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※2025年1月22日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年1月22日 日刊ゲンダイ2面
大統領令に次々と署名(C)ロイター
就任早々、やりたい放題のトランプ大統領に石破政権も大メディアも「日米関係が大事」などとお題目を繰り返しているが、このままご機嫌取りでへつらうのか。ちょっと前まではSDGsなどと騒いでいたのに、こうした価値観までもひっくり返された政治とメディアの対応も見もの。
◇ ◇ ◇
「メーク・アメリカ・グレート・アゲイン」「黄金時代が始まる」──。
米国時間の20日、第47代大統領に就任したトランプ氏はこう宣言し、就任式で100本近い大統領令に次々と署名した。事前に、ムチャクチャな策を打ち出してくるといわれていたが、予想通りの展開である。
不法移民の流入阻止のため、メキシコとの国境に関する国家非常事態を宣言すると明言。国境付近に軍を動員する考えを示した。メキシコ湾を「アメリカ湾」に改称し、中米パナマの管理下にあるパナマ運河を「取り返す」とも発言。さらには、2021年の連邦議会襲撃事件で訴追された支持者らについて「彼らは人質だ。およそ1500人に恩赦を与える」と話し、WHO(世界保健機関)からの脱退も表明してみせた。
トランプの矢継ぎ早の“実行力”に、国際社会は言葉を失っているように見える。ドイツのショルツ首相はX(旧ツイッター)に「米国は最も近い同盟国であり、良好な関係が常に私たちの政策目標だ」と、ありきたりな言葉で祝福した。
辞任を表明していたカナダのトルドー首相は「カナダ国民の利益を守りながら、トランプ大統領やその政権、連邦議会の議員、それに、州や地方レベルの当局者と協力して、両国民に繁栄をもたらすことを楽しみにしている」とコメント。カナダからの輸入品に25%の関税を課すと宣言したトランプに、恐る恐る見直しを求めているようにも聞こえる。
トランプは連邦議会襲撃や売春の口止めなど複数の罪で起訴され、有罪評決も下されているが、権力を握れば何でもありなのか。臆面のなさや押しの強さに圧倒されている世界は、どう考えても異常だ。
米IT大手が追随
中でも驚いたのは、トランプが自国の利益うんぬんを通り越して、多様性を否定するかのような言動をしたことだ。就任演説で民主党政権が推進してきたDEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みを全否定した上で「われわれは肌の色に関係なく、実力主義の社会を築く。きょうから、性別は男性と女性の2つのみというのが米政府の公式な政策となる」と言ったのだ。
今後、米国では障害のある人や同性愛者はどう生きていけばいいのか。完全な少数派切り捨てだ。こんなセリフ、一般企業でもアウトなのに、一国のトップが平然と言ってのけるのだから驚愕である。
ところが、あろうことか、名だたる米国の大企業は続々と追随。マクドナルドは今月、管理職に占める女性比率や人種的・性的少数者比率の目標を廃止すると発表。
メタ(旧フェイスブック)は多様性に配慮した採用をやめる。さらに、SNSの投稿規制を「検閲」と捉える保守派やトランプを意識してか、ファクトチェックやヘイトスピーチを取り締まる機能を縮小。
ウォルマートは性的少数者のイベントへの資金拠出を見直し、ハーレーダビッドソンは従業員の一定割合を女性などに割り当てる施策を中止すると決めてしまった。
さらに、米国のIT大手グーグルのスンダー・ピチャイCEO、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏、メタのマーク・ザッカーバーグCEO、アップルのティム・クックCEO、オープンAIのサム・アルトマンCEOが揃って就任式に出席。それだけでなく、彼らは続々と就任式のために各100万ドル(1億5500万円)もの巨額を寄付したのだ。
嘆かわしいことに、それを風刺した一コマ漫画は、ワシントン・ポスト紙から掲載を拒否されてしまった。大企業が追随し、メディアまでトランプの方を向いてしまった格好だ。
価値観をひっくり返した暴君に対峙できるのか
