http://www.asyura2.com/24/senkyo296/msg/714.html
Tweet |
※2025年3月1日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
トランプ大統領(右)と石破首相(C)ロイター
トランプ大統領の宣言通り、猛烈な関税が始まるが、対米黒字を抱える日本もターゲットになるのは確実だ。鉄鋼、アルミ、銅に加えて、消費税分も上乗せさせられ、自動車産業は大打撃。自由貿易は破綻し、米景気もインフレで減速の中、保身しか頭にない政権の不安。
◇ ◇ ◇
下げ幅は一時1400円を超え、節目の3万7000円を割り込む場面もあった。きのう(2月28日)の日経平均株価は大幅反落。終値は前日比1100円67銭安の3万7155円50銭と昨年9月以来、約5カ月ぶりの安値水準となった。
前日の米国市場では、主要な株価指数が軒並み下落。その流れが東京市場を直撃し、朝方から自動車など輸出関連株を中心に幅広い銘柄が売られた。米国株下落は自称「タリフマン」のSNS発信がきっかけだ。
トランプ米大統領が、1カ月延期していたカナダ、メキシコへの25%の関税措置を予定通り3月4日から発動する意向を投稿。同日には中国への追加関税をさらに10%上乗せし、すでに発動した分と合わせて20%を課す考えも記した。直前には、EUからの全輸入品への関税を検討していると明かし、税率は「一般的に言って25%になるだろう」と言ってみせた。
関税は輸入業者が支払った分、自国の消費者に転嫁される。関税を広範囲にかけるほど、物価押し上げ効果がある。インフレ再燃や景気減速、米中貿易摩擦の激化への警戒感から、米国株は値を下げたのだ。
そんな市場の懸念はお構いなしに、トランプは米国でも作られている製品の輸入関税を手当たり次第につり上げ、国内産業を守る意志を強調するという異常事態が続く。
根底にある「貿易赤字は負け」の発想
すでに表明した関税メニューは前出の他にもズラリだ。
▽鉄鋼・アルミ・銅関税--現行の鉄鋼製品25%に加え、アルミ製品も10%から25%に引き上げ。3月12日に発動予定。銅を加えることも検討し、日本も対象となる見込み。
▽相互関税──関税や非関税障壁が高い国・地域に相応の関税を課す。4月1日に詳細を決める方針。
▽自動車・半導体・医薬品関税--4月2日に全容を公表予定。トランプは「25%程度になる」とにおわせている。
トランプは関税収入の増加分を減税の原資に充てるというが、猛烈な関税ラッシュで米国の物価が高騰すれば、身もふたもない。
宣言通り、トランプ関税が始まれば関税インフレで消費は減退し、米国経済は景気後退局面へとまっしぐらだ。経済評論家の斎藤満氏はこう言った。
「これだけエゴイスティックな米大統領は前代未聞です。トランプ氏の関税政策は他国から税を巻き上げ、米国内に還元するというムチャクチャなもの。米国の輸入が減れば、結果的に関税収入も減る。無理と矛盾の噴出は目に見えていますが、すでに東西分断どころか、米欧分断を招き、世界秩序が崩れ、自由貿易は破綻しかねません。トランプ氏の根底にあるのは、米国の貿易赤字を『負け』と捉える発想です。自国が生産するよりも、より良い製品を多く輸入できれば、暮らしは豊かになっていく。逆に良い品を輸入したくても外貨が足りない途上国はたくさんあります。米国の貿易赤字には『豊かさの象徴』の側面もあるのに、トランプ氏は相手国が不当に儲けているという誤った認識しか持てない。米国にもノーベル経済学者はいるのに、誰も暴走を止められないとは由々しき事態です」
自動車関税「ゼロ」でも難クセをふっかける
日本の屋台骨に激震(C)共同通信社
日本の対米貿易の黒字額は米国から見て中国、メキシコ、ドイツに次ぐ世界4位。日本もトランプ関税のターゲットとなるのは確実だ。とりわけ大ダメージが予測されるのは自動車関税である。2024年の日本の対米輸出21兆円のうち自動車関連が3割を占め、米国の新車販売の4割近くを日本車が占めている。
