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国民が決断する原発全廃
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2025年3月11日 植草一秀の『知られざる真実』
東日本大震災・フクシマ原発事故から14年が経過。
東北地方沿岸での巨大地震発生と大津波襲来は警告されていた。
本年2月末から3月にかけて岩手県で発生した大規模火災。
岩手県大船渡市綾里は深刻な火災被害に見舞われた。
この綾里にもう一つの記録が残されている。
1896年(明治29年)6月15日に三陸沖を震源とするM8.2〜8.5の大地震が発生した。
明治三陸地震である。
この地震で大津波が発生し、綾里では津波の遡及高が38.2メートルに達した。
死者は2万2000人に達したが、そのうち約1万8000人が岩手県の死者だった。
古くは平安時代前期の貞観11年5月26日(西暦869年7月9日)に陸奥国東方沖海底を震源とする大地震と大津波が発生している。
産業技術総合研究所(産総研)の海溝型地震履歴研究グループは陸域の調査によって宮城県から福島県の海岸付近の平野に広く貞観地震に伴う津波堆積物が分布することを明らかにした。
その結果に基づき貞観地震を発生させた断層モデルをシミュレーションで構築。
三陸沖で幅100km、長さ200kmの断層が破壊したと推定した。
これらの調査結果として産総研研究グループは、450〜800年間隔で東北地方を津波が襲っていたことと今後も津波を伴う大地震が発生する可能性があることを予見して2010年に研究結果を国に報告していた。
東電は、想定される地震と津波に対する福島原子力発電所の対応が不十分であるとの指摘を受けていた。
しかし、適正な津波対策を取らずに原発事故を引き起こした。
原子力損害賠償法は原発事故を引き起こした場合の事業者の無限責任を定めている。
第三条 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
条文後半の〈ただし書き〉には
〈損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない〉
としており、東日本大震災が〈異常に巨大な天災地変〉であるのかどうかが焦点になる。
しかし、産総研は、450〜800年間隔で東北地方を巨大地震と巨大津波が襲うことを予見して政府に報告していた。
地震も津波も想定の範囲内の事象であり、〈異常に巨大な天災地変〉には該当しない。
原発事故に伴う費用は巨額に上り、東電は完全な債務超過に陥る。
したがって、東電の法的整理は不可避だった。
ところが、菅直人内閣は東電の法的整理を行わなかった。
東電の法的整理を阻止したのは財務省であると考えられる。
原発事故発生時点での東電のメインバンクは日本政策投資銀行だった。
東電を法的整理する場合、最初に責任を問われるのは株主。
株式が価値を失うことで株主は責任を負わされる。
経営責任も問われ、東電役員は引責させられる。
次に責任を問われるのが貸し手である。
東電に対する債権者は東電に対する融資資金=債権が毀損することで責任を負わされる。
東電の法的整理は日本政策投資銀行の経営危機に直結する。
日本政策投資銀行は財務省の最重要天下り先。
財務省は最重要天下り先である日本政策投資銀行を守るために東電の法的整理を阻止したと見られる。
東電の株主と資金の貸し手は救済され、原発事故処理の膨大な費用のすべてが日本国民に負わされている。
東電を法的整理せずに救済したことは最大の不正義である。
この不正義を主導したのが財務省である疑いが濃厚であることを銘記する必要がある。
地震と津波のリスクはフクシマ原発に限らない。
日本のすべての地点で巨大地震と巨大津波が発生し得る。
この日本で原発を推進することは国の自殺行為。
原発の全廃を決断するべきだ。
それが日本国民の責務だ。
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