用いると米国に公言させれば良い。
日本は非核三原則を改め、核搭載潜水艦の日本寄港を認めることになる。
そもそも寄港は本当の持ち込みではない。
ただの給油である。
核ミサイルは沖合から米国が自らの意思で発射する。
日本がその運用に介入することはできない。
第2は、トランプ政権によるINF全廃条約破棄後に米国が再生産に乗り出した地上配備の核ミサイルの日本持ち込みである。
核兵器を陸に持ち込むのであるから、その配備、更には運用に関してまで、日米間で緊密な協議が必要になる。
現在やっているような中堅官僚の拡大抑止協議のレベルでは役不足である。
首脳、「2+2(日米外務防衛大臣会合」を巻き込んだ最高レベルの意思決定が必要になる。
敵は、日本に持ち込まれた核ミサイル基地を狙うであろうが、当方もまた、敵のミサイル基地を狙うことになる。
そうして相互抑止が可能になる。
国会やメディアで、未だに
「一方的に丸裸になれば安全だ」
というような議論が開かれるが無責任な話である。
ただし、核兵器を持ち込む地方公共団体の理解を得るのは至難の業であろう。
お隣の韓国では、北朝鮮の核武装の進展に悩んで核武装論が出ている。
独自核は無理としても、韓国は割と早期に米国の地上核の再配備に同意するのではないか。
そうなれば米韓同盟だけが核化し、日本は核の真空地帯になる。
中国は、脆弱な日本が一番核で恫喝しやすいと考えるであろう。
第3に核の共有である。
米国の海洋核が復活すれば、日本の主力潜水艦に米国海軍人クルーを搭乗させ、同時に米国の核ミサイルを搭載する。
日米の
「ダブル・キー」
で核ミサイルを発射する。
本来であれば、潜航能力の高い原子力潜水艦が望ましいが、ディーゼル潜水艦でも不可能ではない。
実際、イスラエルの核兵器はドイツ製のドルフィン型ディーゼル潜水艦に搭載されていると言われている。
日本が共有する海洋核は、先行使用のためのものではない。
日本に核攻撃があれば、索敵の難しい海中から確実に報復するための第2撃用の核ミサイルになる。
ただし、冷戦初期からドイツなどの言い分を取り入れて独自の核戦略に取り組んできたNATOと異なり、非核三原則の下で、3四半世紀の間、核抑止について米国に一方的に依存してきた日本である。
今更、核共有と言い始めても米国は嫌がるであろう。
そもそも米海軍は取り扱いの難しい核兵器の再搭載に消極的と言われている。
中国と北朝鮮の増大する核の脅威に対抗するために、
「日本は自らの核武装さえ考えている」
と嘯いて、本気で米国にしがみつかない限り、米国が日本との核共有を検討することはないであろう。
■曖昧政策排せ
これから米中の核競争はどこへ向かうのか。
中国の核軍拡は凄まじく、2035年には核弾頭数が1500発を数えると言われている。
それは米国が新戦略兵器削減条約(新START)下で許容されている常備配備弾頭数に匹敵する。
中国は、英仏のように一撃必殺のカウンターバリュー(大都市攻撃)の第2撃核能力を保持するだけではなく、米露のようにカウンターフォースで敵の報復攻撃能力を第1撃で叩き潰す超大国製の核戦力を持とうとしている。
そうなれば、誤謬による核戦争勃発阻止のために、米中間では徹底した透明性の確保と相互信頼の醸成が必要となる。
米露間では、ウクライナ戦争開始までは、そのような核軍縮・軍備管理の仕組みが存在した。
中国も、米国やロシアと、核軍縮・軍備管理の枠組みに入る必要がある。
そうなれば、一切の曖昧さは許されない。
敵の誤算を招けばそれは大規模な核の応酬に繋がるからである。
台湾を巡る米国の曖昧政策は放棄されねばならない。
そうなれば、台湾海峡を巡る冷たい平和が実現する。
それは、中国が遠い将来民主化するまで続くことになるであろう。

被爆国にこそ必要な「核抑止戦略」
麗澤大学特別教授・元空将 織田邦男
正論2023年4月号
日本は戦後最悪の安全保障環境に直面している。
ロシアは2022年、ウクライナ侵略戦争を始め、未だ出口が見えない。
中国は
「偉大なる中華民族の復興の夢」
を掲げ、台湾武力併合を否定しない。
北朝鮮は2022年、37回、約70発の弾道ミサイルを日本海などに発射した。
核弾頭の推定保有数は40〜50発とされ、7回目の核実験も準備中と言われる。
こんな中、2022年12月、安全保障関連3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)が閣議決定された。
2022年12月16日の米紙ウォールストリート・ジャーナルは、
「The Sleeping Japanese Giant Awakes(「眠れる巨人」日本が目覚める)」
と題する社説を掲載し、日本の歴史的な変化であるとして、政治的リスクを取った岸田文雄首相を高く評価した。
国家安全保障戦略(以下、安保戦略)では、パワーバランスの歴史的変化と地政学的競争の激化に伴い、国際秩序は重大な挑戦に晒されており、その認識の下、国際協調を旨とする積極的平和主義を維持しつつ、我が国を守る第一義的な責任は我が国にあるとして、安全保障上の能力と役割を強化するとした。
国益実現のため、防衛力のみならず、外交、経済、技術、情報といった諸力を総合的に用いた戦略的アプローチを重視し、サイバー、海洋、宇宙、技術、経済など全方位で安全保障に取り組むこととしている。
現実的でバランスの取れた優れた戦略である。
我が国にとって最大の懸念は、中国の動向である。
2023年3月から習近平国家主席による3期目の政権が始める。
習近平政権は側近をイエスマンで固め、独裁色を更に強めた。
透明性を欠いた軍拡を背景に、力による一方的な現状変更の試みは、その権威主義的、拡張主義的傾向と相まって、我が国のみならず国際社会の懸念材料となっている。
安保戦略ではこれを
「最大の戦略的な挑戦」
とし、
「脅威」
とは表現していない。
米国と日本では地政学的にも脅威認識は違って当然であるが、米国の安保戦略と歩調を合わせたようだ。
国家防衛戦略は、従来の防衛計画の大綱に代わるものとして新たに策定された。
従来のような防衛計画の方向性を示すだけでなく、安保戦略を達成するための目標を設定し、具体的なアプローチと手段を明示している点は理解しやすい。
今回の3文書の目玉は、我が国への武力攻撃に対する抑止力向上の鍵として
「反撃能力」
の整備を明記すると共に、今後5年間で関連経費を含む防衛費を国内総生産(GDP)比2%まで引き上げる方針を明示したことである。
安倍政権でも成し遂げられなかったことであり、積極的に評価したい。
■安保戦略の欠陥
他方、安保戦略の最大の欠陥は
「核抑止戦略」
が欠如していることだ。
中国、ロシア、北朝鮮という核、ミサイルを保有する独裁国家に囲まれる環境下にあって、
「核抑止力戦略」
の欠如は画竜点睛を欠く。
安保戦略は31ページの労作にもかかわらず、核抑止関連の記述はほんの数行に過ぎない。
それらしきは
「核を含むあらゆる能力によって裏打ちされた米国による拡大抑止の提供を含む日米同盟の抑止力と対処力を一層強化する」
の1文である。
「具体的に」
とはあるものの、
「日米の役割・任務・能力に関する不断の検討を踏まえ、日米の抑止力・対処力を強化するため、同盟調整メカニズム等の調整機能を更に発展させつつ、領域横断的作戦や我が国の反撃能力の行使を含む日米間の運用の調整、相互運用性の向上、サイバー・宇宙分野での協力深化・・・」
と続く。
核抑止の具体策とは、とても言えない。
安保戦略の冒頭、安全保障の基本原則に
「非核三原則を堅持」
と明記したことにより、核の脅威から日本を守るオプションを自ら縛り、思考停止してしまっている。
折角の安保戦略だけに極めて残念である。
今回の3文書策定の目的が
「反撃能力」
「GDP比2%」
の実現であったため、政争の具になりかねない
「非核三原則」
には、出来る限り触れたくないとの思惑が働いたのだろう。
今後、核に係る戦略環境は益々悪化することが予想される。
安保戦略は
「おおむね10年間の期間を念頭に置く」
とある。
今後10年間、
「非核三原則」
を金科玉条として神聖不可侵化し、自縄自縛に陥るのは柔軟性に欠け、甚だ危険である。
「米国による拡大抑止の提供」
を念仏のように唱え続けることは早晩できなくなる可能性がある。
せめて
「核の傘」
の信頼性、実効性向上の方向性、そして情勢急変の際の対処方針くらいは盛り込むべきであった。
ジョー・バイデン米国大統領は2023年1月13日(日本時間14日)の日米首脳会談で、反撃能力の保有を含む日本政府の抜本的な防衛力強化を高く評価した。
だが核抑止については、
「核を含むあらゆる能力を用いた、日米安全保障条約第5条の下での、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを改めて表明したい」
(日米共同声明)
とそっけない。
日本が米国に対し、新たに何も要求しないので当然こういう状況になる。
■感情論に流されるな
安保戦略に
「非核三原則を堅持」
とあるのは、
「核兵器のない世界」
の実現をライフワークとする岸田首相に忖度したこともあるのだろう。
岸田首相は
「私は被爆地・広島の出身であり非核三原則を厳守する」
としばしば語っている。
2023年5月のG7サミットを広島で開催し、核軍縮の機運を高める取り組みとして、全首脳で広島平和記念資料館を訪れるという。
結構なことだ。
だが、
「被爆地・広島出身」
だから
「非核三原則を守る」
という発言は、日本の防衛に責任を有する総理大臣の発言としては甚だ不適切である。
岸田首相は2023年1月25日、
「国民の命を守り抜けるかという観点から防衛力の抜本的強化を具体化した」
と答弁した。
同様に、非核三原則が
「国民の命を守り抜くという観点から」
最良の政策だからこれを厳守するというならいい。
だが、現実はそうなっていない。
核が出現して以来、核保有国同士の戦争は起きていない。
また北大西洋条約機構(NATO)のように、ロシアに対する核抑止として、米軍の核を国内に備蓄し、共有している国もある。
他方、ウクライナは現在、ロシアの核の威嚇、恫喝に翻弄されている。
ウクライナはソ連崩壊時、世界第3位の核保有国であった。
だが、米、英、露とブダペスト覚書(1994年12月5日)を、そして、中、仏とは個別の取り決めを結び、国連安全保障理事国が領土の一体性と安全を保障したことによりウクライナは核を放棄した。
核拡散防止条約(NPT)にも加盟し
「ウクライナ版非核三原則」
を順守していた。
だが2014年、ロシアによってクリミア半島を奪われ、そして今、本土への侵略を許している。
核を少数でも保有し続けていればロシアの侵略はなかったとも言われる。
「ウクライナ版非核三原則」
は侵略の抑止に役に立たなかったことは明確だ。
非核三原則については、
「被爆国だから」
といった感情論に流されるのではなく、今一度、効能を冷静に検証してみる必要がある。
少なくとも
「唯一の被爆国」
というのは
「特権」
でもなければ、敵が攻撃を躊躇するような
「抑止力」
にもなり得ない。
かつて清水幾太郎が著書
『日本よ国家たれ 核の選択』
で述べた通りである。
「被爆国だから非核三原則」
という論理は通用しないのだ。
為政者として、
「核兵器のない世界」
の実現を目指すというのであれば、やらなければならないことが2つある。
1つは
「どのようにして」
というロードマップを示すことであり、
2つ目は、それが実現するまでの間、
「どうやって国民の命を守るか」
という戦略を示し、国民を納得させることだ。
バラク・オバマ元米大統領は
「核なき世界の実現」
を掲げてノーベル平和賞を受賞した。
だが現実には、新戦略兵器削減条約(新START)で戦略核の配備数を1550発に削減しただけである。
備蓄数量の制限はなく、核廃絶に対して実質的な貢献はなかった。
オバマ元大統領本人も
「核抑止の意義を否定しない」
と語っている。
「核なき世界」
「核使用を断固拒否」
と叫ぶだけでは、為政者の責任を果たすことにはならないのだ。
被爆国だからこそ、2度と核の惨禍を受けることがないよう、現実に立脚した核抑止戦略を構築しなければならない。
■「核」の脅威を直視せよ
ウクライナ戦争では、国連安保理の常任理事国が核をちらつかせながら侵略戦争を実施した場合、誰もこれを止められないという現実を突き付けられた。
国連も全く無力である。
頼みの米国もロシアの侵略を抑止できなかった。
そればかりか、ロシアによる核の脅威によって、米国の軍事行動が逆に抑止されてしまった。
核兵器は破壊力が大き過ぎ、最早使えない兵器と言われて久しい。
だが、ウクライナ戦争は
「核は使われない限り有効である」
という
「ルトワックのパラドクス」
を証明してしまった。
また核による威嚇、恫喝が、通常戦力では無力化できないという現実も明らかになった。
核による威嚇、恫喝は大きな政治力を持つ。
「その国のリーダーが正気でないと認識された場合、更に有効性が増す」
という現実もある。
北朝鮮の金正恩総書記、ロシアのウラジミール・プーチン大統領、中国の習近平主席に共通していることは、いざとなれば何をしでかすか分からない独裁者と見られていることだ。
NPT体制も崩壊寸前にある。
5つの常任理事国以外に核保有を認めないこの条約には、核保有国が核軍縮を行うと共に、非核国に対し核の使用(威嚇、恫喝を含む)をしないという前提があった。
だが完全に崩れ去った。
この現実を目の当たりにした金正恩総書記は、今後、核の廃絶には決して応じないだろう。
北朝鮮は深刻な経済的困難に直面しながらも、軍事面に資源を重点的に配備し続けている。
特に弾道ミサイルについては、国連安保理決議に違反して開発し続けている。
北朝鮮に核、ミサイルを放棄させる原則、
「完全かつ検証可能で不可逆的な解体」
(CVID:Complete, Verifiable, and Irreversible Dismantlement)
は最早死文化した。
■「核の傘」が「破れ傘」になる日
北朝鮮は2022年11月、
「火星17号」
を発射した。
米国全土を射程に収める可能性があるミサイルだ。
報道によると、かなりの技術的進歩があったとされる。
実戦配備されるのは時間の問題であろう。
その時点で、米国の拡大抑止、つまり、
「核の傘」