牽引役のトヨタ自動車は24年に米国で販売した233万台のうち、53万台を日本から輸出。調査会社S&Pグローバル・モビリティーによると、さらにカナダとメキシコでの生産分を合わせれば44%に上る。トヨタだけでも約100万台が、トランプ関税の標的となりかねない。販売価格の上昇につながれば、まず大衆車は買ってもらえなくなるだろう。
一方、23年に日本が輸入した米国ブランドの自動車は1万8958台と、トヨタ1社による米国販売台数の2%以下にとどまる。日本では現状、輸入自動車への関税率はゼロだ。そこで米国側が米国車の販売低迷の理由に常に持ち出すのが「非関税障壁」である。
トランプは第1次政権時代にも日本の軽自動車への優遇税制や安全基準と環境規制の違い、個人的関係を重視する商慣習まで問題視。「我々の車の販売を難しくしている」と攻撃し、関税引き上げをチラつかせては、日本を「ディール」に引きずり込んできた。
同じ輸入車でもベンツやBMWなどドイツ車は根強い人気を誇り、日本の道路を快走している。米国車の販売不振は単なる顧客のニーズ不足で、「非関税障壁」など難クセに過ぎないのだが、「車両は左側通行という日本の道路事情を、米国と同じく車両は右側にしろ」とか言い出しかねないのが、今のトランプの勢いの恐ろしさだ。
政財界挙げた“お買い上げ”キャンペーン
前出の斎藤満氏はこう指摘する。
「非関税障壁として日本の消費税もヤリ玉に挙げられかねません。トランプ氏は、日本の消費税と米国のセールスタックス(売上税)は『違う』と発言。州(地方)ごとに徴収する売上税と、国も徴収する消費税の違いを強調しており、日本の消費税率10%を関税に丸々上乗せされる可能性は十分にあり得ます。また、トランプ氏は1ドル=150円前後の円安水準が不当に日本の輸出を優位にしていると考え、この是正を求めています。日銀が低金利政策を改めなければ、為替の均衡水準からの乖離率分を関税に上乗せするリスクもある。問題はトランプ氏の円・ドル乖離率の認識で、かつては『1ドル=100円でいい』と語ったこともある。今の円安水準を考えれば、最悪のケースで50%近い関税引き上げをふっかけてきても、おかしくないのです」
そうなれば日本の屋台骨の自動車産業は壊滅的ダメージを被る。もっと言えばむちゃな関税により米国発の世界恐慌だって起きかねない。まさに世界が激変するのに、石破政権にトランプ大不況への備えはあるのか。
とりあえず武藤経産相を3月中に訪米させ、トランプ政権との閣僚会談の場を設ける方向で調整入り。自動車関税や相互関税などの日本への除外を申し入れる方針だが、しょせん受け身一辺倒の「お願いベース」。その場しのぎに過ぎない。
今期国会も石破首相は予算案の成立に汲々とし、いわゆる「ゆ党」に手を突っ込み、数合わせの内向きな議論に終始。いまだ裏金事件の総括もできず、ようやく実現した旧安倍派の会計責任者の参考人聴取後は元幹部同士が再び責任をなすり付け合う醜悪な内ゲバが再燃。「政治とカネ」問題の温床である企業・団体献金についても「禁止より公開」との立場を崩そうとしない。
保身しか頭にない後ろ向きの政権には、不安が募るばかりだ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「ソフトバンクグループの孫正義会長は、米国のAI開発に最大5000億ドル(約77.8兆円)の投資を発表。ANAは米ボーイング社から新型機30機を購入と大盤振る舞い。トランプ氏の機嫌を損ねまいと政財界挙げて“お買い上げキャンペーン”を絶賛実施中ですが、相手は根っからの『イジメっ子』体質。下手に出るほど『日本はそんなにオレを恐れているのか』と、ますますツケ上がるだけ。一国では歯が立たなくても、EUとの連帯強化など対抗手段はいくらでもあります」
トランプの面前で異例の「ファクトチェック」を仕掛けたマクロン仏大統領のような強気な姿勢を石破に期待するだけ無理か……。
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK296掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK296掲示板 次へ 前へ

すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。