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※2025年2月12日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年2月12日 日刊ゲンダイ2面
首脳会談で握手を交わす石破首相(左)とトランプ米大統領(C)共同通信社
袖にされたり、高額関税を突きつけられなかっただけで「大成功」と欣喜雀躍の石破首相。政権運営に自信を深めているらしいが、もともと御しやすい相手だから、あえてケンカを吹っ掛けずに上納させるだけのこと。波乱はこれからで、首相も野党もメディアも甘すぎる。
◇ ◇ ◇
トランプ大統領から「素晴らしい首相だ」と褒められたのがよほどうれしかったのか、最大の懸案事項だった「トランプ詣で」を無事に終えた石破首相が大ハシャギしている。帰国後、NHKを筆頭に大手メディアのインタビューに応じては、「共感があった」「『もう一回会って話したい』という感じを持てた」と、トランプとの初顔合わせがうまくいったと、誇らしげに語っている。
日本側が懸念していた「関税引き上げ」などの対日圧力をひとまず回避したことで、大手メディアや野党までが、日米首脳会談を「率直に評価したい」「一定の成果を上げられたのではないか」と称えている状況だ。
しかし、最初の会談を波乱なく終えただけで舞い上がるのは、少し甘いのではないか。
「タリフマン(関税男)」を自称するトランプが、日本に無理難題を突きつけてくるのは、これからだからだ。
早速、トランプは10日、アメリカが輸入する鉄鋼、アルミニウムに25%の関税を課す大統領令にサインしている。「すべての国に適用する。これは大きいディールだ。アメリカを再び豊かにする」と記者団に強調している。発効は3月12日だ。
もちろん、日本も例外ではない。石破は、アメリカの関税措置について、日本は「(米国との間で)問題のある国と同列に扱われるとは限らない」と、読売新聞(11日付)のインタビューに答えていたが、淡い期待は、あっけなく裏切られた格好である。
経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「日米首脳会談を『成功』と評価する声があるのは、石破首相に対する『期待値』が低かった裏返しでしょう。実際には、日本の国益につながる大きな成果はなく、現状を追認しただけでした。カナダ、メキシコ、中国に対して、いきなり厳しい態度をとったトランプ大統領が、日本に対して厳しい要求をしなかったのは、日本の『優先順位』が低いという事情もあったのだと思う。トランプ大統領が1期目に就任した2017年、日本はアメリカにとって第3位の貿易赤字国でしたが、2024年は7位まで後退しています」
首脳会談で約束したことが足かせに
いずれ、トランプが関税を武器に日本に「ディール」を迫ってくるのは間違いない。日米首脳会談を詳細に見れば、それは明らかだ。
首脳会談後の記者会見でトランプは、「慢性的な貿易赤字はアメリカ経済を弱体化させる。日本との貿易赤字を解消しなければならない」と明言。貿易赤字が進まなければ関税をかけるのかと記者から問われると、「イエス」と即答し、自動車への関税についても「いつも選択肢にある」と答えている。
なのにトランプが、首脳会談の場で日本に厳しい要求をしなかったのは、「どうせ日本は言うことをきく」と、従順な日本は、いつでも要求をのませられると考えたからなのではないか。オドオドしながら、必要以上にへつらう石破の態度を見て、「日本はちょろい」と確信したとしてもおかしくない。
なにしろ、首脳会談の冒頭から、トランプを「神様から選ばれた」とヨイショし、さらに大統領選のスローガン「アメリカを再び偉大に(MAGA)」について、「忘れ去られた人々に対する深い思いやりに基づくものだ」と称賛するなど、露骨にスリ寄っていた。石破は完全になめられたはずだ。
それでは、この先、トランプは、どんな要求をしてくるのか。
タイミングを見て、「防衛費」や「在日米軍駐留経費の日本側負担」の増額を迫ってくるのは間違いないだろう。すでに首脳会談後の会見で「きょうの協議に基づき、日本の防衛費はかなり大幅に増額する」と、石破にクギを刺しているからだ。アメリカ製の兵器を大量に買わせるつもりに違いない。
「トランプ大統領の歓心を買うために、石破首相は『日本の対米投資1兆ドル』『米国産LNG(液化天然ガス)の輸入拡大』を約束していますが、この先、これらの約束は日本の弱みになる恐れがあります。首脳会談のたびに、数値目標の検証を迫られる可能性があるからです。もし、進捗状況が思わしくなかったら、ディールを得意としているトランプ大統領のことだから、日本の弱みを突いて、さらに高い要求をしてくる懸念があります」(斎藤満氏=前出)
トランプ政権は近く、貿易相手国に同等の関税を課す「相互関税」の詳細を発表する予定だ。日本の農産物が標的になるとみられている。
さらに、2月18日ごろ、半導体、医薬品、原油など幅広い品目の輸入品に高い関税をかけると予告している。対象国や税率は明らかになっていないが、日本も対象国に含まれるのは、ほぼ間違いない。このままでは、おべっかが苦手な石破が、トランプをヨイショしたことも、すべて無意味だったことになる。
弱腰ではなにもかも奪われる
日米共同訓練の開始式で、国旗を掲げる陸上自衛隊員(手前の3人)と米海兵隊員(C)共同通信社
これから4年間、日本はアメリカからムリな要求を突きつけられることになるだろう。なにしろ、大統領就任から1カ月もたっていないのに、世界中に貿易戦争を吹っ掛けるクレージーな政権である。
いったい、日本はどう対応すればいいのか。少なくても、過去のアメリカとはまったく違う国だと考えて対応した方がいいのではないか。
東大教授の鈴木一人氏(国際政治経済学)が、朝日新聞(6日付)でこう発言している。
<最も重要なのは、トランプ氏には過去の経緯や常識、外交とは何かといった縛りが一切ないということだ。米国の大統領の枠に収まり、振る舞うつもりはゼロだろう>
<今の世界は、これまでの世界とは違う。もう米国は世界のリーダーシップをとるつもりがなく、米国とうまくやっていれば何とかなると思っていた時代は終わった>
まさに、その通りなのではないか。
グリーンランドやパナマ運河の領有を唱え、パレスチナ自治区ガザ地区の所有を本気で主張するなど、トランプの発想は、19世紀の帝国主義と変わらない。メキシコ湾の名称をアメリカ湾と変えてしまい、カナダを51番目の州と呼んでいる。
恐らく、同盟国を大事にするという発想もないのだろう。あるのは、文字通り「アメリカ・ファースト」だけである。
石破は「アメリカとの間で波風を立てないことが大事」という発想なのだろうが、それでは、もう国益は守れそうにない。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)は、こう言う。
「アメリカを世界の盟主と仰ぎ、従っていれば安泰、という時代は完全に終わりました。この先、日本が国益を守るためには、場合によってはアメリカと対峙する、という覚悟を決めるしかないと思う。もはや、アメリカとの貿易戦争は避けられそうにありません。これまでのように、アメリカの言いなりになっていたら、ひたすら買い叩かれる懸念があります。日本単独では、アメリカと対峙するのは難しいでしょう。まず、中国を含めてアジア諸国との関係を強化し発言力を強めることです。ヨーロッパも、ASEANも、まとまってアメリカに対応しようとしています。石破首相は、トランプ大統領から『タフネゴシエーター』と警戒されるくらいにならないとダメです」
石破のように、首脳会談が波乱なく終わったくらいで浮かれているようでは、日本はケツの毛まで抜かれるだけだ。
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