「破れ傘」
になる可能性がある。
「拡大抑止の提供」
とはいえ、ワシントンを犠牲にしてまで米国が日本を防衛するとは考えられないからだ。
同様なことが1970年代後半、欧州で起こった。
ソ連は中距離核ミサイル(SS20)を配備し、欧州との間で中距離核戦力(INF)に不均衡が生じた。
SS20で欧州を攻撃された場合、米国は果たして本土を犠牲にしてまで戦略核で報復してくれるのか。
米国の
「核の傘」
に疑念を抱いた欧州は、SS20と同等のINF(パーシングUミサイル、地上発射型巡航ミサイル)の欧州配備を米国に迫った。
INFの欧州配備で均衡が実現するや、米ソ軍縮交渉が始まった。
1987年、INF全廃条約として結実し、INFは全廃された。
軍拡によって軍縮を実現させた成功例である。
だが、皮肉にもこの成功が、現在の米中の著しいミサイル・ギャップを招いた。
INF全廃条約の制約を受けない中国は、日本、グアムを射程に収める短・中距離ミサイルを着々と整備し、今や1900基が配備されているという(ブラッド・ロバーツ元米国防次官補代理、2020年3月)。
片や米国の保有はゼロである。
「力の不均衡」
は戦争の可能性を高める。
憂慮したトランプ政権はINF全廃条約から脱退した。
米国は今、INFを急ピッチで開発中である。
中国は通常兵器のみならず、核戦力でも米国を凌駕しようとしている。
2021年夏、地上発射型弾道ミサイルのサイロが約300基建設中であることが明らかになった。
2021年12月、ロイド・オースティン米国防長官は、中国は2030年までに核弾頭を約1000発に増勢し、核戦力の3本柱(地上配備、潜水艦発射、戦略爆撃機搭載)強化を目指していると述べた。
2022年11月、米国防総省は報告書を公表し、中国が現在の増強ペースを維持すれば、2035年には核弾頭が1500発まで増強される可能性が高いと上方修正した。
米国の実戦配備の戦略核とほとんど同レベルになる。
戦略核で均衡すれば、INFの不均衡が決定的意味を持つことになる。
日本、韓国、台湾などへの米国の
「拡大抑止」
は無効化され、
「核の傘」