恐れをなして様子見で、「日米共通の価値観」などと言わせてはダメだ(C)日刊ゲンダイ
多様性のみならず、環境問題にしても同様だろう。主要各国の政府、企業、メディアが地球温暖化防止で歩調を合わせてきたのに、トランプは温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から再離脱する内容の大統領令に署名。温室効果ガスを出す化石燃料を「ドリル、ベイビー、ドリル(掘って掘りまくれ)」と全否定である。バイデン前政権が気候変動対策の一環として進めた電気自動車の普及策の撤回も表明してしまった。
さあ、こんなトランプに日本政府はどう対応するのか。ちょっと前まで「SDGs」「多様性」を振りかざしていた大メディアも、一体どうするのか。けだし見ものというものだ。
世界の価値観が根底から覆されようとしているわけだが、今後、誰もがトランプの言いなりになれば、これまでの「SDGs」「多様性」といった言動は偽善だったのか、と問われるのは必至だ。それでは、誰かがトランプをいさめるのかといえば、みんな様子見を決め込んでいる。
石破首相も「日米関係の更なる強化及び『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、緊密に協力していきたい」などと通り一遍のことしか言っていない。
大メディアも「トランプ劇場」を無批判に“実況中継”しているだけで、「期待と不安」などという言葉でゴマカしている。こんな調子では先が思いやられるというものだ。トランプにやりたい放題やられてしまうだろう。国際ジャーナリストの春名幹男氏はこう言う。
「日本は対米投資が世界一で、事実上、米国の労働者を助けています。本来であれば、日本政府も大メディアも米国に強く物申せる立場です。ところが、GAFAのトップを従えたトランプ氏に恐れをなしたのか、毅然とした言葉を突きつけられていない。それどころか、情報番組のコメンテーターは『トランプさんは貫禄がある』などとヨイショする始末。今後の焦点は日米首脳会談です。通常、会談後にまとめる声明では『日米共通の価値観』という言葉が盛り込まれます。しかし、価値観を破壊しているのがトランプ氏です。日本政府はその言葉だけは使わせてはいけませんし、大メディアも目を光らせるべき。でなければ、相手はつけあがり、防衛費増や武器爆買いといった要求を突きつけ、エスカレートしていくでしょう」
「SDGs」「多様性」は中身スカスカ
何がどうなるのか未知数な世界。それに対して恐れをなしながら様子見し、とりあえずひれ伏しているのが日本の政治と大メディアの実態だ。
本来、トランプにひっくり返された今こそ、「SDGs」や「多様性」といった価値観に毅然としたものを求めたいが、果たしてそんなことができるのか。
もともと、日本の政治や大メディアが大層に掲げていた「SDGs」や「多様性」はお題目だけで、中身はスカスカ。“主要国が取り組んでいるから、日本も触れておこう”程度の考えだったのではないか。
その証拠に、選択的夫婦別姓制度一つとっても、主要各国で実現しているのに日本だけ取り残されている。男女の賃金格差も開いたままだし、女性の社会進出も進んじゃいない。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「日本の政治や大メディアが『多様性』や『SDGs』について、真剣に考えていないのは明らかです。特に、与党の自民党は多様性や平等といった価値観に否定的な保守系団体のバックアップを得ている。そうした議員に大メディアもすり寄り、簡単に影響されてしまっている。だから、日本では多様性がなかなか根付かないわけです。政府は女性の役員比率の数値目標を掲げていますが、本気で多様性を進める意思があるならば、目標などなくても達成できるはず。SDGsに至っては、政府や御用メディアが原発推進の大義名分にしてきたフシがある。こんな体たらくですから、日本政府も大メディアもトランプ氏に反論できるわけがないでしょう」
トランプの暴挙を前に、政府と大メディアは黙するしかないのか。
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