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※2025年3月26日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年3月26日 日刊ゲンダイ2面
日米同盟強化というが、米国に言われてつくった自衛隊新組織。どうなる?(C)共同通信社
制服組台頭の懸念が高まる中、その米国が強化中止、同盟国軽視という前提の変更をどこも報じない危うさ、おかしさ。政府の無意味な軍拡路線に乗っかる報道の裏側の検証も必要だ。
◇ ◇ ◇
鬼が出るか蛇が出るか。トランプ大統領の出方次第ではどのような展開をたどるのか分からない。陸海空3自衛隊を一元的に指揮し、米軍との連携強化などを目的に24日発足した「統合作戦司令部」のことだ。
自衛隊の部隊運用はこれまで、制服組トップの統合幕僚長が首相や防衛相を補佐しながら指揮してきた。しかし、東日本大震災の際、統合幕僚長が首相らへの説明に忙殺される事態が発生。現状体制では他の情勢に対応できず、部隊運用もままならないとの懸念から、新たな体制づくりが必要として、2022年策定の安全保障関連3文書で明記された。
防衛省統合幕僚監部から指揮部門を切り離す形で設置された同司令部。期待されるのが、有事や大規模災害が同時発生する「複合事態」に備えた役割だろう。これまでは事案が起きるたびに各自衛隊から「統合任務部隊」を編成していたが、今後は平時訓練から有事に至るまで一貫してシームレスな体制で対処できる。さらに、サイバー攻撃や領空・領海周辺での挑発的活動など、武力による攻撃とまでは言えない複雑な事態、状況に対しても柔軟な対応が可能になるとみられている。
現代戦は従来の陸海空に加え、宇宙空間なども対象だ。政府が現在、整備を進めている反撃能力(敵基地攻撃能力)を機動的かつ効果的に運用するには、長射程ミサイルや衛星などを組み合わせた作戦が欠かせず、同司令部が訓練や任務を通じてノウハウを蓄積し、中核を担っていくという。
本当の目的は米軍と自衛隊を“一体化”
司令部設置は自衛隊の部隊運用の即応性を高めるのが狙い──とはいうものの、本当の目的は米軍と自衛隊を“一体化”することだろう。
司令部の機能強化は日米首脳レベルの合意事項であり、バイデン前政権は昨年7月、米ハワイのインド太平洋軍司令部傘下の在日米軍を統合軍司令部に格上げする方針を発表。在日米軍司令部にはなかった作戦指揮権限の付与についても言及し、国防総省は「在日米軍創設以来の大改革」と位置付けていたからだ。
他方、日本側は自衛隊が反撃能力に使える米国製巡航ミサイル「トマホーク」などの配備が2025年度から始まることから、これに合わせて日米双方の指揮系統を強化し、作戦レベルでの両国の役割分担や運用調整を図りたい思惑があるとみられている。
中谷防衛相は会見で、「自衛隊の活動は日本の主体的な判断の下、憲法・法令に従って行われる。統合作戦司令部が米軍の指揮・統制下に入ることはない」と“一体化”を否定していたが、信じる人はいるのだろうか。どう考えても圧倒的な軍事力を持ち、情報収集能力が高い米軍に自衛隊が頼らざるを得ないのが実情だからだ。結局、今回の新組織とは「日米同盟強化」を理由にしつつ、米国に“言われてつくった”のが実態なのだろうが、ここにきて連携強化の先行きに暗雲が立ち込める事態が生じた。トランプ政権が在日米軍強化の中止を検討している、と米メディアが報じたからだ。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏がこう言う。
「これまでの日米同盟の考え方をもとにした新司令部であれば機能は期待できたはず。しかし、トランプ大統領の動き方によってはどうなるのか分かりません」
日本は今こそ、新たな外交姿勢を打ち出す時だ
ちゃぶ台返し(C)ロイター
憲法では全ての閣僚は「文民でなければならない」と決められ、自衛隊法では自衛隊の最高指揮権は首相が持つという政治家による文民統制(シビリアンコントロール)が定められている。
さらに防衛省・自衛隊では背広組(防衛官僚)が制服組(自衛官)を統制するという「二重の文民統制」も取られてきただけに、制服組の台頭につながりかねない今回の新司令部発足にはさまざまな懸念が指摘されている。
統幕長と司令官の関係など、タダでさえ課題山積の船出となる中でのトランプが方針転換を示唆したという報道だ。現場はテンヤワンヤだろう。
防衛省幹部は「作戦指揮権限を在日米軍に移管する範囲を検討していることは把握しているが、『中止の検討』は全く聞いていない」「日米首脳会談を通して積み上げてきた指揮統制の連携強化の合意について、対中国抑止を最優先にするトランプ政権も、重要性を認識しているはずだ」などと平静を装っているが、バタバタ感は否めない。
30日にも中谷と東京都内で会談する予定と報じられている米国のヘグセス国防長官も、トランプの歳出削減方針を受け、米軍組織の見直し着手を明言。「政権内部と協力し、削れる無駄を特定する」と意気込んでいるから、あらためて計画通りに在日米軍が再編され、統合軍司令部が新設されるか。
「日本の安全保障に全面的に関与」の発言は?
ウクライナのゼレンスキー大統領との首脳会談で激しい“口論”を繰り広げ、その後、ウクライナへの武器供与などを即時に取りやめたトランプ。
NATO(北大西洋条約機構)に対する厳しい態度を見ても、重視する判断材料はカネだけ。無駄だと思えば、在日米軍の再編など、あっという間にご破算にするだろう。すでに画餅に帰した感が漂う新司令部に対し、防衛省内でも嘆息が漏れているようだが、とはいえ、トランプの発言が事実とすれば、それはそれで問題なのは言うまでもない。同盟国を軽視しているに等しい姿勢は、日本を見捨てたと言ってもいいからだ。
約2カ月前の日米首脳会談で、トランプは「米国は日本の安全保障に全面的に関与する。我々は米国の抑止力を拡大させていく」と言っていたはず。それをあっさりと「ちゃぶ台返し」するような言動は言語道断で、大手メディアはなぜ、その点を報じないのか。
そもそも、新司令部の立ち上げに当たっては、台湾有事や中国に対する脅威論も背景にささやかれていた。だが、ハシゴを外し始めたトランプの様子を見たのかどうか分からないが、ここにきて中国側が日本に接近。
日中韓外相会談に出席するため日本を訪れた王毅外相は石破を表敬訪問。さらに岡野国家安全保障局長と会談した際、戦略的互恵関係の実現に向け、「重層的な意思疎通」を推進する方針を確認したという。
つまり、想定の前提が全て崩れているわけで、その変更の危うさ、おかしさを伝えるのが大手メディアの役割だろう。
もっと踏み込めば、5年間で総額43兆円という防衛費は必要なのか。人口減少が顕著な日本で武器を爆買いしても扱う自衛隊員が足りないなんてことになりかねず、政府の無意味な軍拡路線に乗っかっているだけの報道の裏側の検証も必要だ。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏がこう言う。
「トランプ大統領が一体何を考え、どう動くのか誰も予想がつかない。激しく口撃していた中国に対しても、最近はトーンダウンしつつあり、日本も対中政策について米国とどう足並みをそろえていくのか先行きが見えないでしょう。いずれにしても、トランプに振り回されているわけです」
ひたすら米国のご機嫌をうかがうだけの日本。今こそ、新たな外交姿勢を打ち出す時ではないのか。
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