「破れ傘」
になる公算大である。
1970年代後半の欧州事情の再現である。
■米中のミサイル・ギャップ
2021年4月、米戦略軍司令官チャールズ・リチャード大将は議会証言で、潜水艦発射の戦術核ミサイルの配備を進めなければならない、拡大抑止の保証が十分ではなくなっていると述べた。
だが、バイデン大統領は、トランプ前大統領が決定した潜水艦発射戦術核ミサイルの開発を白紙に戻した。
2022年11月、リチャード大将は、
「我々が体験しているウクライナ危機は、ウォーミングアップに過ぎない」
「もっと大きなものが待ち構えている」
「間もなく我々は試練を迎えるだろう」
と警鐘を鳴らした。
日本は、この潜水艦発射戦術核ミサイル白紙化の再考をバイデン大統領に強く求めなければならない。
岸田首相がバイデン大統領に対し、日本の立場を主張して白紙化の再考を促したかどうか、筆者は寡聞にして知らない。
「力の信奉者」
である中国への抑止が崩れれば、台湾海峡の平和と安定は危うい。
日本に向けられたINFを抑止し、威嚇、恫喝をどう無効化するか。
日本が
「核抑止戦略」
の構築を急がねばならない理由がここにある。
核に対する抑止は核であり、通常兵器では成り立たない。
欧州で核戦力をもって核戦力を全廃したように、米中のINFの均衡を取り戻し、米中の核軍縮交渉を開始させなければならない。
2021年3月、米インド太平洋軍司令官は議会に要望書を提出した。
中国への抑止は崩れつつあり、今後完成する中距離弾道ミサイルは第1列島線(九州、沖縄、台湾、フィリピン、南シナ海へのライン)に配備すべしとの要望である。
最近、米政府は日本の世論の理解得るのが難しいとの理由で日本配備を見送るという報道がある一方、米政府は日本配備を打診中であり、日本は配備受け入れの方向で協議を本格させるという報道もある。
真偽は不明であるが、事は日本の安全保障に直接関わる。
政府は日本国民を説得し、日本配備を実現させるべきである。
1970年代後半、マーガレット・サッチャー英首相やヘルムート・シュミット独首相(いずれも当時)が、反対世論を押し切って米国にINFを持ち込ませたのを想起すべきだ。
「力の均衡」
を取り戻し、米中の核軍縮交渉開始に向け、日本が主導的役割を果たすべきである。
■非核三原則の見直し
米国の核政策は
「NCND(Neither Confirm, Nor Deny)」
つまり否定も肯定もしない政策を採っている。
中距離弾道ミサイルについても、核弾頭が搭載されているかどうかは明らかにしないだろう。
ミサイルを日本に配備する場合、非核三原則が足枷になることは確かだ。
だが、事は日本の安全保障なのである。
必要があれば、非核三原則も見直すべきだ。
国民の安全確保が目的であり、非核三原則自体が目的であってはならない。
安倍晋三元首相は生前、米国の拡大抑止強化の議論を進めるため、
「核共有の議論をすべし」
という高めのボールを投げた。
直後の世論調査では国民の約8割が
「議論すべき」
に賛成だった。
自民党はそれを受け、安全保障調査会で核抑止に関する勉強会を開いた。
だが、
「唯一の戦争被爆国として、世界平和に貢献する我が国の立場は絶対に崩すべきではない」
と情緒的で浅薄な議論に終始した。
宮澤博行国防部会長(当時)が
「議論しない」
と打ち切りを決め、検討会はこの1回をもって
「アリバイ作り」
に終わった。
せっかくの機会を自民党自らが潰し、国民に思考停止を強要した。
核兵器を自前で保有するのは、国民感情、国際世論、実験場、そして核拡散防止条約や原子力基本法などの問題もあり、現実的ではない。
だが
「持ち込ませず」
の原則は、時の内閣の責任で変更できる。
2010年3月、鳩山由紀夫内閣の岡田克也外相は以下のように答弁した。
「核搭載米戦艦の一時寄港を認めないと日本の安全が守れないならば、その時の政権が命運を賭けてぎりぎりの決断をし、国民に説明すべきだ」。
安全保障上、必要が生じれば、
「持ち込ませず」
の原則を撤回し、米軍が核兵器を日本へ
「持ち込む」
ことを認める可能性に言及したのだ。
また、
「国民の安全が危機的状況になった時、原理原則をあくまで守るのか、例外を作るのかは、その時の政権が判断すべきことであり、今、将来に渡って縛るわけにはいかない」
とも述べた。
政権交代後、安倍晋三内閣において岸田首相は
「現政権もこの(岡田)答弁を引き継いでいる」
と答弁している。
平素は非核三原則を堅持するものの、緊急時には
「持ち込ませず」
は変更できる。
これだけでも核抑止力政策の選択肢は増える。
中国の台湾武力侵攻が取り沙汰されている今、まさに
「緊急時」
である。
台湾有事が起こってからでは遅い。
ドイツなどNATOの5カ国は、国内に米軍の核弾頭(B61)を平時から備蓄し、米軍との核共有を図っている。
だが、縦深性の乏しい島国日本にあって、同様な核共有が合理的とは筆者は思わない。
他方で、これから完成してくる地上配備の移動式中距離ミサイルは、弾頭が核、非核にかかわらず日本配備を要求すべきである。
米中のミサイル・ギャップは深刻であり戦争の誘因となり得る。
「時の政権が命運を賭けて決断し、国民に説明すべき」
時なのである。
また、今後の情勢によっては、ここぞという絶妙の瞬間に、戦略原潜を日本に寄港させる。
将来的には戦略原潜の日米共同運用など、拡大抑止強化策について日米協議を実施し、核抑止戦略を検討しておくべきである。
■核抑止への当事者意識持て
核を持ち込むメリットは、核抑止だけではない。
核に係る米軍の作戦計画策定への参画、訓練への参加、有事における作戦発動や意思決定への関与などを米国に要求できる。
これらに関与するだけで拡大抑止の信頼性は増す。
NATOの核共有も核計画グループ(NPG)への参画が目的とも言われる。
2022年3月、自民党の茂木敏充幹事長が述べたように、
「物理的な共有ではなく、核抑止力や意思決定を共有する仕組み」
に参画する意味は大きい。
2023年1月、ワシントンで実施された日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表に
「日米拡大抑止協議及び様々なハイレベルでの協議を通じ、実質的な議論を深めていく意図を有している」
とある。
「米国の拡大抑止が信頼でき、強靭なものであり続けることを確保することの決定的な重要性を再確認した」
とも述べる。
ならば日米拡大抑止協議を通じ、
「核の傘」
の信頼性向上への具体策にまで踏み込む必要性がある。
冷戦時はこの協議は課長クラスがやっていたが、ようやく審議官クラスになったという。
韓国は昔から次官クラスがやっているようだが、如何に日本が核抑止への当事者意識が低いかが分かる。
ウクライナ戦争は、我々にいつでも20世紀型戦争が起こり得ることを突き付けた。
また核の威嚇、恫喝が、戦争遂行と同等の政治力を持ち、平時から行使され得ることも。
これまでのように戦争を絵空事として惰眠を貪ることは最早できない。
核抑止についても当事者意識を持ち、自らにかかる火の粉は自らが払わねばならない。
日本には安全保障に関し、感情的で不条理な障害が未だ多く立ち塞がっている。
核に対するタブーがその典型である。
現実を直視しつつ、タブーなき議論により、核抑止を図っていかねば、今後の厳しい安全保障環境を日本は生き抜いていけない。
安保戦略に関し、
「核抑止戦略の欠如」
を指摘した。
だが、これ以外は、極めて現実的で優れた安保戦略である。
日米首脳会談の共同声明にもあるように、
「言葉だけでなく、行動」
が求められている。
今は早急に3文書を実行に移すことが何より求められている。
同時に
「緊急時」
との認識の下、安保戦略を超える決断を余儀なくされる可能性も予期しておかねばならない。

主張
北のICBM発射 「核の傘」破壊狙う悪計だ
2023/2/20 5:00
https://www.sankei.com/article/20230220-DR3GALZHGRIP7JKLU6QOLJ4ZWU/
北朝鮮が、大陸間弾道ミサイル(ICBM)1発を日本海に向けて発射し、北海道渡島大島の西約200キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。
米国が日本にさしかける
「核の傘」
を壊そうという狙いを含んでいる。
岸田文雄首相は反撃能力整備に加え、核抑止態勢の再点検、強化を急がなければならない。
北朝鮮のICBMが日本のEEZ内に着弾したのは2022年11月の
「火星17」
以来だ。
北朝鮮メディアは、新設の
「ミサイル総局」
傘下部隊によるICBM
「火星15」
の即応発射訓練だと報じた。
実戦配備を宣伝したいのだろう。
通常より高い角度で発射するロフテッド軌道だった。
防衛省は、通常軌道であれば射程は1万4000キロ超で、米国全土が攻撃対象になり得るとの見方を示した。
北朝鮮の弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議違反で日本や世界の安全を脅かす暴挙だ。
日米韓などが非難したのは当然だ。
北朝鮮は直ちに核・弾道ミサイル戦力を放棄すべきである。
韓国大統領府は国家安全保障会議(NSC)で、深刻な食糧難にある北朝鮮では餓死者が続出していると明かした。
国民の生命、生活を無視して核・ミサイル戦力強化に走るのは金正恩朝鮮労働党総書記の独裁体制を守りたいからだろう。
「民主主義」
「人民」
を国名に冠する資格があるのか。
このような危険で非道な隣国が存在する。
岸田政権が抑止力向上のため、反撃能力保有を閣議決定したことは正しかった。
できるだけ早く反撃能力の運用を可能にしてもらいたい。
ただし、それで十分とはいえない。
火星15は液体燃料式ミサイルだが、移動式発射車両(TEL)から発射されるため発見は難しい。
更に北朝鮮は、迅速に発射可能な固体燃料式のICBMを開発中だ。
北朝鮮が核によって米国の大都市を
「人質」
にとったと考えれば、米国の
「核の傘」
に依存する日韓への軍事攻撃をためらう理由が大きく減る。
岸田首相は核抑止態勢を強化しなければ国民を守れないと気づくべきだ。「核共有」
の議論も排除すべきではない。
岸田首相がICBM飛翔中に耳鼻咽喉科のクリニックに通ったのは甚だ疑問だ。
船舶などに被害が出ていたら申し開きできまい。
もっと緊張感を持つべきである。

核共有議論に賛成が76%  プーチンはパーキンソン病?
2022/3/6 19:27
https://ameblo.jp/sudachi815/entry-12730477353.html
今朝の『日曜報道 THE PRIME』で、番組視聴者に、
「(安倍元総理が提起した)核共有についての議論をするべき」
かどうかについて、番組内でアンケート調査を行いました。
見ていた私は賛成が半分行けばいいのかなと思ったのですが、何と76%で、反対は19%でした。
4人に3人が賛成なのです。
勿論議論をしろということですし、核保有しない国での核抑止力のあり方を議論しろということなのですけどね。
この番組は、地上波の中ではまともな番組だと思っていますが、視聴者の意識も高いんだと思いましたね。
新聞社や昼のワイドショーでは、とてもここまで高い数値にはならないでしょう。
日本人の意識に少し安心しました。
そして、高市早苗政調会長もこの番組で、政府の
「非核三原則」
に関して
「有事の時の『持ち込ませず』については党内で議論したい」
との考えを示しました。
「非核三原則を守るのか、国民の命を守るのか」
「厳しい状況になった時、判断は時の政権がし、議論は縛ってはいけないというのが政府のスタンスだ」
と説明しています。
高市氏はまた、
「非核三原則を守るべしという人の中には、有事になっても、核兵器を搭載した米艦船が日本の領海内を通過してもダメ、領空を飛んでもダメという議論まである」
「大方の皆さんは(日本は)米国の核の傘の下で守られていると言うが、いざとなったら核抑止力が全く機能しないと言っているのと同じことになる」
と語りました。
岸田首相とは全く違っていますね。
やはり時期総理候補だけのことはありますね。
ある専門家は、核軍縮を進めるためには、領国が同規模の核兵器を保有したところからスタートすると言っていました。
核を持たない国が、持っている国に対して放棄しろと言っても聞くわけが無く、お互いに同じように減らしていって、最終的には廃棄するストーリーでなければ核廃棄などできないと。
日本が米中ロのように多くの核兵器を持つことは無いので、日本主導で核廃棄は不可能ということですね。

