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※2025年2月10日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年2月10日 日刊ゲンダイ2面
“神さま”相手にこわばっている石破首相(C)ロイター
石破官邸や霞が関が「総力戦」で臨んだトランプ大統領との首脳会談。まるで腫れ物に触るようにご機嫌伺いに終始し、対米投資額を積み増し、防衛費増を約束した見返りは何なのか。
ガザを追い出す狂気の大統領に首相もメディアも、かくもへつらうのかと驚愕だ。
◇ ◇ ◇
笹川平和財団上席フェローで外交・安全保障の専門家の渡部恒雄氏が先月、毎日新聞でトランプ大統領は「いじめっ子だ」と書いていた。
「いじめっ子」だから、媚びる、おもねる。そうやっていじめられなければ「100点満点」──。
これが日米首脳会談に臨む石破官邸ではなかったか。いや、大メディアですら、そういうムードだったのだ。だから、こんな首脳会談でもアチコチから、「大成功」などという声が出る。
石破首相は7日、ホワイトハウスの大統領執務室「オーバルオフィス」でトランプ大統領と初の日米首脳会談に臨んだ。会談の詳細な評価は後述するとして、冒頭映像の石破は硬かった。無表情で体もこわばり、暗記した文言を口にした。
「大統領閣下はあの時、『自分は神様から選ばれた』と確信されたに違いない」
キリスト教徒で知られる石破である。よくもまあ、軽々に「神から選ばれた」などと言えたものだとまず、驚いた。まして、石破といえば、日米地位協定の見直しに言及するなど、対米追従に批判的ではなかったか。ところが、こうした持論はおくびにも出さず、ちょっと前にトランプが口にした「ガザ所有」の暴言にも言及せず、「大統領は神に選ばれた人」とばかりにスリ寄ったのである。
読売新聞によると、この発言は「事前に練り上げた」文言らしい。そして、首相自身が周囲に「持ち上げて持ち上げて気持ちよくさせる。私らしくないかもしれないがやるしかない」などと覚悟を語っていたという。
いじめられないように「悲壮な準備」だったのだ。だから、表面上、何事もなく会談が終わり、トランプからちょっと「タフだ。ナイスガイだ」と持ち上げられると舞い上がる。「非常に有意義な会談だった」(石破首相)と自画自賛する。同行記者たちも「おおむね成功」と胸をなでおろす。そして、「日米関係の黄金時代」などという空疎な言葉が飛び交っているのだが、この感覚はつくづく、異常ではないか。
いじめっ子にへつらっているなんて最低だ
トランプといえば、温暖化に歯止めをかけるパリ協定を離脱し、WHO(世界保健機関)に背を向けたように平然と国際秩序やルールを無視し、2国間協議で弱者をいじめ抜いている。対中姿勢を鮮明にし、親イスラエルの強硬派を揃え、挙げ句が「ガザ所有」妄言だ。東大名誉教授で哲学者の高橋哲哉氏はこう言った。
「トランプ大統領のこの発言には驚きました。第2次トランプ政権は国務長官、国防長官、国連大使などにイスラエル寄りの強硬派を揃えてきた。それだけにどうなるのかと思っていましたが、ガザ所有というのはガザ市民を移住という名で永久追放することです。これまでもイスラエルは、アメリカが原住民を追い出したように、パレスチナ人を排除する入植者植民地主義で支配地域を広げてきた。それをイスラエルに代わって米国がやろうというわけですが、どこにそんな権利があるのか。ガザの沿岸には資源が眠っているとの情報もあるので、それを狙っているのか。植民地主義そのものです」
付け加えると、トランプは今月6日、ICC(国際刑事裁判所)の関係者に資産凍結や米国への入国禁止などの制裁を科す大統領令に署名した。ICCは昨年11月、イスラエルのネタニヤフ首相らに戦争犯罪などの容疑で逮捕状を発行した。これにトランプは激怒したのだが、この大統領令には英独仏など79カ国・地域が「国際的な法支配をむしばむ恐れがある」として抗議の共同声明を出した。
「これに日本は入っていないのです。ICCといえば、所長は日本人の赤根智子氏なのに残念です。日本は歴代自民党政権が『法の支配』を強調してきた。それなのに、反対声明すら出せないのはトランプ大統領との首脳会談を控えていたからでしょう。情けない話です」(高橋哲哉氏=前出)
