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※2025年3月3日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年3月3日 日刊ゲンダイ2面
感情むき出しで、相手への敬意も尊重もなかった米ウクライナ首脳会談(C)ロイター
感情むき出しで、相手への敬意も配慮もなかった首脳会談のグロテスク。居丈高に感謝を迫り、自分の利益しか頭にないトランプ米国の傍若無人に世界が驚き、辟易したが、これは悲劇の幕開けに過ぎない。分断と対立が深刻化する中、プーチンの高笑いだけが聞こえる暗澹。
◇ ◇ ◇
2022年2月24日、ロシアのプーチン大統領によるウクライナ軍事侵攻が始まったとき、日刊ゲンダイでも連載中の歴史家、保阪正康氏はこう書いた。
<21世紀の今日、まさか前世紀に繰り広げられた帝国主義侵略戦争が再び引き起こされるとは、と世界は驚き、そして、怒った。プーチン大統領はウクライナの国土と国民を蹂りんし、ロシアの国際的評価を低下させた。プーチンは国際秩序への背信行為を行った政治家として歴史に悪名が刻まれることになるだろう>(「歴史が暗転するとき」小社刊)
その後、欧米諸国を中心にウクライナ支援の輪が広がったのは周知の通り。侵略者、プーチンはやがて、「戦争犯罪者として裁かれる運命」とみられていたのだが、世界は3年後の2025年2月28日、トランプ米大統領によって暗転した。
この日、ホワイトハウスの大統領執務室でウクライナのゼレンスキー大統領と首脳会談を行ったトランプは全世界に中継されているTVカメラの前で「おまえたちは勝てない」「米国に感謝が足りない」「米国は手を引く」と罵倒、一方的に会談を打ち切り、継続を求めるウクライナ一行をホワイトハウスから追い出したのである。
相手を小バカにしていたトランプの非礼
これが果たして自由主義陣営の雄だった米国がやることか。トム・ニコルズ米海軍大名誉教授は「トランプはまるでプーチンそのもの」と指摘していたが、世界が衝撃を受けた理由はもうひとつある。米国の野蛮さだ。終始、上から目線でゼレンスキーを見下ろし、超大国が苦しめられている小国に対し、著しく礼を欠いていたことだ。バンス副大統領は大統領執務室で反論したゼレンスキーに「失礼だ」とブチ切れていたが、先に挑発したのは米国だ。トランプはホワイトハウスでゼレンスキーを出迎えるとき「きょうはめかしこんできたな」と戦時下の服を揶揄した。
神経を疑う言動だ。横柄な態度で相手の弱みに付け込み、脅し、不公平なディールを押し付ける。
元英エコノミスト編集長のビル・エモット氏は「小国に対するゆすり」と書いていたが、まさしく、その通りで、「これがアメリカなのか」と世界中が唖然としたのではないか。
共同通信でワシントン支局長を務めた国際ジャーナリストの春名幹男氏も呆れた一人だ。
「明らかに相手をバカにしていましたね。こんな首脳会談は見たことがありません。米国はこれまでもウクライナ抜きで、ロシアと停戦交渉を試みるなど、あからさまにウクライナを邪険にしてきた。ですから、こういう展開はある程度は予想できましたが、罵り合いには驚きました。バンス副大統領がわざと挑発する場面もあり、ゼレンスキー大統領がかみつき、会談が決裂する映像をロシアに見せたい思惑を感じました」
思惑通りと言うか、ロシア側は大感激。
メドベージェフ前大統領は「ゼレンスキーが強烈な平手打ちを食らった」とSNSに大喜びで投稿していた。
こうなれば、米ロはさらに接近し、両者で停戦交渉が話し合われていく。それでトランプが成果を挙げられればよいのだろう。ウクライナなんて、知ったこっちゃない。そういうことだ。あまりに身勝手な理屈、論理には打ちのめされる思いだ。
トランプがやっているのはゆすり、タカリ