激動する世界と日本の進路
大坂「正論」懇話会講演詳報(2022年6月9日開催)
月刊誌『正論』2022年8月号 ジャーナリスト 櫻井よしこ
■核をアメリカ任せにするな
我々の前には中国が立ちはだかります。
このように状況が混沌としている時には、とにかく目の前のことに注意しながらも、中長期的に物事を考えることが必要です。
中長期的に考えると中国が力を付けることが明らかであります。
中国が力を付けるということはどういうことか。
中国には経済力があり、軍事力があります。
一目瞭然ですが、台湾、沖縄をめぐる海、このように限定された地域を
「戦域」
と呼びます。
この狭い戦域における軍事力の比較では中国が圧倒的に強いんです。
日本とアメリカと台湾を足してもかなわない。
ここだけの範囲で言うと、もし今、台湾争奪戦が起きたら、我々は敗北すると思わなくてはならない。
今何故そのような戦いが勃発していないかと言うと、地球規模の戦略域ではアメリカが圧倒的に強いからです。
軍事力を比較する時に、どの要素が一番大事になるかと言うと、最終的には核兵器です。
通常戦力と核兵器の戦いにおいては核が勝ちます。
これは軍事上の真理です。
中国は核兵器の数において、2021年までは大体350発保有していると言われていました。
2022年の現段階で395発に増やしています。
数カ月間で45発も増やした。
5年後の2027年には700発、2030年には1000発まで増えると言われています。
2030年にはほとんど均衡、これを軍事的にparity(パリティ)と呼びますが、パリティの状況になる。
アメリカは我が国の同盟国です。
アメリカの核の傘で我々は守られている。
そのアメリカは戦略核1550発を配備して中国には対峙できるかもしれませんが、ロシアもいる。
ロシアは貧乏な国になると思いますが、強みである軍事を諦めることはないでしょう。
彼らは国際社会で最大数の核を持ったまま貧乏になるんです。
そうするとロシアが実戦配備する核1550発、中国の1000発の両方にアメリカは対峙しなくてはいけない。
それに加えて北朝鮮も核を持っています。
アメリカは中国、ロシア、北朝鮮に事実上1国で対峙しなくてはいけないのです。
日本はアメリカと手を組んで、これら3カ国の脅威に対処するでしょう。
でも我が国は非核三原則の国です。
先日、週刊新潮の連載のため岸田文雄首相にインタビューしました。
1時間の予定が1時間半に延びました。
それでも全然嫌な顔をなさらない。
優しいのです。
私がいくら意地悪な質問をしても、全然嫌な顔をなさらない。
それでも
「防衛費をGDP(国内総生産)比2%となぜ明言しないのですか」
と聞くと
「積み上げます」
と。
私が何回も
「国家の意思として2%と言わないのですか」
と聞くと、それでも
「いや、皆さんのご意見を聞いて積み上げで行きます」
と答える。
しかも嫌な顔を全然なさらないものだから、暖簾に腕押しとはこういうことですね。
岸田さんは
「非核三原則の『作らず、持たず、持ち込ませず』は日本の『国是』である」
という本当に夢物語、お花畑のようなことを考えておられます。
日本国民も核のことはほとんど考えたことがないために、核と言うとアメリカに任せていけばいいんだということで、現実論に即して考えることがない。
恐らく日本はこういう状態が今しばらく続くと思いますが、このままでは絶対にいけないと、私は思います。
■中距離ミサイル配備せよ
日本でもアメリカでもシンクタンクなどで、どうやって中国は台湾を取りに来るだろうかという議論がなされています。
台湾は高い山脈の直下に基地を作っている。
中国大陸のある西側からは攻撃が難しい。
山があって邪魔になりますから、東側から攻撃するのが一番いいわけです。
今までは東側から攻撃するのは難しかったけれども、この頃はミサイルがありますから、ミサイルを飛ばせば攻撃できる。
米中の軍事関係がほとんどパリティになったら、台湾攻略が始まるかもしれない。
始まっても全然おかしくないという状況に私たちは直面しています。
このことを念頭に、日本はどうしたらいいかを考えましょう。
台湾と与那国島は110kmしか離れていません。
台湾問題、沖縄問題で中国が脅しをかけた時にアメリカは我が国や台湾を守ってくれるか。
これはなかなか難しいだろうと思わざるを得ない。
私たちの国はどうしたらいいのか。
ここで思案投げ首なんかしちゃいけない。
うじうじして、決めることができなければ、中国の思う壺になってしまう。
だから私たちは賢くなって、あらゆる選択肢を考えなくてはいけないんです。
我々はアメリカに頼まなきゃいけない。
中距離ミサイルを作って下さい、日本に配備して下さい、そして中国と同じように核を載せて下さいーと。
中国が日本を狙っているのが現実である以上、我々も中国と同等の中距離ミサイルを持たなければ交渉もできない。
では中距離ミサイルをアメリカに頼るだけでいいのか。
「ノー」です。
我が国の技術で国産ミサイルを作るのです。
いつまでも外国に依存していては駄目なんです。
ウクライナは地続きでしたから、周辺諸国から武器装備がどんどん入ってきます。
これに対して我が国は海に囲まれており、船や飛行機で運ばなくてはいけない。
封鎖されて入ってこなくなるかもしれない。
だからこそ我が国には我が国を守る武器装備がなければならない。
我が国の優れた技術を守り、防衛産業をきちんと育てておかないとならないのです。
ウクライナは日本と同じような国です。
平和を信じていました。
冷戦が終わったので、核兵器も含めて持っていた武器装備をロシアに渡したり、中国に売ったりして、ほとんど裸になりました。
これからは経済だということで一生懸命経済をやっていたらロシアに踏み込まれた。
国土が滅茶苦茶になっています。
我が国はウクライナの悲劇から学ばなくてはならないのです。
核と言うだけで忌み嫌うのは良くないと思います。
我が国を守るために非核三原則の3つ目、
「持ち込ませず」
をなくして、アメリカに核を持ってきてもらって、我が国の中距離ミサイルを配備すれば、形勢が逆転します。
これを実施するかどうかは私たち自身の考え方によります。
私たちがどうしても我が国を被爆国だから、その被爆国の思いというものを大事にしなくてはならない。
これからも非核三原則で行かなくてはいけないという所に留まれば、この議論は進まず日本は存亡の危機に直面します。

「言論テレビ」10年、500回記念特別対談C
「歴史戦」は真っ向から闘え!
月刊誌『Hanada』2022年8月号
安倍晋三 元内閣総理大臣
櫻井よしこ ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長
(本対談はインターネット番組「言論テレビ」2022年5月20日放送分を整理再録しました)
■核使用の責任
★櫻井
安倍総理はおっしゃれないでしょうから、私から申し上げると、岸田総理が安全保障を分かっていないと思ったもう1つの理由は、核についての考え方です。
『週刊新潮』の対談で、岸田総理はこう言いました。
「ウクライナ情勢における核の問題を巡っては、既に様々な議論が起こっています」
「私が申し上げているのは、岸田内閣においては『非核三原則』はしっかり堅持させていただくということ」
ウクライナ戦争では、核が使用されるのではないか、という懸念がされていますね。
事ここに至っているのに、
「非核三原則」