そういえば、ガザ所有のトランプ発言についても岩屋毅外相は国会で散々、「どう思っているのか」「政府として声明を出さないのか」と質問されたが、答えず、はぐらかし、安住淳予算委員長から再三、注意される場面があった。
すべてはトランプを刺激しないご機嫌取り。いじめっ子の横暴を許し、媚びへつらっているのだから、最低だ。
得たものより失ったものが大きい可能性も
「ガザ所有」発言は基本原理の「法の支配」を無視(C)ロイター
そこまでして、今度の首脳会談では一体、何が得られたのか。ここもきちんと検証する必要がある。
詳細に見ていくと、「100点満点報道」が大誤報じゃないかと思えてくる。約束してきたのはとんでもないことばかりだからだ。
例えば、共同声明にはこんなくだりがある。
<米国は、日本の防衛予算増加の好ましい傾向により下支えされた、2027年度までに日本を防衛する主たる責任を確固たるものとする能力を構築すること、そして、この重要な基盤の上に、2027年度より後も抜本的に防衛力を強化していくことに対する日本のコミットメントを歓迎した>
岸田前首相はバイデン前大統領との首脳会談で勝手に防衛費倍増を約束してきた。27年度までの5年間で防衛費を43兆円まで増やすことを決めて、今も財源問題でモメている。そうしたら、石破も同じだった。「2027年度より後も抜本的に強化していくコミットメント」を出して、米国から歓迎されているのである。
「石破首相は自分は岸田前首相と違って“防衛・安全保障には強い”という自負がある。言われるままの数字を了解したわけではない、と言うかもしれませんが、米国の捉え方は違うと思います。対GDPで防衛費を2%からもっと増やせ、と言ってくるだろうし、NATOには5%と言っている。モメたとき、このとき、約束したじゃないかとやられかねない。双方の認識のズレが今後、問題化しそうな文言です」(ジャーナリスト・山田惠資氏)
関税にしてもそうだ。メキシコやカナダと違って25%という具体的数字こそ突きつけられなかったが、対日貿易赤字の解消を念押しされ、トランプは「関税も選択肢」と言い切った。各国に相互関税をかける計画も発表予定で、米国の記者から「追加関税をかけられたら、報復するのか」と聞かれた石破は「仮定の話には答えられないのが日本の国会答弁の定番」とごまかした。トランプは「とてもいい答えだ」とジョークにしていたが、笑えない話だ。「報復関税をかける」と明言できない石破の弱さ、それを喜ぶトランプという図式が透けて見える。
その一方で、約束したのが対米投資を8000億ドルから1兆ドルに増やすこと。貿易赤字を減らすこと。そのためにLNG(液化天然ガス)をガンガン買うこと。米国はアラスカでLNG採掘を進めているが巨額の費用がかかる。いくら上乗せされるかわからないから白紙の契約書みたいなものだ。
膨大な人手と時間をかけて媚びる意味は
さらに見過ごせないのは、安倍元首相とトランプが交わした2017年の共同声明では「法の支配に基づく国際秩序の維持」という文言が入っていたのに、今回は抜け落ちたことだ。
トランプのガザへの暴言、グリーンランドやメキシコ湾、パナマ運河を巡る発言を見れば、トランプ自身が法の支配による国際秩序を無視しているのは歴然だ。だから、入れられなかったのか。だとすれば、あまりにも弱腰だし深刻だ。いじめっ子のいじめを正当化してやったことになる。トランプ・米国がやることは何でもかんでも正義になる。
「トランプ大統領は米国のビジネスにしか興味がない。法の支配による国際秩序には人権問題なども含まれるが、そういう方面には関心がない。文言が削られた背景のひとつでしょう」(首脳会談関係者)
こんな大統領に媚びるために膨大な人手と時間をかけて、「人事を尽くして天命を待つ」などと拝んでいた日本政府なのである。
「新たな黄金時代を築く」とうたった共同声明を見ていると、世の中、いよいよ、トチ狂ってきたのか、と暗澹たる気分になる。
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