米国がウクライナに当初、迫った鉱物、ガス、石油資源採掘に関する協定も酷いものだ。収益の半分を5000億ドル(約75兆円)に達するまで米側の基金に差し出せというもので、これは米側がこれまでウクライナに支援してきた総額の5倍に当たる。まさに、弱みに付け込んだ脅し、ゆすりの類いである。さすがにゼレンスキーが蹴ったものだから、「コイツは生意気だ」となったのである。会談決裂後、米共和党のグラム上院議員は「(ゼレンスキーは)辞任するか別の誰かを送る必要がある」と言い出したが、なんの権限があって、他国の人事に口出しするのか。まるで宗主国気取りではないか。
確かに米国はこれまでウクライナを軍事支援してきた。米の支援がなければウクライナはすぐに白旗を掲げていたのも間違いない。
とはいえ、それでボロ儲けしたのは米国の軍産複合体だ。これは欧州も同じ構図で、ウクライナが代理戦争の舞台になり、ウクライナ国民だけが犠牲を強いられ、欧米の死の商人たちはウハウハだった。
それだけにゼレンスキーの無謀な戦争継続にも疑問符が投げかけられるべきだが、トランプがやっているのは、火事場泥棒そのものだ。世界は今や無法地帯と化している。
瀬戸際に立たされているのは世界も一緒
ひれ伏すだけでは…(C)ロイター
問題は今後の国際秩序がどうなっていくのかだ。
無謀なトランプに対して、欧州諸国は一斉にウクライナ支援を打ち出している。
英首相府の報道官は「スターマー首相がウクライナへの揺るぎない支持を継続し、同国の主権と安全保障に基づく恒久平和への道を見いだすために尽力している」と述べた。マクロン仏大統領はゼレンスキーと会談、「侵略者はロシア、攻撃を受けている側がウクライナだ」と強調。ショルツ独首相はXで「ウクライナはドイツを、欧州を頼りにしてくれていい」と書き込んだ。
とはいえ、彼らが支援するのは武器とカネだけだ。米国が支援を打ち切れば、ウクライナは一気に追い詰められていく。なす術がないまま、領土は奪われ、その責任を巡って、欧米の分断がより鮮明になり、再びプーチンの高笑いがこだますることになる。
こうなると、瀬戸際に立たされているのはウクライナだけではないことを肝に銘じるべきだろう。自由と法の支配、まっとうな民主主義も音を立てて崩れようとしている。世界は無法な力によって支配されることにもなりかねない。
大メディアはてんで書いていないが、世界は暗黒の歴史の入り口に立っているような予感すらする。いや応なく、日本もそこに巻き込まれていくのである。
石破首相と世界の指導者に課せられた重責
前出の春名幹男氏は「大メディアは本当のことをどこも書いていない」とこう言った。
「トランプ政権はこれまでの政権とは全く違うのです。一言でいえば、帝国主義的な価値観になった。トランプ大統領はいまや、小国の方が栄えていて、それは米国が損を強いられてきたからだ、という価値観を信じている。米国を再び偉大な国にするために、彼らから借りを返してもらわなければいけない。そういう発想です。だから、法外な関税をかけまくり、カナダを米国の州にするような発想が出てくる。国際協調や法の支配は関係なく、力による現状変更もいとわない。中世の王様のような考え方です。米国は民主主義国ですが、大統領令を乱発し、最高裁判所もそれを認めれば絶対支配者にもなれてしまう。トランプ氏はそうやって、米国を復活させ、世界は米中ロの3大国が支配するべきだ、と考えているのだと思います」
さあ、石破首相はどうするのか。こんな米国に隷従するのか。「法の支配」や「力による現状変更」を否定してきたくせに、大きな矛盾だ。つまり、日米同盟も今後は変容せざるを得ないのだろう。
「日本は大きな瀬戸際に立たされていると思います。米国一国主義を掲げ、国際協調や法の支配を無視するような米国についていくのか。トランプ流の力による支配を認めるのか。この路線を変えないのであれば、今後は世界で孤立していく懸念がある。同盟国として、米国を牽制、あるいは助言し、世界の分断を深めないような役割を果たせるのか。それが問われていると思います。もちろん、これは石破首相にだけ求められているのではなく、世界の指導者に課せられているものです」(法大名誉教授・五十嵐仁氏)
米ウの会談決裂にロクなコメントも出せていない石破官邸を見ていると、暗澹たる気持ちになってくる。
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