「アメリカの拡大抑止政策」
この2つの
「お守り」
を身に着けていれば、危機が向こうから逃げて行ってくれるとでも、岸田総理は思っておられるのでしょうか。
これは小野寺五典さんに聞いた話ですが、小野寺さんが2022年のゴールデンウィークにアメリカへ行った際、アメリカ側とこんなやり取りがあったそうです。
「プーチンが、戦術核を使う可能性がある」
「その時、アメリカはどう対応するんですか」
「アメリカだけで判断はしません」
「ヨーロッパの当事国、NATOと相談します」
岸田総理は核共有(ニュークリア・シェアリング)についてでさえ
「政府として議論することは考えていない」
と明言していますが、アメリカに核使用の相談を持ちかけられたらどうするのか。
★安倍
アメリカは核による報復をNATOや日本に相談する。
これが一体何を意味するか。
戦術核を使えば数千、場合によっては、万を超える人を一瞬で殺害することになります。
米国は
「その責任を分かち合え」
と言っているのです。
なぜ、アメリカ側が小野寺さんに
「核使用は相談して決める」
と伝えたのかと言えば、
「アメリカの核の傘を貸しているということはそういうことなんだぞ」
つまり、
「現実から目を逸らすな」
ということなんだろうと思います。
★櫻井
これは長崎大学の資料ですが、戦術核の数はロシアが圧倒的で1860発、アメリカはNATOに200発配備していますが、国内には25発しかない。
もし、ロシアがウクライナ戦争で核を使用するとして、アメリカが核での報復を躊躇するようなことがあれば、
「核を先に使った国が勝つ」
という世界になりかねない。
戦術核を使えば一瞬にして何千、何万という犠牲者が出る。
今我々が、そういう恐ろしい世界にいる以上、どのようにして核を使わせないようにするかを具体的に考えないといけません。
★安倍
米国の立場から非核三原則を考えると、核の傘を提供しているにもかかわらず、日本から
「核を持ち込んでくるな」
と言われているわけです。
「日本のためにも核を持っているのではないか」
という不満の気持ちは、当然出てきます。
■中露から防空識別圏の侵害
★櫻井
世界地図を広げてみると、日本は核保有国に囲まれています。
このウクライナ戦争で、ロシアの国力は間違いなく落ちてきますから、中国との連携は否応なしに強まってくるでしょう。
「中露連合軍」
に加えて北朝鮮もおり、日本は世界で最も危険な所に立っている。
★安倍
日本は、中国、ロシアから防空識別圏の侵害を受けています。
中国とロシアにスクランブル(侵入機に対する軍用機の緊急発進)をかけているのは、世界で日本だけだと思いますよ。
それだけ自衛隊の負荷も大きい。
★櫻井
燃料費もかかりますしね。
★安倍
燃料もそうですし、機体の整備などもしなくてはいけませんから、かなりの負荷がかかります。
ある意味、世界は日本に注目しているんです。
インド太平洋地域の安全保障環境は厳しいですね。
インド太平洋地域の平和と安定があって初めて世界の繁栄があるという考え方を基に、私は自由で開かれたインド太平洋構想に賛同する国々に、この海域、地域への軍事的なコミットメントを増やしてもらいたいと要請してきました。
それに応じて、2021年、イギリスは空母クイーン・エリザベスを、フランスはジャンヌ・ダルクを派遣し、ドイツやオランダ、オーストラリアなども艦艇や航空機を派遣し、自衛隊と合同演習をしてくれた。
そうすることでプレゼンスを示し、この地域の平和と安定を一緒に守っていくという意思を示してくれたわけです。
しかし、我々が作ってきた国際秩序を打ち破ろうとする動きが今出てきている。
それに対して、各国が責任を果たしていこうとしている中で、旗振り役の日本が
「防衛費は増やしません」
などと言っていたら、世界から信用されなくなっていたでしょう。
■見直される戦勝国史観
★櫻井
一応、骨太方針で5年以内の2%を目指す方針は示されましたが、アメリカ側には
「2%にしてくれたのは嬉しいけれど、5年後には中国に台湾が取られているかもしれない」
という不安もあると言います。
★安倍
今回のウクライナ戦争で、ロシアは国力を落とし、中国のジュニアパートナー(立場の低いパートナー)のような関係になっていくでしょう。
それに伴って、中国は勢いを増してくる。
当面、アメリカはヨーロッパ方面に注視せざるを得ないですから、アジアについては日本がもっと責任を持って防衛努力をしてくれ、と要請してくる可能性は高い。
★櫻井
日本は中国と並ぶアジアの雄ですけれども、世界だけでなく、アジアの国々が如何に日本に期待しているか、安倍総理は外交などを通して肌身で感じているのではないですか。
★安倍
よく防衛費を増額することに対して、
「アジアの国々が反対するのではないか」
と言う人がいますね。
アジアの国々ってどこのことを言っているんですか、と聞き返すんです。
中国や韓国、北朝鮮は反対するでしょうが、それ以外の国は、日本に安全保障上の役割を果たしてもらいたいと思っているんです。
彼らは、中国が圧倒的なプレゼンスを示していることに恐怖を感じています。
日本には中国に対抗してもらいたい、と。
★櫻井
中国に圧政を敷かれている南モンゴル出身で、静岡大学教授の楊海英さんも、日本にはもっとアジアにコミットしてほしいと言っていました。
「日本がかつて占領していた国には、日本の素晴らしさを学んだ大勢の人がいる」
「そういった人々が今、中国の圧政に苦しめられているのに、沈黙をしてほしくない」
我々は学校で、日本は戦争中、悪いことばかりしたと教えられています。
しかし、今一度、歴史を見直すべきなのではないか。
■どこの国の外務省か
★安倍
日本も主張すべきことは、しっかり主張していくべきです。
特に歴史問題について、日本はずっと沈黙してきました。
そうやって耐えていればそのうち解決するだろう、と。
しかしそれは間違いで、事実を知らない世代が増えてくると、相手のプロパガンダが真実のように扱われてしまう。
安倍政権時代もそうでしたが、今、様々な
「歴史戦」
を挑まれています。
私は、大使が赴任する際にはこう伝えていました。
「各国の大使は日本を代表しているわけですから、歴史問題には責任を持って反論してほしい」
かつて、外務省はスルーしていました。
2001年、小泉政権時代、私は官房副長官でしたが、新しい歴史教科書をつくる会によって執筆された
「新しい歴史教科書」
の内容について、中国、韓国が修正を要求する事案がありました。
2001年10月に予定されていた金大中大統領との日韓首脳会談の想定問答集の中で、外務省は次のような発言を盛り込もうとしていたのです。
「新しい歴史教科書をつくる会の教科書の採択率が低かったことは日本人の良心の表れで、肯定的に評価する」
これでは、
「新しい歴史教科書」
の採択は良くないことだと日本政府が認めているようなものでしょう。
すぐに外務省アジア太平洋州局局長を呼び抗議、小泉さんにも
「絶対に発言しないでください」
と伝えました。
小泉さんも、
「俺はこんなこと言わないよ」
と言っていましたが。
私は、外務省のそういう体制と真っ向から闘ってきたつもりです。
★櫻井
外務省のメンタリティには、本当に信じ難いものがあります。
どこの国の外務省かと思うことは、現在もあります。
日本がきちんと歴史認識に基づいて発信していけば、
「日本のことが本当は大好きだった」
と言ってくれる国はたくさんありますのに。
安倍総理は月刊『Hanada』の加藤康子さんとの対談(2022年6月号)で、故・渡部昇一さん(上智大学名誉教授)らが中心となって、朝日新聞社を相手取り、1人1万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた裁判で渡部さんらが敗訴したことについて、
「もう1度、国民が立ち上がって訴えるべきだ」
とおっしゃっていましたね。
そういう風に闘う気持ちを持って議論を尽くしていけば、日本は必ず世界に受け入れられると思います。

米ミサイル配備で中国の野望を挫け
世界の安全保障の最前線に立つ日本 もう危機から目を背けるな!
月刊誌『WiLL』2022年8月号 前統合幕僚長 河野克俊
■日本は西側の最前線
2022年2月、安倍元総理が核シェアリングについて
「(議論を)タブー視してはならない」
と主張しました。
この世に核がある以上、当然、日本国民を核の脅威から守ることを考えなければなりません。
安倍元総理の発言で、その機運は一時、盛り上がりを見せたものの、現在は急速に萎んでいます。
しかし、議論すら許されない状況があってはなりません。
国民を守るため、一刻の猶予も許されない話ですから。
「核シェアリング」の議論になると、冷戦中における西ドイツの例がよく持ち出されます。
ソ連を中心とする「ワルシャワ条約機構」と米国を中心とする「NATO軍」の対立軸はヨーロッパでした。
要するに、当時、西ドイツは西側陣営の最前線に立っていたわけです。
当時、通常戦力ではワルシャワ条約機構軍が圧倒的な強さを誇っていたので、戦端が開かれたらワルシャワ条約機構軍の大戦車軍団が怒濤の如く西ヨーロッパに侵攻してくるというのが典型的なシナリオでした。
そのため、通常戦力では押し戻せないーそこで西側陣営の戦力を補完し、米国を巻き込んでソ連の侵略を防ぐため、NATOでの核シェアリング構想が始まったのです。
即ち、戦術核の使用に関し、”NATOの意思も介入できる”ようにしたわけです。
地上発射型の中距離ミサイルについても、米国とヨーロッパの結束が示されました。
当時(1975年)、ソ連が配備を開始した中距離弾道ミサイル「SS-20」は、ヨーロッパを射程に収めていたものの、米国本土には届きませんでした。
それに対し、サッチャー英首相やシュミット西ドイツ首相らの要請により、米国がヨーロッパに配備した中距離ミサイル「パーシングUミサイル」(MGM-31)や巡航ミサイルはソ連を射程に収めていました。
これによって、ソ連はお手上げ状態になり、米ソ間で
「中距離核戦力(INF)全廃条約」
が締結された。
こうした核抑止の成功例がありますから、日本への米国の地上発射型の中距離ミサイル配備は抑止力となるだけでなく、中国を軍縮の方向へ導く可能性もあります。
戦後、日本はずっと
「非核三原則」
を堅持してきましたが、日本をめぐる世界の戦略地図は日本が意識するか否かにかかわらず、大きく書き換えられてしまったのです。
対立軸が米ソから米中になり、世界の安全保障の最前線に日本は立ってしまったのです。
同時に日本は米国の同盟国ですから、冷戦中の西ドイツと同じく西側陣営の最前線というポジションにもいる。
「世界の安全保障」の最前線に立たされている日本は、どうすればいいのか。
■日本配備のメリット
ここまでの話を含めて、日本人が認識しておくべき”日本を取り巻く戦略環境の変化”が3つあります。
@NPT体制の実質的な崩壊で核拡散が進む可能性があり、少なくと北朝鮮の核廃棄は望めなくなったこと
A(ロシアの核恫喝を前に)核戦争を考慮して、軍事的に動かない米国を(見たくはなかったが)見てしまったこと
B日本が世界の安全保障の最前線に立ったこと

