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※2025年1月14日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年1月14日 日刊ゲンダイ2面
夫人の「外交デビュー」を終えて帰国(C)日刊ゲンダイ
外交デビューを果たした石破首相だが、果たして、この政権は混乱、混迷の国際政治でどんな外交を展開するのか。当初は日米地位協定の見直しに言及、勇ましかったが、トランプ相手に「法の支配」や「日本製鉄問題」を迫れるのか。
◇ ◇ ◇
年明け早々、マレーシアとインドネシアを訪問していた石破首相が12日帰国。昨年10月の就任以来、国際会議への出席以外では、これが初の外国訪問だ。佳子夫人も初めて外遊に同行し、ファーストレディーとしての「外交デビュー」を果たした。
訪問先のインドネシアで記者団の取材に応じた石破は、「不透明さを増す国際情勢の中にあって、東南アジアとの信頼関係を強化することは極めて重要だ」と言い、首脳会談を通じて「法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋」実現の重要性や、経済安全保障の協力推進を確認したと成果を誇った。
帰国した12日には、夫人とともに公邸に入居。これまで議員宿舎で暮らしていたが、危機管理強化のために公邸に移ったのだという。1936年の「二・二六事件」の舞台になった首相公邸は幽霊が出るという噂があるが、石破は「『オバケのQ太郎』世代なので、たいして恐れない」と話していた。
初の公邸泊を経験した石破は翌13日、米国のバイデン大統領、フィリピンのマルコス大統領とオンラインで3カ国首脳会談を行うなど張り切って外交に精を出している。
バイデンに対しては、日本製鉄によるUSスチール買収計画の中止を命令したことについて、日米の経済界から懸念の声が上がっていると指摘し、払拭に向けた対応を強く求めたという。オンライン会談後、記者団の前で「政府として言うべきことは、言うべきタイミングで言う」と胸を張った。
会うこと自体が目的化
「24日に召集予定の通常国会は少数与党で臨むことになり、前途多難が見込まれる。総理が公邸の幽霊よりも恐れているのは、新年度予算案の審議で立ち往生することです。外交成果を弾みに、なんとか通常国会を乗り切りたい。外交上の目下の焦点は米国のトランプ次期大統領との会談で、早期の実現を目指して訪米の調整が進んでいます」(官邸関係者)
そういう政局的な思惑は分からんでもないが、問題は、混迷する国際情勢の中で石破がどんな外交を展開しようとしているのか、さっぱり見えないことだ。
20日にはドナルド・トランプが2期目の米大統領に就任する。何をしでかすか分からない大統領の返り咲きに世界は戦々恐々としている。
なにしろ、就任前からデンマーク自治領グリーンランドの購入をブチ上げたり、「メキシコ湾の名称をアメリカ湾に変更する」と言い出したり、カナダを米国の51番目の州にすると発言してみたり、さらには抵抗するなら高い関税を課すと脅して、あちこちにケンカを吹っかけているのがトランプ次期大統領である。
石破の口癖は「納得と共感」だが、まっとうな順法意識を持ち合わせているのか、国際秩序を守る気があるのかも疑わしい人物を相手に、「法の支配」を説いて納得を得る算段はあるのか。
レームダックのバイデンに対しては「言うべきことを言う」と威勢がよかったが、「アメリカファースト」のトランプにも「日本製鉄問題」を迫れるのか。「買収を認めろ」と言えるのか?
「石破首相の訪米時期が大統領就任式後にズレ込み、もはや会うこと自体が目的になっているように見える。日米首脳の関係がどうなるかは未知数です。ただし、石破首相に胆力と交渉力があるのなら、在日米軍の撤退を主張したこともあるトランプ氏は、持論の『地位協定改定』などを言い出しやすい相手かもしれません」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
焦れば足元を見られて無理難題を吹っかけられる
カムバック(C)ロイター
長く安全保障に携わってきた石破には持論があり、かねて「日米地位協定の改定」や「アジア版NATO構想」を唱えてきたが、首相就任後は表立って言及することを控えている。どちらも本気でやろうとすれば国内外に軋轢を生じるのは必至だから、保身に走っているとも言える。
もっとも、日本の主権を一部制限する地位協定については、保守派の中にも改定を望む声が根強くある。トランプと戦略的に対峙して、国益にかなう成果を上げられればたいしたものだが、石破にそれだけの信念と能力があるのかどうか。
「党内基盤が弱く、変節ぶりで国民からの人気も失った石破首相には後がないのだから、やりたかったことを堂々と打ち出すしかないでしょう。とはいえ、トランプ氏との早期会談が実現するかどうかも不透明です。2月前半の訪米を模索していると聞きますが、その頃は予算審議の真っただ中です。政治改革をめぐっても、企業・団体献金の禁止問題など昨年の臨時国会からの積み残しがある。国民民主党と協議していた『103万円の壁』の問題もあります。さまざまな懸案を抱えて、予算案の年度内成立も見通せず、足元がおぼつかない中で外交に注力する余裕があるとは思えません」(政治ジャーナリスト・山田厚俊氏)
20日の大統領就任式には盟友の岩屋外相が出席する予定だ。外相の臨席は異例だが、石破訪米に向けた地ならしを急ぐ。トランプとの関係を構築し、強固な日米同盟関係を内外にアピールすることは、石破にとって喫緊の課題だ。それができなければ、トランプと蜜月関係を築いた安倍元首相のシンパが「それ見たことか」と勢いづき、石破降ろしが加速しかねないからだ。
だが、焦ってトランプに会おうとすれば、足元を見られて無理難題をのまされかねないという不安も付きまとう。
石橋湛山に心酔は本当か
13日の朝日新聞で、米戦略国際問題研究所(CSIS)の国際政治学者エリオット・コーエン氏が「トランプ氏は世界をどこへ連れていく」というタイトルで、今後の見通しをこう語っていた。
<はっきりしているのは、トランプ氏も共和党も、バイデン政権が進めてきたウクライナへの兵器供与を従来のようには実施しないだろうということだという。「トランプ氏は米国からの供与はしない一方で、欧州の国に対し、米国製の兵器を買ってウクライナに提供するように働きかけるのではないか」。日本に対しても、ハイテク兵器などを米国から購入し、ウクライナに提供するよう要請してくる可能性があるとみる>
<米国が唯一の超大国として国際秩序を担った期間、日本やドイツなどは米国の庇護のもと、予見可能な世界で非常に心地よく過ごし、経済成長も遂げた。しかし、現実は様変わりし、米国のリーダーシップはもう戻って来ない>
コーエン氏は日本のあるべき姿として、「米国との関係を見直し、一種の独立した大国として行動し始めなければならない」と説く。
米国が国際秩序の維持を先導する時代は急速に終わりに近づいているというのだ。
「石破首相は米国中枢とどういうパイプがあるのか分かりませんが、外務省に丸投げでは、これまで通り米国に追従することしかできないでしょう。本当に石橋湛山に心酔しているのなら、今こそ、その気概を見せてほしいと思います」(山田厚俊氏=前出)
石破は、第55代総理大臣の石橋湛山を尊敬していると公言している。首相就任前は、超党派議連の「石橋湛山研究会」にも熱心に参加。臨時国会の所信表明演説で湛山の言葉を引用したことも話題になった。
ジャーナリスト出身で首相になった湛山は「アメリカと提携するが、向米一辺倒にはならない」と宣言したことで知られる。石破にそれだけの志があるのかどうか。トランプと会ったところで、過去数代の首相と同じく武器を大量に買わされるだけではないのか。
意欲を燃やす訪米が「飛んで火に入る何とやら」にならないことを願うばかりだ。
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