だからこそ、日本としてはバイデン大統領から
「(核の傘=拡大抑止は)任せてくれ」
という言質を取るだけではなく、西ドイツのように米国から
「有事における核使用」
の確証を取らなければなりません。
どのように確証を得るのかー。
これは、あくまで私が個人的に考えている核シェアリングですが、まず、大前提としてモスクワや北京を狙う米国の核戦略は、あくまで均衡と抑止を目的とする
「使えない核」
ですから、米国が共有することは考えられません。
使えば世界が終わるような兵器なので、米国が
「モスクワを壊滅させるために日本と相談する」
などという事態にはなり得ません。
となると、共有すべきはヨーロッパと同じく、使用可能な戦術核です。
現在、中国は核弾頭の搭載が可能な地上発射型の中距離ミサイルを1258発から2000発ほど保有していると言われています。
一方、先述の通り、米国は1987年、ソ連とINF全廃条約を締結したので、このタイプ(地上発射型)の戦術核を1発も保有していません。
ただ、2019年、ロシアが地上発射型の巡航ミサイル「9M729」を配備し、INF全廃条約を破ったことで、トランプ政権も2019年にINF全廃条約を破棄しました。
それ以降、米国も研究開発を早急に進めています。
いずれにせよ対中戦略上、米国はアンバランスを埋めなければなりません。
中距離ミサイルの場合、米国本土に配備しても中国本土まで届きません。
そうなると、米中対立の最前線である日本への配備案は今後の政治課題として必ず浮上するはずです。
先述の通り、地理的に見ても米中対立は日本の問題でもあります。
だからこそ、中国を抑止するために米国の中距離ミサイルを日本に配備させなければなりません。
それと同時に、かつてのNATOのように核弾頭を搭載して使用する場合には、日本が意思決定に関わることができるメカニズムを米国と構築すべきだと考えます。
その意味での日本型核シェアリングです。
米国の核戦略に日本が一枚噛むことでプレーヤーが2人になれば、中国は日本の行動と思考も読まなければならず、計算が複雑になるので抑止力は必ず高まります。
加えて、
「日本配備」
はオセロの白と黒がひっくり返るような「日米vs.中」逆転の決定打にもなります。
先ほど、中国が最大で約2000発の地上発射型の中距離ミサイルを持っていると言いましたが、肝心な射程距離は500〜5,000kmです。
せいぜいグアムを射程に収められる程度で、冷戦中のロシアのように米国本土は狙えません。
ところが、日本への配備が実現すれば米国は中国本土を狙うことができます。
中距離ミサイルの保有数では圧倒的に負けていますが、日本へ配備するだけでも、断然、日米に有利な状況に一気に形勢を逆転させることができるわけです。
冷戦中、米国がヨーロッパとの核シェアリングを呑んだのは、当時フランスが独自で核を持っていたの、断れば西ドイツも独自に保有しかねないと焦ったからです。
もし米国が核シェアリングを断ってきたら、日本も
「それなら核保有を考えるしか・・・」
と仄めかすくらいの気概があってもいいのではないでしょうか。
そうした議論を遠慮することなく米国にぶつけてほしいところです。
防衛論や国防論は、ミサイルの種類や各ミサイルの射程距離を暗記することではありません。
そんなものは調べれば、すぐに分かることです。
防衛論の本質とは、母親が考える”どのように子供を守るか”という母性本能こそが原点ーつまり、誰にでも理解できる常識論なのです。
冒頭で示した通り、国民の多くが防衛費の増額を求めています。
来たる参議院選挙では、しっかり国民と向き合って防衛政策を議論してほしいと願うばかりです。

日米首脳会談
岸田リアリズム外交に試練 相反する核なき世界と抑止力
2022/5/23 22:21
https://www.sankei.com/article/20220523-QLOV7NOQ7RPPDKJTZZT6D24OUI/
岸田文雄首相は2022年5月23日、2023年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)を被爆地の広島で開催すると表明した。
ウクライナに侵攻したロシアは核兵器を使って欧米を恫喝している他、日本は中国や北朝鮮の核の脅威にも直面する。
広島選出の首相は
「核兵器のない世界」
を追求するが、同時に米国の
「核の傘」
の信頼性を如何に強化するかという、一見相反する目標に向き合うことになる。
「武力侵略も核兵器による脅しも断固として拒否するG7の意思を示したい」
首相はバイデン大統領との共同記者会見で、ロシアのウクライナ侵攻に触れ、広島でのサミット開催の意義を強調した。
各国の指導者が被爆の実相に触れることで、ロシアの核使用を許さない国際世論を形成したい考えだ。
ただ、米国が同盟国を核兵器で守る
「核の傘」
に依存する日本にとって核の使用を完全に否定することはできない。
政府内にも首相が
「核なき世界」
に前のめりになることで米国の拡大核抑止力を損なう事態を懸念する声もあるが、首相周辺は
「首相は空想で『核なき世界』を言っているのではない」
「日米同盟による拡大抑止を前提に考えている」
と語る。
象徴的なのが、岸田政権でも、米国が核の使用目的を制限することには反対したことだ。
バイデン氏はかねて核保有を
「核攻撃の抑止と報復」
という
「唯一の目的」
に限定すべきだと主張していた。
だが、日本などの反対で核戦略の指針
「核態勢見直し(NPR)」
への明記を見送った。
日本にとって、ロシア以上に深刻なのが中国の核・ミサイル戦力だ。
中国は核搭載可能で日本全域を射程とする中距離ミサイルを大量に保有している。
今回の首脳会談で中国に核軍縮を呼び掛けると共に、拡大核抑止の重要性を確認したのはこのためだ。
一方、ウクライナ危機ではロシアの核の脅しが米欧の直接介入を思い留まらせ、核の有効性を浮き彫りにした。
北朝鮮のような国は核兵器の必要性を確信する恐れがある。
米国の
「核の傘」
の強化を図りつつ、北朝鮮の核放棄を目指すー。
首相の掲げる
「新時代リアリズム外交」
が試される。

日本外交は危険な水域に入った。
ドイツの変身を見習え
月刊誌『正論』2022年6月号 杏林大学名誉教授 田久保忠衛
★阿比留
岸田流のやり方は、政界の近くで見ている我々は苛立ったり腹が立ったりするけれど、一般国民のウケは比較的良い。
★山
確かに中身とは別に支持率だけは高い。
★阿比留
日本国民というか一般大衆には、一見ジェントルに見えてやっている感だけ醸し出して、波風を立てようとしないという政治が一番好まれます。
(徳間書店『リベラル全体主義が日本を破壊する』より)
辛口をもって鳴る山正之、阿比留瑠比氏の対談で全く同感だが、国際情勢の奔流を無視して自己流に嵌っている間に、日本は置き去りにされないか。
信念があっての自己流ならばまだ理解はできるが、顔色一つ変えないで、
「波風を立てない」
所に目標を置いている政治は薄気味悪い。
喜劇の次に登場するのは悲劇でなければ良いのだが。
日本とドイツは同じ敗戦国で軍事忌避の傾向が強い。
ところが、ロシア軍がウクライナに侵攻したのを知って3日目の連邦会議でショルツ首相は戦後の防衛政策を180度転換する姿勢を明示した。
GDP(国内総生産)の1.5%だった国防費を一挙に2%強に引き上げ、防衛力強化の基金として1000億ユーロ(約13兆円)を設ける。
バルト海の海底を通してロシアから天然ガスを運ぶ
「ノルドストリーム2」
の運用を停止する。
欧州一のGDPを誇るドイツが、その2%強を毎年防衛に充てるとなったらどうなるか。
経済大国から政治大国へと躍り出たと言っていいだろう。
ロシア軍の侵攻がある前までドイツは何をしていたか。
NATO(北大西洋条約機構)諸国が次々とウクライナに武器を提供している時に、ドイツは殺傷能力を持った兵器は一切送らないと述べ、防衛用のヘルメット5000個を申し出て物笑いの種になった。
それだけならまだしも、
「NATOの裏切り者」
「ロシアの事実上の同盟国」
と蔑まれたのにはショルツ首相もこたえたに違いない。
それだけにドイツの変身は鮮やかだった。
ところが、日本はどうしたか。
侵攻から8日経った2022年3月4日に国家安全保障会議(NSC)の4大臣会合を開いて防弾チョッキと防寒服を輸送することを決め、2022年3月8日の深夜に自衛隊機が飛び立ったという。
関係者はドイツの
「防衛用のヘルメット5000個」
が西側のまともな国々の軽蔑の対象になったことを百も承知だったろう。
憲法の平和主義を持ち出せば防弾チョッキも防寒服も武器になってしまう。
防衛装備移転三原則が存在する。
そこで、岸田首相は、ロシアの侵略を西側の一員として阻止する大義名分を少しでも考慮に入れたのか。
殺傷用武器と疑われる物を送って国内で大きな問題になるのを避けるのが一番だとの次元の低い判断があったのではないか。
ジョンソン英首相は2022年4月9日、事前予告なしでウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談し、財政・軍事両面での追加支援を約束した。
「ウクライナ国民はライオンのような勇気を示した」
とジョンソン首相は会談後の記者会見で力説した。
ゼレンスキー大統領はどれだけ心強く感じたか。
岸田首相も現地に飛んで
「一国平和主義の日本は当面何もできないが、大統領を少しでも勇気付けに来た」
と、肩を叩いたらどうか。
西側諸国は喝采したろう。
■危険水域に入った日本外交
岸田首相はことのほか核兵器の廃絶に熱心だ。
既に首相就任前に
『核兵器のない世界へ』
との著書を出版したし、2022年1月の施政方針演説の中でも
「外務大臣時代に設置した『賢人会議』の議論を更に発展させるため、各国の現・元政治リーダーの関与も得ながら
『核兵器のない世界に向けた国際賢人会議』
を立ち上げます」
「本年中を目標に、第1回会合を開催します」
と約束した。
岸田首相は国会を初めとする公の席で同じような発言を繰り返している。
「広島・原爆」
を政治に利用しようなどという邪な考えがあるとは誰も思わないが、米国の核の傘にひたすら依存しているはずの日本で、現役の首相が声高に反核を口にするのは米関係者の耳に心地好く響くだろうか。
ウクライナ戦争が我々に与えた教訓はいくつもあるが、重要なのは武器を以て不法な攻撃を仕掛けてくる敵に対して、同じ武器で対抗しなければ他の国は援助の手を差し伸べてはくれないとの単純な教えだろう。
既に前例がある。
1977年から1983年にかけてソ連は国内の欧州部に中距離ミサイルSS20を着々と展開した。
当時のシュミット西ドイツ首相は発射後5分で自国に到着するSS20に対抗するには
「一方で危険な軍拡競争と他方で立派な軍縮の間に『近似性』がある」
と喝破し、欧州全域に米国の巡航ミサイルとパーシングUの配備をすると同時に核軍縮を進める2路線方式を構想した。
これが実施されてSS20は全廃された。
プーチン大統領は戦いの最中に核兵力による恫喝と思しき発言をした。
それに対抗するのに憲法第9条をかざしても、反核を断固叫んでみても効果はない。
同じ核兵器で抑止する以外にどのような手段があるか。
質の良くない核武装国家にぐるりと囲まれ、米国の信頼性に疑問が生じている現在、日本はどうしたら良いか。
日本の最高指導者に見解を窺いたい。
気になっているのは、岸田首相が2022年3月19日にデリーでインドのモディ首相と会談した際にも、
「広島出身の総理大臣」
として、核による威嚇、使用は断じて受け入れられないと述べたことだ。
当然ながらプーチン発言を念頭に置いての言葉だろうが、インドとロシアの関係は日印関係よりも長くて深くはないか。
インドは生存を賭けて核武装をしているのであって、簡単にプーチン大統領と一緒にされては困る、とモディ首相は不快ではなかったか。
岸田首相は善意で、真摯なだけに、残酷な感じもする。

ウクライナ侵攻は対岸の火事ではない
「日本は現実に目覚め米国と核シェアリングを実現せよ」
門田隆将氏が特別寄稿
2022.5/5 10:00
https://www.zakzak.co.jp/article/20220505-QEE32NUNLZNNRMY7CO4PPDDG6Q/
ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアが、ウクライナへの苛烈な軍事侵攻を続けている。
この侵略から日本は何を学び、ロシア、中国、北朝鮮といった核保有国とどう対峙していけばいいのか。
人気作家でジャーナリストの門田隆将氏が、日本の主権を断固、守り抜くため、独自に
「抑止力」
を高める必要性を鋭く説いた。

ロシアのウクライナ侵略がもたらした余りに多くの教訓に国民も戸惑っている。
第2次世界大戦の6000万人以上の犠牲の下に築かれた戦後秩序が、いとも簡単に崩壊。
日米安保条約で太平の眠りを貪ってきた日本にとってもあり得ない℃桝ヤだった。
「軍事力に著しい差が生じた場合に戦争が起こる」
のは世界の常識だ。
しかし、日本の左翼勢力と、いわゆる
「お花畑」
と称される空想的平和主義者たちには全く通じない。
「平和憲法が日本を守ってくれる」
「話し合いで戦争は回避できる」
そんな信仰≠ェ左翼勢力のみならずマスコミや政界にまで浸透。
その現実逃避型平和主義者の幻想が、ロシアによって打ち砕かれたのだ。
2022年2月27日、安倍晋三元首相は非核三原則の議論をタブーにしてはいけないという現実論を提起したが、岸田文雄首相は2022年3月7日、参院予算委員会で
「非核三原則は国是]
「核共有は政府としては考えない」
と否定した。
「核を持たず、作らず、持ち込ませず」
という非核三原則は半世紀以上前に、沖縄返還で
「核抜き本土並み」
を実現するために導き出されたものだ。
しかし、1981年にエドウィン・ライシャワー元駐日大使が
「核兵器を積んだ艦船の寄港は核持ち込みに当たらない」
「日米間の口頭了解がある」
と発言したように、核持ち込みは暗黙の了解事項だった。
それでも、日本はこの有名無実化している原則を長く維持してきたのだ。
かつての世界3位の核保有国ウクライナは核を放棄し、非核三原則と専守防衛を宣言し、米国・英国・ロシアの国連安全保障理事会常任理事国から主権と領土を保障されながら、それでも核恫喝と侵略を受けた。
中国・ロシア・北朝鮮という核保有の独裁国に囲まれた日本に、国民の命を守るための核抑止力が不可欠になっているのは言うまでもない。
同じ敗戦国であるドイツとイタリアは、米国との核シェアリングでNATO(北大西洋条約機構)の核抑止政策を実行している。
ドイツはルクセンブルクとの国境に近いビューヒェル空軍基地に20発のB61核爆弾を共有し、
「管理は米軍、運搬はドイツ軍」
と役割を分担した。
これは核武装とは見なされない。
そのため核不拡散条約(NPT)を脱退する必要もない。
国民の命を守るためにぎりぎりの現実的政策を両国は実施しているのである。
ならば、日本ではどうか。
同じように米国の核兵器を国土に置き、運搬は自衛隊が行う、ということに国民のコンセンサスを得るのは難しい。
だが、
「米国の原子力潜水艦の『核抑止力を共有』する」
という方法はどうだろうか。
核を国土に置かず、自衛隊が運搬することもなく、米原潜の核ミサイルという抑止力だけを共有するのである。
首相との協議の上で米大統領が
「日本への核攻撃は米本土への攻撃と同じとみなす」
と宣言し、世界に認識させるのだ。
中国の核戦力がまだ米国を凌駕していない今なら、合意の可能性はある。
日本が核武装するより、その方が米国にとっても有り難いからだ。
実は、定期的に行われている日米拡大抑止協議によって、現在も日本が米国の
「核の傘」
の下にいることは確認されている。
しかし、その協議の中身は国民も知らされていないし、隣国の独裁国家も知らない。
つまり、核抑止力に
「なり得ていない」
のである。
原因はどこにあるのか。
それこそ日本人の核アレルギーと非核三原則の存在、更には中国による世論工作の成果である。
未だに、憲法改正や敵基地攻撃能力の保有さえ、左翼勢力や中国の代弁者たちの反対によって阻止されている。
哀しいことに日本人の命を蔑ろにする勢力によって、
「核攻撃に無防備」
な状態が今も続いているのだ。
現実に目覚め、米国との核シェアリングを実現し、安全保障のレベルを上げることが日本には急務だ。
そのためには、憲法だけでなく自衛隊法などの改正も必要になる。
だが、国家観もなく現実逃避型平和主義の岸田首相に期待はできない。
今こそ、国民が自らの命と平和を守るために意思を示さなければならない。

櫻井よしこ 美しき勁き国へ
大激変に目醒めぬ日本
2022年5月2日 産経新聞
ウクライナ侵略戦争の結果、世界情勢も安全保障環境も激変した。
欧米諸国が完全に適応しつつある中で、我が国の認識は緩く鈍い。
変化の大きさは核の問題においても際立つ。
米国が初めてロシアの核の脅しに屈し、軍事侵攻を許した。
結果、これからの世界は中露両国の核に対する戦闘的な考え方に直面することになる。
プーチン露大統領が大東亜戦争末期の日本降伏の経緯に強い関心を抱いているとの指摘がロシア問題専門家の中にある。
核攻撃でウクライナを降伏に追い込むプーチン氏の意図を示唆する情報ではないか。
他方、ロシアを擁護する中国の習近平国家主席は凄まじい勢いで核戦力強大化を続行する。
米政策研究機関
「ハドソン研究所」
のクレピネビッチ上席研究員が米外交専門誌フォーリン・アフェアーズ2022年5・6月号で、中国の核戦力の急速な増強で世界は米露2極体制から米中露3極体制に入った結果、各国が問題解決の手段を核使用に求める危険性が増す、3国間の核戦力競争が激化し、世界はより危険になると予測した。
その上でクレピネビッチ氏は、最も危険なのが中国の抑止の考え方だとする。
西側諸国は核をまず抑止力と位置付け、相手の攻撃を思い留まらせるためにこちらにも強くて速い核があることを示す。
しかし、習近平氏は、核は抑止だけでなく、目的達成に使える強い圧力手段と捉えているという。
核攻撃の回避という、言わば受け身の抑止に留まらず、積極的に核で脅して相手を中国に従わせることを意図しているというのだ。
また先述のようにプーチン氏は核を勝利をもたらすための武器だと捉えている。
中露の核に対処するには米国は核戦力の倍増が必要だが、クレピネビッチ氏はそれは困難だと見る。
自国の核の使用が第3次世界大戦に繋がると恐れる米国が、米国の核戦力が相対的に弱まるとみられる3極体制の下で、日本を拡大抑止の核の傘で守ってくれると安心して良いのか。
否であろう。
我が国は欧米諸国よりも尚真剣に核や安全保障問題に向き合わなければならないが、それが出来ていない。
日本の最大の脅威は中国だ。
彼らはウクライナ侵略戦争の後、大国の地位を確立し米国に取って代わる夢を描く。
日米関係を引き裂いて日本を中国圏内に引き入れ、影響下に組み込むのが中国の戦略だ。
習近平氏はウクライナ戦争の混乱の中でも着々と戦略を進める。
2022年4月21日、中国海南省で開かれた
「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」
で、
「世界安全保障構想」
を提起した。
習近平氏の世界戦略、
「人類運命共同体」
の安全保障版である。
直近の事例が2022年4月の中国とガダルカナル島を含むソロモン諸島との安全保障協定であろう。
太平洋上での米豪間の連携を断ち切る楔ともなる島に中国が手を掛けたのだ。
これに先立ち、中国は2022年2月、南米大陸のアルゼンチンを一帯一路に取り込む覚書を交わした。
2022年1月にはアジア5カ国と
「中国・中央アジア運命共同体」
の構築を表明した。
2021年11月にはアラブ首長国連邦(UAE)での軍事施設の建設も明らかになった。
中国は2021年9月、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加申請したが、2カ月後にはデジタル貿易に関する新たな枠組み
「デジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)」
にも加盟を申請し、
「デジタル人類運命共同体」
の構築を提言した。
デジタルによる情報管理は中国共産党の最も切望するところだ。
彼らは2014年以降、世界インターネット大会を主催し、2021年9月には、デジタル分野での運命共同体の構築を打ち上げた。
中国共産党は軍事、情報、経済の全分野で人類運命共同体のスローガンを打ち出し、国際社会のリーダーたらんとする。
その上で大国の地位を強い核で担保し、台湾問題など解決困難な課題も必ず中国の考えに沿って解決する固い決意を隠さない。
この中国の脅威を我が国は直視出来ているか。
核戦力についてどこまで現実を見て取っているか。
中国の脅威にどんな戦略で立ち向かうのかと問うと、多くの日本人は日米同盟の強化、と答える。
だが、中国の戦略目標は米国を凌駕する強い帝国の樹立だ。
彼らの核は米国が予想する
「2030年に1000発」
の水準では止まらないだろう。
米国が中露両国の核戦力に対峙しなければならない時、日本の国防戦略が
「日米同盟堅持」
で十分なずはない。
日本は日米同盟の重視と共に、自立を目指す必要がある。
まず、憲法改正である。
その中の1つであり、当面の焦点の1つでもある核に関しては明確な政策を打ち出すことが必要だ。
その意味で自民党安全保障調査会が2022年4月に政府に提出した提言は弥縫策である。
「反撃能力」
の保有を認め、今後5年で国防費を国内総生産(GDP)比2%以上を目途に引き上げるとしたことの意義は認めるが、根底にある国防思想も、国家像についての考えも変わっていない。
危機に直面して自国を守ることは自明の理である。
危機に際して、命や財産よりも大切なものがあるという価値観、国家は守るべきもので守らなければ滅びてしまう、それで良いはずはないという考え方、国家観が、自民党から伝わってこない。
何故未だに憲法9条の精神とされる
「専守防衛」
を引きずるのか。
何故世界大激変を目撃しながら岸田文雄首相は非核三原則を国是と言うのか、納得し難い。
今、首相の最重要の責務は日本国の危機に正対できる国民意識を醸成することであろう。
空想的平和主義を捨て、国家防衛の大切さについて、首相自ら語る時だ。
中国の脅威に立ち向かうには、日本国が独立国としての気概を持つことが大事でその第一歩が憲法改正である。
政治家がまずそのことを認識し、全力を傾けて日本の目醒めを実現すべく国民に説く時である。

緯度経度
米国での日本核武装研究 古森義久
2022/3/1 00:00 産経新聞
ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻で核戦力の準備を言明した。
国際紛争での核兵器の現実の威力ということか。
日本の国家安全保障でも核の脅威は現実である。
中国当局は台湾有事での日本への核攻撃動画の頒布を許した。
北朝鮮は
「日本を核で海底に沈める」
と公言する。
日本側で自国の核抑止論議が始まるのも自然だろう。
日本は核の面では米国の拡大核抑止に依存している。
だが日本が独自の核抑止力を求めた場合はどうか。
日本の核武装に米国はどう対応するのか。
この点で既に1980年代に米軍の専門家が日本の核武装について精緻な論文を発表したことを認識するのも意味があろう。
内容は日本では知られておらず、今の日本の核論議への指針となる。
論文は米空軍のジョン・エンディコット大佐が書いた
「日本の核オプション(選択肢)」。
同大佐は在日米空軍勤務後、国防総省の国際関係の要職を経て、当時は国防大学副学長だった。
同論文は米国の日本への
「核の傘」
がなくなった場合を想定していた。
そしてソ連が当時の中曽根康弘首相の不沈空母発言に対して
「日本は報復的核攻撃の標的となるだけだ」
などと核の脅しをかけた場合、日本は全面降伏する以外には独自の核抑止力を持つしかないだろう、とも想定していた。
その上で日本にとってソ連の核攻撃や脅迫を抑止できる方策について以下のように述べていた。
▽ソ連が日本を核攻撃し、日本からの核の傘の報復で枢要部の人口の25%ほどが破壊される見通しが確実となれば、実際の核攻撃はできなくなる。
▽日本がソ連にそれだけの損害を与える核戦力の保持として、
@大陸間弾道ミサイル
A戦略爆撃機
Bミサイル搭載潜水艦
の3方法があるが、実効を持つのは潜水艦となる。
1980年と言えば、ソ連のアフガニスタン侵攻で米ソ対立が危険の極みにあった。
日本へのソ連の脅威も現実だった。
この論文はソ連が日本への先制核攻撃をかけることも想定していた。
日本の核抑止力とはその攻撃に耐え、ソ連に許容できない破壊をもたらす核報復能力を指していた。
同論文の最重要な骨子は以下だった。
▽日本は米海軍のポラリス型に似た核ミサイル搭載原子力潜水艦10隻を保有する。
1隻に射程4600km以上の核弾頭ミサイル各16発を装備して、そのうち4隻から6隻を常時、アラビア海に配備する。
▽アラビア海に展開した日本潜水艦はソ連のモスクワなど25の主要都市に核ミサイル最大96発(16発×6隻)を発射できる。
ソ連側の迎撃ミサイルの機能を考慮しても、その結果、ソ連側に許容できない被害を与え得る。
だからこの論文はソ連の核戦力を抑止できる、日本独自の核武装は可能だと総括していた。
ただしエンディコット大佐自身はその時点での日本核武装には反対だと付記していた。
しかし40年後の今この想定を中国や北朝鮮への核抑止に適用すると、十分に実効性はあるようだ。
同盟国の米国はこんなに早くから日本の核武装について、ここまで研究していたということでもある。


[18初期非表示理由]:担当:スレと関係が薄い長文多数のため全部処理。自分でスレを建てて好きな事を投稿してください

21. ボタンクサギ[337] g3uDXoOTg06DVINN 2025年3月18日 16:07:06 : 4WUf3IUh9E : V0k5NUdQVWszRzI=[537] 報告
<▽42行くらい>
なぜ一部のニジェール国民はフランスを追い出し、ロシアを歓迎したいのか
ニアメーから約800キロ離れた中部ジンダーに住む実業家は、
「自分は親ロ派で、フランスは嫌いだ」、「子供のころから
フランスに反対してきた」と話した。この人物は身の安全の
ため、名前は明かさず、顔にモザイクをかけるよう要求した。
「フランスはウランやガソリン、金といったこの国の富を全て
搾取してきた。最も貧しいニジェール人が1日3食食べられない
のは、フランスのせいだ」
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-66381430
追い出される米国、押し寄せるロシア…揺らぐアフリカ
https://japan.hani.co.kr/arti/international/50206.html

「デンマーク領グリーンランド 続く先住民への差別と偏見」
 グリーンランド人は「劣った民族」とされ、子どもを望むデンマーク人
は積極的にグリーンランドの子どもたちを「養子」にした。しかし実態は
グリーンランドの親が養子縁組の書類に無理やりサインをさせられたり、
「いずれ子どもは戻ってくる」と誤った認識をさせるなどして、「誘拐」
した形に近かった。闇取引も日常的だったために、実際にどれほどの子ども
が「デンマークに奪われた」のか今も不明だ。また1950年代には
「社会的実験」として子どもが家族から引き離された。デンマークと先住民
の文化の架け橋となる「模範的な」グリーンランド人を育てる計画の一環と
して、デンマーク語を学ぶためにデンマークに送られた22人のイヌイットの
子どもたちは、母語を失い、デンマーク社会で居場所を見つけられず、
アイデンティティの問題に苦しむことになる。このうちの6人がデンマーク
政府を訴え、2022年にフレデリクセン首相は直接謝罪をした。
https://cpri.jp/6575/
子どもの性的虐待、「沈黙の共謀」が解決の妨げに グリーンランド
https://www.afpbb.com/articles/-/3233019
グリーンランド自治議会選挙 
 デンマークからの段階的な独立目指す民主党が躍進 
  トランプ氏の領有には反対
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/1785157?display=1

エマニュエル・トッドが新刊『西洋の敗北』で予測する日本の危機
 「NATOは崩壊し、日本は中国と独力で向き合うことになる」
https://bunshun.jp/articles/-/75101

22. ケメコ[3] g1CDgYNS 2025年3月18日 19:57:12 : 8pKh4md53c : NTZmNnBlczJtdk0=[177] 報告
NATOという組織はロシアを拒絶する組織、これを展開していけばいづれ摩擦を起こし点火してやれば武力闘争にまで至る。

今中国包囲網と称し多国間で武力演習を行っている、これも似たように思える。
中国との摩擦を増やしどこかで武力闘争に発展させるための火種が作られそうである。

中国は確かに脅威であるが戦争を画策するのではなく戦争回避のための中国を含む多国間の取り組みこそ急ぐべきではなかろうか。

戦争を作り出すシステムは非常に危険である。
また日本は欧米の支配層から危険視され疎まれていることを知る必要がある。

23. T80BVM[1377] VIJXgk9CVk0 2025年3月18日 23:26:48 : caGBwqwQAk : V0FZWkZRS3lmc2c=[39] 報告
とてもよい動画なんで紹介するよ

EUの狂気とウクライナ降伏の真相 | マイケル・v.d.・シューレンブルク
https://www.youtube.com/watch?v=mx7RkPg_2JA

EUはニセユダヤに完全に洗脳されているようだ

とりあえず以上

24. 2025年3月19日 10:18:26 : fKkQda7Cxw : a01WR1RYQWZoY00=[3210] 報告
赤鬼トランプと青鬼プーチンが話し合ってウクライナのエネルギー施設に限り30日間攻撃を停止するらしい。

噴飯ものだ、そもそも仮に戦争であっても民用物を攻撃するのはジュネーブ協定で禁止されている。あってはならん事を止めるだけの話し、バカバカしい。

鬼は外だ。

25. 5915[769] glSCWIJQglQ 2025年3月20日 10:11:38 : xfCQPLAkfU : SFBxcTJGR1Rud00=[2] 報告
   
 
ウクライナ軍の戦争犯罪人は罰を受ける=プーチン大統領
「クルスク州の民間人に対する犯罪の命令を出し、
 関与したものは全員、身元が特定され罰を受ける」

https://sputniknews.jp/20250319/19653502.html

ウクライナの戦争犯罪人の所業を知りながら支援した者たちにも
罰を与えるべきです
 
   
 

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